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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】プレス成形装置
(51)【国際特許分類】
   B21D 43/00 20060101AFI20221125BHJP
   B21D 37/08 20060101ALI20221125BHJP
   B21D 24/00 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
B21D43/00 U
B21D37/08
B21D24/00 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019004742
(22)【出願日】2019-01-15
(65)【公開番号】P2020110834
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2021-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】590000721
【氏名又は名称】株式会社キーレックス
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】板岡 毅
(72)【発明者】
【氏名】妹尾 晋作
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-185021(JP,U)
【文献】実開平01-114121(JP,U)
【文献】実開昭58-194829(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2011/0061438(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 43/00
B21D 37/08
B21D 24/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1成形面を有する第1金型と、
該第1金型の上方に昇降可能に対向配置され、下降することにより上記第1成形面との間で上記第1金型に載置された被プレス材を塑性変形させてプレス成形体を得る第2成形面を有する第2金型と、
上記第1金型の周りに所定の間隔をあけて複数配置され、上記第1金型に上記被プレス材を載置する際、上記第1金型に対する上記被プレス材の位置を決める位置決めユニットとを備え、
該位置決めユニットは、上記第1金型に対する前側に上記被プレス材の外周縁部の位置を決める位置決め面を有するブロック体と、上記第1金型に対して上記ブロック体を進退可能に支持する支持フレームと、上記位置決め面が上記第1金型から離れる側に上記ブロック体を付勢する付勢手段とを備え、
上記ブロック体は、その長手方向が上下方向に延びるよう構成され、
上記第2金型は、下方に突出するとともに突出端が上記第2成形面よりも下方に位置する複数の突出部が上記各位置決めユニットに対応する位置に設けられ、
上記ブロック体及び上記突出部のいずれか一方は、上記第1金型から離れるにつれて次第に下方に位置するように傾斜する傾斜面と、該傾斜面における上記ブロック体及び上記突出部のいずれか他方から離れた側に連続して設けられた上下に延びる摺接面とを備え、
上記傾斜面は、上記第2金型の下降動作により、上記ブロック体及び上記突出部のいずれか他方に摺接しながら上記付勢手段の付勢力に抗して上記位置決め面が上記第1金型に近づくように上記ブロック体を前進させるよう構成され、
上記摺接面は、上記第2成形面が上記被プレス材を塑性変形させる際、上記ブロック体及び上記突出部のいずれか他方に摺接するよう構成され
上記支持フレームは、上記ブロック体の中途部を当該ブロック体の前後方向と直交する水平方向に延びる揺動軸心周りに揺動可能に軸支し、
上記付勢手段は、上記位置決め面が上向く側に上記ブロック体が揺動するように付勢し、
上記ブロック体は、上記揺動軸心周りに揺動することにより、上記第1金型に対して進退するよう構成されていることを特徴とするプレス成形装置。
【請求項2】
請求項1に記載のプレス成形装置において、
上記支持フレームは、水平方向に延びるベースプレートと、該ベースプレートの中途部から上方に突設された支持部と、を備え、
上記支持部の上端部が、水平方向で上記突出部よりも上記第1金型側において上記ブロック体の下側中途部を上記揺動軸心回りに揺動可能に軸支していることを特徴とするプレス成形装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のプレス成形装置において、
上記ブロック体の前側上部には、上記第1金型側に行くにつれて下側に位置するよう傾斜して延びて上記位置決め面に繋がるガイド面が設けられていることを特徴とするプレス成形装置。
【請求項4】
請求項に記載のプレス成形装置において、
上記付勢手段は、バネ部材であり、
上記バネ部材は、水平方向において上記突出部及び上記支持部よりも上記第1金型側に配設されていることを特徴とするプレス成形装置。
【請求項5】
請求項に記載のプレス成形装置において、
上記付勢手段は、上記ブロック体の後側に取り付けられ、上記ブロック体における揺動軸心よりも後側部分が揺動軸心よりも前側部分に対して重くなるように重量設定された錘体であることを特徴とするプレス成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス成形前の被プレス材の位置決めを行う位置決めユニットを備えたプレス成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車の車体部品として用いられるプレス成形体は、シート状をなす被プレス材をプレス成形装置を用いてプレス成形することにより得られる。該プレス成形装置は、被プレス材を載置する第1金型と、該第1金型の上方に昇降可能に対向配置された第2金型とを備え、該第2金型が下降することにより第1金型との間で被プレス材を塑性変形させてプレス成形体を得るようなものが一般的に知られている。
【0003】
ところで、上述の如きプレス成形装置には、第1金型に被プレス材を載置する際、当該被プレス材が第1金型に対して目標となる位置からずれた位置とならないようにするために、被プレス材の位置決めを行う位置決めユニットが設けられている。例えば、特許文献1に開示されているプレス成形装置の位置決めユニットは、第1金型の周りに所定の間隔をあけて複数配置された固定ガイド部材に第1金型を挟んで水平方向にそれぞれ対向配置されている。各位置決めユニットは、各固定ガイド部材に向かって伸縮するピストンロッドを有する流体圧シリンダと、ピストンロッドの先端に固定された押圧部材とを備え、被プレス材を第1金型に載置した後、各位置決めユニットのピストンロッドを伸長させて各押圧部材で被プレス材を押圧して被プレス材が各固定ガイド部材に接触するまで被プレス材を移動させることにより、当該被プレス材の位置決めを行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-224105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1では、各位置決めユニットが流体圧シリンダで動作する構造になっているので、第2金型の昇降動作に対して適切なタイミングで動作するように流体圧シリンダを制御する制御装置を製作する必要があり、製造コストが嵩むという問題がある。
【0006】
また、各位置決めユニットの流体圧シリンダが押圧部材における第1金型の反対側に配置されているので、装置が水平方向に大型化し易く、装置のための広い設置スペースが必要になるおそれがある。
【0007】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、被プレス材の位置決めを確実に行うことができ、しかも、コンパクトで且つ低コストなプレス成形装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、位置決めユニットにおいて被プレス材を移動させる部材が第2金型の下降動作時に当該第2金型に押されることにより第1金型側に移動するようにしたことを特徴とする。
【0009】
すなわち、第1の発明では、第1成形面を有する第1金型と、該第1金型の上方に昇降可能に対向配置され、下降することにより上記第1成形面との間で上記第1金型に載置された被プレス材を塑性変形させてプレス成形体を得る第2成形面を有する第2金型と、上記第1金型の周りに所定の間隔をあけて複数配置され、上記第1金型に上記被プレス材を載置する際、上記第1金型に対する上記被プレス材の位置を決める位置決めユニットとを備え、該位置決めユニットは、上記第1金型に対する前側に上記被プレス材の外周縁部の位置を決める位置決め面を有するブロック体と、上記第1金型に対して上記ブロック体を進退可能に支持する支持フレームと、上記位置決め面が上記第1金型から離れる側に上記ブロック体を付勢する付勢手段とを備え、上記ブロック体は、その長手方向が上下方向に延びるよう構成され、上記第2金型は、下方に突出するとともに突出端が上記第2成形面よりも下方に位置する複数の突出部が上記各位置決めユニットに対応する位置に設けられ、上記ブロック体及び上記突出部のいずれか一方は、上記第1金型から離れるにつれて次第に下方に位置するように傾斜する傾斜面と、該傾斜面における上記ブロック体及び上記突出部のいずれか他方から離れた側に連続して設けられた上下に延びる摺接面とを備え、上記傾斜面は、上記第2金型の下降動作により、上記ブロック体及び上記突出部のいずれか他方に摺接しながら上記付勢手段の付勢力に抗して上記位置決め面が上記第1金型に近づくように上記ブロック体を前進させるよう構成され、上記摺接面は、上記第2成形面が上記被プレス材を塑性変形させる際、上記ブロック体及び上記突出部のいずれか他方に摺接するよう構成され、上記支持フレームは、上記ブロック体の中途部を当該ブロック体の前後方向と直交する水平方向に延びる揺動軸心周りに揺動可能に軸支し、上記付勢手段は、上記位置決め面が上向く側に上記ブロック体が揺動するように付勢し、上記ブロック体は、上記揺動軸心周りに揺動することにより、上記第1金型に対して進退するよう構成されていることを特徴とする。
【0010】
第2の発明では、第1の発明において、上記支持フレームは、水平方向に延びるベースプレートと、該ベースプレートの中途部から上方に突設された支持部と、を備え、
上記支持部の上端部が、水平方向で上記突出部よりも上記第1金型側において上記ブロック体の下側中途部を上記揺動軸心回りに揺動可能に軸支していることを特徴とする。
【0011】
第3の発明では、第1又は第2の発明において、上記ブロック体の前側上部には、上記第1金型側に行くにつれて下側に位置するよう傾斜して延びて上記位置決め面に繋がるガイド面が設けられていることを特徴とする。
【0012】
第4の発明では、第の発明において、上記付勢手段は、バネ部材であり、上記バネ部材は、水平方向において上記突出部及び上記支持部よりも上記第1金型側に配設されていることを特徴とする。
【0013】
第5の発明では、第の発明において、上記付勢手段は、上記ブロック体の後側に取り付けられ、上記ブロック体における揺動軸心よりも後側部分が揺動軸心よりも前側部分に対して重くなるように重量設定された錘体であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
第1の発明では、被プレス材を第1金型に載置して第2金型を下降させると、ブロック体及び突出部のいずれか一方に設けられた傾斜面がブロック体及び突出部のいずれか他方に摺接しながら第2金型が下降することにより、第2金型がブロック体に第1金型側へ力を加える。すると、ブロック体が前進して位置決め面が予め決められた所定の位置まで被プレス材を押圧して移動させることにより第1金型に対する被プレス材の位置を決める。そして、さらに第2金型を下降させると、ブロック体及び突出部のいずれか一方に設けられた上下方向に延びる摺接面がブロック体及び突出部のいずれか他方を摺接させるので、ブロック体の姿勢が一定に保持されて位置決め面が予め決められた所定の位置で維持される。したがって、被プレス材を第1金型における目標の位置に位置決めした状態でプレス成形を行うことができる。また、各位置決めユニットは、流体圧シリンダで動作する構造ではなく、第2金型の下降動作により当該第2金型に押されて可動するよう構成されているので、特許文献1のように第2金型の昇降動作に対して適切なタイミングで動作するように流体圧シリンダを制御する制御装置を製作する必要が無く、製造コストを掛からないようにすることができる。さらに、各位置決めユニットに特許文献1の如き流体圧シリンダが設けられていないので、特許文献1の如き装置に比べて装置を水平方向にコンパクトな形状にすることができる。
【0015】
また、の発明では、例えば、支持フレームがブロック体をスライド可能に支持する構造の場合に比べて、ゴミ等が支持フレームとブロック体との間に溜まり難くなるので、故障の少ない装置にすることができる。
【0016】
第3の発明では、被プレス材を第1金型に載置する際、もし仮に第1金型に対して被プレス材の投入位置が目標とする位置から大きく水平方向にずれたとしても、各ガイド面が被プレス材の外周縁部を滑らせながら被プレス材を目標とする位置の近くにまで案内するようになる。したがって、被プレス板を第1金型の目標とする位置に載置できずに設備を停止させてしまうといったことを防ぐことができる。
【0017】
第4の発明では、第1金型及び第2金型の型閉じ動作でプレス成形体を成形した後、第2金型を上昇させると、バネ部材のバネ力によってブロック体が元位置まで移動するようになる。したがって、装置の状態を次のプレス成形を実施可能な状態に素早く戻すことができる。
【0018】
第5の発明では、第1金型及び第2金型の型閉じ動作でプレス成形体を成形した後、第2金型を上昇させると、ブロック体の後側の重量によってブロック体が元位置まで揺動するようになる。したがって、第2の発明よりも部品コストを掛けずに装置の状態を次のプレス成形を実施可能な状態に素早く戻すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態1に係るプレス成形装置の概略断面図である。
図2図1の後、第1金型に対する被プレス材の位置決めを開始した直後の状態を示す図である。
図3図2の後、第1金型に対する被プレス材の位置決めが終了した直後の状態を示す図である。
図4図3の後、被プレス材を第1金型及び第2金型でプレス成形してプレス成形体を得た直後の状態を示す図である。
図5図4の後、第2金型が上昇した状態を示す図である。
図6】本発明の実施形態2に係る図1相当図である。
図7】本発明の実施形態3に係る図1相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
【0021】
《発明の実施形態1》
図1は、本発明の実施形態1に係るプレス成形装置1を示す。該プレス成形装置1は、床面Fに設置された基台2と、該基台2の上方に図示しないサーボモータの制御により昇降可能に配置された昇降台3とを備えている。
【0022】
基台2の中央上面には、図2に示すように、シート状をなす鋼板10(被プレス材)を載置する第1金型4が固定され、該第1金型4の中央には、緩やかに湾曲する断面凹状の第1成形面4aが凹陥形成されている。
【0023】
第1金型4の周りには、当該第1金型4に鋼板10を載置する際、第1金型4に対する鋼板10の位置を決める位置決めユニット6が所定の間隔をあけて複数配置されている。
【0024】
該位置決めユニット6は、上下に延びるブロック体6aを備え、該ブロック体6aの第1金型4に対する前側部分には、鋼板10の外周縁部の位置を決める位置決め面6bが設けられている。
【0025】
ブロック体6aの前側上部には、第1金型4側に行くにつれて下側に位置するように傾斜して延びて位置決め面6bに繋がるガイド面6cが形成されている。
【0026】
一方、ブロック体6aの後側上部は、矩形状に切り欠かれた切欠部6jが形成され、ブロック体6aの後側には、位置決め面6bと平行に延びる後端面6dが設けられている。
【0027】
また、ブロック体6aの後側上方の角部には、ブロック体6aの前後方向と直交する水平方向に突出する棒状突起6gが設けられている。
【0028】
ブロック体6aの下方には、当該ブロック体6aを支持する支持フレーム6fが設けられ、該支持フレーム6fは、水平方向に延びるベースプレート6kと、該ベースプレート6kの中途部から上方に突設された支持部6mとを備えている。
【0029】
該支持部6mの上端部は、ブロック体6aの下側中途部を当該ブロック体6aの前後方向と直交する方向に延びる揺動軸心C1周りに揺動可能に軸支している。
【0030】
すなわち、ブロック体6aは、揺動軸心C1周りに揺動することにより、第1金型4に対して進退するよう構成されている。
【0031】
ブロック体6aの前側下方には、バネ部材6e(付勢手段)が配設されている。該バネ部材6eの一端は、ブロック体6aの前側下面に固定される一方、他端は、ベースプレート6k上部の第1金型4側に固定されていて、バネ部材6eは、位置決め面6bが第1金型4から離れて上向く側にブロック体6aが揺動するように当該ブロック体6aの前側を上方に付勢している。
【0032】
第1金型4の上方には、中央下面に断面略凸状の第2成形面5aを有する第2金型5が対向配置され、第2成形面5aは、第1金型4の第1成形面4aに対応する形状をなしている。
【0033】
第2金型5の外周縁部には、下方に向かって突出する突出部5bが所定の間隔をあけて複数設けられ、各突出部5bは、各位置決めユニット6に対応する位置となっている。
【0034】
各突出部5bの突出端は、第2成形面5aよりも下方に位置しており、突出部5bの突出端における第2成形面5a側には、第1金型4から離れるにつれて次第に下方に位置するように傾斜する傾斜面5cが形成されている。
【0035】
また、突出部5bの第2成形面5a側には、上下に延びる摺接面5dが設けられ、該摺接面5dは、傾斜面5cの上端側に連続している。すなわち、摺接面5dは、傾斜面5cにおけるブロック体6aから離れた側に連続している。
【0036】
第2金型5は、昇降台3の下面に固定され、図2及び図3に示すように、昇降台3の下降動作で下降するようになっていて、傾斜面5cは、第2金型5の下降動作により、ブロック体6aの棒状突起6gに摺接しながらバネ部材6eの付勢力に抗して位置決め面6bが第1金型4に近づくようにブロック体6aを揺動軸心C1周りに揺動させて前進させるようになっている。
【0037】
また、各位置決め面6bにより第1金型4に対して鋼板10の位置決めを行った状態において第2金型5を下降させると、図4に示すように、第2成形面5aが第1成形面4aとの間で鋼板10を塑性変形させてプレス成形体P1が得られるようになっていて、摺接面5dは、第2成形面5aが鋼板10を塑性変形させる際、ブロック体6aの棒状突起6gに摺接するよう構成されている。
【0038】
次に、プレス成形装置1を用いて鋼板10からプレス成形体P1を得る方法について説明する。
【0039】
図1は、所定の外形をなす鋼板10を型開き状態の第1金型4と第2金型5との間に搬入した状態を示す。
【0040】
この図1の状態から鋼板10を第1金型4に向けて落下させる。すると、図2に示すように、鋼板10は、第1金型4上面の適当な位置に載置される。このとき、もし仮に第1金型4に対して鋼板10の投入位置が目標とする位置から水平方向にずれたとしても、各ガイド面6cが鋼板10の外周縁部を滑らせながら鋼板10を目標とする位置の近くにまで案内するようになる。特に、本発明の実施形態1においては、位置決め面6bが上向くようにブロック体6aが揺動した状態であり、ガイド面6cが第1金型4から離れた位置となっているので、第1金型4に対して鋼板10の投入位置が目標とする位置から大きく水平方向にずれたとしても、鋼板10を目標とする位置の近くにまで案内することができる。このように、鋼板10を第1金型4の目標とする位置に載置できずに設備を停止させてしまうといったことを防ぐことができる。
【0041】
次に、第1金型4に鋼板10を載置した後、昇降台3を下降させる(矢印X1)。すると、第2金型5における各突出部5bの傾斜面5cが各位置決めユニット6における棒状突起6gに接触した後、当該棒状突起6gに摺接しながら第2金型5が下降することにより、第2金型5がブロック体6aに第1金型4側への力を加える。そうすると、図3に示すように、ブロック体6aが揺動軸心C1周りに揺動することにより前進して位置決め面6bが予め決められた所定の位置まで鋼板10を押圧して移動させることにより第1金型4に対する鋼板10の位置を決める。
【0042】
その後、さらに第2金型5を下降させる。すると、図4に示すように、第1金型4と第2金型5とが型閉じして第2金型5の第2成形面5aが鋼板10の中央部分を第1金型4の第1成形面4aに沿うように塑性変形させてプレス成形体P1が得られる。このとき、突出部5bに設けられた上下方向に延びる摺接面5dがブロック体6aの棒状突起6gを上下方向に摺接させるので、ブロック体6aの姿勢が一定に保持されて位置決め面6bが予め決められた所定の位置で維持される。したがって、鋼板10を第1金型4における目標の位置に位置決めした状態でプレス成形を行うことができる。
【0043】
その後、図5に示すように、昇降台3を上昇させて第2金型5の第2成形面5aがプレス成形体P1の上面から離間し(矢印X2)、さらに、各位置決めユニット6のブロック体6aがバネ部材6eの付勢力により元位置まで揺動して作業が終了する。
【0044】
以上より、本発明の実施形態1によると、各位置決めユニット6は、流体圧シリンダで動作する構造ではなく、第2金型5の下降動作により当該第2金型5に押されて可動するよう構成されているので、特許文献1のように第2金型5の昇降動作に対して適切なタイミングで動作するように流体圧シリンダを制御する制御装置を製作する必要が無く、製造コストを掛からないようにすることができる。
【0045】
また、各位置決めユニット6に特許文献1の如き流体圧シリンダが設けられていないので、特許文献1の如き装置に比べてプレス成形装置1を水平方向にコンパクトな形状にすることができる。
【0046】
さらに、位置決めユニット6の支持フレーム6fは、ブロック体6aを揺動可能に支持する構造になっているので、例えば、支持フレーム6fがブロック体6aをスライド可能に支持する構造の場合に比べて、ゴミ等が支持フレーム6fとブロック体6aとの間に溜まり難くなり、故障の少ないプレス成形装置1にすることができる。
【0047】
それに加えて、ブロック体6aは、バネ部材6eにより位置決め面6bが上向く側に揺動するように付勢されているので、第1金型4及び第2金型5の型閉じ動作でプレス成形体P1を成形した後、第2金型5を上昇させると、バネ部材6eのバネ力によってブロック体6aが元位置まで移動するようになる。したがって、プレス成形装置1の状態を次のプレス成形を実施可能な状態に素早く戻すことができる。
【0048】
《発明の実施形態2》
図6は、本発明の実施形態2に係るプレス成形装置1を示す。この実施形態2では、位置決めユニット6の一部構造が実施形態1と異なっているだけで、その他は実施形態1と同じであるため、以下、実施形態1と異なる部分のみを詳細に説明する。
【0049】
実施形態2におけるブロック体6aの後側下部には、直方体形状をなす錘体6h(付勢手段)が固定され、該錘体6hは、ブロック体6aにおける揺動軸心C1よりも後側部分が揺動軸心C1よりも前側部分に対して重くなるように重量設定されている。
【0050】
そして、錘体6hは、ブロック体6aの後側を下方に付勢するとともにベースプレート6kの上端に当接することにより、位置決め面6bが上向くようにブロック体6aを揺動させた状態に維持するようになっている。
【0051】
尚、実施形態2のプレス成形装置1を用いて鋼板10からプレス成形体P1を得る方法は、位置決め面6bが第1金型4から離れて上向く側にブロック体6aが揺動するように当該ブロック体6aを付勢する手段が錘体6hである以外は、実施形態1と同じであるので、詳細な説明を省略する。
【0052】
以上より、本発明の実施形態2によると、第1金型4及び第2金型5の型閉じ動作でプレス成形体P1を成形した後、第2金型5を上昇させると、ブロック体6aの後側の重量によってブロック体6aが元位置まで揺動するようになる。したがって、実施形態1よりも部品コストを掛けずにプレス成形装置1の状態を次のプレス成形を実施可能な状態に素早く戻すことができる。
【0053】
《発明の実施形態3》
図7は、本発明の実施形態3に係るプレス成形装置1を示す。この実施形態3では、第2金型5の一部構造と位置決めユニット6の一部構造とがそれぞれ実施形態1と異なっているだけで、その他は実施形態1と同じであるため、以下、実施形態1と異なる部分のみを詳細に説明する。
【0054】
実施形態3における第2金型5の突出部5bの突出端には、実施形態1の如き傾斜面5cが形成されていない。
【0055】
また、実施形態3におけるブロック体6aの後側上部には、実施形態1の如き棒状突起6gが設けられていない。
【0056】
一方、実施形態3におけるブロック体6aの後側上部には、第1金型4から離れるにつれて次第に下方に位置するように傾斜する傾斜面6iが形成されている。
【0057】
尚、実施形態2では、ブロック体6aの後端面6dが本発明の摺接面を構成している。すなわち、後端面6dは、傾斜面6iにおける突出部5bから離れた側に連続している。
【0058】
そして、傾斜面6iは、第2金型5の下降動作により、第2金型5の突出部5b先端に摺接しながらバネ部材6eの付勢力に抗して位置決め面6bが第1金型4に近づくようにブロック体6aを揺動軸心C1周りに揺動させて前進させるようになっている。
【0059】
また、各位置決め面6bにより第1金型4に対して鋼板10の位置決めを行った状態において第2金型5を下降させると、第2成形面5aが第1成形面4aとの間で鋼板10を塑性変形させてプレス成形体P1が得られるようになっていて、後端面6dは、第2成形面5aが鋼板10を塑性変形させる際、突出部5bに摺接するよう構成されている。
【0060】
尚、実施形態3のプレス成形装置1を用いて鋼板10からプレス成形体P1を得る方法は、第2金型5を下降させた際において、ブロック体6aと突出部5bとの間で摺接する部分が異なる以外は、実施形態1と同じであるので、詳細な説明を省略する。
【0061】
以上、本発明の実施形態3によると、実施形態1のように突出部5bに傾斜面5cを設けずに、ブロック体6aに傾斜面6iを設ける構造にした場合においても、実施形態1と同様に鋼板10の位置決めを確実に行うことができ、しかも、コンパクトで且つ低コストなプレス成形装置1にすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、プレス成形前の被プレス材の位置決めを行う位置決めユニットを備えたプレス成形装置に適している。
【符号の説明】
【0063】
1 プレス成形装置
4 第1金型
4a 第1成形面
5 第2金型
5a 第2成形面
5b 突出部
5c 傾斜面
6 位置決めユニット
6a ブロック体
6b 位置決め面
6c ガイド面
6d 後端面(摺接面)
6e バネ部材(付勢手段)
6f 支持フレーム
6h 錘体(付勢手段)
6i 傾斜面
10 鋼板(被プレス材)
C1 揺動軸心
P1 プレス成形体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7