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特許7182278サーフボード 並びにその加工用ブランク素材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】サーフボード 並びにその加工用ブランク素材
(51)【国際特許分類】
   B63B 32/50 20200101AFI20221125BHJP
【FI】
B63B32/50
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019049951
(22)【出願日】2019-03-18
(65)【公開番号】P2020152150
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2022-02-18
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年4月30日,静岡県牧之原市において,この出願の発明に係るサーフボードを販売した。
(73)【特許権者】
【識別番号】519011326
【氏名又は名称】宇田 大地
(74)【代理人】
【識別番号】100086438
【弁理士】
【氏名又は名称】東山 喬彦
(72)【発明者】
【氏名】宇田 大地
【審査官】結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表平5-500346(JP,A)
【文献】特開昭58-46974(JP,A)
【文献】実開昭63-11077(JP,U)
【文献】登録実用新案第3101966(JP,U)
【文献】特開2002-284086(JP,A)
【文献】特表2009-500211(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 32/00-32/59,
A63B 69/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮力を具えたコア材と、このコア材の表面を覆う表殻材とを具えたサーフボードであって、
前記コア材は、サーフボードの長手方向に沿って中央部に補強芯材を配し、その幅方向両側に浮力コア材を接着配置したものであり、
前記補強芯材は、発泡ウレタン素材の第一補強芯材と、この第一補強芯材の左右両側の縦面に固着されるガラスペーパー素材の第二補強芯材とを具えていることを特徴とするサーフボード。

【請求項2】
前記補強芯材の幅方向両側に接着配置される浮力コア材は、発泡スチロール素材で形成されることを特徴とする請求項1記載のサーフボード。

【請求項3】
前記表殻材のデッキ側には、その外面と内面とのいずれか一方または双方に、前記補強芯材の上端面を覆うコート処理部が設けられていることを特徴とする請求項1または2記載のサーフボード。

【請求項4】
前記補強芯材の第一補強芯材を構成する発泡ウレタン素材は、発泡密度35~45kg/m3 であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載のサーフボード。

【請求項5】
サーフボードの平面投影形状と側面投影形状とを収め得る矩形平板状のサーフボード加工用ブランク素材であって、
このものは長手方向に沿って中央部に補強芯材を配し、その幅方向両側に浮力コア材を接着配置したものであり、
前記補強芯材は、発泡ウレタン素材の第一補強芯材と、この第一補強芯材の左右両側の縦面に固着されるガラスペーパー素材の第二補強芯材とを具えて成ることを特徴とするサーフボード加工用ブランク素材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、代表的なマリンスポーツであるサーフィンに用いるサーフボード並びにこれを製造するためのサーフボード用加工用ブランク素材(いわゆるブランクス)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レジャーや競技スポーツとしてサーフィンが広く普及している。これに用いられるサーフボードは、浮力を有する発泡スチロール等のコア材と、その表面を覆う強化プラスチック等の表殻材とを基本的な構成としている。そして、更に浮力や強度を適切にするために種々の追加的工夫がなされている(例えば特許文献1~3参照)。このような工夫の向かう方向は、ユーザの技量、更には波の状況等で、求められるものが異なり、目的とする性能向上は、一義的には決められない。
しかしながら、一般的に言えば、技量の巧拙にかかわらず、ライディング時の安定性、操作に対する応答性、海面滑走性などの点で優れているものが求められている。このような性能を発揮するためには、サーフボードとして全体の剛性、弾性、柔軟性、重心位置、重心集中性などについて試行錯誤的に最適なものを究明しなければならない。加えてユーザの立場からすれば、トップアスリート(プロサーファー)は別として、長期の使用に耐え得るように、易損部位がないような耐久性に優れたサーフボードが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-284086号公報
【文献】実用新案登録第3101966号公報
【文献】特表2009-500211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明もこのような改良、開発、研究の一環としてなされたものであって、上記各検討事項に関し、これを包括的に改善し得る手法としては、サーフボードの長手方向に沿って中央部に、重量バランスを保ちながら、強度補強も行える構造を最適化することであるという着想に基づき、これに適う構成の案出を技術課題としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち請求項1記載のサーフボードは、
浮力を具えたコア材と、このコア材の表面を覆う表殻材とを具えたサーフボードであって、
前記コア材は、サーフボードの長手方向に沿って中央部に補強芯材を配し、その幅方向両側に浮力コア材を接着配置したものであり、
前記補強芯材は、発泡ウレタン素材の第一補強芯材と、この第一補強芯材の左右両側の縦面に固着されるガラスペーパー素材の第二補強芯材とを具えていることを特徴として成るものである。
【0006】
また請求項2記載のサーフボードは、前記請求項1記載の要件に加え、
前記補強芯材の幅方向両側に接着配置される浮力コア材は、発泡スチロール素材で形成されることを特徴として成るものである。
【0007】
また請求項3記載のサーフボードは、前記請求項1または2記載の要件に加え、
前記表殻材のデッキ側には、その外面と内面とのいずれか一方または双方に、前記補強芯材の上端面を覆うコート処理部が設けられていることを特徴として成るものである。
【0008】
また請求項4記載のサーフボードは、前記請求項1から3のいずれか1項記載の要件に加え、
前記補強芯材の第一補強芯材を構成する発泡ウレタン素材は、発泡密度35~45kg/m3 であることを特徴として成るものである。
【0009】
また請求項5記載のサーフボード加工用ブランク素材は、
サーフボードの平面投影形状と側面投影形状とを収め得る矩形平板状のサーフボード加工用ブランク素材であって、
このものは長手方向に沿って中央部に補強芯材を配し、その幅方向両側に浮力コア材を接着配置したものであり、
前記補強芯材は、発泡ウレタン素材の第一補強芯材と、この第一補強芯材の左右両側の縦面に固着されるガラスペーパー素材の第二補強芯材とを具えて成ることを特徴として成るものである。
【発明の効果】
【0010】
これら各請求項記載の発明の構成を手段として前記課題の解決が図られる。
すなわち請求項1または5記載の発明によれば、発泡ウレタン製の第一補強芯材の左右両側にガラスペーパー素材の第二補強芯材を固着して補強芯材が形成されるため、サーフボード全体の重量バランスを保ちながら、強度補強を行うことができる。
また第二補強芯材が、パルプ繊維にガラス繊維が分散状態に混在するガラスペーパー素材によって形成されるため、補強芯材と浮力コア材との接着性が高まり、これらを強固に接合することができる。
【0011】
また請求項2記載の発明によれば、浮力コア材が発泡スチロール素材で形成されるため、コア材は、中央部の発泡ウレタン素材を発泡スチロール素材で両側から挟み込んだ構造となり、このため全体の軽量化を図りながら、強度も高めたサーフボードを得ることができる。
また浮力コア材たる発泡スチロール素材は、ガラスペーパー素材を介して発泡ウレタン素材(第一補強芯材)と接着されるため、強固な接着が可能となる。
【0012】
また請求項3記載の発明によれば、デッキ側において表殻材の外面と内面とのいずれか一方または双方にコート処理部が設けられるため、経年使用に伴う第二補強芯材の突出を防止することができる(長期の使用において易損部位が出現しないものである)。すなわち、コート処理部がない場合には、第二補強芯材が浮力コア材よりも剛性が強いため、経年使用に伴い他の部位(第一補強芯材や浮力コア材)よりも突出してしまうことがあるが、コート処理部によってこのような突出変形を防止することができる。
【0013】
また請求項4記載の発明によれば、補強芯材、特に第一補強芯材を構成する発泡ウレタン素材の具体的構造を現実のものとする。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明のサーフボードの内部構造を示す斜視図(a)、並びにこのサーフボードサーフの原型となるボード加工用ブランク素材(ブランクス)を示す斜視図(b)である。
図2】本発明のサーフボードの内部構造を示す断面図である。
図3】本発明のサーフボードを示す平面図(a)、並びに側面図(b)である。
図4】本発明の構造サンプル(発泡ウレタン素材の両側を発泡スチロール素材で挟み込むようにした構造)の強度データを示す表である。
図5】補強芯材(第一補強芯材)に孔開けを施し、サーフボードの軽量化を図るようにした改変例を示す説明図である。
図6】更に他の改変例を種々示す説明図(a)~(d)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施するための形態は、以下の実施例に述べるものをその一つとするとともに、更にその技術思想内において改良し得る種々の手法をも含むものである。
【実施例
【0016】
まず本発明のサーフボード1について説明する。
サーフボード1は、まず浮力を得るために軽量に形成される必要があるが、同時に剛性や強度(面全体の強度)あるいは弾性等も要求される。
サーフボード1の外観形状は、従来周知のものと同様であり、例えば図1(a)・図3に示すように、平面視で前後に細長い細葉状の外観を呈する。ここで波乗りの際、使用者(サーファー)が乗る面をデッキ面1Dとし、海面に押しつけられる面をボトム面1Bとする。また、サーフボード1の先端部分はノーズ11、後端部分はテール12、側縁部分はレール13と称される。
ノーズ11は、平面視、先端に向かって尖るように形成されるとともに、側面から視てやや上向きに湾曲もしくは反り上がるように形成される。また、テール12も側面視でやや上向きに湾曲もしくは反り上がるように形成される。なお、側面から視て、先端部の反り上がり(寸法)はノーズロッカーと称され、符号「11R」を付す。また、後端部の反り上がり(寸法)はテールロッカーと称され、符号「12R」を付す。ここで上記図3では、ノーズロッカー11Rが、テールロッカー12Rよりも大きいロッカー(寸法)として形成されている。
【0017】
またボトム面1Bの後部には、例えば図1(a)に示すように、舵の作用を担うフィン14が設けられる。なお、上記図1(a)では、フィン14は一つしか図示されていないが、例えば三つ等、複数設けることも可能である。また、サーフボード1には、図示を省略するが、リーシュ(リーシュコード)が設けられる。
また、サーフボード1は、一例として図1(a)・図2の横断面図(サーフボード1の長手方向に対し直交するように切断した断面図)に示すように、デッキ面1Dが上方に向けてやや膨出するような状態に形成される一方、ボトム面1Bは、ほぼ平らな状態に形成される。また前記横断面図において、デッキ面1Dからボトム面1Bに至る端縁部(レール13)は、曲面状に形成される。
【0018】
次に、サーフボード1の内部構造について説明する。
サーフボード1は、一例として図1(a)・図2に示すように、浮力を生じさせるコア材2と、その表面を覆う表殻材3とを具えて成る。
コア材2は、サーフボード1の長手方向に沿って中央部に補強芯材21が設けられ、この補強芯材21の幅方向両側に、発泡スチロール素材(EPS)で形成された浮力コア材22が接着配置されて成る。このように補強芯材21は、サーフボード1の幅方向中央を前後にわたって貫くように設けられ(いわゆるストリンガー)、これによってサーフボード1の強度が保持される。
【0019】
以下、補強芯材21について更に詳細に説明する。
補強芯材21は、発泡ウレタン素材から成る第一補強芯材211と、この第一補強芯材211の左右両側の縦面に固着されるガラスペーパー素材の第二補強芯材212とを具えて成り、これらは補強芯材21として一体化形成されている。
ガラスペーパー素材は、パルプ繊維にガラス繊維を混合して抄き出したペーパー素材であり、パルプ繊維中にガラス繊維がほぼ均一に分散した状態に形成される。このため、補強芯材21は、その両側に設けられる浮力コア材22との接着性に優れるものであり、浮力コア材22が補強芯材21に対し強固に接着(接合)される。
【0020】
なお、前記補強芯材21において第一補強芯材211を構成する発泡ウレタン素材は、発泡密度35~45kg/m3 であることが好ましい。
また、前記ガラスペーパー素材で形成される第二補強芯材212の厚み寸法は、一例として0.3mm~1.5mmが好ましい。
【0021】
次に表殻材3について説明する。
表殻材3は、上述したように、コア材2の表面を覆う部材であり、コア材2の保護強化を図るものである。
表殻材3は、一例として軽くて丈夫な繊維強化プラスチック(いわゆるFRP)が適用され、この表殻材3がシェイプ後のコア材2の表面に巻き付けられ、レジン(樹脂)4で固められる。なお、繊維強化プラスチックとは、ガラス繊維や炭素繊維などの繊維をプラスチックの中に入れて強化したものであり、特にここではガラスクロス(グラスファイバー)が用いられ、「表殻材」と同じ符号「3」を付す。また、ガラスクロス3をコア材2の表面に密着固化するためのレジン4としては、例えばエポキシレジンが適用される。
【0022】
次に、このようなサーフボード1を所望形状に削り出して行くための出発素材たるサーフボード加工用ブランク材Bについて説明する。サーフボード加工用ブランク材Bは、言わばサーフボード1の原型でありブランクスとも称され、「サーフボード加工用ブランク材」と同じ符号「B」を付す。
ブランクスBは、一例として図1(b)に示すように、サーフボード1の平面投影形状と側面投影形状とを収め得る矩形平板状(特にここでは直方体)に形成される。そして、ブランクスBは、この矩形平板状の段階から、長手方向に沿って中央部に(幅方向中央部において長手方向を貫くように)、補強芯材21が配置され、その幅方向両側に発泡スチロール製の浮力コア材22が接着配置されて成る。もちろん、この補強芯材21は、発泡ウレタン素材から成る第一補強芯材211の左右両側にガラスペーパー素材から成る第二補強芯材212が貼着されて成るものである。
ここで、発泡スチロール製の浮力コア材22は、発泡ウレタン製の補強芯材21と接着される際、直接的にはガラスペーパー素材の第二補強芯材212と接着されるため、浮力コア材22は補強芯材21と強固に接着され、このようなブランクスBを所望形状のコア材2に削り出して行く際も(いわゆるシェイプ工程)、浮力コア材22が補強芯材21から分離してしまうことがないものである。
【0023】
本発明のサーフボード1とブランクスBは、以上のような基本構造を有するものであり、以下、ブランクスBから所望形状のサーフボード1を加工して行く製作態様について説明する。
(1)大まかなカッティング(切り出し)工程
所望形状のサーフボード1(コア材2)を得るには、上記のようなブランクスBからまず不要部(例えば鋭角状を成すノーズ11やテール12の周囲)が大まかにカットされる。このカッティング工程においては、例えばホットワイヤーと称されるフォームカッティングマシンの適用が可能であるが、細かい部分の切断作業は、ノコギリを使ったシェイパーによる手作業でのカットも適宜行われる。
【0024】
(2)シェイプ(削り)工程
大まかなカッティングが施されたブランクスBは、その後、フライスルータ等の機械を用いたマシンシェイプまたはシェイパーの手作業によるハンドシェイプによって削り出しが行われ、所望形状のコア材2に形成されて行く。もちろん、マシンシェイプでも、最終的には、シェイパーがプレーナやサンドペーパー等を用いて手作業で仕上げ削り(調整仕上げ)を行うことがある。
なお、上記説明では矩形平板状のブランクスBから加工するように説明したが、加工時間を短縮するためには、あらかじめブランクスBの不要部を大まかに切り落としたもの(中間ブランクス)を複数種、用意しておくことが好ましい。
【0025】
(3)ラミネート工程
次に、このような所望形状にシェイプしたコア材2をガラスクロス3で包み込み、レジン4(例えばエポキシレジン)で固めて行く(いわゆるラミネート工程)。なお、ガラスクロス3を固めるレジン4には、パーメック(硬化促進剤)を適宜、混合添加することが可能である。
因みに、このようなラミネート加工は、ボトム面1Bから行われ、次いでデッキ面1Dが実施される。また一般的なショートボードの場合には、例えばボトム面1Bに、4オンスのガラスクロス3が一枚使用され、デッキ面1Dに、4オンスのガラスクロス3が二枚使用される。
また、このようなラミネート工程後、フィン14を取り付けるためのフィンカップや、リーシュコードを取り付けるためのリーシュカップが取り付けられる。
【0026】
(4)ホットコ-ティング工程
このようにガラスクロス3とレジン4でラミネートした後、その上から更にレジン(樹脂)が塗り重ねられる(いわゆるホットコート)。このホットコート用のレジンは、コア材2の表面にラミネートしたガラスクロス3を更に強化するためであり、ガラスクロス3を固める際のレジン4とは異なるレジン、例えばより強度をアップさせる完全硬化タイプのレジンが適用される。
因みに、特許請求の範囲に記載する「コート処理部」とは、実質的にコア材2の表面にラミネートしたガラスクロス3を固めるためのレジン4および/またはガラスクロス3を固めた後、その上から重ね塗りするレジンを指す。
そして、このコート処理部によって、経年使用に伴う第二補強芯材212の突出を防止することができる。すなわち、コート処理部がない場合には、第二補強芯材212が浮力コア材22よりも剛性が強いため(硬度が高いため)、経年使用に伴い他の部位(第一補強芯材211や浮力コア材22)よりも突出してしまうことがあるが、コート処理部によってこのような突出変形を防止することができる。
なお、特許請求の範囲に記載する「外面」とは、図1(a)・図2に示すように、ガラスクロス(表殻材)3の上側の面を指し、「内面」とはガラスクロス(表殻材)3の下側の面を指す。ここで「内面」を含めたのは、例えばガラスクロス3を固める際、このガラスクロス3の表面に塗布したレジン4が、ガラスクロス3の内部を貫通して(滲み出て)、ガラスクロス3の下面に到達し得るためである。
【0027】
(5)サンディング・ポリッシュ工程
その後、サーフボード1(ブランクスB)は、サンディング工程において、表面に存在する余分な樹脂が削り落とされる。
次いで、サーフボード1(ブランクスB)は、コンパウンド(研磨剤)を使用したポリッシュ工程において、艶を出すように加工され完成状態となる。もちろん完成状態のサーフボード1は検品を受けてから出荷される。
【0028】
次に、発泡ウレタンとEPS(発泡スチロール)とを組み合わせることでボードとしての強度が増すことをデータに基づいて説明する。
まず図4に示す表は、下記の条件に基づいて行った試験である。
・測定方法:JIS K 7221-2 硬質発泡プラスチック-曲げ試験-による
・サンプルサイズ:長さ410mm×幅75mm×厚み20mm
・支点間距離:360mm
・変位:サンプル破断時のヘッド移動距離を読み取り記録
ここで表中の本発明サンプル1・2は、本発明のコア材2を再現した構造のサンプルであり、比較例サンプル1~4は、本発明のコア材2ではない構造のサンプルである。
また計測は、本発明サンプル及び比較例サンプルとも、各サンプルにおいて三個ずつ製作し、計測を行った。
更に表中の「ウレタン25」、「EPS20」等の数値は、素材自体の幅寸法を示す数値である。すなわち、本発明サンプル1の「EPS/ウレタン25/EPS」は、幅寸法75mmのサンプルの中央に25mm幅のウレタンを配置し、その両側に幅寸法25mmずつのEPS(発泡スチロール)を接着した構造である。
【0029】
各サンプルの変位を比較すると、比較例サンプル3(EPS張り合わせなし)が、最も大きいが、強度は最も弱い結果となった。
接着剤でEPS/ウレタン/EPSと張り合わせた場合(本発明サンプル1・2)や、EPS/EPS/EPSと張り合わせた場合(比較例サンプル1・2)は、いずれも変位が小さくなり、強度が上がる傾向が見られた。これは各部材間に入った接着剤が硬化したことで硬さが出て、強度が向上したと推察される。
材料の比較を行うと、貼り合わせ時、中央にウレタンを配置した場合(本発明サンプル1・2)には、EPSを配置した場合(比較例サンプル1・2)よりも、強度が高くなる傾向が得られた。
測定全体を通して、ウレタンとEPSを貼り合わせることで強度が高くなる傾向が確認できた。
総合的には、EPSとウレタンとを組み合わせることで(ウレタンをEPSで挟み込むことで)強度が高くなることが客観的に確認できた。
理由は不明であるが、EPSとウレタンとが同じ強度でも、しなりが違うものを組み合わせることで強度が高くなると推察された。
【0030】
〔他の実施例〕
本発明は以上述べた実施例を一つの基本的な技術思想とするものであるが、更に次のような改変が考えられる。まず上述した基本の実施例では、補強芯材21の第一補強芯材211は、発泡ウレタン素材の充実体(発泡のためエア空間としては存在するものの、後加工で積極的に開口部を形成していないという意味)として形成されていた。しかしながら、第一補強芯材211は、必ずしもこの形態に限定されるものではなく、例えば図5に示すように、ノーズ11からテール12に至る途中部分において、一つまたは複数の孔を開けることが可能であり、これによりサーフボード1の軽量化がより達成される。もちろん、このような孔開けカ所を多くすれば、より軽量化が図れるものの、その分、強度としては低下するため、これらの兼ね合いで孔開けの数や位置あるいは開口サイズ等が決定される。ここで図中符号25が、第一補強芯材211(補強芯材21)に開口した孔である。
なお、第一補強芯材211に孔開けを施し、軽量化を図る思想は、第一補強芯材211を形成する発泡ウレタン素材が、発泡スチロール(EPS)製の浮力コア材22に比べると重いためである。もちろん発泡ウレタン素材は、発泡スチロール素材に比べると、剛性としては高いため、このバランスを考えて上記孔開けは施される。
【0031】
また、先に述べた基本の実施例では、補強芯材21の両サイドに設ける浮力コア材22も、発泡スチロール素材の充実体で形成されるものであったが、発泡スチロール素材は発泡ウレタン素材に比べて軽く、剛性も低いことから、例えば図6(a)に示すように、浮力コア材22(発泡スチロール素材)の内部にシリコン26を埋め込むようにし、重さを増すことが可能である。これは、例えば上記図6(a)の断面図に示すように、浮力コア材22の第二補強芯材212(ガラスペーパー素材)側に接する端面を適宜の厚み寸法で彫り込んだ後、ここにシリコン26を埋没状に設ける形態である。因みに、例えばサーフボード1(浮力コア材22)の長手方向寸法(全長)が約200cm、長手方向中央部の厚みが約7cmの場合、シリコン26の長手方向寸法は約120cmで設けることができる。もちろん、シリコン26を埋没状に設ける部位は、必ずしも浮力コア材22に限らず、第一補強芯材211(発泡ウレタン素材)を彫り込み、ここに設けることも可能である。
また、浮力コア材22には、例えば図6(b)に示すように、内部にガラスチューブ27を埋め込むようにし、バネ的補強を行うことが可能である(いわゆる「しなり」)。その場合、浮力コア材22に埋没状に設けられるガラスチューブ27は、長さが約120cmのものが適用可能である。
【0032】
また、先に述べた基本の実施例では、補強芯材21、特に発泡ウレタン製の第一補強芯材211は、サーフボード1(ブランクスB)の長手方向に沿って中央部に一本設ける形態を示したが、補強芯材21(第一補強芯材211)は、必ずしもこれに限定されるものではない。具体的には、例えば図6(c)に示すように、サーフボード1の幅方向中央部において前後にわたって貫くように補強芯材21(第一補強芯材211)を二本設けることが可能である。なお、ここでは補強芯材21として、二本の第一補強芯材211(発泡ウレタン素材)を三枚の第二補強芯材212(ガラスペーパー素材)で挟む込むような形態を示しているが、例えば図6(d)に示すように、第一補強芯材211の両側に第二補強芯材212を接着したもの(基本の実施例で述べた補強芯材21)を二本並列状に接合して、補強芯材21を構成することも可能である。因みに、その場合には、第二補強芯材212(ガラスペーパー素材)が四枚となる。
【0033】
また本明細書では、主にサーフィンのボード(サーフボード1)について説明したが、本発明の構成は、ウィンドサーフィン用のボード、ボディボード用のボード、スタンドアップパドルボート(立ち漕ぎボート)用のボード等、種々のボードへの適用が可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 サーフボード
2 コア材
3 表殻材(ガラスクロス)
4 レジン(コート処理部)
B サーフボード加工用ブランク材(ブランクス)

1 サーフボード
1D デッキ面
1B ボトム面
11 ノーズ
11R ノーズロッカー
12 テール
12R テールロッカー
13 レール
14 フィン

2 コア材
21 補強芯材
211 第一補強芯材(発泡ウレタン素材)
212 第二補強芯材(ガラスペーパー素材)
22 浮力コア材(発泡スチロール素材(EPS))
25 孔
26 シリコン
27 ガラスチューブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6