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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】自転車錠
(51)【国際特許分類】
   B62H 5/16 20060101AFI20221125BHJP
   E05B 71/00 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
B62H5/16
E05B71/00 K
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019116287
(22)【出願日】2019-06-24
(65)【公開番号】P2021000939
(43)【公開日】2021-01-07
【審査請求日】2022-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000111029
【氏名又は名称】株式会社ニッコー
(74)【代理人】
【識別番号】100119725
【弁理士】
【氏名又は名称】辻本 希世士
(74)【代理人】
【識別番号】100168790
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 英之
(72)【発明者】
【氏名】婦木 義章
(72)【発明者】
【氏名】久保 一広
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-151780(JP,A)
【文献】特開2018-131734(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0319417(US,A1)
【文献】特開2002-339626(JP,A)
【文献】特開2017-119482(JP,A)
【文献】特開2009-269470(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62H 5/16
E05B 71/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪の回転を阻止する施錠位置と前記車輪の回転阻止を解除する開錠位置とに移動自在である閂(10)と、
前記閂(10)に係合し前記施錠位置に前記閂(10)を係止する係止位置と前記閂(10)の係止を解除する非係止位置とに所定の直線(L)に沿って移動自在である係止部材(20)と、
所定の回転軸線(S)を中心として回転する回転体(31)を有し、前記係止部材(20)を前記直線(L)に沿って移動させるための移動操作として、前記回転体(31)を回転する回転操作を受付ける受付部(30)と、
前記受付部(30)に対する前記回転操作を前記係止部材(20)の直線運動に変換する変換機構(40)
とを備え、
前記回転軸線(S)に対応する第1方向ベクトル(V1)と前記係止部材(20)の前記直線運動に対応する第2方向ベクトル(V2)とが、鋭角又は鈍角で交差する、自転車錠。
【請求項2】
前記変換機構(40)は、前記回転軸線(S)に対し偏心配置され、前記係止部材(20)を駆動可能に前記係止部材(20)に係合する係合突部(41a)と、前記回転軸線(S)を中心として回動可能に前記係合突部(41a)を前記回転体(31)に支持する支持部(41b)とを有する回転レバー(41)と、前記係止部材(20)に摺接し、前記係止部材(20)の前記直線運動を案内するガイド部(42)とを有し、
前記係止部材(20)は、前記回転レバー(41)の前記係合突部(41a)に係合される被係合部(21)と、前記施錠位置に係止可能に前記閂(10)に係合する係合軸部(22)と、前記ガイド部(42)に摺接される被ガイド部(23)とを有し、
前記回転レバー(41)の前記支持部(41b)は、前記回転軸線(S)に対し傾斜し、前記係止部材(20)が前記係止位置に位置するときに、前記係止部材(20)の前記被ガイド部(23)に当接する傾斜面部(41c)を有する、請求項1に記載の自転車錠。
【請求項3】
前記傾斜面部(41c)は、前記被ガイド部(23)に対し線接触可能に、前記支持部(41b)に形成される、請求項2に記載の自転車錠。
【請求項4】
前記閂(10)が、円弧形状を有し、円弧状の移動線(L1)に沿って移動し、前記受付部(30)が、キーシリンダを含み、前記直線(L)が上下方向に沿って延びており、前記回転軸線(S)が、前記移動線(L1)を含む平面に交差する方向に延びており、前記第1方向ベクトル(V1)が、鍵(K)の差込口の向きに対応し、前記第2方向ベクトル(V2)が、前記非係止位置から前記係止位置に向かう方向に対応し、前記第1方向ベクトル(V1)と前記第2方向ベクトル(V2)とが成す角(α)が、鈍角である、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の自転車錠。
【請求項5】
前記閂(10)が、円弧形状を有し、円弧状の移動線(L1)に沿って移動し、前記受付部(30)が、キーシリンダを含み、前記回転軸線(S)が、前記移動線(L1)を含む平面に沿って延びており、前記第1方向ベクトル(V1)が、鍵(K)の差込口の向きに対応し、前記第2方向ベクトル(V2)が、前記非係止位置から前記係止位置に向かう方向に対応し、前記第1方向ベクトル(V1)と前記第2方向ベクトル(V2)とが成す角(α)が、鋭角である、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の自転車錠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自転車錠に関し、特に、自転車の車輪をロックする馬蹄錠等の自転車錠に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自転車の車輪をロックする自転車錠として、特許文献1には、円弧形状の閂と、キーシリンダとを備える自転車錠が記載されている。特許文献1に記載の自転車錠においては、閂は、車輪の回転を阻止する施錠位置と車輪の回転阻止を解除する開錠位置とに移動自在である。また、閂は、キーシリンダに連結されている係止部材によって施錠位置に係止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-31881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の自転車錠においては、キーシリンダにおける鍵の回転操作を係止部材の直線運動に変換する変換機構が必要となり、キーシリンダと係止部材との位置関係に一定の制約が生じる。そして、キーシリンダと係止部材との位置関係における制約は、製品としての自転車錠に改良を加える際の大きな障害となり得る。
【0005】
例えば、特許文献1に記載の自転車錠においては、キーシリンダにおける鍵の差込口が自転車の車輪に近接する位置に設けられており、差込口に鍵が差込まれたまま自転車が走行されると、キーホルダの飾り等が車輪に巻き込まれることがあり得る。従って、鍵の差込口を外向きに変更し、鍵の頭部を車輪から遠ざける等の改良が考えられる。
【0006】
ところが、鍵の差込口を外向きに変更すると、自転車が転倒したときに、鍵の頭部が地面に衝突し、鍵から伝わる衝撃によって、キーシリンダが損傷されることもあり得る。キーシリンダの損傷を避けるために、差込口の向きに更なる変更を加えようとするとき、キーシリンダと係止部材との位置関係における制約が障害となり得る。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、キーシリンダ、係止部材のような可動部品相互の位置関係に対する制約を解消又は軽減し、製品の改良を容易にできる自転車錠を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願に開示する自転車錠は、閂(10)と、係止部材(20)と、受付部(30)と、変換機構(40)とを備える。前記閂(10)は、車輪の回転を阻止する施錠位置と前記車輪の回転阻止を解除する開錠位置とに移動自在である。前記係止部材(20)は、前記閂(10)に係合し前記施錠位置に前記閂(10)を係止する係止位置と前記閂(10)の係止を解除する非係止位置とに所定の直線(L)に沿って移動自在である。前記受付部(30)は、回転体(31)を有し、前記係止部材(20)を移動するための移動操作として、前記回転体(31)を回転する回転操作を受付ける。前記回転体(31)は、所定の回転軸線(S)を中心として回転する。前記変換機構(40)は、前記受付部(30)に対する前記回転操作を前記係止部材(20)の直線運動に変換する。そして、前記回転軸線(S)に対応する第1方向ベクトル(V1)と前記係止部材(20)の前記直線運動に対応する第2方向ベクトル(V2)とが、鋭角又は鈍角で交差する。
【0009】
本願に開示する自転車錠において、前記変換機構(40)は、回転レバー(41)と、ガイド部(42)とを有する。前記回転レバー(41)は、係合突部(41a)と、支持部(41b)とを有する。前記係合突部(41a)は、前記回転軸線(S)に対し偏心配置され、前記係止部材(20)を駆動可能に前記係止部材(20)に係合する。前記支持部(41b)は、前記回転軸線(S)を中心として回動可能に前記係合突部(41a)を前記回転体(31)に支持する。前記ガイド部(42)は、前記係止部材(20)に摺接し、前記係止部材(20)の前記直線運動を案内する。前記係止部材(20)は、被係合部(21)と、係合軸部(22)と、被ガイド部(23)とを有する。前記被係合部(21)は、前記回転レバー(41)の前記係合突部(41a)に係合される。前記係合軸部(22)は、前記閂(10)を前記施錠位置に係止可能に前記閂(10)に係合する。前記被ガイド部(23)は、前記変換機構40の前記ガイド部(42)に摺接される。そして、前記回転レバー(41)の前記支持部(41b)は、前記回転軸線(S)に対し傾斜する傾斜面部(41c)を有する。前記傾斜面部(41c)は、前記係止部材(20)が前記係止位置に位置するときに、前記被ガイド部(23)に当接する。
【0010】
また、本願に開示する自転車錠において、前記回転レバー(41)の前記傾斜面部(41c)は、前記係止部材(20)の前記被ガイド部(23)に対し線接触可能に、前記支持部(41b)に形成される。
【0011】
また、本願に開示する自転車錠においては、前記閂(10)が、円弧形状を有し、円弧状の移動線(L1)に沿って移動し、前記受付部(30)が、キーシリンダを含み、前記直線(L)が上下方向に沿って延びており、前記回転軸線(S)が、前記移動線(L1)を含む平面に交差する方向に延びており、前記第1方向ベクトル(V1)が、鍵(K)の差込口の向きに対応し、前記第2方向ベクトル(V2)が、前記非係止位置から前記係止位置に向かう方向に対応し、前記第1方向ベクトル(V1)と前記第2方向ベクトル(V2)とが成す角(α)が、鈍角である。
【0012】
また、本願に開示する自転車錠においては、前記閂(10)が、円弧形状を有し、円弧状の移動線(L1)に沿って移動し、前記受付部(30)が、キーシリンダを含み、前記回転軸線(S)が、前記移動線(L1)を含む平面に沿って延びており、前記第1方向ベクトル(V1)が、鍵(K)の差込口の向きに対応し、前記第2方向ベクトル(V2)が、前記非係止位置から前記係止位置に向かう方向に対応し、前記第1方向ベクトル(V1)と前記第2方向ベクトル(V2)とが成す角(α)が、鋭角である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の自転車錠によれば、可動部品相互の位置関係に対する制約を解消又は軽減し、製品の改良を容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る自転車錠を示す分解斜視図である。
図2】(a)は、施錠状態における図1の自転車錠を示す正面図である。(b)は、図2(a)のB-B線断面図である。
図3】(a)は、開錠状態における図1の自転車錠を示す正面図である。(b)は、図3(a)のC-C線断面図である。
図4図1のA矢視図である。
図5】本発明の他の実施形態に係る自転車錠を示す分解斜視図である。
図6】(a)は、施錠状態における図5の自転車錠を示す正面図である。(b)は、図6(a)のD-D線断面図である。
図7】(a)は、開錠状態における図5の自転車錠を示す正面図である。(b)は、図7(a)のE-E線断面図である。
図8】従来の自転車錠を示す写真図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態に係る自転車錠を図面に基づいて詳しく説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施するのに好ましい具体例であるから、技術的に種々の限定がなされているが、本発明は、以下の説明において特に発明を限定する旨が明記されていない限り、この実施形態に限定されるものではない。
【0016】
〈実施形態〉
図1図4を参照して、本発明の実施形態に係る自転車錠を説明する。図1は、本発明の実施形態に係る自転車錠を示す分解斜視図である。図2(a)は、施錠状態における図1の自転車錠を示す正面図である。図2(b)は、図2(a)のB-B線断面図である。図3(a)は、開錠状態における図1の自転車錠を示す正面図である。図3(b)は、図3(a)のC-C線断面図である。図4は、図1のA矢視図である。
【0017】
図1に示すように、本実施形態に係る自転車錠1は、閂10と、係止部材20と、受付部30と、変換機構40と、馬蹄形皿状のケース50と、蓋板60とを備える。
【0018】
図2図3に示すように、閂10は、自転車の車輪の回転を阻止する施錠位置(図2参照)と車輪の回転阻止を解除する開錠位置(図3参照)とに移動自在である。実施形態においては、閂10は、円弧形状を有し、ケース50の内部に形成されている円弧状のガイド溝51によって案内され、円弧状の移動線L1に沿って移動する。また、閂10は、係止部材20に係合される被係合溝11を有する。
【0019】
ケース50は、図1図3に示すように、馬蹄形状の中央部側を上側とし、馬蹄形状の両端部側を下側とし、自転車の後輪に対し取付けられる。また、ケース50は、略同一の輪郭形状を有する蓋板60との間に、閂10等の各部材を収容する収容空間を形成する。閂10の移動線L1は、蓋板60における収容空間側の表面と平行である。すなわち、移動線L1は、蓋板60における収容空間側の表面と平行である平面に含まれる。
【0020】
ガイド溝51は、一端部51a及び他端部51bが開口している。一端部51aと他端部51bとは、自転車のタイヤ幅よりも大きい所定の間隔をあけて対向している。図2に示すように、閂10が施錠位置にあるとき、閂10は、ガイド溝51の一端部51aと他端部51bとの間に掛け渡された状態となる。また、図3に示すように、閂10が開錠位置にあるとき、閂10の略全体がケース50の内部に位置し、一端部51aと他端部51bとの間の空間は開放された状態となる。
【0021】
また、図1に示すように、閂10には摘み軸10aが設けられており、摘み軸10aには、摘み12が取付けられる。摘み12は、閂10を開錠位置から施錠位置に移動する操作を受付ける。閂10が開錠位置から施錠位置に移動されると、閂10は、車輪の側方からスポークの間に差し込まれ、車輪の回転を阻止する。また、閂10は、閂バネ13によって、開錠位置に向かって付勢されている。
【0022】
係止部材20は、図2図3に示すように、閂10に係合し施錠位置に閂10を係止する係止位置(図2参照)と閂10の係止を解除する非係止位置(図3参照)とに所定の直線Lに沿って移動自在である。係止位置においては、係止部材20は、閂10の被係合溝11に係合する。また、係止部材20は、係止バネ24によって、係止位置に向かって付勢されており、閂10が開錠位置から施錠位置に移動されると、係止部材20は、係止バネ24の付勢力によって自動的に係止位置に移動し、被係合溝11に係合する。
【0023】
受付部30は、図4に示すように、回転体31を有し、係止部材20を直線Lに沿って移動させるための移動操作として、回転体31を回転する回転操作を受付ける。回転体31は、所定の回転軸線Sを中心として回転する。実施形態においては、受付部30は、キーシリンダであり、スペーサ52の嵌合部52aに嵌合され、スペーサ52に保持され、ケース50に取付けられる。
【0024】
回転体31は、鍵Kの差込口を有するシリンダであり、施錠状態と解錠状態との間で回転可能であり、係止部材20の直線運動と連動して回転する。すなわち、閂10が施錠位置に移動され、係止部材20が係止位置に移動するとき、回転体31は施錠状態に回転され、受付部30を構成するキーシリンダが施錠され、鍵Kは、抜き差し可能となる。鍵Kによって回転体31が解錠状態に回転されると、係止部材20が非係止位置に移動し、閂10が開錠位置に移動し、鍵Kは、引き抜き不能となる。なお、鍵Kは、回転体31が解錠状態であるときにおいても、抜き差し可能としてよい。
【0025】
また、実施形態においては、図1に示すように、受付部30は、ケース50の上端部近傍に配設され、回転体31の回転軸線Sは、閂10の移動線L1を含む平面に対し斜めに交差し、鍵Kの差込口は閂10の移動線L1を含む平面に対し斜め上に向いている。
【0026】
変換機構40は、受付部30に対する回転操作を係止部材20の直線運動に変換する。また、上述したとおり、変換機構40は、係止部材20の直線運動を回転体31の回転運動に変換する。そして、図4に示すように、回転軸線Sに対応する第1方向ベクトルV1と係止部材20の直線運動に対応する第2方向ベクトルV2、すなわち直線Lに対応する第2方向ベクトルV2とは、鋭角又は鈍角である角αで交差する。実施形態においては、第1方向ベクトルV1は、鍵Kの差込口の向きに対応し、第2方向ベクトルV2は、非係止位置から係止位置に向かう方向に対応する。
【0027】
以上、図1図4を参照して説明したように、本実施形態の自転車錠によれば、回転軸線Sに対応する第1方向ベクトルV1と係止部材20の直線運動に対応する第2方向ベクトルV2とが鋭角又は鈍角である角αで交差する。従って、受付部30に対する回転操作の中心線である回転軸線Sを係止部材20における直線運動に沿った直線Lに対し傾けることができ、可動部品相互の位置関係に対する制約を解消又は軽減し、製品としての自転車錠の改良を容易にできる。
【0028】
例えば、特許文献1に示されているように、従来の自転車錠においては、受付部としてのキーシリンダの回転軸線と係止部材の直線運動の方向とが直交しており、キーシリンダにおける鍵の差込口の向きは、円弧状の閂の移動線を含む平面に対し直交する方向に限定されている。従って、図8に示すように、従来の自転車錠100を自転車における後輪の中心より後方に設置すると、キーシリンダにおける鍵の差込口の向き(一点鎖線S1に対応する方向)が水平方向より下向きとなり、差込口が視認しづらく、鍵を差し込みにくくなるのに対し、本実施形態の自転車錠1によれば、角αを適宜の角度に設定することによって、キーシリンダにおける鍵の差込口の向きを水平方向又は水平方向よりも上向きにすることができ、鍵Kが差し込みやすくするように、製品としての自転車錠の改良を容易にできる。
【0029】
また、図1~4に示されているように、実施形態の自転車錠1においては、閂10が、円弧形状を有し、円弧状の移動線L1に沿って移動し、受付部30が、キーシリンダを含み、直線Lが上下方向に沿って延びており、回転軸線Sが、移動線L1を含む平面に交差する方向に延びており、第1方向ベクトルV1が、鍵Kの差込口の向きに対応し、第2方向ベクトルV2が、非係止位置から係止位置に向かう方向に対応し、第1方向ベクトルV1と第2方向ベクトルV2とが成す角αが、鈍角である。従って、キーシリンダにおける鍵の差込口の向きを水平方向又は水平方向よりも上向きにすることができ、鍵Kが差し込みやすくするように、製品としての自転車錠の改良を容易にできる。なお、直線Lは、必ずしも上下方向に平行である必要はなく、例えば45度以内の角度で上下方向に対し傾いていてもよい。
【0030】
また、特許文献1に記載の自転車錠においては、キーシリンダの設置位置が自転車錠の下端部にあり、鍵の差込口が車輪に近接しており、キーホルダの飾り等が車輪に巻き込まれやすいのに対し、本実施形態の自転車錠1によれば、図1図3に示すように、キーシリンダである受付部30が、自転車錠1における上端部の近傍に設置され、鍵Kの差込口と車輪との間に一定の距離を空けることが容易である。従って、鍵Kが差込口に差し込まれたまま自転車が走行されても、キーホルダの飾り等が車輪に巻き込まれることを防止でき、自転車の走行が妨げられることを防止できる。
【0031】
次に、図1図4を参照して、本発明の他の実施形態を説明する。本実施形態においては、変換機構40は、回転レバー41と、ガイド部42とを有する。回転レバー41は、係合突部41aと、支持部41bとを有し、回転体31と一体的に回転する。係合突部41aは、回転軸線Sに対し偏心配置され、係止部材20を駆動可能に係止部材20に係合する。支持部41bは、回転体31に嵌合する嵌合部を有しており、回転軸線Sを中心として回動可能に係合突部41aを回転体31に支持する。また、支持部41bは、回転軸線Sに沿って見たとき、輪郭形状は円形となっており、係合突部41aは、支持部41bの輪郭円周に内側から接するように配設される。ガイド部42は、係止部材20に摺接し、係止部材20の直線運動を案内する。
【0032】
実施形態においては、回転レバー41の係合突部41aは、先端部が斜めにカットされた丸棒状の部材であり、回転軸線Sと平行に延びている。係合突部41aの先端部が斜めにカットされている理由は、回転体31が施錠状態又は解錠状態に回転されるときに、係合突部41aの先端部が他部材に干渉することを避けるためである。また、支持部41bは、回転軸線Sに対し傾斜する傾斜面部41cを有する。傾斜面部41cは、係止部材20に摺接する。また、傾斜面部41cは、支持部41bにおける中心側が外周側より高い山形を成すように傾斜の向きが設定される。傾斜面部41cが設けられることにより、回転レバー41は、支持部41bに円錐状又は円錐台状の隆起が形成されることとなり、そして、その傾斜面部41cの一部より係合突部41aが突設される。
【0033】
また、係止部材20は、被係合部21と、係合軸部22と、被ガイド部23とを有する。被係合部21は、回転レバー41の係合突部41aに係合される。実施形態においては、被係合部21は、回転軸線Sに沿って延びる溝状であり、被係合部21が延びる方向における両端部のうち、少なくとも回転レバー41側の端部は開口している。係合突部41aは、被係合部21における回転レバー41側の端部開口を介し被係合部21に差込まれている。
【0034】
係合軸部22は、閂10を施錠位置に係止可能に閂10に係合する。実施形態においては、係合軸部22は、閂10の被係合溝11に係合する。被ガイド部23は、ガイド部42に摺接される。被ガイド部23が、ガイド部42に摺接されることによって、係止部材20の直線運動がガイドされる。そして、回転レバー41の傾斜面部41cは、係止部材20が係止位置に位置するとき、被ガイド部23に当接する。
【0035】
以上、図1図4を参照して説明したように、本実施形態の自転車錠によれば、係止部材20を駆動する回転レバー41が、係止部材20が係止位置に位置するときに被ガイド部23に当接する傾斜面部41cを有している。従って、係止部材20が施錠位置に閂10を係止しているときに、係止部材20の姿勢を安定的に維持することができ、例えば自転車錠の施錠状態において閂10に外力が加わったときに、直線Lに対し係止部材20が傾いてしまい、閂10と係止部材20との係合が解除され、自転車錠が外力によって開錠されることを防止できる。
【0036】
すなわち、特許文献1に示されている従来の自転車錠においては、キーシリンダの回転軸線と係止部材の移動方向とが直交していることから、回転レバーにおける円板状の支持部が係止部材に常に当接し、係止部材の姿勢は安定的に維持される。本実施形態の自転車錠においては、回転軸線Sと直線Lとが直交しておらず、斜めに交差している。従って、支持部41bが単なる円板状であると、支持部41bが係止部材20に当接せず、係止部材20の姿勢を安定的に維持することが困難になることもあり得る。本実施形態の自転車錠によれば、支持部41bに傾斜面部41cが形成されており、係止部材20が係止位置に位置するときに、傾斜面部41cが係止部材20の被ガイド部23に当接する。従って、係止部材20の姿勢を安定的に維持でき、自転車錠における施錠状態を安定的に維持できる。
【0037】
また、本実施形態においては、図2図3に示すように、傾斜面部41cは、被ガイド部23に対し線接触可能に、支持部41bに形成されている。傾斜面部41cが被ガイド部23に対し線接触可能であることによって、係止部材20の姿勢をより安定的に維持でき、自転車錠における施錠状態をより安定的に維持できる。なお、傾斜面部41cが、被ガイド部23に対し線接触可能であることは必須ではなく、傾斜面部41cは、被ガイド部23に対し点接触可能に、支持部41bに形成されてもよい。すなわち、傾斜面部41cは、支持部41bの中心側に向かうに連れて、傾斜が緩やかになるように形成されてもよい。
【0038】
次に、図5図7を参照して、本発明の更に他の実施形態を説明する。図5は、本発明の他の実施形態に係る自転車錠を示す分解斜視図である。図6(a)は、施錠状態における図5の自転車錠を示す正面図である。図6(b)は、図6(a)のD-D線断面図である。図7(a)は、開錠状態における図5の自転車錠を示す正面図である。図7(b)は、図7(a)のE-E線断面図である。
【0039】
図5図7に示すように、本実施形態の自転車錠1Aは、受付部30が、ケース50における下端部の近傍に配設され、回転軸線Sが、閂10の移動線L1を含む平面に沿って延びており、角αが、鋭角である点において、図1の自転車錠1とは異なる。それ以外の点は、自転車錠1Aは、図1の自転車錠1と同様である。
【0040】
以上、図5図7を参照して説明したように、本実施形態の自転車錠においては、閂10が、円弧形状を有し、円弧状の移動線L1に沿って移動し、受付部30が、キーシリンダを含み、回転軸線Sが、移動線L1を含む平面に沿って延びており、第1方向ベクトルV1が、鍵Kの差込口の向きに対応し、第2方向ベクトルV2が、非係止位置から係止位置に向かう方向に対応し、第1方向ベクトルV1と第2方向ベクトルV2とが成す角αが、鋭角である。従って、図6に示すように、自転車錠1Aの施錠状態において、鍵Kの頭部が、ケース50の側端部50aよりも側方に突出しないように自転車錠を設計することが容易になり、鍵Kがキーシリンダに差し込まれたまま自転車が転倒しても、鍵Kの頭部が地面に衝突することを防止でき、受付部30が損傷されることを防止できる。
【0041】
以上、図面(図1図8)を参照しながら本発明の実施形態を説明した。但し、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である。
【符号の説明】
【0042】
1、1A…自転車錠
L…直線
S…回動軸線
V1…第1方向ベクトル
V2…第2方向ベクトル
10…閂
20…係止部材
21…被係合部
22…係合軸部
23…被ガイド部
30…受付部
31…回転体
40…変換機構
41…回転レバー
41a…係合突部
41b…支持部
41c…傾斜面部
42…ガイド部
50…ケース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8