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特許7182289β-ニコチネートエステルヌクレオチドおよびその調製プロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】β-ニコチネートエステルヌクレオチドおよびその調製プロセス
(51)【国際特許分類】
   C07H 19/048 20060101AFI20221125BHJP
   C07F 9/6558 20060101ALI20221125BHJP
   A61K 31/706 20060101ALI20221125BHJP
   A61P 3/02 20060101ALI20221125BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20221125BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20221125BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20221125BHJP
   A61P 27/16 20060101ALI20221125BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
C07H19/048 CSP
C07F9/6558
A61K31/706
A61P3/02
A61P3/06
A61P9/00
A61P25/00
A61P27/16
A61P43/00 107
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019555021
(86)(22)【出願日】2018-04-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-11
(86)【国際出願番号】 US2018026209
(87)【国際公開番号】W WO2018187540
(87)【国際公開日】2018-10-11
【審査請求日】2021-04-02
(31)【優先権主張番号】62/481,912
(32)【優先日】2017-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508065732
【氏名又は名称】コーネル ユニヴァーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(72)【発明者】
【氏名】ソーヴ、アンソニー エー.
【審査官】神谷 昌克
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0035539(US,A1)
【文献】Bulletin of the Chemical Soceity of Japan ,1969年,Vol.42,pp.3505-3508,DOI:10.1246/bcsj.42.3505
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07H
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

式中、Rは、直鎖または分枝鎖C3-C20アルキル、直鎖または分枝鎖C3-C20アルケニル、C3-C20アルキニル、C3-C20シクロアルキル、C6-C10アリール、C3-C20ヘテロシクリル、またはC5-C10ヘテロアリールである、
の化合物またはその塩の調製プロセスであって、
式(III):
【化2】

の化合物をPOCl3およびPO(OR5)3(式中、R5はC1-C6アルキルである)の混合物と反応させ、続いて水で処理して式(I)の化合物を形成する工程を含む、調製プロセス。
【請求項2】
Rが直鎖C3-C20アルキルまたは分枝鎖C 3 -C 20 アルキルである請求項1のプロセス。
【請求項3】
式(III)の化合物が、式(II):
【化3】

式中、R’はメチルまたはエチルである、
の化合物を塩基存在下、溶媒中で式ROHの化合物と反応させて式(III)の化合物を形成することによって調製される請求項1のプロセス。
【請求項4】
式(III)の化合物が、ニコチネートエステル(IV):
【化4】

式中、Rは分枝鎖C 3 -C 20 アルキルである、
を1,2,3,4-テトラ-O-アセチル-D-リボフラノースと反応させて式(V):
【化5】

の化合物を提供し、そして式(V)の化合物を塩基と反応させて式(III)の化合物を形成することによって調製される請求項1のプロセス。
【請求項5】
式(I):
【化6】

式中、Rは直鎖または分枝鎖C3-C20アルキル、直鎖または分枝鎖C2-C20アルケニル、C2-C20アルキニル、C3-C20シクロアルキル、C6-C10アリール、C3-C20ヘテロシクリル、またはC5-C10ヘテロアリールである、
の化合物またはその塩。
【請求項6】
Rがn-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、2,2-ジメチルプロピル、3-メチルブチル、イソプロピル、1,1-ジメチルプロピル、またはt-ブチルである請求項の化合物または塩。
【請求項7】
請求項5または6の化合物または塩および薬学的に受容可能な担体を含有する医薬組成物。
【請求項8】
請求項5または6の化合物または塩を含有する栄養補助組成物。
【請求項9】
請求項5または6の化合物または塩を含む細胞NAD+産生を増加させるための医薬製剤であって、該細胞が哺乳動物中のものであり、該化合物が、代謝系の機能の促進、筋肉機能または回復の促進、聴覚系の機能の促進、または認知機能の促進に有効であり、および該細胞が、脂質疾患、代謝機能不全、心血管疾患、CNSまたはPNS外傷、神経変性疾患または状態、または聴力損失を有する哺乳動物中のもの、または毒物に曝露された哺乳動物中のものである、医薬製剤
【請求項10】
請求項5または6の化合物または塩を含む細胞中のミトコンドリア密度を改善するための医薬製剤であって、該細胞が哺乳動物中のものであり、該化合物が、代謝系の機能の促進、筋肉機能または回復の促進、聴覚系の機能の促進、または認知機能の促進に有効であり、および該細胞が、脂質疾患、代謝機能不全、心血管疾患、CNSまたはPNS外傷、神経変性疾患または状態、または聴力損失を有する哺乳動物中のもの、または毒物に曝露された哺乳動物中のものである、医薬製剤
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許願は、2017年4月5日出願の米国特許仮出願62/481,912の利益を主張し、全ての目的について参考として援用される。
発明の背景
ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)は、ADP-リボシル化およびタンパク質脱アセチル化を含むいくつかの生物学的経路および生化学的反応において、および多くの酵素のための必須の酸化還元補因子として重要な補酵素および基質である。代謝におけるNADの関与は、それを加齢、アポトーシス、DNA修復、転写制御、および免疫応答などのいくつかの生物学的過程における重要な代謝産物にする。
【0002】
NADは、いくつかのサルベージ経路(ニコチンアミド(Nam)、ニコチン酸(NA)、およびニコチンアミドリボシド(NR))において、およびトリプトファンからの新生経路において、ピリジン部分を含む異なる前駆体から合成され得る。多くの非哺乳動物有機体は、ニコチン酸(ビタミンB3の形態)を主要なNAD前駆体として使用する。哺乳動物は、ニコチンアミド(ビタミンB3の別の形態)をNAD生合成のために主として使用する。細菌および酵母において、Namは酵素ニコチンアミダーゼによってNAに変換されるが、この酵素は哺乳動物ゲノムにおいてコードされない。
【0003】
細胞NAD消費は高く、そしてNADの細胞レベルにおける変化は、健康および癌、糖尿病、神経変性疾患、および自己免疫疾患などの疾患において重要な役割を果たす。NADの持続する再生利用は、細胞酵素の活性を維持するために極めて重要である。哺乳動物、特にヒトにおいて、細胞NADの主要なソースは、サルベージ経路からであり、これは食事からのまたは代謝後の細胞内再使用を介してのNAD前駆体(すなわち、NAM、NA、ニコチネートモノヌクレオチド(NaMN)、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)、およびニコチンアミドリボシド(NR))の摂取または代謝を必要とする。これらの前駆体の効率的な化学合成は、需要が高い。U.S.特許8,106,184は、ニコチン酸リボシドのエステル誘導体およびそれらのヒーラ細胞における細胞内NADを増加させる能力を記載する。従って、ニコチネートエステルリボシドの立体異性的に純粋な5’-ホスフェートは、増加したNADレベルから利益を得るであろう疾患または障害(インスリン耐性、肥満、糖尿病、およびメタボリック症候群を含む)を治療するのに有効であり得る。ニコチネートエステルリボシドの5’-ホスフェートへの効率的な合成経路を得、そしてNADへの前駆体としてのそれらの有用性のためにそのような化合物を評価する必要がある。
【0004】
対応するリボシドからの5’-リボシド(ribotides)の合成のための一般的に実施される方法は、保護および脱保護戦略を採用し、これは2級アルコールの保護、続く5’-ヒドロキシ基のリン酸化、次いで2級アルコールの脱保護を含む。この戦略は、時間、費用、および特に収率の点で非効率である。
【0005】
従って、当該分野においてニコチネートエステルリボシドの5’-ホスフェートの効率的な合成の要求が残っている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の簡単な要旨
本発明は、式(I):
【0007】
【化1】
【0008】
式中、Rは、直鎖または分枝鎖C3-C20アルキル、直鎖または分枝鎖C3-C20アルケニル、C3-C20アルキニル、C3-C20シクロアルキル、C6-C10アリール、C3-C20ヘテロシクリル、またはC5-C10ヘテロアリールである、
の化合物またはその塩の調製プロセスであって、
式(III):
【0009】
【化2】
【0010】
の化合物をPOCl3およびPO(OR5)3(式中、R5はC1-C6アルキルである)の混合物と反応させ、続いて水で処理して式(I)の化合物を形成する工程を含む、調製プロセスを提供する。
【0011】
本発明はまた、式(I):
【0012】
【化3】
【0013】
式中、Rは直鎖または分枝鎖C3-C20アルキル、直鎖または分枝鎖C3-C20アルケニル、C3-C20アルキニル、C3-C20シクロアルキル、C6-C10アリール、C3-C20ヘテロシクリルまたはC5-C10ヘテロアリールである、
の化合物またはその塩の調製であって、
(i)式(II):
【0014】
【化4】
【0015】
式中、R’はメチルまたはエチルである、
の化合物を塩基存在下、溶媒中で式ROHの化合物と反応させて式(III):
【0016】
【化5】
【0017】
の化合物を形成する工程、および
(ii)式(III)の化合物をPOCl3およびPO(OR5)3(式中、R5はC1-C6アルキルである)の混合物と反応させ、続いて水で処理して式(I)の化合物を形成する工程を含む、調製を提供する。
【0018】
本発明はさらに、式(I):
【0019】
【化6】
【0020】
式中、Rは直鎖または分枝鎖C3-C20アルキル、直鎖または分枝鎖C3-C20アルケニル、C3-C20アルキニル、C3-C20シクロアルキル、C6-C10アリール、C3-C20ヘテロシクリルまたはC5-C10ヘテロアリールである、
の化合物またはその塩の調製プロセスであって、
(i)ニコチネートエステル(IV):
【0021】
【化7】
【0022】
を1,2,3,4-テトラ-O-アセチル-D-リボフラノースと反応させて式(V):
【0023】
【化8】
【0024】
の化合物を提供する工程、
(ii)式(V)の化合物を塩基と反応させて式(III):
【0025】
【化9】
【0026】
の化合物を形成する工程、および
(ii)式(III)の化合物をPOCl3およびPO(OR5)3(式中、R5はC1-C6アルキルである)の混合物と反応させ、続いて水で処理して式(I)の化合物を形成する工程を含む、調製プロセスを提供する。
【0027】
本発明はさらに、式(I):
【0028】
【化10】
【0029】
式中、Rは直鎖または分枝鎖C3-C20アルキル、直鎖または分枝鎖C2-C20アルケニル、C2-C20アルキニル、C3-C20シクロアルキル、C6-C10アリール、C3-C20ヘテロシクリル、またはC5-C10ヘテロアリールである、の化合物またはその塩、ならびに、前述の化合物またはその塩および薬学的に受容可能な担体を含有する医薬組成物、および前述の化合物またはその塩を含有する栄養補助組成物を提供する。さらに、本発明は、前述の化合物またはその塩を細胞に投与することを含む細胞NAD+産生を増加させる方法、および前述の化合物またはその塩を細胞に投与することを含む細胞中のミトコンドリア密度を改善する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は化合物5aの1H NMRスペクトルである。
図2図2は化合物5aの13C NMRスペクトルである。
図3図3は化合物5aの31P NMRスペクトルである。
図4図4はNaMNおよびNRで治療したHEK293およびNeuro2a細胞におけるNADの細胞内レベルに対する効果を示す棒グラフである。
図5図5A-5Eは、それぞれ500 mg/kgの化合物5f、500 mg/kgのニコチンアミドリボシドの投与4h後のマウス、およびコントロールにおける肝臓(図5A)、腎臓(図5B)、脳(図5C)、筋肉(図5D)、および心臓(図5E)におけるNAD+レベルを示す棒グラフである。
図6図6A-6Cは、それぞれ500 mg/kgの化合物5f、500 mg/kgのニコチンアミドリボシドの投与後1h(図6A)、2h(図6B)、および4h(図6C)のマウス、およびコントロールにおけるNAD+血中レベルを示す。
図7図7A-7Eは、それぞれ750 mg/kgの化合物5d、750 mg/kgの化合物5c、750 mg/kgのニコチンアミドリボシドの投与4h後のマウス、およびコントロールにおける、肝臓(図7A)、腎臓(図7B)、脳(図7C)、筋肉(図7D)、および心臓(図7E)におけるNAD+レベルを示す。
図8図8A-8Dは、それぞれ750 mg/kgの化合物5a、750 mg/kgの化合物5g、750 mg/kgのニコチンアミドリボシドの投与4h後のマウス、およびコントロールにおける、肝臓(図8A)、腎臓(図8B)、脳(図8C)、および筋肉(図8D)におけるNAD+レベルを示す。
図9図9A-9Dは、それぞれ750 mg/kgの化合物5h、750 mg/kgの化合物5i、750 mg/kgのニコチンアミドリボシドの投与4h後のマウス、およびコントロールにおける、肝臓(図9A)、腎臓(図9B)、脳(図9C)、および筋肉(図9D)におけるNAD+レベルを示す。
図10図10A-10Dは、それぞれ750 mg/kgの化合物5j、750 mg/kgの化合物5k、750 mg/kgのニコチンアミドリボシドの投与4h後のマウス、およびコントロールにおける、肝臓(図10A)、腎臓(図10B)、脳(図10C)、および筋肉(図10D)におけるNAD+レベルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
発明の詳細な説明
実施態様において、本発明は、式(I):
【0032】
【化11】
【0033】
式中、Rは、直鎖または分枝鎖C3-C20アルキル、直鎖または分枝鎖C3-C20アルケニル、C3-C20アルキニル、C3-C20シクロアルキル、C6-C10アリール、C3-C20ヘテロシクリル、またはC5-C10ヘテロアリールである、
の化合物またはその塩の調製プロセスであって、
式(III):
【0034】
【化12】
【0035】
の化合物をPOCl3およびPO(OR5)3(式中、R5はC1-C6アルキルである)の混合物と反応させ、続いて水で処理して式(I)の化合物を形成する工程を含む、調製プロセスを提供する。
【0036】
ある実施態様において、Rは直鎖C3-C20アルキルである。ある好ましい実施態様において、Rはn-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、またはn-オクチルである。特定の実施態様において、Rはn-プロピルである。
【0037】
ある実施態様において、Rは分枝鎖C3-C20アルキルである。ある好ましい実施態様において、Rは2,2-ジメチルプロピル、3-メチルブチル、イソプロピル、1,1-ジメチルプロピル、またはt-ブチルである。
【0038】
実施態様において、R5はエチルである。
【0039】
実施態様において、式(III)の化合物は、式(II):
【0040】
【化13】
【0041】
式中、R’はメチルまたはエチルである、
の化合物を塩基存在下、溶媒中で式ROHの化合物と反応させて式(III)の化合物を形成することによって調製される。
【0042】
実施態様において、塩基はカリウムt-ブトキシドである。
【0043】
実施態様において、溶媒はROHである。
【0044】
これらの実施態様のいくつかにおいて、Rはn-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、またはn-オクチルである。
【0045】
実施態様において、溶媒は2,2,2-トリフルオロエタノールをさらに含む。
【0046】
ある実施態様において、式(III)の化合物は、ニコチネートエステル(IV):
【0047】
【化14】
【0048】
を1,2,3,4-テトラ-O-アセチル-D-リボフラノースと反応させて式(V):
【0049】
【化15】
【0050】
の化合物を提供し、そして式(V)の化合物を塩基と反応させて式(III)の化合物を形成することによって調製される。
【0051】
これらの実施態様のいくつかにおいて、Rは分枝鎖C3-C20アルキルである。ある好ましい実施態様において、Rは2,2-ジメチルプロピル、3-メチルブチル、イソプロピル、1,1-ジメチルプロピル、またはt-ブチルである。
【0052】
実施態様において、本発明は、式(I):
【0053】
【化16】
【0054】
式中、Rは直鎖または分枝鎖C3-C20アルキル、直鎖または分枝鎖C3-C20アルケニル、C3-C20アルキニル、C3-C20シクロアルキル、C6-C10アリール、C3-C20ヘテロシクリルまたはC5-C10ヘテロアリールである、
の化合物またはその塩の調製プロセスであって、
(i)式(II):
【0055】
【化17】
【0056】
式中、R’はメチルまたはエチルである、
の化合物を塩基存在下、溶媒中で式ROHの化合物と反応させて式(III):
【0057】
【化18】
【0058】
の化合物を形成する工程、および
(ii)式(III)の化合物をPOCl3およびPO(OR5)3(式中、R5はC1-C6アルキルである)の混合物と反応させ、続いて水で処理して式(I)の化合物を形成する工程を含む、調製プロセスを提供する。
【0059】
ある実施態様において、Rは直鎖C3-C20アルキルである。ある好ましい実施態様において、Rはn-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、またはn-オクチルである。
【0060】
これらの実施態様のいくつかにおいて、R5はエチルである。
【0061】
ある好ましい実施態様において、塩基はカリウムt-ブトキシドである。
【0062】
ある好ましい実施態様において、溶媒はROHである。
【0063】
ある実施態様において、溶媒は2,2,2-トリフルオロエタノールを含む。
【0064】
別の実施態様において、本発明は、式(I):
【0065】
【化19】
【0066】
式中、Rは直鎖または分枝鎖C3-C20アルキル、直鎖または分枝鎖C3-C20アルケニル、C3-C20アルキニル、C3-C20シクロアルキル、C6-C10アリール、C3-C20ヘテロシクリルまたはC5-C10ヘテロアリールである、
の化合物またはその塩の調製プロセスであって、
(i)ニコチネートエステル(IV):
【0067】
【化20】
【0068】
を1,2,3,4-テトラ-O-アセチル-D-リボフラノースと反応させて式(V):
【0069】
【化21】
【0070】
の化合物を提供する工程、
(ii)式(V)の化合物を塩基と反応させて式(III):
【0071】
【化22】
【0072】
の化合物を形成する工程、および
(ii)式(III)の化合物をPOCl3およびPO(OR5)3(式中、R5はC1-C6アルキルである)の混合物と反応させ、続いて水で処理して式(I)の化合物を形成する工程を含む、調製プロセスを提供する。
【0073】
ある実施態様において、Rは分枝鎖C3-C20アルキルである。ある好ましい実施態様において、Rは2,2-ジメチルプロピル、3-メチルブチル、イソプロピル、1,1-ジメチルプロピル、またはt-ブチルである。
【0074】
実施態様において、式(I)の化合物はスキーム1に示すように合成することができる。
スキーム1
【0075】
【化23】
【0076】
試薬および条件:(i)カリウムtert-ブトキシド(2.0 eq)、CF3CH2OH(2.0 eq)および対応するアルコール、-20℃、16 h、(ii)POCl3(2.5 eq)、PO(OC2H5)3、0℃、12 h。
【0077】
X-がアニオンである化合物6は、塩基存在下、アルコールROHとエステル交換して化合物4(すなわち、式(III)の化合物)を提供する。塩基は任意の適切な塩基であり得る。例えば、塩基は、アルコールROHの塩(例えば、ナトリウム、カリウム、またはセシウム塩)、水素化ナトリウム、水素化カリウム、アルコールR”OHの塩(ここで、R”OHはROHとは異なる)、有機リチウム化合物、有機マグネシウム化合物、3級アミン(例えば、ヒューニッヒ塩基)、アルカリまたはアルカリ土類金属炭酸塩などであり得る。実施態様において、塩基はカリウムtert-ブトキシドである。塩基は任意の適切な量で存在し得る。実施態様において、塩基は、化合物6の量に基づいて2.0当量の量で存在する。
【0078】
溶媒は任意の適切な溶媒であり得る。例えば、溶媒はROH(すなわち、反応に関与する同じ化合物)、テトラヒドロフラン、ジオキサン、DMF、DMSOなどであり得る。好ましい実施態様において、溶媒はROHである。
【0079】
実施態様において、溶媒は2,2,2-トリフルオロエタノールをさらに含む。2,2,2-トリフルオロエタノールは任意の適切な量で存在し得る。実施態様において、2,2,2-トリフルオロエタノールは、化合物6の量に基づいて2.0当量の量で存在する。
【0080】
化合物がアニオンを有することなくカチオンとして示される場合、カチオン上の正電荷は任意の適切なアニオンまたは負電荷を有するアニオン性成分によってカウンター化され得ることが理解されるであろう。アニオンは、限定されず、任意の適切な有機、無機、またはポリマー性アニオンであり得る。実施態様において、アニオンはトリフルオロメタンスルホネートである。
【0081】
化合物4は、任意の適切な条件を用いてリン酸化され得る。好ましくは、化合物4は、オキシ塩化リンおよびPO(OR5)3(式中、R5はC1-C6アルキルである)の混合物中でリン酸化され得る。好ましくは、化合物4は、オキシ塩化リンおよびトリエチルホスフェートの混合物中でリン酸化され、化合物5(すなわち、式(I)の化合物)を提供する。リン酸化は任意の適切な温度で行われ得る。例えば、リン酸化は約-20℃~約50℃で行われ得、そして好ましくは0℃で行われる。
【0082】
化合物5は、任意の適切な単離技術を用いて単離され得る。例えば、化合物5は、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、アセトニトリルなどの適切な溶媒の添加による水性混合物または溶液からの化合物5の沈殿、続く濾過によって化合物5を固体として得ることによって単離され得る。また、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)などの他の単離技術を用いて化合物5を単離し得る。
【0083】
実施態様において、式(I)の化合物はスキーム2に示すように合成することができる。
スキーム2
【0084】
【化24】
【0085】
試薬および条件:(a):アルコール、トリエチルアミン、4-ジメチルアミノピリジン、DCM、-78℃~還流;(b):β-D-リボフラノース 1,2,3,5-テトラアセテート、トリメチルシリル トリフルオロメタンスルホネート、DCM、還流;(c):カリウムtert-ブトキシド、THF、-78℃~-20℃;(d):塩化ホスホリル、トリエチルホスフェート
【0086】
ニコチネートエステル8は、任意の適切な方法を用いて調製され得る。例えば、ニコチノイルクロリド7は、トリメチルアミンなどの塩基および4-ジメチルアミノピリジンなどの塩基性触媒存在下、ジクロロメタン(DCM)などの適切な溶媒中、アルコールROHと反応させ得る。保護されたトリアセチルニコチネートリボシド9は、トリメチルシリル トリフルオロメタンスルホネートなどの触媒存在下、DCMなどの適切な溶媒中でニコチネートエステル9を1,2,3,5-テトラ-O-アセチル-D-リボフラノースなどのアセチル化リボシドと反応させ、9を提供することによって調製され得る。トリアセチルニコチネートリボシド9は、テトラヒドロフラン(THF)などの溶媒中、カリウムtert-ブトキシドなどの塩基との反応によって脱保護され、脱保護されたニコチネートリボシド10を提供し得る。ニコチネートリボシド10は、本明細書中に記載のようにリン酸化され、ヌクレオチド5を提供し得る。
【0087】
別の実施態様において、本発明は、式(I):
【0088】
【化25】
【0089】
式中、Rは直鎖または分枝鎖C3-C20アルキル、直鎖または分枝鎖C2-C20アルケニル、C2-C20アルキニル、C3-C20シクロアルキル、C6-C10アリール、C3-C20ヘテロシクリル、またはC5-C10ヘテロアリールである、
の化合物またはその塩を提供する。
【0090】
ある実施態様において、Rは直鎖C3-C20アルキルである。ある好ましい実施態様において、Rはn-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、またはn-オクチルである。特定の実施態様において、Rはn-プロピルであり、そして化合物は構造:
【0091】
【化26】
【0092】
を有する。
【0093】
ある実施態様において、Rは分枝鎖C3-C20アルキルである。ある好ましい実施態様において、Rは2,2-ジメチルプロピル、3-メチルブチル、イソプロピル、1,1-ジメチルプロピル、またはt-ブチルである。
【0094】
今一般的に本明細書中で使用される専門用語を参照して、用語「アルキル」は、例えば、3~約20個の炭素原子、例えば、3~約18個の炭素原子、3~約16個の炭素原子、3~約14個の炭素原子、3~約12個の炭素原子、3~約10個の炭素原子、3~約8個の炭素原子、または4~8個の炭素原子を含む直鎖または分枝アルキル置換基を意味する。アルキル基は、直鎖または分枝であり得る。このような置換基の例は、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソアミル、ヘキシルなどを含む。
【0095】
用語「アルケニル」は、アルキルについて本明細書中で記載したような基を言い、ここでアルケニル基は1個以上のC=C二重結合を含む。適切なアルケニル基の例は、2-プロペン-1-イル、2-ブテン-1-イル、3-ブテン-1-イル、2-ペンテン-1-イル、3-ペンテン-1-イル、4-ペンテン-1-イル、2-ヘキセン-1-イル、3-ヘキセン-1-イル、4-ヘキセン-1-イル、5-ヘキセン-1-イルなどを含む。
【0096】
用語「アルキニル」は、アルキルについて本明細書中で記載したような基を言い、ここでアルキニル基は1個以上のC≡C三重結合を含む。適切なアルキニル基の例は、2-プロピン-1-イル、2-ブチン-1-イル、3-ブチン-1-イル、2-ペンチン-1-イル、3-ペンチン-1-イル、4-ペンチン-1-イル、2-ヘキシン-1-イル、3-ヘキシン-1-イル、4-ヘキシン-1-イル、5-ヘキシン-1-イルなどを含む。
【0097】
アルキル、アルケニル、またはアルキニル基は、無置換またはヒドロキシル基、アルコキシ基、ハロ基などでさらに置換され得る。アルケニルまたはアルキニル基は直鎖または分枝であり得る。
【0098】
本明細書中で使用される用語「シクロアルキル」は、例えば、約3~約8個の炭素原子、好ましくは約4~約7個の炭素原子、そしてより好ましくは約4~約6個の炭素原子を含む環状アルキル置換基を意味する。このような置換基の例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルなどを含む。シクロアルキル基は、無置換またはメチル基、エチル基などのアルキル基でさらに置換され得る。
【0099】
本明細書中で使用される用語「ヘテロシクリル」は、O、N、Sからなる群から選ばれる1個以上のヘテロ原子を含む単環式または二環式5-または6-員環系およびそれらの組み合わせを言う。ヘテロシクリル基は、任意の適切なヘテロシクリル基であり得、そして脂環式ヘテロシクリル基、芳香族ヘテロシクリル基、またはそれらの組み合わせであり得る。ヘテロシクリル基は、単環式ヘテロシクリル基または二環式ヘテロシクリル基であり得る。適切なヘテロシクリル基は、モルホリン、ピペリジン、テトラヒドロフリル、オキセタニル、ピロリジニルなどを含む。適切な二環式ヘテロシクリル基は、C6-C10アリール環に縮合した単環式ヘテロシクリル環を含む。ヘテロシクリル基が二環式ヘテロシクリル基である場合、両方の環系は脂環式または芳香族であり得、あるいは例えば、ジヒドロベンゾフランのように一方の環系が芳香族であり得、そして他方の環系が脂環式であり得る。用語「ヘテロアリール」は、本明細書に記載のような単環式または二環式5-または6-員環系であって、ここでヘテロアリール基が不飽和でありかつヒュッケル則を満足する環系を言う。適切なヘテロアリール基の非限定の例は、フラニル、チオフェニル(thiopheneyl)、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、1,2,3-トリアゾリル、1,2,4-トリアゾリル、イソキサゾリル、オキサゾリル、イソチアゾリル、チアゾリル、1,3,4-オキサジアゾール-2-イル、1,2,4-オキサジアゾール-2-イル、5-メチル-1,3,4-オキサジアゾール、3-メチル-1,2,4-オキサジアゾール、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、トリアジニル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、インドリル、キノリニル、イソキノリニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾオキサゾリニル、ベンゾチアゾリニル、およびキナゾリニルを含む。ヘテロシクリルまたはヘテロアリール基は、必要に応じて、メチル基、エチル基などのアルキル基、クロロなどのハロ基、またはヒドロキシル基、フェニル基、ナフチル基などのアリール基(ここでアリール基は、例えばハロ、ジハロアルキル、トリハロアルキル、ニトロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、置換アミノ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アリールカルボニル、アリールオキシカルボニル、チオ、アルキルチオ、アリールチオなどでさらに置換され得る)などの本明細書中に記載の1、2、3、4、または5個の置換基で置換され、ここで任意の置換基はヘテロシクリルまたはヘテロアリール基上の任意のオープンの位置に存在し得、またはベンゾ基とともに、例えば、ベンゾフランの基を形成する。
【0100】
用語「アリール」は、当該分野で一般に理解されるように、無置換または置換芳香族炭素環式置換基を言い、そして用語「C6-C10アリール」はフェニルおよびナフチルを含む。用語アリールは平面でかつヒュッケル則に従って4n+2π電子を含む環状置換基に適用されることが理解される。
【0101】
構造中の原子の数の範囲が示される場合はいつでも(例えば、C3-C20、C3-C18、C3-C16、C3-C14、C3-C12、C3-C8、C3-C6、C3-C4、またはC2-C12、C2-C8、C2-C6、C2-C4アルケニル、アルキニルなど)、任意の部分的な範囲または示された範囲内の炭素原子の個々の数もまた使用され得ることが特に考慮される。従って、例えば、必要に応じて3-20個の炭素原子(例えば、C3-C20)、3-18個の炭素原子(例えば、C3-C18)、3-16個の炭素原子(例えば、C3-C16)、3-14個の炭素原子(例えば、C3-C14)、3-12個の炭素原子(例えば、C3-C12)、3-10個の炭素原子(例えば、C3-C10)、3-8個の炭素原子(例えば、C3-C8)、3-6個の炭素原子(例えば、C3-C6)、または3-4個の炭素原子(例えば、C3-C4)、4-5個の炭素原子(例えば、C4-C5)、4-6個の炭素原子(例えば、C4-C6)、4-7個の炭素原子(例えば、C4-C7)、4-8個の炭素原子(例えば、C4-C8)、4-9個の炭素原子(例えば、C4-C9)、4-10個の炭素原子(例えば、C4-C10)、4-11個の炭素原子(例えば、C4-C11)、4-12個の炭素原子(例えば、C4-C12)、4-13個の炭素原子(例えば、C4-C13)、4-14個の炭素原子(例えば、C4-C14)、4-15個の炭素原子(例えば、C4-C15)、4-16個の炭素原子(例えば、C4-C16)、4-17個の炭素原子(例えば、C4-C17)、4-18個の炭素原子(例えば、C4-C18)、4-19個の炭素原子(例えば、C4-C19)、および/または4-20個の炭素原子(例えば、C4-C20)など)の範囲の記載。同様に、本明細書中で参照される任意の化学基(例、アリール)に関して使用される6-10個の炭素原子(例えば、C6-C10)の範囲の記載を包含し、そして必要に応じて6、7、8、9、および/または10個の炭素原子、ならびにそれらの任意の部分的な範囲(例えば、必要に応じて6-10個の炭素原子、6-9個の炭素原子、6-8個の炭素原子、6-7個の炭素原子、7-10個の炭素原子、7-9個の炭素原子、7-8個の炭素原子、8-10個の炭素原子、および/または8-9個の炭素原子など)を特に記載する。
【0102】
表現「塩」または「薬学的に受容可能な塩」は、非毒性塩を含むことを意図し、これは、従来の化学方法によって、塩基性または酸性部分を含む親化合物から合成され得る。一般的に、このような塩は、これらの化合物の遊離酸または塩基形態を、水中または有機溶媒中、あるいは2つの混合物中、化学量論量の適切な塩基または酸と反応させることによって調製され得る。一般的に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、またはアセトニトリルなどの非水性媒体が好ましい。適切な塩のリストは、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 18th ed., Mack Publishing Company, Easton, PA, 1990, p. 1445およびJournal of Pharmaceutical Science, 66: 2-19 (1977)において見い出される。例えば、適切な塩はアルカリ金属(例えば、ナトリウムまたはカリウム)、アルカリ土類金属(例えば、カルシウム)の塩、またはアンモニウムまたはアルキルアンモニウム、例えば、モノアルキルアンモニウム、ジアルキルアンモニウム、トリアルキルアンモニウム、またはテトラアルキルアンモニウムの塩であり得る。
【0103】
本発明の医薬組成物における使用のための薬学的に受容可能な塩の例は、塩酸、臭化水素酸、リン酸、メタリン酸、硝酸および硫酸などの鉱酸、および酒石酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸、安息香酸、グリコール酸、グルコン酸、コハク酸、マレイン酸およびアリールスルホン酸、例えば、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、およびp-トルエンスルホン酸などの有機酸から由来する塩を含む。
【0104】
本発明はさらに、組成物、好ましくは任意の実施態様において上記で記載した化合物および適切な担体、好ましくは薬学的に受容可能な担体を含有する医薬組成物を提供する。本発明は、薬学的に受容可能な担体および有効量、例えば、予防有効量を含む治療有効量の本発明の前述の化合物の1種以上、またはそれらの塩を含有する医薬組成物を提供する。
【0105】
薬学的に受容可能な担体は、従来使用されている任意の担体であり得、そして溶解性および化合物との反応性の欠如などの物理化学的考慮によって、および投与経路によってのみ限定される。以下に記載の医薬組成物に加えて、本発明の化合物は、シクロデキストリン包接錯体などの包接錯体、またはリポソームとして処方され得る。
【0106】
本明細書に記載の薬学的に受容可能な担体、例えば、ビヒクル、アジュバント、賦形剤、または希釈剤は、当業者に周知であり、そして容易に一般に公開されている。薬学的に受容可能な担体は、好ましくは活性化合物に対して化学的に不活性であり、そして使用条件下で有害な副作用または毒性を有しない。
【0107】
担体の選択は、一部は、特定の活性剤によって、ならびに組成物を投与するために使用される特定の方法によって決定されるであろう。従って、本発明の医薬組成物の広範な種々の適切な処方物が存在する。経口、エアロゾル、非経口、皮下、静脈内、動脈内、筋肉内、腹腔内、クモ膜下、直腸、および膣内投与のための以下の処方物は、単なる例示であり、そしていかようにも限定されない。
【0108】
経口投与に適切な処方物は、(a)水、生理食塩水、または(a)液体溶液、例えば、水、生理食塩水、またはオレンジジュースなどの希釈剤に溶解した有効量の化合物;(b)カプセル、小袋、錠剤、ドロップ、およびトローチ、それぞれ所定量の活性成分を固体または顆粒として含む;(c)粉剤;(d)適切な液体中の懸濁剤;および(e)適切な乳化剤からなり得る。液体処方物は、薬学的に受容可能な界面活性剤、懸濁化剤、または乳化剤を添加したまたは添加していないのいずれかの水およびアルコール(例えば、エタノール、ベンジルアルコール、およびポリエチレンアルコール)などの希釈剤を含み得る。カプセル形態は、例えば、界面活性剤、潤滑剤、および不活性充填剤(ラクトース、スクロース、リン酸カルシウム、およびコーンスターチなど)を含む通常のハードまたはソフトシェルゼラチンタイプであり得る。錠剤形態は、ラクトース、スクロース、マンニトール、コーンスターチ、じゃがいもでんぷん、アルギン酸、微結晶性セルロース、アカシア、ゼラチン、グアーガム、コロイド状二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、および他の賦形剤、着色剤、希釈剤、緩衝剤、崩壊剤、湿潤剤、保存料、香味剤、および薬理学的に適合可能な担体の1種以上を含み得る。ドロップ形態は、香味料、通常はスクロースおよびアカシアまたはトラガカント中の活性成分を含み得、ならびにトローチは、ゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアカシアなどの不活性基剤中の活性成分を含み、乳化剤、ゲルなどは、活性成分に加えて当該分野で公知の担体を含む。
【0109】
本発明の化合物は、単独でまたは他の適切な成分と組み合わせて、吸入によって投与されるべきエアロゾル処方物に製造され得る。これらのエアロゾル処方物は、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素などの加圧した受容可能な推進剤中に置かれ得る。本発明の化合物はまた、吸入器中または噴霧器中などの非加圧製剤のための医薬として処方され得る。
【0110】
非経口投与に適した処方物は、抗酸化剤、緩衝剤、静菌薬、および処方物を意図する受益者の血液と等張にする溶質を含み得る、水性および非水性の、等張の滅菌注射溶液、および懸濁化剤、可溶化剤、増粘剤、安定化剤、および保存料を含み得る、水性および非水性の滅菌懸濁液を含む。本発明の化合物は、薬学的に許容可能な界面活性剤(例えば、石鹸または洗浄剤)、懸濁化剤(例えば、ペクチン、カーボマー、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロース)、または乳化剤および他の薬学的アジュバントを添加したまたは添加していない、水、生理食塩水、水性デキストロースおよび関連する糖溶液、アルコール(例えば、エタノール、イソプロパノール、またはヘキサデシルアルコール)、グリコール(例えば、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコール)、グリセロールケタール(例えば、2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-メタノール)、エーテル(例えば、ポリ(エチレングリコール)400)、オイル、脂肪酸、脂肪酸エステルまたはグリセリド、またはアセチル化脂肪酸グリセリドを含む滅菌液体または液体混合物などの薬学的担体中、生理学的に受容可能な希釈剤中で投与され得る。
【0111】
非経口処方物に使用され得るオイルは、石油、動物、植物、または合成オイルを含む。オイルの具体例は、ピーナッツ、大豆、ゴマ、綿実、コーン、オリーブ、ワセリン、および鉱油を含む。非経口処方物における使用に適した脂肪酸は、オレイン酸、ステアリン酸、およびイソステアリン酸を含む。オレイン酸エチルおよびミリスチン酸イソプロピルは、適切な脂肪酸エステルの例である。非経口処方物における使用に適した石鹸は、脂肪酸アルカリ金属塩、アンモニウム塩、およびトリエタノールアミン塩を含み、そして適切な洗浄剤は、(a)例えば、ジメチルジアルキルアンモニウムハライドおよびアルキルピリジニウムハライドなどのカチオン性洗浄剤、(b)例えば、アルキル、アリール、およびオレフィンスルホネート、アルキル、オレフィン、エーテル、およびモノグリセリドサルフェート、およびスルホスクシネートなどのアニオン性洗浄剤、(c)例えば、脂肪酸アミンオキシド、脂肪酸アルカノールアミド、およびポリオキシエチレン-ポリプロピレンコポリマーなどの非イオン性洗浄剤、(d)例えば、アルキル-ベータ-アミノプロピオネート、および2-アルキル-イミダゾリン4級アンモニウム塩などの両性洗浄剤、および(3)それらの混合物を含む。
【0112】
非経口処方物は、典型的には、溶液中約0.5~約25重量%の活性成分を含む。適切な保存料および緩衝剤は、このような処方物において使用され得る。注射部位での刺激を最小限にするまたは除去するために、このような組成物は、約12~約17の親水性-親油性バランス(HLB)を有する1種以上の非イオン性界面活性剤を含み得る。このような処方物中の界面活性剤の量は、約5~約15重量%の範囲である。適切な界面活性剤は、ソルビタンモノオレエートなどのポリエチレンソルビタン脂肪酸エステルおよびプロピレンオキシドとプロピレングリコールとの縮合によって形成されるエチレンオキシドと疎水性塩基との高分子量付加物を含む。非経口処方物は、アンプルおよびバイアルなどの単回投与または多回投与密封容器中に存在し得、そして使用直前に注射用滅菌液体担体(例えば、水)の添加のみを必要とする凍結乾燥(凍結乾燥)条件で保存され得る。即時注射溶液および懸濁液は、前述の種類の滅菌粉末、顆粒、および錠剤から調製され得る。
【0113】
本発明の化合物は、注射可能処方に製造され得る。物注射可能組成物用の効果的な薬学的担体についての要件は、周知である。Pharmaceutics and Pharmacy Practice, J. B. Lippincott Co., Philadelphia, Pa., Banker and Chalmers, eds., pages 238-250 (1982)、およびASHP Handbook on Injectable Drugs, Toissel, 4th ed., pages 622-630 (1986)を参照。
【0114】
さらに、本発明の化合物は、乳化基剤または水溶性基剤などの種々の基剤と混合することによって坐剤に製造され得る。膣内投与に適した処方物は、活性成分に加えて当該分野において適切であると公知の担体を含む、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム、またはスプレー処方として存在し得る。
【0115】
本発明はまた、本発明の化合物を含有する栄養補助組成物を提供する。本明細書中で使用される用語栄養補助は、栄養および医薬用途分野の両方における有用性を示す。本発明による栄養補助組成物は、ヒト体を含む動物体に投与するのに適した任意の形態、特に、経口投与のための従来の任意の形態、例えば食物または飼料、食物または飼料プレミックス、錠剤、ピル、顆粒、糖衣錠、カプセル(のための添加剤/サプリメント)などの固体形態、および粉剤および錠剤などの発泡性処方物、または溶液、乳液または懸濁液などの液体形態(例えば、飲料、ペーストおよび油状懸濁液)であり得る。本発明による化合物を含む制御(遅延)放出処方物はまた、本発明の一部を形成する。さらに、マルチビタミンおよびミネラルサプルメントは、本発明の栄養補助組成物に添加されて十分な量のいくつかの食事において不足している必須栄養素が得られ得る。マルチビタミンおよびミネラルサプルメントはまた、ライフスタイルのパターンによる栄養損失および栄養不足に対する疾患予防および保護に有用であり得る。
【0116】
実施態様において、本発明は、本発明の化合物またはその塩を細胞に投与することを含む、細胞NAD+産生を増加させる方法を提供する。ある実施態様において、細胞は、脂質疾患、代謝機能不全、心血管疾患、CNSまたはPNS外傷、神経変性疾患または状態、あるいは聴力損失を有する哺乳動物におけるものであり、または毒物に曝露された哺乳動物におけるものである。ある実施態様において、細胞は聴力損失の危険がある哺乳動物におけるものである。ある他の実施態様において、細胞は哺乳動物におけるものであり、そして化合物は、代謝系の機能の促進、筋肉機能または回復の促進、聴覚系の機能の促進、または認知機能の促進に有効な量で投与される。
【0117】
別の実施態様において、本発明は、細胞中のミトコンドリア密度を改善する方法を提供し、当該方法は本発明の化合物またはその塩を細胞に投与することを含む。ある実施態様において、細胞は、脂質疾患、代謝機能不全、心血管疾患、CNSまたはPNS外傷、神経変性疾患または状態、あるいは聴力損失を有する哺乳動物におけるものであり、または毒物に曝露された哺乳動物におけるものである。ある実施態様において、細胞は聴力損失の危険がある哺乳動物におけるものである。ある他の実施態様において、細胞は哺乳動物におけるものであり、そして化合物は、代謝系の機能の促進、筋肉機能または回復の促進、聴覚系の機能の促進、または認知機能の促進に有効な量で投与される。
【0118】
本発明の化合物の例は、NAD+増加に対する哺乳類組織に対する驚くべきかつ予想できない効果を示す。この効果は、100-1000 mg/kgの用量で生じ、ここで任意の濃度の他の化合物はこの効果を達成するのに有効ではない。エステル化のため、化合物はまた、それらのそれぞれの未エステル化相対物よりも親油性が高く、これは吸収の増加および血液脳関門(BBB)透過特性を提供し得る。化合物の鍵となる特徴は、効力、入手し易さ、NAD+の増強における改善された生物学的効率、および増強された親油性からの改善された薬物挙動の機会である。
【0119】
いくつかの実施態様において、本発明は、本発明の化合物またはその薬学的に受容可能な塩を細胞に投与することを含む、哺乳類細胞NAD+産生を増加させる方法を提供する。ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADまたはNAD+)は、異なる酵素について補酵素として重要である。最近の研究は、SIR2(サイレントインフォメーションレギュレータ2)の補基質であるNAD+が複数の生物学的過程、例えばp53制御アポトーシス、脂肪貯蔵、ストレス抵抗性、および遺伝子抑制に関与することを示した。本明細書中に記載の組成物の潜在的使用はいかなる単一の理論によって限定されることなく、ニコチンアミドリボシド(NR)、ジヒドロニコチンアミドリボシド(NRH)、ニコチン酸リボシド(NAR)、およびジヒドロニコチン酸リボシド(NARHまたはNaR-H)ならびにニコチン酸モノヌクレオチド(NaMN)およびそれらの誘導体が代謝されると現在考えられている種々の経路が存在する。NRはヒトおよび酵母の両方についてNAD+前駆体として公知である。NRは、酵素ニコチンアミドリボシドキナーゼ(Nrk)の作用下でNAD+の生物学的合成に至るサルベージ経路に入ることができる。NRは、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)に変換され得るが、一方、ニコチン酸リボシド(NaR)は、ニコチンアミドリボシドキナーゼ(Nrk)によって媒介されるそれぞれのリン酸化によってニコチン酸モノヌクレオチド(NAMN)に変換される。モノヌクレオチドは、次いで、酵素ニコチンアミドモノヌクレオチドアデニルトランスフェラーゼ(Nmnat)によって対応するジヌクレオチドNAD+およびニコチン酸アデニンジヌクレオチド(NaAD)に変換される。あるいは、NRおよびNARは、ニコチンアミドまたはニコチン酸部分を糖から分離する酵素からの作用を含む他の代謝経路によってNAD代謝に入り得る。このような経路は、細胞中のNRおよびNaRを分解してそれぞれニコチンアミドおよびニコチン酸、およびリボース-1-ホスフェートを形成することが示されているホスホリラーゼの作用を含む。ニコチンアミドおよびニコチン酸の両方とも、NAD+代謝に入る能力があり、そしてそれぞれ酵素ニコチンアミドピロホスホリボシルトランスフェラーゼおよびニコチン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼの作用によってNAD+に変換されてそれぞれNMNおよびNaMNを形成する。NADの下流は、NAD効果を媒介する他の酵素である。例えば、サーチュインはクラスIIIヒストンデアセチラーゼ(HDACs)であり、そしてADP-リボシルトランスフェラーゼでもある。新規化学反応におけるサーチュインデアセチレートリジン残基は、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)を消費し、ニコチンアミド、O-アセチル-ADPリボース(AADPR)、および脱アセチル化基質を放出する。これらの活性によって、および細胞内NAD+レベルを変化させることによって、細胞の健康を改善することができるが、NAD+代謝経路に入る化合物の導入はまた、細胞に対して毒性を示し得る。いくつかの実施態様において、本発明は、本明細書中に開示した化合物を使用して、NAD+レベルを操作すること、サーチュインおよび他のADP-リボシルトランスフェラーゼの活性を調節すること、およびイノシン5’-モノリン酸デヒドロゲナーゼを調節することに関する。これらの実施態様は、癌細胞の防御を破壊または弱めるため、または増殖媒体への添加によってニューロン、ミオサイト、または幹細胞の生存を促進するために使用される。
【0120】
ニコチン酸は、ヒトにおける低密度リポタンパク質コレステロールの制御、高密度リポタンパク質コレステロールの増加、およびトリグリセリドおよびリポタンパク質(a)レベルの低下において有効な剤である。ニコチン酸処理は所望の方向における鍵となる脂質の全てに影響を与え、そして標的母集団において死亡率を低下させることが示されているが、その使用は、熱および紅潮と呼ばれる発赤の副作用のため、限定される。さらに、ニコチンアミドは、おそらくミトコンドリアNAD+レベルの増加を含む複数の機構のためにモデル系において神経保護性である。
【0121】
さらに、NRおよびその誘導体は、モデル系において、および健康的な加齢の促進、健康的な代謝機能の支持および促進、認知機能の支持および促進、脳卒中を含むCNSおよびPNS外傷における神経防護作用を含む種々の使用のためのヒトにおける臨床試験において、および本態性振戦、パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、運動失調、緊張病、てんかん、神経弛緩薬性悪性症候群、ジストニア、神経有棘赤血球症、ペリツェウス・メルツバッハー病、進行性核上まひ、線条体黒質変性症、遅発性ジスキネジー、脂質貯蔵障害(ゴーシェ病およびニーマン・ピック病を含む)を含むリソソーム貯蔵障害、ガングリオシドーシス(テイ・サックス病を含む)、大脳白質萎縮症、ムコ多糖症、シアロ糖複合体蓄積症、およびムコ脂質症を含む神経変性疾患および状態において有用であると証明されている。NRおよびその誘導体は、加齢または大きな音への曝露による聴力損失を防止するのに有用であることが見い出されている。NRおよびその誘導体は、スタチンによって引き起こされるミオサイトの損傷を含む毒素への曝露の損傷から細胞を保護し得る。NRおよびその誘導体は、インスリンを産生する膵島細胞の死を遅くするかまたは防止し得る。NRおよびその誘導体は、ミトコンドリアの数を増加させ、およびミトコンドリアの機能を改善することが見い出されている。
【0122】
NaMN誘導体は、生物学的に利用可能であり得、そしてニコチン酸またはニコチン酸リボシド(NAR)、ニコチン酸モノヌクレオチド(NaMN)、ニコチン酸アデニンジヌクレオチド(NaAD)および最終的にNAD+への代謝によって最終的に変換可能であり、それによって上記で議論した化合物の利益を提供する。従って、本発明の1つの実施態様は、NAD+生合成のニコチンアミドリボシドキナーゼ経路または他の経路を介して働く本明細書中に開示した化合物を含有する組成物の使用に関し、これは、脂質疾患(例えば、脂質異常症、高コレステロール血症または高脂血症)、I型およびII型糖尿病における代謝機能不全、心血管疾患、および肥満に関連する他の身体的問題における乏しい血漿脂質プロフィールの改善において、膵島細胞を保護して糖尿病の進行を治療または予防することにおいて、外傷および神経変性疾患および状態を治療するための神経防護作用において、筋肉細胞を運動または外傷からの毒性および損傷から保護することにおいて、聴覚系の機能の促進において、聴力損失の治療または予防において、および代謝機能、筋肉機能および治癒/回復、認知機能、およびミトコンドリア機能の促進のための栄養補助食品および食品成分使用において、栄養および/または治療価値を有する。
【0123】
いくつかの実施態様において、本発明は、NAD+生合成の経路における酵素のアゴニストおよびアンタゴニストとしての、本明細書中に開示した化合物の使用に関する。さらなる実施態様において、本明細書中に開示したNaMN誘導体はアゴニストであり、すなわち、1種以上のサーチュイン、好ましくは人におけるSIRT1または酵母におけるSir2pの天然に存在する物質によって通常刺激される活性を刺激する。さらなる実施態様において、NaMN誘導体は1種以上のサーチュインのアンタゴニストである。
【0124】
いくつかの実施態様において、本発明は、哺乳動物におけるミトコンドリア密度の増加、インスリン感受性、または運動に対する耐久力を含む代謝機能を改善する方法を提供し、ここで当該方法は、哺乳動物に本発明の化合物または薬学的に受容可能な塩、あるいは栄養補助食品または食品成分について受容可能なその塩を投与することを含む。カロリー制限下、細胞エネルギーの枯渇は、AMPレベルの上昇を引き起こし、そして減少したレベル(NADH)と比較してNAD+レベルの増加は、AMPKの活性化を生じる。AMPK活性化は、PGC-1アルファ活性化に至り、これはミトコンドリア生合成(Lopez-Lluch, et al., Experimental Gerontology, 43 (9): 813-819 (2009) [doi:10.1016/j.exger.2008.06.014])に至る。ミトコンドリア生合成の増加は、筋肉細胞におけるミトコンドリア密度の増加に至る。ミトコンドリア密度の増加は、筋肉強度および持久性に関して運動能力を増加させる。
【0125】
いくつかの実施態様において、本発明は、それが必要な哺乳動物において疾患または状態を治療または予防する方法を提供し、ここで、当該方法は、哺乳動物に本発明の化合物またはその薬学的に受容可能な塩を投与することを含み、ここで、該疾患または状態は、CNSまたはPNS外傷、あるいは神経変性疾患または状態である。
【0126】
NAD+レベルは、損傷した、罹患した、または変性神経細胞において減少し、そしてこのNAD+減少を阻止することは、神経細胞を細胞死から効率的に保護する。本明細書中で参考として援用されるAraki & Milbrandt, Science, 305(5686): 1010-1013 (2004)、およびWang et al., "A local mechanism mediates NAD-dependent protection of axon degeneration," J. Cell Biol., 170(3): 349-55 (2005)。本明細書中に開示された多数の本発明化合物はNAD+の細胞内レベルを増加させることができるので、これらの化合物は、外傷または神経細胞の損傷、神経細胞に害を与える疾患または状態、および神経変性疾患または症候群を含むがこれらに限定されない、中枢神経系および末梢神経系に影響する損傷、疾患、および障害の管理における治療または栄養サプルメントとして有用である。いくつかの神経変性疾患、神経変性症候群、神経細胞に害を与える疾患、状態、および神経細胞の損傷は、上記で記載されている。本明細書中に開示された本発明化合物は、好ましくは脳血液関門(BBB)を通過することができる。
【0127】
いくつかの実施態様において、本発明は、哺乳動物を神経外傷から保護する方法を提供し、ここで当該方法は、哺乳動物に本発明の化合物またはその薬学的に受容可能な塩を投与することを含む。これらの実施態様のいくつかにおいて、神経外傷は爆風損傷または発破騒音から生じる。これらの実施態様において、剤は、らせん神経節神経細胞、有毛細胞、支持細胞、およびシュワン細胞からなる群より選ばれる1種以上の細胞において細胞内NAD+を増加させる。
【0128】
ある実施態様において、剤は、細胞における酸化的損傷を抑制する。ある実施態様において、化合物はSIRT3を活性化する。内因性SIRT3は、ミトコンドリアマトリクス中に位置する可溶性タンパク質である。培養細胞中のSIRT3の過剰発現は、呼吸を増加させ、そして反応性酸素種の産生を減少させる。いかなる特定の理論によって束縛されることを望まず、SIRT3の活性化は前述の細胞における酸化的損傷の抑制に関与すると考えられる。
【0129】
ある実施態様において、哺乳動物を化合物で治療することは、聴力損失の予防を生じる。他の実施態様において、哺乳動物を剤で治療することは、聴力損失の軽減を生じる。治療は、哺乳動物の、騒音への曝露などの聴力損失へと至る環境への曝露後に行われ得るか、または哺乳動物の、その環境への曝露前に行われ得る。NAD+レベルと神経外傷からの保護との関係は、WO 2014/014828 A1に開示されており、この内容は本明細書中で参考として援用される。ある実施態様において、化合物は、それが必要な哺乳動物における聴覚系の健康な構造または機能を支持する。哺乳動物を、例えば、栄養補助食品または食品成分組成物中の化合物の有効量で治療することは、細胞内NAD+生合成を増加させ、ここで細胞内NAD+は、らせん神経節神経細胞、有毛細胞、支持細胞、シュワン細胞、またはそれらの組み合わせにおいて増加する。いくつかの実施態様において、剤は、音響外傷によって引き起こされる軸索損傷の後に軸索NAD+レベルを維持する。
【0130】
より機構的に3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル(methyglutaryl)補酵素Aレダクターゼ阻害剤(またはHMG-CoA阻害剤)として知られるスタチンは、世界の最も広範に処方される薬物のいくつかである。スタチンは治療用量で、より高用量で、およびしばしば他の脂質低下薬と組み合わせて良好な耐容性を示すが、いくつかの潜在的に重篤な副作用が生じる。中でも注目すべきは、セリバスタチン(Baycol)は、米国でのセリバスタチンを服用した患者のうち31人の薬物関連の横紋筋融解症(筋繊維の断絶が循環中への筋繊維内容物の放出を生じ;これらのいくつかは腎臓に有毒である)および関連する急性腎不全からの死亡後に2000年に市場から除去された。スタチンはまた、フィブリン酸誘導体、特にゲムフィブロジルとの深刻な相互作用を有することが知られている。セリバスタチンを服用して死亡した31人のうち、12人はまた、ゲムフィブロジルを服用していた。
【0131】
スタチンの最も深刻な副作用は、肝臓および筋肉細胞において生じるようであるが、それらの親油性のため、脳の効果もまたいくらかの患者において見られ得ることが予測され得た。
【0132】
スタチンの毒性の正確な機構は、知られていない。毒性は用量依存であるという事実は、毒性が薬物の意図する効果の誇張から生じるという仮説をもっともらしくする。言い換えれば、細胞はHMG-CoAの下流の産物の欠乏から死亡する。
【0133】
HMG-CoAは、メバロン酸経路における律速酵素であり、これは、3つの分枝を通じて、コレステロール、ドリコール(ドリコールピロホスフェートへの前駆体、これは翻訳後グリコシル化においてタンパク質に加えられる最初の物である)の合成、および補酵素Q(小胞体、ペルオキシソーム、リソソーム、ベシクルの膜、および特にミトコンドリアの内膜、ここでそれは電子伝達鎖の重要な一部である、において見い出される;それはまた、重要な抗酸化剤活性を有する)としても知られるユビキノンへと至る。
【0134】
しかし、CoQの枯渇は電子伝達鎖の断絶に至り、次にNADHの蓄積、およびNAD+の枯渇に至る可能性が高い。さらに、CoQ10の還元形態であるCoQ10H2は、重要な細胞抗酸化剤機能を有し、これはフリーラジカル誘導酸化に対して膜および血漿リポタンパク質を保護する。
【0135】
いくつかの実施態様において、本発明は、哺乳動物においてHMGCoAレダクターゼ阻害剤によって誘導される毒性を低減する方法を提供し、当該方法は、哺乳動物に治療有効量の本発明の化合物を投与することを含み、ここで哺乳動物は、HMGCoAレダクターゼ阻害剤を、式(I)の化合物の投与の非存在下、哺乳動物において毒性を産生する量で投与されており、およびここでクレーム1の化合物の投与は哺乳動物における毒性を低減する。いくつかの実施態様において、本発明は、哺乳動物においてHMGCoAレダクターゼ阻害剤によって誘導される毒性を低減する方法を提供し、当該方法は、哺乳動物に治療有効量の本発明の化合物を投与し、次いで哺乳動物に、HMGCoAレダクターゼ阻害剤を、式(I)の化合物の投与の非存在下、哺乳動物において毒性を産生する量で投与することを含み、それによって、HMGCoAレダクターゼ阻害剤によって誘導された毒性は、本発明の化合物の投与によって哺乳動物において低減される。いくつかの実施態様において、本発明は、哺乳動物においてHMGCoAレダクターゼ阻害剤によって誘導される毒性を低減する方法を提供し、当該方法は、哺乳動物に治療有効量の本発明の化合物を投与することを含み、それによって、HMGCoAレダクターゼ阻害剤によって誘導された毒性は、哺乳動物において低減され、ここで本発明の化合物は、哺乳動物による毒性の発現後に哺乳動物に投与される。
【0136】
いくつかの実施態様において、本発明は、哺乳動物において遺伝毒性物質によって誘導される毒性を低減する方法を提供し、当該方法は、哺乳動物に治療有効量の本発明の化合物を投与することを含み、ここで哺乳動物は、遺伝毒性物質を、式(I)の化合物の投与の非存在下、哺乳動物において毒性を産生する量で投与されており、およびここで化合物の投与は哺乳動物における毒性を低減する。本発明の化合物は、哺乳動物への遺伝毒性物質または他の毒物の投与前、哺乳動物への遺伝毒性物質または他の毒物の投与と同時、または哺乳動物への遺伝毒性物質または他の毒物の投与後、例えば、遺伝毒性物質または他の毒物の投与から生じる毒性の症候が哺乳動物において現れた後に、哺乳動物に投与され得る。
【0137】
いくつかの実施態様において、本発明は、副作用を防止し、かつ細胞を毒性から保護するための本発明の化合物の使用に関する。毒性は、身体の細胞に対する放射線または外部化学物質の副作用であり得る。毒素の例は、医薬品、薬物乱用、およびUVまたはX-線光などの放射線である。放射性および化学毒素の両方とも、DNAなどの生物学的分子に損傷を与える可能性を有する。この損傷は、典型的には、外部の剤またはその代謝産物の生物学的分子との化学反応によって、または反応性酸素種(例えば、超酸化物、過酸化物、ヒドロキシルラジカル)の刺激産生を介して間接的に生じる。細胞における修復系は、毒素によって引き起こされる損傷を切除しそして修復する。
【0138】
NAD+を使用する酵素は、DNA修復プロセスに関与する。特に、ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARPs)、特にPARP-1は、DNA鎖切断によって活性化され、そしてDNA修復に作用する。PARPsはアデノシンジホスフェートリボース(ADPR)ドナーとしてNAD+を消費し、そしてポリ(ADP-リボース)をヒストンおよびPARP自体などの核タンパク質上に合成する。PARP活性はDNA修復を容易にするが、PARPの過剰活性化は細胞NAD+の顕著な枯渇を引き起こし、細胞壊死に至り得る。遺伝毒性に対するNAD+代謝の見かけの感度は、細胞生存を改善する手段としてPARPの阻害への薬理学的研究へと至る。多くの報告が、PARP阻害が遺伝毒性にさらされる細胞中のNAD+濃度を増加させ、細胞壊死の減少を生じることを示している。にもかかわらず、毒性からの細胞死は、依然として生じ、おそらくは細胞が遺伝毒性によって活性化されるアポトーシス経路を完了することができるためである。従って、顕著な細胞死は、PARPを阻害したとしても、依然としてDNA/巨大分子損傷の結果である。この結果は、遺伝毒性におけるNAD+代謝の改善が細胞生存の改善において部分的に有効であり得るが、サーチュインなどのアポトーシス感度を調節する他のプレーヤーもまた遺伝毒性物質に対する細胞応答において重要な役割を果たし得ることを示唆する。
【0139】
組織における化学および放射線毒性の作用を決定する生理学的および生化学的機構は複雑であり、そして証拠は、NAD+代謝が細胞ストレス反応経路における重要なプレーヤーであることを示す。例えば、ニコチンアミド/ニコチン酸モノヌクレオチド(NMNAT)過剰発現を介するNAD+代謝の上方制御は、ニューロン軸索変性から保護することが示されており、そして薬理学的に使用したニコチンアミが胎児性アルコール症候群および胎児性虚血のモデルにおいてニューロン保護を提供することが最近示されている。このような保護作用は、上方制御されたNAD+生合成に起因し得、これは、遺伝毒性ストレスの間に枯渇にさらされた利用可能なNAD+プールを増加させる。このNAD+の枯渇は、PARP酵素によって媒介され、この酵素は、DNA損傷によって活性化されそして細胞NAD+を枯渇させ得、壊死に至る。上方制御されたNAD+生合成と協力して作動し得る増強された細胞保護の別の機構は、サーチュイン酵素によって調節された細胞保護転写プログラムの活性化である。
【0140】
NAD+およびサーチュインに関係している細胞および組織保護の例は、SIRT1が外傷および遺伝毒性に関連している神経防護作用に必要であるという発見を含む。SIRT1はまた、減少したNFKBシグナル伝達を介したアミロイドベータのミクログリア依存毒性を低減させ得る。SIRT1および増加したNAD+濃度は、アルツハイマー病のモデルにおいて神経防護作用を提供する。サーチュインは、ストレス反応経路を上方制御するタンパク質デアセチラーゼおよびADP-リボシルトランスフェラーゼ活性を有するNAD+-依存酵素である。証拠は、SIRT1が、カロリー制限によって上方制御され、そしてヒトにおいてp53およびKu70機能の下方制御を介したアポトーシスからの保護を細胞に提供し得ることを示す。さらに、SIRT1は、MnSODなどの反応性酸素種(ROS)解毒に関与するタンパク質のFOXO-依存転写を上方制御する。サーチュインSIRT6は、DNA修復経路に参加し、そしてゲノム安定性を維持するのを助けることが示されている。
【0141】
NAD+代謝およびサーチュインの両方を標的化する薬剤は、毒性誘導組織損傷の調節へのこれらの因子の関与を解明する手段を提供し得る。さらに、急性および慢性組織変性状態の治療のための治療選択肢は、サーチュインおよびNAD+代謝が増強された組織保護を提供すると実証され得る場合、現れ得る。植物ポリフェノール(例えば、レスベラトロル)、ナイアシンビタミン、および化合物ニコチンアミドリボシドなどの剤は、NAD+生合成を増加させること、NAD+枯渇を減少させること、および/またはサーチュイン酵素を活性化することによって細胞生存の結果を増強し得る。
【0142】
好適な実施態様
本発明は以下の実施態様を含む:
1.式(I):
【0143】
【化27】
【0144】
式中、Rは、直鎖または分枝鎖C3-C20アルキル、直鎖または分枝鎖C3-C20アルケニル、C3-C20アルキニル、C3-C20シクロアルキル、C6-C10アリール、C3-C20ヘテロシクリル、またはC5-C10ヘテロアリールである、
の化合物またはその塩の調製プロセスであって、
式(III):
【0145】
【化28】
【0146】
の化合物をPOCl3およびPO(OR5)3(式中、R5はC1-C6アルキルである)の混合物と反応させ、続いて水で処理して式(I)の化合物を形成する工程を含む、調製プロセス。
2.Rが直鎖C3-C20アルキル、直鎖C3-C20アルケニル、C3-C20アルキニル、C3-C20シクロアルキル、C6-C10アリール、C3-C20ヘテロシクリル、またはC5-C10ヘテロアリールである実施態様1のプロセス。
3.Rが直鎖C3-C20アルキルである実施態様1または2のプロセス。
4.Rがn-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、またはn-オクチルである実施態様1~3の何れか1のプロセス。
5.Rが分枝鎖C3-C20アルキルである実施態様1のプロセス。
6.Rが2,2-ジメチルプロピル、3-メチルブチル、イソプロピル、1,1-ジメチルプロピル、またはt-ブチルである実施態様1のプロセス。
7.R5がエチルである実施態様1~6の何れか1のプロセス。
8.式(III)の化合物が、式(II):
【0147】
【化29】
【0148】
式中、R’はメチルまたはエチルである、
の化合物を塩基存在下、溶媒中で式ROHの化合物と反応させて式(III)の化合物を形成することによって調製される実施態様1または2のプロセス。
9.塩基がカリウムt-ブトキシドである実施態様8のプロセス。
10.溶媒がROHである実施態様8または9のプロセス。
11.Rが直鎖C3-C20アルキルである実施態様8~10の何れか1のプロセス。
12.Rがn-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、またはn-オクチルである実施態様8~11の何れか1のプロセス。
13.溶媒が2,2,2-トリフルオロエタノールをさらに含む実施態様8~12の何れか1のプロセス。
14.式(III)の化合物が、ニコチネートエステル(IV):
【0149】
【化30】
【0150】
を1,2,3,4-テトラ-O-アセチル-D-リボフラノースと反応させて式(V):
【0151】
【化31】
【0152】
の化合物を提供し、そして式(V)の化合物を塩基と反応させて式(III)の化合物を形成することによって調製される実施態様1のプロセス。
15.Rが分枝鎖C3-C20アルキルである実施態様14のプロセス。
16.Rが2,2-ジメチルプロピル、3-メチルブチル、イソプロピル、1,1-ジメチルプロピル、またはt-ブチルである実施態様14または15のプロセス。
17.式(I):
【0153】
【化32】
【0154】
式中、Rは直鎖または分枝鎖C3-C20アルキル、直鎖または分枝鎖C3-C20アルケニル、C3-C20アルキニル、C3-C20シクロアルキル、C6-C10アリール、C3-C20ヘテロシクリルまたはC5-C10ヘテロアリールである、
の化合物またはその塩の調製プロセスであって、
(i)式(II):
【0155】
【化33】
【0156】
式中、R’はメチルまたはエチルである、
の化合物を塩基存在下、溶媒中で式ROHの化合物と反応させて式(III):
【0157】
【化34】
【0158】
の化合物を形成する工程、および
(ii)式(III)の化合物をPOCl3およびPO(OR5)3(式中、R5はC1-C6アルキルである)の混合物と反応させ、続いて水で処理して式(I)の化合物を形成する工程を含む、調製プロセス。
18.Rが直鎖C3-C20アルキル、直鎖C3-C20アルケニル、C3-C20アルキニル、C3-C20シクロアルキル、C6-C10アリール、C3-C20ヘテロシクリル、またはC5-C10ヘテロアリールである実施態様17のプロセス。
19.Rが直鎖C3-C20アルキルである実施態様17のプロセス。
20.Rがn-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、またはn-オクチルである実施態様17または18のプロセス。
21.R5がエチルである実施態様17~20のいずれか1のプロセス。
22.塩基がカリウムt-ブトキシドである実施態様17~21のいずれか1のプロセス。
23.溶媒がROHである実施態様17~22のいずれか1のプロセス。
24.溶媒が2,2,2-トリフルオロエタノールを含む実施態様17~23のいずれか1のプロセス。
25.式(I):
【0159】
【化35】
【0160】
式中、Rは直鎖または分枝鎖C3-C20アルキル、直鎖または分枝鎖C3-C20アルケニル、C3-C20アルキニル、C3-C20シクロアルキル、C6-C10アリール、C3-C20ヘテロシクリルまたはC5-C10ヘテロアリールである、
の化合物またはその塩の調製プロセスであって、
(i)ニコチネートエステル(IV):
【0161】
【化36】
【0162】
を1,2,3,4-テトラ-O-アセチル-D-リボフラノースと反応させて式(V):
【0163】
【化37】
【0164】
の化合物を提供する工程、
(ii)式(V)の化合物を塩基と反応させて式(III):
【0165】
【化38】
【0166】
の化合物を形成する工程、および
(iii)式(III)の化合物をPOCl3およびPO(OR5)3(式中、R5はC1-C6アルキルである)の混合物と反応させ、続いて水で処理して式(I)の化合物を形成する工程を含む、調製プロセス。
26.Rが分枝鎖C3-C20アルキルである実施態様25のプロセス。
27.Rが2,2-ジメチルプロピル、3-メチルブチル、イソプロピル、1,1-ジメチルプロピル、またはt-ブチルである実施態様25または26のプロセス。
28.式(I):
【0167】
【化39】
【0168】
式中、Rは直鎖または分枝鎖C3-C20アルキル、直鎖または分枝鎖C2-C20アルケニル、C2-C20アルキニル、C3-C20シクロアルキル、C6-C10アリール、C3-C20ヘテロシクリル、またはC5-C10ヘテロアリールである、
の化合物またはその塩。
29.Rが直鎖C3-C20アルキル、直鎖C3-C20アルケニル、C3-C20アルキニル、C3-C20シクロアルキル、C6-C10アリール、C3-C20ヘテロシクリル、またはC5-C10ヘテロアリールである実施態様28のプロセス。
30.Rが直鎖C3-C20アルキルである実施態様28または29の化合物または塩。
31.Rがn-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、またはn-オクチルである実施態様28~30のいずれか1の化合物または塩。
32.Rが分枝鎖C3-C20アルキルである実施態様28の化合物または塩。
33.Rが2,2-ジメチルプロピル、3-メチルブチル、イソプロピル、1,1-ジメチルプロピル、またはt-ブチルである実施態様28または32の化合物または塩。
34.実施態様28~33のいずれか1の化合物または塩および薬学的に受容可能な担体を含有する医薬組成物。
35.実施態様28~33のいずれか1の化合物または塩を含有する栄養補助組成物。
36.実施態様28~33のいずれか1の化合物または塩を細胞に投与することを含む細胞NAD+産生を増加させる方法。
37.細胞が、脂質疾患、代謝機能不全、心血管疾患、CNSまたはPNS外傷、神経変性疾患または状態、または聴力損失を有する哺乳動物中のもの、または毒物に曝露された哺乳動物中のものである実施態様36の方法。
38.細胞が聴力損失の危険がある哺乳動物中のものである実施態様3236の方法。
39.細胞が哺乳動物中のものであり、化合物が代謝系の機能の促進、筋肉機能または回復の促進、聴覚系の機能の促進、または認知機能の促進に有効な量で投与される実施態様36の方法。
40.実施態様28~33のいずれか1の化合物または塩を細胞に投与することを含む細胞中のミトコンドリア密度を改善する方法。
41.細胞が、脂質疾患、代謝機能不全、心血管疾患、CNSまたはPNS外傷、神経変性疾患または状態、聴力損失を有する哺乳動物中のもの、または毒物に曝露された哺乳動物中のものである実施態様40の方法。
42.細胞が聴力損失の危険がある哺乳動物中のものである実施態様40の方法。
43.細胞が哺乳動物中のものであり、化合物が代謝系の機能の促進、筋肉機能または回復の促進、聴覚系の機能の促進、または認知機能の促進に有効な量で投与される実施態様40の方法。
【実施例
【0169】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するが、もちろん、その範囲をいかようにも限定すると解釈されるべきではない。
実施例1
この実施例は、アルキルβ-ニコチンリボシドの一般的合成を実証する。
【0170】
メチルβ-ニコチンリボシドおよびエチルβ-ニコチンリボシドをU.S.特許8,106,184(この開示は本明細書中で参考として援用される)に記載の通り合成した。
【0171】
メチルβ-ニコチンリボシドまたはエチルβ-ニコチンリボシドのC3-C20アルキルアルコール、C2-C20アルケニルアルコール、C2-C20アルキニルアルコール、C3-C20シクロアルキルアルコール、C6-C10アリールアルコール、C3-C20ヘテロシクリルアルコールまたはC5-C10ヘテロアリールアルコール溶液を1.5-2.0当量の2,2,2-トリフルオロエタノールおよび1.5-2.0当量のカリウムtert-ブトキシドで-20℃で16 h処理し、対応するアルキルβ-ニコチンリボシドを得る。
【0172】
実施例2
この実施例は、リン酸水素((2R,3R,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-(3-(プロポキシカルボニル)ピリジン-1-イウム-1-イル)テトラヒドロフラン-2-イル)メチルの合成を実証する。
【0173】
1-((2R,3S,4R,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-2-イル)-3-(プロポキシカルボニル)ピリジン-1-イウム トリフルオロメタンスルホネート 4a (100 mg, 0.30 mm)およびトリエチルホスフェート (2 ml)を火炎乾燥した丸底フラスコに置いた。混合物を0℃まで冷却し、そしてPOCl3 (70 μl, 0.75 mmol, 2.5 eq)を混合物に滴下した。反応混合物を同じ温度で16 h攪拌した。完了後、反応混合物を冷飽和NaHCO3溶液(pH = 7)で中和した。得られた溶液を減圧下で直接最小容積まで濃縮し、そして2 mlの酢酸エチルをそれに加えた。濾過により純粋な化合物5a (75 mg、収率70%)を白色固体として得た。1H NMR (500 MHz, D2O): δ 9.51 (s, 2H), 9.13 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 8.36 (t, J = 7.5, 14.5 Hz, 1H), 6.23 (d, J = 5.4 Hz, 1H), 4.64-4.59 (m, 2H), 4.48-4.42 (m, 3H), 4.24 (m, 1H), 4.11 (m, 1H), 1.89-1.80 (m, 2H), 1.10 (t, J = 7.5, 14.9 Hz, 3H); 13C NMR(125 MHz, D2O): δ 147.2, 143.3, 129.0, 100.4, 87.9, 77.7, 71.0, 69.3, 21.3, 9.6; 31P NMR (500 MHz, D2O): δ 2.34; LC-MS m/z [M+H] + C14H20NO9Pについて計算値: 377.1; 実測値 378.0。HRMS (ESI) m/z [M+H] + C14H21NO9Pについて計算値378.0954, 実測値 378.0943。
【0174】
実施例3
この実施例は、リン酸水素((2R,3R,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-(3-(ブトキシカルボニル)ピリジン-1-イウム-1-イル)テトラヒドロフラン-2-イル)メチルの合成を実証する。
【0175】
1-((2R,3S,4R,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-2-イル)-3-(ブトキシカルボニル)ピリジン-1-イウム トリフルオロメタンスルホネート 4b (300 mg, 0.864 mm)およびトリエチルホスフェート (6 ml)を火炎乾燥した丸底フラスコに置いた。混合物を0℃まで冷却し、そしてPOCl3 (202 μl, 2.3 mmol, 2.5 eq)を混合物に滴下した。反応混合物を同じ温度で16 h攪拌した。完了後、反応混合物を冷飽和NaHCO3溶液(pH = 7)で中和した。得られた溶液を減圧下で直接最小容積まで濃縮し、そして6 mlの酢酸エチルをそれに加えた。濾過により純粋な化合物5b (320 mg、収率95%)を白色固体として得た。1H NMR (500 MHz, D2O): δ 9.40 (s, 1H), 9.31 (d, J = 6.2 Hz, 1H), 9.06 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 8.27 (t, J = 7.1, 14.3 Hz, 1H), 6.18 (d, J = 5.3 Hz, 1H), 4.59 (m, 1H), 4.51 (t, J = 5.2, 10.4 Hz, 1H), 4.43 (t, J = 6.4, 12.7 Hz, 2H), 4.40-4.37 (m, 1H), 4.27-4.21 (m, 1H), 4.13-4.07 (m, 1H), 1.79-1.70 (m, 2H), 1.45-1.35 (m, 2H), 0.89 (t, J = 8.2, 16.4 Hz, 3H); 13C NMR(125 MHz, D2O): δ 147.3, 128.7, 100.0, 77.7, 70.9, 67.7, 29.8, 18.6, 13.0; 31P NMR (500 MHz, D2O): δ 1.30; LC-MS m/z [M+H] + C15H22NO9Pについて計算値: 391.1; 実測値 392.0。HRMS (ESI) m/z [M+H] + C15H23NO9Pについて計算値: 392.3110, 実測値 392.1103。
【0176】
実施例4
この実施例は、リン酸水素((2R,3R,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-(3-(ペンチルオキシカルボニル)ピリジン-1-イウム-1-イル)テトラヒドロフラン-2-イル)メチルの合成を実証する。
【0177】
1-((2R,3S,4R,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-2-イル)-3-(ペンチルオキシカルボニル)ピリジン-1-イウム トリフルオロメタンスルホネート 4c (361 mg, 1.0 mm)およびトリエチルホスフェート (6 ml)を火炎乾燥した丸底フラスコに置いた。混合物を0℃まで冷却し、そしてPOCl3 (233 μl, 2.5 mmol, 2.5 eq)を混合物に滴下した。反応混合物を同じ温度で16 h攪拌した。完了後、反応混合物を冷飽和NaHCO3溶液(pH = 7)で中和した。得られた溶液を減圧下で直接最小容積まで濃縮し、そして6 mlの酢酸エチルをそれに加えた。濾過により純粋な化合物5c (400 mg、収率98%)を白色固体として得た。1H NMR (500 MHz, D2O): δ 9.46 (s, 1H), 9.39 (d, J = 6.9 Hz, 1H), 9.06 (d, J = 7.9 Hz, 1H), 8.28 (t, J = 6.5, 14.1 Hz, 1H), 6.18 (d, J = 4.9 Hz, 1H), 4.6-4.51 (m, 2H), 4.45-4.35 (m, 3H), 4.23-4.17 (m, 1H), 4.09-4.04 (m, 1H), 1.80-1.74 (m, 2H), 1.41-1.24 (m, 4H), 0.83 (t, J = 7.5, 14.6 Hz, 3H); 13C NMR(125 MHz, D2O): δ 162.9, 147.2, 143.0, 142.0, 130.8, 128.8, 100.1, 87.4, 77.6, 70.8, 67.9, 63.8, 62.2, 27.4, 21.7, 13.3; 31P NMR (500 MHz, D2O): δ 2.35; LC-MS m/z [M+H] + C16H24NO9Pについて計算値: 405.1; 実測値 406.1。HRMS (ESI) m/z [M+H] + C16H25NO9Pについて計算値: 406.1267, 実測値 406.1251。
【0178】
実施例5
この実施例は、リン酸水素((2R,3R,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-(3-(ヘキシルオキシカルボニル)ピリジン-1-イウム-1-イル)テトラヒドロフラン-2-イル)メチルの合成を実証する。
【0179】
1-((2R,3S,4R,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-2-イル)-3-(ヘキシルオキシカルボニル)ピリジン-1-イウム トリフルオロメタンスルホネート 4d (375 mg, 1.0 mm)およびトリエチルホスフェート (6 ml)を火炎乾燥した丸底フラスコに置いた。混合物を0℃まで冷却し、そしてPOCl3 (233 μl, 2.5mmol, 2.5 eq)を混合物に滴下した。反応混合物を同じ温度で16 h攪拌した。完了後、反応物を冷飽和NaHCO3溶液(pH = 7)で中和した。得られた溶液を減圧下で直接最小容積まで濃縮し、そして6 mlの酢酸エチルをそれに加えた。濾過により純粋な化合物5d (480 mg、収率98%)を白色固体として得た。1H NMR (500 MHz, D2O): δ 9.44 (s, 1H), 9.30 (d, J = 6.0 Hz, 1H), 9.03 (d, J = 7.5 Hz, 1H), 8.23 (t, J = 7.3, 14.2 Hz, 1H), 6.15 (d, J = 5.4 Hz, 1H), 4.58-4.53 (m, 1H), 4.48 (t, J = 4.9, 10.0 Hz, 2H), 4.43-4.33 (m, 4H), 4.25-4.18 (m, 1H), 4.10-4.04 (m, 1H), 1.77-1.70 (m, 2H), 1.40-1.31 (m, 2H), 1.29-1.19 (m, 2H), 0.78 (t, J = 7.0, 14.0 Hz, 3H); 13C NMR(125 MHz, D2O): δ 147.2, 142.8, 141.8, 130.9, 128.6, 99.9, 87.2, 77.7, 70.8, 67.9, 64.1, 30.6, 27.6, 24.8, 21.9, 13.3; 31P NMR (500 MHz, D2O): δ 1.24; LC-MS m/z [M+H]+ C17H26NO9Pについて計算値: 419.1; 実測値 420.1。HRMS (ESI) m/z [M+H]+ C17H27NO9Pについて計算値, 420.1423, 実測値 420.1410。
【0180】
実施例6
この実施例は、リン酸水素((2R,3R,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-(3-(ヘプチルオキシカルボニル)ピリジン-1-イウム-1-イル)テトラヒドロフラン-2-イル)メチルの合成を実証する。
【0181】
1-((2R,3S,4R,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-2-イル)-3-(ヘプチルオキシカルボニル)ピリジン-1-イウム トリフルオロメタンスルホネート 4e (389 mg, 1.0 mm)およびトリエチルホスフェート (6 ml)を火炎乾燥した丸底フラスコに置いた。混合物を0℃まで冷却し、そしてPOCl3 (233 μl, 2.5 mmol, 2.5 eq)を混合物に滴下した。反応混合物を同じ温度で16 h攪拌した。完了後、反応混合物を冷飽和NaHCO3溶液(pH = 7)で中和した。得られた溶液を減圧下で直接最小容積まで濃縮し、そして6 mlの酢酸エチルをそれに加えた。濾過により純粋な化合物5e (500 mg、収率98%)を白色固体として得た。1H NMR (500 MHz, D2O): δ 9.41 (s, 1H), 9.26 (d, J = 6.4 Hz, 1H), 9.00 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 8.21 (t, J = 7.4, 14.6 Hz, 1H), 6.14 (d, J = 5.3 Hz, 1H), 4.53-4.50 (m, 2H), 4.45 (t, J = 5.3, 10.2 Hz, 1H), 4.39-4.30 (m, 4H), 4.22-4.15 (m, 1H), 4.07-4.00 (m, 1H), 1.79-1.66 (m, 2H), 1.36-1.28 (m, 2H), 1.27-1.20 (m, 2H), 1.19-1.13 (m, 2H), 0.73 (t, J = 7.2, 14.1 Hz, 3H); 13C NMR(125 MHz, D2O): δ 162.9, 147.2, 142.9, 141.9, 130.9, 128.7, 99.9, 87.3, 77.6, 70.8, 67.9, 64.1, 31.0, 28.0, 27.6, 25.1, 22.0, 13.4; 31P NMR (500 MHz, D2O): δ 1.33; LC-MS m/z [M+H]+ C18H28NO9Pについて計算値: 433.2; 実測値 434.1。HRMS (ESI) m/z[M+H]+ C18H29NO9NaPについて計算値: 456.1399, 実測値 456.1385。
【0182】
実施例7
この実施例は、リン酸水素((2R,3R,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-(3-(オクチルオキシカルボニル)ピリジン-1-イウム-1-イル)テトラヒドロフラン-2-イル)メチルの合成を実証する。
【0183】
1-((2R,3S,4R,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-2-イル)-3-(オクチルオキシカルボニル)ピリジン-1-イウム トリフルオロメタンスルホネート 4f (403 mg, 1.0 mm)およびトリエチルホスフェート (6 ml)を火炎乾燥した丸底フラスコに置いた。混合物を0℃まで冷却し、そしてPOCl3 (233 μl, 2.5 mmol, 2.5 eq)を混合物に滴下した。反応混合物を同じ温度で16 h攪拌した。完了後、反応混合物を冷飽和NaHCO3溶液(pH = 7)で中和した。得られた溶液を減圧下で直接最小容積まで濃縮し、そして6 mlの酢酸エチルをそれに加えた。濾過により純粋な化合物5f (520 mg、収率98%)を白色固体として得た。1H NMR (500 MHz, D2O): δ 9.48 (s, 1H), 9.34 (d, J = 6.0 Hz, 1H), 9.07 (d, J = 6.0 Hz, 1H), 8.29 (t, J = 6.2, 14.6 Hz, 1H), 6.20 (d, J = 5.3 Hz, 1H), 4.53-4.50 (m, 2H), 4.60 (s, 1H), 4.54-4.50 (m, 1H), 4.46-4.37 (s, 2H), 4.28-4.21 (m, 1H), 4.15-4.07 (m, 1H), 1.81-1.73 (m, 2H), 1.44-1.17 (m, 9H), 0.75 (t, J = 7.2, 14.1 Hz, 3H);13C NMR(125 MHz, D2O): δ 162.9, 147.3, 143.0, 141.9, 131.0, 128.9, 100.1, 87.4, 77.8, 70.9, 67.9, 64.2, 31.2, 28.5, 27.7, 25.2, 22.1, 13.5; 31P NMR (500 MHz, D2O): δ 1.60; LC-MS m/z [M+H]+ C19H29NO9Pについて計算値: 447.2; 実測値 448.1。HRMS (ESI) m/z [M+H]+ C19H30NO9NaPについて計算値: 470.1556, 実測値 470.1544。
【0184】
実施例8
この実施例は、2級または3級アルキルニコチネートリボシド誘導体の一般的合成を実証する。
【0185】
2級または3級ニコチネートエステルの合成のための一般的手順。-78℃のニコチノイルクロリド塩酸塩(1 mmol)およびアルコール (1.0 mmol)のDCM中懸濁液にトリメチルアミン (3.0 mmol)および4-ジメチルアミノピリジン (0.1 mmol)を加えた。反応混合物を4時間還流し、次いで飽和NaHCO3溶液に注いだ。有機層を集め、そして乾燥して油状残渣を得、これをクロマトグラフィーに供し、そしてヘキサン-酢酸エチル(10:0~10:1)で溶出してニコチネートエステル(収率: 36-74%)を得た。
【0186】
トリアセチル保護したニコチネートリボシドの合成のための一般的手順。ニコチネートエステル(0.55 mmol)および1,2,3,5-テトラ-O-アセチル-D-リボフラノース(0.5 mmol)のDCM溶液にアルゴン下トリメチルシリル トリフルオロメタンスルホネート(0.5 mmol)を加えた。反応混合物を4時間還流し、そして揮発物を減圧下で除去して油状残渣を得た。得られた油状残渣をヘキサン-メタノール(1:1)の間で分配し、そしてメタノール層を集めた。メタノールを減圧下で除去して粗製のトリアセチル保護したニコチネートリボシドを得、これを精製することなく次の工程に直接用いた。
【0187】
アセチル脱保護の一般的手順。トリアセチル保護したニコチネートリボシド(0.3 mmol)のTHF溶液にカリウムtert-ブチルオキシド(3.0 mmol)を一部分ずつアルゴン下、-78℃で加えた。反応混合物を-78℃で4時間攪拌した。次いで酢酸(6.0 mmol)を加えて反応をクエンチし、そして揮発物を減圧下で除去して粗生成物を得、これをクロマトグラフィーに供し、そしてDCM-MeOH (5:0~5:1)で溶出して2級または3級ニコチネートリボシド(収率: 14-32%)を得た。
【0188】
実施例9
この実施例は、本発明の実施態様に従い、実施例8に従って調製した化合物を例示する。
【0189】
1-((2R,3R,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-2-イル)-3-((ネオペンチルオキシ)カルボニル)ピリジン-1-イウム トリフルオロメタンスルホネート (5j)。1H NMR (500 MHz, 重水) δ 9.71 (d, J = 1.9 Hz, 1H), 9.34 (dt, J = 6.5, 1.5 Hz, 1H), 9.18 (dt, J = 8.1, 1.5 Hz, 1H), 8.33 (dd, J = 8.1, 6.3 Hz, 1H), 6.30 (d, J = 4.4 Hz, 1H), 4.54 (dt, J = 11.1, 4.1 Hz, 2H), 4.39 (t, J = 4.6 Hz, 1H), 4.25 - 4.18 (m, 2H), 4.07 (dd, J = 12.8, 2.9 Hz, 1H), 3.92 (dd, J = 12.8, 3.7 Hz, 1H), 1.07 (s, 9H)。13C NMR (126 MHz, 重水) δ 162.83, 147.39, 143.47, 141.45, 131.10, 128.47, 99.99, 87.85, 77.52, 76.51, 69.99, 60.26, 30.84, 25.49。19F NMR (471 MHz, メタノール-d4) δ -80.11。
【0190】
1-((2R,3R,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-2-イル)-3-((イソペンチルオキシ)カルボニル)ピリジン-1-イウム トリフルオロメタンスルホネート (5h)。1H NMR (500 MHz, メタノール-d4) δ 9.86 (s, 1H), 9.47 (d, J = 6.2 Hz, 1H), 9.14 (dt, J = 8.1, 1.5 Hz, 1H), 8.32 (dd, J = 8.0, 6.2 Hz, 1H), 6.23 (d, J = 4.9 Hz, 1H), 4.54 (t, J = 6.8 Hz, 2H), 4.48 - 4.42 (m, 2H), 4.33 (dd, J = 4.8, 3.1 Hz, 1H), 4.03 (dd, J = 12.3, 2.7 Hz, 1H), 3.88 (dd, J = 12.3, 2.2 Hz, 1H), 1.85 (dp, J = 13.3, 6.7 Hz, 1H), 1.77 (q, J = 6.8 Hz, 2H), 1.03 (d, J = 6.6 Hz, 6H)。13C NMR (126 MHz, 重水) δ 162.80, 147.31, 143.48, 141.55, 131.15, 128.52, 100.05。
【0191】
1-((2R,3R,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-2-イル)-3-(イソプロポキシカルボニル)ピリジン-1-イウム トリフルオロメタンスルホネート (5g)。1H NMR (500 MHz, メタノール-d4) δ 9.88 (t, J = 1.6 Hz, 1H), 9.48 (dt, J = 6.3, 1.5 Hz, 1H), 9.16 (dt, J = 8.0, 1.5 Hz, 1H), 8.35 (dd, J = 8.1, 6.2 Hz, 1H), 6.26 (d, J = 4.7 Hz, 1H), 5.39 (hept, J = 6.3 Hz, 1H), 4.53 - 4.44 (m, 2H), 4.37 (dd, J = 4.9, 3.4 Hz, 1H), 4.07 (dd, J = 12.3, 2.7 Hz, 1H), 3.92 (dd, J = 12.3, 2.3 Hz, 1H), 1.49 (d, J = 6.4 Hz, 6H)。13C NMR (126 MHz, メタノール-d4) δ 162.20, 148.02, 144.76, 143.23, 132.72, 129.39, 102.55, 90.44, 79.85, 72.69, 72.05, 61.75, 21.85。19F NMR (471 MHz, メタノール-d4) δ -79.96。
【0192】
1-((2R,3R,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-2-イル)-3-((tert-ペンチルオキシ)カルボニル)ピリジン-1-イウム トリフルオロメタンスルホネート (5i)。1H NMR (500 MHz, メタノール-d4) δ 9.80 (d, J = 1.9 Hz, 1H), 9.45 (dd, J = 6.3, 1.5 Hz, 1H), 9.12 (dt, J = 8.1, 1.6 Hz, 1H), 8.33 (dd, J = 8.1, 6.2 Hz, 1H), 6.25 (d, J = 4.9 Hz, 1H), 4.49 (dd, J = 6.4, 3.8 Hz, 2H), 4.36 (dd, J = 4.9, 3.1 Hz, 1H), 4.05 (dd, J = 12.3, 2.8 Hz, 1H), 3.91 (dd, J = 12.3, 2.4 Hz, 1H), 2.05 (qd, J = 7.5, 1.9 Hz, 2H), 1.68 (s, 6H), 1.06 (t, J = 7.5 Hz, 3H)。13C NMR (126 MHz, メタノール-d4) δ 161.53, 147.92, 144.57, 142.95, 133.58, 129.34, 102.44, 90.61, 88.53, 79.87, 72.30, 61.87, 34.34, 25.67, 25.58, 8.56。19F NMR (471 MHz, メタノール-d4) δ -82.24。
【0193】
3-(tert-ブトキシカルボニル)-1-((2R,3R,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン-2-イル)ピリジン-1-イウム トリフルオロメタンスルホネート (5k)。1H NMR (500 MHz, メタノール-d4) δ 9.81 (d, J = 1.6 Hz, 1H), 9.44 (dd, J = 6.3, 1.5 Hz, 1H), 9.10 (dt, J = 8.1, 1.5 Hz, 1H), 8.31 (dd, J = 8.1, 6.2 Hz, 1H), 6.23 (d, J = 4.9 Hz, 1H), 4.46 (t, J = 4.6 Hz, 2H), 4.34 (dd, J = 4.8, 3.2 Hz, 1H), 4.04 (dd, J = 12.2, 2.7 Hz, 1H), 3.90 (dd, J = 12.2, 2.3 Hz, 1H), 1.70 (s, 9H)。13C NMR (126 MHz, メタノール-d4) δ 161.64, 147.98, 144.62, 143.12, 133.72, 129.28, 102.57, 90.63, 85.95, 79.97, 72.29, 61.86, 28.16。19F NMR (471 MHz, メタノール-d4) δ -82.38。
【0194】
実施例10
この実施例は、HEK-293細胞(ヒト胚腎臓)中のNAD+濃度に対する本発明の化合物の効果を実証する。
【0195】
HEK-293細胞を250 μMのニコチン酸エステルモノヌクレオチドで24 h処理し、次いでNAD+濃度を公知のNAD+サイクリングアッセイ(Jacobson, E. L. et al., Arch. Biochem. Biophys., 175: 627-634 (1976))を用いて決定した。細胞をPBSで洗浄し、血球計算法により計数し、そしてペレット化した。次いで細胞を7%過塩素酸で処理し、次いで1 M NaOHおよび500 mMリン酸カリウムでpH 8.5に中和した。次いでNAD+含量を、レザルフィン(rezarufin)(発光560 nm)に還元される染料としてレザズリンを用いてジアフォラーゼおよび乳酸デヒドロゲナーゼを用いてプレートリーダー上で測定した。NAD+レベルを、公知のNAD+濃度を用いて標準曲線を用いて定量した。NAD+濃度をnmol NAD+/106細胞に決定する。表1中の全ての値は、コントロールと比較して列挙する。化合物、その濃度、および得られたNAD+レベル(コントロールの百分率として)を表1に記載する。
【0196】
表1:エステルニコチン酸リボシド-5-ホスフェートの細胞に対する細胞効果
【0197】
【表1】
【0198】
実施例11
この実施例は、ニコチン酸モノヌクレオチドのHEK293およびNeuro2a細胞中の細胞内NAD+レベルに対する効果を実証する。
【0199】
ニコチン酸モノヌクレオチド、NaMNの哺乳類細胞株、Neuro2aおよびHEK293細胞におけるNAD+増強剤として働く能力を、8 hのインキュベーション後に試験した。NaMNを細胞増殖培地に1 mMの濃度で加えた。全ての細胞処理を二重で行った。1 mM濃度のニコチンアミドリボシド(NR)を陽性コントロールとして行った。未処理細胞は陰性コントロールとして働いた。細胞を割り当てられた時間処理し、次いでトリプシン(trysin)分離およびペレット化によって採集した。細胞を血球計によって計数し、次いで100 μLの過塩素酸(7%)での処理によって溶解した。次いで溶解物をNaOH溶液およびK2PO4溶液での処理によって中和した。NAD+濃度をジアホラーゼ(daphorase)ベースのアッセイによって決定した。NAD+標準もまた、標準曲線を確立するために行った。結果を図4にグラフで表示する。
【0200】
図4に示す結果から明らかなように、NRのみの処理は細胞中のNAD+含量の増加を生じる。NAD+の細胞内増加はNaMN処理では観察されなかった。これらの結果は、酸化合物NaMNが、哺乳類細胞に外部から適用された場合、NAD+前駆体またはNAD+エンハンサーとして働くように思われないことを示す。
【0201】
実施例12
この実施例は、異なるマウス組織におけるNAD+レベルに対する本発明化合物の投与の効果を実証する。
【0202】
マウスを200 μLのPBSに溶解した500 mg/kgまたは750 mg/kgの化合物のいずれかで強制飼養した。コントロールのマウスは200 μLのPBSのみを受け取った。同じ投薬量のニコチンアミドリボシド(NR)を陽性コントロールとして用いた。全ての場合において、各グループの動物の数は、少なくとも5匹であった。4時間後、動物を屠殺し、そして血液および組織を採集した。実験の1つのセットについて、マウスを化合物5fで強制飼養し、次いで1、2、または4 h後に屠殺した。組織をチューブ中、液体窒素で急速冷凍した。組織NAD+含量を液体窒素中、乳棒と乳鉢で組織をすりつぶすことによって測定した。すりつぶした組織を計量し、7%過塩素酸で処理し、次いで1 M NaOHおよび500 mMリン酸カリウムで8.5のpHに中和した。NAD+含量を、レザルフィン(rezarufin)(発光560 nm)に還元される染料としてレザズリンを用いてジアフォラーゼおよび乳酸デヒドロゲナーゼを用いてプレートリーダー上で測定した。NAD+レベルを、公知のNAD+濃度を用いて標準曲線を用いて定量した。NAD+濃度をnmol NAD+/mg組織として決定した。
【0203】
結果を図5-10にグラフで表示する。
【0204】
図5A-5Eは、500 mg/kgの化合物5f、500 mg/kgのNR(陽性コントロール)、またはコントロールの投薬4h後の、それぞれ肝臓、腎臓、脳、筋肉、および心臓におけるNAD+レベルを示す。
【0205】
図6A-6Cは、化合物5f、500 mg/kgのNR(陽性コントロール)、またはコントロールの投薬のそれぞれ1h、2h、4h後の血中NAD+レベルを示す。
【0206】
図7A-7Eは、750 mg/kgの化合物5d、750 mg/kgの化合物5e、750 mg/kgのNR(陽性コントロール)、またはコントロールの投薬4h後の、それぞれ肝臓、腎臓、脳、筋肉、および心臓におけるNAD+レベルを示す。
【0207】
図8A-8Dは、750 mg/kgの化合物5g、750 mg/kgの化合物5h、750 mg/kgのNR(陽性コントロール)、またはコントロールの投薬4h後の、それぞれ肝臓、腎臓、脳、および筋肉におけるNAD+レベルを示す。
【0208】
図9A-9Dは、750 mg/kgの化合物5i、750 mg/kgの化合物5j、750 mg/kgのNR(陽性コントロール)、またはコントロールの投薬4h後の、それぞれ肝臓、腎臓、脳、および筋肉におけるNAD+レベルを示す。
【0209】
図10A-10Dは、750 mg/kgの化合物5j、750 mg/kgの化合物5k、750 mg/kgのNR(陽性コントロール)、またはコントロールの投薬4h後の、それぞれ肝臓、腎臓、脳、および筋肉におけるNAD+レベルを示す。
【0210】
本出願中で引用される、刊行物、特許出願及び特許を含め、すべての参考文献は、それぞれの参考文献が、あたかも個別的にまた具体的に示されていて、参照によって包含されるかのようにそして全体が本出願に記載されているかのように、本出願の中に参照によって同範囲が包含される。
【0211】
本発明を記載する文脈において(特に以下の特許請求の範囲の文脈において)用語「a」および「an」ならびに「the」および「少なくとも1つ」および類似の指示対象の使用は、本明細書中に特に指示されない限り、または文脈によって否定されない限り、単数および複数の両方を含むと解釈されるべきである。1つ以上の項目のリストに続く用語「少なくとも1つ」(例えば、「AおよびBの少なくとも1つ」)の使用は、本明細書中に特に指示されない限り、または文脈によって否定されない限り、列挙した項目から選ばれる1つの項目(AまたはB)または列挙した項目の2つ以上の任意の組み合わせ(AおよびB)を意味すると解釈されるべきである。用語「含有する(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、および「含む(containing)」は、特に注釈されない限り、無制限の用語(すなわち、「含むが、限定されない」を意味する)として解釈されるべきである。本明細書中値の範囲の記載は、本明細書中に特に指示されない限り、範囲内にある各別個の値を個別に参照する省略方法として役立つことを単に意図し、そして各別個の値は、それが本明細書中に個別に記載されているとして明細書中に組み込まれる。本明細書中に記載の全ての方法は、本明細書中に特に指示されない限り、または文脈によって明確に否定されない限り、任意の適切な順序で行われ得る。本明細書中で提供される任意および全ての実施例、または例示的言語(例えば、「など」)の使用は、本発明をより明らかにすることを単に意図し、そして特にクレームされない限り本発明の範囲に限定を課さない。本明細書中にない言葉は、本発明の実施に必須であると任意のクレームされていない要素を示すと解釈されるべきである。
【0212】
本出願中には、発明者が知っている発明を実施する上での最善実施態様を含め、本発明の好ましい実施態様が記載されている。これらの好ましい実施態様から変形したものも、前述の記載を読んだ際に当業者には自明になるかもしれない。本発明者らは、このような変形したものも当業者は適宜採用するであろうことを期待しており、本発明が本出願中で具体的に記載した以外の態様でも実施されることを企図している。従って、本発明は、本明細書に添付する特許請求の範囲の中に具体的に記載される発明主題を改良したものや主題の均等物も全て、適用法により許される範囲内で、含む。更に、すべての可能な変形したものの中の上記要素のいかなる組み合わせも、別な様に示されているか或いは前後関係から明確に他の相反する意味に示されていない限り、本発明に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
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図10