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特許7182320GABAA受容体アロステリック増強化合物及びその調製並びに応用
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  • 特許-GABAA受容体アロステリック増強化合物及びその調製並びに応用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】GABAA受容体アロステリック増強化合物及びその調製並びに応用
(51)【国際特許分類】
   C07C 39/15 20060101AFI20221125BHJP
   C07F 9/09 20060101ALI20221125BHJP
   C07C 69/017 20060101ALI20221125BHJP
   C07C 37/18 20060101ALI20221125BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221125BHJP
   A61K 31/05 20060101ALI20221125BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20221125BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20221125BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20221125BHJP
   A61P 25/20 20060101ALI20221125BHJP
   A61P 1/08 20060101ALI20221125BHJP
   A61P 25/06 20060101ALI20221125BHJP
   A61P 25/08 20060101ALI20221125BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
C07C39/15 CSP
C07F9/09 Z
C07C69/017 B
C07C37/18
A61P43/00 111
A61K31/05
A61P25/00
A61P25/22
A61P25/24
A61P25/20
A61P1/08
A61P25/06
A61P25/08
A61P25/18
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021536132
(86)(22)【出願日】2019-07-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-23
(86)【国際出願番号】 CN2019095393
(87)【国際公開番号】W WO2020042766
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-03-19
(31)【優先権主張番号】201811010454.1
(32)【優先日】2018-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521083865
【氏名又は名称】シーアン リーバン ジャオシン バイオテクノロジー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】ワン, ルータオ
(72)【発明者】
【氏名】アン, ロン
(72)【発明者】
【氏名】ヂャオ, イー
(72)【発明者】
【氏名】パン, ジンファ
(72)【発明者】
【氏名】チェン, タオ
(72)【発明者】
【氏名】ワン, ウェイジャオ
【審査官】中島 芳人
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-503637(JP,A)
【文献】特開2015-067577(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 39/15
A61P 43/00
A61K 31/05
A61P 25/00
A61P 25/22
A61P 25/24
A61P 25/20
A61P 1/08
A61P 25/06
A61P 25/08
A61P 25/18
C07C 37/18
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式(1)で表される、GABA受容体アロステリック増強化合物又は、下記の式(2)で表される、前記化合物のプロドラッグ。
【化1】
[式(1)中、R及びRはそれぞれ独立してイソプロピル基又はn-プロピル基から選択される。ただし、Rがn-プロピル基である場合、Rがイソプロピル基ではない。]
【化2】
[式(2)中、R 及びR はそれぞれ独立して
【化3】
から選択され、R はC 1-4 アルキル基である。]
【請求項2】
下記の式(I)、(II)又は(III)で表される構造から選択されるものである、請求項1に記載のGABA受容体アロステリック増強化合物又はそのプロドラッグ。
【化4】
【請求項3】
請求項1又は2に記載のGABA受容体アロステリック増強化合物の製造方法であって、ホウ酸エステル系化合物(c)又は(c’)とパラブロモモノフェノール化合物(d)又は(d’)とを鈴木-宮浦クロスカップリング反応させてビフェノール化合物(1)を得ることを含む、GABA受容体アロステリック増強化合物又はそのプロドラッグの製造方法。
【化5】
【化6】
【請求項4】
ホウ酸エステル系化合物(c)又は(c’)とパラブロモモノフェノール化合物(d)又は(d’)との鈴木-宮浦クロスカップリング反応における反応温度は60~80℃である(反応時間は0.5~2時間であることが好ましい)、請求項に記載の製造方法。
【請求項5】
ホウ酸エステル系化合物(c)又は(c’)の調製工程を含む製造方法であって、
ブロモモノフェノール化合物(b)とBPDとを反応させてホウ酸エステル系化合物(c)を得ること、
【化7】
又は、
ブロモモノフェノール化合物(b’)とBPDとを反応させてホウ酸エステル系化合物(c’)を得ること、
【化8】
を含む、請求項又はに記載の製造方法。
【請求項6】
ブロモモノフェノール化合物(b)又は(b’)とBPDとをパラジウム触媒の存在下で反応させてホウ酸エステル系化合物(c)又は(c’)を得る(反応温度は80~150℃であり、反応時間は10~24時間であることが好ましい)、請求項に記載の製造方法。
【請求項7】
NBSによる臭素置換反応により一般式(a)又は(a’)の化合物からブロモモノフェノール化合物(b)又は(b’)を得る、ブロモモノフェノール化合物(b)又は(b’)の調製工程を含む、請求項に記載の製造方法。
【化9】
【請求項8】
治療上有効量の請求項1又は2に記載のGABA受容体アロステリック増強化合物又はそのプロドラッグ、及び1種又は複数種の薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項9】
動物又はヒトの鎮静催眠や脳保護の促進、不安、うつ、不眠、悪心、嘔吐、片頭痛、統合失調、驚厥やてんかんの治療及び/又は予防に用いられる、請求項1又は2に記載のGABA受容体アロステリック増強化合物又はそのプロドラッグ、或いは請求項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬分野に関し、具体的に、GABA受容体アロステリック増強化合物及びその調製並びに応用に関する。
【背景技術】
【0002】
てんかんは、大脳ニューロンが突発的に異常放電して一過性脳機能障害を引き起こす慢性疾患である。てんかん発作とは、脳ニューロンの異常や過剰な超同期性放電による臨床現象である。現在、中国の国内外にてんかん患者は益々高罹患率となってきているため、社会的に益々注目されている健康的な問題となっている。てんかん患者数が世界人口の0.5%~1%を占めることを統計的に示している。てんかんについての鋭意研究を続けているが、てんかんの病因やメカニズムについて十分に理解されていると言えず、現在使用されている薬物はてんかん患者の病態を一部緩和することしかできず、発展性大発作患者に対する有効率はわずか60%~70%である。
【0003】
近年、てんかんに関する研究が進み、GABA受容体がてんかん発作に密に関与していることが明らかとなった。GABA受容体は、ヒトの中枢組織に最も重要な中枢抑制性受容体であり、脳内GABA受容体の活性化がニューロンを過分極させ、ニューロンの興奮性を低下させることができる。ベンゾジアゼピン系やバルビタール系のような従来の抗てんかん薬、及びバルプロ酸ナトリウムやレベチラセタムのような新開発・市販の薬物は、いずれもGAB受容体作用の強化及び組織GABAの濃度の向上に関連している。
【0004】
特許文献1に開示されているビフェノール(3,3',5,5'-テトライソプロピル-4,4'-ビフェノール)は、西安力邦製薬有限会社によって開発された新しい抗てんかん薬であって、持続性てんかんを含む様々なてんかん発作の治療に用いられる新規なGABA受容体アロステリック制御エンハンサーである。該化合物は、前臨床試験に良好なてんかん抵抗性及び軽微な副作用を示しており、現在に臨床試験段階に移行している。しかし、前臨床試験により、該化合物は、静脈注射後に脳内への侵入速度が遅く、薬物が脳内で治療の閾値濃度に達するまでに一定の時間を必要とし、発作中のてんかん対して直ちに機能できず、そのため、本発明は、発現速度が速く、薬効がより高い抗てんかん薬を開発することを目的とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】中国特許出願公開第201010160034.9号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一つの目的は、GABA受容体アロステリック増強化合物又はそのプロドラッグを提供することである。
【0007】
本発明の他の目的は、上記GABA受容体アロステリック増強化合物又はそのプロドラッグの製造方法を提供することである。
【0008】
本発明のさらに他の目的は、医薬組成物を提供することである。
【0009】
本発明のさらに他の目的は、上記GABA受容体アロステリック増強化合物又はそのプロドラッグ、或いは上記医薬組成物の応用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、下記の式(1)で表されるGABA受容体アロステリック増強化合物又はそのプロドラッグを提供する。
【0011】
【化1】
【0012】
[式(1)中、R及びRはそれぞれ独立してイソプロピル基又はn-プロピル基から選択される。ただし、Rがn-プロピル基である場合、Rがイソプロピル基ではない。]
【0013】
本発明のいくつかの具体的な実施形態によれば、上記化合物は下記の式(I)、(II)又は(III)で表される構造から選択されるものである。
【0014】
【化2】
【0015】
本発明のいくつかの具体的な実施形態によれば、上記プロドラッグの構造は式(2)で表される。
【0016】
【化3】
【0017】
[式(2)中、R及びRはそれぞれ独立して
【化4】
から選ばれる。ただし、RはC1-4アルキル基である。]
【0018】
また、本発明は、さらに、
ホウ酸エステル系化合物(c)とパラブロモモノフェノール化合物(d)とを鈴木-宮浦クロスカップリング反応させてビフェノール化合物(1)を得ること、
【0019】
【化5】
【0020】
又は、
ホウ酸エステル系化合物(c’)とパラブロモモノフェノール化合物(d’)とを鈴木-宮浦クロスカップリング反応させてビフェノール化合物(1)を得ること、
【0021】
【化6】
【0022】
を含む、上記GABA受容体アロステリック増強化合物又はそのプロドラッグの製造方法を提供する。
【0023】
本発明のいくつかの具体的な実施形態によれば、ホウ酸エステル系化合物(c)又は(c’)とパラブロモモノフェノール化合物(d)又は(d’)との鈴木-宮浦クロスカップリング反応における反応温度は60~80℃である。
【0024】
本発明のいくつかの具体的な実施形態によれば、ホウ酸エステル系化合物(c)又は(c’)とパラブロモモノフェノール化合物(d)又は(d’)との鈴木-宮浦クロスカップリング反応における反応時間は0.5~2時間である。
【0025】
本発明のいくつかの具体的な実施形態によれば、上記方法は、さらに、ブロモモノフェノール化合物(b)とBPD(ジクロロフェニルホスフィン)とを反応させてホウ酸エステル系化合物(c)を得る、ホウ酸エステル系化合物(c)の調製工程を含む。
【0026】
【化7】
【0027】
本発明のいくつかの具体的な実施形態によれば、上記方法は、さらに、ブロモモノフェノール化合物(b’)とBPD(ジクロロフェニルホスフィン)とを反応させてホウ酸エステル系化合物(c’)を得る、ホウ酸エステル系化合物(c’)の調製工程を含む。
【0028】
【化8】
【0029】
本発明のいくつかの具体的な実施形態によれば、ブロモモノフェノール化合物(b)とBPDとをパラジウム触媒の存在下で反応させてホウ酸エステル系化合物(c)を得る。
【0030】
本発明のいくつかの具体的な実施形態によれば、ブロモモノフェノール化合物(b’)とBPDとをパラジウム触媒の存在下で反応させてホウ酸エステル系化合物(c’)を得る。
【0031】
本発明のいくつかの具体的な実施形態によれば、パラジウムの使用量は触媒量である。
【0032】
本発明のいくつかの具体的な実施形態によれば、ブロモモノフェノール化合物(b)とBPDとの反応における反応温度は80~150℃である。
【0033】
本発明のいくつかの具体的な実施形態によれば、ブロモモノフェノール化合物(b)とBPDとの反応における反応時間は10~24時間である。
【0034】
本発明のいくつかの具体的な実施形態によれば、ブロモモノフェノール化合物(b’)とBPDとの反応における反応温度は80~150℃である。
【0035】
本発明のいくつかの具体的な実施形態によれば、ブロモモノフェノール化合物(b’)とBPDとの反応における反応時間は10~24時間である。
【0036】
本発明のいくつかの具体的な実施形態によれば、上記方法は、さらに、NBSによる臭素置換反応により一般式(a)の化合物からブロモモノフェノール化合物(b)を得る、ブロモモノフェノール化合物(b)の調製工程を含む。
【0037】
【化9】
【0038】
本発明のいくつかの具体的な実施形態によれば、上記方法は、さらに、NBSによる臭素置換反応により一般式(a’)の化合物からブロモモノフェノール化合物(b’)を得る、ブロモモノフェノール化合物(b’)の調製工程を含む。
【0039】
【化10】
【0040】
本発明のいくつかの具体的な実施形態によれば、一般式(a)の化合物が、アセトニトリルを反応溶媒としてNBSによる臭素置換反応によりブロモモノフェノール化合物(b)となる。
【0041】
本発明のいくつかの具体的な実施形態によれば、一般式(a’)の化合物が、アセトニトリルを反応溶媒としてNBSによる臭素置換反応によりブロモモノフェノール化合物(b’)となる。
【0042】
本発明のいくつかの具体的な実施形態によれば、一般式(a)の化合物の、NBSによる臭素置換反応における反応温度は20~30℃である。
【0043】
本発明のいくつかの具体的な実施形態によれば、一般式(a)の化合物の、NBSによる臭素置換反応における反応温度は室温である。
【0044】
本発明のいくつかの具体的な実施形態によれば、一般式(a)の化合物の、NBSによる臭素置換反応における反応時間は2~10分間である。
【0045】
本発明のいくつかの具体的な実施形態によれば、一般式(a)の化合物の、NBSによる臭素置換反応における反応時間は5分間である。
【0046】
本発明のいくつかの具体的な実施形態によれば、一般式(a’)の化合物の、NBSによる臭素置換反応における反応温度は20~30℃である。
【0047】
本発明のいくつかの具体的な実施形態によれば、一般式(a’)の化合物の、NBSによる臭素置換反応における反応温度は室温である。
【0048】
本発明のいくつかの具体的な実施形態によれば、一般式(a’)の化合物の、NBSによる臭素置換反応における反応時間は2~10分間である。
【0049】
本発明のいくつかの具体的な実施形態によれば、一般式(a’)の化合物の、NBSによる臭素置換反応における反応時間は5分間である。
【0050】
また、本発明は、さらに、治療上有効量の本発明の上記のいずれかのGABA受容体アロステリック増強化合物又はそのプロドラッグ、及び1種又は複数種の薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤を含む、医薬組成物を提供する。
【0051】
また、本発明は、本発明の上記GABA受容体アロステリック増強化合物又はそのプロドラッグ、或いは本発明の上記医薬組成物の、動物又はヒトの鎮静催眠や脳保護の促進、不安、うつ、不眠、悪心、嘔吐、片頭痛、統合失調、驚厥やてんかんの治療及び/又は予防のための薬物の調製における応用を提供する。
【発明の効果】
【0052】
以上により、本発明は、GABA受容体アロステリック増強化合物及びその調製並びに応用を提供する。本発明の化合物には、以下の利点がある。
【0053】
本発明の化合物は、標的親和力活性がビフェノールと類似しているが、ビフェノールよりも血液脳関門を通って脳組織に取り込まれやすく、それにより動物体内でより良い薬効を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】ラット投与後の異なる時点での脳組織における化合物1及びビフェノールの濃度変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態を詳細に説明するが、本発明の保護範囲はこれに限定されない。
【0056】
実施例1
3,5-ジイソプロピル-3’,5’-ジプロピル-4,4’-ビフェノールの調製
合成ルート:
【0057】
【化11】
【0058】
ステップ1:4-ブロモ-2,6-ジイソプロピルフェノール(XA-1-1)
【0059】
【化12】
【0060】
2,6-ジイソプロピルフェノール(10.7 g, 60.1 mmol, 1.00 eq)を無水アセトニトリル(120 mL)に溶解し、撹拌しながらNBS(10.7 g, 60.1 mmol, 1.00 eq)を加え、撹拌しながら5分間反応させ、薄層クロマトグラフィーで反応を監視し、反応が終了した後、低温で遠心乾燥し、得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=20:1、Rf=0.4)で精製し、淡黄色油状物13.8 gを得た。
H NMR (500 MHz, Chloroform ) δ 7.21 (s, 1H), 3.73 (s, 1H), 3.05 (s, 1H), 1.14 (s, 6H)。
【0061】
ステップ2:2,6-ジイソプロピル-4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェノール(XA-1-2)
【0062】
【化13】
【0063】
XA-1-1(13.5 g, 52.5 mmol, 1.00 eq)をジオキサン/水(320 mL/32mL)に溶解し、KOAc(25.7 g, 262.5 mmol、5.00 eq)、BPD(66.7 g, 262.5 mmol, 5.00 eq )、Pd(dppf)ClDCM複合体(2.45 g, 3.00 mmol, 0.05 eq)を順次加え、窒素で5回置換し、室温で5分間撹拌した後、窒素保護下で、110℃で18時間加熱・攪拌した。完全に反応するまで薄層クロマトグラフィーで反応を監視した。反応液を遠心乾燥し、得られた固体を酢酸エチル(300 mL)で希釈し、飽和塩化ナトリウム溶液(100 mL x 3)で洗浄し、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。遠心乾燥し、得られた固体をカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=10:1、Rf=0.5)で精製し、淡黄色固体24.5 gを得た。
H NMR (500 MHz, Chloroform ) δ 7.02 (s, 2H), 3.12 (dtd, J = 13.7,6.7,1.0 Hz, 2H), 1.39 (s, 12H), 1.24 (d, J = 6.8 Hz, 12H)。
【0064】
ステップ3:1-(アリルオキシ)-2-プロピルベンゼン(XA-1-3)
【0065】
【化14】
【0066】
2-プロピルフェノール(2.72 g, 20.0 mmol, 1.00 eq)を無水アセトニトリル(120 mL)に溶解し、臭化アリル(10.7 g, 30.0 mmol, 1.50 eq)及び KCO(5.52 g, 40.0 mmol, 2.00 eq)を加え、80℃で8時間加熱・攪拌した。以上の反応条件で合計4回の反応を行った。完全に反応するまでLCMSで反応を監視した。反応液を合わせ、遠心乾燥し、酢酸エチル(200 mL)で希釈し、飽和塩化ナトリウム溶液(60 mL x 3)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、カラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=15:1、Rf=0.5)で精製し、無色油状物14.9gを得た。
H NMR (500 MHz, Chloroform ) δ 7.07 (s, 1H), 6.77 (t, J = 27.5 Hz, 3H), 6.06 (s, 1H), 5.37 (d, J = 60.0 Hz, 2H), 4.68 (s, 2H), 2.63 (s, 2H), 1.64 (s, 2H), 0.94 (s, 3H)。
【0067】
ステップ4:2-アリル-6-プロピルフェノール(XA-1-4)
【0068】
【化15】
【0069】
XA-1-3(5.00 g, 28.4 mmol, 1.00 eq)をPhNEt(57 mL)に溶解し、窒素で5回置換し、80分間還流した。完全に反応するまでLCMSで反応を監視した。反応液を酢酸エチル(200 mL)で希釈し、PhNEtがなくなるまで1 M の塩酸溶液(60 mL)で洗浄し(薄層クロマトグラフィーで監視し)、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、遠心乾燥し、得られた固体をカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=10:1、Rf=0.5)で精製し、黄色油状物3.7gを得た。
H NMR (500 MHz, Chloroform ) δ 7.31 - 6.90 (m, 3H), 5.92 (s, 1H), 5.12 (s, 1H), 4.87 (s, 1H), 4.24 (s, 1H), 3.33 (s, 2H), 2.63 (s, 2H), 1.64 (s, 2H), 0.94 (s, 3H)。
【0070】
ステップ5:2,6-ジプロピルフェノール(XA-1-5)
【0071】
【化16】
【0072】
XA-1-4(3.70 g, 21.0 mmol, 1.00 eq)をMeOH (57 mL)に溶解し、水素で5回置換し、水素雰囲気下で、室温で12時間攪拌し、 LCMSで反応を監視した。濾過し、ケーキをメタノール(20 mL x 2)で洗浄し、ろ液を合わせ、遠心乾燥し、黄色油状物2.95gを得た。
H NMR (500 MHz, Chloroform ) δ 7.09 (s, 1H), 6.93 (s, 2H), 4.73 (s, 1H), 2.63 (s, 4H), 1.64 (s, 4H), 0.94 (s, 6H)。
【0073】
ステップ6:4-ブロモ-2,6-ジプロピルフェノール(XA-1-6)
【0074】
【化17】
【0075】
XA-1-5(2.95 g, 16.6 mmol, 1.00 eq)を無水アセトニトリル(35 mL)に溶解し、撹拌しながらNBS(2.95 g, 16.6 mmol, 1.00 eq)を加え、5分間攪拌し、薄層クロマトグラフィーで反応を監視した。低温で遠心乾燥し、粗生成物をカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=20:1、Rf=0.4)で精製し、淡黄色油状物2.90gを得た。
1H NMR (500 MHz, Chloroform ) δ 7.09 (s, 2H), 4.64 (s, 1H), 2.63 (s, 4H), 1.64 (s, 4H), 0.94 (s, 6H)。
【0076】
ステップ7:3,5-ジイソプロピル-3',5'-ジプロピル-[1,1'-ビフェニル]-4,4'-ジオール(XA-1-7)
【0077】
【化18】
【0078】
XA-1-6(2.49 g, 9.80 mmol, 1.00 eq)をジオキサン/水(30 mL/15 mL)に溶解し、LiOH-HO(823 mg, 19.6 mmol, 2.00 eq)、XA-1-2(4.47 g, 14.7 mmol, 1.5 eq )、Pd(Amphos)Cl(372 mg, 0.49 mmol, 0.05 eq)を順次加え、窒素で5回置換し、室温で5分間撹拌した後、80℃で1時間加熱・攪拌し、LCMSで反応を監視した。反応液を酢酸エチル(90 mL)で希釈し、飽和塩化ナトリウム溶液(30 mL x 3)で洗浄し、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、遠心乾燥し、粗生成物をカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=10:1、Rf=0.4)で精製し、黄色固体1.75g(~90%純度)が得られ、粗生成物から高速液体クロマトグラフィーにより黄色固体生成物1.45gを得た。
H NMR (500 MHz, Chloroform ) δ 7.67 (s, 2H), 7.55 (s, 2H), 4.84 (s, 1H), 3.74 (s, 1H), 3.05 (s, 2H), 2.63 (s, 4H), 1.64 (s, 4H), 1.14 (s, 12H), 0.94 (s, 6H)。
【0079】
実施例2
3,3’,5-トリイソプロピル-5’-プロピル-4,4’-ビフェノールの調製
【0080】
【化19】
【0081】
化合物XA-1-2を調製するための工程は、実施例1と同様である。
【0082】
【化20】
【0083】
2-イソプロピルフェノール(10.88g, 80.0 mmol, 1.00 eq)を無水アセトニトリル(480 mL)に溶解し、臭化アリル(42.8 g, 120.0 mmol, 1.50 eq)及び KCO(22.08 g, 160.0 mmol, 2.00 eq)を加え、80℃で8時間加熱・攪拌した。完全に反応するまでLCMSで反応を監視した。反応液を合わせ、遠心乾燥し、酢酸エチル(800 mL)で希釈し、飽和塩化ナトリウム溶液(240 mL x 3)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、カラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=15:1、Rf=0.5)で精製し、無色油状物59.6gを得た。
【0084】
【化21】
【0085】
XA-2-1(15.00 g, 85.2mmol, 1.00 eq)をPhNEt(171 mL)に溶解し、窒素で5回置換し、80分間還流した。完全に反応するまでLCMSで反応を監視した。反応液を酢酸エチル(600 mL)で希釈し、PhNEtがなくなるまで1 M の塩酸溶液(160 mL)で洗浄し(薄層クロマトグラフィーで監視し)、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、遠心乾燥し、得られた固体をカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=10:1、Rf=0.5)で精製し、黄色油状物11.1gを得た。
【0086】
【化22】
【0087】
XA-2-2(7.4g, 42mmol, 1.00 eq)をMeOH(114 mL)に溶解し、Pd/C(0.37g)を加えて水素で5回置換し、水素雰囲気下で、室温で12時間攪拌し、LCMSで反応を監視した。濾過し、ケーキをメタノール(40 mL x 2)で洗浄し、ろ液を合わせ、遠心乾燥し、黄色油状物6.0gを得た。
【0088】
【化23】
【0089】
XA-2-3(6 g, 50mmol, 1.00 eq)を無水アセトニトリル(70 mL)に溶解し、撹拌しながらNBS(3g, 50mmol, 1.00 eq)を加え、5分間攪拌し、薄層クロマトグラフィーで反応を監視した。低温で遠心乾燥し、粗生成物をカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=20:1、Rf=0.4)で精製し、淡黄色油状物6gを得た。
【0090】
ステップ7:3,5-ジイソプロピル-3',5'-ジプロピル-[1,1'-ビフェニル]-4,4'-ジオール(XA-1-7)
【0091】
【化24】
【0092】
XA-2-4(2.49 g, 9.80 mmol, 1.00 eq)をジオキサン/水(30 mL/15 mL)に溶解し、LiOH-HO(823 mg, 19.6 mmol, 2.00 eq)、XA-1-2(4.47 g, 14.7 mmol, 1.5 eq)、Pd(Amphos)Cl(372 mg, 0.49 mmol, 0.05 eq)を順次加え、窒素で5回置換し、室温で5分間撹拌した後、80℃で1時間加熱・攪拌し、LCMSで反応を監視した。反応液を酢酸エチル(90 mL)で希釈し、飽和塩化ナトリウム溶液(30 mL x 3)で洗浄し、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、遠心乾燥し、粗生成物をカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=10:1、Rf=0.4)で精製し、黄色固体1.8g(~90%純度)が得られ、粗生成物から高速液体クロマトグラフィーにより黄色固体生成物1.5gを得た。
H NMR (500 MHz, Chloroform ) δ 7.67 (s, 3H), 7.55 (s, 1H), 3.99 (s, 1H), 3.92 (s, 1H), 3.05 (s, 3H), 2.63 (s, 2H), 1.64 (s, 2H), 1.14 (s, 18H), 0.94 (s, 3H)。
【0093】
実施例3
3-イソプロピル-3’,5,5’-トリプロピル-4,4’-ビフェノールの調製
【0094】
【化25】
【0095】
XA-1-6(13.5 g, 52.5 mmol, 1.00 eq)をジオキサン/水(320 mL/32mL)に溶解し、さらにKOAc(25.7 g, 262.5 mmol, 5.00 eq)、BPD(66.7 g, 262.5 mmol, 5.00 eq)、Pd(dppf)ClDCM複合体(2.45 g, 3.00 mmol, 0.05 eq)を順次加え、窒素で5回置換し、室温で5分間撹拌した後、窒素保護下で、110℃で18時間加熱・攪拌した。完全に反応するまで薄層クロマトグラフィーで反応を監視した。反応液を遠心乾燥し、得られた固体を酢酸エチル(300 mL)で希釈し、飽和塩化ナトリウム溶液(100 mL x 3)で洗浄し、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。遠心乾燥し、得られた固体をカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=10:1、Rf=0.5)で精製し、淡黄色固体24.5 gを得た。
【0096】
【化26】
【0097】
XA-2-4(2.49 g, 9.80 mmol, 1.00 eq)をジオキサン/水(30 mL/15 mL)に溶解し、LiOH-HO(823 mg, 19.6 mmol, 2.00 eq)、XA-1-8(4.47 g, 14.7 mmol, 1.5 eq)、Pd(Amphos)Cl(372 mg, 0.49 mmol, 0.05 eq)を順次加え、窒素で5回置換し、室温で5分間撹拌した後、80℃で1時間加熱・攪拌し、LCMSで反応を監視した。反応液を酢酸エチル(90 mL)で希釈し、飽和塩化ナトリウム溶液(30 mL x 3)で洗浄し、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、遠心乾燥し、粗生成物をカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル=10:1、Rf=0.4)で精製し、黄色固体1.8g(~90%純度)が得られ、粗生成物から高速液体クロマトグラフィーにより黄色固体生成物1.5gを得た。
H NMR (500 MHz, Chloroform ) δ 7.67 (s, 1H), 7.55 (s, 3H), 4.81 (s, 1H), 3.85 (s, 1H), 3.05 (s, 1H), 2.63 (s, 6H), 1.64 (s, 6H), 1.14 (s, 6H), 0.94 (s, 9H)。
【0098】
実験例1
1. 化合物1及びビフェノール(3,3’,5,5’-テトライソプロピル-4,4’-ビフェノール)の、静脈投与後のラットの脳組織における薬物分布の比較試験
体重200~220gのSDラット72匹をランダムに12群(時間群ごとに6匹)に分け、投与前に12時間絶食させた。化合物1又はビフェノールをそれぞれ45mg/kgの投与量で静脈投与し、ラットを投与後5分、15分、30分、1時間、2時間及び4時間で屠殺した直後に、脳組織を採取し、氷冷蒸留水で洗い流し、拭い取り、-40℃で凍結保存した。LC-MS/MS法にて、ラット投与後の異なる時点での脳組織における化合物1又はビフェノールの濃度を測定した。その結果を表1及び図1に示す。
【0099】
【表1】
【0100】
化合物1は、静脈注射後5分で脳組織における濃度がビフェノールの約3倍であり、化合物1は、脳組織における濃度ピーク値に達した時間が投与後15分であるが、ビフェノールは、濃度ピーク値に達した時間が投与後30分であった。化合物1は、脳組織AUC0-4hがビフェノールの約1.36倍であった。
【0101】
上記の結果によれば、同じ投与量で静脈投与した後、化合物1は、脳内への侵入速度及び侵入量がビフェノールよりも明らかに大きい傾向があった。
【0102】
2. 体外GABA受容体標的親和力実験
放射性リガンド([35S] TBPS)受容体の競争的結合による実験にて、試験化合物(10uM)とGABA受容体との親和力を評価した。その結果を表2に示す。
【0103】
【表2】
【0104】
上記の結果によれば、化合物1、2、3は、いずれもGABA受容体と高い親和力を有し、また、親和力がビフェノールに相当する傾向があった。
【0105】
3. 化合物1及びビフェノール(3,3’,5,5’-テトライソプロピル-4,4’-ビフェノール)の、PTZによるラットのてんかん発作への抵抗実験
この実験では、体重200~250 gのSD雄性ラット(西安交通大学から)に、ビフェノール注射液、化合物1、2、3の注射液、及び等体積のブランク溶媒をそれぞれ45mg/kgで静脈投与した。静脈投与後1分、3分、5分、10分、15分、30分、60分、90分、120分で、PTZを70mg/kgで腹腔内に注射してラットに強直間代性てんかん発作を誘発した。各薬物群について、各時点ごとに7匹のラットとし、Racine分類基準により、てんかん発作の等級を評価し、III級~V級の発作状態を記録した。発作強度に応じて、点数を記録した。具体的には、発作強度V級を5点として記録し、IV級を4点として記録し、III級を3点として記録し、III級以下を0点として記録した。動物群ごとの発作強度は7匹の点数の合計とし、その結果を表3に示す。
【0106】
【表3-1】
【0107】
【表3-2】
【0108】
上記の実験結果により、化合物1、2、3は、静脈注射後3~5 分で、PTZによるてんかん大発作を完全に抑制でき、且つその薬効を投与後120 分以上に持続できる傾向があった。一方、ビフェノールは、静脈注射後15 分でPTZによるてんかん大発作を完全に抑制でき、また、その薬効が投与後90分で弱くなる傾向があった。以上の結果から、本発明の化合物は、投与後の発現速度がビフェノールより明らかに向上し、ピーク効果の維持時間がビフェノールよりも大きい傾向があった。
図1