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特許7182334レーザ照射装置及びレーザ照射プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】レーザ照射装置及びレーザ照射プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 17/42 20060101AFI20221125BHJP
   G01S 17/66 20060101ALI20221125BHJP
   G09G 3/20 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
G01S17/42
G01S17/66
G09G3/20 680J
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019011203
(22)【出願日】2019-01-25
(65)【公開番号】P2020118595
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-11-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100205350
【弁理士】
【氏名又は名称】狩野 芳正
(74)【代理人】
【識別番号】100117617
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭策
(72)【発明者】
【氏名】落合 敦司
(72)【発明者】
【氏名】益川 一範
【審査官】▲高▼場 正光
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-072557(JP,A)
【文献】特開2014-098873(JP,A)
【文献】米国特許第06396577(US,B1)
【文献】特開2010-127818(JP,A)
【文献】国際公開第2018/220382(WO,A1)
【文献】米国特許第05013151(US,A)
【文献】中国特許出願公開第107514936(CN,A)
【文献】特開2004-363591(JP,A)
【文献】特開2018-184080(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48 - G01S 7/51
G01S 17/00 - G01S 17/95
G09G 3/20 - G09G 3/22
F41H 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1探知レーザ光を照射する第1レーザ発振器と、第2対処レーザ光を照射する第2レーザ発振器とを含む複数のレーザ発振器を備えたレーザアレイと、
前記第1探知レーザ光が目標に反射された反射光に基づき、検知情報を取得する検知装置と、
前記検知情報に基づき、前記目標の位置を推定し、推定した前記目標の位置に前記第2対処レーザ光を照射することを指示する第2対処信号を生成する制御装置と
を備え、
前記第2レーザ発振器は、前記第2対処信号に基づき、推定した前記目標の位置に前記第2対処レーザ光を照射し、
前記複数のレーザ発振器は、第1レーザ発振器群と、第2レーザ発振器群とを含み、
前記第1レーザ発振器群は、第1方向から前記レーザアレイを見ると前記レーザアレイに第1画像が表されるように、第1レーザ光群を前記第1方向に照射して、前記第1画像を前記第1方向に表示し、
前記第2レーザ発振器群は、前記第1方向と異なる第2方向から前記レーザアレイを見ると前記レーザアレイに第2画像が表されるように、第2レーザ光群を前記第2方向に照射して、前記第2画像を前記第2方向に表示し、
前記第1レーザ発振器は、前記第1レーザ発振器群に含まれる
レーザ照射装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記第1画像に応じて、前記複数のレーザ発振器から前記第1レーザ発振器群を選択する
請求項に記載のレーザ照射装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記第2画像に応じて、前記複数のレーザ発振器から前記第2レーザ発振器群を選択する
請求項1または2に記載のレーザ照射装置。
【請求項4】
前記第1レーザ発振器群に含まれる第3レーザ発振器は、前記第2レーザ発振器群に含まれ
前記第3レーザ発振器が、前記第1方向に前記第1レーザ光群を照射する期間は、前記第2方向に前記第2レーザ光群を照射する期間と異なる
請求項1から3のいずれか1項に記載のレーザ照射装置。
【請求項5】
第1探知レーザ光を照射する第1レーザ発振器と、第2対処レーザ光を照射する第2レーザ発振器とを含む複数のレーザ発振器を備えたレーザアレイと、
前記第1探知レーザ光が目標に反射された反射光に基づき、検知情報を取得する検知装置と、
前記検知情報に基づき、前記目標の位置を推定し、推定した前記目標の位置に前記第2対処レーザ光を照射することを指示する第2対処信号を生成する制御装置と
を備え、
前記第2レーザ発振器は、前記第2対処信号に基づき、推定した前記目標の位置に前記第2対処レーザ光を照射し、
前記検知装置は、第1目標と第2目標とを含む複数の前記目標を検知して前記検知情報を取得し、
前記制御装置は、
前記検知情報に基づき、前記第1目標の位置と、前記第2目標の位置とを推定し、
推定した前記第1目標の位置に前記第2対処レーザ光を照射することを指示する前記第2対処信号と、推定した前記第2目標の位置に第5対処レーザ光を照射することを指示する第5対処信号とを生成し、
前記第2レーザ発振器は、前記第2対処信号に基づき、推定した前記第1目標の位置に前記第2対処レーザ光を照射し、
前記複数のレーザ発振器は、
前記第5対処信号に基づき、推定した前記第2目標の位置に前記第5対処レーザ光を照射する第5レーザ発振器
を含む
ーザ照射装置。
【請求項6】
第1探知レーザ光を照射する第1レーザ発振器と、第2対処レーザ光を照射する第2レーザ発振器とを含む複数のレーザ発振器を備えたレーザアレイと、
前記第1探知レーザ光が目標に反射された反射光に基づき、検知情報を取得する検知装置と、
前記検知情報に基づき、前記目標の位置を推定し、推定した前記目標の位置に前記第2対処レーザ光を照射することを指示する第2対処信号を生成する制御装置と
を備え、
前記第2レーザ発振器は、前記第2対処信号に基づき、推定した前記目標の位置に前記第2対処レーザ光を照射し、
前記検知装置は、前記第2対処レーザ光が前記目標に照射されているときに、前記目標の位置を示す情報を含む前記検知情報を取得し、
前記制御装置は、
前記検知情報に基づき、前記目標の位置を推定し、
推定した前記目標の位置に応じて、第6対処レーザ光を照射することを指示する第6対処信号と、前記第2対処レーザ光の照射を停止することを指示する第7対処信号とを生成し、
前記複数のレーザ発振器は、
前記第6対処信号に基づき、前記目標の位置に前記第6対処レーザ光を照射する第6レーザ発振器
を含み、
前記第2レーザ発振器は、前記第7対処信号に基づき、前記目標の位置への前記第2対処レーザ光の照射を停止する
ーザ照射装置。
【請求項7】
前記制御装置は、前記第6対処信号を生成した後に、前記第7対処信号を生成する
請求項に記載のレーザ照射装置。
【請求項8】
前記制御装置は、
前記検知情報に基づき、前記目標の経路を推定し、
推定した前記目標の経路に基づき、所望の時刻における前記目標の位置を推定し、
前記所望の時刻に、推定した前記目標の位置に前記第6対処レーザ光を照射することを指示する前記第6対処信号を生成する
請求項またはに記載のレーザ照射装置。
【請求項9】
前記制御装置は、前記第2レーザ発振器が前記第2対処レーザ光を照射しているときに、推定した前記目標の位置に第1対処レーザ光を照射することを指示する第1対処信号を生成し、
前記第1レーザ発振器は、前記第1対処信号に基づき、推定した前記目標の位置に前記第1対処レーザ光を照射する
請求項1から8のいずれか1項に記載のレーザ照射装置。
【請求項10】
前記複数のレーザ発振器は、第4探知レーザ光を照射する第4レーザ発振器を含み、
前記制御装置は、前記第4探知レーザ光が照射される空間が、前記第1探知レーザ光が照射される空間と重ならないように前記第4レーザ発振器を制御する
請求項1からのいずれか1項に記載のレーザ照射装置。
【請求項11】
レーザアレイに並べられた第1レーザ発振器と第2レーザ発振器とを制御するプロラムであって、
探知レーザ光を照射することを前記第1レーザ発振器に指示する探知信号を生成するステップと、
前記探知レーザ光が第1目標に反射された反射光と、第2目標に反射された反射光とを受光することで取得される検知情報に基づき、前記第1目標の位置と、前記第2目標の位置とを推定するステップと、
第2対処レーザ光を、推定した前記第1目標の位置に照射することを前記第2レーザ発振器に指示する第2対処信号と、第5対処レーザを、推定した前記第2目標の位置に照射することを指示する第5対処信号とを生成するステップと
を演算装置に実行させるためのレーザ照射プログラム。
【請求項12】
レーザアレイに並べられた第1レーザ発振器と第2レーザ発振器とを制御するプロラムであって、
探知レーザ光を照射することを前記第1レーザ発振器に指示する探知信号を生成するステップと、
前記探知レーザ光が目標に反射された反射光を受光することで取得される検知情報に基づき、第2対処レーザ光を前記目標に照射することを前記第2レーザ発振器に指示する対処信号を生成するステップと
前記第2レーザ発振器が前記第2対処レーザ光を前記目標に照射されているときに、前記目標の位置を含む前記検知情報に基づき、前記目標の位置を推定するステップと、
推定した前記目標の位置に応じて、第6対処レーザ光を照射することを指示する第6対処信号と、前記第2対処レーザ光の照射を停止することを指示する第7対処信号とを生成するステップと
を演算装置に実行させるためのレーザ照射プログラム。
【請求項13】
レーザアレイに並べられた第1レーザ発振器と第2レーザ発振器とを制御するプロラムであって、
探知レーザ光を照射することを前記第1レーザ発振器に指示する探知信号を生成するステップと、
前記探知レーザ光が目標に反射された反射光を受光することで取得される検知情報に基づき、対処レーザ光を前記目標に照射することを前記第2レーザ発振器に指示する対処信号を生成するステップと
を演算装置に実行させ
前記探知信号は、
前記レーザアレイを第1方向から見ると、前記レーザアレイに第1画像が表されるように、前記レーザアレイに含まれる第1レーザ発信機群に第1レーザ光群を前記第1方向に照射して前記第1画像を前記第1方向に表示させることと、
前記レーザアレイを前記第1方向と異なる第2方向から見ると、前記レーザアレイに第2画像が表されるように、前記レーザアレイに含まれる第2レーザ発振器群に第2レーザ光群を前記第2方向に照射して前記第2画像を前記第2方向に表示されることと、
前記第1レーザ発振器は、前記第1レーザ発信機群に含まれることと、
を指示する
レーザ照射プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ照射装置及びレーザ照射プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
高出力のレーザ光を目標に照射して、遠隔で目標を破壊する技術が研究されている。例えば、特許文献1には、高出力連続波レーザ光を照射して目標を破壊する技術が開示されている。特許文献1に記載の装置は、高出力連続波レーザ光をパルス変換器によってパルスレーザ光に変換し、変換したレーザ光を目標に照射する。光学センサがこのレーザ光の反射光を受光して目標を検知する。制御器がパルス変換器によるパルス変換処理を停止することで、連続波レーザ光が目標に照射され、目標を破壊する。
【0003】
また、非機械式にレーザ光の照射方向を変更する技術が研究されている。例えば、特許文献2には、レーザの照射方向を波長により変更する技術が開示されている。特許文献1に記載の装置は、2つの分布ブラッグ反射鏡を備える導波路と、導波路内に光を入射させるための光入射口と、導波路内を導波する光を出射するための光出射口とを備える。
【0004】
特許文献3には、高出力のレーザの照射方向を非機械式に変更する技術が開示されている。特許文献3に記載の装置は、第1方向に長い第1垂直共振器面発光レーザ(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting LASER)と、第1垂直共振器面発光レーザに電流を注入する駆動回路とを備える。第1垂直共振器面発光レーザの第1方向の一端側に設けられた入射口に入射された入射光は、第1垂直共振器面発光レーザ内を垂直方向に反射されながら第1方向に進むとともに、第1垂直共振器面発光レーザの上面の出射口から出射光として照射される。この出射光が照射される方向が入射光の波長などに基づき出射口の法線方向から第1方向に傾くことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-127818号公報
【文献】特開2013-16591号公報
【文献】特開2017-157609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の状況に鑑みなされたものであり、レーザ光を用いた目標の探知などの処理を効率的に行うレーザ照射装置を提供することを目的の1つとする。他の目的については、以下の記載及び実施の形態の説明から理解することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下に、発明を実施するための形態で使用される番号・符号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号・符号は、特許請求の範囲の記載と発明を実施するための形態との対応関係の一例を示すために、参考として、括弧付きで付加されたものである。よって、括弧付きの記載により、特許請求の範囲は、限定的に解釈されるべきではない。
【0008】
上記目的を達成するための一実施の形態によるレーザ照射装置(1)は、レーザアレイ(10)と、検知装置(20)と、制御装置(30)とを備える。レーザアレイ(10)は、第1探知レーザ光を照射する第1レーザ発振器(11)と、第2対処レーザ光を照射する第2レーザ発振器(11)とを含む複数のレーザ発振器を備える。検知装置(20)は、第1探知レーザ光が目標(2)に反射された反射光(503)に基づき、検知情報を取得する。制御装置(30)は、検知情報に基づき、目標の位置を推定し、推定した目標の位置に第2対処レーザ光を照射することを指示する第2対処信号を生成する。第2レーザ発振器(11)は、第2対処信号に基づき、推定した目標の位置に第2対処レーザ光を照射する。
【0009】
一実施の形態によるレーザ照射装置(1)は、複数のレーザ発振器(11)が並べられたレーザアレイ(10)を備える。複数のレーザ発振器(11)は、複数のレーザ発振器のうちの一部のレーザ発振器(11)を含む第1レーザ発振器群と、複数のレーザ発振器のうちの一部のレーザ発振器(11)を含む第2レーザ発振器群とを備える。第1レーザ発振器群は、第1方向に第1レーザ光群を照射して、第1画像を第1方向に表示する。第2レーザ発振器群は、第1方向と異なる第2方向に第2レーザ光群を照射して、第2画像を第2方向に表示する。
【0010】
一実施の形態によるレーザ照射プログラムは、レーザアレイ(10)に並べられた第1レーザ発振器(11)と第2レーザ発振器(11)とを制御し、探知レーザ光を照射することを第1レーザ発振器(11)に指示する探知信号を生成するステップと、探知レーザ光が目標(2)に反射された反射光(503)を受光することで取得される検知情報に基づき、対処レーザ光を目標(2)に照射することを第2レーザ発振器(11)に指示する対処信号を生成するステップとを含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、目標の探知などの処理が効率的に行われ得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施の形態におけるレーザ照射装置の概略図である。
図2】一実施の形態におけるレーザ照射装置の動作に関するフローチャートである。
図3】一実施の形態におけるレーザ照射装置の探知空間を説明するための図である。
図4】一実施の形態における目標の位置を推定する処理を説明するための図である。
図5】一実施の形態における複数の目標に対処する動作を説明するための図である。
図6】一実施の形態における移動する目標に対処する動作を説明するための図である。
図7】一実施の形態における移動する目標に対処する動作を説明するためのレーザアレイの拡大図である。
図8】一実施の形態における移動する目標に対処する動作を説明するための図である。
図9】一実施の形態におけるレーザアレイに画像を表示する動作を説明するための図である。
図10】一実施の形態における見る方向により異なる画像を表示するレーザアレイの動作を説明するための図である。
図11】一実施の形態における制御装置の概略図である。
図12】一実施の形態におけるレーザ発振器の概略図である。
図13図12のA-A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
一実施の形態によるレーザ照射装置1は、出力レーザ光501を用いて、目標2を探知するとともに、目標2を破壊するように構成されている。レーザ照射装置1は、図1に示すように、レーザアレイ10と、検知装置20と、制御装置30とを備える。
【0014】
レーザアレイ10は、表面に出力レーザ光501を照射する複数のレーザ発振器11が並べられて形成されている。例えば、レーザ発振器11は規則的に、例えば格子状に並べられてもよい。レーザ発振器11は、不規則にならべられてもよい。レーザアレイ10には、レーザ発振器11が高密度に配置され、例えば、1平方メートル当たり、400以上のレーザ発振器11が配置されている。レーザ発振器11は、1平方メートル当たり1万以上配置されていてもよい。
【0015】
レーザ発振器11は、出力レーザ光501を照射する方向を任意に変更することができる。例えば、レーザ発振器11は、出力レーザ光501を照射する方向を非機械式に、かつ、二次元的に変更する。レーザ発振器11が照射した出力レーザ光501の光路上に目標2、例えばドローンが存在する場合、目標2は出力レーザ光501を反射光503として反射する。レーザ発振器11の詳細は後述する。
【0016】
検知装置20は、目標2が反射した反射光503を受光して、目標2が撮像された画像などの検知情報を取得する。例えば、検知装置20は、可視光カメラ、赤外線カメラ、紫外線カメラなど光学センサを含み、出力レーザ光501に照らされた目標2を撮像する。検知装置20は、目標2が撮像された画像を検知情報として取得し、制御装置30に送信する。検知装置20は、反射光503を検知する任意の装置を選択してもよい。
【0017】
制御装置30は、検知装置20が取得した画像などの検知情報に基づき、目標2の位置を推定する。制御装置30は、検知装置20が撮像した画像において目標2が写されている位置を抽出する。検知装置20が撮像した方向と、撮像した画像において目標2が写されている位置とに基づき、制御装置30は目標2の位置を推定する。制御装置30は、推定した目標2の位置に出力レーザ光501を照射するための要求を複数のレーザ発振器11に送信する。
【0018】
複数のレーザ発振器11は、推定された目標2の位置に出力レーザ光501を照射する。例えば、目標2の位置に照射することができるレーザ発振器11のすべてが目標2の位置に出力レーザ光501を照射してもよい。目標2の位置において、複数のレーザ発振器11から照射された出力レーザ光501が重なることで、出力レーザ光501のエネルギーが増加される。この結果、目標2を破壊することができる。このため、レーザ発振器11が照射する出力レーザ光501は、目標2の位置において出力レーザ光501のエネルギーが強めあうように干渉する位相を有してもよい。この場合、各々のレーザ発振器11が照射する出力レーザ光501の位相は、制御装置30から指示される。
【0019】
このように、レーザ照射装置1は、目標2を探知するための探知レーザ光として出力レーザ光501を照射し、探知した目標2を攻撃するための対処レーザ光として、複数の出力レーザ光501を目標2に照射することができる。このため、目標2の探知と、目標2への攻撃とが効率的に行われ得る。なお、レーザアレイ10は、探知レーザ光のみを照射できるレーザ発振器11を備えてもよい。また、レーザアレイ10は、対処レーザ光のみを照射できるレーザ発振器11を備えてもよい。レーザアレイ10に含まれるすべてのレーザ発振器11は、探知レーザ光と対処レーザ光とを照射できるように構成されていてもよい。
【0020】
レーザ照射装置1の動作をより詳細に説明する。レーザ照射装置1は、図2に示す処理を行う。ステップS100において、検知装置20は、画像の撮像など目標2を検知するための監視を開始し、検知情報を取得する。検知装置20が検知する方向、例えば画像を撮像する方向は、制御装置30からの指示に基づき、決定されてもよい。検知装置20が検知する方向は、所望の方向に固定されていてもよい。
【0021】
ステップS110において、レーザ発振器11は、探知レーザ光として出力レーザ光501を照射する。制御装置30は、探知レーザ光を照射するレーザ発振器11を決定し、レーザ発振器11に探知レーザ光を照射することを示す探知信号を生成する。探知レーザ光を照射するレーザ発振器11は、探知レーザ光が探知すべき探知空間600に照射できるように決定される。例えば、図3に示すように、制御装置30は、複数のレーザ発振器11のうち第1レーザ発振器11-1と、第2レーザ発振器11-2とに探知信号を送信する。探知信号には、探知レーザ光を照射する方向が示されている。第1レーザ発振器11-1は、受信した探知信号に基づき、第1探知空間600-1に探知レーザ光を照射する。第2レーザ発振器11-2は、受信した探知信号に基づき、第2探知空間600-2に探知レーザ光を照射する。例えば、第1探知空間600-1と第2探知空間600-2とは異なる空間である。第1探知空間600-1と第2探知空間600-2とは重なっていても、重ならなくてもよい。レーザアレイ10に設けられたすべてのレーザ発振器11が探知レーザ光を照射してもよく、一部のレーザ発振器11が探知レーザ光を照射してもよい。1のレーザ発振器11が探知レーザ光を照射してもよい。
【0022】
ステップS120において、制御装置30は、検知装置20が取得する検知情報に、目標2の情報が含まれるかを判断する。例えば、制御装置30は、検知装置20が撮像した画像において、所定の閾値より明るい領域があるときに、目標2の情報が含まれていると判断する。検知情報に目標2の情報が含まれていると判断した場合、ステップS130に移行する。検知情報に目標2の情報が含まれていないと判断した場合、ステップS110に戻り、目標2を検知するまで処理を繰り返す。
【0023】
ステップS130において、制御装置30は、検知情報に基づき、目標2の位置を推定する。例えば、レーザ照射装置1が複数の検知装置20を備える場合、各々の検知装置20が撮像した画像から目標2が写されている位置を抽出する。抽出された目標2の位置と、検知装置20が撮像している方向とに基づき、検知装置20から目標2に向かう目標方向601が推定される。制御装置30は、図4に示すように、各々の検知装置20から目標2に向かう目標方向601に延びる直線が交差する位置を目標2の位置として推定する。
【0024】
例えば、レーザ発振器11が探知レーザ光としてパルスレーザ光を照射する場合、制御装置30は、レーザ発振器11が探知レーザ光を照射してから検知装置20が反射光503を受光するまでの時間に基づき、目標2までの距離を推定する。検知装置20から目標2に向かう目標方向601は、検知装置20が取得した検知情報に基づき推定される。目標2までの距離と、目標方向601とに基づき、制御装置30は目標2の位置を推定する。
【0025】
ステップS140において、制御装置30は、レーザ発振器11を制御し、対処レーザ光として出力レーザ光501を目標2に照射する。制御装置30は、対処レーザ光を照射する複数のレーザ発振器11を決定し、ステップS130で推定した目標2の位置に対処レーザ光を照射するための対処信号を決定した複数のレーザ発振器11に送信する。レーザ発振器11は、対処信号により対処レーザ光を照射する方向を指定され、指定された方向に対処レーザ光を照射する。レーザ発振器11が照射した対処レーザ光は、目標2で重なり、目標2を破壊する。
【0026】
対処レーザ光を照射するレーザ発振器11は、目標2の位置に基づき、決定される。レーザ発振器11のうち、目標2に対処レーザ光を照射できるレーザ発振器11が対処レーザ光を目標2に照射する。例えば、これらのレーザ発振器11のすべてが対処レーザ光を目標2に照射してもよい。また、これらのレーザ発振器11の一部、例えば照射角が30度以下となるレーザ発振器11が対処レーザ光を目標2に照射してもよい。照射角は、レーザ発振器11から、レーザ発振器11が出力レーザ光501を照射できる空間の中心に向かう方向と、出力レーザ光501の照射方向との成す角を示す。なお、対処レーザ光を照射しないレーザ発振器11は、ステップS110の動作として探知レーザ光を照射してもよい。この探知レーザ光を照射する空間は、対処レーザ光を照射しているレーザ発振器11が探知レーザ光を照射していた空間と重なってもよい。また、この探知レーザ光を照射する空間は、対処レーザ光を照射しているレーザ発振器11が探知レーザ光を照射していた空間を含んでもよい。
【0027】
レーザ発振器11は、目標2の移動に合せて、対処レーザ光を照射する位置を変更する。検知装置20は、レーザ発振器11が対処レーザ光を照射している最中も、検知情報を取得する。目標2が対処レーザ光を反射光503として反射するため、検知情報に目標2の情報が含まれる。この検知情報に基づき、制御装置30は、ステップS130と同様に、目標2の位置を推定する。既に決定したレーザ発振器11に、目標2の位置を更新した対処信号が送信される。レーザ発振器11は、更新された目標2の位置に対処レーザ光を照射する。目標2の位置は、対処レーザ光を照射していないレーザ発振器11が目標2に探知レーザ光を照射することで、推定されてもよい。
【0028】
ステップS150において、制御装置30は、目標2を破壊したかを判断する。制御装置30は、検知装置20が取得する検知情報に基づき、目標2の推定位置に目標2が存在するかを確認する。例えば、制御装置30は、ステップS120と同様に、検知情報に目標2の情報が含まれているかを判断する。検知情報に目標2の情報が含まれていない場合、制御装置30は目標2を破壊したと判断する。検知情報に目標2の情報が含まれている場合、ステップS130と同様に、目標2の位置を推定する。目標2の推定位置に、レーザ発振器11が対処レーザ光を照射している位置が含まれない場合、制御装置30は、目標2を破壊したと判断する。目標2の推定位置が、レーザ発振器11が対処レーザ光を照射している位置と同じ場合、制御装置30は、目標2を破壊していないと判断する。制御装置30が目標2を破壊していないと判断した場合、ステップS140に戻り、レーザ発振器11は対処レーザ光を目標2に照射し続ける。制御装置30が目標2を破壊したと判断した場合、ステップS110に戻り、レーザ発振器11は探知レーザ光を照射する。
【0029】
このように、レーザ照射装置1は、レーザ発振器11から探知レーザ光と対処レーザ光とを照射することで、目標2の検知と破壊とを行う。探知レーザ光のエネルギーは、対処レーザ光のエネルギーよりも小さくてもよい。
【0030】
(複数の目標への照射)
レーザ照射装置1は、図5に示すように、複数の目標2に対処レーザ光を照射してもよい。例えば、検知装置20が取得する検知情報に、第1目標2-1と、第2目標2-2との情報が含まれる。制御装置30は、検知情報に基づき、第1目標2-1の位置と第2目標2-2の位置とを推定する。制御装置30は、第1目標2-1の推定位置に基づき第1目標2-1に対処レーザ光を照射するレーザ発振器11と、第2目標2-2の推定位置に基づき第2目標2-2に対処レーザ光を照射するレーザ発振器11とを決定する。第1目標2-1に対処レーザ光を照射できる第1レーザ発振器11-1が第2目標2-2に対処レーザ光を照射できる第2レーザ発振器11-2と異なる場合、制御装置30は、目標2に対処レーザ光を照射するための対処信号をそれぞれのレーザ発振器11に送信する。レーザ発振器11は、対処信号に基づき、第1目標2-1または第2目標2-2に対処レーザ光を照射する。
【0031】
第1目標2-1と第2目標2-2との両方に対処レーザ光を照射できるレーザ発振器11がある場合、制御装置30は、このレーザ発振器11に割当てる目標2を決定する。例えば、制御装置30は、照射角が最も小さくなる目標2を、レーザ発振器11に割当ててもよい。第1目標2-1に対処レーザ光を照射するレーザ発振器11の数が、第2目標2-2に対処レーザ光を照射するレーザ発振器11の数と等しくなるように、目標2がレーザ発振器11に割当てられてもよい。
【0032】
制御装置30は、検知装置20が取得した検知情報に基づき、目標2の位置、速度、加速度、進行方向などの目標情報を推定して、レーザ発振器11に割当てる目標2を決定してもよい。例えば、制御装置30は、レーザ照射装置1からの距離が最も短い目標2をレーザ発振器11に割当ててもよい。目標2の位置と速度とに基づき、レーザ照射装置1に最も早く到達する目標2がレーザ発振器11に割当てられてもよい。目標2の速度などを推定するには、まず、制御装置30が、異なる時刻に検知装置20が取得した検知情報に基づき、各々の時刻の目標2の位置を推定する。次に、検知装置20が検知情報を取得した時刻と、各々の時刻における目標2の位置とに基づき、制御装置30は目標2の速度などを推定する。レーザ照射装置1が施設などを防護する場合、制御装置30は、この防護対象からの距離が最も近い目標2をレーザ発振器11に割当ててもよい。防護対象に最も早く到達する目標2が、レーザ発振器11に割当てられてもよい。
【0033】
目標情報には、航空機、ドローン、飛しょう体、車両などの移動体の種類が含まれてもよい。制御装置30は、検知装置20が取得した検知情報に基づき、航空機、ドローン、飛しょう体、車両などの目標2の種類を推定して、レーザ発振器11に割当てる目標2を決定してもよい。この場合、制御装置30は、検知装置20が取得した検知情報に基づき、目標2の形状を推定する。制御装置30は、登録されている登録形状の中から、推定された形状に最も近い登録形状を検索する。検索された登録形状に対応する種類が、目標2の種類として推定される。推定された種類に対応した優先度が検索され、最も優先度が高い目標2がレーザ発振器11に割当てられる。この場合、制御装置30に、登録形状と、種類と、優先度とが対応付けられて登録されている。また、目標情報には、移動体の用途、機種などが含まれてもよい。この場合、移動体の用途、機種などに優先度が設定される。
【0034】
制御装置30は、検知装置20が取得した検知情報に基づき、目標2の脅威度を算出して、脅威度が最も高い目標2をレーザ発振器11に割当ててもよい。脅威度は、目標2の種類、大きさ、速度、進行方向などから算出される。
【0035】
制御装置30は、入力装置を備え、ユーザが選択した目標2をレーザ発振器11に割当ててもよい。
【0036】
(目標の移動に応じた照射)
目標2がレーザアレイ10の表面の面内方向に移動する場合、図6に示すように、制御装置30は、目標2の移動に応じて、対処レーザ光を照射するレーザ発振器11を変更してもよい。理解を容易にするため、直交座標系を用いて説明する。レーザアレイ10の表面の面内方向をx方向とy方向とし、レーザアレイ10の表面の法線方向をz方向として説明する。
【0037】
例えば、目標2がx方向に移動する場合、制御装置30は、目標2に対処レーザ光を照射している第1レーザ発振器11-1のx方向に配置されている第2レーザ発振器11-2に目標2を割当てる。制御装置30は、第1レーザ発振器11-1による対処レーザ光の照射を停止する。さらに目標2がx方向に移動する場合、制御装置30は、目標2に対処レーザ光を照射している第2レーザ発振器11-2のx方向に配置されている第3レーザ発振器11-3に目標2を割当てる。制御装置30は、第2レーザ発振器11-2による対処レーザ光の照射を停止する。
【0038】
具体的には、目標2がx方向に移動する場合、レーザ発振器11は次のように動作する。図7に示すように、レーザ発振器11のうち照射発振器11aが目標2に対処レーザ光を照射している。レーザ発振器11のうち、照射発振器11aに隣接する隣接領域12に配置された隣接発振器11bは、対処レーザ光を照射していない。
【0039】
目標2がx方向に移動すると、隣接発振器11bのうちの一部が目標2に対処レーザ光を照射する。目標2がx方向に移動するため、照射発振器11aのx方向に配置された第1隣接発振器11b-1は、照射発振器11aが照射していた角度で、目標2に対処レーザ光を照射することができる。このため、制御装置30は、第1隣接発振器11b-1が目標2に対処レーザ光を照射するように対処信号を生成する。第1隣接発振器11b-1は、対処信号に基づき、目標2に対処レーザ光を照射する。
【0040】
目標2がx方向に移動すると、照射発振器11aのうちの一部が対処レーザ光の照射を停止する。目標2がx方向に移動するため、目標2の移動方向と反対方向である-x方向に配置された第1照射発振器11a-1は、照射発振器11aが照射していた角度で、目標2に対処レーザ光を照射することができない。このため、制御装置30は、第1照射発振器11a-1に対処レーザ光の照射を停止するように対処信号を生成する。第1照射発振器11a-1は、対処信号に基づき、対処レーザ光の照射を停止する。
【0041】
第1隣接発振器11b-1は、第1照射発振器11a-1が対処レーザの照射を停止する前に、対処レーザを照射してもよい。また、第1隣接発振器11b-1は、第1照射発振器11a-1が対処レーザの照射を停止した後に、対処レーザを照射してもよい。第1隣接発振器11b-1は、第1照射発振器11a-1が対処レーザの照射を停止すると同時に、対処レーザを照射してもよい。
【0042】
制御装置30は、第1照射発振器11a-1に送信する対処信号を生成する前に、第1隣接発振器11b-1に送信する対処信号を生成してもよい。また、制御装置30は、第1照射発振器11a-1に送信する対処信号を生成した後に、第1隣接発振器11b-1に送信する対処信号を生成してもよい。制御装置30は、第1照射発振器11a-1に送信する対処信号を生成すると同時に、第1隣接発振器11b-1に送信する対処信号を生成してもよい。
【0043】
隣接領域12に配置された隣接発振器11bは、探知レーザ光を照射しないように制御されてもよい。隣接発振器11bは、目標2に対処レーザ光を照射する可能性が高いレーザ発振器11と言える。探知レーザ光の照射方向は、探知空間600の全体に探知レーザ光が照射されるように制御される。隣接発振器11bが探知レーザ光を照射しないように制御されることで、探知空間600に探知レーザ光を照射している最中に、対処レーザ光の照射を開始することが抑制される。隣接領域12は、目標2の進行方向、速度、加速度などに応じて、形状を変形してもよい。
【0044】
目標2がy方向に移動する場合なども、x方向に移動する場合と同様に、制御装置30はレーザ発振器11を制御することができる。
【0045】
制御装置30は、図8に示すように、検知情報から目標2の推定経路3を推定して、推定経路3に基づき、目標2に対処レーザ光を照射するレーザ発振器11を決定してもよい。目標2に対処レーザを照射しているレーザ発振器11が、照射領域13に配置されている。この場合、最初に、制御装置30は目標2の推定経路3を推定する。例えば、検知装置20が取得した検知情報から、目標2の位置、速度、加速度、機種などの目標情報を推定する。目標2の推定した目標情報に基づき、目標2の推定経路3が推定される。
【0046】
次に、制御装置30は、推定経路3に基づき、所望の時刻において、目標2に対処レーザ光を照射するレーザ発振器11を決定する。例えば、制御装置30は、目標2の推定経路3に基づき、所望の時刻における目標2の推定位置4、例えば第1推定位置4-1と第2推定位置4-2とを推定する。第1推定位置4-1に基づき、目標2が第1推定位置4-1に達したときに対処レーザ光を照射するレーザ発振器11(例えば、第1推定照射領域14-1に配置されたレーザ発振器11)が決定される。同様に、第2推定位置4-2に基づき、目標2が第2推定位置4-2に達したときに対処レーザ光を照射するレーザ発振器11(例えば、第2推定照射領域14-2に配置されたレーザ発振器11)が決定される。
【0047】
制御装置30は、レーザ発振器11が対処レーザ光を目標2に照射するスケジュールを決定し、スケジュールに基づき、レーザ発振器11を制御する。制御装置30は、目標2が推定位置4に到達する時刻と、推定照射領域14に配置されたレーザ発振器11とに基づき、各々のレーザ発振器11が対処レーザ光を照射するスケジュールを決定する。このスケジュールに従い、制御装置30は、レーザ発振器11を制御する対処信号を生成する。例えば、目標2が第1推定位置4-1に到達した時刻に、第1推定照射領域14-1に配置されたレーザ発振器11に対処信号を送信する。これにより、決定したスケジュールに従い、レーザ発振器11は目標2に対処レーザ光を照射する。
【0048】
このように、目標2の推定経路3を推定することで、制御装置30は、レーザ発振器11が対処レーザ光を目標2に照射するスケジュールを決定してもよい。このスケジュールは、検知装置20が検知情報を取得するときに、更新されてもよい。複数の目標2を検知した場合、図5に示すように、各々の目標2に対処レーザ光を照射するレーザ発振器11が決定されてもよい。
【0049】
(レーザアレイの表示)
制御装置30は、図9に示すように、文字、絵などの画像がレーザアレイ10に表示されるように、探知レーザ光を照射するレーザ発振器11を選択してもよい。例えば、制御装置30は、レーザアレイ10において「AAA」の文字の形状に合わせた領域(例えば文字の占める領域、文字の縁が占める領域など)を決定する。制御装置30は、この領域に配置されたレーザ発振器11をレーザ発振器群として選択して、選択したレーザ発振器群に探知レーザ光を照射することを示す探知信号を送信する。レーザ発振器群に含まれるレーザ発振器11は、探知信号に基づき、出力レーザ光501を探知レーザ光として照射する。このため、各々のレーザ発振器11が照射した出力レーザ光501を含むレーザ光群が照射される。このレーザ光群が照射された方向からレーザアレイ10を見ると、「AAA」の文字が表示される。また、レーザ発振器11が探知レーザ光を照射するため、探知レーザ光は目標2に反射され、検知装置20に到達する。この結果、検知装置20は、目標2を検知することができる。このように、レーザアレイ10は、文字を表示しながら、目標2を探知することができる。
【0050】
レーザアレイ10に画像を表示する方向に合せて、探知レーザ光を照射する方向を任意に選択することができる。例えば、複数の方向に画像を表示する場合、対応するレーザ発振器11が探知レーザ光を複数の方向に照射する。例えば、所定の方向に探知レーザ光を照射する間隔を1/25秒にすることで、この方向からレーザアレイ10を見ると、レーザアレイ10上の画像が表示される。画像に応じて選択されたレーザ発振器11のうち、一部のレーザ発振器11が第1方向に探知レーザ光を照射するときに、他のレーザ発振器11が第1方向と異なる方向に探知レーザ光を照射してもよい。
【0051】
制御装置30は、図10に示すように、レーザアレイ10を見る方向に応じて、レーザアレイ10に表示される画像を変更してもよい。
【0052】
例えば、制御装置30は、第1方向に「AAA」の文字列の形状に合わせて、レーザ光群を照射するようにレーザ発振器11を制御する。具体的には、制御装置30は、「AAA」の文字列の形状に合わせてレーザアレイ10上の領域を決定し、この領域に配置されたレーザ発振器11を第1レーザ発振器群として選択する。選択された第1レーザ発振器群は、制御装置30からの指示に従い、第1出力レーザ光501-1を探知レーザ光として第1方向に照射する。この結果、第1方向からレーザアレイ10を見ると、「AAA」の文字列が表示される。
【0053】
同様に、制御装置30は、第1方向と異なる第2方向に「BBB」の文字列の形状に合わせて、レーザ光群を照射するようにレーザ発振器11を制御する。具体的には、制御装置30は、「BBB」の文字列の形状に合わせてレーザアレイ10上の領域を決定し、この領域に配置されたレーザ発振器11を第2レーザ発振器群として選択する。選択された第2レーザ発振器群は、制御装置30からの指示に従い、第2出力レーザ光501-2を探知レーザ光として第2方向に照射する。この結果、第2方向からレーザアレイ10を見ると、「BBB」の文字列が表示される。
【0054】
第1レーザ発振器群と第2レーザ発振器群との両方に含まれるレーザ発振器11は、第1方向と第2方向とに探知レーザ光を照射する。これにより、1つのレーザアレイ10で、複数の方向に異なる画像を表示することができる。
【0055】
(ソフトウェア処理)
制御装置30は、ソフトウェア処理により、レーザ発振器11を制御してもよい。この場合、制御装置30は、図11に示すように、演算装置31と、記憶装置32とを備える。
【0056】
記憶装置32は、レーザ発振器11を制御するために用いられる様々なデータを格納する。例えば、レーザ照射ソフトウェア33が記憶装置32にインストールされており、記憶装置32は、レーザ照射ソフトウェア33を記憶する非一時的記憶媒体(non-transitory tangible storage medium)として用いられる。レーザ照射ソフトウェア33は、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体40に記録されたコンピュータプログラム製品(computer program product)として提供されてもよく、または、サーバからダウンロード可能なコンピュータプログラム製品として提供されてもよい。
【0057】
演算装置31は、レーザ照射ソフトウェア33を実行して、レーザ発振器11を制御するための様々なデータ処理を行う。演算装置31は、レーザ発振器11を制御するための探知信号と対処信号とを生成するとともに、目標2の位置を推定する。例えば、レーザ発振器11は、探知信号に基づき、探知レーザ光を照射する。演算装置31は、検知装置20が検知した探知レーザ光の反射光503に基づき、目標2の位置を推定する。推定した位置に基づき、対処信号が生成される。レーザ発振器11は、対処信号に基づき、目標2に対処レーザ光を照射する。
【0058】
(レーザ発振器)
非機械式に出力レーザ光501の照射方向を変更することができるレーザ発振器11を説明する。レーザ発振器11は、例えば、図12に示すように、光学素子100と、レーザ素子200とを備える。
【0059】
レーザ素子200は、光学素子100の周囲に設けられ、光学素子100の入力面101に複数の方向から種光500を照射するように構成されている。光学素子100は、入力面101に照射された種光500を出力面102から出力レーザ光501として照射するように構成されている。出力レーザ光501が照射される方向は、レーザ素子200が光学素子100に照射する種光500の波長と照射方向とにより決定される。種光500の波長と照射方向とは、制御装置30により制御されるように構成されている。
【0060】
種光500は、照射方向が異なる第1種光500-1(図示せず)、第2種光500-2(図示せず)、・・・、第N種光500-N(図示せず)の総称である。出力レーザ光501は、種光500の各々が光学素子100に照射されたときに照射される第1出力レーザ光501-1(図示せず)、第2出力レーザ光501-2(図示せず)、・・・、第N出力レーザ光501-Nの総称である。第1種光500-1が光学素子100に照射されると、光学素子100は第1出力レーザ光501-1を照射する。第2種光500-2が光学素子100に照射されると、光学素子100は第2出力レーザ光501-2を照射する。第N種光500-Nが光学素子100に照射されると、光学素子100は第N出力レーザ光501-Nを照射する。
【0061】
光学素子100は、図12、13に示すように、例えば、円柱形に形成され、一方の底面に、入力面101と、出力面102とを有している。入力面101は、例えば底面の端部に設けられた平面であり、レーザ素子200から種光500が照射されるように構成されている。出力面102は、底面に設けられた平面であり、出力レーザ光501を照射するように構成されている。出力面102は、例えば、底面の中央に円形に形成されてもよい。
【0062】
光学素子100は、基板110上に第2反射鏡120と、活性層130と、第1反射鏡140と、第1電極150とが順番に積層されて形成されている。各層の境界は、例えば、光学素子100の底面、例えば出力面102に平行して設けられている。また、基板110に隣接して第2電極160が設けられている。
【0063】
第1反射鏡140は、例えば、表面の端部に入力面101を有する。レーザ素子200から照射される種光500は、入力面101を透過する。このため、入力面101は、他の部分に比べて反射率が低くなるように構成されている。例えば、第1反射鏡140は、入力面101が設けられた位置における第1反射鏡140の厚さが、他の位置における第1反射鏡140の厚さよりも薄く形成されている。入力面101は、例えば、出力面102に平行な平面である。
【0064】
入力面101を透過したレーザ光は、伝搬レーザ光502として、光学素子100の内部を進む。伝搬レーザ光502は、種光500の各々が照射されたときに光学素子100内を進む第1伝搬レーザ光502-1、第2伝搬レーザ光502-2、・・・、第N伝搬レーザ光502-Nの総称である。具体的には、第1種光500-1が光学素子100に照射されると、第1伝搬レーザ光502-1として光学素子100内を進む。第2種光500-2が光学素子100に照射されると、第2伝搬レーザ光502-2として光学素子100内を進む。第N種光500-Nが光学素子100に照射されると、第N伝搬レーザ光502-Nとして光学素子100内を進む。
【0065】
第1反射鏡140と、第2反射鏡120とは、互いに対向して設けられ、第1反射鏡140と第2反射鏡120との間に導波路170(planer waveguide)を形成する。具体的には、第2反射鏡120は、入力面101を透過した伝搬レーザ光502を反射する。第2反射鏡120に反射された伝搬レーザ光502の一部が第1反射鏡140に反射される。第1反射鏡140に反射された伝搬レーザ光502が第2反射鏡120に反射される。このように、伝搬レーザ光502は、第1反射鏡140と第2反射鏡120とに順番に反射されて導波路170を進む。第1反射鏡140と第2反射鏡120とは、ブラッグ反射を行うように形成され、例えば分布ブラッグ反射器(DBR:Distributed Bragg Reflector)を含む。
【0066】
第1反射鏡140は、伝搬レーザ光502の一部を通し、他の一部を反射する。第1反射鏡140で反射された伝搬レーザ光502は、光学素子100の内部を進む。第1反射鏡140を透過した伝搬レーザ光502は、第1反射鏡140の表面に形成された出力面102から出力レーザ光501として照射される。
【0067】
一方、第2反射鏡120は、伝搬レーザ光502のすべてを反射してもよい。このため、第1反射鏡140の反射率は、第2反射鏡120よりも低くなるように構成されてもよい。例えば、第1反射鏡140の厚さは、第2反射鏡120の厚さより薄くてもよい。
【0068】
活性層130は、第1反射鏡140と第2反射鏡120との間に設けられ、活性層130を通過する伝搬レーザ光502を増幅する。伝搬レーザ光502が導波路170を進むと、伝搬レーザ光502の一部が出力レーザ光501として照射され、伝搬レーザ光502の他の一部が活性層130により増幅される。
【0069】
活性層130は、第1電極150と第2電極160との間に流される電流により、励起される。例えば、活性層130は、発光状態になるまで励起されてもよい。第1電極150と第2電極160とは、活性層130を挟んで設けられている。
【0070】
第1電極150と第2電極160とは、制御装置30に接続されている。制御装置30は、第1電極150と第2電極160との間に電流を流し、活性層130を励起する。制御装置30は、活性層130に流れる電流を制御することで、活性層130による伝搬レーザ光502の増幅を調整する。
【0071】
第1電極150は、図12に示すように、種光500が照射される入力面101と、出力レーザ光501が照射される出力面102とに重ならないように形成されている。入力面101は、光学素子100において種光500が照射される方向の端部に設けられている。出力面102は、例えば、光学素子100の底面の中央に、円形状に形成されている。
【0072】
このように、光学素子100は、第1反射鏡140と第2反射鏡120との間に設けられた導波路170に沿って伝搬レーザ光502を伝搬するとともに、出力面102から出力レーザ光501を照射する。光学素子100は、例えば垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)を含む。例えば、光学素子100の出力面102の直径は1cmでもよい。
【0073】
レーザ素子200は、例えば、複数の種光源240(第1種光源240-1、第2種光源240-2、・・・、第N種光源240-N)を備える。
【0074】
種光源240は、光学素子100に種光500を照射する。例えば、種光源240の各々は、種光500を照射する方向が異なり、第1種光500-1、第2種光500-2、・・・、第N種光500-Nを照射する。具体的には、第1種光源240-1は第1種光500-1を光学素子100に照射する。第2種光源240-2は第2種光500-2を光学素子100に照射する。第N種光源240-Nは第N種光500-Nを光学素子100に照射する。種光源240の一部、例えば第1種光源240-1と第2種光源240-2とが同じ方向に種光500を照射してもよい。また、種光源240は、光スイッチを介して、種光500を出力する装置に接続され、この装置が出力した種光500を照射するように構成されてもよい。この場合、光スイッチは、種光500を照射する種光源240を選択する。種光源240の一例に、コリメータ、光ファイバを束ねたファイバアレイなどが含まれる。
【0075】
種光源240は、光学素子100を囲むように配置されている。種光源240は、例えば、出力面102の法線方向から見ると、光学素子100の半分を囲むように配置され、種光源240の各々は、等間隔に配置されている。
【0076】
理解を容易にするため、出力面102の中心を原点とする球面座標系を用いて説明する。原点からの距離を半径r(radius)とし、出力面102の法線510からの角度を極角θ(polar angle)とし、出力面102の面内方向において、原点から見たときの方向を方位φ(azimuthal)とする。
【0077】
出力レーザ光501の照射方向の方位φを制御する方法を説明する。レーザ素子200は、例えば、第i種光源240-iと、第k種光源240-kとから種光500を光学素子100に照射する。第i種光源240-iと第k種光源240-kとが照射する種光500の照射方向の方位φは互いに平行でない。入力面101が平面であるため、第i種光500-iに対応した第i伝搬レーザ光502-iの進行方向の方位φと、第k種光500-kに対応した第k伝搬レーザ光502-kの進行方向の方位φとは互いに平行でない。出力面102が平面であるため、第i伝搬レーザ光502-iに対応した第i出力レーザ光501-iの照射方向の方位φと、第k伝搬レーザ光502-kに対応した第k出力レーザ光501-kの照射方向の方位φとは互いに平行でない。このように、第i種光源240-iから種光500を照射したときの出力レーザ光501の照射方向の方位φと、第k種光源240-kから種光500を照射したときの出力レーザ光501の照射方向の方位φとは異なる。種光源240が種光500を照射する種光源240を変更することで、出力レーザ光501の照射方向の方位φを変更することができる。
【0078】
このように、レーザ発振器11は、種光500を照射する種光源240を変更することで、出力レーザ光501の照射方向の方位φを制御することができる。導波路170において、進行方向の方位φが互いに平行にならない複数の種光500をレーザ素子200が照射することで、出力レーザ光501の照射方向の方位φを制御できるとも言える。複数の種光源240から照射されて光学素子100の内部を進む伝搬レーザ光502の複数の光路は、光学素子100内に形成された導波路170の内部で互いに交差してもよい。例えば、第i伝搬レーザ光502-iの光路と、第k伝搬レーザ光502-kの光路とは、導波路170の内部で交差してもよい。なお、複数の種光源240の中の2の種光源240が、平行な方向から光学素子100に種光500を照射してもよい。
【0079】
種光源240から照射する種光500の波長を変更することで、出力レーザ光501の照射方向の極角θを変更することができる。図13に示すように、種光500は、入力面101の法線方向に対して傾斜した方向から入力面101に照射され、伝搬レーザ光502として光学素子100の内部に導かれる。伝搬レーザ光502は、第1反射鏡140と第2反射鏡120とにより反射される。第1反射鏡140における伝搬レーザ光502の入射角506をθとすると、ブラッグの法則に基づき、以下の式(1)が成り立つ。
【数1】
ここで、入射角506は、第1反射鏡140に対する伝搬レーザ光502の入射方向と、出力面102の法線510との成す角を示す。また、λは伝搬レーザ光502の波長を、λは導波路170のカットオフ波長を示す。
【0080】
第1反射鏡140は、入射角506で入射する伝搬レーザ光502の一部を出力レーザ光501として通過させる。出力レーザ光501は、第1反射鏡140に設けられた出力面102において屈折して照射される。出力レーザ光501の波長は伝搬レーザ光502の波長と等しいため、出力レーザ光501が照射される方向と、出力面102の法線510との成す角を示す出力角505をθとすると、以下の式(2)が成り立つ。
【数2】
ここで、nairは大気中の屈折率を、nwgは導波路170の屈折率を示す。
【0081】
伝搬レーザ光502の波長と、出力レーザ光501の波長とは、種光500と等しいため、出力角505は種光500の波長に基づき変化する。出力角505は出力レーザ光501が照射される方向の極角θを示すため、種光500の波長に基づき、出力レーザ光501が照射される方向の極角θが変更される。この結果、レーザ発振器11は、種光500の波長を変更することで、出力レーザ光501の照射方向の極角θを制御することができる。
【0082】
このように、レーザ発振器11は、種光500を照射する種光源240と、種光源240が照射するレーザ光の波長とを制御することで、照射する出力レーザ光501の方向を非機械式に、かつ、二次元的に変更し得る。例えば、レーザ発振器11は、レーザ光を出力する位置を原点とし、レーザ光を照射している方向を頂点(zenith)とする球面座標系において、レーザ光の照射する方向の極角と方位とを変更し得る。
【0083】
レーザ照射装置1が図12、13に示すレーザ発振器11を備える場合、制御装置30は、種光500の波長と、種光源240とを選択することで、出力レーザ光501の照射方向を制御することができる。出力レーザ光501の出力エネルギーは、制御装置30が第1電極150と第2電極160との間を流れる電流と、種光500の出力エネルギーとを制御することで、調整される。
【0084】
各々のレーザ発振器11が出力レーザ光501を照射できる方向は、同じでなくてもよい。例えば、隣接するレーザ発振器11が出力レーザ光501を照射できる方向が異なってもよい。隣接するレーザ発振器11が出力レーザ光501を照射できる方向が異なることで、照射方向が補完され得る。この結果、レーザアレイ10が出力レーザ光501を照射できる方向が広くなり得る。
【0085】
以上において説明した処理は一例であり、各ステップの順番、処理内容は、機能を阻害しない範囲で変更してもよい。また、説明した構成は、機能を阻害しない範囲で、任意に変更してもよい。
【符号の説明】
【0086】
1 :レーザ照射装置
2 :目標
2-1 :第1目標
2-2 :第2目標
3 :推定経路
4 :推定位置
4-1 :第1推定位置
4-2 :第2推定位置
10 :レーザアレイ
11 :レーザ発振器
11-1 :第1レーザ発振器
11-2 :第2レーザ発振器
11-3 :第3レーザ発振器
11a :照射発振器
11a-1 :第1照射発振器
11b :隣接発振器
11b-1 :第1隣接発振器
12 :隣接領域
13 :照射領域
14 :推定照射領域
14-1 :第1推定照射領域
14-2 :第2推定照射領域
20 :検知装置
30 :制御装置
31 :演算装置
32 :記憶装置
33 :レーザ照射ソフトウェア
40 :記憶媒体
100 :光学素子
101 :入力面
102 :出力面
110 :基板
120 :第2反射鏡
130 :活性層
140 :第1反射鏡
150 :第1電極
160 :第2電極
170 :導波路
200 :レーザ素子
240 :種光源
500 :種光
501 :出力レーザ光
502 :伝搬レーザ光
503 :反射光
505 :出力角
506 :入射角
510 :法線
600 :探知空間
600-1 :第1探知空間
600-2 :第2探知空間
601 :目標方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13