IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社クボタの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】作業機
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/22 20060101AFI20221125BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20221125BHJP
   F15B 11/02 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
E02F9/22 A
E02F9/20 M
F15B11/02 E
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019072753
(22)【出願日】2019-04-05
(65)【公開番号】P2020169528
(43)【公開日】2020-10-15
【審査請求日】2021-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100120341
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】福田 祐史
(72)【発明者】
【氏名】冨田 淳
(72)【発明者】
【氏名】濱本 亮太
(72)【発明者】
【氏名】衣川 亮祐
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-054809(JP,A)
【文献】特開2008-082130(JP,A)
【文献】特開2007-064455(JP,A)
【文献】特開2013-076470(JP,A)
【文献】特開2017-179923(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0156716(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/22
E02F 9/20
F15B 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体と、
動機と、
前記機体の左側及び右側に設けられた一対の走行装置と、
前記左側の走行装置及び右側の走行装置のそれぞれに動力を伝達可能で且つ、第1速度と前記第1速度よりも速い第2速度とに切換可能な一対の走行モータと、
前記原動機の動力によって駆動し且つ前記一対の走行モータのそれぞれに作動油を供給する一対の走行ポンプと、
前記一対の走行モータと前記一対の走行ポンプとを接続する接続油路と、
前記接続油路の圧力を、走行ポンプ圧として検出する走行ポンプ圧検出装置と、
前記原動機の回転数である原動機回転数を検出する回転数検出装置と、
前記原動機回転数と第1減速判定圧との関係を示す第1減速判定テーブルを記憶する第1記憶装置と、
少なくとも前記一対の走行モータのいずれかが前記第2速度である場合に前記第2速度から前記第1速度に自動的に減速する自動減速を行う自動減速部を有する制御装置と、
を備え、
前記一対の走行モータのうち一方の走行モータは、前記接続油路に接続する第1ポートと、前記接続油路に接続する第2ポートとを含み、
前記一対の走行モータのうち他方の走行モータは、前記接続油路に接続する第3ポートと、前記接続油路に接続する第4ポートとを含み、
前記走行ポンプ圧検出装置は、
前記第1ポート側の接続油路の圧力を検出する走行ポンプ圧を、第1走行ポンプ圧として検出する第1圧力検出装置と、
前記第2ポート側の接続油路の圧力を検出する走行ポンプ圧を、第2走行ポンプ圧として検出する第2圧力検出装置と、
前記第3ポート側の接続油路の圧力を検出する走行ポンプ圧を、第3走行ポンプ圧として検出する第3圧力検出装置と、
前記第4ポート側の接続油路の圧力を検出する走行ポンプ圧を、第4走行ポンプ圧として検出する第4圧力検出装置と、
を含み、
前記自動減速部は、少なくとも前記一対の走行モータのいずれかが前記第2速度である場合において、前記回転数検出装置で検出された原動機回転数と前記第1減速判定テーブルとから前記第1減速判定圧を抽出し、前記第1走行ポンプ圧、前記第2走行ポンプ圧、前記第3走行ポンプ圧及び前記第4走行ポンプ圧のいずれかが、前記第1減速判定圧以上である場合に、前記自動減速を行う作業機。
【請求項2】
前記走行ポンプ圧検出装置は、前記一対の走行モータの複数の前記走行ポンプ圧を検出し、
前記自動減速部は、前記複数の前記走行ポンプ圧のいずれかが、前記第1減速判定圧以上である場合に、前記自動減速を行う請求項1に記載の作業機。
【請求項3】
前記第1記憶装置は、前記原動機回転数が増加するにつれて前記第1減速判定圧が増加する第1減速判定テーブルを記憶している請求項1または2に記載の作業機。
【請求項4】
機体と、
原動機と、
前記機体に設けられた走行装置と、
前記走行装置に動力を伝達可能で且つ、第1速度と前記第1速度よりも速い第2速度とに切換可能な走行モータと、
前記原動機の動力によって駆動し且つ前記走行モータに作動油を供給する走行ポンプと、
前記走行モータと前記走行ポンプとを接続する第1接続油路及び第2接続油路と、
前記走行モータの一対のポートに隣接して配置され、前記第1接続油路の第1走行ポンプ圧を検出するとともに、前記第2接続油路の第2走行ポンプ圧を検出する走行ポンプ圧検出装置と、
前記原動機の回転数である原動機回転数を検出する回転数検出装置と、
前記原動機回転数と第1減速判定圧との関係を示す第1減速判定テーブルを記憶する第1記憶装置と、
前記走行モータが前記第2速度である場合に前記第2速度から前記第1速度に自動的に減速する自動減速を行う自動減速部を有する制御装置と、
を備え、
前記自動減速部は、前記走行モータが前記第2速度である場合において、前記回転数検出装置で検出された原動機回転数と前記第1減速判定テーブルとから前記第1減速判定圧を抽出し、前記走行ポンプ圧検出装置で検出された前記第1走行ポンプ圧又は前記第2走行ポンプ圧が、前記抽出された第1減速判定圧以上である場合に、前記自動減速を行う作業機。
【請求項5】
機体と、
動機と、
前記機体の左側及び右側に設けられた一対の走行装置と、
前記左側の走行装置及び右側の走行装置のそれぞれに動力を伝達可能で且つ、第1速度と前記第1速度よりも速い第2速度とに切換可能な一対の走行モータと、
前記原動機の動力によって駆動し且つ前記一対の走行モータのそれぞれに作動油を供給する一対の走行ポンプと、
前記一対の走行モータと前記一対の走行ポンプとを接続する接続油路と、
前記接続油路の圧力を、走行ポンプ圧として検出する走行ポンプ圧検出装置と、
前記原動機の回転数である原動機回転数を検出する回転数検出装置と、
前記原動機回転数と第1復帰判定圧との関係を示す第1復帰判定テーブルを記憶する第2記憶装置と、
少なくとも前記一対の走行モータのいずれかが前記第2速度である場合に前記第2速度
から前記第1速度に自動的に減速する自動減速を行う自動減速部を有する制御装置と、
を備え、
前記一対の走行モータのうち一方の走行モータは、前記接続油路に接続する第1ポートと、前記接続油路に接続する第2ポートとを含み、
前記一対の走行モータのうち他方の走行モータは、前記接続油路に接続する第3ポートと、前記接続油路に接続する第4ポートとを含み、
前記走行ポンプ圧検出装置は、
前記第1ポート側の接続油路の圧力を検出する走行ポンプ圧を、第1走行ポンプ圧として検出する第1圧力検出装置と、
前記第2ポート側の接続油路の圧力を検出する走行ポンプ圧を、第2走行ポンプ圧として検出する第2圧力検出装置と、
前記第3ポート側の接続油路の圧力を検出する走行ポンプ圧を、第3走行ポンプ圧として検出する第3圧力検出装置と、
前記第4ポート側の接続油路の圧力を検出する走行ポンプ圧を、第4走行ポンプ圧として検出する第4圧力検出装置と、
を含み、
前記自動減速部は、前記自動減速後において前記回転数検出装置で検出された原動機回転数と前記第1復帰判定テーブルとから前記第1復帰判定圧を抽出し、前記第1走行ポンプ圧、前記第2走行ポンプ圧、前記第3走行ポンプ圧及び前記第4走行ポンプ圧のいずれかが、前記抽出された第1復帰判定圧以下である場合に、前記一対の走行モータの少なくともいずれかを前記第1速度から前記第2速度に復帰する作業機。
【請求項6】
前記走行ポンプ圧検出装置は、前記一対の走行モータの複数の前記走行ポンプ圧を検出し、
前記自動減速部は、前記複数の前記走行ポンプ圧が、前記第1復帰判定圧以下である場合に、前記復帰を行う請求項5に記載の作業機。
【請求項7】
前記第2記憶装置は、前記原動機回転数が増加するにつれて前記第1復帰判定圧が増加する第1復帰判定テーブルを記憶している請求項5または6に記載の作業機。
【請求項8】
機体と、
原動機と、
前記機体に設けられた走行装置と、
前記走行装置に動力を伝達可能で且つ、第1速度と前記第1速度よりも速い第2速度とに切換可能な走行モータと、
前記原動機の動力によって駆動し且つ前記走行モータに作動油を供給する走行ポンプと、
前記走行モータと前記走行ポンプとを接続する第1接続油路及び第2接続油路と、
前記走行モータの一対のポートに隣接して配置され、前記第1接続油路の第1走行ポンプ圧を検出するとともに、前記第2接続油路の第2走行ポンプ圧を検出する走行ポンプ圧検出装置と、
前記原動機の回転数である原動機回転数を検出する回転数検出装置と、
前記原動機回転数と第1復帰判定圧との関係を示す第1復帰判定テーブルを記憶する第2記憶装置と、
前記走行モータが前記第2速度である場合に前記第2速度から前記第1速度に自動的に減速する自動減速を行う自動減速部を有する制御装置と、
を備え、
前記自動減速部は、前記自動減速後において前記回転数検出装置で検出された原動機回転数と前記第1復帰判定テーブルとから前記第1復帰判定圧を抽出し、前記走行ポンプ圧検出装置で検出された前記第1走行ポンプ圧又は前記第2走行ポンプ圧が、前記抽出され
た第1復帰判定圧以下である場合に、前記走行モータを前記第1速度から前記第2速度に復帰する作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、スキッドステアローダ、コンパクトトラックローダ、バックホー等の作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、作業機において減速及び増速を行う技術として特許文献1に示されているものがある。特許文献1の作業機は、第1速度と第1速度よりも高速な第2速度とに変更可能な走行モータと、走行モータの速度を切換可能な走行切換弁とを備え、走行モータが第2速度である場合に、走行装置に供給される作動油の圧力が所定以上であったときに走行モータを第1速度に減速する自動減速を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-82130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の作業機では、走行装置に供給される作動油の圧力が所定以上である場合に、第2速度から第1速度に減速できるものの、原動機の回転数によっては、自動減速の切換が意図したタイミングで行われない可能性があった。
本発明は、上記したような従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、原動機の回転数に応じて適正に自動減速を行うことができる作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
技術的課題を解決するために本発明が講じた技術的手段は、以下の通りである。
本発明の1つの態様に係る作業機は、機体と、原動機と、前記機体の左側及び右側に設けられた一対の走行装置と、前記左側の走行装置及び右側の走行装置のそれぞれに動力を伝達可能で且つ、第1速度と前記第1速度よりも速い第2速度とに切換可能な一対の走行モータと、前記原動機の動力によって駆動し且つ前記一対の走行モータのそれぞれに作動油を供給する一対の走行ポンプと、前記一対の走行モータと前記一対の走行ポンプとを接続する接続油路と、前記接続油路の圧力を、走行ポンプ圧として検出する走行ポンプ圧検出装置と、前記原動機の回転数である原動機回転数を検出する回転数検出装置と、前記原動機回転数と第1減速判定圧との関係を示す第1減速判定テーブルを記憶する第1記憶装置と、少なくとも前記一対の走行モータのいずれかが前記第2速度である場合に前記第2速度から前記第1速度に自動的に減速する自動減速を行う自動減速部を有する制御装置と、を備え、前記一対の走行モータのうち一方の走行モータは、前記接続油路に接続する第1ポートと、前記接続油路に接続する第2ポートとを含み、前記一対の走行モータのうち他方の走行モータは、前記接続油路に接続する第3ポートと、前記接続油路に接続する第4ポートとを含み、前記走行ポンプ圧検出装置は、前記第1ポート側の接続油路の圧力を検出する走行ポンプ圧を、第1走行ポンプ圧として検出する第1圧力検出装置と、前記第2ポート側の接続油路の圧力を検出する走行ポンプ圧を、第2走行ポンプ圧として検出する第2圧力検出装置と、前記第3ポート側の接続油路の圧力を検出する走行ポンプ圧を、第3走行ポンプ圧として検出する第3圧力検出装置と、前記第4ポート側の接続油路の圧力を検出する走行ポンプ圧を、第4走行ポンプ圧として検出する第4圧力検出装置と、を含み、前記自動減速部は、少なくとも前記一対の走行モータのいずれかが前記第2速度である場合において、前記回転数検出装置で検出された原動機回転数と前記第1減速判定テーブルとから前記第1減速判定圧を抽出し、前記第1走行ポンプ圧、前記第2走行ポンプ圧、前記第3走行ポンプ圧及び前記第4走行ポンプ圧のいずれかが、前記第1減速判定圧以上である場合に、前記自動減速を行う。
【0006】
前記走行ポンプ圧検出装置は、前記一対の走行モータの複数の前記走行ポンプ圧を検出し、前記自動減速部は、前記複数の前記走行ポンプ圧のいずれかが、前記第1減速判定圧以上である場合に、前記自動減速を行う
前記第1記憶装置は、前記原動機回転数が増加するにつれて前記第1減速判定圧が増加する第1減速判定テーブルを記憶している。
【0007】
本発明の別の態様に係る作業機は、機体と、原動機と、前記機体に設けられた走行装置と、前記走行装置に動力を伝達可能で且つ、第1速度と前記第1速度よりも速い第2速度とに切換可能な走行モータと、前記原動機の動力によって駆動し且つ前記走行モータに作動油を供給する走行ポンプと、前記走行モータと前記走行ポンプとを接続する第1接続油路及び第2接続油路と、前記走行モータの一対のポートに隣接して配置され、前記第1接続油路の第1走行ポンプ圧を検出するとともに、前記第2接続油路の第2走行ポンプ圧を検出する走行ポンプ圧検出装置と、前記原動機の回転数である原動機回転数を検出する回転数検出装置と、前記原動機回転数と第1減速判定圧との関係を示す第1減速判定テーブルを記憶する第1記憶装置と、前記走行モータが前記第2速度である場合に前記第2速度から前記第1速度に自動的に減速する自動減速を行う自動減速部を有する制御装置と、を備え、前記自動減速部は、前記走行モータが前記第2速度である場合において、前記回転数検出装置で検出された原動機回転数と前記第1減速判定テーブルとから前記第1減速判定圧を抽出し、前記走行ポンプ圧検出装置で検出された前記第1走行ポンプ圧又は前記第2走行ポンプ圧が、前記抽出された第1減速判定圧以上である場合に、前記自動減速を行う。
【0008】
本発明のさらに別の態様に係る作業機は、機体と、原動機と、前記機体の左側及び右側に設けられた一対の走行装置と、前記左側の走行装置及び右側の走行装置のそれぞれに動力を伝達可能で且つ、第1速度と前記第1速度よりも速い第2速度とに切換可能な一対の走行モータと、前記原動機の動力によって駆動し且つ前記一対の走行モータのそれぞれに作動油を供給する一対の走行ポンプと、前記一対の走行モータと前記一対の走行ポンプとを接続する接続油路と、前記接続油路の圧力を、走行ポンプ圧として検出する走行ポンプ圧検出装置と、前記原動機の回転数である原動機回転数を検出する回転数検出装置と、前記原動機回転数と第1復帰判定圧との関係を示す第1復帰判定テーブルを記憶する第2記憶装置と、少なくとも前記一対の走行モータのいずれかが前記第2速度である場合に前記第2速度から前記第1速度に自動的に減速する自動減速を行う自動減速部を有する制御装置と、を備え、前記一対の走行モータのうち一方の走行モータは、前記接続油路に接続する第1ポートと、前記接続油路に接続する第2ポートとを含み、前記一対の走行モータのうち他方の走行モータは、前記接続油路に接続する第3ポートと、前記接続油路に接続する第4ポートとを含み、前記走行ポンプ圧検出装置は、前記第1ポート側の接続油路の圧力を検出する走行ポンプ圧を、第1走行ポンプ圧として検出する第1圧力検出装置と、前記第2ポート側の接続油路の圧力を検出する走行ポンプ圧を、第2走行ポンプ圧として検出する第2圧力検出装置と、前記第3ポート側の接続油路の圧力を検出する走行ポンプ圧を、第3走行ポンプ圧として検出する第3圧力検出装置と、前記第4ポート側の接続油路の圧力を検出する走行ポンプ圧を、第4走行ポンプ圧として検出する第4圧力検出装置と、を含み、前記自動減速部は、前記自動減速後において前記回転数検出装置で検出された原動機回転数と前記第1復帰判定テーブルとから前記第1復帰判定圧を抽出し、前記第1走行ポンプ圧、前記第2走行ポンプ圧、前記第3走行ポンプ圧及び前記第4走行ポンプ圧のいずれかが、前記抽出された第1復帰判定圧以下である場合に、前記一対の走行モータの少なくともいずれかを前記第1速度から前記第2速度に復帰する。
前記走行ポンプ圧検出装置は、前記一対の走行モータの複数の前記走行ポンプ圧を検出し、前記自動減速部は、前記複数の前記走行ポンプ圧が、前記第1復帰判定圧以下である場合に、前記復帰を行う。
前記第2記憶装置は、前記原動機回転数が増加するにつれて前記第1復帰判定圧が増加する第1復帰判定テーブルを記憶している。
【0009】
本発明のさらに別の態様に係る作業機は、機体と、原動機と、前記機体に設けられた走行装置と、前記走行装置に動力を伝達可能で且つ、第1速度と前記第1速度よりも速い第2速度とに切換可能な走行モータと、前記原動機の動力によって駆動し且つ前記走行モータに作動油を供給する走行ポンプと、前記走行モータと前記走行ポンプとを接続する第1接続油路及び第2接続油路と、前記走行モータの一対のポートに隣接して配置され、前記第1接続油路の第1走行ポンプ圧を検出するとともに、前記第2接続油路の第2走行ポンプ圧を検出する走行ポンプ圧検出装置と、前記原動機の回転数である原動機回転数を検出する回転数検出装置と、前記原動機回転数と第1減速判定圧との関係を示す第1減速判定テーブルを記憶する第1記憶装置と、前記走行モータが前記第2速度である場合に前記第2速度から前記第1速度に自動的に減速する自動減速を行う自動減速部を有する制御装置と、を備え、前記自動減速部は、前記走行モータが前記第2速度である場合において、前記回転数検出装置で検出された原動機回転数と前記第1減速判定テーブルとから前記第1減速判定圧を抽出し、前記走行ポンプ圧検出装置で検出された前記第1走行ポンプ圧又は前記第2走行ポンプ圧が、前記抽出された第1減速判定圧以上である場合に、前記自動減速を行う。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、原動機の回転数に応じて適正に自動減速を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】作業機の油圧システム(油圧回路)を示す図である。
図2A】表示装置を示す図である。
図2B】他の表示装置を示す図である。
図3】制御装置及び表示装置の動作を示すフローである。
図4A】第1減速判定テーブルT1を示す図である。
図4B】第1復帰判定テーブルU1を示す図である。
図5】自動減速部における第1の処理を示す図である。
図6A】第2減速判定テーブルT2を示す図である。
図6B】第2復帰判定テーブルU2を示す図である。
図7】自動減速部における第2の処理を示す図である。
図8A】第3減速判定テーブルT3を示す図である。
図8B】第3復帰判定テーブルU3を示す図である。
図9】自動減速部における第3の処理を示す図である。
図10A】第4減速判定テーブルT4を示す図である。
図10B】第4復帰判定テーブルU4を示す図である。
図11】自動減速部における第4の処理を示す図である。
図12】アンチストール弁を設けた油圧システムを示す図である。
図13】原動機回転数、二次パイロット圧及び制御線L1、L2の関係を示す図である。
図14A】第5減速判定テーブルT5を示す図である。
図14B】第5復帰判定テーブルU5を示す図である。
図15】自動減速部における第5の処理を示す図である。
図16A】第6減速判定テーブルT6を示す図である。
図16B】第6復帰判定テーブルU6を示す図である。
図17】自動減速部における第6の処理を示す図である。
図18】作業機の一例であるトラックローダを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る作業機の油圧システム及びこの油圧システムを備えた作業機の好適な実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。
図18は、本発明に係る作業機の側面図を示している。図18では、作業機の一例として、コンパクトトラックローダを示している。但し、本発明に係る作業機はコンパクトトラックローダに限定されず、例えば、スキッドステアローダ等の他の種類のローダ作業機であってもよい。また、ローダ作業機以外の作業機であってもよい。
【0013】
作業機1は、図18に示すように、作業機1は、機体2と、キャビン3と、作業装置4と、一対の走行装置5L、5Rとを備えている。本発明の実施形態において、作業機1の運転席8に着座した運転者の前側(図18の左側)を前方、運転者の後側(図18の右側)を後方、運転者の左側(図18の手前側)を左方、運転者の右側(図18の奥側)を右方として説明する。また、前後の方向に直交する方向である水平方向を機体幅方向として説明する。機体2の中央部から右部或いは左部へ向かう方向を機体外方として説明する。言い換えれば、機体外方とは、機体幅方向であって、機体2から離れる方向である。機体外方とは反対の方向を、機体内方として説明する。言い換えれば、機体内方とは、機体幅方向であって、機体2に近づく方向である。
【0014】
キャビン3は、機体2に搭載されている。このキャビン3には運転席8が設けられている。作業装置4は機体2に装着されている。一対の走行装置5L、5Rは、機体2の外側に設けられている。機体2内の後部には、原動機32が搭載されている。
作業装置4は、ブーム10と、作業具11と、リフトリンク12と、制御リンク13と、ブームシリンダ14と、バケットシリンダ15とを有している。
【0015】
ブーム10は、キャビン3の右側及び左側に上下揺動自在に設けられている。作業具11は、例えば、バケットであって、当該バケット11は、ブーム10の先端部(前端部)に上下揺動自在に設けられている。リフトリンク12及び制御リンク13は、ブーム10が上下揺動自在となるように、ブーム10の基部(後部)を支持している。ブームシリンダ14は、伸縮することによりブーム10を昇降させる。バケットシリンダ15は、伸縮することによりバケット11を揺動させる。
【0016】
左側及び右側の各ブーム10の前部同士は、異形の連結パイプで連結されている。各ブーム10の基部(後部)同士は、円形の連結パイプで連結されている。
リフトリンク12、制御リンク13及びブームシリンダ14は、左側と右側の各ブーム10に対応して機体2の左側と右側にそれぞれ設けられている。
リフトリンク12は、各ブーム10の基部の後部に、縦向きに設けられている。このリフトリンク12の上部(一端側)は、各ブーム10の基部の後部寄りに枢支軸16(第1枢支軸)を介して横軸回りに回転自在に枢支されている。また、リフトリンク12の下部(他端側)は、機体2の後部寄りに枢支軸17(第2枢支軸)を介して横軸回りに回転自在に枢支されている。第2枢支軸17は、第1枢支軸16の下方に設けられている。
【0017】
ブームシリンダ14の上部は、枢支軸18(第3枢支軸)を介して横軸回りに回転自在に枢支されている。第3枢支軸18は、各ブーム10の基部であって、当該基部の前部に設けられている。ブームシリンダ14の下部は、枢支軸19(第4枢支軸)を介して横軸回りに回転自在に枢支されている。第4枢支軸19は、機体2の後部の下部寄りであって第3枢支軸18の下方に設けられている。
【0018】
制御リンク13は、リフトリンク12の前方に設けられている。この制御リンク13の一端は、枢支軸20(第5枢支軸)を介して横軸回りに回転自在に枢支されている。第5枢支軸20は、機体2であって、リフトリンク12の前方に対応する位置に設けられている。制御リンク13の他端は、枢支軸21(第6枢支軸)を介して横軸回りに回転自在に枢支されている。第6枢支軸21は、ブーム10であって、第2枢支軸17の前方で且つ第2枢支軸17の上方に設けられている。
【0019】
ブームシリンダ14を伸縮することにより、リフトリンク12及び制御リンク13によって各ブーム10の基部が支持されながら、各ブーム10が第1枢支軸16回りに上下揺動し、各ブーム10の先端部が昇降する。制御リンク13は、各ブーム10の上下揺動に伴って第5枢支軸20回りに上下揺動する。リフトリンク12は、制御リンク13の上下揺動に伴って第2枢支軸17回りに前後揺動する。
【0020】
ブーム10の前部には、バケット11の代わりに別の作業具が装着可能とされている。別の作業具としては、例えば、油圧圧砕機、油圧ブレーカ、アングルブルーム、アースオーガ、パレットフォーク、スイーパー、モア、スノウブロア等のアタッチメント(予備アタッチメント)である。
左側のブーム10の前部には、接続部材50が設けられている。接続部材50は、予備アタッチメントに装備された油圧機器と、ブーム10に設けられたパイプ等の第1管材とを接続する装置である。具体的には、接続部材50の一端には、第1管材が接続可能で、他端には、予備アタッチメントの油圧機器に接続された第2管材が接続可能である。これにより、第1管材を流れる作動油は、第2管材を通過して油圧機器に供給される。
【0021】
バケットシリンダ15は、各ブーム10の前部寄りにそれぞれ配置されている。バケットシリンダ15を伸縮することで、バケット11が揺動される。
一対の走行装置5L、5Rのうち、走行装置5Lは機体2の左側に設けられ、走行装置5Rは機体2の右側に設けられている。一対の走行装置5L、5Rは、本実施形態ではクローラ型(セミクローラ型を含む)の走行装置が採用されている。なお、前輪及び後輪を有する車輪型の走行装置を採用してもよい。以下、説明の便宜上、走行装置5Lのことを左走行装置5L、走行装置5Rのことを右走行装置5Rということがある。
【0022】
原動機32は、ディーゼルエンジン、ガソリンエンジン等の内燃機関、電動モータ等である。この実施形態では、原動機32は、ディーゼルエンジンであるが限定はされない。
次に、作業機の油圧システムについて説明する。
図1に示すように、作業機の油圧システムは、第1油圧ポンプP1と、第2油圧ポンプP2とを備えている。第1油圧ポンプP1は、原動機32の動力によって駆動するポンプであって、定容量型のギヤポンプによって構成されている。第1油圧ポンプP1は、タンク22に貯留された作動油を吐出可能である。特に、第1油圧ポンプP1は、主に制御に用いる作動油を吐出する。説明の便宜上、作動油を貯留するタンク22のことを作動油タンクということがある。また、第1油圧ポンプP1から吐出した作動油のうち、制御用として用いられる作動油のことをパイロット油、パイロット油の圧力のことをパイロット圧ということがある。
【0023】
第2油圧ポンプP2は、原動機32の動力によって駆動するポンプであって、定容量型のギヤポンプによって構成されている。第2油圧ポンプP2は、タンク22に貯留された作動油を吐出可能であって、例えば、作業系の油路に作動油を供給する。例えば、第2油圧ポンプP2は、ブーム10を作動させるブームシリンダ14、バケットを作動させるバケットシリンダ15、予備油圧アクチュエータを作動させる予備油圧アクチュエータを制御する制御弁(流量制御弁)に作動油を供給する。
【0024】
また、作業機の油圧システムは、一対の走行モータ36L、36Rと、一対の走行ポンプ53L、53Rと、を備えている。一対の走行モータ36L、36Rは、一対の走行装置5L、5Rに動力を伝達するモータである。一対の走行モータ36L、36Rのうち、一方の走行モータ36Lは、走行装置(左走行装置)5Lに回転の動力を伝達し、他方の走行モータ36Rは、走行装置(右走行装置)5Rに回転の動力を伝達する。
【0025】
一対の走行ポンプ53L、53Rは、原動機32の動力によって駆動するポンプであって、例えば、斜板形可変容量アキシャルポンプである。一対の走行ポンプ53L、53Rは、駆動することによって、一対の走行モータ36L、36Rのそれぞれに作動油を供給する。一対の走行ポンプ53L、53Rのうち、一方の走行ポンプ53Lは、走行ポンプ53Lに作動油を供給し、他方の走行ポンプ53Rは、走行ポンプ53Rに作動油を供給する。
【0026】
以下、説明の便宜上、走行ポンプ53Lのことを左走行ポンプ53L、走行ポンプ53Rのことを右走行ポンプ53R、走行モータ36Lのことを左走行モータ36L、走行モータ36Rのことを右走行モータ36Rということがある。
左走行ポンプ53L及び右走行ポンプ53Rには、第1油圧ポンプP1からの作動油(パイロット油)の圧力(パイロット圧)が作用する前進用受圧部53aと後進用受圧部53bとを有している、受圧部53a、53bに作用するパイロット圧によって斜板の角度が変更される。斜版の角度を変更することによって、左走行ポンプ53L及び右走行ポンプ53Rの出力(作動油の吐出量)や作動油の吐出方向を変えることができる。
【0027】
左走行ポンプ53Lと、左走行モータ36Lとは、接続油路57hによって接続され、左走行ポンプ53Lが吐出した作動油が左走行モータ36Lに供給される。右走行ポンプ53Rと、右走行モータ36Rとは、接続油路57iによって接続され、右走行ポンプ53Rが吐出した作動油が右走行モータ36Rに供給される。
左走行モータ36Lは、左走行ポンプ53Lから吐出した作動油により回転が可能であり、作動油の流量によって、回転速度(回転数)を変更することができる。左走行モータ36Lには、斜板切換シリンダ37Lが接続され、当該斜板切換シリンダ37Lを一方側或いは他方側に伸縮させることによっても左走行モータ36Lの回転速度(回転数)を変更することができる。即ち、斜板切換シリンダ37Lを収縮した場合には、左走行モータ36Lの回転数は低速(第1速度)に設定され、斜板切換シリンダ37Lを伸長した場合には、左走行モータ36Lの回転数は高速(第2速度)に設定される。つまり、左走行モータ36Lの回転数は、低速側である第1速度と、高速側である第2速度とに変更が可能である。
【0028】
右走行モータ36Rは、右走行ポンプ53Rから吐出した作動油により回転が可能であり、作動油の流量によって、回転速度(回転数)を変更することができる。右走行モータ36Rには、斜板切換シリンダ37Rが接続され、当該斜板切換シリンダ37Rを一方側或いは他方側に伸縮させることによっても右走行モータ36Rの回転速度(回転数)を変更することができる。即ち、斜板切換シリンダ37Rを収縮した場合には、右走行モータ36Rの回転数は低速(第1速度)に設定され、斜板切換シリンダ37Rを伸長した場合には、右走行モータ36Rの回転数は高速(第2速度)に設定される。つまり、右走行モータ36Rの回転数は、低速側である第1速度と、高速側である第2速度とに変更が可能である。
【0029】
図1に示すように、作業機の油圧システムは、走行切換弁34を備えている。走行切換弁34は、走行モータ(左走行モータ36L、右走行モータ36R)の回転速度(回転数)を第1速度にする第1状態と、第2速度にする第2状態とに切換可能である。走行切換弁34は、第1切換弁71L、71Rと、第2切換弁72と、を有している。
第1切換弁71Lは、左走行モータ36Lの斜板切換シリンダ37Lに油路を介して接続されていて、第1位置71L1及び第2位置71L2に切り換わる二位置切換弁である。第1切換弁71Lは、第1位置71L1である場合、斜板切換シリンダ37Lを収縮し、第2位置71L2である場合、斜板切換シリンダ37Lを伸長する。
【0030】
第1切換弁71Rは、右走行モータ36Rの斜板切換シリンダ37Rに油路を介して接続されていて、第1位置71R1及び第2位置71R2に切り換わる二位置切換弁である。第1切換弁71Rは、第1位置71R1である場合、斜板切換シリンダ37Rを収縮し、第2位置71R2である場合、斜板切換シリンダ37Rを伸長する。
第2切換弁72は、第1切換弁71L及び第1切換弁71Rを切り換える電磁弁であって、励磁により第1位置72aと第2位置72bとに切り換え可能な二位置切換弁である。第2切換弁72、第1切換弁71L及び第1切換弁71Rは、油路41により接続されている。第2切換弁72は、第1位置72aである場合に第1切換弁71L及び第1切換弁71Rを第1位置71L1、71R1に切り換え、第2位置72bである場合に第1切換弁71L及び第1切換弁71Rを第2位置71L2、71R2に切り換える。
【0031】
つまり、第2切換弁72が第1位置72a、第1切換弁71Lが第1位置71L1、第1切換弁71Rが第1位置71R1である場合に、走行切換弁34は第1状態になり、走行モータ(左走行モータ36L、右走行モータ36R)の回転速度を第1速度にする。第2切換弁72が第2位置72b、第1切換弁71Lが第2位置71L2、第1切換弁71Rが第2位置71R2である場合に、走行切換弁34は第2状態になり、走行モータ(左走行モータ36L、右走行モータ36R)の回転速度を第2速度にする。
【0032】
したがって、走行切換弁34によって、走行モータ(左走行モータ36L、右走行モータ36R)を低速側である第1速度と、高速側である第2速度とに切り換えることができる。
操作装置54は、走行ポンプ(左走行ポンプ53L、右走行ポンプ53R)を操作する装置であり、走行ポンプの斜板の角度(斜板角度)を変更可能である。操作装置54は、操作レバー59と、複数の操作弁55とを含んでいる。
【0033】
操作レバー59は、操作弁55に支持され、左右方向(機体幅方向)又は前後方向に揺動する操作レバーである。即ち、操作レバー59は、中立位置Nを基準とすると、中立位置Nから右方及び左方に操作可能であると共に、中立位置Nから前方及び後方に操作可能である。言い換えれば、操作レバー59は、中立位置Nを基準に少なくとも4方向に揺動することが可能である。尚、説明の便宜上、前方及び後方の双方向、即ち、前後方向のことを第1方向という。また、右方及び左方の双方向、即ち、左右方向(機体幅方向)のことを第2方向ということがある。
【0034】
また、複数の操作弁55は、共通、即ち、1本の操作レバー59によって操作される。複数の操作弁55は、操作レバー59の揺動に基づいて作動する。複数の操作弁55には、吐出油路40が接続され、当該吐出油路40を介して、第1油圧ポンプP1からの作動油(パイロット油)が供給可能である。複数の操作弁55は、操作弁55A、操作弁55B、操作弁55C及び操作弁55Dである。
【0035】
操作弁55Aは、前後方向(第1方向)のうち、操作レバー59を前方(一方)に揺動した場合(前操作した場合)に、前操作の操作量(操作)に応じて出力する作動油の圧力が変化する。操作弁55Bは、前後方向(第1方向)のうち、操作レバー59を後方(他方)に揺動した場合(後操作した場合)に、後操作の操作量(操作)に応じて出力する作動油の圧力が変化する。左右方向(第2方向)のうち、操作弁55Cは、操作レバー59を右方(一方)に揺動した場合(右操作した場合)に、右操作の操作量(操作)に応じて出力する作動油の圧力が変化する。操作弁55Dは、左右方向(第2方向)のうち、操作レバー59を、左方(他方)に揺動した場合(左操作した場合)に、左操作の操作量(操作)に応じて出力する作動油の圧力が変化する。
【0036】
複数の操作弁55と、走行ポンプ(左走行ポンプ53L,右走行ポンプ53R)とは、走行油路45によって接続されている。言い換えれば、走行ポンプ(左走行ポンプ53L,右走行ポンプ53R)は、操作弁55(操作弁55A、操作弁55B、操作弁55C、操作弁55D)から出力した作動油によって作動可能な油圧機器である。
走行油路45は、第1走行油路45a、第2走行油路45b、第3走行油路45c、第4走行油路45dと、第5走行油路45eとを有している。第1走行油路45aは、走行ポンプ53Lの前進用受圧部53aに接続された油路である。第2走行油路45bは、走行ポンプ53Lの後進用受圧部53bに接続された油路である。第3走行油路45cは、走行ポンプ53Rの前進用受圧部53aに接続された油路である。第4走行油路45dは、走行ポンプ53Rの後進用受圧部53bに接続された油路である。第5走行油路45eは、操作弁55、第1走行油路45a、第2走行油路45b、第3走行油路45c、第4走行油路45dを接続する油路である。
【0037】
操作レバー59を前方(図1では矢示A1方向)に揺動させると、操作弁55Aが操作されて該操作弁55Aからパイロット圧が出力される。このパイロット圧は、第1走行油路45aを介して左走行ポンプ53Lの受圧部53aに作用すると共に第3走行油路45cを介して右走行ポンプ53Rの受圧部53aに作用する。これにより、左走行ポンプ53L及び右走行ポンプ53Rの斜板角度が変更され、左走行モータ36L及び右走行モータ36Rが正転(前進回転)して作業機1が前方に直進する。
【0038】
また、操作レバー59を後方(図1では矢示A2方向)に揺動させると、操作弁55Bが操作されて該操作弁55Bからパイロット圧が出力される。このパイロット圧は、第2走行油路45bを介して左走行ポンプ53Lの受圧部53bに作用すると共に第4走行油路45dを介して右走行ポンプ53Rの受圧部53bに作用する。これにより、左走行ポンプ53L及び右走行ポンプ53Rの斜板角度が変更され、左走行モータ36L及び右走行モータ36Rが逆転(後進回転)して作業機1が後方に直進する。
【0039】
また、操作レバー59を右方(図1では矢示A3方向)に揺動させると、操作弁55Cが操作されて該操作弁55Cからパイロット圧が出力される。このパイロット圧は、第1走行油路45aを介して左走行ポンプ53Lの受圧部53aに作用すると共に第4走行油路45dを介して右走行ポンプ53Rの受圧部53bに作用する。これにより、左走行ポンプ53L及び右走行ポンプ53Rの斜板角度が変更され、左走行モータ36Lが正転し且つ右走行モータ36Rが逆転して作業機1が右側に旋回する。
【0040】
また、操作レバー59を左方(図1では矢示A4方向)に揺動させると、操作弁55Dが操作されて該操作弁55Dからパイロット圧が出力される。このパイロット圧は第3走行油路45cを介して右走行ポンプ53Rの受圧部53aに作用すると共に第2走行油路45bを介して左走行ポンプ53Lの受圧部53bに作用する。これにより、左走行ポンプ53L及び右走行ポンプ53Rの斜板角度が変更され、左走行モータ36Lが逆転し且つ右走行モータ36Rが正転転して作業機1が左側に旋回する。
【0041】
また、操作レバー59を斜め方向に揺動させると、受圧部53aと受圧部53bとに作用するパイロット圧の差圧によって、左走行モータ36L及び右走行モータ36Rの回転方向及び回転速度が決定され、作業機1が前進又は後進しながら右旋回又は左旋回する。
すなわち、操作レバー59を左斜め前方に揺動操作すると該操作レバー59の揺動角度に対応した速度で作業機1が前進しながら左旋回し、操作レバー59を右斜め前方に揺動操作すると該操作レバー59の揺動角度に対応した速度で作業機1が前進しながら右旋回し、操作レバー59を左斜め後方に揺動操作すると該操作レバー59の揺動角度に対応した速度で作業機1が後進しながら左旋回し、操作レバー59を右斜め後方に揺動操作すると該操作レバー59の揺動角度に対応した速度で作業機1が後進しながら右旋回する。
【0042】
図2Aに示すように、作業機1は、表示装置75を備えている。表示装置75は、作業機1に関する様々な情報を表示する装置であり、例えば、運転席8の前方又は側方に配置されている。
表示装置75は、運転情報、警告情報等を表示するパネル等から構成されている。表示装置75は、例えば、運転情報として、燃料の残量を表示する燃料計75aと、水温を表示する温計75b、警告情報を表示する複数の警告灯75cを有している。また、表示装置75は、運転情報として、一対の走行モータ(左走行モータ36L、右走行モータ36R)の速度(走行装置の速度)を表示可能であって、走行装置の速度(走行モータの回転速度)が第2速度(高速側)であることを表示可能な表示部76を備えている。
【0043】
表示部76は、点灯、消灯、点滅等を行うことができるLED等のランプである。走行モータの回転速度)が第2速度である場合には、表示部76は点灯する。また、走行モータの回転速度)が第2速度でなく、第1速度である場合は、表示部76は消灯する。
図2Aに示すように、作業機1は、制御装置60を備えている。制御装置60は、作業機1の様々な制御を行うもので、CPU、MPU等の半導体、電気電子回路等から構成されている。制御装置60には、アクセル65と、モードスイッチ66と、速度切換スイッチ67、回転数検出装置68とが接続されている。アクセル65は、原動機32の回転数(原動機回転数)を設定する部材であり、運転席8の近傍に設けられている。アクセル65は、揺動自在に支持されたアクセルレバー、揺動自在に支持されたアクセルペダル、回転自在に支持されたアクセルボリューム、スライド自在に支持されたアクセルスライダー等である。なお、アクセル65は、上述した例に限定されない。
【0044】
モードスイッチ66は、自動減速を有効又は無効に切り換えるスイッチである。例えば、モードスイッチ66は、ON/OFFに切り換え可能なスイッチであり、ONである場合に自動減速を有効に切り換え、OFFである場合には自動減速を無効に切り換える。
速度切換スイッチ67は、運転席8の近傍に設けられ、運転者(オペレータ)が操作可能である。速度切換スイッチ67は、走行モータ(左走行モータ36L、右走行モータ36R)を第1速度及び第2速度のいずれかに手動で切り換えることができるスイッチである。例えば、速度切換スイッチ67は、第1速度側と第2速度側とに切り換えるシーソスイッチであり、第1速度側から第2速度側とに切り換える増速操作と、第2速度から第1速度に切り換える減速操作とを行うことができる。
【0045】
回転数検出装置68は、回転数を検出するセンサ等で構成されていて、現在の原動機の回転数(原動機回転数)を検出する。回転数検出装置68は、アクセル65の操作量から原動機回転数を検出する装置であってもよい。
図1図2に示すように、制御装置60は、自動減速部61を備えている。自動減速部61は、制御装置60に設けられた電気電子回路等、当該制御装置60に格納されたプログラム等である。
【0046】
自動減速部61は、自動減速が有効である場合には自動減速制御を行い、自動減速が無効である場合には自動減速制御を行わない。
自動減速制御では、走行モータ(左走行モータ36L、右走行モータ36R)が第2速度である場合において所定の条件(自動減速条件)を満たしたときに、走行モータ(左走行モータ36L、右走行モータ36R)を第2速度から第1速度に自動的に切り換える。自動減速制御では、少なくとも走行モータ(左走行モータ36L、右走行モータ36R)が第2速度である状況において、自動減速条件を満たすと、制御装置60は、第2切換弁72のソレノイドを消磁することで、当該第2切換弁72を第2位置72bから第1位置72aに切り換えることにより、走行モータ(左走行モータ36L、右走行モータ36R)を第2速度から第1速度に減速する。つまり、制御装置60は、自動減速制御において、自動減速を行う際は、左走行モータ36Lと右走行モータ36Rとの両方を、第2速度から第1速度に減速する。
【0047】
なお、自動減速部61は、自動減速を行った後、復帰条件を満たすと、第2切換弁72のソレノイドを励磁することで、当該第2切換弁72を第1位置72aから第2位置72bに切り換えることにより、走行モータ(左走行モータ36L、右走行モータ36R)を第1速度から第2速度に増速、即ち、走行モータの速度を復帰させる。つまり、制御装置60は、第1速度から第2速度に復帰する場合は、左走行モータ36Lと右走行モータ36Rとの両方を、第1速度から第2速度に増速する。
【0048】
制御装置60は、自動減速が無効である場合に、速度切換スイッチ67の操作に応じて、走行モータ(左走行モータ36L、右走行モータ36R)を第1速度及び第2速度のいずれかに切り換える手動切換制御を行う。手動切換制御では、速度切換スイッチ67が第1速度側に切り換えられた場合は、第2切換弁72のソレノイドを消磁することで、走行モータ(左走行モータ36L、右走行モータ36R)を第1速度にする。また、手動切換制御では、速度切換スイッチ67が第2速度側に切り換えられた場合は、第2切換弁72のソレノイドを消磁することで、走行モータ(左走行モータ36L、右走行モータ36R)を第2速度にする。
【0049】
さて、表示装置75は、自動減速(自動減速制御)が実行されている場合に、自動減速であることを表示する。表示装置75(表示部76)は、自動減速である場合に第2速度とは異なる表示形態で当該自動減速を表示する。
図3は、制御装置60の動作と、表示装置75の動作とを示すフローである。
図3に示すように、制御装置60は、走行モータ(左走行モータ36L、右走行モータ36R)が第2速度であるか否かを判断する(S1)。走行モータが第2速度である場合(S1、Yes)、表示装置75は、表示部76を点灯させることにより第2速度であることを表示する(S2)。制御装置60(自動減速部61)は、自動減速が有効であるか否かを判断する(S3)。自動減速が有効である場合(S3、Yes)、制御装置60(自動減速部61)は、自動減速条件を満たしているか否かを判断する(S4)。自動減速部61は、自動減速条件を満たしている場合(S4、Yes)、自動減速制御を実行し、走行モータを第2速度から第1速度に減速する(S5)。表示装置75は、自動減速が行われていることを、表示部76を点滅させることによって表示する(S6)。例えば、表示装置75の表示部76は、第2切換弁72が第2位置72bから第1位置72aを切り換えて自動減速制御を行った際に点滅する。なお、表示装置75の表示部76は、運転者(オペレータ)の操作によって第1速度に設定された場合には消灯する。
【0050】
一方、走行モータ(左走行モータ36L、右走行モータ36R)が第2速度でない場合(S1、No)、自動減速が行われた場合に点滅し制御装置60は、自動減速が実行されたか否かを判断する(S7)。自動減速が実行されていない場合(S7、No)、表示装置75は、表示部76を消灯させることにより第1速度であることを表示する(S8)。
以上のように、表示装置75(表示部76)は、自動減速が有効及び無効に関わらず第2速度の状態であれば点灯し(第2速度の状態で且つ自動減速が行われていない場合は点灯し)、自動減速が行われた場合は点滅する。
【0051】
つまり、表示装置75(表示部76)は、モードスイッチ66によって自動減速が有効になっている状態で、自動減速が行われた場合に点滅し且つ第2速度の状態で自動減速が行われていない場合に点灯する。これにより、走行モータが第2速度になっていることを表す表示部76の表示形態を、第2速度を示すときの表示形態(点灯)と、自動減速を示すときの表示形態(点滅)とを行うことによって、1つの表示部76で、自動減速が行われていることを表示することができる。
【0052】
上述した実施形態では、第2速度を示すことが可能な表示部76を点滅させることによって自動減速が行われていることを示していたが、これに代えて、図2Bに示すように、表示部76とは別に、表示部77を設けて、表示部77によって自動減速が行われていることを示してもよい。表示部77は、例えば、点灯、消灯可能なLED等のランプである。表示部77は、自動減速が行われている場合、点灯し、自動減速が行われていない場合、消灯する。なお、表示部77の表示形態は限定されず、点滅によって自動減速が行われていることを示してもよい。
【0053】
次に、自動減速制御が実行される条件である自動減速条件等について説明する。
制御装置60(自動減速部61)は、接続油路57h、57iの圧力を自動減速条件の1つとしている。
制御装置60には、接続油路57h、57iの圧力を、走行ポンプ圧Vとして検出する走行ポンプ圧検出装置80が接続されている。即ち、走行ポンプ圧検出装置80は、左走行ポンプ53L、右走行ポンプ53Rが接続油路57h、57iへ吐出した作動油の圧力(接続油路57h、57iの圧力)を、走行ポンプ圧Vとして検出する。
【0054】
走行ポンプ圧検出装置80は、走行モータの複数の走行ポンプ圧を検出可能である。具体的には、左走行モータ36Lは、第1ポートP11、第2ポートP12を有し、右走行モータ36Rは、第3ポートP13、第4ポートP14を有し、走行ポンプ圧検出装置80は、接続油路57h、57iにおいて、第1ポートP11側、第2ポートP12側、第3ポートP13側、第4ポートP14側のそれぞれの走行ポンプ圧を検出する。なお、第1ポートP11は、左走行モータ36Lが正転したときの吐出側のポート、第2ポートP12は、左走行モータ36Lが正転したときの吸込み側のポートである。第3ポートP13は、右走行モータ36Rが正転したときの吐出側のポート、第4ポートP14は、右走行モータ36Rが正転したときの吸込み側のポートである。
【0055】
図1及び図2に示すように、走行ポンプ圧検出装置80は、第1圧力検出装置80a、第2圧力検出装置80b、第3圧力検出装置80c、第4圧力検出装置80dを含んでいる。
第1圧力検出装置80aは、接続油路57hにおいて、左走行モータ36Lの第1ポートP11側に設けられ、第1ポートP11側の走行ポンプ圧Vを第1走行ポンプ圧V1として検出する。
【0056】
第2圧力検出装置80bは、接続油路57hにおいて、左走行モータ36Lの第2ポートP12側に設けられ、第2ポートP12側の走行ポンプ圧Vを第2走行ポンプ圧V2として検出する。
第3圧力検出装置80cは、接続油路57iにおいて、右走行モータ36Rの第3ポートP13側に設けられ、第3ポートP13側の走行ポンプ圧Vを第3走行ポンプ圧V3として検出する。
【0057】
第4圧力検出装置80dは、接続油路57iにおいて、右走行モータ36Rの第4ポートP14側に設けられ、第4ポートP14側の走行ポンプ圧Vを第4走行ポンプ圧V4として検出する。
制御装置60は、一対の走行モータのいずれかが第2速度である状態で走行ポンプ圧検出装置80によって検出された走行ポンプ圧V(V1~V4)が第1減速判定圧PV1以上である場合に、自動減速を行う。
【0058】
以下、走行ポンプ圧V(V1~V4)及び第1減速判定圧PV1を用いた自動減速の判定について詳しく説明する。
制御装置60には、不揮発性のメモリ等から構成された第1記憶装置81aが接続されている。なお、制御装置60に第1記憶装置81aが内蔵されていてもよい。
図4Aに示すように、第1記憶装置81aには、第1減速判定圧PV1が原動機回転数と対応付けられて記憶されている。即ち、第1記憶装置81aは、原動機回転数と第1減速判定圧PV1との関係を示す第1減速判定テーブルT1を記憶している。第1減速判定テーブルT1において、第1減速判定圧PV1は、原動機回転数が増加するにつれて増加していて、原動機回転数が高い場合は当該第1減速判定圧PV1も高い値であり、原動機回転数が低い場合は当該第1減速判定圧PV1も低い値である。
【0059】
第1減速判定テーブルT1において、例えば、原動機回転数が1000rpm以上~1250rpm未満である場合は、第1減速判定圧PV1は24MPa、原動機回転数が1250rpm以上1500rpm未満である場合は、第1減速判定圧PV1は25MPa、原動機回転数が1500rpm以上1750rpm未満である場合は、第1減速判定圧PV1は26MPa、原動機回転数が1750rpm以上2000rpm未満である場合は、第1減速判定圧PV1は27MPa、原動機回転数が2000rpm以上2250rpm未満である場合は、第1減速判定圧PV1は28MPa、原動機回転数が2250rpm以上2500rpm未満である場合は、第1減速判定圧PV1は29MPa、原動機回転数が2500rpm以上である場合は、第1減速判定圧PV1は30MPaであることを示している。つまり、第1減速判定テーブルT1において、原動機回転数の数値は、第1減速判定圧PV1を設定するための境界値を示している。
【0060】
自動減速部61は、走行モータ(左走行モータ36L、右走行モータ36R)が第2速度である場合において、回転数検出装置68で検出された原動機回転数と第1減速判定テーブルT1とから第1減速判定圧PV1を抽出する。自動減速部61は、例えば、原動機回転数が1300rpmである場合は、第1減速判定テーブルT1から25MPaである第1減速判定圧PV1を抽出し、原動機回転数が2100rpmである場合は、第1減速判定テーブルT1から28MPaである第1減速判定圧PV1を抽出する。
【0061】
自動減速部61は、走行ポンプ圧検出装置80で検出された走行ポンプ圧V1~V4が、第1減速判定テーブルT1から抽出した第1減速判定圧PV1以上である場合に、自動減速を行う。詳しくは、自動減速部61は、第1走行ポンプ圧V1、第2走行ポンプ圧V2、第3走行ポンプ圧V3及び第4走行ポンプ圧V4のいずれかが、第1減速判定圧PV1以上である場合に、走行モータ(左走行モータ36L、右走行モータ36R)を第2速度から第1速度に減速する自動減速を行う。
【0062】
さて、自動減速部61は、自動減速を行った後、自動減速が有効である場合には、走行モータ(左走行モータ36L、右走行モータ36R)を第1速度から第2速度に復帰させる制御(復帰制御)を行う。
制御装置60には、不揮発性のメモリ等から構成された第2記憶装置81bが接続されている。なお、制御装置60に第2記憶装置81bが内蔵されていてもよい。
【0063】
図4Bに示すように、第2記憶装置81bには、第1復帰判定圧QV1が原動機回転数と対応付けられて記憶されている。即ち、第2記憶装置81bは、原動機回転数と第1復帰判定圧QV1との関係を示す第1復帰判定テーブルU1を記憶している。第1復帰判定テーブルU1において、第1復帰判定圧QV1は、原動機回転数が増加するにつれて増加していて、原動機回転数が高い場合は当該第1復帰判定圧QV1も高い値であり、原動機回転数が低い場合は当該第1復帰判定圧QV1も低い値である。第1復帰判定テーブルU1は、上述した第1減速判定テーブルT1と同じように、原動機回転数の数値は、第1復帰判定圧QV1を設定するための境界値を示している。例えば、原動機回転数が1600rpmである場合は、第1復帰判定圧QV1は、16MPaである。
【0064】
自動減速部61は、自動減速後において回転数検出装置68で検出された原動機回転数と第1復帰判定テーブルU1とから第1復帰判定圧QV1を抽出し、走行ポンプ圧検出装置80で検出された走行ポンプ圧V1~V4が、第1復帰判定テーブルU1から抽出した第1復帰判定圧QV1以下である場合に、走行モータ(左走行モータ36L、右走行モータ36R)を第1速度から第2速度に復帰させる。詳しくは、自動減速部61は、第1走行ポンプ圧V1、第2走行ポンプ圧V2、第3走行ポンプ圧V3及び第4走行ポンプ圧V4が、第1復帰判定圧QV1以下となった時点で、走行モータ(左走行モータ36L、右走行モータ36R)を第1速度から第2速度に増速する。
【0065】
図5は、自動減速部61における処理をまとめた図である。
図5に示すように、自動減速が有効で且つ走行モータが第2速度である状態(S10、Yes)では、自動減速部61は、回転数検出装置68で検出された原動機回転数及び第1減速判定テーブルT1を参照する(S11)。自動減速部61は、原動機回転数に基づいて第1減速判定テーブルT1から第1減速判定圧PV1を抽出する(S12)。自動減速部61は、走行ポンプ圧検出装置80で検出された走行ポンプ圧V1~V4を参照する(S13)。自動減速部61は、走行ポンプ圧V1~V4のいずれかが第1減速判定圧PV1以上であるか否かを判断する(S14)。
【0066】
自動減速部61は、走行ポンプ圧V1~V4のいずれかが第1減速判定圧PV1以上である場合(S14、Yes)、自動減速を行う(S15)。
自動減速部61は、自動減速を行った後、回転数検出装置68で検出された原動機回転数及び第1復帰判定テーブルU1を参照する(S16)。自動減速部61は、原動機回転数に基づいて第1復帰判定テーブルU1から第1復帰判定圧QV1を抽出する(S17)。自動減速部61は、走行ポンプ圧V1~V4を参照する(S18)。自動減速部61は、走行ポンプ圧V1~V4の全てが第1復帰判定圧QV1以下であるか否かを判断する(S19)。自動減速部61は、走行ポンプ圧V1~V4の全てが第1復帰判定圧QV1以下である場合(S19、Yes)、復帰制御を行う(S20)。
【0067】
作業機1は、第1記憶装置81aと、自動減速部61を有する制御装置60を備え、自動減速部61は、走行モータが第2速度である場合において、回転数検出装置68で検出された原動機回転数と第1減速判定テーブルT1とから第1減速判定圧PV1を抽出し、走行ポンプ圧検出装置80で検出された走行ポンプ圧V1~V4が、第1減速判定圧PV1以上である場合に、自動減速を行う。これによれば、原動機回転数の回転数に応じた第1減速判定圧PV1に基づいて自動減速を行っているため、作業機1の運転状態の中で最適なタイミングで自動減速を行うことができる。即ち、原動機の回転数に応じて適正に自動減速を行うことができ、作業効率を向上させることができる。
【0068】
作業機1は、第2記憶装置81bを備え、自動減速部61は、自動減速後において回転数検出装置68で検出された原動機回転数と第1復帰判定テーブルU1とから第1復帰判定圧QV1を抽出し、走行ポンプ圧検出装置80で検出された自動減速後の走行ポンプ圧V1~V4が、第1復帰判定圧QV1以下である場合に、走行モータを第1速度から第2速度に復帰する。これによれば、原動機回転数の回転数に応じた第1復帰判定圧QV1に基づいて復帰を行っているため、作業機1の運転状態の中で最適なタイミングで高速側に切り換えることができる。
【0069】
自動減速部61は、第1走行ポンプ圧V1、第2走行ポンプ圧V2、第3走行ポンプ圧V3、第4走行ポンプ圧V4のいずれかが、第1減速判定圧PV1以上である場合に、自動減速を行う。これによれば、例えば、左走行装置5Lが前進側に作動した場合、左走行装置5Lが後進側に作動した場合、右走行装置5Rが前進側に作動した場合、右走行装置5Rが後進側に作動した場合のいずれにおいても、左走行装置5L又は右走行装置5Rに負荷が掛かった場合に、適正に減速することができる。
【0070】
自動減速部61は、第1走行ポンプ圧V1、第2走行ポンプ圧V2、第3走行ポンプ圧V3、第4走行ポンプ圧V4が、第1復帰判定圧QV1以下である場合に、走行モータを第1速度から第2速度に復帰する。これによれば、左走行装置5Lが前進側に作動した場合、左走行装置5Lが後進側に作動した場合、右走行装置5Rが前進側に作動した場合、右走行装置5Rが後進側に作動した場合のいずれにおいても、左走行装置5L又は右走行装置5Rへ掛かった負荷が解消された場合に、適正に増速することができる。
【0071】
第1記憶装置81aは、原動機回転数が増加するにつれて第1減速判定圧PV1が増加する第1減速判定テーブルT1を記憶している。これによれば、作業機1において、作業負荷が大きな作業を効率よく行うことができる。
第2記憶装置81bは、原動機回転数が増加するにつれて第1復帰判定圧QV1が増加する第1復帰判定テーブルU1を記憶している。これによれば、作業機1において、作業負荷が大きな作業を効率よく行うことができる。
【0072】
上述した実施形態では、自動減速条件として、複数の走行ポンプ圧V1~V4を用いていたが。これに代えて、左走行装置5Lを駆動させる左走行モータ36Lの走行ポンプ圧V1,V3と、右走行装置5Rを駆動させる右走行モータ36Rの走行ポンプ圧V2,V4との差圧(走行差圧)に基づいて自動減速を行ってもよい。即ち、走行差圧を自動減速の条件としてもよい。
【0073】
制御装置60は、差圧演算部63を備えている。差圧演算部63は、制御装置60に設けられた電気電子回路等、当該制御装置60に格納されたプログラム等である。差圧演算部63は、走行モータ36L及び右走行モータ36Rのうち、左走行モータ36Lが駆動したときの走行ポンプ圧(一方走行ポンプ圧)V1、V2と、右走行モータ36Rが駆動したときの走行ポンプ圧(他方走行ポンプ圧)V3、V4との走行差圧V5、V6を演算する。
【0074】
制御装置60には、不揮発性のメモリ等から構成された第3記憶装置81cが接続されている。なお、制御装置60に第3記憶装置81cが内蔵されていてもよい。
図6Aに示すように、第3記憶装置81cには、第2減速判定圧PV2が原動機回転数と対応付けられて記憶されている。即ち、第3記憶装置81cは、原動機回転数と第2減速判定圧PV2との関係を示す第2減速判定テーブルT2を記憶している。第2減速判定テーブルT2において、第2減速判定圧PV2は、原動機回転数が増加するにつれて増加していて、原動機回転数が高い場合は当該第2減速判定圧PV2も高い値であり、原動機回転数が低い場合は当該第2減速判定圧PV2も低い値である。
【0075】
第2減速判定テーブルT2は、上述した第1減速判定テーブルT1と同じように、原動機回転数の数値は、第2減速判定圧PV2を設定するための境界値を示している。例えば、原動機回転数が1600rpmである場合は、第2減速判定圧PV2は、16MPaである。
差圧演算部63は、第1走行ポンプ圧V1と第3走行ポンプ圧V3との差である第1差圧を走行差圧V5として算出し、第2走行ポンプ圧V2と第4走行ポンプ圧V4との差である第2差圧を走行差圧V6として算出する。
【0076】
自動減速部61は、走行モータ(左走行モータ36L、右走行モータ36R)が第2速度である場合において、回転数検出装置68で検出された原動機回転数と第2減速判定テーブルT2とから第2減速判定圧PV2を抽出する。
自動減速部61は、差圧演算部63が演算した走行差圧V5、V6が、第2減速判定テーブルT2から抽出した第2減速判定圧PV2以上である場合に、自動減速を行う。詳しくは、自動減速部61は、第1差圧(V5)、第2差圧(V6)のいずれかが、第2減速判定圧PV2以上である場合に、自動減速を行う。
【0077】
さて、自動減速部61は、自動減速を行った後、自動減速が有効である場合には、復帰制御を行う。
制御装置60には、不揮発性のメモリ等から構成された第4記憶装置81dが接続されている。なお、制御装置60に第4記憶装置81dが内蔵されていてもよい。
図6Bに示すように、第4記憶装置81dには、第2復帰判定圧QV2が原動機回転数と対応付けられて記憶されている。即ち、第4記憶装置81dは、原動機回転数と第2復帰判定圧QV2との関係を示す第2復帰判定テーブルU2を記憶している。第2復帰判定テーブルU2において、第2復帰判定圧QV2は、原動機回転数が増加するにつれて増加していて、原動機回転数が高い場合は当該第2復帰判定圧QV2も高い値であり、原動機回転数が低い場合は当該第2復帰判定圧QV2も低い値である。第2復帰判定テーブルU2は、上述した第2減速判定テーブルT2と同じように、原動機回転数の数値は、第2復帰判定圧QV2を設定するための境界値を示している。例えば、原動機回転数が1600rpmである場合は、第2復帰判定圧QV2は、17MPaである。
【0078】
自動減速部61は、自動減速後において回転数検出装置68で検出された原動機回転数と第2復帰判定テーブルU2とから第2復帰判定圧QV2を抽出し、差圧演算部63が演算した走行差圧V5、V6が、第2復帰判定テーブルU2から抽出した第2復帰判定圧QV2以下である場合に、復帰制御を実行する。詳しくは、自動減速部61は、走行差圧V5、V6が、第2復帰判定圧QV2以下となった時点で、走行モータを第1速度から第2速度に増速する。
【0079】
図7は、自動減速部61における処理をまとめた図である。
図7に示すように、自動減速が有効で且つ走行モータが第2速度である状態(S30、Yes)では、自動減速部61は、回転数検出装置68で検出された原動機回転数及び第2減速判定テーブルT2を参照する(S31)。自動減速部61は、原動機回転数に基づいて第2減速判定テーブルT2から第2減速判定圧PV2を抽出する(S32)。差圧演算部63は、走行ポンプ圧V1~V4から第1差圧(V5)、第2差圧(V6)を演算する(S33)。自動減速部61は、第1差圧(V5)及び第2差圧(V6)のいずれかが第2減速判定圧PV2以上であるか否かを判断する(S34)。自動減速部61は、第1差圧(V5)及び第2差圧(V6)のいずれかが第2減速判定圧PV2以上である場合(S34、Yes)、自動減速を行う(S35)。
【0080】
自動減速部61は、自動減速を行った後、回転数検出装置68で検出された原動機回転数及び第2復帰判定テーブルU2を参照する(S36)。自動減速部61は、原動機回転数に基づいて第2復帰判定テーブルU2から第2復帰判定圧QV2を抽出する(S37)。自動減速部61は、自動減速後の第1差圧(V5)及び第2差圧(V6)を参照する(S38)。
【0081】
自動減速部61は、第1差圧(V5)及び第2差圧(V6)が第2復帰判定圧QV2以下であるか否かを判断する(S39)。自動減速部61は、第1差圧(V5)及び第2差圧(V6)が第2復帰判定圧QV2以下である場合(S39、Yes)、復帰制御を行う(S40)。
作業機1は、第3記憶装置81cと、自動減速部61及び差圧演算部63を有する制御装置60を備え、自動減速部61は、走行モータが第2速度である場合において、回転数検出装置68で検出された原動機回転数と第2減速判定テーブルT2とから第2減速判定圧PV2を抽出し、差圧演算部63で演算された走行差圧V5,V6のいずれかが、第2減速判定圧PV2以上である場合に、自動減速を行う。これによれば、原動機回転数の回転数に応じた第2減速判定圧PV2に基づいて自動減速を行っているため、作業機1の運転状態の中で最適なタイミングで高速側に切り換えることができる。特に、左走行装置5Lと右走行装置5Rとに掛かる負荷が互いに大きく異なった場合などに効率よく自動減速を行うことができる。
【0082】
作業機1は、第4記憶装置81dを備え、自動減速部61は、自動減速後において回転数検出装置68で検出された原動機回転数と第2復帰判定テーブルU2とから第2復帰判定圧QV2を抽出し、差圧演算部63で演算された自動減速後の走行差圧V5,V6の両方が、第2復帰判定圧QV2以下である場合に、走行モータを第1速度から第2速度に復帰する。これによれば、原動機回転数の回転数に応じた第2復帰判定圧QV2に基づいて復帰を行っているため、作業機1の運転状態の中で最適なタイミングで高速側に切り換えることができる。特に、左走行装置5Lと右走行装置5Rとに掛かる負荷が互いに大きく異なったときに自動減速を行った後において、効率よく復帰を行うことができる。
【0083】
差圧演算部63は、走行差圧として、第1走行ポンプ圧V1と第3走行ポンプ圧V3との差である第1差圧(V5)、及び、第2走行ポンプ圧V2と第4走行ポンプ圧V4との差である第2差圧(V6)を求め、自動減速部61は、第1差圧(V5)及び第2差圧(V6)のいずれかが、第2減速判定圧PV2以上である場合に、自動減速を行う。これによれば、作業機1が前進及び後進しているいずれかの状況においても効率よく自動減速を行うことができる。
【0084】
自動減速部61は、第1差圧(V5)及び第2差圧(V6)の両方が、第2復帰判定圧QV2以下である場合に、走行モータの少なくともいずれかを第1速度から第2速度に復帰する。これによれば、作業機1が前進及び後進しているいずれかの状況においても効率よく復帰を行うことができる。
第3記憶装置81cは、原動機回転数が増加するにつれて第2減速判定圧PV2が増加する第2減速判定テーブルT2を記憶している。これによれば、作業機1において、作業負荷が大きな作業を効率よく行うことができる。
【0085】
第4記憶装置81dは、原動機回転数が増加するにつれて第2復帰判定圧QV2が増加する第2復帰判定テーブルU2を記憶している。これによれば、作業機1において、作業負荷が大きな作業を効率よく行うことができる。
上述した実施形態では、原動機回転数に対応する複数の走行ポンプ圧V1~V4に基づいて自動減速を行っていたが、走行ポンプ(左走行ポンプ53L、右走行ポンプ53R)の斜板角度に対応する複数の走行ポンプ圧V1~V4に基づいて自動減速を行ってもよい。
【0086】
制御装置60には、斜板角度検出装置69と、第5記憶装置81eとが接続されている。斜板角度検出装置69は、走行ポンプ(左走行ポンプ53L、右走行ポンプ53R)の斜板角度を検出する装置である。斜板角度検出装置69は、例えば、走行油路45の作動油の圧力(パイロット圧)を検出して当該パイロット圧を斜板角度に変換するセンサであっても、走行ポンプ(左走行ポンプ53L、右走行ポンプ53R)のレギュレータの操作量を検出して斜板角度を検出するセンサであっても、操作レバー59の操作量から求める可変抵抗器やポテンショメータであっても、その他のセンサ等であってもよく限定されない。この実施形態では、斜板角度検出装置69は、走行油路45の作動油の圧力(パイロット圧)を検出することによって、走行ポンプの斜板角度としているため、図8A及び図8B等では、斜板角度を当該斜板角度に対応するパイロット圧力で示している。
【0087】
第5記憶装置81eは、不揮発性のメモリ等である。
図8Aに示すように、第5記憶装置81eには、第3減速判定圧PV3が斜板角度と対応付けられて記憶されている。即ち、第5記憶装置81eは、斜板角度(斜板角度に対応するパイロット圧)と第3減速判定圧PV3との関係を示す第3減速判定テーブルT3を記憶している。第3減速判定テーブルT3において、第3減速判定圧PV3は、斜板角度が増加するにつれて増加していて、斜板角度が高い場合は当該第3減速判定圧PV3も高い値であり、斜板角度が低い場合は当該第3減速判定圧PV3も低い値である。第3減速判定テーブルT3は、上述した第1減速判定テーブルT1等と同じように、斜板角度の数値は、第3減速判定圧PV3を設定するための境界値を示している。例えば、斜板角度に対応するパイロット圧が0.8MPaである場合は、第3減速判定圧PV3は、26MPaである。
【0088】
自動減速部61は、走行モータ(左走行モータ36L、右走行モータ36R)が第2速度である場合において、斜板角度検出装置69で検出された斜板角度と第3減速判定テーブルT3とから第3減速判定圧PV3を抽出する。自動減速部61は、例えば、斜板角度に対応するパイロット圧が0.160MPaである場合は、第3減速判定テーブルT3から28MPaである第3減速判定圧PV3を抽出し、斜板角度に対応するパイロット圧が0.11MPaである場合は、第3減速判定テーブルT3から26MPaである第3減速判定圧PV3を抽出する。
【0089】
自動減速部61は、走行ポンプ圧検出装置80で検出された走行ポンプ圧V1~V4のいずれかが、第3減速判定テーブルT3から抽出した第3減速判定圧PV3以上である場合に、自動減速を行う。詳しくは、自動減速部61は、第1走行ポンプ圧V1、第2走行ポンプ圧V2、第3走行ポンプ圧V3及び第4走行ポンプ圧V4のいずれかが、第3減速判定圧PV3以上である場合に、走行モータ(左走行モータ36L、右走行モータ36R)を第2速度から第1速度に減速する自動減速を行う。
【0090】
さて、自動減速部61は、自動減速を行った後、自動減速が有効である場合には、走行モータ(左走行モータ36L、右走行モータ36R)を第1速度から第2速度に復帰させる制御(復帰制御)を行う。
制御装置60には、不揮発性のメモリ等から構成された第6記憶装置81fが接続されている。なお、制御装置60に第6記憶装置81fが内蔵されていてもよい。
【0091】
図8Bに示すように、第6記憶装置81fには、第3復帰判定圧QV3が斜板角度と対応付けられて記憶されている。即ち、第6記憶装置81fは、斜板角度と第3復帰判定圧QV3との関係を示す第3復帰判定テーブルU3を記憶している。第3復帰判定テーブルU3において、第3復帰判定圧QV3は、斜板角度が増加するにつれて増加していて、斜板角度が高い場合は当該第3復帰判定圧QV3も高い値であり、斜板角度が低い場合は当該第3復帰判定圧QV3も低い値である。第3復帰判定テーブルU3は、上述した第3減速判定テーブルT3と同じように、斜板角度の数値は、第3復帰判定圧QV3を設定するための境界値を示している。例えば、斜板角度に対応するパイロット圧が0.8MPaである場合は、第3復帰判定圧QV3は、16MPaである。
【0092】
自動減速部61は、自動減速後において斜板角度検出装置69で検出された斜板角度と第3復帰判定テーブルU3とから第3復帰判定圧QV3を抽出し、走行ポンプ圧検出装置80で検出された走行ポンプ圧V1~V4が、第3復帰判定テーブルU3から抽出した第3復帰判定圧QV3以下である場合に、走行モータ(左走行モータ36L、右走行モータ36R)を第1速度から第2速度に復帰させる。詳しくは、自動減速部61は、第1走行ポンプ圧V1、第2走行ポンプ圧V2、第3走行ポンプ圧V3及び第4走行ポンプ圧V4が、第3復帰判定圧QV3以下となった時点で、走行モータ(左走行モータ36L、右走行モータ36R)を第1速度から第2速度に増速する。
【0093】
図9は、自動減速部61における処理をまとめた図である。
図9に示すように、自動減速が有効で且つ走行モータが第2速度である状態(S50、Yes)では、自動減速部61は、斜板角度検出装置69で検出された斜板角度及び第3減速判定テーブルT3を参照する(S51)。なお、自動減速部61は、自動減速の判定を行うにあたって、前進回転である場合には、走行ポンプ(左走行ポンプ53L、右走行ポンプ53R)が前進側に駆動した場合の斜板角度を採用し、後進回転である場合には、走行ポンプ(左走行ポンプ53L、右走行ポンプ53R)が後進側に駆動した場合の斜板角度を採用する。また、走行ポンプ(左走行ポンプ53L、右走行ポンプ53R)が前進側に駆動する場合及び後進側に駆動する場合のいずれにおいても、左走行ポンプ53L及び右走行ポンプ53Rの斜板角度を検出することが可能である。この場合、自動減速部61は、例えば、左走行ポンプ53Lの斜板角度と右走行ポンプ53Rの斜板角度とを平均した値を、自動減速等の判定値に用いる。
【0094】
自動減速部61は、斜板角度に基づいて第3減速判定テーブルT3から第3減速判定圧PV3を抽出する(S52)。自動減速部61は、走行ポンプ圧検出装置80で検出された走行ポンプ圧V1~V4を参照する(S53)。自動減速部61は、走行ポンプ圧V1~V4のいずれかが第3減速判定圧PV3以上であるか否かを判断する(S54)。
自動減速部61は、走行ポンプ圧V1~V4のいずれかが第3減速判定圧PV3以上である場合(S54、Yes)、自動減速を行う(S55)。
【0095】
自動減速部61は、自動減速を行った後、斜板角度検出装置69で検出された斜板角度及び第3復帰判定テーブルU3を参照する(S56)。自動減速部61は、斜板角度に基づいて第3復帰判定テーブルU3から第3復帰判定圧QV3を抽出する(S57)。自動減速部61は、走行ポンプ圧V1~V4を参照する(S58)。自動減速部61は、走行ポンプ圧V1~V4の第3復帰判定圧QV3以下であるか否かを判断する(S59)。自動減速部61は、走行ポンプ圧V1~V4の全てが第3復帰判定圧QV3以下である場合(S59、Yes)、復帰制御を行う(S60)。
【0096】
作業機1は、斜板角度検出装置69と、第5記憶装置81eと、自動減速部61を有する制御装置60とを備え、自動減速部61は、走行モータが第2速度である場合において、斜板角度検出装置69で検出された斜板角度と第3減速判定テーブルT3とから第3減速判定圧PV3を抽出し、走行ポンプ圧検出装置80で検出された走行ポンプ圧V1~V4のいずれかが、第3減速判定圧PV3以上である場合に、自動減速を行う。これによれば、走行ポンプ(左走行ポンプ53L、右走行ポンプ53R)の斜板角度に応じた第3減速判定圧PV3に基づいて自動減速を行っているため、作業機1の運転状態の中で最適なタイミングで自動減速を行うことができる。即ち、原動機の回転数に応じて適正に自動減速を行うことができ、作業効率を向上させることができる。
【0097】
作業機1は、斜板角度と第3復帰判定圧QV3との関係を示す第3復帰判定テーブルU3を記憶する第6記憶装置81fを備え、自動減速部61は、自動減速後において斜板角度検出装置69で検出された斜板角度と第3復帰判定テーブルU3とから第3復帰判定圧QV3を抽出し、自動減速後の走行ポンプ圧V1~V4が、第3復帰判定圧QV3以下である場合に、走行モータを第1速度から第2速度に復帰する。これによれば、走行ポンプの斜板角度に応じた第3復帰判定圧QV3に基づいて復帰を行っているため、作業機1の運転状態の中で最適なタイミングで高速側に切り換えることができる。
【0098】
自動減速部61は、第1走行ポンプ圧V1、第2走行ポンプ圧V2、第3走行ポンプ圧V3及び第4走行ポンプ圧V4のいずれかが、第3減速判定圧PV3以上である場合に、自動減速を行う。これによれば、例えば、左走行装置5Lが前進側に作動した場合、左走行装置5Lが後進側に作動した場合、右走行装置5Rが前進側に作動した場合、右走行装置5Rが後進側に作動した場合のいずれにおいても、左走行装置5L又は右走行装置5Rに負荷が掛かった場合に、適正に減速することができる。
【0099】
自動減速部61は、第1走行ポンプ圧V1、第2走行ポンプ圧V2、第3走行ポンプ圧V3及び第4走行ポンプ圧V4が、第3復帰判定圧QV3以下である場合に、走行モータを第1速度から第2速度に復帰する。これによれば、左走行装置5Lが前進側に作動した場合、左走行装置5Lが後進側に作動した場合、右走行装置5Rが前進側に作動した場合、右走行装置5Rが後進側に作動した場合のいずれにおいても、左走行装置5L又は右走行装置5Rへ掛かった負荷が解消された場合に、適正に増速することができる。
【0100】
第5記憶装置81eは、斜板角度が増加するにつれて第3減速判定圧PV3が増加する第3減速判定テーブルT3を記憶している。これによれば、作業機1において、作業負荷が大きな作業を効率よく行うことができる。
第6記憶装置81fは、斜板角度が増加するにつれて第3復帰判定圧QV3が増加する第3復帰判定テーブルU3を記憶している。これによれば、作業機1において、作業負荷が大きな作業を効率よく行うことができる。
【0101】
上述した実施形態では、自動減速条件として、斜板角度に対応する複数の走行ポンプ圧V1~V4を用いていたが。これに代えて、斜板角度に対応する走行差圧V5、V6に基づいて自動減速を行ってもよい。
制御装置60には、不揮発性のメモリ等から構成された第7記憶装置81gが接続されている。なお、制御装置60に第7記憶装置81gが内蔵されていてもよい。
【0102】
図10Aに示すように、第7記憶装置81gには、第4減速判定圧PV4が斜板角度と対応付けられて記憶されている。即ち、第7記憶装置81gは、斜板角度と第4減速判定圧PV4との関係を示す第4減速判定テーブルT4を記憶している。第4減速判定テーブルT4において、第4減速判定圧PV4は、斜板角度が増加するにつれて増加していて、斜板角度が高い場合は当該第4減速判定圧PV4も高い値であり、斜板角度が低い場合は当該第4減速判定圧PV4も低い値である。
【0103】
第4減速判定テーブルT4は、上述した第1減速判定テーブルT1と同じように、斜板角度の数値は、第4減速判定圧PV4を設定するための境界値を示している。例えば、斜板角度に対応する0.8MPaである場合は、第4減速判定圧PV4は、21MPaである。
作業機1が前進している状況においては、差圧演算部63は、第1走行ポンプ圧V1と第3走行ポンプ圧V3との差である第1差圧(V5)を算出する。また、作業機1が後進している状況においては、差圧演算部63は、第2差圧(V6)を算出する。
【0104】
自動減速部61は、走行モータ(左走行モータ36L、右走行モータ36R)が第2速度である場合において、斜板角度検出装置69で検出された斜板角度と第4減速判定テーブルT4とから第4減速判定圧PV4を抽出する。
自動減速部61は、差圧演算部63が演算した走行差圧V5、V6が、第4減速判定テーブルT4から抽出した第4減速判定圧PV4以上である場合に、自動減速を行う。詳しくは、自動減速部61は、第1差圧(V5)、第2差圧(V6)のいずれかが、第4減速判定圧PV4以上である場合に、自動減速を行う。
【0105】
さて、自動減速部61は、自動減速を行った後、自動減速が有効である場合には、復帰制御を行う。
制御装置60には、不揮発性のメモリ等から構成された第8記憶装置81hが接続されている。なお、制御装置60に第8記憶装置81hが内蔵されていてもよい。
図10Bに示すように、第8記憶装置81hには、第4復帰判定圧QV4が斜板角度と対応付けられて記憶されている。即ち、第8記憶装置81hは、斜板角度と第4復帰判定圧QV4との関係を示す第4復帰判定テーブルU4を記憶している。第4復帰判定テーブルU4において、第4復帰判定圧QV4は、斜板角度が増加するにつれて増加していて、斜板角度が高い場合は当該第4復帰判定圧QV4も高い値であり、斜板角度が低い場合は当該第4復帰判定圧QV4も低い値である。第4復帰判定テーブルU4は、上述した第4減速判定テーブルT4と同じように、斜板角度の数値は、第4復帰判定圧QV4を設定するための境界値を示している。例えば、斜板角度に対応するパイロット圧が0.8MPaである場合は、第4復帰判定圧QV4は、16MPaである。
【0106】
自動減速部61は、自動減速後において斜板角度検出装置69で検出された斜板角度と第4復帰判定テーブルU4とから第4復帰判定圧QV4を抽出し、差圧演算部63が演算した走行差圧V5、V6が、第4復帰判定テーブルU4から抽出した第4復帰判定圧QV4以下である場合に、復帰制御を実行する。詳しくは、自動減速部61は、走行差圧V5、V6が、第4復帰判定圧QV4以下となった時点で、走行モータを第1速度から第2速度に増速する。
【0107】
図11は、自動減速部61における処理をまとめた図である。
図11に示すように、自動減速が有効で且つ走行モータが第2速度である状態(S70、Yes)では、自動減速部61は、斜板角度検出装置69で検出された斜板角度及び第4減速判定テーブルT4を参照する(S71)。自動減速部61は、斜板角度に基づいて第4減速判定テーブルT4から第4減速判定圧PV4を抽出する(S72)。差圧演算部63は、走行ポンプ圧V1~V4から第1差圧(V5)、第2差圧(V6)を演算する(S73)。自動減速部61は、第1差圧(V5)及び第2差圧(V6)が第4減速判定圧PV4以上であるか否かを判断する(S74)。自動減速部61は、第1差圧(V5)及び第2差圧(V6)が第4減速判定圧PV4以上である場合(S74、Yes)、自動減速を行う(S75)。
【0108】
自動減速部61は、自動減速を行った後、斜板角度検出装置69で検出された斜板角度及び第4復帰判定テーブルU4を参照する(S76)。自動減速部61は、斜板角度に基づいて第4復帰判定テーブルU4から第4復帰判定圧QV4を抽出する(S77)。自動減速部61は、自動減速後の第1差圧(V5)及び第2差圧(V6)を参照する(S78)。
【0109】
自動減速部61は、第1差圧(V5)及び第2差圧(V6)が第4復帰判定圧QV4以下であるか否かを判断する(S79)。自動減速部61は、第1差圧(V5)及び第2差圧(V6)が第4復帰判定圧QV4以下である場合(S79、Yes)、復帰制御を行う(S80)。
作業機1は、斜板角度検出装置69と、第7記憶装置81gと、自動減速部61及び差圧演算部63とを有する制御装置60とを備え、自動減速部61は、走行モータが第2速度である場合において、斜板角度検出装置69で検出された斜板角度と第4減速判定テーブルT4とから第4減速判定圧PV4を抽出し、差圧演算部63で演算された走行差圧V5,V6のいずれかが、第4減速判定圧PV4以上である場合に、自動減速を行う。これによれば、走行ポンプの斜板角度に応じた第4減速判定圧PV4に基づいて自動減速を行っているため、作業機1の運転状態の中で最適なタイミングで高速側に切り換えることができる。特に、左走行装置5Lと右走行装置5Rとに掛かる負荷が互いに大きく異なった場合などに効率よく自動減速を行うことができる。
【0110】
作業機1は、第8記憶装置81hを備え、自動減速部61は、自動減速後において斜板角度検出装置69で検出された斜板角度と第4復帰判定テーブルU4とから第4復帰判定圧QV4を抽出し、自動減速後の走行差圧V5,V6の両方が、第4復帰判定圧QV4以下である場合に、走行モータを第1速度から第2速度に復帰する。これによれば、走行ポンプの斜板角度に応じた第4復帰判定圧QV4に基づいて復帰を行っているため、作業機1の運転状態の中で最適なタイミングで高速側に切り換えることができる。特に、左走行装置5Lと右走行装置5Rとに掛かる負荷が互いに大きく異なった場合などに効率よく自動減速を行うことができる。
【0111】
自動減速部61は、第1差圧(V5)及び第2差圧(V6)のいずれかが、第4減速判定圧PV4以上である場合に、自動減速を行う。これによれば、作業機1が前進及び後進しているいずれかの状況においても効率よく自動減速を行うことができる。
自動減速部61は、第1差圧(V5)及び第2差圧(V6)の両方が第4復帰判定圧QV4以下である場合に、走行モータを第1速度から第2速度に復帰する。これによれば、作業機1が前進及び後進しているいずれかの状況においても効率よく復帰することができる。
【0112】
第7記憶装置81gは、斜板角度が増加するにつれて第4減速判定圧PV4が増加する第4減速判定テーブルT4を記憶している。作業機1において、作業負荷が大きな作業を効率よく行うことができる。
第8記憶装置81hは、斜板角度が増加するにつれて第4復帰判定圧QV4が増加する第4復帰判定テーブルU4を記憶している。作業機1において、作業負荷が大きな作業を効率よく行うことができる。
【0113】
上述した実施形態では、原動機回転数に対応する複数の走行ポンプ圧V1~V4、又は、斜板角度に対応する複数の走行ポンプ圧V1~V4に基づいて自動減速を行っていたが、アンチストール弁58の圧力に対応する複数の走行ポンプ圧V1~V4によって自動減速を行ってもよい。
図12に示すように、吐出油路40の中途部には、アンチストール弁58が設けられている。アンチストール弁58は、操作弁55(操作弁55A、操作弁55B、操作弁55C、操作弁55D)の一次側に設けられ、操作弁55に供給される作動油を制御する弁である。
【0114】
アンチストール弁58は、エンジンストールを防止する制御(アンチストール制御)を行う。図13は、原動機回転数と、アンチストール弁58の二次パイロット圧と、制御線L1、L2の関係を示している。二次パイロット圧とは、アンチストール弁58によって作用させる作動油の圧力(二次圧)であって、吐出油路40において、アンチストール弁58から操作弁55(操作弁55a、操作弁55b、操作弁55c、操作弁55d)に至る区間における作動油の圧力(パイロット圧)である。即ち、操作レバー59に設けられた操作弁55に入る作動油の一次圧である。制御線L1は、ドロップ量が所定未満である場合の原動機回転数と、二次パイロット圧との関係を示している。制御線L2は、ドロップ量が所定以上である場合の原動機回転数と、二次パイロット圧との関係を示している。
【0115】
制御装置60は、ドロップ量が所定未満である場合、原動機の実回転数と二次パイロット圧との関係が、制御線L1に一致するように、アンチストール弁58の開度を調整する。また、制御装置60は、ドロップ量が所定以上である場合、原動機の実回転数と二次パイロット圧との関係が、制御線L2に一致するように、アンチストール弁58の開度を調整する。制御線L2では、所定の原動機回転数に対する二次パイロット圧が、制御線L1の二次パイロット圧よりも低い。即ち、同一の原動機回転数に着目した場合、制御線L2の二次パイロット圧が、制御線L1の二次パイロット圧よりも低い。したがって、制御線L2に基づく制御によって、操作弁55に入る作動油の圧力(パイロット圧)が低く抑えられる。その結果、走行ポンプ(左走行ポンプ53L、右走行ポンプ53R)の斜板角度が調整され、原動機に作用する負荷が減少し、原動機のストールを防止することができる。なお、図13では、1本の制御線L2を示しているが、制御線L2は複数であってもよい。例えば、原動機回転数毎に制御線L2が設定されていてもよい。また、制御線L1及び制御線L2を示すデータ、或いは、関数等の制御パラメータ等は、制御装置60が有していることが好ましい。
【0116】
制御装置60には、不揮発性のメモリ等から構成された第1記憶装置81aが接続されている。なお、制御装置60に第9記憶装置81iが内蔵されていてもよい。
図14Aに示すように、第9記憶装置81iには、第5減速判定圧PV5が二次パイロット圧と対応付けられて記憶されている。即ち、第9記憶装置81iは、二次パイロット圧と第5減速判定圧PV5との関係を示す第5減速判定テーブルT5を記憶している。第5減速判定テーブルT5において、第5減速判定圧PV5は、二次パイロット圧が増加するにつれて増加していて、二次パイロット圧が高い場合は当該第5減速判定圧PV5も高い値であり、二次パイロット圧が低い場合は当該第5減速判定圧PV5も低い値である。第5減速判定テーブルT5は、上述した実施形態と同様に、二次パイロット圧の数値は、第5減速判定圧PV5を設定するための境界値を示している。例えば、二次パイロット圧が1.3MPaである場合は、第5減速判定圧PV5は、25MPaである。なお、アンチストール弁58の二次パイロット圧は、制御装置60がアンチストール弁58を制御したときの制御値(例えば、電流)と第1油圧ポンプP1から吐出した作動油の流量等によって求めることができる。また、アンチストール弁58の下流側に、圧力を検出する圧力検出装置を設けて、二次パイロット圧を検出してもよく、二次パイロット圧の検出方法は限定されない。以下、二次パイロット圧は、制御装置60、又は、圧力検出装置によって検出しているとして説明を進める。
【0117】
自動減速部61は、走行モータ(左走行モータ36L、右走行モータ36R)が第2速度である場合において、二次パイロット圧と第5減速判定テーブルT5とから第5減速判定圧PV5を抽出する。自動減速部61は、例えば、二次パイロット圧が2.1MPaである場合は、第5減速判定テーブルT5から28MPaである第5減速判定圧PV5を抽出し、二次パイロット圧が1.6MPaである場合は、第5減速判定テーブルT5から26MPaである第5減速判定圧PV5を抽出する。
【0118】
自動減速部61は、走行ポンプ圧検出装置80で検出された走行ポンプ圧V1~V4のいずれかが、第5減速判定テーブルT5から抽出した第5減速判定圧PV5以上である場合に、自動減速を行う。詳しくは、自動減速部61は、第1走行ポンプ圧V1、第2走行ポンプ圧V2、第3走行ポンプ圧V3及び第4走行ポンプ圧V4のいずれかが、第5減速判定圧PV5以上である場合に、走行モータ(左走行モータ36L、右走行モータ36R)を第2速度から第1速度に減速する自動減速を行う。
【0119】
さて、自動減速部61は、自動減速を行った後、自動減速が有効である場合には、走行モータ(左走行モータ36L、右走行モータ36R)を第1速度から第2速度に復帰させる制御(復帰制御)を行う。
制御装置60には、不揮発性のメモリ等から構成された第10記憶装置81jが接続されている。なお、制御装置60に第10記憶装置81jが内蔵されていてもよい。
【0120】
図14Bに示すように、第10記憶装置81jには、第5復帰判定圧QV5が二次パイロット圧と対応付けられて記憶されている。即ち、第10記憶装置81jは、二次パイロット圧と第5復帰判定圧QV5との関係を示す第5復帰判定テーブルU5を記憶している。第5復帰判定テーブルU5において、第5復帰判定圧QV5は、二次パイロット圧が増加するにつれて増加していて、二次パイロット圧が高い場合は当該第5復帰判定圧QV5も高い値であり、二次パイロット圧が低い場合は当該第5復帰判定圧QV5も低い値である。第5復帰判定テーブルU5は、上述した第5減速判定テーブルT5と同じように、二次パイロット圧の数値は、第5復帰判定圧QV5を設定するための境界値を示している。例えば、二次パイロット圧が1.6MPaである場合は、第5復帰判定圧QV5は、16MPaである。
【0121】
自動減速部61は、自動減速後において二次パイロット圧と第5復帰判定テーブルU5とから第5復帰判定圧QV5を抽出し、走行ポンプ圧検出装置80で検出された走行ポンプ圧V1~V4が、第5復帰判定テーブルU5から抽出した第5復帰判定圧QV5以下である場合に、走行モータ(左走行モータ36L、右走行モータ36R)を第1速度から第2速度に復帰させる。詳しくは、自動減速部61は、第1走行ポンプ圧V1、第2走行ポンプ圧V2、第3走行ポンプ圧V3及び第4走行ポンプ圧V4が、第5復帰判定圧QV5以下となった時点で、走行モータ(左走行モータ36L、右走行モータ36R)を第1速度から第2速度に増速する。
【0122】
図15は、自動減速部61における処理をまとめた図である。
図15に示すように、自動減速が有効で且つ走行モータが第2速度である状態(S90、Yes)では、自動減速部61は、二次パイロット圧及び第5減速判定テーブルT5を参照する(S91)。自動減速部61は、二次パイロット圧に基づいて第5減速判定テーブルT5から第5減速判定圧PV5を抽出する(S92)。自動減速部61は、走行ポンプ圧検出装置80で検出された走行ポンプ圧V1~V4を参照する(S93)。自動減速部61は、走行ポンプ圧V1~V4のいずれかが第5減速判定圧PV5以上であるか否かを判断する(S94)。
【0123】
自動減速部61は、走行ポンプ圧V1~V4のいずれかが第5減速判定圧PV5以上である場合(S94、Yes)、自動減速を行う(S95)。
自動減速部61は、自動減速を行った後、二次パイロット圧及び第5復帰判定テーブルU5を参照する(S96)。自動減速部61は、二次パイロット圧に基づいて第5復帰判定テーブルU5から第5復帰判定圧QV5を抽出する(S97)。自動減速部61は、走行ポンプ圧V1~V4を参照する(S98)。自動減速部61は、走行ポンプ圧V1~V4の全てが第5復帰判定圧QV5以下であるか否かを判断する(S99)。自動減速部61は、走行ポンプ圧V1~V4の全てが第5復帰判定圧QV5以下である場合(S99、Yes)、復帰制御を行う(S100)。
【0124】
作業機1は、アンチストール弁58と、第9記憶装置81iと、自動減速部61を有する制御装置60を備え、自動減速部61は、走行モータが第2速度である場合において、二次パイロット圧と第5減速判定テーブルT5とから第5減速判定圧PV5を抽出し、走行ポンプ圧検出装置80で検出された走行ポンプ圧V1~V4のいずれかが、第5減速判定圧PV5以上である場合に、自動減速を行う。これによれば、アンチストール弁58の二次パイロット圧に応じた第5減速判定圧PV5に基づいて自動減速を行っているため、作業機1の運転状態の中で最適なタイミングで自動減速を行うことができる。即ち、原動機の回転数に応じて適正に自動減速を行うことができ、作業効率を向上させることができる。
【0125】
作業機1は、第10記憶装置81jを備え、自動減速部61は、自動減速後において二次パイロット圧と第5復帰判定テーブルU5とから第5復帰判定圧QV5を抽出し、走行ポンプ圧検出装置80で検出された自動減速後の走行ポンプ圧V1~V4が、第5復帰判定圧QV5以下である場合に、走行モータを第1速度から第2速度に復帰する。これによれば、二次パイロット圧に応じた第5復帰判定圧QV5に基づいて復帰を行っているため、作業機1の運転状態の中で最適なタイミングで高速側に切り換えることができる。
【0126】
自動減速部61は、第1走行ポンプ圧V1、第2走行ポンプ圧V2、第3走行ポンプ圧V3、第4走行ポンプ圧V4のいずれかが、第5減速判定圧PV5以上である場合に、自動減速を行う。これによれば、左走行装置5Lが前進側に作動した場合、左走行装置5Lが後進側に作動した場合、右走行装置5Rが前進側に作動した場合、右走行装置5Rが後進側に作動した場合のいずれにおいても、左走行装置5L又は右走行装置5Rへ掛かった負荷が解消された場合に、適正に増速することができる。
【0127】
自動減速部61は、第1走行ポンプ圧V1、第2走行ポンプ圧V2、第3走行ポンプ圧V3、第4走行ポンプ圧V4が、第5復帰判定圧QV5以下である場合に、走行モータを第1速度から第2速度に復帰する。これによれば、左走行装置5Lが前進側に作動した場合、左走行装置5Lが後進側に作動した場合、右走行装置5Rが前進側に作動した場合、右走行装置5Rが後進側に作動した場合のいずれにおいても、左走行装置5L又は右走行装置5Rへ掛かった負荷が解消された場合に、適正に増速することができる。
【0128】
第1記憶装置81aは、二次パイロット圧が増加するにつれて第5減速判定圧PV5が増加する第5減速判定テーブルT5を記憶している。これによれば、作業機1において、作業負荷が大きな作業を効率よく行うことができる。
第2記憶装置81bは、二次パイロット圧が増加するにつれて第5復帰判定圧QV5が増加する第5復帰判定テーブルU5を記憶している。これによれば、作業機1において、作業負荷が大きな作業を効率よく行うことができる。
【0129】
上述した実施形態では、二次パイロット圧に対応する複数の走行ポンプ圧V1~V4を用いていたが。これに代えて、二次パイロット圧に対応する走行差圧V5,V6に基づいて自動減速を行ってもよい。
制御装置60には、不揮発性のメモリ等から構成された第11記憶装置81kが接続されている。なお、制御装置60に第11記憶装置81kが内蔵されていてもよい。
【0130】
図16Aに示すように、第11記憶装置81kには、第6減速判定圧PV6が二次パイロット圧と対応付けられて記憶されている。即ち、第11記憶装置81kは、二次パイロット圧と第6減速判定圧PV6との関係を示す第6減速判定テーブルT6を記憶している。第6減速判定テーブルT6において、第6減速判定圧PV6は、二次パイロット圧が増加するにつれて増加していて、二次パイロット圧が高い場合は当該第6減速判定圧PV6も高い値であり、二次パイロット圧が低い場合は当該第6減速判定圧PV6も低い値である。
【0131】
第6減速判定テーブルT6は、上述した第5減速判定テーブルT5と同じように、二次パイロット圧の数値は、第6減速判定圧PV6を設定するための境界値を示している。例えば、二次パイロット圧が1.6MPaである場合は、第6減速判定圧PV6は、21MPaである。
自動減速部61は、走行モータ(左走行モータ36L、右走行モータ36R)が第2速度である場合において、二次パイロット圧と第6減速判定テーブルT6とから第6減速判定圧PV6を抽出する。自動減速部61は、差圧演算部63が演算した走行差圧V5、V6が、第6減速判定テーブルT6から抽出した第6減速判定圧PV6以上である場合に、自動減速を行う。詳しくは、自動減速部61は、第1差圧(V5)、第2差圧(V6)のいずれかが、第6減速判定圧PV6以上である場合に、自動減速を行う。
【0132】
さて、自動減速部61は、自動減速を行った後、自動減速が有効である場合には、復帰制御を行う。
制御装置60には、不揮発性のメモリ等から構成された第12記憶装置81lが接続されている。なお、制御装置60に第12記憶装置81lが内蔵されていてもよい。
図16Bに示すように、第12記憶装置81lには、第6復帰判定圧QV6が二次パイロット圧と対応付けられて記憶されている。即ち、第12記憶装置81lは、二次パイロット圧と第6復帰判定圧QV6との関係を示す第6復帰判定テーブルU6を記憶している。第6復帰判定テーブルU6において、第6復帰判定圧QV6は、二次パイロット圧が増加するにつれて増加していて、二次パイロット圧が高い場合は当該第6復帰判定圧QV6も高い値であり、二次パイロット圧が低い場合は当該第6復帰判定圧QV6も低い値である。第6復帰判定テーブルU6は、上述した第6減速判定テーブルT6と同じように、二次パイロット圧の数値は、第6復帰判定圧QV6を設定するための境界値を示している。例えば、二次パイロット圧が1.6MPaである場合は、第6復帰判定圧QV6は、16MPaである。
【0133】
自動減速部61は、自動減速後において二次パイロット圧と第6復帰判定テーブルU6とから第6復帰判定圧QV6を抽出し、差圧演算部63が演算した走行差圧V5、V6が、第6復帰判定テーブルU6から抽出した第6復帰判定圧QV6以下である場合に、復帰制御を実行する。詳しくは、自動減速部61は、走行差圧V5、V6が、第6復帰判定圧QV6以下となった時点で、走行モータを第1速度から第2速度に増速する。
【0134】
図17は、自動減速部61における処理をまとめた図である。
図17に示すように、自動減速が有効で且つ走行モータが第2速度である状態(S110、Yes)では、自動減速部61は、二次パイロット圧及び第6減速判定テーブルT6を参照する(S111)。自動減速部61は、二次パイロット圧に基づいて第6減速判定テーブルT6から第6減速判定圧PV6を抽出する(S112)。差圧演算部63は、走行ポンプ圧V1~V4から第1差圧(V5)、第2差圧(V6)を演算する(S113)。自動減速部61は、第1差圧(V5)及び第2差圧(V6)が第6減速判定圧PV6以上であるか否かを判断する(S114)。自動減速部61は、第1差圧(V5)及び第2差圧(V6)が第6減速判定圧PV6以上である場合(S114、Yes)、自動減速を行う(S115)。
【0135】
自動減速部61は、自動減速を行った後、二次パイロット圧及び第6復帰判定テーブルU6を参照する(S116)。自動減速部61は、二次パイロット圧に基づいて第6復帰判定テーブルU6から第6復帰判定圧QV6を抽出する(S117)。自動減速部61は、自動減速後の第1差圧(V5)及び第2差圧(V6)を参照する(S118)。
自動減速部61は、第1差圧(V5)及び第2差圧(V6)が第6復帰判定圧QV6以下であるか否かを判断する(S119)。自動減速部61は、第1差圧(V5)及び第2差圧(V6)が第6復帰判定圧QV6以下である場合(S119、Yes)、復帰制御を行う(S120)。
【0136】
作業機1は、アンチストール弁58と、第11記憶装置81kと、自動減速部61及び差圧演算部63を有する制御装置60を備え、自動減速部61は、走行モータが第2速度である場合において、二次パイロット圧と第6減速判定テーブルT6とから第6減速判定圧PV6を抽出し、差圧演算部63で演算された走行差圧V5,V6のいずれかが、第6減速判定圧PV6以上である場合に、自動減速を行う。これによれば、アンチストール弁58の二次パイロット圧に応じた第6減速判定圧PV6に基づいて自動減速を行っているため、作業機1の運転状態の中で最適なタイミングで高速側に切り換えることができる。特に、左走行装置5Lと右走行装置5Rとに掛かる負荷が互いに大きく異なった場合などに効率よく自動減速を行うことができる。
【0137】
作業機1は、第12記憶装置81lを備え、自動減速部61は、自動減速後において二次パイロット圧と第6復帰判定テーブルU6とから第6復帰判定圧QV6を抽出し、差圧演算部63で演算された自動減速後の走行差圧V5,V6の両方が、第6復帰判定圧QV6以下である場合に、走行モータを第1速度から第2速度に復帰する。これによれば、アンチストール弁58の二次パイロット圧に応じた第6復帰判定圧QV6に基づいて復帰を行っているため、作業機1の運転状態の中で最適なタイミングで高速側に切り換えることができる。特に、左走行装置5Lと右走行装置5Rとに掛かる負荷が互いに大きく異なったときに自動減速を行った後において、効率よく復帰を行うことができる。
【0138】
差圧演算部63は、走行差圧として、第1走行ポンプ圧V1と第3走行ポンプ圧V3との差である第1差圧(V5)、及び、第2走行ポンプ圧V2と第4走行ポンプ圧V4との差である第2差圧(V6)のいずれかを求め、自動減速部61は、第1差圧(V5)及び第2差圧(V6)のいずれかが、第6減速判定圧PV6以上である場合に、自動減速を行う。これによれば、作業機1が前進及び後進しているいずれかの状況においても効率よく自動減速を行うことができる。
【0139】
自動減速部61は、第1差圧(V5)及び第2差圧(V6)の両方が、第6復帰判定圧QV6以下である場合に、走行モータの少なくともいずれかを第1速度から第2速度に復帰する。これによれば、作業機1が前進及び後進しているいずれかの状況においても効率よく復帰を行うことができる。
第11記憶装置81kは、二次パイロット圧が増加するにつれて第6減速判定圧PV6が増加する第6減速判定テーブルT6を記憶している。これによれば、作業機1において、作業負荷が大きな作業を効率よく行うことができる。
【0140】
第12記憶装置81lは、二次パイロット圧が増加するにつれて第6復帰判定圧QV6が増加する第6復帰判定テーブルU6を記憶している。これによれば、作業機1において、作業負荷が大きな作業を効率よく行うことができる。
なお、制御装置60は、操作レバー59等の操作部材によって設定された走行モータの設定速度が設定されている状況下において、走行モータのいずれかの実際の速度が、設定回転数を超えない場合に、自動減速を行ってもよい。図2に示すように、走行モータ(左走行モータ36L、右走行モータ36R)の実際の速度(実回転数)ST1を検出する回転検出装置88を設ける。例えば、操作レバー59を操作することによって、当該操作レバー59によって設定した走行モータ(左走行モータ36L、右走行モータ36R)の設定速度(設定回転数)が「ST2」であった場合、ST2>ST1の場合に、制御装置60は自動減速を行う。
【0141】
また、制御装置60は、自動減速後において、走行モータの実回転数ST1が、設定速度ST2を超えたときに、第1速度から第2速度に復帰させてもよい。例えば、自動減速後、ST1>ST2である場合に、制御装置60は、第1速度から第2速度に復帰させる。
上述したように、第2速度は、第1速度よりも速ければよいため、作業機は、変速段が2段に限定されず、多段(複数段)であっても適用が可能である。
【0142】
上述した実施形態では、左走行モータ36L及び左走行モータ36Rは、同時に第1速度、第2速度に切り換わり、自動減速も左走行モータ36L及び左走行モータ36Rに対して同時に行われる構成であったが、少なくとも左走行モータ36L及び左走行モータ36Rのいずれかが第1速度、第2速度に切り換わり、少なくとも左走行モータ36L及び左走行モータ36Rのいずれかが第2速度になっている状態で自動減速を行ってもよい。
【0143】
また、走行モータ(左走行モータ36L、右走行モータ36R)は、アキシャルピストンモータであってもラジアルピストンモータであってもよい。走行モータがラジアルピストンモータ、ラジアルピストンモータのいずれであっても、モータ容量が大きくなることで第1速に切り換えることができ、モータ容量が小さくなることで第2速に切り換えることができる。
【0144】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0145】
1 :作業機
5L :走行装置(左走行装置)
5R :走行装置(右走行装置)
8 :運転席
32 :原動機
34 :走行切換弁
36L :走行モータ(左走行モータ)
36R :走行モータ(右走行モータ)
53L :走行ポンプ(左走行ポンプ)
53R :走行ポンプ(右走行ポンプ)
57h :接続油路
57i :接続油路
60 :制御装置
61 :自動減速部
63 :差圧演算部
65 :アクセル
66 :モードスイッチ
67 :速度切換スイッチ
68 :回転数検出装置
76 :表示部
80 :走行ポンプ圧検出装置
80a :第1圧力検出装置
80b :第2圧力検出装置
80c :第3圧力検出装置
80d :第4圧力検出装置
88 :回転検出装置
P11 :第1ポート
P12 :第2ポート
P13 :第3ポート
P14 :第4ポート
PV1 :第1減速判定圧
PV2 :第2減速判定圧
QV1 :第1復帰判定圧
QV2 :第2復帰判定圧
T1 :第1減速判定テーブル
T2 :第2減速判定テーブル
U1 :第1復帰判定テーブル
U2 :第2復帰判定テーブル
V :走行ポンプ圧
V1 :第1走行ポンプ圧
V2 :第2走行ポンプ圧
V3 :第3走行ポンプ圧
V4 :第4走行ポンプ圧
V5 :走行差圧
V6 :走行差圧
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14A
図14B
図15
図16A
図16B
図17
図18