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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】ドアクローザ
(51)【国際特許分類】
   E05F 3/10 20060101AFI20221125BHJP
【FI】
E05F3/10 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019137592
(22)【出願日】2019-07-26
(65)【公開番号】P2020066989
(43)【公開日】2020-04-30
【審査請求日】2022-02-09
(31)【優先権主張番号】P 2018198972
(32)【優先日】2018-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006943
【氏名又は名称】リョービ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003742
【氏名又は名称】弁理士法人海田国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100128749
【弁理士】
【氏名又は名称】海田 浩明
(72)【発明者】
【氏名】安倍 俊太郎
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-100655(JP,A)
【文献】特開2014-95215(JP,A)
【文献】特開2010-19052(JP,A)
【文献】実開昭63-10187(JP,U)
【文献】特開2007-177460(JP,A)
【文献】特開2017-95902(JP,A)
【文献】特開2014-189949(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 3/00-3/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動油が充填された密閉空間を有するハウジングと、
前記密閉空間にピストン付勢手段により付勢された状態で往復移動可能に配置され、前記密閉空間を高圧室と低圧室に分割するピストンと、
前記ピストンを駆動するピストン駆動機構部と、
前記ピストン駆動機構部が配置される空洞部と、
前記ピストン駆動機構部に対して前記ハウジングを上下に貫挿するように回転一体に連結された回転軸と、
作動油を前記ハウジングの外部に排出するために前記回転軸に形成される作動油排出路と、
前記作動油排出路に形成された孔部を閉鎖して設けられる樹脂製部材と、
を備え、前記ハウジングが高温となった際に前記樹脂製部材が溶解して前記孔部を開放し、前記作動油排出路を通じて前記密閉空間から前記ハウジングの外部に作動油を排出するドアクローザにおいて、
前記ハウジングの内周面に前記空洞部と前記高圧室あるいは前記低圧室とを連通させる2つの連通部を有し、
前記2つの連通部は、前記作動油排出路を通じて前記密閉空間から前記ハウジングの外部に作動油を排出する際に、空気を移動させる空気流通部と作動油を移動させる作動油流通部として機能することを特徴とするドアクローザ。
【請求項2】
請求項1に記載のドアクローザにおいて、
前記2つの連通部が、溝として形成されることを特徴とするドアクローザ。
【請求項3】
請求項1に記載のドアクローザにおいて、
前記2つの連通部が、孔として形成されることを特徴とするドアクローザ。
【請求項4】
請求項1に記載のドアクローザにおいて、
前記2つの連通部は、前記ハウジングが有する前記密閉空間を前記ピストンが往復移動する移動方向に対して直交する縦断面で見たときに、前記回転軸の中心軸線と重畳しない位置に形成されることを特徴とするドアクローザ。
【請求項5】
請求項1に記載のドアクローザにおいて、
前記2つの連通部は、前記ハウジングが有する前記密閉空間を前記ピストンが往復移動する移動方向に対して直交する縦断面で見たときに、前記回転軸の中心軸線と重畳する位置に形成されることを特徴とするドアクローザ。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のドアクローザにおいて、
前記作動油排出路に形成された前記孔部を前記回転軸の長手方向上側と長手方向下側に設けたことを特徴とするドアクローザ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開いたドアをゆっくりと自動的に閉めるドアクローザに関し、特に、発火抑制機構を備えたドアクローザの改良技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ドアクローザは、作動油が充填された密閉空間を有するハウジングを備え、該ハウジングの密閉空間には、コイルスプリングにより付勢されたピストンが往復移動可能に配置されている。また、上記ピストンにはラック・ピニオン機構が組み付けられ、該ラック・ピニオン機構のピニオンには、回転軸が上記ハウジングを上下に貫挿するように回転一体に連結されている。さらに、この回転軸の上端には、リンク機構の一端が連結され、該リンク機構の他端は建物のドア開口部の上枠側に連結されている。
【0003】
そして、ドアを開操作すると、その回転動作が上記リンク機構を介して回転軸に伝達され、さらに上記ラック・ピニオン機構を介してピストンの直線動作に変換される。これにより、上記ピストンがハウジングの密閉空間を移動することでコイルスプリングを圧縮し、ドアから手を離すと、この圧縮されたコイルスプリングの反発力によりドアがゆっくりと自動的に閉まるようになっている。このドアの閉速度は、ピストンの移動に連動して流動する作動油の流量を速度調整弁で制御することで調整される。
【0004】
ところで、この種のドアクローザには、何らかの要因によりドアの温度が高温となった場合に、回転軸に形成された作動油排出路を閉鎖している樹脂製部材が溶けて作動油がハウジング内部(密閉空間)からハウジング外部に排出される発火抑制機構を備えたものが公知である(例えば、下記特許文献1参照)。このような発火抑制機構を備えることで、例えば、ハウジング内部の作動油が高温となったドアに付着して発火してしまうことを抑制することが可能なドアクローザが実現されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5393756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上掲した特許文献1に開示された発火抑制機構を備えるドアクローザでは、作動油を排出する際に、作動油排出路を備える回転軸がピストンによって区切られるハウジング内部の密閉空間の一方側に位置していることから、一方側の作動油は排出され易いが、他方側の作動油は排出され難いといった課題が存在していた。
【0007】
本発明は、上述した従来技術に存在する課題に鑑みて成されたものであって、その目的は、火災発生時に作動油をハウジングの外部に排出できる発火抑制機構を備えるドアクローザにおいて、作動油の排出をよりスムーズかつ効果的に促すことのできる構成を備えたドアクローザを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照番号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0009】
本発明に係るドアクローザ(1)は、作動油が充填された密閉空間(4a)を有するハウジング(4)と、前記密閉空間(4)にピストン付勢手段(16,16’)により付勢された状態で往復移動可能に配置され、前記密閉空間(4a)を高圧室(2a)と低圧室(2b)に分割するピストン(15)と、前記ピストン(15)を駆動するピストン駆動機構部(21)と、前記ピストン駆動機構部(21)が配置される空洞部(15a)と、前記ピストン駆動機構部(21)に対して前記ハウジング(4)を上下に貫挿するように回転一体に連結された回転軸(24)と、作動油を前記ハウジング(4)の外部に排出するために前記回転軸(24)に形成される作動油排出路(24A,24B,24C)と、前記作動油排出路(24A,24B,24C)に形成された孔部(24C)を閉鎖して設けられる樹脂製部材(38)と、を備え、前記ハウジング(4)が高温となった際に前記樹脂製部材(38)が溶解して前記孔部(24C)を開放し、前記作動油排出路(24A,24B,24C)を通じて前記密閉空間(4a)から前記ハウジング(4)の外部に作動油を排出するドアクローザ(1)であって、前記ハウジング(4)の内周面に前記空洞部(15a)と前記高圧室(2a)あるいは前記低圧室(2b)とを連通させる2つの連通部(60、160,70)を有し、前記2つの連通部(60、160,70)は、前記作動油排出路(24A,24B,24C)を通じて前記密閉空間(4a)から前記ハウジング(4)の外部に作動油を排出する際に、空気を移動させる空気流通部(60a,60a’、160a,70,160a’、161a,70,161a’)と作動油を移動させる作動油流通部(60b,60b’、160b,70,160b’、161b,70,161b’)として機能することを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明に係るドアクローザ(1)では、前記2つの連通部(60、160,70)が、溝(60,60a,60b,60a’,60b’)として形成されることとすることができる。
【0011】
また、本発明に係るドアクローザ(1)では、前記2つの連通部(60、160,70)が、孔(160a,70,160a’、160b,70,160b’、161a,70,161a’、161b,70,161b’)として形成されることとすることができる。
【0012】
また、本発明に係るドアクローザ(1)において、前記2つの連通部(60、160,70)は、前記ハウジング(4)が有する前記密閉空間(4a)を前記ピストン(15)が往復移動する移動方向に対して直交する縦断面で見たときに、前記回転軸(24)の中心軸線(γ)と重畳しない位置に形成することができる。
【0013】
また、本発明に係るドアクローザ(1)において、前記2つの連通部(60、160,70)は、前記ハウジング(4)が有する前記密閉空間(4a)を前記ピストン(15)が往復移動する移動方向に対して直交する縦断面で見たときに、前記回転軸(24)の中心軸線(γ)と重畳する位置に形成することができる。
【0014】
さらに、本発明に係るドアクローザ(1)では、前記作動油排出路(24A,24B,24C)に形成された前記孔部(24C)を前記回転軸(24)の長手方向上側と長手方向下側に設けたこととすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、火災発生時に作動油をハウジングの外部に排出できる発火抑制機構を備えるドアクローザであって、作動油の排出をよりスムーズかつ効果的に促すことのできる構成を備えたドアクローザを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態に係るドアクローザをドアに取り付けた状態の平面図である。
図2図1のA-A線における正面図である。
図3図1のB-B線における側面図である。
図4】本実施形態に係るドアクローザにおけるドアクローザ本体の内部構造を示す横断面平面図である。
図5図4のC矢視図である。
図6図4のD矢視図である。
図7図4のE-E線における縦断面側面図である。
図8図4のE-E線とF-F線における縦断面側面図である
図9】本実施形態に係るドアクローザを構成するハウジングの内部構造を示す横断面平面図である。
図10図9のG-G線における縦断面側面図である。
図11】本実施形態に係るドアクローザを構成するハウジングの別形態の内部構造を示す横断面平面図である。
図12図11のH-H線における縦断面側面図である。
図13】変形例に係るドアクローザを側面から見た場合の図である。
図14図13のI-I線における縦断面正面図である。
図15図13のJ-J線における縦断面正面図である。
図16図14および図15のK-K線における縦断面側面図である。
図17】本発明の更に別の変形例を示す縦断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0018】
まず、図1図8を用いて、本実施形態に係るドアクローザ1の取付状態と基本構成を説明する。ここで、図1は、本実施形態に係るドアクローザをドアに取り付けた状態の平面図であり、図2は、図1のA-A線における正面図であり、図3は、図1のB-B線における側面図である。また、図4は、本実施形態に係るドアクローザにおけるドアクローザ本体の内部構造を示す横断面平面図であり、図5は、図4のC矢視図であり、図6は、図4のD矢視図であり、図7は、図4のE-E線における縦断面側面図であり、図8は、図4のE-E線とF-F線における縦断面側面図である。
【0019】
図1図3では、建物のドア開口部101が示されており、このドア開口部101は、上枠102、左右一対の竪枠103および下枠(図示せず)で矩形に囲まれた空間で構成され、ドア104がドア開口部101を開閉可能にヒンジ105を介して一方の竪枠103に取り付けられている。ドア104は、ドアクローザ1により開状態からゆっくりと自動的に閉まるようになっている。
【0020】
本実施形態に係るドアクローザ1は、左開き(左勝手)のパラレル形タイプであり、ドアクローザ本体2を備えている。ドアクローザ本体2は、作動油(図示せず)が充填された密閉空間4a(図4参照)を有するハウジング4を備え、ハウジング4は、図4に示すように、取付金具5を介してドア104の上端に取り付けられている。
【0021】
取付金具5は、図4に示すように、一端(図4右端)にU字状引掛部5aが形成されているとともに、他端(図4左端)に斜めに起き上がった取付片部5bが形成され、取付片部5bには、ハウジング4を取り付けるためのネジ孔(図示せず)が上下に2個貫通形成されている。また、この取付金具5の両端寄りには、ネジ挿通孔(図示せず)が上下に2個ずつ貫通形成されている。
【0022】
ハウジング4は、正面壁6、背面壁7、上面壁8、下面壁9および左右一対の側面壁10の6面で直方体形状に形成され、背面壁7側には、上面壁8、下面壁9および左右の側面壁10で囲まれた凹陥部11が形成されている。また、凹陥部11の一端側(図4右端側)には、掛止ピン12が上面壁8と下面壁9とに上下に橋絡されて配設されている。さらに、上記一方(図4左側)の側面壁10には、ネジ挿通孔(図示せず)が上下に2個貫通形成されている。
【0023】
そして、ドアクローザ本体2をドア104上端の内側に取り付けるには、先ず、ネジ13(図2および図3参照)を取付金具5の4個のネジ挿通孔に挿通してドア104内部の取付板106にねじ込むことで、取付金具5をドア104上端に取り付ける。
【0024】
次いで、ドアクローザ本体2を取付金具5の正面に配置し、取付金具5のU字状引掛部5aをハウジング4の掛止ピン12に引っ掛けて取付金具5をハウジング4の凹陥部11に配置する。この状態から、ネジ14(図3参照)をハウジング4の2個のネジ挿通孔と取付金具5の2個のネジ孔に螺合させることで、ドアクローザ本体2を取付金具5を介してドア104上端に取り付けることができる。
【0025】
ハウジング4内部(密閉空間4a)には、図4に示すように、ピストン15がピストン付勢手段としてのコイルスプリング16,16’のバネ力により、図4の紙面右方向に付勢された状態で往復移動可能に配置され、密閉空間4aがピストン15により高圧室2a(図4中の紙面右側の小領域)と低圧室2b(図4中の紙面左側の大領域)とに分けられている。なお、図4で示すように、ハウジング4の両端部には、一対のエンドプラグ17が嵌着されている。このエンドプラグ17は、ハウジング4を構成する両側面壁10の嵌合孔10bに嵌着されることで、ハウジング4と協働して作動油(図示せず)を充填するための密閉空間4aを形成する。
【0026】
ピストン15の内部には、空洞部15aが形成される。この空洞部15aは、第1通路18を介して高圧室2aに連通しているとともに、第2通路19を介して低圧室2bに連通している。また、第1通路18には逆止弁20が介設され、ドア閉状態では高圧室2a側の作動油の内圧で逆止弁20を弁座に押し付けて第1通路18を閉じ、高圧室2a側の作動油が低圧室2b側に流入しないようにしている。
【0027】
一方、第2通路19の端部には圧入用穴19aが形成されており、この圧入用穴19aに対して筒状の中空部材40がその基端部外周に形成された圧入軸端部40aを圧入させることで連結されている。中空部材40は、コイルスプリング16,16’の軸線方向に所定の長さを有して延びており、コイルスプリング16,16’の内部に位置するようにピストン15に連結されている。中空部材40は、後述するスポンジゴム50を収容するための空間である中空部40bを備えている。中空部40bは、上述した第2通路19を介してピストン15の低圧室2bと連通している。中空部材40の先端部には逆止弁41が設けられており、逆止弁41により中空部40bと低圧室2bとを連通・遮断するようにしている。扉開放中は、低圧室2bの内圧で逆止弁41が閉鎖され、低圧室2b側の作動油が中空部40bおよび第2通路19を介して空洞部15a側に流出することを阻止するようになっている。
【0028】
中空部材40の中空部40bには板状のスポンジゴム50が挿入されている。スポンジゴム50は、独立気泡構造を有するものであり、温度上昇によって密閉空間4a内の作動油が膨張した場合には、各気泡内の空気が圧縮されてスポンジゴム50はその体積を収縮するようになっている。温度上昇による作動油の膨張はスポンジゴム50の体積変動により吸収されるようになっているので、密閉空間4aの内圧が高まってハウジング4から油漏れを起こすことが防止される。また、スポンジゴム50は、作動油が常温に戻ると元の体積に戻るようになっている。
【0029】
また、本実施形態に係るピストン15の空洞部15aには、本発明に係るピストン駆動機構部としてのラック・ピニオン機構21が組み込まれている。ラック・ピニオン機構21は、空洞部15aの内壁に形成されたラック22と、このラック22に噛合するピニオン23とで構成されている。図7に示すように、ピニオン23には、回転軸24がハウジング4を上下に貫挿するように回転一体に連結されている。詳細には、ピニオン23は回転軸24の中央部分に一体に形成されている。さらに、図7および図8に示すように、回転軸24の上端24a側および下端24b側の外周にはベアリング25が配置され、また、回転軸24の軸心方向でベアリング25の外側にはOリング26が配置されている。これらベアリング25およびOリング26はブッシュ27によって内包されており、さらに、回転軸24の下端24bは、円筒形のカップ28によって覆い隠されている。
【0030】
そして、回転軸24の上端24aには、リンク機構29の一端が連結されるとともに、リンク機構29の他端は、建物のドア開口部101の上枠102側に連結されている。具体的には、リンク機構29は、メインアーム30と連結アーム31とからなり、メインアーム30の一端が回転軸24の上端24aに軸32により連結され、メインアーム30の他端には、連結アーム31の一端が軸33周りに回転自在に連結されている。一方、ドア開口部101の上枠102には、ステー(三角板)34の基端が4個のネジ35を上枠102内部の取付板107にねじ込むことにより取り付けられており(図1および図3参照)、このステー34の先端には連結アーム31の他端が軸36周りに回転自在に連結されている。
【0031】
ハウジング4の他方(図1の紙面右側)の側面壁10には、金属製の3個の速度調整弁37がエンドプラグ17の外側で上側に1個、下側に2個位置するように挿着され(図6参照)、密閉空間4aの高圧室2aと空洞部15aとの間を繋ぐ流路に臨んでおり、ピストン15の移動に連動して密閉空間4aを流動する作動油の流量を制御することで、ドア104の閉速度を調整するように構成されている。
【0032】
そして、ドア104を図1で示す矢印α1方向(反時計回り)に開操作すると、その回転動作がリンク機構29を介して回転軸24に伝達され、回転軸24が図1で示す矢印α2方向(時計回り)に回転する。これにより、ピニオン23が図1で示す矢印α2方向(時計回り)に回転し、ピストン15がラック・ピニオン機構21を介してコイルスプリング16,16’のバネ力に抗してコイルスプリング16,16’を圧縮しながらハウジング4の密閉空間4aで図4中の紙面左方向に直線移動する。これにより、低圧室2bの作動油が、図10で示す通油溝60cおよび空洞部15aを経て逆止弁20を動かして第1通路18を開き、高圧室2aに流出する。そして、ドア104が、閉方向に移動する力を蓄積しながら開かれる。
【0033】
ドア104が開いた状態で、このドア104から手を離すと、圧縮されたコイルスプリング16,16’がその反発力により伸長し、ピストン15がハウジング4の密閉空間4aで図4中の紙面右方向に直線移動する。この際、第1通路18は逆止弁20で閉じられているので、高圧室2aの作動油は第1通路18を経て空洞部15aに流入せず、図示しない流路および速度調整弁37を経て空洞部15aに流入する。これにより、ピニオン23が図1で示す矢印β2方向(反時計回り)に回転し、この回転力がリンク機構29に伝達されてドア104が図1で示す矢印β1方向(時計回り)にゆっくりと移動し、自動的にドア104の閉鎖動作が行われる。
【0034】
さらに、図7および図8に示すように、本実施形態の回転軸24は、その軸線方向に延びる貫通孔を備えている。詳細には、回転軸24は、回転軸24の上端24a側と下端24b側とに夫々形成されたネジ孔24A,24Aと、この2つのネジ孔24A,24Aを連通する連通孔24Bとにより構成される貫通孔を備えている。上端24a側のネジ孔24Aには上述した軸32のネジ部が螺合され、回転軸24の上端24aにメインアーム30の一端が連結される。回転軸24の中央部分のピニオン23が形成されている箇所には、ネジ孔24Cが回転軸24の軸線と直交して延びるように形成されており、空洞部15aと回転軸24の連通孔24Bとを連通している。このネジ孔24Cには接着剤を塗布したりすることでシール性を持たせた状態の樹脂製部材である樹脂製ネジ38がねじ込まれており、空洞部15a内の作動油がネジ孔24Cを介して流出しないようにネジ孔24Cを閉鎖している。樹脂製ネジ38は、何らかの要因によりハウジング4の温度が120~200℃になった場合には溶解して作動油の圧力により連通孔24B内に押し出されるようになっている。樹脂製ネジ38がネジ孔24Cから押し出されると、空洞部15a内の作動油はネジ孔24C、連通孔24Bおよび下側のネジ孔24Aを介して回転軸24の下端24bから排出されるようになっている。なお、ネジ孔24C、連通孔24Bおよび下側のネジ孔24Aが、本発明の作動油排出路に相当している。また、ネジ孔24Cが、本発明の作動油排出路の一部である本発明に係る孔部を構成している。
【0035】
また、上述した円筒状のカップ28は、ハウジング4の下面壁9に対してボルト28aによりねじ止めされることにより、回転軸24の下端24bを覆い隠している。カップ28はその底面の縁部に排出孔28bを備えており、回転軸24のネジ孔24Aからカップ28の内部空間28cに作動油が排出された場合には、この排出孔28bを介して作動油を床に落下させるようになっている。カップ28の内部空間28cの底面は、回転軸24の軸線に対して傾斜する傾斜面として形成されており、その傾斜面が最も低くなる位置に排出孔28bが配置されている。カップ28は、下面壁9に対してボルト28aによりねじ止めされた後は回転不能であり、排出孔28bは、常にドアクローザ1の正面側(正面壁6側)に位置するようになっている。
【0036】
上述したように、本実施形態に係るドアクローザ1では、空洞部15a(密閉空間4a)とカップ28の内部空間28cを連通する作動油排出路を回転軸24の内部に形成し、作動油排出路を構成するネジ孔24Cを速度調整弁37よりも融点が低い樹脂製ネジ38により閉鎖している。したがって、何らかの理由によりドア104の温度が高温となったとしても、作動油がエンドプラグ17や回転軸24の周りから漏れ出たり、速度調整弁37の箇所から作動油が吹き出したりすることがない。すなわち、ハウジング4が120~200℃になったタイミングにおいて、樹脂製ネジ38が溶解して作動油の圧力により連通孔24B内に押し出されるようになっているので、樹脂製ネジ38がネジ孔24Cから押し出されると、空洞部15a内の作動油はネジ孔24C、連通孔24Bおよび下側のネジ孔24Aを介して回転軸24の下端24bからカップ28の内部空間28cに排出され、さらには、カップ28に形成された排出孔28bから床等の外部に向けて作動油が落下するようになっている。
【0037】
なお、本実施形態では、図8で示すように、作動油排出路を構成するネジ孔24Cを上下方向で2箇所設け、この2箇所のネジ孔24Cのそれぞれを樹脂製ネジ38により閉鎖している。つまり、本実施形態では、作動油排出路(ネジ孔24C、連通孔24Bおよび上下1箇所のネジ孔24A,24A)に形成された孔部であるネジ孔24Cを、回転軸24の長手方向下側と長手方向上側の2箇所に設ける構成が取られている。したがって、ドア104の温度が高温となる異常時において、ハウジング4内の作動油は2箇所の作動油排出路から外部に向けて排出されることになるので、より効果的に作動油の排出が実行されるように構成されている。また、本実施形態では、作動油排出路を構成するネジ孔24Cを上下方向で2箇所設けているので、何らかの理由によりドア104の温度が高温となって樹脂製ネジ38がネジ孔24Cから押し出されて2つのネジ孔24Cが開通すると、まずは、2つのネジ孔24Cの両方が連通孔24Bと連通することで、2箇所の流路から作動油が排出されるので、作動油の排出量を大きくすることができる。また、作動油の排出に伴って作動油の液位が下がり、当該液位が上方側にあるネジ孔24Cに到達すると、上方側のネジ孔24Cから空気が流入し、作動油と空気の入れ替えがスムーズに行われ、作動油の排出をさらに効率良く行うことに寄与することとなる。
【0038】
また、本実施形態では、カップ28の内部空間28cに排出された作動油を、ドアクローザ1の正面側(正面壁6側)に位置する排出孔28bを介して床等の外部に落下させるようにしているので、作動油をドア104から離れる方向(反ドア104側)にドア104から遠ざけるように排出することができ、高温となったドア104に作動油が付着することを好適に防ぐことができる。
【0039】
さて、図1図8を用いて本実施形態に係るドアクローザ1の取付状態と基本構成を説明したが、本実施形態に係るドアクローザ1が備える更なる特徴事項について、図9および図10を参照図面に加えて説明を行う。ここで、図9は、本実施形態に係るドアクローザを構成するハウジングの内部構造を示す横断面平面図であり、図10は、図9のG-G線における縦断面側面図である。
【0040】
本実施形態では、図8図10に示すように、ハウジング4の内周面に対して空洞部15aと低圧室2bとを連通させる本発明に係る2つの連通部としての2つの溝60(60a,60b)が形成されている。これら2つの溝60(60a,60b)は、作動油排出路を通じて密閉空間4aからハウジング4の外部に作動油を排出する際に、空気を移動させるために上側に形成された本発明に係る空気流通部としての空気流通溝60aと、作動油を移動させるために下側に形成された本発明に係る作動油流通部としての作動油流通溝60bとして機能するように設けられた溝となっている。つまり、上述したように、何らかの要因によりハウジング4の温度が120~200℃になった場合には、樹脂製ネジ38が溶解して作動油の圧力により連通孔24B内に押し出される。このとき、まずは、2つのネジ孔24Cの両方が連通孔24Bと連通することで、2箇所の流路から作動油が排出される。またこのとき、空洞部15aと低圧室2bとを連通させる2つの溝60(60a,60b)についても、両方の溝から作動油が排出されることになるので、作動油の排出量を大きくすることができる。
【0041】
その後、作動油の排出に伴って作動油の液位が下がり、当該液位が上方側にあるネジ孔24Cに到達すると、上方側のネジ孔24Cから空気が流入することとなる。これと同様に、上側に形成された空気流通溝60aについても、作動油の液位の低下により空気が流入することとなるので、作動油と空気の入れ替えがスムーズに行われ、作動油の排出をさらに効率良く行うことに寄与することとなる。なお、空洞部15a内の作動油がネジ孔24C、連通孔24Bおよび下側のネジ孔24Aを介して回転軸24の下端24bから排出されることになるが、この作動油排出路は空洞部15a側に設けられているので、低圧室2b側にある作動油が空洞部15a側に流れ難く、高温時にハウジング4内から作動油が適切に排出されない虞があった。しかし、本実施形態では、ハウジング4の内周面に対して空洞部15aと低圧室2bとを連通させる2つの溝60(60a,60b)を形成し、さらに、上側に形成された空気流通溝60aを空気を移動させるために利用し、下側に形成された作動油流通溝60bを作動油を移動させるために利用したので、樹脂製ネジ38が溶解した場合に空洞部15aと低圧室2bとの間で作動油が適切に流通し、作動油の外部への排出がスムーズに行えるようになっている。
【0042】
さらに、上側に形成された空気流通溝60aと下側に形成された作動油流通溝60bについては、例えば、ドアクローザ1を上下反転させて使用した場合、互いの機能が入れ替わることで同様の効果が得られる。つまり、本実施形態が想定する上述した使用状態からドアクローザ1を上下反転させて使用した場合には、元々上側に形成されていた空気流通溝60aが下側となって作動油を移動させるための作動油流通溝として機能し、元々下側に形成された作動油流通溝60bが上側となって空気を移動させるための空気流通溝として機能することとなる。このような構成は、多様な使用環境に対応したドアクローザ1を提供できるという点において、効果的である。
【0043】
また、本実施形態では、図10に示すように、2つの溝60(60a,60b)は、ハウジング4が有する密閉空間4aをピストン15が往復移動する移動方向に対して直交する縦断面で見たときに、回転軸24の中心軸線(図10において符号γで示す)と重畳しない位置に形成されている。かかる形成位置の選択は、既存のドアクローザの設計変更を最小限に抑えつつも2つの溝60(60a,60b)を形成することを可能としている。また、ハウジング4の内周面に工具を挿入して2つの溝60(60a,60b)を形成する製造上の観点からも、好ましい位置となっている。
【0044】
なお、上述した2つの溝60(60a,60b)の形成位置については、多様な変形形態を採用することができる。そのような変形形態の一例として、図11および図12を示す。ここで、図11は、本実施形態に係るドアクローザを構成するハウジングの別形態の内部構造を示す横断面平面図であり、図12は、図11のH-H線における縦断面側面図である。
【0045】
この別形態では、図11および図12に示すように、ハウジング4の内周面に対して空洞部15aと低圧室2bとを連通させる本発明に係る2つの連通部としての2つの溝60(60a’,60b’)が形成されており、これら2つの溝60(60a’,60b’)は、作動油排出路を通じて密閉空間4aからハウジング4の外部に作動油を排出する際に、空気を移動させるために上側に形成された本発明に係る空気流通部としての空気流通溝60a’と、作動油を移動させるために下側に形成された本発明に係る作動油流通部としての作動油流通溝60b’として機能するように設けられた溝となっている(図12参照)。そして、これら2つの溝60(60a’,60b’)は、ハウジング4が有する密閉空間4aをピストン15が往復移動する移動方向に対して直交する縦断面で見たときに、回転軸24の中心軸線(図12において符号γで示す)と重畳する位置に形成されている。この位置構成は、下側に形成された作動油流通溝60b’を回転軸24の長手方向下側に設けることとなり、作動油流通溝60b’が空洞部15aと低圧室2bに対して最も底の位置に配置されることになるので、2つの空間内のほとんどの作動油を外部に排出できるという効果を得ることができる。また、上側に形成された空気流通溝60a’についても、回転軸24の長手方向上側に設けることで、例えば、ドアクローザ1を上下反転させて使用した場合であっても同様の効果が得られる。つまり、本実施形態が想定する上述した使用状態からドアクローザ1を上下反転させて使用した場合は、元々上側に形成されていた空気流通溝60a’が下側となって作動油を移動させるための作動油流通溝として機能し、元々下側に形成された作動油流通溝60b’が上側となって空気を移動させるための空気流通溝として機能することとなる。このような構成は、多様な使用環境に対応したドアクローザ1を提供できるという点において、効果的である。
【0046】
なお、この別形態についても、上述した本実施形態の場合と同様に、何らかの要因によりハウジング4の温度が120~200℃になった場合には樹脂製ネジ38が溶解して作動油の圧力により連通孔24B内に押し出され、空洞部15a内の作動油がネジ孔24C、連通孔24Bおよび下側のネジ孔24Aを介して回転軸24の下端24bから排出されることになる。そして、この別形態においても、ハウジング4の内周面に対して空洞部15aと低圧室2bとを連通させる2つの溝60(60a’,60b’)が形成され、さらに、上側に形成された空気流通溝60a’を空気を移動させるために利用し、下側に形成された作動油流通溝60b’を作動油を移動させるために利用するように構成したので、樹脂製ネジ38が溶解した場合に空洞部15aと低圧室2bとの間で作動油が適切に流通し、作動油の外部への排出がスムーズに行えるようになっている。
【0047】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
【0048】
例えば、上述した実施形態では、本発明に係るピストン駆動機構部が、空洞部15aの内壁に形成されたラック22と、このラック22に噛合するピニオン23とで構成されたラック・ピニオン機構21として構成される場合が例示されていた。しかしながら、本発明に係るピストン駆動機構部には、上述したラック・ピニオン機構21以外の機構を採用することができる。例えば、カム機構によって構成されたピストン駆動機構部などを、本発明に係るドアクローザに対して適用することができる。
【0049】
また、上述した実施形態では、ハウジング4の内周面に対して空洞部15aと低圧室2bとを連通させる2つの溝60(60a,60b)を有する場合が例示されていた。これに対し、2つの溝60(60a,60b)が空洞部15aと高圧室2aとを連通させる構成を採用することもできる。こうすることで、高圧室2a側の作動油の排出をより効率良く行うことができる。
【0050】
また、上述した実施形態では、図8図12に示すように、本発明に係る2つの連通部が、ハウジング4の内周面に対して空洞部15aと低圧室2bとを連通させる2つの溝60(60a,60b、60a’,60b’)として形成されている構成が例示されていた。しかしながら、本発明の範囲は上述した形態に限定されるものではない。本発明に係る2つの連通部については、上述した溝として形成される形態の他に、孔として形成される形態を採用することができる。そこで、図13図16を用いて、本発明に係る2つの溝を2つの孔として形成した場合の変形例についての説明を行う。
【0051】
ここで、図13は、変形例に係るドアクローザを側面から見た場合の図である。なお、図13は、上述した実施形態における図5に対応した図である。また、図14は、図13のI-I線における縦断面正面図であり、図15は、図13のJ-J線における縦断面正面図であり、図16は、図14および図15のK-K線における縦断面側面図である。なお、図13図16を用いた以下の変形例に関する説明において、上述した実施形態と同一又は類似する部材については、同一符号を用いることで図示又は説明を省略することとする。
【0052】
変形例に係るドアクローザでは、図13図16に示すように、ハウジング4に対してピストン15の移動方向に延びる丸孔として形成される上下2つの中継孔70が形成されている。また、上下2つの中継孔70のそれぞれには、ピストン15の移動方向に対して直交(交差)するとともに、中継孔70と空洞部15aおよび低圧室2bとを連通させるための2つの孔160(160a,160a’、160b,160b’)が形成されている。つまり、図13において紙面右側にあるハウジング4の上側の中継孔70と2つの孔160a,160a’によって、本発明に係る連通部の1つが形成され(図14参照)、図13において紙面左側にあるハウジング4の下側の中継孔70と2つの孔160b,160b’によって、本発明に係る連通部のもう1つが形成されている(図15参照)。
【0053】
そして、2つの連通部160,70のうち、ハウジング4の上側の中継孔70と2つの孔160a,160a’とから構成される連通部については、作動油排出路を通じて密閉空間4aからハウジング4の外部に作動油を排出する際に、空気を移動させるための本発明に係る空気流通部としての空気流通孔160a,70,160a’として機能する。一方、ハウジング4の下側の中継孔70と2つの孔160b,160b’とから構成される連通部については、作動油排出路を通じて密閉空間4aからハウジング4の外部に作動油を排出する際に、作動油を移動させるための本発明に係る作動油流通部としての作動油流通孔160b,70,160b’として機能する。つまり、空洞部15aと低圧室2bは、中継孔70を含む空気流通孔160a,70,160a’と、中継孔70を含む作動油流通孔160b,70,160b’とを介して流通可能となっている。また、空気流通部としての空気流通孔160a,70,160a’と、作動油流通部としての作動油流通孔160b,70,160b’は、上下方向に離間して配置されているが、図16に示すように、低圧室2b側に形成された空気流通用の孔160aと作動油流通用の孔160bは、ピストン15の移動方向に対して同じ位置となるように形成されており、空洞部15a側に形成された空気流通用の孔160a’と作動油流通用の孔160b’は、ピストン15の移動方向に対して同じ位置となるように形成されている。
【0054】
さらに、ハウジング4に形成された2つの中継孔70は、ピストン15の移動方向におけるハウジング4の端面から所定深さに穿設された有底孔となっており、端面側の入口部は止め栓71により封止されている。なお、J-J断面にある止め栓71の頭部は、キャップ72で覆われている(図13図15参照)。
【0055】
またさらに、中継孔70とともに空気流通孔を構成する2つの孔160a,160a’と、中継孔70とともに作動油流通孔を構成する2つの孔160b,160b’は、ピストン15の移動方向に対して直交(交差)する丸孔として形成されている。つまり、この変形例では、中継孔70を含む空気流通孔160a,70,160a’と、中継孔70を含む作動油流通孔160b,70,160b’の全てが丸孔として形成されているので、加工刃物が特殊なものとならず、容易に加工形成することが可能となっている。したがって、図13図16に示す変形例に係るドアクローザでは、製造コストを安価に抑えることが可能となっている。
【0056】
以上説明した構成を備えることにより、変形例に係るドアクローザは、上述した実施形態の場合と同様に、何らかの要因によりハウジング4の温度が120~200℃になった場合には、樹脂製ネジ38が溶解して作動油の圧力により連通孔24B内に押し出される。このとき、まずは、2つのネジ孔24Cの両方が連通孔24Bと連通することで、2箇所の流路から作動油が排出される。
【0057】
その後、作動油の排出に伴って作動油の液位が下がり、当該液位が上方側にあるネジ孔24Cに到達すると、上方側のネジ孔24Cから空気が流入することとなる。これと同様に、ハウジング4の上側に形成された空気流通孔160a,70,160a’についても、作動油の液位の低下により空気が流入することとなるので、作動油と空気の入れ替えがスムーズに行われ、作動油の排出をさらに効率良く行うことに寄与することとなる。なお、空洞部15a内の作動油がネジ孔24C、連通孔24Bおよび下側のネジ孔24Aを介して回転軸24の下端24bから排出されることになるが、この作動油排出路は空洞部15a側に設けられているので、低圧室2b側にある作動油が空洞部15a側に流れ難く、高温時にハウジング4内から作動油が適切に排出されない虞があった。しかし、この変形例では、ハウジング4の内周面に対して空洞部15aと低圧室2bとを連通させる2つの連通路160,70(160a,70,160a’、160b,70,160b’)を形成し、さらに、上側に形成された空気流通孔160a,70,160a’については空気を移動させるために利用し、下側に形成された作動油流通孔160b,70,160b’については作動油を移動させるために利用したので、樹脂製ネジ38が溶解した場合に空洞部15aと低圧室2bとの間で作動油が適切に流通し、作動油の外部への排出がスムーズに行えるようになっている。
【0058】
さらに、上側に形成された空気流通孔160a,70,160a’と下側に形成された作動油流通孔160b,70,160b’については、例えば、ドアクローザ1を上下反転させて使用した場合、互いの機能が入れ替わることで同様の効果が得られる。つまり、この変形例が想定する上述した使用状態からドアクローザ1を上下反転させて使用した場合には、元々上側に形成されていた空気流通孔160a,70,160a’が下側となって作動油を移動させるための作動油流通孔として機能し、元々下側に形成された作動油流通孔160b,70,160b’が上側となって空気を移動させるための空気流通孔として機能することとなる。このような構成は、多様な使用環境に対応したドアクローザを提供できるという点において、効果的である。
【0059】
なお、上述した変形例では、中継孔70を含む空気流通孔160a,70,160a’、作動油流通孔160b,70,160b’の全てが丸孔として形成される場合を説明したが、この変形例には更なる変更を加えることが可能である。例えば、図17は、本発明の更に別の変形例を示す縦断面側面図であり、この図17は、図16に対応した図であるが、上述した空気流通孔160a,70,160a’と作動油流通孔160b,70,160b’については、丸孔で形成する形態に代えて、ピストン15の移動方向に対して直交(交差)する断面視で略三日月形状をした凹部161a,161a’,161b,161b’(本発明に係る「孔」に含まれる形状である。)として形成することも可能である。この略三日月形状は、Tスロットカッターと呼ばれる汎用的な刃物をハウジング4の内面に当てて切削することで形成できるので、加工自体も容易であるという利点を有している。
【0060】
また、上述した変形例では、ハウジング4の内周面に対して空洞部15aと低圧室2bとを連通させる2つの連通部160,70(160a,70,160a’、160b,70,160b’、161a,70,161a’、161b,70,161b’)を有する場合が例示されていた。これに対し、2つの連通部160,70(160a,70,160a’、160b,70,160b’、161a,70,161a’、161b,70,161b’)が空洞部15aと高圧室2aとを連通させる構成を採用することもできる。こうすることで、高圧室2a側の作動油の排出をより効率良く行うことができる。
【0061】
その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0062】
1 ドアクローザ、2 ドアクローザ本体、2a 高圧室、2b 低圧室、4 ハウジング、4a 密閉空間、5 取付金具、5a U字状引掛部、5b 取付片部、6 正面壁、7 背面壁、8 上面壁、9 下面壁、10 側面壁、10b 嵌合孔、11 凹陥部、12 掛止ピン、13 ネジ、14 ネジ、15 ピストン、15a 空洞部、16,16’ コイルスプリング(ピストン付勢手段)、17 エンドプラグ、18 第1通路、19 第2通路、19a 圧入用穴、20 逆止弁、21 ラック・ピニオン機構、22 ラック、23 ピニオン、24 回転軸、24a 上端、24b 下端、24A ネジ孔(作動油排出路の一部)、24B 連通孔(作動油排出路の一部)、24C ネジ孔(孔部、作動油排出路の一部)、25 ベアリング、26 Oリング、27 ブッシュ、28 カップ、28a ボルト、28b 排出孔、28c 内部空間、29 リンク機構、30 メインアーム、31 連結アーム、32 軸、33 軸、34 ステー、35 ネジ、36 軸、37 速度調整弁、38 樹脂製ネジ(樹脂製部材)、40 中空部材、40a 圧入軸端部、40b 中空部、41 逆止弁、50 スポンジゴム、60 2つの溝(2つの連通部)、60a,60a’ 空気流通溝(空気流通部)、60b,60b’ 作動油流通溝(作動油流通部)、60c 通油溝、70 中継孔、71 止め栓、72 キャップ、101 ドア開口部、102 上枠、103 竪枠、104 ドア、105 ヒンジ、106,107 取付板、160,70 2つの孔(2つの連通部)、160a,70,160a’ 空気流通孔(空気流通部)、160b,70,160b’ 作動油流通孔(作動油流通部)、161a,161a’ 凹部(孔:空気流通部)、161b,161b’ 凹部(孔:作動油流通部)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17