(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】容器詰ゼリー飲料
(51)【国際特許分類】
A23L 2/00 20060101AFI20221125BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20221125BHJP
A23L 29/238 20160101ALI20221125BHJP
A23L 29/256 20160101ALI20221125BHJP
A23L 29/269 20160101ALI20221125BHJP
【FI】
A23L2/00 A
A23L2/00 E
A23L29/238
A23L29/256
A23L29/269
(21)【出願番号】P 2016120975
(22)【出願日】2016-06-17
【審査請求日】2019-06-04
【審判番号】
【審判請求日】2021-01-15
(73)【特許権者】
【識別番号】596126465
【氏名又は名称】アサヒ飲料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】片柳 悟
【合議体】
【審判長】大島 祥吾
【審判官】植前 充司
【審判官】加藤 友也
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-153219(JP,A)
【文献】特開2003-125715(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00
A23L 2/52
A23L 29/238
A23L 29/256
A23L 29/269
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開栓前に容器を振とうすることによって該容器内のゼリーを流動状にして摂取する容器詰ゼリー飲料であって、(A)乳、(B)大豆多糖類、(C)寒天、(D)ローカストビーンガム、及び(E)キサンタンガムを含有し、該飲料中の大豆多糖類の含有量が0.1~0.2質量%、寒天の含有量が0.1~0.2質量%、ローカストビーンガムの含有量が0.1~0.2質量%、キサンタンガムの含有量が0~0.025質量%であり、該飲料中の乳の含有量は、無脂乳固形分(SNF)が0.1~1.0
質量%の範囲であるような量であることを特徴とする容器詰ゼリー飲料(ただし、ジェランガムを含有する容器詰ゼリー飲料は除く)。
【請求項2】
容器を振とうする前のゼリーの離水率が5~25質量%であることを特徴とする、請求項1に記載の容器詰ゼリー飲料。
【請求項3】
さらに、不溶性固形分を含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の容器詰ゼリー飲料。
【請求項4】
無脂乳固形分(SNF)が0.1~1.0
質量%の範囲であるような量で乳を含む飲料に、該飲料中の大豆多糖類の含有量が0.1~0.2質量%、寒天の含有量が0.1~0.2質量%、ローカストビーンガムの含有量が0.1~0.2質量%、キサンタンガムの含有量が0~0.025質量%となるように添加することを特徴とする、容器詰ゼリー飲料(ただし、ジェランガムを添加する容器詰ゼリー飲料は除く)における容器へのゼリーの付着を抑制する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器詰ゼリー飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
ゼリー飲料は、柔らかいゼリーを崩して飲用する飲料で、食器に移さずにスプーンなしでそのまま簡便に摂取でき、腹持ちが良く、また各種の栄養成分や機能性成分が配合されているものが多いため、忙しい現代人の食生活の現状と健康志向に沿うものである。また、疾病や老化などによって、咀嚼や飲み込みが困難になる障害、いわゆる嚥下障害の患者は、飲食物をゼリー状にすることにより摂食・嚥下が容易になることが知られており、このような患者の水分及び栄養補給の目的でもゼリー飲料が着目されている。
【0003】
ゼリー飲料は、プラスチック製の飲み口が付いたアルミパック入りのものが主流であるが、プラスチックボトル、金属缶、ガラス瓶入りのものもある。アルミパック入りのゼリー飲料は、パックの胴体を握って中身を押し出しながら飲み口より吸って飲用する。これに対し、プラスチックボトル、金属缶、ガラス瓶入りのゼリー飲料は、開栓前に容器を振って中身を流動状にしてから飲用する。しかしながら、容器を振って飲用するタイプのゼリー飲料は、容器の壁面や底に内容物が付着して残りやすいという問題があった。
【0004】
これまで、食感や製品の安定性の改善の観点から様々なゼリー飲料が開発されている。
特許文献1には、ジェランガム、寒天、及び大豆多糖類を含有する酸乳ゲル組成物が、乳中の蛋白質の安定性、保存安定性、及び飲み心地に優れることが記載されているが、ゼリーの容器への付着抑制については検討されていない。特許文献2には、キサンタンガム、コンニャク芋抽出物/ローカストビーンガム、紅藻類由来のガム質を特定の配合割合で含有し、ゲル化点が25~50℃となるように調整されたゲル化剤を含むことにより、ゲルの性状の保存安定性が高く、弾力のある食感を有し、ゼリーの容器への付着が少ないドリンクゼリーができることが記載されている。特許文献2のドリンクゼリーでは、乳成分を含有させる場合に、乳成分中の蛋白質の凝集を抑制して安定に保持するために大豆多糖類を用いることが開示されているが、容器へのゲルの付着はキサンタンガム、ローカストビーンガム、寒天により改善している。また、特許文献3は、容器を振って飲用するタイプのゼリー飲料に関し、デキストロース当量が35以下の澱粉糖と、寒天やガム類から選ばれるゲル化剤と、HLB値9以上の界面活性剤を含有させることにより、容器を振って容器内のゼリー飲料のゲルを振り崩して飲食するのに適した崩壊性と瑞々しいゼリーの食感を得られることが報告されているが、ゼリーの容器への付着抑制については検討されていない。
【0005】
一方、ゼリーは時間経過や温度変化によって水分が流出する離水という現象が起こると、風味や食感、外観が損なわれてしまうという問題がある。特許文献4には、寒天やガム類などの増粘剤の濃度の調整と、ゲル化開始からゲル化終了までの冷却速度の調整によって離水率が1質量%以下に低減された低離水性ゲル状組成物の製造方法が記載されている。しかしながら、特許文献4はゼリーやプリンなどのデザート用ゲル状食品の離水率を低減させるものであって、振とうによってゼリーを崩壊させるゼリー飲料に適した離水性ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第3540299号公報
【文献】特許第3607240号公報
【文献】特許第5925429号公報
【文献】特許第4746259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、容器を振ってゼリーを崩してから飲用するタイプのゼリー飲料において、飲用後の容器の壁面や底に内容物が付着することなく、最後まで飲み切ることができる容器詰ゼリー飲料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記課題を解決すべく、鋭意検討を重ねた結果、乳とともに配合するガム類と寒天と大豆多糖類の含有量を調整することにより、飲用後の容器の壁面や底に内容物が付着せず、しかも口当たりが良くみずみずしいゼリー独特の食感を有する、容器詰ゼリー飲料が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
即ち、本発明は以下の発明を包含する。
(1)開栓前に容器を振とうすることによって該容器内のゼリーが流動状となる容器詰ゼリー飲料であって、(A)乳、(B)大豆多糖類、(C)寒天、(D)ローカストビーンガム、及び(E)キサンタンガムを含有し、該飲料中の大豆多糖類の含有量が0.1~0.5質量%、寒天の含有量が0.1~0.2質量%、ローカストビーンガムの含有量が0.1~0.25質量%、キサンタンガムの含有量が0~0.025質量%であることを特徴とする容器詰ゼリー飲料。
(2)容器を振とうする前のゼリーの離水率が5~25質量%であることを特徴とする、(1)に記載の容器詰ゼリー飲料。
(3)さらに、不溶性固形分を含有することを特徴とする、(1)又は(2)に記載の容器詰ゼリー飲料。
(4)乳を含む飲料に、該飲料中の大豆多糖類の含有量が0.1~0.5質量%、寒天の含有量が0.1~0.2質量%、ローカストビーンガムの含有量が0.1~0.25質量%、キサンタンガムの含有量が0~0.025質量%となるように添加することを特徴とする、容器詰ゼリー飲料における容器へのゼリーの付着を抑制する方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、開栓前に容器を振とうすることによって該容器内のゼリーが流動状となって、そのまま飲用できる容器詰ゼリー飲料が提供される。本発明の容器詰ゼリー飲料は、口当たりが良くみずみずしいゼリー独特の食感があり、また、飲用後の容器の壁面や底に内容物が付着することなく、最後まで飲み切ることができ、外観上も優れている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施例1~3及び比較例1~4で調製した容器詰ゼリー飲料から内容物を取り出した後の容器の外観を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の容器詰ゼリー飲料(以下、単に「本発明のゼリー飲料」という)は、開栓前に容器を振とうすることによって該容器内のゼリーが流動状となる容器詰ゼリー飲料であって、(A)乳、(B)大豆多糖類、(C)寒天、(D)ローカストビーンガム、及び(E)キサンタンガムを含有し、該飲料中の大豆多糖類の含有量が0.1~0.5質量%、寒天の含有量が0.1~0.2質量%、ローカストビーンガムの含有量が0.1~0.25質量%、キサンタンガムの含有量が0~0.025質量%であることを特徴とする。
【0013】
本発明のゼリー飲料は、開栓前に容器を手に持って振とうすることによって該容器内のゼリーが、流動性のない半固体状のゲルから流動性のある液状のゾルになる飲料で、口当たりが良くみずみずしいゼリー独特の食感を有する。容器の振とうの方法や回数については、好みのゼリー食感によって適宜調整できるが、例えば上下に、5~10回程度の振とうを行うことが好ましい。
【0014】
(A)乳
本発明のゼリー飲料に配合される乳としては、動物又は植物由来の乳等、いずれの乳をも用いることができる。例えば、牛乳、山羊乳、羊乳、馬乳等の獣乳、豆乳等の植物乳が挙げられるが、牛乳が一般的である。これらの乳は、単独で又は2種類以上を混合して用いてもよい。
【0015】
乳原料の形態は特に限定されず、全脂乳、脱脂乳、乳清及びこれらの粉乳、乳蛋白濃縮物、濃縮乳からの還元乳等のいずれであってもよい。これらの乳原料は、単独で又は2種類以上を混合して用いてもよい。
【0016】
また、本発明のゼリー飲料に配合される乳として酸性乳を用いることができる。酸性乳とは、pHを酸性にした乳をいい、微生物による発酵工程を経て製造される発酵酸性乳及び微生物による発酵工程を経ないで製造される非発酵酸性乳のいずれをも含む。具体的には、予め乳原料を乳酸菌やビフィズス菌等の微生物によって発酵させ、乳酸等の有機酸を生成させる方法により得られる酸性乳、乳原料に乳酸やクエン酸等の有機酸や果汁等の酸成分を添加する方法により得られる酸性乳、又はこれらの混合物が挙げられる。ここで、微生物による発酵を行なう場合、通常の発酵乳製造に使用される発酵方法で行えばよく、静置発酵、攪拌発酵、振とう発酵、通気発酵などが挙げられる。発酵は、通常30~40℃の温度で、pHが酸性になるまで行なえばよい。
【0017】
本発明のゼリー飲料中の乳成分の含有量は、特に限定されず、使用する乳成分に応じて適宜調整できるが、例えば、無脂乳固形分(SNF)が0.1~3.0質量%の範囲であり、好ましくは0.1~1.0の範囲である。
【0018】
(B)大豆多糖類
本発明のゼリー飲料に配合される大豆多糖類は、通常、大豆製品の製造工程において副生するオカラ(繊維状の絞りかす)から抽出精製される多糖類であり、含有されるガラクツロン酸のカルボキシル基に由来して酸性下でマイナスに帯電しているものが好ましい。本発明においては、大豆多糖類として、例えば、商品名、「SM-900」、「SM-1200」(共に三栄源エフ・エフ・アイ(株)製)等の市販品を用いることができる。
【0019】
本発明のゼリー飲料中の大豆多糖類の含有量下限は、0.1質量%であり、好ましくは0.13質量%であり、より好ましくは0.15質量%である。また、大豆多糖類の含有量上限は0.5質量%であり、好ましくは0.4質量%であり、より好ましくは0.3質量%である。大豆多糖類の含有量が0.5質量%より多いと、大豆多糖類に由来する風味不良が生じ、さわやかな風味が得られず、0.1質量%より少ないと容器への付着防止効果が得られないので好ましくない。
【0020】
(C)寒天
本発明のゼリー飲料に配合する寒天は、D-ガラクトースと3,6-アンヒドロ-L-ガラクトースとがα-1,3結合とβ-1,4結合を交互に繰り返してなるアガロースと、アガロースに硫酸基、ウロン酸、ピルビン酸等を含むアガロペクチンからなる多糖類であり、テングサ等の海藻類から抽出して得ることができる。本発明に用いる寒天の形状は特に制限はないが、使い易さや安定性の点から粉末状であることが好ましい。本発明においては、寒天として、例えば、「伊那寒天S-6」(伊那食品工業株式会社製)等の市販品を用いることができる。
【0021】
本発明のゼリー飲料中の寒天の含有量は、0.1~0.2質量%である。寒天の含有量が0.2質量%より多いと、ゼリーが固くなりすぎ、また、0.1質量%よりも少ないとゲル化しないので、好ましくない。
【0022】
(D) ローカストビーンガム
本発明のゼリー飲料に配合するローカストビーンガム(Locust bean gum)は、カロムガム(Carob gum)とも呼ばれ、マメ科(Leguminosae)植物であるイナゴマメ(Ceratonia siliqua L.)の種子の胚乳から抽出される多糖類であり、β-D-マンノースがβ-1,4グリコシド結合した主鎖にα-D-ガラクトースが結合したガラクトマンナンである。本発明において用いるローカストビーンガムとしては、食品添加物として規格を満たすものであれば特に限定はされず、例えば、「ビストップD-2050」(三栄源エフ・エフ・アイ(株)製)等の市販品を用いることができる。
【0023】
本発明のゼリー飲料中のローカストビーンガムの含有量は、0.1~0.25質量%、好ましくは0.1~0.2質量%である。ローカストビーンガムの含有量が0.25質量%より多いと、ゼリーとしての食感が固くなりすぎ、また、0.1質量%より少ないとゼリーとしての食感が良好ではないので、好ましくない。
【0024】
(E) キサンタンガム
本発明のゼリー飲料に配合されるキサンタンガムは、微生物キサントモナス・キャンペストリス(Xanthomonas campesrtis)が産生する発酵多糖類である。キサンタンガムは、β-1,4-D-グルカンを主鎖骨格とし、主鎖中のグルコース1分子おきにα-D-マンノース、β-D-グルクロン酸、β-D-マンノースからなる側鎖が結合した酸性多糖類であり、主鎖に結合したマンノースはC6位がアセチル化され、末端のマンノースはピルビン酸とアセタール結合している場合がある。本発明において用いるキサンタンガムとしては、食品添加物として規格を満たすものであれば特に限定はされず、例えば、「サンエースNXG-S」(三栄源エフ・エフ・アイ(株)製)等の市販品を用いることができる。
【0025】
本発明のゼリー飲料中のキサンタンガムの含有量は、0~0.025質量%、好ましくは0~0.02質量%である。キサンタンガムの含有量が0.025質量%より多いと、乳の凝集が起こりやすいので好ましくない。
【0026】
本発明のゼリー飲料は、前記の乳、大豆多糖類、寒天、ローカストビーンガム、キサンタンガムを主たる原料として含有するが、その配合によって所望の効果が失われず、一般的な飲料に通常用いられる他の原料を適宜選択して配合することができる。他の原料としては、例えば、不溶性固形分、糖度(Brix)調整のための糖類や甘味料、酸度やpH調整のための酸味料、果汁や野菜汁などが挙げられる。
【0027】
また、本発明のゼリー飲料に用いる水は特に限定されず、例えば、精製水、純水、イオン交換水等を用いることができる。本発明のゼリー飲料において水の含有割合は、他の成分の含有割合や、後述する糖度及びpHが所望範囲となるように適宜選択することができる。
【0028】
不溶性固形物としては、果皮(ブドウ果皮等)、果実パルプ分(ミカンパルプ等)、果実の種(チアシード等)、果実(リンゴ等)のダイスカットなどの、水に対して不溶性の固形物が挙げられる。また、ナタデココのような微生物セルロースも、好適な例として挙げることができる。不溶性固形物の大きさは特に限定されないが、0.1mm~15mmであり、好ましくは3mm~10mmである。
【0029】
糖類や甘味料としては、従来公知のいずれのものであっても使用でき、例えば、単糖(ブドウ糖、果糖、キシロース、ガラクトース等)、二糖(ショ糖、麦芽糖、乳糖、トレハロース、イソマルツロース、パラチノース等)、オリゴ糖(ラフィノース、フラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、カップリングシュガー等)、異性化糖(ブドウ糖果糖液糖、果糖ブドウ糖液糖等)、はちみつ、糖アルコール(エリスリトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、マルチトール、ラクチトール、還元イソマルツロース、パラチニット、還元水飴等)などが使用できる。さらに、スクラロース、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、ステビア、グリチルリチン、ソーマチン等の高甘味度甘味料を使用してもよい。
【0030】
酸味料としては、例えば、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、酢酸、フィチン酸、グルコン酸、コハク酸、フマール酸等の有機酸、リン酸等の無機酸、又はこれらのナトリウム塩、カルシウム塩もしくはカリウム塩等が挙げられるが、さっぱりとした爽快な酸味を付与することが出来る上で、クエン酸、乳酸が好ましい。
【0031】
果汁としては、リンゴ、オレンジ、ミカン、レモン、グレープフルーツ、メロン、ブドウ、バナナ、モモ、イチゴ、アサイー、ブルーベリー、マンゴーなどの果汁が挙げられる。また、野菜汁としては、例えば、トマト、ニンジン、カボチャ、ピーマン、キャベツ、ブロッコリー、セロリ、ホウレンソウ、ケール、モロヘイヤなどの野菜汁が挙げられる。果汁や野菜汁は果物や野菜の絞り汁そのままでもよく、濃縮されていてもよい。また、不溶性固形物を含む混濁果汁又は野菜汁であっても、精密濾過や酵素処理、限外濾過等の処理により不溶性固形物を除去した透明果汁又は野菜汁であってもよい。
【0032】
本発明のゼリー飲料には、上記の原料のほか、飲料に許容される各種添加剤、例えば、乳化剤(ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、レシチン等)、酸化防止剤(トコフェロール、アスコルビン酸、塩酸システイン等)、香料(レモンフレーバー、オレンジフレーバー、グレープフレーバー、ピーチフレーバー、アップルフレーバー等)、色素(カロチノイド色素、アントシアニン色素、ベニバナ色素、クチナシ色素、カラメル色素、各種合成着色料等)などを添加してもよい。また、健康機能の増強を期待して、ビタミン類(ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンD等)、ミネラル類(カルシウム、カリウム、マグネシウム等)、アミノ酸類(アルギニン、ロイシン、イソロイシン、バリン等)、食物繊維(難消化性デキストリン等)の各種機能成分を添加してもよい。
【0033】
本発明のゼリー飲料の糖度(Brix)は、3~20の範囲が好ましい。糖度(Brix)が20より高いと甘味が強くなりすぎ、また、3よりも低いと甘味が弱くなって、酸味とのバランスが崩れ、美味しく感じられない。本発明のゼリー飲料において糖度(Brix)とは、20℃における糖用屈折計の示度であり、デジタル屈折計Rx-5000(アタゴ社製)を使用して20℃で測定した可溶性固形分量(Bx)をいう。前記糖度(Brix)の調整は、前記の糖類や甘味料を含有させる方法により行うことができる。糖度(Brix)を調整するための糖類や甘味料の使用量は、所望の糖度(Brix)とすることができ、かつ飲料の風味に影響がない範囲であれば特に限定されない。
【0034】
本発明のゼリー飲料のクエン酸酸度は、0.1~0.5質量%の範囲が好ましく、0.15~0.4質量%の範囲がより好ましい。クエン酸酸度が0.1質量%よりも低いと、ゼリー特有の清涼感が感じられず、0.5質量%よりも高いと酸味が強くなりすぎて好ましくない。本発明のゼリー飲料のクエン酸酸度を上記の範囲に調整するためには、酸味料を使用する方法、酸性乳を使用する方法、果汁を使用する方法、又はこれらの方法を併用する方法により行うことができる。酸味料、酸性乳、果汁の種類は前記のとおりである。クエン酸酸度を調整するための酸味料、酸性乳、果汁の使用量は、所望のクエン酸酸度とすることができ、かつ飲料の風味に影響がない範囲であれば特に限定されない。
【0035】
ここで、クエン酸酸度は、フェノールフタレイン指示薬を用いて水酸化ナトリウムで滴
定し、クエン酸の相当量として次式によって算出する。
クエン酸酸度(%)=A×f×100/W×0.0064
[A:0.1M水酸化ナトリウム溶液による滴定量(ml)、f:0.1M水酸化ナトリウム溶液の力価、W:試料質量(g)、0.0064:0.1M水酸化ナトリウム溶液1mlに相当する無水クエン酸の質量(g)]
【0036】
クエン酸酸度の測定方法は、特に限定はされないが、例えば以下の手順に従って行うことができる。破砕した試料5~15gを200ml容三角フラスコに正確にはかり取り、水で適宜希釈して1%フェノールフタレイン指示薬数滴を加え、25mlビューレットに入れた0.1M水酸化ナトリウムで振り混ぜながら滴定し、30秒間赤色が持続する点を終点とする。水素イオン濃度計を用いる場合は、マグネティックスターラーでかき混ぜながら同様に滴定し、pHが8.1になったときを終点とする。
【0037】
本発明のゼリー飲料のpHは酸性であれば特に限定されないが、3.5~4.5、好ましくは3.6~4.0の範囲である。pHがこれよりも高いと、好ましい酸味が得られず、さっぱりとした爽快な飲み心地となるゼリー飲料とならず、これよりpHが低いと、ゲル化しにくくなったり、また、出来上がったゲルが酸により影響を受けて壊れやすくなったり、離水が生じて好ましくない。本発明のゼリー飲料のpHを上記の範囲に調整するためには、酸味料を使用する方法、酸性乳を使用する方法、果汁を使用する方法、又はこれらの方法を併用する方法により行うことができる。酸味料、酸性乳、果汁の種類は前記のとおりである。これらのpHを調整するための酸味料、酸性乳、果汁の使用量は、所望のpHとすることができ、かつ飲料の風味に影響がない範囲であれば特に限定されない。
【0038】
本明細書において「離水率」とは、ゼリーから滲出し、ゲル部分と分離した水の質量を、ゼリー全体の質量で除した値をいう。本発明のゼリー飲料(振とう前)の離水率は、5~25質量%であることが好ましく、5~15質量%であることがより好ましい。離水率が25質量%よりも高いと、ゼリーが形成されず、離水率が5質量%よりも低いと振とうによってもゼリーは崩れずに流動化せず、好ましくない。本発明のゼリー飲料の離水率は、次のような方法で測定できる。調製したゼリー飲料を篩に載せ、90秒間保持(水平で30秒間、傾き30°で30秒間、傾きを逆に変えて30秒間静置)した後、篩に載せる前のゼリーの質量に対する、ゼリーから滲出して篩を通過した水の質量の割合を求める。
【0039】
本発明のゼリー飲料の製造方法は、特に限定されず、例えば、主原料である前記の乳、大豆多糖類、寒天、ローカストビーンガム、キサンタンガムを混合する工程に加えて、更に他の原料等を添加する工程を含むことができる。主原料と任意の他の原料の混合順序は特に限定されず、他の原料の混合は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、本発明のゼリー飲料の製造の任意の段階で行うことができる。原料を水、好ましくは蒸留水に加熱攪拌溶解し、冷却することによって調製することができる。
【0040】
上記方法にて製造されたゼリー飲料は、容器に充填する前に、通常、所定の条件で均質化を実施することができる。均質化処理は、食品加工用に一般に用いられるホモジナイザーを用いて常法により行えばよく、その圧力は、ホモジナイザーで10~20MPa程度が好ましい。また、均質化時の温度は任意の温度でよく、一般的な加熱条件下での均質化も可能である。また通常、上記均質化処理の前、均質化処理後容器に充填する前もしくは後に、殺菌処理を行なうことが好ましい。殺菌処理は、特に制限されず、通常のレトルト殺菌、バッチ殺菌、プレート殺菌、オートクレーブ殺菌などの方法を採用することができる。
【0041】
本発明のゼリー飲料を充填する容器の種類としては、各種飲料において従来から一般的に使用される密閉可能な容器を使用することができ、特に限定されるものではなく、プラスチック(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等)ボトル、ガラス瓶、アルミニウム缶、スチール缶、紙パックの容器が挙げられるが、密閉可能なプラスチックボトルが好ましい。また容量についても限定はされず、例えば100~2000mlが挙げられる。
【0042】
本発明によればまた、乳を含む飲料に、該飲料中の大豆多糖類の含有量が0.1~0.5質量%、寒天の含有量が0.1~0.2質量%、ローカストビーンガムの含有量が0.1~0.25質量%、キサンタンガムの含有量が0~0.025質量%となるように添加することを特徴とする、容器詰ゼリー飲料における容器へのゼリーの付着を抑制する方法が提供される。当該飲料の各原料は前述のとおりである。
【実施例】
【0043】
以下、実施例及び比較例によって本発明を更に具体的に説明するが、これらは本発明を限定するものでない。
【0044】
なお、実施例及び比較例の試験サンプルの調製において、大豆多糖類は、商品名「SM-1200」(三栄源エフ・エフ・アイ(株)製)を、寒天は、商品名「伊那寒天S-6」(伊那食品工業株式会社製)を、ローカストビーンガムは、商品名「ビストップD-2050」(三栄源エフ・エフ・アイ(株)製)を、キサンタンガムは、商品名「サンエースNXG-S」(三栄源エフ・エフ・アイ(株)製)を用いた。
【0045】
(実施例1~3、比較例1~4)試験サンプルの調製
飲料全量に対する大豆多糖類、寒天、ローカストビーンガム、キサンタンガムがそれぞれ表1に示す含有量(質量%)となる容器詰ゼリー飲料の試験サンプルを調製した。
【0046】
以下、実施例1の容器詰ゼリー飲料の調製手順を示す。果糖ぶどう糖液糖516gに、25質量%還元脱脂粉乳120gと、3質量%大豆多糖類水溶液334gを添加して均一になるように攪拌した。さらに、3質量%寒天水溶液600gと、1質量%ローカストビーンガム水溶液1400gを添加して均一になるように攪拌した。次いで、50%乳酸50gを添加し十分に攪拌した。次にイオン交換水を用いて全量を9.5kgとした後に、10質量%クエン酸三ナトリウム水溶液250gでpHを3.8に調整した。続いて、イオン交換水を用いて全量を10kgとして調合液を調製した。得られた調合液280gを、300mlのPETボトルにホットパック充填し、直立のまま、室温まで水冷した後、20℃にて24時間以上静置することで、容器詰ゼリー飲料を得た。
【0047】
実施例2、3、比較例1~4の容器詰ゼリー飲料は、上記大豆多糖類水溶液と寒天水溶液の量を変更する以外は、上記と同様の手順にて調製した。また、比較例4の容器詰ゼリー飲料は、0.3質量%キサンタンガム水溶液1083gを、上記寒天水溶液とローカストビーンガム水溶液添加後に投入した以外は、実施例1と同様の手順にて調製した。
【0048】
(試験例)試験サンプルの評価
(1)外観評価
実施例1~3、比較例1~4の容器詰ゼリー飲料の容器を手で5回振とうした後、開栓し、内容物を出した後、容器の外観を観察した。結果を
図1に示す。
図1に示すように、飲料中の大豆多糖類の含有量が0.1~0.5質量%の範囲にある実施例1~3は、いずれも容器底にゼリーが残らないことが確認できた。一方、飲料中の大豆多糖類の含有量が0.1質量%より少ない比較例1は容器底にゼリーが残ることが確認された。また、飲料中のキサンタンガム含有量が0.025質量%を超える比較例4は、乳の凝集に由来する沈殿が残ることが確認された。なお、比較例2は、ゼリーが形成されておらず液状であるから、容器への付着はそもそも生じなかった。
【0049】
(2)離水率の測定
実施例1~3、比較例1~4の容器詰ゼリー飲料のPETボトル容器上部(肩部)をホットカッターHE-20(太洋電機産業製)で切断し、容器中のゼリー飲料を、ゼリーの形状を維持したまま、目開き840μmの篩(直径150mm×高さ50mm)で受け止めて90秒間保持(水平で30秒間静置後、傾き30°で30秒間静置し、さらに傾きを逆に変えて30秒間静置した)し、篩を通過した水の量の、サンプル全量に対する質量%を離水率として求めた。
【0050】
(3)官能評価
実施例1~3、比較例1~4の容器詰ゼリー飲料の容器を手で5回振とうした後、開栓して試飲し、官能評価を行った。官能評価は習熟したパネラー5名により、ゼリー飲料としての食感(ゼリー食感)を有しているか否かを評価した。
【0051】
試験サンプルの離水率(2回測定の平均値)と官能評価を表1に示す。また、試験サンプルの物性値として、pH、糖度(Brix)、クエン酸酸度(w/w%)も合わせて表1に示す。
【0052】
【0053】
表1に示すように、飲料中の大豆多糖類の含有量が0.1~0.5質量%の範囲である実施例1~3は、ゼリー飲料としての好ましい食感を有していた。これに対し、飲料中の大豆多糖類の含有量が0.1質量%より少ない比較例1は、ゼリー飲料としての好ましい食感は認められたものの、前述のとおり、容器底にゼリーが残るという問題があった。また、飲料中の寒天の含有量が0.1~0.2質量%の範囲にない比較例2、3は、ゼリー飲料としての好ましい食感がないか、あってもゼリーの破片が大きく、振とうによる崩壊性が悪かった。また、飲料中のキサンタンガム含有量が0.025質量%を超える比較例4は、ゼリー飲料としての好ましい食感は認められたものの、前述のとおり、乳が凝集するという問題があった。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、容器詰ゼリー飲料の製造分野において利用できる。