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  • 特許-基材の配合比率の提供方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】基材の配合比率の提供方法
(51)【国際特許分類】
   C10L 1/06 20060101AFI20221125BHJP
【FI】
C10L1/06
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017112696
(22)【出願日】2017-06-07
(65)【公開番号】P2018203926
(43)【公開日】2018-12-27
【審査請求日】2020-02-18
【審判番号】
【審判請求日】2021-04-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000105567
【氏名又は名称】コスモ石油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】大塩 敦保
(72)【発明者】
【氏名】三浦 靖智
(72)【発明者】
【氏名】保泉 明
【合議体】
【審判長】門前 浩一
【審判官】木村 敏康
【審判官】蔵野 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-17428(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10L 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる組成を有する複数の基材を配合して燃料油を得るために用いる基材の配合比率を提供する方法であって、
前記方法は、ユーザ端末にネットワークを介して接続されたサーバにより実行され、
前記方法は、
前記ユーザ端末から複数のユーザ基材ごとの少なくとも密度、パラフィン、オレフィン、ナフテン及び芳香族化合物の組成、蒸留性状およびオクタン価を含む基材情報を取得する工程と、
複数種類の参照基材ごとの密度、パラフィン、オレフィン、ナフテン及び芳香族化合物の組成、蒸留性状および基材の配合比率の関数であるオクタン価の参照補正係数を含む参照情報が記録されている補正データベースを参照して、前記ユーザ基材の前記基材情報と最も近い参照情報を有する前記参照基材のオクタン価の参照補正係数から、複数の前記ユーザ基材ごとにユーザ補正係数を特定する工程と、
特定された各々の前記ユーザ補正係数に基づいて、所定のオクタン価の燃料油となるように前記ユーザ基材の配合比率を算出する工程と、
算出された前記配合比率を前記ユーザ端末に送信する工程と、
をこの順に実行する、基材の配合比率の提供方法。
【請求項2】
前記ユーザ補正係数を特定する工程において、前記補正データベースを参照して、複数種類毎に取得した前記基材情報と一致する参照情報を有する前記基材のオクタン価の参照補正係数を、前記ユーザ基材の少なくとも1つのオクタン価のユーザ補正係数として特定する、
請求項1に記載の基材の配合比率の提供方法。
【請求項3】
前記ユーザ補正係数を特定する工程において、前記補正データベースを参照して、複数種類毎に取得した前記基材情報と最も近い参照情報を有する前記基材のオクタン価の参照補正係数を、前記ユーザ基材の少なくとも1つのオクタン価のユーザ補正係数として特定する、
請求項1に記載の基材の配合比率の提供方法。
【請求項4】
前記ユーザ補正係数を特定する工程において、前記補正データベースを参照して、複数種類毎に取得した前記基材情報と近い参照情報を有する複数の前記基材のオクタン価の参照補正係数から、前記ユーザ基材の少なくとも1つのオクタン価のユーザ補正係数を予測して特定する、
請求項1に記載の基材の配合比率の提供方法。
【請求項5】
特定した前記ユーザ補正係数を前記参照補正係数として、前記基材情報を前記補正データベースに蓄積する、請求項3または請求項4に記載の基材の配合比率の提供方法。
【請求項6】
前記ユーザ端末から得たい燃料油の目標オクタン価を取得する工程を含む、請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の基材の配合比率の提供方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料油を得るために用いる基材の配合比率を提供する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レギュラーガソリンのオクタン価(リサーチ法)は89以上と定められている(非特許文献1)。そこで、石油元売会社はオクタン価が89以上となるように基材をブレンドし、得られた燃料油をレギュラーガソリンとして販売している。
しかし、オクタン価が88の基材とオクタン価が90の基材とを同量混ぜ合わせて燃料油を得た場合、必ずしもそのオクタン価が89になるとは限らない(特許文献1)。そこで石油元売会社は、例えば単純計算上はオクタン価が90になるように基材をブレンドすることにより、オクタン価が89以上の燃料油を生成している。しかし、このようにして得られた燃料油はオーバースペックである。規格の下限値(例えば89)を狙って基材をブレンドすることができれば、資源を有効に利用でき、かつ、ユーザに安価に適正な品質の燃料油を提供することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-25077号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】JIS K 2202:2007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の方法では、上述のように配合する基材によって、得られる燃料油のオクタン価の変動は異なり、単純計算ではオクタン価を予測することが困難であった。所望のオクタン価の燃料油となるように基材の配合比率を特定するためには、複数種類の基材の配合比率を変化させて複数回調合し、得られた燃料油のオクタン価を調べるという試行錯誤を繰り返す必要があり、石油元売会社にとって著しい負担となる。さらに、既存の基材だけを使用した場合の燃料油のオクタン価の変動についてある程度経験則から予測できるようになったとしても、製油所において既存の取引先とは別の取引先から得られる新しい基材を使用する場合は、既存の基材についての経験則だけでは正確な燃料油のオクタン価を予測することは困難であった。
【0006】
本発明は、新たな基材を用いる場合でも、実際の配合前に所望のオクタン価の燃料油が得られる基材の配合比率を提供する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一側面によれば以下が提供される。
互いに異なる組成を有する複数の基材を配合して燃料油を得るために用いる基材の配合比率を提供する方法であって、
前記方法は、ユーザ端末にネットワークを介して接続されたサーバにより実行され、
前記方法は、
前記ユーザ端末から複数のユーザ基材ごとの少なくとも密度、パラフィン、オレフィン、ナフテン及び芳香族化合物の組成、蒸留性状およびオクタン価を含む基材情報を取得する工程と、
複数種類の参照基材ごとの密度、パラフィン、オレフィン、ナフテン及び芳香族化合物の組成、蒸留性状およびオクタン価の参照補正係数を含む参照情報が記録されている補正データベースを参照して、前記ユーザ基材の前記基材情報と最も近い参照情報を有する前記参照基材のオクタン価の参照補正係数から、複数の前記ユーザ基材ごとにユーザ補正係数を特定する工程と、
特定された各々の前記ユーザ補正係数に基づいて、所定のオクタン価の燃料油となるように前記ユーザ基材の配合比率を算出する工程と、
算出された前記配合比率を前記ユーザ端末に送信する工程と、
をこの順に実行する、基材の配合比率の提供方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、新たな基材を用いる場合でも、実際の配合前に所望のオクタン価の燃料油が得られる基材の配合比率を提供する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】基材の配合比率を提供するシステムの全体構成図である。
図2】基材の配合比率を提供する方法のフローチャートである。
図3】ユーザ端末の表示部に表示させる入力画面の一例である。
図4】補正データベースに記憶されている情報を示す図である。
図5】ユーザ端末の表示部に表示させる出力画面の一例である。
図6】ユーザ基材のオクタン価の補正係数を特定する方法の一例を示すフローチャートである。
図7】ユーザ基材のオクタン価の補正係数を特定する方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態の配合比率の提供システムはユーザが所望のオクタン価の燃料油を得るために基材を配合する時に用いられる。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係る基材の配合比率を提供する方法を行うシステムの全体構成図である。図1に示すように、提供システムは、ユーザ端末10と、演算処理手段を備えるサーバ20と、補正データベース30とを有している。ユーザ端末10はサーバ20とネットワーク40を介して互いに通信可能に構成されている。サーバ20と補正データベース30とは互いに通信可能に構成されている。サーバ20は単一のサーバで構成してもよいし、複数台のサーバで構成してもよい。
【0012】
ユーザ端末10は、表示部を有している。この表示部は例えば液晶画面であり、またタッチパネルディスプレイであってもよい。
補正データベース30は、複数種類の参照基材それぞれに応じた密度、パラフィン、オレフィン、ナフテン及び芳香族化合物の組成、蒸留性状およびオクタン価の参照補正係数を含む参照情報を記録している。
【0013】
図2は、基材の配合比率を提供する方法のフローチャートである。図2に示すように、サーバ20はユーザ端末10から目標オクタン価を取得する(ステップ01)。目標オクタン価とはユーザが基材を調合した結果得ようとする調合油(燃料油)のオクタン価である。本実施形態においては、目標オクタン価として、リサーチ法オクタン価(RON)を取得させてもよいし、モータ法オクタン価(MON)を取得させてもよい。
【0014】
図2に示すように、サーバ20はステップ01に続いて複数のユーザ基材ごとに基材情報を取得する(ステップ02)。
図3は、ユーザにユーザ基材の情報を入力させる場合に、ユーザ端末10に表示させる画面の一例である。ユーザはユーザ端末10の表示部に表示される入力画面を利用して、基材の情報を入力することができる。ユーザ端末10は表示部に、複数の基材の少なくとも密度、パラフィン、オレフィン、ナフテン及び芳香族化合物の組成、蒸留性状およびオクタン価を含む情報を入力させるための画面を表示させる。なお、本明細書において「蒸留性状」とは、流動床接触分解装置から留出する基材の、例えば10容量%留出温度(T10)[℃]、50容量%留出温度(T50)[℃]、90容量%留出温度(T90)[℃]を指す。
【0015】
図2に示すように、サーバ20は取得した複数のユーザ基材の基材情報に基づいて補正データベース30を参照する(ステップS03)。
図4は、補正データベースに記録されている複数種類の参照基材の参照情報を示す図である。サーバ20は、補正データベース内の参照情報と、入力されたユーザ基材の基材情報とを照合し、ユーザ基材のユーザ補正係数を特定する(ステップS04)。
【0016】
ここで、本実施形態の配合比率の提供システムにおいて、サーバ20が補正データベース30を参照して、図3に示すユーザ基材α、ユーザ基材β及びユーザ基材γのユーザ補正係数を特定する方法を詳しく説明する。
【0017】
図6は、サーバ20が補正データベース30を参照して、ユーザ補正係数を特定する方法のフローチャートである。図6に示すように、サーバ20はユーザ端末10から取得したユーザ基材の基材情報に基づいて図4に示す補正データベース30に記録されている参照情報を参照し、補正データベース30内の参照基材についての参照情報のうちユーザ基材のユーザ情報と最も近い参照情報を照合する。
【0018】
サーバ20は、補正データベース内にユーザ基材の基材情報と一致する参照基材の参照情報があるか判定する(ステップS41)。サーバ20は、ユーザ基材の基材情報と一致する参照基材の参照情報がある場合、基材情報と一致した参照基材の参照補正係数をユーザ基材のユーザ補正係数として特定する(ステップS42)。サーバ20は、ユーザ基材の基材情報と一致する参照基材の参照情報がない場合、ユーザ基材の基材情報と最も近い参照情報を有する参照基材の参照補正係数をユーザ基材のユーザ補正係数として特定する(ステップS43)。この際、サーバ20は、ユーザ基材及び参照基材それぞれの密度を照合して、ユーザ基材の基材情報と最も近い参照情報を有する参照基材を決定する。
【0019】
具体的に説明する。図3に示すユーザ基材のユーザ補正係数をサーバ20が特定する場合において、まず、サーバ20は、補正データベース内にユーザ基材αのユーザ情報と一致する参照基材の参照情報があるか否かを判定する(ステップS41)。参照基材Aの参照情報は、ユーザ基材αのユーザ情報と一致している(ステップS41:YES)。そこで、ユーザ基材αの基材情報と一致した参照基材Aの参照補正係数をユーザ基材のユーザ補正係数として特定する(ステップS42)。続いて、サーバ20は、補正データベース内にユーザが入力したユーザ基材βのユーザ情報と一致する参照基材の参照情報があるか否かを判定する(ステップS41)。ユーザ基材βのユーザ情報と一致する参照基材の参照情報はない(ステップS41:NO)。そこで、ユーザ基材βの密度と最も近い密度を有する参照基材Bの参照補正係数をユーザ基材のユーザ補正係数として特定する(ステップS43)。最後に、サーバ20は、補正データベース内にユーザが入力したユーザ基材γのユーザ情報と一致する参照基材の参照情報があるか否かを判定する(ステップS41)。ユーザ基材γのユーザ情報と一致する参照基材の参照情報はない(ステップS41:NO)。そこで、ユーザ基材γの密度と最も近い密度を有する参照基材の参照補正係数をユーザ基材のユーザ補正係数として特定する(ステップS43)。
【0020】
図2に戻り、全ての複数のユーザ基材のオクタン価のユーザ補正係数が特定されると、サーバ20は特定されたオクタン価のユーザ補正係数に基づいて、所定のオクタン価の燃料油を得られるようにユーザ基材の配合比率を算出する(ステップS05)。なお、オクタン価の補正係数は、基材の配合比率の関数であり、ユーザ基材α、ユーザ基材β及びユーザ基材γのオクタン価をそれぞれXα、Xβ及びXγ、ユーザ基材α、ユーザ基材β及びユーザ基材γの配合比率(体積%)をそれぞれVα、Vβ及びVγ、ユーザ基材α、ユーザ基材β及びユーザ基材γのオクタン価の補正係数をそれぞれFα(Vα)、Fβ(Vβ)及びFγ(Vγ)としたとき、燃料油のオクタン価Xは下記式により表される。
X=Fα(Vα)×Xα×Vα×0.01+Fβ(Vβ)×Xβ×Vβ×0.01+Fγ(Vγ)×Xγ×Vγ×0.01
【0021】
サーバ20は、この燃料油のオクタン価Xが所定の値になるように、ユーザ基材α、ユーザ基材β及びユーザ基材γの配合比率(体積%)であるVα、Vβ及びVγをそれぞれ算出し、ユーザ端末10に送信する(ステップS06)。図5は、ユーザ端末10の表示部に表示させる、ユーザ基材の配合比率を示す画面の一例であり、燃料油の目標リサーチ法オクタン価を89とした時に、本実施形態に係る方法により提供される図3に示されるユーザ基材α、ユーザ基材β及びユーザ基材γの配合比率を示している。
【0022】
図3に示されるユーザ基材α、ユーザ基材β及びユーザ基材γのリサーチ法オクタン価を用いてリサーチ法オクタン価が89である燃料油を得たい場合、例えばユーザ基材αを55体積%、ユーザ基材βを18体積%、ユーザ基材γを27体積%で配合すれば、単純計算でオクタン価が89.1の燃料油が得られると算出される。しかしながら、この配合割合で燃料油を得た場合の実際の燃料油のオクタン価は88.1であり、レギュラーガソリンの基準である89を下回ってしまっていた。
一方、図5に示す本実施形態により算出されたユーザ基材α、ユーザ基材β及びユーザ基材γの配合比率で燃料油を得た場合のリサーチ法オクタン価は89.1であり、レギュラーガソリンの基準を達成できていた。この時のユーザ基材αのユーザ補正係数は1.03であり、ユーザ基材βのユーザ補正係数は1.12であり、ユーザ基材γのユーザ補正係数は0.92であった。
【0023】
以上の本実施形態によれば、新たな基材を用いる場合でも、また既存の基材を用いる場合でも、実際の配合前に所望のオクタン価の燃料油が得られるように、配合する基材の配合比率を提供することができる。実際に燃料油を得るために基材を配合する現場では、新たに製油所を稼働させる際使用する基材の情報は把握していてもオクタン価と配合比のみでは燃料油のオクタン価の予測ができず、所定の規格を下回らないようにオクタン価を意図的に高くなるような配合比で配合していた。しかしこの場合、得られる燃料油はオーバースペックであることが多く、資源を有効に利用できているとは言い難かった。上記の実施形態によれば、ユーザに安価に適正な品質の燃料油を提供することができる。
【0024】
また、前記実施形態において、図7に示すように、サーバ20は、ユーザ基材の基材情報と一致する参照基材の参照情報がない場合、ユーザ基材の基材情報と近い参照情報を有する複数の参照基材の参照補正係数に基づいてユーザ基材のユーザ補正係数を予測して特定してもよい(ステップS143)。図7は、サーバ20が補正データベース30を参照して、ユーザ補正係数を特定する方法の変形例を示すフローチャートである。
【0025】
当該変形例において、サーバ20は、補正データベース内にユーザ基材αのユーザ情報と一致する参照基材の参照情報があるか否かを判定する(ステップS41)。参照基材Aの参照情報は、ユーザ基材αのユーザ情報と一致している(ステップS41:YES)。そこで、ユーザ基材αの基材情報と一致した参照基材Aの参照補正係数をユーザ基材のユーザ補正係数として特定する(ステップS42)。続いて、サーバ20は、補正データベース内にユーザが入力したユーザ基材βのユーザ情報と一致する参照基材の参照情報があるか否かを判定する(ステップS41)。ユーザ基材βのユーザ情報と一致する参照基材の参照情報はない(ステップS41:NO)。そこで、ユーザ基材βの密度と近い密度を有する参照基材B、参照基材C及び参照基材Dの参照補正係数に基づいてユーザ補正係数を予測して特定する(ステップS143)。最後に、サーバ20は、補正データベース内にユーザが入力したユーザ基材γのユーザ情報と一致する参照基材の参照情報があるか否かを判定する(ステップS41)。ユーザ基材γのユーザ情報と一致する参照基材の参照情報はない(ステップS41:NO)。そこで、ユーザ基材γの密度と近い密度を有する参照基材E及び参照基材Fの参照補正係数に基づいてユーザ補正係数を予測して特定する(ステップS143)。ユーザ補正係数の予測は例えば、内挿法、外挿法及び/又はニュートン法などを用いることができる。
【0026】
この変形例によれば、補正データベース30内に保存された参照基材の参照情報とオクタン価の参照補正係数とにより、ユーザ基材のユーザ補正係数を精度高く予測することが可能となり、新たな基材を用いる場合でも、実際の配合前に所望のオクタン価の燃料油が得られるように、配合する基材の配合比率を提供することができる。
【0027】
なお、上記の実施形態では、リサーチ法オクタン価を入力させ、目標とするリサーチ法オクタン価となるように、補正係数を参照させて配合比率を算出したが、モータ法オクタン価を入力させ、目標とするモータ法オクタン価となるように、補正係数を参照させて配合比率を算出してもよい。また、あらかじめ目標オクタン価が決められている場合は、目標オクタン価を取得する工程を省略してもよい。
【0028】
また、上記の実施形態では、サーバ20は、ユーザ基材の基材情報と最も近い参照情報を有する参照基材を決定する際にユーザ基材の密度を照合していたが、少なくとも密度、パラフィン、オレフィン、ナフテン及び芳香族化合物の組成、蒸留性状及びオクタン価からなる群から選ばれる単一又は複数の指標を照合して、ユーザ基材の基材情報と最も近い参照情報を有する参照基材を決定してもよい。サーバ20が、ユーザ基材の基材情報と近い参照情報を有する参照基材を決定する際においても同様に、少なくとも密度、パラフィン、オレフィン、ナフテン及び芳香族化合物の組成、蒸留性状及びオクタン価からなる群から選ばれる単一又は複数の指標を照合して、ユーザ基材の基材情報と最も近い参照情報を有する参照基材を決定してもよい。
【0029】
上述した説明において、ステップS43およびステップS143では、ユーザ基材の基材情報と一致する参照基材の参照情報がない場合にも、ユーザ基材のユーザ補正係数を特定した。そこで、特定したユーザ基材のユーザ補正係数を参照補正係数として、ユーザ基材の基材情報を補正データベース30に蓄積させてもよい。これにより、補正データベース30に蓄積された参照情報を増やすことができ、ユーザ補正係数の特定の制度を向上させることができる。
【0030】
また、上記の実施形態において、補正データベース30に、複数種類の基材のそれぞれに応じた、密度[g/cm]、蒸気圧[kPa]、蒸留性状[℃]、総発熱量[cal/g]、PRTR対象物質濃度[vol%]、パラフィン濃度[vol%]、オレフィン濃度[vol%]、ナフテン濃度[vol%]、アロマ濃度[vol%]の補正係数の少なくとも一つを含む物性補正係数を記録させてもよく、サーバ20に、物性補正係数に基づいて、燃料油の密度[g/cm]、蒸気圧[kPa]、蒸留性状[℃]、総発熱量[cal/g]、PRTR対象物質濃度[vol%]、パラフィン濃度[vol%]、オレフィン濃度[vol%]、ナフテン濃度[vol%]、アロマ濃度[vol%]の少なくとも一つを含む燃料油の物性を算出させ、前記ユーザ端末10に送信させてもよい。この構成によれば、所望のオクタン価の燃料油を得るための配合比率を得るのみならず、得られる燃料油の物性を予測することが可能となる。
【符号の説明】
【0031】
10:ユーザ端末、20:サーバ、30:補正データベース、40:ネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7