(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】エンジン
(51)【国際特許分類】
F01P 3/02 20060101AFI20221125BHJP
F02F 1/36 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
F01P3/02 G
F01P3/02 F
F01P3/02 T
F02F1/36 A
(21)【出願番号】P 2018024977
(22)【出願日】2018-02-15
【審査請求日】2021-01-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 直人
【審査官】小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-056343(JP,A)
【文献】特開2007-162519(JP,A)
【文献】特開2007-263070(JP,A)
【文献】特開2015-081523(JP,A)
【文献】特開2017-115738(JP,A)
【文献】特開2017-155598(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0101549(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0146092(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0376978(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102007012089(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01P 3/02
F02F 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダヘッドを備えるエンジンであって、
前記シリンダヘッドに形成され、燃焼室の近傍に冷却液を案内する燃焼室冷却部と、
前記燃焼室冷却部の一部に重ねて前記シリンダヘッドに形成され、排気ポートの近傍に冷却液を案内する排気系冷却部と、
前記燃焼室冷却部と前記排気系冷却部とが重なる前記シリンダヘッドの部位に形成される切削穴からなり、前記燃焼室冷却部と前記排気系冷却部とを互いに連通させる連通流路部と、
を有し、
前記燃焼室冷却部と前記排気系冷却部とは、シリンダボアの軸線方向において互いに重ねられており、
前記排気系冷却部に導入された冷却液は、前記排気系冷却部から前記連通流路部を介して前記燃焼室冷却部に供給される、
エンジン。
【請求項2】
請求項1に記載のエンジンにおいて、
前記燃焼室冷却部は、冷却液ポンプに接続される第1入力ポートと、前記連通流路部に接続される第2入力ポートと、ラジエータに接続される第1出力ポートと、を備え、
前記排気系冷却部は、前記冷却液ポンプに接続される第3入力ポートと、前記連通流路部に接続される第2出力ポートと、を備え、
前記燃焼室冷却部には、前記冷却液ポンプから前記第1入力ポートを介して冷却液が導入され、かつ前記冷却液ポンプから前記排気系冷却部および前記第2入力ポートを介して冷却液が導入される、
エンジン。
【請求項3】
請求項1または2に記載のエンジンにおいて、
前記排気ポートは、前記燃焼室に接続される複数のブランチ部と、前記複数のブランチ部が集合するコレクタ部と、を備える、
エンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダヘッドを備えるエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンのシリンダヘッドには、燃焼室に吸入空気を案内する吸気ポートが形成され、燃焼室から排出ガスを案内する排気ポートが形成される。また、燃焼室や排気ポートの近傍には、冷却液の流路であるウォータジャケットが形成される(特許文献1参照)。このウォータジャケットに冷却液を流すことにより、燃焼室や排気ポートを適切な温度範囲に冷却することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、エンジン始動直後においては、冷却損失を低減して燃費性能を高める観点から、燃焼室の温度を早期に上昇させることが求められている。しかしながら、エンジン始動後に燃焼室を所定温度まで上昇させるためには、冷却系を循環する冷却液全体の温度上昇を待つ必要があるため、エンジンの燃焼室を早期に暖めることは困難であった。
【0005】
本発明の目的は、エンジンの燃焼室を早期に暖めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のエンジンは、シリンダヘッドを備えるエンジンであって、前記シリンダヘッドに形成され、燃焼室の近傍に冷却液を案内する燃焼室冷却部と、前記燃焼室冷却部の一部に重ねて前記シリンダヘッドに形成され、排気ポートの近傍に冷却液を案内する排気系冷却部と、前記燃焼室冷却部と前記排気系冷却部とが重なる前記シリンダヘッドの部位に形成される切削穴からなり、前記燃焼室冷却部と前記排気系冷却部とを互いに連通させる連通流路部と、を有し、前記燃焼室冷却部と前記排気系冷却部とは、シリンダボアの軸線方向において互いに重ねられており、前記排気系冷却部に導入された冷却液は、前記排気系冷却部から前記連通流路部を介して前記燃焼室冷却部に供給される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、排気系冷却部に導入された冷却液は、排気系冷却部から連通流路部を介して燃焼室冷却部に供給される。これにより、エンジンの燃焼室を早期に暖めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施の形態であるエンジンを示す概略図である。
【
図2】エンジンの冷却系の一部を示す概略図である。
【
図3】
図2の矢印A方向から燃焼室、排気ポートおよびウォータジャケットの位置を示した図である。
【
図4】シリンダヘッドを鋳造する際に用いられる中子を示す分解斜視図である。
【
図5】鋳造型に対する中子の組み付け状態を示す斜視図である。
【
図6】(a)~(c)は、ウォータジャケットの一例を示す図である。
【
図7】(a)および(b)は、ウォータジャケットの一例を示す図である。
【
図8】(a)および(b)は、シリンダヘッドの製造工程を示した部分断面図である。
【
図9】(a)および(b)は、シリンダヘッドの製造工程を示した部分断面図である。
【
図10】内部流路を流れる冷却液の経路を示す図である。
【
図12】排気ポートおよびウォータジャケットの位置を示す図である。
【
図13】(a)~(c)は、シリンダヘッドの製造工程を簡単に示した部分断面図である。
【
図14】(a)~(c)は、シリンダヘッドの製造工程を簡単に示した部分断面図である。
【
図15】(a)は椀型プラグを示す正面図であり、(b)は椀型プラグを示す底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[エンジン]
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明の一実施の形態であるエンジン10を示す概略図である。
図1に示すように、エンジン10は、一方のシリンダバンクに設けられるシリンダブロック11と、他方のシリンダバンクに設けられるシリンダブロック12と、一対のシリンダブロック11,12に支持されるクランク軸13と、を有している。各シリンダブロック11,12に形成されるシリンダボア14にはピストン15が収容されており、このピストン15にはコネクティングロッド16を介してクランク軸13が連結されている。
【0010】
各シリンダブロック11,12には、動弁機構20を備えたシリンダヘッド21,22が組み付けられている。また、各シリンダヘッド21,22には、燃焼室23に連通する吸気ポート24が形成されており、この吸気ポート24を開閉する吸気バルブ25が組み付けられている。さらに、各シリンダヘッド21,22には、燃焼室23に連通する排気ポート26が形成されており、この排気ポート26を開閉する排気バルブ27が組み付けられている。なお、吸気ポート24には、図示しない吸気マニホールドが接続されており、排気ポート26には、図示しない排気マニホールドが接続されている。
【0011】
[冷却系]
以下の説明では、一方のシリンダヘッド21の冷却構造について説明するが、他方のシリンダヘッド22についても同様の冷却構造を有することから、その説明を省略する。
【0012】
図2はエンジン10の冷却系30の一部を示す概略図である。
図2に示すように、エンジン10の冷却系30には、吸入流路31、吐出流路32および戻し流路33からなる循環流路34が設けられている。この循環流路34には、冷却液を圧送するウォータポンプ(冷却液ポンプ)35が設けられており、熱交換器であるラジエータ36が設けられている。また、循環流路34には、シリンダブロック11に形成されるウォータジャケット40が設けられており、シリンダヘッド21に形成されるウォータジャケット41,42が設けられている。ウォータジャケット40には内部流路40aが設けられており、ウォータジャケット41,42には内部流路41a,42a,42bが設けられている。
【0013】
ウォータポンプ35の吐出ポート35oから吐出された冷却液は、吐出流路32を介してウォータジャケット40~42に供給され、シリンダブロック11やシリンダヘッド21を冷却する。そして、ウォータジャケット40~42を通過して暖められた冷却液は、戻し流路33からラジエータ36を通過して冷却された後に、吸入流路31からウォータポンプ35の吸入ポート35iに吸い込まれる。このように、循環流路34に対して冷却液を流すことにより、シリンダブロック11やシリンダヘッド21を適切な温度範囲に冷却することができる。
【0014】
また、ラジエータ36とウォータポンプ35とを接続する吸入流路31には、冷却液の温度によって開閉されるサーモスタット37が設けられている。さらに、ラジエータ36およびサーモスタット37を迂回するように、戻し流路33と吸入流路31とはバイパス流路38を介して接続されている。冷却液の温度が低い場合には、サーモスタット37が閉じられて冷却液はバイパス流路38に案内される。一方、冷却液の温度が高い場合には、サーモスタット37が開かれて冷却液はラジエータ36に案内される。なお、ラジエータ36を迂回するバイパス流路38に、開閉バルブや流量制御バルブ等を設置しても良い。
【0015】
[ウォータジャケット]
鋳造品のシリンダヘッド21に形成されるウォータジャケット41,42について説明する。
図3は
図2の矢印A方向から燃焼室23、排気ポート26およびウォータジャケット41,42の位置を示した図である。
図4はシリンダヘッド21を鋳造する際に用いられる中子51a,52a,52bを示す分解斜視図であり、
図5は鋳造型に対する中子51a,52a,52bの組み付け状態を示す斜視図である。また、
図6および
図7はウォータジャケット41,42の一例を示す図である。
図6(a)はウォータジャケット41,42の平面図であり、
図6(b)はウォータジャケット41,42の左側面図であり、
図6(c)はウォータジャケット41,42の底面図である。また、
図7(a)はウォータジャケット41,42の右側面図であり、
図7(b)はウォータジャケット41,42の背面図である。
【0016】
図2および
図3に示すように、燃焼室用のウォータジャケット(燃焼室冷却部)41は、燃焼室23の近傍に形成される内部流路41aを備えている。また、排気ポート用のウォータジャケット(排気系冷却部)42は、排気ポート26の近傍に形成される内部流路42a,42bを備えている。
図3に示すように、シリンダヘッド21に形成される排気ポート26は、燃焼室23に接続される複数のブランチ部60と、これらのブランチ部60が集合するコレクタ部61と、を有している。そして、排気ポート用のウォータジャケット42は、ブランチ部60からコレクタ部61にかけて排気ポート26を覆うように形成されている。このように、排気ポート用のウォータジャケット42は、ブランチ部60とコレクタ部61とを接続する接続部62、つまり排出ガスが集中して温度上昇を招き易い接続部62を覆っている。また、排気ポート用のウォータジャケット42は、燃焼室用のウォータジャケット41の縁部に重なっている。
【0017】
鋳造品であるシリンダヘッド21に対し、燃焼室用や排気ポート用のウォータジャケット41,42を形成するため、鋳造型には複数の中子51a,52a,52bが組み付けられる。
図4および
図5に示すように、燃焼室用のウォータジャケット41を形成するため、1つの中子51aが用いられている。また、排気ポート用のウォータジャケット42を形成するため、2つの中子52a,52bが用いられている。さらに、排気ポート用のウォータジャケット42を形成する中子52a,52bは、燃焼室用のウォータジャケット41を形成する中子51aの縁部を挟んで設置されている。また、中子51a,52a,52bには複数の巾木53が形成されており、これらの巾木53を図示しない鋳造型の凹部に組み付けることにより、鋳造型内の所定位置に中子51a,52a,52bが組み付けられる。なお、鋳造型に組み込まれる中子51a,52a,52bは、例えばレジンを配合した砂を用いて造型される。
【0018】
続いて、中子51a,52a,52bによって形成される内部流路41a,42a,42bについて説明する。
図6および
図7に示すように、ウォータジャケット41,42が備える内部流路41a,42a,42bの開口部43、つまり中子51a,52a,52bの巾木53に相当する部位には、開口部43を密閉する椀型プラグ44が組み付けられる。これにより、後述する入力ポートや出力ポートを除いて内部流路41a,42a,42bを密閉することができ、ウォータジャケット41,42を適切に機能させることができる。また、内部流路41a,42a,42bの開口部43に対して椀型プラグ44を組み付ける際には、開口部43およびその近傍を切削してから椀型プラグ44が圧入される。このように、開口部43およびその近傍を切削することにより、内部流路41a,42a,42bが互いに接近する部位においては、内部流路41a,42a,42bを互いに連通させることができる。図示する例では、符号αで示した部位において内部流路42a,42bが互いに連通しており、符号βで示した部位において内部流路41a,42aが互いに連通している。
【0019】
図7(b)に示すように、ウォータジャケット41には、内部流路41aに連通する入力ポート80および出力ポート82が形成されている。後述するように、ウォータジャケット41の入力ポート80には吐出流路32が接続されており、ウォータジャケット41の出力ポート82には戻し流路33が接続されている。また、ウォータジャケット42には、内部流路42bに連通する入力ポート83が形成されている。後述するように、ウォータジャケット42の入力ポート83には吐出流路32が接続されている。
【0020】
[製造工程]
シリンダヘッド21の製造工程について説明する。
図8および
図9はシリンダヘッド21の製造工程を示した部分断面図である。
図8および
図9には
図6(a)のA-A線に沿う部分断面図が示されている。以下の説明では、内部流路41a,42aの連通箇所について説明するが、内部流路42a,42bの連通箇所についても同様の工程によって製造されることから、その説明を省略する。
【0021】
図8(a)に示すように、シリンダヘッド21の鋳造型70に対し、内部流路41a,42aを形成するための中子51a,52aが組み付けられ、
図8(b)に示すように、鋳造型70にアルミニウム合金等の溶湯Mが注ぎ込まれる。その後、
図9(a)に示すように、鋳造型70を外した後に中子51a,52aが除去され、破線Xで示すように、開口部43およびその近傍がリーマ等によって切削される。これにより、
図9(b)に示すように、内部流路41a,42aを隔てていた隔壁71が除去されて連通流路部72になり、内部流路41aと内部流路42aとは連通流路部72を介して互いに連通する。
【0022】
[冷却液経路]
図10は内部流路41a,42a,42bを流れる冷却液の経路を示す図である。
図10に矢印FL1で示すように、入力ポート80から内部流路41aに流入した冷却液は、内部流路41aを通過しながら燃焼室23を冷却した後に出力ポート82から流れ出る。また、
図10に矢印FL2で示すように、入力ポート83から内部流路42bに流入した冷却液は、矢印αで示す連通箇所から内部流路42aに流入する。そして、内部流路42a,42bを通過しながら排気ポート26を冷却した冷却液は、矢印βで示す連通箇所つまり連通流路部72から内部流路41aに流入し、内部流路41aを通過して出力ポート82から流れ出る。このように、燃焼室用のウォータジャケット41には、2つの経路FL1,FL2に沿って冷却液が流れている。
【0023】
図11は冷却系30を示す回路図である。なお、
図11において、
図2に示す部品や部位と同様の部品や部位については、同一の符号を付してその説明を省略する。
図11に示すように、燃料室用のウォータジャケット41は、吐出流路32を介してウォータポンプ35に接続される入力ポート(第1入力ポート)80と、連通流路部72に接続される入力ポート(第2入力ポート)81と、戻し流路33を介してラジエータ36に接続される出力ポート(第1出力ポート)82と、を有している。また、排気ポート用のウォータジャケット42は、吐出流路32を介してウォータポンプ35に接続される入力ポート(第3入力ポート)83と、連通流路部72に接続される出力ポート(第2出力ポート)84と、を有している。この回路構造により、燃焼室用のウォータジャケット41には、ウォータポンプ35から入力ポート80を介して冷却液が導入され、かつウォータポンプ35から排気ポート用のウォータジャケット42および入力ポート83を介して冷却液が導入される。
【0024】
このように、排気ポート用のウォータジャケット42を通過した冷却液を、燃焼室用のウォータジャケット41に導入したので、エンジン始動後において燃焼室23を早期に暖めることができる。つまり、排気ポート用のウォータジャケット42は、燃焼室用のウォータジャケット41よりも温度が上がり易いことから、排気ポート用のウォータジャケット42によって暖められた冷却液が、燃焼室用のウォータジャケット41に供給されている。これにより、暖かな冷却液によって燃焼室23を素早く暖めることができるため、エンジン10を暖機運転する際の冷却損失を低減することができ、エンジン10の燃費性能を向上させることができる。
【0025】
[ウォータジャケットの内部流路構造]
続いて、排気ポート用のウォータジャケット42が備える内部流路42aの構造について説明する。
図12は排気ポート26およびウォータジャケット42の位置を示す図である。また、
図13および
図14はシリンダヘッド21の製造工程を簡単に示した部分断面図である。
図13および
図14には
図12のA-A線に沿う部分断面図が示されている。なお、
図13および
図14においては、前述した中子51a,52bを省略して図示している。
【0026】
図13(a)に示すように、シリンダヘッド21の鋳造型70に対し、内部流路42aを形成するための中子52aが組み付けられるとともに、排気ポート26を形成するための中子90が組み付けられている。続いて、
図13(b)に示すように、鋳造型70にアルミニウム合金等の溶湯Mが注ぎ込まれ、
図13(c)に示すように、鋳造型70を外した後に中子52a,90が除去される。その後、
図14(a)に示すように、内部流路42aの開口部43およびその近傍がリーマ等の切削工具91によって切削され、内部流路42aを区画するシリンダヘッド21の流路壁部92には貫通穴93が形成される。つまり、
図14(b)に示すように、シリンダヘッド21には、ウォータジャケット42に開口する貫通穴93を備えた流路壁部92が形成される。そして、
図14(b)および(c)に示すように、流路壁部92の貫通穴93には、前述した椀型プラグ44の1つとして椀型プラグ94が圧入等によって取り付けられる。
【0027】
ここで、
図15(a)は椀型プラグ94を示す正面図であり、
図15(b)は椀型プラグ94を示す底面図である。
図15(a)および(b)に示すように、椀型プラグ94は、略円柱形状のプラグ本体94aと、このプラグ本体94aに設けられる整流板94bと、を有している。この椀型プラグ94を流路壁部92の貫通穴93に取り付けることにより、ウォータジャケット42の内部流路42aに整流板94bを挿入することができる。これにより、整流板94bによって冷却液の流れを整流するとともに、内部流路42aの流路断面積を縮小することができるため、冷却液の流速を上げて冷却性能を高めることができる。
【0028】
すなわち、鋳造品であるシリンダヘッド21において、内部流路42aに対して整流板を形成したり、内部流路42aの流路断面積を縮小したりするためには、内部流路42a用の中子52aを複雑に造型することが必要である。しかしながら、複雑な中子52aを用いてシリンダヘッド21を製造することは、シリンダヘッド21の生産性を低下させる要因であった。そこで、図示するシリンダヘッド21においては、内部流路42aの開口部43を閉塞する椀型プラグ94に対し、内部流路42aに挿入される整流板94bを設けている。これにより、内部流路42aつまり中子52aを複雑に形成することなく、内部流路42a内に整流板94bを組み込むことがきるため、シリンダヘッド21の生産性を確保しつつ、ウォータジャケット42を複雑に形成することができる。
【0029】
前述の説明では、椀型プラグ94の先端に凸部として整流板94bを設けているが、椀型プラグ94の凸部としては、平板状の整流板94bに限られることはなく、例えば湾曲する整流板や円柱状の突起部であっても良い。また、流路壁部92の貫通穴93を閉塞するプラグ部材として、丸みを帯びた椀型プラグ94を用いているが、これに限られることはなく、他の形状のプラグ部材であっても良い。さらに、貫通穴93に対して椀型プラグ94を圧入しているが、これに限られることはなく、貫通穴93およびプラグ本体94aにネジ部を形成し、貫通穴93に対して椀型プラグ94をねじ込んでも良い。
【0030】
また、
図12に示すように、整流板94bを備えた椀型プラグ94は、排気ポート26の接続部62の近傍に対向する位置に取り付けられている。前述したように、排気ポート26の接続部62とは、ブランチ部60とコレクタ部61とを接続する部位であり、排出ガスが集中して高温になり易い部位である。このように、高温になり易い接続部62の近傍に整流板94bを取り付けることにより、内部流路42aにおける接続部62の冷却部位において冷却液の流速を高めることができ、排気ポート26の接続部62を積極的に冷却することができる。
【0031】
図12に示した例では、整流板94bを備えた椀型プラグ94を、排気ポート26の接続部62の近傍に対向する位置に取り付けているが、これに限られることはない。例えば、
図12に二点鎖線Pで示すように、整流板94bを備えた椀型プラグ94を、排気ポート26の接続部62に対向する位置に取り付けても良い。また、
図12に示すように、図示するウォータジャケット42においては、排気ポート26の他の接続部62を積極的に冷却するため、中子52aに対してスリットを形成することにより、鋳造された整流壁95を接続部62の近傍に形成している。
【0032】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。前述の説明では、水平対向エンジン10に本発明を適用しているが、これに限られることはなく、直列エンジンやV型エンジン等に本発明を適用しても良い。また、図示する例では、1つの排気ポート26に対して4本のブランチ部60を設けているが、これに限られることはなく、1つの排気ポートに対して2本や3本のブランチ部を設けても良く、1つの排気ポートに対して5本以上のブランチ部を設けても良い。
【符号の説明】
【0033】
10 エンジン
21,22 シリンダヘッド
23 燃焼室
26 排気ポート
35 ウォータポンプ(冷却液ポンプ)
36 ラジエータ
41 ウォータジャケット(燃焼室冷却部)
42 ウォータジャケット(排気系冷却部)
60 ブランチ部
61 コレクタ部
72 連通流路部
80 入力ポート(第1入力ポート)
81 入力ポート(第2入力ポート)
82 出力ポート(第1出力ポート)
83 入力ポート(第3入力ポート)
84 出力ポート(第2出力ポート)