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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】回転電機用ステータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/18 20060101AFI20221125BHJP
【FI】
H02K1/18 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018053048
(22)【出願日】2018-03-20
(65)【公開番号】P2019165582
(43)【公開日】2019-09-26
【審査請求日】2020-12-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】服部 昭仁
(72)【発明者】
【氏名】小山 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】加地 雅哉
【審査官】若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-148092(JP,A)
【文献】特開2014-003881(JP,A)
【文献】特開平09-032784(JP,A)
【文献】特開2007-221854(JP,A)
【文献】国際公開第2009/124849(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層方向に電磁鋼板を積層して構成されたコアと、
前記コアを収容するケースと、
前記積層方向に前記コアを貫通するボルト挿通孔に挿通されて前記コアを前記ケースの支持部に締結するボルトと、
前記積層方向における前記支持部側とは反対側の前記コアの端面である第1端面と前記ボルトの頭部との間に挟まれたワッシャ部材と、を備え、
前記積層方向における前記支持部側を積層方向支持部側として、
前記ワッシャ部材は、前記第1端面に沿って配置される本体部と、前記本体部から前記積層方向支持部側に突出した突出部と、を有し、
前記コアは、前記積層方向に沿うコア軸心を基準とする円筒状の基準外周面と、前記基準外周面から前記コア軸心の径方向の外側に突出すると共に前記積層方向に延在する突条部と、を有し、
前記突条部に前記ボルト挿通孔が形成され、
前記突条部における前記ボルト挿通孔以外の部分に、前記積層方向に沿う面であって、前記積層方向に沿う積層方向視で前記ボルト挿通孔を中心とする仮想円に交差する方向に沿う対向面が形成され、
前記対向面は、前記コア軸心周りの方向を周方向として、前記周方向の両側を向くように一対設けられた前記突条部の外面であって、
前記突出部は、一対の前記対向面に対向するように配置されている、回転電機用ステータ。
【請求項2】
前記突出部は、前記突条部における前記径方向の最も外側の外面にも対向するように配置されている、請求項1に記載の回転電機用ステータ。
【請求項3】
積層方向に電磁鋼板を積層して構成されたコアと、
前記コアを収容するケースと、
前記積層方向に前記コアを貫通するボルト挿通孔に挿通されて前記コアを前記ケースの支持部に締結するボルトと、
前記積層方向における前記支持部側とは反対側の前記コアの端面である第1端面と前記ボルトの頭部との間に挟まれたワッシャ部材と、を備え、
前記積層方向における前記支持部側を積層方向支持部側として、
前記ワッシャ部材は、前記第1端面に沿って配置される本体部と、前記本体部から前記積層方向支持部側に突出した突出部と、を有し、
前記コアは、前記積層方向に沿うコア軸心を基準とする円筒状の基準外周面と、前記基準外周面から前記コア軸心の径方向の外側に突出すると共に前記積層方向に延在する突条部と、を有し、
前記突条部に前記ボルト挿通孔が形成され、
前記コアにおける前記ボルト挿通孔以外の部分に、前記積層方向に沿う面であって、前記積層方向に沿う積層方向視で前記ボルト挿通孔を中心とする仮想円に交差する方向に沿う対向面が形成され、
前記突出部は、前記対向面に対向するように配置され、
前記コアにおける前記ボルト挿通孔よりも前記コア軸心の径方向の内側に、前記積層方向に窪んだ凹部が形成され、
前記凹部の少なくとも一部は、前記コアの前記突条部に形成され、
前記突出部が前記凹部に挿入されている、回転電機用ステータ。
【請求項4】
前記凹部は、前記コアを前記積層方向に貫通している貫通孔である、請求項3に記載の回転電機用ステータ。
【請求項5】
前記突出部は、前記対向面に接触することで前記ワッシャ部材の回転を規制する、請求項1から4のいずれか一項に記載の回転電機用ステータ。
【請求項6】
前記ワッシャ部材は、前記ケースに接触していない、請求項1から5のいずれか一項に記載の回転電機用ステータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層方向に電磁鋼板を積層して構成されたコアを備えた回転電機用ステータに関する。
【背景技術】
【0002】
以下、背景技術について説明する。以下の説明において、かっこ書きの符号又は名称は、先行技術文献における符号又は名称とする。かかる回転電機用ステータの従来例が、特開2016-086555号公報(特許文献1)に記載されている。特許文献1の回転電機用ステータは、積層方向に電磁鋼板(20)を積層して構成されたコア(鉄心10)と、コアを収容するケース(12)と、ボルト挿通孔(ボルト孔24)に挿通されてコアをケースの支持部に締結するボルト(締結ボルト14)と、ボルトの頭部とコアの端面との間に挟まれたワッシャ部材(フランジ付ブッシュ32)と、を備えている。ワッシャ部材は、端面に沿って配置されるフランジ部36と、ボルト挿通孔に挿入させる筒部34と、を備えている。そして、このようなワッシャ部材を用いることで、ボルトを締結した場合にボルトの頭部がワッシャ部材に対して滑ることで、ボルトの回転力がコアの端面に伝わることによる電磁鋼板の変形を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-086555
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の回転電機用ステータは、ボルトの胴部とボルト挿通孔の内面との間に、筒部34を挿入する必要があるため、ボルト挿通孔の径を大きくする必要があり、これによりコアの大型化を招いていた。また、ボルトを締結する際のトルクが大きい場合には、ワッシャ部材がボルトの頭部と供に回転する可能性があり、これにより電磁鋼板の変形が生じる可能性を無くすことは困難であった。
【0005】
そこで、コアの大型化を回避しながらコアを構成する電磁鋼板の変形が生じる可能性を低減できる回転電機用ステータの実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記に鑑みた、回転電機用ステータの特徴構成は、積層方向に電磁鋼板を積層して構成されたコアと、前記コアを収容するケースと、前記積層方向に前記コアを貫通するボルト挿通孔に挿通されて前記コアを前記ケースの支持部に締結するボルトと、前記積層方向における前記支持部側とは反対側の前記コアの端面である第1端面と前記ボルトの頭部との間に挟まれたワッシャ部材と、を備え、前記積層方向における前記支持部側を積層方向支持部側として、前記ワッシャ部材は、前記第1端面に沿って配置される本体部と、前記本体部から前記積層方向支持部側に突出した突出部と、を有し、前記コアにおける前記ボルト挿通孔以外の部分又は前記ケースに、前記積層方向に沿う面であって、前記積層方向に沿う積層方向視で前記ボルト挿通孔を中心とする仮想円に交差する方向に沿う対向面が形成され、前記突出部は、前記対向面に対向するように配置されている点にある。
【0007】
この特徴構成によれば、コアの第1端面とボルトの頭部との間にワッシャ部材の本体部が挟まれ、更に、ワッシャ部材の突出部が対向面に接触してコアに対する相対回転が規制される。これにより、ボルトを締結する際には、ボルトの頭部とワッシャ部材の本体部とが相対回転することになり、ボルトの頭部がコアの第1端面に接触した状態で相対回転することが回避される。従って、ボルトの回転力がコアの第1端面に伝わることによって電磁鋼板の変形が生じる可能性を低減することができる。また、対向面は、コアにおけるボルト挿通孔以外の部分又はケースに形成されているため、ワッシャ部材を配置するためにボルト挿通孔の径を大きくする必要がなく、これによるコアの大型化を回避できる。このように、上記構成によれば、コアの大型化を回避しながらコアを構成する電磁鋼板の変形が生じる可能性を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第一の実施形態における回転電機用ステータの平面図
図2】第一の実施形態における突条部及びワッシャ部材を示す平面図
図3】第一の実施形態におけるコアをボルトで締結した状態を示す平面図
図4】第一の実施形態におけるワッシャ部材を示す斜視図
図5】第一の実施形態におけるコアをボルトで締結した状態を示す側断面図
図6】第二の実施形態における突条部及びワッシャ部材を示す平面図
図7】第二の実施形態におけるコアをボルトで締結した状態を示す平面図
図8】第二の実施形態におけるワッシャ部材を示す斜視図
図9】第二の実施形態におけるコアをボルトで締結した状態を示す側断面図
図10】第三の実施形態における突条部及びワッシャ部材を示す平面図
図11】第三の実施形態におけるコアをボルトで締結した状態を示す平面図
図12】第三の実施形態におけるワッシャ部材を示す斜視図
図13】別の実施形態におけるワッシャ部材を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.第一の実施形態
回転電機用ステータSの第一の実施形態について、図1から図5を用いて説明する。
図1及び図5に示すように、回転電機用ステータSは、軸方向Lに沿って複数枚の電磁鋼板1を積層して構成されたコア2と、コア2を収容するケース3と、軸方向Lにコア2を貫通するボルト挿通孔12に挿通されてコア2をケース3の支持部4に締結するボルト5と、コア2とボルト5の頭部5Aとの間に挟まれたワッシャ部材6と、を備えている。尚、コア2の軸心が沿う方向を軸方向Lと称している。以下、軸方向Lに直交する方向を径方向Rと称し、軸方向L周りの方向を周方向Cと称して説明する。また、軸方向Lにおけるコア2に対してボルト5の頭部5Aが存在するボルト頭部側を軸方向第1側L1と称し、その反対側を軸方向第2側L2と称する。
【0010】
図1に示すように、コア2は、軸方向L視で円環状に形成されており、コア2の径方向内側R1の部分には、周方向Cに配列された複数のティース8を有している。これらのティース8に導線(図示せず)が巻回されてコイルが形成される。このコイルとコア2とにより、回転電機用ステータSの機能が実現される。コア2を形成する複数の電磁鋼板1の夫々は、コア2の軸方向L視の形状と同一の形状である。電磁鋼板1の表面には絶縁層が形成され、電磁鋼板1同士が電気的に絶縁されている。本例では、軸方向Lに積層された複数の電磁鋼板1は、その外周面の一部において軸方向Lに沿って溶接されることにより一体化されている。尚、軸方向Lは、積層方向に相当する。また、軸方向第2側L2が、積層方向における支持部4側に相当し、軸方向第1側L1が、積層方向における支持部4側とは反対側に相当する。
【0011】
コア2は、軸方向Lに沿うコア軸心P1を基準とする円筒状の基準外周面9と、基準外周面9から径方向外側R2に突出する突条部10と、を有している。基準外周面9は、コア2における複数のティース8に対して径方向外側R2の部分であるバックヨーク部11の径方向外側R2を向く外周面に相当する。突条部10は、軸方向Lに延在しており、周方向Cに複数形成されている。図2及び図5に示すように、突条部10には、軸方向Lにコア2を貫通するボルト挿通孔12が形成されている。本実施形態では、周方向Cに等間隔で3箇所に突条部10が形成されている。そして、突条部10の夫々にボルト挿通孔12が形成されており、コア2には、3つのボルト挿通孔12が形成されている。ボルト挿通孔12は、基準外周面9より径方向外側R2に形成されている。
【0012】
図2に示すように、突条部10は、軸方向L視で外面が円弧状に形成された外側部分14と、径方向Rにおいて外側部分14とバックヨーク部11との間に位置する内側部分15と、を有している。本例では、外側部分14の外面に沿う円弧の中心は、ボルト挿通孔12の中心と一致している。内側部分15の外面は、外側部分14の外面と基準外周面9とに繋がっており、これらの面と繋がる部分以外は軸方向L視で直線状に形成されている。
【0013】
また本例では、突条部10には、ボルト挿通孔12に加えて、軸方向Lにコア2を貫通する貫通孔13が形成されている。この貫通孔13は、ボルト挿通孔12と径方向Rに並ぶ状態でボルト挿通孔12より径方向内側R1に形成されている。つまり、貫通孔13は、突条部10の内側部分15に形成されている。なお、本例における貫通孔13は、コア2の軽量化のために設けられている。
【0014】
図1に示されるように、円環状のコア2の径方向内側R1には、ロータ21が配置される。ロータ21は、ロータシャフト22と一体となっており、ロータシャフト22と共に回転する。ロータシャフト22は、回転電機が電動機として機能するとき出力シャフトとなり、発電機として機能するときには入力シャフトとなる。
【0015】
図5に示されるように、ケース3は、コア2に対して軸方向第2側L2に位置してボルト5が螺合される雌ねじ部26が形成された支持部4と、コア2に対して径方向外側R2に位置する壁部27と、を有している。支持部4と壁部27とは一体に形成されている。支持部4には複数の雌ねじ部26が形成されている。各雌ねじ部26は、コア2の複数のボルト挿通孔12のそれぞれに対応する位置に形成されている。
【0016】
図1図2に示すように、ケース3は、突条部10に近接して配置された近接部分3Aを有している。近接部分3Aは、ボルト挿通孔12の中心から当該近接部分3Aの内面まで距離が、ボルト挿通孔12の中心からワッシャ部材6の最も外側の部分までの距離より短くなる形状及び位置に設けられている。本例では、近接部分3Aの内面は、軸方向L視で、突条部10の外側部分14を囲む凹状に形成されている。
【0017】
次に、ワッシャ部材6について説明する。図5に示すように、コア2の軸方向第1側L1を向く面を第1端面17として、ワッシャ部材6は、コア2の第1端面17とボルト5の頭部5Aとの間に挟まれた状態で設置される。ワッシャ部材6は、第1端面17に沿って配置される本体部31と、本体部31から軸方向第2側L2に突出した突出部32と、を有する。本実施形態では、一例として、突出部32は、本体部31からの軸方向第2側L2への突出量が、コア2の軸方向Lの厚みの1/3程度となるように形成されている。
【0018】
また本実施形態では、突出部32は、ボルト挿通孔12を挟んで一対設けられている。説明を加えると、突出部32は、本体部31における周方向Cの一端部から軸方向第2側L2に突出する第1突出部32Aと、本体部31における周方向Cの他端部から軸方向第2側L2に突出する第2突出部32Bと、を有している。
【0019】
ワッシャ部材6は、本体部31と第1突出部32Aと第2突出部32Bとにより、径方向R視で逆U字状に形成されている。第1突出部32Aは、突条部10に対して周方向Cの一方側に隣接する状態で配置され、第2突出部32Bは、突条部10に対して周方向Cの他方側に隣接する状態で配置されている。本体部31には、軸方向Lに貫通するワッシャ孔33が形成されており、ボルト5を雌ねじ部26に結合する場合に、ボルト5がワッシャ孔33に挿通される。
【0020】
図2図3、及び図5に示すように、突出部32は、対向面Fに対向するように配置されている。説明を加えると、コア2におけるボルト挿通孔12以外の部分に、軸方向Lに沿う面であって、軸方向L視でボルト挿通孔12を中心とする仮想円A(図3参照)に交差する方向に沿う対向面F(以下、第1対向面F1と称する)が形成されている。また、本実施形態では、ケース3にも、軸方向Lに沿う面であって、仮想円Aに交差する方向に沿う対向面F(以下、第2対向面F2と称する)が形成されている。本実施形態では、コア2における内側部分15の外面により第1対向面F1が形成されている。また、ケース3における近接部分3Aの内面により第2対向面F2が形成されている。なお、仮想円Aは、軸方向L視でボルト挿通孔12を中心とする任意の半径の円である。本例では、ボルト挿通孔12とワッシャ孔33との位置を合せた状態でボルト挿通孔12を中心にワッシャ部材6を回転させた場合に、軸方向L視でワッシャ部材6の最も外側の部分が移動する軌跡を仮想円Aとしている。そして、突出部32は、ボルト挿通孔12を中心とする回転方向において、対向面Fと対向するように配置されている。
【0021】
図5に示すように、コア2の軸方向第2側L2を向く面である第2端面18をケース3の支持部4に支持させた状態で、ボルト5が、ワッシャ孔33及びボルト挿通孔12に挿通され、雌ねじ部26に螺合している。これにより、ボルト5がコア2とケース3とを締結し、コア2は、ケース3の支持部4とワッシャ部材6及びボルト5の頭部5Aとにより軸方向Lに挟持された状態でケース3に固定される。そして、ワッシャ部材6がボルト挿通孔12を中心に時計回りに回転した場合には、第1突出部32Aが第2対向面F2に接触し、第2突出部32Bが第1対向面F1に接触して、ワッシャ部材6の回転が規制される。また、ワッシャ部材6がボルト挿通孔12を中心に反時計回りに回転した場合には、第1突出部32Aが第1対向面F1に接触し、第2突出部32Bが第2対向面F2に接触して、ワッシャ部材6の回転が規制される。
【0022】
2.第二の実施形態
次に、回転電機用ステータSの第二の実施形態について、図6から図9を用いて説明する。本実施形態では、ワッシャ部材6の形状が異なる点で、上記第一の実施形態とは異なる。以下では、本実施形態に係るワッシャ部材6について、上記第一の実施形態との相違点を中心として説明する。なお、特に説明しない点については、上記第一の実施形態と同様とする。
【0023】
図6から図9に示すように、本実施形態のワッシャ部材6の突出部32は、上記第一の実施形態における第1突出部32Aと第2突出部32Bとに代えて、第3突出部32Cを備えている。また、コア2におけるボルト挿通孔12以外の部分には、軸方向Lに窪んだ凹部35が形成されている。本実施形態では、この凹部35として、上記第一の実施形態において説明した貫通孔13を利用している。貫通孔13の第1端面17側の部分は、第1端面17から軸方向第2側L2に向けて窪んだ凹部35とみなすことができる。そして、第3突出部32Cは、貫通孔13(凹部35)に軸方向第1側L1から挿入された状態で配置されている。
【0024】
本実施形態では、図7に示すように、貫通孔13の内面により対向面Fが形成されている。この対向面Fは、コア2におけるボルト挿通孔12以外の部分に形成された第1対向面F1に相当する。
【0025】
図9に示すように、本実施形態では、ボルト挿通孔12は、ティース8に導線(図示せず)を巻回することで形成されたコイルのコイルエンド36と軸方向L視で重ならない位置(コイルエンド36より径方向外側R2)に配置されている。これに対して、貫通孔13(凹部35)は、コイルエンド36と軸方向L視で重なる位置に配置されている。このように配置することで、ボルト5及びワッシャ部材6がコイルと短絡することを防止しつつ、貫通孔13(凹部35)を設けたことによるコア2の大型化も抑制できる。更に、本実施形態では、コア2の軽量化のために設けられた貫通孔13を、第3突出部32が挿入される凹部35として利用している。そのため、凹部35を別途設ける場合に比べて、コア2の大型化を抑制できている。
【0026】
本実施形態では、ワッシャ部材6がボルト挿通孔12を中心に時計回りに回転した場合、及び、ワッシャ部材6がボルト挿通孔12を中心に反時計回りに回転した場合のいずれの場合でも、第3突出部32Cが第1対向面F1に接触して、ワッシャ部材6の回転が規制される。
【0027】
3.第三の実施形態
次に、回転電機用ステータSの第三の実施形態について、図10から図12を用いて説明する。本実施形態では、ワッシャ部材6の形状が異なる点で、上記第一及び第二の実施形態とは異なる。以下では、本実施形態に係るワッシャ部材6について、上記第一及び第二の実施形態との相違点を中心として説明する。なお、特に説明しない点については、上記第一の実施形態と同様とする。
【0028】
図10から図12に示すように、本実施形態のワッシャ部材6は、突出部32として第4突出部32Dを備えている。第4突出部32Dは、軸方向L視で内側部分15の外面に沿う一対の直線状の部分と外側部分14の外面に沿う円弧状の部分とを有しており、これらの部分により、軸方向L視でU字状に形成されている。
【0029】
本実施形態では、ワッシャ部材6がボルト挿通孔12を中心に時計回りに回転した場合に、第4突出部32Dにおける一対の直線状の部分の一方がコア2の第1対向面F1に接触し、ワッシャ部材6がボルト挿通孔12を中心に反時計回りに回転した場合に、第4突出部32Dにおける一対の直線状の部分の他方がコア2の第1対向面F1に接触して、ワッシャ部材6の回転が規制される。
【0030】
4.その他の実施形態
次に、回転電機用ステータSのその他の実施形態について説明する。
【0031】
(1)上記した第1の実施形態では、第1突出部32Aと第2突出部32Bとを有するワッシャ部材6を示し、上記した第2の実施形態では、第3突出部32Cを有するワッシャ部材6を示し、上記した第3の実施形態では、第4突出部32Dを有するワッシャ部材6を示したが、ワッシャ部材6は、対向面Fに対向するように配置されている突出部32を有していればよく、上記した第1~第3実施形態のワッシャ部材6とは異なる形状としてもよい。例えば、図13に示すように、ワッシャ部材6が、第1突出部32Aと第2突出部32Bとのうちの第1突出部32Aのみを有してもよい。この場合において、第1突出部32Aは、上記第1の実施形態と同様の位置に配置されると好適である。或いは、ワッシャ部材6が、第1突出部32Aと第2突出部32Bと第3突出部32Cとを有してもよい。
【0032】
(2)上記した第1の実施形態では、ワッシャ部材6が第1対向面F1と第2対向面F2との双方に接触するように構成したが、ワッシャ部材6が、第1対向面F1と第2対向面F2との何れか一方にのみ接触するように構成してもよい。具体的には、ワッシャ部材6がボルト挿通孔12を中心に時計回りに回転した場合に、第2突出部32Bが第1対向面F1に接触するが、第1突出部32Aが第2対向面F2に接触しないようにし、ワッシャ部材6がボルト挿通孔12を中心に反時計回りに回転した場合に、第1突出部32Aが第1対向面F1に接触するが、第2突出部32Bが第2対向面F2に接触しないようにして、ワッシャ部材6が、第1対向面F1と第2対向面F2とのうちの第1対向面F1にのみ接触するように構成してもよい。逆に、ワッシャ部材6がボルト挿通孔12を中心に時計回りに回転した場合に、第1突出部32Aが第2対向面F2に接触するが、第2突出部32Bが第1対向面F1に接触しないようにし、ワッシャ部材6がボルト挿通孔12を中心に反時計回りに回転した場合に、第2突出部32Bが第2対向面F2に接触するが、第1突出部32Aが第1対向面F1に接触しないようにして、ワッシャ部材6が、第1対向面F1と第2対向面F2とのうちの第2対向面F2にのみ接触するように構成してもよい。
【0033】
(3)上記した第1の実施形態では、コア2におけるボルト挿通孔12以外の部分と、ケース3と、の双方に対向面Fを形成したが、近接部分3Aの内面のボルト挿通孔12に対する離間距離を大きくして、ケース3が対向面Fを備えない構成としてもよい。
【0034】
(4)上記した第1の実施形態及び第3の実施形態では、突条部10に貫通孔13を形成したが、貫通孔13を形成しなくてもよい。
【0035】
(5)上記した第2の実施形態では、凹部35として貫通孔13を利用したが、貫通孔13とは別に凹部35を形成してもよい。この場合、凹部35が、軸方向第1側L1に開口すると共にコア2を軸方向Lに貫通しない窪み状に形成してもよい。また、この場合においても、貫通孔13を突条部10以外に形成してもよい。
【0036】
(6)なお、上述した各実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。従って、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
【0037】
5.上記実施形態の概要
以下、上記において説明した回転電機用ステータ(S)の概要について説明する。
【0038】
回転電機用ステータ(S)は、積層方向(L)に電磁鋼板(1)を積層して構成されたコア(2)と、前記コア(2)を収容するケース(3)と、前記積層方向(L)に前記コア(2)を貫通するボルト挿通孔(12)に挿通されて前記コア(2)を前記ケース(3)の支持部(4)に締結するボルト(5)と、前記積層方向(L)における前記支持部(4)側とは反対側の前記コア(2)の端面である第1端面(17)と前記ボルト(5)の頭部(5A)との間に挟まれたワッシャ部材(6)と、を備え、前記積層方向(L)における前記支持部(4)側を積層方向支持部側(L2)として、前記ワッシャ部材(6)は、前記第1端面(17)に沿って配置される本体部(31)と、前記本体部(31)から前記積層方向支持部側(L2)に突出した突出部(32)と、を有し、前記コア(2)における前記ボルト挿通孔(12)以外の部分又は前記ケース(3)に、前記積層方向(L)に沿う面であって、前記積層方向(L)に沿う積層方向(L)視で前記ボルト挿通孔(12)を中心とする仮想円(A)に交差する方向に沿う対向面(F)が形成され、前記突出部(32)は、前記対向面(F)に対向するように配置されている。
【0039】
この構成によれば、コア(2)の第1端面(17)とボルト(5)の頭部(5A)との間にワッシャ部材(6)の本体部(31)が挟まれ、更に、ワッシャ部材(6)の突出部(32)が対向面(F)に接触してコア(2)に対する相対回転が規制される。これにより、ボルト(5)を締結する際には、ボルト(5)の頭部(5A)とワッシャ部材(6)の本体部(31)とが相対回転することになり、ボルト(5)の頭部(5A)がコア(2)の第1端面(17)に接触した状態で相対回転することが回避される。従って、ボルト(5)の回転力がコア(2)の第1端面(17)に伝わることによって電磁鋼板(1)の変形が生じる可能性を低減することができる。また、対向面(F)は、コア(2)におけるボルト挿通孔(12)以外の部分又はケース(3)に形成されているため、ワッシャ部材(6)を配置するためにボルト挿通孔(12)の径を大きくする必要がなく、これによるコア(2)の大型化を回避できる。このように、上記構成によれば、コア(2)の大型化を回避しながらコア(2)を構成する電磁鋼板の変形が生じる可能性を低減できる。
【0040】
ここで、前記コア(2)は、前記積層方向(L)に沿うコア軸心(P1)を基準とする円筒状の基準外周面(9)と、前記基準外周面(9)から前記コア軸心(P1)の径方向外側(R2)に突出すると共に前記積層方向(L)に延在する突条部(10)と、を有し、前記突条部(10)に前記ボルト挿通孔(12)が形成されていると好適である。
【0041】
この構成によれば、突条部(10)にボルト挿通孔(12)を形成することで、基準外周面(9)よりも径方向外側(R2)にボルト挿通孔(12)が形成されるため、ボルト挿通孔(12)をコア(2)における磁気回路の形成の妨げとなり難くすることができる。
【0042】
また、前記突出部(32)が、前記ボルト挿通孔(12)を挟んで一対設けられていると好適である。
【0043】
この構成によれば、一対の突出部(32)のそれぞれがコア(2)又はケース(3)に接触することになる。従って、一対の突出部(32)が荷重を分散して支持することにより、各突出部(32)がコア(2)又はケース(3)に対して与える荷重を小さくすることができる。よって、突出部(32)が接触することによってコア(2)やケース(3)の変形が生じる可能性を低減できる。
【0044】
また、前記コア(2)における前記ボルト挿通孔(12)以外の部分又は前記ケース(3)に、前記積層方向(L)に窪んだ凹部(35)が形成され、前記突出部(32)が、前記凹部(35)に挿入されていると好適である。
【0045】
この構成によれば、ワッシャ部材(6)を、積層方向(L)視でコア(2)の外縁よりも外側に突出しない状態で設置することができる。従って、ワッシャ部材(6)が積層方向(L)視でコア(2)の外縁よりも外側に突出する場合に比べて、回転電機用ステータ(S)の小型化を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本開示に係る技術は、積層方向に電磁鋼板を積層して構成されたコアを備えた回転電機用ステータに利用することができる。
【符号の説明】
【0047】
1:電磁鋼板
2:コア
3:ケース
4:支持部
5:ボルト
5A:頭部
6:ワッシャ部材
9:基準外周面
10:突条部
12:ボルト挿通孔
17:第1端面
31:本体部
32:突出部
35:凹部
A:仮想円
F:対向面
L:軸方向(積層方向)
L2:軸方向第2側(積層方向支持部側)
P1:コア軸心
R2:径方向外側
S:回転電機用ステータ
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