(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】コイルばね
(51)【国際特許分類】
F16F 1/06 20060101AFI20221125BHJP
F01L 3/10 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
F16F1/06 N
F01L3/10 A
(21)【出願番号】P 2018094718
(22)【出願日】2018-05-16
【審査請求日】2020-06-15
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000175722
【氏名又は名称】サンコール株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001597
【氏名又は名称】特許業務法人アローレインターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】岸原 竜二
(72)【発明者】
【氏名】岡村 誠士
【審査官】後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-077904(JP,A)
【文献】実開平01-128034(JP,U)
【文献】特開2017-190823(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 1/00- 6/00
F01L 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向一方側の第1端部から軸線方向他方側の第2端部へ向かってばね線材が螺旋形状に成形されてなるコイルばねであって、
軸線方向一方側を向く第1座面を有し、前記第1端部を形成する外端部から軸線方向他方側の内端部へ向かって周方向に沿って延びる第1座巻き部と、軸線方向他方側を向く第2座面を有し、前記第2端部を形成する外端部から軸線方向一方側の内端部へ向かって周方向に沿って延びる第2座巻き部と、前記第1座巻き部の内端部から軸線方向他方側へ向かって周方向に沿って螺旋状に延びて、前記第2座巻き部の内端部に連結される中央巻き部とを備え、
前記中央巻き部の軸線方向一方側の端部及び前記第1座巻き部の外端部の間の線間隙間がゼロとなるように前記第1座巻き部の外端部から内端部までの間の軸線方向他方側への前記ばね線材の中心位置の変位量が前記ばね線材の厚みとされた上で、前記第1座巻き部の外端部から内端部へ向けて進むに従って前記ばね線材の中心位置が徐々に軸線方向他方側に位置されつつ、前記第1座巻き部の外端部と当該外端部から前記第1座巻き部の内端部へ向けて半周だけ進んだ地点との間の軸線方向他方側への前記ばね線材の中心位置の変位量は前記ばね線材の厚みの
1/4よりも小とされ、且つ、前記第1座巻き部の外端部から内端部へ向けて周方向に沿って進む前記ばね線材の周方向移動量と前記第1座巻き部の外端部からの軸線方向他方側への前記ばね線材の中心位置の軸線方向変位量との関係が、前記座巻き部の外端部から内端部までの全域に亘って上方に開く曲線とされており、
前記曲線は、当該曲線に対する接線の傾きが前記座巻き部の外端部から内端部へ進むに従って大きくなる形状とされていることを特徴とするコイルばね。
【請求項2】
軸線方向一方側の第1端部から軸線方向他方側の第2端部へ向かってばね線材が螺旋形状に成形されてなるコイルばねであって、
軸線方向一方側を向く第1座面を有し、前記第1端部を形成する外端部から軸線方向他方側の内端部へ向かって周方向に沿って延びる第1座巻き部と、軸線方向他方側を向く第2座面を有し、前記第2端部を形成する外端部から軸線方向一方側の内端部へ向かって周方向に沿って延びる第2座巻き部と、前記第1座巻き部の内端部から軸線方向他方側へ向かって周方向に沿って螺旋状に延びて、前記第2座巻き部の内端部に連結される中央巻き部とを備え、
前記中央巻き部の軸線方向一方側の端部及び前記第1座巻き部の外端部の間の線間隙間がゼロとなるように前記第1座巻き部の外端部から内端部までの間の軸線方向他方側への前記ばね線材の中心位置の変位量が前記ばね線材の厚みとされた上で、前記第1座巻き部の外端部から内端部へ向けて進むに従って前記ばね線材の中心位置が徐々に軸線方向他方側に位置されつつ、前記第1座巻き部の外端部と当該外端部から前記第1座巻き部の内端部へ向けて半周だけ進んだ地点との間の軸線方向他方側への前記ばね線材の中心位置の変位量は前記ばね線材の厚みの1/4よりも小とされ、且つ、前記第1座巻き部の外端部から内端部へ向けて周方向に沿って進む前記ばね線材の周方向移動量と前記第1座巻き部の外端部からの軸線方向他方側への前記ばね線材の中心位置の軸線方向変位量との関係が上方に開く曲線状とされていることを特徴とするコイルばね。
【請求項3】
軸線方向に隣接するばね線材間の線間隙間によって画される線間巻きは、前記中央巻き部の軸線方向一方側の端部及び前記第1座巻き部の外端部の間において線間隙間がゼロとされた第1線間隙間ゼロ点から軸線方向他方側へ周方向に沿って進むに従って線間隙間が大きくなる第1変化領域と、前記第1変化領域よりも軸線方向他方側に位置し、線間隙間が基準値のままで軸線方向他方側へ周方向に沿って延びる基準領域とを含み、
前記第1変化領域は、軸線方向外端の前記第1線間隙間ゼロ点から軸線方向他方側へ向かって周方向に1巻き未満の位置で終焉し且つ軸線方向内端の終端での線間隙間が基準値よりも大きくなるように構成されており、
前記第1変化領域及び前記基準領域の間には、前記第1変化領域の終端から前記基準領域の軸線方向一方側の端部へ向かって周方向に進むに従って線間距離が小さくなって基準値となる第1移行領域が設けられていることを特徴とする請求項1
又は2に記載のコイルばね。
【請求項4】
軸線方向一方側の第1端部から軸線方向他方側の第2端部へ向かってばね線材が螺旋形状に成形されてなるコイルばねであって、
軸線方向一方側を向く第1座面を有し、前記第1端部を形成する外端部から軸線方向他方側の内端部へ向かって周方向に沿って延びる第1座巻き部と、軸線方向他方側を向く第2座面を有し、前記第2端部を形成する外端部から軸線方向一方側の内端部へ向かって周方向に沿って延びる第2座巻き部と、前記第1座巻き部の内端部から軸線方向他方側へ向かって周方向に沿って螺旋状に延びて、前記第2座巻き部の内端部に連結される中央巻き部とを備え、
前記中央巻き部の軸線方向一方側の端部及び前記第1座巻き部の外端部の間の線間隙間がゼロとなるように前記第1座巻き部の外端部から内端部までの間の軸線方向他方側への前記ばね線材の中心位置の変位量が前記ばね線材の厚みとされた上で、前記第1座巻き部の外端部から内端部へ向けて進むに従って前記ばね線材の中心位置が徐々に軸線方向他方側に位置されつつ、前記第1座巻き部の外端部と当該外端部から前記第1座巻き部の内端部へ向けて半周だけ進んだ地点との間の軸線方向他方側への前記ばね線材の中心位置の変位量は前記ばね線材の厚みの
1/4よりも小とされ、且つ、前記第1座巻き部の外端部から内端部へ向けて周方向に沿って進む前記ばね線材の周方向移動量と前記第1座巻き部の外端部からの軸線方向他方側への前記ばね線材の中心位置の軸線方向変位量との関係が上方に開く曲線状とされ、
前記中央巻き部の軸線方向他方側の端部及び前記第2座巻き部の外端部の間の線間隙間がゼロとなるように前記第2座巻き部の外端部から内端部までの間の軸線方向一方側への前記ばね線材の中心位置の変位量が前記ばね線材の厚みとされた上で、前記第2座巻き部の外端部から内端部へ向けて進むに従って前記ばね線材の中心位置が徐々に軸線方向一方側に位置されつつ、前記第2座巻き部の外端部と当該外端部から前記第2座巻き部の内端部へ向けて半周だけ進んだ地点との間の軸線方向一方側への前記ばね線材の中心位置の変位量は前記ばね線材の厚みの
1/4よりも小とされ、且つ、前記第2座巻き部の外端部から内端部へ向けて周方向に沿って進む前記ばね線材の周方向移動量と前記第2座巻き部の外端部からの軸線方向一方側への前記ばね線材の中心位置の軸線方向変位量との関係が、前記第2座巻き部の外端部から内端部までの全域に亘って下方に開く曲線とされており、
前記曲線は、当該曲線に対する接線の傾きが前記第2座巻き部の外端部から内端部へ進むに従って大きくなる形状とされていることを特徴とするコイルばね。
【請求項5】
軸線方向一方側の第1端部から軸線方向他方側の第2端部へ向かってばね線材が螺旋形状に成形されてなるコイルばねであって、
軸線方向一方側を向く第1座面を有し、前記第1端部を形成する外端部から軸線方向他方側の内端部へ向かって周方向に沿って延びる第1座巻き部と、軸線方向他方側を向く第2座面を有し、前記第2端部を形成する外端部から軸線方向一方側の内端部へ向かって周方向に沿って延びる第2座巻き部と、前記第1座巻き部の内端部から軸線方向他方側へ向かって周方向に沿って螺旋状に延びて、前記第2座巻き部の内端部に連結される中央巻き部とを備え、
前記中央巻き部の軸線方向一方側の端部及び前記第1座巻き部の外端部の間の線間隙間がゼロとなるように前記第1座巻き部の外端部から内端部までの間の軸線方向他方側への前記ばね線材の中心位置の変位量が前記ばね線材の厚みとされた上で、前記第1座巻き部の外端部から内端部へ向けて進むに従って前記ばね線材の中心位置が徐々に軸線方向他方側に位置されつつ、前記第1座巻き部の外端部と当該外端部から前記第1座巻き部の内端部へ向けて半周だけ進んだ地点との間の軸線方向他方側への前記ばね線材の中心位置の変位量は前記ばね線材の厚みの
1/4よりも小とされ、且つ、前記第1座巻き部の外端部から内端部へ向けて周方向に沿って進む前記ばね線材の周方向移動量と前記第1座巻き部の外端部からの軸線方向他方側への前記ばね線材の中心位置の軸線方向変位量との関係が上方に開く曲線状とされ、
前記中央巻き部の軸線方向他方側の端部及び前記第2座巻き部の外端部の間の線間隙間がゼロとなるように前記第2座巻き部の外端部から内端部までの間の軸線方向一方側への前記ばね線材の中心位置の変位量が前記ばね線材の厚みとされた上で、前記第2座巻き部の外端部から内端部へ向けて進むに従って前記ばね線材の中心位置が徐々に軸線方向一方側に位置されつつ、前記第2座巻き部の外端部と当該外端部から前記第2座巻き部の内端部へ向けて半周だけ進んだ地点との間の軸線方向一方側への前記ばね線材の中心位置の変位量は前記ばね線材の厚みの1/4よりも小とされ、且つ、前記第2座巻き部の外端部から内端部へ向けて周方向に沿って進む前記ばね線材の周方向移動量と前記第2座巻き部の外端部からの軸線方向一方側への前記ばね線材の中心位置の軸線方向変位量との関係が下方に開く曲線状とされていることを特徴とするコイルばね。
【請求項6】
軸線方向に隣接するばね線材間の線間隙間によって画される線間巻きは、前記中央巻き部の軸線方向一方側の端部及び前記第1座巻き部の外端部の間において線間隙間がゼロとされた第1線間隙間ゼロ点から軸線方向他方側へ周方向に沿って進むに従って線間隙間が大きくなる第1変化領域と、前記第1変化領域よりも軸線方向他方側に位置し、線間隙間が基準値のままで軸線方向他方側へ周方向に沿って延びる基準領域と、前記基準領域よりも軸線方向他方側に位置し、軸線方向他方側へ周方向に沿って進むに従って線間隙間が小さくなって線間隙間がゼロとされた第2線間隙間ゼロ点で終焉する第2変化領域とを含み、
前記第1変化領域は、軸線方向外端の前記第1線間隙間ゼロ点から軸線方向他方側へ周方向に1巻き未満の位置で終焉し且つ軸線方向内端の終端での線間隙間が基準値よりも大きくなるように構成され、前記第2変化領域は、軸線方向外端の前記第2線間隙間ゼロ点から軸線方向一方側へ周方向に1巻き未満の位置で終焉し且つ軸線方向内端の終端での線間隙間が基準値よりも大きくなるように構成され、
前記第1変化領域及び前記基準領域の間には、前記第1変化領域の終端から前記基準領域の軸線方向一方側の端部へ向かって周方向に進むに従って線間距離が小さくなって基準値となる第1移行領域が設けられ、前記第2変化領域及び前記基準領域の間には、前記第2変化領域の終端から前記基準領域の軸線方向他方側の端部へ向かって周方向に進むに従って線間距離が小さくなって基準値となる第2移行領域が設けられていることを特徴とする請求項
4又は5に記載のコイルばね。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の弁ばねや高圧ポンプ用ばね等に利用可能なコイルばねに関する。
【背景技術】
【0002】
ばね線材を軸線方向一方側から他方側へ延びる螺旋形状に成形してなるコイルばねは、内燃機関の弁ばねや高圧ポンプ用ばね等として、広く利用されている。
【0003】
前記コイルばねは、軸線方向に圧縮された際に軸線方向に沿った弾性力を発揮することを意図した部材であるが、圧縮時に、軸線方向に沿った弾性力に加えて、軸線方向とは直交する方向にも力(横力)を発生することが知られている。
【0004】
横力の発生は可能な限り防止することが望まれる。
即ち、例えば、前記コイルばねを往復動するプランジャーの押圧部材として用いた場合に横力が生じると、前記プランジャーと当該プランジャーが往復動可能に収容される案内面との間に生じる摩擦力が大きくなる。
前記摩擦力の増加は、前記プランジャーの摺動抵抗に起因する摩耗や摩擦熱の上昇を招き、前記プランジャーが用いられる高圧ポンプ等の装置に作動不具合を生じさせる恐れがある。
【0005】
この点に関し、本願出願人は、横力の低減を目的としたコイルばねを提案している(下記特許文献1及び2参照)。
【0006】
前記特許文献1に記載のコイルばねは、セット高さから最大使用高さまでの間で有効巻数が整数となるように構成されており、有効巻数が整数又は整数近傍とはされていないコイルばねに比して、圧縮動作時に発生する横力を低減し得るようになっている。
【0007】
前記特許文献2に記載のコイルばねは、軸線方向に隣接するばね線材間の線間隙間によって画される線間巻きが、軸線方向一方側において線間隙間がゼロとされた第1線間隙間ゼロ点から螺旋形状に沿って進むに従って線間隙間が大きくなる第1端部領域と、前記第1端部領域よりも軸線方向他方側に位置し、線間隙間が基準値のL(L>0)とされた基準領域と、前記基準領域より軸線方向他方側に位置し、軸線方向他方側へ螺旋形状に沿って進むに従って線間隙間が狭くなり、第2線間隙間ゼロ点において自然長状態での線間隙間がゼロとなる第2端部領域とを含み、前記第1及び第2端部領域は、線間巻き数が1を超え且つ終端位置における自然長状態での線間距離がLより大となり、さらに、前記線間巻きが、前記第1端部領域の終端位置と前記基準領域との間に設けられ、前記第1端部領域の終端位置から軸線方向他方側へ螺旋形状に沿って進むに従って線間距離が小さくなって基準値のLに到達する第1移行領域と、前記第2端部領域の終端位置と前記基準領域との間に設けられ、前記第2端部領域の終端位置から軸線方向一方側へ螺旋形状に沿って進むに従って線間距離が小さくなって基準値のLに到達する第2移行領域とを有するように、構成されている。
【0008】
前記特許文献2に記載のコイルばねは、第1及び第2端部領域での線間隙間が外端側から内端側へ行くに従ってゼロから徐々に大きくなって基準値Lに到達するように構成された従来のコイルばねに比して、圧縮動作時において前記第1及び第2端部領域に線間隙間ゼロが発生することを有効に抑えることができ、これにより、横力の発生を防止することができるようになっている。
【0009】
このように、前記特許文献1及び2に記載のコイルばねはそれぞれの前記構成によって横力の発生を有効に防止し得るものであるが、座面に関しては改善の余地があった。
【0010】
即ち、コイルばねは、軸線方向一方側の第1座巻き部に第1座面を有し、軸線方向他方側の第2座巻き部に第2座面を有している。
【0011】
前記第1座面は、コイルばねの軸線方向に対して直交する方向に延びるように前記第1座巻き部の軸線方向外表面を研磨することによって形成される。同様に、前記第2座面は、コイルばねの軸線方向に対して直交する方向に延びるように前記第2座巻き部の軸線方向外表面を研磨することによって形成される。
【0012】
ここで、圧縮動作時に前記コイルばねの姿勢安定化を図って横力の発生を防止する為には、前記第1及び第2座面をそれぞれ軸線回りに少なくとも半周に亘って設けることが好ましい。
【0013】
しかしながら、単に、前記第1及び第2座面の軸線回り長さを広げるとすると、前記コイルばねの第1及び第2座巻き部の端部での厚みが薄くなり、前記第1及び第2座巻き部の剛性が低下するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】特開2000-205320号公報
【文献】特開2017-190823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、斯かる従来技術に鑑みなされたものであり、座面の軸線回りの長大化を図りつつ、座巻き部の端部の剛性低下を有効に防止し得るコイルばねの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記目的を達成するために、本発明の第1態様は、軸線方向一方側の第1端部から軸線方向他方側の第2端部へ向かってばね線材が螺旋形状に成形されてなるコイルばねであって、軸線方向一方側を向く第1座面を有し、前記第1端部を形成する外端部から軸線方向他方側の内端部へ向かって周方向に沿って延びる第1座巻き部と、軸線方向他方側を向く第2座面を有し、前記第2端部を形成する外端部から軸線方向一方側の内端部へ向かって周方向に沿って延びる第2座巻き部と、前記第1座巻き部の内端部から軸線方向他方側へ向かって周方向に沿って螺旋状に延びて、前記第2座巻き部の内端部に連結される中央巻き部とを備え、前記中央巻き部の軸線方向一方側の端部及び前記第1座巻き部の外端部の間の線間隙間がゼロとなるように前記第1座巻き部の外端部から内端部までの間の軸線方向他方側への前記ばね線材の中心位置の変位量が前記ばね線材の厚みとされた上で、前記第1座巻き部の外端部から内端部へ向けて進むに従って前記ばね線材の中心位置が徐々に軸線方向他方側に位置されつつ、前記第1座巻き部の外端部と当該外端部から前記第1座巻き部の内端部へ向けて半周だけ進んだ地点との間の軸線方向他方側への前記ばね線材の中心位置の変位量は前記ばね線材の厚みの1/4よりも小とされ、且つ、前記第1座巻き部の外端部から内端部へ向けて周方向に沿って進む前記ばね線材の周方向移動量と前記第1座巻き部の外端部からの軸線方向他方側への前記ばね線材の中心位置の軸線方向変位量との関係が、前記座巻き部の外端部から内端部までの全域に亘って上方に開く曲線とされており、前記曲線は、当該曲線に対する接線の傾きが前記座巻き部の外端部から内端部へ進むに従って大きくなる形状とされているコイルばねを提供する。
【0017】
前記目的を達成するために、本発明の第2様は、軸線方向一方側の第1端部から軸線方向他方側の第2端部へ向かってばね線材が螺旋形状に成形されてなるコイルばねであって、軸線方向一方側を向く第1座面を有し、前記第1端部を形成する外端部から軸線方向他方側の内端部へ向かって周方向に沿って延びる第1座巻き部と、軸線方向他方側を向く第2座面を有し、前記第2端部を形成する外端部から軸線方向一方側の内端部へ向かって周方向に沿って延びる第2座巻き部と、前記第1座巻き部の内端部から軸線方向他方側へ向かって周方向に沿って螺旋状に延びて、前記第2座巻き部の内端部に連結される中央巻き部とを備え、前記中央巻き部の軸線方向一方側の端部及び前記第1座巻き部の外端部の間の線間隙間がゼロとなるように前記第1座巻き部の外端部から内端部までの間の軸線方向他方側への前記ばね線材の中心位置の変位量が前記ばね線材の厚みとされた上で、前記第1座巻き部の外端部から内端部へ向けて進むに従って前記ばね線材の中心位置が徐々に軸線方向他方側に位置されつつ、前記第1座巻き部の外端部と当該外端部から前記第1座巻き部の内端部へ向けて半周だけ進んだ地点との間の軸線方向他方側への前記ばね線材の中心位置の変位量は前記ばね線材の厚みの1/4よりも小とされ、且つ、前記第1座巻き部の外端部から内端部へ向けて周方向に沿って進む前記ばね線材の周方向移動量と前記第1座巻き部の外端部からの軸線方向他方側への前記ばね線材の中心位置の軸線方向変位量との関係が上方に開く曲線状とされているコイルばねを提供する。
【0018】
本発明の第1~第2態様に係るコイルばねにおいては、軸線方向に隣接するばね線材間の線間隙間によって画される線間巻きが、前記中央巻き部の軸線方向一方側の端部及び前記第1座巻き部の外端部の間において線間隙間がゼロとされた第1線間隙間ゼロ点から軸線方向他方側へ周方向に沿って進むに従って線間隙間が大きくなる第1変化領域と、前記第1変化領域よりも軸線方向他方側に位置し、線間隙間が基準値のままで軸線方向他方側へ周方向に沿って延びる基準領域とを含み、前記第1変化領域は、軸線方向外端の前記第1線間隙間ゼロ点から軸線方向他方側へ向かって周方向に1巻き未満の位置で終焉し且つ軸線方向内端の終端での線間隙間が基準値よりも大きくなるように構成され、前記線間巻きには、前記第1変化領域及び前記基準領域の間に位置し、前記第1変化領域の終端から前記基準領域の軸線方向一方側の端部へ向かって周方向に進むに従って線間距離が小さくなって基準値となる第1移行領域が設けられる。
【0019】
前記目的を達成するために、本発明の第3態様は、軸線方向一方側の第1端部から軸線方向他方側の第2端部へ向かってばね線材が螺旋形状に成形されてなるコイルばねであって、軸線方向一方側を向く第1座面を有し、前記第1端部を形成する外端部から軸線方向他方側の内端部へ向かって周方向に沿って延びる第1座巻き部と、軸線方向他方側を向く第2座面を有し、前記第2端部を形成する外端部から軸線方向一方側の内端部へ向かって周方向に沿って延びる第2座巻き部と、前記第1座巻き部の内端部から軸線方向他方側へ向かって周方向に沿って螺旋状に延びて、前記第2座巻き部の内端部に連結される中央巻き部とを備え、前記中央巻き部の軸線方向一方側の端部及び前記第1座巻き部の外端部の間の線間隙間がゼロとなるように前記第1座巻き部の外端部から内端部までの間の軸線方向他方側への前記ばね線材の中心位置の変位量が前記ばね線材の厚みとされた上で、前記第1座巻き部の外端部から内端部へ向けて進むに従って前記ばね線材の中心位置が徐々に軸線方向他方側に位置されつつ、前記第1座巻き部の外端部と当該外端部から前記第1座巻き部の内端部へ向けて半周だけ進んだ地点との間の軸線方向他方側への前記ばね線材の中心位置の変位量は前記ばね線材の厚みの1/4よりも小とされ、且つ、前記第1座巻き部の外端部から内端部へ向けて周方向に沿って進む前記ばね線材の周方向移動量と前記第1座巻き部の外端部からの軸線方向他方側への前記ばね線材の中心位置の軸線方向変位量との関係が上方に開く曲線状とされ、前記中央巻き部の軸線方向他方側の端部及び前記第2座巻き部の外端部の間の線間隙間がゼロとなるように前記第2座巻き部の外端部から内端部までの間の軸線方向一方側への変位量が前記ばね線材の厚みとされた上で、前記第2座巻き部の外端部から内端部へ向けて進むに従って前記ばね線材の中心位置が徐々に軸線方向一方側に位置されつつ、前記第2座巻き部の外端部と当該外端部から前記第2座巻き部の内端部へ向けて半周だけ進んだ地点との間の軸線方向一方側への前記ばね線材の中心位置の変位量は前記ばね線材の厚みの1/4よりも小とされ、且つ、前記第2座巻き部の外端部から内端部へ向けて周方向に沿って進む前記ばね線材の周方向移動量と前記第2座巻き部の外端部からの軸線方向一方側への前記ばね線材の中心位置の軸線方向変位量との関係が、前記第2座巻き部の外端部から内端部までの全域に亘って下方に開く曲線とされており、前記曲線は、当該曲線に対する接線の傾きが前記第2座巻き部の外端部から内端部へ進むに従って大きくなる形状とされているコイルばねを提供する。
【0020】
前記目的を達成するために、本発明の第4態様は、軸線方向一方側の第1端部から軸線方向他方側の第2端部へ向かってばね線材が螺旋形状に成形されてなるコイルばねであって、軸線方向一方側を向く第1座面を有し、前記第1端部を形成する外端部から軸線方向他方側の内端部へ向かって周方向に沿って延びる第1座巻き部と、軸線方向他方側を向く第2座面を有し、前記第2端部を形成する外端部から軸線方向一方側の内端部へ向かって周方向に沿って延びる第2座巻き部と、前記第1座巻き部の内端部から軸線方向他方側へ向かって周方向に沿って螺旋状に延びて、前記第2座巻き部の内端部に連結される中央巻き部とを備え、前記中央巻き部の軸線方向一方側の端部及び前記第1座巻き部の外端部の間の線間隙間がゼロとなるように前記第1座巻き部の外端部から内端部までの間の軸線方向他方側への前記ばね線材の中心位置の変位量が前記ばね線材の厚みとされた上で、前記第1座巻き部の外端部から内端部へ向けて進むに従って前記ばね線材の中心位置が徐々に軸線方向他方側に位置されつつ、前記第1座巻き部の外端部と当該外端部から前記第1座巻き部の内端部へ向けて半周だけ進んだ地点との間の軸線方向他方側への前記ばね線材の中心位置の変位量は前記ばね線材の厚みの1/4よりも小とされ、且つ、前記第1座巻き部の外端部から内端部へ向けて周方向に沿って進む前記ばね線材の周方向移動量と前記第1座巻き部の外端部からの軸線方向他方側への前記ばね線材の中心位置の軸線方向変位量との関係が上方に開く曲線状とされ、前記中央巻き部の軸線方向他方側の端部及び前記第2座巻き部の外端部の間の線間隙間がゼロとなるように前記第2座巻き部の外端部から内端部までの間の軸線方向一方側への前記ばね線材の中心位置の変位量が前記ばね線材の厚みとされた上で、前記第2座巻き部の外端部から内端部へ向けて進むに従って前記ばね線材の中心位置が徐々に軸線方向一方側に位置されつつ、前記第2座巻き部の外端部と当該外端部から前記第2座巻き部の内端部へ向けて半周だけ進んだ地点との間の軸線方向一方側への前記ばね線材の中心位置の変位量は前記ばね線材の厚みの1/4よりも小とされ、且つ、前記第2座巻き部の外端部から内端部へ向けて周方向に沿って進む前記ばね線材の周方向移動量と前記第2座巻き部の外端部からの軸線方向一方側への前記ばね線材の中心位置の軸線方向変位量との関係が下方に開く曲線状とされているコイルばねを提供する。
【0021】
本発明の第3~第4態様に係るコイルばねにおいては、軸線方向に隣接するばね線材間の線間隙間によって画される線間巻きは、前記中央巻き部の軸線方向一方側の端部及び前記第1座巻き部の外端部の間において線間隙間がゼロとされた第1線間隙間ゼロ点から軸線方向他方側へ周方向に沿って進むに従って線間隙間が大きくなる第1変化領域と、前記第1変化領域よりも軸線方向他方側に位置し、線間隙間が基準値のままで軸線方向他方側へ周方向に沿って延びる基準領域と、前記基準領域よりも軸線方向他方側に位置し、軸線方向他方側へ周方向に沿って進むに従って線間隙間が小さくなって線間隙間がゼロとされた第2線間隙間ゼロ点で終焉する第2変化領域とを含み、前記第1変化領域は、軸線方向外端の前記第1線間隙間ゼロ点から軸線方向他方側へ周方向に1巻き未満の位置で終焉し且つ軸線方向内端の終端での線間隙間が基準値よりも大きくなるように構成され、前記第2変化領域は、軸線方向外端の前記第2線間隙間ゼロ点から軸線方向一方側へ周方向に1巻き未満の位置で終焉し且つ軸線方向内端の終端での線間隙間が基準値よりも大きくなるように構成され、前記線間巻きには、前記第1変化領域及び前記基準領域の間に位置し、前記第1変化領域の終端から前記基準領域の軸線方向一方側の端部へ向かって周方向に進むに従って線間距離が小さくなって基準値となる第1移行領域と、前記第2変化領域及び前記基準領域の間に位置し、前記第2変化領域の終端から前記基準領域の軸線方向他方側の端部へ向かって周方向に進むに従って線間距離が小さくなって基準値となる第2移行領域とが設けられる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、第1座面を有する第1座巻き部と、第2座面を有する第2座巻き部と、前記第1及び第2座巻き部の間を連結する中央巻き部とを備えたコイルばねにおいて、前記中央巻き部の軸線方向一方側の端部及び前記第1座巻き部の外端部の間の線間隙間がゼロとなるように前記第1座巻き部の外端部から内端部までの間の軸線方向他方側への前記ばね線材の中心位置の変位量が前記ばね線材の厚みとされた上で、前記第1座巻き部の外端部から内端部へ向けて進むに従って前記ばね線材の中心位置が徐々に軸線方向他方側に変位されつつ、前記第1座巻き部の外端部と当該外端部から前記第1座巻き部の内端部へ向けて半周だけ進んだ地点との間の軸線方向他方側への前記ばね線材の中心位置の変位量は前記ばね線材の厚みの1/4よりも小となり、且つ、前記第1座巻き部の外端部から内端部へ向けて周方向に沿って進む前記ばね線材の周方向移動量と前記第1座巻き部の外端部からの軸線方向他方側への前記ばね線材の中心位置の軸線方向変位量との関係が上方に開く曲線状となるように、前記第1座巻き部が構成され、及び/又は、前記中央巻き部の軸線方向他方側の端部及び前記第2座巻き部の外端部の間の線間隙間がゼロとなるように前記第2座巻き部の外端部から内端部までの間の軸線方向一方側への前記ばね線材の中心位置の変位量が前記ばね線材の厚みとされた上で、前記第2座巻き部の外端部から内端部へ向けて進むに従って前記ばね線材の中心位置が徐々に軸線方向一方側に位置されつつ、前記第2座巻き部の外端部と当該外端部から前記第2座巻き部の内端部へ向けて半周だけ進んだ地点との間の軸線方向一方側への前記ばね線材の中心位置の変位量は前記ばね線材の厚みの1/4よりも小となり、且つ、前記第2座巻き部の外端部から内端部へ向けて周方向に沿って進む前記ばね線材の周方向移動量と前記第2座巻き部の外端部からの軸線方向一方側への前記ばね線材の中心位置の軸線方向変位量との関係が下方に開く曲線状となるように、前記第2座巻き部が構成されているので、前記第1座面を軸線回りに少なくとも半周に亘って設けたとしても前記第1座巻き部の端部の厚みを確保して当該第1座巻き部の剛性低下を有効に防止でき、及び/又は、前記第2座面を軸線回りに少なくとも半周に亘って設けたとしても前記第2座巻き部の端部の厚みを確保して当該第2座巻き部の剛性低下を有効に防止できる。
【0023】
また、本発明によれば、前記中央巻き部の軸線方向一方側の端部及び前記第1座巻き部の外端部の間の線間隙間がゼロとなるように前記第1座巻き部の外端部から内端部までの間の軸線方向他方側への前記ばね線材の中心位置の変位量が前記ばね線材の厚みとされた上で、前記第1座巻き部の外端部から内端部へ向けて進むに従って前記ばね線材の中心位置が徐々に軸線方向他方側に位置されつつ、前記第1座巻き部の外端部と当該外端部から前記第1座巻き部の内端部へ向けて半周だけ進んだ地点との間の軸線方向他方側への前記ばね線材の中心位置の変位量は前記ばね線材の厚みの1/4よりも小となり、且つ、前記第1座巻き部の外端部から内端部へ向けて周方向に沿って進む前記ばね線材の周方向移動量と前記第1座巻き部の外端部からの軸線方向他方側への前記ばね線材の中心位置の軸線方向変位量との関係が、前記座巻き部の外端部から内端部までの全域に亘って上方に開く曲線とされており、前記曲線は、当該曲線に対する接線の傾きが前記座巻き部の外端部から内端部へ進むに従って大きくなる形状とされ、及び/又は、前記中央巻き部の軸線方向他方側の端部及び前記第2座巻き部の外端部の間の線間隙間がゼロとなるように前記第2座巻き部の外端部から内端部までの間の軸線方向一方側への前記ばね線材の中心位置の変位量が前記ばね線材の厚みとされた上で、前記第2座巻き部の外端部から内端部へ向けて進むに従って前記ばね線材の中心位置が徐々に軸線方向一方側に位置されつつ、前記第2座巻き部の外端部と当該外端部から前記第2座巻き部の内端部へ向けて半周だけ進んだ地点との間の軸線方向一方側への前記ばね線材の中心位置の変位量は前記ばね線材の厚みの1/4よりも小とされ、且つ、前記第2座巻き部の外端部から内端部へ向けて周方向に沿って進む前記ばね線材の周方向移動量と前記第2座巻き部の外端部からの軸線方向一方側への前記ばね線材の中心位置の軸線方向変位量との関係が、前記第2座巻き部の外端部から内端部までの全域に亘って下方に開く曲線とされており、前記曲線は、当該曲線に対する接線の傾きが前記第2座巻き部の外端部から内端部へ進むに従って大きくなる形状とされているので、前記第1座面を軸線回りに少なくとも半周に亘って設けたとしても前記第1座巻き部の端部の厚みを確保して当該第1座巻き部の剛性低下を有効に防止でき、及び/又は、前記第2座面を軸線回りに少なくとも半周に亘って設けたとしても前記第2座巻き部の端部の厚みを確保して当該第2座巻き部の剛性低下を有効に防止できる。
【0024】
また、本発明によれば、前記中央巻き部の軸線方向一方側の端部及び前記第1座巻き部の外端部の間の線間隙間がゼロとなるように前記第1座巻き部の外端部から内端部までの間の軸線方向他方側への前記ばね線材の中心位置の変位量が前記ばね線材の厚みとされた上で、前記第1座巻き部の外端部から内端部へ向けて進むに従って前記ばね線材の中心位置が徐々に軸線方向他方側に位置されつつ、前記第1座巻き部の外端部と当該外端部から前記第1座巻き部の内端部へ向けて半周だけ進んだ地点との間の軸線方向他方側への前記ばね線材の中心位置の変位量は前記ばね線材の厚みの1/4よりも小とされ、且つ、前記第1座巻き部の外端部から内端部へ向けて周方向に沿って進む前記ばね線材の周方向移動量と前記第1座巻き部の外端部からの軸線方向他方側への前記ばね線材の中心位置の軸線方向変位量との関係が上方に開く曲線状とされ、及び/又は、前記中央巻き部の軸線方向他方側の端部及び前記第2座巻き部の外端部の間の線間隙間がゼロとなるように前記第2座巻き部の外端部から内端部までの間の軸線方向一方側への前記ばね線材の中心位置の変位量が前記ばね線材の厚みとされた上で、前記第2座巻き部の外端部から内端部へ向けて進むに従って前記ばね線材の中心位置が徐々に軸線方向一方側に位置されつつ、前記第2座巻き部の外端部と当該外端部から前記第2座巻き部の内端部へ向けて半周だけ進んだ地点との間の軸線方向一方側への前記ばね線材の中心位置の変位量は前記ばね線材の厚みの1/4よりも小とされ、且つ、前記第2座巻き部の外端部から内端部へ向けて周方向に沿って進む前記ばね線材の周方向移動量と前記第2座巻き部の外端部からの軸線方向一方側への前記ばね線材の中心位置の軸線方向変位量との関係が下方に開く曲線状とされているので、前記第1座面を軸線回りに少なくとも半周に亘って設けたとしても前記第1座巻き部の端部の厚みを確保して当該第1座巻き部の剛性低下を有効に防止でき、及び/又は、前記第2座面を軸線回りに少なくとも半周に亘って設けたとしても前記第2座巻き部の端部の厚みを確保して当該第2座巻き部の剛性低下を有効に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、本発明の一実施の形態に係るコイルばねの自然長状態での正面図である。
【
図2】
図2は、前記コイルばねの自然長状態での上方斜視図である。
【
図3】
図3は、前記コイルばねの自然長状態での下方斜視図である。
【
図4】
図4は、前記コイルばねの自然長状態での平面図である。
【
図5】
図5は、前記コイルばねの自然長状態での底面図である。
【
図6】
図6は、前記コイルばねにおける巻き数と軸線方向変位量との関係を示すグラフである。
【
図7】
図7は、前記コイルばねにおける巻き数及び軸線方向変位量の関係である。
【
図9】
図9は、前記コイルばねにおける線間巻き数と線間隙間との関係を示すグラフである。
【
図10】
図10は、前記コイルばねの製造装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係るコイルばねの一実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図1~
図5に、それぞれ、本実施の形態に係るコイルばね1の自然長状態での正面図、上方斜視図、下方斜視図、平面図及び底面図を示す。
【0027】
図1~
図5に示すように、本実施の形態に係るコイルばね1は、軸線方向一方側D1の第1端部101から軸線方向他方側D2の第2端部102へ向かってばね線材100が螺旋形状に成形されてなるものであり、内燃機関の弁ばねや高圧ポンプ用ばね等に好適に利用される。
なお、本実施の形態に係る前記コイルばね1においては、前記ばね線材100は断面円形とされているが、断面楕円形又は断面矩形等の種々の断面形状のばね線材を用いることができる。
【0028】
図1等に示すように、前記コイルばね1は、前記第1端部101を形成する外端部11から軸線方向他方側D2へ向かって周方向に沿って延びる第1座巻き部10と、前記第2端部102を形成する外端部21から軸線方向一方側D1へ向かって周方向に沿って延びる第2座巻き部20と、前記第1座巻き部10の軸線方向内端部12から軸線方向他方側D2へ向かって周方向に沿って螺旋状に延びて、前記第2座巻き部20の軸線方向内端部22に連結される中央巻き部30とを備えている。
【0029】
図6に、前記コイルばね1における巻き数と軸線方向変位量との関係を表すグラフを示す。
図6に示すように、本実施の形態に係るコイルばね1は、前記第1座巻き部10、前記中央巻き部30及び前記第2座巻き部20を含めて6巻きとされている。
【0030】
詳しくは、巻き数「0」の位置が前記第1端部101に対応し、巻き数「0」の位置から巻き数「1」の位置までの間が前記第1座巻き部10に相当する。
また、巻き数「6」の位置が前記第2端部102に対応し、巻き数「5」の位置から巻き数「6」の位置までの間が前記第2座巻き部20に相当しており、巻き数「1」の位置から巻き数「5」の位置までの間が前記中央巻き部30に相当している。
【0031】
図1及び
図6に示すように、前記第1座巻き部10は、軸線方向外端部11から内端部12までの間において軸線方向他方側D2へ前記ばね線材100の厚みaだけ変位されており、軸線方向外端部11及び前記中央巻き部30の軸線方向一方側D1の端部31の間の線間隙間がゼロとなっている。
【0032】
同様に、前記第2座巻き部20は、軸線方向外端部21から内端部22までの間において軸線方向一方側D1へ前記ばね線材の厚みaだけ変位されており、軸線方向外端部21及び前記中央巻き部30の軸線方向他方側D2の端部32の間の線間隙間がゼロとなっている。
【0033】
前記第1及び第2座巻き部10、20には、それぞれ、軸線方向外方側の表面を研磨することによって前記コイルばね1の軸線方向に対して直交するように形成された、軸線方向外方を向く第1及び第2座面15、25が設けられている。
【0034】
前記第1及び第2座面15、25は前記コイルばね1の設置面を形成するものである。 従って、前記コイルばね1の姿勢安定化を図って、前記コイルばね1の圧縮動作時に横力が発生することを有効に防止する為には、前記第1及び第2座面15、25を、前記コイルばね1の軸線方向に対して直交する状態で、前記コイルばね1の軸線回りに関し少なくとも半周に亘って設けることが好ましい。
【0035】
しかしながら、前記コイルばね1の軸線方向に対して直交する状態の前記第1及び第2座面15、25を前記コイルばね1の軸線回りに関し拡げると、前記第1及び第2座巻き部10、20の軸線方向外端部11、21でのばね線材100の厚みが薄くなり、その結果、前記第1及び第2座巻き部10、20の剛性低下を招き、コイルばね1の圧縮動作時に横力の発生を招くことになる。
【0036】
この点に関し、本実施の形態に係る前記コイルばね1は、下記構成を備えることにより、前記第1及び第2座面15、25を半周以上(詳しくは、
図3及び
図4に示すように、前記コイルばね1の軸線回りに約3/4周に亘って)設けつつ、前記第1座巻き部10(及び/又は前記第2座巻き部20)の剛性低下を有効に防止して横力の発生を有効に防止している。
【0037】
図7に、本実施の形態における巻き数及び軸線方向変位量の関係を示す。
図7には、本実施の形態の変形例及び従来例における巻き数及び軸線方向変位量の関係も併せて示している。
【0038】
図7に示すように、従来のコイルばねにおいては、巻き数「0」(第1座巻き部10の外端部11に相当する位置)及び巻き数「1」(第1座巻き部10の内端部に相当する位置)の間の軸線方向変位量は、ばね線材の厚みをaとした場合に、傾きaの一定割合で変化するように構成されている。
【0039】
即ち、従来のコイルばねにおいては、巻き数「1/4」の位置においては、軸線方向変位量はa/4となり、巻き数「1/2」の位置(第1座巻き部10の外端部11に相当する位置から内端部12に相当する位置へ向かって半周だけ進んだ位置)においては、軸線方向変位量はa/2となる。
【0040】
これに対し、本実施の形態に係るコイルばね1においては、前記第1座巻き部10の軸線方向外端部11と当該外端部11から内端部12へ向けて周方向に半周だけ進んだ地点との間の軸線方向変位量は前記ばね線材100の厚みaの半分よりも小さくなるように構成されている。
【0041】
斯かる構成を備えたコイルばね1によれば、前記第1座面15を軸線回りに半周に亘って設けたとしても、前記第1座巻き部10の外端部11での厚みをばね線材100の厚みの1/2以上確保することができ、これにより、前記第1座巻き部10の剛性を有効に確保することができる。
【0042】
図1及び
図7に示すように、前記コイルばね1においては、前記第1座巻き部10の外端部11から半周を越えた第1変曲点C1(本実施の形態においては巻き数「3/4」の地点)までの間は軸線方向変位量が実質的にゼロとされ、第1変曲点C1から前記第1座巻き部10の内端部12(巻き数「1」の地点)までの間にばね線材100の厚みaに相当する量だけ軸線方向に変位するように構成されている。
【0043】
斯かる構成によれば、前記第1座面15を3/4周に亘って設けても、前記第1座巻き部10の外端部11での厚みをa/2以上、確保することができる。
【0044】
図8に、
図6におけるVIII部の拡大図を示す。
図8には、本実施の形態の変形例及び従来例における巻き数及び軸線方向変位量の関係も併せて示している。
【0045】
図8に示すように、前記第2座巻き部20についても同様に、前記第2座巻き部20の外端部21から内端部22へ向けて半周を越えた第2変曲点C2(本実施の形態においては前記第2座巻き部20の外端部21から軸線方向一方側へ3/4周の地点)までの間は軸線方向変位量が実質的にゼロとされ、第2変曲点C2から前記第2座巻き部20の内端部22までの間にばね線材100の厚みaに相当する量だけ軸線方向に変位するように構成されている。
【0046】
斯かる構成によれば、前記第2座面25を3/4周に亘って設けても、前記第2座巻き部20の外端部21での厚みをa/2以上、確保することができる。
【0047】
これに代えて、
図7に併せて示す変形例のように、巻き数「0」(前記第1座巻き部10の外端部11に相当する位置)と巻き数「1/2」(外端部11から内端部12へ向けて周方向に半周だけ進んだ位置)との間の軸線方向変位量がばね線材100の厚みaの半分より小さくなるように、前記第1座巻き部10の外端部11から内端部12へ向けて周方向に沿って進む周方向移動量と軸線方向他方側への軸線方向変位量とが上方に開く曲線状の関係となるように、前記第1座巻き部10を形成することも可能である。
【0048】
図8に併せて示す変形例のように、前記第2座巻き部20は、内端部22と前記内端部22から外端部21へ向けて周方向に半周だけ進んだ位置との間の軸線方向他方側への変位量がばね線材の厚みaの半分より大きくなるように、前記内端部22から前記外端部21へ向けて周方向に沿って進む周方向移動量と軸線方向他方側変位量とが下方に開く曲線状となるように構成されている(即ち、前記第2座巻き部20の外端部21を基準点として表現すると、前記第2座巻き部20の外端部21と前記外端部21から内端部22へ向けて周方向に半周だけ進んだ位置との間の軸線方向一方側変位量がばね線材100の厚みaの半分より小さくなるように、前記第2座巻き部20の外端部21から内端部22へ向けて周方向に沿って進む周方向移動量と軸線方向一方側への軸線方向変位量とが下方に開く曲線状の関係となるように、前記第2座巻き部20が構成されている。)
斯かる変形例によっても、本実施の形態におけると同様の効果を得ることができる。
【0049】
また、本実施の形態に係るコイルばね1においては、前記第1座巻き部10の外端部11及び前記第2座巻き部20の外端部21の周方向位置を一致させており、これによっても、圧縮動作の横力発生を有効に防止している。
【0050】
さらに、本実施の形態に係るコイルばね1は、軸線方向に隣接するばね線材100間の線間隙間によって画される線間巻きに関し、下記構成を備えている。
図9に、前記コイルばね1における線間巻き数と線間隙間との関係を表すグラフを示す。
なお、
図9に示す線間巻き数「0」~「5」は、
図6に示す巻きの「1」~「6」に相当する。
【0051】
詳しくは、
図1~
図3、
図5及び
図9に示すように、前記コイルばね1は、前記線間巻きが、前記中央巻き部30の軸線方向一方側の端部31及び前記第1座巻き部10の外端部11の間において線間隙間がゼロとされた第1線間隙間ゼロ点60aから軸線方向他方側D2へ周方向に沿って進むに従って線間隙間が大きくなる第1変化領域61と、前記第1変化領域61よりも軸線方向他方側D2に位置し、線間隙間が基準値Lのままで軸線方向他方側D2へ周方向に沿って延びる基準領域65と、前記基準領域65よりも軸線方向他方側D2に位置し、軸線方向他方側D2へ周方向に沿って進むに従って線間隙間が小さくなって線間隙間がゼロとされた第2線間隙間ゼロ点60bで終焉する第2変化領域69とを有するように、構成されている。
【0052】
図9に示すように、本実施の形態に係るコイルばね1は、前記第1変化領域61が軸線方向外端の前記第1線間隙間ゼロ点60aから軸線方向他方側D2へ周方向に1巻き未満の位置で終焉し且つ軸線方向内端の終端での線間隙間が基準値Lよりも大とされ、前記第2変化領域69が軸線方向外端の前記第2線間隙間ゼロ点60bから軸線方向一方側D1へ周方向に1巻き未満の位置で終焉し且つ軸線方向内端の終端での線間隙間が基準値Lよりも大とされており、さらに、前記線間巻きが、前記第1変化領域61及び前記基準領域65の間に位置し、前記第1変化領域61の終端から前記基準領域65の軸線方向一方側D1の端部へ向かって周方向に進むに従って線間距離が小さくなって基準値Lとなる第1移行領域63と、前記第2変化領域69及び前記基準領域65の間に位置し、前記第2変化領域69の終端から前記基準領域65の軸線方向他方側D2の端部へ向かって周方向に進むに従って線間距離が小さくなって基準値Lとなる第2移行領域67とを有するように、構成されている。
【0053】
かかる構成を備えることにより、前記コイルばね1が自然長状態から圧縮される際に、前記第1及び第2変化領域61、69中に線間隙間ゼロが生じることを有効に防止でき、圧縮動作時の横力の発生を有効に抑えることができる。
【0054】
即ち、前記コイルばね1においては、軸線方向両端部側に位置する前記第1及び第2変化領域61、69の終端(軸線方向内端)での線間距離が基準値Lよりも大とされている。
従って、前記コイルばね1の圧縮動作に、軸線方向一方側D1及び他方側D2において、隣接するばね線材100が意に反して接触して有効巻き数に変化を生じさせることを有効に防止でき、これにより、圧縮動作時の横力発生を有効に抑えることができる。
【0055】
前記コイルばね1は、例えば、
図10に示す製造装置200によって製造される。
図10に示すように、前記製造装置200は、ばね線材100を供給する供給ローラ210と、前記供給ローラ210によって搬送されるばね線材100をガイドするガイド部材215と、前記ガイド部材215によってガイドされた状態で前記供給ローラ210によって搬送されるばね線材100の搬送方向下流側に設けられ、直線状のばね線材100を螺旋状のコイルばね1に成形する第1及び第2コイリングツール220(1)、220(2)と、前記第1及び第2コイリングツール220(1)、220(2)によって螺旋状に成形されたコイルばね1をガイドする芯金部材225と、前記コイルばね1のピッチを調整するピッチツール230と、前記芯金225と共働してばね線材100を切断する切断ツール235とを有している。
【0056】
前記第1及び第2コイリングツール220(1)、220(2)は、成形されるコイルばね1の中心を基準とした径方向に関し位置調整可能とされており、径方向位置の変更に応じてコイルばね1のコイル径を変更する。
【0057】
前記ピッチツール230は、コイルばね1の中心を基準とした径方向に関し位置調整可能とされており、径方向位置の変更に応じてコイルばね1のピッチを変更する。
【0058】
前記切断ツール235は、コイルばね1の中心を基準とした径方向に関し往復動可能とされており、前記芯金225の係合面226と共働して前記ばね線材100を切断する切断位置と前記芯金225から離間された退避位置との間で移動可能とされている。
【符号の説明】
【0059】
1 コイルばね
10 第1座巻き部
11 第1座巻き部の外端部
12 第1座巻き部の内端部
20 第2座巻き部
21 第2座巻き部の外端部
22 第2座巻き部の内端部
30 中央巻き部
31 中央巻き部の軸線方向一方側の端部
32 中央巻き部の軸線方向他方側の端部
60a 第1線間隙間ゼロ点
60b 第2線間隙間ゼロ点
61 第1変化領域
63 第1移行領域
65 基準領域
67 第2移行領域
69 第2変化領域
100 ばね線材
101 第1端部
102 第2端部
C1 第1変曲点
C2 第2変曲点
D1 軸線方向一方側
D2 軸線方向他方側