(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】トランスデューサ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H04R 19/00 20060101AFI20221125BHJP
B29C 45/14 20060101ALI20221125BHJP
B29C 65/02 20060101ALI20221125BHJP
B29C 65/70 20060101ALI20221125BHJP
B62D 1/04 20060101ALI20221125BHJP
G01L 1/14 20060101ALI20221125BHJP
H04R 31/00 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
H04R19/00
B29C45/14
B29C65/02
B29C65/70
B62D1/04
G01L1/14 J
H04R31/00 C
(21)【出願番号】P 2018124273
(22)【出願日】2018-06-29
【審査請求日】2021-03-05
(31)【優先権主張番号】P 2017251418
(32)【優先日】2017-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 克彦
(72)【発明者】
【氏名】田原 新也
【審査官】渡邊 正宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-027756(JP,A)
【文献】特開平06-323929(JP,A)
【文献】特開昭63-303525(JP,A)
【文献】実開昭60-186800(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/14
B29C 65/02
B29C 65/70
B62D 1/04
G01L 1/00- 1/26
G01L 25/00
H01L 29/84
H04R 11/00-11/06
H04R 11/14
H04R 13/00-15/02
H04R 19/00-19/04
H04R 21/00-21/02
H04R 23/00-23/02
H04R 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電部材と、
前記導電部材の面法線方向に設けられた静電シートと、
を備えるトランスデューサであって、
前記静電シートは、
複数の第一貫通孔を備えた第一電極シートと、
第一面が前記第一電極シート側に配置され、且つ、第二面が前記導電部材側に配置される誘電体シートと、
を備え、
前記誘電体シートの前記第一面側は、
前記第一電極シートを埋設した状態で、前記誘電体シート自身の融着
によって、前記第一電極シートに直接的
に接合され、
前記第一電極シートにおける前記導電部材側に位置する内面、及び、前記第一電極シートの前記第一貫通孔の孔内周面は、前記誘電体シートに融着されており、
前記誘電体シートの前記第二面側は、前記誘電体シート自身の融着及び前記誘電体シートとは異なる第二融着材料の融着の何れか一つによって、前記導電部材に直接的に又は間接的に接合されている、トランスデューサ。
【請求項2】
導電部材と、
前記導電部材の面法線方向に設けられた静電シートと、
前記導電部材の外面側に射出成形された樹脂内層材と、
を備えるトランスデューサであって、
前記静電シートは、
複数の第一貫通孔を備えた第一電極シートと、
第一面が前記第一電極シート側に配置され、且つ、第二面が前記導電部材側に配置される誘電体シートと、
を備え、
前記誘電体シートの前記第一面側は、前記誘電体シート自身の融着、前記誘電体シートとは異なる第一融着材料の融着、及び、前記誘電体シート自身の係合の何れか一つによって、前記第一電極シートに直接的又は間接的に接合され、
前記誘電体シートの前記第二面側は、前記誘電体シート自身の融着及び前記誘電体シートとは異なる第二融着材料の融着の何れか一つによって、
前記樹脂内層材の外面側に直接的又は間接的に接合され、前記導電部材
に間接的に接合されている、トランスデューサ。
【請求項3】
導電部材と、
前記導電部材の面法線方向に設けられた静電シートと、
を備えるトランスデューサであって、
前記静電シートは、
複数の第一貫通孔を備えた第一電極シートと、
熱可塑性材料により形成され、貫通孔を有しない面状に形成され、第一面が前記第一電極シート側に配置され、且つ、第二面が前記導電部材側に配置される誘電体シートと、
を備え、
前記誘電体シートの前記第一面側は、
前記第一電極シートを埋設した状態で、前記誘電体シート自身の融着
によって前記第一電極シートに直接的
に接合され、
前記誘電体シートの前記第二面側は、前記誘電体シート自身の融着
によって前記導電部材に直接的に又は間接的に接合されている、トランスデューサ。
【請求項4】
導電部材と、
前記導電部材の面法線方向に設けられた静電シートと、
を備えるトランスデューサであって、
前記静電シートは、
複数の第一貫通孔を備えた第一電極シートと、
熱可塑性材料により形成され、第一面が前記第一電極シート側に配置
され、第二面が前記導電部材側に配置され
、且つ、前記第一電極シートの前記複数の第一貫通孔を維持するように前記第一電極シートの表面にコーティングされている誘電体シートと、
を備え、
前記誘電体シートの前記第一面側は、前記誘電体シート自身の融着
又は前記誘電体シート自身の係合
によって前記第一電極シートに直接的
に接合され、
前記誘電体シートの前記第二面側は、前記誘電体シート自身の融着
によって前記導電部材に直接的に又は間接的に接合されている、トランスデューサ。
【請求項5】
導電部材と、
前記導電部材の面法線方向に設けられた静電シートと、
を備えるトランスデューサであって、
前記静電シートは、
複数の第一貫通孔を備えた第一電極シートと、
複数の第二貫通孔を備えた第二電極シートと、
熱可塑性材料により形成され、且つ、貫通孔を有しない面状に形成され、第一面が前記第一電極シート側に配置され、且つ、第二面が前記導電部材側
であって前記第二電極シート側に配置される誘電体シートと、
を備え、
前記誘電体シートの前記第一面側は、
前記第一電極シートを埋設した状態で、前記誘電体シート自身の融着
によって前記第一電極シートに直接的
に接合され、
前記誘電体シートの前記第二面側は、
前記第二電極シートを埋設した状態で、前記誘電体シート自身の融着によって前記第二電極シートに直接的に接合され、
前記誘電体シート自身の融着
によって前記導電部材に直接的に又は間接的に接合されている、トランスデューサ。
【請求項6】
導電部材と、
前記導電部材の面法線方向に設けられた静電シートと、
を備えるトランスデューサであって、
前記静電シートは、
複数の第一貫通孔を備えた第一電極シートと、
複数の第二貫通孔を備えた第二電極シートと、
熱可塑性材料により形成され、第一面が前記第一電極シート側に配置
され、第二面が前記導電部材側
であって前記第二電極シート側に配置され
、前記複数の第一貫通孔を維持するように前記第一電極シートの表面にコーティングされ、且つ、前記複数の第二貫通孔を維持するように前記第二電極シートの表面にコーティングされている誘電体シートと、
を備え、
前記誘電体シートの前記第一面側は、前記誘電体シート自身の融着
又は前記誘電体シート自身の係合
によって前記第一電極シートに直接的
に接合され、
前記誘電体シートの前記第二面側は、
前記誘電体シート自身の融着又は前記誘電体シート自身の係合によって前記第二電極シートに直接的に接合され、
前記誘電体シート自身の融着
によって前記導電部材に直接的に又は間接的に接合されている、トランスデューサ。
【請求項7】
導電部材と、
前記導電部材の面法線方向に設けられた静電シートと、
を備えるトランスデューサであって、
前記静電シートは、
複数の第一貫通孔を備えた第一電極シートと、
複数の第二貫通孔を備えた第二電極シートと、
非熱可塑性材料により形成され、第一面が前記第一電極シート側に配置され、且つ、第二面が前記導電部材側
であって前記第二電極シート側に配置される誘電体シートと、
を備え、
前記誘電体シートの前記第一面側
は、前記誘電体シートとは異なる第一融着材料の融着
によって前記第一電極シート
に間接的に接合され、
前記誘電体シートの前記第二面側は、
前記誘電体シートとは異なる第二融着材料の融着
によって前記導電部材
に間接的に接合され
、
前記誘電体シートとは異なる第三融着材料の融着によって前記第二電極シートに間接的に接合されている、トランスデューサ。
【請求項8】
前記静電シートは、さらに、複数の第二貫通孔を備え、且つ、前記誘電体シートの前記第二面側に配置された第二電極シートを備え、
前記誘電体シートの前記第二面側は、前記誘電体シート自身の融着、前記誘電体シートとは異なる第三融着材料の融着、及び、前記誘電体シート自身の係合の何れか一つによって、前記第二電極シートに直接的又は間接的に接合される、請求項1
-4の何れか1項に記載のトランスデューサ。
【請求項9】
前記トランスデューサは、さらに、前記静電シートにおける前記導電部材とは反対側に位置する外面側に射出成形された樹脂外層材を備える、請求項1
-7の何れか1項に記載のトランスデューサ。
【請求項10】
前記トランスデューサは、さらに、前記導電部材の外面側に射出成形された樹脂内層材を備え、
前記誘電体シートの前記第二面側は、前記樹脂内層材の外面側に直接的又は間接的に接合される、請求項1
、3-
7の何れか一項に記載のトランスデューサ。
【請求項11】
前記導電部材は、前記トランスデューサの芯体を構成する、請求項1-
7の何れか一項にトランスデューサ。
【請求項12】
前記誘電体シートは、非熱可塑性材料により形成され、
前記誘電体シートの前記第一面側は、前記第一融着材料の融着によって前記第一電極シートに間接的に接合され、
前記誘電体シートの前記第二面側は、前記第二融着材料の融着によって前記導電部材に間接的に接合されている、請求項
2に記載のトランスデューサ。
【請求項13】
前記第一電極シートは、伸縮可能であり、
前記誘電体シートは、エラストマーにより形成され、
前記静電シートは、伸縮可能である、請求項1-
7の何れか一項に記載のトランスデューサ。
【請求項14】
前記第一電極シート及び前記第二電極シートは、伸縮可能であり、
前記誘電体シートは、エラストマーにより形成され、
前記静電シートは、伸縮可能である、請求項
5-7の何れか1項に記載のトランスデューサ。
【請求項15】
請求項1-
14の何れか一項に記載のトランスデューサの製造方法であって、
前記静電シートを成形する静電シート成形工程と、
前記静電シートを前記導電部材に直接的に又は間接的に接合する静電シート接合工程と、
を備える、トランスデューサの製造方法。
【請求項16】
前記導電部材は、曲面を有しており、
前記静電シート成形工程は、前記静電シートを前記導電部材の曲面形状に対応した予備形状となるように成形し、
前記静電シート接合工程は、前記予備形状である前記静電シートを前記導電部材に対応する位置に配置した状態で、前記静電シートを加熱することにより前記導電部材に直接的に又は間接的に接合する、請求項
15に記載のトランスデューサの製造方法。
【請求項17】
曲面を有する導電部材と、
前記導電部材の面法線方向に設けられた静電シートと、
を備えるトランスデューサの製造方法であって、
前記静電シートは、
複数の第一貫通孔を備えた第一電極シートと、
第一面が前記第一電極シート側に配置され、且つ、第二面が前記導電部材側に配置される誘電体シートと、
を備え、
前記誘電体シートの前記第一面側は、前記誘電体シート自身の融着、前記誘電体シートとは異なる第一融着材料の融着、及び、前記誘電体シート自身の係合の何れか一つによって、前記第一電極シートに直接的又は間接的に接合され、
前記誘電体シートの前記第二面側は、前記誘電体シート自身の融着及び前記誘電体シートとは異なる第二融着材料の融着の何れか一つによって、前記導電部材に直接的に又は間接的に接合され、
前記製造方法
は、
前記静電シートを
前記導電部材の曲面形状に対応した予備形状となるように成形する静電シート成形工程と、
前記予備形状である前記静電シートを
前記導電部材に対応する位置に配置した状態で、前記静電シートを加熱することにより前記導電部材に直接的に又は間接的に接合する静電シート接合工程と、
を備える、トランスデューサの製造方法。
【請求項18】
請求項
9に記載のトランスデューサの製造方法であって、
前記静電シートを成形する静電シート成形工程と、
前記静電シートを前記導電部材に直接的に又は間接的に接合する静電シート接合工程と、
前記静電シートの外面側に前記樹脂外層材を射出成形する外層材成形工程と、
を備える、トランスデューサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスデューサ及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の自動運転化が普及しつつある。自動運転状態のレベルの一つとして、運転者が手をステアリングホイールに接触していることが求められるレベルがある。そこで、ステアリングホイールにセンサを設けることが検討されている。ステアリングホイールの表面側にセンサを巻き付けて、縫製によって被覆することがある。しかし、ステアリングホイールに縫製を施す場合には、製造コストが非常に高くなる。そのため、製造コストを低減するためには、縫製を用いない方法、例えば、射出成形によってセンサを配置する方法等が望まれる。また、射出成形を行うためには、ステアリングホイールにセンサが固定されている必要がある。近年、環境対策として、揮発性有機化合物(VOC)の排出の抑制が求められている。そのため、センサを固定するために、揮散型接着剤を用いないことが求められる。
【0003】
ところで、特許文献1には、ポリマー圧電体に多孔シート状の電極が埋入された圧電素子が開示されている。この圧電素子は、ポリマー圧電体フィルム又はシートの表面をアセトン等の溶媒で処理し、その後に処理表面に多孔シート状の電極を積層して圧着することにより製造される。
【0004】
特許文献2には、運転者の手がステアリングホイールに接触していることを検出するために、ステアリングホイールの表面に静電容量型センサ又は圧電素子を設けることが開示されている。詳細には、静電容量型センサを備えるステアリングホイールは、リング状の金属製の芯体と、芯体の周りに設けられた合成樹脂カバーと、合成樹脂カバーの周りに配置された発泡材内に配置された導電性の金属織物と、発泡材を被覆する皮革とを備える。金属織物は、リング状の金属製の芯体と共に静電容量を形成する。
【0005】
特許文献3には、ステアリングホイールのリング状の金属製の芯体の周囲に、ヒータエレメントを設けることが開示されている。ヒータエレメントは、断熱シートと、発泡シートと、断熱シートと発泡シートの間に挟まれるように配置された線状ヒータとを備える。ヒータエレメントは、断熱シートの表面に形成される接着剤層を利用して、芯体に接着される。そして、ヒータエレメントが巻き付けられた状態の芯体を射出成形機にセットし、ヒータエレメントの周りを被覆するための被覆層を射出成形により成形する。
【0006】
特許文献4には、ステアリングホイールの表面側にヒータエレメントを備えることが開示されている。ヒータエレメントは、支持骨格と、支持骨格に取り付けられた電熱線とを備える。そして、電熱線を取り付けた支持骨格を金属製の芯体に支持させた状態で型にインサートし、成形材料を注入してヒータエレメントの周りを被覆する被覆層が発泡成形される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第3105645号公報
【文献】特開2005-537992号公報
【文献】特開2017-178135号公報
【文献】特許第6085356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、近年、環境対策として、揮発性有機化合物(VOC)の排出の抑制が求められている。そのため、揮散型接着剤を用いないことはもちろんのこと、溶媒も用いないことも求められる。また、センサやアクチュエータを取付対象物(ステアリングホイールの芯体等)に取り付けるために、センサ又はアクチュエータとは別部材である支持骨格を用いる場合には、高コストとなる。従って、取付対象物にセンサ又はアクチュエータを取り付けるために、支持骨格を用いることなく、センサ又はアクチュエータを取付対象物に取り付けることが求められる。
【0009】
本発明は、製造コストを低減しつつ、VOCの排出を抑制することができるトランスデューサ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1.第一のトランスデューサ)
本発明に係る第一のトランスデューサは、導電部材と、前記導電部材の面法線方向に設けられた静電シートとを備える。前記静電シートは、複数の貫通孔を備えた第一電極シートと、第一面が前記第一電極シート側に配置され、且つ、第二面が前記導電部材側に配置される誘電体シートとを備える。前記誘電体シートの前記第一面側は、前記誘電体シート自身の融着、前記誘電体シートとは異なる第一融着材料の融着、及び、前記誘電体シート自身の係合の何れか一つによって、前記第一電極シートに直接的又は間接的に接合されている。また、前記誘電体シートの前記第二面側は、前記誘電体シート自身の融着及び前記誘電体シートとは異なる第二融着材料の融着の何れか一つによって、前記導電部材に直接的に又は間接的に接合されている。
【0011】
静電シートは、第一電極シートと誘電体シートとを備え、両者が接合されている。第一電極シートと誘電体シートとは、以下の3種類の何れか一つによって接合されている。すなわち、第一例では、誘電体シート自身の融着によって、誘電体シートと第一電極シートとが接合されている。第二例では、誘電体シートとは異なる第一融着材料の融着によって、誘電体シートと第一電極シートとが接合されている。第三例では、誘電体シートの係合によって、誘電体シートと第一電極シートとが接合されている。これらの何れにおいても、誘電体シートと第一電極シートとは、揮散型接着剤及び溶媒を用いることなく接合されている。従って、VOCの排出を抑制できる。
【0012】
さらに、静電シートは、導電部材に直接的又は間接的に接合されている。ここで、直接的の意味は、静電シートが導電部材に直接接触していることを意味し、間接的の意味は、静電シートと導電部材との間に別部材が介在していることを意味する。そして、誘電体シートと導電部材とは、以下の2種類の何れか一つによって接合されている。すなわち、第一例では、誘電体シート自身の融着によって、誘電体シートと導電部材又は導電部材に取り付けられている部材とが接合されている。第二例では、誘電体シートとは異なる第二融着材料の融着によって、誘電体シートと導電部材又は導電部材に取り付けられている部材とが接合されている。これらの何れにおいても、誘電体シートと導電部材又は導電部材に取り付けられている部材とは、揮散型接着剤及び溶媒を用いることなく接合されている。従って、当該部位においても、VOCの排出を抑制できる。
【0013】
そして、静電シートは、上記のとおり、導電部材又は導電部材に取り付けられている部材に接合されているため、外層材の成形に射出成形等を適用することが可能となる。そのため、縫製を行う場合に比べて、トランスデューサの製造コストが低減する。
【0014】
(2.第二のトランスデューサ)
本発明に係る第二のトランスデューサは、導電部材と、前記導電部材の面法線方向に設けられた静電シートとを備える。前記静電シートは、複数の貫通孔を備えた第一電極シートと、第一面が前記第一電極シート側に配置され、且つ、第二面が前記導電部材側に配置される誘電体シートと、複数の第二貫通孔を備え、且つ、前記誘電体シートの前記第二面側に配置された第二電極シートとを備える。前記誘電体シートの前記第一面側は、前記誘電体シート自身の融着、前記誘電体シートとは異なる第一融着材料の融着、及び、前記誘電体シート自身の係合の何れか一つによって、前記第一電極シートに直接的又は間接的に接合されている。また、前記誘電体シートの前記第二面側は、前記誘電体シート自身の融着、前記誘電体シートとは異なる第三融着材料の融着、及び、前記誘電体シート自身の係合の何れか一つによって、前記第二電極シートに直接的又は間接的に接合されている。さらに、前記誘電体シートの前記第二面側は、前記誘電体シート自身の融着及び前記誘電体シートとは異なる第二融着材料の融着の何れか一つによって、前記導電部材に直接的に又は間接的に接合されている。
【0015】
静電シートは、第一電極シート、誘電体シート及び第二電極シートを備え、これらが接合されている。第一電極シートと誘電体シートとは、上記の3種類の何れか一つによって接合されている。第二電極シートと誘電体シートとは、以下の3種類の何れか一つによって接合されている。すなわち、第一例では、誘電体シート自身の融着によって、誘電体シートと第二電極シートとが接合されている。第二例では、誘電体シートとは異なる第三融着材料の融着によって、誘電体シートと第二電極シートとが接合されている。第三例では、誘電体シートの係合によって、誘電体シートと第二電極シートとが接合されている。これらの何れにおいても、誘電体シートと第二電極シートとは、揮散型接着剤及び溶媒を用いることなく接合されている。従って、VOCの排出を抑制できる。
【0016】
(3.トランスデューサの製造方法)
本発明に係るトランスデューサの製造方法は、前記静電シートを成形する静電シート成形工程と、前記静電シートを前記導電部材に直接的に又は間接的に接合する静電シート接合工程とを備える。当該製造方法により製造されたトランスデューサは、上記同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】第一実施形態:
図1のII-II断面(軸直角断面)の拡大図を示すと共に、検出ブロック図を示す。
【
図4】ステアリングホイールの製造方法のフローチャートを示す。
【
図5】予備形状に成形された静電シートの軸直角断面図である。
【
図6】予備形状の静電シートを、芯体及び樹脂内層材の外面側に配置した状態の軸直角断面図である。
【
図7】静電シートを樹脂内層材の外面に接合した状態の軸直角断面図である。
【
図10】第三例及び第四例の静電シートの断面図である。
【
図15】第二実施形態:
図1のII-II断面(軸直角断面)の拡大図を示すと共に、検出ブロック図を示す。
【
図16】予備形状に成形された静電シートの軸直角断面図である。
【
図19】第三例及び第四例の静電シートの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(1.トランスデューサの概要)
トランスデューサは、静電型である。つまり、トランスデューサは、電極間の静電容量の変化を利用して、電位を有する導電体の接触又は接近を検出するセンサ(接触接近センサ)、外部からの押込力等を検出するセンサ(外力検出センサ)として機能させることができる。また、トランスデューサは、電極間の静電容量の変化を利用して、振動や音等を発生させるアクチュエータとして機能させることができる。
【0019】
トランスデューサが接触接近センサとして機能する場合には、電位を有する導電体の接触又は接近により、電極間の静電容量が変化し、変化した電極間の静電容量に応じた電圧を検出することで、当該導電体の接触又は接近を検出する。トランスデューサがアクチュエータとして機能する場合には、電極に電圧が印加されることにより、電極間の電位に応じて誘電体が変形し、誘電体の変形に伴って振動が発生する。トランスデューサが外力検出センサとして機能する場合には、外部からの押込力や振動や音などの入力に起因して誘電体が変形することにより電極間の静電容量が変化し、電極間の静電容量に応じた電圧を検出することで、外部からの押込力等を検出する。
【0020】
(2.ステアリングホイール1の基本構成)
人間の手の接触を検出することができるセンサとして、ステアリングホイール1を例にあげる。ただし、トランスデューサは、ステアリングホイール1に限られず、種々の構成を適用できる。以下において、ステアリングホイール1は、センサのみとして機能する場合を例にあげるが、センサに加えて、例えば、運転者に振動等を付与するアクチュエータの機能を有することもできる。この場合、ステアリングホイール1は、センサ及びアクチュエータを備えることになる。また、ステアリングホイール1は、センサに代えて、アクチュエータのみの機能を有するようにすることもできる。
【0021】
センサとしてのステアリングホイール1は、運転者の手の所定範囲(所定の面積)以上がステアリングホイール1に接触していることを検出する。なお、所定範囲は任意に設定することができ、例えば、自動運転状態において、所定範囲を運転者が操舵を可能な程度の範囲(面積)に設定する。
【0022】
ステアリングホイール1の構成について、
図1を参照して説明する。ステアリングホイール1は、
図1に示すように、コア部11と、リング部12と、コア部11とリング部12とを連結する複数の連結部13,13,13とを備える。リング部12が、人間の手が接触したことを検出するセンサの機能を有する。
【0023】
ここで、本実施形態においては、リング部12が、全周に亘ってセンサの機能を有する。つまり、運転者がリング部12のどの部位に接触しているとしても、ステアリングホイール1は、接触を検出することができる。ただし、センサの機能を有する範囲を、リング部12の一部分としてもよい。さらに、リング部12の他に、コア部11や連結部13においても、運転者の手の接触を検出することもできる。
【0024】
リング部12は、円形リング形状に形成されている。ただし、リング部12は、円形に限られず、任意の形状に形成することができる。リング部12の軸直角断面形状は、
図2に示すように、例えば、楕円形状に形成されている。従って、リング部12の表面は、全面に亘って、単一平面ではなく、曲面を有している。
【0025】
(3.第一実施形態)
(3-1.ステアリングホイール1の詳細構成)
第一実施形態のステアリングホイール1の詳細構成について、
図2及び
図3を参照して説明する。特に、リング部12の詳細構成について説明する。
【0026】
リング部12は、導電部材としての芯体21、樹脂内層材22、静電シート23、及び、樹脂外層材24を備える。芯体21は、リング部12の中心部を構成し、リング部12の形状に対応する形状に形成されている。つまり、芯体21は、円形リング形状に形成され、楕円形状の軸直角断面を有している。従って、芯体21の表面は、全面に亘って、単一平面ではなく、曲面を有している。ここで、芯体21の軸直角断面形状は、楕円形状に限られることなく、U字形状、C字形状、多角形状等、任意の形状とすることができる。芯体21は、導電部材として機能させるために、アルミニウム等の導電性を有する金属により形成されている。芯体21の材質は、芯体21としての剛性を有し、導電性を有する材質であれば、金属以外の材料を適用することができる。つまり、芯体21は、静電容量型センサの静電容量を構成する一方の電極として機能する。さらに、本実施形態においては、芯体21は、グランド電位に接続されている。ただし、芯体21は、一定の電位であれば、グランド電位でなくてもよい。
【0027】
樹脂内層材22は、芯体21の外面において、芯体21のリング形状の全周に亘って、且つ、芯体21の楕円断面形状の全周に亘って被覆する。仮に、芯体21がU字形状の軸直角断面を有する場合には、樹脂内層材22は、芯体21の軸直角断面における径方向外側に加えて、芯体21のU字形状の凹所にも充填される。樹脂内層材22は、芯体21の外面側に射出成形により成形されており、芯体21の外面に直接的に接合されている。樹脂内層材22は、例えば、発泡樹脂により成形されている。樹脂内層材22は、例えば、発泡ウレタン樹脂を用いる。なお、樹脂内層材22は、非発泡樹脂を用いることもできる。
【0028】
静電シート23は、静電容量型センサ(トランスデューサ)の静電容量を構成する他方の電極として機能すると共に、静電容量の誘電層として機能する。静電シート23は、樹脂内層材22の外面において、樹脂内層材22のリング形状の全周に亘って、且つ、樹脂内層材22の楕円断面形状の全周に亘って被覆する。つまり、静電シート23は、導電部材としての芯体21の面法線方向に設けられており、且つ、樹脂内層材22の面法線方向に設けられている。ただし、センサの機能を有する範囲をリング部12の一部分とする場合には、静電シート23は、樹脂内層材22のリング形状の一部分のみを被覆すれば足りる。
【0029】
静電シート23は、芯体21及び樹脂内層材22とは別体に成形されており、全体として、柔軟性を有している。静電シート23は、融着材料の融着によって、樹脂内層材22の外面に接合されている。静電シート23は、柔軟性を有するため、樹脂内層材22の外面に対応した形状に容易に変形できる。ここで、本実施形態においては、ステアリングホイール1は樹脂内層材22を備える構成を例示するため、静電シート23は、樹脂内層材22の外面側に接合されているため、導電部材としての芯体21には間接的に接合されていることになる。ただし、ステアリングホイール1は、樹脂内層材22を備えない構成とすることもできる。この場合においては、静電シート23は、導電部材としての芯体21の外面に直接的に接合されることになる。
【0030】
静電シート23は、シート状に形成されている。静電シート23は、リング部12の貫通方向(
図1の方向)から見た場合において、リング部12の径方向外方(
図1の径方向外方、
図2の上方)から径方向内方(
図1の径方向内方、
図2の下方)に向かって芯体21及び樹脂内層材22の外面に巻き付けられるように設けられている。そのため、静電シート23の幅方向の両縁が、リング部12における径方向内方(
図1の径方向内方、
図2の下方)の部位にて、突き合せられた状態となる。もしくは、静電シート23の幅方向の両縁が、リング部12における径方向内方(
図1の径方向内方、
図2の下方)の部位にて、僅かに隙間を有して対向する状態となる。
【0031】
静電シート23は、第一電極シート31と、誘電体シート32とを備える。つまり、芯体21及び第一電極シート31が、静電容量型センサ(トランスデューサ)の静電容量を構成する一対の電極として機能する。誘電体シート32が、静電容量型センサ(トランスデューサ)の静電容量の誘電層として機能する。
【0032】
第一電極シート31は、例えば、
図3に示すような導電性布である。導電性布とは、導電性繊維により形成された織物又は不織布である。ここで、導電性繊維は、柔軟性を有する繊維の表面を導電材料により被覆することにより形成される。導電性繊維は、例えば、ポリエチレン等の樹脂繊維の表面に、銅やニッケル等の導電性金属をメッキすることにより形成される。
【0033】
第一電極シート31は、繊維により布を形成されることで、
図3に示すように、複数の第一貫通孔31aを備えると共に、柔軟性を有し、伸縮可能である。
図3においては、第一電極シート31は、導電性織物である場合を例にあげるが、導電性不織布を適用することもできる。第一電極シート31は、例えば、
図3に示すように、導電性織物の場合には、導電性繊維を縦糸と横糸として織ることにより形成されている。縦糸と横糸により囲まれる領域が、第一貫通孔31aとなる。なお、第一電極シート31が導電性不織布である場合にも、第一貫通孔31aが不規則に形成される。また、第一電極シート31は、導電性布の他に、柔軟性を有し伸縮可能な薄膜のパンチングメタルを適用することもできる。この場合、第一貫通孔31aは、打ち抜かれた部位となる。また、第一電極シート31は、導電性材料を含有し、複数の貫通孔を備えるエラストマーシート(ゴムシートを含む)を適用することもできる。なお、本実施形態において、エラストマーとは、弾性を有する高分子材料であり、ゴム弾性体、及び、ゴム弾性体以外のゴム状を有する弾性体を含む意味で用いている。
【0034】
誘電体シート32は、弾性変形可能な誘電材料により形成される。詳細には、誘電体シート32は、熱可塑性材料、特に熱可塑性エラストマーにより形成される場合と、非熱可塑性材料、特に非熱可塑性エラストマーにより形成される場合とが存在する。誘電体シート32は、例えば、矩形等の所望の外形に形成されている。誘電体シート32は、厚み方向に伸縮し、厚み方向の伸縮に伴って面方向に伸縮する構造を有する。
【0035】
誘電体シート32の第一面(
図2における外面)は、導電部材としての芯体21とは反対側の面であって、第一電極シート31側に配置されている。誘電体シート32の第一面側は、(a)誘電体シート32自身の融着、(b)誘電体シート32とは異なる第一融着材料33(後述する)の融着、及び、(c)誘電体シート32自身の係合の何れか一つによって、第一電極シート31に直接的又は間接的に接合されている。
【0036】
誘電体シート32の第二面(
図2における内面)が、導電部材としての芯体21側に配置されている。誘電体シート32の第二面は、誘電体シート32の第一面の裏面側に位置する。誘電体シート32の第二面側は、(d)誘電体シート32自身の融着、及び、(e)誘電体シート32とは異なる第二融着材料34(後述する)の融着の何れか一つによって、導電部材としての芯体21に直接的に又は間接的に接合されている。ここで、本実施形態においては、芯体21の外面に樹脂内層材22が被覆しているため、誘電体シート32の第二面は、樹脂内層材22の外面側に直接的又は間接的に接合されている。
【0037】
樹脂外層材24は、静電シート23の外面(静電シート23における芯体21とは反対側の面)において、静電シート23のリング形状の全周(
図1における周方向全周)に亘って、且つ、静電シート23の楕円断面形状の全周(
図2における周方向全周)に亘って被覆する。つまり、樹脂外層材24は、第一電極シート31が誘電体シート32の第一面側に露出している場合には、第一電極シート31の被覆材としても機能する。樹脂外層材24は、静電シート23の外面側に射出成形により成形されており、静電シート23の外面に直接的に接合されている。樹脂外層材24は、例えば、ウレタン樹脂により成形されている。樹脂外層材24の外面は、意匠面を構成する。そこで、樹脂外層材24は、非発泡ウレタン樹脂、又は、僅かに発泡させたウレタン樹脂を用いることが好ましい。
【0038】
ステアリングホイール1は、
図2に示すように、検出回路25を備える。検出回路25は、電源26から電力を供給されることにより動作する。検出回路25は、芯体21及び第一電極シート31に電気的に接続されており、芯体21と第一電極シート31との間の静電容量の変化に基づいて、運転者の手の接触又は接近を検出する。検出回路25における静電容量の検出方法の詳細は、公知であるため、説明を省略する。
【0039】
(3-2.ステアリングホイール1の製造方法)
次に、ステアリングホイール1、特にリング部12の製造方法について、
図4-
図7を参照して説明する。
図4に示すように、芯体21の外面に樹脂内層材22を射出成形する(S1:内層材成形工程)。すなわち、芯体21を射出成形型(図示せず)の中に配置し、成形材料を型内に注入することで、樹脂内層材22が成形される。このようにして、芯体21と樹脂内層材22とが一体化される。
【0040】
S1と並行に、静電シート23を成形する(S2:静電シート成形工程)。静電シート23は、上述したように、第一電極シート31及び誘電体シート32を備えており、これらが一体化された部材である。ここで、静電シート23は、
図5に示すように、芯体21の外面の曲面形状に対応した予備形状となるように成形される。すなわち静電シート23は、軸直角断面が
図5に示すようなC字形状となるように成形され、且つ、
図1に示すような芯体21のリング形状に対応する形状に成形されている。なお、静電シート23は、
図5の形状に限らず、平面形状でもよい。
【0041】
続いて、S1にて成形された芯体21及び樹脂内層材22に、S2にて成形された静電シート23を接合する(S3:静電シート接合工程)。すなわち、
図6に示すように、予備形状である静電シートを導電部材である芯体21及び樹脂内層材22に対応する位置に配置する。その状態で、静電シート23を加熱することにより、
図7に示すように、熱可塑性材料である融着材料(誘電体シート32又は第二融着材料)を溶融する。融着材料(誘電体シート32又は第二融着材料)を溶融させながら、静電シート23を樹脂内層材22の外面に接合させる。このようにして、芯体21、樹脂内層材22及び静電シート23が一体化された、中間成形体40が成形される。なお、静電シート23が平面形状の場合、静電シート23を芯体21又は樹脂内層材22に巻き付けながら、あるいは、巻き付けた状態で、静電シートを加熱すればよい
【0042】
続いて、樹脂外層材24を射出成形(S4:外層材成形工程)。すなわち、一体化された芯体21、樹脂内層材22及び静電シート23を、射出成形型(図示せず)の中に配置し、成形材料を型内に注入することで、樹脂外層材24が成形される。このようにして、
図2に示すように、芯体21、樹脂内層材22、静電シート23及び樹脂外層材24が一体化される。ステアリングホイール1のリング部12が完成する。
【0043】
(3-3.静電シート23の詳細構成)
次に、静電シート23の構成について詳細に説明する。静電シート23は、上述したように、
図4のS2の静電シート成形工程において成形され、第一電極シート31と誘電体シート32とを接合された部材である。静電シート23は、以下に説明するように、第一例の静電シート23a、第二例の静電シート23b、第三例の静電シート23c、及び、第四例の静電シート23dの何れかを適用できる。
【0044】
(3-3-1.第一例の静電シート23aの構成)
第一例の静電シート23aについて
図8を参照して説明する。第一例の静電シート23aは、第一電極シート31と第一例の誘電体シート32aとを備える。誘電体シート32aは、熱可塑性材料、特に熱可塑性エラストマーにより形成され、且つ、貫通孔を有しない面状に形成されている。誘電体シート32aは、熱可塑性材料により形成されているため、熱を加えることにより溶融状態となる。そして、誘電体シート32aの第一面(
図8の上面)側は、第一電極シート31を埋設した状態で、誘電体シート32a自身の融着によって第一電極シート31に直接的に接合されている。つまり、第一電極シート31の内面(
図8の下面)側、第一電極シート31の第一貫通孔31aの孔内周面、及び、第一電極シート31の外面(
図8の上面)側の全てが、誘電体シート32aに融着している。
【0045】
第一例の静電シート23aは、例えば、以下のようにして成形される。第一電極シート31と誘電体シート32aを準備する。誘電体シート32aの第一面の表面に第一電極シート31を積層する。この状態で、当該積層体を、一対の加圧加熱用ローラ(図示せず)の間に進入させる。つまり、一対の加圧加熱用ローラの熱が、誘電体シート32aの第一面の表面に伝達されて溶融する。そうすると、第一電極シート31が、誘電体シート32aの第一面の表面から内部に埋没する。そして、誘電体シート32aが固化することに伴って、誘電体シート32aの第一面側の表層部分が、第一電極シート31に融着する。このようにして、第一例の静電シート23aが成形される。
【0046】
(3-3-2.第二例の静電シート23bの構成)
第二例の静電シート23bについて
図9を参照して説明する。第二例の静電シート23bは、第一電極シート31と第二例の誘電体シート32bとを備える。誘電体シート32bは、非熱可塑性材料、特に非熱可塑性エラストマーにより形成され、面状に形成されている。誘電体シート32bの第一面(
図9の上面)側は、第一融着材料33の融着によって、第一電極シート31に間接的に接合されている。つまり、第一融着材料33が、第一電極シート31と誘電体シート32bとの間に介在している。そして、第一融着材料33は、第一電極シート31の内面(
図9の下面)側、及び、第一電極シート31の第一貫通孔31aの孔内周面の少なくとも一部に融着しており、且つ、誘電体シート32bの第一面の表面に融着している。なお、誘電体シート32bは、貫通孔を有しない非熱可塑性樹脂としてもよいし、貫通孔を有する非熱可塑性発泡樹脂としてもよい。誘電体シート32bが発泡樹脂である場合には、静電シート23bの通気性を高めることができる。
【0047】
第二例の静電シート23bは、例えば、以下のようにして成形される。第一電極シート31、誘電体シート32b、及び、第一融着材料33を準備する。第一融着材料33は、例えば、微小粒状や、微小シート状等に形成されている。そして、誘電体シート32bの第一面の表面側に第一電極シート31を積層し、さらに、誘電体シート32bの第一面の表面と第一電極シート31との間に第一融着材料33を配置する。この状態で、当該積層体を、一対の加圧加熱用ローラ(図示せず)の間に進入させる。つまり、一対の加圧加熱用ローラの熱が、第一融着材料33に伝達されて溶融する。そうすると、溶融された第一融着材料33が、第一電極シート31と誘電体シート32bとを接合する。このようにして、第二例の静電シート23bが成形される。
【0048】
(3-3-3.第三例の静電シート23cの構成)
第三例の静電シート23cについて
図10を参照して説明する。第三例の静電シート23cは、第一電極シート31と第三例の誘電体シート32cとを備える。誘電体シート32cは、熱可塑性材料、特に熱可塑性エラストマーにより形成されている。さらに、誘電体シート32cは、第一電極シート31の複数の第一貫通孔31a(
図3に示す)を維持するように第一電極シート31の表面にコーティングされている。例えば、誘電体シート32cは、溶融状態の熱可塑性材料をディップ、スプレー、コーティング等により、第一電極シート31の導電性繊維の全ての表面に付着されることによって、第一電極シート31と一体的に形成されている。つまり、誘電体シート32cは、第一電極シート31の内面(
図10の下面)側、第一電極シート31の第一貫通孔31aの孔内周面、及び、第一電極シート31の外面(
図10の上面)側の全てに付着している。ここで、誘電体シート32cが付着した状態において、第一電極シート31の第一貫通孔31aが貫通した状態を維持している。
【0049】
誘電体シート32cは、熱可塑性材料により形成されているため、誘電体シート32c自身の融着によって第一電極シート31に直接的に接合されている。さらには、誘電体シート32cは、誘電体シート32c自身の係合によって第一電極シート31に直接的に接合されている。ここで、係合とは、機械的な引っ掛かりを意味する。
【0050】
(3-3-4.第四例の静電シート23dの構成)
第四例の静電シート23dについて
図10を参照して説明する。第四例の静電シート23dは、第一電極シート31と第四例の誘電体シート32dとを備える。誘電体シート32dは、非熱可塑性材料、特に非熱可塑性エラストマーにより形成されている。第四例の誘電体シート32dは、非熱可塑性材料であること以外は、第三例の誘電体シート32cと同様である。
【0051】
(3-4.リング部12の中間成形体40の構成)
次に、リング部12の中間成形体40(
図7に示す)の構成について詳細に説明する。リング部12の中間成形体40は、上述したように、
図4のS3の静電シート接合工程において成形され、芯体21、樹脂内層材22及び静電シート23が一体化された部材である。
【0052】
中間成形体40は、以下に説明するように、第一例の中間成形体40a、第二例の中間成形体40b、第三例の中間成形体40c、及び、第四例の中間成形体40dの何れかを適用できる。ここで、静電シート23は、上述したように、第一例の静電シート23a(
図8)、第二例の静電シート23b(
図9)、第三例の静電シート23c(
図10)、及び、第四例の静電シート23d(
図10)の何れかを適用できる。中間成形体40a,40b,40c,40dのそれぞれは、静電シート23a,23b,23c,23dのそれぞれを適用した場合に該当する。
【0053】
(3-4-1.第一例の中間成形体40aの構成)
第一例の中間成形体40aについて
図11を参照して説明する。第一例の中間成形体40aは、第一例の静電シート23aを備える。第一例の静電シート23aにおける誘電体シート32aは、熱可塑性材料により形成されている。そして、誘電体シート32aの第二面(
図11の下面)側が、誘電体シート32a自身の融着によって、樹脂内層材22の外面に直接的に接合されている。
【0054】
第一例の中間成形体40aは、例えば、以下のようにして成形される。軸直角断面がC字形状に形成された静電シート23aは、
図6に示すように、芯体21及び樹脂内層材22の周囲に配置される。その後に、静電シート23aの外側から熱風をかけることにより、
図7に示すように、誘電体シート32aを変形させて、樹脂内層材22の外面の形状に倣わせる。同時に、熱風によって誘電体シート32aが溶融し、誘電体シート32aの融着によって、誘電体シート32aが樹脂内層材22に直接的に接合される。このようにして、中間成形体40aが成形される。
【0055】
(3-4-2.第二例の中間成形体40bの構成)
第二例の中間成形体40bについて
図12を参照して説明する。第二例の中間成形体40bは、第二例の静電シート23bを備える。第二例の静電シート23bにおける誘電体シート32bは、非熱可塑性材料により形成されている。誘電体シート32bの第二面(
図12の下面)側は、第二融着材料34の融着によって、樹脂内層材22の外面に間接的に接合されている。つまり、第二融着材料34が、樹脂内層材22の外面と誘電体シート32bの第二面との間に介在している。
【0056】
第二例の中間成形体40bは、例えば、以下のようにして成形される。軸直角断面がC字形状に形成された静電シート23bは、
図6に示すように、芯体21及び樹脂内層材22の周囲に配置される。このとき、樹脂内層材22の外面と誘電体シート32bの第二面との間に、第二融着材料34を配置する。第二融着材料34は、例えば、微小粒状や、微小シート状等に形成されている。この状態で、静電シート23bの外側から熱風をかけることにより、第二融着材料34が溶融し、第二融着材料34の融着によって、
図7に示すように、誘電体シート32bが樹脂内層材22に間接的に接合される。このようにして、中間成形体40bが成形される。
【0057】
(3-4-3.第三例の中間成形体40cの構成)
第三例の中間成形体40cについて
図13を参照して説明する。第三例の中間成形体40cは、第三例の静電シート23cを備える。第三例の静電シート23cにおける誘電体シート32cは、熱可塑性材料により形成されている。そして、誘電体シート32cの第二面(
図13の下面)側が、誘電体シート32c自身の融着によって、樹脂内層材22の外面に直接的に接合されている。
【0058】
第三例の中間成形体40cは、例えば、以下のようにして成形される。軸直角断面がC字形状に形成された静電シート23cは、
図6に示すように、芯体21及び樹脂内層材22の周囲に配置される。その後に、静電シート23cの外側から熱風をかけることにより、
図7に示すように、誘電体シート32cを変形させて、樹脂内層材22の外面の形状に倣わせる。同時に、熱風によって誘電体シート32cが溶融し、誘電体シート32cの融着によって、誘電体シート32cが樹脂内層材22に直接的に接合される。このようにして、中間成形体40cが成形される。
【0059】
(3-4-4.第四例の中間成形体40dの構成)
第四例の中間成形体40dについて
図14を参照して説明する。第四例の中間成形体40dは、第四例の静電シート23dを備える。第四例の静電シート23dにおける誘電体シート32dは、非熱可塑性材料により形成されている。誘電体シート32dの第二面(
図14の下面)側は、第二融着材料34の融着によって、樹脂内層材22の外面に間接的に接合されている。つまり、第二融着材料34が、樹脂内層材22の外面と誘電体シート32dの第二面との間に介在している。
【0060】
第四例の中間成形体40dは、例えば、以下のようにして成形される。軸直角断面がC字形状に形成された静電シート23dは、
図6に示すように、芯体21及び樹脂内層材22の周囲に配置される。このとき、樹脂内層材22の外面と誘電体シート32dの第二面との間に、第二融着材料34を配置する。第二融着材料34は、例えば、微小粒状や、微小シート状等に形成されている。この状態で、静電シート23dの外側から熱風をかけることにより、第二融着材料34が溶融し、第二融着材料34の融着によって、
図7に示すように、誘電体シート32dが樹脂内層材22に間接的に接合される。このようにして、中間成形体40dが成形される。
【0061】
(4.効果)
上述したように、静電シート23は、第一電極シート31と誘電体シート32とを備える。この静電シート23は、第一例から第四例の何れかによって成形されている。すなわち、
図8及び
図10に示すように、第一例及び第三例の静電シート23a,23cにおいては、誘電体シート32a,32c自身の融着によって、誘電体シート32a,32cと第一電極シート31とが接合されている。
図9に示すように、第二例の静電シート23bにおいては、誘電体シート32bとは異なる第一融着材料33の融着によって、誘電体シート32bと第一電極シート31とが接合されている。また、
図10に示すように、第三例及び第四例の静電シート23c,23dにおいては、誘電体シート32c,32dの係合によって、誘電体シート32c,32dと第一電極シート31とが接合されている。これらの何れにおいても、誘電体シート32と第一電極シート31とは、揮散型接着剤及び溶媒を用いることなく接合されている。従って、VOCの排出を抑制できる。
【0062】
さらに、静電シート23は、芯体21に直接的又は間接的に接合されている。誘電体シート32と芯体21とは、第一例から第四例の何れかによって接合されている。すなわち、
図11及び
図13に示すように、第一例及び第三例の中間成形体40a,40cにおいては、誘電体シート32a,32c自身の融着によって、誘電体シート32a,32cと芯体21に取り付けられている樹脂内層材22とが接合されている。
図12及び
図14に示すように、第二例及び第四例の中間成形体40b,40dにおいては、誘電体シート32b,32dとは異なる第二融着材料34の融着によって、誘電体シート32b,32dと芯体21に取り付けられている樹脂内層材22とが接合されている。これらの何れにおいても、誘電体シート32と芯体21に取り付けられている樹脂内層材22とは、揮散型接着剤及び溶媒を用いることなく接合されている。従って、当該部位においても、VOCの排出を抑制できる。
【0063】
そして、静電シート23は、上記のとおり、芯体21又は芯体21に取り付けられている樹脂内層材22に接合されているため、樹脂外層材24の成形に射出成形等を適用することが可能となる。そのため、縫製を行う場合に比べて、ステアリングホイール1の製造コストが低減する。
【0064】
(5.第二実施形態)
(5-1.ステアリングホイール1の詳細構成)
第二実施形態のステアリングホイール1の詳細構成について、
図15及び
図16を参照して説明する。特に、リング部12の詳細構成について説明する。
【0065】
リング部12は、導電部材としての芯体121、樹脂内層材22、静電シート123、及び、樹脂外層材24を備える。第二実施形態におけるリング部12は、第一実施形態に対して、芯体121及び静電シート123のみ相違し、他の構成は同一である。芯体121は、グランド電位に接続されている。本実施形態において、芯体121は、静電容量型センサの静電容量を構成する電極として機能するのではなく、静電シート123に対するシールド電極として機能する。
【0066】
静電シート123は、シート状に形成されている。静電シート123は、リング部12の貫通方向(
図1の方向)から見た場合において、リング部12の径方向外方(
図1の径方向外方、
図15の上方)から径方向内方(
図1の径方向内方、
図15の下方)に向かって芯体121及び樹脂内層材22の外面に巻き付けられるように設けられている。そのため、静電シート123の幅方向の両縁が、リング部12における径方向内方(
図1の径方向内方、
図15の下方)の部位にて、突き合せられた状態となる。もしくは、静電シート123の幅方向の両縁が、リング部12における径方向内方(
図1の径方向内方、
図15の下方)の部位にて、僅かに隙間を有して対向する状態となる。
【0067】
そして、ステアリングホイール1の製造過程において、静電シート123は、芯体121の外面の曲面形状に対応した予備形状となるように成形される。すなわち静電シート123は、軸直角断面が
図16に示すようなC字形状となるように成形され、且つ、
図1に示すような芯体121のリング形状に対応する形状に成形されている。
【0068】
静電シート123は、第一電極シート31と、誘電体シート32と、第二電極シート36とを備える。第一電極シート31及び第二電極シート36が、静電容量型センサ(トランスデューサ)の静電容量を構成する一対の電極として機能する。誘電体シート32が、静電容量型センサ(トランスデューサ)の静電容量の誘電層として機能する。
【0069】
第二電極シート36は、例えば、
図3に示すように、第一電極シート31と同様の導電性布である。第二電極シート36は、繊維により布を形成されることで、
図3に示すように、複数の第二貫通孔36aを備えると共に、柔軟性を有し、伸縮可能である。第二電極シート36は、導電性布の他に、柔軟性を有し伸縮可能な薄膜のパンチングメタルを適用することもできる。この場合、第二貫通孔36aは、打ち抜かれた部位となる。
【0070】
第二電極シート36は、誘電体シート32の第二面(
図15及び
図16における内面)側に配置されている。誘電体シート32の第二面側は、(f)誘電体シート32自身の融着、(g)誘電体シート32とは異なる第三融着材料37(後述する)の融着、及び、(h)誘電体シート32自身の係合の何れか一つによって、第二電極シート36に直接的又は間接的に接合されている。
【0071】
さらに、誘電体シート32の第二面側は、第一実施形態と同様に、(d)誘電体シート32自身の融着、及び、(e)誘電体シート32とは異なる第二融着材料39(後述する)の融着の何れか一つによって、芯体121に直接的に又は間接的に接合されている。ここで、本実施形態においては、芯体121の外面に樹脂内層材22が被覆しているため、誘電体シート32の第二面は、樹脂内層材22の外面側に直接的又は間接的に接合されている。
【0072】
ステアリングホイール1は、
図15に示すように、検出回路125を備える。検出回路125は、電源26から電力を供給されることにより動作する。検出回路125は、第一電極シート31及び第二電極シート36に電気的に接続されており、第一電極シート31と第二電極シート36との間の静電容量の変化に基づいて、運転者の手の接触又は接近を検出する。検出回路125における静電容量の検出方法の詳細は、公知であるため、説明を省略する。
【0073】
ここで、第二電極シート36は、理想的には、部位によらず同電位であるが、実際には部位によって電位差が生じることがある。そして、
図16に示すように、第二電極シート36は、軸直角断面において、環状に形成されている。そのため、第二電極シート36自身が部位によって電位差を有する場合には、第二電極シート36自身の電位差による静電容量によって、検出値に影響を及ぼすおそれがある。また、第一電極シート31、第二電極シート36に対して芯体121側からの静電結合等によるノイズによって検出値に影響を及ぼすおそれがある。そこで、芯体121をシールド電極として機能させることで、これらの影響を抑制することができる。
【0074】
(5-2.静電シート23の詳細構成)
次に、静電シート23の構成について詳細に説明する。静電シート23は、上述したように、
図4のS2の静電シート成形工程において成形され、第一電極シート31と誘電体シート32とを接合された部材である。静電シート23は、以下に説明するように、第一例の静電シート23a、第二例の静電シート23b、第三例の静電シート23c、及び、第四例の静電シート23dの何れかを適用できる。
【0075】
(5-2-1.第一例の静電シート123aの構成)
第一例の静電シート123aについて
図17を参照して説明する。第一例の静電シート123aは、第一実施形態における第一例の静電シート23aと同様の構成を有しており、さらに第二電極シート36を有する構成である。両実施形態における同一構成には、同一符号を付す。
【0076】
第一例の静電シート123aは、第一電極シート31と第一例の誘電体シート32aと第二電極シート36を備える。誘電体シート32aの第二面(
図17の下面)側は、第二電極シート36を埋設した状態で、誘電体シート32a自身の融着によって第二電極シート36に直接的に接合されている。つまり、第二電極シート36の内面(
図17の下面)側、第二電極シート36の第二貫通孔36aの孔内周面、及び、第二電極シート36の外面(
図17の上面)側の全てが、誘電体シート32aに融着している。
【0077】
第一例の静電シート123aは、例えば、以下のようにして成形される。第一電極シート31、誘電体シート32a、及び、第二電極シート36を準備する。誘電体シート32aの第一面の表面に第一電極シート31を積層する。さらに、誘電体シート32aの第二面の表面に第二電極シート36を積層する。この状態で、当該積層体を、一対の加圧加熱用ローラ(図示せず)の間に進入させる。つまり、一対の加圧加熱用ローラの熱が、誘電体シート32aの第一面の表面及び第二面の表面に伝達されて溶融する。そうすると、第一電極シート31が、誘電体シート32aの第一面の表面から内部に埋没する。さらに、第二電極シート36が、誘電体シート32aの第二面の表面から内部に埋没する。そして、誘電体シート32aが固化することに伴って、誘電体シート32aの第一面側の表層部分が、第一電極シート31に融着し、誘電体シート32aの第二面側の表層部分が、第二電極シート36に融着する。このようにして、第一例の静電シート123aが成形される。
【0078】
(5-2-2.第二例の静電シート123bの構成)
第二例の静電シート123bについて
図18を参照して説明する。第二例の静電シート123bは、第一実施形態における第二例の静電シート23bと同様の構成を有しており、さらに第二電極シート36を有する構成である。両実施形態における同一構成には、同一符号を付す。
【0079】
第二例の静電シート123bは、第一電極シート31、第二例の誘電体シート32b、及び、第二電極シート36を備える。誘電体シート32bの第二面(
図18の下面)側は、第三融着材料37の融着によって、第二電極シート36に間接的に接合されている。つまり、第三融着材料37が、第二電極シート36と誘電体シート32bとの間に介在している。そして、第三融着材料37は、第二電極シート36の外面(
図18の上面)側、及び、第二電極シート36の第二貫通孔36aの孔内周面の少なくとも一部に融着しており、且つ、誘電体シート32bの第二面の表面に融着している。
【0080】
第二例の静電シート123bは、例えば、以下のようにして成形される。まず、第一実施形態における第二例の静電シート23bに相当する第一電極シート31と誘電体シート32bとの一体部材を成形する。すなわち、第一融着材料33によって、第一電極シート31と誘電体シート32bとを接合する。続いて、第一電極シート31と誘電体シート32bとの一体部材、第二電極シート36、及び、第三融着材料37を準備する。第三融着材料37は、例えば、微小粒状や、微小シート状等に形成されている。そして、誘電体シート32bの第二面の表面側に第二電極シート36を積層し、さらに、誘電体シート32bの第二面の表面と第二電極シート36との間に第三融着材料37を配置する。この状態で、当該積層体を、一対の加圧加熱用ローラ(図示せず)の間に進入させる。つまり、一対の加圧加熱用ローラの熱が、第三融着材料37に伝達されて溶融する。そうすると、溶融された第三融着材料37が、第二電極シート36と誘電体シート32bとを接合する。このようにして、第二例の静電シート123bが成形される。
【0081】
(5-2-3.第三例の静電シート123cの構成)
第三例の静電シート123cについて
図19を参照して説明する。第三例の静電シート123cは、第一実施形態における第三例の静電シート23cと同様の構成を有している第三例の誘電体シート32c1,32c2を有する構成である。両実施形態における同一構成には、同一符号を付す。
【0082】
第三例の静電シート123cは、第一電極シート31、第三例の誘電体シート32c1,32c2、及び、第二電極シート36を備える。誘電体シート32c1は、第一実施形態における誘電体シート32cと同様である。誘電体シート32c2は、第二電極シート36の複数の第二貫通孔36a(
図3に示す)を維持するように第二電極シート36の表面にコーティングされている。例えば、誘電体シート32c2は、溶融状態の熱可塑性材料をディップ、スプレー、コーティング等により、第二電極シート36の導電性繊維の全ての表面に付着されることによって、第二電極シート36と一体的に形成されている。つまり、誘電体シート32c2は、第二電極シート36の内面(
図19の下面)側、第二電極シート36の第二貫通孔36aの孔内周面、及び、第二電極シート36の外面(
図19の上面)側の全てに付着している。ここで、誘電体シート32c2が付着した状態において、第二電極シート36の第二貫通孔36aが貫通した状態を維持している。
【0083】
誘電体シート32c2は、熱可塑性材料により形成されているため、誘電体シート32c2自身の融着によって第二電極シート36に直接的に接合されている。さらには、誘電体シート32c2は、誘電体シート32c2自身の係合によって第二電極シート36に直接的に接合されている。ここで、係合とは、機械的な引っ掛かりを意味する。
【0084】
さらに、誘電体シート32c1,32c2は、自身の融着によって相互に接合されている。なお、第一電極シート31と第二電極シート36とを距離を隔てて配置した状態で、溶融状態の熱可塑性材料をディップ、スプレー、コーティング等により、誘電体シート32c1,32c2が第一電極シート31及び第二電極シート36と一体的に形成されるようにしてもよい。
【0085】
(5-2-4.第四例の静電シート123dの構成)
第四例の静電シート123dについて
図19を参照して説明する。第四例の静電シート123dは、第一電極シート31、第四例の誘電体シート32d1,32d2、及び、第二電極シート36を備える。誘電体シート32d1,32d2は、非熱可塑性材料、特に非熱可塑性エラストマーにより形成されている。第四例の誘電体シート32d1,32d2は、非熱可塑性材料であること以外は、第三例の誘電体シート32c1,32c2と同様である。なお、誘電体シート32d1,32d2は、図示しない融着材料の融着により相互に接合されていてもよい。
【0086】
(5-3.リング部12の中間成形体40の構成)
次に、リング部12の中間成形体(第一実施形態の
図7に対応する構成)の構成について詳細に説明する。リング部12の中間成形体は、上述したように、
図4のS3の静電シート接合工程において成形され、芯体21、樹脂内層材22及び静電シート123が一体化された部材である。
【0087】
中間成形体は、以下に説明するように、第一例の中間成形体140a、第二例の中間成形体140b、第三例の中間成形体140c、及び、第四例の中間成形体140dの何れかを適用できる。ここで、静電シート123は、上述したように、第一例の静電シート123a(
図17)、第二例の静電シート123b(
図18)、第三例の静電シート123c(
図19)、及び、第四例の静電シート123d(
図19)の何れかを適用できる。中間成形体140a,140b,140c,140dのそれぞれは、静電シート123a,123b,123c,123dのそれぞれを適用した場合に該当する。
【0088】
(5-3-1.第一例の中間成形体140aの構成)
第一例の中間成形体140aについて
図20を参照して説明する。第一例の中間成形体140aは、第一例の静電シート123aを備える。第一例の静電シート123aにおける誘電体シート32aは、熱可塑性材料により形成されている。そして、誘電体シート32aの第二面(
図20の下面)側が、誘電体シート32a自身の融着によって、樹脂内層材22の外面に直接的に接合されている。
【0089】
第一例の中間成形体140aは、例えば、以下のようにして成形される。軸直角断面がC字形状に形成された静電シート123aは、芯体21及び樹脂内層材22の周囲に配置される。その後に、静電シート123aの外側から熱風をかけることにより、誘電体シート32aを変形させて、樹脂内層材22の外面の形状に倣わせる。同時に、熱風によって誘電体シート32aが溶融し、誘電体シート32aの融着によって、誘電体シート32aが樹脂内層材22に直接的に接合される。このようにして、中間成形体140aが成形される。
【0090】
(5-3-2.第二例の中間成形体140bの構成)
第二例の中間成形体140bについて
図21を参照して説明する。第二例の中間成形体140bは、第二例の静電シート123bを備える。第二例の静電シート123bにおける誘電体シート32bは、非熱可塑性材料により形成されている。静電シート123bの第二面(第二電極シート36側の面)側は、第二融着材料39の融着によって、樹脂内層材22の外面に間接的に接合されている。つまり、第二融着材料39が、樹脂内層材22の外面と静電シート123bの第二面との間に介在している。
【0091】
第二例の中間成形体140bは、例えば、以下のようにして成形される。軸直角断面がC字形状に形成された静電シート123bは、芯体21及び樹脂内層材22の周囲に配置される。このとき、樹脂内層材22の外面と静電シート123bの第二面との間に、第二融着材料39を配置する。第二融着材料39は、例えば、微小粒状や、微小シート状等に形成されている。この状態で、静電シート123bの外側から熱風をかけることにより、第二融着材料39が溶融し、第二融着材料39の融着によって、静電シート123bが樹脂内層材22に間接的に接合される。このようにして、中間成形体140bが成形される。
【0092】
(5-3-3.第三例の中間成形体140cの構成)
第三例の中間成形体140cについて
図22を参照して説明する。第三例の中間成形体140cは、第三例の静電シート123cを備える。第三例の静電シート123cにおける誘電体シート32c1,32c2は、熱可塑性材料により形成されている。そして、静電シート123cの第二面(誘電体シート32c2側の面)側が、誘電体シート32c2自身の融着によって、樹脂内層材22の外面に直接的に接合されている。
【0093】
第三例の中間成形体140cは、例えば、以下のようにして成形される。軸直角断面がC字形状に形成された静電シート123cは、芯体21及び樹脂内層材22の周囲に配置される。その後に、静電シート123cの外側から熱風をかけることにより、誘電体シート32c1,32c2を変形させて、樹脂内層材22の外面の形状に倣わせる。同時に、熱風によって誘電体シート32c2が溶融し、誘電体シート32c2の融着によって、誘電体シート32c2が樹脂内層材22に直接的に接合される。このようにして、中間成形体140cが成形される。
【0094】
(5-3-4.第四例の中間成形体140dの構成)
第四例の中間成形体140dについて
図23を参照して説明する。第四例の中間成形体140dは、第四例の静電シート123dを備える。第四例の静電シート123dにおける誘電体シート32d1,32d2は、非熱可塑性材料により形成されている。静電シート123dの第二面(誘電体シート32d2側の面)側は、第二融着材料39の融着によって、樹脂内層材22の外面に間接的に接合されている。つまり、第二融着材料39が、樹脂内層材22の外面と静電シート123dの第二面との間に介在している。
【0095】
第四例の中間成形体140dは、例えば、以下のようにして成形される。軸直角断面がC字形状に形成された静電シート123dは、芯体21及び樹脂内層材22の周囲に配置される。このとき、樹脂内層材22の外面と静電シート123dの第二面との間に、第二融着材料39を配置する。第二融着材料39は、例えば、微小粒状や、微小シート状等に形成されている。この状態で、静電シート123dの外側から熱風をかけることにより、第二融着材料39が溶融し、第二融着材料39の融着によって、誘電体シート32d2が樹脂内層材22に間接的に接合される。このようにして、中間成形体140dが成形される。
【0096】
(6.効果)
ここで、第二実施形態におけるステアリングホイール1は、第一実施形態と同様の効果を奏し、さらに以下の効果をそうする。第二実施形態における静電シート123は、第一電極シート31、誘電体シート32、及び、第二電極シート36を備える。静電シート123は、第一例から第四例の何れかによって成形されている。すなわち、
図17及び
図19に示すように、第一例及び第三例の静電シート123a,123cにおいては、誘電体シート32a,32c2自身の融着によって、誘電体シート32a,32c2と第二電極シート36とが接合されている。
図18に示すように、第二例の静電シート123bにおいては、誘電体シート32bとは異なる第三融着材料37の融着によって、誘電体シート32bと第二電極シート36とが接合されている。また、
図19に示すように、第三例及び第四例の静電シート123c,123dにおいては、誘電体シート32c2,32d2の係合によって、誘電体シート32c2,32d2と第二電極シート36とが接合されている。これらの何れにおいても、誘電体シート32と第二電極シート36とは、揮散型接着剤及び溶媒を用いることなく接合されている。従って、VOCの排出を抑制できる。
【0097】
さらに、静電シート123は、芯体21に直接的又は間接的に接合されている。誘電体シート32と芯体21とは、第一例から第四例の何れかによって接合されている。すなわち、
図20及び
図22に示すように、第一例及び第三例の中間成形体140a,140cにおいては、誘電体シート32a,32c2自身の融着によって、誘電体シート32a,32c2と芯体21に取り付けられている樹脂内層材22とが接合されている。
図21及び
図23に示すように、第二例及び第四例の中間成形体140b,140dにおいては、誘電体シート32b,32d2とは異なる第二融着材料39の融着によって、誘電体シート32b,32d2と芯体21に取り付けられている樹脂内層材22とが接合されている。これらの何れにおいても、誘電体シート32と芯体21に取り付けられている樹脂内層材22とは、揮散型接着剤及び溶媒を用いることなく接合されている。従って、当該部位においても、VOCの排出を抑制できる。
【0098】
上記第二実施形態では、静電シート123は、軸直角断面がC字状に形成された予備成形品としたが、平面形状でもよい。また、芯体21を導電部材としてシールド電極としたが、検出値への影響が小さい場合は、芯体21を非導電部材としてもよい。また、芯体21を非導電部材とし、別の導電部材を芯体21と第二電極シート36との間に介在させてもよい。
【符号の説明】
【0099】
1:ステアリングホイール(トランスデューサ)、11:コア部、12:リング部、13:連結部、21,121:芯体(導電部材)、22:樹脂内層材、23,23a,23b,23c,23d,123,123a,123b,123c,123d:静電シート、24:樹脂外層材、25:検出回路、26:電源、31:第一電極シート、31a:第一貫通孔、32,32a,32b,32c,32d,32c1,32c2,32d1,32d2:誘電体シート、33:第一融着材料、34,39:第二融着材料、36:第二電極シート、37:第三融着材料、40,40a,40b,40c,40d,140a,140b,140c,140d:中間成形体