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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/00 20060101AFI20221125BHJP
   E02F 3/80 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
E02F9/00 C
E02F3/80 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018133409
(22)【出願日】2018-07-13
(65)【公開番号】P2020012255
(43)【公開日】2020-01-23
【審査請求日】2021-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】398071668
【氏名又は名称】株式会社日立建機ティエラ
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】弁理士法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中谷 賢一郎
(72)【発明者】
【氏名】山本 大介
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-255146(JP,A)
【文献】特開平07-268909(JP,A)
【文献】特開平08-218417(JP,A)
【文献】特開平09-042213(JP,A)
【文献】特表2010-539478(JP,A)
【文献】特表2010-505052(JP,A)
【文献】実開昭58-153269(JP,U)
【文献】実開昭53-010501(JP,U)
【文献】実開昭62-035063(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/00
E02F 3/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走可能な下部走行体と、前記下部走行体上に旋回可能に搭載され、オペレータが着席する運転席を備えた上部旋回体と、基端側が前記下部走行体に上,下方向に回動可能に取付けられ先端側にブレードが設けられた排土装置と、前記排土装置に取付けられ前記ブレードの位置および姿勢を示す位置・姿勢検出装置と、前記上部旋回体に設けられ前記位置・姿勢検出装置が示す前記ブレードの位置および姿勢に基づいて前記排土装置の動作を制御するコントローラと、を含んでなる建設機械において、
前記上部旋回体に設けられ、前記運転席に着席したオペレータの足場となるフロア部の前側に位置する棒状部材と、
前記位置・姿勢検出装置に一端が接続されたブレード側ケーブルと、
前記コントローラに一端が接続された旋回体側ケーブルと、
前記棒状部材に固定して設けられ、前記旋回体側ケーブルの他端が接続されると共に前記ブレード側ケーブルの他端が着脱可能に接続される中継部材と、を備えたことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記棒状部材は、前記運転席よりも前側に位置して左,右方向に延在する手摺りであり、
前記手摺りの左,右方向の一側には、ブラケットを介して前記中継部材が固定されていることを特徴とする請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
前記位置・姿勢検出装置は、外部計測器により前記ブレードの位置を追尾するためのプリズムと、前記ブレードの姿勢を検出する傾斜センサとから構成され、
前記ブレードの長さ方向の一側には前記プリズムを取付けるためのマストが立設され、
前記ブレード側ケーブルの長さは、前記下部走行体に対して前記上部旋回体が、前記中継部材が前記プリズムに近づく方向に旋回可能となる角度よりも、前記中継部材が前記プリズムから離れる方向に旋回可能となる角度の方が大きくなるように設定されていることを特徴とする請求項1に記載の建設機械。
【請求項4】
前記ブレード側ケーブルは、前記上部旋回体が前記下部走行体に対して前記中継部材が前記位置・姿勢検出装置から離れる方向に75度旋回できるだけの長さを有していることを特徴とする請求項1に記載の建設機械。
【請求項5】
前記位置・姿勢検出装置は、外部計測器により前記ブレードの位置を追尾するためのプリズムと、前記ブレードの姿勢を検出する傾斜センサとから構成され、
前記ブレードの長さ方向の一側には前記プリズムを取付るためのマストが立設され、
前記マストには、前記中継部材から前記ブレード側ケーブルの他端が取外された状態で前記ブレード側ケーブルの他端を保持するケーブル保持具が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば油圧ショベル等の建設機械に関し、特に、整地作業に用いられるブレードを備えた建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建設機械の代表例である油圧ショベルは、自走可能な下部走行体と、下部走行体上に旋回装置を介して旋回可能に搭載された上部旋回体と、上部旋回体の前側に設けられた作業装置とを備えて構成されている。また、下部走行体を構成するトラックフレームの前側には、左,右方向に延びるブレード(排土板)を有する排土装置が設けられ、この排土装置を用いて土砂等の排土作業、造成地や道路等の整地作業が行われる。
【0003】
ここで、ブルドーザを用いて整地作業を行う場合に、ブルドーザに搭載されたブレードの動作を全地球的航法衛星システム(GNSSシステム)によって制御する方法が知られている。このGNSSシステムは、ブルドーザのブレードにマストを介して取付けられたGNSSアンテナと、ブレードの姿勢を検出する傾斜センサと、ブルドーザの車体に搭載されたコントローラとを備えている。そして、コントローラが、GNSSアンテナからの信号と傾斜センサからの信号とに基づいてブレードの位置を連続的に計測し、施工すべき地面の3次元データに従ってブレードの動作を自動制御することにより、施工すべき地面に適合した整地作業を行うことができる(特許文献1参照)。
【0004】
一方、油圧ショベルに搭載された排土装置においても、施工すべき地面の3次元データに従って制御する整地作業システムが知られている。この整地作業システムは、油圧ショベルのブレードに取付けられた位置・姿勢検出装置と、上部旋回体に搭載されブレードの動作を制御するコントローラとを備えている。そして、特許文献1のように位置・姿勢検出装置により連続的にブレードの位置を計測し、この計測結果(ブレードの位置情報)をコントローラに送信する。これにより、コントローラは、ブレードの位置情報と施工すべき地面の3次元データとに基づいてブレードの動作を制御し、施工すべき地面に適合した整地作業を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5466159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、油圧ショベルは、上部旋回体が下部走行体に対して旋回可能に設けられる構成となっている。そのため、下部走行体側の排土装置(ブレード)に取付けられた位置・姿勢検出装置と、上部旋回体に搭載されたコントローラとの間はケーブルを介して接続されるため、下部走行体に対する上部旋回体の旋回動作がケーブルによって制限される。この結果、作業装置を用いた掘削作業等の作業性が著しく低下してしまうという問題がある。
【0007】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、整地作業用の位置・姿勢検出装置とコントローラが搭載された場合でも、上部旋回体の旋回動作を円滑に行うことができるようにした建設機械を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するため本発明は、自走可能な下部走行体と、前記下部走行体上に旋回可能に搭載され、オペレータが着席する運転席を備えた上部旋回体と、基端側が前記下部走行体に上,下方向に回動可能に取付けられ先端側にブレードが設けられた排土装置と、前記排土装置に取付けられ前記ブレードの位置および姿勢を示す位置・姿勢検出装置と、前記上部旋回体に設けられ前記位置・姿勢検出装置が示す前記ブレードの位置および姿勢に基づいて前記排土装置の動作を制御するコントローラと、を含んでなる建設機械に適用される。
【0009】
本発明の特徴は、前記上部旋回体に設けられ、前記運転席に着席したオペレータの足場となるフロア部の前側に位置する棒状部材と、前記位置・姿勢検出装置に一端が接続されたブレード側ケーブルと、前記コントローラに一端が接続された旋回体側ケーブルと、前記棒状部材に固定して設けられ、前記旋回体側ケーブルの他端が接続されると共に前記ブレード側ケーブルの他端が着脱可能に接続される中継部材と、を備えたことにある。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、排土装置を用いて整地作業を行う場合には、旋回体側ケーブルの他端とブレード側ケーブルの他端とを中継部材を介して接続することにより、位置・姿勢検出装置とコントローラとの間を接続することができる。一方、ブレード側ケーブルの他端を中継部材から取外すことにより、上部旋回体の旋回動作がケーブルによって制限されることがなく、下部走行体に対して上部旋回体を360度の範囲で全旋回させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態による油圧ショベルを示す側面図である。
図2】油圧ショベルを上部旋回体を右旋回させた状態で示す平面図である。
図3】作業装置を取外した油圧ショベルを前方から示す正面図である。
図4】ブレード側ケーブルを中継コネクタに取付けた状態を示す拡大正面図である。
図5】ブレード側ケーブルを中継コネクタから取外した状態を示す拡大正面図である。
図6】旋回体側ケーブル、ブレード側ケーブル、中継コネクタ等の要部を示す斜視図である。
図7】プリズム、マスト、ブレード側ケーブル、ケーブル保持具を示す斜視図である。
図8】ブレード側ケーブルの他端をケーブル保持具によって保持した状態を示す図7と同様な斜視図である。
図9】中継コネクタの変形例を示す図5と同様な拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る建設機械の実施の形態について、後方小旋回型の油圧ショベルを例に挙げ、図1ないし図9を参照しつつ詳細に説明する。
【0013】
建設機械の代表例である油圧ショベル1は、前,後方向に自走可能なクローラ式の下部走行体2と、下部走行体2上に旋回装置3を介して旋回可能に搭載された上部旋回体4とを備えている。上部旋回体4の前側には、土砂の掘削作業等を行うスイング式の作業装置5が設けられている。
【0014】
ここで、下部走行体2は、ベースとなるトラックフレーム2Aを備え、トラックフレーム2Aは、左,右方向で対をなして前,後方向に延びる左,右のサイドフレーム2B(左側のみ図示)を有している。左,右のサイドフレーム2Bの前,後方向の一側には遊動輪2Cが設けられ、前,後方向の他側には駆動輪2Dが設けられている。遊動輪2Cと駆動輪2Dには履帯2Eが巻装され、駆動輪2Dによって履帯2Eを駆動することにより下部走行体2が走行する。また、下部走行体2のトラックフレーム2Aには、後述する排土装置18が設けられている。
【0015】
上部旋回体4は、下部走行体2のトラックフレーム2Aに旋回装置3を介して旋回可能に搭載されている。上部旋回体4は、後述の旋回フレーム6、カウンタウエイト7、エンジン8、運転席9、フロア部材12、手摺り14、キャノピ16、外装カバー17等を含んで構成されている。
【0016】
作業装置5は、後述する旋回フレーム6の前端に左,右方向に揺動可能に取付けられたスイングポスト5Aと、スイングポスト5Aに俯仰動可能に取付けられたブーム5Bと、ブーム5Bの先端に回動可能に取付けられたアーム5Cと、アーム5Cの先端に回動可能に取付けられたバケット5Dと、ブームシリンダ5E、アームシリンダ5F、バケットシリンダ5Gを備えて構成されている。また、旋回フレーム6とスイングポスト5Aとの間には、スイングポスト5Aを左,右方向に揺動させるスイングシリンダ5Hが設けられている(図2参照)。
【0017】
旋回フレーム6は、上部旋回体4のベースとなるもので、旋回装置3を介してトラックフレーム2A上に取付けられている。旋回フレーム6の前部側には、前方に突出する支持ブラケット6Aが設けられ、この支持ブラケット6Aには、作業装置5のスイングポスト5Aが左,右方向に揺動可能に支持されている。旋回フレーム6の後部側にはカウンタウエイト7が設けられ、このカウンタウエイト7によって作業装置5との重量バランスが保たれている。
【0018】
ここで、カウンタウエイト7の後面7Aは、上部旋回体4が旋回したときに下部走行体2の左,右の車幅寸法(左,右の履帯2Eの間隔)A内に収まり、上部旋回体4の旋回時における周囲の障害物との干渉を回避できるようになっている。これにより、油圧ショベル1は、上部旋回体4の後方小旋回を実現している。なお、後方小旋回の定義としては、作業上で問題にならない範囲で、カウンタウエイト7の一部が下部走行体2の車幅寸法Aから若干はみ出す程度も含むものである。
【0019】
原動機としてのエンジン8は、カウンタウエイト7の前側に位置して旋回フレーム6に搭載されている。エンジン8は、油圧ショベル1に搭載された油圧アクチュエータに圧油を供給する油圧ポンプ(図示せず)を駆動する。なお、原動機としては、電動モータ、あるいはエンジンと電動モータとを組合せたハイブリッド式の原動機を用いることができる。
【0020】
運転席9は、カウンタウエイト7の前側で、かつエンジン8の上側に位置して旋回フレーム6上に設けられている。運転席9は、油圧ショベル1を操縦するオペレータが着席するものである。運転席9の左,右両側には、旋回装置3および作業装置5等を操作するための左操作レバー10Aおよび右操作レバー10Bが配置されている。また、右操作レバー10Bの右側には、後述する排土装置18を操作するためのブレード操作レバー(図示せず)が配置されている。さらに、右操作レバー10Bの前側には、例えば油圧ショベル1の運転状態、設定、警告等の情報をオペレータに対して表示するマルチモニタ装置11が設けられている。
【0021】
上部旋回体4のフロア部を構成するフロア部材12は、運転席9の前側に設けられている。フロア部材12は平坦な板体からなり、運転席9に着席したオペレータの足場を形成している。フロア部材12には、左,右一対の走行レバー・ペダル装置13が設けられている。これら左,右の走行レバー・ペダル装置13を手動操作または足踏み操作することにより、下部走行体2の走行動作が制御される。
【0022】
棒状部材としての手摺り14は、フロア部材12の前側に設けられ、フロア部材12から上方に立上がっている。手摺り14は、運転席9よりも前側に位置して左,右方向に延在し、例えばオペレータが地面とフロア部材12との間を乗降するときに把持したり、フロア部材12上に立上がったオペレータが掘削した穴を覗込むときに把持するものである。図3に示すように、手摺り14は、例えばパイプ材等の1本の棒材に折曲加工を施すことにより、上,下方向に延びる左縦棒14Aおよび右縦棒14Bと、これら左縦棒14Aと右縦棒14Bの上端部間を連結する上横棒14Cとを有する逆U字型の枠状に形成されている。また、左縦棒14Aと右縦棒14Bの上,下方向の中間部位は、上横棒14Cの下側に位置して左,右方向に延びる補強梁14Dによって連結されている。
【0023】
手摺り14の左,右方向の中間部で、かつ補強梁14Dの下側には、夜間作業時に油圧ショベル1の前方を照らす前照灯15が設けられている。また、手摺り14を構成する左縦棒14Aと前照灯15との間には、後述するブラケット30を介して中継コネクタ26および他の中継コネクタ29が配置されている。
【0024】
キャノピ16はカウンタウエイト7の上面に取付けられ、運転席9を上側から覆っている。キャノピ16は、例えば左,右方向に間隔をもってカウンタウエイト7の上面に立設された左,右の支柱16Aと、左,右の支柱16Aの上端側に設けられたルーフ16Bとを備えた2柱式のキャノピとして構成されている。なお、本実施の形態ではキャノピ16を備えたキャノピ仕様の油圧ショベル1を例示しているが、キャノピ16に代えてキャブを備える構成としてもよい。
【0025】
外装カバー17は、旋回フレーム6に搭載された熱交換器、コントロールバルブ、作動油タンク、燃料タンク等(いずれも図示せず)の搭載機器を覆った状態で旋回フレーム6に設けられている。外装カバー17は、エンジン8の右側に配置された熱交換器等を覆う右後カバー17Aと、右後カバー17Aの前側に開閉可能に設けられ、作動油タンクおよび燃料タンク等を覆う右前カバー17Bと、カウンタウエイト7の左前側から旋回フレーム6の支持ブラケット6Aに亘って配置され、旋回フレーム6の底板とフロア部材12との間を覆うスカートカバー17Cとを備えている。ここで、右後カバー17Aの上側には後述するコントローラ22が配置され、右前カバー17Bの後側には後述するモニタ装置23が配置されている。
【0026】
次に、下部走行体2に設けられた排土装置18について説明する。
【0027】
排土装置18は、下部走行体2のトラックフレーム2Aに設けられている。図2に示すように、排土装置18は、基端側がトラックフレーム2Aに上,下方向に揺動可能に取付けられたV字状の昇降アーム18Aと、左,右方向に延びる長方形の板状体からなり、後面側の中央部が昇降アーム18Aの先端側に自在ピン18Bを介して取付けられたブレード18Cと、後述する昇降シリンダ18D、アングルシリンダ18E、チルトシリンダ18Fとにより構成されている。
【0028】
昇降シリンダ18Dは、昇降アーム18Aとトラックフレーム2Aとの間に設けられている。アングルシリンダ18Eは、昇降アーム18Aの左側部位とブレード18Cとの間に前,後方向に延びた状態で設けられている。チルトシリンダ18Fは、ブレード18Cの後面18Gに沿って左,右方向に延びた状態で、昇降アーム18Aとブレード18Cとの間に設けられている。
【0029】
昇降シリンダ18Dは、昇降アーム18Aを介してブレード18Cを上,下方向に揺動させる。従って、油圧ショベル1の走行時にブレード18Cを下降させることにより、土砂を走行方向に押出して地面を整地することができる。アングルシリンダ18Eは、ブレード18Cの長さ方向の両端を自在ピン18Bの位置を中心にして前,後方向に揺動させる。これにより、ブレード18Cによって押出される土砂を、下部走行体2の左側方または右側方にまとめて排出することができる。チルトシリンダ18Fは、ブレード18Cの長さ方向の両端を自在ピン18Bの位置を中心にして上,下方向に揺動させる。これにより、ブレード18Cによって整地される地面に勾配を形成することができる。
【0030】
これら昇降シリンダ18D、アングルシリンダ18E、チルトシリンダ18Fは、コントロールバルブ(図示せず)によって圧油の給排が制御されることにより、ブレード18Cの高さ位置および姿勢を制御するものである。また、ブレード18Cの左,右方向(長さ方向)の一側である左側の端部18Hの後面18Gには、後述するマスト19を取付けるための支持台座18Jが、溶接等の手段を用いて固定されている。
【0031】
マスト19は、ブレード18Cの支持台座18J上に取付けられることにより、ブレード18Cの左側の端部18Hに立設されている。マスト19は、例えば円筒状のパイプ材を用いて形成され、支持台座18Jから鉛直上向きに延びている。マスト19の下端19Aは、ボルト等(図示せず)を用いて支持台座18J上に固定され、マスト19の上端19Bには、後述するプリズム21が取付けられている。
【0032】
位置・姿勢検出装置は、傾斜センサ20とプリズム21とで構成されている。傾斜センサ20は、ブレード18Cの長さ方向の中間部に位置してブレード18Cの後面18G側に設けられている。傾斜センサ20は、排土装置18を用いた整地作業時におけるブレード18Cのチルト角度、即ち、ブレード18Cの両端の上,下方向への揺動角度を検出し、このチルト角度をコントローラ22に出力する。従って、傾斜センサ20とコントローラ22との間は、後述するブレード側ケーブル24、旋回体側ケーブル25、中継コネクタ26を介して電気的に接続されている。
【0033】
プリズム21は、マスト19の上端19Bに設けられることにより、マスト19を介してブレード18Cの左側の端部18Hに取付けられている。プリズム21は、排土装置18を用いた整地作業時に自動追尾式のトータルステーション(図示せず)によって追尾される対象物(ターゲット)である。トータルステーションは、プリズム21を追尾することによりブレード18Cの位置と高さとを連続的に計測し、この計測結果をブレード18Cの位置情報として、無線によりコントローラ22に出力する。
【0034】
整地作業用のコントローラ22は、外装カバー17を構成する右後カバー17Aの上側に位置して上部旋回体4上に搭載されている。コントローラ22は、例えば直方体の箱状をなし、ブラケット等を用いて旋回フレーム6に取付けられている。コントローラ22は、トータルステーション(図示せず)および傾斜センサ20からの出力(ブレード18Cの位置および姿勢)に基づいて、ブレード18C用のコントロールバルブ(図示せず)を制御する。これにより、排土装置18を用いて整地作業を行うときに、排土装置18(昇降シリンダ18D、チルトシリンダ18F)の動作が、施工すべき地面の3次元データに従って制御される構成となっている。
【0035】
モニタ装置23は、外装カバー17を構成する右前カバー17Bの後側に位置して上部旋回体4上に搭載されている。モニタ装置23は、ブラケット等を用いて旋回フレーム6に取付けられ、運転席9の右側方に配置されている。モニタ装置23は、排土装置18を用いた整地作業が行われるときに、施工すべき地面の3次元データ、計測されたブレード18Cの位置情報等を表示するものである。
【0036】
ここで、自動追尾式のトータルステーションを用いた整地作業を行う場合、油圧ショベル1に対して特定のトータルステーションがセット(一組)となって稼働する。このため、油圧ショベル1のコントローラ22が、特定のトータルステーションからの位置情報のみを確実に受信できるように、プリズム21とコントローラ22との間で認証用の信号を送受信する必要がある。従って、プリズム21とコントローラ22との間は、後述する他のブレード側ケーブル27、他の旋回体側ケーブル28、他の中継コネクタ29を介して電気的に接続されている。
【0037】
ブレード側ケーブル24は、その一端24Aが傾斜センサ20に着脱可能に接続されている。ブレード側ケーブル24の他端24Bには、例えば内周面に雌ねじが形成された筒状のソケット24Cが設けられている。
【0038】
旋回体側ケーブル25は、その一端25Aがコントローラ22に接続されている。旋回体側ケーブル25の他端25Bには、中継部材としての中継コネクタ26が一体的に固定されている。ここで、中継コネクタ26は、例えば外周面に雄ねじが形成されたプラグ26Aを有し、後述するブラケット30を介して手摺り14に固定されている。そして、ブレード側ケーブル24のソケット24Cは、旋回体側ケーブル25の他端25Bに固定された中継コネクタ26のプラグ26Aに着脱可能に接続される。これにより、傾斜センサ20とコントローラ22との間は、ブレード側ケーブル24、旋回体側ケーブル25、中継コネクタ26を介して電気的に接続されている。
【0039】
他のブレード側ケーブル27は、その一端27Aがプリズム21に接続されている。他のブレード側ケーブル27の他端27Bには、例えば内周面に雌ねじが形成された筒状のソケット27Cが設けられている。
【0040】
他の旋回体側ケーブル28は、その一端28Aがコントローラ22に接続されている。他の旋回体側ケーブル28の他端28Bには、他の中継コネクタ29が一体的に固定されている。ここで、他の中継コネクタ29は、例えば外周面に雄ねじが形成されたプラグ29Aを有し、ブラケット30を介して手摺り14に固定されている。そして、他のブレード側ケーブル27のソケット27Cは、他の旋回体側ケーブル28の他端28Bに固定された他の中継コネクタ29のプラグ29Aに着脱可能に接続される。これにより、プリズム21とコントローラ22との間は、他のブレード側ケーブル27、他の旋回体側ケーブル28、他の中継コネクタ29を介して電気的に接続されている。
【0041】
次に、ブラケット30を用いた中継コネクタ26および他の中継コネクタ29の手摺り14に対する取付構造について説明する。
【0042】
図3ないし図6に示すように、ブラケット30は、手摺り14の左,右方向の一側(左側)に配置された左縦棒14Aに取付けられた支持基板31と、支持基板31に対して中継コネクタ26を固定する後述の下ブロック33と、支持基板31に対して他の中継コネクタ29を固定する後述の上ブロック34とにより構成されている。
【0043】
支持基板31は、手摺り14の左縦棒14Aに取付けられ、左縦棒14Aから前照灯15に向けて左,右方向に延在している。支持基板31は、例えば平板状の板体に折曲げ加工を施すことにより形成され、その上端側は後方に屈曲して手摺り14の補強梁14Dに係合している。支持基板31は、左縦棒14Aに取付けられる取付板部31Aを有し、運転席9とは反対側となる前面31Bには、下ブロック33と上ブロック34とが配置されている。支持基板31は、左縦棒14Aを跨いで配置された2本のUボルト32のねじ部32Aが取付板部31Aに挿通され、各Uボルト32のねじ部32Aにナット32Bが螺着されることにより、左縦棒14Aに固定されている。これにより、支持基板31は、手摺り14の補強梁14Dとフロア部材12との間の空間を塞いだ状態で、手摺り14の左縦棒14Aと前照灯15との間に配置されている。
【0044】
下ブロック33は、支持基板31の前面31Bから前方に突出して設けられ、支持基板31に対して中継コネクタ26を固定している。下ブロック33は、中継コネクタ26を前,後方向から挟持する2個の分割体33A,33Bと、これら各分割体33A,33Bを支持基板31に締結する2本のボルト33Cとにより構成されている。そして、下ブロック33の各分割体33A,33Bによって中継コネクタ26を挟持し、各ボルト33Cを用いて下ブロック33を支持基板31に締結することにより、中継コネクタ26は、支持基板31の前面31B側に固定される。このとき、中継コネクタ26のプラグ26Aは、下ブロック33から左側(左縦棒14A側)に突出し、このプラグ26Aに対し、ブレード側ケーブル24の他端24Bに設けられたソケット24Cを容易に取付け、取外しすることができる構成となっている。
【0045】
上ブロック34は、下ブロック33と同様に、支持基板31の前面31Bから前方に突出して設けられ、支持基板31に対して他の中継コネクタ29を固定している。上ブロック34は、他の中継コネクタ29を前,後方向から挟持する2個の分割体34A,34Bと、これら各分割体34A,34Bを支持基板31に締結する2本のボルト34Cとにより構成されている。そして、上ブロック34の各分割体34A,34Bによって他の中継コネクタ29を挟持し、各ボルト34Cを用いて上ブロック34を支持基板31に締結することにより、他の中継コネクタ29は、支持基板31の前面31B側に固定される。このとき、他の中継コネクタ29のプラグ29Aは、上ブロック34から左側に突出し、このプラグ29Aに対し、他のブレード側ケーブル27の他端27Bに設けられたソケット27Cを容易に取付け、取外しすることができる構成となっている。
【0046】
このように、旋回体側ケーブル25の一端25Aはコントローラ22に接続され、旋回体側ケーブル25の他端25Bに固定された中継コネクタ26は、ブラケット30を介して手摺り14に固定されている。この場合、図2に示すように、旋回体側ケーブル25の配索経路は、運転席9と外装カバー17との間を通ってフロア部材12に向けて前方へと延び、フロア部材12の前端側から左側に屈曲して手摺り14のブラケット30に達している。一方、他の旋回体側ケーブル28の一端28Aはコントローラ22に接続され、他の旋回体側ケーブル28の他端28Bに固定された他の中継コネクタ29は、ブラケット30を介して手摺り14に固定されている。この場合、他の旋回体側ケーブル28の配索経路は、旋回体側ケーブル25と同様に、当運転席9と外装カバー17との間を通ってフロア部材12に向けて前方へと延び、フロア部材12の前端側から左側に屈曲して手摺り14のブラケット30に達している。このように、旋回体側ケーブル25および他の旋回体側ケーブル28の配索経路は、運転席9および運転席9の周囲でオペレータが作業を行うときの邪魔にならないように設定されている。
【0047】
また、手摺り14に取付けられたブラケット30の支持基板31は、手摺り14の補強梁14Dとフロア部材12との間を閉塞し、中継コネクタ26と他の中継コネクタ29とは、支持基板31の前面31B側に固定されている。従って、中継コネクタ26を介して接続されたブレード側ケーブル24と旋回体側ケーブル25、他の中継コネクタ29を介して接続された他のブレード側ケーブル27と他の旋回体側ケーブル28を、支持基板31を挟んで運転席9とは反対側に配置することができる。これにより、運転席9に着席したオペレータの足が、ブレード側ケーブル24と旋回体側ケーブル25との接続部位、他のブレード側ケーブル27と他の旋回体側ケーブル28との接続部位に接触するのを抑え、これら各ケーブルの意図しない断線等を抑えることができる構成となっている。
【0048】
ここで、排土装置18を用いて整地作業を行う場合には、運転席9に着席したオペレータがブレード18Cの左,右方向の両端部を確実に目視することができるように、下部走行体2に対して上部旋回体4がプリズム21から離れる方向に角度θ(例えば45度)だけ右旋回した姿勢(図2の姿勢)を保って作業が行うことがある。この姿勢は、ブーム5Bによってブレード18Cの左,右方向の両端部への視界が遮られるのを抑えるための姿勢である。また、整地作業中にはブレード18Cの前には土砂の溜りが生じる。その場合、オペレータは、整地作業中の角度θだけ右旋回した姿勢から、左,右方向に上部旋回体4をさらに旋回させて(例えば30度)作業装置5をブレード18Cの前で動かすことにより、ブレード18Cの前の土砂を作業装置5により散らす(均す)作業を行う。
【0049】
そのため、他のブレード側ケーブル27は、上部旋回体4が、運転席9が正面を向いた状態(図3の状態)からプリズム21が設けられている方向と反対方向に所定の角度(例えば75度)で旋回できるだけの長さを有している。即ち、他のブレード側ケーブル27は、上部旋回体4が下部走行体2に対し、中継コネクタ26がプリズム21から離れる方向(右旋回方向)に所定の角度で旋回できるだけの長さを有している。同様に、ブレード側ケーブル24も、上部旋回体4が下部走行体2に対し、右旋回方向に所定の角度で旋回できるだけの長さを有している。このように、他のブレード側ケーブル27の長さを、下部走行体2に対する上部旋回体4の旋回可能角度を、プリズム21に近づく方向の角度よりもプリズム21から離れる方向の角度の方が大きくなるように設定し、整地作業中の作業性の向上を図っている。
【0050】
ケーブル保持具35は、プリズム21が取付けられたマスト19の上端19B側に設けられている。図7に示すように、ケーブル保持具35は、マスト19の外周面に固着されたL字型の取付板35Aと、取付板35Aに固定されたプラグ35Bとにより構成されている。プラグ35Bは取付板35Aから鉛直下向きに突出し、その外周面には雄ねじが形成されている。図8に示すように、他のブレード側ケーブル27の他端27Bを他の中継コネクタ29から取外したときには、他のブレード側ケーブル27の他端27Bに設けられたソケット27Cを、ケーブル保持具35のプラグ35Bに接続する。これにより、他のブレード側ケーブル27の他端27Bは、自由端とならずにケーブル保持具35によって保持される構成となっている。
【0051】
本実施の形態による油圧ショベル1は上述の如き構成を有するもので、以下、油圧ショベル1の排土装置18を用いて整地作業を行う場合について説明する。
【0052】
まず、オペレータは、上部旋回体4のフロア部材12に乗込んで運転席9に着席する。運転席9に着席したオペレータは、例えば左操作レバー10Aを操作することにより、下部走行体2に対して上部旋回体4を旋回させる。この場合、排土装置18を用いた整地作業時には、運転席9に着席したオペレータがブレード18Cの左,右方向の両端部を確実に目視することができるように、上部旋回体4は、運転席9が正面を向いた状態(図3の状態)から図2に示す位置まで45度右旋回した姿勢を保つことが望ましい。
【0053】
そして、オペレータがブレード操作レバー(図示せず)を操作し、ブレード18Cの下端を地面に接地させた状態で、走行レバー・ペダル装置13によって油圧ショベル1を走行させることにより、地面の整地作業を行うことができる。このとき、トータルステーション(図示せず)は、ブレード18Cに取付けられたプリズム21を追尾することによりブレード18Cの位置と高さとを連続的に計測し、この計測結果をブレード18Cの位置情報として、無線によりコントローラ22に出力する。一方、傾斜センサ20は、ブレード18Cのチルト角度を検出し、このチルト角度をコントローラ22に出力する。
【0054】
コントローラ22は、トータルステーションおよび傾斜センサ20からの出力に基づいて、ブレード18C用のコントロールバルブ(図示せず)を制御する。これにより、排土装置18(昇降シリンダ18D、チルトシリンダ18F)の動作が、施工すべき地面の3次元データに従って制御される。この結果、施工すべき地面の3次元データに従ってブレード18Cの姿勢(高さ、チルト角等)が変化し、施工すべき地面に適合した整地作業を行うことができる。
【0055】
次に、油圧ショベル1の作業装置5を用いて土砂等の掘削作業を行う場合について説明する。
【0056】
作業装置5を用いて掘削作業を行う場合には、上部旋回体4が下部走行体2上で自由に旋回できるように、ブレード18C側の傾斜センサ20に接続されたブレード側ケーブル24と、上部旋回体4側のコントローラ22に接続された旋回体側ケーブル25との間を切離すと共に、ブレード18C側のプリズム21に接続された他のブレード側ケーブル27と、上部旋回体4側のコントローラ22に接続された他の旋回体側ケーブル28との間を切離す必要がある。
【0057】
ここで、一端25Aがコントローラ22に接続された旋回体側ケーブル25の他端25Bには、プラグ26Aを有する中継コネクタ26が一体的に固定され、この中継コネクタ26は、手摺り14に取付けられたブラケット30(下ブロック33)に固定されている。従って、図5に示すように、ブラケット30に固定された中継コネクタ26のプラグ26Aから、ブレード側ケーブル24の他端24Bに設けられたソケット24Cを取外すことにより、ブレード側ケーブル24と旋回体側ケーブル25との間を容易に切離すことができる。そして、ブレード側ケーブル24の他端24Bを中継コネクタ26から取外した状態で、例えばブレード側ケーブル24の一端24Aを傾斜センサ20から取外すことにより、傾斜センサ20と中継コネクタ26とに対し、ブレード側ケーブル24を完全に取外すことができる。
【0058】
一方、一端28Aがコントローラ22に接続された他の旋回体側ケーブル28の他端28Bには、プラグ29Aを有する他の中継コネクタ29が一体的に固定され、他の中継コネクタ29は、手摺り14に取付けられたブラケット30(上ブロック34)に固定されている。従って、図5に示すように、ブラケット30に固定された他の中継コネクタ29のプラグ29Aから、他のブレード側ケーブル27の他端27Bに設けられたソケット27Cを取外すことにより、他のブレード側ケーブル27と他の旋回体側ケーブル28との間を容易に切離すことができる。そして、図7および図8に示すように、他のブレード側ケーブル27の他端27Bに設けられたソケット27Cを、ケーブル保持具35のプラグ35Bに接続する。これにより、他のブレード側ケーブル27の他端27Bをケーブル保持具35によって保持することができ、上部旋回体4の旋回動作時に他のブレード側ケーブル27がばたつくのを抑え、他のブレード側ケーブル27が油圧ショベル1に接触して破損するのを防止することができる。
【0059】
この場合、中継コネクタ26および他の中継コネクタ29は、運転席9の前側に立設された手摺り14にブラケット30を介して取付けられている。このため、オペレータは、油圧ショベル1から降りることなく、フロア部材12を足場として、かつ手摺り14を把持した状態で、ブレード側ケーブル24の他端24Bおよび他のブレード側ケーブル27の他端27Bの取外し作業を、安全かつ容易に行うことができる。
【0060】
しかも、中継コネクタ26と他の中継コネクタ29とは、ブラケット30を構成する支持基板31の前面31B側に配置されている。これにより、中継コネクタ26を介して接続されたブレード側ケーブル24と旋回体側ケーブル25、他の中継コネクタ29を介して接続された他のブレード側ケーブル27と他の旋回体側ケーブル28を、支持基板31を挟んで運転席9とは反対側に配置することができる。これにより、運転席9に着席したオペレータの足が、ブレード側ケーブル24と旋回体側ケーブル25との接続部位、他のブレード側ケーブル27と他の旋回体側ケーブル28との接続部位に接触するのを抑え、これら各ケーブルの意図しない断線等を抑えることができる。
【0061】
このように、傾斜センサ20に接続されたブレード側ケーブル24の他端24Bを中継コネクタ26から取外すと共に、プリズム21に接続された他のブレード側ケーブル27の他端27Bを他の中継コネクタ29から取外すことにより、上部旋回体4の旋回動作が、ブレード側ケーブル24および他のブレード側ケーブル27によって制限されるのを抑えることができる。この結果、下部走行体2に対して上部旋回体4を360度の範囲で旋回(全旋回)させることができる。
【0062】
このようにして、ブレード側ケーブル24の他端24Bおよび他のブレード側ケーブル27の他端27Bの取外し作業が終了した後には、オペレータは、走行レバー・ペダル装置13を操作し、油圧ショベル1を所望の作業場所まで自走させる。そして、オペレータは、左操作レバー10Aによって旋回装置3および作業装置5のアームシリンダ5Fを操作すると共に、右操作レバー10Bによって作業装置5のブームシリンダ5Eおよびバケットシリンダ5Gを操作する。これにより、油圧ショベル1は、上部旋回体4を旋回させつつ作業装置5を俯仰動させ、土砂の掘削作業等を行うことができる。この結果、油圧ショベル1に整地作業用の傾斜センサ20、プリズム21、コントローラ22等が搭載された場合でも、作業装置5を用いた掘削作業時に上部旋回体4を下部走行体2に対して全旋回させることができ、その作業性を良好に維持することができる。
【0063】
かくして、実施の形態によれば、油圧ショベル1は、自走可能な下部走行体2と、下部走行体2上に旋回可能に搭載され、オペレータが着席する運転席9を備えた上部旋回体4と、基端側が下部走行体2に上,下方向に回動可能に取付けられ先端側にブレード18Cが設けられた排土装置18と、排土装置18に取付けられブレード18Cの位置および姿勢を示す傾斜センサ20、プリズム21と、上部旋回体4に設けられ傾斜センサ20およびプリズム21が示すブレード18Cの位置および姿勢に基づいて排土装置18の動作を制御するコントローラ22とを含んでいる。
【0064】
そして、上部旋回体4に設けられ、運転席9に着席したオペレータの足場となるフロア部材12の前側に位置する手摺り14と、傾斜センサ20に一端24Aが接続されたブレード側ケーブル24と、コントローラ22に一端25Aが接続された旋回体側ケーブル25と、手摺り14に固定して設けられ、旋回体側ケーブル25の他端25Bが接続されると共にブレード側ケーブル24の他端24Bが着脱可能に接続される中継コネクタ26とを備えると共に、プリズム21に一端27Aが接続された他のブレード側ケーブル27と、コントローラ22に一端28Aが接続された他の旋回体側ケーブル28と、手摺り14に固定して設けられ、他の旋回体側ケーブル28の他端28Bが接続されると共に他のブレード側ケーブル27の他端27Bが着脱可能に接続される他の中継コネクタ29と、を備えている。
【0065】
この構成によれば、手摺り14に固定された中継コネクタ26からブレード側ケーブル24の他端24Bを取外すことにより、傾斜センサ20に接続されたブレード側ケーブル24と、コントローラ22に接続された旋回体側ケーブル25との間を容易に切離すことができる。同様に、手摺り14に固定された他の中継コネクタ29から他のブレード側ケーブル27の他端27Bを取外すことにより、プリズム21に接続された他のブレード側ケーブル27と、コントローラ22に接続された他の旋回体側ケーブル28との間を容易に切離すことができる。これにより、上部旋回体4の旋回動作が、ブレード側ケーブル24および他のブレード側ケーブル27によって制限されるのを抑えることができる。この結果、作業装置5を用いた掘削作業を行う場合に、下部走行体2に対して上部旋回体4を360度の範囲で旋回(全旋回)させることができる。
【0066】
実施の形態によれば、上部旋回体4には、運転席9よりも前側に位置して左,右方向に延在する手摺り14が設けられ、手摺り14の左,右方向の一側には、ブラケット30を介して中継コネクタ26および他の中継コネクタ29が固定されている。この構成によれば、オペレータは、油圧ショベル1から降りることなく、フロア部材12を足場として、かつ手摺り14を把持した状態で、中継コネクタ26に対するブレード側ケーブル24の他端24Bの取付け、取外し作業と、他の中継コネクタ29に対する他のブレード側ケーブル27の他端27Bの取付け、取外し作業を安全かつ容易に行うことができる。
【0067】
実施の形態によれば、ブレード側ケーブル24は、上部旋回体4が下部走行体2に対して中継コネクタ26がプリズム21から離れる方向に75度旋回できるだけの長さを有している。この構成によれば、排土装置18を用いた整地作業時に、運転席9に着席したオペレータがブレード18Cの左,右方向の両端部を目視するために上部旋回体4を角度θ(例えば45度)だけ右旋回させた姿勢から、さらに上部旋回体4を旋回させることができる。これにより、整地作業中にブレード18Cの前に溜まった土砂を、上部旋回体4を旋回させて作業装置5をブレード18Cの前で動かすことにより、溜まった土砂を作業装置5によって散らす(均す)ことができる。

【0068】
実施の形態によれば、ブレード18Cの左,右方向の一側にはプリズム21を取付けるためのマスト19が立設され、マスト19には、他の中継コネクタ29から他のブレード側ケーブル27の他端27Bが取外された状態で、この他のブレード側ケーブル27の他端27Bを保持するケーブル保持具35が設けられている。この構成によれば、他の中継コネクタ29から取外された他のブレード側ケーブル27の他端27Bを、ケーブル保持具35によって保持することにより、上部旋回体4の旋回動作時に他のブレード側ケーブル27がばたつくのを抑えることができる。
【0069】
なお、実施の形態では、旋回体側ケーブル25の他端25Bに中継コネクタ26が一体的に固定されると共に、他の旋回体側ケーブル28の他端28Bに他の中継コネクタ29が一体的に固定され、これら中継コネクタ26と他の中継コネクタ29とが、ブラケット30を介して手摺り14に固定される構成を例示している。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば図9に示す変形例のように構成してもよい。
【0070】
図9に示す変形例では、手摺り14に取付けられたブラケット30の下ブロック33に、長さ方向の両側にプラグが設けられた中継コネクタ41が固定されている。即ち、中継コネクタ41のうち下ブロック33から左側(左縦棒14A側)に突出した部位は、外周面に雄ねじが形成された左プラグ41Aとなり、下ブロック33から右側(前照灯15側)に突出した部位は、外周面に雄ねじが形成された右プラグ41Bとなっている。これにより、ブレード側ケーブル24の他端24Bに設けられたソケット24Cは、中継コネクタ41の左プラグ41Aに着脱可能に接続することができる。また、旋回体側ケーブル42の他端42Aには、内周面に雌ねじが形成された筒状のソケット42Bが設けられ、このソケット42Bは、中継コネクタ41の右プラグ41Bに着脱可能に接続することができる。
【0071】
一方、手摺り14に取付けられたブラケット30の上ブロック34には、長さ方向の両側にプラグが設けられた他の中継コネクタ43が固定されている。即ち、他の中継コネクタ43のうち上ブロック34から左側に突出した部位は左プラグ43Aとなり、上ブロック34から右側に突出した部位は右プラグ43Bとなっている。これにより、他のブレード側ケーブル27の他端27Bに設けられたソケット27Cは、他の中継コネクタ43の左プラグ43Aに着脱可能に接続することができる。また、他の旋回体側ケーブル44の他端44Aには、内周面に雌ねじが形成された筒状のソケット44Bが設けられ、このソケット44Bは、他の中継コネクタ43の右プラグ43Bに着脱可能に接続することができる。
【0072】
また、実施の形態では、マスト19を介してブレード18Cに取付けられる位置・姿勢検出装置を構成する部品として、プリズム21を用いた場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えばGNSSアンテナを用いる構成としてもよい。
【0073】
また、実施の形態では、ブレード側ケーブル24の一端24Aを、傾斜センサ20に着脱可能に接続すると共に、ブレード側ケーブル24の他端24Bを、中継コネクタ26に着脱可能に接続することにより、作業装置5を用いた掘削作業時には、傾斜センサ20と中継コネクタ26とに対し、ブレード側ケーブル24を完全に取外すものとして説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えばブレード18Cの後面18G等にケーブル保持具を設け、このケーブル保持具によって、中継コネクタ26から取外されたブレード側ケーブル24の他端24Bを保持する構成としてもよい。
【0074】
また、実施の形態では、フロア部材12の前側に立設された手摺り14に、ブラケット30を介して中継コネクタ26および他の中継コネクタ29を固定した場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、フロア部材12の前側に手摺り14とは異なる棒状部材を立設し、この棒状部材に中継コネクタ26および他の中継コネクタ29を固定する構成としてもよい。
【0075】
さらに、実施の形態では、履帯2Eを備えたクローラ式の油圧ショベル1に適用した場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えばホイール式の油圧ショベルにも適用することができる。
【符号の説明】
【0076】
1 油圧ショベル
2 下部走行体
4 上部旋回体
5 作業装置
9 運転席
12 フロア部材
14 手摺り(棒状部材)
18 排土装置
18C ブレード
20 傾斜センサ(位置・姿勢検出装置)
21 プリズム(位置・姿勢検出装置)
22 コントローラ
24 ブレード側ケーブル
24A,27A 一端
24B,27B 他端
25,42 旋回体側ケーブル
25A,28A 一端
25B,28B,42A,44A 他端
26,41 中継コネクタ(中継部材)
27 他のブレード側ケーブル
28,44 他の旋回体側ケーブル
29,43 他の中継コネクタ(中継部材)
30 ブラケット
35 ケーブル保持具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9