(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】ハンディレーザ溶接機及びレーザ溶接方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/00 20140101AFI20221125BHJP
B23K 26/26 20140101ALI20221125BHJP
B23K 26/08 20140101ALI20221125BHJP
【FI】
B23K26/00 M
B23K26/26
B23K26/08 Z
(21)【出願番号】P 2018141173
(22)【出願日】2018-07-27
【審査請求日】2021-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】志村 佳維
【審査官】山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-087013(JP,A)
【文献】特開2013-248636(JP,A)
【文献】特開2007-021579(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0075060(US,A1)
【文献】特開2018-114539(JP,A)
【文献】特開2012-20303(JP,A)
【文献】特開2013-239591(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 - 26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つのワークの接合予定箇所に向かってパルスレーザ光を照射するハンディ溶接トーチと、
前記ハンディ溶接トーチに光学的に接続され、パルスレーザ光を出力するレーザ発振器と、
加工プログラムに基づいて前記レーザ発振器を制御するレーザ制御部
と、
前記ハンディ溶接トーチの加速度を周期的に検出する加速度センサと、
前記加速度センサの周期的な検出結果に基づいて、前記ハンディ溶接トーチの移動速度
を推定によって取得する移動速度取得部と、
取得された前記ハンディ溶接トーチの移動速度に基づいて、パルスレーザ光のスポットの重なり率が所定
の溶融池の重なり率になるように、前記加工プログラムに設定された加工条件のうちパルスレーザ光の繰り返し周波数を更新する加工条件更新部と、を備えたことを特徴とするハンディレーザ溶接機。
【請求項2】
前記所定の溶融池の重なり率は、前記パルスレーザ光のスポットの重なり部分の長さに対する前記パルスレーザ光のスポット径の割合であることを特徴とする請求項1に記載のハンディレーザ溶接機。
【請求項3】
ハンディ溶接トーチを移動させながら、加工プログラムに基づいてレーザ発振器を制御して、前記ハンディ溶接トーチからパルスレーザ光を照射させることにより、2つのワークを接合予定箇所に沿ってレーザ溶接する際に、
周期的に検出した前記ハンディ溶接トーチの加速度の検出結果に基づいて、前記ハンディ溶接トーチの移動速度
を推定によって取得し、
取得された前記ハンディ溶接トーチの移動速度に基づいて、パルスレーザ光のスポットの重なり率が所定
の溶融池の重なり率になるように、前記加工プログラムに設定された加工条件のうちパルスレーザ光の繰り返し周波数を更新することを特徴とするレーザ溶接方法。
【請求項4】
前記所定の溶融池の重なり率は、前記パルスレーザ光のスポットの重なり部分の長さに対する前記パルスレーザ光のスポット径の割合であることを特徴とする請求項3に記載のレーザ溶接方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルスレーザ光の照射によって2つのワークを接合予定箇所に沿ってレーザ溶接するハンディレーザ溶接機及びレーザ溶接方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、溶接ロボット等の自動レーザ溶接機に比べて簡易な構成からなるハンディレーザ溶接機が広く普及している。ハンディレーザ溶接機は、2つのワークの接合予定箇所(溶接予定箇所)に向かってパルスレーザ光を照射するハンディ溶接トーチと、ハンディ溶接トーチに光学的に接続されかつパルスレーザ光を出力するレーザ発振器とを備えている(特許文献1参照)。
【0003】
従って、ハンディ溶接トーチが作業者の手動操作によって2つのワークの接合予定箇所に沿う方向に移動させながら、加工プログラムに基づいてレーザ発振器を制御して、ハンディ溶接トーチから2つのワークの接合予定箇所に向かってパルスレーザ光を照射する。これにより、2つのワークを接合予定箇所に沿ってレーザ溶接することができ、2つのワークに接合予定箇所に相当する部位に連続した溶接部(溶接ビード部)を形成することができる。ここで、ハンディ溶接トーチが加工プログラムに設定された加工条件に応じた一定の移動速度で移動することにより、ワークの溶接部の品質を安定させることができる。
【0004】
なお、本発明に関連する先行技術として特許文献1の他に、特許文献2に示すものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4241962号公報
【文献】特開2000-24787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、ハンディ溶接トーチを加工条件に応じた一定の移動速度で移動させるには、作業者の熟練が必要であり、作業者の習熟度によってワークの溶接部の品質にばらつきが生じる。また、特許文献2に示す自動送り装置によってハンディ溶接トーチを加工条件に応じた一定の移動速度で移動させることも考えられるが、その場合、ワーク上に自動送り装置の作業ペースを確保するためにワークの形状が限定され、ハンディ溶接トーチを用いたレーザ溶接の利用範囲が制限される。
【0007】
つまり、ハンディ溶接トーチを用いたレーザ溶接の利用範囲の拡大を図りつつ、作業者の習熟度に拘わらず、ワークの溶接部の品質を安定させることは容易でないという問題がある。
【0008】
そこで、ハンディ溶接トーチの移動速度が変わっても、パルスレーザ光のスポットの重なり率のばらつきを抑えることができる、新規な構成からなるハンディレーザ溶接機及びレーザ溶接方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1実施態様に係るハンディレーザ溶接機は、2つのワーク(金属板)の接合予定箇所(溶接予定箇所)に向かってパルスレーザ光を照射するハンディ溶接トーチと、前記ハンディ溶接トーチに光学的に接続され、パルスレーザ光を出力するレーザ発振器と、加工プログラムに基づいて前記レーザ発振器を制御するレーザ制御部と、前記ハンディ溶接トーチの移動速度を取得する移動速度取得部と、取得された前記ハンディ溶接トーチの移動速度に基づいて、パルスレーザ光のスポットの重なり率が所定の重なり率(設定された重なり率)になるように、前記加工プログラムに設定された加工条件のうちパルスレーザ光の繰り返し周波数を更新(調整)する加工条件更新部(加工条件調整部)と、を備えている。
【0010】
本発明の第1実施態様では、前記ハンディ溶接トーチの加速度を検出する加速度センサを備え、前記移動速度取得部は、前記加速度センサからの検出結果に基づいて、前記ハンディ溶接トーチの移動速度を推定によって取得してもよい。
【0011】
本発明の第1実施態様によると、前記ハンディ溶接トーチを移動させながら、前記レーザ制御部が前記加工プログラムに基づいてレーザ発振器を制御して、前記ハンディ溶接トーチから2つのワークの接合予定箇所に向かってパルスレーザ光を照射させる。これにより、2つのワークを接合予定箇所に沿ってレーザ溶接して、2つのワークの接合予定箇所に相当する部位に連続した溶接部(接合部)を形成することができる。
【0012】
2つのワークをレーザ溶接する際に、前記移動速度取得部は、前記ハンディ溶接トーチの移動速度を取得する。また、前記加工条件更新部は、取得された前記ハンディ溶接トーチの移動速度に基づいて、パルスレーザ光のスポットの重なり率が所定の重なり率になるように、加工条件のうちパルスレーザ光の繰り返し周波数を更新する。これにより、前記ハンディ溶接トーチの移動速度が変わっても、パルスレーザ光のスポットの重なり率、換言すれば、ワークの溶接部の溶融池の重なり率のばらつきを抑えることができる。
【0013】
本発明の第2実施態様に係るレーザ溶接方法は、 ハンディ溶接トーチを移動させながら、加工プログラムに基づいてレーザ発振器を制御して、前記ハンディ溶接トーチからパルスレーザ光を照射させることにより、2つのワークを接合予定箇所(溶接予定線)に沿ってレーザ溶接する際に、前記ハンディ溶接トーチの移動速度を取得し、取得された前記ハンディ溶接トーチの移動速度に基づいて、パルスレーザ光のスポットの重なり率が所定の重なり率になるように、前記加工プログラムに設定された加工条件のうちパルスレーザ光の繰り返し周波数を更新することである。
【0014】
本発明の第2実施態様では、前記ハンディ溶接トーチの加速度を検出し、検出された前記ハンディ溶接トーチの加速度に基づいて、前記ハンディ溶接トーチの移動速度を推定によって取得してもよい。
【0015】
本発明の第2実施態様によると、前記ハンディ溶接トーチの移動速度が変わっても、パルスレーザ光のスポットの重なり率、換言すれば、ワークの溶接部の溶融池の重なり率のばらつきを抑えることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、前記ハンディ溶接トーチを用いたレーザ溶接の利用範囲の拡大を図りつつ、作業者の習熟度に拘わらず、ワークの溶接部の品質を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るハンディトーチを用いたレーザ溶接の様子を示す模式的な斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係るハンディレーザ溶接機を示す模式的な正面図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係るハンディレーザ溶接機の制御ブロックを示す図である。
【
図4】
図4(a)は、パルスレーザの出力と時間との関係を示す図であり、
図4(b)は、
図4(a)におけるIVB部の拡大図である。
【
図5】
図5は、パルスレーザ光のスポットの重なり率を説明する図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態に係る溶接方法を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、本願の明細書において、「設けられる」とは、直接的に設けられることの他に、別部材を介して間接的に設けられることを含む意である。
【0019】
図1及び
図2に示すように、本発明の実施形態に係るハンディレーザ溶接機10は、パルスレーザ光の照射によって2つのワーク(金属板)W1,W2をライン状の接合予定箇所(溶接予定箇所)Lに沿ってレーザ溶接する。ハンディレーザ溶接機10は、ワークW1,W2の接合予定箇所Lに相当する部位に連続した溶接部(溶接ビード)を形成する。そして、ハンディレーザ溶接機10の具体的な構成は、以下のようになる。
【0020】
ハンディレーザ溶接機10は、作業者の手Hで持つことが可能なハンディ溶接トーチ12を備えている。ハンディ溶接トーチ12は、作業者の手動操作(移動操作)によってワークW1,W2の接合予定箇所Lに沿う方向に移動しながら、ワークW1,W2の接合予定箇所Lに向かってパルスレーザ光を照射する。また、ハンディ溶接トーチ12は、中空状の溶接トーチ本体14を有しており、溶接トーチ本体14の内側には、パルスレーザ光を集光する光学系(図示省略)が設けられている。溶接トーチ本体14の先端部には、パルスレーザ光を照射するためのノズル16が着脱可能に設けられている。ノズル16は、導電性カーボン等の導電性材料からなり、ノズル16の先端面16fは、ワークW1,W2の接合予定箇所Lに接触可能である。更に、溶接トーチ本体14の適宜位置には、ハンディ溶接トーチ12の加速度Aを検出する加速度センサ18が設けられている。
【0021】
ハンディレーザ溶接機10は、ハンディ溶接トーチ12をワークW1,W2の接合予定箇所Lに沿う方向に案内するガイドプレート20を付属品として備えている。ガイドプレート20は、溶接トーチ本体14を支持する支持面20fを有している。なお、ガイドプレート20の支持面20fの形状(平面視形状)は、ワークW1,W2の接合予定箇所Lの形状に応じて適宜に変更可能である。
【0022】
ハンディレーザ溶接機10は、装置筐体22を備えており、装置筐体22の内側には、パルスレーザ光を出力(発振)するファイバレーザ発振器24が設けられている。ファイバレーザ発振器24は、光ファイバ26を介してハンディ溶接トーチ12に光学的に接続されている。なお、ファイバレーザ発振器24の代わりに、YAGレーザ発振器、CO2レーザ発振器、又は半導体レーザ発振器等のレーザ発振器を用いてもよい。
【0023】
図2及び
図3に示すように、装置筐体22の内側には、加工プログラム(溶接プログラム)に基づいてファイバレーザ発振器24等を制御する制御装置28が設けられている。また、制御装置28は、1つ又は複数のコンピュータによって構成されており、制御装置28には、加速度センサ18等が接続されている。制御装置28は、加工プログラム等を記憶するメモリ(図示省略)と、加工プログラム等を解釈して実行するCPU(図示省略)とを有している。
【0024】
制御装置28は、レーザ制御部30としての機能、移動速度取得部32としての機能、及び加工条件更新部34としての機能を有している。そして、レーザ制御部30、移動速度取得部32、及び加工条件更新部34の具体的な内容は、次の通りである。
【0025】
図2から
図4(a)(b)に示すように、レーザ制御部30は、加工プログラムに基づいてファイバレーザ発振器24を制御する。換言すれば、 レーザ制御部30は、加工プログラムに設定された加工条件(溶接条件)に基づいてファイバレーザ発振器24を制御する。ここで、加工条件には、パルスレーザ光のピーク出力(単位:W)、パルス幅(単位:ms)、繰り返し周波数(単位:Hz)が含まれる。繰り返し周波とは、1秒間当たりのパルスレーザ光のパルス数のことである(
図4(a)(b)参照)。
【0026】
レーザ制御部30は、ワークW1,W2の接合予定箇所Lとノズル16が接触によって導通状態(通電状態)である場合に、ファイバレーザ発振器24がパルスレーザ光を出力することを許容する。レーザ制御部30は、ワークW1,W2の接合予定箇所Lとノズル16が非接触によって非導通状態(非通電状態)である場合に、ファイバレーザ発振器24がパルスレーザ光を出力することを禁止する。
【0027】
移動速度取得部32は、加速度センサ18からの検出結果であるハンディ溶接トーチ12の加速度に基づいて、ハンディ溶接トーチ12の移動速度を推定によって取得する。具体的には、移動速度取得部32は、下記の関係式(1)に基づいてハンディ溶接トーチ12の移動速度を推定(演算)によって取得する。
【0028】
Vn=Vn-1+An×(Tn-Tn-1) …関係式(1)
ここで、Vnは、時間Tn(単位:sec)のときのハンディ溶接トーチ12の移動速度(単位:mm/sec)であり、移動速度Vn-1は、時間Tn-1のときのハンディ溶接トーチ12の移動速度である。Anは、時間Tnのときのハンディ溶接トーチ12の加速度(単位:mm/sec2)である。なお、nは整数であり、V0=0mm/sec、T0=0sec、A0=0mm/sec2である。
【0029】
図2から
図5に示すように、加工条件更新部34は、取得されたハンディ溶接トーチ12の移動速度に基づいて、パルスレーザ光のスポットSの重なり率が所定の重なり率になるように、加工条件のうちのパルスレーザ光の繰り返し周波数を更新(調整)する。具体的には、加工条件更新部34は、下記の関係式(2)に基づいてパルスレーザ光の繰り返し周波数を演算し、その演算結果を加工条件に反映させる。
【0030】
fn=Vn/(d×(1-k)) …関係式(2)
ここで、fnは、時間Tnのときのパルスレーザ光の繰り返し周波数(単位:Hz)であり、dは、パルスレーザ光のスポット径であり、ワークW1,W2の溶接部Bの溶融池径に相当する。所定の重なり率とは、パルスレーザ光のスポットSの重なり部分の長さrに対するパルスレーザ光のスポット径dの割合のことであり、所定の重なり率は、溶接態様等に応じて適宜に変更可能である(
図5参照)。
【0031】
レーザ制御部30は、更新されたパルスレーザ光の繰り返し周波数を含む加工条件に基づいて、ファイバレーザ発振器24を制御する。換言すれば、レーザ制御部30は、パルスレーザ光のスポットSの重なり率が所定の重なり率になるように、ファイバレーザ発振器24を制御する。
【0032】
続いて、本発明の実施形態に係るレーザ溶接方法を含めて、本発明の実施形態の作用について説明する。ここで、本発明の実施形態に係るレーザ溶接方法は、パルスレーザ光の照射によって2つのワークW1,W2を接合予定箇所Lに沿ってレーザ溶接する方法である。本発明の実施形態に係るレーザ溶接方法は、加速度検出ステップと、移動速度取得ステップと、加工条件更新ステップ(加工条件調整ステップ)とを備えている。
【0033】
図1、
図3、及び
図6に示すように、作業者の手動操作によってノズル16の先端面16fをワークW1,W2の接合予定箇所Lの始端部に接触させかつ溶接トーチ本体14をガイドプレート20の支持面20fに支持させる(
図6におけるステップS101)。そして、ハンディ溶接トーチ12を作業者の手動操作によってワークW1,W2の接合予定箇所Lに沿う方向に移動させる(
図6におけるステップS102)。併せて、レーザ制御部30は、加工プログラムに基づいてファイバレーザ発振器24を制御して、ノズル16からワークW1,W2の接合予定箇所Lに向かってパルスレーザ光を照射させる。これにより、2つのワークW1,W2を接合予定箇所Lに沿ってレーザ溶接して、ワークW1,W2の接合予定箇所Lに相当する部位に連続した溶接部(接合部)Bを形成することができる。
【0034】
2つのワークW1,W2をレーザ溶接する際に、加速度センサ18は、ハンディ溶接トーチ12の加速度を検出する(
図6におけるステップS103、加速度検出ステップ)。次に、移動速度取得部32は、加速度センサ18からの検出結果に基づいて、ハンディ溶接トーチ12の移動速度を推定によって取得する(
図6におけるステップS104、移動速度取得ステップ)。更に、加工条件更新部34は、取得されたハンディ溶接トーチ12の移動速度に基づいて、パルスレーザ光のスポットSの重なり率が所定の重なり率になるように、加工プログラムに設定された加工条件のうちのパルスレーザ光の繰り返し周波数を更新する(
図6におけるステップS105、加工条件更新ステップ)。
【0035】
そして、ノズル16の先端面16fがワークW1,W2の接合予定箇所Lの終端部に到達すると(
図6におけるステップS106のYesの場合)、ハンディ溶接トーチ12を用いたレーザ溶接が終了する。一方、ノズル16の先端面16fがワークW1,W2の接合予定箇所Lの終端部に到達していないと(
図6におけるステップS106のNoの場合)、制御装置28が
図6おけるステップS102の処理に戻す。
【0036】
前述のように、2つのワークW1,W2をレーザ溶接する際に、移動速度取得部32がハンディ溶接トーチ12の移動速度を取得し、パルスレーザ光のスポットSの重なり率が所定の重なり率になるように、加工条件更新部34が加工条件のうちのパルスレーザ光の繰り返し周波数を更新する。これにより、ハンディ溶接トーチ12の移動速度が変わっても、パルスレーザ光のスポットSの重なり率、換言すれば、ワークW1,W2の溶接部Bの溶融池の重なり率のばらつきを抑えることができる。
【0037】
従って、本発明の実施形態によれば、ハンディ溶接トーチ12を用いたレーザ溶接の利用範囲の拡大を図りつつ、作業者の習熟度に拘わらず、ワークW1,W2の溶接部Bの溶接ムラを抑えて、ワークW1,W2の溶接部Bの品質を安定させることができる。
【0038】
なお、本発明は、前述の実施形態の説明に限るものでなく、次のように、種々の態様で実施可能である。
【0039】
図1にはレーザ溶接の溶接態様として突き合わせ溶接を行う様子を図示してあるが、レーザ溶接の溶接態様は、突き合わせ溶接から隅肉溶接、重ね継ぎ溶接、開先溶接、角継手溶接、又は重ね溶接等に変更してもよい。また、制御装置28が加工プログラムを実行することによりレーザ制御部30、移動速度取得部32、及び加工条件更新部34を備えるが、レーザ制御部30としての機能、移動速度取得部32としての機能、及び加工条件更新部34としての機能を実行するハードウェアを備えてもよい。
【0040】
加速度センサ18からの検出結果に基づいてハンディ溶接トーチ12の移動速度を推定によって取得する代わりに、ハンディ溶接トーチ12の移動に追従して回転する回転子の回転数を回転センサによって検出して、回転センサの検出結果に基づいてハンディ溶接トーチ12の移動速度を推定によって取得してもよい。また、ガイドプレート20の支持面20fにノズル16との接触の有無を検出する複数の接触センサをガイドプレート20の長手方向に間隔を置いて設け、複数の稙センサからの検出結果に基づいてハンディ溶接トーチ12の移動速度を推定によって取得してもよい。更に、撮像素子によってハンディ溶接トーチ12及びワークW1,W2の接合予定箇所Lを撮像し、撮像素子からの撮像結果に基づいてハンディ溶接トーチ12の移動速度を推定によって取得してもよい。
【0041】
そして、本発明に包含される権利範囲は、前述の実施形態に限定されるものでない。
【符号の説明】
【0042】
10 ハンディレーザ溶接機
12 ハンディ溶接トーチ
14 溶接トーチ本体
16 ノズル
16f ノズルの先端面
18 加速度センサ
20 ガイドプレート
20f ガイドプレートの支持面
22 装置筐体
24 ファイバレーザ発振器(レーザ発振器)
26 光ファイバ
28 制御装置
30 レーザ制御部
32 移動速度取得部
34 加工条件更新部
S パルスレーザ光のスポット
H 作業者の手
W1 ワーク(金属板)
W2 ワーク(金属板)
L 接合予定箇所
B 溶接部(溶接ビード)