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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F24H 9/00 20220101AFI20221125BHJP
   F28D 9/00 20060101ALI20221125BHJP
   F28F 3/04 20060101ALI20221125BHJP
   F28F 3/08 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
F24H9/00 A
F28D9/00
F28F3/04 A
F28F3/08 311
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018150471
(22)【出願日】2018-08-09
(65)【公開番号】P2020026900
(43)【公開日】2020-02-20
【審査請求日】2021-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111257
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 栄二
(74)【代理人】
【識別番号】100110504
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 智裕
(72)【発明者】
【氏名】小代 卓史
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0184350(US,A1)
【文献】実開昭62-142672(JP,U)
【文献】中国実用新案第206592955(CN,U)
【文献】国際公開第2007/045719(WO,A1)
【文献】特開2013-178078(JP,A)
【文献】特開2006-214628(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0029243(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 9/00
F28D 9/00
F28F 3/04
F28F 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼排気のガス流路の方向に積層された複数の熱交換ユニットを有する熱交換器であって、
前記複数の熱交換ユニットはそれぞれ、被加熱流体が流れる内部空間と、前記内部空間を非連通状態で貫通し、且つ前記燃焼排気が通過する複数の排気孔と、隣接する前記排気孔の間に、前記内部空間の高さを減少させる内向き段差部とを有し、
前記排気孔と前記内向き段差部とは、前記各熱交換ユニットの前後及び左右方向の少なくとも一方向において交互に形成されている熱交換器。
【請求項2】
請求項1に記載の熱交換器において、
前記複数の熱交換ユニットはそれぞれ、前記排気孔の周縁部に、前記内部空間を閉塞するフランジ部を有する熱交換器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の熱交換器において、
前記複数の熱交換ユニットはそれぞれ、隣接する前記排気孔と隣接する前記内向き段差部とで囲まれる領域内に、前記内部空間の高さが増加する外向き段差部を有する熱交換器。
【請求項4】
請求項2または3に記載の熱交換器において、
前記フランジ部は、前記排気孔の開口縁から前記燃焼排気のガス流路の上流側または下流側に延びるバーリング部を有する熱交換器。
【請求項5】
請求項に記載の熱交換器において、
前記バーリング部は、前記排気孔の孔径が前記燃焼排気のガス流路の下流側に向かって小さくなるように、テーパ形状を有する熱交換器。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1項に記載の熱交換器は、さらに、
隣接する前記熱交換ユニットの間に、前記燃焼排気が流れる排気空間を有する熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加熱流体が流れる内部空間と、内部空間を非連通状態で貫通する複数の排気孔とを有する複数の熱交換ユニットが積層された熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上熱交換プレートと下熱交換プレートとが接合された複数の熱交換ユニットを積層させることによって形成されたプレート積層体を備える熱交換器が提案されている(例えば、特許文献1)。各熱交換ユニットは、上熱交換プレートと下熱交換プレートとの間に被加熱流体が流れる内部空間と、内部空間を非連通状態で貫通し、バーナから噴出される燃焼排気が上下方向に通過する複数の排気孔とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】韓国登録特許第10-1608149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような熱交換ユニットでは、燃焼排気が通過する排気孔の周縁部が最も加熱される。従って、熱交換ユニットで吸熱された熱を効率よく被加熱流体に熱伝達させて、熱効率を高めるためには、排気孔の周縁部にできるだけ多くの被加熱流体が流れるような熱交換ユニットの構造が好ましい。
【0005】
しかしながら、特許文献1の熱交換器では、燃焼排気が通過する排気孔は内部空間を非連通状態で貫通しているため、排気孔の周縁部には内部空間を閉塞させる一定幅のフランジ部が形成される。それゆえ、排気孔と被加熱流体が流れる内部空間との間には一定の距離が生じる。また、フランジ部では内部空間が閉塞されているため、内部空間におけるフランジ部近傍の流路抵抗はフランジ部から離れた領域のそれよりも高くなる。そのため、被加熱流体はフランジ部から離れた領域を流れやすい。その結果、燃焼排気の熱が内部空間を流れる被加熱流体に効率的に熱伝達され難いという問題がある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、被加熱流体が流れる内部空間と、内部空間を非連通状態で貫通する複数の排気孔とを有する複数の熱交換ユニットが積層された熱交換器の熱効率を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、
燃焼排気のガス流路の方向に積層された複数の熱交換ユニットを有する熱交換器であって、
前記複数の熱交換ユニットはそれぞれ、被加熱流体が流れる内部空間と、前記内部空間を非連通状態で貫通し、且つ前記燃焼排気が通過する複数の排気孔と、隣接する前記排気孔の間に、前記内部空間の高さを減少させる内向き段差部とを有し、
前記排気孔と前記内向き段差部とは、前記各熱交換ユニットの前後及び左右方向の少なくとも一方向において交互に形成されている熱交換器が提供される。
【0008】
上記熱交換器によれば、内部空間の高さが内向き段差部で減少するから、内向き段差部は内部空間の内方に向かって突出する。そのため、内向き段差部よりも流体流路の上流側から流れてきた被加熱流体は内向き段差部の周縁に衝突し、内向き段差部によって形成される狭内部空間を通過して流体流路の下流側に向かって流れる被加熱流体と、内向き段差部の周囲を回り込みながら流体流路の下流側に向かって流れる被加熱流体とに分流される。そして、内向き段差部は隣接する排気孔の間に形成されているから、内向き段差部の周囲を回り込む被加熱流体は、より排気孔の周縁部近傍を流れる。これにより、高温に加熱された排気孔の周縁部の熱を効率的に被加熱流体に熱伝達させることができる。
【0009】
また、被加熱流体が内向き段差部の周縁に衝突すると、被加熱流体の乱流が発生する。従って、内向き段差部よりも流体流路の上流側での被加熱流体の温度分布を小さくすることができる。これにより、熱交換ユニットで吸熱された熱を効率的に被加熱流体に熱伝達させることができる。
【0010】
また、内部空間の高さが内向き段差部で減少するから、内向き段差部によって形成される狭内部空間を通過する被加熱流体と熱交換ユニットの内面との間の距離が減少する。これにより、熱交換ユニットで吸熱された熱を効率的に被加熱流体に熱伝達させることができる。
【0011】
また、内向き段差部によって形成される狭内部空間を通過する被加熱流体と内向き段差部の周囲を回り込む被加熱流体とは、内向き段差部よりも流体流路の下流側で再度、合流し、被加熱流体の乱流が発生する。従って、内向き段差部よりも流体流路の下流側での被加熱流体の温度分布を小さくすることができる。これにより、熱交換ユニットで吸熱された熱を効率的に被加熱流体に熱伝達させることができる。
また、上記熱交換器によれば、熱交換ユニットで吸熱された熱をより効率的に被加熱流体に熱伝達させることができる。また、排気孔及び内向き段差部が熱交換ユニットの前後及び左右方向で交互に形成されている場合、1つの隣接する排気孔の間に位置する内向き段差部に向かって、他の隣接する排気孔の間を通過する被加熱流体が流れる。これにより、さらに被加熱流体の乱流が発生して、被加熱流体の温度分布をさらに小さくすることができる。
【0012】
好ましくは、上記熱交換器において、
前記複数の熱交換ユニットはそれぞれ、前記排気孔の周縁部に前記内部空間を閉塞するフランジ部を有する。
【0013】
上記熱交換器によれば、排気孔の周縁部に内部空間を閉塞するフランジ部が形成されているから、燃焼排気が排気孔を通過するとき、燃焼排気の熱をフランジ部で効率的に吸熱することができる。そして、内向き段差部は、周縁部にフランジ部が形成された隣接する排気孔の間に形成されているから、フランジ部で吸熱された熱を効率的に被加熱流体に熱伝達させることができる。
【0016】
好ましくは、上記熱交換器において、
前記複数の熱交換ユニットはそれぞれ、隣接する前記排気孔と隣接する前記内向き段差部とで囲まれる領域内に、前記内部空間の高さが増加する外向き段差部を有する。
【0017】
上記熱交換器によれば、外向き段差部は隣接する排気孔と隣接する内向き段差部とで囲まれる領域内に位置するから、被加熱流体が外向き段差部によって形成される広内部空間に流入するとき、被加熱流体の乱流が発生する。従って、被加熱流体の温度分布をさらに小さくすることができる。これにより、熱交換ユニットで吸熱された熱をさらに効率的に被加熱流体に熱伝達させることができる。
【0018】
好ましくは、上記熱交換器において、
前記フランジ部は、前記排気孔の開口縁から前記燃焼排気のガス流路の上流側または下流側に延びるバーリング部を有する。
【0019】
上記熱交換器によれば、バーリング部に燃焼排気が接触しながら、燃焼排気が排気孔を通過するから、吸熱面積を増加させることができる。また、バーリング部が燃焼排気のガス流路の上流側に延びていれば、燃焼排気が排気孔に流入するとき、バーリング部によって燃焼排気の乱流が発生する。そのため、排気孔の周縁部における燃焼排気の温度境界層が薄くなり、燃焼排気の熱をフランジ部で効率的に吸熱することができる。これにより、熱交換ユニットで吸熱された熱を効率的に被加熱流体に熱伝達させることができる。
【0020】
好ましくは、上記熱交換器において、
前記バーリング部は、前記排気孔の孔径が前記燃焼排気のガス流路の下流側に向かって小さくなるように、テーパ形状を有する。
【0021】
上記熱交換器によれば、排気孔に流入する燃焼排気の通気抵抗を抑えることができる。また、燃焼排気が排気孔を通過するときに、燃焼排気がより長時間、テーパ形状を有するバーリング部に接触する。このため、さらに燃焼排気の熱をフランジ部及びバーリング部で吸熱することができる。これにより、熱交換ユニットで吸熱された熱を効率的に被加熱流体に熱伝達させることができる。
【0022】
好ましくは、上記熱交換器は、さらに、
隣接する前記熱交換ユニットの間に、前記燃焼排気が流れる排気空間を有する。
【0023】
上記熱交換器によれば、燃焼排気の熱が各熱交換ユニットの両面で吸熱されるから、熱交換ユニットで吸熱された熱を効率的に被加熱流体に熱伝達させることができる。また、内向き段差部で内部空間の高さが減少するから、隣接する排気孔の間の外面にも凹凸が形成される。その結果、燃焼排気が凹凸に衝突すると、燃焼排気の乱流が発生し、排気孔の周縁部の燃焼排気の温度境界層を薄くすることができる。これにより、燃焼排気の熱を排気孔の周縁部で効率的に吸熱することができる。
【発明の効果】
【0024】
以上のように、本発明によれば、被加熱流体が流れる内部空間と、内部空間を非連通状態で貫通する複数の排気孔とを有する複数の熱交換ユニットが積層された熱交換器において、燃焼排気から各熱交換ユニットが吸熱する熱を効率的に内部空間を流れる被加熱流体に熱伝達させることできる。これにより、熱交換が促進され、熱交換器の熱効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、本発明の実施の形態に係る熱源機を示す部分切欠斜視図である。
図2図2は、本発明の実施の形態に係る熱交換器の熱交換ユニットの一部を示す分解斜視図である。
図3図3は、本発明の実施の形態に係る熱交換器の流入管側の断面斜視図である。
図4図4は、本発明の実施の形態に係る熱交換器の流出管側の断面斜視図である。
図5図5は、本発明の実施の形態に係る熱交換器の一部を示す部分拡大平面図である。
図6図6は、本発明の実施の形態に係る熱交換器の一部を示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態に係る熱交換器及びそれを備える熱源機について、添付図面を参照しながら具体的に説明する。
図1に示すように、本実施の形態に係る熱源機は、流入管20から熱交換器1内に流入する水(被加熱流体)を、バーナ31で生成される燃焼排気により加熱し、流出管21を通じてカランやシャワーなどの温水利用先(図示せず)に供給する給湯器である。図示しないが、給湯器は、ケーシング内に組み込まれる。なお、被加熱流体として、他の熱媒体(例えば、不凍液)が用いられてもよい。
【0027】
この給湯器では、上方から順に、バーナ31の外郭を構成するバーナボディ3、燃焼室2、熱交換器1、及びドレン受け40が配設される。また、バーナボディ3の一方側方(図1では、右側)には、バーナボディ3内に燃料ガスと空気との混合ガスを送り込む燃焼ファンを備えるファンケース4が配設される。また、バーナボディ3の他方側方(図1では、左側)には、ドレン受け40と連通する排気ダクト41が配設される。排気ダクト41は、ドレン受け40に排出される燃焼排気を給湯器の外部に排出する。
【0028】
なお、本明細書では、ファンケース4及び排気ダクト41がバーナボディ3の側方にそれぞれ配置された状態で給湯器を見たとき、奥行方向が前後方向に対応し、幅方向が左右方向に対応し、高さ方向が上下方向に対応する。
【0029】
バーナボディ3は、平面視略小判形状を有し、例えば、ステンレス系金属で形成される。図示しないが、バーナボディ3は、下方に開放している。
【0030】
ファンケース4と連通するガス導入部は、バーナボディ3の中央部から上方に突出している。バーナボディ3は、下向きの燃焼面30を有する平面状のバーナ31を備える。燃焼ファンを作動させることにより、混合ガスがバーナボディ3内に供給される。
【0031】
バーナ31は、全一次空気燃焼式であり、例えば、下向きに開口する多数の炎孔(図示せず)を有するセラミックス製の燃焼プレート、または金属繊維をネット状に編み込んだ燃焼マットからなる。バーナボディ3内に供給された混合ガスが、燃焼ファンの給気圧によって、下向きの燃焼面30から下方へ向けて噴出される。この混合ガスを着火させることにより、バーナ31の燃焼面30に火炎が形成され、燃焼排気が生成される。従って、バーナ31から噴出される燃焼排気は、燃焼室2を介して熱交換器1に送り込まれる。次いで、熱交換器1を通過した燃焼排気は、ドレン受け40及び排気ダクト41を通って給湯器の外部に排出される。
【0032】
すなわち、この熱交換器1では、バーナ31が設けられている上方側が燃焼排気のガス流路の上流側に対応し、バーナ31が設けられている側と反対側の下方側が燃焼排気のガス流路の下流側に対応する。
【0033】
燃焼室2は、平面視略小判形状を有する。燃焼室2は、例えば、ステンレス系金属で形成される。燃焼室2は、上下に開放するように、一枚の略長方形状の金属板を湾曲させて両端部を接合することにより形成される。図3に示すように、燃焼室2の下端には内方に折り曲げられたフランジ26が形成されている。フランジ26は、熱交換器1の上面周縁と接合される。
【0034】
熱交換器1は、平面視略小判形状を有する。図3及び図4に示すように、熱交換器1は、複数(ここでは、8層)の薄板状の熱交換ユニット10が積層されたプレート積層体100を有する。なお、熱交換器1は、その周囲を覆う筐体を有してもよい。
【0035】
各熱交換ユニット10は、排気孔13の位置などの一部の構成が相違する以外は、共通の構成を有する一組の上熱交換プレート11と下熱交換プレート12とを上下方向に重ね合わせて、後述する所定箇所をロウ材等で接合することにより形成される。このため、共通の構成を先に説明し、異なる構成を後述する。なお、各図面は、必ずしも実際の寸法を示したものでなく、実施形態を限定するものではない。
【0036】
図2に示すように、上下熱交換プレート11,12は、平面視略小判形状を有し、例えば、ステンレス製の金属板から形成される。上下熱交換プレート11,12はそれぞれ、コーナ部を除くプレートの略全面に多数の略円形状の上下排気孔11a,12aと、上下熱交換プレート11,12が重ね合わせられたときに内方に向かって突出する多数の上下凹部11b,12bとを有する。なお、上下排気孔11a,12aや上下凹部11b,12bは、長孔形状や矩形状などの他の形状を有してもよい。
【0037】
最上層の上熱交換プレート11を除いて、上下熱交換プレート11,12の周縁にはそれぞれ、上方に向かって突出する上下周縁接合部W1,W2が形成されている。下熱交換プレート12の下周縁接合部W2は、下周縁接合部W2と上熱交換プレート11の底面周縁とを接合させたときに、上下熱交換プレート11,12が所定高さの間隙を存して離間するように設定されている。なお、図示しないが、最上層の上熱交換プレート11の下面周縁には、下方に向かって突出する上周縁接合部が形成されている。この上周縁接合部は、最上層の下熱交換プレート12の下周縁接合部W2が上周縁接合部に内嵌するように形成されている。
【0038】
また、上熱交換プレート11の上周縁接合部W1は、上周縁接合部W1と上方に隣接する熱交換ユニット10の下熱交換プレート12の底面周縁とを接合させたときに、下方の熱交換ユニット10の上熱交換プレート11と、上方の熱交換ユニット10の下熱交換プレート12とが所定高さの間隙を存して離間するように設定されている。従って、下熱交換プレート12の下周縁接合部W2と上熱交換プレート11の底面周縁とを接合させることにより、上下凹部11b,12bや後述する上下凸部及び上下貫通孔が形成されていない平面領域で所定高さ(例えば、約2mm)の内部空間14が形成される(図3及び図4参照)。また、複数の熱交換ユニット10を接合させることにより、上下に隣接する熱交換ユニット10の平面領域の間には、所定高さ(例えば、約3mm)の排気空間15が形成される(図3及び図4参照)。
【0039】
上下排気孔11a,12aはそれぞれ、4つのコーナ部を除いた上下熱交換プレート11,12の略全面にわたって前後及び左右方向に所定の間隔で格子状に開設されている。また、上下排気孔11a,12aの周縁部にはそれぞれ、所定幅の水平に延びる上下排気孔フランジ部11c,12cが形成されている。上下排気孔11a,12a及び上下排気孔フランジ部11c,12cはそれぞれ、上下熱交換プレート11,12が重ね合わされたときに相互に対応する位置に形成されている。また、上下排気孔11a,12a及び上下排気孔フランジ部11c,12cは、上下熱交換プレート11,12が重ね合わされたときに対向する上下熱交換プレート11,12に向かって所定高さ(例えば、約1mm)突出する段差部の底面に形成されている。また、上排気孔11aは、バーリング加工により形成されている。従って、図3及び図4に示すように、上下熱交換プレート11,12が重ね合わされて、所定箇所がロウ材等により接合されると、上下排気孔フランジ部11c,12cによって内部空間14を閉塞するフランジ部18が形成され、上下排気孔11a,12aによって内部空間14を非連通状態で貫通する排気孔13が形成される。また、上排気孔フランジ部11cの先端には、排気孔13の開口縁から下排気孔フランジ部12cよりも下方(燃焼排気のガス流路の下流側)に突出するバーリング部11dが形成される。
【0040】
前後及び左右方向で隣接する2つの上下排気孔11a,12aの間にはそれぞれ、略円形状の上下凹部11b,12bが形成されている。また、これらの上下凹部11b,12bは、上下熱交換プレート11,12が重ね合わされたときに相互に対応する位置に形成されている。従って、上下凹部11b,12bは、4つのコーナ部を除いた上下熱交換プレート11,12の略全面にわたって前後及び左右方向に所定の間隔で格子状に形成されている。また、隣接する上下凹部11b,12bの間隔は、隣接する上下排気孔11a,12aのそれと略同一に設定されている。このため、上下排気孔11a,12aと上下凹部11b,12bとは、前後及び左右方向に交互に略等間隔で形成されている。また、上下排気孔11a,12a及び上下凹部11b,12bはそれぞれ、前後及び左右方向に対して所定角度、傾斜する方向に所定の間隔で連続して配列されている。また、上下凹部11b,12bはそれぞれ、上下熱交換プレート11,12の周縁を除いて、前後及び左右方向で隣接する4つの上下排気孔11a,12aで囲まれる領域の略中央部に位置するように形成されている。また、上下凹部11b,12bはそれぞれ、前後及び左右方向で隣接する上下排気孔フランジ部11c,12c間の距離よりも小さい直径を有する。
【0041】
上下凹部11b,12bはそれぞれ、上下熱交換プレート11,12が重ね合わされたときに内部空間14の内方に向かって所定高さ(例えば、約0.5mm)突出するように形成されている。この上下凹部11b,12bの内方への突出高さは、上下排気孔フランジ部11c,12cのそれよりも低く設定されている。従って、図3及び図4に示すように、上下熱交換プレート11,12が重ね合わされたとき、上下凹部11b,12bによって内部空間14の高さを減少させる内向き段差部17が形成され、上下凹部11b,12b間に所定高さ(例えば、約1mm)の狭内部空間14aが形成される。また、内向き段差部17と隣接するフランジ部18との間には、水の流体流路が形成される。好ましくは、狭内部空間14aは、平面領域における内部空間14の高さの20~70%の高さを有する。なお、内向き段差部17は、上下凹部11b,12bのいずれか一方のみにより形成されてもよい。
【0042】
上下熱交換プレート11,12の前後及び左右方向の中央部には、上下熱交換プレート11,12が重ね合わせられたときに外方に向かって突出する4つの略小円形状の上下凸部11e,12eが形成されている(図6参照)。1組の上下熱交換プレート11,12の上下凸部11e,12eは、隣接する他の1組の上下熱交換プレート11,12の上下凸部11e,12eと相互に対応する位置に形成されている。また、4つの上下凸部11e,12eはそれぞれ、前後及び左右方向で、これらの間に2つの上下排気孔11a,12aまたは2つの上下凹部11b,12bを挟むように略正方形状のパターンで配列されている。また、既述したように、上下排気孔11a,12a及び上下凹部11b,12bはそれぞれ、前後及び左右方向に対して所定角度、傾斜する方向に所定の間隔で連続して配列されている。そのため、上下凸部11e,12eはそれぞれ、前後及び左右方向に対して所定角度、傾斜する方向で、連続して隣接する2つの上下排気孔11a,12aと、連続して隣接する2つの上下凹部11b,12bとで囲まれる領域の略中央部に形成されている。
【0043】
上下凸部11e,12eはそれぞれ、上下凸部11e,12eを囲む隣接する上下排気孔フランジ部11c,12c間の最短距離の間隔と略同一の直径を有する。また、上下凸部11e,12eはそれぞれ、隣接する熱交換ユニット10が重ね合わされたときに排気空間15の高さの略半分の高さ(例えば、約1.5mm)を有する。従って、図6に示すように、上下熱交換プレート11,12が重ね合わされたとき、上下凸部11e,12eによって内部空間14の高さを増加させる外向き段差部19が形成され、上下凸部11e,12e間に所定高さ(例えば、約4mm)の広内部空間14bが形成される。好ましくは、広内部空間14bは、平面領域における内部空間14の高さの150~250%の高さを有する。また、隣接する熱交換ユニット10が重ね合わせられると、上方の熱交換ユニット10の下熱交換プレート12の下凸部12eと、下方に隣接する熱交換ユニット10の上熱交換プレート11の上凸部11eとは、相互に当接し、排気空間15を保持する支持部が形成される。なお、外向き段差部19は、上下凸部11e,12eのいずれか一方のみにより形成されてもよい。また、熱交換ユニット10の大きさに応じて、上下凸部11e,12eはそれぞれ、3箇所未満または5箇所以上、形成されてもよい。さらに、上下凸部11e,12eは、長孔形状や矩形状などの他の形状を有してもよい。
【0044】
最上層の熱交換ユニット10の上熱交換プレート11を除いた上下熱交換プレート11,12は、各コーナ部に略円形状の上下貫通孔111~114,121~124を有する。各熱交換ユニット10の上下熱交換プレート11,12における同じコーナ部に位置する上下貫通孔111~114,121~124はそれぞれ、上下熱交換プレート11,12が重ね合わされたとき、同軸線上に位置するように開口されている。また、上下貫通孔111~114,121~124の周縁部には、所定幅の水平に延びる上下貫通孔フランジ部(図示せず)が形成されている。上下貫通孔フランジ部は、隣接する熱交換ユニット10が重ね合わせられたとき、隣接する熱交換ユニット10の上下貫通孔フランジ部と相互に対応する位置に形成されている。また、上下貫通孔フランジ部は、上下熱交換プレート11,12が重ね合わされたときに外方に向かって所定高さ(例えば、約1.5mm)突出するように、形成されている。そのため、上下貫通孔フランジ部は、隣接する熱交換ユニット10が重ね合わされたときにロウ材等により接合されて、隣接する熱交換ユニット10を接合する接合部の一部を形成する。また、後述するように、隣接する熱交換ユニット10が重ね合わされて、接合されると、上下貫通孔フランジ部によって、排気空間15を非連通状態で貫通し、隣接する熱交換ユニット10の内部空間14を連通させる連通路22,35が形成される。
【0045】
隣接する熱交換ユニット10の排気孔13は、燃焼排気のガス流路の方向に対して垂直に交差する左右方向で半ピッチずれている。従って、上方から流れてきた燃焼排気は、1つの熱交換ユニット10の排気孔13を通過した後、その熱交換ユニット10と下方に隣接する熱交換ユニット10との間の排気空間15に流れ出る。そして、排気空間15に流れ出た燃焼排気は、下方に隣接する熱交換ユニット10の上熱交換プレート11に衝突し、下方に隣接する熱交換ユニット10の排気孔13からさらに下方に流れる。すなわち、燃焼排気がプレート積層体100内を上方から下方に向かって流れるとき、プレート積層体100内にはジグザグ状の排気通路が形成される。これにより、熱交換器1内における燃焼排気と上下熱交換プレート11,12との接触時間が増加する。
【0046】
次に、各層における熱交換ユニット10について、図2図4を参照して説明する。図2図4における熱交換ユニット10の右横の[ ]内の数字は、最下層の熱交換ユニット10を1層目としたときの下からの層数を示す。なお、図2において、4層目及び5層目の熱交換ユニット10の構成はそれぞれ、2層目及び3層目の熱交換ユニット10のそれと同一であるため、省略されている。
【0047】
1層目(最下層)の熱交換ユニット10の要素である下熱交換プレート12は、各コーナ部に下貫通孔121~124を有する。これらの下貫通孔121~124のうち、左側前後両方のコーナ部の2つの下貫通孔123,124(図示せず)は、蓋部材90によってシールされている。また、1層目の熱交換ユニット10の上熱交換プレート11は、4つのコーナ部に上貫通孔111~114を有する。
【0048】
また、既述したように、1層目の上下熱交換プレート11,12の4つのコーナ部の上下貫通孔111~114,121~124の周縁部には、上下熱交換プレート11,12が重ね合わされたときに外方に突出する上下貫通孔フランジ部が形成されている。また、下熱交換プレート12の右側前方のコーナ部の下貫通孔122の周縁部には、1~6層目の熱交換ユニット10の内部空間14及びこれらの熱交換ユニット10の間の排気空間15を貫通する導出管33の下端が接続されている(図4参照)。なお、図示しないが、1層目の下熱交換プレート12の下面における下貫通孔121,122の周縁部にはそれぞれ、流入管20及び流出管21を接続するための接続ジョイントが設けられている。
【0049】
従って、1層目の熱交換ユニット10を形成している上下熱交換プレート11,12の上下排気孔フランジ部11c,12cを接合させるとともに、下熱交換プレート12の下周縁接合部W2と上熱交換プレート11の底面周縁とを接合させると、1層目の熱交換ユニット10の内部空間14は、下熱交換プレート12の右側後方のコーナ部の下貫通孔121と連通し、上熱交換プレート11の右側後方及び左側前後両方のコーナ部の3つの上貫通孔111,113,114と連通する。
【0050】
また、下熱交換プレート12の右側前方のコーナ部の下貫通孔122から上方に向かって延在する導出管33は、内部空間14と非連通状態で画成される流体流路を形成する(図4参照)。従って、下熱交換プレート12の右側後方のコーナ部の下貫通孔121に接続ジョイントを介して流入管20を接続させると、流入管20から下貫通孔121を介して1層目の熱交換ユニット10の内部空間14に水が流入する。そして、水は、上熱交換プレート11の右側後方及び左側前後両方のコーナ部の3つの上貫通孔111,113,114を介して内部空間14から上方に流出する。
【0051】
すなわち、この1層目の熱交換ユニット10では、下熱交換プレート12の右側後方のコーナ部の1つの下貫通孔121が、内部空間14に水が流入する流入口23となる。また、上熱交換プレート11の右側後方及び左側前後両方のコーナ部の3つの上貫通孔111,113,114が、内部空間14から水が流出する流出口24となる。
【0052】
既述したように、排気孔13は前後及び左右方向に格子状に配列されており、内部空間14は排気孔13の周縁部のフランジ部18によって閉塞されている。そのため、流入口23から流入した水の一部は、フランジ部18に衝突しながら、左側の前後に離れた2つの流出口24に流れていく。従って、内部空間14を流れる水は、内部空間14内の全体に広がる。その結果、内部空間14の前後方向両端部にも、水が流れ易くなる。これにより、効率的に水が加熱される。また、湾曲した水の流れが形成されるため、流体流路が長くなる。その結果、吸熱時間が増え、熱効率が向上する。
【0053】
2層目から5層目の熱交換ユニット10は、各熱交換ユニット10の排気孔13及び内向き段差部17の位置が、上下に隣接する熱交換ユニット10のそれらと左右方向で半ピッチずれている以外は、同一の構成を有する。
【0054】
また、これらの熱交換ユニット10の上下熱交換プレート11,12はそれぞれ、1層目の上熱交換プレート11のコーナ部の4つの上貫通孔111~114と略同一位置に、4つの上貫通孔111~114及び4つの下貫通孔121~124を有する。また、1層目の上下熱交換プレート11,12と同様に、上下熱交換プレート11,12の4つのコーナ部の上下貫通孔111~114,121~124の周縁部には、上下熱交換プレート11,12が重ね合わされたときに外方に突出する上下貫通孔フランジ部が形成されている。また、上下熱交換プレート11,12の右側前方のコーナ部の上下貫通孔112,122には、導出管33が挿入されている。
【0055】
従って、2層目から5層目の各熱交換ユニット10では、上下熱交換プレート11,12の上下排気孔11a,12aの周縁部の上下排気孔フランジ部11c,12cを接合させるとともに、下熱交換プレート12の下周縁接合部W2と上熱交換プレート11の底面周縁とを接合させると、上下熱交換プレート11,12の間に形成される内部空間14は、下熱交換プレート12の右側後方及び左側前後両方のコーナ部の3つの下貫通孔121,123,124に連通するとともに、上熱交換プレート11の右側後方及び左側前後両方のコーナ部の3つの上貫通孔111,113,114に連通する。
【0056】
また、既述したように、2層目から5層目の各熱交換ユニット10の上下熱交換プレート11,12の4つのコーナ部の上下貫通孔111~114,121~124の周縁部には、上下熱交換プレート11,12が重ね合わされたときに外方に突出する上下貫通孔フランジ部が形成されている。
【0057】
従って、1つの熱交換ユニット10の下熱交換プレート12の4つのコーナ部の下貫通孔フランジ部と、下方に隣接する熱交換ユニット10の上熱交換プレート11の4つのコーナ部の上貫通孔フランジ部とを接合させるとともに、下熱交換プレート12の底面周縁と下方に隣接する熱交換ユニット10の上熱交換プレート11の上周縁接合部W1とを接合させると、上下に隣接する熱交換ユニット10の間には、図3及び図4に示すように、排気空間15と、排気空間15と非連通状態で画成される連通路22とが形成される。
【0058】
すなわち、2層目から5層目の各熱交換ユニット10では、下熱交換プレート12の右側後方及び左側前後両方のコーナ部の3つの下貫通孔121,123,124が、内部空間14に水を流入させる流入口23となる。また、下貫通孔121,123,124に対向する上熱交換プレート11の3つの上貫通孔111,113,114が、内部空間14から水が流出する流出口24となる。
【0059】
また、これら3つの流入口23(すなわち、下熱交換プレート12の右側後方及び左側前後両方のコーナ部の3つの下貫通孔121,123,124)の周縁部に形成された下貫通孔フランジ部と、下方に隣接する熱交換ユニット10の上熱交換プレート11の流出口24(すなわち、上熱交換プレート11の右側後方及び左側前後両方のコーナ部の3つの上貫通孔111,113,114)の周縁部に形成された上貫通孔フランジ部とを接合させることによって形成される連通路22は、上下に隣接する熱交換ユニット10の内部空間14相互を連通させる流体流路となる。
【0060】
また、下熱交換プレート12の右側前方のコーナ部の下貫通孔フランジ部と、下方に隣接する熱交換ユニット10の上熱交換プレート11の右側前方のコーナ部の上貫通孔フランジ部とを接合させるとともに、上下貫通孔112,122に導出管33を挿入させると、内部空間14及び排気空間15と非連通状態で画成される流体流路が形成される。
【0061】
図2及び図3に示すように、6層目の熱交換ユニット10において、上下熱交換プレート11,12は、上熱交換プレート11の右側後方の上貫通孔111が蓋部材90でシールされている以外は、2層目のそれらと同一の構成を有する。従って、6層目の熱交換ユニット10では、上下熱交換プレート11,12の上下排気孔フランジ部11c,12cを接合させるとともに、下熱交換プレート12の下周縁接合部W2と上熱交換プレート11の底面周縁とを接合させると、上下熱交換プレート11,12の間に形成される内部空間14は、下熱交換プレート12の右側後方及び左側前後両方のコーナ部の3つの下貫通孔121,123,124と連通するとともに、上熱交換プレート11の左側前後両方のコーナ部の2つの上貫通孔113,114と連通する。
【0062】
また、上記と同様に、5層目と6層目の熱交換ユニット10を接合させると、既述した排気空間15と、排気空間15と非連通状態で画成される連通路22が形成される。すなわち、6層目の熱交換ユニット10では、下熱交換プレート12の右側後方及び左側前後両方のコーナ部の3つの下貫通孔121,123,124が内部空間14に水が流入する流入口23となり、上熱交換プレート11の左側前後両方のコーナ部の2つの上貫通孔113,114が内部空間14から水が流出する流出口24となる。また、これら3つの流入口23(すなわち、下熱交換プレート12の右側後方及び左側前後両方のコーナ部の3つの下貫通孔121,123,124)の周縁部に形成された下貫通孔フランジ部と、下方に隣接する熱交換ユニット10の上熱交換プレート11の流出口24(すなわち、上熱交換プレート11の右側後方及び左側前後両方のコーナ部の3つの上貫通孔111,113,114)の周縁部に形成された上貫通孔フランジ部とを接合させることによって形成される連通路22は、上下に隣接する熱交換ユニット10の内部空間14相互を連通させる流体流路となる。
【0063】
また、下熱交換プレート12の右側前方のコーナ部の下貫通孔フランジ部と、下方に隣接する熱交換ユニット10の上熱交換プレート11の右側前方のコーナ部の上貫通孔フランジ部とを接合させるとともに、下貫通孔122に導出管33を挿入させ、上貫通孔112の上貫通孔フランジ部の下面に導出管33の上端を接合させると、内部空間14及び排気空間15と非連通状態で画成される流体流路が形成される。また、既述したように、この導出管33は、1層目から6層目の熱交換ユニット10の内部空間14及びこれらの熱交換ユニット10の間の排気空間15を非連通状態で貫通して、1層目の熱交換ユニット10の下熱交換プレート12の右側前方のコーナ部の下貫通孔122に接続されている。
【0064】
1層目~6層目の熱交換ユニット10では、これらの熱交換ユニット10が重ね合わされたとき、右側後方のコーナ部の流入口23及び流出口24は同軸線上に位置する。そのため、1層目の熱交換ユニット10の内部空間14に流入した水の一部は、直線的に上方の流出口24に向かって流れ、流出口24から連通路22を介して2~6層目の各熱交換ユニット10の内部空間14に流入する。従って、1層目~6層目の各熱交換ユニット10の内部空間14に流入した水の一部は、フランジ部18に衝突しながら各熱交換ユニット10の内部空間14内を左右方向で同一の方向(図面中、右側から左側)に流れる。
【0065】
7層目の熱交換ユニット10において、上下熱交換プレート11,12は、右側前方のコーナ部の上下貫通孔112,122に導出管33が挿入されていない以外は、5層目のそれらと同一の構成を有する(図2及び図4参照)。従って、7層目の熱交換ユニット10では、上下熱交換プレート11,12の上下排気孔フランジ部11c,12cを接合させるとともに、下熱交換プレート12の下周縁接合部W2と上熱交換プレート11の底面周縁とを接合させると、上下熱交換プレート11,12の間に形成される内部空間14は、全ての上下貫通孔111~114,121~124に連通する。
【0066】
また、上記と同様に、6層目と7層目の熱交換ユニット10を接合させると、既述した排気空間15と、排気空間15と非連通状態で画成される連通路22,35が形成される。すなわち、7層目の熱交換ユニット10では、下熱交換プレート12の左側前後両方のコーナ部の2つの下貫通孔123,124が、内部空間14に水を流入させる流入口23となり、上熱交換プレート11の右側後方及び左側前後両方のコーナ部の3つの上貫通孔111,113,114が8層目の熱交換ユニット10へ水を流出させる流出口24となる。また、下熱交換プレート12の右側前方のコーナ部の下貫通孔122は、内部空間14から導出管33へ水を流出させる流出口24となる。また、左側前後両方のコーナ部の2つの流入口23(すなわち、下熱交換プレート12の左側前後両方のコーナ部の2つの下貫通孔123,124)の周縁部に形成された下貫通孔フランジ部と、下方に隣接する熱交換ユニット10の上熱交換プレート11の流出口24(すなわち、上熱交換プレート11の左側前後両方のコーナ部の2つの上貫通孔113,114)の周縁部に形成された上貫通孔フランジ部とを接合させることによって形成される連通路22は、上下に隣接する熱交換ユニット10の内部空間14相互を連通させる流体流路となる。
【0067】
また、下熱交換プレート12の右側前方のコーナ部の下貫通孔フランジ部と、下方に隣接する熱交換ユニット10の上熱交換プレート11の右側前方のコーナ部の上貫通孔フランジ部とを接合させると、排気空間15と非連通状態で画成される連通路35が形成される(図4参照)。また、既述したように、導出管33の上端は、6層目の上熱交換プレート11の右側前方のコーナ部の上貫通孔フランジ部の下面と接合されている。このため、7層目の熱交換ユニット10の内部空間14は、連通路35を介して導出管33に連通する。
【0068】
7層目の熱交換ユニット10では、左側前後両方のコーナ部の2つの流入口23から内部空間14に流入した水の一部は、右側前後両方の2つのコーナ部の流出口24(すなわち、上熱交換プレート11の右側後方のコーナ部の上貫通孔111及び下熱交換プレート12の右側前方のコーナ部の下貫通孔122)に向かって内部空間14内をフランジ部18に衝突しながら、1層目から6層目の熱交換ユニット10の内部空間14内を流れる水の方向と逆方向(図面中、左側から右側)に流れる。
【0069】
燃焼排気のガス流路の最上流に位置する8層目(最上層)の熱交換ユニット10において、上下熱交換プレート11,12は、上熱交換プレート11が下方に向かって突出する上周縁接合部を有すること、上熱交換プレート11が上貫通孔を有さないこと、並びに上下貫通孔112,122に導出管33が挿入されていないこと以外は、2層目のそれらと同一の構成を有する。従って、8層目の熱交換ユニット10では、上下熱交換プレート11,12の上下排気孔フランジ部11c,12cを接合させるとともに、下熱交換プレート12の下周縁接合部W2と上熱交換プレート11の上周縁接合部とを接合させると、上下熱交換プレート11,12の間に形成される内部空間14は、下熱交換プレート12の全ての下貫通孔121~124に連通する。
【0070】
また、上記と同様に、7層目と8層目の熱交換ユニット10を接合させると、既述した排気空間15と、排気空間15と非連通状態で画成される連通路22,35が形成される。すなわち、8層目の熱交換ユニット10では、下熱交換プレート12の右側後方及び左側前後両方のコーナ部の3つの下貫通孔121,123,124が内部空間14に水が流入する流入口23となり、下熱交換プレート12の右側前方のコーナ部の下貫通孔122が内部空間14から水が流出する流出口24となる。また、これら3つの流入口23(すなわち、下熱交換プレート12の右側後方及び左側前後両方のコーナ部の3つの下貫通孔121,123,124)の周縁部の下貫通孔フランジ部と、下方に隣接する熱交換ユニット10の上熱交換プレート11の流出口24(すなわち、上熱交換プレート11の右側後方及び左側前後両方のコーナ部の3つの上貫通孔111,113,114)の周縁部に形成された上貫通孔フランジ部とを接合させることによって形成される連通路22は、上下に隣接する熱交換ユニット10の内部空間14相互を連通させる流体流路となる。
【0071】
また、下熱交換プレート12の右側前方のコーナ部の下貫通孔フランジ部と、下方に隣接する熱交換ユニット10の上熱交換プレート11の右側前方のコーナ部の上貫通孔フランジ部とを接合させると、排気空間15と非連通状態で画成される連通路35が形成される。すなわち、7層目と8層目の熱交換ユニット10の内部空間14は、水が下方から上方へ流れる連通路22と、水が上方から下方に流れる連通路35とを介して連通する。また、8層目の熱交換ユニット10の内部空間14は、7層目の熱交換ユニット10の内部空間14を介して導出管33と連通する。
【0072】
また、7層目~8層目の熱交換ユニット10では、これらの熱交換ユニット10が重ね合わされたとき、左側前後両方のコーナ部の流入口23及び流出口24は同軸線上に位置する。そのため、7層目の熱交換ユニット10の内部空間14に流入した水の一部は、直線的に上方の流出口24に向かって流れ、流出口24から連通路22を介して8層目の各熱交換ユニット10の内部空間14に流入する。従って、7層目~8層目の各熱交換ユニット10の内部空間14に流入した水は、フランジ部18に衝突しながら各熱交換ユニット10の内部空間14内を左右方向で同一の方向(図面中、左側から右側)に流れる。
【0073】
また、7層目及び8層目の熱交換ユニット10の右側前方のコーナ部の流出口24は、導出管33と連通しているから、7層目及び8層目の熱交換ユニット10に到達した水は、導出管33を介して下方に流れる。すなわち、7層目の熱交換ユニット10を流れる水の一部は、8層目の熱交換ユニット10に流入することなく、7層目の熱交換ユニット10の右側前方のコーナ部の流出口24から導出管33に流出する。従って、8層目の熱交換ユニット10の右側前方のコーナ部の流出口24と、7層目の熱交換ユニット10の右側前方のコーナ部の流出口24(これらの熱交換ユニット10の下熱交換プレート12の右側前方のコーナ部の下貫通孔122)とは、導出管33を介して流出管21に水が流出する最終流出口を形成する。このように、本実施の形態では、流入管20から熱交換器1に流入する水は、上下方向に積層された熱交換ユニット10を下方から上方に向かって流れ、7層目または8層目の熱交換ユニット10から導出管33を介して流出管21に流出する。
【0074】
次に、各熱交換ユニット10の内部空間14内の水の流れについて説明する。図5は、1つの熱交換ユニット10の一部を上方から見たときの内部空間14内の水の流れを示す部分平面図であり、図6は、1つの熱交換ユニット10の一部の内部空間14内の水の流れを示す部分断面図である。これらの図中、矢印Fは、水の流れを、矢印Gは、燃焼排気の流れを示す。
【0075】
既述したように、水は、各熱交換ユニット10の内部空間14内を流入口23から流出口24に向かって左右方向に流れる。このとき、水は、内部空間14内の流路抵抗の低い部分を流れやすい。そのため、隣接する排気孔13の間に内向き段差部17が形成されていない場合、水は内部空間14を閉塞するフランジ部18から離れたフランジ部18間の中央部を流れやすい。その結果、フランジ部18近傍を流れる水が少なくなるだけでなく、フランジ部18間の中央部では層流が形成されやすくなる。そのため、フランジ部18近傍を流れる水の温度とフランジ部18間の中央部を流れる水の温度との温度差が大きくなり、内部空間14内を流れる水の温度分布が大きくなる。その結果、フランジ部18で吸熱された熱が水に十分に熱伝達されず、熱効率が低下しやすい。
【0076】
しかしながら、本実施の形態の熱交換器1では、隣接する排気孔13の間に内部空間14の高さを減少させる内向き段差部17が形成されているから、内向き段差部17は内部空間14の内方に向かって突出する。そのため、図5に示すように、内向き段差部17の周縁に衝突した水は、狭内部空間14aを通過して下流側に向かって直線的に流れる水と、内向き段差部17の周囲を回り込みながら下流側に向かって流れる水とに分流される。従って、内向き段差部17の周囲を回り込む水は、フランジ部18近傍を流れる。これにより、高温に加熱されたフランジ部18の熱を効率的に水に熱伝達させることができる。
【0077】
また、内部空間14内の上流側から流れてきた水は内向き段差部17に衝突して、水の乱流が発生する。従って、内向き段差部17よりも上流側での水の温度分布を小さくすることができる。これにより、熱交換ユニット10で吸熱された熱が効率的に水に熱伝達される。
【0078】
また、排気孔13及び内向き段差部17はそれぞれ熱交換ユニット10の略全面にわたって格子状に形成されており、且つ排気孔13及び内向き段差部17は等間隔で前後及び左右方向で交互に形成されている。そのため、1つの隣接する排気孔13の間に位置する内向き段差部17に向かって、他の隣接する排気孔13の間を通過する水が流れる。これにより、さらに水の乱流が発生して、内向き段差部17近傍の水の温度分布を一層、小さくすることができる。
【0079】
また、図6に示すように、狭内部空間14aを通過する水と熱交換ユニット10との内面との間の距離が減少する。これにより、熱交換ユニット10で吸熱された熱がさらに効率的に水に熱伝達される。
【0080】
また、図5に示すように、狭内部空間14aを通過する水と内向き段差部17の周囲を回り込む水とは、内向き段差部17より下流側で再度、合流し、水の乱流が発生する。従って、内向き段差部17より下流側での温度分布を小さくすることができる。これにより、熱交換ユニット10で吸熱された熱がさらに効率的に水に熱伝達される。
【0081】
また、図6に示すように、狭内部空間14aを通過してきた水は内向き段差部17の下流側で上下方向に広がるように流れるため、内向き段差部17の下流側で上下方向に向かって流れる流れ成分が多い。一方、内向き段差部17の周囲を回り込む水は一定の高さの内部空間14を流れるため、上下方向に向かって流れる流れ成分は少ない。このため、内向き段差部17の下流側では、異なる方向の流れ成分を有する水が合流し、さらに水の乱流の発生が促進される。従って、内向き段差部17より下流側での温度分布を一層、小さくすることができる。
【0082】
また、隣接する2つの排気孔13と隣接する2つの内向き段差部17とで囲まれる領域の略中央部には、内部空間14の高さを増加させる外向き段差部19が形成されているから、図6に示すように、既述した内向き段差部17の下流側で合流した水が広内部空間14bに流入するとき、水の乱流が発生する。従って、内向き段差部17よりも下流側の水の温度分布をさらに小さくすることができる。これにより、熱交換ユニット10で吸熱された熱がさらに効率的に水に熱伝達される。
【0083】
また、内向き段差部17によって内部空間14の高さが減少するから、熱交換ユニット10の隣接する2つの排気孔13の間の外面には凹凸が形成される。また、上下で隣接する熱交換ユニット10の排気孔13は左右方向に半ピッチずれており、内向き段差部17は隣接する排気孔13の間に位置する。従って、上方の熱交換ユニット10の排気孔13の下方に、下方の熱交換ユニット10の内向き段差部17が位置する。そのため、排気空間15を流れる燃焼排気は、排気孔13に流入する前に上凹部11bによって形成される凹凸に衝突して、燃焼排気の乱流が発生する。従って、排気孔13の周縁部の燃焼排気の温度境界層を薄くすることができる。これにより、燃焼排気の熱がフランジ部18で効率的に吸熱される。
【0084】
また、隣接する熱交換ユニット10の間には燃焼排気が流れる排気空間15が形成されているから、燃焼排気の熱は上下熱交換プレート11,12で吸熱される。これにより、熱交換ユニット10で吸熱された熱がさらに効率的に水に熱伝達される。
【0085】
また、フランジ部18の先端に形成されたバーリング部11dは、排気孔13の開口縁から燃焼排気の下流側に向かって延在しているから、燃焼排気が排気孔13を通過するときにバーリング部11dに接触しながら下流側に向かって流れる。従って、吸熱面積が増加するから、燃焼排気の熱がフランジ部18で効率的に吸熱される。これにより、熱交換ユニット10で吸熱された熱がさらに効率的に水に熱伝達される。
【0086】
なお、バーリング部11dは、燃焼排気の下流側に向かって孔径が小さくなるようにテーパ形状に形成されてもよい。これにより、燃焼排気の通気抵抗の増加を抑えながら、吸熱面積を増加させることができる。
【0087】
また、バーリング部11dは、排気孔13の開口縁から燃焼排気の上流側に向かって延在するように、下排気孔フランジ部12cの先端に設けられてもよい。この場合、燃焼排気が排気孔13に流入する前にバーリング部11dによって燃焼排気の乱流がより発生しやすくなる。そのため、排気孔13の周縁部における燃焼排気の温度境界層が薄くなる。これにより、燃焼排気の熱がフランジ部18で効率的に吸熱される。
【0088】
以上のように、上記熱交換器1によれば、燃焼排気から熱交換ユニット10が吸熱する熱が、効率的に内部空間14内を流れる水に熱伝達されるから、熱交換が促進される。本発明者の検討によれば、本実施の形態の内向き段差部17を有する熱交換ユニット10を用いた熱交換器1の熱効率は、約88%である。これに対して、内向き段差部17のない熱交換ユニットを用いた比較熱交換器の熱効率は、約86%である。従って、本発明によれば、高い熱効率を有する熱交換器1を提供することができる。
【0089】
なお、上記実施の形態では、導出管33は1~6層目の熱交換ユニット10を貫通させている。しかしながら、導出管33は、1~7層目の熱交換ユニット10を貫通させてもよい。この場合、全ての水が8層目の熱交換ユニット10の内部空間14に流入し、8層目の熱交換ユニット10の流出口24から導出管33を介して流出管21に水が流出する。
【0090】
また、上記実施の形態では、1~6層目の熱交換ユニット10を貫通する導出管33と流出管21とを接続させて、熱交換器1から水を流出させている。しかしながら、導出管33を用いることなく、所定位置の上下貫通孔の周縁部にバーリング部を形成し、バーリング部を接合することにより、流出管21に連通する導出流路が形成されてもよい。
【0091】
また、上記実施の形態では、下向きの燃焼面30を有するバーナ31が熱交換器1の上方に配設されている。しかしながら、上向きの燃焼面を有するバーナが熱交換器1の下方に配設されてもよい。
【0092】
さらに、上記実施の形態では、複数の熱交換ユニット10が上下に積層されている。しかしながら、複数の熱交換ユニット10は左右に積層されてもよい。
【0093】
また、上記実施の形態では、上下に隣接する熱交換ユニット10は排気空間15を介して積層されている。しかしながら、排気空間15を設けることなく、複数の熱交換ユニット10が直接、積層されてもよい。
【0094】
また、上記実施の形態では、給湯器が用いられているが、ボイラなどの熱源機が用いられてもよい。
【符号の説明】
【0095】
1 熱交換器
10 熱交換ユニット
13 排気孔
14 内部空間
15 排気空間
17 内向き段差部
18 フランジ部
19 外向き段差部
11d バーリング部
図1
図2
図3
図4
図5
図6