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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】シール部材の保持構造および電子機器
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/52 20060101AFI20221125BHJP
   H05K 5/00 20060101ALI20221125BHJP
   F16J 15/10 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
H01R13/52 301H
H05K5/00 C
F16J15/10 B
F16J15/10 S
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018181283
(22)【出願日】2018-09-27
(65)【公開番号】P2020053254
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-09-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000227995
【氏名又は名称】タイコエレクトロニクスジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 佑介
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雄大
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-187099(JP,A)
【文献】特開2008-047432(JP,A)
【文献】特開2014-135194(JP,A)
【文献】特開2006-144555(JP,A)
【文献】特開2009-129946(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/52
H05K 5/00
F16J 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気コネクタと筐体の間に介在するシール部材を前記電気コネクタが保持する構造であって、
前記シール部材は、
自由端と接続端を有し、それぞれが所定間隔をあけて配置される一対の第一シール部と、一対の前記第一シール部の前記接続端を繋ぐ第二シール部を備えるU字状の形状をなし、
一対の前記第一シール部のそれぞれの前記自由端の側において、
前記電気コネクタに対する前記シール部材の前記第二シール部の延長方向に沿う第一方向の相対的な位置ずれを防ぐ第一保持部と、
前記電気コネクタに対する前記シール部材の前記第一シール部の延長方向に沿う第二方向の相対的な位置ずれを防ぐ第二保持部と、
を備えることを特徴とするシール部材の保持構造。
【請求項2】
前記第一保持部及び前記第二保持部は、
前記シール部材の圧縮による弾性力を伴って前記シール部材を保持する、
請求項1に記載のシール部材の保持構造。
【請求項3】
前記第一保持部は、
前記電気コネクタ及び前記シール部材の一方に設けられる第一保持突起と、
前記電気コネクタ及び前記シール部材の他方に設けられる、前記第一保持突起が挿入される第一保持溝と、を備える、
請求項1又は請求項2に記載のシール部材の保持構造。
【請求項4】
前記第一保持部において、
前記第一保持突起及び前記第一保持溝は、前記第方向に延設される、
請求項3に記載のシール部材の保持構造。
【請求項5】
前記第一保持部は、
前記シール部材の前後方向の両側に設けられる、
請求項3又は請求項4に記載のシール部材の保持構造。
【請求項6】
前記第二保持部は、
前記電気コネクタ及び前記シール部材の一方に設けられる第二保持突起と、
前記電気コネクタ及び前記シール部材の他方に設けられる、前記第二保持突起が挿入される第二保持溝と、を備える、
請求項1~請求項5のいずれか一項に記載のシール部材の保持構造。
【請求項7】
前記第二保持部において、
前記第二保持突起及び前記第二保持溝は、前記第方向に延設される、
請求項6に記載のシール部材の保持構造。
【請求項8】
前記第二保持部は、
前記シール部材の前後方向の両側に設けられる、
請求項6又は請求項7に記載のシール部材の保持構造。
【請求項9】
電気コネクタと、
電気コネクタが装着される筐体と、を備え、
電気コネクタと筐体の間に介在するシール部材が、請求項1~請求項8のいずれか一項に記載のシール部材の保持構造により前記電気コネクタに保持される、
ことを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水性能が要求される電気コネクタに適用されるのに好適なシール部材の保持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、エンジンルームのように水のかかる場所に設けられる電気コネクタには、防水性能が要求されている。防水性能は電気コネクタと電気コネクタが装着される筐体との間にシール部材を介在させることで担保される。シール部材には、弾性を備えるゴム材料が用いられる例が多い。
【0003】
シール部材は、防水性能を有するだけでは足りず、簡単な作業で電気コネクタに取り付けられることが望まれる。特許文献1は、環状のシール部材(30)の長手方向の両端に、L字形の係止腕(34)及びT字形のフック(35)からなる係合部を設け、ハウジング(10)の保持溝(15)に係合させたシール部材の保持構造を開示する。この保持構造は、係止腕(34)を、自身の弾性を利用してハウジング(10)のフランジ(11)の側部に設けた受部(14)の保持溝(15)に側方から係合させるととともに、T字形のフック(35)を受部(14)の後面に係合させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-207681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1のシール部材(30)は、L字形の係止腕(34)とT字形のフック(35)が組み合わされた複雑な形状の係合部を有しており、射出成形で作製するのが容易ではない。また、特許文献1のシール部材(30)は、長手方向の両端のそれぞれに設けられる係合部を順番にハウジング(10)の受部(14)、保持溝(15)に係合させる。したがって、一つのシール部材(30)を係合するのに2回の係合作業が必要である。
【0006】
以上より、本発明は、シール部材をハウジングに取り付ける作業が容易であるとともに、その製造が容易であるシール部材の保持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、電気コネクタと筐体の間に介在するシール部材を電気コネクタが保持する構造に関する。
本発明におけるシール部材は、自由端と接続端を有し、それぞれが所定間隔をあけて配置される一対の第一シール部と、一対の第一シール部の接続端を繋ぐ第二シール部を備えるU字状の形状をなしている。
本発明における保持構造は、一対の第一シール部のそれぞれの自由端の側において、電気コネクタに対するシール部材の第二シール部の延長方向に沿う第一方向の相対的な位置ずれを防ぐ第一保持部と、電気コネクタに対するシール部材の第一シール部の延長方向に沿う第二方向の相対的な位置ずれを防ぐ第二保持部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明における第一保持部及び第二保持部は、シール部材の圧縮による弾性力を伴ってシール部材を保持することが好ましい。
【0009】
本発明の好ましい第一保持部は、電気コネクタ及びシール部材の一方に設けられる第一保持突起と、電気コネクタ及びシール部材の他方に設けられる、第一保持突起が挿入される第一保持溝と、を備える。
本発明の好ましい保持構造は、第一保持突起及び第一保持溝が第一方向に延設される。
本発明の好ましい保持構造は、第一保持部がシール部材の前後方向の両側に設けられる。
【0010】
本発明の好ましい第二保持部は、電気コネクタ及びシール部材の一方に設けられる第二保持突起と、電気コネクタ及びシール部材の他方に設けられる、第二保持突起が挿入される第二保持溝と、を備える。
本発明の好ましい保持構造は、第二保持突起及び第二保持溝が第二方向に延設される。
本発明の好ましい保持構造は、第二保持部がシール部材の前後方向の両側に設けられる。
【0011】
本発明は、電気コネクタと、電気コネクタが装着される筐体と、を備える電子機器を提供する。この電子機器は、電気コネクタと筐体の間に介在するシール部材が、上述した保持構造により電気コネクタに保持される。
【発明の効果】
【0012】
本発明のシール部材の保持構造は、シール部材がU字状の形状をなしている。したがって、本発明によれば、U字の開口部分に電気コネクタのハウジングを一方向に押し込むという簡単な作業で、シール部材を電気コネクタに取り付けることができる。しかも、本発明の保持構造における第一保持部と第二保持部は、突起と溝という単純な構成で実現できるので、シール部材の製造が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態に係る電子機器の分解斜視図である。
図2】本実施形態に係る電気コネクタを背面側から観た斜視図である。
図3】本実施形態に係る電気コネクタを示し、(a)は側面図であり、(b)は正面図である。
図4】本実施形態に係る電気コネクタのハウジングを単体で示す斜視図である。
図5】本実施形態に係る電気コネクタのシール部材を単体で示す斜視図である。
図6】本実施形態に係るシール部材を電気コネクタに組み付ける際の、第一保持部と第二保持部の挙動を示す図である。
図7】本実施形態に係るシール部材を電気コネクタに組み付ける際の、第二保持部の挙動を図6とは異なる向きから示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本実施形態に係るシール部材の保持構造は、図1に示すように、電気コネクタ2と回路基板3との組立体と、この組立体の回路基板3を収容する筐体4と、を備える電子機器1に適用される。電子機器1は、自動車のエンジンルームの内部に配置されるものである。電気コネクタ2は、筐体4にシール部材30を介して固定される。本実施形態の保持構造は、シール部材30が電気コネクタ2のハウジング21に保持される構造である。
以下、電子機器1の構成要素の概要を説明した後に、本実施形態に係るシール部材の保持構造を詳しく説明する。
【0015】
〔電気コネクタ2〕
電気コネクタ2は、図1及び図2に示すように、ハウジング21と、ハウジング21に保持される複数のコンタクト29と、を備えている。
ハウジング21は、電気絶縁性の樹脂材料を射出成形することにより一体的に形成されている。ハウジング21は、基部22と、この基部22から前方に向けて突出する二つのフード23A,23Bとを一体的に備えている。フード23A,23Bは、電気コネクタ2と相互に嵌合される相手コネクタを受容する。
本実施形態の電気コネクタ2は、基部22を基準にしてフード23A,23Bが突出する側を前方という。また、シール部材30を含む電気コネクタ2において、幅方向W、前後方向L及び上下方向Hは、図1に図示する通りに定義されるものとする。
【0016】
ハウジング21は、シール部材30を収容するシール収容溝24を備えている。シール収容溝24は、ハウジング21の上面を除いて形成されており、全体としてU字状の形状をなしている。U字状は、シール部材30がU字状であることに対応する。シール収容溝24は、幅方向Wの両端に設けられる側溝24A,24Bと、側溝24Aと側溝24Bの図1における下端を繋ぐ下溝24Cの三つの部分からなる。
このU字状のシール収容溝24の内部において、U字状のシール部材30は基部22に装着される。
【0017】
電気コネクタ2は、図1及び図2に示すように、複数のコンタクト29を備えている。コンタクト29は、導電性を有する金属材料、例えば銅合金からなる。このコンタクト29は、基部22を貫通して、その一方側がフード23A,23Bの内部に配置され、他方側は後方に引き出され、回路基板3に形成された図示しない導体パターンに電気的に接続されている。
【0018】
〔回路基板3〕
回路基板3は、コンタクト29と電気的に接続される。回路基板3は、種々の電子部品が実装され、例えばエンジン、その他の制御を行う。
回路基板3は、図1に示すように、電気コネクタ2の基部22とは略直交して配設されている。回路基板3は、電気コネクタ2に対して上方に偏位して設けられており、電気コネクタ2が筐体4に装着されると筐体4の開口を覆う。
【0019】
〔筐体4〕
筐体4は、図1に示すように、箱状の本体41と偏平な蓋45とから構成される。
本体41は、図1おける上端が開口されているとともに、側壁42に電気コネクタ2が装着される装着溝43が形成されている。本体41は、電気絶縁性の樹脂材料を射出成形することにより一体的に形成される。
蓋45は、本体41に例えば締結具により固定されることにより、本体41の開口を塞ぐとともに、本体41と組み合わされて筐体4を構成する。蓋45は、例えばアルミニウム合金からなるダイカスト部材にて構成されるが、防水性を確保するために、本体41との間に加えて電気コネクタ2との間にシール部材が介在される。このシール部材には、液状ガスケットが好適に用いられる。
【0020】
筐体4の所定位置に電気コネクタ2と回路基板3からなる組立体が装着されると、電気コネクタ2のフード23A,23Bは筐体4の外部に露出するが、シール収容溝24よりも後方は筐体4の内部に収容される。筐体4の内部には、電気コネクタ2の基部22を貫通するコンタクト29が収容され、このコンタクト29と電気的に接続される回路基板3もまた筐体4の内部に収容される。
シール収容溝24に保持されるシール部材30が装着溝43に臨む装着縁44に押し付けられることで、シール構造が確立される。これにより、筐体4の内部に収容されるコンタクト29、回路基板3は、外部からの水の浸入に対して防水される。
【0021】
〔シール部材の保持構造〕
次に、電気コネクタ2におけるシール部材30の保持構造について、図2図5を参照して説明する。
シール部材30は、図2及び図3に示すように、電気コネクタ2のシール収容溝24に収容された状態で、その自由端34A,34Bの側で電気コネクタ2のハウジング21に保持される。図2は一方の自由端34Bの側だけが表されているが、他方の自由端34Aの側も同様に保持されている。
【0022】
[シール部材30]
シール部材30は、図5に示すように、全体としてU字状の形状を有している。
シール部材30は、電気コネクタ2と筐体4の間に圧縮された状態で介在することにより防水機能を発揮する限りその材質は任意である。例えば、シール部材30は、一例としてシリコーンゴム、ブチルゴムなどの電気絶縁性の材料を射出成形により一体に成形される。
【0023】
シール部材30は、図5に示すように、それぞれが所定間隔をあけて対向配置される一対の第一シール部31A,31Bと、一対の第一シール部31A,31Bの接続端33A,33Bが幅方向の両端で接続される第二シール部32と、を備える。
第一シール部31A,31Bは第二シール部32に対して概ね直交するように設けられている。第一シール部31A,31Bは、第二シール部32と連なる接続端33A,33Bと、接続端33A,33Bに対する自由端34A,34Bと、を備える。シール部材30は、第一シール部31A,31Bのそれぞれの自由端34A,34Bの側に、電気コネクタ2との保持に供されるシール保持要素50が設けられている。
【0024】
シール部材30は、電気コネクタ2と対向する内側Inと、筐体4と対向する外側Ouと、を有する。シール部材30は、内側Inには突条からなる内封止部35が設けられ、また、外側Ouにも突条からなる外封止部36が設けられている。
シール部材30は、内封止部35が内側Inにおいて、また、外封止部36が外側Ouにおいて、一方の自由端34Aから他方の自由端34Bまでのシール部材30の延長方向の全域にわたって設けられている。電気コネクタ2が筐体4の所定位置に嵌合されると、内封止部35が電気コネクタ2に密着され、また、外封止部36が筐体4に密着されることで、電気コネクタ2と筐体4の間の防水性が確保される。
【0025】
[シール保持要素50]
シール部材30は、図5に示すように、自由端34A,34Bの側のそれぞれにシール保持要素50が設けられている。
シール保持要素50は、シール部材30の幅方向Wの保持を担う第一保持部51と、シール部材30の上下方向Hの保持を担う第二保持部55と、を備える。第一保持部51と第二保持部55は、後述するように、シール部材30の前後方向Lの保持も担っている。
電気コネクタ2には、シール保持要素50に対応するコネクタ保持要素60が設けられているが、これについては後述する。
【0026】
第一保持部51は、電気コネクタ2に対してシール部材30の第一シール部31A,31Bがその幅方向Wに相対的な変位、つまり位置ずれを起すことなく定位置に留まるのに寄与する。幅方向Wは第二シール部32の延長方向に沿う第一方向と一致する。
第一保持部51は、第一シール部31A,31Bの前後方向Lの両側にそれぞれ設けられる、直方体状の空隙からなる第一保持溝53を有する。それぞれの第一保持溝53は、前後方向の外側に向けて開口し、かつ、上下方向Hの一端(上端)に開口するとともに他端(下端)が閉じられた空隙をなしている。このように、第一保持部51は、第一シール部31A,31Bの自由端34A,34Bから接続端33A,33Bに向けた第二方向に第一保持溝53が延設される。それぞれの第一保持溝53の幅方向Wの両側には保持壁53A,53Bが設けられている。
【0027】
次に、第二保持部55は、電気コネクタ2に対してシール部材30の第一シール部31A,31Bがその上下方向Hに沿う相対的な変位、つまり位置ずれを起すことなく定位置に留まるのに寄与する。上下方向Hは、第一シール部31A,31Bの延長方向に沿う第二方向と一致する。
第二保持部55は、それぞれの自由端34A,34Bにおいて、外側Ouに向けて突き出す、平面視した形状が矩形の第二保持突起57を有する。第二保持突起57は、第一方向に延設されている。第二保持突起57は、前後方向Lの両側に係止爪59,59が設けられている。係止爪59,59は、係止爪59と係止爪59の間を繋ぐ第二保持突起57と段差が付けられている。
第二保持部55の第二保持突起57は、保持壁53Aから突き出している。このように、第一保持部51と第二保持部55は、保持壁53Aを共通の部材として備えている。
【0028】
[コネクタ保持要素60]
次に、コネクタ保持要素60について図2図4を参照して説明する。
コネクタ保持要素60は、シール部材30のシール保持要素50と係り合うことで、シール部材30の保持を担う。
コネクタ保持要素60は、図4に示すように、シール部材30の幅方向Wの保持を担う第一保持部61と、シール部材30の上下方向Hの保持を担う第二保持部65と、を備える。図2及び図3に示すように、第一保持部61はシール部材30の第一保持部51と係り合い、第二保持部65はシール部材30の第二保持部55と係り合う。
【0029】
第一保持部61は、電気コネクタ2に対してシール部材30の第一シール部31A,31Bがその幅方向W(第一方向)に沿う相対的な変位、つまり位置ずれを起すことなく定位置に留まるのに寄与する。
第一保持部61は、図3及び図4に示すように、ハウジング21の前後方向Lの両側にそれぞれ設けられる、直方体状の第一保持突起63を有する。それぞれの第一保持突起63は、電気コネクタ2の側フランジ25A,25Bの対向する面である内面に設けられている。第一保持突起63は、この内面に上下方向H(第二方向)に延設されている。
図6(a)に示すように、第一保持突起63の幅方向Wの両側には保持溝62Aと保持溝62Bが設けられている。保持溝62Aは第一保持突起63と下突起67の間に設けられ、保持溝62Bは第一保持突起63とハウジング21の壁面の間に設けられる。
【0030】
第一保持突起63がシール部材30の第一保持溝53の内部に隙間なく嵌入されることで、第一保持部51と第一保持部61が互いに係止される。この係止関係において、第一保持溝53の周囲のシール部材30に弾性力が生じるように、第一保持突起63の幅W63よりも第一保持溝53の幅W53が小さいことが好ましい。このように、第一保持部51と第一保持部61は、シール部材30の圧縮による弾性力を伴ってシール部材30を保持する。これにより、シール部材30がハウジング21から脱落するのを抑制できる。なお、幅W63、幅W53については、図6(b)に示されている。
【0031】
次に、第二保持部65は、電気コネクタ2に対して30の第一シール部31A,31Bがその上下方向H(第二方向)に相対的な変位、つまり位置ずれを起すことなく定位置に留まるのに寄与する。
第二保持部65は、図4及び図6に示すように、上下方向H(第二方向)に所定の間隔をあけて設けられる上突起66と下突起67を有する。図2に示すように、上突起66と下突起67の間の第二保持溝68にシール保持要素50の係止爪59が隙間なく嵌入されることで、第二保持部55と第二保持部65が互いに係止される。この係止関係において、係止爪59の幅W59よりも第二保持溝68の幅W68が小さいことが好ましい。このように、第二保持部55と第二保持部65は、シール部材30の圧縮による弾性力を伴ってシール部材30を保持する。これにより、シール部材30がハウジング21から脱落するのを抑制できる。
【0032】
上突起66は、係止爪59が図4における上方に変位するのを規制する部材であることから、幅方向W(第一方向)と平行な係止面66Aを有している。
これに対して下突起67は、シール部材30を電気コネクタ2に装着する際に、係止爪59が乗り越えるとともに、乗り越えた後には係止爪59が下方に変位するのを規制するという二つの機能を有する。この二つの機能を実現するために、下突起67は、幅方向W(第一方向)と平行な係止面67Aと、図中の下方から上方に向けて上るスライド面67Bと、を備えている。
【0033】
[シール部材30の電気コネクタ2への装着手順]
次に、図6及び図7を参照して、シール部材30を電気コネクタ2に装着する際のシール部材の保持部分の変遷を説明する。この変遷は、シール部材30のU字の開口部分に電気コネクタ2のハウジング21を一方向に押し込むという作業の過程におけるものである。なお、図6及び図7において、(a)~(d)が時系列の順を示している。
はじめに、第一保持溝53と第一保持突起63を位置合わせしてから、図6(a)に示すように第一保持溝53に第一保持突起63を挿入し、図6(b)、図6(c)に示すように第一保持溝53の奥に向けて第一保持突起63の挿入を進める。そうすると、シール保持要素50における第二保持部55を構成する係止爪59がコネクタ保持要素60の第二保持部65を構成する下突起67まで到達する。
【0034】
さらに、挿入を進めると、図6(d)に示すように、第一保持突起63が第一保持溝53の奥まで達する。そうすると、保持壁53Aが保持溝62Aに挿入され、第一保持突起63が第一保持溝53に挿入され、かつ、保持壁53Bが保持溝62Bに挿入される。これらの挿入において、幅方向W(第一方向)の隙間がないので、シール部材30のハウジング21に対する幅方向Wの位置ずれが防止される。
【0035】
また、図6(d)に示すように、係止爪59が下突起67を乗り越えて下突起67と上突起66の間の保持溝68に嵌る。係止爪59が係止面66Aと係止面67Aに接するので、シール部材30のハウジング21に対する上下方向H(第二方向)の位置ずれが防止される。
【0036】
係止爪59が下突起67を乗り越えるときには、図7(a)~図7(c)に示すように、係止爪59がスライド面67Bを連続的に登り、最終的には図7(d)に示すように係止爪59が第二保持溝68に挿入される。
【0037】
また、第一保持部51,61が前後方向Lの両側に設けられ、加えて、第二保持部55,65が前後方向Lの両側に設けられる。これにより、ハウジング21に対してシール部材30が前後方向Lに位置ずれするのが防止される。
【0038】
〔効 果〕
以上の構成を備えるシール部材の保持構造が奏する効果を説明する。
電気コネクタ2に対して、幅方向W(第一方向)の位置ずれ及び上下方向H(第二方向)の位置ずれが抑制されている。特に本実施形態は、ハウジング21に対してシール部材30が前後方向Lに位置ずれするのが防止されているので、シール部材30の位置ずれの防止効果が大きい。したがって、電気コネクタ2を筐体4に装着する際に、筐体4との間に生じる摩擦によってシール部材30が位置ずれするのを抑制できるので、電気コネクタ2と筐体4の間の防水性を確保できる。
しかも、本実施形態は、電気コネクタ2に装着される際に、シール部材30を電気コネクタ2に上下方向Hだけに押し込む、つまり一方向に押し込むだけでシール部材30を電気コネクタ2に容易に取り付けることができる。
【0039】
しかも、シール保持要素50の第一保持部51と第二保持部55とが突起、溝という単純な形状をなし、また、コネクタ保持要素60の第一保持部61と第二保持部65とが突起、溝という単純な形状をなしている。したがって、シール保持要素50、コネクタ保持要素60を製造するのが容易である。
【0040】
上記以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
本実施形態では、互いに嵌り合う第一保持溝53と第一保持突起63のうち、シール部材30に第一保持溝53を設ける一方、第一保持突起63を電気コネクタ2のハウジング21に設けたが、これは本発明の第一保持部51の一例に過ぎない。例えば、本発明は、シール部材30の側に第一保持突起を設け、ハウジング21の側に第一保持溝を設けてもよい。第二保持突起、第二保持溝についても同様である。
また、本実施形態で示した互いに嵌り合う保持溝と保持突起の形態に限るものでなく、一方と他方が互いに接触し合って、お互いの幅方向Wの相対的な位置ずれ(変位)を規制することができる構成であれば、本発明の保持構造に該当する。
【符号の説明】
【0041】
1 電子機器
2 電気コネクタ
3 回路基板
4 筐体
21 ハウジング
22 基部
23A,23B フード
24 シール収容溝
24A,24B 側溝
24C 下溝
25A,25B 側フランジ
29 コンタクト
30 シール部材
31A,31B 第一シール部
32 第二シール部
33A,33B 接続端
34A,34B 自由端
35 内封止部
36 外封止部
41 本体
42 側壁
43 装着溝
44 装着縁
45 蓋
50 シール保持要素
51 第一保持部
53 第一保持溝
53A,53B 保持壁
55 第二保持部
57 第二保持突起
59 係止爪
60 コネクタ保持要素
61 第一保持部
62A,62B 保持溝
63 第一保持突起
65 第二保持部
66 上突起
66A 係止面
67 下突起
67A 係止面
67B スライド面
68 第二保持溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7