(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】動作支援装置
(51)【国際特許分類】
B66F 19/00 20060101AFI20221125BHJP
B25J 11/00 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
B66F19/00 Z
B25J11/00 Z
(21)【出願番号】P 2018188852
(22)【出願日】2018-10-04
【審査請求日】2021-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】522169210
【氏名又は名称】株式会社アドバンス
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】小西 真
(72)【発明者】
【氏名】幅崎 昌平
(72)【発明者】
【氏名】宮地 遼
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3024978(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2003/0070873(US,A1)
【文献】特開2018-103280(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0303950(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 19/00
B25J 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紐状部材に張力を発生させること
で装着者の動作を支援する動作支援装置であって、
前記装着者の胴体に装着される胴体部材と、
前記紐状部材と、
前記紐状部材の一端側の部位が固定される作用部材と、
前記胴体部材に固定され、前記紐状部材の一端と他端との間の部位を、前記紐状部材がスライド自在な状態で支持する支持部材と、
前記紐状部材の前記他端側の部位が固定され、駆動することで前記支持部材から前記作用部材までの前記紐状部材の長さを調整するアクチュエータと、
前記紐状部材に貫通されており可撓性を有する管状部材と、を備え、
前記管状部材の一端は、前記支持部材に固定された固定端であり、
前記管状部材の他端は自由端であ
り、
前記胴体部材は、前記装着者の肩に装着される肩装具を有し、
前記支持部材は、前記肩装具のうち、前記装着者の肩上の部位に固定されている
動作支援装置。
【請求項2】
前記作用部材は、前記装着者の手、手首、及び、前腕部のうちの一部に装着される
請求項1に記載の動作支援装置。
【請求項3】
前記管状部材は、前記他端が前記一端よりも前記装着者の前側に位置する向きで、前記支持部材に固定されている
請求項1または2に記載の動作支援装置。
【請求項4】
前記管状部材は、前記紐状部材よりも可撓性が小さい
請求項1から3のいずれか1項に記載の動作支援装置。
【請求項5】
前記管状部材は、当該管状部材が延びる方向に交差する全ての方向に向かって撓む部材である
請求項1から4のいずれか1項に記載の動作支援装置。
【請求項6】
さらに、
前記アクチュエータの駆動部位からの動力を受けて回転することで前記紐状部材を巻き取る巻軸と、前記紐状部材の一部及び前記巻軸を収容し、前記胴体部材に対して着脱自在である筐体とを有するカートリッジを備え、
前記巻軸は、前記筐体が前記胴体部材に固定されている状態において、前記駆動部位からの動力を受け取ることが可能な状態で前記駆動部位と接続される
請求項1から5のいずれか1項に記載の動作支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動作支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1には、ワイヤで吊り下げられた荷物を支持するための荷物作用部を、ワイヤを巻き上げることで上方に移動させて、作業者が荷物を持ち上げる動作を補助するアシストスーツが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のようなワイヤなどの紐状部材を巻き上げることで装着者の動作を補助する動作支援装置では、ワイヤが切断しやすいという課題がある。
【0005】
そこで、本開示は、紐状部材を巻き上げることで装着者の動作を補助する動作支援装置において、紐状部材が切断されることを抑制できる動作支援装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る動作支援装置は、紐状部材に張力を発生させることで前記装着者の動作を支援する動作支援装置であって、前記装着者の胴体に装着される胴体部材と、前記紐状部材と、前記紐状部材の一端側の部位が固定される作用部材と、前記胴体部材に固定され、前記紐状部材の一端と他端との間の部位を、前記紐状部材がスライド自在な状態で支持する支持部材と、前記紐状部材の前記他端側の部位が固定され、駆動することで前記支持部材から前記作用部材までの前記紐状部材の長さを調整するアクチュエータと、前記紐状部材に貫通されており可撓性を有する管状部材と、を備え、前記管状部材の一端は、前記支持部材に固定された固定端であり、前記管状部材の他端は自由端である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の動作支援装置は、紐状部材を巻き上げることで装着者の動作を補助する動作支援装置において、紐状部材が切断されることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る動作支援装置を右側から見た平面図である。
【
図2】
図2は、実施の形態に係る動作支援装置を後側から見た平面図である。
【
図3】
図3は、
図1で示す動作支援装置の領域A1の拡大図である。
【
図4】
図4は、
図2で示す動作支援装置の領域A2の拡大図である。
【
図5A】
図5Aは、管状部材を上方から見た場合の拡大図である。
【
図5B】
図5Bは、管状部材を左側から見た場合の拡大図である。
【
図6】
図6は、カートリッジが取り外される様子を示す図である。
【
図7】
図7は、動作支援装置を装着した装着者の動作を支援している様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(本発明の基礎となった知見)
本発明者は、「背景技術」の欄において記載した、アシストスーツに関し、以下の問題が生じることを見出した。
【0010】
特許文献1のようなワイヤなどの紐状部材を巻き上げることで装着者の動作を補助する動作支援装置では、荷物作用部は、紐状部材により吊り下げられているため、自由度高く3次元的に様々な方向に動くことができる。しかし、その反面、紐状部材は、吊り下げの支点となっている部位において屈曲しているため、屈曲の曲げ半径が小さくなりやすく、切断しやすいという課題がある。
【0011】
また、吊り下げの支点となっているワイヤの部位を支持しているプーリの曲率半径を大きくすることで、ワイヤの曲げ半径を大きくすることが考えられるが、プーリのサイズを大きくすることとなり、3次元的な可動範囲が小さくなってしまう。また、プーリのサイズが大きくなるため、アシストスーツのサイズが大きくなり、また、重量が増加してしまう。
【0012】
また、ワイヤは、吊り下げの支点となっている部位から荷物作用部までの間において、荷物作用部の広い可動範囲での動きに追従する必要がある。よって、吊り下げの支点となっているワイヤの部位は、荷物作用部の動きに応じて様々な方向に引っ張られるため、様々な方向に屈曲する。このため、様々な方向にワイヤが引っ張られた場合には、プーリのサイズに関わらず、ワイヤに負荷がかかり、ワイヤが切断しやすいという課題があった。
【0013】
このような問題を解決するために、本開示の一態様に係る動作支援装置は、紐状部材に張力を発生させることで前記装着者の動作を支援する動作支援装置であって、前記装着者の胴体に装着される胴体部材と、前記紐状部材と、前記紐状部材の一端側の部位が固定される作用部材と、前記胴体部材に固定され、前記紐状部材の一端と他端との間の部位を、前記紐状部材がスライド自在な状態で支持する支持部材と、前記紐状部材の前記他端側の部位が固定され、駆動することで前記支持部材から前記作用部材までの前記紐状部材の長さを調整するアクチュエータと、前記紐状部材に貫通されており可撓性を有する管状部材と、を備え、前記管状部材の一端は、前記支持部材に固定された固定端であり、前記管状部材の他端は自由端である。
【0014】
このため、紐状部材が、所定の方向に引っ張られたとしても、管状部材は所定の方向に撓んで湾曲する。よって、紐状部材が支持部材の出口において急激な角度で屈曲することを低減することができ、紐状部材が切断されることを抑制することができる。
【0015】
また、前記胴体部材は、前記装着者の肩に装着される肩装具を有し、前記支持部材は、前記肩装具における、前記装着者の肩上の部位上に固定されていてもよい。
【0016】
これによれば、紐状部材は、装着者の肩上の部位上に固定されている支持部材から作用部材に延びる構成である。このため、装着者の視界が、紐状部材により遮られることを低減することができる。また、装着者が作業中に紐状部材0が装着者の顔にぶつかることを低減することができる。
【0017】
また、前記管状部材は、前記他端が前記一端よりも前記装着者の前側に位置する向きで、前記支持部材に固定されていてもよい。
【0018】
このため、装着者の前側に紐状部材を配置することが容易にでき、装着者が荷物を持ち上げる動作を効果的に補助することができる。
【0019】
また、前記管状部材は、前記紐状部材よりも可撓性が小さくてもよい。
【0020】
このため、管状部材は、紐状部材に引っ張られた方向に緩やかに湾曲するため、紐状部材が支持部材の出口において急激な角度で屈曲することを低減することができる。よって、紐状部材が切断されることを抑制することができる。
【0021】
また、前記管状部材は、当該管状部材が延びる方向に交差する全ての方向に向かって撓む部材であってもよい。
【0022】
このため、紐状部材が、作用部材の可動範囲の動きに追従して様々な方向に引っ張られたとしても、管状部材は様々な方向に撓んで湾曲することができる。よって、紐状部材が支持部材の出口において急激な角度で屈曲することを低減することができ、紐状部材が切断されることを抑制することができる。
【0023】
また、さらに、前記アクチュエータの駆動部位からの動力を受けて回転することで前記紐状部材を巻き取る巻軸と、前記紐状部材の一部及び前記巻軸を収容し、前記胴体部材に対して着脱自在である筐体とを有するカートリッジを備え、前記巻軸は、前記筐体が前記胴体部材に固定されている状態において、前記駆動部位からの動力を受け取ることが可能な状態で前記駆動部位と接続されてもよい。
【0024】
これによれば、カートリッジは、胴体部材に対して着脱自在であるため、紐状部材の交換が必要になったときに、容易に新しいカートリッジに交換することができる。
【0025】
以下、本発明の一態様に係る動作支援装置について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0026】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本発明の一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0027】
(実施の形態)
図1~
図7を用いて、実施の形態に係る動作支援装置について説明する。
【0028】
[1-1.構成]
本実施の形態では、装着者に動作支援装置が装着された状態において、装着者の身体の左右方向をX軸方向とし、装着者の身体の前後方向をY軸方向とし、装着者の身体の上下方向をZ軸方向とする。また、装着者の身体の右側をX軸方向プラス側とし、装着者の身体の左側をX軸方向マイナス側とする。また、装着者の身体の前側をY軸方向プラス側とし、装着者の身体の後ろ側をY軸方向マイナス側とする。また。装着者の身体の上側をZ軸方向プラス側とし、装着者の身体の下側をZ軸方向マイナス側とする。なお、各図において、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向のそれぞれを示す矢印が示す方向を、それぞれの方向におけるプラス側とし、矢印とは反対側の方向を、それぞれの方向におけるマイナス側とする。なお、上記のことは、以降の実施の形態でも同様である。
【0029】
図1は、実施の形態に係る動作支援装置を右側から見た平面図である。
図2は、実施の形態に係る動作支援装置を後側から見た平面図である。
【0030】
図1および
図2に示すように、動作支援装置100は、胴体部材110と、支持部材130と、管状部材134と、紐状部材140と、作用部材150と、アクチュエータ160とを備える。
【0031】
胴体部材110は、装着者の胴体の側方に配置され、当該胴体に装着される部材である。胴体部材110は、具体的には、装着者の胴体の後方、つまり、装着者の背中に装着される背中部111と、装着者の腰に装着される腰部112とを有する。背中部111は、装着者の背骨に沿って配置される、Z軸方向に長い部材である。腰部112は、X軸方向に長く、かつ、装着者の腰の側方および後方、つまり、装着者の左側、右側、および後側を覆うように湾曲した形状を有する。腰部112は、背中部111の下端と接続されており、背中部111と一体の構成である。つまり、背中部111および腰部112は、後方から見たときに、逆T字の形状を有する。胴体部材110は、剛性を有する部材であり、例えば、アルミニウムなどの軽量金属、硬化樹脂又はカーボンファイバなどの合成素材により構成される。胴体部材110には、装着者側の面にクッションなどの緩衝材が配置されていてもよい。
【0032】
胴体部材110には、胴体部材110を装着者の背中に配置するためのハーネス120が接続されている。ハーネス120は、装着者の肩に掛けられることで、装着者が胴体部材110を背中に背負った状態(胴体部材110が装着者の背中に配置された状態)を維持するための部材である。つまり、ハーネス120は、装着者P1の肩に装着される肩装具の一例である。ハーネス120は、装着者の両肩に対応した位置に設けられる一対の部材である。ハーネス120は、例えば、ナイロン、シリコーンなどの樹脂、金属、革(人工皮革を含む)などにより構成される。なお、肩装具は、ハーネスに限らずに、装着者P1の肩上に配置される部材であればどのような部材であってもよい。
【0033】
支持部材130は、胴体部材110に固定され、紐状部材140の一端と他端との間の部位を、装着者P1の肩の上方において紐状部材140がスライド自在な状態で支持する部材である。支持部材130は、ハーネス120における、装着者P1の肩上の部位上に固定されている。支持部材130は、紐状部材140が延びている方向にスライド自在に支持する。支持部材130は、胴体部材110の一対のハーネス120にそれぞれ設けられる一対の部材である。支持部材130の具体的な構成については、
図3および
図4を用いて後述する。
【0034】
紐状部材140は、装着者P1の両手にそれぞれ対応して設けられ、例えば、2本の部材である。紐状部材140は、作用部材150から管状部材134までの間に亘って保護部材により側方を覆われていてもよい。保護部材は、紐状部材140が延びる方向に伸縮する。紐状部材140は、例えば、樹脂製のワイヤである。紐状部材140は、金属製のワイヤであってもよい。
【0035】
作用部材150は、紐状部材140の一端側の部位が固定される。作用部材150は、装着者P1の両手に装着される2つの部材である。つまり、2つの作用部材150は、それぞれ、2本の紐状部材140の一端側の部位が固定される。
【0036】
作用部材150は、例えば、手袋である。また、作用部材150は、手袋に限らずに、装着者P1の手、手首、前腕部などに巻くベルト状の部材であってもよい。作用部材150は、例えば、ナイロン、シリコーンなどの樹脂、金属、革(人工皮革を含む)などにより構成される。
【0037】
なお、作用部材150は、装着者P1に装着される部材に限らずに、物体に係止することで、物体を支持する部材であってもよい。つまり、作用部材150は、装着者P1が物体を持ち上げる動作を補助するために、装着者P1の手を介して作用するか、物体に直接作用することができる構成であれば、どのような構成であってもよい。
【0038】
アクチュエータ160は、紐状部材140の他端側の部位が固定され、駆動することで支持部材130から作用部材150までの紐状部材140の長さを調整する。アクチュエータ160は、2本の紐状部材140に対応して設けられる。アクチュエータ160は、例えば、胴体部材110の後側、例えば、背中部111の上部に配置される。アクチュエータ160の具体的な構成については、
図3および
図4を用いて後述する。
【0039】
管状部材134は、紐状部材140に貫通されており可撓性を有する。管状部材134は、内部が中空のパイプ(チューブ)である。管状部材134は、一端が支持部材130に固定された固定端であり、かつ、他端が自由端である。管状部材134は、一対の支持部材にそれぞれ対応して設けられる2つの部材である。管状部材134は、例えば、オレフィン系、軟質塩化ビニル、シリコーンゴムなどの材料により構成される。管状部材134の具体的な構成については、
図5Aおよび
図5Bを用いて後述する。
【0040】
次に、支持部材130および管状部材134の具体的な構成について
図3~
図5Bを用いて説明する。
【0041】
図3は、
図1で示す動作支援装置の領域A1の拡大図である。
図4は、
図2で示す動作支援装置の領域A2の拡大図である。
図5Aは、管状部材を上方から見た場合の拡大図である。
図5Bは、管状部材を左側から見た場合の拡大図である。
【0042】
支持部材130は、第1支持部131と、第2支持部132と、管状部133とを有する。第1支持部131および第2支持部132は、ハーネス120における、装着者P1の肩上の部位上に、前後方向に並んで配置されている。第1支持部131および第2支持部132は、管状の管状部133を支持する。第1支持部131は、管状部133と共に管状部材134を支持する。なお、本実施の形態では、管状部133および管状部材134は、一体の連続した管状部材により構成される。管状部133および管状部材134は、前後方向に延び、紐状部材140により貫通されている。このため、紐状部材140は、管状部133および管状部材134の内部を貫通している方向に、つまり、紐状部材140の延びる方向にスライドすることができる。
【0043】
管状部材134は、他端134bである自由端が一端134aである固定端よりも装着者P1の前側に位置する向きで、支持部材130に固定されている。管状部材134は、当該管状部材134が延びる方向に交差する全ての方向に向かって撓む部材である。つまり、管状部材134は、管状部材134の自由端が前後方向から見た場合、固定端に対して、360°のいずれの方向にも位置することが自在に撓む構成である。例えば、
図5Aに示すように、管状部材134は、紐状部材140がX軸方向プラス側またはマイナス側に振れた場合、紐状部材140の振れに応じた方向に自在に撓んで湾曲する。このとき、管状部材134の他端134bは、一端134aよりもX軸方向プラス側またはマイナス側の位置に位置するように湾曲する。また、例えば、
図5Bに示すように、管状部材134は、紐状部材140がZ軸方向プラス側またはマイナス側に振れた場合、紐状部材140の振れに応じた方向に自在に撓んで湾曲する。このとき、管状部材134の他端134bは、一端134aよりもZ軸方向プラス側またはマイナス側の位置に位置するように湾曲する。
【0044】
また、管状部材134は、紐状部材140よりも可撓性が小さい。つまり、管状部材の所定の曲げモーメントにより撓んだときのたわみ量は、紐状部材の所定の曲げモーメントにより撓んだときのたわみ量よりも小さい。このため、管状部材の所定の曲げモーメントにより撓んだときの曲げ半径は、紐状部材の所定の曲げモーメントにより撓んだときの曲げ半径よりも大きい。
【0045】
次に、アクチュエータ160の具体的な構成について
図3および
図4を用いて説明する。
【0046】
アクチュエータ160は、2つのカートリッジ161と、本体部164とを有する。2つのカートリッジ161は、それぞれ、2本の紐状部材140に対応して設けられる。2つのカートリッジ161のそれぞれは、巻軸162と、筐体163とを有する。巻軸162は、アクチュエータ160の駆動部位としてのモータ165からの動力を受けて回転することで紐状部材140を巻き取る。筐体163は、紐状部材140のうち、巻軸162に巻き取られている一部、および、巻軸162を収容する。筐体163は、胴体部材110(本実施の形態では本体部164)に対して着脱自在である。なお、巻軸162は、筐体163が本体部164に固定されている状態において、モータ165からの動力を受け取ることが可能な状態でモータ165と接続される。巻軸162は、例えば、モータ165の軸166と接続され、軸166と同軸の回転軸で回転する。なお、巻軸162は、モータ165の軸166と直接接続されなくてもよく、軸166が回転することで回転する別の軸と接続され、当該別の軸と同軸の回転軸で回転してもよい。
【0047】
カートリッジ161の筐体163は、例えば、本体部164に対して、ボルトおよびナットからなる締結部材により固定されている。ナットは、本体部164に固定されているインサートナットであってもよい。つまり、筐体163は、ボルトおよびナットの締結を外すことで、本体部164から取り外すことができる。カートリッジ161が取り外された状態では、巻軸162、筐体163および紐状部材140が、動作支援装置100から取り外されることとなる。
【0048】
例えば、
図6に示すように、カートリッジ161は、本体部164から取り外すことができる。このとき、カートリッジ161内の巻軸162は、モータ165の軸166から取り外される。
図6は、カートリッジが取り外される様子を示す図である。
【0049】
本体部164は、アクチュエータ160の駆動部位である2つのモータ165を有する。また、本体部164は、2つのモータ165に電力を供給するバッテリを収容していてもよい。
【0050】
アクチュエータ160は、紐状部材140を巻き取ったり、繰り出したりすることができる。アクチュエータ160は、例えば、図示しないスイッチがオン状態になったとき、紐状部材140の管状部材134から作用部材150までの長さが短くなる回転方向に駆動する。これにより、アクチュエータ160は、紐状部材140に張力を付与し、装着者P1が荷物を持ち上げる動作を補助する。また、アクチュエータ160は、スイッチがオフ状態になったとき、駆動しなくてもよい。なお、アクチュエータ160は、スイッチのオンオフで動作することに限らずに、センサの検出値に応じて動作してもよい。例えば、装着者P1が荷物を把持していることを、装着者P1の作用部材150に設けられた圧力センサで検出した場合に、紐状部材140が巻き上げられる方向にアクチュエータ160を動作させてもよい。
【0051】
なお、アクチュエータ160の駆動部位は、モータ165であるとしたが、モータに限らずに、人工筋肉、油圧式アクチュエータ、ガス式アクチュエータなどであってもよい。
【0052】
なお、支持部材130とカートリッジ161との間には、管状部材141が設けられている。管状部材141は、管状部材134と同様に内部が中空のパイプ(チューブ)であり、紐状部材140に貫通されている。紐状部材140は、管状部材141の内部も紐状部材140が延びる方向にスライド自在である。管状部材141は、紐状部材140がアクチュエータ160により巻き上げられたとしても、紐状部材140がスライド自在であるため、紐状部材140の支持部材130からカートリッジ161までの長さを、管状部材141の長さに固定することができる。このため、アクチュエータ160が紐状部材140を巻き上げたとき、または、繰り出したときに、紐状部材140の管状部材134から作用部材150までの間の長さを容易に短くしたり、長くしたりすることができる。
【0053】
[1-2.使用例]
動作支援装置100は、装着者P1に装着された状態において、装着者P1の腕により物体としての荷物を持ち上げる動きを支援することで、装着者の腕に係る負担を軽減する。次に、装着者が荷物を持ち上げるときの動作支援装置100の作用について
図7を用いて説明する。
【0054】
図7は、動作支援装置を装着した装着者の動作を支援している様子を示す図である。具体的には、
図7は、地面に置かれている荷物を装着者が持ち上げている様子を示す図である。
【0055】
図7に示すように、装着者P1は、荷物200を掴んだ状態において、例えば装着者P1の指に装着した図示しないスイッチを押すことで、アクチュエータ160に紐状部材140に対して張力を加えさせることができる。このため、動作支援装置100は、装着者P1の両手が持ち上げられる力をアシストすることができる。
【0056】
[1-3.効果]
本実施の形態に係る動作支援装置100は、胴体部材110と、紐状部材140と、作用部材150と、支持部材130と、アクチュエータ160と、管状部材134とを備える。胴体部材110は、装着者P1の胴体に装着される部材である。作用部材150は、紐状部材140の一端側の部位が固定される部材である。支持部材130は、胴体部材110に固定され、紐状部材140の一端と他端との間の部位を、装着者P1の肩の上方において、紐状部材140がスライド自在な状態で支持する部材である。アクチュエータ160は、紐状部材140の他端側の部位が固定され、駆動することで支持部材130から作用部材150までの紐状部材140の長さを調整する。管状部材134は、紐状部材140に貫通されており可撓性を有する。管状部材134の一端134aは、支持部材130に固定された固定端であり、かつ、管状部材134の他端134bは、自由端である。
【0057】
このため、紐状部材140が所定の方向に引っ張られたとしても、管状部材134は所定の方向に撓んで湾曲する。よって、紐状部材140が支持部材130の出口において急激な角度で屈曲することを低減することができ、紐状部材140が切断されることを抑制することができる。
【0058】
また、本実施の形態に係る動作支援装置100において、胴体部材110は、装着者P1の肩に装着される肩装具としてのハーネス120を有する。支持部材130は、ハーネス120における、装着者P1の肩上の部位上に固定されている。
【0059】
これによれば、紐状部材140は、装着者P1の肩上の部位上に固定されている支持部材130から装着者P1の両手の作用部材150に延びる構成である。このため、装着者P1の視界が、紐状部材140により遮られることを低減することができる。また、装着者P1が作業中に紐状部材140が装着者P1の顔にぶつかることを低減することができる。
【0060】
また、本実施の形態に係る動作支援装置100において、管状部材134は、他端134bが一端134aよりも装着者P1の前側に位置する向きで、支持部材に固定されている。このため、装着者P1の前側に紐状部材140を配置することが容易にでき、装着者P1が荷物を持ち上げる動作を効果的に補助することができる。
【0061】
また、本実施の形態に係る動作支援装置100において、管状部材134は、紐状部材140よりも可撓性が小さい。つまり、管状部材134の所定の曲げモーメントにより撓んだときの曲げ半径は、紐状部材140の所定の曲げモーメントにより撓んだときの曲げ半径よりも大きい。このため、管状部材134は、紐状部材140に引っ張られた方向に緩やかに湾曲するため、紐状部材140が支持部材130の出口において急激な角度で屈曲することを低減することができる。よって、紐状部材140が切断されることを抑制することができる。
【0062】
また、本実施の形態に係る動作支援装置100において、管状部材134は、当該管状部材134が延びる方向に交差する全ての方向に向かって撓む部材である。このため、紐状部材140が、作用部材150の可動範囲の動きに追従して様々な方向に引っ張られたとしても、管状部材134は様々な方向に撓んで湾曲することができる。よって、紐状部材140が支持部材130の出口において急激な角度で屈曲することを低減することができ、紐状部材140が切断されることを抑制することができる。
【0063】
また、本実施の形態に係る動作支援装置100において、さらに、カートリッジ161を備えていてもよい。カートリッジ161は、巻軸162と、筐体163とを有する。巻軸162は、アクチュエータ160の駆動部位であるモータ165からの動力を受けて回転することで紐状部材140を巻き取る。筐体163は、紐状部材140の一部および巻軸162を収容し、胴体部材110に対して着脱自在である。巻軸162は、筐体163が胴体部材110に固定されている状態において、モータ165からの動力を受け取ることが可能な状態でモータ165と接続される。
【0064】
これによれば、カートリッジ161は、胴体部材110に対して着脱自在であるため、紐状部材140の交換が必要になったときに、容易に新しいカートリッジ161に交換することができる。
【0065】
[1-4.変形例]
上記実施の形態によれば、動作支援装置100は、装着者P1の両手に対応して、支持部材130と、管状部材134と、紐状部材140と、作用部材150と、アクチュエータ160のモータ165とが一対の構成であるとしたが、これに限らずに、いずれか一方のみの構成であってもよい。いずれか一方のみの構成であっても、片手が荷物を持ち上げる動作を補助することができる。
【0066】
上記実施の形態によれば、動作支援装置100は、支持部材130が肩装具としてのハーネス120における、装着者の肩上の部位上に固定されており、作用部材150が装着者P1の両手に装着される部材であり、紐状部材140をアクチュエータ160により引き上げることで装着者P1が物体を持ち上げる動作を支援する構成としたが、これに限らない。
【0067】
例えば、動作支援装置は、支持部材が胴体部材110に固定されており、作用部材が装着者の膝に固定されており、紐状部材をアクチュエータにより引き上げることで装着者の歩行を支援する構成としてもよい。この場合の動作支援装置では、紐状部材は一端が装着者の腰に固定され、かつ、他端が装着者の膝に固定されている。アクチュエータは、紐状部材に張力を発生させることができるように、胴体部材、または、膝の作用部材に配置されている。紐状部材およびアクチュエータのセットは、脚の前側に配置されていてもよいし、脚の後側に配置されていてもよいし、脚の前後の両方に配置されていてもよい。これにより、アクチュエータが紐状部材に張力を発生させることで、動作支援装置は、装着者の大腿部を屈曲させる動作を支援したり、大腿部を伸展させる動作を支援したりすることができる。このような動作支援装置においても、支持部材には、紐状部材に貫通されており可撓性を有する管状部材が固定されているため、上記実施の形態の動作支援装置100と同様の効果が奏される。
【0068】
以上、本発明の一つまたは複数の態様に係る動作支援装置について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の一つまたは複数の態様の範囲内に含まれてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、紐状部材を巻き上げることで装着者の動作を補助する動作支援装置において、紐状部材が切断されることを抑制できる動作支援装置などとして有用である。
【符号の説明】
【0070】
100 動作支援装置
110 胴体部材
111 背中部
112 腰部
120 ハーネス
130 支持部材
131 第1支持部
132 第2支持部
133 管状部
134 管状部材
134a 一端
134b 他端
140 紐状部材
141 管状部材
150 作用部材
160 アクチュエータ
161 カートリッジ
162 巻軸
163 筐体
164 本体部
165 モータ
166 軸
200 荷物
P1 装着者