(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】引戸装置
(51)【国際特許分類】
E05B 15/02 20060101AFI20221125BHJP
E05B 47/00 20060101ALI20221125BHJP
E05B 65/08 20060101ALI20221125BHJP
E05C 3/06 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
E05B15/02 D
E05B47/00 J
E05B47/00 R
E05B65/08 G
E05C3/06
(21)【出願番号】P 2018191701
(22)【出願日】2018-10-10
【審査請求日】2021-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000239714
【氏名又は名称】文化シヤッター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】平野 勝男
(72)【発明者】
【氏名】野口 茂
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-116723(JP,A)
【文献】特開平07-026809(JP,A)
【文献】特開2016-017359(JP,A)
【文献】実開平02-060170(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 15/02
E05B 47/00
E05B 65/08
E05C 3/06-3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦枠を有する枠体と、前記縦枠に戸先部を対向させて前記枠体内を横幅方向へ開閉動作する戸体とを備えた引戸装置であって、
前記縦枠に、鎌錠を電動で出没させる電気錠と、該電気錠の電線とを設け、
前記戸体には、前記鎌錠によって係脱可能であって且つ前記横幅方向へ所定量移動可能に支持されたストライクと、該ストライクを戸尻方向へ付勢する付勢部材とを設け
、
前記縦枠は、躯体側の不動部位に固定される固定枠と、この固定枠の戸尻方向側に支持された支持枠とを備え、前記支持枠に前記電気錠を設けていることを特徴とする引戸装置。
【請求項2】
前記縦枠は、前記戸体の戸先部との対向面を、該戸先部を没入可能な凹状に形成するとともに、この凹状部分の底部から前記鎌錠を出没させることを特徴とする請求項1記載の引戸装置。
【請求項3】
前記戸体の戸先側には、前記ストライクを備えた被係脱装置が設けられ、
この被係脱装置は、前記ストライクの上部側を付勢部材により戸尻方向へ付勢しながら前記横幅方向へ移動可能に支持する上側支持部と、前記ストライクの下部側を他の付勢部材により戸尻方向へ付勢しながら前記横幅方向へ移動可能に支持する下側支持部とを、それぞれ独立して具備していることを特徴とする請求項1又は2記載の引戸装置。
【請求項4】
前記支持枠は、前記固定枠に対し開き戸状に回動するように支持されていることを特徴とする請求項
1~3何れか1項記載の引戸装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、戸体を横幅方向へ移動させることで開口部を開閉する引戸装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の発明には、特許文献1に記載されるように、竪枠を有する枠部材と、この枠部材内で横幅方向へ開閉動作する引戸部材と、前記竪枠に設けられたストライクと、前記竪枠内で前記ストライクを横方向へ移動可能に支持するとともに戸先方向(引戸閉鎖方向)へ付勢する圧縮ばねと、手動操作により前記引戸部材の戸先から出没する鎌錠とを備えた耐震ストライク付引戸がある。
この従来技術によれば、鎌錠をストライクに係合させた状態で、地震発生等に起因して枠部材上部側が戸尻方向へ層間変形し、引戸部材が戸尻方向へ移動した場合に、ストライクを圧縮ばねの付勢力に抗して戸尻方向へ移動させて、鎌錠とストライクとの係合箇所に過剰な引張力が作用するのを防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような耐震ストライク付引戸について、鎌錠を引戸部材の戸先から電動で出没させて、より利便性を向上することが求められている。
しかしながら、上記構成の従来技術では、鎌錠を電動で動作させる電気錠を引戸部材に設けた場合、この電気錠に電力を供給する電気配線経路を、横幅方向へ移動する引戸部材と、不動に固定された枠体との間に股がらせなければならず、例えばこれらの間にフレキシブルな電線あるいはブラシ構造等の特殊な電気配線構造を適用したとしても、断線や耐久性の低下等を免れないおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題に鑑みて、本発明は、以下の構成を具備するものである。
縦枠を有する枠体と、前記縦枠に戸先部を対向させて前記枠体内を横幅方向へ開閉動作する戸体とを備えた引戸装置であって、前記縦枠に、鎌錠を電動で出没させる電気錠と、該電気錠の電線とを設け、前記戸体には、前記鎌錠によって係脱可能であって且つ前記横幅方向へ所定量移動可能に支持されたストライクと、該ストライクを戸尻方向へ付勢する付勢部材とを設け、前記縦枠は、躯体側の不動部位に固定される固定枠と、この固定枠の戸尻方向側に支持された支持枠とを備え、前記支持枠に前記電気錠を設けていることを特徴とする引戸装置。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、以上説明したように構成されているので、鎌錠を電動で動作させることができる上、その電気配線を簡素な構造にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明に係る引戸装置の一例を示す正面図である。
【
図2】同引戸装置が上部側を戸尻方向へ層間変形させた状態を示す正面図である。
【
図5】支持装置を構成する上側支持部および下側支持を示し、(a)は戸先側から視た図、(b)は(a)に対する側面図である。
【
図6】縦枠側の鎌錠と、戸体側のストライクとが係合する前の状態を示す要部構造図である。
【
図7】縦枠側の鎌錠と、戸体側のストライクとが係合した状態を示す要部構造図である。
【
図8】縦枠側の鎌錠と、戸体側のストライクとが係合した状態で戸体が戸尻方向へ若干移動した状態を示す要部構造図である。
【
図9】本発明に係る引戸装置の他例を示す横断面図である。
【
図10】本発明に係る引戸装置の他例において、戸先側縦枠の戸尻側の端面から鎌錠を突出させた状態を示す斜視図である。
【
図11】同引戸装置が上部側を戸尻方向へ層間変形させた状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本実施の形態では、以下の特徴を開示している。
第一の特徴は、縦枠を有する枠体と、前記縦枠に戸先部を対向させて前記枠体内を横幅方向へ開閉動作する戸体とを備えた引戸装置であって、前記縦枠に、鎌錠を電動で出没させる電気錠と、該電気錠の電線とを設け、前記戸体には、前記鎌錠によって係脱可能であって且つ前記横幅方向へ所定量移動可能に支持されたストライクと、該ストライクを戸尻方向へ付勢する付勢部材とを設けた。
この構成によれば、横幅方向へ移動することのない縦枠側に電気錠およびその電線を設けたため、鎌錠を電動で動作させることができるのは勿論のこと、その電気配線を簡素な構造にすることができる。
【0009】
第二の特徴として、前記縦枠は、前記戸体の戸先部との対向面を、該戸先部を没入可能な凹状に形成するとともに、この凹状部分の底部から前記鎌錠を出没させる。
この構成によれば、鎌錠とストライクとの係脱箇所が外部に露出するのを防ぐことができる。
【0010】
第三の特徴として、前記戸体の戸先側には、前記ストライクを備えた被係脱装置が設けられ、この被係脱装置は、前記ストライクの上部側を付勢部材により戸尻方向へ付勢しながら前記横幅方向へ移動可能に支持する上側支持部と、前記ストライクの下部側を他の付勢部材により戸尻方向へ付勢しながら前記横幅方向へ移動可能に支持する下側支持部とを、それぞれ独立して具備している。
この構成によれば、ストライクの取付位置の微調整や、鎌錠及びストライクのサイズ変更に応じたピッチ変更等を、容易に行うことができ、施工性やメンテナンス性が良好である。
【0011】
第四の特徴として、前記縦枠は、躯体側の不動部位に固定される固定枠と、この固定枠の戸尻方向側に支持された支持枠とを備え、前記支持枠に前記電気錠を設けている。
この構成によれば、躯体開口部に設置する際の施工性や、電気錠に対するメンテナンス性等を向上することができる。
【0012】
第五の特徴として、前記支持枠は、前記固定枠に対し開き戸状に回動するように支持されている。
この構成によれば、施工性や、電気錠に対するメンテナンス性等をより向上できる上、戸体及び支持枠の双方を開放して開口部を広く確保することができる。
【0013】
<第一の実施態様>
次に、上記特徴を有する具体的な実施態様について、図面に基づいて詳細に説明する。
以下の具体例は、高齢者入居施設や、病院、ビル、住宅、倉庫、工場、車両の荷台等の躯体における開口部に配設され、戸体を枠体上部のガイドレールに吊り下げて略水平方向へ略直線的に移動させる、上吊方式の引戸装置に適用した一例として説明する。
なお、本明細書中、戸体20が閉鎖動作する方向を「戸体閉鎖方向」、「戸先方向」又は「戸先側」と呼称し、戸体20が開放動作する方向を「戸体開放方向」、「戸尻方向」又は「戸尻側」と呼称する。
【0014】
引戸装置1は、戸先側縦枠12を有する枠体10と、戸先側縦枠12に戸先部を対向させて枠体10内を横幅方向へ開閉動作する戸体20とを備え、上記した建築物等の躯体100の開口部に枠体10を嵌め合わせる(
図1参照)。
また、この引戸装置1は、戸体20を全閉状態で施錠する電気錠30およびストライク41等を備えている。
【0015】
枠体10は、戸体20の開閉経路の上方側に位置する上側横枠11と、通路用開口部Aの戸先方向側に位置する戸先側縦枠12と、戸体20の開閉範囲の中央寄りに位置する中央側縦枠13と、全開時の戸体20の戸尻に当接または近接するように位置する戸尻側縦枠14とを具備する。
【0016】
そして、この枠体10は、その枠内の中央側縦枠13よりも戸先方向側の空間を通路用開口部Aとし、同枠内の中央側縦枠13よりも戸尻方向側の空間を、戸体20を収納するための戸袋部Bとしている。戸袋部Bは、その戸厚方向の両側が壁部15により覆われている。
【0017】
上側横枠11は、戸体20の上端側を戸厚方向へわたって凹状に囲む部材であり、戸体20の開閉経路の略全長にわたる長尺状に形成される。
この戸体20内には、戸体20上端側の吊車(図示せず)を吊るして開閉方向へ案内するガイドレール(図示せず)が設けられる。
【0018】
戸先側縦枠12は、躯体側の不動部位に接続固定される固定枠12aと、固定枠12aによってその戸尻方向側に支持された支持枠12bとを一体的に具備している。
【0019】
固定枠12aは、躯体開口部における戸先方向側の内縁(不動部位)に上下方向にわたって固定された長尺状の部材であり、
図3に示すように、その戸尻側の面を、横断面凹状に形成し、この凹状部分に、支持枠12bを嵌め合わせて固定している。
【0020】
支持枠12bは、固定枠12aに対し、上下方向へわたって接続固定された長尺状の部材であり、
図3に示すように、支持枠12bに嵌め合わせられた基部12b1と、この基部12b1よりも厚肉に形成されて戸体20の戸先側を受ける受部12b2とから一体の中空状に形成される。
【0021】
受部12b2は、
図3に示すように、戸体20の戸先部との対向面を、該戸先部を没入可能な凹状に形成するとともに、この凹状部分の底部に、鎌錠32を出没させる開口と、戸体20の戸先面を弾性的に受けてその衝撃を緩和する緩衝材12b22とを有する。
また、受部12b2における前記凹状部分の内側面には、戸体20の表面と裏面にそれぞれ弾性的に接触する気密材12b21が設けられる。
【0022】
そして、上記構成の支持枠12b内には、その上部側と下部側に、それぞれ、鎌錠32を電動で出没させる電気錠30と、各電気錠30へ電力を供給する電線39とが設けられる。
【0023】
また、中央側縦枠13は、通路用開口部Aにおける戸体開放方向側の内縁となる部材であり、上側横枠11の下端から床面にわたる上下方向へ連続するとともに、開放動作した際の戸体20を挿入する開口を有する。
【0024】
また、戸尻側縦枠14は、戸袋部Bの戸体開放方向側の端部を構成する部材であり(
図1参照)、上側横枠11から床面にわたる上下方向へ連続している。
【0025】
各電気錠30は、中空箱状のケース31と、ケース31から戸尻方向側へ突出したり逆方向側へ没入したりする鎌錠32と、鎌錠32を回動して出没させる電動駆動機構(図示せず)と、同鎌錠32を手動で回動させる手動操作部33と、前記電動駆動機構に駆動電力及び制御信号等を伝送する電線39とを備える。
【0026】
ケース31は、図示例によれば、矩形箱状に形成され、その戸尻方向側の端部に、当該ケース31を戸先側縦枠12の支持枠12bに取付けるための取付板31aを有し、この取付板31aに鎌錠32を出没させるための開口を有する(
図6~
図8参照)。
【0027】
鎌錠32は、先端側にL字型に曲がった係合部32aを有する部材であり、ストライク41と係合した施錠位置と、ストライク41から離脱した解錠位置との間で回動するように、ケース31内で軸支されている。
この鎌錠32は、図示例によれば、下側から上側へ向かう円運動をして、ケース31の外側へ突出し、L字状の係合部32aをストライク41の内面側へ回り込ませてストライク41に係合する。したがって、この係合状態で、戸体20が戸尻方向へ移動しようとすると、係合部32aがストライク41の内面に当接する(
図8参照)。
【0028】
また、ケース31内の上記電動駆動機構は、鎌錠32を施錠位置と解錠位置の間で回動させる機構とすればよく、例えば、電磁ソレノイド(又は電動モータ)や、歯車等を組み合わせた周知の機構とすればよい。
【0029】
手動操作部33は、外部から手で双方向へ回すことが可能なサムターン状(又はレバー状)の部材であり、その回転力が、図示しない動力伝達機構(例えば、複数の歯車等)を介して、鎌錠32へ伝達され、鎌錠32が回転するようになっている。
鎌錠32は、上記電動駆動機構と、手動操作部33の何れによっても回動するように構成される。
【0030】
電線39は、戸先側縦枠12の支持枠12b内に挿通され、例えば、上側横枠11内の電源回路及び制御回路等に電気的に接続される。
図示例の電線39によれば、その途中箇所がコネクター39aにより着脱可能に接続されており、長期使用等により不具合を生じた場合には、コネクター39aの着脱によって電気錠30を容易に交換できるようしてある。
【0031】
また、戸体20は、正面視略矩形状に構成され、その上端部が複数の吊車(図示せず)を介して、枠体10内で横幅方向へ連続するガイドレールに掛けられて開閉方向へ移動し、該戸体20の下端側が、床面に支持されたガイドローラ21に嵌って移動中の戸厚方向の振れが抑制されるようになっている。
この戸体20を開閉動作させる構造は、モーター等を用いた電動機構や、付勢部材を用いた機構、前記ガイドレールの傾斜を利用するようにした機構、あるいは、これらの機構を適宜に組み合わせた機構等とすることが可能である。
【0032】
戸体20は、戸厚方向に間隔を置いた表板と裏板を有し、これらの間の空間に、上下の電気錠30にそれぞれ対向するように、被係脱装置40を構成している。
【0033】
被係脱装置40は、鎌錠32によって係脱可能なストライク41と、このストライク41の上部側を付勢部材42aにより戸尻方向へ付勢しながら戸体横幅方向へ所定量移動可能に支持する上側支持部42と、ストライク41の下部側を他の付勢部材43aにより戸尻方向へ付勢しながら戸体横幅方向へ所定量移動可能に支持する下側支持部43とを具備している(
図5~
図8参照)。これらストライク41、上側支持部42、下側支持部43は、それぞれ、独立した部品として扱われる。
【0034】
ストライク41は、鎌錠32の出入り可能な開口41a1を有する略板状の被掛止板41aと、被掛止板41aの戸尻方向側に設けられて鎌錠32を内在するための部屋を形成する凹状壁部41bとを備え、一体的に構成される。これら二部材を一体化する手段は、溶接やねじ止め、嵌合等とすればよい。
このストライク41は、その被掛止板41aを、戸体20の戸先面に対し略面一または凹状に配置し(
図6参照)、
図8に示すように鎌錠32によって引っ張られた際には戸先方向へ突出する。
【0035】
上側支持部42は、可動片42bと、この可動片42bを固定支持して戸尻方向へ突出する軸部42cと、可動片42bの戸尻側で軸部42cを遊挿するとともに戸体20に接続固定された固定片42dと、軸部42cにおける固定片42dよりも戸尻側に環状に装着された付勢部材42a(具体的には圧縮コイルスプリング)と、この付勢部材42aを戸尻側から受けて軸部42cの後端にネジ等によって止着固定された受片42eとを備える。そして、前記可動片42bの戸先側面が、ストライク41の上端側の裏面に接続固定される。
【0036】
同様にして、下側支持部43も、可動片43bと、この可動片43bを固定支持して戸尻方向へ突出する軸部43cと、可動片43bの戸尻側で軸部43cを遊挿するとともに戸体20に接続固定された固定片43dと、軸部43cにおける固定片43dよりも戸尻側に環状に装着された付勢部材43a(具体的には圧縮コイルスプリング)と、この付勢部材43aを戸尻側から受けて軸部43cの後端にネジ等によって止着固定された受片43eとを備え、前記可動片43bの戸先側面が、ストライク41の下端側の裏面に接続固定される。
【0037】
上記構成の被係脱装置40は、上側支持部42と下側支持部43が、それぞれ、独立して戸体20に装着される。
【0038】
次に、上記構成の引戸装置1について、その特徴的な作用効果を詳細に説明する。
戸体20が戸先部を戸先側縦枠12に接触または近接した状態で、各電気錠30に電力が供給されると、鎌錠32が回動してストライク41に係合する。
この係合状態において、
図2に示すように、地震等により引戸装置1の上部側が戸尻方向へ傾くようにして層間変形すると、戸体20が傾斜した戸先側縦枠12に押されて戸尻方向へ移動しようとする。
このため、ストライク41と鎌錠32の間に引っ張り方向の力が作用する。
【0039】
すると、戸体20に固定されて不動な固定片42d,43dに相対し、ストライク41、可動片42b,42b、軸部42c,43c、及び受片42e,受片43eが、付勢部材42a,43aの弾発力に抗して戸先方向へ移動する。
【0040】
したがって、鎌錠32とストライク41との係合箇所に過剰な引張力が作用するのを防ぐことができ、ひいては、鎌錠32がストライク41にかじり付いてロック状態が解除不能になったり、電気錠30または被係脱装置40が破損したり等するのを防ぐことができる。
【0041】
しかも、引戸装置1によれば、電気錠30及びその電線39を、移動不能に固定された戸先側縦枠12内に配設したため、仮にこれらを戸体20内に設けた場合と比較し、電気配線経路の断線や、接触不良、耐久性の低下等を生じ難い。
【0042】
また、戸先側縦枠12を躯体開口部に装着する際は、先ず、固定枠12aを躯体開口部の内縁に固定し、この固定枠12aに対し、予め電気錠30を内在した支持枠12bを固定すればよいので、その施工性が良好である。
しかも、電気錠30を有する支持枠12bが、躯体開口部側に突出しているので、支持枠12b内の電気錠30に対するメンテナンス性も良好である。
【0043】
また、各被係脱装置40を上下の独立した上側支持部42と下側支持部43により構成しているため、ストライク41の取付位置の微調整や、鎌錠32及びストライク41のサイズ変更に応じた上下ピッチの変更等を、容易に行うことができ、施工性やメンテナンス性に優れている。
【0044】
<第二の実施態様>
次に、本発明に係る他の実施態様について説明する。
なお、以下に示す実施態様は、上記引戸装置1についてその一部を変更したものであるため、主にその変更部分について説明し、重複する詳細説明は適宜省略する。
【0045】
図9に示す引戸装置2は、上記引戸装置1に対し、戸先側縦枠12を、戸先側縦枠12’に置換したものである。
【0046】
戸先側縦枠12’は、躯体側の不動部位に固定される固定枠12a’と、この固定枠12a’の凸状の戸尻側面に片半部を接続した蝶番12cと、この蝶番12cの他半部を接続した上記支持枠12bとを一体的に具備する。
【0047】
この戸先側縦枠12’によれば、支持枠12bが、蝶番12cを介して、固定枠12a’に対し開き戸状に回動する。
【0048】
支持枠12bの下端側には、この支持枠12bを、床面や下枠等に対し、係脱可能に係止して回動不能にするフランス落とし(図示せず)が設けられる。
【0049】
よって、上記構成の引戸装置2によれば、戸体20を開放した際に、支持枠12bを回動させれば、通路用開口部Aをより広く確保することができる。
また、電気錠30を内在する支持枠12bの向きを変えられるため、電気錠30に対するメンテナンス性等をより向上することができる。
【0050】
<第三の実施態様>
また、
図10及び
図11に示す引戸装置3は、上記引戸装置1に対し、支持枠12bを支持枠12b’に置換し、この支持枠12b’の戸尻方向の端面から電気錠30を突出させるように構成している。
【0051】
支持枠12b’は、戸体20の戸先部に嵌り合う凹溝12b1’を有し、この凹溝12b1’内の底部側に、戸尻側へ突出する凸部12b2’を有し、この凸部12b2’の戸尻側の端面(貫通孔12b3’)から鎌錠32を出没させるように、電気錠30を内在している。
なお、他例としては、凸部12b2’を設けずに、凹溝12b1’の底部に電気錠30を貫通させて、該底部から電気錠30を突出させた構成とすることも可能である。
【0052】
この引戸装置3によれば、電気錠30が戸尻寄りに配置されるため、
図11に示すように、上部側を戸尻方向へ層間変形させた状態において、特に下部側における電気錠30とストライク41の間隔w2を、上記引戸装置1における同部分の間隔w1(
図2参照)よりも小さくすることができる。ひいては、ストライク41の横方向の移動量を小さくすることができ、さらには、被係脱装置40の小型化が可能になる。
【0053】
<その他の変形例>
なお、上記実施態様によれば、電気錠30及び被係脱装置40を上下に二つ設けたが、他例としては、これら電気錠30及び被係脱装置40を、単数または3以上設けた態様とすることも可能である。
【0054】
また、上記実施態様によれば、上吊方式の引戸装置を構成したが、他例としては、戸体20の下端側に戸車を設け、この戸車を床面に転動させることで、戸体20を吊らないで開閉方向へスライドさせる引戸装置を構成することも可能である。
【0055】
また、本発明は上述した実施態様に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0056】
1,2:引戸装置
10:枠体
12:戸先側縦枠
12a:固定枠
12b:支持枠
20:戸体
32:鎌錠
30:電気錠
39:電線
40:被係脱装置
41:ストライク
42:上側支持部
43:下側支持部
42a,43a:付勢部材