(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】扉装置
(51)【国際特許分類】
E05D 15/06 20060101AFI20221125BHJP
【FI】
E05D15/06 125A
E05D15/06 119
(21)【出願番号】P 2018192120
(22)【出願日】2018-10-10
【審査請求日】2021-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000000561
【氏名又は名称】株式会社オカムラ
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【氏名又は名称】鈴木 三義
(72)【発明者】
【氏名】島谷 肇
(72)【発明者】
【氏名】津田 陽
(72)【発明者】
【氏名】中山 紀彦
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-037703(JP,A)
【文献】特開2000-337013(JP,A)
【文献】実開平03-108774(JP,U)
【文献】特開平09-189166(JP,A)
【文献】実開昭56-100963(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05D 15/00-15/58
E05F 1/00-13/04
E04B 2/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視円弧形状に設けられるガイドレールと、
扉本体と、
前記扉本体の上部に設けられ、前記ガイドレールの延在方向に沿って移動可能に設けられた吊支部材と、を備え、
前記吊支部材は、
前記扉本体から上方に向かって延びる支軸と、
前記支軸回りに回転自在に設けられた第一ローラと、
前記第一ローラの下方に設けられ、前記支軸回りに回転自在に設けられた第二ローラと、を備え、
前記ガイドレールは、
前記ガイドレールの曲率半径方向外側に設けられた外周壁部と、
前記外周壁部に対して前記曲率半径方向内側に間隔をあけて設けられた内周壁部と、
前記外周壁部から前記曲率半径方向内側に突出して前記第一ローラ及び前記第二ローラのうち、一方のローラの周縁部を下方から支持し、前記曲率半径方向外側から内側に向かって漸次下方に傾斜する外周傾斜面と、
前記内周壁部から前記曲率半径方向外側に突出して前記第一ローラ及び前記第二ローラのうち、他方のローラの周縁部を下方から支持し、前記曲率半径方向内側から外側に向かって漸次下方に傾斜する内周傾斜面と、を有
し、
前記ガイドレールは、前記外周壁部の下端部から下方に向かって延出する下向片を備え、
前記下向片の下端は、前記扉本体の上端よりも下方に位置している扉装置。
【請求項2】
前記第一ローラ及び前記第二ローラの外周面は、下方から上方に向かって漸次径方向内側に傾斜していることを特徴とする請求項1に記載の扉装置。
【請求項3】
前記ガイドレールは、前記外周壁部及び前記内周壁部のうち、一方の壁部の下端部から、前記曲率半径方向に沿って前記吊支部材側に突出するとともに、前記一方の壁部と前記吊支部材との隙間の一部を塞ぐ目隠し部を備えていることを特徴とする請求項1
又は請求項2に記載の扉装置。
【請求項4】
前記吊支部材は、前記支軸の上端部に設けられたブッシュを備え、
前記ガイドレールの延在方向の少なくとも一方の端部に、前記ブッシュを下方に向かって押圧する押圧部材が設けられている請求項1から請求項
3の何れか一項に記載の扉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トイレブース等に設けられる扉装置(吊支式ドア装置)として、例えば下記特許文献1に開示された構成が知られている。下記特許文献1に開示された扉装置は、平面視半円状のガイドレールと、ガイドレールに吊り下げられた扉本体(ドア)と、を備えている。
ガイドレールは、下向コ字状の断面形状を有している。ガイドレールの下端には、互いに対向する一対の内向き水平片が形成されている。扉本体の上部には、水平支軸と、水平支軸の両端部に回転自在に支持された一対のローラ(吊支車輪)と、が設けられている。扉本体は、一対のローラがガイドレールの内向き水平片の上面に沿って転動することで、ガイドレールに沿って移動可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記した扉装置においては、ガイドレールと扉本体との製造誤差や組付誤差、扉本体に加えられた外力等によって、一対のローラが、ガイドレールの幅方向(半円状に湾曲したガイドレールの曲率半径方向)にずれてしまうことがある。すると、ローラの側面や、ローラを支持する水平支軸等がガイドレールに干渉し、異音が生じたり、扉本体の移動がスムーズに行えなくなったりする可能性がある。
【0005】
本発明は、扉本体の開閉動作を円滑に行うことができる扉装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る扉装置は、平面視円弧形状に設けられるガイドレールと、扉本体と、前記扉本体の上部に設けられ、前記ガイドレールの延在方向に沿って移動可能に設けられた吊支部材と、を備え、前記吊支部材は、前記扉本体から上方に向かって延びる支軸と、前記支軸回りに回転自在に設けられた第一ローラと、前記第一ローラの下方に設けられ、前記支軸回りに回転自在に設けられた第二ローラと、を備え、前記ガイドレールは、前記ガイドレールの曲率半径方向外側に設けられた外周壁部と、前記外周壁部に対して前記曲率半径方向内側に間隔をあけて設けられた内周壁部と、前記外周壁部から前記曲率半径方向内側に突出して前記第一ローラ及び前記第二ローラのうち、一方のローラの周縁部を下方から支持し、前記曲率半径方向外側から内側に向かって漸次下方に傾斜する外周傾斜面と、前記内周壁部から前記曲率半径方向外側に突出して前記第一ローラ及び前記第二ローラのうち、他方のローラの周縁部を下方から支持し、前記曲率半径方向内側から外側に向かって漸次下方に傾斜する内周傾斜面と、を有し、前記ガイドレールは、前記外周壁部の下端部から下方に向かって延出する下向片を備え、前記下向片の下端は、前記扉本体の上端よりも下方に位置している。
【0007】
このような扉装置によれば、扉本体は吊支部材を介して、平面視円弧形状のガイドレールに沿って移動可能とされている。吊支部材の第一ローラ及び第二ローラのうち、一方のローラの周縁部は、外周壁部から突出した外周傾斜面に下方から支持される。第一ローラ及び第二ローラのうち、他方のローラの周縁部は、内周壁部から突出した内周傾斜面に下方から支持される。ガイドレールに沿って扉本体を移動させると、一方のローラは、周縁部が外周傾斜面に接しながら支軸回りに回転する。他方のローラは、周縁部が内周傾斜面に接しながら支軸回りに一方のローラとは逆向きに回転する。例えば扉本体に対して曲率半径方向外側に向けて外力等が作用して、扉本体とともに吊支部材がガイドレールの曲率半径方向外側に変位すると、一方のローラが、外周傾斜面に沿って曲率半径方向外側、かつ上方に移動する。扉本体及び吊支部材の変位後、扉本体及び吊支部材の自重によって一方のローラが外周傾斜面上を下る。そのため、扉本体及び吊支部材は曲率半径方向内側に向かうに従い下方に変位する。これにより、扉本体及び吊支部材は、正規の位置に復帰する。
一方、例えば扉本体に対して曲率半径方向内側に向けて外力等が作用すると、扉本体とともに吊支部材が曲率半径方向内側に変位する。この際、他方のローラが内外周傾斜面に沿って変位することで、扉本体及び吊支部材は曲率半径方向内側に向かうに従い上方に変位する。扉本体及び吊支部材の変位後、扉本体及び吊支部材の自重によって他方のローラが内周傾斜面上を下る。そのため、扉本体及び吊支部材は曲率半径方向外側に向かうに従い下方に変位する。これにより、扉本体及び吊支部材は、正規の位置に復帰する。
このように、ガイドレールに対して扉本体が曲率半径方向に位置ずれするのを抑えることができる。その結果、異音の発生や、扉本体や吊支部材とガイドレールとの干渉を抑えることができる。その結果、扉本体の開閉動作を円滑に行うことが可能となる。
また、扉本体の上端や吊支部材等が下向片によって曲率半径方向外側から覆われるため、扉装置を曲率半径方向外側から見たときの扉装置の外観を向上させることができる。
【0008】
本発明の一態様に係る扉装置において、前記第一ローラ及び前記第二ローラの外周面は、下方から上方に向かって漸次径方向内側に傾斜していてもよい。
この構成によれば、扉本体とともに吊支部材が傾いても、外周面がガイドローラの外周壁部や内周壁部に接触しにくくなる。これにより、扉本体の開閉動作時に扉本体が傾いたとしても、ガイドレールと第一ローラ又は下部ローラ第二との間に作用する摩擦抵抗が増えるのを抑えることができる。これにより、扉本体の開閉動作を円滑に行うことができる。
【0010】
本発明の一態様に係る扉装置において、前記ガイドレールは、前記外周壁部及び前記内周壁部のうち、一方の壁部の下端部から、前記曲率半径方向に沿って前記吊支部材側に突出するとともに、前記一方の壁部と前記吊支部材との隙間の一部を塞ぐ目隠し部を備えていてもよい。
この構成によれば、ガイドレールを下方から見たときに、ガイドレールの内側が露呈するのを抑えることができる。これにより、扉装置の外観をさらに向上させることができる。
【0011】
本発明の一態様に係る扉装置において、前記吊支部材は、前記支軸の上端部に設けられたブッシュを備え、前記ガイドレールの延在方向の少なくとも一方の端部に、前記ブッシュを下方に向かって押圧する押圧部材が設けられていてもよい。
この構成によれば、扉本体の開閉動作時において、吊支部材のブッシュが押圧部材によって下方に押圧されると、吊支部材(扉本体)の移動速度が低減される。そのため、吊支部材がガイドレールにおける一方の端部に到達したときの衝撃を抑えることができる。また、押圧部材によってブッシュを下方に向かって押圧することで、扉本体及び吊支部材がガイドレールに沿って不用意に移動しないよう、停止状態を維持することができる。
さらに、吊支部材が押圧部材を通過する際に、扉本体とともに吊支部材がガイドレールの曲率半径方向の外側又は内側に変位した場合には、押圧部材によってブッシュが下方に向かって押圧されることで、第一ローラ及び第二ローラが、外周傾斜面や内周傾斜面上を伝って下方に案内される。これによって、吊支部材及び扉本体が正規の位置に復帰し、扉本体の曲率半径方向への変位を抑えることができる。その結果、扉本体がガイドレールの曲率半径方向外側や内側にずれることを抑え、異音の発生や、扉本体や吊支部材とガイドレールとの干渉を抑えることができる。その結果、扉本体の開閉動作を円滑に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、扉本体の開閉動作を円滑に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係る扉装置を備えたトイレブースにおいて、扉本体を開いた状態を示す斜視図である。
【
図2】上記扉装置を備えたトイレブースにおいて、扉本体を閉じた状態を示す斜視図である。
【
図3】上記扉装置を備えたトイレブースの平面図である。
【
図4】
図3のIV-IV線に相当するガイドレールの断面図である。
【
図5】
図3のIV-IV線に相当する扉本体及び吊支部材の断面図である。
【
図6】
図3のIV-IV線に相当する扉装置の断面図である。
【
図7】
図3のVII-VII線に相当する断面図である。
【
図8】上記扉装置において、扉本体及び吊支部材がガイドレールに対して曲率半径方向外側に変位した状態を示す断面図である。
【
図9】上記扉装置において、扉本体及び吊支部材がガイドレールに対して曲率半径方向内側に変位した状態を示す断面図である。
【
図10】上記扉装置において、扉本体及び吊支部材が上下方向に対して傾いた状態を示す断面図である。
【
図11】上記扉装置において、吊支部材に設けられたブッシュが、押圧部材に接触しはじめた状態を示す断面図である。
【
図12】上記扉装置において、吊支部材に設けられたブッシュが、押圧部材によって下方に押圧されている状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る扉装置の実施形態を説明する。しかし、本発明は本実施形態のみに限定されるものではない。以下の説明において、床面Fに直交する方向を上下方向(矢印UPが上側)とし、上下方向に直交する2方向をそれぞれ前後方向(矢印FRが前側)及び左右方向(矢印LHが左側)として説明する。
【0015】
[トイレブース]
図1は、本発明の実施形態に係る扉装置1を備えたトイレブース2において、扉本体20を開いた状態を示す斜視図である。
図2は、上記扉装置1を備えたトイレブース2において、扉本体20を閉じた状態を示す斜視図である。
図3は、上記扉装置1を備えたトイレブース2の平面図である。
図1~
図3に示すように、扉装置1は、例えばトイレブース2に設けられる。トイレブース2は、仕切壁3や、建物の壁9(
図3参照)によって区画されている。トイレブース2の内側には、便器(不図示)等が設けられる。トイレブース2には、利用者がトイレブース2内に出入りするための開口部4が設けられている。開口部4は、トイレブース2内から見たときに、前方に向かって開口し、トイレブース2の内外を連通する。
【0016】
仕切壁3は、床面Fから立設されている。仕切壁3は、側壁部3aと、前壁部3bと、を有する。側壁部3aは、左右方向に間隔をあけて複数が互いに平行に設けられている。左右方向で互いに隣り合う2つの側壁部3aの間に、1つのトイレブース2が形成される。前壁部3bは、トイレブース2の前端部において、左右両側に位置している。前壁部3bは、トイレブース2の前面2fを構成する。前壁部3bは、側壁部3aの前端部に、側壁部3aに直交して設けられている。なお、左右両側の側壁部3aのうち、一方の側壁部3aを、例えば建物の壁によって構成することも可能である。また、複数のトイレブース2が併設される場合、互いに隣り合うトイレブース2間で一つの側壁部3aが共用される。
【0017】
<扉装置>
扉装置1は、ガイドレール10と、扉本体20と、吊支部材30(
図3参照)と、を主に備えている。
【0018】
<ガイドレール>
ガイドレール10は、アルミニウム合金等により形成されている。ガイドレール10は、平面視円弧形状に形成されている。本実施形態において、ガイドレール10は、トイレブース2内(前壁部3bよりも後方)に曲率中心を有し、前方に向けて突の半円状に形成されている。以下の説明では、ガイドレール10の軸線(曲率中心を通り上下方向に沿う線)に直交する方向を曲率半径方向といい、軸線回りの方向を延在方向という。
【0019】
ガイドレール10は、仕切壁3に、複数のブラケット5A,5B,5Cを介して固定されている。ブラケット5Aは、ガイドレール10の第一端部10aを、開口部4に対して一方(右側)に位置する側壁部3aに固定している。ブラケット5Bは、ガイドレール10の中間部10bを、開口部4に対して一方(右側)に位置する前壁部3bに固定している。ブラケット5Cは、ガイドレール10の第二端部10cを、開口部4に対して他方(左側)に位置する前壁部3bに固定している。ガイドレール10は、第一端部10aから中間部10bにかけての部分が、一方の前壁部3b及び一方の側壁部3aに沿って設けられている。ガイドレール10は、中間部10bから第二端部10cにかけての部分が、一方の前壁部3bと、他方の前壁部3bにわたって設けられている。ガイドレール10は、第一端部10aから第二端部10cに向けての延在方向の一部が、開口部4の上端縁を画成している。具体的には、ガイドレール10は、中間部10bと第二端部10cとの間の部分が、前壁部3bの上端部同士の間に架け渡されている。本実施形態において、ガイドレール10の一部は、前壁部3bよりも前方に張り出している。
【0020】
図4は、
図3のIV-IV線に相当するガイドレール10の断面図である。
図4に示すように、ガイドレール10は、下向略コ字状の断面形状を有している。具体的に、ガイドレール10は、上板部11と、外周壁部12と、内周壁部13と、を備えている。なお、ガイドレール10は、延在方向に沿って同一断面形状を有している。
【0021】
上板部11は、ガイドレール10の上面を形成する。
外周壁部12は、上板部11の外周縁(曲率半径方向外側の端縁)から下方に垂下している。
内周壁部13は、上板部11の内周縁(曲率半径方向内側の端縁)から下方に垂下している。内周壁部13は、外周壁部12に対し、曲率半径方向内側に間隔をあけて配置されている。
【0022】
ガイドレール10には、下向片16と、上部ローラ支持部14と、下部ローラ支持部15と、目隠し部17と、上部内側突起18と、が形成されている。
下向片16は、外周壁部12に連続して下方に延出している。下向片16における曲率半径方向外側を向く面は、外周壁部12における曲率半径方向外側を向く面に滑らかに連なっている。なお、下向片16は、外周壁部12の下端に、全長に亘って形成されている。
【0023】
上部ローラ支持部14は、外周壁部12の上下方向中間部から、曲率半径方向内側に突出している。上部ローラ支持部14の上面は、曲率半径方向外側から内側に向かって漸次下方に傾斜する外周傾斜面14fを構成している。外周傾斜面14fは、吊支部材30の後述する上部ローラ(第一ローラ)32を下方から支持する。
【0024】
下部ローラ支持部15は、内周壁部13の下端部から曲率半径方向外側に突出している。下部ローラ支持部15の上面は、曲率半径方向内側から外側に向かって漸次下方に傾斜する内周傾斜面15fを構成している。内周傾斜面15fは、吊支部材30の後述する下部ローラ(第二ローラ)33を下方から支持する。
【0025】
目隠し部17は、外周壁部12の下端部から曲率半径方向内側に突出している。目隠し部17の下面及び下部ローラ支持部15の下面は、上下方向で同じ高さに位置している。目隠し部17の上面17fは、上下方向に直交する平坦面に形成されている。
【0026】
上部内側突起18は、外周壁部12及び内周壁部13のそれぞれにおいて、上部ローラ支持部14よりも上方であって、上板部11から下方に離間した位置に形成されている。上部内側突起18は、外周壁部12及び内周壁部13のそれぞれから、ガイドレール10の内側に向かって突出している。ガイドレール10内において、上部内側突起18よりも下方の空間は、ローラ32,33が走行するローラ走行空間10rを構成する。一方、ガイドレール10内において、上部内側突起18よりも上方の空間は、後述するストッパ部材50の押圧部材53が取り付けられる取付空間10sを構成する。
【0027】
<扉本体>
図1~
図3に示すように、扉本体20は、開口部4を開閉する。扉本体20は、平面視円弧状で、ガイドレール10とほぼ同じ曲率半径で形成されている。扉本体20は、延在方向の長さが、ガイドレール10の延在方向の長さの1/2程度とされている。具体的に、扉本体20における延在方向の長さは、扉本体20の閉状態において、開口部4を閉塞可能な長さに設定されている。扉本体20は、下端20bが床面Fから上方に離間した状態で、吊支部材30によってガイドレール10に吊り下げられている。扉本体20は、木質系材料や樹脂系材料、金属系材料等、適宜の材料から形成される。
【0028】
なお、扉本体20には、扉本体20を開閉動作させる際に利用者が把持するハンドルや、扉本体20を閉状態に維持するロック機構、トイレブース2が使用中であるか否か(扉本体20が閉状態であるか否か)を示すインジケータ機構、利用者が上着や荷物等を係止するフック(何れも不図示)等が設けられる。
【0029】
<吊支部材>
図5は、
図3のIV-IV線に相当する扉本体20及び吊支部材30の断面図である。
図5に示すように、吊支部材30は、扉本体20を吊り下げた状態で、ガイドレール10内を移動可能に構成されている。具体的に、吊支部材30は、支軸31と、上部ローラ32と、下部ローラ33と、ブッシュ40と、を備えている。なお、
図3に示すように、吊支部材30は、扉本体20の上端20tに、延在方向に間隔をあけた複数個所に設けられている。
【0030】
図5に示すように、支軸31は、外周面にネジ溝が形成された雄ネジ部材からなる。支軸31は、扉本体20の上端20tから上方に突出した状態で、扉本体20の上端20tにねじ込まれている。これにより、支軸31は、上下方向を軸方向として延在している。
【0031】
上部ローラ32は、軸受32bを介して、支軸31回りに回転自在に設けられている。上部ローラ32の下端外周縁には、所定の曲率半径で形成された円弧状断面の周縁部32sが形成されている。上部ローラ32の外周面32fは、下方から上方に向かって漸次径方向内側に傾斜している。すなわち、上部ローラ32は、下方から上方に向かうに従い漸次縮径するテーパ状に形成されている。
【0032】
下部ローラ33は、支軸31のうち上部ローラ32よりも下方に位置する部分に、スペーサ39Aを介して設けられている。下部ローラ33は、軸受33bを介して、支軸31回りに回転自在に設けられている。下部ローラ33は、上部ローラ32とは別に、独立して回転可能とされている。下部ローラ33の下端外周縁には、所定の曲率半径で形成された円弧状断面の周縁部33sが形成されている。下部ローラ33の外周面33fは、下方から上方に向かって漸次径方向内側に傾斜している。すなわち、下部ローラ33は、下方から上方に向かうに従い漸次縮径するテーパ状に形成されている。
上部ローラ32及び下部ローラ33は、樹脂系材料やゴム系材料等によりそれぞれ形成されていることが好ましい。
【0033】
ブッシュ40は、支軸31の上端部に設けられている。ブッシュ40は、少なくとも上端部が上述した取付空間10s内に位置している。ブッシュ40は、リング状に形成されている。本実施形態において、ブッシュ40は、下方から上方に向かって外径寸法が漸次縮小するテーパ状に形成されている。ブッシュ40における下端部の外径は、上部ローラ32における上端部の外径と同等になっている。ブッシュ40の上面40tは、上下方向に直交する平坦面に形成されている。なお、ブッシュ40の内側には、支軸31の上端部(頭部)が収容されている。すなわち、支軸31は、ブッシュ40の上端面よりも上方に突出していない。ブッシュ40は、樹脂系材料やゴム系材料等、弾性変形可能な材料により形成されることが好ましい。
【0034】
図6は、
図3のIV-IV線に相当する扉装置1の断面図である。
図6に示すように、吊支部材30は、上部ローラ32の周縁部32sが上部ローラ支持部14の外周傾斜面14f上に支持され、下部ローラ33の周縁部33sが下部ローラ支持部15の内周傾斜面15f上に支持される。この状態で、下向片16の下端16bは、扉本体20の上端20tよりも下方に位置している。また、目隠し部17は、下方から見たときに、外周壁部12と吊支部材30との隙間の一部を塞いでいる。
【0035】
利用者により、扉本体20が、ガイドレール10に沿って移動されると、上部ローラ32は、外周傾斜面14f上で支軸31回りに転動する。一方、下部ローラ33は、内周傾斜面15f上で支軸31回りに上部ローラ32とは逆向きに転動する。
【0036】
図7は、
図3のVII-VII線に相当する断面図である。
図1、
図7に示すように、ガイドレール10内の第一端部10aには、ストッパ部材50が設けられている。
図7に示すように、ストッパ部材50は、ベース部材51と、ゴムストッパ52と、押圧部材53と、を備える。
ベース部材51は、直方体形状に形成されている。ベース部材51は、ビス(不図示)により、ガイドレール10の上板部11の下面に固定されている。ベース部材51は、金属材料や樹脂材料等により形成されていることが好ましい。
【0037】
ゴムストッパ52は、ベース部材51において、ガイドレール10の延在方向で第二端部10c側(
図7において紙面左側)を向く側面51aに取り付けられている。ゴムストッパ52には、ゴムストッパ52を上下方向に貫通する貫通孔52hが形成されている。ゴムストッパ52の上面52tは、ベース部材51から離間するにしたがって、ベース部材51の上面51cと同じ高さから漸次低くなるよう傾斜している。ゴムストッパ52は、ゴム系材料からなり、ベース部材51の側面51aに接近・離間する方向(延在方向)に弾性変形可能である。
【0038】
押圧部材53は、平面視長方形状の帯板状をなしている。押圧部材53の基端部53aは、ベース部材51の上面51cに固定されている。基端部53aは、ベース部材51とガイドレール10の上板部11との間に挟み込まれる。押圧部材53のうち、基端部53aよりも先端側は、上述した取付空間10s内を延在方向に沿う第二端部10c側に片持ちで延出している。押圧部材53は、金属材料等により形成され、その板厚方向に弾性変形可能となっている。
【0039】
押圧部材53は、基端部53aから先端部53bに向かって、第一傾斜部53c、主押圧部53d及び第二傾斜部53eを有している。
先端部53bは、上板部11の下面に当接している。但し、先端部53bは、上板部11から離間していてもよい。
第一傾斜部53cは、基端部53aから先端部53bに向かうに従って漸次下方に傾斜している。第一傾斜部53cは、ゴムストッパ52の上面52tに上方から近接する。
主押圧部53dは、第一傾斜部53cの先端から延在方向に沿ってほぼ水平に延在している。
第二傾斜部53eは、主押圧部53dから先端部53bに向かって漸次上方に傾斜している。
【0040】
このような扉装置1は、吊支部材30を介してガイドレール10に支持された扉本体20が、ガイドレール10に沿って移動することで、開口部4を開閉する。
図6に示したように、吊支部材30は、上部ローラ32の周縁部32sが、外周傾斜面14fに下方から支持され、下部ローラ33の周縁部33sが内周傾斜面15fに下方から支持される。
【0041】
ガイドレール10に沿って扉本体20を移動させると、上部ローラ32は、周縁部32sが外周傾斜面14fに接しながら支軸31回りに回転する。下部ローラ33は、周縁部33sが内周傾斜面15fに接しながら支軸31回りに回転する。この際、上部ローラ32及び下部ローラ33は、互いに逆向きに回転する。なお、支軸31がガイドレール10内の曲率半径方向中心に位置する状態(上部ローラ32が外周傾斜面14fに支持され、下部ローラ33が内周傾斜面15fに支持された状態)を、扉本体20及び吊支部材30の正規の位置とする。
【0042】
図8は、上記扉装置1において、扉本体20及び吊支部材30がガイドレール10に対して曲率半径方向外側に変位した状態を示す断面図である。
図8に示すように、例えば扉本体20に対して曲率半径方向外側に向けて外力等が作用すると、扉本体20とともに吊支部材30が曲率半径方向外側に変位する。この際、上部ローラ32が外周傾斜面14fに沿って変位することで、扉本体20及び吊支部材30は曲率半径方向外側に向かうに従い上方に変位する。扉本体20及び吊支部材30の変位後、扉本体20及び吊支部材30の自重によって上部ローラ32が外周傾斜面14f上を下る。そのため、扉本体20及び吊支部材30は曲率半径方向内側に向かうに従い下方に変位する。これにより、扉本体20及び吊支部材30は、正規の位置に復帰する。
【0043】
図9は、上記扉装置1において、扉本体20及び吊支部材30がガイドレール10に対して曲率半径方向内側に変位した状態を示す断面図である。
図9に示すように、例えば扉本体20に対して曲率半径方向内側に向けて外力等が作用すると、扉本体20とともに吊支部材30が曲率半径方向内側に変位する。この際、下部ローラ33が内周傾斜面15fに沿って変位することで、扉本体20及び吊支部材30は曲率半径方向内側に向かうに従い上方に変位する。扉本体20及び吊支部材30の変位後、扉本体20及び吊支部材30の自重によって下部ローラ33が内周傾斜面15f上を下る。そのため、扉本体20及び吊支部材30は曲率半径方向外側に向かうに従い下方に変位する。これにより、扉本体20及び吊支部材30は、正規の位置に復帰する。
このように、仮に扉本体20がガイドレール10に対して曲率半径方向に位置ずれした場合であっても、自重によって正規の位置に復帰するようになっている。
【0044】
図10は、上記扉装置1において、扉本体20及び吊支部材30が上下方向に対して傾いた状態を示す断面図である。
図10に示すように、扉本体20に曲率半径方向の内側に向けて外力等が作用した場合、扉本体20及び吊支部材30が、上部ローラ32と外周傾斜面14fとの接触部分を起点に上下方向に対して傾くことがある。この場合において、本実施形態では、上部ローラ32の外周面32f、及び下部ローラ33の外周面33fが下方から上方に向かって漸次縮径しているので、外周面32f,33fがガイドローラの外周壁部12や内周壁部13に接触し難くなっている。
【0045】
図11は、上記扉装置1において、吊支部材30に設けられたブッシュ40が、押圧部材53に接触しはじめた状態を示す断面図である。
図11に示すように、扉本体20が開方向(
図11において紙面右方)に移動し、吊支部材30がストッパ部材50の押圧部材53に到達すると、ブッシュ40が押圧部材53に当接する。ブッシュ40は、まず押圧部材53の第二傾斜部53eに接触した後、押圧部材53を上方(押圧部材53の付勢力に抗する方向)に押し上げながら開方向に移動する。押圧部材53の上方への変形量が大きくなるに従い(ブッシュ40と押圧部材53とが接触後、ブッシュ40の開方向への移動量が増えるに従い)、押圧部材53からブッシュ40に作用する下方への押圧力が増加する。これにより、ブッシュ40と押圧部材53との間に生じる摩擦力が徐々に大きくなり、吊支部材30(及び扉本体20)の移動速度が低減される。
【0046】
図12は、上記扉装置1において、吊支部材30に設けられたブッシュ40が、押圧部材53によって下方に押圧されている状態を示す断面図である。
図12に示すように、ブッシュ40が、第二傾斜部53eを通過し、主押圧部53dまで到達すると、押圧部材53からブッシュ40に作用する下方への押圧力(主押圧部53dとブッシュ40との間で生じる摩擦力)が最大となる。これにより、吊支部材30(及び扉本体20)の開方向への移動が規制され、扉本体20が開位置で保持される。なお、仮にブッシュ40が主押圧部53dを通過したとしても、その後ブッシュ40はゴムストッパ52に突き当たることで、扉本体20の開方向への移動が規制される。
【0047】
このように、本実施形態では、ガイドレール10が、外周壁部12から曲率半径方向内側に突出して上部ローラ32の周縁部32sを下方から支持し、曲率半径方向外側から内側に向かって漸次下方に傾斜する外周傾斜面14fと、内周壁部13から曲率半径方向外側に突出して下部ローラ33の周縁部33sを下方から支持し、曲率半径方向内側から外側に向かって漸次下方に傾斜する内周傾斜面15fと、を有する構成とした。
このような構成によれば、扉本体20とともに吊支部材30がガイドレール10の曲率半径方向の外側や内側に変位しても、扉本体20及び吊支部材30の自重によって上部ローラ32及び下部ローラ33が外周傾斜面14f又は内周傾斜面15f上を移動することで、扉本体20及び吊支部材30が正規の位置に復帰する。これにより、ガイドレール10に対して扉本体20が曲率半径方向に位置ずれするのを抑えることができる。その結果、異音の発生や、扉本体20や吊支部材30とガイドレール10との干渉を抑えることができる。その結果、扉本体20の開閉動作を円滑に行うことが可能となる。
【0048】
本実施形態では、上部ローラ32及び下部ローラ33の外周面32f,33fが、下方から上方に向かって漸次径方向内側に傾斜している構成とした。
この構成によれば、扉本体20とともに吊支部材30が傾いても、外周面32f,33fがガイドローラの外周壁部12や内周壁部13に接触しにくくなる。これにより、扉本体20の開閉動作時に扉本体20が傾いたとしても、ガイドレール10と上部ローラ32又は下部ローラ33との間に作用する摩擦抵抗が増えるのを抑えることができる。これにより、扉本体20の開閉動作を円滑に行うことができる。
【0049】
本実施形態では、外周壁部12の下端部から下方に向かって延出する下向片16を備える構成とした。
この構成によれば、扉本体20の上端20tや吊支部材30等が下向片16によって曲率半径方向外側から覆われるため、扉装置1を曲率半径方向外側から見たときの扉装置1の外観を向上させることができる。
【0050】
本実施形態では、外周壁部12の下端部から、曲率半径方向内側に突出し、外周壁部12と吊支部材30との隙間の一部を塞ぐ目隠し部17をさらに備える構成とした。
この構成によれば、ガイドレール10を下方から見たときに、ガイドレール10の内側が露呈するのを抑えることができる。これにより、扉装置1の外観をさらに向上させることができる。
【0051】
本実施形態では、ガイドレール10の第一端部10aに、ブッシュ40を下方に向かって押圧する押圧部材53が設けられている構成とした。
この構成によれば、扉本体20の開閉動作時において、吊支部材30のブッシュ40が押圧部材53によって下方に押圧されると、吊支部材30(扉本体20)の移動速度が低減される。そのため、扉本体20が開方向の終端に到達したときの衝撃を抑えることができる。また、押圧部材53によってブッシュ40を下方に向かって押圧することで、扉本体20及び吊支部材30がガイドレール10に沿って不用意に移動しないよう、停止状態を維持することができる。
さらに、吊支部材30が押圧部材53を通過する際に、扉本体20とともに吊支部材30がガイドレール10の曲率半径方向の外側又は内側に変位した場合には、押圧部材53によってブッシュ40が下方に向かって押圧されることで、上部ローラ32及び下部ローラ33が、外周傾斜面14fや内周傾斜面15f上を伝って下方に案内される。これによって、吊支部材30及び扉本体20が正規の位置に復帰し、扉本体20の曲率半径方向への変位を抑えることができる。その結果、扉本体20がガイドレール10の曲率半径方向外側や内側にずれることを抑え、異音の発生や、扉本体20や吊支部材30とガイドレール10との干渉を抑えることができる。その結果、扉本体20の開閉動作を円滑に行うことが可能となる。
【0052】
(その他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施例を説明したが、本発明はこれら実施例に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本発明は上述した説明によって限定されることはなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
例えば、上述した実施形態では、外周傾斜面14fを有する上部ローラ支持部14を外周壁部12に設け、内周傾斜面15fを有する下部ローラ支持部15を内周壁部13に設けるようにしたが、これに限らない。上部ローラ支持部14を内周壁部13に設け、下部ローラ支持部15を外周壁部12に設けるようにしてもよい。
【0053】
上述した実施形態では、ストッパ部材50を、ガイドレール10の第一端部10aに設けるようにしたが、第二端部10cに設けてもよく、両端部10a,10cに設けてもよい。
扉本体20を、開方向又は閉方向に付勢するための機構を備えてもよい。
【0054】
上述した実施形態では、扉装置1を、トイレブース2に設けるようにしたが、扉装置1の用途は、トイレブース2に限らず、他の様々な用途に用いることが可能である。
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した各変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 扉装置
10 ガイドレール
10a 第一端部(端部)
10s 取付空間
12 外周壁部
13 内周壁部
14f 外周傾斜面
15f 内周傾斜面
16 下向片
16b 下端
17 目隠し部
20 扉本体
20t 上端
30 吊支部材
31 支軸
32 上部ローラ(第一ローラ)
32f 外周面
32s 周縁部
33 下部ローラ(第二ローラ)
33f 外周面
33s 周縁部
40 ブッシュ
53 押圧部材