(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】光反射体材料、光反射体の製造方法、光反射体及び照明器具
(51)【国際特許分類】
G02B 5/08 20060101AFI20221125BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20221125BHJP
C08K 5/12 20060101ALI20221125BHJP
C08L 21/00 20060101ALI20221125BHJP
C08L 67/06 20060101ALI20221125BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20221125BHJP
F21V 7/00 20060101ALI20221125BHJP
F21V 7/24 20180101ALI20221125BHJP
H01L 33/60 20100101ALI20221125BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20221125BHJP
【FI】
G02B5/08 A
C08K3/013
C08K5/12
C08L21/00
C08L67/06
F21S2/00 100
F21V7/00 510
F21V7/24
H01L33/60
F21Y115:10
(21)【出願番号】P 2018193532
(22)【出願日】2018-10-12
【審査請求日】2021-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000206901
【氏名又は名称】大塚化学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000236609
【氏名又は名称】フドー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】北島 孝志
(72)【発明者】
【氏名】市川 正樹
(72)【発明者】
【氏名】長井 理
【審査官】森内 正明
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-13748(JP,A)
【文献】特開平9-12903(JP,A)
【文献】特表平6-504087(JP,A)
【文献】特開昭63-46256(JP,A)
【文献】特開2012-229393(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/013
C08K 5/12
C08L 21/00
C08L 67/06
F21S 2/00
F21V 7/00
F21V 7/24
F21V 21/24
F21Y 115/10
G02B 5/08 - 5/10
H01L 33/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、白色系顔料と、不飽和ポリエステル樹脂と、フタル酸ジアリルおよびイソフタル酸ジアリルからなる群から選ばれる1つ以上の架橋剤と、弾性体とを含
む光反射体材料であって、
光反射体材料は、50/50≦(前記架橋剤の質量)/(前記不飽和ポリエステル樹脂の質量)≦80/20であ
り、
前記弾性体が、熱可塑性エラストマー、および、金属錯体形成可能な官能基を含む高分子量化合物と金属イオンとを含む材料からなる群から選ばれる1つ以上であり、
前記光反射体材料中における前記弾性体の含有量が0.1~30質量%であり、
前記白色系顔料の含有量は、前記不飽和ポリエステル樹脂と前記架橋剤との合計100質量部に対して80~500質量部であることを特徴とする光反射体材料。
【請求項2】
前記熱可塑性エラストマーが、スチレン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマー、アミド系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、フッ素系熱可塑性エラストマー及びオレフィン系熱可塑性エラストマーからなる群から選ばれる1つ以上であることを特徴とする請求項
1に記載の光反射体材料。
【請求項3】
前記金属錯体形成可能な官能基を含む高分子量化合物と金属イオンとを含む材料が、オレフィンとα,β-不飽和カルボン酸との共重合体のカルボキシル基の少なくとも一部が金属イオンの中和によりイオン化された材料であることを特徴とする請求項
1に記載の光反射体材料。
【請求項4】
前記白色系顔料は酸化チタン系粉末であることを特徴とする請求項1~
3のいずれか1項に記載の光反射体材料。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか1項に記載の光反射体材料を用いて成形することを特徴とする光反射体の製造方法。
【請求項6】
請求項1~
4のいずれか1項に記載の光反射体材料を用いて得られたことを特徴とする光反射体。
【請求項7】
請求項
6の光反射体を有することを特徴とする照明器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光反射体材料、光反射体の製造方法、光反射体、及び照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の光反射体材料(LEDリフレクター材料)が提案されている。LEDの高輝度化により、熱可塑性樹脂の代わりに、熱硬化性樹脂の採用が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、熱硬化性樹脂と、白色系顔料とを含み、前記熱硬化性樹脂は、少なくとも、イソフタル酸ジアリルと、不飽和ポリエステル樹脂とが用いられて構成されてなり、(前記イソフタル酸ジアリル)/(前記不飽和ポリエステル樹脂)が40/60~80/20(質量比)であり、前記白色系顔料の表面には無機粉末が存在してなる光反射体材料が提案されている。
【0004】
また、特許文献2には、白色系顔料と、不飽和ポリエステル樹脂と、フタル酸ジアリルおよび/またはイソフタル酸ジアリルと、シリコーンとが用いられて構成されてなり、50/50(質量比)≦(前記フタル酸ジアリルおよび/またはイソフタル酸ジアリル)/(前記不飽和ポリエステル樹脂)≦80/20(質量比)であり、前記シリコーンは変性シリコーンオイルであることを特徴とする光反射体材料が提案されている。
【0005】
また、特許文献3には、不飽和ポリエステル樹脂と、無機充填材とを少なくとも含む不飽和ポリエステル樹脂組成物であって、前記不飽和ポリエステル樹脂が、不飽和ポリエステルと、共重合性単量体及び/又は共重合性多量体と、熱可塑性樹脂とからなり、前記不飽和ポリエステル樹脂組成物が、白色顔料を含むことを特徴とするLED反射板用不飽和ポリエステル樹脂組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5921789号公報
【文献】特開2018-13748号公報
【文献】特許第5758355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
光反射体材料に関し、優れた成形性を有することが望まれている。また、光反射体材料を用いて得られる成形品(光反射体)に関しては、白色度(光の反射特性)が高いこと、高温にさらされた場合でも白色度が低下しにくいこと(すなわち、優れた耐熱性を有すること)、長時間光が照射されても白色度が低下しにくいこと(すなわち、優れた耐光性を有すること)、優れた耐衝撃性を有すること、寸法精度に優れる(低収縮性に優れる)ことなどが求められている。
【0008】
白色系顔料と、不飽和ポリエステル樹脂と、フタル酸ジアリルおよび/またはイソフタル酸ジアリルとを併用することで、白色度、耐衝撃性などの特性に優れた光反射体が得られやすい傾向にあるものの、このような材料は加熱時の流動性が低い傾向にあり、成形性について更なる改善の余地があった。
【0009】
また、特許文献1に記載された光反射体材料においても、成形性が不十分であり、さらなる改善の余地があった。
【0010】
特許文献2に記載された光反射体材料は、変性シリコーンオイルを添加することで成形性の改善を実現している。しかしながら、特許文献2に記載された光反射体材料を用いて得られる光反射体に関し、寸法精度(低収縮性)や耐衝撃性については近年高度化の進む市場要求に十分耐えうる水準にまで達しておらず、さらなる改善の余地があった。
【0011】
特許文献3は、熱可塑性樹脂を含む不飽和ポリエステル樹脂を用いることで収縮性の改善を提案している。しかしながら、耐衝撃性や耐熱性が悪いものであった。
【0012】
よって、本発明の目的は、白色系顔料と、不飽和ポリエステル樹脂と、フタル酸ジアリルおよびイソフタル酸ジアリルからなる群から選ばれる1つ以上の架橋剤とを含む光反射体材料を用いて光反射体を成形する場合において、得られる光反射体の白色度(光の反射特性)が犠牲にされることなく、成形性が良好で、低収縮性(寸法精度)、耐衝撃性、耐熱性および耐光性に優れた光反射体を製造できる光反射体材料を提供することにある。また、本発明は、成形性が良好で、白色度、低収縮性(寸法精度)、耐衝撃性、耐熱性および耐光性に優れた光反射体、光反射体の製造方法および照明器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、少なくとも、白色系顔料と、不飽和ポリエステル樹脂と、フタル酸ジアリルおよびイソフタル酸ジアリルからなる群から選ばれる1つ以上の架橋剤と、弾性体とを含み、50/50≦(前記架橋剤の質量)/(前記不飽和ポリエステル樹脂の質量)≦80/20であることを特徴とする光反射体材料を提案する。
【0014】
本発明は、前記光反射体材料であって、前記弾性体が、ゴム、熱可塑性エラストマー、金属錯体形成可能な官能基を含む高分子量化合物と金属イオンとを含む材料からなる群から選ばれる1つ以上であることを特徴とする光反射体材料を提案する。
【0015】
本発明は、前記光反射体材料であって、前記ゴムが、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、エピクロルヒドリンゴム及びクロロプレンゴムからなる群から選ばれる1つ以上であることを特徴とする光反射体材料を提案する。
【0016】
本発明は、前記光反射体材料であって、前記熱可塑性エラストマーが、スチレン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマー、アミド系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、フッ素系熱可塑性エラストマー及びオレフィン系熱可塑性エラストマーからなる群から選ばれる1つ以上であることを特徴とする光反射体材料を提案する。
【0017】
本発明は、前記光反射体材料であって、前記金属錯体形成可能な官能基を含む高分子量化合物と金属イオンとを含む材料が、オレフィンとα,β-不飽和カルボン酸との共重合体のカルボキシル基の少なくとも一部が金属イオンの中和によりイオン化された材料であることを特徴とする光反射体材料を提案する。
【0018】
本発明は、前記光反射体材料であって、前記光反射体材料中における前記弾性体の含有量が0.1~30質量%であることを特徴とする光反射体材料を提案する。
【0019】
本発明は、前記光反射体材料であって、前記白色系顔料は酸化チタン系粉末であることを特徴とする光反射体材料を提案する。
【0020】
本発明は、前記光反射体材料を用いて成形することを特徴とする光反射体の製造方法を提案する。
【0021】
本発明は、前記光反射体材料を用いて得られたことを特徴とする光反射体を提案する。
【0022】
本発明は、前記光反射体を有することを特徴とする照明器具を提案する。
【発明の効果】
【0023】
本発明の光反射体材料が用いられた場合、成形性が良い(流動性が優れている)。また、本発明の光反射体材料を用いて得られる光反射体は、反りやヒケが少なく、寸法精度が高い。また、この光反射体は、白色度が高く、更には、熱や光による変色が小さく、耐熱性および耐光性にも優れている(熱による変色が小さい)。更には、耐衝撃性にも優れている。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について説明する。なお、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は本実施形態のみに限定されない。
【0026】
第1の発明は光反射体材料である。前記反射体には反射板も含まれる。反射「板」と表記しているが、光を反射する性能を有するものであれば、その形状は特に限定されず、「板」状の平面形状に限定されるものではない。例えば、箱状、円錐状、パラボラ状等の立体形状も包含するものである。前記光反射体材料は、例えばLEDリフレクター構成材料として好ましく用いられる。第1の発明の光反射体材料は、少なくとも、白色系顔料と、不飽和ポリエステル樹脂と、フタル酸ジアリルおよびイソフタル酸ジアリルからなる群から選ばれる1つ以上の架橋剤と、弾性体とが用いられて構成される。光反射体材料において、前記不飽和ポリエステル樹脂と、架橋剤との割合は次の通りである。50/50≦(前記架橋剤の質量)/(前記不飽和ポリエステル樹脂の質量)≦80/20
【0027】
前記光反射体材料は、前記白色系顔料と、前記不飽和ポリエステル樹脂と、前記架橋剤とを含むので、白色度に優れた光反射体を製造することができる。また、この光反射体材料を成形することで、不飽和ポリエステル樹脂と前記架橋剤とが反応して不飽和ポリエステル樹脂が前記架橋剤で架橋された構造を形成することができ、得られる光反射体の耐熱性、耐光性、耐衝撃性、寸法精度などの特性を向上させることができる。そして、光反射体材料中における前記架橋剤の質量と不飽和ポリエステル樹脂の質量との比が所定の割合とすることにより、これらの特性を顕著に向上させることができる。更には、前記光反射体材料は弾性体を含むことにより、優れた成形性を維持しつつ、これらの特性に優れた光反射体を製造することができる。
【0028】
弾性体は特に限定されないが、例えば、ゴム、熱可塑性エラストマー、金属錯体形成可能な官能基を含む高分子量化合物と金属イオンとを含む材料などが挙げられる。これらの弾性体は、1種単独で又は2種以上を適宜混合して用いることができる。
【0029】
光反射体材料中における前記弾性体の含有量は、好ましくは0.1~30(質量%)である。
【0030】
前記白色系顔料は、好ましくは、酸化チタン系粉末である。
【0031】
第2の発明は光反射体の製造方法である。前記製造方法は、前記光反射体材料を用いて成形することである。光反射体材料の成形方法については特に限定はなく、各種の方法が用いられる。例えば、トランスファー成形法、射出成形法、圧縮成形法などが用いられる。その他の成形方法を用いることもできる。前記の成形方法は公知の成形方法であっても良い。しかし、公知の方法に限られない。
【0032】
第3の発明は光反射体である。前記光反射体は前記光反射体材料が用いられて構成されたものである。
【0033】
第4の発明は照明器具である。前記照明器具は前記光反射体を有するものである。
【0034】
以下、更に、詳しい説明がなされる。
【0035】
[白色系顔料]
前記光反射体材料は前記白色系顔料を必須成分として含有する。前記白色系顔料は、好ましくは、粉末状である。前記白色系顔料の種類としては、例えば酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、酸化ジルコニウム等が挙げられる。これらの物質の中から、一種または二種以上が適宜用いられる。白色系顔料としては、酸化チタン、酸化アルミニウム、チタン酸バリウムが好ましく、酸化チタンがより好ましい。酸化チタンとしては、例えばアナターゼ型酸化チタン、ルチル型酸化チタン、ブルサイト型酸化チタンが挙げられる。これらの中でも熱安定性に優れるという理由からルチル型酸化チタンが特に好ましい。白色系顔料の平均粒径は、平均粒径が2μm以下であることが好ましく、平均粒径が0.1~1μmであることがより好ましく0.2~0.6μmであることが更に好ましい。前記平均粒径はレーザー回折散乱法により測定された値である。前記白色系顔料としては、酸化チタン系粉末が好ましく用いられる。より好ましくは、無機粉末で表面処理された酸化チタン系粉末が用いられる。さらに好ましくは、シリカ、アルミナ、及びジルコニアからなる群の中から選ばれる少なくとも一種で表面処理された酸化チタン系粉末が用いられる。酸化チタンは光触媒機能を有している結晶構造がある。光反射体中に酸化チタンが含まれていると、酸化チタンの光触媒作用によって、光反射体が損傷する恐れが考えられた。ところが、前記酸化チタン系粉末の表面にシリカ等が存在(付着)していた場合、光反射体中に酸化チタンが含まれていても、光反射体が損傷し難くすることができる。その理由は、酸化チタンの表面にシリカ等が存在することで、酸化チタンの光触媒作用が弱くなったためであると推測される。前記シリカ等は、前記白色系顔料(酸化チタン)の表面に付着させるものである。従って、前記シリカ等の大きさは、前記白色系顔料(酸化チタン)の大きさより小さいことが好ましい。前記シリカ等の大きさは、例えば1μm以下であることが好ましい。白色系顔料は有機物で表面処理されていることも好ましい。白色系顔料を表面処理する有機物としては、シランカップリング剤、脂肪酸、ポリオール、シリコーン等が挙げられる。例えば、酸化チタンなどの白色系顔料を脂肪酸やシランカップリング剤などで表面処理することで、白色系顔料が微粒子であっても、白色系顔料の凝集を効果的に抑制することができる。特に白色系顔料として酸化チタン系粉末を用いた場合このような効果が顕著である。このようなことから、白色系顔料としては、脂肪酸やシランカップリング剤などで表面処理された白色系顔料(酸化チタン)がより好ましく用いられる。
【0036】
前記白色系顔料の含有量は、好ましくは、前記不飽和ポリエステル樹脂と前記架橋剤との合計100質量部に対して、80~500質量部である。上限は成形性の観点から、450質量部以下であることが好ましい。白色系顔料の含有量が上記範囲であれば、成形性が良好で、白色度および耐熱性に優れた光反射体が得られやすい。500質量部を超えると成形性が悪化することがある。
【0037】
[不飽和ポリエステル樹脂、架橋剤]
前記光反射体材料は、不飽和ポリエステル樹脂と、フタル酸ジアリルおよびイソフタル酸ジアリルからなる群から選ばれる1つ以上の架橋剤とを含む。そして、前記成分の割合は次の通りである。50/50≦(前記架橋剤の質量)/(前記不飽和ポリエステル樹脂の質量)≦80/20。前記成分が必須成分とされ、かつ、前記成分の量が前記の通りとされたのは、光反射体の特性、特に、耐熱性や耐光性の観点からである。架橋剤を使用せずに、不飽和ポリエステル樹脂のみを用いた場合は、得られる光反射体の耐熱性が低い傾向にある。
【0038】
(不飽和ポリエステル樹脂)
前記不飽和ポリエステル樹脂は、例えば不飽和多塩基酸と多価アルコールとの脱水縮合反応により得られるものが挙げられる。前記不飽和多塩基酸類として、例えばマレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、テトラヒドロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、グルタコン酸などが挙げられる。前記多価アルコール(例えば、グリコール類)として、例えばエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3-ブタンジオール、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールAプロピレンオキシド化合物、シクロヘキサンジメタノール、ジブロムネオペンチルグリコール等が挙げられる。不飽和ポリエステル樹脂の機械特性を向上させる為、脱水縮合反応時にさらに飽和多塩基酸類を使用してもよい。飽和多塩基酸類としては、例えばイソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸などが挙げられる。
【0039】
前記不飽和ポリエステル樹脂は結晶性であってもよいし、非晶性であってもよい。
【0040】
光反射体材料中における不飽和ポリエステル樹脂の含有量は、3質量%以上であることが好ましい。不飽和ポリエステル樹脂の含有量が上記範囲であれば優れた成形性を持つ光反射体材料が得られる。る不飽和ポリエステル樹脂の含有量は、4質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましい。
【0041】
(架橋剤)
前記架橋剤は、フタル酸ジアリルおよびイソフタル酸ジアリルが用いられる。前記イソフタル酸ジアリル及び前記フタル酸ジアリルには、モノマータイプ、オリゴマータイプ、モノマーとオリゴマーとの混合物タイプのものが有る。オリゴマーは二種以上の混合物のタイプであっても良い。オリゴマーはプレポリマーを含む。本発明では何れのタイプのものが用いられても良い。ここで、モノマータイプのフタル酸ジアリルはC6H4(COOCH2CHCH2)2[1,2-ベンゼンジカルボン酸ジ-2-プロペニル]である。また、モノマータイプのイソフタル酸ジアリルはC6H4(COOCH2CHCH2)2[1,3-ベンゼンジカルボン酸ジアリル]である。前記オリゴマーは、モノマーの自己重合による二量化、三量化、…した化合物を意味する。オリゴマーには、ダイマー(dimer)、トライマー(trimer)、テトラマー(tetramer)…等が含まれる。本発明では、前記フタル酸ジアリルのみが用いられても良い。前記イソフタル酸ジアリルのみが用いられても良い。双方が用いられても良い。
【0042】
前記光反射体材料では、(前記架橋剤の質量)/(前記不飽和ポリエステル樹脂の質量)≧50/50(質量比)である。すなわち、前記不飽和ポリエステル樹脂の量に対して、前記架橋剤の量を多くすることによって、前記不飽和ポリエステル樹脂のみを用いた場合の欠陥を克服することができ、かつ、前記不飽和ポリエステル樹脂を用いた場合の特長が、効果的に奏される。(前記架橋剤の質量)/(前記不飽和ポリエステル樹脂の質量)は、好ましくは、60/40(質量比)以上である。(前記架橋剤の質量)/(前記不飽和ポリエステル樹脂の質量)は80/20(質量比)以下であり、好ましくは、70/30(質量比)以下である。前記光反射体材料を用いて得られる光反射体は、前記不飽和ポリエステル樹脂が前記架橋剤で架橋された構造を有している。
【0043】
[弾性体]
前記光反射体材料は、前記不飽和ポリエステル樹脂および前記架橋剤を必須成分として含有する。すなわち、前記不飽和ポリエステル樹脂および前記架橋剤が前提となる。その理由は光反射体の特性の観点からである。しかし、前記不飽和ポリエステル樹脂および前記架橋剤が必須成分であるが故に、成形性が劣っていた(流動性が悪かった)。この問題が改善されなければならなかった。しかし、白色度が犠牲にされてはならない。すなわち、光反射体の白色度が十分に保持された上で、成形性が改善されなければならない。そこで本発明では、弾性体を更に含有させることとした。弾性体を更に含有させることによって、不飽和ポリエステル樹脂と架橋剤とを含んでいるにもかかわらず光反射体材料の成形性を大きく改善することができる。光反射体材料に弾性体を含有させることにより、成形時における飽和ポリエステル樹脂と架橋剤の反応(例えばラジカル重合反応など)を遅延させることができ、その結果、成形の流動性が向上したためであると考えられる。さらに、弾性体を含有させたことによって、得られる光反射体の収縮率および耐衝撃性も向上させることができる。この理由は、弾性体を含有させたことにより得られる光反射体の弾性率が大きく低下したためであると推測される。更には、得られた光反射体の白度は高く、熱や光に暴露した時の白色度保持にも有効である。更には、封止剤との相性も良く、密着性も良好である。LEDの白色光も効率的に反射させることができる。
【0044】
本発明で用いられる弾性体は室温付近の温度域において弾性体の性質を示すものであればよく、例えば、ゴム、熱可塑性エラストマー、金属錯体形成可能な官能基を含む高分子量化合物と金属イオンとを含む材料などが挙げられる。これらの弾性体は、1種単独で又は2種以上を適宜混合して用いることができる。なお、本明細書において、弾性体とは、弾性変形を示す高分子化合物を表す。すなわち外力を加えたときに、その外力に応じて瞬時に変形し、かつ外力を除いたときには、短時間に元の形状を回復する性質を有する高分子化合物のことである。
【0045】
前記ゴムとしては、例えば、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、クロロプレンゴムなどが挙げられる。なかでも、耐候性・耐光性の観点からシリコーンゴムが好ましい。
【0046】
前記熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマー、アミド系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、フッ素系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。なかでも、耐候性・耐光性の観点からフッ素系熱可塑性エラストマーが好ましい。
【0047】
上記金属錯体形成可能な官能基を含む高分子量化合物と金属イオンとを含む材料として、高分子量化合物が有する金属錯体形成可能な官能基の一部が金属イオンによって分子間で擬似架橋を形成している材料などが挙げられる。このような材料としては、アイオノマー樹脂などが挙げられる。
【0048】
上記高分子量化合物が有する金属錯体形成可能な官能基としては、アミノ基、イミノ基、水酸基、エーテル基、ピリジル基、イミダゾリル基、カルボキシル基、チオール基、アミド基、スルホン基、オキシム基、ヒドロキサム基、リン酸基、ケトン基等が挙げられる。上記金属イオンとしては、Na、Li、K、Zn、Cu、Mg、Ba、Al、Fe、Sn、Ca、Ti、Zr等が挙げられる。
【0049】
上記高分子量化合物としては、オレフィンとα,β-不飽和カルボン酸との共重合体などが挙げられる。オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、ブタジエンなどが挙げられ、エチレンが好ましい。α,β-不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸などが挙げられる。
【0050】
金属錯体形成可能な官能基を含む高分子量化合物と金属イオンとを含む材料としては、オレフィンとα,β-不飽和カルボン酸との共重合体のカルボキシル基の少なくとも一部が金属イオンの中和によりイオン化された材料であることが好ましい。このような材料を用いることで本発明の効果がより顕著に得られやすい。
【0051】
光反射体材料中における弾性体の含有量は0.1~30質量%であることが好ましい。弾性体の含有量が上記範囲であれば、優れた成形性を有し、かつ、白色度(光の反射特性)が高く、耐熱性、耐光性、耐衝撃性、寸法精度に優れた光反射体を製造することができる光反射体材料とすることができる。弾性体の含有量は0.1質量%以上であれば、弾性体を添加した効果が十分に得られる。弾性体の含有量が30質量%を超えると耐熱性や耐光性が低下する傾向にある。弾性体の含有量が30質量%以下であれば、優れた耐熱性や耐光性を有する光反射体を得ることができる。また、光反射体材料中における弾性体の含有量は5質量%を超える量であることがより好ましい。
【0052】
[シリコーンオイル]
前記光反射体材料は変性シリコーンオイルを含有することが好ましい。シリコーンオイルは、その構造の違いにより、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーン等(一般的にストレートシリコーンオイルと呼ばれる)の未変性シリコーンオイル、未変性シリコーンオイルに各種有機基を導入して新たな機能を付加した変性シリコーンオイルに分類される。本発明で用いるシリコーンオイルは、変性シリコーンオイルであることが好ましい。変性シリコーンオイルとしては、ジメチルポリシロキサンの側鎖に有機基を有するもの、分子鎖の末端に有するもの、又は側鎖と末端の両方に有するものがあり、そのなかでも、分子鎖の末端に有するもの、又は側鎖に有するものが好ましい。有機基は前記架橋剤と反応し得る官能基であることが好ましい。前記変性シリコーンオイルとしては、例えば、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、フェノール変性シリコーンオイル、カルボキシ変性シリコーンオイル、メタクリル変性シリコーンオイル、アクリル変性シリコーンオイル等の群の中から選ばれる少なくとも一つが挙げられる。前記変性シリコーンオイルの粘度(25℃)は、10~20,000mm2/sであることが好ましい。より好ましくは、10~2,000mm2/sであり、更に好ましくは、10~1,000mm2/sである。シリコーンオイルの粘度は、動粘度測定装置で測定することができる。
【0053】
前記変性シリコーンオイルの好ましい例は、式(1)で表される化合物である。
式(1)
【化1】
[式(1)中、Rは有機基(メチル基は除かれる。)、nは1以上の整数である。]
前記化合物は、一方の末端基が有機基で置換されたシリコーンオイルである。前記化合物は一種類のみでも良く、二種類以上の混合物であっても良い。
【0054】
前記変性シリコーンオイルの好ましい例は、式(2)で表される化合物である。
式(2)
【化2】
[式(2)中、Rは有機基(メチル基は除かれる。)、nは1以上の整数である。]
前記化合物は、両方の末端基が有機基で置換されたシリコーンオイルである。前記化合物は、一種類のみでも良く、二種類以上の混合物であっても良い。
【0055】
前記変性シリコーンオイルの好ましい例は、式(3)で表される化合物である。
式(3)
【化3】
[式(3)中、Rは有機基(メチル基は除かれる。)、l,mは1以上の整数である。]
前記化合物は、ポリマー骨格におけるSiに有機基が結合したシリコーンオイルである。前記化合物は、一種類のみでも良く、二種類以上の混合物であっても良い。
【0056】
前記変性シリコーンオイルの好ましい例は、式(4)で表される化合物である。
式(4)
【化4】
[式(4)中、Rは有機基(メチル基は除かれる。)、l,mは1以上の整数である。]
前記化合物は、両方の末端基が有機基で置換されると共に、ポリマー骨格におけるSiに有機基が結合したシリコーンオイルである。前記化合物は、一種類のみでも良く、二種類以上の混合物であっても良い。
【0057】
前記変性シリコーンオイルは、前記式(1)で表される化合物であることが特に好ましい。変性シリコーンオイルとして化合物(1)を用いることで、流動性の指標であるスパイラルフロー値をより高めることができ、流動性が高く、トランスファー成形時の充填性をより改善することもできる。
【0058】
前記式(1)~(4)におけるRが表す有機基としては、例えばアクリル基、メタクリル基、カルビノール基、グリシジル基、アルコキシ基、ジオール基、カルボキシル基、アミノ基、フェノール基が挙げられ、好ましくは、アクリル基、メタクリル基、カルビノール基、グリシジル基の群の中から選ばれる少なくとも一つであり、より好ましくは、アクリル基、メタクリル基、カルビノール基の群の中から選ばれる少なくとも一つであり、更に好ましくは、アクリル基またはメタクリル基である。また、Rが表す有機基は、カルビノール基であることも好ましい。
【0059】
光反射体材料中におけるシリコーンオイル(好ましくは変性シリコーンオイル)の含有量は0.1~5(質量%)であることが好ましい。シリコーンオイルの含有量が0.1質量%未満であると、添加効果が十分に得られない。シリコーンオイルの含有量が5質量%を越えると、得られる光反射体の表面にシリコーンオイルがブリードアウトしやすい。例えば、シリコーンオイルの含有量が7質量%の場合、光反射体材料の成形時にシリコーンオイルがブリードアウトしやすく、得られる光反射体の表面がシリコーンオイルで濡れた状態となりやすい。
【0060】
[重合開始剤]
前記光反射体材料は重合開始剤を含有してもよい。重合開始剤の含有量は、好ましくは、前記不飽和ポリエステル樹脂と前記架橋剤との合計100質量部に対して、1~5質量部である。下限は、1.5質量部以上であることが好ましい。上限は3.5質量部以下であることが好ましい。
【0061】
前記重合開始剤としては、好ましくは、加熱分解型の有機過酸化物が挙げられる。例えば、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート、1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、t-ブチルパーオキシオクトエート、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、t-ブチルパーオキシベンゾエート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン等が挙げられる。これらの中でも、10時間半減期温度が95℃以上の有機過酸化物が好ましい。例えば、ジクミルパーオキサイドが挙げられる。前記重合開始剤は一種(単独)でも、二種以上を併用しても良い。
【0062】
[無機充填剤]
前記光反射体材料は、無機充填剤を含有してもよい。無機充填剤は、好ましくは、シリカ、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウムからなる群から選択される一種または二種以上である。無機充填剤の含有量は、好ましくは、前記不飽和ポリエステル樹脂と前記架橋剤との合計100質量部に対して、80~500質量部である。
【0063】
[離型剤]
前記光反射体材料は、離型剤を含有してもよい。前記離型剤としては、熱硬化性樹脂に用いられるワックス(例えば、脂肪酸系、脂肪酸金属塩系、鉱物系などのワックス類)が挙げられる。脂肪酸系や脂肪酸金属塩系のワックスは、耐熱性に優れたLEDリフレクターが得られたことから、好ましく用いられる。具体的には、ステアリン酸、ステアリン酸塩(例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム等)が挙げられる。離型剤は、単独で用いても良く、二種以上を併用しても良い。
【0064】
離型剤の含有量は、好ましくは、前記不飽和ポリエステル樹脂と前記架橋剤との合計100質量部に対して、0.25~3.75質量部である。下限は0.75質量部以上であることが好ましい。上限は2.5質量部以下であることが好ましい。離型剤の含有量が前述の範囲であれば、離型性と外観性とが共に良く、光反射率に優れた光反射体が得られる。
【0065】
[補強材]
前記光反射体材料は、補強材を含有してもよい。前記補強材としては、例えばガラス繊維、ビニロン繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ワラストナイト等が挙げられる。これらの中でも、ガラス繊維は好ましい。ガラス繊維としては、例えば珪酸ガラス、ホウ珪酸ガラスを原料とするEガラス(電気用無アルカリガラス)、Cガラス(化学用含アルカリガラス)、Aガラス(耐酸用ガラス)、Sガラス(高強度ガラス)等のガラス繊維が挙げられる。これらを長繊維(ロービング)、短繊維(チョップドストランド)としたものが適宜用いられる。これらのガラス繊維は表面処理が施されていても良い。ガラス繊維の好ましい具体例としては、繊維径10~15μmのEガラス繊維などのガラス繊維をシランカップリング剤にて表面処理し、表面処理したモノフィラメントを200本、400本、又は800本を酢酸ビニル等の収束剤にて収束させたものなどが挙げられる。
【0066】
補強材の含有量が多くなった場合、得られる光反射体の反射率が低下することがある。従って、光反射体としての強度が確保できる場合は、補強材は少ない方が好ましい。すなわち、補強材の含有量は、前記不飽和ポリエステル樹脂と前記架橋剤との合計100質量部に対して、好ましくは、75質量部以下であり、より好ましくは、37.5質量部以下であり、更に好ましくは20質量部以下である。補強材の含有量は0質量部であっても良い。
【0067】
[シランカップリング剤]
前記光反射体材料は、シランカップリング剤を含有してもよい。前記シランカップリング剤の含有量は、好ましくは、前記不飽和ポリエステル樹脂と前記架橋剤との合計100質量部に対して、0.25~12.5質量部である。下限は1.25質量部以上であることが好ましい。上限は、7.5質量部以下であることが好ましい。
【0068】
[酸化防止剤]
前記光反射体材料は、酸化防止剤を含有してもよい。酸化防止剤としては、リン系酸化防止剤やヒンダードアミン系酸化防止剤などが挙げられる。リン系酸化防止剤としては、例えばジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチル-5-メチルフェニルオキシ)-4,4‘-ビフェニレンジホスフィンなど、ヒンダードアミン系としては、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ジブチルアミン-1,3,5-トリアジン-N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ブチルアミン、テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシラートなどが挙げられる。酸化防止剤の含有量は、前記不飽和ポリエステル樹脂と前記架橋剤との合計100質量部に対して0.1~10質量部であることが好ましい。
【0069】
[その他添加剤]
前記光反射体材料は、前記配合成分以外にも、樹脂の硬化条件を調整する為の硬化触媒、重合禁止剤、増粘剤、その他有機系添加剤や無機系添加剤などを必要に応じて、適宜、配合することができる。
【0070】
[光反射体の製造方法]
本発明の光反射体の製造方法は、前記光反射体材料を用いて成形する。例えば、前記光反射体材料を、混合機(例えば、ミキサー、ブレンダー等)で、均一に、混合し、次いで、混練機(例えば、加圧ニーダー、熱ロール、エクストルーダー等)で混練し、次いで、粉砕・整粒し、次いで、溶融加熱成形法(例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、トランスファー成形法など。好ましくは、射出成形法)によって、所定の形状に成形して光反射体を製造することができる。成形条件は適宜選択することができる。光反射体のフレームに発生したバリは、例えばブラスト処理(ショットブラスト、サンドブラスト、ガラスビーズブラスト等)により、簡単に、除去することができる。また、マシニングセンター処理によっても、バリは除去することもできる。
【0071】
[光反射体、照明器具]
本発明の光反射体は、前記光反射体材料を用いて得られたことものである。前記光反射体は、照明器具に装着して用いることができる。前記光反射体は、LEDリフレクターとして好ましく用いることができる。また、本発明の照明器具は、前記光反射体を有するものである。
図1は本発明の照明器具の概略断面図である。
図1の符号の3は光反射体(LEDリフレクター)である。光反射体(LEDリフレクター)3は、リードフレーム1上に実装されたLED素子2からの光を、効率よく、反射させることができる。光反射体3の形状は、実装されるLED素子2の光量や色、指向性などを考慮して、適宜、設計される。光反射体3は、リードフレーム1との密着性を考慮して、リードフレーム1を抱え込む構造が好ましい。金属製のリードフレーム1を用いる場合には、光反射体3との密着性を向上させる為、トリアジン系化合物等による金属表面処理を施されていてもよい。
【実施例】
【0072】
以下、本発明が具体的に説明される。下記実施例は本発明の一実施例に過ぎない。本発明は下記実施例に限定されない。すなわち、本発明の特長が大きく損なわれない変形・応用例も本発明に含まれる。
【0073】
光反射体材料の製造に用いた素材は以下の通りである。
【0074】
[不飽和ポリエステル樹脂]
A1:不飽和ポリエステル樹脂(日本ユピカ株式会社:8510)
A2:不飽和ポリエステル樹脂(日本ユピカ株式会社:8542)
【0075】
[架橋剤]
B1:イソフタル酸ジアリルプレポリマー(ダイソー株式会社;イソダップ)
B2:フタル酸ジアリルプレポリマー(ダイソー株式会社;ダップ-A)
【0076】
[弾性体]
C1:スチレンブタジエンゴム(日本ゼオン株式会社;Nipol 1723)
C2:アクリロニトリルブタジエンゴム(日本ゼオン株式会社;Nipol DN601)
C3:シリコーンゴム(信越シリコーン株式会社;KMP-605)
C4:スチレン系熱可塑性エラストマー(JSR株式会社;JSR TR2003)
C5:ウレタン系熱可塑性エラストマー(東ソー株式会社;パールセン U-204A)
C6:エステル系熱可塑性エラストマー(三菱ケミカル株式会社;プリマロイA1800)
C7:金属錯体形成可能な官能基を含む高分子量化合物と金属イオンとを含む材料(三井・デュポンポリケミカル株式会社;ハイミラン1605)
【0077】
[熱可塑性樹脂]
D1:ポリスチレン(旭化成株式会社;GPPS679)
D2:ポリエチレン(東京インキ株式会社;PR-1050)
【0078】
[白色系顔料]
E:酸化チタン(平均粒径0.25μm;石原産業株式会社;UT-771、表面処理;Al2O3、ZrO2、有機物)
【0079】
[重合開始剤]
F:パーブチルE(日油株式会社)
【0080】
[酸化防止剤]
G:ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)(株式会社ADEKA:LA-81)
【0081】
[変性シリコーンオイル]
H:ポリエーテル変性シリコーンオイル(東レダウコーニング株式会社:501W Additive)
【0082】
<光反射体材料の製造>
下記の素材を混合して実施例および比較例の光反射体材料をそれぞれ製造した。
[実施例1]
A1:50質量部、B1:50質量部、C1:25質量部、E:125質量部、F:2.5質量部、G:0.25質量部、H:2.5質量部
【0083】
[実施例2]
A1:50質量部、B1:50質量部、C2:25質量部、E:125質量部、F:2.5質量部、G:0.25質量部、H:2.5質量部
【0084】
[実施例3]
A1:50質量部、B1:50質量部、C3:25質量部、E:125質量部、F:2.5質量部、G:0.25質量部、H:2.5質量部
【0085】
[実施例4]
A1:50質量部、B1:50質量部、C4:25質量部、E:125質量部、F:2.5質量部、G:0.25質量部、H:2.5質量部
【0086】
[実施例5]
A1:50質量部、B1:50質量部、C5:25質量部、E:125質量部、F:2.5質量部、G:0.25質量部、H:2.5質量部
【0087】
[実施例6]
A1:50質量部、B1:50質量部、C6:25質量部、E:125質量部、F:2.5質量部、G:0.25質量部、H:2.5質量部
【0088】
[実施例7]
A1:50質量部、B1:50質量部、C7:25質量部、E:125質量部、F:2.5質量部、G:0.25質量部、H:2.5質量部
【0089】
[実施例8]
A1:20質量部、B1:80質量部、C1:25質量部、E:125質量部、F:2.5質量部、G:0.25質量部、H:2.5質量部
【0090】
[実施例9]
A1:50質量部、B2:50質量部、C1:25質量部、E:125質量部、F:2.5質量部、G:0.25質量部、H:2.5質量部
【0091】
[実施例10]
A2:50質量部、B1:50質量部、C1:25質量部、E:125質量部、F:2.5質量部、G:0.25質量部、H:2.5質量部
【0092】
[比較例1]
A1:50質量部、B1:50質量部、E:150質量部、F:2.5質量部、G:0.25質量部、H:2.5質量部
【0093】
[比較例2]
A1:50質量部、B1:50質量部、D1:25質量部、E:125質量部、F:2.5質量部、G:0.25質量部、H:2.5質量部
【0094】
[比較例3]
A1:50質量部、B1:50質量部、D2:25質量部、E:125質量部、F:2.5質量部、G:0.25質量部、H:2.5質量部
【0095】
[比較例4]
A1:75質量部、B1:25質量部、C1:25質量部、E:125質量部、F:2.5質量部、G:0.25質量部、H:2.5質量部
【0096】
[比較例5]
A1:10質量部、B1:90質量部、C1:25質量部、E:125質量部、F:2.5質量部、G:0.25質量部、H:2.5質量部
【0097】
<光反射体の製造>
上記の素材を上記の割合で配合して製造した光反射体材料を、100℃に加熱された2本ロールで混錬した。ついで、混錬物を粉砕した。ついで、この粉砕物をトランスファー成形して所定形状の光反射体を製造した。トランスファー成形は、株式会社丸七鉄工所製、型締圧50トン、熱硬化トランスファー成型機を用い、金型温度160℃、成形時間240秒、成形圧力15MPaの条件で行った。
【0098】
実施例1~10、および比較例4,5の光反射体材料は、前記光反射体の成形に際しての成形性が良かった。比較例1,2,3の光反射体材料は、実施例1~10の光反射体材料よりも成形性が悪かった。
【0099】
実施例1~10、及び比較例1~比較例5の光反射体材料のスパイラルフロー値、これらの光反射体材料を用いて得られた光反射体の成形収縮率、シャルピー衝撃強さ、曲げ弾性率および光反射特性(初期白色度、白色度保持率1、2)を調べた。これらの結果を下記表に示す。
【0100】
【0101】
【0102】
【0103】
*スパイラルフロー値:渦巻状の金型を使用し成形温度(160℃)、成形圧(12MPa)、成形時間(120秒)の条件で光反射体材料のスパイラルフロー値を測定した。
*成形収縮率:JISK6911に準じて測定した。
*シャルピー衝撃強さ:JISK6911に準じて測定した。
*曲げ弾性率:JISK6911に準じて測定した。
*初期白色度(W1):得られた光反射体の白色度について、分光測色計(商品名:コニカミノルタ製CM-5)を用いて測定した。光反射体の形状はJISK6911で規定される吸水率測定用試験片に準じた。
*白色度保持率1:初期白色度(W1)を測定した光反射体を150℃で1000時間保持した後の白色度(W2)について、分光測色計(商品名:コニカミノルタ製CM-5)を用いて測定し、以下の式から白色度保持率1を算出した。
白色度保持率1(%)=(白色度(W2)/初期白色度(W1))×100
光反射体の形状はJISK6911で規定される吸水率測定用試験片に準じた。
*白色度保持率2:初期白色度(W1)を測定した光反射体に対し、波長300nm以上の紫外線(光源:メタルハライドランプ、出力16mW/cm2)を1000時間照射した。照射中の雰囲気温度は120℃とした。紫外線を照射後の光反射体の白色度(W3)について、分光測色計(商品名:コニカミノルタ製CM-5)を用いて測定し、以下の式から白色度保持率2を算出した。
白色度保持率2(%)=(白色度(W3)/初期白色度(W1))×100
光反射体の形状はJISK6911で規定される吸水率測定用試験片に準じた。
【0104】
上記表に示すように、実施例1~10の光反射体材料は、スパイラルフロー値が高いことから、成形性に優れるものであることがわかる。また、実施例1~10の光反射体は、白色度が高く、かつ、その耐久性(白色度保持率1(耐熱性)、白色度保持率2(耐光性))も良好であった。更には、成形収縮率が低く、かつ、シャルピー衝撃強さが大きく、耐衝撃性および寸法精度に優れていた。また、上述したように、実施例1~10の光反射体材料を用いた場合は、成形性が良好であった。
【0105】
比較例1の場合には、成形収縮率、シャルピー衝撃強さおよび曲げ弾性率が不十分であった。更には、成形性も不十分であった。
【0106】
比較例4、5の場合は、白色度保持率1(耐熱性)、白色度保持率2(耐光性)が不十分であった。
【0107】
比較例2、3の場合は、シャルピー衝撃強さおよび曲げ弾性率が不十分であった。
【符号の説明】
【0108】
1:リードフレーム
2:LED素子
3:光反射体(LEDリフレクター)