(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】キトサンを含有する飲料
(51)【国際特許分類】
A23F 3/16 20060101AFI20221125BHJP
A23F 5/24 20060101ALI20221125BHJP
A23L 2/70 20060101ALI20221125BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20221125BHJP
A23L 2/02 20060101ALI20221125BHJP
A23L 2/62 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
A23F3/16
A23F5/24
A23L2/00 K
A23L2/00 F
A23L2/02 A
A23L2/52
A23L2/62
(21)【出願番号】P 2018214070
(22)【出願日】2018-11-14
【審査請求日】2021-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100126985
【氏名又は名称】中村 充利
(72)【発明者】
【氏名】島田 佳明
(72)【発明者】
【氏名】吉田 敦
(72)【発明者】
【氏名】長田 知也
(72)【発明者】
【氏名】田村 裕
(72)【発明者】
【氏名】古池 哲也
(72)【発明者】
【氏名】河本 大毅
【審査官】山本 英一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0196497(US,A1)
【文献】特開2005-075957(JP,A)
【文献】特開平07-236419(JP,A)
【文献】特開2001-316271(JP,A)
【文献】特開平07-111857(JP,A)
【文献】特開2007-110982(JP,A)
【文献】特開平06-007117(JP,A)
【文献】特開2005-328844(JP,A)
【文献】特開2019-115325(JP,A)
【文献】大熊廣一ほか,リアクター型バイオセンサシステムによるマイクロ波乾燥茶葉中のビタミンC計測,日本食品科学工学会誌,1996年,Vol.43, No.6,p.668-673,表1
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23F
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子量が100
kDa~1000kDaであるキトサンを1ppm以上85ppm以下、ビタミンCを1ppm以上700ppm以下の濃度で含有する、茶飲料、コーヒー飲料または果汁含有飲料。
【請求項2】
キトサンを1~60ppmの濃度で含有する、請求項1に記載の飲料。
【請求項3】
pHが3.5~7.5である、請求項1または2に記載の飲料。
【請求項4】
容器詰飲料である、請求項1~3のいずれかに記載の飲料。
【請求項5】
分子量が100
kDa~1000kDaであるキトサンを1ppm以上85ppm以下、ビタミンCを1ppm以上700ppm以下の濃度で配合することを含む、茶飲料、コーヒー飲料または果汁含有飲料の製造方法。
【請求項6】
分子量が100
kDa~1000kDaであるキトサンを1ppm以上85ppm以下、ビタミンCを1ppm以上700ppm以下の濃度で配合することを含む、茶飲料、コーヒー飲料または果汁含有飲料における濁りの発生を抑制する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キトサンを含有する飲料に関する。より詳しくは、本発明に係る飲料は、特定量のキトサンとビタミンCを含有し、濁りの発生が抑えられた飲料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、キトサンが有する多様な機能が明らかにされている。キトサンの有する機能としては、例えば、カルシウム吸収促進効果(非特許文献1)、抗肥満作用(非特許文献2)などが知られている。
【0003】
キトサンを飲食品に配合することに関しては種々の提案がなされている。例えば、特許文献1には、pHが4.6以上である弱酸性の飲料にキトサンを配合することによってpHの低下を抑制することが提案されている。また、特許文献2には、キトサンをコンドロイチン硫酸と併用することによって、キトサンの渋味が抑制された飲料が得られる旨が記載されている。さらに、特許文献3には、特定の分子量分布を有するキトサンを用いることによって、中性~アルカリ性の領域においても安定なキトサン含有飲料を得ることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-000158号公報
【文献】特開2009-055882号公報
【文献】特開2005-075957号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】キチン・キトサン研究 Vol.4、No.2、1998、170-171頁
【文献】キチン・キトサン研究 Vol.4、No.2、1998、166-167頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、キトサンを含有する飲料について種々検討したところ、キトサンを均一に分散させることはもちろん、濁りが発生しにくくする必要があることが明らかになった。容器詰飲料などの飲料においては、飲料の製造から摂取までに時間がかかる場合があるため、濁りの生成が抑制されていないと、飲料を飲用した際のキトサンの摂取量が不均一になることはもちろん、飲料の外観が好ましくないものとなってしまう。
【0007】
このような状況に鑑み、本発明の課題は、キトサンを含有する飲料について、濁りの発生を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、天然由来の素材であるキトサンを飲料に配合する場合、ビタミンC(アスコルビン酸)と組み合わせることによって、キトサンに起因する濁りの発生が抑制されることを見出した。さらに検討を進めたところ、キトサンとビタミンCとを特定量で併用することが飲料の濁りを抑制するために重要であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
これに限定されるものではないが、本発明は、下記の態様を包含する。
(1) キトサンを85ppm以下、ビタミンCを700ppm以下の濃度で含有する、茶飲料、コーヒー飲料または果汁含有飲料。
(2) キトサンを1~60ppmの濃度で含有する、(1)に記載の飲料。
(3) 前記キトサンの分子量が100~1000kDaである、(1)または(2)に記載の飲料。
(4) 容器詰飲料である、(1)~(3)のいずれかに記載の飲料。
(5) キトサンを85ppm以下、ビタミンCを700ppm以下の濃度で配合することを含む、茶飲料、コーヒー飲料または果汁含有飲料の製造方法。
(6) キトサンを85ppm以下、ビタミンCを700ppm以下の濃度で配合することを含む、茶飲料、コーヒー飲料または果汁含有飲料における濁りの発生を抑制する方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、キトサンを含有する飲料について、濁りの発生を効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、烏龍茶飲料において発生した濁りを示す写真である(左:濁りの発生なし、右:濁りの発生あり)。
【
図2】
図2は、緑茶飲料において発生した濁りを示す写真である(左:濁りの発生なし、右:濁りの発生あり)。
【
図3】
図3は、紅茶飲料において発生した濁りを示す写真である(左:濁りの発生なし、右:濁りの発生あり)。
【
図4】
図4は、コーヒー飲料において発生した濁りを示す写真である(左:濁りの発生なし、右:濁りの発生あり)。
【
図5】
図5は、果汁含有飲料において発生した濁りを示す写真である(左:濁りの発生なし、右:濁りの発生あり)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、キトサンとビタミンCを特定量で配合した飲料に関する。
キトサン
本発明に係る飲料はキトサンを含有する。キトサン(chitosan)は、直鎖型の多糖類であり、グルコサミンの1,4-重合物である。キトサンの分子式は(C6H11NO4)nであり、重合度によって分子量は数十万に及ぶこともある。本明細書においては、その分子量や重合度にかかわらず、グルコサミンの1,4-重合物であればキトサンという。
【0013】
【0014】
本発明に係る飲料に配合するキトサンの分子量は特に制限されない。キトサンの分子量は、例えば、1000kDa以下であり、好ましくは900kDa以下、より好ましくは800kDa以下、さらに好ましくは700kDa以下である。一つの態様において、キトサンの分子量は0.3kDa以上であり、10kDa以上が好ましく、100kDa以上がより好ましく、300kDa以上がさらに好ましい。好ましい態様において、上記式におけるnは0~10000であり、より好ましくは1~8500、さらに好ましくは10~7000、よりさらに好ましくは100~5500である。また、キトサンは遊離アミンの形態で使用しても、適当な酸との塩として使用してもよい。塩の形態は、食用に供しうる塩である限り特に限定されないが、有機酸との塩として例えば酢酸塩、乳酸塩、クエン酸塩等を挙げることができ、無機酸との塩として例えば塩酸塩、硫酸塩等を挙げることができる。好ましい塩は塩酸塩である。
【0015】
一般にキトサンは、その重合度にもよるが水に解けにくく、特に中性からアルカリ性の溶液には溶解しにくい。そのため、キトサンを容器詰飲料などに配合する場合、キトサンを溶液に均一に配合することはもちろん、経時的に濁りや沈殿などが生じないようにすることが技術的なハードルとなる。また、飲料に含まれる成分とキトサンとが会合して濁りや沈殿が生じ易くなることもあり、安定性に優れたキトサン配合飲料を製造するには、どのような飲料にキトサンを配合するかに応じて技術開発をする必要がある。本発明においては、キトサンを特定比率でビタミンCと組み合わせて飲料に配合することによって、安定性に優れた飲料を得ることができる。
【0016】
キトサンは、主として、カニやエビなどの甲殻類の外骨格から得られるキチンを脱アセチル化して得ることができる。キチンのキトサンへの変換(脱アセチル反応)が完全に進まず、糖鎖上に一部N-アセチルグルコサミンを含むことがあり、市販されているキトサン製品には、脱アセチル化の割合(%DA)が示されることが多い。市販のキトサンの%DAは、60~100%であることが多い。
【0017】
本発明において、飲料へのキトサンの配合量は85ppm以下である。キトサンは食品として実質的に無害であり、無味無臭に近いものであるが、キトサンの配合量が100ppmを超えると、ビタミンCと併用したとしても飲料においてキトサンなどに起因する濁りの発生が顕著になってしまう。また、好ましい態様において、本発明に係る飲料におけるキトサン濃度は1~75ppmであるが、2~65ppmや5~55ppmとしてもよい。
【0018】
本発明においてキトサンは、各種飲料を製造する適当な工程で添加することができる。その添加方法としては、例えばあらかじめ原料に添加しておく方法、原料成分を調合する過程で添加する方法、調合した成分を水に溶解した後に添加する方法などが挙げられる。滅菌処理を行う場合、キトサンの添加は飲料の滅菌処理前に行ってもよいし、滅菌処理後に行うこともできる。
【0019】
ビタミンC(アスコルビン酸)
本発明に係る飲料は、ビタミンCを含有する。ビタミンCは水溶性ビタミンの1種であり、L-アスコルビン酸とも言われる。ビタミンCは優れた還元能を有し、酸化防止剤として食品によく利用される。
【0020】
本発明において、飲料へのビタミンCの配合量は700ppm以下である。ビタミンCの配合量が多くなると、飲料においてキトサンに起因する濁りが生じる場合がある。また、好ましい態様において、本発明に係る飲料におけるビタミンC濃度は1~650ppmであり、より好ましくは5~600ppm、さらに好ましくは10~550ppm、よりさらに好ましくは50~500ppmである。
【0021】
ビタミンCの配合量は、ビタミンCを含有する原料を飲料に添加して調整してもよいし、合成ないし天然から抽出した試薬などの形態であるビタミンCを添加して調整してもよい。
【0022】
飲料
本発明は飲料に関する。好ましい態様において本発明の飲料は、常温で長期保存しても、沈殿が生じにくい飲料である。すなわち、本発明に係る飲料は経時的な沈殿が抑制されており、飲料の外観を長期にわたって均一に維持することができるため、容器詰飲料として好適に提供される。ここでいう容器詰飲料とは、PET容器などの樹脂製容器、缶、瓶、紙容器などの容器に収容した飲料をいう。本発明に係る飲料は、飲料の経時的な沈殿を抑制できるため、一つの態様において透明容器に充填した容器詰飲料とすることが好ましい。
【0023】
(茶飲料)
本発明に係る飲料は、一つの態様において、茶飲料に関する。本発明に係る茶飲料は、茶の抽出液を配合して得ることができる。茶抽出液は、原料茶葉を加温水にて抽出し、その茶抽出液から抽出残渣を取り除くことにより得られる。本発明に係る茶飲料には、ツバキ属植物であるチャ(学名:Camellia sinensis)に属する樹木の葉もしくはその加工物から得られる茶抽出液が配合される。茶としては、発酵茶、半発酵茶、非発酵茶のいずれも制限なく用いることができる。原料茶葉は、品種、産地、摘採時期、摘採方法、栽培方法などは何ら限定されず、例えば、葉や茎を含む生茶葉などを原料茶葉とすることも可能である。非発酵茶としては、例えば、煎茶、玉露、てん茶などの緑茶類、半発酵茶としては、例えば、鉄観音、黄金桂などの烏龍茶(青茶)、発酵茶としては、例えば、紅茶を好適に挙げることができる。
【0024】
抽出は、例えば、ニーダー等の抽出装置を用いた公知の方法で行うことができ、具体的には、原料茶葉に対して20~100倍量、60~100℃(好ましくは、70~90℃)の抽出水で約1分~20分間、必要に応じて1回~数回攪拌して、常圧又は加圧下で抽出を行えばよい。ここで、抽出に用いる抽出水は、純水(硬水、軟水、イオン交換水を含む)のほか、ビタミンC含有水溶液及びpH調製水等を例示することができる。また、茶抽出液には、抽出時又は抽出後に、ビタミンCなどの酸化防止剤や炭酸水素ナトリウム等のpH調整剤を添加してもよい。
【0025】
原料茶葉の抽出によって得られた茶抽出液は、次に、その茶抽出液から濾過等により抽出残渣を取り除いてもよく、必要に応じ遠心分離等を行って微粉を除去する。遠心分離の条件(流速、回転数等)は、最終的に得られる茶飲料の清澄度等を考慮して、適宜選択すればよい。なお、遠心分離を行うには、抽出液を5~40℃程度に冷却するとよい。冷却して遠心分離することにより、最終的に得られる茶飲料の清澄度が高くなる。
【0026】
本発明に係る茶飲料は、好ましい態様において、pH(水素イオン濃度指数)が3.5~7.5である。一般に茶飲料は、pHが低くなると茶飲料の液色が変化することがあり、弱酸性~中性のpH領域であることが好ましいとされる。より好ましい態様において、本発明に係る茶飲料のpHは4.6~7.0であり、pHを5.2~6.5としてもよい。飲料のpHは公知の方法によって調整すればよいが、例えば、アスコルビン酸やクエン酸、炭酸カリウム、重曹(炭酸水素ナトリウム)、水酸化ナトリウムやリン酸水素2ナトリウムなどのpH調整剤を添加することによって行うことができる。
【0027】
(コーヒー飲料)
本発明の一つの態様において、本発明の飲料をコーヒー飲料とすることができる。本明細書でいう「コーヒー飲料」とは、コーヒー分を原料として使用して製造される飲料製品のことをいう。製品の種類は特に限定されないが、1977年に認定された「コーヒー飲料等の表示に関する公正競争規約」の定義である「コーヒー」「コーヒー飲料」「コーヒー入り清涼飲料」が主に挙げられる。また、コーヒー分を原料とした飲料においても、乳固形分が3.0質量%以上のものは「飲用乳の表示に関する公正競争規約」の適用を受け、「乳飲料」として取り扱われるが、これは、本発明におけるコーヒー飲料に含まれるものとする。
【0028】
本発明のコーヒー抽出液の原料となる焙煎コーヒー豆は、特に限定されない。直火式、熱風式、半熱風式、炭火式、遠赤外線式、マイクロ波式、過熱水蒸気式などの方法で、水平(横)ドラム型、垂直(縦)ドラム型、垂直回転ボール型、流動床型、加圧型などの装置を用い、コーヒー豆の種別に対応して、所定の目的に応じた焙煎度に仕上げればよい。アグトロンカラーメーターで測定した値(アグトロン値)を指標として、35~60程度、好ましくは45~50程度となるように焙煎された焙煎コーヒー豆は好適な態様の一例である。なお、コーヒー豆の種別についても、限定されるものではなく、アラビカ種、ロブスタ種のいずれも使用できるが、ロブスタ種は本発明のコーヒー特有のジテルペン化合物(カフェストール及びカーウェオール)の濃度を特定範囲に調整しやすいことから、好ましい態様の一例である。コーヒー抽出液は、上記の焙煎コーヒー豆に温水等の水溶性溶媒を用いて定法により抽出することにより得られる。
【0029】
ここで、コーヒー分とは、コーヒー豆由来の成分を含有する溶液のことをいい、例えば、コーヒー抽出液、すなわち、焙煎、粉砕されたコーヒー豆を水や温水などを用いて抽出した溶液が挙げられる。また、コーヒー抽出液を濃縮したコーヒーエキス、コーヒー抽出液を乾燥したインスタントコーヒーなどを、水や温水などで適量に調整した溶液も、コーヒー分として挙げられる。
【0030】
本発明に係るコーヒー飲料は、カフェインを含有してもよいが、カフェインを含有しなくてもよい。
乳入りコーヒー飲料における乳とは、コーヒー飲料に乳風味や乳感を付与するために添加される成分を指し、無脂乳固形成分を供給する原料としては、生乳、牛乳、特別牛乳、部分脱脂乳、加工乳、クリーム、濃縮乳、無糖れん乳、全粉乳、クリームパウダー、バターミルクパウダー、調整粉乳、脱脂乳、濃縮ホエイ、脱脂濃縮乳、加糖脱脂れん乳、脱脂粉乳、ホエイパウダーなどが挙げられ、乳脂肪を供給する原料としては、生乳、牛乳、特別牛乳、部分脱脂乳、加工乳、クリーム、濃縮乳、無糖れん乳、全粉乳、クリームパウダー、バターミルクパウダー、調整粉乳などが挙げられる。乳脂肪の一部又は全部に替えて植物油脂を用いてもよい。植物油脂としては、例えは、ナタネ油、ナタネ硬化油、コメ油、大豆油、コーン油、サフラワー油、ヒマワリ油、綿実油、ゴマ油、オリーブ油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、ヤシ硬化油等の植物油脂と、それらの水素添加油、それらの1種以上の混合物によるエステル交換油等が挙げられる。
【0031】
(果汁含有飲料)
本発明の好ましい態様において、本発明の飲料は、果汁を含有する飲料とすることができる。本発明において果汁とは、果実を搾汁することにより得られるものはもちろん、野菜を搾汁して得られる野菜汁をも含む概念である。果汁の原料となる果実は、当業界で通常用いられているものを用いることができ、特に限定されない。その具体例としては、例えば、柑橘類(オレンジ、みかん、温州ミカン、ネーブル、ポンカン、夏ミカン、レモン、グレープフルーツ、ライム、ハッサク、イヨカン、ユズ、カムカム、シイクワシャー、かぼす、マンダリン、タンジェリン、テンプルオレンジ、タンジェロ、カラマンシー等)、いちご、ラズベリー、ブルーベリー、ブラックベリー、カシス、さくらんぼ、リンゴ、ブドウ、ザクロ、キウイ、マスカット、モモ、パイナップル、グアバ、バナナ、パッションフルーツ、マンゴー、アセロラ、プルーン、パパイヤ、パッションフルーツ、ウメ、ナシ、アンズ、ライチ、メロン、スイカ、西洋ナシ、柿、びわ、イチジク、スモモ類等が挙げられる。果汁の原料となる果実は、好ましくは柑橘類である。なお、果汁は、上記果実のいずれか1種を単独で用いたもの、或いは、2種以上を併用したもののいずれであっても構わない。2種以上を併用する場合、各果実(果汁)の割合は、必要に応じて適宜調整することができ、特に限定されない。
【0032】
野菜を搾汁することにより得られる野菜汁の原料としては、当業界で通常用いられているものを用いることができ、特に限定されない。その具体例としては、例えば、ニンジン、タマネギ、ブロッコリー、カブ大根、キャベツ、芽キャベツ、芽キャベツの葉、セロリ、ホウレンソウ、ピーマン、アスパラガス、大麦若葉、春菊、白菜、カラシ菜、サラダ菜、小松菜、チンゲン菜、明日葉、甘藷、馬鈴薯、トマト、モロヘイヤ、パプリカ、クレソン、パセリ、セロリ、三つ葉、レタス、ラディッシュ、ケール、メキャベツの葉、紫蘇、茄子、大根、インゲン、カボチャ、牛蒡、ネギ、生姜、大蒜、ニラ、高菜、カリフラワー、トウモロコシ、さやえんどう、オクラ、かぶ、きゅうり、コールラビ、ウリ、ズッキーニ、へちま、もやし、各種スプラウト類等が挙げられる。なお、野菜汁は、上記野菜のいずれか1種を単独で用いたもの、或いは、2種以上を併用したもののいずれであっても構わない。2種以上を併用する場合、各野菜(野菜汁)の割合は、必要に応じて適宜調整することができ、特に限定されない。
【0033】
果汁は、原料である果実や野菜を当業界で公知の手法により搾汁することにより、得ることができる。公知の手法としては、例えば、必要に応じて洗浄、殺菌、剥皮、皮や種子等の除去、プランチング、破砕、裏ごし等の前処理を行った原料となる野菜を、油圧プレス機、ローラー圧搾機やインライン搾汁機を用いて圧搾し搾汁する方法、パルパー・フィニッシャー等を用いて破砕し搾汁する方法、並びにクラッシャー等を用いて破砕した後、エクストラクター等を用いて搾汁する方法等が挙げられる。さらに、これらの方法に従って圧搾(搾汁)されたものを、所望により、ペクチナーゼやセルラーゼといった酵素処理、ジューサーにかけたり、殺菌を行ったりしてもよい。また、必要に応じて果汁を濃縮してもよく、この場合の濃縮方法としては、例えば、通常の加熱による濃縮、減圧濃縮、低温濃縮、真空濃縮、凍結濃縮、及び逆浸透濃縮等が知られている。果汁の種類も、果実を搾汁して得られる果汁をそのまま使用するストレート果汁、あるいは濃縮した濃縮果汁のいずれの形態であってもよい。また、混濁果汁を使用することもでき、透明果汁を使用してもよい。
【0034】
果汁の性状は、特に限定されず、例えば、液状、ゲル状、ペースト状(擬固体状)、半固体状、固体状のいずれであってもよい。なお、必要に応じて、さらに他の成分(例えば、少量の食塩や香辛料、食品添加物等)を含有していてもよい。
【0035】
なお、果汁の調製は、市販品を入手することによって省略することができる。ストレート果汁/野菜汁、ミックス果汁/野菜汁、ペースト、ピューレ、濃縮ピューレ等が、市販品として入手可能である。ここで、ストレート果汁/野菜汁とは、単一の果実や野菜を搾汁して得られるそのものである。また、ミックス果汁/野菜汁とは、複数の果実や野菜を搾汁して得られるものである。
【0036】
ここで、ストレートジュースとは、JAS規格にて指定されているもの、すなわち果実を搾汁して得られるそのもの、又は、JAS規格により許容されている成分のみが添加されたものである。また、ストレート果汁及び濃縮還元果汁とは、果汁を所定割合で果実を搾汁して得られるものに必要に応じてJAS規格により許容されている成分が添加されたもの及びこれを所定割合で濃縮したものである。JAS規格により許容されている成分としては、例えば、ビタミンC(L-アスコルビン酸、L-アスコルビン酸ナトリウムを含む。)等の抗酸化剤、砂糖、はちみつ、天然香料等が挙げられる。その他、JAS規格外の添加物ではあるが、クエン酸やクエン酸Naなどの酸味料やpH調整剤、酵素、ペクチン等の安定剤、砂糖以外の糖類、合成香料等を使用した果汁等が挙げられる。
【0037】
好ましい態様において、本発明に係る飲料は柑橘果汁を含有する。柑橘類としては、ミカン科ミカン亜科ミカン連(カンキツ連)のミカン属(シトラス)、キンカン属、カラタチ属などに属する植物を挙げることができる。例えば、ミカン、シークヮーサー、ユズ、スダチ、ライム、レモン、カボス、オレンジ、グレープフルーツなどが好ましく、レモン、オレンジ、グレープフルーツが特に好ましい。果汁の種類は、果実を搾汁して得られる果汁をそのまま使用するストレート果汁、あるいは濃縮した濃縮果汁のいずれの形態であってもよい。また、混濁果汁であっても、透明果汁であってもよい。果汁の配合量は特に制限されず、ストレート果汁換算で0.01~50%とすることが好ましく、0.1~40%がより好ましく、0.5~30%がさらに好ましいが、1%以上や3%以上としてもよい。
【0038】
(その他)
本発明に係る飲料は、例えば、キトサンや茶抽出液などに起因する機能を得るための食品として好適に使用され得る。具体的には、本発明に係る飲料を、特定保健用食品、栄養機能食品、老人用食品、特別用途食品、機能性食品とすることもできる。
【0039】
飲料の調製にあたっては、例えば、公知の食品組成物を調製する際に、その原材料に本発明のキトサンを所定量混合して、公知の食品組成物の製造方法に従って調製してもよく、また、既製の公知の食品組成物に、本発明のキトサンを所定量となるように添加することで調製してもよい。添加時期や添加方法については特に限定されるものではない。
【0040】
本発明に係る飲料は、その形態に応じた適当な方法で経口摂取することができる。なお、本明細書において、摂取とは、摂取、服用、又は飲用の全態様を含むものとして用いられる。本発明の飲料の摂取量は、その形態、摂取方法、使用目的、摂取する者の年齢、体重、症状によって適宜設定すればよい。
【0041】
本発明の飲料には、本発明の効果を妨げない範囲で、上記のカテキンに加えて、甘味料、酸味料、果汁や各種添加剤等を配合してもよい。各種添加剤としては、例えば、香料、ビタミン類、色素類、酸化防止剤、乳化剤、保存料、調味料、エキス類、pH調整剤、品質安定剤等を挙げることができる。
【0042】
本発明の飲料は、炭酸ガスを含有する炭酸飲料としてもよいが、非炭酸飲料とすることが好ましい。また、本発明の飲料はアルコール飲料とすることもできるが、非アルコール飲料とすることが好ましい。ここで、非アルコール飲料とは、飲料中のアルコール濃度(エタノール濃度)が1%未満の飲料をいう。
【0043】
本発明の飲料の可溶性固形分濃度は、糖度計や屈折計などを用いて得られるブリックス(Brix)値によって評価することができ、ブリックス値は、20℃で測定された屈折率を、ICUMSA(国際砂糖分析法統一委員会)の換算表に基づいてショ糖溶液の質量/質量パーセントに換算した値で、溶液中の可溶性固形分濃度を表す。単位は「°Bx」、「%」または「度」で表示される。本発明の飲料は、好ましい態様においてブリックス値が0~20%であるが、ブリックス値を10%以下とすることがより好ましく、3%以下や2%以下としてもよい。
【0044】
本発明に係る飲料は、経時的に濁りが発生しにくいため、比較的、色の薄い飲料に適用すると好適である。飲料の色に関しては、光の透過率色差計などを用いて評価することが可能である。飲料の透明度については、例えば、液体の濁度を測定する公知の手法により数値化することができる。好ましい態様において、本発明に係る飲料の濁度として、吸光度を680nmの条件で測定した場合、例えば烏龍茶飲料においては0.3以下であり、0.01以上や0.2以下とすることもできる。
【0045】
好ましい態様において本発明の飲料は、常温で長期保存しても、沈殿が生じにくい飲料である。すなわち、本発明に係る飲料は経時的な沈殿が抑制されており、飲料の外観を長期にわたって均一に維持することができるため、容器詰飲料として好適に提供される。ここでいう容器詰飲料とは、PET容器などの樹脂製容器、缶、瓶、紙容器などの容器に収容した飲料をいう。本発明に係る飲料は、飲料の経時的な沈殿を抑制できるため、一つの態様において透明容器に充填した容器詰飲料とすることが好ましい。
【0046】
本発明に係る容器詰飲料は、常温で長期保存するために、例えば、調合工程で得られた調合液を加熱殺菌処理した後、容器に充填して製造される。加熱殺菌処理は食品衛生法に定められた処理を行えばよく、例えば、PETボトルなどの樹脂製容器などにおいて、UHT殺菌(例えば、調合液を100~150℃で1秒~数十秒保持する)を行うことができる。
【0047】
一つの態様において、本発明は飲料の製造方法と理解することもできる。本発明の飲料は、上記のとおり、キトサンを含有するが、キトサンの含有量が特定の範囲に調整される。例えば、本発明に係る飲料の製造方法は、所定の成分を配合して飲料を調製する工程、飲料のpHを調整する工程、容器に充填する工程などを備えていてよい。好ましい態様において、キトサンとビタミンCを含有する溶液を調製してから、その溶液を配合することによって容器詰飲料を製造することが好ましい。
【0048】
本発明の容器詰飲料は、従来公知の方法を用いて製造することができる。当業者であれば、配合方法、必要に応じ殺菌方法、容器充填方法の条件を、適宜設計することができる。
【0049】
また別の態様において、本発明は飲料における濁りの抑制方法と理解することもできる。本発明の飲料は、上記のとおり、ビタミンCとキトサンを含有するが、キトサンの含有量が特定の範囲に調整される。具体的には、特定量のキトサンとビタミンCを飲料に配合することを含む、飲料における濁りの発生を抑制する方法である。
【実施例】
【0050】
以下、具体的な実験例を示しつつ、本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の具体例に限定されるものではない。また、本明細書において特に記載しない限り、濃度などは重量基準であり、数値範囲はその端点を含むものとして記載される。
【0051】
実験1:烏龍茶飲料の製造と評価
半発酵茶である烏龍茶にキトサンおよびビタミンCを配合して、茶飲料におけるキトサンの凝集しやすさを評価した。
【0052】
具体的には、キトサン(重合度:4000、平均分子量:650kDa)およびビタミンC(ナカライテスク)を含有する溶液を調製した後、この溶液を烏龍茶抽出液に添加して、下表に示す濃度でキトサンとビタミンCを含有する容器詰烏龍茶飲料を製造した(飲料のpH:約5)。
【0053】
次いで、製造した容器詰烏龍茶飲料をボルテックスミキサーで撹拌後、室温にて1時間静置した段階における容器詰烏龍茶飲料について、濁りの有無を目視により評価した。
【0054】
【0055】
調製した容器詰烏龍茶飲料について、濁りの発生を評価した結果を表に示す。キトサン濃度が85ppm以下、ビタミンC濃度が700ppm以下であると濁りが発生せず、烏龍茶飲料におけるキトサンに起因する濁りが効果的に抑制されることが確認できた。
【0056】
実験2:緑茶飲料の製造と評価
非発酵茶である緑茶にキトサンおよびビタミンCを配合して、茶飲料におけるキトサンの凝集しやすさを評価した。
【0057】
具体的には、キトサン(重合度:4000、平均分子量:650kDa)およびビタミンC(ナカライテスク)を含有する溶液を調製した後、この溶液を緑茶抽出液に添加して、下表に示す濃度でキトサンとビタミンCを含有する容器詰緑茶飲料を製造した(飲料のpH:約5)。
【0058】
次いで、製造した容器詰緑茶飲料をボルテックスミキサーで撹拌後、室温にて1時間静置した段階における容器詰緑茶飲料について、濁りの有無を目視により評価した。
【0059】
【0060】
調製した容器詰緑茶飲料について、濁りの発生を評価した結果を表に示す。キトサン濃度が85ppm以下、ビタミンC濃度が700ppm以下であると濁りが発生せず、緑茶飲料におけるキトサンに起因する濁りが効果的に抑制されることが確認できた。
【0061】
実験3:紅茶飲料の製造と評価
発酵茶である紅茶にキトサンおよびビタミンCを配合して、紅茶飲料におけるキトサンの凝集しやすさを評価した。
【0062】
具体的には、キトサン(重合度:4000、平均分子量:650kDa)およびビタミンC(ナカライテスク)を含有する溶液を調製した後、この溶液を紅茶抽出液に添加して、下表に示す濃度でキトサンとビタミンCを含有する容器詰紅茶飲料を製造した(飲料のpH:約5)。
【0063】
次いで、製造した容器詰紅茶飲料をボルテックスミキサーで撹拌後、室温にて1時間静置した段階における容器詰紅茶飲料について、濁りの有無を目視により評価した。
【0064】
【0065】
調製した容器詰茶飲料について、濁りの発生を評価した結果を表に示す。キトサン濃度が85ppm以下、ビタミンC濃度が700ppm以下であると濁りが発生せず、茶飲料におけるキトサンに起因する濁りが効果的に抑制されることが確認できた。
【0066】
実験4:コーヒー飲料の製造と評価
コーヒーにキトサンおよびビタミンCを配合して、コーヒー飲料におけるキトサンの凝集しやすさを評価した。
【0067】
具体的には、キトサン(重合度:4000、平均分子量:650kDa)およびビタミンC(ナカライテスク)を含有する溶液を調製した後、この溶液をコーヒー抽出液に添加して、下表に示す濃度でキトサンとビタミンCを含有する容器詰コーヒー飲料を製造した(飲料のpH:約5)。
【0068】
次いで、製造した容器詰飲料をボルテックスミキサーで撹拌後、室温にて1時間静置した段階における容器詰コーヒー飲料について、濁りの有無を目視により評価した。
【0069】
【0070】
調製した容器詰コーヒー飲料について、濁りの発生を評価した結果を表に示す。キトサン濃度が85ppm以下、ビタミンC濃度が700ppm以下であると濁りが発生せず、飲料におけるキトサンに起因する濁りが効果的に抑制されることが確認できた。
【0071】
実験5:果汁含有飲料の製造と評価
果汁含有飲料にキトサンおよびビタミンCを配合して、飲料におけるキトサンの凝集しやすさを評価した。
【0072】
具体的には、キトサン(重合度:4000、平均分子量:650kDa)およびビタミンC(ナカライテスク)を含有する溶液を調製した後、この溶液を果汁飲料に添加して、下表に示す濃度でキトサンとビタミンCを含有する容器詰果汁含有飲料を製造した。果汁としては、市販のオレンジ果汁(ストレートタイプ、果汁率:100%、ビタミンC濃度:320ppm)を使用し、水で希釈することによって、果汁率が10%または30%の果汁含有飲料を製造した(飲料のpH:約3.5)。
【0073】
次いで、製造した容器詰飲料をボルテックスミキサーで撹拌後、室温にて1時間静置した段階における容器詰果汁含有飲料について、濁りの有無を目視により評価した。
【0074】
【0075】
【0076】
調製した容器詰果汁含有飲料について、濁りの発生を評価した結果を表に示す。キトサン濃度が85ppm以下、ビタミンC濃度が700ppm以下であると濁りが発生せず、果汁含有飲料におけるキトサンに起因する濁りが効果的に抑制されることが確認できた。なお、発生した濁りは、果実由来ペクチン等の複合多糖類がキトサンと凝集したものだと考えられる。