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特許7182436クローラ走行装置用ガイド及びそれを用いたクローラ走行装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】クローラ走行装置用ガイド及びそれを用いたクローラ走行装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 55/253 20060101AFI20221125BHJP
【FI】
B62D55/253 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018222146
(22)【出願日】2018-11-28
(65)【公開番号】P2020083129
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】下薗 靖夫
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-011782(JP,U)
【文献】実開昭53-147043(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 55/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体に取付けられ、無端帯状のクローラに埋設された芯金の突起部に当接されて該クローラをその幅方向に案内するクローラ走行装置用ガイドにおいて、
前記芯金の突起部に当接する当接部と、前記機体に取付られる取付部と、前記当接部及び取付部間に介装された緩衝部とを有し、
前記当接部が硬質部材で構成され、且つ前記緩衝部が弾性部材で構成されており、
前記当接部には、前記緩衝部の配設部分から外表面に向けて凹陥部が形成され、前記緩衝部の弾性部材は、前記当接部の前記凹陥部内に入り込んでいることを特徴とするクローラ走行装置用ガイド。
【請求項2】
前記取付部が硬質部材で構成されたことを特徴とする請求項1に記載のクローラ走行装置用ガイド。
【請求項3】
前記緩衝部の配置は、前記芯金と接触しない状態が確保されるように設定されたことを特徴とする請求項1又は2に記載のクローラ走行装置用ガイド。
【請求項4】
前記取付部は、前記当接部が前記クローラの周方向と直交する断面視で2つの前記突起部間である芯金凹部内を通過するように前記機体に取付けられ、前記緩衝部は、前記当接部の前記芯金凹部内を通過する部分の内側部分に配設されたことを特徴とする請求項3に記載のクローラ走行装置用ガイド。
【請求項5】
請求項1乃至の何れか1項に記載のクローラ走行装置用ガイドが、内部に芯金が埋設された無端帯状のクローラの機体に取付けられたクローラ走行装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クローラ走行装置用ガイド及びクローラ走行装置、特に無端帯状のクローラ内部に芯金が設けられると共に、その芯金をクローラの幅方向に案内するガイドが機体に取付けられたクローラ走行装置に関する。
【背景技術】
【0002】
クローラ、特に弾性クローラは例えばゴム製の無限軌道帯であり、最初に農業機器の足廻り部品として開発されて以来、活発な研究・開発が行われ、現在では様々の用途に普及拡大し、その構成・種類も多岐に亘っている。クローラ走行装置に用いられるクローラは、例えばスプロケットなどの駆動輪で駆動され、遊動輪や転輪に掛け回されて周方向に巻回する。このクローラ走行装置を例えばコンバインなどの農業機器に用いる場合、例えば、クローラの強度を向上するために、クローラの幅方向に伸長する芯金をクローラの周方向に所定のピッチで埋設する場合がある。芯金は、一般に、鋼製である。
【0003】
一方、農業機器が不整地を走行する場合や、旋回する場合などでは、クローラ走行装置のクローラに幅方向への力が作用し、クローラが遊動輪や転輪などの車輪から外れてしまうおそれがある。そこで、下記特許文献1では、周方向に巻回するクローラの幅方向に上記芯金を案内するガイドが機体に取付けられている。より具体的には、芯金には、クローラの内周面に突出する二つの爪状突起部がクローラの幅方向に並んで突設され、それら突起部間の凹部内にガイドを通過させるようにしてクローラを幅方向に案内する。ガイドは、例えば鋼で構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-100081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記ガイドは、クローラの芯金と衝突してしまうので、両者が摩耗しやすいという問題がある。しかも、両者の摩耗が進行するほど衝突量が大きくなり、摩耗の進度が大きくなる。ガイドやクローラの芯金の摩耗が進行すると、クローラを幅方向に案内する機能が損なわれてしまう。特に、例えばガイドは交換型とすることができるが、芯金はクローラの内部に埋設されているため、芯金の摩耗が進むと、クローラそのものを交換しなければならない。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、クローラの芯金は勿論、ガイド自体の摩耗も低減することが可能なクローラ走行装置用ガイド及びクローラ走行装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため請求項1に記載のクローラ走行装置用ガイドは、
機体に取付けられ、無端帯状のクローラに埋設された芯金の突起部に当接されて該クローラをその幅方向に案内するクローラ走行装置用ガイドにおいて、
前記芯金の突起部に当接する当接部と、前記機体に取付られる取付部と、前記当接部及び取付部間に介装された緩衝部とを有し、前記当接部が硬質部材で構成され、且つ前記緩衝部が弾性部材で構成されており、前記当接部には、前記緩衝部の配設部分から外表面に向けて凹陥部が形成され、前記緩衝部の弾性部材は、前記当接部の前記凹陥部内に入り込んでいることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、ガイドの当接部が硬質部材となっており、芯金の突起部との接触は、硬質部材同士の接触状態が確保されるので、確実にクローラを幅方向に案内することができる。その一方、このガイドの当接部と芯金の突起部が衝突した場合には、緩衝部が弾性変形することで、その衝撃力が低減され、緩衝される。したがって、クローラ幅方向の案内作用の安定性を維持しつつ、衝撃低減によるガイド及び芯金の摩耗の低減を図ることができる。
また、この構成によれば、緩衝部の弾性部材が当接部の凹陥部内に入り込んでいる分だけ、弾性部材と当接部との接触面積が増大し、その分だけ、両者の接合力が増大する。これにより、当接部と芯金の突起部との衝突で、当接部と弾性部材に曲げ力や剪断力が作用した場合でも、両者が外れたり剥がれたりしてしまうのを防止することが可能となる。
【0009】
請求項2に記載のクローラ走行装置用ガイドは、請求項1に記載のクローラ走行装置用ガイドにおいて、前記取付部が硬質部材で構成されたことを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、ガイドの硬質な取付部にねじなどの連結構造を設けることができ、この連結構造を介して機体との脱着を可能とすると共に、ガイドが摩耗した場合には、これを交換可能とすることもできる。
【0011】
請求項3に記載のクローラ走行装置用ガイドは、請求項1又は2に記載のクローラ走行装置用ガイドにおいて、前記緩衝部の配置は、前記芯金と接触しない状態が確保されるように設定されたことを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、摩耗に対しては耐久性が低いと考えられる緩衝部が走行中に芯金と接触しないので、ガイド全体としての耐摩耗性を確保することが可能となる。
【0013】
請求項4に記載のクローラ走行装置用ガイドは、請求項3に記載のクローラ走行装置用ガイドにおいて、前記取付部は、前記当接部が前記クローラの周方向と直交する断面視で2つの前記突起部間である芯金凹部内を通過するように前記機体に取付けられ、前記緩衝部は、前記当接部の前記芯金凹部内を通過する部分の内側部分に配設されたことを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、ガイドの当接部が2つの突起部間の芯金凹部内を通過する場合、当接部は芯金凹部の底部及び両側部と接触可能な配置となっている。これに対し、緩衝部は、当接部のうち、芯金凹部内を通過する部分の内側部分に配設されているので、この緩衝部が芯金凹部を構成する芯金部分と接触するのを確実に回避することができる。
【0017】
請求項に記載のクローラ走行装置は、請求項1乃至の何れか1項に記載のクローラ走行装置用ガイドが、内部に芯金が埋設された無端帯状のクローラの機体に取付けられて構成される。
【0018】
この構成によれば、クローラを幅方向に安定して案内することができると共に、ガイド及び芯金の摩耗を低減することができ、特にクローラの短寿命化を防止することができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明によれば、クローラ幅方向への案内作用の安定性を維持しながら、ガイド及び芯金の摩耗を低減することができ、特にクローラの交換サイクルを延長することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明のクローラ走行装置用ガイド及びクローラ走行装置の一実施の形態を示す機体取付状態の正面図である。
図2図1のクローラのA-A断面図である。
図3図1のガイドの詳細図である。
図4図3のガイドの第1変形例を示すクローラ幅方向直交断面図である。
図5図3のガイドの第2変形例を示すクローラ幅方向直交断面図である。
図6図3のガイドの第3変形例を示すクローラ幅方向直交断面図である。
図7図3のガイドの第4変形例を示すクローラ幅方向直交断面図である。
図8】本発明のクローラ走行装置用ガイド及びクローラ走行装置の他の実施の形態を示す機体取付状態の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明のクローラ走行装置用ガイド及びクローラ走行装置の一実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、この実施の形態のクローラ走行装置をフレーム(機体)12に取付けた状態の正面図である。この実施の形態のクローラ走行装置に用いられるクローラ10は、例えばコンバインなどの自走式農業機器の足廻り部品として用いられるゴム製の無限軌道帯である。このクローラ10は、駆動輪14及び遊動輪16を両端(進行方向前後端)として掛け回されている。
【0022】
駆動輪14は、例えば歯車型のスプロケットであり、図示しない駆動源によって回転駆動される。この駆動輪14は、スプロケット本体部14aを回転軸14bで図示しない駆動源に連結して構成されている。また、遊動輪16は、円板状本体部16aを回転軸16bで回転自在に支持して構成されている。駆動輪14と遊動輪16の間の下部、つまり移動路面側には、複数の、図では6つの転輪18が配置されている。この転輪18は、2枚のフランジ部18aを回転軸18bで連結して構成されている。なお、クローラ10(クローラ本体部28)の外周面28bには、クローラ本体部28の略幅方向に伸長するラグ42が周方向に等間隔で突出形成されているのであるが、図1では、その一部分のみを図示し、全体の外形を二点鎖線で示している。
【0023】
図2は、図1のクローラ10のA-A断面図である。無限軌道帯であるクローラ10の主体は、無端帯状のゴム製のクローラ本体部28によって構成されている。この無端帯状のクローラ本体部28内には、図2の一点鎖線の位置において、クローラ本体部28の周方向に沿って多数のスチールコード24が平行に埋設されている。また、クローラ本体部28の内周面28aには、クローラ本体部28の幅方向中央部において、例えば図2に示すような爪状の突起部34が突出形成されている。この爪状突起部34は、例えば図2の左右方向、つまりクローラ本体部28の幅方向に並ぶ2個一対のゴム被覆爪状突起からなる。この爪状突起部34は、前述した歯車型の駆動輪14の歯と噛合するものであり、同時に転輪18の2枚のフランジ部18間に挟まるようにして、それら転輪18を案内する。従って、クローラ本体部28の内周面28aのうち、この爪状突起部34のクローラ本体部幅方向両側には、夫々、一条ずつ、転輪18の二枚のフランジ部18aの夫々が当接(回転)して通過する転輪通過面30がクローラ本体部28の周方向に連続して形成されている。つまり、転輪通過面30は、夫々がクローラ本体部周方向に連続した状態でクローラ本体部28の幅方向に所定間隔をおいてクローラ本体部28の内周面28aに二条形成されている。
【0024】
この爪状突起部34は、図1に示すように、クローラ本体部28の周方向に等間隔に配設され、それら突起部34の位置には、図2に示すように、芯金32が配設されている。この芯金32は、クローラ本体部28の幅方向両側に向けて左右の両翼部を有し、幅方向中央部には爪状突起部34に内包される突部が形成されている。つまり、爪状突起部34は、実質的に芯金32の突部と同体である。芯金32は、通常、鋼製である。また、このクローラ本体部28の外周面28bには、同じくゴム製のラグ42がクローラ本体部28と一体的に突出形成されている。これらのラグ42は、移動路面に作用するもの、例えば泥濘などの不整地を掻くものであり、クローラ本体部28の周方向に所定の間隔をあけて、具体的には内周面28a側の爪状突起部34に対向する位置でクローラ本体部28の外周面28bから突出形成されている。なお、後述するように、この実施の形態では、上記2つの爪状突起部34間の芯金凹部35内にガイド20を通過させて、芯金32をクローラ本体部幅方向に案内する。この実施の形態のクローラ本体部幅方向は実質的にクローラ20の幅方向と同意であり、同様にクローラ本体部周方向はクローラ周方向と同意である。
【0025】
クローラ10は、前述したスチールコード24や芯金32を内包するようにして全体にゴム材料で構成され、爪状突起部34やラグ42がクローラ本体部28と一体的に形成されている。このようなゴム材料としては、例えば耐候性に優れたエチレン-プロピレン-ジエンゴムを配合したゴム材料が適用可能である。また、ゴム材料の硬度、所謂ゴム硬度を規定する場合には、JIS K6253に定義されるデュロメータ硬さ試験に従い、タイプA試験機を用いて、20℃の室温条件下で測定された硬度とする。
【0026】
前述したように、この実施の形態では、クローラ本体部内周面28a側の爪状突起部34に対向するようにして、クローラ本体部28の外周面28bからラグ42が突出形成されている。これらラグ42は、クローラ本体部幅方向中央部に設けられた離間部36によってクローラ本体部幅方向両側に分割されている。この離間部36は、底部がクローラ本体部28の外周面28bに位置するため、クローラ本体部幅方向両側のラグ42は、クローラ本体部28自身によって連結されている箇所を除いて、何れも完全に離間されている。このようにすることで、クローラ本体部28の幅方向に平行で且つクローラ本体部28の周方向と直交する断面における離間部36の断面積(即ち空間)を大きくすることができ、その結果、泥濘などの不整地移動時、ラグ42によって移動路面から切り取られる泥の量(体積)を低減し、例えばクローラ本体部周方向に隣り合うラグ42間に詰まろうとする泥の量を低減する効果、つまり泥離れ性の向上が期待できる。コンバインでは、この離間部のないものもある。
【0027】
図3は、この実施の形態におけるガイド20の詳細図であり、図3(A)は正面断面図、図3(B)は側面断面図であり、側面断面図はクローラ本体部周方向直交断面を表す。このガイド20は、図1に示すように、移動路面側下端部において、例えば転輪18の間でフレーム(機体)12に取付けられている。具体的には、フレーム12から下方に突設したブラケット44に移動路面と平行な取付板部材46を固設し、この取付板部材46の下面、即ちクローラ本体部28の内周面側にガイド20をボルト48で取付けている。この実施の形態のガイド20は、上記芯金32の爪状突起部34の間の芯金凹部35内を通過するクローラ本体部周方向直交断面を有し、且つクローラ本体部周方向に長い、舟形形状である。なお、ガイド20と爪状突起部34の間には所定の隙間ができるように、両者の寸法(大きさや形状)が設定されている。
【0028】
この実施の形態のガイド20は、図3の上下方向に三層構造となっており、図の最下層(クローラ10側)が当接部21、図の最上層(フレーム12側)が取付部23で、両者の間に緩衝部22が介装されている。当接部21は、芯金32の爪状突起部34をクローラ本体部幅方向に案内するものであり、実質的に、この当接部21が爪状突起部34(芯金32)に接触(衝突)する。そのため、当接部21は、比較的耐摩耗性の高い、硬質な材料(硬質部材)で構成される。しかし、後述のように、クローラ10の交換サイクルを延長するためには、芯金32の耐摩耗性よりも少し耐摩耗性の低い材料が好適な場合もある。例えば、コストや製作性から最も多用される硬質部材は鋼材であるが、その他の金属を始め、硬質な樹脂材料などを適用することもできる。硬質部材は剛性部材であってもよい。なお、上記三層構造の最下層に位置する当接部21の上端位置は爪状突起部34の上端位置より高くして、後述する緩衝部22が爪状突起部34に直接的に接触(衝突)しないようにするのが望ましい。
【0029】
また、この実施の形態では、取付部23に雌ねじ23aを形成し、この雌ねじ23aに、取付板部材46を貫通したボルト48の雄ねじ48aを螺合し締め付けて、ガイド20を取付板部材46に固定して取付けている。そのため、取付部23も比較的硬質な材料(硬質部材)で構成される。この取付部23に使用される硬質部材も、コストや製作性から鋼材が多用されるが、その他の金属を始め、硬質な樹脂材料などを適用することもできる。なお、取付部23の機体取付構造は、例えば取付部23にスタッドボルトを固定し、このスタッドボルトにナットを螺合し締付けるようにしてもよい。その他の取付構造も可能であるが、何れの場合も、ガイド20をフレーム12に堅固に取付けるためには、取付部23は硬質(剛性)である必要がある。
【0030】
この実施の形態では、最下層の当接部21と最上層の取付部23の間に、緩衝部22が層状に介装されている。この緩衝部22は、弾性部材で構成され、ガイド20の当接部21が芯金32の爪状突起部34に衝突したときの衝撃力を減衰・吸収することで低減又は緩衝するものである。この緩衝部22には、種々の弾性機能を有する材料が適用可能であるが、コストや製作性から最も多用されるのはゴム材料である。こうしたゴム材料には、例えば車両のエンジンマウントなどに用いられる防振ゴムが適切であると考えられ、具体的には、天然ゴムやスチレンゴム、クロロブレンゴムなどが適用可能である。その他のゴム材料を始め、弾性を有する樹脂材料なども適用可能である。例えば、ゴム材料からなる緩衝部22を当接部21及び取付部23と接合するには、硬質部材からなる当接部21及び取付部23を型内にセットした後、加硫したゴム材料を型内に注入して固化することで実現できる。
【0031】
例えば図3(B)から推察されるように、クローラ本体部幅方向へのクローラ10の移動(揺れ)に伴って、当接部21に芯金32の爪状突起部34がクローラ本体部幅方向に衝突すると、当接部21と取付部23の間に介在する緩衝部22には、曲げ力や剪断力が作用する。緩衝部22は、この曲げ力や剪断力を吸収・減衰すると共に、これらの曲げ力や剪断力に抗して当接部21及び取付部23と接合し続ける必要がある。例えば、緩衝部22がゴム材料である場合には、作用する曲げ力や剪断力を吸収・減衰する性能と、これらに抗する当接部21及び取付部23との接着力が要求される。そうした意味合いから、緩衝部22に適用されるゴム材料には、同様の性能及び接着力が要求される、エンジンマウントなどの防振ゴムが適応する。
【0032】
この実施の形態のガイド20は、ボルト48によってフレーム12に取付けられているので、ガイド20、特に当接部21が摩耗して、クローラ10の案内性が低下したら、ボルト48を緩めてガイド20を取り外し、新規のガイド20と交換するようにしてもよい。このようにガイド20を交換可能とした場合、前述のように、芯金32が埋設されたクローラ10を交換するよりも、ガイド20を交換した方が、コスト面でも作業面でも有利である。その場合には、芯金32の耐摩耗性を高めてクローラ10の交換サイクルを延長することが望まれるので、ガイド20の当接部21の耐摩耗性を芯金32の耐摩耗性よりも少し低く設定するとよい。
【0033】
図4には、図3のガイド20の第1変形例を示す。同図は、図3(B)と同じく、クローラ本体部周方向直交断面であり、二点鎖線で示す(爪状突起部34、芯金凹部35を表す)クローラ10を除き、ガイド20のみの断面を示す。この変形例も、当接部21、取付部23、緩衝部22が層状に配置されているが、この例では、最下層の当接部21と最上層の取付部23の間に緩衝部22が三層に形成され、各緩衝部22の層の間には仕切り板48が介装されて相互に固着されている。このように緩衝部22を複層とすることにより、例えば各層の緩衝部22の機能を相違させることが可能となる。その結果、例えば、1つの層の緩衝部22は減衰性に優れ、他の層の緩衝部22は変形性に優れるといったように、各層の緩衝部22の機能を特化して、全体として、芯金32との衝突力を効率よく吸収・減衰させることが可能となる。なお、当接部21や取付部23の構成部材(材料)は、図3のものと同様とした。
【0034】
図5は、図3のガイド20の第2変形例を示すクローラ本体部周方向直交断面であり、図4と同様に、二点鎖線で示す(爪状突起部34、芯金凹部35を表す)クローラ10を除き、ガイド20のみの断面を示す。この変形例では、図3図4と比較して、ガイド20の上下方向寸法、すなわち高さに対して、爪状突起部34の高さが相対的に大きくなっており、爪状突起部34はガイド20の図示上端近傍まで接触する可能性がある。また、ガイド20の当接部21は、ガイド20の舟形断面形状の底面と両側面を覆う舟形断面形状となっており、それらの面、すなわち芯金32の芯金凹部35を通過する部分の内側部分に収納凹部25が形成されている。この収納凹部25は、当接部21の舟形断面形状と略相似な舟形断面形状な空間であり、この収納凹部25の内部には、収納凹部25の舟形断面形状と略相似な舟形断面形状の取付部23が挿入されている。この取付部23は、収納凹部25の底面及び両側面との間に所定の隙間ができるようにして配設され、この取付部23と収納凹部25の隙間に緩衝部22が配設されて相互に固着している。すなわち、緩衝部22の形状も、当接部21の収納凹部25の底面と両側面を覆う形状となっており、その結果、緩衝部22は、当接部21のうち、上記芯金凹部35を通過する部分の内側部分に配設されている。なお、当接部21及び取付部23の構成部材(材料)、並びに緩衝部22(材料)は、図3のものと同様とした。
【0035】
2つの爪状突起部34の間に形成された芯金凹部35内にガイド20を通過させて案内する場合、ガイド20は芯金凹部35(=芯金32)の底面及び両側面と接触(衝突)可能な配置となっている。従って、硬質(剛性)部材で構成される当接部21は、芯金凹部35と接触するガイド20の底面及び両側面を覆う舟形断面形状とした。更に、前述のように、緩衝部22は、爪状突起部34を含めて芯金32と接触しないことが望ましいので、当接部21の芯金32を案内する部分の内側部分に収納凹部25を形成し、その内部に緩衝部22を配設する。このとき、芯金凹部35、すなわち芯金34との接触で作用する衝撃力は、当接部21の底面及び両側面に作用するので、その反対側、即ち舟形断面形状の収納凹部25の底面及び両側面に緩衝部22が介装されるように、それらの部分に取付部23との間の隙間ができるようにし、その隙間に緩衝部22を充填するようにして層状に形成する。なお、この様式のガイド20は、必ずしも芯金凹部35を形成する爪状突起部34がガイド20の上端部近傍まで接触する可能性のないもの、具体的には図3(B)のような場合にも同様に使用することができる。
【0036】
図6は、図3のガイド20の第3変形例を示すクローラ本体部周方向直交断面であり、図4と同様に、二点鎖線で示す(爪状突起部34、芯金凹部35を表す)クローラ10を除き、ガイド20のみの断面を示す。この変形例における当接部21、取付部23、及び緩衝部22の基本的な構造は、図5のものと同様である。この変形例の図5との相違は、舟形断面形状の当接部21の底部及び両側部に、上記収納凹部25から当接部21の外表面に向けて貫通穴(例えば円孔)26が凹陥部として形成され、その貫通穴26の内部にも緩衝部22の弾性部材が入り込んでいる点である。貫通穴26は、当接部21の外表面に開口しているので、緩衝部22の弾性部材も当接部21の外表面に到達しているが、それより外側にはみ出してはいない。そのため、緩衝部22の弾性部材が芯金凹部35の周りの芯金32(爪状突起部34を含む)と積極的に接触(衝突)することはない。
【0037】
このように緩衝部22の弾性部材が貫通穴26内に入り込むと、図5のように、貫通穴がなく、層状に介装された緩衝部22と比べて、緩衝部22と当接部21の接触面積が増加し、その分だけ、両者の接着力が増大する。前述のように、当接部21と取付部23を連結する機能を有する緩衝部22には、芯金32との接触(衝突)の際、曲げ力や剪断力が作用する。緩衝部22そのものが、こうした曲げ力や剪断力に抗して切れたり折れたりしてはならないが、緩衝部22と当接部21が剥がれてもならない。緩衝部22と当接部21の接着力が増大すれば、芯金32との衝突に伴う曲げ力や剪断力に抗して、両者の剥がれが防止される。
【0038】
図7は、図3のガイド20の第4変形例を示すクローラ本体部周方向直交断面であり、図4と同様に、二点鎖線で示す(爪状突起部34、芯金凹部35を表す)クローラ10を除き、ガイド20のみの断面を示す。この変形例における当接部21、取付部23、及び緩衝部22の基本的な構造は、図6のものと同様である。この変形例の図6との相違は、上記凹陥部が、貫通穴でなく、窪み27になっている点である。この窪み27は、局所的又は部分的に設けられていてもよいが、例えば図の紙面垂直方向に連続する溝状であってもよい。前述のように、緩衝部22の弾性部材は、爪状突起部34を含めて芯金32と直接的に接触(衝突)しない方がよい。図6の変形例も、緩衝部22の弾性部材が当接部21の外部にはみ出ているわけではないから、緩衝部22が芯金32と積極的に衝突することはない。しかしながら、ガイド20の当接部21の外表面は、外部に露出しているので、場合によっては、小石などの硬いものが図6の緩衝部22に衝突し、それにより緩衝部22の弾性部材が損傷することもあり得る。そこで、この変形例では、緩衝部22の弾性部材が外部に露出しないように、凹陥部を当接部21の外表面に到達しない形態とした。これにより、緩衝部22の弾性部材が硬いものに衝突して損傷するのを回避することができる。もちろん、図6の変形例と同様に、緩衝部22と当接部21の接触部が増加する分、両者の接着力も増大し、剥がれが防止される。
【0039】
このように、この実施の形態のクローラ走行装置用ガイドでは、ガイド20の当接部21が硬質部材となっており、芯金32の突起部34との接触は、硬質部材同士の接触状態が確保されるので、確実にクローラ10を幅方向に案内することができる。その一方、このガイド20の当接部21と芯金32の突起部34が衝突した場合には、緩衝部22が弾性変形することで、その衝撃力が低減され、緩衝される。したがって、クローラ幅方向の案内作用の安定性を維持しつつ、衝撃低減によるガイド20及び芯金32の摩耗の低減を図ることができる。
【0040】
また、ガイド20の硬質な取付部23に雌ねじ23aなどの連結構造を設けることができ、この連結構造を介してフレーム12との脱着を可能とすると共に、ガイド20が摩耗した場合には、これを交換可能とすることもできる。
【0041】
また、芯金32と接触しない状態が確保されるように緩衝部22を配置したことにより、摩耗に対しては耐久性が低いと考えられる緩衝部22が走行中に芯金32と接触しないので、ガイド20全体としての耐摩耗性を確保することが可能となる。
【0042】
また、ガイド20の当接部21が2つの突起部34間の芯金凹部35内を通過する場合、当接部21は芯金凹部35の底部及び両側部と接触する可能性があるが、緩衝部22は、芯金凹部35内を通過する部分の内側部分に形成された収納凹部25の内部に配設されているので、この緩衝部22が芯金凹部35と接触するのを回避することができる。
【0043】
また、当接部21の収納凹部25から外表面に向けて貫通穴26や窪み27などの凹陥部を形成し、その内部に緩衝部22の弾性部材を入り込ませることにより、緩衝部22が当接部21の凹陥部内に入り込んでいる分だけ、緩衝部22と当接部21との接触面積が増大し、その分だけ、両者の接合力が増大する。したがって、当接部21と芯金32の衝突で、当接部21と緩衝部22に曲げ力や剪断力が作用した場合でも、両者が外れたり剥がれたりしてしまうのを防止することが可能となる。
【0044】
以上、実施の形態に係るクローラ走行装置用ガイド及びクローラ走行装置について説明したが、本件発明は、上記実施の形態で述べた構成に限定されるものではなく、本件発明の要旨の範囲内で種々変更が可能である。例えば、図5の変形例に図4の変形例を組合せて、図5では1層の緩衝部22が複数層、形成されるようにすることも可能である。
【0045】
また、上記実施の形態では、ガイド20の外形を2つの爪状突起部34の間の芯金凹部35に適合したが、このガイド20の外形、特にクローラ本体部周方向直交断面形状は、ガイド20が案内する芯金の形状に合わせて適宜に設定することができる。
【0046】
また、本発明のクローラ走行装置は、コンバイン以外の機器にも同様に使用可能である。例えば、図8には、トラクタの駆動系主要部を示す。図中の符号は、図1と同様であり、クローラ10の内周面側にガイド20が設けられている。このガイド20も、上記図3図7のものを同様に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0047】
10 クローラ
12 フレーム(機体)
20 ガイド
21 当接部
22 緩衝部
23 取付部
25 収納凹部
26 貫通穴(凹陥部)
27 窪み(凹陥部)
32 芯金
35 芯金凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8