(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】モータ一体型ファン及び垂直離着陸機
(51)【国際特許分類】
F04D 29/58 20060101AFI20221125BHJP
B64C 27/16 20060101ALI20221125BHJP
B64C 29/00 20060101ALI20221125BHJP
B64D 27/24 20060101ALI20221125BHJP
F04D 29/32 20060101ALI20221125BHJP
F04D 29/38 20060101ALI20221125BHJP
H02K 7/14 20060101ALI20221125BHJP
H02K 9/06 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
F04D29/58 P
B64C27/16
B64C29/00 A
B64D27/24
F04D29/32 B
F04D29/38 A
H02K7/14 A
H02K9/06 F
(21)【出願番号】P 2018233717
(22)【出願日】2018-12-13
【審査請求日】2021-10-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢島 俊秀
(72)【発明者】
【氏名】漆間 統
(72)【発明者】
【氏名】高垣 昭宏
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/005776(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0219844(US,A1)
【文献】実公昭14-004950(JP,Y1)
【文献】特開2013-079606(JP,A)
【文献】国際公開第2017/122406(WO,A1)
【文献】特開2015-165127(JP,A)
【文献】実開昭55-114399(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/58
B64C 27/16
B64C 29/00
B64D 27/24
F04D 29/32
F04D 29/38
H02K 7/14
H02K 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸込口から空気を吸い込み、吸い込んだ空気を吹出口から吹き出すモータ一体型ファンにおいて、
回転軸の中心に設けられる軸部と、
前記軸部を中心に回転する回転部と、
前記軸部の外周に設けられる外周部と、
前記回転部を回転させるモータと、
前記モータの作動により発熱する発熱部と、
前記発熱部を冷却空気により冷却する冷却部と、を備え、
前記冷却部は、
前記冷却空気を取り込む空気取込口と、
前記冷却空気を排出する空気排出口と、
前記空気取込口から前記発熱部を経て前記空気排出口までに至る冷却流路と、を含み、
前記空気排出口は、前記空気取込口に比して圧力が負圧となる位置に設けられ
、
前記発熱部及び前記冷却部は、前記外周部に設けられ、
前記空気取込口は、前記外周部の外周面に設けられ、
前記空気排出口は、前記外周部の外周面に設けられると共に、前記空気取込口に比して前記吸込口側に設けられるモータ一体型ファン。
【請求項2】
前記冷却流路は、前記空気取込口から前記空気排出口まで直線状となる流路である請求項
1に記載のモータ一体型ファン。
【請求項3】
前記空気取込口は、前記空気排出口に比して開口面積が大きい請求項1
または2に記載のモータ一体型ファン。
【請求項4】
前記空気取込口は、複数の孔を含む請求項1から
3のいずれか1項に記載のモータ一体型ファン。
【請求項5】
前記空気取込口は、長手方向に延在するスリットを含む請求項1から
3のいずれか1項に記載のモータ一体型ファン。
【請求項6】
前記空気排出口は、前記空気排出口が形成される部位の表面から突き出して設けられる請求項1から
5のいずれか1項に記載のモータ一体型ファン。
【請求項7】
滞留する前記冷却空気に流れを付与する空力デバイスを、さらに備え、
前記空力デバイスは、前記空気取込口、前記空気排出口及び前記冷却流路の少なくともいずれかに設けられる請求項1から
6のいずれか1項に記載のモータ一体型ファン。
【請求項8】
前記発熱部からの熱エネルギーを電気エネルギーに変換して、前記空力デバイスに電力を供給する熱電変換素子を、さらに備え、
前記熱電変換素子は、前記発熱部側に設けられる高温部と、前記高温部に比して低温となる部位に設けられる低温部と、を有する請求項
7に記載のモータ一体型ファン。
【請求項9】
請求項1から
8のいずれか1項に記載のモータ一体型ファンと、
前記モータ一体型ファンから発生する推力によって移動する機体と、を備える垂直離着陸機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却流路を備えたモータ一体型ファン及び垂直離着陸機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、UAV(無人航空機)に設けられるファンにより発生する空気流を用いて、ファンに配置される機器を冷却するUAVの冷却システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。ファンは、ダクテッドファンであり、ファン軸、ファンブレード及びファンモータを有している。この冷却システムでは、ファンブレードにより発生する空気流を利用して、機器を除熱している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の冷却システムでは、機器の冷却に際し、ファンにより発生する空気流を利用することから、空気流が利用された分、ファンから得られる推力が低減してしまう。なお、機器を空気冷却するために、ファンの外部に送風機を設けることも考えられるが、送風機を設けることで、送風機を作動させるための外部電源も設ける必要があるため、ファン周りの構成が大型化してしまう。
【0005】
そこで、本発明は、ファン性能の低減を抑制しつつ、発熱部の除熱を好適に行うことができる冷却流路を備えたモータ一体型ファン及び垂直離着陸機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のモータ一体型ファンは、吸込口から空気を吸い込み、吸い込んだ空気を吹出口から吹き出すモータ一体型ファンにおいて、回転軸の中心に設けられる軸部と、前記軸部を中心に回転する回転部と、前記軸部の外周に設けられる外周部と、前記回転部を回転させるモータと、前記モータの作動により発熱する発熱部と、前記発熱部を冷却空気により冷却する冷却部と、を備え、前記冷却部は、前記冷却空気を取り込む空気取込口と、前記冷却空気を排出する空気排出口と、前記空気取込口から前記発熱部を経て前記空気排出口までに至る冷却流路と、を含み、前記空気排出口は、前記空気取込口に比して圧力が負圧となる位置に設けられる。
【0007】
この構成によれば、空気取込口に対する空気排出口の負圧を利用して、空気取込口から冷却空気を取り込み、発熱部を通過した後の冷却空気を、空気排出口から排出することができる。このため、冷却空気により発熱部の除熱を好適に行うことができる。また、空気取込口に対する空気排出口の負圧を利用することから、ファン性能の低減を抑制することができる。なお、発熱部は、モータであってもよいし、モータ以外のものであってもよく、特に限定されない。
【0008】
また、前記発熱部及び前記冷却部は、前記外周部に設けられ、前記空気取込口は、前記外周部の外周面に設けられ、前記空気排出口は、前記外周部の内周面に設けられると共に、前記吸込口から前記吹出口へ向かって流れる空気の流れ方向において、前記回転部の上流側に設けられることが、好ましい。
【0009】
この構成によれば、発熱部が外周部に設けられる場合、冷却部は、大気圧となる外周部の外周面から空気を取り込み、圧力が低くなる回転部の上流側における外周部の内周面から空気を排出することができる。このため、空気取込口と空気排出口との圧力差が大きくなる位置に、空気取込口及び空気排出口を設けることができることから、冷却流路において冷却空気を好適に流通させることができる。
【0010】
また、前記発熱部及び前記冷却部は、前記外周部に設けられ、前記空気取込口は、前記外周部の内周面に設けられると共に、前記吸込口から前記吹出口へ向かって流れる空気の流れ方向において、前記回転部の下流側に設けられ、前記空気排出口は、前記外周部の内周面に設けられると共に、前記流れ方向において、前記回転部の上流側に設けられることが、好ましい。
【0011】
この構成によれば、発熱部が外周部に設けられる場合、冷却部は、外周部の内周面から空気を取り込み、外周部の内周面から空気を排出することができる。このため、外周部の外周面に、空気取込口及び空気排出口を設けることが困難である場合であっても、空気取込口と空気排出口との間に圧力差を生じさせることができるため、冷却流路において冷却空気を好適に流通させることができる。
【0012】
また、前記発熱部及び前記冷却部は、前記外周部に設けられ、前記空気取込口は、前記外周部の外周面に設けられ、前記空気排出口は、前記外周部の外周面に設けられると共に、前記空気取込口に比して前記吸込口側に設けられることが、好ましい。
【0013】
この構成によれば、発熱部が外周部に設けられる場合、冷却部は、外周部の外周面から空気を取り込み、外周部の外周面から空気を排出することができる。このため、外周部の内周面に、空気取込口及び空気排出口を設けることが困難である場合であっても、空気取込口と空気排出口との間に圧力差を生じさせることができるため、冷却流路において冷却空気を好適に流通させることができる。
【0014】
また、前記発熱部及び前記冷却部は、前記軸部に設けられ、前記空気取込口は、前記軸部の外周面に設けられると共に、前記吸込口から前記吹出口へ向かって流れる空気の流れ方向において、前記回転部の下流側に設けられ、前記空気排出口は、前記軸部の外周面に設けられると共に、前記流れ方向において、前記回転部の上流側に設けられることが、好ましい。
【0015】
この構成によれば、発熱部が軸部に設けられる場合、冷却部は、軸部の外周面から空気を取り込み、軸部の外周面から空気を排出することができる。このため、軸部に発熱部がある場合であっても、空気取込口と空気排出口との間に圧力差を生じさせることができるため、冷却流路において冷却空気を好適に流通させることができる。
【0016】
また、前記冷却流路は、前記空気取込口から前記空気排出口まで直線状となる流路であることが、好ましい。
【0017】
この構成によれば、冷却流路を直線状とすることで、冷却流路における圧力損失を抑制することができるため、冷却流路において冷却空気をより好適に流通させることができる。
【0018】
また、前記空気取込口は、前記空気排出口に比して開口面積が大きいことが、好ましい。
【0019】
この構成によれば、空気取込口から空気を多く取り込むことができ、また、空気排出口における冷却空気の流速を速くすることができる。
【0020】
また、前記空気取込口は、複数の孔を含むことが、好ましい。
【0021】
この構成によれば、複数の孔を形成することで、空気取込口を設けることができる。
【0022】
また、前記空気取込口は、長手方向に延在するスリットを含むことが、好ましい。
【0023】
この構成によれば、スリットを形成することで、空気取込口を設けることができる。
【0024】
また、前記空気排出口は、前記空気排出口が形成される部位の表面から突き出して設けられることが、好ましい。
【0025】
この構成によれば、空気排出口における空気の流速を速くすることができるため、空気排出口の負圧を大きくすることができる。
【0026】
また、滞留する前記冷却空気に流れを付与する空力デバイスを、さらに備え、前記空力デバイスは、前記空気取込口、前記空気排出口及び前記冷却流路の少なくともいずれかに設けられることが、好ましい。
【0027】
この構成によれば、空力デバイスにより、冷却空気を好適に流動させることができるため、冷却空気による冷却効率を高めることができる。
【0028】
また、前記発熱部からの熱エネルギーを電気エネルギーに変換して、前記空力デバイスに電力を供給する熱電変換素子を、さらに備え、前記熱電変換素子は、前記発熱部側に設けられる高温部と、前記高温部に比して低温となる部位に設けられる低温部と、を有することが、好ましい。
【0029】
この構成によれば、発熱部の熱を利用して、熱電変換素子により電力を発生させて、空力デバイスに供給することができる。このため、外部電源を設ける必要がなく、モータ一体型ファンの構成を簡素化することができる。
【0030】
本発明の垂直離着陸機は、上記のモータ一体型ファンと、前記モータ一体型ファンから発生する推力によって移動する機体と、を備える。
【0031】
この構成によれば、発熱部が除熱され、ファン性能の低減が抑制されたモータ一体型ファンを用いることができるため、モータ一体型ファンによる推力を適切に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】
図1は、実施形態1に係るモータ一体型ファンに関する断面図である。
【
図2】
図2は、実施形態1に係るモータ一体型ファンの変形例に関する部分断面図である。
【
図3】
図3は、実施形態1に係るモータ一体型ファンのダクトに関する一例の説明図である。
【
図4】
図4は、実施形態1に係るモータ一体型ファンの冷却部に関する一例の説明図である。
【
図5】
図5は、実施形態1に係るモータ一体型ファンの冷却部に関する一例の説明図である。
【
図6】
図6は、実施形態1に係るモータ一体型ファンの冷却部に関する一例の説明図である。
【
図7】
図7は、実施形態1に係るモータ一体型ファンの空気取込口に関する一例の説明図である。
【
図8】
図8は、実施形態1に係るモータ一体型ファンの空気取込口に関する一例の説明図である。
【
図9】
図9は、実施形態1に係るモータ一体型ファンの空気排出口に関する一例の説明図である。
【
図10】
図10は、実施形態1に係るモータ一体型ファンの空気取込口と空気排出口に関する一例の説明図である。
【
図11】
図11は、実施形態2に係るモータ一体型ファンに関する断面図である。
【
図12】
図12は、実施形態2に係るモータ一体型ファンの変形例に関する部分断面図である。
【
図13】
図13は、実施形態2に係るモータ一体型ファンの軸部に関する一例の説明図である。
【
図14】
図14は、実施形態2に係るモータ一体型ファンの冷却部に関する一例の説明図である。
【
図15】
図15は、実施形態2に係るモータ一体型ファンの空気取込口と空気排出口に関する一例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能であり、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせることも可能である。
【0034】
[実施形態1]
実施形態1に係るモータ一体型ファン1は、軸流ファンとなっている。モータ一体型ファン1は、吸込口から空気を取り込み、吹出口から空気を吹き出すことで、推進力を発生させる。
【0035】
モータ一体型ファン1は、例えば、ヘリコプタまたはドローン等の垂直離着陸機に設けられている。垂直離着陸機に設けられるモータ一体型ファン1は、機体を浮上させるための推進力を発生させたり、機体の姿勢を制御するための推進力を発生させたりする。なお、モータ一体型ファン1は、例えば、ホバークラフト等の空気クッション車両に適用してもよい。
【0036】
図1及び
図2を参照して、モータ一体型ファン1について説明する。
図1は、実施形態1に係るモータ一体型ファンに関する断面図である。
図2は、実施形態1に係るモータ一体型ファンのダクトに関する説明図である。モータ一体型ファン1は、ダクト型プロペラ、または、ダクテッドファンと呼ばれるものである。このモータ一体型ファン1は、例えば、軸方向を鉛直方向とする水平状態で使用され、鉛直方向の上方側から空気を取り込み、鉛直方向の下方側へ空気を吹き出している。なお、モータ一体型ファン1は、軸方向を水平方向とする鉛直状態で使用されてもよい。
【0037】
モータ一体型ファン1は、1つのモータが一体に設けられたファンであり、軸部11と、回転部12と、外周部13と、モータ14と、転がり軸受15と、整流板16と、冷却部17と、空力デバイス18と、熱電変換素子19と、制御部20とを備えている。
【0038】
軸部11は、回転軸Iの中心に設けられ、支持系(固定側)となっている。回転軸Iは、軸方向が
図1の上下方向となっているため、空気の流れ方向は、回転軸Iの軸方向に沿った方向となっている。軸部11は、回転軸Iの軸方向において、その上流側に設けられる部位となる軸側嵌合部25と、軸側嵌合部25の下流側に設けられる部位となる軸本体26とを有している。
【0039】
軸側嵌合部25は、後述する回転部12のハブ31が嵌め合わされる。軸側嵌合部25は、円筒形状となっており、軸本体26の上流側の端面から軸方向に突出して設けられている。軸側嵌合部25は、回転軸Iの中心側に円柱形状の空間が形成されている。この空間には、回転部12のハブ31の一部が挿入される。また、軸側嵌合部25の外周側は、回転部12のハブ31の一部によって取り囲まれている。
【0040】
軸本体26は、軸方向の上流側から下流側に向かって先細りとなる略円錐形状となっている。このため、軸本体26は、その外周面が、軸方向の上流側から下流側に向かうにつれて、径方向の外側から内側に向かう面となっている。軸本体26の内部には、機器を設置可能な内部空間が形成されている。機器としては、例えば、制御装置、カメラ等である。また、軸本体26の外周面には、後述する整流板16の径方向内側の端部が接続されている。
【0041】
回転部12は、軸部11を中心に回転する回転系(回転側)となっている。回転部12は、回転軸Iの軸方向において、軸部11に対して、空気が流入する流入側に設けられている。回転部12は、ハブ31と、複数のブレード32と、回転支持リング33と、を有している。
【0042】
ハブ31は、軸部11の軸方向の上流側に設けられ、軸側嵌合部25に回転自在に嵌め合わされる。ハブ31は、軸部11の一部を構成している。ハブ31は、軸方向の上流側に設けられる部位となるハブ本体35と、ハブ本体35の下流側に設けられる部位となるハブ側嵌合部36とを有している。ハブ本体35は、上流側の端面が所定の曲率半径となる半球面に形成されている。ハブ側嵌合部36は、軸側嵌合部25と相補的な形状となっている。ハブ側嵌合部36は、回転軸の中心に設けられる中心軸36aと、中心軸36aの外周側に設けられる円筒形状の円筒部36bとを含んでいる。中心軸36aは、軸側嵌合部25の回転軸の中心の空間に挿入される。円筒部36bは、ハブ本体35の下流側の端面から軸方向に突出して設けられている。円筒部36bは、軸側嵌合部25の外周を取り囲むように配置される。このとき、軸側嵌合部25の内周面とハブ31の中心軸36aの外周面との間には、転がり軸受15が設けられる。
【0043】
そして、ハブ本体35の端面から、円筒部36bの外周面を経て、軸本体26の外周面に至る面は、段差のない滑らかな面となっている。
【0044】
複数のブレード32は、ハブ31から径方向の外側へ向かって延在して設けられると共に、周方向に所定の間隔を空けて並べて設けられる。各ブレード32は、翼形状となっている。複数のブレード32は、回転軸Iの軸方向に直交する流入側の端部によって、回転することにより形成される面が回転面Pとなっている。
【0045】
回転支持リング33は、回転軸Iを中心とする円環形状に形成されている。回転支持リング33は、回転軸Iの径方向において、複数のブレード32の外周側に接続される。回転支持リング33は、後述する外周部13の内周面の一部を構成する部位である内環部33aと、内環部33aの径方向外側に突出して設けられる部位であるフランジ部33bとを含んでいる。内環部33aは、径方向内側の内周面が、外周部13の内周面の一部となっている。また、内環部33aの内周面には、各ブレード32の径方向外側の端部が溶接等によって接合されている。フランジ部33bは、内環部33aの軸方向の上流側に設けられている。フランジ部33bは、後述するモータ14の永久磁石45を保持している。フランジ部33bは、永久磁石45が軸方向の下流側を向くように、永久磁石45を保持している。
【0046】
上記の回転部12は、ハブ31と、複数のブレード32と、回転支持リング33とが一体に接合されており、ハブ31を中心に回転する。
【0047】
外周部13は、軸部11の径方向外側に設けられ、支持系(固定側)となっている。外周部13は、円環形状に形成され、回転部12の回転によって推力を生じさせるダクトとなっている。外周部13(以下、ダクト13という)は、回転軸Iの軸方向において、上流側の開口が吸込口38となっており、下流側の開口が吹出口39となっている。
【0048】
ダクト13は、その内部に、回転部12の回転支持リング33のフランジ部33bと、後述するモータ14のコイル46とを収容する環状の内部空間が形成されている。ダクト13は、その内部において、回転部12に保持される永久磁石45と対向する位置に設けられるコイル46を保持している。ダクト13は、回転部12が回転することによって、吸込口38から空気を吸い込み、吸い込んだ空気を吹出口39から吹き出すことで、推力を発生させる。
【0049】
モータ14は、ダクト13側から回転部12へ向けて動力を与えることにより、回転部12を回転させる外周駆動のモータとなっている。モータ14は、回転部12側に設けられる回転子側磁石と、ダクト13側に設けられる固定子側磁石とを有している。実施形態1において、回転子側磁石は、永久磁石45となっており、固定子側磁石は、コイル(電磁石)46となっている。なお、実施形態1では、支持系にコイル46を設けることで、コイル46周りの配線等の取り回しに係る構成を簡易な構成としたが、この構成に特に限定されない。回転子側磁石をコイルとしてもよいし、固定子側磁石を永久磁石45としてもよい。
【0050】
永久磁石45は、回転支持リング33のフランジ部33bに保持されて設けられ、周方向に円環状に配置されている。また、永久磁石45は、周方向において所定の間隔ごとに正極及び負極が交互となるように構成されている。永久磁石45は、回転軸Iの軸方向においてコイル46と対向する位置に設けられる。
【0051】
コイル46は、ダクト13の内部に保持されて設けられ、永久磁石45の各極に対向して複数設けられると共に、周方向に並べて設けられる。コイル46は、回転軸Iの軸方向において回転部12に保持される永久磁石45と対向する位置に設けられる。つまり、永久磁石45及びコイル46は、回転軸Iの軸方向に対向させて配置したアキシャル配置となっている。
【0052】
なお、永久磁石45及びコイル46を、回転軸Iの軸方向に対向させて配置したアキシャル配置としているが、
図2に示す変形例としてもよい。
図2は、実施形態1に係るモータ一体型ファンの変形例に関する部分断面図である。
図2に示す変形例では、永久磁石45及びコイル46を、回転軸Iの径方向に対向させて配置させたラジアル配置となっている。
【0053】
永久磁石45を保持する回転支持リング33は、フランジ部33bを省いた構成となっており、内環部33aの外周側において、永久磁石45を保持している。
【0054】
永久磁石45は、回転支持リング33の内環部33aの外周側に保持されて設けられ、周方向に円環状に配置されている。永久磁石45は、回転軸Iの径方向においてコイル46と対向する位置に設けられる。
【0055】
コイル46は、ダクト13の内部に保持されて設けられ、永久磁石45の各極に対向して複数設けられると共に、周方向に並べて設けられる。コイル46は、回転軸Iの径方向において回転部12に保持される永久磁石45と対向する位置に設けられる。このように、永久磁石45及びコイル46は、回転軸Iの径方向に対向させて配置したラジアル配置としてもよい。
【0056】
転がり軸受15は、軸部11の軸側嵌合部25の内周面と、回転部12のハブ31における中心軸36aの外周面との間に設けられている。転がり軸受15は、軸部11に対する回転部12の回転を許容しつつ、軸部11と回転部12とを連結している。転がり軸受15は、例えば、ボールベアリング等である。
【0057】
整流板16は、軸部11とダクト13とを連結して設けられている。整流板16は、回転軸Iの軸方向において、回転部12の下流側に設けられている。つまり、整流板16は、軸方向において、ダクト13の下流側部位43の位置に設けられている。整流板16は、回転軸Iの周方向に複数並べて設けられている。また、整流板16は、翼形状等の流線形状となっており、回転部12から流れ込む空気を整流している。なお、整流板16の形状は、翼形状に限定されず、平板形状であってもよい。
【0058】
次に、
図3を参照して、冷却部17について説明する。なお、
図3から
図9では、モータ14の永久磁石45及びコイル46がラジアル配置である場合に適用して説明する。冷却部17は、モータ14の作動により発熱する発熱部を冷却空気により冷却するものである。発熱部は、例えば、モータ14のコイル46である。なお、
図2では、コイル46を簡略化して図示しているため、実際の位置とは異なっている。コイル46は、ダクト13の内部に設けられていることから、冷却部17は、コイル46を冷却すべく、ダクト13に設けられている。
【0059】
冷却部17は、冷却空気を取り込む空気取込口51と、冷却空気を排出する空気排出口52と、空気取込口51から空気排出口52までに至る冷却流路53と、を含む。
【0060】
空気取込口51は、ダクト13の外周面に形成されている。空気取込口51は、回転軸Iの軸方向において、回転部12よりも下流側(吹出口39側)に設けられている。空気取込口51が形成される部位周りの圧力は、大気圧となっている。
【0061】
空気排出口52は、ダクトの内周面に形成されている。空気排出口52は、吸込口38から吹出口39へ向かって流れる空気の流れ方向において、回転部12の上流側に設けられる。空気排出口52が形成される部位周りの圧力は、空気取込口51周りの圧力よりも負圧となっている。つまり、空気排出口52が形成される部位周りの圧力は、大気圧よりも小さい圧力となっている。
【0062】
また、空気取込口51は、空気排出口52に比して開口面積が大きくなるように形成されている。言い換えれば、空気排出口52は、空気取込口51に比して開口面積が小さくなるように形成されている。
【0063】
冷却流路53は、空気取込口51からコイル46に至る流路53aと、コイル46が配置されるダクト13の内部空間53bと、コイル46から空気排出口52に至る流路53cと、を含む。冷却流路53は、空気取込口51から取り込まれた空気を、冷却空気として内部空間53bへ案内し、内部空間53bへ冷却空気を導入すると共に、内部空間53bの冷却空気を、空気排出口52へ向けて案内する。
【0064】
このような、冷却部17は、空気取込口51から空気を取り込み、内部空間53bにおいて冷却空気をコイル46に吹き当て、コイル46に吹き当てた冷却空気を空気排出口52から排出することで、コイル46の除熱を行う。
【0065】
空力デバイス18は、滞留する冷却空気に流れを付与するものである。例えば、空力デバイス18は、プラズマアクチュエータ、シンセティックジェット、ボルテックスジェネレータ等がある。空力デバイス18は、空気取込口51、空気排出口52及び冷却流路53に設けられる。なお、実施形態1では、空力デバイス18は、空気取込口51、空気排出口52及び冷却流路53に設けたが、空気取込口51、空気排出口52及び冷却流路53の少なくともいずれかに設ければよく、特に限定されない。
【0066】
空気取込口51に設けられる空力デバイス18は、例えば、プラズマアクチュエータが適用され、空気取込口51に向かって空気が流れ込むように設けられる。具体的に、空力デバイス18は、空気取込口51近傍のダクト13の外周面に設けられる。なお、空気取込口51に設けられる空力デバイス18は、空気取込口51近傍の冷却流路53の流路53aに設けてもよい。
【0067】
空気排出口52に設けられる空力デバイス18は、例えば、プラズマアクチュエータが適用され、空気排出口52から空気が排出されるように設けられる。具体的に、空力デバイス18は、空気排出口52近傍のダクト13の内周面に設けられる。なお、空気排出口52に設けられる空力デバイス18は、空気排出口52近傍の冷却流路53の流路53cに設けてもよい。
【0068】
内部空間53bに設けられる空力デバイス18は、例えば、プラズマアクチュエータ及びシンセティックジェットが適用され、流路53aから流路53cに冷却空気が流れるように設けられる。具体的に、空力デバイス18は、内部空間の内面に設けられると共に、内部空間に滞留する冷却空気の澱み点に設けられる。
【0069】
熱電変換素子19は、ダクト13に設けられ、コイル46から発生する熱を利用して、電力を発生している。熱電変換素子19は、コイル46からの熱エネルギーを電気エネルギーに変換して、空力デバイス18に電力を供給している。熱電変換素子19は、コイル46側に設けられる高温部と、高温部に比して低温となる部位に設けられる低温部と、を有する。具体的に、熱電変換素子19は、低温部がダクト13の外周面に位置して設けられ、高温部がコイル46に対向して設けられている。そして、高温部とコイル46との間には、伝熱部材55が設けられ、熱電変換素子19の高温部には、伝熱部材55を介してコイル46の熱が入熱される。なお、熱電変換素子19は、生成した電力を制御部20に出力する構成としてもよく、この場合、制御部20から空力デバイス18に電力を供給してもよい。
【0070】
制御部20は、モータ一体型ファン1の各部に接続され、各部を制御することで、モータ一体型ファン1を制御している。制御部20は、コイル46に接続されている。制御部20は、コイル46の磁界を制御することで、回転部12の回転を制御している。また、制御部20は、空力デバイス18に接続されている。制御部20は、空力デバイス18の作動を制御している。
【0071】
このようなモータ一体型ファン1は、モータ14により、ダクト13側から回転部12に磁界による動力を与えることで、回転部12が回転する。モータ一体型ファン1は、回転部12が回転すると、吸込口38から空気を吸い込むと共に、吹出口39へ向けて空気を吹き出す。回転部12から吹き出された空気は、ダクト13の内周面に沿って流れることで、推力を発生させる。
【0072】
また、回転部12が回転すると、空気排出口52を沿って流れる空気の流速が速くなることで、空気排出口52周りの圧力が大気圧よりも小さくなる。すると、空気取込口51に比して空気排出口52が負圧となることから、冷却部17は、空気取込口51から空気を取り込むと共に、取り込んだ空気を冷却空気として、冷却流路53を流通させる。冷却流路53を流れる冷却空気は、内部空間53bにおいてコイル46に吹き当たる。コイル46に吹き当てられた冷却空気は、空気排出口52から排出される。これにより、冷却部17は、コイル46を冷却空気により除熱する。
【0073】
次に、
図4から
図6を参照して、冷却部17の他の一例について説明する。
図4から
図6は、実施形態1に係るモータ一体型ファンの冷却部に関する一例の説明図である。
図4に示す冷却部17は、冷却流路53が、空気取込口51から空気排出口52へ向かって直線状に形成されている。また、直線状となる冷却流路53は、内部空間53bにおいてコイル46と交差するように形成される。
【0074】
このため、
図4に示す冷却部17では、冷却流路53が直線状となっていることから、冷却空気が円滑に流通するため、冷却流路53における圧力損失を低減することができる。
【0075】
図5に示す冷却部17は、
図3に示す空気取込口51が、ダクト13の内周面に形成されている。空気取込口51は、吸込口38から吹出口39へ向かって流れる空気の流れ方向において、回転部12の下流側に設けられる。空気取込口51が形成される部位周りの圧力は、空気排出口52周りの圧力よりも正圧となっている。つまり、空気取込口51が形成される部位周りの圧力は、空気排出口52周りの圧力よりも大きい圧力となっている。
【0076】
このため、
図5に示す冷却部17では、空気取込口51に比して空気排出口52が負圧となる。このため、冷却部17は、空気取込口51から空気を取り込むと共に、取り込んだ空気を冷却空気として、冷却流路53を流通させる。
【0077】
図6に示す冷却部17は、
図3に示す空気排出口52が、ダクト13の外周面に形成されている。空気排出口52は、空気取込口51に比して吸込口38側に設けられる。空気排出口52が形成される部位周りの圧力は、空気取込口51周りの圧力よりも負圧となっている。つまり、空気排出口52が形成される部位周りの圧力は、空気取込口51周りの圧力よりも小さい圧力となっている。
【0078】
このため、
図6に示す冷却部17では、空気取込口51に比して空気排出口52が負圧となる。このため、冷却部17は、空気取込口51から空気を取り込むと共に、取り込んだ空気を冷却空気として、冷却流路53を流通させる。
【0079】
次に、
図7及び
図8を参照して、冷却部17の空気取込口51の他の一例について説明する。
図7及び
図8は、実施形態1に係るモータ一体型ファンの空気取込口に関する一例の説明図である。
【0080】
図7に示す空気取込口51は、複数の孔51aを含む構成となっている。孔51aは、ダクト13の外周面に形成されると共に、周方向に亘って並んで形成されている。孔51aは、周方向に一列、または、複数列形成されている。孔51aが周方向に複数列形成される場合、複数の孔51aは、周方向に沿って千鳥状に配置される。
【0081】
図8に示す空気取込口51は、長手方向に延在するスリット51bを含む構成となっている。スリット51bは、ダクト13の外周面に形成されると共に、周方向が長手方向となるように形成されている。スリット51bは、周方向に並んで形成されている。スリット51bは、周方向に一列、または、複数列形成されている。スリット51bが周方向に複数列形成される場合、複数のスリット51bは、周方向に沿って千鳥状に配置される。
【0082】
次に、
図9を参照して、冷却部17の空気排出口52の他の一例について説明する。
図9は、実施形態1に係るモータ一体型ファンの空気排出口に関する一例の説明図である。
図9に示す空気排出口52は、空気排出口52が形成される部位の表面から突き出して設けられる。つまり、空気排出口52がダクト13の内周面に形成される場合、空気排出口52は、ダクト13の内周面から突き出して形成される。また、空気排出口52がダクト13の外周面に形成される場合、空気排出口52は、ダクト13の外周面から突き出して形成される。このとき、空気排出口52は、例えば、ノズル型であってもよいし、ライン型であってもよいし、アネモ型であってもよく、形状は、特に限定されない。
【0083】
次に、
図10を参照して、冷却部17の他の一例について説明する。
図10に示す冷却部17は、
図10に示すように、冷却流路53を直線状としない場合の構成である。
図10に示す冷却部17は、冷却流路53が、空気取込口51から空気排出口52へ向かって湾曲するように形成されている。湾曲する冷却流路53には、空気取込口51から取り込んだ冷却空気を案内する通気ガイド58が設けられている。通気ガイド58は、空気取込口51からコイル46へ向かって冷却空気を案内すると共に、コイル46から空気排出口52へ向かって冷却空気を案内している。
【0084】
以上のように、実施形態1によれば、空気取込口51に対する空気排出口52の負圧を利用して、空気取込口51から冷却空気を取り込み、発熱部であるコイル46を通過した後の冷却空気を、空気排出口52から排出することができる。このため、冷却空気によりコイル46の除熱を好適に行うことができる。また、空気取込口51に対する空気排出口52の負圧を利用することから、モータ一体型ファン1のファン性能の低減を抑制することができる。
【0085】
また、実施形態1によれば、コイル46がダクト13に設けられる場合、
図2に示す冷却部17は、大気圧となるダクト13の外周面から空気を取り込み、圧力が低くなる回転部12の上流側におけるダクト13の内周面から空気を排出することができる。このため、空気取込口51と空気排出口52との圧力差が大きくなる位置に、空気取込口51及び空気排出口52を設けることができることから、冷却流路53において冷却空気を好適に流通させることができる。
【0086】
また、実施形態1によれば、コイル46がダクト13に設けられる場合、
図4に示す冷却部17は、ダクト13の内周面から空気を取り込み、ダクト13の内周面から空気を排出することができる。このため、ダクト13の外周面に、空気取込口51及び空気排出口52を設けることが困難である場合であっても、空気取込口51と空気排出口52との間に圧力差を生じさせることができるため、冷却流路53において冷却空気を好適に流通させることができる。
【0087】
また、実施形態1によれば、コイル46がダクト13に設けられる場合、
図5に示す冷却部17は、ダクト13の外周面から空気を取り込み、ダクト13の外周面から空気を排出することができる。このため、ダクト13の内周面に、空気取込口51及び空気排出口52を設けることが困難である場合であっても、空気取込口51と空気排出口52との間に圧力差を生じさせることができるため、冷却流路53において冷却空気を好適に流通させることができる。
【0088】
また、実施形態1によれば、
図3に示すように、冷却流路53を直線状とすることで、冷却流路53における圧力損失を抑制することができるため、冷却流路53において冷却空気をより好適に流通させることができる。
【0089】
また、実施形態1によれば、空気取込口51を空気排出口52に比して開口面積を大きくすることで、空気取込口51から空気を多く取り込むことができ、また、空気排出口52における冷却空気の流速を速くすることができる。
【0090】
また、実施形態1によれば、複数の孔51aを形成して、空気取込口51を設けたり、スリット51bを形成して、空気取込口51を設けたりすることができる。
【0091】
また、実施形態1によれば、
図8に示すように、空気排出口52を、ダクト13の内周面または外周面から突き出して設けることで、空気排出口52における空気の流速を速くすることができるため、空気排出口52の負圧を大きくすることができる。
【0092】
また、実施形態1によれば、
図10に示すように、冷却流路53内に通気ガイド58を設けることで、冷却空気を、空気取込口51からコイル46へ向けて、また、コイル46から空気排出口52へ向けて、適切に案内することができる。このため、冷却流路53において冷却空気をより好適に流通させることができる。
【0093】
また、実施形態1によれば、空力デバイス18を設けることにより、冷却空気を好適に流動させることができるため、冷却空気による冷却効率を高めることができる。
【0094】
また、実施形態1によれば、コイル46の熱を利用して、熱電変換素子19により電力を発生させて、空力デバイス18に供給することができる。このため、外部電源を設ける必要がなく、モータ一体型ファン1の構成を簡素化することができる。
【0095】
また、実施形態1によれば、上記のモータ一体型ファン1を機体に搭載した垂直離着陸機は、コイル46が除熱され、ファン性能の低減が抑制されたモータ一体型ファン1を用いることができるため、モータ一体型ファン1による推力を適切に得ることができる。
【0096】
なお、実施形態1では、発熱部としてモータ14のコイル46を適用したが、コイル46以外のものであってもよく、モータ14を作動させることにより発生する発熱部であれば、特に限定されない。
【0097】
[実施形態2]
次に、
図11から
図15を参照して、実施形態2に係るモータ一体型ファン60について説明する。なお、実施形態2では、重複した記載を避けるべく、実施形態1と異なる部分について説明し、実施形態1と同様の構成である部分については、同じ符号を付して説明する。
図11は、実施形態2に係るモータ一体型ファンの軸部に関する一例の説明図である。
図12は、実施形態2に係るモータ一体型ファンの変形例に関する部分断面図である。
図13は、実施形態2に係るモータ一体型ファンの軸部に関する一例の説明図である。
図14は、実施形態2に係るモータ一体型ファンの冷却部に関する一例の説明図である。
図15は、実施形態2に係るモータ一体型ファンの空気取込口と空気排出口に関する一例の説明である。
【0098】
実施形態1のモータ一体型ファン1は、モータ14が外周駆動となるモータであったが、実施形態2のモータ一体型ファン60は、モータ64が内周駆動となるモータとなっている。このため、実施形態2のモータ一体型ファン60は、内周駆動となるモータ64のコイル46を、冷却部67によって冷却している。
【0099】
実施形態2のモータ一体型ファン60は、軸部61と、回転部62と、ダクト63と、モータ64と、転がり軸受65と、整流板66と、冷却部67と、空力デバイス68と、熱電変換素子69と、制御部70とを備えている。なお、転がり軸受65、整流板66、空力デバイス68、熱電変換素子69及び制御部70は、実施形態1とほぼ同様であるため、説明を省略する。
【0100】
軸部61は、回転軸Iの中心に設けられ、支持系(固定側)となっている。軸部61は、回転軸Iの軸方向において、その上流側に設けられる部位となる軸側嵌合部75と、軸側嵌合部75の下流側に設けられる部位となる軸本体76とを有している。
【0101】
軸側嵌合部75は、後述する回転部62の回転支持リング83が嵌め合わされる。軸側嵌合部75は、円柱形状となっており、軸本体76の上流側の端面において、回転軸Iの中心から軸方向の上流側に突出して設けられている。軸側嵌合部75の外周側は、回転部62の回転支持リング83によって取り囲まれている。
【0102】
軸本体76は、軸方向の上流側から下流側に向かって凸となる半球形状となっている。このため、軸本体76は、その外周面が、軸方向の上流側から下流側に向かうにつれて、径方向の外側から内側に向かう面となっている。また、軸本体76は、軸方向の上流側の端面において、軸側嵌合部75の外周側の位置に、コイル46を保持している。なお、軸本体76の内部には、実施形態1と同様に、機器を設置可能な内部空間を形成してもよい。
【0103】
回転部62は、軸部61を中心に回転する回転系(回転側)となっている。回転部62は、回転軸Iの軸方向において、軸部61に対して、空気が流入する流入側に設けられている。回転部62は、ハブ81と、複数のブレード82と、回転支持リング83と、を有している。
【0104】
ハブ81は、軸部61の軸方向の上流側に設けられており、軸部61の一部を構成している。ハブ31は、上流側の端面が所定の曲率半径となる球面に形成されている。
【0105】
回転支持リング83は、ハブ81の軸方向の下流側に設けられ、ハブ81と一体となっている。回転支持リング83は、軸側嵌合部75に回転自在に嵌め合わされる。回転支持リング83は、回転軸Iを中心とする円環形状に形成されている。回転支持リング83は、径方向外側に設けられる外環部83aと、外環部83aの径方向内側に突出して設けられる部位であるフランジ部83bと、フランジ部83bの径方向内側に設けられる部位である内環部83cとを含んでいる。外環部83aは、円筒形状となっており、軸部61の外周面に対して段差のない滑らかな外周面を有している。外環部83aの外周面には、各ブレード82の径方向内側の端部が溶接等によって接合されている。フランジ部83bは、外環部83aの軸方向の上流側に設けられている。フランジ部83bは、後述するモータ64の永久磁石45を保持している。フランジ部83bは、永久磁石45が軸方向の下流側を向くように、永久磁石45を保持している。内環部83cは、円筒形状となっており、軸側嵌合部75を取り囲むように設けられている。内環部83cは、その内周面が軸側嵌合部75の外周面と対向する。このとき、軸部61の軸側嵌合部75の外周面と、回転支持リング83の内環部83cの内周面との間には、転がり軸受65が設けられる。
【0106】
複数のブレード82は、回転支持リング83の外周面に接続される。複数のブレード82は、回転支持リング83から径方向の外側へ向かって延在して設けられると共に、周方向に所定の間隔を空けて並べて設けられる。各ブレード82は、翼形状となっている。また、各ブレード82は、径方向内側の端部が回転支持リング83の外周面に接続される一方で、径方向外側の端部が自由端となっている。
【0107】
ダクト63は、軸部11の径方向外側に設けられ、支持系(固定側)となっている。ダクト63は、円環形状に形成され、回転部62の回転によって推力を生じさせるダクトとなっている。ダクト63は、回転軸Iの軸方向において、上流側の開口が吸込口38となっており、下流側の開口が吹出口39となっている。
【0108】
モータ64は、軸部61側から回転部62へ向けて動力を与えることにより、回転部62を回転させる内周駆動のモータとなっている。モータ64は、回転部62側に設けられる回転子側磁石と、軸部61側に設けられる固定子側磁石とを有している。実施形態2において、回転子側磁石は、永久磁石45となっており、固定子側磁石は、コイル(電磁石)46となっている。なお、実施形態2では、支持系にコイル46を設けることで、コイル46周りの配線等の取り回しに係る構成を簡易な構成としたが、この構成に特に限定されない。回転子側磁石をコイルとしてもよいし、固定子側磁石を永久磁石45としてもよい。
【0109】
永久磁石45は、回転支持リング83のフランジ部83bに保持されて設けられ、周方向に円環状に配置されている。なお、永久磁石45のその他の構成については、実施形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0110】
コイル46は、軸部61の軸本体76における上流側の端面に保持されて設けられ、永久磁石45の各極に対向して複数設けられると共に、周方向に並べて設けられる。なお、コイル46のその他の構成についても、実施形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0111】
なお、実施形態2では、永久磁石45及びコイル46を、回転軸Iの軸方向に対向させて配置したアキシャル配置としているが、
図12に示す変形例としてもよい。
図12に示す変形例では、永久磁石45及びコイル46を、回転軸Iの径方向に対向させて配置させたラジアル配置となっている。
【0112】
永久磁石45は、回転支持リング83の内環部83cの外周側に保持されて設けられ、周方向に円環状に配置されている。永久磁石45は、回転軸Iの径方向においてコイル46と対向する位置に設けられる。
【0113】
コイル46は、軸部61の内部に保持されて設けられ、永久磁石45の各極に対向して複数設けられると共に、周方向に並べて設けられる。コイル46は、回転軸Iの径方向において回転部62に保持される永久磁石45と対向する位置に設けられる。このように、永久磁石45及びコイル46は、回転軸Iの径方向に対向させて配置したラジアル配置としてもよい。
【0114】
次に、
図13を参照して、冷却部67について説明する。なお、
図13から
図15では、モータ14の永久磁石45及びコイル46がラジアル配置である場合に適用して説明する。冷却部67は、モータ64の作動により発熱する発熱部を冷却空気により冷却するものである。発熱部は、例えば、モータ64のコイル46である。なお、
図13では、コイル46を簡略化して図示しているため、実際の位置とは異なっている。コイル46は、軸部61の軸本体76における上流側の端面に設けられていることから、冷却部67は、コイル46を冷却すべく、軸部61から回転部62のハブ81に至る部位に設けられている。
【0115】
冷却部67は、冷却空気を取り込む空気取込口91と、冷却空気を排出する空気排出口92と、空気取込口91から空気排出口92までに至る冷却流路93と、を含む。
【0116】
空気取込口91は、軸部61の外周面に形成されている。空気取込口91は、回転軸Iの軸方向において、回転部62よりも下流側(吹出口39側)に設けられている。
【0117】
空気排出口92は、軸部61の一部を構成するハブ81の外周面に形成されている。空気排出口92は、吸込口38から吹出口39へ向かって流れる空気の流れ方向において、回転部62の上流側に設けられる。空気排出口92が形成される部位周りの圧力は、空気取込口91周りの圧力よりも負圧となっている。
【0118】
冷却流路93は、空気取込口91からコイル46に至る流路93aと、コイル46が配置される軸部61の内部空間93bと、コイル46から空気排出口92に至る流路93cと、を含む。冷却流路93は、空気取込口91から取り込まれた空気を、冷却空気として内部空間93bへ案内し、内部空間93bへ冷却空気を導入すると共に、内部空間93bの冷却空気を、空気排出口92へ向けて案内する。
【0119】
このような、冷却部67は、空気取込口91から空気を取り込み、内部空間93bにおいて冷却空気をコイル46に吹き当て、コイル46に吹き当てた冷却空気を空気排出口92から排出することで、コイル46の除熱を行う。
【0120】
モータ一体型ファン60は、モータ64により、軸部61側から回転部62へ磁界による動力を与えることで、回転部62が回転する。モータ一体型ファン60は、回転部62が回転すると、吸込口38から空気を吸い込むと共に、吹出口39へ向けて空気を吹き出す。回転部62から吹き出された空気は、ダクト63の内周面に沿って流れることで、推力を発生させる。
【0121】
また、回転部62が回転すると、空気排出口92を沿って流れる空気の流速が速くなることで、空気排出口92周りの圧力が、空気取込口91に比して負圧となる。このため、冷却部67は、空気取込口91から空気を取り込むと共に、取り込んだ空気を冷却空気として、冷却流路93を流通させる。冷却流路93を流れる冷却空気は、内部空間93bにおいてコイル46に吹き当たる。コイル46に吹き当てられた冷却空気は、空気排出口92から排出される。これにより、冷却部67は、コイル46を冷却空気により除熱する。
【0122】
次に、
図14及び
図15を参照して、冷却部67の他の一例について説明する。
図14に示す冷却部67は、冷却流路93が、空気取込口91から空気排出口92へ向かって直線状に形成されている。また、直線状となる冷却流路93は、内部空間93bにおいてコイル46と交差するように形成される。また、冷却流路93は、軸部61に複数形成され、複数の冷却流路93は、流路93aにおいて交差して形成される。このとき、複数の冷却流路93は、交差する流路93aにおいて、連通する構成であってもよいし、非連通となる構成(連通しない構成)であってもよく、特に限定されない。
【0123】
このため、
図14に示す冷却部67では、冷却流路93が直線状となっていることから、冷却空気が円滑に流通するため、冷却流路93における圧力損失を低減することができる。
【0124】
図15に示す冷却部67は、
図15に示すように、冷却流路93を直線状としない場合の構成である。
図15に示す冷却部67は、冷却流路93が、空気取込口91から空気排出口92へ向かって湾曲するように形成されている。湾曲する冷却流路93には、空気取込口91から取り込んだ冷却空気を案内する通気ガイド95が設けられている。通気ガイド95は、空気取込口91からコイル46へ向かって冷却空気を案内すると共に、コイル46から空気排出口92へ向かって冷却空気を案内している。
【0125】
以上のように、実施形態2によれば、コイル46が軸部61に設けられる場合、空気取込口91に対する空気排出口92の負圧を利用して、空気取込口91から冷却空気を取り込み、発熱部であるコイル46を通過した後の冷却空気を、空気排出口92から排出することができる。このため、冷却空気によりコイル46の除熱を好適に行うことができる。また、空気取込口91に対する空気排出口92の負圧を利用することから、モータ一体型ファン60のファン性能の低減を抑制することができる。
【0126】
また、実施形態2によれば、
図14に示すように、冷却流路93を直線状とすることで、冷却流路93における圧力損失を抑制することができるため、冷却流路93において冷却空気をより好適に流通させることができる。
【0127】
また、実施形態2によれば、
図15に示すように、冷却流路93内に通気ガイド95を設けることで、冷却空気を、空気取込口91からコイル46へ向けて、また、コイル46から空気排出口92へ向けて、適切に案内することができる。このため、冷却流路93において冷却空気をより好適に流通させることができる。
【符号の説明】
【0128】
1 モータ一体型ファン(実施形態1)
11 軸部
12 回転部
13 ダクト
14 モータ
15 転がり軸受
16 整流板
17 冷却部
18 空力デバイス
19 熱電変換素子
20 制御部
31 ハブ
32 ブレード
33 回転支持リング
38 吸込口
39 吹出口
45 永久磁石
46 コイル
51 空気取込口
52 空気排出口
53 冷却流路
55 伝熱部材
60 モータ一体型ファン(実施形態2)
61 軸部
62 回転部
63 ダクト
64 モータ
65 転がり軸受
66 整流板
67 冷却部
68 空力デバイス
69 熱電変換素子
70 制御部
81 ハブ
82 ブレード
83 回転支持リング
91 空気取込口
92 空気排出口
93 冷却流路
95 通気ガイド