(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】電気式ヒューズ電流検出システム及び監視方法
(51)【国際特許分類】
G01R 19/00 20060101AFI20221125BHJP
G01R 15/00 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
G01R19/00 M
G01R15/00 500
(21)【出願番号】P 2018521360
(86)(22)【出願日】2016-10-06
(86)【国際出願番号】 US2016055708
(87)【国際公開番号】W WO2017078884
(87)【国際公開日】2017-05-11
【審査請求日】2019-10-07
(32)【優先日】2015-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518042280
【氏名又は名称】イートン インテリジェント パワー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Eaton Intelligent Power Limited
【住所又は居所原語表記】30 Pembroke Road, Dublin 4 D04 Y0C2, Ireland
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミリンダ・サレシュ・コテカール
(72)【発明者】
【氏名】サントシュ・クマール・シャルマ
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・ステファン・ダグラス
【審査官】青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-021731(JP,A)
【文献】特開2002-084654(JP,A)
【文献】特開2012-109912(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/283491(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/280405(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0140902(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0163837(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 19/00
G01R 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流検出システムであって、
導体と、
プロセッサと、を備え、
前記導体は、電力システムに接続されたときに、前記導体の両端で検出される電圧が前記導体を通って流れる電流の変化とは必ずしも相関しないように変化する可変な抵抗を有し、
前記プロセッサは、前記導体が電力システムに接続されたときに前記導体の両端で反復して検出された電圧を受け取り、前記検出された電圧の第1の検知ステートと、前記導体の所定の熱平衡特性とに少なくとも基づいて、前記導体を通って流れる電流を反復して算出するように動作可能であり、
前記第1の検知ステートにおいて、前記導体の両端で反復して検出された電圧に経時的な変化はなく、前記所定の熱平衡特性は、前記導体の平均温度が、対応する平衡電流及び平衡抵抗とともに一定値に到達する理想的特性であり、前記第1の検知ステートにおいて前記導体の両端で検出される電圧は、前記平衡電流の線形関数である平衡電圧とみなされ、
前記プロセッサは、前記導体の所定の熱平衡特性に関する情報を有するかまたは利用可能であり、前記導体の前記所定の熱平衡特性に関する情報は、前記平衡電圧と前記平衡電流の関係及び/または前記平衡電圧と前記平衡抵抗の関係を少なくとも含み、
前記第1の検知ステートにおいて前記導体を通って流れる電流は、前記平衡電圧を前記平衡抵抗で除算することにより算出される、電流検出システム。
【請求項2】
前記導体がヒューズ素子である、請求項1に記載の電流検出システム。
【請求項3】
ヒューズハウジングをさらに備え、
前記ヒューズ素子が
前記ヒューズハウジング内に収納され、前記プロセッサもまた前記ヒューズハウジング内に収納されている、請求項2に記載の電流検出システム。
【請求項4】
ヒューズホルダをさらに備え、前記プロセッサが前記ヒューズホルダ上に設けられている、請求項2に記載の電流検出システム。
【請求項5】
前記ヒューズ素子が収納され、前記ヒューズ素子と前記電力システムとを電気的に接続または切断するように動作するスイッチが備えられた断路スイッチ装置をさらに備え、前記プロセッサが前記断路スイッチ装置上に設けられている、請求項2に記載の電流検出システム。
【請求項6】
前記プロセッサと通信するように構成されているリーダ装置をさらに備える、請求項1に記載の電流検出システム。
【請求項7】
ハウジングをさらに備え、
前記導体が
前記ハウジング内に収納され、前記導体の前記所定の熱平衡特性に関する情報を含むラベルを前記ハウジング上にさらに備え、前記リーダ装置が、前記ラベルから前記所定の熱平衡特性に関する情報を読み取り、前記第1の検知ステートにおいて前記導体を通って流れる前記電流を反復して算出するために前記ラベルからの情報を利用するように構成されている、請求項6に記載の電流検出システム。
【請求項8】
前記プロセッサが、前記導体の両端で反復して検出された電圧が経時的に変化する第2の検知ステートに少なくとも基づいて、前記導体を通って流れる電流を算出するようにさらに動作可能であり、前記導体は、変化する抵抗または変化する電流を有する非熱平衡状態で動作しているとみなされ、
前記プロセッサが、前記検出された電圧の前記第2の検知ステートの変化率を、前記導体の前記所定の非熱平衡特性の所定のランプ速度閾値と比較するように構成され、
前記プロセッサは、前記導体の所定の非熱平衡特性に関する情報を有するかまたは利用可能に構成され、前記導体の所定の非熱平衡特性に関する情報は、前記所定のランプ速度閾値、及び、前記導体の抵抗と時定数の逆指数関係を少なくとも含み、
前記所定のランプ速度閾値は、前記
導体の両端で反復して検出された電圧の第2の検知ステートの経時的な変化が、前記導体を通って流れる電流の実際の変化に起因するものか、または前記第2の検知ステートにおける前記導体の抵抗の変化に起因するものかを判別するための閾値であり、
前記導体の両端で反復して検出された電圧の前記第2の検知ステートの前記変化率が、前記第2の検知ステートにおける前記所定のランプ速度閾値未満である場合、前記プロセッサが、前記導体の両端で反復して検出された電圧の第2の検知ステートの経時的な変化は、前記第2の検知ステートにおける前記導体の抵抗の変化に起因するものと判定し、前記導体の前記所定の非熱平衡特性に関する情報に含まれる前記導体の抵抗と前記時定数の逆指数関係を使用して、前記導体の両端の電圧が検出された時点の前記導体の抵抗を算出するように動作可能である、請求項1に記載の電流検出システム。
【請求項9】
前記プロセッサは、さらに、前記第2の検知ステートにおいて前記導体の両端で反復して検出された電圧の前記変化率が、前記所定のランプ速度閾値を上回る場合、前記導体の両端で反復して検出された電圧の第2の検知ステートの経時的な変化は、前記第2の検知ステートにおいて前記導体を通って流れる電流の実際の変化に起因するものと判定し、
前記導体の両端で検出された電圧を、前記第2の検知ステートの直前に決定された前記導体の前記平衡抵抗で除算することにより、前記導体を通って流れる電流を算出するように動作可能である、請求項8に記載の電流検出システム。
【請求項10】
電流検出システムであって、
ハウジングと、第1及び第2の端子素子と、ヒューズ素子であって、電力システムに接続されたときに、前記ヒューズ素子の両端で検出される電圧が前記ヒューズ素子を通って流れる電流の変化とは必ずしも相関しないように変化する可変な抵抗を有するヒューズ素子と、を含む電気ヒューズと、
前記ヒューズ素子が電力システムに接続されたときに前記ヒューズ素子の両端で反復して検出された電圧を受け取るプロセッサであって、前記ヒューズ素子の両端で反復して検出された電圧に経時的な変化がない電圧の第1の検知ステート及び前記ヒューズ素子の両端で反復して検出された電圧が経時的に変化している電圧の第2の検知ステートの少なくとも1つに依存して、前記ヒューズ素子を通って流れる電流を異なる方法で反復して算出するように動作可能である、プロセッサと、を備え、
前記ヒューズ素子の両端で検出された電圧の前記第1の検知ステートでは、前記ヒューズ素子を通って流れる電流は、前記ヒューズ素子の両端で検出された電圧と前記ヒューズ素子の所定の熱平衡特性とに基づいて算出され、
前記検出
された電圧は、平衡電流と平衡抵抗の積
である平衡電圧に等しく、
前記プロセッサは、前記ヒューズ素子の所定の熱平衡特性に関する情報を有するかまたは利用可能であり、前記ヒューズ素子の所定の熱平衡特性に関する情報は、前記平衡電圧と前記平衡電流の関係及び/または前記平衡電圧と前記平衡抵抗の関係を少なくとも含み、
前記第1の検知ステートにおいて前記ヒューズ素子を通って流れる電流は、前記平衡電圧を前記平衡抵抗で除算することにより算出され、
前記ヒューズ素子の両端で検出された電圧の前記第2の検知ステートでは、前記ヒューズ素子の両端で検出された前記電圧と、前記平衡抵抗が第1の値から前記第1の値とは異なる第2の値へと移行している前記ヒューズ素子の所定の非熱平衡特性とに基づいて、前記電流が算出され、
前記プロセッサが、前記検出された電圧の前記第2の検知ステートの変化率を、前記所定の非熱平衡特性の所定のランプ速度閾値と比較するように構成され、
前記プロセッサは、前記ヒューズ素子の所定の非熱平衡特性に関する情報を有するかまたは利用可能に構成され、前記ヒューズ素子の所定の非熱平衡特性に関する情報は、前記所定のランプ速度閾値、及び、前記ヒューズ素子の抵抗と時定数の逆指数関係を少なくとも含み、
前記所定のランプ速度閾値は、前記ヒューズ素子の両端で反復して検出された電圧の第2の検知ステートの経時的な変化が、前記ヒューズ素子を通って流れる電流の実際の変化に起因するものか、または前記第2の検知ステートにおける前記ヒューズ素子の抵抗の変化に起因するものかを判別するための閾値であり、
前記ヒューズ素子の両端で反復して検出された電圧の前記第2の検知ステートの前記変化率が、前記所定のランプ速度閾値未満である場合、前記プロセッサは、前記ヒューズ素子の両端で反復して検出された電圧の前記第2の検知ステートの経時的な変化が前記第2の検知ステートにおける前記ヒューズ素子の抵抗の変化に起因するものと判定し、前記所定の非熱平衡特性に関する情報に含まれる前記ヒューズ素子の抵抗と時定数の逆指数関係に基づいて前記ヒューズ素子の抵抗を決定し、
前記ヒューズ素子の両端で反復して検出された電圧の前記第
2の検知ステートの前記変化率が、前記所定のランプ速度閾値を上回る場合、前記プロセッサは、前記ヒューズ素子の両端で反復して検出された電圧の第2の検知ステートの経時的な変化は、前記第2の検知ステートにおいて前記ヒューズ素子を通って流れる電流の実際の変化に起因するものと判定し、前記ヒューズ素子の両端で検出された電圧を、最後に決定された前記ヒューズ素子の前記平衡抵抗で除算することにより、前記ヒューズ素子を通って流れる電流を算出する、ように動作可能である、電流検出システム。
【請求項11】
ヒューズハウジングをさらに備え、
前記プロセッサが、前記ヒューズハウジング内に収納されている、請求項10に記載の電流検出システム。
【請求項12】
ヒューズホルダをさらに備え、前記プロセッサが前記ヒューズホルダ上に設けられている、請求項10に記載の電流検出システム。
【請求項13】
前記電気ヒューズが収納され、前記ヒューズ素子と前記電力システムとを電気的に接続または切断するように動作するスイッチが備えられた断路スイッチ装置をさらに備え、前記プロセッサが前記断路スイッチ装置上に設けられている、請求項10に記載の電流検出システム。
【請求項14】
前記電気ヒューズが、バーコード及びRFIDタグのうちの少なくとも一方を含み、前記
電流検出システムが、前記バーコード及び前記RFIDタグのうちの前記少なくとも一方と通信し、前記
ヒューズ素子を通って流れる電流
の算出を行うための熱平衡特性または非熱平衡特性の情報を得るように構成されたリーダ装置をさらに備える、請求項10に記載の電流検出システム。
【請求項15】
前記電気ヒューズに含まれる前記ヒューズ素子の前記所定の熱平衡特性に関する情報及び前記所定の非熱平衡特性に関する情報を含むラベルをさらに備え、前記リーダ装置が、前記ラベルを読み取り、適用可能な熱平衡特性及び非熱平衡特性を決定するために前記ラベルからの情報を利用するように構成される、請求項14に記載の電流検出システム。
【請求項16】
電力システムにおける電流を検出する方法であって、
導体であって、電力システムに接続されたときに、前記導体の両端で検出される電圧が前記導体を通って流れる電流の変化とは必ずしも相関しないように変化する抵抗を有する導体を設けることと、
前記導体が前記電力システムに接続されたときに前記導体の両端の電圧を反復して検出することと、
前記導体の両端で反復して検出された電圧に経時的な変化がない前記検出された電圧の第1の検知ステートと、前記導体の平均温度が、対応する平衡電流及び該平衡電流の線形関数である平衡抵抗とともに、一定値であり、前記平衡電流と前記平衡抵抗の積として平衡電圧が定まる前記導体の所定の熱平衡特性とに少なくとも基づいて、前記導体を通って流れる電流を反復して算出することと、を含み、
前記導体の所定の熱平衡特性は、前記平衡電圧と前記平衡電流の関係及び/または前記平衡電圧と前記平衡抵抗の関係を少なくとも含み、
前記導体を通って流れる電流は、前記第1の検知ステートにおいて前記導体の両端で検出された電圧を前記平衡電圧として使用し、前記平衡電圧を前記平衡抵抗で除算することにより算出される、方法。
【請求項17】
前記導体を設けることが、ヒューズ素子を含むヒューズを設けることを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ヒューズがヒューズハウジングを含み、前記導体の両端の電圧を検出することが、前記ヒューズハウジング内の場所で前記ヒューズ素子の両端の前記電圧を検出することを含む、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、概して配電システムに関し、より具体的には、電気回路内の非直線抵抗を有する導体を通る電流の流れを検出し監視するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
様々なタイプの電気製品及びシステムにおいて、電流検出は様々な理由で行われる。電流の検出と監視は、様々な態様で機器やプロセスの管理と制御を容易にし、かつ回路保護機能を容易にする。必ずしも限定されないが、抵抗シャント、電流トランス(CT)、ホール効果センサー、及び磁気光学効果(ファラデー効果)を利用する光ファイバー電流センサー(FOCS)を含む様々な異なるタイプの接触型及び非接触型の電流センサーが、現在使用されている。
【0003】
電流検出が必要な多くの住居型電力システムでは、従来の電流センサーの相対的なコストは高く、そのため、電流センサーの使用は住宅用途に限られていた。電流検出能力を含む電気製品の場合、電流センサー部品のコストは、総製品コストの50%を占める可能性がある。電流検出を必要とする工業用及び商業用製品の場合、検出部品は総システムコストの20%を占める可能性がある。現在利用されている電流センサー技術の比較的高いコストは、そうでなければ電気産業においてより広いスケールで電流検出が有益に採用されることへの障害である。それゆえに、低コスト及び/またはより簡単な電流検出ソリューションが望まれる。
【図面の簡単な説明】
【0004】
以下の図面を参照して、非限定的かつ非網羅的な実施形態が説明され、特に断らない限り、様々な図面全体を通して、同様の参照番号は同様の部分を指す。
【0005】
【
図1】従来の電流検出技術を図示する電力システムの一部分の部分回路図である。
【
図2】本発明の一実施形態による第1の例示的な電流検出技術を図示する電力システムの一部分の部分回路図である。
【
図3】使用中の例示的なヒューズ素子の例示的な温度分布を図示する。
【
図4】
図3に示された例示的なヒューズ素子を含む例示的なヒューズの例示的な温度対時間のグラフである。
【
図5A】
図3及び4に関係し、
図2に示された電流検出技術によってアルゴリズム的に利用された例示的なヒューズの例示的な熱平衡特性を図示し、
図5Aは、温度平衡電圧対温度平衡電流のプロットである。
【
図5B】
図3及び4に関係し、
図2に示された電流検出技術によってアルゴリズム的に利用された例示的なヒューズの例示的な熱平衡特性を図示し、
図5Bは、温度平衡抵抗対温度平衡電圧のプロットである。
【
図5C】
図3及び4に関係し、
図2に示された電流検出技術によってアルゴリズム的に利用された例示的なヒューズの例示的な熱平衡特性を図示し、
図5Cは、温度対電圧における温度平衡変化のプロットである。
【
図6】
図2に示された技術と
図5A、5B及び5Cに示された特性とを利用する、使用中の電気ヒューズの検出されたパラメータを図示し、
図6Aは、電気ヒューズによって経験された算出電流対時間のプロットであり、
図6Bは、電気ヒューズによって経験された算出温度対時間のプロットであり、
図6Cは、電気ヒューズによって経験された算出抵抗対時間のプロットであり、
図6Dは、
図2に示された技術を利用する、検出電圧対時間のプロットである。
【
図7A】
図2に図示された技術の例示的な性能を表し、
図7Aは、使用中のヒューズ素子のヒューズ素子対実抵抗の算出抵抗のプロットを図示する。
【
図7B】
図2に図示された技術の例示的な性能を表し、
図7Bは、抵抗の算出におけるアルゴリズム的誤差のプロットを図示する。
【
図8A】
図2に図示された技術の例示的な性能を表し、
図8Aは、電気ヒューズによって経験された算出電流対実電流の第1の例示的な比較プロットを図示する。
【
図8B】
図2に図示された技術の例示的な性能を表し、
図8Bは、電気ヒューズによって経験された算出電流対実電流の第2の例示的な比較プロットを図示する。
【
図9】
図1~8に関連して図示される電流検出技術及びアルゴリズムに関連する例示的なプロセスを説明する例示的な方法フローチャートである。
【
図10】本発明の一実施形態による第1の例示的な電流検出システムを模式的に表わす。
【
図11】本発明の一実施形態による第2の例示的な電流検出システムを模式的に表わす。
【
図12】本発明の一実施形態による第3の例示的な電流検出システムを模式的に表わす。
【発明を実施するための形態】
【0006】
図1は、時にはシャントベースの電流検出と呼ばれる従来の電流検出技術を図示する電力システム100の一部分の部分回路図である。
【0007】
図1に示すように、電力システム100は、ライン側回路104と負荷側回路106との間に接続された電気ヒューズ102を含む。ヒューズ102は、ハウジングと、所定の過電流ステートに応答して溶融、崩壊、蒸発またはその他の構造的故障を起こすように構造的に構成され、ライン側回路104と負荷側回路106との間の開回路を効果的に生み出す導電性ヒューズ素子とを含む。したがって、ライン側回路104で所定の過電流ステートが生じると、負荷側回路106は、ヒューズ素子が過電流ステートに曝されるときに、ヒューズ素子がヒューズ102を通してもはや電流を導通しないように負荷側回路106を電気的に絶縁するヒューズ102及びそのヒューズエレメントによって保護され、その結果、さもなければ損傷電流がライン側回路106に流れるのを防止する。過電流ステートに応答するヒューズ素子の開放は永久的であり、ライン側回路104と負荷側回路106との間の電気的接続を復元させるために、ヒューズ102は別のヒューズ102と交換されなければならない。
【0008】
また、
図1に示すように、抵抗シャント108は電力システム100内のヒューズ102と直列に接続されている。シャント108の両端の電圧V
senseを監視または検出することによって、ヒューズ102を通って流れる電流I
senseはオームの法則(I=V
sense/R
shunt)から容易に決定することができる。理想的には、抵抗シャント108は、電圧V
senseを電流I
senseに直接変換することを可能にする広い線形抵抗帯を有する。典型的には電気システム内の他の構成要素では利用可能ではない、抵抗シャント108の広い線形抵抗帯が非常に望ましく、それゆえに、抵抗シャント108は全電流に対して定格され、高精度で製造される。したがって、抵抗シャント108は、有効な電流検出ソリューションであるが、比較的高価である。多くの電気ヒューズ102を含む電力システム100では、抵抗シャントを設けるコストが増殖され、かなり大きくなる可能性がある。
【0009】
上述のものを含めて、説明した抵抗シャント108の代わりに利用し得る他の電流センサーが知られているが、それらは、抵抗シャント108よりもかさばり及び/または高価になる傾向があり、したがって、小型で低コストのソリューションのニーズを完全に満たしていない。
【0010】
本明細書において、コンパクトで、信頼性が高く、費用効果の高い電流検出、監視かつ制御機能、及び電力システムにおける高度の可能性を容易にするシステム及び方法の例示的な実施形態を以下に説明する。これは、以下で詳細に説明するように、ヒューズ素子などの非線形抵抗を有する導体の両端に補償回路を接続することによって達成される。非線形抵抗を有する導体に流れる電流は、いったん以下に説明するヒューズ特性に基づくユニークな関係を用いて導体の抵抗が決定されると、導体の両端の検出電圧に基づいて算出することができる。方法の態様は、一部明らかであり、一部以下の説明において明示的に論じられる。
【0011】
図2は、本発明の一実施形態による第1の例示的な電流検出技術を図示する。
図1と2とを比較すると、抵抗シャント108は除去され、電圧V
senseはヒューズ102の両端に直接導出される。以下に説明するように、電流I
sense
は、
図1に示すような比較的高価な直列接続のシャント108を伴うことなく、電圧V
sense
から間接的に決定し得る。本発明によって与えられるように、抵抗シャント108の除去は、コスト削減を超えて有利である。抵抗シャントの除去はまた物理的スペースを節約し、また多くのヒューズが共通の場所で利用される用途では、ヒューズを収容するために必要な場所のサイズを縮小することができる。例えば、多くのヒューズがコンバイナボックス、電気パネル、またはヒューズブロックに位置する場合、電流検出能力及び高度なヒューズステート機能、異常なヒューズ発見及びアラームなどを提供しながら、コンバイナボックス、電気パネルまたはヒューズブロックのサイズを縮小することができる。多数のヒューズを含む電力システムについては、コスト削減及び省スペースは、別個に設けられた電流センサーをなくすと同時に、電力システムの高度な監視及び管理に加えて、ヒューズの性能を引き続き提供することによって、著しくなることができる。
【0012】
図2に示す技術は、すべての電気ヒューズと同様に、ヒューズ102が本質的に較正された抵抗であることを認識する。抵抗器が動作中に電圧を降下させ、電圧V--
sense
が分かっているため、電流I
senseは、ヒューズ抵抗R
fuseが分かっている場合、オームの法則を使用して算出することができる。
図1に示されたシャントベースの電流検出とは異なり、ヒューズ102の両端の電圧V
senseは、オームの法則を使用した電流I
senseの簡易で直接的な判定を可能にしない。これは、ヒューズ102内のヒューズ素子が非線形抵抗を呈することに起因する。すなわち、ヒューズ素子R
fuseの抵抗は、異なる動作状態で変化することがあり、抵抗が変化すると、検知電圧V
senseは、電流の変化と必ずしも相関しない態様で変動する。結果として、シャントに代えてヒューズ102による電流検出を実施するための挑戦は、任意の所与の時点でヒューズ抵抗R
fuseを判定することである。
【0013】
したがって、補償回路110は、とりわけ、電圧Vsenseを連続した期間で反復して検知し、各々特定の時点で抵抗Rfuseを判定し、オームの法則及び/または一定の動作状態下でのヒューズ素子についての電圧と抵抗、温度と電流との間の所定の関係を使用して電流Isenseを算出するために設けられる。時間とともに、ヒューズ電流Isenseの変化は、検出ヒューズ電圧Vsenseのみから確実に判定することができ、効果的な電流検出は、上述されたもののような従来の電流センサーなしで実現され得る。
【0014】
それゆえに、補償回路110は、ヒューズ抵抗Rfuse内の変動を考慮に入れるために定期的な間隔でヒューズ素子電圧Vsenseを測定し、各定期的な間隔でヒューズ抵抗Rfuseを判定し、監視された電圧Vsenseと判定された抵抗Rfuseとに基づいて電流Isenseを演算するコントローラ112を含んでもよい。コントローラ112は、補償回路110の一部として図示されているが、代替的に、コントローラは、例えば、ヒューズ102を含むコンバイナボックス内のサブ計量モジュール(SMM)内を含むがこれに限定されない他の場所に設けられてもよい。すなわち、コントローラ112は、すべての実施形態において補償回路110自体の一部である必要はなく、代わりに別個に設けられてもよい。
【0015】
いくつかの実施形態における検知電圧V
senseは、以下に説明される方法で電流I
senseを算出する、ヒューズ102に対してローカルであるかまたは遠隔した場所の別のオプションのコントローラ114に入力されてもよい。コントローラ114は、コントローラ112に加えて、またはその代わりに設けられてもよい。しかしながら、示されたコントローラ112、114の機能性は、必要ならば単一のコントローラに結合されてもよいことが理解される。とにかく、コントローラ112、114のうちの一方または両方が、有利には以下に説明されるような任意の所与の時点で抵抗R
fuseを判定してもよく、抵抗R
fuseの判定に基づいて、電流I
senseはオームの法則(すなわち、I
sense=V
sense/R
fuse)を使用して演算されることができ、
図1に示されているものよりも比較的小さく費用効果の高い電流検出システムを達成する。
【0016】
コントローラ112及び/または114は、プロセッサベースの制御装置であってもよい。本明細書で使用されるように、用語「プロセッサベースの」は、プロセッサまたはマイクロプロセッサを含むコントローラ装置を参照するだけでなく、マイコン、プログラマブルロジックコントローラ、縮小命令セット(RISC)回路、特定用途向け集積回路及び他のプログラマブル回路、論理回路、それらの等価物、及び以下に説明する機能を実行することができる任意の他の回路またはプロセッサなどの他の同等の素子も参照する。上に列挙したプロセッサベースの装置は単なる例示であり、決して「プロセッサベースの」という用語の定義及び/または意味を限定することを意図するものではない。
【0017】
コントローラ112に代えて、または加えて、補償回路110は、プロセッサベースの装置に直接または間接的な電圧入力を提供する異なる増幅器を含んでもよく、または当技術分野で既知の別の電圧センサーまたは電圧センサー回路が、電流Isenseを算出する目的のために電圧Vsenseを検知するための補償回路110に適用されてもよい。電流算出は、回路110内部の全体または一部でなされてもよく、または回路110は、別の装置に電圧信号を供給し、演算をするかまたは電流演算を完了してもよい。
【0018】
考えられる実施形態では、コントローラ装置112または114の一方または両方によってアルゴリズムを利用して、ヒューズ素子の非線形応答を算出された電流の読みに変換する。算出された電流の読みは、以下にさらに説明されるような、定常ステートの温度平衡におけるヒューズ素子の理想的な性能に基づく。そのような理想的な性能は、既知の関係を用いて数学的にモデル化し、及び/または実験的に確立し、電気ヒューズ及びヒューズ素子の特定のタイプ及び構成を検証することができる。モデル化された性能は、電圧Vsenseの変化が検知されるとヒューズを通って流れる電流を算出するために利用することができるグラフィカルなプロット及び/または数学的関係で表現されることができる。
【0019】
具体的には、ヒューズの抵抗(Rfuse)は、所定のアルゴリズム、モデル、及び以下に説明されるようなヒューズ特性の関係を使用して、電圧Vsenseに基づいて判定され得る。そして、そのようなモデル及び関係にユニークな識別子またはコードは、例えばRFIDタグまたはバーコードラベルをもって、個々のヒューズ102の上に、またはその中にコード化されることができる。また、以下に述べるように、代替的に、ヒューズリーダは、ヒューズホルダのハウジング、または、時には基部とも呼ばれる、切断スイッチのハウジングに一体化されてもよい。電流を算出するために必要な関係のためのそのようなリーダ素子及びユニークな識別子を介して、同じリーダ素子に、異なるタイプのヒューズの両端の電圧降下を監視し、ヒューズ内を流れる電流を引き続き正確に算出するための知能が提供される。
【0020】
ヒューズ102が電流を検出するために利用される状態において、説明された概念が図示されているが、
図2に示す概念は、あるいはヒューズ以外の他の導電素子にも適用することができる。ヒューズ、回路遮断器接点、電気接続、及び回路に直列抵抗を導入する他のすべての構成要素のような回路素子の使用は、付随する補償回路を動作させて効果的に適用することができる。電流検出のために使用される各回路素子は、それ自体の固有で個々の変数及び特性を有することができるので、回路素子に備わるこれらの固有の変数及び特性を符号化する方式は、抵抗電圧を算出電流に適切かつ正確に変換するために必要である。符号化方式は、上述したように、RFIDタグ化及びまたはバーコードラベル化を含むことができる。
【0021】
当業者は、提案された電子回路が、電力システム100のシステム電圧を電子機器から絶縁するための適切な絶縁方式を必要とすることを理解するであろう。いったん決定されると、電流データは、例えば光または無線通信システムを介して遠隔地に送信することができるが、必要であれば他のタイプの通信も可能である。比較的低コストで簡易な設計の電流検出システムを使用して、配電システムの監督、監視及び制御を向上させる、予後判定及び/または診断能力が提供される。
【0022】
以下に詳細に説明されるように、意図された実施形態は、所定の周波数、例えば20Hzでのヒューズ102両端の電圧降下Vsenseを簡易かつ直接測定し、理想的な状態下でのヒューズに適用された関係を介して測定された電圧降下及びヒューズの従来の特性に基づいて、測定された電圧降下を生じさせる電流を演算する。有利には、電流検出アーキテクチャは、比較的低コストで実現されることができると同時に、高い精密度の代わりに遠隔計測精度のみが必要とされる一定の用途に対し十分な精度を提供する。
【0023】
本明細書で説明された電流検出技術は、ヒューズ素子が典型的には付勢された電気回路に接続されると非線形抵抗を呈する一方で、ヒューズ素子の抵抗が一定の動作状態における温度に直線的に依存するという理想的な仮定を前提とする。これらの動作状態に焦点を向けると、温度に対するそのような線形の依存は、ヒューズ素子の抵抗をそれらの状態で容易に判定し、ひいては電流Isenseを任意の所望の時点で算出するための基礎を提供する。実際に、ヒューズ抵抗及び算出された電流の判定の背後の理想的な仮定は、実現されてもよくまたはされなくてもよいが、それにもかかわらず電流は、以下にさらに実証されるように多くのケースで依然として正確に演算されることができる。
【0024】
周知のタイプのヒューズ素子、例えば断面積が減少する1つ以上の脆弱な点または領域を有する導電性の金属細片(例えば、銅細片)を考慮すると、線形の抵抗及び温度の一見理想的な仮定は、不適切であるように思われるかもしれない。銅は、温度係数0.0038を有し、この係数を適用して、抵抗が実際に温度とともに直線的に変化することを前提として、ヒューズ素子の抵抗が60℃の温度差にわたっておよそ23%だけ変化することが予想され得る。しかしながら、実際には、この仮定は、ヒューズ素子は仮定された挙動にまったく追従しない状態において、結果的に℃ごとに0.38%前後の誤差になり得る。
【0025】
図3は、第1の端124を有する細長い金属細片122と、第2の端126と、低減された断面積を有する脆弱な点128とを有するとして製造された例示的なヒューズ素子120を示す。端124から端126に電流が伝導されると、ヒューズ素子120の温度は均一ではない。断面積が脆弱スポット128に近づいて低減するにつれ、温度は端124、126においてより大きな断面積を有する面積よりも暖かくなる。この非均一な温度効果は、設計によって端124、128とは異なる脆弱スポット128の電気抵抗に関連する。非均一な温度効果は、少なくともいくつかの動作状態において、なぜヒューズ抵抗が温度とともに線形である理想的な仮定と、抵抗が非線形であることを示す実ヒューズ性能との間に誤差があるかを部分的に説明する。それにもかかわらず、本明細書で説明された電流検出技術は、ヒューズの動作中のヒューズ素子両端の理想的な平均的均一温度を前提とするが、依然として多くのケースにおいて高信頼かつ正確な電流演算を可能にする。
【0026】
理想的な仮定を適用して、電流がヒューズ素子120を通過すると、ヒューズ素子120の温度の増大(すなわち、加熱)が経時的に生じるような形態で、ヒューズ素子120内に電力が放散される。しかしながら、同時にヒューズ素子120は、その周囲環境によって冷却される。最初に電流を受けるか、または初期レベルから増大したレベルまでの電流の変化を受けると、ヒューズ素子120の温度は、加熱及び冷却が互いに反作用する点まで増大し、ヒューズ素子120の平均温度は、本明細書では温度平衡点と称される一定の値に達する。すなわち、温度平衡点は、ヒューズ素子120のジュール加熱によって生成された熱と、単位時間あたりで周囲環境に放散された熱とがまさに同じであるときに達する。この温度平衡点は、熱平衡状態と称されることがあるものに対応する。
【0027】
図4は、例示的なヒューズ及び電流についての様々な温度平衡点または熱平衡状態を図示する。
図4に示された例では、ヒューズ温度は、時間0における初期値から、続く時点において、本明細書で平衡電流値と称される略一定値まで上昇する。示された例では、第1の平衡温度は、第1の平衡電流値約20Aに対して約60℃に達し、第2の平衡温度は、第2の平衡電流値約30Aに対して約80℃に達し、第3の平衡温度は、第3の平衡電流値約50Aに対して約120℃に達し、第4の平衡温度は、第4の平衡電流値約80Aに対して約180℃に達する。
【0028】
また、
図4に見られるように、熱平衡状態は、それぞれ異なる時間における20A、30A、50A及び80Aの平衡電流の各々において得られる。より低い平衡電流のための熱平衡状態は、より高い平衡電流のための熱平衡状態の前に実現する。平衡電流及び平衡温度の数多くの例が
図4に示されているが、温度及び電流の両方について他の値が可能であり、平衡温度は、ヒューズで利用される、異なるヒューズ素子を有する異なるヒューズのためのヒューズ素子の構造的構成に依存して変動する。しかしながら、本明細書で説明された概念は、概してヒューズ素子の任意の構造及び構成に適用可能である。
【0029】
動作中のヒューズの一定の周囲温度については、熱平衡状態及び対応する熱平衡温度は、電流レベル及び温度ごとにユニークに到達する。
図4のプロットから明らかであり得るように、平衡温度は電流の関数である。2つのシステムが同じヒューズ平衡温度を有することはできないが、異なる平衡電流レベルを有することができる。さらに、熱平衡状態では、ヒューズの抵抗(R
fuse)は、温度の線形関数である。結果として、ヒューズ素子の平衡抵抗もまた、一度熱平衡に達した後の電流の関数である。
【0030】
熱平衡状態での平衡電流及び平衡抵抗の積は、ヒューズの平衡電圧を提供する。このことは本発明の電流検出にとって重要であるが、それは、電圧が、ヒューズが任意の所与の時点で呈し得る電圧、電流、温度及び抵抗の完全なセットにおいて容易に測定可能である唯一のパラメータ(
図2のV
sense)であるためである。検出された電圧V
senseが平衡電圧であると仮定して、対象の電流I
senseは、熱平衡状態でのヒューズの特性が注意深く査定され、先立って分かっている限り、容易に算出されることができる平衡電流に適合する。これは、本明細書においてはヒューズの熱平衡特性と称され、次に説明される。
【0031】
熱平衡状態では、ヒューズ素子の電流、温度及び抵抗はすべて、例示的なヒューズの例示的な熱平衡特性を表す
図5A、5B及び5Cに示されるように、電圧の関数としてモデル化されることができる。これらのような熱平衡特性プロットに基づいて、電流(
図2のI
sense)は、常に電圧の関数として再度算出されることができる。
図5Aに見られるように、平衡電圧及び電流は線形であり、一方で
図5B及び5Cでは、抵抗及び温度変化は電圧の線形関数ではない。熱平衡特性関数は、数学的にモデル化され実験的に検証されることができるか、または特定のタイプの構造的構成のヒューズ素子及び/またはヒューズごとに異なる実施形態で経験的に確立され得る。ヒューズ及びヒューズ素子の異なる構造的構成は、結果として、示された例示的な関数から相当に変動し得る電圧のユニークな電流、温度及び抵抗関数をもたらし得ることが認識される。
【0032】
電流が1つの値から他に変化すると、
図5Aに見られるように、電圧は線形の数学関数であるオームの法則に従って、電流とともに瞬時に変化する。意図された熱平衡特性では、
図5Aは、平衡電圧対平衡電流の関係を表す。いったん平衡抵抗が判定されると、このプロットから平衡電流を容易に算出または判定することができる。
【0033】
図5Bの熱平衡特性に見られるように、抵抗変化は、初期値から最終値に変化するときの電流のように即時または瞬時には変化しない。プロットの左下に示されるように、抵抗変化は、最初は電圧が変化するに従ってゆっくりで漸進的であり、結果として、抵抗変化は、ヒューズ素子が電圧の変化に物理的に反応するために一定時間がかかるため温度変化もまた、最初は少々の間電圧変化に追従するかまたは遅れる。それゆえに、抵抗は、電圧が変化したとしても短時間の間まったく変化せず、抵抗は第1に続く第2の期間でゆっくりと変化し、最終的に抵抗はその後、電圧が上昇し続けるとさらに急速に上昇する。結果として、ヒューズ素子が完全かつ物理的に初期値からの電圧の変化に反応した前後の電圧変化に対するいくつもの別々の抵抗応答が
図5Bに見られる。意図された熱平衡特性では、
図5Bは、平衡電圧対平衡抵抗の関係を表す。いったん平衡電圧が判定されると、意図された実施形態においてはV
senseであると仮定して、このプロットから平衡抵抗を判定することができる。いったん平衡抵抗が判定されると、それを使用して、
図5Aに示されるプロットとは別に、オームの法則を使用して電流を算出し得るか、または代替的に
図5Aのプロットから直接導き出され得る。
【0034】
図5Cに見られるように、プロットの左下に示されるように、ヒューズ素子が電圧の変化に物理的に反応するために再度一定時間がかかるため温度変化もまた、最初は電圧変化に追従するかまたは遅れる。温度の変化は、電圧が変化したとしても最初はゆっくりと変化し、電圧が上昇し続けると最終的により急速に上昇するが、例示的なプロットでは必ずしも均等ではない。温度の変化は、電流が初期値から増大するに従って増大したワット損に対応する。意図された熱平衡特性では、
図5Cは、平衡電圧対平衡温度の関係を表す。
【0035】
図6A、6B、6C及び6Dは、
図2に示された技術及び
図5A、5B及び5Cに示された熱平衡特性関係を利用して演算された使用時の電気ヒューズのパラメータの例として図示する。
【0036】
電圧降下(V
sense)は、回路110またはコントローラ114によって監視され、一定の期間にわたって
図6Dに示されるように変動することが示される。検出または監視された電圧降下V
senseは、平衡電圧を表すと見なされ、検知された様々な電圧レベルは、以下のようなヒューズの熱平衡特性を使用して、
図6Aに示された電流の変動に対応すると判定されることができる。
【0037】
いったん時間t
0におけるヒューズ両端の検出電圧Vsenseを介して仮定された平衡電圧がわかると、時間t
0における平衡抵抗R
fuseは、
図5Bにグラフ化された熱平衡特性関係から判定されるか再度算出されることができる。そして、時間t
0における電流I
senseは、オームの法則を介して演算されることができ、V
sense/R
fuseに対応する。代替的に、いったん時間t
0におけるヒューズ両端の検出電圧V
senseを介して平衡電圧がわかると、時間t
0における平衡抵抗R
fuseは、
図5Aにグラフ化された関係から再度算出されるかさもなければ判定されることができる。電圧V
senseは、所定の周波数でサンプリングされるため、
図6D及び6Aのプロットに示されるように、時間t
1、t
2、t
3・・・t
nにおいてそれぞれ電圧の変化が検知され、そして対応する電流の変化が引き続く判定により経時的に繰り返し算出されて、リアルタイムの電流変化及びデータが電力システムの動作を査定するために利用可能となる。
【0038】
同様に、
図6Bに見られる温度プロットは、時間t
1、t
2、t
3・・・t
nにおいて
図6Dの検出された平衡電圧V
senseからリアルタイムに導き出すことができ、温度関係は、
図5Cに示されるようにグラフ化され得る。また、
図6Cに見られる抵抗プロットは、
図6Dの検出された平衡電圧及び
図5Bでグラフ化された関係から、リアルタイムで反復して導き出され判定されることができる。
【0039】
意図された例では、平衡電圧は常にVsenseに対応すると仮定されるため、熱平衡状態がまだ生じていない1つの検出電圧レベルから他への過渡状態の間(電流の変化に対応する)、想定された平衡抵抗は、各々の影響を受けた時点において実際にはヒューズ素子の抵抗に一致しない。そのような過渡状態は、電流Isenseの誤った算出につながるが、これは、実ヒューズ抵抗が温度をゆっくりと経時的に変動させ、一方で電流は上述のように急激に変化するためである。すなわち、少なくともいくつかのケースでは、仮定された定常ステートに基づく平衡抵抗の算出は、結果として抵抗が実際にはまだ達していない熱平衡温度で判定され、そのように、算出電流及び実電流が対応しない。しかし、定常ステート平衡温度に近づくにつれ、算出電流Isenseは、より一層正確になる。
【0040】
平衡電圧及び抵抗を前提としている上述のアルゴリズムの性能が、
図7A及び7Bに示される。
図7Aは、算出抵抗130が数多くの急なステップで上昇するのに対し、実抵抗132はより漸進的に上昇するが、算出抵抗130及び実抵抗132は、最終的には大部分において略同じ値に集束することを示す。
図7Bは、アルゴリズム誤差(すなわち、
図7Aの算出抵抗130と実抵抗132との間の誤差)を示し、誤差率が相当小さいことを示す。
【0041】
そのようなアルゴリズムを使用する電流検出方法の精度は、
図5A、5B及び5Cに関連して上記で説明されたように、主としてヒューズの平衡特性の精度に依存する。
【0042】
上述のように熱平衡特性によって電圧を検出し電流を演算するためのアルゴリズム的方法は、これまでのところ、算出されている電流がそれほど頻繁に変化しない状態で、及び/または電流がそれほど頻繁に算出される必要がないときに、もっとも良好に作用する。そのような状態では、説明されたアルゴリズム的電流検出方法は、有利には、簡易な受動装置(すなわち、電気ヒューズ)を、電力システムを監視し、監督し故障診断するためのインテリジェントな予知診断ツールに代える。説明されたアルゴリズム的電流検出方法は、簡易で低コストな差動増幅器を使用して行うことができるヒューズ素子両端の電圧の測定のみを必要とする簡易なアーキテクチャを伴う。説明されたアルゴリズム的電流検出方法は、必要とされるアーキテクチャの簡易性のためにむしろコスト効果が高く、必要なハードウェアのサイズは、以下にさらに説明されるように、ヒューズホルダ、ヒューズブロック、断路装置あるいはヒューズ自体の内部に嵌合するために十分に小さくすることができる。
【0043】
電流がランダムに変化し、より頻繁に算出されることが必要である電力システムでは、これまで説明してきたよりもさらに高度な手法が賢明である。ゆえに、検出された任意の所与の電圧変化Vsenseが以下の3つのステートまたはシナリオのうちの1つに起因することができるより高度な手法が以下に説明される。以下に述べる例示的なパラメータを利用して、各々のステートにおいて異なる手法及び基準を用いて電流を算出することができる。
【0044】
第1に、検出電圧の変化は、電流の実際の変化に起因することができる。このシナリオでは、電流の変化は、
図5Aに関連して上述されたような検出電圧における突然のスパイクを引き起こす。電圧変化は、事実上瞬間的であり、また瞬時に検知されることができる。この変化の間、ヒューズ抵抗は瞬間的に同じに留まるが、これは、わずかな時間(例えば、0.1s)以内で可能である抵抗の最大変化が非常に低い(例えば、0.01%未満)であるためである。この効果は、
図5Bのプロットの左下に見ることができる。
【0045】
この第1のステートは、検出電圧のランプ速度(すなわち、変化率)を検出し、これを所定の閾値と比較することによって、確実に検知されることができる。ランプ速度が所定の閾値を上回る場合、検出電圧変化は、電流の実際の変化に起因し得るものと仮定され得る。このステートが検知されると、一定のヒューズ抵抗がさらに仮定され得、電流は、電圧スパイクの直前に判定された平衡抵抗値で除算された瞬時電圧に基づいて演算され得る。
【0046】
第2に、検出電圧の変化は、ヒューズの抵抗の変化に起因することができ、一方で電流は、一定のままであるかまたは変化がない。この第2のシナリオまたはステートは、上述の第1のステートまたはシナリオとは異なり、ヒューズ抵抗が可変である非熱平衡状態が意図されている。このステートは、典型的には第1のシナリオに関連して上述されたように、電流がすでに変化し、検出電圧が急上昇する第1のステートの直後に生じる。この第2のステートでは、検出電圧は、温度が逆指数関係に従って時間とともに増大する間の時間に関係する所定のヒューズ時定数τに依存して、最大ランプ速度とともにゆっくりと変化する。ヒューズ素子の抵抗は、逆指数関係及び同じ時定数に従って同様の変化を呈する。このように、電流が一定であるこのステートでは、検出電圧は逆指数(実験室の試験によって提供された仮説)として増大する。電圧の関数としての抵抗変化は、実験に基づいてモデル化されてもよく、時定数τは、対象のヒューズごとに、またはヒューズのファミリ全体にわたって予め判定されてもよい。
【0047】
第2のステートでは、ヒューズ抵抗は、2つの値、すなわち急激な電流変化が起こる直前の平衡抵抗に対応するR1と、新しい電流レベルでの平衡抵抗に対応するR2との間で必然的に移行する。2つのレベルR1及びR2の間において、ヒューズ抵抗は、ヒューズ時定数によって判定された逆指数曲線に追従する。ヒューズ時定数τは、ヒューズの熱平衡特性の一部としてモデル化されることができ、そのような特性に基づいて、変化する抵抗は、時間の関数として判定され得る。検知された瞬時電圧は、オームの法則によって、ヒューズを通って流れる電流の瞬間値を見い出すために、この連続的に変化する抵抗で除算され得る。
【0048】
第3のステートまたはシナリオは、ヒューズ温度が再度熱平衡に達する間のステートに対応する。電流が時定数τの5倍を超える期間にわたって任意の高いランプ速度イベントに遭遇しなかった場合、第3のステートが想定されることができる。この第3のステートは、上述の平衡ステートに対応しヒューズの長期間の活動中誤差が蓄積しないように誤差修正機構として機能する。
【0049】
検出電圧変化のランプ速度が所定の閾値よりも遅い場合、ヒューズはその後、熱平衡でとどまっていると見なされることができ、それゆえに電流を演算することができる。
【0050】
図8A及び8Bは、上述の3つのステージの手法の性能を図示する。一連のステップ変化について、3つのステージの手法ごとに算出された電流は、実電流に非常に近接して追従する。
図8Bは、
図8Aの一部の拡大プロットである。電流がその新しいレベルに達すると、算出電流と実電流との間に1%未満の誤差が見られ、一方で経時的に、誤差は、新しい熱平衡レベルに達するとゼロに近くなる。
【0051】
図9は、上述の電流検出技術、システム、及び回路に関連する例示的なプロセス200を図示する方法フローチャートである。
【0052】
図9に示されるように、本方法は、ステップ202において、電流検出のために監視されているヒューズの熱平衡特性を提供することを含む。熱平衡特性に対応し得る電圧の関数としての電流、抵抗及び温度の例示的な関係は、
図5A、5B及び5Cに関連して意図された実施形態で上述されている。しかしながら、本明細書に記載された実施形態は、限定ではなくて説明のために提供された単なる例である。記載されている以外の熱平衡特性についての関係は、本発明のさらなる及び/または代替の実施形態において本明細書に具体的に記載された以外の回路とともに使用することができる。熱平衡特性を提供するステップ202は、熱平衡においてヒューズを特徴づけるための関係を確認するための、モデル化、シミュレーション、分析、経験的決定及び/または試験に関連するステップを含んでもよい。代替的に、熱平衡特性を提供するステップ202は、別の関係者、例えばヒューズ製造者から熱平衡特性を得ることと、熱平衡特性を利用可能にすることとを含み得る。また、熱平衡特性を提供するステップ202は、データをプロセッサベースの装置のメモリ、例えば上述のコントローラ112、114のうちの1つにロードすることか、さもなければプロセッサ装置が説明されたように電流を演算するために熱平衡特性データにアクセスすることを可能にすることを含み得る。データへのアクセスは、例えばローカルエリアネットワークを介して、インターネット接続を介して、または装置が互いに必要な情報を交換することを可能にする無線通信システムを介して提供されてもよい。
【0053】
本方法は、ステップ204において、電流検出のために監視されているヒューズの非熱平衡特性を提供することを含む。非熱平衡特性は、所定のランプ速度閾値、ヒューズ時定数τ及び上述の時間ベースの抵抗関係を確立することを含む。非熱平衡特性を提供するステップ204は、非熱平衡においてヒューズを特徴づけるための関係を確認するための、モデル化、シミュレーション、分析、経験的決定及び/または試験に関連するステップを含んでもよい。代替的に、非熱平衡特性を提供するステップ204は、別の関係者、例えばヒューズ製造者から非熱平衡特性を得ることと、熱平衡特性を利用可能にすることとを含み得る。また、非熱平衡特性を提供するステップ204は、データをプロセッサベースの装置のメモリ、例えば上述のコントローラ112、114のうちの1つにロードすることか、さもなければプロセッサ装置が説明されたように電流を演算するために熱平衡特性データにアクセスすることを可能にすることを含み得る。データへのアクセスは、例えばローカルエリアネットワークを介して、インターネット接続を介して、または装置が互いに必要な情報を交換することを可能にする無線通信システムを介して提供されてもよい。
【0054】
ステップ202、204は、任意の数の異なるタイプのヒューズのために繰り返されてもよく、電流検出の目的のために監視されることになるヒューズごとにユニークに特定された熱平衡特性及び非熱平衡特性を含むデータベースが作成されてもよい。ヒューズ素子の抵抗の測定及び算出を実施するために利用されるそれぞれ異なるタイプのヒューズ及び異なるタイプの回路を備えた特定の使用のために、複数の熱平衡特性関係及び非熱平衡特性関係が考えられる。それゆえに、ステップ205において、電流検出システムで監視されることになる特定のヒューズに対して適用可能な特性が選択され得る。正しい選択は、例えば、ヒューズ上のコード化ラベルまたは算出が正確に行われ得るように特定のヒューズをその適用可能な特性に適合させるための別の好適な識別子を介して支援されてもよい。以下にさらに説明するように、ステップ205における選択は、ヒューズが、ヒューズを正確な算出を行うことができるような正しい特性に適合させることを促進する特定情報を得るために、電子リーダ素子によってラベルを読み取ることを含み得る。
【0055】
ステップ206において、コントローラ112もしくは114またはコントローラと通信している電圧センサー素子は、
図2に示されるようなヒューズ102を含む回路に接続される。いったん接続されると、ヒューズ両端の電圧は、所定の時間間隔で測定されるかまたは検知され得る。ステップ206において検出された電圧は、ステップ208で回路から出力されてコントローラ112または114に入力される。ステップ210において、ステップ208で得られた電圧は、コントローラ112または114によってあらゆる変化について監視される。
【0056】
ステップ210においてコントローラ112または114によって検出電圧が変化がないと判定されると、ヒューズは、熱平衡で動作していると見なされる。ステップ202で提供された熱平衡特性を使用して、ステップ210で平衡温度が算出され、ステップ214で平衡抵抗が算出され、ステップ216で平衡電流が算出される。算出は、上述したプロセッサベースの装置のいずれかによって、様々な場所で行うことができる。上述のように、これらの算出の各々は、電圧に応じて特徴付けられた平衡温度、平衡抵抗、及び平衡電流を考慮してなされる。検出電圧が分かっていて、平衡電圧であると見なされるため、温度値、抵抗値及び電流値は、特徴付けられた関係から逆算することができる。いったんステップ212、214、216で値が算出されると、プロセスは、ステップ206で所定の時間間隔で電圧を再度測定することを反復する方法で繰り返す。オプションで、ステップ218において、算出温度値、抵抗値及び電流値は、同じまたは異なる場所の別の装置に通信される。
【0057】
ステップ210において、検出電圧が変化したとコントローラ112または114によって判定されると、ステップ220において、コントローラ112または114は、検出電圧が急激であるか否かを判定する。この判定は、上述されたように、検出電圧の変化率を所定のランプ速度閾値と比較することによってなされる。
【0058】
検知電圧の変化率が、所定のランプ速度閾値と等しいかまたはそれを超える場合、ステップ220において電圧が急激であると見なされる。いったん急激な電圧変化の判定がなされると、その後ステップ222において、ヒューズの抵抗が変化していないと推定され、ステップ224において、ステップ216から最後に判定された平衡抵抗を使用して電流算出がなされる。いったん電流算出がなされると、プロセスは、ステップ206で電圧を再度測定することを繰り返す。オプションで、ステップ218において、算出温度値、抵抗値及び電流値は、同じまたは異なる場所の別の装置に通信される。
【0059】
検知電圧の変化率が、所定のランプ速度閾値よりも小さい場合、ステップ220において急激とは見なされない。いったんこの判定がなされると、ヒューズは、変化する抵抗を有する非熱平衡ステートで動作していると見なされる。ステップ204で提供された非熱平衡特性を使用して、ステップ226で逆指数温度関係及び時定数τを使用して温度が算出され、ステップ228で逆指数抵抗関係及び時定数τを使用して抵抗が算出され、ステップ230で算出された抵抗を使用して電流が算出される。算出は、上述したプロセッサベースの装置のいずれかによって、様々な場所で行うことができる。いったんステップ226、228、230で値が算出されると、プロセスは、ステップ206で電圧を再度測定することを繰り返す。オプションで、ステップ218において、算出温度値、抵抗値及び電流値は、同じまたは異なる場所の別の装置に通信される。
【0060】
したがって、コントローラ112または114は、ステップ210及び220で表された判定の結果によって表された、3つの異なる別個のモードにおいてヒューズの両端で取られた検出電圧値に基づいて、電流値をインテリジェントに演算し得る。しかしながら、いくつかの実施形態では、電力システム内で経験される電流状態に依存して、提示されたモードのうちの1つのみで十分であり得ることが認識される。例えば、上記で触れたように、ステップ212、214及び216は、いくつかの電力システムについて申し分ない結果を提供し得、それゆえに、提供された唯一の算出ステップであり得る。しかしながら、説明された実施形態の変形形態、ならびに本明細書に開示された概念の拡張である代替実施形態が可能である。
【0061】
ステップ240に示すように、検知電圧データもまた、経時的に検知された電圧の履歴を作り出すためのデータログ240に保存され得る。このデータを使用して、調査及び分析のために適用可能な温度値、抵抗値及び電流値を再度算出することができる。これは、電力システムの性能を診断的に査定し、システムの不具合に対処することに加えて、ヒューズ製造者及び他の当事者に、使用時のヒューズの性能を査定するための貴重なデータを提供するためのいくつかの知能を提供する。ステップ242で示されるように、そのようなデータは、電力システムでこれから実現されなければならない問題を予後診断的に示すために有用であり得る。
【0062】
関連、アルゴリズム及び演算を上記の説明ごとに機能的に説明したので、それゆえに、当業者は、コントローラまたは他のプロセッサベースの装置のプログラミングを介して、関連、アルゴリズム及び演算を実施し得る。説明された概念のそのようなプログラミングまたは実施は、当技術分野のものの範囲内であると考えられ、さらなる説明はしない。
【0063】
ここで、上述の概念及びアルゴリズムを適合した例示的な電流検出システムが、可溶性要素及びシステムにおいて有利であると考えられるより特定的な実施形態で説明される。
【0064】
図10は、本発明の一実施形態による第1の例示的な電流検出システム250を模式的に表す。システム250は、ヒューズ素子120を含むヒューズ102とヒューズハウジング252内のヒューズ素子120と並列に接続された回路110とを含む。ヒューズハウジング252には、ライン側回路104及び負荷側回路106との電気的接続を確立するためのヒューズ端子T
1及びT
2が設けられている。
【0065】
ヒューズ素子120は、任意の構造的形状及び所望の構成で提供されてもよく、所望の任意の過電流ステートに応答して開放するように設計されてもよい。ハウジング252は同様に、円柱形及び長方形の形状を含むが、必ずしもこれらに限定されない所望の任意の形状で提供されてもよく、消弧媒体で充填されてもよい。ヒューズ端子T
1及びT
2は、エンドキャップまたはフェルール、ナイフブレード接点、または端子ブレードを含むが、必ずしもそれらに限定されない任意の既知のヒューズ端子形状及び構成であってもよい。いくつかの考えられる実施形態では、ヒューズ102は、長方形のハウジング及び長方形のハウジングの共通の側面から突出した端子ブレードを有する、イートン(Eaton)社、セントルイス、ミズーリ州によるバスマン(Bussmann)製CUBEFuse(登録商標)モジュールヒューズとして構成されてもよい。とにかく、
図10に示すように、補償回路110はヒューズ構造内に埋め込まれている。すなわち、上述したような回路110(コントローラ112、及び恐らくは上述されたような他の電子装置を含む)はヒューズハウジング252の内部にあり、それゆえにヒューズ102に内蔵されている。
【0066】
リーダ装置254は、システム250内に別個に設けられた装置として示されている。リーダ装置254は、いくつかの実施形態では携帯型装置であってもよく、または他の実施形態では据え付けで取り付けられてもよい。いくつかの実施形態では、リーダ装置254はハンドヘルド装置であってもよい。リーダ装置254は、プロセッサベースの装置であってもよく、検出電圧情報または上述の方法で検出されている電流を分析または算出するために必要な他のデータを受け取るために回路110と無線通信してもよい。回路110とリーダ装置254との間の無線通信は、大きな電力システム100において有益であるが、すべての場合において厳密に必要なわけではなく、代わりに、必要ならばヒューズ102内の接続ポート及び端子を介して、リーダ装置254は回路110に配線接続されてもよい。
【0067】
考えられる実施形態におけるリーダ装置254は、RFIDリーダまたは質問器装置として構成されてもよい。そのような実施形態では、情報が回路110内の対応するRFID素子から得られると、対象となる電流はリーダ装置254によって算出することができ、あるいは電流がヒューズ102に埋め込まれた電子装置内で算出される実施形態においては、算出電流を単純にリーダ装置254に通信することができる。
【0068】
前述したように、ヒューズ102には、ヒューズ102のハウジング252上にRFIDラベルまたはバーコードラベル256を設けられてもよい。ラベル256は、リーダ装置254に通信される符号化された情報を含んでもよい。それゆえに、リーダ装置254は、ヒューズの素子と通信する複数の手段を含む多機能装置であってもよい。RFIDラベルまたはバーコードラベルは、ヒューズ102の識別情報、ヒューズ102の定格情報、及び検出電流の算出を容易にする符号化された情報を含んでもよい。そのように、ヒューズハウジング上のラベルまたはバーコードを読み取ることによって、リーダ装置254は、電流を算出するために使用する複数の所定の平衡及び非平衡特性のうちのどれを使用するかを知ることができ、リーダ装置はまた、算出を行うことにおいて使用するためにヒューズ102に固有であり得る任意の係数を得てもよい。そのようなシナリオでは、リーダ装置254は、異なるタイプのヒューズを区別し、検出電流を算出するために様々な所定の特性のうちの1つを選択することができるインテリジェント装置である。
【0069】
一度得られると、算出電流を含めて、リーダ装置254によって得られた情報は、任意の所望の通信ネットワークを介して遠隔装置258にさらに通信することができる。遠隔装置258は、電力システム100及び任意の関連プロセスの監視及び管理を容易にし得る。遠隔装置258は、例えば、当業者に理解されるように、工業設備及びプロセスの態様を監視する監視制御及びデータ収集(SCADA)システムの一部であってもよい。
【0070】
いくつかの実施形態では、リーダ装置254は算出を行うのに必要な情報のみを供給して、必要ならば遠隔地での遠隔装置258によって検出された電流を実際に算出することができることが理解される。リーダ装置254における精巧さ及び複雑さの異なる程度を、異なるコストで提案してシステム250に提供することができる。
【0071】
図11は、本発明の別の実施形態による第2の例示的な電流検出システム260を模式的に表す。システム260は、ライン側及び負荷側回路104、106への電気的接続を構造的に確立するようにそれぞれ構成された端子T
1H及びT
2Hを備えたハウジング264を含むヒューズホルダまたはヒューズブロック262を含む。ヒューズ102の端子T
1F及びT
2Fは、ライン側回路と負荷側回路との間の電気的接続がヒューズ素子120を通して確立されるように、ヒューズホルダまたはヒューズブロック262の端子T
1H及びT
2Hと構造的に嵌合するように構成される。
【0072】
システム250(
図10)とは異なり、システム260において、回路110は、ヒューズのハウジング252内には設けられず、代わりにヒューズホルダまたはヒューズブロック262のハウジング264の上または中に設けられる。そのように、この実施形態の回路110は、ヒューズ102の代わりにヒューズブロック262内に埋め込まれている。しかしながら、回路110の動作は同じままで、ラベル256及びリーダ254が同様の効果を有して上述のように設けられてもよい。
【0073】
システム250において上述したように回路110がヒューズ102内に埋め込まれている代替の実施形態では、リーダ254をヒューズブロックまたはハウジング262に埋め込むことができる。
【0074】
ヒューズホルダまたはヒューズブロックハウジング264には、複数セットのヒューズ102をヒューズハウジングまたはヒューズブロック262内に収容できるように、複数セットの端子T1H及びT2Hが設けられてもよい。ハウジング264は、単一部品内または複数部品内に設けられてもよく、互いに取り付けられるモジュール部品内に設けられてもよい。ハウジング264は、オープンスタイルのヒューズブロックとして構成されてもよく、または必要に応じてヒューズ102を部分的にまたは完全に囲んでもよい。
【0075】
ハウジング264に設けられた端子T1H及びT2Hは、ヒューズ102の端子T1F及びT2Fを受け入れて保持するように構造的に構成された弾性ばねクリップを含んでもよい。ヒューズ端子T1F及びT2Fは、エンドキャップまたはフェルール、ナイフブレード接点、または端子ブレードを含むが、必ずしもそれらに限定されない任意の形状及び構造的構成で設けられてもよい。それゆえに、ヒューズホルダまたはヒューズブロックハウジング264上の端子T1H及びT2Hは、ヒューズ102の端子T1F及びT2Fと嵌合するように変えられてもよい。ヒューズ拒絶機能は、ヒューズ102の端子T1F及びT2Fに内蔵されてもよく、及び/または互換性のないヒューズの取り付けを防止するためにハウジング264に組み込まれてもよい。
【0076】
ハウジング264上に設けられた端子T1H及びT2Hはまた、ボックスラグ、ばねクランプ、またはヒューズブロックまたはハウジング262へのライン及び負荷側電気接続を確立するために利用されるワイヤの端部を受け入れ保持するように構成された他の端子などの端子機能を含む。代わりに、パネルマウントクリップなど、ならびにライン及び負荷回路104、106への機械的及び電気的接続を確立するための別の端子構造を設けてもよい。
【0077】
図12は、本発明の一実施形態による第3の例示的な電流検出システム270を模式的に表す。システム270は、ライン側及び負荷側回路104、106への電気的接続を構造的に確立するようにそれぞれ構成された端子T
1L及びT
2Lを備えたハウジングまたは基部274を含む可溶式断路スイッチ装置272を含む。スイッチ276がハウジングまたは基部274に設けられており、それは断路スイッチ装置272を通る電流経路を形成または遮断するために選択的に開閉されてもよく、ヒューズ102が取り付けられスイッチ276が閉じられると、ヒューズ102のヒューズ素子120はライン及び負荷側回路104、106の間の電気的接続を完成する。基部274は、いくつかの実施形態では、イートン(Eaton)社、セントルイス、ミズーリ州によるバスマン(Bussmann)製コンパクトサーキットプロテクター(CCP)として構成されてもよい。
図12の回路図から分かるように、断路スイッチ装置272はインライン回路遮断器を含まず、それゆえに、従来のインライン回路遮断器及びヒューズの組合せよりも小さい。
【0078】
ヒューズ102の端子T1F及びT2Fは、ヒューズ素子120を通して電気的接続が確立されるように、基部274の相補端子と構造的に嵌合するように構成される。基部274の相補端子は、ヒューズ102の端子T1F及びT2Fを受け入れて保持するように構造的に構成された弾性ばねクリップを含んでもよい。ヒューズ端子T1F及びT2Fは、エンドキャップまたはフェルール、ナイフブレード接点、または端子ブレードを含むが、必ずしもそれらに限定されない任意の形状及び構造的構成で設けられてもよい。それゆえに、ヒューズホルダまたはヒューズブロックハウジング上の相補端子は、ヒューズ102の端子T1F及びT2Fと嵌合するように変えられてもよい。ヒューズ拒絶機能は、ヒューズ102の端子T1F及びT2Fに内蔵されてもよく、及び/または互換性のないヒューズの取り付けを防止するためにハウジング274に組み込まれてもよい。ヒューズ102が取り付けられると、スイッチ276は、ヒューズ素子120を通して、そしてライン側及びロード側回路104、106の間の電気接続を接続または切断するように動作し得る。そのようにして、スイッチ276は、ヒューズ102が所定の位置に留まる間、装置272を通る回路経路の接続及び切断を提供する。
【0079】
図12に示す実施形態において、回路110は、ヒューズ102のハウジング152内に設けられていないが、代わりに、断路スイッチ装置272の基部274の上または中に設けられている。そのようにして、この実施形態の回路110は、ヒューズ102の代わりに基部274に埋め込まれている。しかしながら、回路110の動作は同じままで、ラベル256及びリーダ254が同様の効果を有して上述のように設けられてもよい。
【0080】
システム250において上述のように回路110がヒューズ102内に埋め込まれている代替の実施形態では、リーダ144を基部274に埋め込むことができる。
【0081】
基部274には、複数セットのヒューズ102を収容することができるように、複数セットの端子が設けられてもよい。基部274は、単一部品内または複数部品内に設けられてもよく、互いに取り付けられるモジュール部品内に設けられてもよい。基部274は、必要に応じてヒューズ102を部分的にまたは完全に囲んでもよい。
【0082】
基部274上に設けられた端子T1L及びT2Lはまた、ボックスラグ、ばねクランプ、または断路スイッチ装置272へのライン側及び負荷側電気接続を確立するために利用されるワイヤの端部を受け入れ保持するように構成された他の端子などの端子機能を含む。代わりに、パネルマウントクリップなど、ならびにライン及び負荷回路104、106への機械的及び電気的接続を確立するための別の端子構造を設けてもよい。
【0083】
システム250、260及び270を考慮して、電流検出システムの小型で簡易なアーキテクチャをフレキシブルに実装して、有利にはヒューズ両端の電圧を検出し、コスト効率の高い方法で熱平衡及び非熱平衡特性によって電流を算出し得る。
図1に示されたような抵抗性シャントを含むがそれに限定されないより高価かつより大量の電流検出ソリューションは、説明されたようなヒューズを介したよりコンパクトで経済的な電流検出を優先して、回避されることができる。
【0084】
本発明の有利な点及び有益性は、開示された例示的な実施形態において今や十分に実証されたと信じる。
【0085】
電力システムに接続されたときに非線形抵抗を有する導体と、導体の両端に検出された電圧を受け取るプロセッサであって、検出された電圧の第1の検知ステートと、導体の熱平衡特性とに少なくとも基づいて、導体を通って流れる電流を反復して算出するように動作可能なプロセッサと、を含む、電流検出システムの一実施形態が開示された。
【0086】
オプションで、導体はヒューズ素子であってもよい。ヒューズ素子はヒューズハウジング内に収納されてもよく、また、プロセッサもヒューズハウジング内に収納されてもよい。代わりに、システムはヒューズホルダを含んでもよく、プロセッサはヒューズホルダ上に設けられてもよい。さらに別の代替として、システムは断路スイッチを含んでもよく、プロセッサは断路スイッチ上に設けられてもよい。
【0087】
システムは、プロセッサと通信するように構成されているリーダ装置をさらに含み得る。システムは、導体に関連付けられたラベルをさらに備え得、リーダ装置は、ラベルを読み取り、導体を通って流れる電流を算出するためにラベルからの情報を利用するように構成され得る。
【0088】
プロセッサは、検出された電圧の第2の検知ステートと、導体の非熱平衡特性とに少なくとも基づいて、導体を通って流れる電流を算出するようにさらに動作可能であり得る。プロセッサは、検出された電圧の検知ステートの変化率を、所定のランプ速度閾値と比較するように構成され得る。検出された電圧の検知ステートの変化率が、所定のランプ速度閾値未満である場合、プロセッサは、抵抗と時間との逆指数関係に基づいて、電流を算出するように動作可能であり得る。検出された電圧の検知ステートの変化率が、所定のランプ速度閾値を上回る場合、プロセッサは、最後に先行して算出導体の抵抗に基づいて、電流を算出するように動作可能であり得る。
【0089】
ハウジング、第1及び第2の端子素子、及び電力システムに接続されるときに非線形抵抗を有するヒューズ素子を含む電気ヒューズと、ヒューズ素子の両端で検出された電圧を受け取るプロセッサであって、ヒューズ素子の両端で検出された電圧の第1の検知ステート及び第2の検知ステートのうちの少なくとも1つに依存して、ヒューズ素子を通って流れる電流を異なる方法で反復して算出するように動作可能である、プロセッサと、を含み、ヒューズ素子の両端で検出された電圧の第1の検知ステートでは、ヒューズ素子の両端で検出された電圧と、ヒューズ素子の熱平衡特性とに基づいて、電流が算出され、ヒューズ素子の両端で検出された電圧の第2の検知ステートでは、ヒューズ素子の両端で検出された前記電圧と、前記ヒューズ素子の非熱平衡特性とに基づいて、電流が算出される、電流検出システムの一実施形態が開示された。
【0090】
オプションで、プロセッサはヒューズハウジング内に収納され得る。システムはヒューズホルダをさらに備えてもよく、プロセッサはヒューズホルダ上に設けられてもよい。システムは代替的に断路スイッチを含んでもよく、プロセッサは断路スイッチ上に設けられてもよい。電気ヒューズは、バーコード及びRFIDタグのうちの少なくとも一方を含んでもよく、システムは、バーコード及びRFIDタグのうちの少なくとも一方と通信し、電流算出を行うための情報を得るように構成されたリーダ装置をさらに含んでもよい。ラベルは、電気ヒューズに関連付けられ得、リーダ装置は、ラベルを読み取り、適用可能な熱平衡特性及び非熱平衡特性を決定するために、ラベルからの情報を利用するように構成され得る。
【0091】
電力システムにおける電流を検出する方法も開示された。本方法は、電力システムに接続されたときに非線形抵抗を有する導体を設けることと、導体の両端の電圧を検出することと、検出された電圧の第1の検知ステートと、導体の熱平衡特性とに少なくとも基づいて、導体を通って流れる電流を算出することと、を含む。
【0092】
本方法は、電力システムに接続されたときに非線形抵抗を有する導体を設けることが、ヒューズ素子を含む電気ヒューズを設けることをオプションで含んでもよい。ヒューズは、ヒューズハウジングを含んでもよく、導体の両端の電圧を検出することは、ヒューズハウジング内の場所でヒューズ素子の両端の電圧を検出することを含んでもよい。
【0093】
この記載された説明は、最善の様式を含めて本発明を開示するために実施例を使用し、また当業者が本発明を実践することを可能にするためにも実施例を使用し、それには任意の装置またはシステムを作成しかつ使用すること及び組み込まれた方法を実行することが含まれる。本発明の特許可能な範囲は、特許請求の範囲によって定義され、当業者が思い付く他の実施例を含み得る。そのような他の実施例は、それらが請求項の範囲の文字通りの言葉と異ならない構造的要素を有する場合、またはそれらが請求項の文字通りの言葉との実質的な相違がない同等の構造的要素を含む場合、特許請求の範囲内にあることが意図されている。