(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】車両用バックドア
(51)【国際特許分類】
B60J 5/10 20060101AFI20221125BHJP
【FI】
B60J5/10 R
(21)【出願番号】P 2019004992
(22)【出願日】2019-01-16
【審査請求日】2021-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】390026538
【氏名又は名称】ダイキョーニシカワ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】糠川 陽介
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 和裕
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-84106(JP,A)
【文献】特開2018-167728(JP,A)
【文献】特開2000-289661(JP,A)
【文献】実開昭56-6678(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 63/00-63/48,
65/00-65/82
B60J 5/00- 5/14
B60R 13/01-13/04,
13/08
B62D 17/00-25/08,
25/14-29/04,
41/00-67/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両後方に臨む第1内側パネル部(45)と、当該第1内側パネル部(45)の上下方向一方の端縁に車両前方に向かって突設された第2内側パネル部(47)とで構成された内側コーナー部(49)が形成されたインナーパネル(5)と、
上記インナーパネル(5)の第1内側パネル部(45)に対向する第1外側パネル部(65)と、上記インナーパネル(5)の第2内側パネル部(67)に対向する第2外側パネル部(67)とで構成された外側コーナー部(69)が形成され、当該外側コーナー部(69)が車両後方から上記内側コーナー部(49)に接着剤(55)を介して接着されたアウターパネル(7b)とを備えた車両用バックドアであって、
上記インナーパネル(5)の上記内側コーナー部(49)よりも上下方向他方における車幅方向両側には、位置決め部(25)が設けられ、
上記アウターパネル(7b)は、車幅方向外側に向かって車両前方に湾曲した湾曲状態で上記インナーパネル(5)に組み付けられており、上記アウターパネル(7b)の車幅方向両側の上下方向他方の端部には、被位置決め部(71b)が設けられ、
上記位置決め部(25)及び上記被位置決め部(71b)の一方は、位置決め孔(71b)であり、上記位置決め部(25)及び上記被位置決め部(71b)の他方は、上記位置決め孔(71b)を貫通する位置決め突起(25)であり、上記位置決め孔(71b)の外周縁及び位置決め突起(25)のうちの一方には、車両前方に向かって車幅方向内側に傾斜するガイド面(25a)が形成され、
上記アウターパネル(7b)を上記湾曲状態よりも車幅方向に広がるように撓ませて、上記位置決め孔(71b)に上記位置決め突起(25)の先端を挿入し、かつ上記アウターパネル(7b)の外側コーナー部(69)を上記インナーパネル(5)の内側コーナー部(49)に対して離間する方向に撓ませた組付準備状態から、上記アウターパネル(7b)を、上記被位置決め部(71b)を中心に、外側コーナー部(69)が内側コーナー部(49)に接近するように回転させるとともに、上記位置決め孔(71b)の外周縁及び位置決め突起(25)のうちの他方を上記ガイド面(25a)に摺接させて上記アウターパネル(7b)の被位置決め部(71b)を上記インナーパネル(5)側に向かって車幅方向内側に案内することで、上記アウターパネル(7b)を車幅方向外側に向かって上記インナーパネル(5)側に湾曲させて上記インナーパネル(5)に組み付けるようになっていることを特徴とする車両用バックドア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インナーパネルにアウターパネルが接着剤で接着された車両用バックドアに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両後方に臨む第1内側パネル部と、当該第1内側パネル部の下端縁に車両前方に向かって突設された第2内側パネル部とで構成された内側コーナー部が形成されたインナーパネルと、上記インナーパネルの第1内側パネル部に対向する第1外側パネル部と、上記インナーパネルの第2内側パネル部に対向する第2外側パネル部とで構成された外側コーナー部が形成され、当該外側コーナー部が車両後方から上記内側コーナー部に接着剤を介して接着されたアウターパネルとを備え、上記インナーパネルの上記内側コーナー部よりも上方における車幅方向両側には、位置決め孔が設けられ、上記アウターパネルの車幅方向両側の上端部には、位置決め突起が設けられた車両用バックドアが開示されている。この車両用バックドアは、アウターパネルの位置決め突起をインナーパネルの位置決め孔に挿入し、かつ上記アウターパネルの外側コーナー部を上記インナーパネルの内側コーナー部に対して離間させた組付準備状態から、上記アウターパネルを、上記位置決め突起を中心に上記外側コーナー部が内側コーナー部に接近する方向に回転させることで、上記アウターパネルを上記インナーパネルに組み付けるようになっている。また、インナーパネルの位置決め孔を、ピラー部の底面部よりも車両後側に配設された橋絡片に形成しているので、位置決め孔をピラー部の底面部に形成した場合に比べ、アウターパネルの外側コーナー部がインナーパネルの内側コーナー部に塗布された接着剤に干渉しにくくなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のように、インナーパネルの位置決め孔を上記橋絡片に配置しても、アウターパネルの位置決め突起配設箇所と外側コーナー部との間の領域が下方に向かって車両後方に傾斜又は湾曲している場合等、アウターパネルの形状によっては、アウターパネルの外側コーナー部がインナーパネルの内側コーナー部に塗布された接着剤に干渉するのを防止できず、インナーパネルとアウターパネルとの間の接着不良や水漏れが発生する虞がある。
【0005】
また、アウターパネルの形状として、車幅方向外側に向かって車両前方に湾曲した形状を採用したいという要請がある。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、アウターパネルの形状として、車幅方向外側に向かって車両前方に湾曲した形状を採用した場合におけるインナーパネルとアウターパネルとの間の接着不良や水漏れを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明は、組付時に、アウターパネルの外側コーナー部をインナーパネルの内側コーナー部に対して離間する方向に撓ませることで、アウターパネル又はインナーパネルと接着剤との干渉を回避できるようにしたことを特徴とする。
【0008】
具体的には、本発明は、車両後方に臨む第1内側パネル部と、当該第1内側パネル部の上下方向一方の端縁に車両前方に向かって突設された第2内側パネル部とで構成された内側コーナー部が形成されたインナーパネルと、上記インナーパネルの第1内側パネル部に対向する第1外側パネル部と、上記インナーパネルの第2内側パネル部に対向する第2外側パネル部とで構成された外側コーナー部が形成され、当該外側コーナー部が車両後方から上記内側コーナー部に接着剤を介して接着されたアウターパネルと備えた車両用バックドアを対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0009】
すなわち、本発明は、上記インナーパネルの上記内側コーナー部よりも上下方向他方における車幅方向両側には、位置決め部が設けられ、上記アウターパネルは、車幅方向外側に向かって車両前方に湾曲した湾曲状態で上記インナーパネルに組み付けられており、上記アウターパネルの車幅方向両側の上下方向他方の端部には、被位置決め部が設けられ、上記位置決め部及び上記被位置決め部の一方は、位置決め孔であり、上記位置決め部及び上記被位置決め部の他方は、上記位置決め孔を貫通する位置決め突起であり、上記位置決め孔の外周縁及び位置決め突起のうちの一方には、車両前方に向かって車幅方向内側に傾斜するガイド面が形成され、上記アウターパネルを上記湾曲状態よりも車幅方向に広がるように撓ませて、上記位置決め孔に上記位置決め突起の先端を挿入し、かつ上記アウターパネルの外側コーナー部を上記インナーパネルの内側コーナー部に対して離間する方向に撓ませた組付準備状態から、上記アウターパネルを、上記被位置決め部を中心に、外側コーナー部が内側コーナー部に接近するように回転させるとともに、上記位置決め孔の外周縁及び位置決め突起のうちの他方を上記ガイド面に摺接させて上記アウターパネルの被位置決め部を上記インナーパネル側に向かって車幅方向内側に案内することで、上記アウターパネルを車幅方向外側に向かって上記インナーパネル側に湾曲させて上記インナーパネルに組み付けるようになっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、組付準備状態で、アウターパネルを車幅方向に広がるように撓ませるので、アウターパネルの外側コーナー部をインナーパネルの内側コーナー部に対して離間する方向に撓ませることができ、外側コーナー部及び内側コーナー部の一方に塗布された接着剤に外側コーナー部及び内側コーナー部の他方が干渉して当該接着剤を削ぎ落とすのを回避できる。したがって、アウターパネルの形状として、車幅方向外側に向かって車両前方に湾曲した形状を採用した場合におけるインナーパネルとアウターパネルとの間の接着不良や水漏れを防止できる。
【0011】
また、組付準備状態で、アウターパネルの外側コーナー部をインナーパネルの内側コーナー部に対して離間する方向に撓まないようにした場合に比べ、アウターパネルの被位置決め部を比較的車両前方に配置しても、外側コーナー部及び内側コーナー部の一方に塗布された接着剤に外側コーナー部及び内側コーナー部の他方が組付時に干渉するのを回避できる。したがって、車両用バックドアの形状の自由度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】窓パネルを取り外した状態での本発明の実施形態に係る車両用バックドアの背面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る車両用バックドアの分解斜視図である。
【
図3】
図1のIII-III線における断面図である。
【
図7】インナーパネルにロアアウターパネルを組み付ける工程を示すVII-VII線における断面図であり、(a)は、ロアアウターパネルを、その上側部分よりも下側部分がインナーパネルに対して離間するように傾斜させた状態を示し、(b)は、ロアアウターパネルの下側位置決め孔にインナーパネルの下側位置決め突起の先端を挿入した状態を示し、(c)は、ロアアウターパネルの外側コーナー部を、インナーパネルの内側コーナー部に塗布された第1の接着剤に当接させた状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0014】
図1~4は、本発明の実施形態に係る車両用バックドア1を示す。このバックドア1は、ハッチバック車の車体後端に設けられたバックドア開口を開閉する上下開閉式のバックドアである。
【0015】
バックドア1は、
図2に示すように、車内側に位置する樹脂製のインナーパネル5と、車外側に位置する樹脂製のアウターパネル7と、窓パネル9とを備える。
【0016】
インナーパネル5は、射出成形などで成形される一枚物のパネルであって、例えば、ガラス繊維入りポリプロピレン(PP-GF;Polypropylene Glass Fiber)や炭素繊維入りポリプロピレン(PP-CF:Polypropylene Carbon Fiber)などの繊維補強材を含有する熱可塑性樹脂からなる。
【0017】
インナーパネル5は、アウターパネル7と車両前後方向に対向し、当該インナーパネル5の主体をなす本体部11を有する。
【0018】
インナーパネル5の本体部11の上半部分は、略台形状に形成され、当該上半部分には、車幅方向に延びる窓用開口13が形成されている。窓用開口13は、インナーパネル5の本体部11の上半部分と相似形の略台形状に形成されている。また、インナーパネル5の本体部11の上半部分は、下方に向かって車両後方に傾斜している。
【0019】
インナーパネル5の本体部11の外周縁には、アウターパネル7側に立ち上がる外側立壁部15が全周に亘って環状に設けられている。この外側立壁部15の後端には、接合用の外側フランジ17が外側方に張り出すように設けられている。
【0020】
また、インナーパネル5の本体部11の窓用開口13周りには、アウターパネル7側に立ち上がる内側立壁部19が全周に亘って環状に設けられている。この内側立壁部19の後端には、接合用の内側フランジ21が窓用開口13の内方に張り出すように設けられている。
【0021】
また、インナーパネル5の窓用開口13の下端部近傍の車幅方向両側では、
図5及び
図6にも示すように、外側立壁部15と内側立壁部19とがその板面を車両前後方向に向けた板状の下側橋絡部23によって橋絡されている。各下側橋絡部23の上下方向中途部には、板面を上下方向に向けて車両後方に向かって突出する板状の位置決め部としての下側位置決め突起25が形成されている。当該下側位置決め突起25の基端部を除く車幅方向内側の端縁には、車両前方に向かって車幅方向内側に傾斜するガイド面25aが形成され、当該ガイド面25aの基端側には、下側橋絡部23の後面に対して垂直な位置決め面25bが形成されている。当該下側位置決め突起25の車幅方向外側の端縁には、下側橋絡部23の後面に対して垂直な垂直面25cが形成されている。下側橋絡部23の後面における下側位置決め突起25の上下方向両側には、板面を車幅方向に向けた板状の補強部27が突設され、各補強部27は、下側位置決め突起25に連結されている。両補強部27の先端面(後面)における反下側位置決め突起25側の端部には、反下側位置決め突起25側に向かって車両前方に傾斜する傾斜面27aが形成されている。両補強部27の先端面における上記傾斜面27aを除く領域は、上記下側位置決め突起25の先端面と面一をなしている。また、各下側橋絡部23の上端縁部には、リブ28が表裏方向に突設されている。
【0022】
一方、インナーパネル5の窓用開口13の上端部近傍の車幅方向両側では、外側立壁部15と内側立壁部19とがその板面を車両前後方向に向けた板状の上側橋絡部29によって橋絡されている。当該上側橋絡部29には、車両後方に向かって突出する上側位置決め突起31が突設されている。
【0023】
インナーパネル5の外周部と窓用開口13周りとには、バックドア1がバックドア開口を閉じた状態のときに、車内への雨風や埃、騒音などの浸入を防ぐために車体に取り付けられたウェザストリップ(図示せず)が車両前方から密着する。
【0024】
また、インナーパネル5の本体部11の車幅方向中央部における窓用開口13から下側に若干離れた領域には、車両後方に凹む平面視矩形状の凹所33が設けられ、該凹所33の上端部には、その下側よりもさらに車両後方に凹む上側凹部35が車幅方向全体に亘って形成されている。当該上側凹部35は、車幅方向に延びる第1凹部35aと、該第1凹部35aの車幅方向両端部から下方に突出する第2凹部35bとからなる。また、両第2凹部35bに車幅方向両側から挟まれた空間Sには、ロック装置のロック状態を操作するノブ機構やライセンスプレート照明用のランプ(共に不図示)が配設される。また、凹所33底面の下半部の車幅方向中央部には、後述するラッチ取付部41にラッチを取り付けたり、ハーネス等を配線したりするためのメンテナンス用の作業用開口37が形成されている。凹所33の下側側面の車幅方向両端部は、インナーパネル5の本体部11から車両後方に向かって突出する下側連結リブ39によって下方の外側立壁部15と連結されている。また、上側凹部35を含む凹所33の上側側面の車幅方向両端部は、インナーパネル5の本体部11から車両後方に向かって突出する上側連結リブ40によって窓用開口13の下方の内側立壁部19と連結されている。外側立壁部15の車幅方向中央には、ラッチ(図示せず)が取り付けられるラッチ取付部41が設けられている。ラッチは、バックドア開口の下縁部に設けられたストライカに着脱自在に係合する装置であって、ストライカと協働してバックドア1を閉状態で車体にロックするロック装置である。
【0025】
第2凹部35bの底面(後面)は、車両後方に臨む第1内側パネル部45を構成し、第2凹部35bの下側側面は、この第1内側パネル部45の下端縁に車体前方に向かって突設された第2内側パネル部47を構成し、これらと第1内側パネル部45と第2内側パネル部47とで、内側コーナー部49が構成されている。
【0026】
また、インナーパネル5の上端部における車幅方向両側には、ヒンジ取付部51が設けられている。これらヒンジ取付部51には、バックドア開口の上縁部に回転軸を車幅方向に沿わせて固定される開閉用ヒンジ(不図示)がボルト等の留め具で前方から取り付けられて固定される。バックドア1は、この開閉用ヒンジを介して車体に開閉可能に取り付けられる。
【0027】
上述のように構成されたインナーパネル5には、インナートリム43が上記凹所33全体を車両前方から覆うように着脱可能に取り付けられている。
【0028】
アウターパネル7は、上下に2分割され、上側に位置するアッパアウターパネル7aと、下側に位置するロアアウターパネル7bとで構成されている。これらアッパアウターパネル7a及びロアアウターパネル7bは、例えば、タルク入りポリプロピレン(PP-T:Polypropylene Talc)やそれにエチレンプロピレンジエンメチレンゴム(EPDM:Ethylene Propylene Diene Monomer)を混合した合成樹脂からなり、例えば射出成形によって成形される。
【0029】
アッパアウターパネル7aは、その主体をなす車幅方向に長い長尺状のアッパ側本体部53を有している。アッパ側本体部53の下端部には、前方に凹むアッパ側凹所53aが車幅方向全体に亘って設けられている。アッパ側本体部53の下端縁の車幅方向両端部には、板状の上側延出部59が下方に向けて延設されている。この上側延出部59の延出方向中途部には、上側段差部59aが、当該上側段差部59aの先端側が基端側よりも車両前方に位置するように形成されている。上側段差部59aよりも基端側の上側延出部59の車幅方向内側の端縁は、上側延出部59が先端側に向かって徐々に幅狭となるように湾曲している。また、上側延出部59の上側段差部59aよりも先端側は、基端側よりも幅狭になっている。そして、上側延出部59の上側段差部59aよりも先端側には、円形の上側位置決め孔59bが形成されている。
【0030】
上述のように構成されたアッパアウターパネル7aは、アッパ側本体部53を窓用開口13よりも上側のインナーパネル5に対向させた状態で、その外周縁部を、インナーパネル5の上側橋絡部29よりも上側に位置する外側フランジ17と内側フランジ21とに第1の接着剤55を介して接着することにより、インナーパネル5に車両後方から組み付けられている。また、アッパアウターパネル7aの各上側位置決め孔59bには、上記インナーパネル5の上側位置決め突起31が貫通している。アッパアウターパネル7aのインナーパネル5への接着時には、上側位置決め孔59bに、上記インナーパネル5の上側位置決め突起31を挿入することで、アッパアウターパネル7aがインナーパネル5に対して位置決めされる。
【0031】
上記ロアアウターパネル7bは、車幅方向外側に向かって車両前方に湾曲している。上記ロアアウターパネル7bは、その主体をなすロア側本体部61を有している。ロア側本体部61の中央部には、前方に向かって凹んだプレート取付凹部63が設けられている。プレート取付凹部63の開放面は、上辺が下辺よりも大きい台形状に形成されている。このプレート取付凹部63は、上方に向かって前側に若干傾斜した姿勢で後方に臨む底面部63aと、この底面部63aの左右両側で後方に延びる一対の側壁部63bと、底面部63aの上側で一対の側壁部63bの間を前後方向に延びる上壁部63cとを備える。また、プレート取付凹部63よりも上方のロア側本体部61は、上記インナーパネル5の本体部11と沿うように、下方に向かって車両後方に傾斜している。
【0032】
したがって、ロアアウターパネル7bのロア側本体部61におけるプレート取付凹部63に上方から隣り合う領域が、第1外側パネル部65を構成するとともに、プレート取付凹部63の上壁部63cが第2外側パネル部67を構成し、これら第1外側パネル部65と第2外側パネル部67とで外側コーナー部69が構成されている。当該外側コーナー部69は、車両後方に撓み可能に形成されている。
【0033】
プレート取付凹部63の底面部63aには、ライセンスプレート(ナンバープレート)が取り付けられる。また、プレート取付凹部63の上壁部63cには、図示しないが、空間Sに配設されたノブ機構を操作するためのノブ用開口と、同じく空間Sに配設されたライセンスプレート照明用のランプの光を通す投光用開口とが形成されている。
【0034】
また、ロアアウターパネル7bのロア側本体部61の上端縁には、前方に凹むロア側凹所61aが車幅方向全体に亘って設けられている。ロア側本体部61の上端縁の車幅方向両端部には、板状の下側延出部71が上方に向けて延設されている。当該下側延出部71も、上記インナーパネル5の本体部11と沿うように、下方に向かって車両後方に傾斜している。この下側延出部71の延出方向中途部には、下側段差部71aが、当該下側段差部71aの先端側が基端側よりも車両前方に位置するように形成されている。下側延出部71の下側段差部71aよりも基端側の車幅方向内側の端縁は、下側延出部71が先端側に向かって徐々に幅狭となるように湾曲している。また、下側延出部71の下側段差部71aよりも先端側は、基端側よりも幅狭になっている。そして、下側延出部71の下側段差部71aよりも先端側には、車幅方向に長い長孔形状の被位置決め部としての下側位置決め孔71bが形成されている。各下側延出部71の先端縁及び車幅方向両端縁には、補強リブ73が車両後方に向けて突設されている。
【0035】
上述のように構成されたロアアウターパネル7bは、車幅方向外側に向かって車両前方に湾曲した湾曲状態で、インナーパネル5の下半部分に車両後方から組み付けられている。ロアアウターパネル7bの外周縁部は、インナーパネル5の下側橋絡部23よりも下側に位置する外側フランジ17と内側フランジ21とに第1の接着剤55を介して接着されている。また、ロアアウターパネル7bの外側コーナー部69は、インナーパネル5の内側コーナー部49に第1の接着剤55を介して接着されている。詳しくは、ロアアウターパネル7bの第1外側パネル部65は、インナーパネル5の第1内側パネル部45に対向して第1の接着剤55を介して接着され、ロアアウターパネル7bの第2外側パネル部67は、インナーパネル5の第2内側パネル部47に対向して第1の接着剤55を介して接着されている。また、ロアアウターパネル7bの各下側位置決め孔71bには、インナーパネル5の下側位置決め突起25が貫通している。そして、下側位置決め突起25の位置決め面25bが下側位置決め孔71bの内周面に車幅方向外側から当接し、下側位置決め突起25の垂直面25cが下側位置決め孔71bの内周面に車幅方向内側から当接することで、ロアアウターパネル7bがインナーパネル5に対して車幅方向に位置決めされている。また、上側の補強部27の上端面が下側位置決め孔71bの内周面に下方から当接し、下側の補強部27の下端面が下側位置決め孔71bの内周面に上方から当接することで、ロアアウターパネル7bがインナーパネル5に対して上下方向に位置決めされている。
【0036】
窓パネル9は、ガラス又は樹脂からなり、
図2に示すように、バックドア1の左右両端に亘って車幅方向に延びる横長の略台形状に形成されている。この窓パネル9は、その上下方向両端部を、アッパアウターパネル7aのアッパ側凹所53a及びロアアウターパネル7bのロア側凹所61aに嵌め込んだ状態で窓用開口13を塞ぐとともに、窓用開口13の車幅方向両側のインナーパネル5を車両後方から覆っている。そして、窓パネル9の上端縁部及び下端縁部は、アッパアウターパネル7aのアッパ側凹所53a及びロアアウターパネル7bのロア側凹所61aに車両後方から第2の接着剤(図示せず)により接着され、窓パネル9の車幅方向両端縁部は、アッパアウターパネル7aのアッパ側凹所53aと、ロアアウターパネル7bのロア側凹所61aと、これらアッパ側凹所53とロア側凹所61aとの間に位置するインナーパネル5の外側フランジ17及び内側フランジ21とに車両後方から第2の接着剤(図示せず)により接着されている。
【0037】
窓パネル9のうち窓用開口13に対応する領域は透明な窓領域9aであって、この窓領域9aの外側に位置する領域は黒色のセラミックス等からなる隠蔽層によって隠蔽された隠蔽領域9bとなっている。窓パネル9の隠蔽領域9bは、アッパアウターパネル7aのアッパ側凹所53a及びロアアウターパネル7bのロア側凹所61aを、車両後方から覆って隠蔽している。
【0038】
次に、上述のように構成されたバックドア1の組付方法について、
図7(a)~
図7(c)を参照して説明する。なお、
図7(a)~
図7(c)において、図面の簡略化のため、ロア側本体部61におけるロア側凹所61aの図示を省略している。
【0039】
まず、インナーパネル5の外側フランジ17、内側フランジ21、第1内側パネル部45、及び第2内側パネル部47に第1の接着剤55を塗布する。
【0040】
次いで、
図7(a)に示すように、ロアアウターパネル7bを、その上側部分よりも下側部分がインナーパネル5に対して離間するように傾斜させるとともに、
図3に二点鎖線で示すように、ロアアウターパネル7bを上記湾曲状態よりも車幅方向に広がるように撓ませてロア側本体部61が車幅方向に平坦に延びる非湾曲状態とする。その後、ロアアウターパネル7bを非湾曲状態にしたまま、
図5に二点鎖線、
図7(b)に実線で示すように、ロアアウターパネル7bの下側位置決め孔71bにインナーパネル5の下側位置決め突起25の先端を挿入することにより、当該下側位置決め孔71b(ロアアウターパネル7bの上端部)をインナーパネル5に対して位置決めした組付準備状態とする。この組付準備状態では、
図7(b)に実線で示すように、上記ロアアウターパネル7bの外側コーナー部69を上記インナーパネル5の内側コーナー部49に対して離間する方向に撓ませている。このとき、ロアアウターパネル7bを非湾曲状態にしているので、上記ロアアウターパネル7bの外側コーナー部69を上記インナーパネル5の内側コーナー部49に対して離間する方向に撓ませることが可能になる。これにより、ロアアウターパネル7bの外側コーナー部69がインナーパネル5の内側コーナー部49に塗布された第1の接着剤55に干渉して当該第1の接着剤55を削ぎ落とすのを回避できる。したがって、インナーパネル5とアウターパネル7との間の接着不良や水漏れを防止できる。
【0041】
続いて、ロアアウターパネル7bを、下側位置決め孔71bを中心に、外側コーナー部69が内側コーナー部49に接近するように回転させるとともに、下側位置決め孔71bの外周縁をインナーパネル5の下側位置決め突起25のガイド面25aに摺接させてロアアウターパネル7bの下側位置決め孔71bをインナーパネル5側に向かって車幅方向内側(
図5中矢印Xで示す方向)に案内することで、
図3に一点鎖線で示すように、ロアアウターパネル7bを車幅方向外側に向かってインナーパネル5側に湾曲させる。そして、
図5に実線で示すように、下側位置決め突起25の位置決め面25bがロアアウターパネル7bの下側位置決め孔71bの内周面に対向し、インナーパネル5の下側橋絡部23における下側位置決め突起25非突設領域にロアアウターパネル7bの下側位置決め孔71bの周縁部が当接すると、
図7(c)に示すように、ロアアウターパネル7bの外側コーナー部69が、インナーパネル5の内側コーナー部49に塗布された第1の接着剤55に当接する。詳しくは、ロアアウターパネル7bの第1外側パネル部65がインナーパネル5の第1内側パネル部45に塗布された第1の接着剤55に当接し、ロアアウターパネル7bの第2外側パネル部67がインナーパネル5の第2内側パネル部47に塗布された第1の接着剤55に当接する。この状態で、ロアアウターパネル7bがインナーパネル5に対して車幅方向及び上下方向に位置決めされているとともに、ロアアウターパネル7bの上端部のインナーパネル5側への移動が、インナーパネル5の下側橋絡部23に規制されている。
【0042】
次に、アッパアウターパネル7aの上側位置決め孔59bにインナーパネル5の上側位置決め突起31を貫通させることで、アッパアウターパネル7aをインナーパネル5に対して位置決めして重ね合わせ、両者間に第1の接着剤55を介在させる。
【0043】
しかる後、アッパアウターパネル7aのアッパ側凹所53aと、ロアアウターパネル7bのロア側凹所61aと、アッパアウターパネル7aの上側延出部59と、ロアアウターパネル7bの下側延出部71と、これらアッパ側凹所53とロア側凹所61aとの間に位置するインナーパネル5の外側フランジ17及び内側フランジ21とに第2の接着剤(図示せず)を塗布し、インナーパネル5及びアウターパネル7に窓パネルを重ね合わせる。
【0044】
最後に、これらインナーパネル5、アウターパネル7及び窓パネル9を重ね合わせたままで乾燥炉に搬送し、乾燥炉で第1の接着剤55及び第2の接着剤(図示せず)を完全に硬化させることにより、インナーパネル5、アウターパネル7及び窓パネル9を互いに接着させ、バックドア1を得る。
【0045】
したがって、本実施形態によれば、組付準備状態で、
図7(b)に二点鎖線で示すように、ロアアウターパネル7bの外側コーナー部69を車両後方に撓ませないようにした場合に比べ、ロアアウターパネル7bの下側位置決め孔71bを比較的車両前方に配置しても、内側コーナー部49に塗布された第1の接着剤55に外側コーナー部69が組付時に干渉するのを回避できる。したがって、バックドア1の形状の自由度を高めることができる。
【0046】
なお、本実施形態では、インナーパネル5の下側位置決め突起25の車幅方向内側の端縁にガイド面25aを形成したが、これに代えて、ロアアウターパネル7bの下側位置決め孔71bの車幅方向内側の外周縁に、車両前方に向かって車幅方向内側に傾斜するガイド面を形成してもよい。
【0047】
また、本実施形態では、インナーパネル5に下側位置決め突起25を位置決め部として設けるとともに、ロアアウターパネル7bに下側位置決め孔71bを被位置決め部として設けたが、インナーパネル5に位置決め孔を位置決め部として設けるとともに、ロアアウターパネル7bに上記位置決め孔に貫通させる位置決め突起を被位置決め部として設けてもよい。かかる場合、位置決め突起の車幅方向外側の端縁、又は位置決め孔の車幅方向外側の外周縁に車両前方に向かって車幅方向内側に傾斜するガイド面を形成することで、位置決め孔に位置決め突起を挿入して貫通させる過程で、ロアアウターパネル7bの位置決め突起をインナーパネル5側に向かって車幅方向内側に案内できる。
【0048】
また、本実施形態では、ロアアウターパネル7bの上端部に下側位置決め孔71bを被位置決め部として設け、インナーパネル5の第1内側パネル部45の下端縁に第2内側パネル部47を車体前方に向かって突設し、内側コーナー部49よりも上方に下側位置決め突起25を位置決め部として設けたが、ロアアウターパネル7bの下端部に下側位置決め孔71bを被位置決め部として設け、インナーパネル5の第1内側パネル部45の上端縁に第2内側パネル部47を車体前方に向かって突設し、内側コーナー部49よりも下方に下側位置決め突起25を位置決め部として設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、インナーパネルにアウターパネルが接着剤で接着された車両用バックドアとして有用である。
【符号の説明】
【0050】
1 バックドア
5 インナーパネル
7b ロアアウターパネル
25 下側位置決め突起(位置決め部)
25a ガイド面
45 第1内側パネル部
47 第2内側パネル部
49 内側コーナー部
55 第1の接着剤
65 第1外側パネル部
67 第2外側パネル部
69 外側コーナー部
71b 下側位置決め孔(被位置決め部)