IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 不二ライトメタル株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-嵌合構造および嵌合部材 図1
  • 特許-嵌合構造および嵌合部材 図2
  • 特許-嵌合構造および嵌合部材 図3
  • 特許-嵌合構造および嵌合部材 図4
  • 特許-嵌合構造および嵌合部材 図5
  • 特許-嵌合構造および嵌合部材 図6
  • 特許-嵌合構造および嵌合部材 図7
  • 特許-嵌合構造および嵌合部材 図8
  • 特許-嵌合構造および嵌合部材 図9
  • 特許-嵌合構造および嵌合部材 図10
  • 特許-嵌合構造および嵌合部材 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】嵌合構造および嵌合部材
(51)【国際特許分類】
   F16B 7/04 20060101AFI20221125BHJP
   F16B 7/20 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
F16B7/04 302A
F16B7/20 A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019009832
(22)【出願日】2019-01-24
(65)【公開番号】P2020118225
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】508080609
【氏名又は名称】不二ライトメタル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126712
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 督生
(72)【発明者】
【氏名】中山 大智
(72)【発明者】
【氏名】濱崎 憲章
【審査官】児玉 由紀
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-172646(JP,U)
【文献】特開2006-052627(JP,A)
【文献】実公昭61-032876(JP,Y2)
【文献】欧州特許出願公開第00736647(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/38- 1/61
F16B 2/00- 2/26
5/00- 7/22
12/00-12/60
F16C 11/00-11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造部材同士を連結する嵌合構造であって、
受け部材と、
嵌め部材と、
前記受け部材が有する受け部材内周部と、
前記受け部材が有する受け部材外周部と、
前記嵌め部材が有する嵌め部材内周部と、
前記嵌め部材が有する嵌め部材外周部と、
前記受け部材内周部が有する受け部材第1凸部、受け部材第2凸部および受け部材第3凸部と、
前記受け部材外周部が有する受け部材係止部と、
前記嵌め部材内周部が有する嵌め部材第1凸部、嵌め部材第2凸部および嵌め部材第3凸部と、
前記嵌め部材外周部が有する嵌め部材係止部と、を備え、
前記受け部材第1凸部と前記嵌め部材第1凸部とが接触対応関係を有し、
前記受け部材第2凸部と前記嵌め部材第2凸部とが接触対応関係を有し、
前記受け部材第3凸部と前記嵌め部材第3凸部とが接触対応関係を有し、
前記受け部材係止部と前記嵌め部材係止部とが係止対応関係を有し、
前記接触対応関係において接触することで固定保持がなされ、
前記係止対応関係において係止することで係止保持がなされる、嵌合構造。
【請求項2】
前記嵌め部材内周部の内部に前記受け部材内周部が入れられて、前記受け部材に対して前記嵌め部材が嵌合方向に回動されると、
前記受け部材第1凸部と前記嵌め部材第1凸部とがかしめられ、
前記受け部材第2凸部と前記嵌め部材第2凸部とがかしめられ、
前記受け部材第3凸部と前記嵌め部材第3凸部とがかしめられる、
請求項1記載の嵌合構造。
【請求項3】
前記受け部材第1凸部と前記嵌め部材第1凸部とがかしめられ、
前記受け部材第2凸部と前記嵌め部材第2凸部とがかしめられ、
前記受け部材第3凸部と前記嵌め部材第3凸部とがかしめられることで、前記受け部材と前記嵌め部材とが嵌合される、請求項2記載の嵌合構造。
【請求項4】
前記受け部材第1凸部と前記嵌め部材第1凸部とがかしめられ、
前記受け部材第2凸部と前記嵌め部材第2凸部とがかしめられ、
前記受け部材第3凸部と前記嵌め部材第3凸部とがかしめられると、
前記受け部材係止部と前記嵌め部材係止部とがかしめられ、前記受け部材と前記嵌め部材との嵌合状態の保持を行う、請求項3記載の嵌合構造。
【請求項5】
前記嵌合方向への回動圧力が前記係止保持に必要な回動圧力よりも過剰である場合には、
前記受け部材第1凸部と前記嵌め部材第1凸部とのかしめが強化され、
前記受け部材第2凸部と前記嵌め部材第2凸部とのかしめが強化され、
前記受け部材第3凸部と前記嵌め部材第3凸部とのかしめが強化される、請求項2から4のいずれか記載の嵌合構造。
【請求項6】
前記嵌合方向と逆方向である解放方向に、前記受け部材に対して前記嵌め部材が回動されると、
前記受け部材第1凸部と前記嵌め部材第1凸部とのかしめが外れ、
前記受け部材第2凸部と前記嵌め部材第2凸部とのかしめが外れ、
前記受け部材第3凸部と前記嵌め部材第3凸部とのかしめが外れて、嵌合状態が解放される、請求項2から5のいずれか記載の嵌合構造。
【請求項7】
前記受け部材係止部と前記嵌め部材係止部との係止状態が解放されると、前記受け部材に対して、前記嵌め部材が前記解放方向に回動可能となる、請求項6記載の嵌合構造。
【請求項8】
前記受け部材は、第1構造部材につながっており、前記嵌め部材は、第2構造部材につながっており、
前記受け部材と前記嵌め部材との嵌合により、前記第1構造部材と前記第2構造部材とが連結される、請求項1から7のいずれか記載の嵌合構造。
【請求項9】
前記受け部材と前記嵌め部材の嵌合の解放により、前記第1構造部材と前記第2構造部材とが分離される、請求項8記載の嵌合構造。
【請求項10】
構造部材同士を連結する嵌合部材であって、
受け部材と、
嵌め部材と、
前記受け部材が有する受け部材内周部と、
前記受け部材が有する受け部材外周部と、
前記嵌め部材が有する嵌め部材内周部と、
前記嵌め部材が有する嵌め部材外周部と、
前記受け部材内周部が有する受け部材第1凸部、受け部材第2凸部および受け部材第3凸部と、
前記受け部材外周部が有する受け部材係止部と、
前記嵌め部材内周部が有する嵌め部材第1凸部、嵌め部材第2凸部および嵌め部材第3凸部と、
前記嵌め部材外周部が有する嵌め部材係止部と、を備え、
前記受け部材第1凸部と前記嵌め部材第1凸部とが接触対応関係を有し、
前記受け部材第2凸部と前記嵌め部材第2凸部とが接触対応関係を有し、
前記受け部材第3凸部と前記嵌め部材第3凸部とが接触対応関係を有し、
前記受け部材係止部と前記嵌め部材係止部とが係止対応関係を有し、
前記接触対応関係において接触することで固定保持がなされ、
前記係止対応関係において係止することで係止保持がなされる、嵌合部材。
【請求項11】
前記嵌め部材内周部の内部に前記受け部材内周部が入れられて、前記受け部材に対して前記嵌め部材が嵌合方向に回動されると、
前記受け部材第1凸部と前記嵌め部材第1凸部とがかしめられ、
前記受け部材第2凸部と前記嵌め部材第2凸部とがかしめられ、
前記受け部材第3凸部と前記嵌め部材第3凸部とがかしめられる、
請求項10記載の嵌合部材。
【請求項12】
前記受け部材第1凸部と前記嵌め部材第1凸部とがかしめられ、
前記受け部材第2凸部と前記嵌め部材第2凸部とがかしめられ、
前記受け部材第3凸部と前記嵌め部材第3凸部とがかしめられることで、前記受け部材と前記嵌め部材とが嵌合される、請求項11記載の嵌合部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造部材同士を連結する際に用いられる嵌合構造および嵌合部材に関する。
【背景技術】
【0002】
箱体、様々な機器のケース、筐体、壁、建築材など、様々な用途や場面で構造部材が用いられる。これらの構造部材は、大きさ、形状、態様があらかじめ一体で形成されるものもある。一方で、同じ構造部材であっても、その用途や場面によって、大きさや形状が異なることもある。たとえば、同じ目的の機器ケースであっても、収納対象の機器によって、大きさや形状が相違することもある。
【0003】
あるいは、壁や建築材などは、様々な用途や場面に応じて、様々な大きさにして使用されることがある。建築対象物によって、必要となる壁や建築物の大きさは、様々であるからである。
【0004】
このため、これらの構造部材は、用途や場面に対応した大きさ、形状などを一体で形成されるのではなく、ユニット単位の複数の構造部材を連結して必要とされる大きさや形状に仕上げることも多い。たとえば、機器のケースや箱体であれば、複数の構造部材を連結して、異なる大きさの機器ケースや箱体を作ることがある。あるいは、壁材であれば、複数の構造部材を連結して、異なる面積の壁を作ることができる。
【0005】
このように、最終的な用途や場面に対応する、種々の構造部材が広く用いられている。さらに上述のように、複数の構造部材が連結されて、最終的な用途や場面に適した大きさや形状の物体が形成できる。
【0006】
この構造部材同士を連結するに当たっては、構造部材の端部同士を溶接したり接着したりすることがあり得る。しかし端部同士の溶接や接着では、連結強度が不十分となりえる。さらには溶接や接着での作業工程の増加やコストの増加が生じ、最終的な物体を形成するのに不適である。
【0007】
このため、構造部材同士の連結において、構造部材の一部同士を嵌合させることが行われる。このため、構造部材の一部に嵌合構造が設けられている(嵌合部材が設けられている)。
【0008】
ここで、構造部材の素材としては樹脂、金属、合金など様々なものが用いられる。これらの構造部材は、種々の加工方法で形成されるが、製造コストの低下や製造工程の簡略化のために、押し出し加工で製造されることがある。押し出し加工は、金属や合金を金型に合わせて押し出して形状を形成する。この押し出し加工により、嵌合構造を備える構造部材が製造される。
【0009】
このようにして製造された構造部材の嵌合構造同士が、嵌合されて、複数の構造部材が連結される。従来技術の嵌合構造としては、いわゆる互い違いのほぞのような構造をもつものがある。凸部と凹部とを合わせることで、構造部材同士が嵌合される。このとき、凸部と凹部とがテーパー部を持っていることで、嵌合された後で、連結もなされる。
【0010】
図11は、従来技術での嵌合構造を示す模式図である。凸部101と凹部102とが嵌合することで、構造部材同士が嵌合される。ここでは、構造部材110が凸部101を備え、構造部材120が凹部102を備える。しかし後述する問題のように、ほぞのような凸部101と凹部102との面接触での嵌合である。このため、加工精度が不十分であると、隙間200が生じてしまう。隙間200が生じると、嵌合が不十分となる問題がある。
【0011】
このように構造部材同士を連結するための嵌合構造についての技術が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2013-133901号公報
【文献】特許第6228703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1は、支柱10と梁20とを連結する連結金具30が、支柱10の内部に挿入されており、支柱10には内側に凹んだ凹板11と凹板11の開口部を塞ぐ表板12とで囲まれた空洞部13が形成されており、凹板11と連結金具30とは頭部42が空洞部13に収められたボルト40で締結されており、頭部42には表板12に形成された孔に挿入されたボルトキャップ43が被せられている。外観においてボルト40が目立たず、ボルト40の締結による支柱10の窪みが表面に表れず、意匠性に優れている。ボルト40が露出していないので腐食しにくい枠材の連結構造を開示する。
【0014】
特許文献1は、一般的な「ほぞ」とは異なるが、凹部と凸部とを嵌合させることで枠材を連結させる技術を開示する。
【0015】
しかしながら、この連結構造では、次のような問題がある。
【0016】
(問題1)凸部と凹部とを嵌合させて枠材同士を確実に連結(外れたりゆるんだりしないように)するためには、凸部と凹部のそれぞれの嵌合部分に隙間がなく、ぴったりと合わさる必要がある。しかしながら、このように隙間のないぴったりとした形態とするには、部材の加工、製造を精密に行う必要がある。成型時の精度向上や、成型後に研磨などで加工精度を上げるなどの必要がある。このため、嵌合部分を含む枠材の製造における製造時間、コストが増加する問題がある。
【0017】
(問題2)問題1に対応するため、凸部と凹部との嵌合部分を緩めに(遊びを残して)製造すると、接着剤やねじなどで結合を実現する必要がある。この場合には、嵌合による連結における工程が増加する問題がある。当然に、嵌合を外す場合の不便も大きくなる。
【0018】
特許文献2は、木材の結合構造は、ほぞ穴8にほぞ6を嵌合した状態で、ピン孔10a~10cの一方開口側からピン12の頭部12bを打ち込むことにより、ほぞ穴8の少なくとも一部においてピン12がほぞ6の少なくとも一部を貫通し、ピン12の先端部12aをピン孔10a~10cの他方開口側に至らしめることでピン結合14a~14cを形成し、ピン12は、少なくとも先端部12a近傍から頭部12b近傍に亘って貫通した中空30aを有するパイプ30を含む木材結合用のピンを、開示する。
【0019】
特許文献2は、凸部と凹部とを組み合わせた後で、ピンでこれを固定する技術を開示する。
【0020】
しかしながら、特許文献2も、上述した問題2(場合によっては問題1も)を有する。凸部と凹部との嵌合による固定レベルを上げようとすると、加工精度の向上の必要があり、製造時間や製造コストの増加の問題がある。また、ピンを用いて嵌合を固定する特許文献2の技術では、上述した問題2を有している。すなわち、固定のためにピンを用いた工程が増えることで、嵌合による連結工程が増加する。また、嵌合を解放する際に不便である。
【0021】
以上を整理すると、従来技術での構造部材同士を連結させる嵌合構造では上述のような問題1、問題2があった。特に、嵌合構造同士のはめ合わせのみで十分な固定力のある嵌合を実現するには、嵌合部の加工精度を十分とする必要がある。この場合には、製造や加工時間やコストが増加する。特に面接触での嵌合では、十分な固定を生むようにぴったりとさせると、嵌合のための嵌め込みが難しくなる問題がある。逆に、遊びを残すと固定力が弱まる問題がある。もちろん、加工工程を少なくすれば、加工精度が不十分となる問題がある。
【0022】
構造部材や嵌合部が金属や合金を素材とする場合には、この加工の問題が特に大きい。
【0023】
特許文献1や2のような凸部と凹部との面接触での嵌合では、このような加工精度の問題が生じる。これは、図11で説明した問題である。
【0024】
あるいは、凸部と凹部との面接触部分の遊びをあらかじめ大きくして、接着剤やねじなどで固定する場合には、嵌合作業の工程が増加する問題がある。また、作業における不便さに加えて、嵌合を解放する場合に不便である問題もある。
【0025】
特に、構造部材同士を連結して形状や面積を変化させる必要がある場合においては、これらの問題がより大きくなる。必要に応じた数や種類の構造部材を連結したり外したりする必要があり、上述の問題は、この必要性にとって好ましくないからである。また、構造部材を連結して様々な機器のケース、筐体、壁、建築材を実現する場合には、コスト低減は必須条件である。この点においても、上述の問題は好ましくない。
【0026】
本発明は、加工や製造コストを抑えつつ接着剤やねじを必要としない、構造部材同士を連結する嵌合構造および嵌合部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
上記課題に鑑み、本発明の嵌合構造は、構造部材同士を連結する嵌合構造であって、
受け部材と、
嵌め部材と、
受け部材が有する受け部材内周部と、
受け部材が有する受け部材外周部と、
嵌め部材が有する嵌め部材内周部と、
嵌め部材が有する嵌め部材外周部と、
受け部材内周部が有する受け部材第1凸部、受け部材第2凸部および受け部材第3凸部と、
受け部材外周部が有する受け部材係止部と、
嵌め部材内周部が有する嵌め部材第1凸部、嵌め部材第2凸部および嵌め部材第3凸部と、
嵌め部材外周部が有する嵌め部材係止部と、を備え、
受け部材第1凸部と嵌め部材第1凸部とが接触対応関係を有し、
受け部材第2凸部と嵌め部材第2凸部とが接触対応関係を有し、
受け部材第3凸部と嵌め部材第3凸部とが接触対応関係を有し、
受け部材係止部と嵌め部材係止部とが係止対応関係を有し、
接触対応関係において接触することで固定保持がなされ、
係止対応関係において係止することで係止保持がなされる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の嵌合構造は、面接触ではなく点接触による嵌合と固定を実現できる。このため、嵌合固定に対応する加工精度を厳密に必要とせず、嵌合部分の加工および製造における時間やコストを低減できる。特に、金属や合金の押し出し加工のみで、嵌合部分を製造することも可能となり、製造コストを大きく低減できる。
【0029】
また、複数の点接触が回転により生じるので、回転力が高まっても嵌合固定が高まる方向に動き、緩むなどの問題を低減できる。
【0030】
加えて、停止部同士の係止により、嵌合後の固定保持を維持できる。これにより、嵌合での固定力を高めることができる。
【0031】
一方で、停止部同士の係止を外して、嵌合時と逆回転させることで、嵌合の解放が簡単にできる。嵌合と解放を繰り返すことも容易である。この嵌合構造によって、構造部材の連結や取り外しが自由にでき、用途などに応じた形状や面積の目的の物品を実現することが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の実施の形態1における嵌合部材および嵌合部材の側面図である。
図2】本発明の実施の形態1における嵌合構造の嵌合状態を示す側面図である。
図3】本発明の実施の形態1における受け部材の側面図である。
図4】本発明の実施の形態1における嵌め部材の側面図である。
図5】本発明の実施の形態2における受け部材の側面図である。
図6】本発明の実施の形態2における嵌め部材の側面図である。
図7】本発明の実施の形態2における嵌合により連結された構造部材を示す側面図である。
図8】本発明の実施の形態2における構造体の一部を示す側面図である。
図9】本発明の実施の形態2における構造体の側面図である。
図10】本発明の実施の形態2における嵌合構造で実現された枠体の斜視図である。
図11】従来技術での嵌合構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の第1の発明に係る嵌合構造は、構造部材同士を連結する嵌合構造であって、
受け部材と、
嵌め部材と、
受け部材が有する受け部材内周部と、
受け部材が有する受け部材外周部と、
嵌め部材が有する嵌め部材内周部と、
嵌め部材が有する嵌め部材外周部と、
受け部材内周部が有する受け部材第1凸部、受け部材第2凸部および受け部材第3凸部と、
受け部材外周部が有する受け部材係止部と、
嵌め部材内周部が有する嵌め部材第1凸部、嵌め部材第2凸部および嵌め部材第3凸部と、
嵌め部材外周部が有する嵌め部材係止部と、を備え、
受け部材第1凸部と嵌め部材第1凸部とが接触対応関係を有し、
受け部材第2凸部と嵌め部材第2凸部とが接触対応関係を有し、
受け部材第3凸部と嵌め部材第3凸部とが接触対応関係を有し、
受け部材係止部と嵌め部材係止部とが係止対応関係を有し、
接触対応関係において接触することで固定保持がなされ、
係止対応関係において係止することで係止保持がなされる。
【0034】
この構成により、受け部材と嵌め部材の組み合わせと回動のみで、嵌合を実現できる。
【0035】
本発明の第2の発明に係る嵌合構造では、第1の発明に加えて、嵌め部材内周部の内部に受け部材内周部が入れられて、受け部材に対して嵌め部材が嵌合方向に回動されると、
受け部材第1凸部と嵌め部材第1凸部とがかしめられ、
受け部材第2凸部と嵌め部材第2凸部とがかしめられ、
受け部材第3凸部と嵌め部材第3凸部とがかしめられる。
【0036】
この構成により、複数の凸部同士のかしめにより、受け部材と嵌め部材とが嵌合する。
【0037】
本発明の第3の発明に係る嵌合構造では、第2の発明に加えて、受け部材第1凸部と嵌め部材第1凸部とがかしめられ、
受け部材第2凸部と嵌め部材第2凸部とがかしめられ、
受け部材第3凸部と嵌め部材第3凸部とがかしめられることで、受け部材と嵌め部材とが嵌合される。
【0038】
この構成により、凸部同士のかしめによって、嵌合が実現される。
【0039】
本発明の第4の発明に係る嵌合構造では、第3の発明に加えて、受け部材第1凸部と嵌め部材第1凸部とがかしめられ、
受け部材第2凸部と嵌め部材第2凸部とがかしめられ、
受け部材第3凸部と嵌め部材第3凸部とがかしめられると、
受け部材係止部と嵌め部材係止部とがかしめられ、受け部材と嵌め部材との嵌合状態の保持を行う。
【0040】
この構成により、係止部同士の係止が、嵌合状態の保持を行い、不測の嵌合状態の分離を防止できる。
【0041】
本発明の第5の発明に係る嵌合構造では、第2から第4のいずれかの発明に加えて、受け部材第1凸部と嵌め部材第1凸部との接触位置、受け部材第2凸部と嵌め部材第2凸部との接触位置および受け部材第3凸部と嵌め部材第3凸部との接触位置により形成される円弧の回動軸と、
受け部材内周部の回動軸とは、不一致であり、不一致であることで、嵌合方向への回動が進みすぎる場合には、
受け部材第1凸部と嵌め部材第1凸部とのかしめが強化され、
受け部材第2凸部と嵌め部材第2凸部とがかしめが強化され、
受け部材第3凸部と嵌め部材第3凸部とがかしめが強化される。
【0042】
この構成により、回動が強すぎる場合や回動により強い力が加わる場合でも、嵌合が弱くなることを防止できる。
【0043】
本発明の第6の発明に係る嵌合構造では、第2から第5の発明に加えて、嵌合方向と逆方向である解放方向に、受け部材に対して嵌め部材が回動されると、
受け部材第1凸部と嵌め部材第1凸部とのかしめが外れ、
受け部材第2凸部と嵌め部材第2凸部とのかしめが外れ、
受け部材第3凸部と嵌め部材第3凸部とのかしめが外れて、嵌合状態が解放される。
【0044】
この構成により、回動のみによって、嵌合を解放することもできる。
【0045】
本発明の第7の発明に係る嵌合構造では、第6の発明に加えて、受け部材係止部と嵌め部材係止部との係止状態が解放されると、受け部材に対して、嵌め部材が解放方向に回動可能となる。
【0046】
この構成により、係止部の係止状態を解消すれば回動のみで嵌合を解放できる。このため、嵌合と解放を繰り返すことができる。
【0047】
本発明の第8の発明に係る嵌合構造では、第1から第7のいずれか発明に加えて、受け部材は、第1構造部材につながっており、嵌め部材は、第2構造部材につながっており、
受け部材と嵌め部材との嵌合により、第1構造部材と第2構造部材とが連結される。
【0048】
この構成により、構造部材の連結により、大きさを可変できる構造体を実現できる。
【0049】
本発明の第9の発明に係る嵌合構造では、第1から第9のいずれかの発明に加えて、受け部材と嵌め部材の嵌合の解放により、第1構造部材と第2構造部材とが分離される。
【0050】
この構成により、構造体を構成する構造部材の数を減少させて、構造体の大きさを小さくすることもできる。
【0051】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0052】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における嵌合部材および嵌合部材の側面図である。嵌合構造1は、嵌合部材において現れる。図1および以降の説明においては、嵌合構造として説明するが、これは嵌合部材としての説明でもある。嵌合構造1は、連結部材を嵌合する必要のある部材に現れる構造であり、嵌合構造1を部材として実現すると嵌合部材となる。下記の嵌合構造1の説明は、嵌合部材の説明として置き換えることも可能である。
【0053】
嵌合構造1は、受け部材2と嵌め部材3を備える。この受け部材2と嵌め部材3とが嵌めあわされることで嵌合が実現され、外されることで嵌合が解放される。受け部材2と嵌め部材3とは、別部材であり、図1のように物理的に分離可能であればよいが、何らかの形態でその一部同士がつながっていることなどを排除しない。受け部材2と嵌め部材3とが、組み合わせたり外したりすることで、嵌合と解放とが実現できる態様であればよい。
【0054】
受け部材2は、受け部材内周部25と受け部材外周部26を備える。受け部材内周部25および受け部材外周部26は、受け部材2の一部である。受け部材内周部25は、受け部材第1凸部21、受け部材第2凸部22、受け部材第3凸部23を備える。受け部材外周部26は、受け部材係止部24を備える。
【0055】
また、図1に示されるように、受け部材2は、受け部材内周部25が円弧のような曲線の一部を有している、受け部材外周部26は、この受け部材内周部25の外側にあり、やはり円弧のような曲線の一部を有している。もちろん、円弧のような曲線の一部であって、完全な円弧や曲線を有していなければならないわけではない。
【0056】
嵌め部材3は、嵌め部材内周部35と嵌め部材外周部36を備える。嵌め部材内周部35は、円弧のような曲線の一部を有している。嵌め部材外周部36は、この嵌め部材内周部35の外側に伸びる。嵌め部材内周部35および嵌め部材外周部36は、嵌め部材3の一部である。
【0057】
嵌め部材内周部35は、嵌め部材第1凸部31、嵌め部材第2凸部32、嵌め部材第3凸部33を備える。嵌め部材外周部36は、嵌め部材係止部34を備える。これらは、受け部材2と対応した構成である。詳細な形状などは相違するが、受け部材2と嵌め部材3とが組み合されることで嵌合構造1が実現されるので、受け部材2に備わる各要素と嵌め部材3に備わる各要素とは、対応関係を有している。
【0058】
すなわち、次のような対応関係を有している。
【0059】
受け部材第1凸部21と嵌め部材第1凸部31とは、接触対応関係を有する。
受け部材第2凸部22と嵌め部材第2凸部32とは、接触対応関係を有する。
受け部材第3凸部23と嵌め部材第3凸部33とは、接触対応関係を有する。
受け部材係止部24と嵌め部材係止部34とは、係止対応関係を有する。
【0060】
接触対応関係とは、受け部材2と嵌め部材3とが組み合されて嵌合を実現する際に、相互に接触してかしめられる(嵌めあわされる)関係である。係止対応関係とは、受け部材2と嵌め部材3とが組み合されて嵌合を実現する際に、相互に係止を実現する関係である。
【0061】
すなわち、接触対応関係において、接触することで固定保持がなされる。係止対応関係において係止することで係止保持がなされる。
【0062】
(嵌合状態)
図2は、本発明の実施の形態1における嵌合構造の嵌合状態を示す側面図である。図1の状態は、嵌合前の嵌合構造1を示している。嵌め部材内周部35の内部に受け部材内周部25が入れられる。このとき、受け部材外周部26の内部に嵌め部材外周部36が入れられる。図1図2でのいずれも、この状態が示されている。このように、まず、受け部材2と嵌め部材3とが組み合される。
【0063】
次に、受け部材2に対して嵌め部材3が図2にある嵌合方向に回動される。図2では、矢印により、嵌合方向を示している。なお、後述するが、嵌合方向と逆側の矢印が解放方向を示している。受け部材2に対して嵌め部材3が嵌合方向に回動されると、受け部材内周部25と嵌め部材内周部35とが上述した接触対応関係による接触が生じていく。同様に、受け部材外周部26と嵌め部材外周部36とが上述した係止対応関係による係止が生じていく。
【0064】
嵌合方向に回動が進むと、図1から図2の状態になる。この状態となると、接触対応関係は実際にかしめられる状態となり、係止対応関係は、実際に係止される状態となる。
【0065】
受け部材第1凸部21と嵌め部材第1凸部31とがかしめられる。接触対応関係のそれぞれが回動によって実際に接触して相互に固定される状態となる。これがかしめられた状態である。同様に、受け部材第2凸部22と嵌め部材第2凸部32とがかしめられる。合わせて、受け部材第3凸部23と嵌め部材第3凸部33とがかしめられる。図2は、この状態を示している。
【0066】
このように、受け部材第1凸部21と嵌め部材第2凸部31とがかしめられ、受け部材第2凸部22嵌め部材第2凸部32とがかしめられ、受け部材第3凸部23と嵌め部材第3凸部33とがかしめられると、受け部材内周部25と嵌め部材内周部35とが嵌合する。すなわち、受け部材2と嵌め部材3とが嵌合状態となる。
【0067】
回動方向に回動されて、受け部材第1凸部21と嵌め部材第1凸部31とが接触状態となる位置状態で、受け部材第2凸部22と嵌め部材第2凸部32も接触状態となり、受け部材第3凸部23と嵌め部材第3凸部33も接触状態となる。受け部材2と嵌め部材3とは、このような位置関係も有している。このため、嵌め部材内周部35の内部に受け部材内周部25が挿入されて、嵌合方向に回動されれば、上述の通り、それぞれの凸部同士が同時にかしめられる。この同時にかしめられることにより、受け部材2と嵌め部材3とは嵌合状態となる。
【0068】
また、受け部材第1凸部21と嵌め部材第1凸部31とがかしめられ、受け部材第2凸部22と嵌め部材第2凸部32とがかしめられ、受け部材第3凸部23と嵌め部材第3凸部33とがかしめられると、受け部材係止部24と嵌め部材係止部34とがかしめられて係止状態となる。受け部材係止部24と嵌め部材係止部34の位置関係も、それぞれの凸部の接触位置と対応している。
【0069】
このため、図2に示されるように、嵌合方向に回動されて所定の位置(受け部材第1凸部21と嵌め部材第1凸部31とがかしめられる位置)になると、すべての凸部と係止部が、かしめられる状態となる。このかしめられる状態により、受け部材2と嵌め部材3とが嵌合状態となる。また、受け部材係止部24と嵌め部材係止部34との係止状態により、嵌合状態の保持が行われる。
【0070】
すなわち、第1凸部~第3凸部の相互のかしめによって、嵌合が実現される。加えて、係止部同士の相互のかしめによって、嵌合状態の保持が行われる。このようにして、受け部材2と嵌め部材3とは、嵌合構造1の嵌合を実現できる。加えて、嵌合状態を十分に保持できるので、嵌合構造1は、強い嵌合力を実現できる。
【0071】
また、従来技術のほぞのはめ合わせのように、サブミリ単位の加工精度を必要としない。従来技術のほぞの嵌めあわせは、面接触による嵌合であることで、確実な嵌合をするにはサブミリ単位での加工精度が必要であった。
【0072】
これに対して、実施の形態1の嵌合構造1は、第1凸部~第3凸部での複数個所での点接触(数学的な点ということではなく狭い面領域をも含む意味)により、嵌合を実現できる。このため、第1凸部~第3凸部の相互の対応位置関係を実現できれば、ほぞのような広い面全体の微細な加工精度は要求されない。
【0073】
加えて、受け部材係止部24と嵌め部材係止部34との係止により、嵌合が保持されるので、非常に微細な加工精度がなくとも、嵌合状態の保持もなされる。
【0074】
従来技術の嵌合では、接着剤やねじなどを必要とすることもあった。これに対して、実施の形態1の嵌合構造1は、第1凸部などのかしめのみで嵌合するので、接着剤やねじなども不要である。後述するように、解放方向に回動させるだけで、嵌合状態が解放されるので、嵌合と解放とを繰り返し実現することも容易である。
【0075】
また、受け部材2と嵌め部材3との組み合わせ状態での回動のみで嵌合を実現できる。このため、嵌合構造1は、様々な構造部材に適用することで、構造部材の連結を容易に実現できる。また、嵌合の実現においては、だれでも容易にでき、特殊な技術や熟練の技術を要しない。このため、構造部材の連結が必要になる際に、だれでも容易に嵌合作業を行える。同様に、嵌合された構造部材の取り外しの際にも、だれでも容易に嵌合の解放作業を行える。
【0076】
また、嵌合構造1を複数用いることで、更に多くの構造部材を連結できるメリットもある。この結果、構造部材の連結による筐体などのフレキシブルな大型化(あるいは小型化)を実現できる。
【0077】
(嵌合の解放)
図2は、上述の通り、受け部材2と嵌め部材3とが嵌合して、嵌合構造1が、嵌合状態となっている。この状態から、嵌合方向と逆方向である解放方向(図2の矢印で示される)に、受け部材2に対して嵌め部材3が回動されると、嵌合が解放される。
【0078】
解放方向への回動によって、受け部材第1凸部21と嵌め部材第1凸部31とのかしめが外れ、受け部材第2凸部22と嵌め部材第2凸部32とのかしめが外れ、受け部材第3凸部23と嵌め部材第3凸部33とのかしめが外れる。
【0079】
これらの凸部同士のかしめが外れることで、受け部材内周部25と嵌め部材内周部35との嵌合状態が解放され、受け部材2と嵌め部材3との嵌合が解放される。
【0080】
ここで、解放方向の回動の際に、強い力での回動がなされることで、受け部材係止部24と嵌め部材係止部34との係止状態が解消される。あるいは、手作業によって係止状態を外す。この係止状態の解消によって、上述したような回動ができるようになる。回動によって、凸部同士のかしめが外れると、受け部材2と嵌め部材3との嵌合が解放される。図2から図1の状態へ変化する。
【0081】
このように、嵌合構造1は、図1の嵌合前の組み合わせの状態(嵌合されずに解放された状態)と嵌合の状態を繰り返すことができる。この繰り返しにより、嵌合と解放とを変化させることができる。このため、嵌合構造1を備える構造部材は、嵌合によって連結させることができ、解放によって分離することができる。
【0082】
もちろん、嵌合構造1は、嵌合部材としてとらえられても同様である。
【0083】
(受け部材)
図3は、本発明の実施の形態1における受け部材の側面図である。図1図2で説明した受け部材2が示されている。
【0084】
上述した通り、受け部材2は、受け部材内周部25、受け部材外周部26、受け部材第1凸部21、受け部材第2凸部22、受け部材第3凸部23、受け部材係止部24を備える。また、受け部材内周部25は、嵌め部材内周部35の内部に挿入されて組み合される。挿入においては、図3の図面の貫通方向において、受け部材2と嵌め部材3とを通すようにして挿入すればよい。
【0085】
受け部材2は、嵌め部材3と組み合されて使用される。このため、分離した別部材であるが、何らかの部分で嵌め部材3と接続していることがあってもよい。この場合には、組み合わせや回動が可能な柔軟性をもって接続していればよい。
【0086】
また、図3に示される受け部材2の形状は一例である。複数の凸部同士のかしめによる嵌合と、係止部材同士の係止による嵌合保持ができ、回動による嵌合と解放ができる構成であれば、図3の形状に限定されない。また、受け部材第1凸部21~受け部材第3凸部23の3つの凸部を備えているが、受け部材第4凸部のように4つ以上の凸部が備わることでもよい。
【0087】
(嵌め部材)
図4は、本発明の実施の形態1における嵌め部材の側面図である。図1図2で説明した嵌め部材3を示している。嵌め部材3は、受け部材2と合わせて、嵌合構造1(嵌合部材)を構成する。
【0088】
上述した通り、嵌め部材3は、嵌め部材内周部35および嵌め部材外周部36を備える。図3のように、嵌め部材内周部35と嵌め部材外周部36は、嵌め部材3の一部である。また、嵌め部材内周部35は、その内部に受け部材内周部25を挿入可能な形状と大きさを有している。また、受け部材内周部25と回動可能に組み合されるように、受け部材内周部25と嵌め部材内周部35は、円弧のような曲線を有している。
【0089】
また、嵌め部材内周部35は、嵌め部材第1凸部31、嵌め部材第2凸部32、嵌め部材第3凸部33を有している。嵌め部材外周部36は、嵌め部材係止部34を有している。これらは、受け部材の凸部と接触対応関係を有し、受け部材2の係止部と係止対応関係を有する。この受け部材2との組み合わせにおいて、回動方向への回動のみで、嵌合が実現される。逆に解放方向への回動だけで嵌合が解放される。
【0090】
嵌め部材3も、受け部材2と同様に、回動による嵌合と解放ができれば図4の形状に限定されるものではない。また、受け部材2での凸部の数に合わせて、嵌め部材3においても、嵌め部材第4凸部のように4つ以上の凸部が備わってもよい。このとき、凸部の数や位置は、受け部材2の凸部の数や位置に対応する。もちろん、係止部も同様である。
【0091】
(嵌合の強化)
上述したように、受け部材2と嵌め部材3とを所定の状態(受け部材内周部25が嵌め部材内周部35の内側に入るようにして)で嵌合方向に回動させるだけで、受け部材2と嵌め部材3とが嵌合する。この嵌合により、嵌合構造1(嵌合部材)は、嵌合を実現できる。
【0092】
ここで、受け部材第1凸部21、受け部材第2凸部22、受け部材第3凸部23は、受け部材内周部25に沿って設けられる。上述の通り、受け部材内周部25は、円弧状の曲線を有している。このため、受け部材第1凸部21、受け部材第2凸部22および受け部材第3凸部23をつなぐ仮想線は、円弧上を有する。
【0093】
同様に、嵌め部材第1凸部31、嵌め部材第2凸部32、嵌め部材第3凸部33は、嵌め部材内周部35に沿って設けられる。上述の通り、嵌め部材内周部35は、円弧上の曲線を有している。このため、嵌め部材第1凸部31、嵌め部材第2凸部32、嵌め部材第3凸部33をつなぐ仮想線は、円弧上を有する。
【0094】
このような状態で、受け部材第1凸部21と嵌め部材第1凸部31との接触位置、受け部材第2凸部22と嵌め部材第2凸部32との接触位置、受け部材第3凸部23と嵌め部材第3凸部33との接触位置により形成される円弧の回動軸と、受け部材内周部25(嵌め部材内周部35)の回動軸とは、不一致である。それぞれの円弧の回動軸となる中心が不一致であるということである。
【0095】
この不一致であることによって、嵌合方向への回動がより進もうとする場合には、受け部材第1凸部21と嵌め部材第1凸部31とのかしめが強化され、受け部材第2凸部22と嵌め部材第2凸部32とのかしめが強化され、受け部材第3凸部23と嵌め部材第3凸部33とのかしめが強化される。すなわち、嵌合方向への回動が進みすぎようとする力が加わっても、かしめの力は上がるだけとなり、嵌合が強化されることはあっても嵌合が弱くなることはない。
【0096】
回動のみで嵌合が実現されるが、回動の過剰による嵌合が強くなっても弱くなることがないことで、必要に応じて構造部材を連結する作業においても悪影響が生じない。もちろん、回動が弱い場合でもかしめにより嵌合してしまえば、係止部材同士による保持により、嵌合が保持されるので嵌合が外れるなどの問題も防止できる。
【0097】
あるいは、嵌合構造1の嵌合が実現された後で、誤って解放方向に回動力が加わっても、受け部材係止部24と嵌め部材係止部34との係止によって、嵌合が外れてしまうことも防止できる。
【0098】
このように、必要に応じて構造部材同士の連結や分離を行う際に、回動のみで嵌合と分離ができる。このとき、回動の過不足によって、嵌合が不十分となったり外れたりしてしまうことも防止できる。
【0099】
また、第1凸部~第3凸部に加えて第4凸部なども設けられることで、嵌合する接触位置が増えて、嵌合力を上げることも好適である。なお、この場合には、回動のみによる嵌合の簡素化を妨げない程度であることが好ましい。
【0100】
また、組み合わせた後での回動作業のみで嵌合でき、嵌合力も十分であることで、構造部材の連結などが必要な場面で簡単に嵌合作業を行える。このため、構造部材の連結を作業現場で容易に行うこともできる。簡単に行えることで、構造部材の多数の連結も容易に行える。面接触のような加工精度は不要であることで、嵌合不具合も生じにくく、構造部材の連結を確実かつ簡単に行える。
【0101】
また、高い加工精度で受け部材2や嵌め部材3を製造する必要がないので、たとえば、金属押し出し加工などのような廉価な製造方法でも製造できる。結果として、嵌合構造1(嵌合部材)の低コスト化が実現できる。ほぞのような面接触での嵌合構造であれば、接触面の加工精度を高める必要があり、研磨工程などの余分な工程を必要とする。これに対して、本発明の嵌合構造1は、点接触での組み合わせによるだけなので、このような加工精度を高める余分な工程を減少させることができる。このため、実際の嵌合実現の際に、嵌合不充分となる不具合を減少させることができる。もちろん、製造コストや作業コストを低減できる。
【0102】
また、解放方向への回動のみで嵌合を解放できるので、連結後の分離なども容易にできる。このため、構造部材を連結あるいは分離して大きさを変化させたい機器、筐体、構造体などを実現することが容易となる。特に、嵌合にねじや接着剤などを使用しないので、嵌合の取り外しが可能である上に、回動することで再び嵌合させることができるからである。
【0103】
このように実施の形態1の嵌合構造1(嵌合部材)は、組み合わせと回動のみで、高い嵌合力での嵌合と分離を繰り返すことができる。この結果、様々な機器、筐体、構造体などでの大きさの変化や形状の変化を実現することが容易となる。
【0104】
なお、これらの説明は、嵌合構造1が嵌合部材とした場合でも同様である。嵌合部材も、実施の形態1で説明したものと同様である。
【0105】
(実施の形態2)
【0106】
次に実施の形態2について説明する。図2では、嵌合構造1が、構造部材の連結に用いられることについて説明する。図5は、本発明の実施の形態2における受け部材の側面図である。図6は、本発明の実施の形態2における嵌め部材の側面図である。
【0107】
図5に示されるように、受け部材2は、第1構造部材28につながっている。受け部材2の一部が第1構造部材28である形態でもよいし、接続、組み合わせなどの形態で、第1構造部材28が受け部材2とつながっていることでもよい。
【0108】
同様に、図6に示されるように、嵌め部材3は、第2構造部材38につながっている。嵌め部材3の一部が第2構造部材38である形態でもよいし、接続や組み合わせなどの形態で、第2構造部材38が嵌め部材3とつながっていることでもよい。
【0109】
図5図6では、第1構造部材28と第2構造部材38が嵌合構造1によって連結されることの概念を説明しているので、第1構造部材28および第2構造部材38は簡潔な形状で示されている。もちろん、このような簡潔な形状であってもよいし、より大きいことでもよい。あるいは構造部材が形成する構造体などの状況に合わせて、第1構造部材28および第2構造部材38の形状が複雑であってもよい。
【0110】
実施の形態1で説明したように、嵌合構造1は、受け部材2と嵌め部材3とが嵌合することで嵌合が実現される。この嵌合により、第1構造部材28と第2構造部材38とが連結される。図7は、本発明の実施の形態2における嵌合により連結された構造部材を示す側面図である。
【0111】
図7に示されるように、嵌合構造1が嵌合状態となると、第1構造部材28と第2構造部材38が連結される。図7では、第1構造部材28と第2構造部材38とが、つながった状態となっている。すなわち、第1構造部材28と第2構造部材38を連結することで、構造部材全体の長さ(幅)を大きくすることができる。
【0112】
たとえば、構造部材は、構造体や筐体を形成する要素である場合には、第1構造部材28と第2構造部材38の連結により、構造体や筐体の大きさを大きくすることができる。これは、嵌合構造1(嵌合部材)の嵌合のみで実現できる。
【0113】
また、嵌合構造1が、第1構造部材28や第2構造部材38の逆端部にも設けられていれば、第3構造部材や第4構造部材も連続的に連結することができる。逆端部での嵌合構造1での嵌合が実現されれば、別の構造部材がさらに連結されるからである。このように多数の構造部材の連結によって、構造部材を要素とする構造体や筐体などを大きくすることが容易にできる。
【0114】
これは、嵌合構造1の嵌合のみで実現できる。実施の形態1で説明したように嵌合構造1は、受け部材2と嵌め部材3を組み合わせてから回動させるだけでよい。このため、必要な大きさにするために、嵌合構造1によって構造部材を次々と連結させればよい。
【0115】
また、嵌合構造1を解放すれば第1構造部材28と第2構造部材38とは分離される。連結状態を解消したい場合には、係止部(受け部材係止部24と嵌め部材係止部34)での係止を外した上で嵌合構造1を解放方向に回動させて解放するだけでよい。構造部材が分離されれば、構造部材を要素とする構造体や筐体の大きさを小さくできたり、分解できたりする。これも、嵌合構造1の嵌合の解放のみで済むので、容易にできる。
【0116】
たとえば、箱状の筐体を複数の構造部材で構成する場合に、一つの嵌合構造1で、2つの構造部材を連結すると2つの構造部材の長さの幅が実現できる。2つの嵌合構造1で3つの構造部材を連結すると、3つの構造部材の長さの幅が実現できる。
【0117】
図8は、本発明の実施の形態2における構造体の一部を示す側面図である。
【0118】
構造体100は、嵌合構造1を備えている。この嵌合構造1は、実施の形態1で説明したものである。嵌合構造1は、受け部材2と嵌め部材3を備える。また、受け部材2は、第1構造部材28につながっており、嵌め部材3は、第2構造部材38につながっている。嵌合構造1の受け部材2と嵌め部材3とが嵌合状態となっていることで、第1構造部材28と第2構造部材38とが連結されている。
【0119】
この連結によって、第1構造部材28と第2構造部材38とが、構造体100の一部を構成できる。図8の第1構造部材28と第2構造部材38は、複雑な形状を有している。このような複雑な形状を有している構造部材であっても、嵌合構造1で連結できるので、様々な形態の構造体100を実現できる。また、第1構造部材28と第2構造部材38は、嵌合構造1の解放により分離できる。
【0120】
また、第2構造部材38には、受け部材2が備わっている。このため、嵌め部材3を備える第3構造部材が、第2構造部材38にさらに連結可能である。このようにして、構造体100の幅や大きさを、変化させることができる。
【0121】
図9は、本発明の実施の形態2における構造体の側面図である。図9は、図8に比較してより多くの嵌合構造1を用いて多数の構造部材を連結した状態を示している。図9の構造体100は、たとえば、箱体の一部である。
【0122】
嵌合構造1Aは、第1構造部材28と第2構造部材38を連結している。嵌合構造1Bは、第2構造部材38と第3構造部材48を連結している。嵌合構造1Cは、第3構造部材48と第4構造部材58を連結している。嵌合構造1Dは、第4構造部材58と第5構造部材68を連結している。
【0123】
これらの多数の嵌合構造1によって多数の構造部材を連結することも可能である。この多数の構造部材の連結によって、より大きな構造体100を容易に実現できる。
【0124】
たとえば、図8図9に示される構造体100が、箱体の一辺である場合には、図8で示される構造部材の連結と図9に示される構造部材の連結とでは、その幅が異なる。このため、嵌合構造1の数と構造部材の連結される数によって、箱体の幅を変えることも容易である。
【0125】
このような嵌合構造1が複数の構造部材を連結することで、所望の大きさ(長さや幅)の構造体100を実現することができる。特に、特殊な作業やねじ止めなどを必要としないので、構造体100の製造工程であっても、構造体100を使用する現場であっても、容易にこの大きさの変化を実現することができる。
【0126】
このような嵌合構造1による構造部材の連結によって、図10のような箱体を実現することも可能である。
【0127】
図10は、本発明の実施の形態2における嵌合構造で実現された枠体の斜視図である。枠体500は、構造部材が連結されてその幅が実現されている。枠体500のある辺においては、構造部材28、構造部材38、構造部材48が連結されている。これらは、それぞれ嵌合構造1Aと嵌合構造1Bとで連結される。嵌合構造1A、1Bの嵌合は実施の形態1で説明した通りである。
【0128】
このように枠体500であっても、嵌合構造1によって複数の構造部材を連結することで、幅を調整したものとできる。嵌合構造1と構造部材が増えれば、枠体500のある辺の幅を大きくできるし、逆も可能である。このように嵌合構造1によって、枠体500のような構造体の大きさをフレキシブルに可変にできる。
【0129】
なお、実施の形態1、2で説明した嵌合構造1は、嵌合部材として把握することも可能であり、内容は同様である。
【0130】
嵌合部材は、受け部材2と嵌め部材3を備える。この受け部材2と嵌め部材3とが嵌めあわされることで嵌合が実現され、外されることで嵌合が解放される。受け部材2と嵌め部材3とは、別部材であり、図1のように物理的に分離可能であればよいが、何らかの形態でその一部同士がつながっていることなどを排除しない。受け部材2と嵌め部材3とが、組み合わせたり外したりすることで、嵌合と解放とが実現できる態様であればよい。
【0131】
受け部材2は、受け部材内周部25と受け部材外周部26を備える。受け部材内周部25および受け部材外周部26は、受け部材2の一部である。受け部材内周部25は、受け部材第1凸部21、受け部材第2凸部22、受け部材第3凸部23を備える。受け部材外周部26は、受け部材係止部24を備える。
【0132】
また、図1に示されるように、受け部材2は、受け部材内周部25が円弧のような曲線の一部を有している、受け部材外周部26は、この受け部材内周部25の外側にあり、やはり円弧のような曲線の一部を有している。もちろん、円弧のような曲線の一部であって、完全な円弧や曲線を有していなければならないわけではない。
【0133】
嵌め部材3は、嵌め部材内周部35と嵌め部材外周部36を備える。嵌め部材内周部35は、円弧のような曲線の一部を有している。嵌め部材外周部36は、この嵌め部材内周部35の外側に伸びる。嵌め部材内周部35および嵌め部材外周部36は、嵌め部材3の一部である。
【0134】
嵌め部材内周部35は、嵌め部材第1凸部31、嵌め部材第2凸部32、嵌め部材第3凸部33を備える。嵌め部材外周部36は、嵌め部材係止部34を備える。これらは、受け部材2と対応した構成である。詳細な形状などは相違するが、受け部材2と嵌め部材3とが組み合されることで嵌合構造1が実現されるので、受け部材2に備わる各要素と嵌め部材3に備わる各要素とは、対応関係を有している。
【0135】
すなわち、次のような対応関係を有している。
【0136】
受け部材第1凸部21と嵌め部材第1凸部31とは、接触対応関係を有する。
受け部材第2凸部22と嵌め部材第2凸部32とは、接触対応関係を有する。
受け部材第3凸部23と嵌め部材第3凸部33とは、接触対応関係を有する。
受け部材係止部24と嵌め部材係止部34とは、係止対応関係を有する。
【0137】
接触対応関係とは、受け部材2と嵌め部材3とが組み合されて嵌合を実現する際に、相互に接触してかしめられる(嵌めあわされる)関係である。係止対応関係とは、受け部材2と嵌め部材3とが組み合されて嵌合を実現する際に、相互に係止を実現する関係である。
【0138】
すなわち、接触対応関係において、接触することで固定保持がなされる。係止対応関係において係止することで係止保持がなされる。
【0139】
このように、受け部材2と嵌め部材3とが組み合されて回動されると、嵌合部材は嵌合状態となる。
【0140】
なお、実施の形態1~2で説明された嵌合構造および嵌合部材は、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含む。
【符号の説明】
【0141】
1 嵌合構造
2 受け部材
21 受け部材第1凸部
22 受け部材第2凸部
23 受け部材第3凸部
24 受け部材係止部
25 受け部材内周部
26 受け部材外周部
28 第1構造部材
3 嵌め部材
31 嵌め部材第1凸部
32 嵌め部材第2凸部
33 嵌め部材第3凸部
34 嵌め部材係止部
35 嵌め部材内周部
36 嵌め部材外周部
38 第2構造部材
100 構造体
110 構造部材
120 構造部材
101 凸部
102 凹部
200 隙間
500 枠体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11