(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】荷振れ防止装置および荷振れ防止方法
(51)【国際特許分類】
E21B 12/00 20060101AFI20221125BHJP
E21B 19/00 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
E21B12/00
E21B19/00
(21)【出願番号】P 2019020961
(22)【出願日】2019-02-07
【審査請求日】2021-12-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】509199018
【氏名又は名称】成幸利根株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 剛
(72)【発明者】
【氏名】東谷 勇一
(72)【発明者】
【氏名】池谷 聡
(72)【発明者】
【氏名】工藤 安由
(72)【発明者】
【氏名】小川 繁男
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-317484(JP,A)
【文献】特開2019-85845(JP,A)
【文献】特開2004-251039(JP,A)
【文献】特開2018-115546(JP,A)
【文献】特開2011-214366(JP,A)
【文献】実開平5-47091(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 12/00
E21B 19/00
E02D 5/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吊持した縦長状の荷物を傾倒して地面に横置きする際の荷振れを防止するための装置であって、
荷物の下端部を載置するための載置部と、載置部に載置した荷物の下端部を係止するための係止部と、載置部に載置した荷物と載置部とを地面に対して一体的に傾倒する際に、地面に対して直線状に延びた位置で接地して回転支軸として機能する支持部とを備えることを特徴とする荷振れ防止装置。
【請求項2】
四角枠状または四角板状の装置本体をさらに備え、載置部は装置本体の上面に設けられ、係止部は荷物の下端部を載置部の一方の側辺側に位置決めするために、この側辺に設けられたハの字状のものであり、支持部は装置本体の下面の一方の側辺側に設けられることを特徴とする請求項1に記載の荷振れ防止装置。
【請求項3】
載置部の一方の側辺の対辺側に、載置部を荷物の下端部に差し込むための差込部をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の荷振れ防止装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一つに記載の荷振れ防止装置を用いて荷振れを防止する方法であって、
吊持した縦長状の荷物の下端部の下側に荷振れ防止装置を差し込んで、荷物の下端部を載置部に載置するステップと、載置部に載置した荷物の下端部を係止部に係止するステップと、支持部を地面に接地するステップと、地面に接地した支持部を回転支軸として荷振れ防止装置を回動し、載置部に載置した荷物を地面に対して傾倒するステップとを備えることを特徴とする荷振れ防止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷振れ防止装置および荷振れ防止方法に関し、特に場所打ち杭工事で使用する掘削ロッドの荷振れ防止装置および荷振れ防止方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、場所打ち杭工事においては、掘削ロッドを地上に引き上げて倒し込む作業を行うことが多い(例えば、特許文献1を参照)。この作業は通常、縦長の掘削ロッドの上端部をクレーン等で吊り上げることにより、杭孔から掘削ロッドを地上に引き上げる工程と、引き上げた掘削ロッドの下端部を近傍の地面に一旦着地させる工程と、この着地点を回転支点として掘削ロッドを傾倒させて地面に横置きする工程により行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、掘削ロッドは、一般に円形断面の長尺物であり、この掘削ロッドの地面に接する下端部は円形の輪郭になっている。このため、クレーン等で掘削ロッドを地面に倒し込む際に、回転支点となる下端部が地面に対して不安定となり、掘削ロッドが荷振れを引き起こすおそれがあった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、掘削ロッドのような長尺重量物の倒し込み作業を行う際の荷振れを防止する荷振れ防止装置および荷振れ防止方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る荷振れ防止装置は、吊持した縦長状の荷物を傾倒して地面に横置きする際の荷振れを防止するための装置であって、荷物の下端部を載置するための載置部と、載置部に載置した荷物の下端部を係止するための係止部と、載置部に載置した荷物と載置部とを地面に対して一体的に傾倒する際に、地面に対して直線状に延びた位置で接地して回転支軸として機能する支持部とを備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る他の荷振れ防止装置は、上述した発明において、四角枠状または四角板状の装置本体をさらに備え、載置部は装置本体の上面に設けられ、係止部は荷物の下端部を載置部の一方の側辺側に位置決めするために、この側辺に設けられたハの字状のものであり、支持部は装置本体の下面の一方の側辺側に設けられることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る他の荷振れ防止装置は、上述した発明において、載置部の一方の側辺の対辺側に、載置部を荷物の下端部に差し込むための差込部をさらに備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る荷振れ防止方法は、上述した荷振れ防止装置を用いて荷振れを防止する方法であって、吊持した縦長状の荷物の下端部の下側に荷振れ防止装置を差し込んで、荷物の下端部を載置部に載置するステップと、載置部に載置した荷物の下端部を係止部に係止するステップと、支持部を地面に接地するステップと、地面に接地した支持部を回転支軸として荷振れ防止装置を回動し、載置部に載置した荷物を地面に対して傾倒するステップとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る荷振れ防止装置によれば、吊持した縦長状の荷物を傾倒して地面に横置きする際の荷振れを防止するための装置であって、荷物の下端部を載置するための載置部と、載置部に載置した荷物の下端部を係止するための係止部と、載置部に載置した荷物と載置部とを地面に対して一体的に傾倒する際に、地面に対して直線状に延びた位置で接地して回転支軸として機能する支持部とを備えるので、荷物を傾倒する際に地面に接する部分が直線状となり、荷物を安定して傾倒することができる。したがって、掘削ロッドのような長尺重量物の倒し込み作業を行う際の荷振れを防止することができるという効果を奏する。
【0011】
また、本発明に係る他の荷振れ防止装置によれば、四角枠状または四角板状の装置本体をさらに備え、載置部は装置本体の上面に設けられ、係止部は荷物の下端部を載置部の一方の側辺側に位置決めするために、この側辺に設けられたハの字状のものであり、支持部は装置本体の下面の一方の側辺側に設けられるので、簡素な構造の荷振れ防止装置を提供することができるという効果を奏する。
【0012】
また、本発明に係る他の荷振れ防止装置によれば、載置部の一方の側辺の対辺側に、載置部を荷物の下端部に差し込むための差込部をさらに備えるので、荷物の下端部を載置部に容易に配置することができるという効果を奏する。
【0013】
また、本発明に係る荷振れ防止方法によれば、上述した荷振れ防止装置を用いて荷振れを防止する方法であって、吊持した縦長状の荷物の下端部の下側に荷振れ防止装置を差し込んで、荷物の下端部を載置部に載置するステップと、載置部に載置した荷物の下端部を係止部に係止するステップと、支持部を地面に接地するステップと、地面に接地した支持部を回転支軸として荷振れ防止装置を回動し、載置部に載置した荷物を地面に対して傾倒するステップとを備えるので、荷物を安定して傾倒することができる。したがって、掘削ロッドのような長尺重量物の倒し込み作業を行う際の荷振れを防止することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明に係る荷振れ防止装置の実施の形態を示す概略斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明に係る荷振れ防止方法の実施の形態を示す概略斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明に係る荷振れ防止方法の実施の形態を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明に係る荷振れ防止装置および荷振れ防止方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。本実施の形態に係る荷振れ防止装置は、吊持した掘削ロッド(縦長状の荷物)を傾倒して地面に横置きする際の荷振れを防止するためのものである。本実施の形態では、場所打ち杭工事で用いる掘削ロッドを、クレーン等の揚重機で杭孔から地上に引き上げた後の地面に倒し込む作業に適用する場合を例にとり説明するが、本発明は本実施の形態により限定されるものではない。
【0016】
図1に示すように、本実施の形態の荷振れ防止装置10は、四角枠状の鋼製の装置本体12と、装置本体12に設けられた載置部14と、係止部16と、支持部18と、差込部20と、把持部22とを備える。
【0017】
装置本体12は、四角枠をなす前後左右の四辺がそれぞれ山形鋼からなる前方部材24、後方部材26、側方部材28、30で構成される。装置本体12は、四角板状に構成してもよい。前方部材24は、山形鋼の山側の面が下方と前方を向くように配置される。後方部材26は、山形鋼の山側の面が上方と後方を向くように配置される。側方部材28、30は、山形鋼の谷側の面が上方と左右内方を向くように配置される。側方部材28、30の前側の下面および前面は、前方部材24の谷側の上面および後面に溶接等で接合され、側方部材28、30の後側の下面は、後方部材26の山側の上面に溶接等で接合される。前方部材24は、回転支軸用の支持部18を構成することから、安定性確保のために後方部材26よりも左右方向に長い形に設定されている。
【0018】
載置部14は、掘削ロッドの下端部を載置するためのものであり、装置本体12の上面に設けられる。この載置部14は、側方部材28、30の谷側の面と、後方部材26の上面と、前方部材24の谷側の面と、前方部材24の中央の谷側の上面に接合されたプレート32によって構成される。載置部14の大きさは、掘削ロッドの下端部のフランジを載置可能な大きさに形成されている。
【0019】
係止部16は、載置部14に載置した掘削ロッドの下端部を係止するためのものである。この係止部16は、掘削ロッドの下端部を前方部材24側(載置部14の一方の側辺側)に位置決めするために、前方部材24にハの字状に設けられた板状の係止部材34からなる。具体的には、係止部材34は、前方部材24の谷側の後面の中央を挟んで設けられた山形鋼からなる固定部材36と、側方部材28、30の上端面の略中間にそれぞれ接合されるとともに、これらの間に跨って設けられる。
【0020】
支持部18は、装置本体12の下面の前側部分をなす前方部材24の山側の角部分によって構成される。この支持部18は、その下方の地面に対して、前方部材24の山側の左右方向に直線状に延びた角部分で接地する。支持部18は、載置部14に載置した掘削ロッドと載置部14とを地面に対して一体的に傾倒する際の回転支軸として機能する。
【0021】
差込部20は、載置部14を掘削ロッドの下端部に差し込むための差し込み口であり、後方部材26の上面と、その上の側方部材28、30の谷側(内側)の面によって構成される。差込部20によって、掘削ロッドの下端部を載置部14に容易に配置することができる。
【0022】
把持部22は、装置本体12を運搬用に把持するためのものであり、側方部材28、30の山側(外側)の側面に設けられるU字状のものである。
【0023】
上記構成の動作および作用について説明する。
まず、クレーン等の揚重機のワイヤロープで吊持した掘削ロッドを杭孔から地上に引き上げる。続いて、クレーン等の揚重機を操作して、掘削ロッドの下端を地面の若干上に配置させる。
【0024】
次に、
図2に示すように、掘削ロッド38の下端部の下側に、上記の荷振れ防止装置10の差込部20を差し込んで、掘削ロッド38の下端部を載置部14に載置するとともに、係止部16に係止する。この作業は、作業員が把持部22を持って差込部20を掘削ロッド38の下端部の縁から進入させることにより行う。この作業の際に荷振れが生じないよう、掘削ロッド38の下端部に接続したワイヤロープ46を働かせておく。なお、本実施の形態の掘削ロッド38は、円柱状のロッド本体40と、ロッド本体40の下端面に同軸状に固定された大径円盤状のフランジ42と、フランジ42の上面とロッド本体40の外周面とを接続する四角板状の複数のリブ44とにより構成されている。
【0025】
次に、クレーン等の揚重機を操作して、荷振れ防止装置10を差し込んだ掘削ロッド38を下降し、支持部18を地面に着地させる。
【0026】
次に、
図3に示すように、荷振れ防止装置10を差し込んだ状態の掘削ロッド38を、支持部18を回転支軸ZとしてR方向に回動させる。この操作はクレーン等の揚重機などで行う。これにより、荷振れ防止装置10および掘削ロッド38が地面Gに対して一体的に傾倒する。この際の地面Gに接する部分は支持部18である。支持部18は直線状の回転支軸Zであるので、F方向に荷振れすることなく、掘削ロッド38を安定して傾倒することができる。
【0027】
したがって、本実施の形態によれば、掘削ロッド38のような長尺重量物の倒し込み作業を行う際の荷振れを防止することができる。また、本実施の形態は、四角枠状の装置本体12等からなるため、簡素な構造の荷振れ防止装置を提供することができる。
【0028】
また、掘削ロッド38を安定して倒せるため、所定位置での倒し込みの時間を短縮できる(例えば1分程度/回)。掘削ロッド38の余分な動きがないため、金属同士の擦れ等による騒音発生を抑制することができる。
【0029】
上記の実施の形態においては、吊持した縦長状の荷物として、場所打ち杭工事で使用する掘削ロッドを例にとり説明したが、本発明はこれに限るものではなく、長尺重量物のような縦長状に吊持され、荷振れのおそれがある荷物であればいかなるものでもよい。
【0030】
また、上記の実施の形態においては、装置本体12をなす後方部材26が直線状の山形鋼で構成される場合を例にとり説明したが、本発明はこれに限るものではなく、後方部材26は直線状でなく、多角形の一部や円弧状でも構わない。このようにしても、上記と同様の作用効果を奏することができる。
【0031】
以上説明したように、本発明に係る荷振れ防止装置によれば、吊持した縦長状の荷物を傾倒して地面に横置きする際の荷振れを防止するための装置であって、荷物の下端部を載置するための載置部と、載置部に載置した荷物の下端部を係止するための係止部と、載置部に載置した荷物と載置部とを地面に対して一体的に傾倒する際に、地面に対して直線状に延びた位置で接地して回転支軸として機能する支持部とを備えるので、荷物を傾倒する際に地面に接する部分が直線状となり、荷物を安定して傾倒することができる。したがって、掘削ロッドのような長尺重量物の倒し込み作業を行う際の荷振れを防止することができる。
【0032】
また、本発明に係る他の荷振れ防止装置によれば、四角枠状または四角板状の装置本体をさらに備え、載置部は装置本体の上面に設けられ、係止部は荷物の下端部を載置部の一方の側辺側に位置決めするために、この側辺に設けられたハの字状のものであり、支持部は装置本体の下面の一方の側辺側に設けられるので、簡素な構造の荷振れ防止装置を提供することができる。
【0033】
また、本発明に係る他の荷振れ防止装置によれば、載置部の一方の側辺の対辺側に、載置部を荷物の下端部に差し込むための差込部をさらに備えるので、荷物の下端部を載置部に容易に配置することができる。
【0034】
また、本発明に係る荷振れ防止方法によれば、上述した荷振れ防止装置を用いて荷振れを防止する方法であって、吊持した縦長状の荷物の下端部の下側に荷振れ防止装置を差し込んで、荷物の下端部を載置部に載置するステップと、載置部に載置した荷物の下端部を係止部に係止するステップと、支持部を地面に接地するステップと、地面に接地した支持部を回転支軸として荷振れ防止装置を回動し、載置部に載置した荷物を地面に対して傾倒するステップとを備えるので、荷物を安定して傾倒することができる。したがって、掘削ロッドのような長尺重量物の倒し込み作業を行う際の荷振れを防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
以上のように、本発明に係る荷振れ防止装置および荷振れ防止方法は、長尺重量物の倒し込み作業に有用であり、特に、場所打ち杭工事で使用する掘削ロッドのような長尺重量物の倒し込み作業を安定的に行うのに適している。
【符号の説明】
【0036】
10 荷振れ防止装置
12 装置本体
14 載置部
16 係止部
18 支持部
20 差込部
22 把持部
24 前方部材
26 後方部材
28,30 側方部材
32 プレート
34 係止部材
36 固定部材
38 掘削ロッド
40 ロッド本体
42 フランジ
44 リブ
46 ワイヤロープ
G 地面
R 方向
Z 回転支軸