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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】レゾルバ及びモータ
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/245 20060101AFI20221125BHJP
   G01D 5/20 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
G01D5/245 110B
G01D5/20 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019021415
(22)【出願日】2019-02-08
(65)【公開番号】P2020128911
(43)【公開日】2020-08-27
【審査請求日】2021-10-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000113791
【氏名又は名称】マブチモーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】山本 繁
【審査官】後藤 順也
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-098050(JP,A)
【文献】特開2016-161325(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00-5/252
G01D 5/39-5/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトに固定されたロータと、前記ロータに対向配置されたステータと、を備えたレゾルバにおいて、
前記ロータは、前記レゾルバの軸倍角と同数の凸極部を有し、
前記ステータは、環状のコアから径方向へ突設され周方向に所定間隔で配置された4の倍数個の突極と、各々の前記突極に巻回されたコイルと、を有し、
前記コイルとして、電気角0度の第一相コイルと、電気角90度の第二相コイルと、電気角180度の第三相コイルと、電気角270度の第四相コイルとを同数ずつ有し、
前記突極の個数は、前記軸倍角を4倍した値よりも少なく、且つ、12以上であり、
前記軸倍角と前記突極の個数との関係は、機械角360度を前記突極の個数で除した前記突極間の機械角が、前記ロータの電気角で60度に自然数を乗じたものを除いて設定されており、
周方向に隣接する同相の前記コイル同士を直線で結んだときにできる図形が、前記シャフトの回転中心について点対称形状ではなく、且つ、前記ステータを任意の直径で二分したときに必ず両方の領域に跨る場合には、所定の巻数係数を用いて当該同相のコイルの各巻数が設定されている
ことを特徴とする、レゾルバ
【請求項2】
前記突極は、周方向に等間隔に配置されており、
前記軸倍角は7であり、前記突極の個数は12であって、
前記軸倍角と前記突極の個数との関係は、前記凸極部に対する各相コイルの電気角位相ずれ量の組合せが全て同一となるように設定されている
ことを特徴とする、請求項記載のレゾルバ
【請求項3】
シャフトに固定されたロータと、前記ロータに対向配置されたステータと、を備えたレゾルバにおいて、
前記ロータは、前記レゾルバの軸倍角と同数の凸極部を有し、
前記ステータは、環状のコアから径方向へ突設され周方向に所定間隔で配置された4の倍数個の突極と、各々の前記突極に巻回されたコイルと、を有し、
前記コイルとして、電気角0度の第一相コイルと、電気角90度の第二相コイルと、電気角180度の第三相コイルと、電気角270度の第四相コイルとを同数ずつ有し、
前記突極の個数は、前記軸倍角を4倍した値よりも少なく、
前記突極は、周方向に異なる間隔で配置されており、
前記軸倍角と前記突極の個数との関係は、機械角360度を前記突極の個数で除した前記突極間の機械角が、前記ロータの電気角で60度に自然数を乗じたものを除いて設定されるとともに、前記凸極部に対する各相コイルの電気角位相ずれ量が全て0となるように設定されている
ことを特徴とする、レゾルバ。
【請求項4】
前記突極の個数が12以上であり、
周方向に隣接する同相の前記コイル同士を直線で結んだときにできる図形が、前記シャフトの回転中心について点対称形状ではなく、且つ、前記ステータを任意の直径で二分したときに必ず両方の領域に跨る場合には、所定の巻数係数を用いて当該同相のコイルの各巻数が設定されている
ことを特徴とする、請求項記載のレゾルバ。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1項に記載のレゾルバと、
前記シャフトと一体回転するモータロータと、
ハウジングに固定されたモータステータと、を備えた
ことを特徴とする、モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータの回転数や回転角度を検出するレゾルバ、及び、このレゾルバを備えたモータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータ(特にブラシレスモータ)には、その回転数や回転角度(回転位置)を検出するための検出器(センサ)が付設される。検出器としてはレゾルバがあり、このレゾルバは角度分解能及び堅牢性が高いことから、例えば車両駆動用のモータやパワーステアリング用のモータ等に使用されている。例えば特許文献1には、モータの回転軸と一体回転するロータと、4n個(nは自然数)の突極が設けられたステータと、各突極に巻かれたコイル群とを備えた磁気レゾルバが開示されている。この磁気レゾルバでは、0°相コイル,90°相コイル,180°相コイル,270°相コイルという四相のコイルを所定の電圧で励磁して演算することで、ロータの回転位置と回転速度とに応じた信号を算出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平5-18980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、レゾルバから電気角を得るためには、モータの極対数と同数又は公約数の軸倍角レゾルバが必要となる。例えば、モータの極対数が7の場合、レゾルバの軸倍角としては、極対数と同数の「7」又は公約数である「1」を採用可能である。通常、上記の特許文献1のように四相のコイルを用いたレゾルバでは、ステータの突極の個数がレゾルバの軸倍角の4倍に設定される。例えば、軸倍角が7のレゾルバでは突極が28個設けられ、軸倍角が1のレゾルバでは突極が4つ設けられる。
【0005】
このように、モータの極対数が素数の場合には、レゾルバの軸倍角が大きくなりやすいという特徴があり、突極の個数が増大しやすいという課題がある。各突極にはコイルが巻回されるため、突極の個数が増大すると必然的にコイルを巻く箇所が増える。さらには、コイルを巻けるだけのスペースを確保する必要があるため、レゾルバの大型化にも繋がり、コスト増を招く。また、レゾルバのロータ径が大きくなるとイナーシャが増大するため、制御性の低下も招きうる。
【0006】
本件のレゾルバは、このような課題に鑑み案出されたもので、四相のコイルを使用したレゾルバにおいて、小型化及び構成の簡素化を図るとともにイナーシャ増大による制御性低下を抑制することを目的の一つとする。また、本件のモータは、各種制御を高精度に実施することを目的の一つとする。なお、これらの目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)ここで開示するレゾルバは、シャフトに固定されたロータと、前記ロータに対向配置されたステータと、を備える。前記ロータは、前記レゾルバの軸倍角と同数の凸極部を有し、前記ステータは、環状のコアから径方向へ突設され周方向に所定間隔で配置された4の倍数個の突極と、各々の前記突極に巻回されたコイルと、を有する。前記レゾルバは、前記コイルとして、電気角0度の第一相コイルと、電気角90度の第二相コイルと、電気角180度の第三相コイルと、電気角270度の第四相コイルとを同数ずつ有し、前記突極の個数は、前記軸倍角を4倍した値よりも少なく、且つ、12以上であり、前記軸倍角と前記突極の個数との関係は、機械角360度を前記突極の個数で除した前記突極間の機械角が、前記ロータの電気角で60度に自然数を乗じたものを除いて設定されており、周方向に隣接する同相の前記コイル同士を直線で結んだときにできる図形が、前記シャフトの回転中心について点対称形状ではなく、且つ、前記ステータを任意の直径で二分したときに必ず両方の領域に跨る場合には、所定の巻数係数を用いて当該同相のコイルの各巻数が設定されている
【0009】
前記突極は、周方向に等間隔に配置されており、前記軸倍角は7であり、前記突極の個数は12であって、前記軸倍角と前記突極の個数との関係は、前記凸極部に対する各相コイルの電気角位相ずれ量の組合せが全て同一となるように設定されていることが好ましい。すなわち、前記凸極部に対する前記第一相コイルの電気角位相ずれの組合せと、前記凸極部に対する前記第二相コイルの電気角位相ずれの組合せと、前記凸極部に対する前記第三相コイルの電気角位相ずれの組合せと、前記凸極部に対する前記第四相コイルの電気角位相ずれの組合せとが全て同一となるように設定されていることが好ましい。なお、ここでいう「電気角位相ずれ」には0(すなわち位相ずれがない状態)が含まれ、「組合せ」には単数が含まれる
【0010】
)また、ここで開示する第二のレゾルバは、シャフトに固定されたロータと、前記ロータに対向配置されたステータと、を備える。前記ロータは、前記レゾルバの軸倍角と同数の凸極部を有し、前記ステータは、環状のコアから径方向へ突設され周方向に所定間隔で配置された4の倍数個の突極と、各々の前記突極に巻回されたコイルと、を有する。前記レゾルバは、前記コイルとして、電気角0度の第一相コイルと、電気角90度の第二相コイルと、電気角180度の第三相コイルと、電気角270度の第四相コイルとを同数ずつ有し、前記突極の個数は、前記軸倍角を4倍した値よりも少なく、前記突極は、周方向に異なる間隔で配置されており、前記軸倍角と前記突極の個数との関係は、機械角360度を前記突極の個数で除した前記突極間の機械角が、前記ロータの電気角で60度に自然数を乗じたものを除いて設定されるとともに、前記凸極部に対する各相コイルの電気角位相ずれ量が全て0となるように設定されている。
)前記突極の個数が12以上であり、四相の前記コイルのうちの1つを対象コイルとして周方向に隣接する同相の前記コイル同士を直線で結んだときにできる図形が、前記シャフトの回転中心について点対称形状ではなく、且つ、前記ステータを任意の直径で二分したときに必ず両方の領域に跨る場合には、所定の巻数係数を用いて当該同相のコイルの各巻数が設定されていることが好ましい。
【0011】
)ここで開示するモータは、上記の(1)~()のいずれか1つに記載のレゾルバと、前記シャフトと一体回転するモータロータと、ハウジングに固定されたモータステータと、を備えている。
【発明の効果】
【0012】
開示のレゾルバによれば、コイルを巻回する突極を軸倍角の4倍よりも少ない個数とすることで、レゾルバの小型化及び構成の簡素化を図ることができる。また、ロータ径の増大を防止できるため、イナーシャ増大による制御性低下を抑制できる。
また、開示のモータによれば、位置制御や速度制御といった各種制御を高精度に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係るレゾルバを軸方向から見た模式的な断面図である。
図2】実施形態に係るモータを示す模式的な断面図である。
図3図1に示すレゾルバの電気系統の構成を示す回路図である。
図4】(a)及び(b)は図1に示すレゾルバのコイルの配置方法を説明するための図及び表である。
図5】(a)及び(b)は実施形態に係るレゾルバの設定方法を説明するための模式図である。
図6】(a)及び(b)は実施形態に係るレゾルバの設定方法を説明するための模式図である。
図7】突極数が4のレゾルバのロバスト性について説明するための模式図である。
図8】突極数が12のレゾルバの巻数分布について説明するための模式図である。
図9】突極数が16のレゾルバの巻数分布について説明するための模式図である。
図10】変形例に係るレゾルバを軸方向から見た模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面を参照して、実施形態としてのレゾルバ及びモータについて説明する。以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0015】
[1.構成]
[1-1.レゾルバの基本構造]
本件に係るレゾルバは、可変リラクタンス型(VR型)のレゾルバである。すなわち、ステータ(レゾルバステータ)の各突極に対向するロータ(レゾルバロータ)の筒状外周面を、シャフトの回転中心からの距離が周方向に周期的に変動するように構成し、突極の径方向内側の端面とロータの筒状外周面との距離(エアギャップ)の変化によるレゾルバの出力信号(以下「レゾルバ信号」という)の変動を利用して回転角度を検出するものである。
【0016】
図1は、本実施形態に係るレゾルバ1を軸方向から見た模式的な平面図であり、シャフト9(回転軸)のみを断面で示す。本実施形態のレゾルバ1は、例えば図2に示すようなモータ10に組み込まれる。モータ10は、ハウジング13に固定されたモータステータ11と、シャフト9と一体回転するモータロータ12と、ハウジング13に内蔵されたレゾルバ1とを備えたブラシレスモータ(例えばサーボモータ)である。レゾルバ1は、モータ10のシャフト9上に配置されて、モータ10の回転角度(回転位置)を検出する。本実施形態では、軸倍角が7のインナーロータ型のレゾルバ1(7X構造であるレゾルバ1)を例示する。軸倍角に符号xを付す。
【0017】
図1に示すように、レゾルバ1は、回転可能なシャフト9に固定されたロータ2と、ロータ2に対向配置されたステータ3とを備える。本実施形態のレゾルバ1はインナーロータ型であることから、ロータ2の周囲(径方向外側)にステータ3が対向配置される。ロータ2の中央部には、シャフト9が嵌合される取付孔2hが形成されており、ロータ2の中心軸は回転中心Cと一致する。ロータ2は、例えば、強磁性体からなる複数の環状の薄板(鋼板)が積層されて構成される。
【0018】
ロータ2は、レゾルバ1の軸倍角xと同数で周方向に等間隔に並ぶ凸極部21を有する。つまり、本実施形態のロータ2には7つの凸極部21が設けられる。各凸極部21は、回転中心Cを中心とした仮想円(図1中に二点鎖線)から径方向外側へ円弧状に凸となるように形成された部位である。全ての凸極部21は同一形状である。これにより、ロータ2の外周面2sは、シャフト9の回転中心Cからの距離が周方向に周期的に変動する筒状をなす。
【0019】
ステータ3は、環状のコア31と、コア31から径方向へ突設され周方向に所定間隔で配置された複数の突極5と、各突極5に巻回されたコイル4とを有する。突極5の個数(以下「突極数s」という)は4の倍数(4,8,12,16,…)であるが、軸倍角xを4倍した値よりも少なく設定される。例えば、軸倍角xが7のレゾルバ1では、突極数sは28よりも少ない値(4,8,12,16,20,24のいずれか1つ)に設定される。このように突極数sを設定しても、従来から存在する四相のコイルを用いたレゾルバと同様に、エアギャップの変化により変動するレゾルバ信号を出力し、回転角度を検出できる理由については、後述する。
【0020】
本実施形態の突極数sは12であり、周方向に等間隔に(すなわち機械角30度間隔で)配置されている。すなわち、本実施形態のレゾルバ1は等間隔レゾルバである。各突極5は、コア31から径方向内側に(回転中心Cに向かって)延設されたティース部51と、ティース部51の先端部において周方向に延在する幅広の壁部52とを有し、平面視で略T字状をなす。ティース部51はコイル4が巻回される部位であり、壁部52はロータ2の外周面2sと対向して磁束を受け取る部位である。なお、周方向に隣接する突極5間の空間はスロット6といい、突極数sとスロット6の個数とは同一である。
【0021】
本実施形態のレゾルバ1には12個のコイル4が設けられる。各コイル4は電流が印加される入力コイルであり、周方向に隣接する突極5間では逆向きに巻回される。コイル4としては、電気角0度のコイル4A(以下「第一相コイル4A」ともいう)と、電気角90度のコイル4B(以下「第二相コイル4B」ともいう)と、電気角180度のコイル4C(以下「第三相コイル4C」ともいう)と、電気角270度のコイル4D(以下「第四相コイル4D」ともいう)とが同数ずつ設けられる。つまり、各相コイル4A~4Dの個数は突極数sの4分の1となる。
【0022】
本実施形態のレゾルバ1には、第一相コイル4A,第二相コイル4B,第三相コイル4C,第四相コイル4Dが3つずつ設けられる。同相のコイル4はそれぞれ直列に接続される。なお、各相コイル4A~4Dの配置については後述する。
【0023】
各壁部52は、ティース部51の径方向内側の端部から周方向(回転方向)に沿って両側に延設される。全ての壁部52の周方向長さは等しく設けられる。各突極5の径方向内側の端面5s(壁部52における径方向内側を向く面)は、回転中心Cを中心とした円上に位置する。すなわち、本実施形態の各突極5の端面5sは、いずれも回転中心Cから等距離に配置され、回転中心Cに中心を有する円弧となっている。各端面5sとロータ2の外周面2sとの間にはエアギャップが設けられる。
【0024】
[1-2.レゾルバの回路構成]
図3は、レゾルバ1の電気系統の構成を示す回路図である。図3に示すように、各突極5に巻回された同相のコイル4の各一端4eは交流電源40(励磁電源)の一端子40aに接続され、同相のコイル4の各他端4fはそれぞれシャント抵抗41A~41Dを介して交流電源40の他端子40bに接続される。各相コイル4A~4Dとそのシャント抵抗41A~41Dとの間には、それぞれ出力端子42A~42Dが設けられる。
【0025】
ここでは、第一相コイル4Aの出力端子42Aからsin波信号が出力され、第三相コイル4Cの出力端子42Cから出力端子42Aとは逆位相のsin波信号が出力される。また、第二相コイル4Bの出力端子42Bからcos波信号が出力され、第四相コイル4Dの出力端子42Dから出力端子42Bとは逆位相のcos波信号が出力される。
【0026】
各相コイル4A~4Dの出力端子42A~42Dから出力されるsin波信号,cos波信号は、R/D(Resolver-Digital)コンバータ部7内に入力される。R/Dコンバータ部7内には、第一差動増幅器71と、第二差動増幅器72と、位相シフタ73と、加算器74とが備えられ、加算器74の後工程で基準信号と比較して角度演算処理が行われる。
【0027】
第一差動増幅器71のプラス入力端子及びマイナス入力端子には、出力端子42A,42Cがそれぞれ接続され、第二差動増幅器72のプラス入力端子及びマイナス入力端子には、出力端子42B,42Dがそれぞれ接続される。第二差動増幅器72の出力端子には位相を90度シフトさせる位相シフタ73が接続される。また、第一差動増幅器71の出力端子は加算器74の第一入力端子に接続され、位相シフタ73の出力端子は加算器74の第二入力端子に接続される。これによって、R/Dコンバータ部7において入力信号の処理が行われる。
【0028】
[1-3.軸倍角と突極数との関係]
上述したように、本実施形態のレゾルバ1は、突極数sが軸倍角xを4倍した値(4x)よりも少ないながら、回転角度の検出機能を発揮する。以下、レゾルバ1の軸倍角xと突極数sとの関係をどのように設定すればレゾルバとして成立するか、その設定方法をコイル4の配置方法と併せて説明する。
【0029】
まず、図1に示す「軸倍角xが7,突極数sが12」のレゾルバ1を例に挙げ、どの突極5にどの相のコイル4A~4Dを巻回するかについて、図4(a)及び(b)を用いて説明する。図4(a)に示すように、12個の突極5のうち、図中右端に位置する突極5の位置を「基準位置」とし、各突極5に対し反時計回りの順に1~12の番号(突極No.)を振る。例えば、基準位置の突極5から反時計回りに機械角で30度ずれている突極5は、「突極No.1」とする。なお、基準位置の突極5は「No.12」となる。突極No.と機械角位置との関係は、図4(b)の表に示す通りである。
【0030】
次に、各突極5の機械角位置に対応する電気角位相を求める。電気角位相は、機械角位置(機械角)に軸倍角xを乗じた値(積)に相当し、積が360を超える場合には、360以下の値となるよう、その積から360n(nは自然数)を減じればよい。例えば、突極No.3では、機械角位置が90度であり、電気角位相は270度(=90×7-360)となり、突極No.6では、機械角位置が180度であり、電気角位相は180度(=180×7-360×3)となる。
【0031】
次いで、電気角0度,電気角90度,電気角180度,電気角270度のそれぞれに最も近い電気角位相を持つ突極5を同数ずつ選択し、選択した各突極5に巻回されるコイル4の相番号を順番に1,2,3,4とする。例えば、図4(a)及び(b)に示すレゾルバ1では、電気角0度に最も近い電気角位相を持つ突極5は、No.12(電気角位相=0),No.7(電気角位相=30),No.5(電気角位相=330)の3つであるため、これら3つの突極5に巻回されるコイル4の相番号を「1」とする。すなわち、これら3つの突極5には、電気角0度の第一相コイル4Aが巻回される。
【0032】
同様に、電気角90度に最も近い電気角位相を持つ突極5は、No.9(電気角位相=90),No.4(電気角位相=120),No.2(電気角位相=60)の3つであるため、これら3つの突極5に巻回されるコイル4の相番号を「2」とする。これら3つの突極5には、電気角90度の第二相コイル4Bが巻回される。
【0033】
同様に、電気角180度に最も近い電気角位相を持つ突極5は、No.6(電気角位相=180),No.1(電気角位相=210),No.11(電気角位相=150)の3つであるため、これら3つの突極5に巻回されるコイル4の相番号を「3」とする。これら3つの突極5には、電気角180度の第三相コイル4Cが巻回される。
【0034】
同様に、電気角270度に最も近い電気角位相を持つ突極5は、No.3(電気角位相=270),No.10(電気角位相=300),No.8(電気角位相=240)の3つであるため、これら3つの突極5に巻回されるコイル4の相番号を「4」とする。これら3つの突極5には、電気角270度の第四相コイル4Dが巻回される。
【0035】
次に、各相コイル4A~4Dの電気角位相ずれ量を求める。例えば、相番号が1である3つの突極5(No.12,No.7,No.5)に着目すると、突極No.12の電気角位相は0度であるため、この位置に電気角0度のコイル4Aを配置しても位相ずれは生じない。つまり、突極No.12の電気角位相ずれ量は「0」である。一方、突極No.7の電気角位相は30度であるため、この位置に電気角0度のコイル4Aを配置すると、30度の電気角位相ずれが生じる。同様に、突極No.5の電気角位相は330度であるため、この位置に電気角0度のコイル4Aを配置すると、-30度の電気角位相ずれが生じる。つまり、突極No.7の電気角位相ずれ量は「30」であり、突極No.5の電気角位相ずれ量は「-30」である。
【0036】
同様の方法で、相番号が2である3つの突極5(No.9,No.4,No.2),相番号が3である3つの突極5(No.6,No.1,No.11),相番号が4である3つの突極5(No.3,No.10,No.8)について、それぞれ電気角位相ずれ量を求める。なお、各相コイル4A~4Dの電気角位相ずれ量は、ロータ2の凸極部21に対する電気角での位相ずれ(ロータ電気角位相)の大きさに相当する。
【0037】
ここで、各相コイル4A~4Dの電気角位相ずれ量の組合せに着目すると、全て同一の「0,30,-30」という組合せになる。このように、各相コイル4A~4Dのそれぞれのコイル同士で電気角位相ずれがあっても、その組合せが四相全てで同一であれば各相コイル4A~4Dの回転角度の検出が可能であり、レゾルバとして成立する。したがって、レゾルバの軸倍角xと突極数sとの関係は、ロータ(具体的には凸極部)に対する各相コイルの電気角位相ずれ量の組合せが全て同一となるように設定される。
【0038】
また、レゾルバとして成立するためには、電気角0度,電気角90度,電気角180度,電気角270度のそれぞれに最も近い電気角位相を持つ突極を同数ずつ選択できなければならない。この観点に基づき、逆に、レゾルバとして成立しない条件(以下「不可条件」という)を明らかにし、全ての不可条件を満たさないように軸倍角xと突極数sとを設定する。
【0039】
図5(a),(b)及び図6(a),(b)は、レゾルバの設定方法を説明するための模式図であり、不可条件を示している。上述したように、レゾルバには四相のコイルを同数ずつ配置する必要があるが、突極の機械角位置とコイルの電気角位相との関係によってはコイルを配置できないものがある。
【0040】
例えば、機械角360度を突極数sで除した突極の機械角(以下「隣接突極間の機械角」という)が、ロータの電気角で360度と等しくなるものは、図5(a)に示すように、全てのコイルが同位相となってしまい、他の3相のコイルを選択できない。なお、隣接突極間の機械角は360/sと表記できる。この機械角360/sが電気角360度(機械角では360/x)と等しい場合には、図5(a)に示す不可条件1に該当する。また、隣接突極間の機械角360/sが、電気角360度を自然数n倍した値(電気角で720度,1080度,…)と等しい場合にも、同様に不可条件1に該当する。
【0041】
したがって、不可条件1を式で表すと、以下の通りである。
不可条件1:x=ns (但し、nは自然数)
例えば、「軸倍角x=4,突極数s=4」の組合せや、「軸倍角x=8,突極数s=4」の組合せでは、レゾルバとして成り立たない。
【0042】
また、隣接突極間の機械角が、ロータの電気角で180度と等しくなるものは、図5(b)に示すように、例えば電気角0度のコイル及び電気角180度のコイルしか選択できず、他の2相のコイルが選択できない。つまり、隣接突極間の機械角360/sが、電気角180度(機械角では360/2x)と等しい場合には、図5(b)に示す不可条件2に該当する。また、隣接突極間の機械角360/sが、電気角180度を奇数倍した値(電気角で540度,900度,…)と等しい場合にも、同様に不可条件2に該当する。
【0043】
したがって、不可条件2を式で表すと、以下の通りである。
不可条件2:2x=(2n-1)s (但し、nは自然数)
例えば、「軸倍角x=4,突極数s=8」の組合せや、「軸倍角x=6,突極数s=4」の組合せでは、レゾルバとして成り立たない。なお、電気角180度を偶数倍した値(電気角で360度,720度等)は不可条件1に該当する。
【0044】
また、隣接突極間の機械角が、ロータの電気角で120度と等しくなるものは、図6(a)に示すように、例えば電気角0度のコイル,電気角90度のコイル,電気角270度のコイルは選択しうるものの、1相のコイルが選択できない。さらにこの場合には、選択可能な3相のコイルのロータに対する電気角位相ずれ量の組合せが同一とならない。例えば、図6(a)に示すように、電気角位相が0度の位置にコイルを配置した場合、0度コイルの位相ずれは0である。これに対し、電気角位相が90度及び270度の位置のそれぞれにコイルを配置した場合、90度コイルの位相ずれは30であり、270度コイルの位相ずれは-30であるため、電気角位相ずれ量が一致しない。
【0045】
つまり、隣接突極間の機械角360/sが、電気角120度(機械角では360/3x)と等しい場合には、図6(a)に示す不可条件3に該当する。また、隣接突極間の機械角360/sが、電気角120度に3の倍数を除く自然数nを乗じた値(電気角で240度,480度,600度,…)と等しい場合にも、同様に不可条件3に該当する。
【0046】
したがって、不可条件3を式で表すと、以下の通りである。
不可条件3:3x=n′s (但し、n′は3の倍数以外の自然数)
例えば、「軸倍角x=4,突極数s=12」の組合せや、「軸倍角x=8,突極数s=12」の組合せでは、レゾルバとして成り立たない。なお、電気角120度に3の倍数を乗じた値(3n倍した値、すなわち電気角で360度,720度等)は不可条件1に該当する。
【0047】
また、隣接突極間の機械角が、ロータの電気角で60度と等しくなるものは、図6(b)に示すように、例えば電気角0度のコイル(図中のコイル6n)及び電気角180度のコイル(図中のコイル6n+3)は選択できる。しかしながら、電気角90度及び電気角270度の各コイルの個数が2つになる。具体的に、電気角90度ではコイル6n+1とコイル6n+2とが選択され、電気角270度ではコイル6n+4とコイル6n+5とが選択される。したがって、四相すべてのコイルの個数が同一とならず、レゾルバとして成り立たない。
【0048】
つまり、隣接突極間の機械角360/sが、電気角60度(機械角では360/6x)と等しい場合には、図6(b)に示す不可条件4に該当する。また、隣接突極間の機械角360/sが、電気角60度に6n-1を乗じた値又は6n-5を乗じた値(電気角で300度,420度,…)と等しい場合にも、同様に不可条件4に該当する。なお、ここでは6n-1及び6n-5をいずれも符号mで表す。
【0049】
したがって、不可条件4を式で表すと、以下の通りである。
不可条件4:6x=ms (但し、m=6n-1及び6n-5)
例えば、「軸倍角x=10,突極数s=12」の組合せ、「軸倍角x=14,突極数s=12」の組合せでは、レゾルバとして成り立たない。
【0050】
なお、電気角60度を2n倍した値(電気角で120度,240度等)は不可条件3に該当し、電気角60度を3n倍した値(電気角で180度,360度等)は不可条件2に該当し、電気角60度を6n倍した値(電気角で360度,720度等)は不可条件1に該当する。言い換えると、不可条件4を表す式において、mを全ての自然数nに拡張すると、上記の不可条件1~3を包括するものとなる。したがって、レゾルバの軸倍角xと突極数sとの関係は、隣接突極間の機械角が、ロータの電気角で60度に自然数nを乗じたものを除いて設定される。
【0051】
[1-4.巻数分布]
ここでは、レゾルバのロバスト性を向上させる構成について説明する。図1に示すように、レゾルバ1に各相コイル4A~4Dが複数ずつ設けられる場合、各相コイル4A~4Dの配置に対称性があると、シャフトのラジアル方向の変動、すなわち軸ぶれが生じたときの角度演算結果の変動が抑えられる。つまり、軸ぶれに対するロバスト性が向上する。
【0052】
図7には、軸倍角x=5,突極数s=4のレゾルバ1aの模式図と、軸倍角x=7,突極数s=4のレゾルバ1bの模式図とを示す。これらのレゾルバ1a,1bには各相コイル4A~4Dが1つずつしか設けられないため、対向側(回転中心Cを挟んだ反対側)に同相のコイル4が存在しない。例えば、白抜き丸印で示す第一相コイル4Aに着目すると、回転中心Cを通って第二相コイル4B及び第四相コイル4Dを結ぶ一直線(図中一点鎖線)を挟んで向かい側に、第一相コイル4Aが存在しない。そのため、ロータの回転中心Cの位置が僅かにずれた場合(軸ぶれが発生した場合)には角度演算結果に変動を生じうる。
【0053】
これに対し、例えば図8図9に示すように、突極数sが12以上のレゾルバであって対向側に同相のコイル4が存在する場合には、その巻数を工夫することで軸ぶれに対するロバスト性を高めることが可能な場合がある。具体的には、周方向に隣接する同相のコイル4同士を直線で結んだときにできる図形が以下の条件1,2を共に満たす場合には、そのコイル4の巻数設定に際し所定の巻数係数Kを用いることで、ロバスト性が向上する。
条件1:上記図形が、回転中心Cについて点対称形状ではない
条件2:上記図形が、ステータを任意の直径で二分したときに必ず両方の領域に跨る
【0054】
条件1を満たさない場合、すなわちステータを軸方向から見て、同相のコイル4が回転中心Cについて点対称に配置されている場合には、同相のコイル4の巻数を工夫するまでもなく、軸ぶれが発生したとしても打消し合うことが可能である。つまり、条件1を満たさない場合には、そもそも軸ぶれに対するロバスト性が高いため、巻数係数Kを用いない。
【0055】
条件2を満たさない場合、すなわち対向側に同相のコイル4が存在しない場合(コイル4の配置が片寄っている場合)には、図7に示すレゾルバ1a,1bと同様、打ち消しあうことができないため、巻数係数Kを用いない。なお、巻数係数Kは、予め実験やシミュレーション等により求められる。
【0056】
図8に示すレゾルバ1f(軸倍角x=5,突極数s=12)及びレゾルバ1g(軸倍角x=7,突極数s=12)では、例えば周方向に隣接する第一相コイル4A同士を直線で結んだ図形が、図中実線で示すように、任意の直径を跨ぐ二等辺三角形となる。また、他の相コイル4B~4Dも同様に任意の直径を跨ぐ二等辺三角形となる。したがって、これらのレゾルバ1f,1gはいずれも、上記の条件1,2を共に満たす。このため、例えば、レゾルバ1f,1gにおいて、図中右側に位置する第一相コイル4Aの巻数をY1とし、図中左側に位置する2つの第一相コイル4Aの各巻数をY2とすると、巻数Y1は、巻数Y2に巻数係数Kを乗じた値(Y1=Y2×K)に設定される。
【0057】
一方、図8に示すレゾルバ1h(軸倍角x=11,突極数s=12)では、例えば周方向に隣接する第一相コイル4A同士を直線で結んだ図形が、図中実線で示すように、任意の直径を跨がない二等辺三角形となるため、上記の条件2を満たさない。このため、レゾルバ1hでは、巻数係数Kを用いずに巻数を設定する。
【0058】
また、図9に示すレゾルバ1i(軸倍角x=5,突極数s=16)及びレゾルバ1k(軸倍角x=7,突極数s=16)では、例えば周方向に隣接する第一相コイル4A同士を直線で結んだ図形が、図中実線で示すように、任意の直径を跨ぐ台形となる。また、他の相コイル4B~4Dも同様に任意の直径を跨ぐ台形となる。したがって、これらのレゾルバ1i,1kはいずれも、上記の条件1,2を共に満たす。このため、レゾルバ1i,1kにおいても、上記のレゾルバ1f,1gと同様に巻数係数Kを用いて各相コイル4A~4Dの巻数を設定することで、ロバスト性向上を図ることができる。
【0059】
一方、図9に示すレゾルバ1j(軸倍角x=6,突極数s=16)では、例えば周方向に隣接する第一相コイル4A同士を直線で結んだ図形が、図中実線で示すように、長方形になるため、上記の条件1を満たさない。このため、レゾルバ1jでは、各相コイル4A~4Dの巻数を同一に設定すればよい。
【0060】
[2.作用,効果]
(1)上述したレゾルバでは、コイル4を巻回する突極5を、軸倍角の4倍よりも少ない個数とする(すなわち突極5を間引きする)ことで、レゾルバの小型化及び構成の簡素化を図ることができる。また、ロータ径の増大を防止できるため、イナーシャ増大による制御性低下を抑制できる。
【0061】
(2)上述したレゾルバによれば、軸倍角x及び突極数sの組合せとして、突極数sが4の倍数であるとき、「隣接突極間の機械角が、ロータの電気角で60度に自然数nを乗じたもの」を除くことで、簡素な構成のレゾルバを成立させることができる。
【0062】
(3)また、上述したレゾルバでは、軸倍角xと突極数sとの関係が、凸極部21に対する各相コイル4A~4Dの電気角位相ずれ量の組合せが全て同一となるように設定されている。このため、ロータ(凸極部21)に対する位相ずれがあったとしても、その位相ずれの組合せを四相のコイル4A~4Dにおいて全て同一とすることで、簡素な構成のレゾルバとして成立させることができる。
【0063】
(4)さらに、電気角位相ずれ量の組合せを全て同一に設定することで、例えば図1に示すように、レゾルバ1の突極5を周方向に等間隔に配置することができる。つまり、隣接突極間の機械角を全て同一にすることができるため、レゾルバ1の更なる小型化及び構成の簡素化を図ることができる。
【0064】
(5)また、突極数sが12以上のレゾルバにおいて、上記の条件1,2を共に満たす場合には巻数係数Kを用いてコイル4の巻数を設定することで、軸ぶれに対するロバスト性を高めることができる。例えば、図8に示すレゾルバ1f,1gのように、各相コイル4A~4Dの配置が軸方向視で任意の直径を跨ぐ二等辺三角形である場合に、底辺側の巻数に対し頂点側の巻数が多くなるような巻数係数Kを用いて巻数を設定することで、ロバスト性の高いレゾルバを実現できる。
【0065】
(6)また、上述したレゾルバを備えたモータであれば、ロータ(すなわちシャフト9)の回転角度を高精度に検出することができるため、例えば位置制御や速度制御といった各種制御を高精度に実施することができる。
【0066】
[3.変形例]
上述したレゾルバは、複数の突極が周方向に等間隔に配置されているが、レゾルバの突極が周方向に異なる間隔で配置されていてもよい。以下、周方向に隣接する突極間の間隔が均等ではないレゾルバ1′を異間隔レゾルバ1′ともいう。図10には、軸倍角x=7,突極数s=12の異間隔レゾルバ1′を例示する。なお、以下の説明では、上述した実施形態と同様の構成については同様の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0067】
異間隔レゾルバ1′では、突極5の機械角位置がロータ電気角位相に一致した位置に設定される。つまり、各相コイル4A~4Dの電気角位相ずれ量は全て0であり、各相コイル4A~4Dの電気角位相ずれ量の組合せが全て同一となる。例えば、電気角0度の第一相コイル4Aが巻回される突極5に着目すると、これらの突極5と回転中心Cとを繋ぐ3本の直線L5,L7,L12(図中破線)がいずれも、凸極部21の先端(凸極部21の接線がロータ2の半径と直交方向に延びる位置)を通る。
【0068】
図10に示すような異間隔レゾルバ1′において、突極5の機械角位置の設定方法について説明する。まず、上述した等間隔レゾルバ1と同様に、1つの突極5の位置を「基準位置」とし、各突極5に対し突極No.を振る。次に、各突極5の機械角位置に対応する電気角位相を求める。そして、電気角0度,電気角90度,電気角180度,電気角270度のそれぞれに最も近い電気角位相を持つ突極5を同数ずつ選択し、選択した各突極5に巻回されるコイル4の相番号を順番に1,2,3,4とする。ここまでは、図4(b)に示す表の通りである。
【0069】
さらに、異間隔レゾルバ1′では、各相コイル4A~4Dの電気角位相ずれ量が0になるように突極5の機械角位置を周方向にずらす。例えば、相番号が1である3つの突極5〔図4(b)中の突極No.12,No.7,No.5〕に着目すると、突極No.5及び突極No.7の電気角位相ずれ量が0ではない。そのため、これら二つの突極5の電気角位相がいずれも0になるように機械角位置を周方向にずらす。
【0070】
この結果、図10中の破線L5で示すように、突極No.5の機械角位置がロータ電気角位相と一致し、図10中の破線L7で示すように、突極No.7の機械角位置がロータ電気角位相と一致する。これらの突極5(No.5及びNo.7)の機械角位置は、軸倍角xを4倍した値(28個)の突極を設けたと仮定したときの、突極の機械角位置となる。つまり、この設定方法は、28個の突極の中から12個を選択し、16個を間引く設定方法であるともいえる。なお、相番号2~4の他の突極5についても同様の方法で機械角位置を決めればよい。
【0071】
このような異間隔レゾルバ1′であっても、コイル4を巻回する突極5を、軸倍角の4倍よりも少ない個数とする(すなわち突極5を間引きする)ことができ、レゾルバ1′の小型化及び構成の簡素化を図ることができる。また、ロータ径の増大を防止できるため、イナーシャ増大による制御性低下を抑制できる。なお、図10では軸倍角xが7,突極数sが12のレゾルバ1′を例示したが、上述した実施形態と同様、他の軸倍角x,突極数sのレゾルバに対しても適用可能である。また、巻数係数Kを乗じてコイル4の巻数を設定する上記の手法を異間隔レゾルバに適用することもできる。上述した実施形態と同様の構成を適用することで、上述した効果と同様の効果を得ることができる。
【0072】
[4.その他]
上述したレゾルバ1,1′の各要素(ロータ2の凸極部21,ステータ3の突極5)の形状や構成は上述したものに限られない。例えば、ロータ2が積層構造でなくてもよいし、突極5の形状がT字状でなくてもよい。また、上述した回路構成も一例であって上述した構成以外の回路を備えていてもよい。
【0073】
上述したレゾルバはインナーロータ型(ステータがロータの径方向外側に対向配置される構造)であるが、アウターロータ型(ステータがロータの径方向内側に対向配置される構造)のレゾルバに対し、上述した構成を適用してもよい。また、ステータがロータの径方向に対向配置されるレゾルバではなく、ステータがロータの軸方向に対向配置されるレゾルバ(いわゆるアキシャルギャップ構造)に対し、上述した構成を適用してもよい。すなわち、ロータには軸倍角と同数の凸極部が設けられ、ステータには4の倍数個の突極が設けられ、各突極には第一相コイル,第二相コイル,第三相コイル,第四相コイルが同数ずつ巻回されている、アキシャルギャップ構造のレゾルバであってもよい。このような構成であっても、突極数をロータの軸倍角の4倍よりも少なく設定することで、上述した実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0074】
1,1a~1k レゾルバ
1′ 異間隔レゾルバ(レゾルバ)
2 ロータ
3 ステータ
4 コイル
4A 第一相コイル
4B 第二相コイル
4C 第三相コイル
4D 第四相コイル
5 突極
9 シャフト
10 モータ
11 モータステータ
12 モータロータ
13 ハウジング
21 凸極部
C 回転中心
K 巻数係数
n 自然数
s 突極数(突極の個数)
x 軸倍角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10