(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】印刷システムおよび印刷方法
(51)【国際特許分類】
G06F 3/12 20060101AFI20221125BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20221125BHJP
B41J 2/21 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
G06F3/12 308
B41J2/01 123
B41J2/21
B41J2/01 401
G06F3/12 343
B41J2/01 121
(21)【出願番号】P 2019026306
(22)【出願日】2019-02-18
【審査請求日】2021-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【氏名又は名称】小平 晋
(72)【発明者】
【氏名】中谷 公晃
【審査官】松浦 かおり
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-301267(JP,A)
【文献】特開2005-032144(JP,A)
【文献】特開2013-159470(JP,A)
【文献】特開2016-002735(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/09 - 3/12
B41J 2/01
B41J 2/165- 2/20
B41J 2/21 - 2/215
B41J 5/00 - 5/52
B41J 21/00 -21/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体に所定の厚さの画像を印刷するインクジェットプリンタと、前記インクジェットプリンタを制御するプリンタ制御部とを備え、
所定の厚さを有する前記画像の中の、前記画像に厚さを持たせるための部分を厚盛部とすると、前記厚盛部は、積層された複数のインク層によって構成され、
前記厚盛部の幅が下側に向かうにしたがって広がるように前記厚盛部の端面が傾斜しかつ前記厚盛部の端面の上端がR形状となっているか、または、前記厚盛部がドーム状に形成されており、
前記厚盛部を構成する前記インク層の層数と同じ層数で仮に前記厚盛部を水平方向にスライスしたときの各層を仮インク層と
し、複数の前記仮インク層の中で最も上側に配置される前記仮インク層を最上層の仮インク層とし、複数の前記仮インク層の中で最も下側に配置される前記仮インク層を最下層の仮インク層とすると、
前記インクジェットプリンタで前記印刷媒体に前記画像を印刷するときに、前記プリンタ制御部は、複数の前記仮インク層のそれぞれを印刷するための複数のインク層印刷データを作成し、前記インクジェットプリンタに、
前記最上層
の仮インク層から
前記最下層
の仮インク層に向かって
下側から順番に前記仮インク層を印刷させて積層させることを特徴とする印刷システム。
【請求項2】
前記厚盛部は、クリアインクまたは白インクの前記インク層によって構成されていることを特徴とする請求項1記載の印刷システム。
【請求項3】
印刷媒体に所定の厚さの画像を印刷するための印刷方法であって、
所定の厚さを有する前記画像の中の、前記画像に厚さを持たせるための部分を厚盛部とすると、前記厚盛部は、積層された複数のインク層によって構成され、
前記厚盛部の幅が下側に向かうにしたがって広がるように前記厚盛部の端面が傾斜しかつ前記厚盛部の端面の上端がR形状となっているか、または、前記厚盛部がドーム状に形成されており、
前記厚盛部を構成する前記インク層の層数と同じ層数で仮に前記厚盛部を水平方向にスライスしたときの各層を仮インク層と
し、複数の前記仮インク層の中で最も上側に配置される前記仮インク層を最上層の仮インク層とし、複数の前記仮インク層の中で最も下側に配置される前記仮インク層を最下層の仮インク層とすると、
前記印刷媒体に前記画像を印刷するときに、複数の前記仮インク層のそれぞれを印刷するための複数のインク層印刷データを作成し、インクジェットプリンタで、
前記最上層
の仮インク層から
前記最下層
の仮インク層に向かって
下側から順番に前記印刷媒体に前記仮インク層を印刷して積層することを特徴とする印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷媒体に所定の厚さの画像を印刷するための印刷システムに関する。また、本発明は、印刷媒体に所定の厚さの画像を印刷するための印刷方法に関する。なお、本明細書において、「画像」には、文字を含む記号、図形および記号と図形との組合せが含まれているものとする。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷媒体に所定の厚さの画像を印刷する(すなわち、厚盛印刷を行う)インクジェットプリンタが知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のインクジェットプリンタは、紫外線硬化型のインク滴を吐出するインクジェットヘッドと、印刷媒体に吐出されたインクに紫外線を照射する紫外線照射装置と、インクジェットヘッドおよび紫外線照射装置が搭載されるキャリッジとを備えている。
【0003】
特許文献1に記載のインクジェットプリンタでは、インクジェットヘッドから吐出されるとともに紫外線照射装置から照射される紫外線で硬化したインクによって形成されるインク層が印刷媒体に順次積層されて、印刷媒体に所定の厚さの画像が印刷されている。また、このインクジェットプリンタでは、カラーインクによって形成されるインク層の上に、クリアインクによって形成される複数のインク層が順次積層されて、印刷媒体に所定の厚さの画像が印刷されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のインクジェットプリンタによって印刷媒体に印刷された画像の中で、クリアインクのインク層(クリアインク層)が積層された部分は、画像に厚さを持たせるための部分となる。この部分を厚盛部とすると、本願発明者は、たとえば、
図5(A)に示すように、所定の厚さを有する画像103であって、厚盛部103dとカラーインクのインク層(カラーインク層)103bとを含む画像103をインクジェットプリンタによって印刷媒体102に印刷することを試みた。画像103では、厚盛部103dの端面は、厚盛部103dの幅が下側に向かうにしたがって広がるように傾斜するとともに、厚盛部103dの端面の上端は、R形状となっている。
【0006】
また、本願発明者は、印刷媒体102に画像103を印刷するに当たって、厚盛部103dを構成する複数のクリアインク層103c(
図5(B)参照)のそれぞれの形状に合わせた複数のクリアインク層の印刷データを作成し、作成した複数の印刷データに基づいてインクジェットプリンタで各クリアインク層103cを順次印刷、積層させて厚盛部103dを形成した。
【0007】
しかしながら、上記の方法で厚盛部103dを形成すると、
図5(C)に示すように、厚盛部103dの端面の上端に突起103eが生じて、厚盛部103dの端面の上端がR形状とならないことが本願発明者の検討によって明らかになった。すなわち、上記の方法で厚盛部103dを形成すると、厚盛部103dを所望の形状に形成できないことが本願発明者の検討によって明らかになった。なお、本願発明者の検討によれば、紫外線照射装置から照射される紫外線によってクリアインクが硬化する際のクリアインク層103cの上面の収縮に起因して、上記の方法で厚盛部103dを形成したときに厚盛部103dの端面の上端に突起103eが生じるものと推定される。
【0008】
そこで、本発明の課題は、印刷媒体に所定の厚さの画像を印刷するための印刷システムにおいて、所定の厚さを有する画像の中の、画像に厚さを持たせるための部分である厚盛部がドーム状に形成されていたり、厚盛部の幅が下側に向かうにしたがって広がるように厚盛部の端面が傾斜しかつ厚盛部の端面の上端がR形状となっていたりしても、厚盛部を所望の形状に形成することが可能な印刷システムを提供することにある。また、本発明の課題は、印刷媒体に所定の厚さの画像を印刷するための印刷方法において、厚盛部がドーム状に形成されていたり、厚盛部の幅が下側に向かうにしたがって広がるように厚盛部の端面が傾斜しかつ厚盛部の端面の上端がR形状となっていたりしても、厚盛部を所望の形状に形成することが可能となる印刷方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本願発明者は、種々の検討を行った。その結果、本願発明者は、厚盛部を構成する複数のインク層を積層する際にインク層を積層させる順番を工夫することで、厚盛部の端面の上端での突起の発生を防止して、厚盛部を所望の形状に形成することが可能になることを知見するに至った。
【0010】
本発明の印刷システムは、かかる新たな知見に基づくものであり、印刷媒体に所定の厚さの画像を印刷するインクジェットプリンタと、インクジェットプリンタを制御するプリンタ制御部とを備え、所定の厚さを有する画像の中の、画像に厚さを持たせるための部分を厚盛部とすると、厚盛部は、積層された複数のインク層によって構成され、厚盛部の幅が下側に向かうにしたがって広がるように厚盛部の端面が傾斜しかつ厚盛部の端面の上端がR形状となっているか、または、厚盛部がドーム状に形成されており、厚盛部を構成するインク層の層数と同じ層数で仮に厚盛部を水平方向にスライスしたときの各層を仮インク層とし、複数の仮インク層の中で最も上側に配置される仮インク層を最上層の仮インク層とし、複数の仮インク層の中で最も下側に配置される仮インク層を最下層の仮インク層とすると、インクジェットプリンタで印刷媒体に画像を印刷するときに、プリンタ制御部は、複数の仮インク層のそれぞれを印刷するための複数のインク層印刷データを作成し、インクジェットプリンタに、最上層の仮インク層から最下層の仮インク層に向かって下側から順番に仮インク層を印刷させて積層させることを特徴とする。
【0011】
本発明の印刷システムでは、厚盛部を構成するインク層の層数と同じ層数で仮に厚盛部を水平方向にスライスしたときの各層を仮インク層とし、複数の仮インク層の中で最も上側に配置される仮インク層を最上層の仮インク層とし、複数の仮インク層の中で最も下側に配置される仮インク層を最下層の仮インク層とすると、インクジェットプリンタで印刷媒体に画像を印刷するときに、プリンタ制御部は、複数の仮インク層のそれぞれを印刷するための複数のインク層印刷データを作成し、インクジェットプリンタに、最上層の仮インク層から最下層の仮インク層に向かって下側から順番に仮インク層を印刷させて積層させている。そのため、本願発明者の検討によると、本発明では、厚盛部がドーム状に形成されていたり、厚盛部の幅が下側に向かうにしたがって広がるように厚盛部の端面が傾斜しかつ厚盛部の端面の上端がR形状となっていたりしても、厚盛部の端面の上端での突起の発生を防止して、厚盛部を所望の形状に形成することが可能になる。
【0012】
本発明において、たとえば、厚盛部は、クリアインクまたは白インクのインク層によって構成されている。
【0013】
また、上述の新たな知見に基づいて、本発明の印刷方法は、印刷媒体に所定の厚さの画像を印刷するための印刷方法であって、所定の厚さを有する画像の中の、画像に厚さを持たせるための部分を厚盛部とすると、厚盛部は、積層された複数のインク層によって構成され、厚盛部の幅が下側に向かうにしたがって広がるように厚盛部の端面が傾斜しかつ厚盛部の端面の上端がR形状となっているか、または、厚盛部がドーム状に形成されており、厚盛部を構成するインク層の層数と同じ層数で仮に厚盛部を水平方向にスライスしたときの各層を仮インク層とし、複数の仮インク層の中で最も上側に配置される仮インク層を最上層の仮インク層とし、複数の仮インク層の中で最も下側に配置される仮インク層を最下層の仮インク層とすると、印刷媒体に画像を印刷するときに、複数の仮インク層のそれぞれを印刷するための複数のインク層印刷データを作成し、インクジェットプリンタで、最上層の仮インク層から最下層の仮インク層に向かって下側から順番に印刷媒体に仮インク層を印刷して積層することを特徴とする。
【0014】
本発明の印刷方法では、厚盛部を構成するインク層の層数と同じ層数で仮に厚盛部を水平方向にスライスしたときの各層を仮インク層とし、複数の仮インク層の中で最も上側に配置される仮インク層を最上層の仮インク層とし、複数の仮インク層の中で最も下側に配置される仮インク層を最下層の仮インク層とすると、印刷媒体に画像を印刷するときに、複数の仮インク層のそれぞれを印刷するための複数のインク層印刷データを作成し、インクジェットプリンタで、最上層の仮インク層から最下層の仮インク層に向かって下側から順番に印刷媒体に仮インク層を印刷して積層している。そのため、本願発明者の検討によると、本発明の印刷方法で厚盛部を形成すれば、厚盛部がドーム状に形成されていたり、厚盛部の幅が下側に向かうにしたがって広がるように厚盛部の端面が傾斜しかつ厚盛部の端面の上端がR形状となっていたりしても、厚盛部の端面の上端での突起の発生を防止して、厚盛部を所望の形状に形成することが可能になる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明では、印刷媒体に所定の厚さの画像を印刷するための印刷システムにおいて、厚盛部がドーム状に形成されていたり、厚盛部の幅が下側に向かうにしたがって広がるように厚盛部の端面が傾斜しかつ厚盛部の端面の上端がR形状となっていたりしても、厚盛部を所望の形状に形成することが可能になる。また、本発明の印刷方法で厚盛部を形成すれば、厚盛部がドーム状に形成されていたり、厚盛部の幅が下側に向かうにしたがって広がるように厚盛部の端面が傾斜しかつ厚盛部の端面の上端がR形状となっていたりしても、厚盛部を所望の形状に形成することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施の形態にかかる印刷システムの構成を説明するためのブロック図である。
【
図2】
図1に示すインクジェットプリンタの概略平面図である。
【
図3】
図1に示すインクジェットプリンタによって印刷媒体に印刷される画像の断面を説明するための図である。
【
図4】
図1に示す印刷システムで印刷媒体に画像を印刷するときの印刷方法を説明するための図である。
【
図5】従来技術の問題点を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0018】
(印刷システムの構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかる印刷システム1の構成を説明するためのブロック図である。
図2は、
図1に示すインクジェットプリンタ4の概略平面図である。
図3は、
図1に示すインクジェットプリンタ4によって印刷媒体2に印刷される画像3の断面を説明するための図である。
【0019】
本形態の印刷システム1は、印刷用紙または樹脂板等の印刷媒体2に所定の厚さの画像3を印刷する(すなわち、印刷媒体2に厚盛印刷を行う)インクジェットプリンタ4と、インクジェットプリンタ4を制御するためのプリンタ制御システム5とを備えている。本形態のプリンタ制御システム5は、パーソナルコンピュータ(PC)である。したがって、以下では、プリンタ制御システム5を「PC5」とする。また、以下では、インクジェットプリンタ4を「プリンタ4」とする。
【0020】
プリンタ4は、印刷媒体2が載置されるテーブル6と、テーブル6に載置される印刷媒体2に向かってインク滴を吐出するインクジェットヘッドと、インクジェットヘッドが搭載されるキャリッジ7と、主走査方向への移動が可能となるようにキャリッジ7を保持するYバー8と、キャリッジ7を主走査方向に移動させるキャリッジ駆動機構と、Yバー8を副走査方向に移動させるYバー駆動機構とを備えている。キャリッジ7は、テーブル6の上方に配置されている。本形態のインクジェットヘッドは、紫外線硬化型のインクを吐出する。また、プリンタ4は、インクジェットヘッドから吐出されたインクに紫外線を照射する紫外線照射器を備えている。紫外線照射器は、キャリッジ7に搭載されている。
【0021】
プリンタ4では、インクジェットヘッドから吐出されるとともに紫外線照射器から照射される紫外線で硬化したインクによって形成されるインク層が印刷媒体2の上面に順次積層されて、印刷媒体2に所定の厚さの画像3が印刷される。すなわち、画像3は、積層された複数のインク層によって構成されている。また、画像3は、プライマーインクの層であるプライマーインク層3aと、カラーインクの層であるカラーインク層3bと、クリアインクの層であるクリアインク層3cとから構成されている。具体的には、画像3は、1層のプライマーインク層3aと、1層のカラーインク層3bと、複数のクリアインク層3cとから構成されている。また、画像3では、プライマーインク層3aとカラーインク層3bと複数のクリアインク層3cとが下側からこの順番で積層されている。
【0022】
本形態では、画像3の中の、積層された複数のクリアインク層3cは、所定の厚さを有する画像3の中の、画像3に厚さを持たせるための部分である厚盛部3dとなっている。すなわち、厚盛部3dは、積層された複数のクリアインク層3c(クリアインクのインク層)によって構成されている。厚盛部3dの端面は、厚盛部3dの幅が下側に向かうにしたがって広がるように傾斜している。また、厚盛部3dの端面の上端は、丸みを有するR形状となっている。すなわち、厚盛部3dの端面の上端は、丸みを帯びた凸曲面状に形成されている。
【0023】
PC5は、ROM、RAMおよびハードディスクドライブ等の記憶手段やCPU等の演算手段等の各種のハードウエアを備えている。PC5には、印刷媒体2に印刷される画像のデータである画像データを作成編集するためのソフトウエア(画像編集ソフトウエア)と、プリンタ4を制御するためのソフトウエア(ソフトウエアRIP)とがインストールされている。なお、画像編集ソフトウエアは、たとえば、アドビシステムズ社製のイラストレータである。
【0024】
また、PC5は、PC5の機能として、画像データの作成および編集を行うための画像データ作成編集部11と、プリンタ4を制御するプリンタ制御部12とを備えている。画像データ作成編集部11は、画像編集ソフトウエアと、このソフトウエアのプログラムを実行するPC5のハードウエアとから構成されている。プリンタ制御部12は、ソフトウエアRIPと、このソフトウエアのプログラムを実行するPC5のハードウエアとから構成されている。プリンタ制御部12は、画像データ作成編集部11から送られてきた画像データを印刷データに変換してプリンタ4に送る。
【0025】
(画像の印刷方法)
図4は、
図1に示す印刷システム1で印刷媒体2に画像3を印刷するときの印刷方法を説明するための図である。
【0026】
プリンタ4で印刷媒体2に厚盛印刷を行うときには、プリンタ制御部12は、画像データ作成編集部11から送られてきた画像データを変換して印刷データを作成し、作成した印刷データをプリンタ4に送る。また、プリンタ制御部12は、印刷データに基づいてプリンタ4に画像3を印刷させる。すなわち、プリンタ4は、印刷データに基づいて、プライマーインク層3aの上にカラーインク層3bを形成するとともに、カラーインク層3bの上に厚盛部3dを形成する。
【0027】
厚盛部3dを構成するクリアインク層3cの層数と同じ層数で、仮に厚盛部3dを水平方向にスライスしたときの各層を仮インク層3f1~3f10とすると(
図4(B)参照)、本形態では、プリンタ4で印刷媒体2に画像3を印刷するときに、プリンタ制御部12は、複数の仮インク層3f1~3f10のそれぞれを印刷するための複数のインク層印刷データを作成する。プリンタ制御部12は、自動でまたはオペレータの操作に基づいて、複数のインク層印刷データを作成する。
【0028】
たとえば、厚盛部3dが10層のクリアインク層3cによって構成されている場合、仮インク層3f1~3f10は、上下方向において厚盛部3dを仮に10等分したときの各層であり、仮インク層3f1~3f10は、下側から上側に向かってこの順番で配置されている。すなわち、仮インク層3f1は、最下層の仮インク層であり、仮インク層3f10は、最上層の仮インク層である。仮インク層3f1~3f10の幅は、この順番で狭くなっている。
【0029】
また、プリンタ制御部12は、プリンタ4に、最上層の仮インク層3f10から最下層の仮インク層3f1に向かって順番に仮インク層3f1~3f10を印刷させて積層させる(
図4(C)参照)。すなわち、プリンタ4は、プリンタ制御部12から送られてくる複数のインク層印刷データに基づいて、仮インク層3f10、仮インク層3f9、仮インク層3f8、仮インク層3f7、仮インク層3f6、仮インク層3f5、仮インク層3f4、仮インク層3f3、仮インク層3f2、仮インク層3f1の順番で(すなわち、元々の仮インク層3f1~3f10の積層順と逆の順番で)カラーインク層3bの上に仮インク層3f1~3f10を順次積層する。
【0030】
このように、本形態では、印刷媒体2に画像3を印刷するときに、仮インク層3f1~3f10のそれぞれを印刷するための複数のインク層印刷データを作成し、プリンタ4で、最上層の仮インク層3f10から最下層の仮インク層3f1に向かって順番にカラーインク層3bの上に仮インク層3f1~3f10を印刷して積層している。なお、印刷される仮インク層3f1~3f9の両端部は下側に向かって垂れるため、最上層の仮インク層3f10から最下層の仮インク層3f1に向かって順番に仮インク層3f1~3f10を積層すると、厚盛部3dの形状は、
図3に示す形状となる。すなわち、仮インク層3f1~3f10のそれぞれがクリアインク層3cとなる。
【0031】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、プリンタ4で印刷媒体2に画像3を印刷するときに、プリンタ制御部12は、複数の仮インク層3f1~3f10のそれぞれを印刷するための複数のインク層印刷データを作成し、プリンタ4に、最上層の仮インク層3f10から最下層の仮インク層3f1に向かって順番に仮インク層3f1~3f10を印刷させて積層させている。そのため、本形態では、厚盛部3dの幅が下側に向かうにしたがって広がるように厚盛部3dの端面が傾斜するとともに厚盛部3dの端面の上端がR形状となっていても、厚盛部3dの端面の上端での突起の発生を防止して、厚盛部3dを所望の形状に形成することが可能になる。
【0032】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0033】
上述した形態において、プライマーインク層3aと複数のクリアインク層3cとカラーインク層3bとが下側からこの順番で積層されていても良い。また、上述した形態において、厚盛部3dは、積層された複数の白インクのインク層(白インク層)によって構成されていても良い。この場合には、プライマーインク層3aと複数の白インク層とカラーインク層3bとが下側からこの順番で積層されている。さらに、上述した形態において、厚盛部3dは、ドーム状に形成されていても良い。この場合であっても、本願発明者の検討によれば、厚盛部3dの端面の上端での突起の発生を防止して、厚盛部3dを所望の形状に形成することが可能になる。
【符号の説明】
【0034】
1 印刷システム
2 印刷媒体
3 画像
3c クリアインク層(インク層)
3d 厚盛部
3f1~3f10 仮インク層
4 プリンタ(インクジェットプリンタ)
12 プリンタ制御部