(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】シリンダ装置
(51)【国際特許分類】
F16F 9/32 20060101AFI20221125BHJP
F16F 9/54 20060101ALI20221125BHJP
B60G 3/28 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
F16F9/32 J
F16F9/54
B60G3/28
(21)【出願番号】P 2019042473
(22)【出願日】2019-03-08
【審査請求日】2021-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】永尾 理一
(72)【発明者】
【氏名】山香 浩一
(72)【発明者】
【氏名】山口 喜裕
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-292427(JP,A)
【文献】特開2002-089606(JP,A)
【文献】特開2001-182772(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/32
F16F 9/54
B60G 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンと、前記ピストンに連結されたピストンロッドを有する緩衝機構と、前記緩衝機構を収容する筒状の内筒と、前記内筒を収容する外筒とを備え、
前記外筒は、前記外筒と一体に設けられ、前記外筒の外面から一方向側に突出した一対のナックル取付け部を有し、
前記一対のナックル取付け部は、それぞれ幅広面を対向させ、前記幅広面が前記外筒の軸方向に沿って設けられたシリンダ装置において、
前記ピストンロッドのストローク中心線に直交する前記外筒の軸方向任意位置での直交断面において、前記ストローク中心線を通り、車両内側と外側に一致した仮想線を境界に、車両内側を仮想領域I、車両外側の仮想領域IIとした場合、前記仮想領域Iにおける前記外筒の断面積を前記仮想領域IIにおける前記外筒の断面積より大きくし
、
前記直交断面における前記ストローク中心線上の点をストローク中心点とし、
前記仮想領域Iにおける前記ストローク中心点から前記外筒の径方向外表面までの距離を距離l
i11
とし、前記ストローク中心点を基準として前記距離l
i11
と点対称位置であり前記仮想領域IIにおける前記ストローク中心点から前記外筒の径方向外表面までの距離を距離l
o11
とした時、前記距離l
i11
を前記距離l
o11
よりも長くし、
前記距離l
i11
上における前記外筒の厚さは、前記距離l
o11
上における前記外筒の厚さよりも厚くしたことを特徴とするシリンダ装置。
【請求項2】
ピストンと、前記ピストンに連結されたピストンロッドを有する緩衝機構と、前記緩衝機構を収容する筒状の内筒と、前記内筒を収容する外筒とを備え、
前記外筒は、前記外筒と一体に設けられ、前記外筒の外面から一方向側に突出した一対のナックル取付け部を有し、
前記一対のナックル取付け部は、それぞれ幅広面を対向させ、前記幅広面が前記外筒の軸方向に沿って設けられたシリンダ装置において、
前記ピストンロッドのストローク中心線に直交する前記外筒の軸方向任意位置での直交断面において、前記ストローク中心線を通り、車両内側と外側に一致した仮想線を境界に、車両内側を仮想領域I、車両外側の仮想領域IIとした場合、前記仮想領域Iにおける前記外筒の断面2次モーメントを前記仮想領域IIにおける前記外筒の断面2次モーメントより大きくし
、
前記直交断面における前記ストローク中心線上の点をストローク中心点とし、
前記仮想領域Iにおける前記ストローク中心点から前記外筒の径方向外表面までの距離を距離l
i11
とし、前記ストローク中心点を基準として前記距離l
i11
と点対称位置であり前記仮想領域IIにおける前記ストローク中心点から前記外筒の径方向外表面までの距離を距離l
o11
とした時、前記距離l
i11
を前記距離l
o11
よりも長くし、
前記距離l
i11
上における前記外筒の厚さは、前記距離l
o11
上における前記外筒の厚さよりも厚くしたことを特徴とするシリンダ装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のシリンダ装置において、
ホイールリムの外周部にタイヤが固定されて車輪が構成され、
前記外筒の軸方向任意位置は、前記車輪のタイヤもしくはホイールリムの最接近位置を含むことを特徴とするシリンダ装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載のシリンダ装置において、
ホイールリムの外周部にタイヤが固定されて車輪が構成され、
前記仮想線は、前記車輪の回転軸と直交する線であることを特徴とするシリンダ装置。
【請求項5】
請求項1または2に記載のシリンダ装置において、
前記外筒には、コイルスプリングを支持するスプリングシートが設けられ、前記軸方向任意位置は、前記ナックル取付け部と前記スプリングシートの間に設けられることを特徴とするシリンダ装置。
【請求項6】
請求項1または2に記載のシリンダ装置において、
前記外筒の一端側の開口中心は、前記ストローク中心線と同軸となっていることを特徴とするシリンダ装置。
【請求項7】
請求項1または2に記載のシリンダ装置において、
前記外筒にスタビブラケットを備え、
前記スタビブラケットは、前記外筒を挟んで前記ナックル取付け部の反対側に備えられたことを特徴とするシリンダ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等に用いられるシリンダ装置となるストラット型ショックアブゾーバ及びショックアブゾーバに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のサスペンション,特にマクファーソンストラット型サスペンションに用いられるシリンダ装置となるショックアブゾーバは、減衰弁を備えたピストンが内筒に収納され、内筒の中を軸方向に沿って摺動している。内筒の外周側には、リザーバ室を形成する外筒が配置される。近年のショックアブソーバは、内筒と外筒を備えた複筒式が主流となっている。内筒と外筒の上端部と底端部はそれぞれロッドガイドと底部バルブによって結合されている。内筒と外筒にはピストンロッドが収納され、ピストンロッドの底端部側にはピストンが固定されている。ピストンロッドの上端部側はロッドガイドを貫通し、外筒から突出している。複筒式のショックアブゾーバの一種であるストラット型ショックアブゾーバは、車柱として車体自重と車体の慣性による傾きに対する車体姿勢を支持し、走行時の振動減衰を行う。
【0003】
複筒式ストラット型ショックアブゾーバがマクファーソンストラット型サスペンションに用いられる場合、主にピストンロッドの上端部が車体に結合される。外筒の底端部側はナックルブラケットを介してホイール支持部材となるナックルに結合される。ナックルブラケットは車体外方向に延伸された二面幅の板部でホイール支持部材を挟み込むように結合される。これにより、複筒式ストラット型ショックアブゾーバは車体自重を支持する。複筒式ストラット型ショックアブゾーバは、走行時、慣性等による車体姿勢変化時に生じる車体前後方向に平行な荷重と車体内外方向に平行な荷重の合力(横力)を支持する。
【0004】
複筒式ストラット型ショックアブゾーバは車柱としての機能を有することから、操縦安定性と乗り心地の向上のために、横力に対する曲げ剛性の向上が望まれる。曲げ剛性の向上により複筒式ストラット型ショックアブゾーバは、全体の弾性変形量を低減でき、車体のロール量を低減させて操縦安定性を向上できる。また、弾性変形量の低減により、ピストンとシリンダとなる内筒間の摩擦が低減でき、ピストンの滑らかな直動摺動を実現させて乗り心地を向上できる。
【0005】
曲げ剛性の向上には、特に外筒の外形拡大による断面2次モーメントの向上が効果的である。断面2次モーメントを向上させるものとして、例えば特許文献1に記載の技術が提案されている。特許文献1では、外筒を楕円形状にし、車軸と同方向の中心線の部分において外筒の肉厚が厚くなるようにして断面2次モーメントを向上させ、曲げ剛性を確保するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ストラット型ショックアブソーバを車体に取り付けるにあたっては、周辺部品との干渉を避ける必要がある。特にホイールリム,タイヤと外筒との間は、タイヤチェーン装着時やホイールインチアップ時の対応を考慮する必要がある。すなわち、タイヤチェーン装着時やホイールインチアップ時においても、外筒がタイヤチェーンやインチアップしたホイールと接触しないように、ホイールリム,タイヤと外筒との間には十分なクリアランスを確保する必要がある。
【0008】
特許文献1に記載の技術においては、所定の曲げ剛性を確保できるものの、ストラット型ショックアブソーバと周辺部品との干渉については考慮されていないため、タイヤチェーン装着時やホイールインチアップ時にこれらの部品と外筒とが干渉する恐れがあった。
【0009】
また、特許文献1に記載の技術においては、外筒が、車両の内側と外側とで肉厚が厚くなるように配置されている。部品共有化のため、ストラット型ショックアブソーバを複数車種への搭載を考慮すると、例えばある一つの車種によって車両内側の肉厚が制限され、同時に車両外側の肉厚も制限されてしまう。このため、他の車種では、ストラット型ショックアブソーバの曲げ剛性が十分に確保できない恐れがあった。
【0010】
本発明の目的は、上記課題を解決し、外筒と周辺部材とのクリアランスを確保し、外筒の曲げ剛性を向上させることができるシリンダ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明では、ピストンと、前記ピストンに連結されたピストンロッドを有する緩衝機構と、前記緩衝機構を収容する筒状の内筒と、前記内筒を収容する外筒とを備え、前記外筒は、前記外筒と一体に設けられ、前記外筒の外面から一方向側に突出した一対のナックル取付け部を有し、前記一対のナックル取付け部は、それぞれ幅広面を対向させ、前記幅広面が前記外筒の軸方向に沿って設けられたシリンダ装置において、前記ピストンロッドのストローク中心線に直交する前記外筒の軸方向任意位置での直交断面において、前記ストローク中心線を通り、車両内側と外側に一致した仮想線を境界に、車両内側を仮想領域I、車両外側の仮想領域IIとした場合、前記仮想領域Iにおける前記外筒の断面積を前記仮想領域IIにおける前記外筒の断面積より大きくし、前記直交断面における前記ストローク中心線上の点をストローク中心点とし、前記仮想領域Iにおける前記ストローク中心点から前記外筒の径方向外表面までの距離を距離l
i11
とし、前記ストローク中心点を基準として前記距離l
i11
と点対称位置であり前記仮想領域IIにおける前記ストローク中心点から前記外筒の径方向外表面までの距離を距離l
o11
とした時、前記距離l
i11
を前記距離l
o11
よりも長くし、前記距離l
i11
上における前記外筒の厚さは、前記距離l
o11
上における前記外筒の厚さよりも厚くしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、外筒と周辺部材とのクリアランスを確保し、外筒の曲げ剛性を向上させることができるシリンダ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1実施例に係るサスペンション装置の模式図である。
【
図2】本発明の第1実施例に係る車体前方向から見た複筒式ストラット型ショックアブゾーバの縦側面図である。
【
図3】
図2におけるIII-III´線の断面図である。
【
図4】
図3の断面形状における変形例1を示す図である。
【
図5】
図3の断面形状における変形例2を示す図である。
【
図6】
図3の断面形状における変形例3を示す図である。
【
図7】
図3の断面形状における変形例4を示す図である。
【
図8】
図3の断面形状における変形例5を示す図である。
【
図9】
図3の断面形状における変形例6を示す図である。
【
図10】本発明の第2実施例に係る車体前方向から見た複筒式ストラット型ショックアブゾーバの縦側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るシリンダ装置の実施例を図面に基づいて説明する。本発明は以下の実施例に限定されることなく、本発明の技術的な概念の中で種々の変形例や応用例もその範囲に含むものである。
【0015】
本発明の各実施例では4輪自動車に適用した場合を例に挙げ、説明する。また、本発明の各実施例ではシリンダ装置となるショックアブソーバとして、複筒型のストラット式ショックアブソーバを用いた例で説明する。各実施例の説明においては、各図に記載した座標軸に従い、X方向、Y方向、Z方向とし、矢印の方向を正(+)、反矢印の方向を負(-)と表現する。
【実施例1】
【0016】
図1は本発明の第1実施例に係るサスペンション装置の模式図である。
図1は車両を前方から見た図であり、車両の進行方向右側に位置する前側車輪(1輪)を示している。
【0017】
自動車用マクファーソンストラット型サスペンション装置1は、車柱として車体11とタイヤ19を接続するストラット10と、ストラット10に懸架され車重や減衰抵抗を生み出すコイルスプリング13と、ストラット10に締結されカーブ時の車体ねじれに対する剛性を補填して車体姿勢を維持するスタビライザー16と、ストラット10を締結するナックル14と、ナックル14に締結されるキャンバー角とキャスター角を決める構造部材であるロアアーム17とで構成される。ストラット10は減衰力を生み出し、横力を支持している。
【0018】
自動車用マクファーソンストラット型サスペンション装置1の一端側は、ストラット10とコイルスプリング13の+Y側に固定されたアッパーマウント12を介して車体11と結合される。また、自動車用マクファーソンストラット型サスペンション装置1の他端側は、ロアアーム17の一端側と接続され、車体11と結合される。
【0019】
ナックル14には図示しない軸受が固定され、軸受がホイールハブ15を転動可能に支持する。ホイールハブ15にはホイールリム18が固定され、ホイールリム18の外周部にはタイヤ19が固定される。ホイールリム18とタイヤ19は車輪を構成する。タイヤ19は地面20に接地し、駆動力を地面20に伝達させて車両を走行させる。走行時に作用する横力はストラット10とナックル14で主に支持し、車体変位を抑制する。地面20からの入力や車体11からの入力による振動はストラット10とコイルスプリング13がストローク中心線71に沿って直動して減衰させる。
【0020】
図2は本発明の第1実施例に係る車体前方向から見た複筒式ストラット型ショックアブゾーバの縦側面図、
図3は
図2におけるIII-III´線の断面図である。ストラット10は、ピストン111を摺動可能に収容する内筒103と、内筒103の外周側に配置された外筒104を有する。外筒104は重力鋳造体で構成されており、内部に内筒103を収容している。内筒103と外筒104は、ピストン111の摺動軸となるストローク中心線71を中心として同心に配置されている。内筒103と外筒104の間には、リザーバ室122が形成されている。ピストン111にはピストンロッド102が接続されており、緩衝機構を構成している。緩衝機構は筒状の内筒103に収容される。
【0021】
内筒103と外筒104の+Y方向の先端部には、オイルシール108とロッドガイド109が設けられる。外筒104の先端側は、軸長が内筒103の軸長よりも長く成型され、この部分にオイルシール108とロッドガイド109が格納される。ロッドガイド109は内筒103内径の+Y方向の先端部に圧入固定される。Y軸方向の底端部には一体化された外筒底板105が成型されている。先端側と同様に、外筒104の底端側は軸長が内筒103の軸長よりも長い。この部分に底部バルブ114が格納される。
【0022】
外筒104の一端側となる外筒先端板104aの部分には、開口が形成されオイルシール108、ロッドガイド109、内筒103、底部バルブ114が設けられている。オイルシール108、ロッドガイド109、内筒103、底部バルブ114は、外筒104の+Y方向の先端部に一体化された外筒先端板104aで加締め固定され、オイルシール108、ロッドガイド109、内筒103、底部バルブ114、外筒底板105の順番に伝達する圧縮残留軸力が付与される。このとき、内筒103内には、オイル等の図示しない液体が充填されており、リザーバ室122には液体と共に所定量の図示しない窒素ガスが封入されている。オイルと窒素ガスは加締め固定されたオイルシール108で封止される。また、外筒104の一端側の開口中心は、ピストンロッド102のストローク中心線71と同軸となっている。これにより、外筒104とピストンロッド102との組み付け性を向上することができる。
【0023】
ピストン111は、ピストンロッド102の+Y方向の底端部に結合される。ピストンロッド102の先端部は、オイルシール108とロッドガイド109とを貫通して外筒104の+Y方向の先端部に延出し、
図1に示したアッパーマウント12を介して車体11に結合されている。
【0024】
外筒104の外周表面には、外周表面と一体成型されスタビライザー16を締結するスタビブラケット106と、外周表面に固定されコイルスプリング13を支持するスプリングシート107と、外周表面に一体成型されナックルを締結するナックルブラケット締結板110a,110b(ナックル取付け部)が備えられている。X方向両端のナックルブラケット締結板110a,110bは、互いに二面幅状に離間して-Z方向の車体外方向に向かってに延出するように外筒104に一体成型され、ボルト締結穴110cを通したボルトによりナックル14と締結固定される。換言すると、一対のナックルブラケット締結板110a,110bは、外筒104の外面から一方向側に突出し、それぞれ幅広面を対向させ、幅広面が外筒104の軸方向に沿って設けられている。これにより、ナックル14がストラット10を介して車体11と連結される。
【0025】
ピストン111は、内筒103内に収納され、内筒103の内部を上部室120と下部室121に隔てられる。ピストン111には、一箇所以上のピストンオリフィス111aと、ピストンチェック弁112と、伸び側減衰弁113とが設けられる。ピストンロッド102はピストン111に接続され、内筒103内を出入りする。ピストンロッド102がストローク中心線71に沿って伸び方向(+Y方向)にストロークした時の減衰力は、液体が上部室120から下部室121に流入する時にピストンオリフィス111aと伸び側減衰弁113を通過することにより流通抵抗が負荷されて生み出される。
【0026】
ピストンロッド102がストローク中心線71に沿って縮み方向(-Y方向)にストロークした時には、液体はピストンチェック弁112により、下部室121からピストンオリフィス111aを通って上部室120へ流入する。
【0027】
底部バルブ114には、一箇所以上の底部バルブオリフィス114aと、底部バルブチェック弁115と、縮み側減衰弁116が設けられる。ピストンロッド102がストローク中心線71に沿って伸び方向(+Y方向)にストロークした時には、液体は底部バルブチェック弁115により、リザーバ室122から底部バルブオリフィス114aを通って下部室121への液体を流入する。
【0028】
ピストンロッド102がストローク中心線71に沿って縮み方向(-Y方向)にストロークした時の減衰力は、液体が下部室121からリザーバ室122に流入する時に底部バルブオリフィス114aと縮み側減衰弁116を通過することにより流通抵抗が負荷されて生み出される。
【0029】
従って、ピストンロッド102がストローク中心線71に沿って伸び方向(+Y方向)にストロークする時には、ピストン111のピストンオリフィス111aと伸び側減衰弁113で減衰力を発生すると同時に、ピストンロッド102の退出分の液体が底部バルブ114の底部バルブチェック弁115を通してリザーバ室122から下部室121内に補充される。
【0030】
逆にピストンロッド102がストローク中心線71に沿って縮み方向(-Y方向)にストロークするときには、上部室120と下部室121が導通すると同時に、下部室121からリザーバ室122に液体が流入して底部バルブ114の底部バルブオリフィス114aと縮み側減衰弁116で減衰力を発生する。
【0031】
次にストラット10の断面形状について
図3を用いて説明する。
図3は
図2におけるIII-III´線の断面図である。III-III´線の断面はピストンロッド102のストローク中心線71に直交する外筒104の軸方向任意位置での直交断面である。
【0032】
図3の直交断面において、ストローク中心線71上の点はストローク中心点71aと定義する。ストローク中心点71a(ストローク中心線71)を通り、車両の内側と外側に一致し、車両の内側と外側との境界となる
X方向に延びた線は仮想線191と定義する。仮想線191は、ナックルブラケット締結板110a,110bに形成されたボルト締結穴110cの中心を通るボルト締結穴中心軸線194と平行な線としている。また、仮想線191は、車輪の回転軸と直交する線である。ボルト締結穴中心軸線194上には、ナックル締結中心点72aが位置している。仮想線191を境界として、車両内側となる+Z方向を仮想領域I192、車両外側となる-Z方向を仮想領域II193とそれぞれ定義した場合、本実施例では仮想領域I192内の外筒104の断面積Ai1は仮想領域II193内の外筒104の断面積Ao1よりも大きくしている(断面積A
i1>断面積A
o1)。
【0033】
換言すると、外筒104のピストンロッド102(ロッド)のストローク中心線71(中心軸)の軸方向任意の位置での直交断面において、外筒104の断面積をストローク中心線71(中心軸)に対する径方向一側と径方向他側とに分け、外筒104の径方向一側の断面積Ao1を径方向他側の断面積A1i
より小さくしている。このとき、ストローク中心線71(中心軸)に対する径方向一側と径方向他側の境界は、車輪の回転軸と直交する面とする。ストローク中心線71(中心軸)の軸方向任意の位置での直交断面における外筒104の外周と、径方向一側と径方向他側との境界面からの垂線の最大距離は、径方向一側の方が短くなっている。
【0034】
なお、断面積Ai1と断面積Ao1には、スタビブラケット106の断面積を含むようにしても良い。
【0035】
図2に示したストラット10におけるピストンロッド102の+Y方向の先端部には、車両走行中の転舵による車体姿勢変化により、車体内方向となる+Z方向や車両外方向となる-Z方向に並行な横力が作用する。
【0036】
図2では一例として車両外方向の横力を横力F
tZ1として示した。この横力F
tZ1の大きさと向きは走行状況により時々刻々とランダムに変化する。ストラット10はナックル14にナックルブラケット締結板110a,110bを介して締結され、横力F
tZ1に対する固定部となり,ナックルブラケット締結板110a,110b及び近辺の外筒104には反力F
bZ1が作用する。このとき、横力F
tZ1が作用するストローク中心線71に対して反力F
bZ1が発生するナックル締結中心線72は同軸ではなく、Z方向に距離l
b1だけオフセットしている。
【0037】
図2に示すように横力F
tZ1によりストラット10には曲げ変形が発生する。ナックルブラケット締結板110a,110bのピストンロッド102側端部近辺では、ピストンロッド102側端部近辺を根元として片持ち梁の曲げモーメントM
tZ1が発生する。このときに発生する曲げモーメントM
tZ1は、横力F
tZ1により発生する曲げモーメントと横力F
tZ1と反力F
bZ1のオフセットにより発生する曲げモーメントが合算された値となる。
【0038】
曲げモーメントM
tZ1に対するストラット10の曲げ剛性を向上するためには外筒104の外形を拡大することが有効である。これは、曲げ剛性を決めるパラメータのひとつである断面2次モーメントを効果的に拡大できるためである。例えば、断面が正円管形状の場合,断面2次モーメントは径の4乗に比例する。ただし、
図3に示すように、外筒104とホイールリム18との間は、車種によって決まる距離l
c1以上となるクリアランスを設ける必要がある。距離l
c1は、外筒104とホイールリム18またはタイヤ19との最接近位置であり、タイヤチェーン装着時やホイールインチアップ時にタイヤチェーンやホイールが外筒104と接触しないように距離l
c1を決定する必要がある。
【0039】
外筒104の断面2次モーメントは断面形状全体で決まる値である。そこで、本実施例では直交断面におけるストローク中心線71上の点をストローク中心点71aとし、仮想領域I192におけるストローク中心点71aから外筒104の径方向外表面までの距離を距離li11とし、ストローク中心点71aを基準として距離li11と点対称位置であり仮想領域II193におけるストローク中心点71aから外筒104の径方向外表面までの距離を距離lo11とした時、距離li11を距離lo11よりも長くする(距離li11>距離lo11)。
【0040】
加えて、クリアランスとなるZ軸上における仮想領域II193内の外筒104の径方向外表面までの距離lo11を距離lc1以下となる値にする(距離lo11≦距離lc1)。本実施例では、このよう距離関係とすることにより、車両外側となる仮想領域II193内の外筒104の外形拡大は抑制しつつ、比較的外形の制約が少ない仮想領域I192内の外筒104の外形拡大を行うようにしている。
【0041】
また、仮想領域I192におけるストローク中心点71aから外筒104の径方向内表面までの距離を距離li21とし、ストローク中心点71aを基準として距離li21と点対称位置であり仮想領域II193におけるストローク中心点71aから外筒104の径方向内表面までの距離を距離lo21とした時、距離li21と距離lo21を同じ距離(長さ)とする(距離li21=距離lo21)。すなわち、前記したストローク中心点71aを通る径方向の任意軸上における、仮想領域I192内の外筒104の厚さti1を仮想領域II193内の外筒104の厚さto1より厚くする(厚さti1>厚さto1)。換言すると、距離li11上における外筒104の厚さは、距離lo11上における外筒104の厚さよりも厚くしている。
【0042】
以上の関係とすることにより、本実施例では仮想領域I192内の外筒104の断面積Ai1が仮想領域II193内の外筒104の断面積Ao1より大きくなり、必要な断面2次モーメントを確保して曲げ剛性の向上を図れるとともに、外筒104がホイールリム18またはタイヤ19と干渉しない距離lc1以上にでき、クリアランスを確保できる。
【0043】
なお、仮想領域I192内の外筒104の断面積Ai1と仮想領域II193内の外筒104の断面積Ao1との大小関係は、仮想領域I192内の外筒104の断面2次モーメントIi1が仮想領域II193内の外筒104の断面2次モーメントIo1より大きいと定義することもできる(断面2次モーメントIi1>断面2次モーメントIo1)。
【0044】
換言すると、外筒104のピストンロッド102(ロッド)のストローク中心線71(中心軸)の軸方向任意の位置での直交断面において、外筒104の断面2次モーメントをストローク中心線71(中心軸)に対する径方向一側と径方向他側に分け、外筒104の径方向一側の断面2次モーメントIo1を径方向他側の断面2次モーメントIi1より小さくしている。
【0045】
なお、断面積Ai1と断面積Ao1との関係、断面2次モーメントIi1と断面2次モーメントIo1との関係は、スプリングシート107とナックルブラケット締結板110a,110b(ナックル取付け部)との間に設けられる外筒104の軸方向任意位置であり、この軸方向任意位置は外筒104とホイールリム18またはタイヤ19との最接近位置(距離lc1)を含むものである。
【0046】
本実施例においては、前記した仮想領域I192内の外筒104と仮想領域II193内の外筒104の断面積の関係又は断面2次モーメントの関係が満足できていれば曲げ剛性は確保できるため、前記したストローク中心点71aを通る径方向の任意軸上における外筒104に対する径方向外表面までの距離、径方向内表面までの距離、厚さの全て、又は、いずれかの関係を満足していないことを排除するものではない。
【0047】
また、内筒103の断面形状については、正円管に近い形状が好ましい。これは、内筒103がシリンダとなり、ピストン111が内筒103の内表面で直動摺動するためである。内筒103とピストン111は密に接触させオイルなどの減衰媒体をピストンオリフィス111aに流す必要があり、気密性が要求されるためである。ただし本発明では、内筒103の断面形状は楕円、多角形など、いかなる形状であることを排除するものではない。
【0048】
前記した外筒104の断面積、断面2次モーメント、距離、厚さの関係は、少なくとも
図2に示したホイールリム18とタイヤ19と対向するY方向の範囲で成立すれば良い。ただし本発明では、前述の範囲一部のみで成立させることや、外筒104のY方向の全域及びホイールリム18とタイヤ19と対向しないY方向の一部で成立させることを排除するものではない。
【0049】
次に
図4乃至
図9を用いて、
図3に示した外筒104の断面形状の変形例について説明する。
図4は
図3の断面形状における変形例1を示す図である。
図3と同一の構成については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0050】
図4に示す外筒204の断面形状は
図3に示した外筒104の断面形状からスタビブラケット106を削除した形状である。外筒204の断面は楕円に近い形状であり、
図3にて説明した断面積、断面2次モーメント、距離、厚さの関係を全て満足する形状である。
【0051】
次に
図5を用いて変形例2について説明する。
図5は
図3の断面形状における変形例2を示す図である。
図5に示した外筒304の断面は卵型円に近い形状である。
図5の構成は、
図3にて説明した断面積の関係と一部の領域における距離及び厚さの関係は満足しないが、断面2次モーメントは前記した関係を満足し、
図3での効果を発揮できる断面形状である。外筒304は車両内側となる+Z方向に寄せて配置しており、仮想領域I192内の断面積は仮想領域II193の断面積より大きい。このように構成することにより、ホイールリム18やタイヤ19と外筒304間のクリアランスを確保しつつ、外筒の外形拡大による曲げ剛性を向上することができる。
【0052】
次に
図6を用いて変形例3について説明する。
図6は
図3の断面形状における変形例3を示す図である。
図6に示した外筒404の断面は六角形に近い形状であり、
図3にて説明した断面積、断面2次モーメント、距離、厚さの関係を全て満足する形状である。外筒404は車両内側となる+Z方向に寄せて配置しており、仮想領域I192内の断面積は仮想領域II193の断面積より大きい。このように構成することにより、ホイールリム18やタイヤ19と外筒404間のクリアランスを確保しつつ、外筒の外形拡大による曲げ剛性を向上することができる。
【0053】
次に
図7を用いて変形例4について説明する。
図7は
図3の断面形状における変形例4を示す図である。
図7に示した外筒504の断面は四角形に近く一部形状であり仮想領域I
192内に径方向の凹みを有する形状である。前記した距離及び厚さの関係は凹み部分では満足しないが、断面積及び断面2次モーメントは関係で満足する形状である。外筒504は車両内側となる+Z方向に寄せて配置しており、仮想領域I192内の断面積は仮想領域II193の断面積より大きい。このように構成することにより、ホイールリム18やタイヤ19と外筒504間のクリアランスを確保しつつ、外筒の外形拡大による曲げ剛性を向上することができる。
【0054】
次に
図8を用いて変形例5について説明する。
図8は
図3の断面形状における変形例5を示す図である。
図8に示した外筒604の断面は花びらに近い形状であり、前記した断面積、断面2次モーメント、距離、厚さの関係を全て満足する形状である。外筒604は車両内側となる+Z方向に寄せて配置しており、仮想領域I192内の断面積は仮想領域II193の断面積より大きい。このように構成することにより、ホイールリム18やタイヤ19と外筒604間のクリアランスを確保しつつ、外筒の外形拡大による曲げ剛性を向上することができる。
【0055】
次に
図9を用いて変形例6について説明する。
図9は
図3の断面形状における変形例6を示す図である。
図9に示した外筒704の断面は歯車に近い形状であり、前記した断面積、断面2次モーメント、距離、厚さの関係を全て満足する形状である。外筒704は車両内側となる+Z方向に寄せて配置しており、仮想領域I192内の断面積は仮想領域II193の断面積より大きい。このように構成することにより、ホイールリム18やタイヤ19と外筒704間のクリアランスを確保しつつ、外筒の外形拡大による曲げ剛性を向上することができる。
【実施例2】
【0056】
次に
図10及び
図11を用いて本発明の第2実施例について説明する。
図10は本発明の第2実施例に係る車体前方向から見た複筒式ストラット型ショックアブゾーバの縦側面図、
図11は
図10の断面XI-XI´線の断面図である。第1実施例と同一の構成については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0057】
第2実施例において第1実施例と異なるところは、ストラット10に取り付けたスタビブラケット206を車両内側となる+Z方向に配置した点にある。すなわち、外筒に備えたスタビブラケット206は、外筒104を挟んでナックルブラケット締結板110a,110b(ナックル取付け部)の反対側に備えられている。
【0058】
図11に示した通り、第2実施例では、スタビブラケット206を横力F
tZ1と反力F
bZ1が作用し発生する横力反力作用線190上であって、仮想領域I192内の外筒104の径方向外表面上に配置した。このような配置とすることにより、仮想領域I192内の外筒104の断面積、断面2次モーメントを向上でき、横力F
tZ1に対するストラット10の曲げ剛性を向上できる。なお、スタビブラケット206は
図11に示した通り、X方向の中央位置を横力反力作用線190と一致させる配置が断面2次モーメントを最大化できるため好ましい。ただし、スタビブラケット206のX方向の中央位置は横力反力作用線190一致しない場合であっても、仮想領域I192内にスタビブラケット206が配置されていれば、曲げ剛性を向上することができる。
図10に示した通り、スタビブラケット206はホイールリム18,タイヤ19と対向する範囲に配置することが好ましい。この場合、スタビブラケット206はホイールリム18,タイヤ19と対向するY方向長さ全域や一部の領域に配置すれば良い。なお、本発明ではスタビブラケット206をホイールリム18とタイヤ19と対向しないY方向の位置に配置することを排除するものではない。
【0059】
図2に示したストラット10ではスタビブラケット106は車両前側に配置されている。ナックルブラケット締結板110aとナックルブラケット締結板110bは一般的に車両外側に配置されるため、ストラット10におけるスタビブラケット106の配置位置では左右輪で別仕様のストラットを製造する必要がある。
【0060】
これに対し、第2実施例では、スタビブラケット206をホイールリム18,タイヤ19と対向する範囲に配置することにより、ストラット10を左右輪で共用化することでき、ストラット10のコストを低減することができる。
【0061】
以上説明した第1実施例及び第2実施例では、外筒104の構成材料としてアルミ二ウム合金材を適用する。第1実施例及び第2実施例では、外筒104の外形拡大による断面2次モーメントの向上と合わせて鉄鋼材に対して低密度なアルミ二ウム合金材を適用することにより、ストラット10の軽量化が可能となる。なお、構成材料は鉄鋼材、マグネシウム合金材、チタニウム合金材、樹脂材、炭素系やガラス系等いかなる複合材を用いても良い。ただし、環境温度の変化やストローク時の液体の発熱による熱変形に対して線膨張係数を同等とし、同等の熱変形量とするため、内筒103、外筒104、スタビブラケット106、スプリングシート107、ナックルブラケット締結板110a,110bは同種材で構成した方が好ましい。なお、本発明は、内筒103、外筒104、スタビブラケット106、スプリングシート107、ナックルブラケット締結板110aとナックルブラケット締結板110bを異種材で構成することを排除するものではない。また、内筒103、外筒104、スタビブラケット106、スプリングシート107、ナックルブラケット締結板110aとナックルブラケット締結板110bは防錆や表面硬度向上を目的としたメッキ、塗装、アルマイト、浸炭等の表面処理や熱処理を施すようにしても良い。
図4乃至11に示した変形例においても同様である。
【0062】
外筒104の製造方法としては、重力鋳造やダイカストが円周方向の偏肉形状を成型する工法として好ましい。外筒104は、テーラードブランク工法を用いた異材接合やフローフォーミング工法により予め偏肉化した部材を電縫工法により管形状に成型するようにしても良い。さらに外筒104は、3次元造形により成型しても良い。なお本発明は、切削、鍛造、押出や引抜等による成型を排除するものではない。
【0063】
外筒104に成型されたスタビブラケット106、ナックルブラケット締結板110aとナックルブラケット締結板110bは、一体鋳造成型とし部品点数の削減を図ることが好ましい。なお、第1及び第2実施例では、スプリングシート107については、別部品とし、溶接固定しているが、嵌合、圧入、ろう付け、接着、ボルト締結、加締め、射出成型モールド等いかなる工法により固定しても良い。また、スプリングシート107は、一体鋳造による成型としても良い。
【0064】
スタビブラケット106、ナックルブラケット締結板110a,110bは一体鋳造成型としているが、別部品として溶接、嵌合、圧入、ろう付け、接着、ボルト締結、加締め、射出成型モールド等いかなる工法により固定しても良い。
【0065】
スタビブラケット106とスプリングシート107は一体としても良く、ナックルブラケット締結板110aとナックルブラケット締結板110bは一体としても良い。
【0066】
また、ストラット10の固定にあたっては、外筒104からナックルブラケット締結板110a,110bを排除し、外筒104を直接ナックル14に溶接、嵌合、圧入、ろう付け、接着、ボルト締結、加締め、射出成型モールド等の工法によって固定するようにしても良い。その場合、外筒104の車両取り付け位置が目視判定可能なようにストラット10や外筒104外表面に突起、凹み、刻印等何らかの目印を成型しても良い。
図4乃至
図11に示した変形例においても同様である。
【0067】
本発明は第1及び第2実施例で説明したものに限るものではなく、路面入力周波数に対して複数のピストンをアクチュエータで切り替えて減衰性能を切り替える形式や、外筒に格納や取り付けたソレノイド等の外部からの何らかのエネルギで減衰性能を切り替える型式の制御型複筒式ストラット型ショックアブゾーバ及びショックアブゾーバであっても良い。
【0068】
また、減衰力を発揮させる媒体としては、空気、磁性粘性流体、電気粘性流体等を用いた複筒式ストラット型ショックアブゾーバ及びショックアブゾーバであっても良い。さらに、本発明は、単筒式ストラット型ショックアブゾーバやロッドをナックル側に締結する倒立型の単筒式又は複筒式ストラット型ショックアブゾーバ及びショックアブゾーバであっても良い。
[本発明の実施態様例]
本発明の実施態様の一例として、例えば、ピストン111と、ピストン111に連結されたピストンロッド102を有する緩衝機構と、緩衝機構を収容する筒状の内筒103と、内筒103を収容する外筒104とを備え、外筒104は、外筒104と一体に設けられ、外筒104の外面から一方向側に突出した一対のナックルブラケット締結板110a,110bを有し、一対のナックルブラケット締結板110a,110bは、それぞれ幅広面を対向させ、前記幅広面が外筒104の軸方向に沿って設けられたストラット型ショックアブソーバにおいて、
前記ピストンロッド102のストローク中心線71に直交する外筒104の軸方向任意位置での直交断面において、ストローク中心線71を通り、車両内側と外側に一致した仮想線191を境界に、車両内側を仮想領域I192、車両外側の仮想領域II193とした場合、仮想領域I192における外筒104の断面積Ai1を仮想領域II193における外筒104の断面積Ao1より大きくしたことを特徴とする。
【0069】
本実施形態によれば、ホイールリムやタイヤと外筒間のクリアランスを確保しつつ、横力に対する外筒の径拡大による曲げ剛性の向上を両立でき、車両の操縦安定性と乗り心地を向上できる、複筒式ストラット型ショックアブゾーバを提供できる。
【0070】
なお、本発明は前記した各実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれている。例えば、前記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0071】
1…自動車用マクファーソンストラット型サスペンション装置、10…ストラット、11…車体、12…アッパーマウント、13…コイルスプリング、14…ナックル、15…ホイールハブ、16…スタビライザー、17…ロアアーム、18…ホイールリム、19…タイヤ、20…地面、71…ストローク中心線、71a…ストローク中心点、72a…ナックル締結中心点、102…ピストンロッド、103…内筒、104…外筒、104a…外筒先端板、105…外筒底板、106…スタビブラケット、107…スプリングシート、108…オイルシール、109…ロッドガイド、110a,110b…ナックルブラケット締結板、110c…ボルト締結穴、111…ピストン、111a…ピストンオリフィス、112…ピストンチェック弁、113…伸び側減衰弁、114…底部バルブ、114a…底部バルブオリフィス、115…底部バルブチェック弁、116…縮み側減衰弁、120…上部室、121…下部室、122…リザーバ室、190…横力反力作用線、191…仮想線、192…仮想領域I、193…仮想領域II