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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】コリウムシールド
(51)【国際特許分類】
   G21C 9/016 20060101AFI20221125BHJP
【FI】
G21C9/016
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019060331
(22)【出願日】2019-03-27
(65)【公開番号】P2020159899
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】吉田 靖
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 信之
(72)【発明者】
【氏名】藤丸 真
(72)【発明者】
【氏名】野口 忠弘
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 優紀
【審査官】後藤 大思
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-219464(JP,A)
【文献】特開平7-140288(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0322967(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 9/016
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉格納容器内に設置されている原子炉圧力容器を支える原子炉本体基礎の下部に構成される下部ドライウェル床面の下方に、配管及び/又は機器からの漏水を検知、収集するためのドライウェルサンプがピット状に設けられ、熔融炉心と炉内構造物の溶融混合物(コリウム)が前記ドライウェルサンプへ流れ込むのを防止するコリウムシールドであって、
前記コリウムシールドは、断面L字状の耐火煉瓦の壁(堰)で形成され、かつ、前記ドライウェルサンプより、前記コリウムが流れ込む方向の前記下部ドライウェル床面の中心側に設置されていると共に、前記断面L字状の耐火煉瓦の壁(堰)の前記コリウムが流れ込む方向とは反対側の面に補強フレームが設置され、かつ、前記断面L字状の耐火煉瓦の壁(堰)の前記コリウムが流れ込む方向のL字状の面には保護層が設けられていることを特徴とするコリウムシールド。
【請求項2】
請求項1に記載のコリウムシールドであって、
前記耐火煉瓦の壁(堰)の内部に縦方向の空洞を形成すると共に、前記空洞に鋼棒を挿入し、前記鋼棒と前記補強フレームを水平プレートで連結したことを特徴とするコリウムシールド。
【請求項3】
請求項2に記載のコリウムシールドであって、
前記耐火煉瓦の壁(堰)の内部に横方向の水平プレートを設置すると共に、前記水平プレートと前記補強フレームを連結したことを特徴とするコリウムシールド。
【請求項4】
請求項3に記載のコリウムシールドであって、
前記断面L字状の耐火煉瓦の壁(堰)の下端に床張出部が形成されていると共に、前記床張出部の内部に水平プレートが設置されていることを特徴とするコリウムシールド。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のコリウムシールドであって、
前記断面L字状の耐火煉瓦の壁(堰)は、全体がカバープレートで覆われていることを特徴とするコリウムシールド。
【請求項6】
請求項5に記載のコリウムシールドであって、
前記カバープレートは、前記断面L字状の耐火煉瓦の壁(堰)の表面に目地材を塗布した上に溶接固定されることを特徴とするコリウムシールド。
【請求項7】
請求項6に記載のコリウムシールドであって、
前記カバープレートは、該カバープレートの溶接部裏側となる箇所に、予めセラミックシートを貼り付け、前記カバープレートを被せてから溶接固定されていることを特徴とするコリウムシールド。
【請求項8】
請求項7に記載のコリウムシールドであって、
前記断面L字状の耐火煉瓦の壁(堰)は、原子炉冷却材再循環ポンプの昇降装置と干渉する範囲を着脱可能な複数のブロックに分割されていることを特徴とするコリウムシールド。
【請求項9】
請求項8に記載のコリウムシールドであって、
前記分割されたブロック同士の合わせ目が、階段状に形成されていることを特徴とするコリウムシールド。
【請求項10】
請求項9に記載のコリウムシールドであって、
前記断面L字状の耐火煉瓦の壁(堰)の下端のうち、前記ドライウェルサンプの床ドレン水排出口の前に、2箇所の排水スリットを設けたことを特徴とするコリウムシールド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコリウムシールドに係り、特に、下部ドライウェル床面に設けられ、配管や機器からの漏水を検知、収集するためのドライウェルサンプへ、熔融炉心と炉内構造物の溶融混合物であるコリウムが流れ込むのを防止するために設置されているコリウムシールドに関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、原子力発電プラントにおける原子炉建屋内の構成を示すものである。
【0003】
図1に示すように、原子炉圧力容器2内には燃料棒(図示せず)が収容されており、外側には、原子炉圧力容器2を覆う原子炉格納容器3、更に、原子炉格納容器3の外側には原子炉建屋1が設置され、原子炉格納容器3や原子炉建屋1は、万一の原子炉圧力容器2の損傷を伴うような過酷事故が発生した時に、放射性物質を屋外に放出させないための障壁となっている。
【0004】
また、原子炉格納容器3内には、原子炉圧力容器2を支える円筒状の原子炉本体基礎4が設置されており、更に、原子炉本体基礎4の下部の空間である下部ドライウェル5の床面には、プラント運転中に配管や機器からの冷却水の漏洩を検知、収集するためのドライウェルサンプ6が設置されている。
【0005】
通常、下部ドライウェル5の床面から原子炉格納容器3下端の底部ライナ7までの高さ(H1)に対して、ドライウェルサンプ6の深さ(H2)は、H1より低いピット状の機器のため、原子炉格納容器3のバウンダリである底部ライナ7までの床厚さが薄くなっている。
【0006】
このような機器配置状況で炉心損傷を伴うような過酷事故が発生し、上述したコリウムが、原子炉圧力容器2下部のCRDハウジング貫通孔(図示せず)から下部ドライウェル5の床面に落下してドライウェルサンプ6内に流入すると、コンクリートとの相互作用(MCCI)により、ドライウェルサンプ6の底面のコンクリートが侵食され、更には、コリウムが底部ライナ7に到達すると底部ライナ7が損傷し、原子炉格納容器3の封じ込め機能が喪失し、放射性物質が外部に放出される大事故につながることが考えられる。
【0007】
このような事故を防止するため、コリウムがドライウェルサンプ6内に流れ込むことを防ぐ壁、即ち、コリウムシールドが設置されている。
【0008】
例えば、図2に示すように、ドライウェルサンプ6を取り囲むようにコリウムシールド10を配置することにより、過酷事故時のドライウェルサンプ6へのコリウムの流入を防止することができる。
【0009】
このドライウェルサンプ6内にコリウムが流れ込むことを防ぐ壁(コリウムシールド10)を設置している先行技術文献としては、特許文献1及び2を挙げることができる。
【0010】
上記特許文献1及び2には、ドライウェルサンプへのコリウムの流入を防止するためにサンプカバーやコリウム遮蔽体を設けることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2011-7613号公報
【文献】特開平7-140288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述した熔融炉心と炉内構造物の溶融混合物であるコリウムは2200℃を超える高温であり、コリウムが流れ込まないように設置されているコリウムシールドは、このような高温のコリウムに耐えられるものでなければならず、しかも、コリウム接触時の急加熱によりひび割れが生じる懸念がある。
【0013】
しかしながら、上述した特許文献1及び2には、上記した課題に対する対策に関しては、特に記載されていない。
【0014】
本発明は上述の点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、高温のコリウムに耐えられることは勿論、コリウム接触時に急加熱されてもひび割れが生じることのないコリウムシールドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のコリウムシールドは、上記目的を達成するために、原子炉格納容器内に設置されている原子炉圧力容器を支える原子炉本体基礎の下部に構成される下部ドライウェル床面の下方に、配管及び/又は機器からの漏水を検知、収集するためのドライウェルサンプがピット状に設けられ、熔融炉心と炉内構造物の溶融混合物(コリウム)が前記ドライウェルサンプへ流れ込むのを防止するコリウムシールドであって、前記コリウムシールドは、断面L字状の耐火煉瓦の壁(堰)で形成され、かつ、前記ドライウェルサンプより、前記コリウムが流れ込む方向の前記下部ドライウェル床面の中心側に設置されていると共に、前記断面L字状の耐火煉瓦の壁(堰)の前記コリウムが流れ込む方向とは反対側の面に補強フレームが設置され、かつ、前記断面L字状の耐火煉瓦の壁(堰)の前記コリウムが流れ込む方向のL字状の面には保護層が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、高温のコリウムに耐えられることは勿論、コリウム接触時に急加熱されてもひび割れが生じることはない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明のコリウムシールドが適用される原子炉格納容器の全体構成を示す概略断面図である。
図2図1の原子炉格納容器におけるドライウェルサンプとコリウムシールドの配置を示す平面図である。
図3】本発明のコリウムシールドの実施例1であり、コリウムシールドの耐火煉瓦と補強フレームの接続状態示す部分断面図である。
図4図3におけるコリウムシールドのカバープレート溶接部(図3のC部)の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図示した実施例に基づいて本発明のコリウムシールドを説明する。なお、各図において、同一構成部品には同符号を使用する。
【実施例1】
【0019】
本実施例のコリウムシールド10は、図1に示した原子力発電プラントと同様に、原子炉格納容器3内に設置されている原子炉圧力容器2を支える原子炉本体基礎4の下部に構成される下部ドライウェル5の床面の下方に、配管や機器からの漏水を検知、収集するためのドライウェルサンプ6がピット状に設けられ、熔融炉心と炉内構造物の溶融混合物であるコリウムがドライウェルサンプ6へ流れ込むのを防止するものである。
【0020】
以下、本実施例のコリウムシールド10について、図3及び図4を用いて説明する。
【0021】
図3に示すように、本実施例のコリウムシールド10は、断面L字状の耐火煉瓦11の壁(堰)で形成され、かつ、ドライウェルサンプ6より、コリウムが流れ込む方向(図3の左側)の下部ドライウェル5の床面の中心側に設置されていると共に、断面L字状の耐火煉瓦11の壁(堰)のコリウムが流れ込む方向とは反対側の面に補強フレーム12が設置され、かつ、断面L字状の耐火煉瓦11の壁(堰)のコリウムが流れ込む方向のL字状の面には保護層11bが設けられている。
【0022】
このように、図3の右側のドライウェルサンプ6に対し、コリウムが流れ込んで来る方向(図3の左側)に、耐火煉瓦11の壁と補強フレーム12とが一体化されたコリウムシールド10が設置されているため、過酷事故時のドライウェルサンプ6へのコリウムの流入が防止できる。
【0023】
また、耐熱煉瓦11の壁(堰)の内部には縦方向に空洞が形成され、その空洞に鋼棒12bを挿入し、この鋼棒12bと補強フレーム12に取付けた水平プレート12cにより、耐火煉瓦11と補強フレーム12との一体化が可能となっている。
【0024】
これにより、自立出来ない耐火煉瓦11を使用しても、プラントの通常運転時の高震度の地震に耐える堰の設置が可能となる。また、耐火煉瓦11は、保護層11bと耐火煉瓦11の本体部分11aの二層構造とし、高温のコリウムとの接触時の急加熱による耐火煉瓦11のひび割れの貫通を防止している。
【0025】
また、補強フレーム12は、コリウムに対し耐火煉瓦11を背面側(コリウムが流れ込む方向(図3の左側)とは反対側)から支持することにより、過酷事故時に到達した高温のコリウムの熱の影響を直接受けることなく、コリウムの荷重に対し補強フレーム12が必要な強度を発揮することができる。
【0026】
また、断面L字状のコリウムシールド10の下端に床張出部10aを設けることにより、過酷事故時のコリウムによるコリウムシールド10の堰の下端からのコンクリート侵食によるアンカーボルト12a(後述する)の損傷を防止すことができる。
【0027】
図4は、コリウムシールド10のカバープレート12dの溶接部(図3のC部)の断面図である。
【0028】
図4に示すように、耐熱煉瓦11をカバープレート12dで覆うことにより、水を吸収しやすい耐火煉瓦11に対し、運転中または定期検査時に、下部ドライウェル5の床面に発生する漏洩水に対する耐水性と、漏洩水による汚染防止が可能となっている。
【0029】
耐火煉瓦11の表面に施工するカバープレート12dの溶接の際には、耐火煉瓦11とカバープレート12dの溶接部との間にセラミックシート12eを挿入し、カバープレート12dの仮付け(点付け溶接)を施工した後、12時間程度の養生後に本溶接を実施することにより、溶接入熱による溶接部からの目地材11cの染み出しが防止できると共に、溶接品質向上が図れる。
【0030】
即ち、本実施例では、熔融炉心と炉内構造物の溶融混合物であるコリウムは、2200℃を超える高温であり、このような高温のコリウムに耐えられるのは「耐熱煉瓦」しかないため、これを使用しコリウムがドライウェルサンプ6内に流れ込むことを防ぐコリウムシールド10として、断面L字状の耐火煉瓦11の壁(堰)を考えたものであり、更に、耐火煉瓦11は自立できないため、断面L字状の耐火煉瓦11の壁(堰)のコリウムが流れ込む方向とは反対側の面に、鋼材による補強フレーム12を設けたものである。
【0031】
耐火煉瓦11は高融点の材料ではあるが、コリウムとの接触時の急加熱により耐火煉瓦11にひび割れが生じる懸念があるため、これを防止する構造を検討する必要がある。
【0032】
また、コリウムシールド10を既設ABWRプラントへ適用する場合、既存機器の配置上の制約から設置可能な場所が限定されると共に、コリウムシールド10の施工、着脱用の作業用揚重機等の設置が難しい。
【0033】
従って、このような環境条件下でも、作業用資材等の吊り降ろしの出来る機構を考えると共に、施工中の作業を極力人力で行える設計を考える必要がある。
【0034】
また、補強フレーム12の材料は、調達性、加工性及び据付後のメンテナンス性を考慮し、一般のステンレス鋼材を使用しつつ、過酷事故発生前の地震荷重と過酷事故発生後のコリウム接触後から冷え固まるまでの間、コリウムの熱及び自重を受けてもコリウムシールド10が崩壊しない十分な強度を有するものとする。
【0035】
また、耐火煉瓦11は、内部に空隙が多く存在し水を吸収しやすい材料のため、運転中または定期検査時に、下部ドライウェル5の床面に発生する漏洩水に対する耐水性と、漏洩水による汚染防止が必要となるし、定期検査中の周辺作業時の工具との干渉等による衝撃からの保護が必要となる。
【0036】
このため、耐火煉瓦11は、ステンレス製のカバープレート12dにて全体を覆う構造とするが、カバープレート12dの溶接入熱により、目地材11cが浸み出し溶接不良が生じない溶接要領を考える必要がある。
【0037】
また、コリウムシールド10は、過酷事故時に下部ドライウェル5の床面に落下するコリウムが、ドライウェルサンプ6に流入しないよう、コリウムの堆積高さを所定の高さの壁(堰)とする必要がある。
【0038】
これに対し、RIP昇降装置9は、プラント定期検査中のRIPモータ着脱作業時に、下部ドライウェル5内を360°旋回するが、RIP昇降装置9の下端が壁(堰)の必要高さより低い位置にあり、コリウムシールド10との干渉が避けられないため、断面L字状の耐火煉瓦11の壁(堰)の一部を分割できる構造を考え必要がある。即ち、下部ドライウェル5内に設置され、定期検査時に燃料の核反応を制御する制御棒(CRD)を交換するためのCRD交換装置8と、原子炉冷却材再循環ポンプ(RIP)モータの着脱作業用のRIP昇降装置9が、下部ドライウェル5内を360°旋回するため、コリウムシールド10の設置にあたっては、これら装置の旋回操作を阻害しないよう配慮する必要がある。
【0039】
この際、耐火煉瓦11の壁(堰)に分割部を設けると過酷事故時に発生するコリウムの流入リスクが増えるため、分割部を設けてもコリウムが流入しない構造を考える必要がある。
【0040】
また、ドライウェルサンプ6は、下部ドライウェル5の床にピット状に設置されているが、図2に示すように、ドライウェルサンプ6の側面には床ドレン水排出口6aが2箇所設けられており、周辺機器からの漏洩水の受け入れ及びプラント運転中の漏洩検知機能を有する。
【0041】
一方、コリウムシールド10は、過酷事故時にコリウムがドライウェルサンプ6へ流入することを防止するため、ドライウェルサンプ6を取り囲むように設置するが、ドライウェルサンプ6の漏洩水の受け入れ機能及び漏洩検知機能を阻害しない構造としなければならない。
【0042】
このようなことから、本実施例では、図3に示すように、コリウムシールド10は、断面L字状の耐火煉瓦11の壁(堰)で形成され、かつ、ドライウェルサンプ6より、ドライウェルサンプ6に対しコリウムが流れ込む方向(図3の左側で、下部ドライウェル5床面の中心側)に設置されている。
【0043】
ここで、耐火煉瓦11は自立できないため、鋼材12bによる補強(補強フレーム12)が必要となるが、耐火煉瓦11の内部に縦方向の空洞を作り、そこへ鋼棒12bを挿入し、鋼棒12bと補強フレーム12とを、水平プレート12cにて連結する構造とする。補強フレーム12用の鋼材12bは、熱に弱いため直接的に熱の影響を受けないよう、耐火煉瓦11の壁(堰)の背面側(コリウムに接触する側の反対側)から支持するようにする。
【0044】
また、コリウムシールド10の堰(耐火煉瓦11の壁)は、図3に示すように、コリウムシールド10の堰の本体部分11aに対し、コリウム接触側に所定の厚さの保護層11bを配置した二層構造とすることにより、万一、熱衝撃によるひび割れが発生しても保護層11bの部分で食い止められる構造としている。
【0045】
また、コリウムシールド10の施工、着脱用の作業用揚重機は、下部ドライウェル5の床面での定期検査時作業を妨げないよう、下部ドライウェル5の床面から数m上にあるCRD交換装置8のプラットホーム支持梁の下面に設置している。耐熱材は重量物のため、基本サイズは、作業員が1人で持てるサイズ及び質量とする。
【0046】
また、補強フレーム12の材料は、コリウムとの接触時の熱を受けても必要な強度を確保できるよう、温度依存による強度低下を考慮し、一般のステンレス鋼の中でもより強度の高いSUS304N2材とする。更に、耐火煉瓦11は、内部に縦方向の空洞を作り、そこへ鋼棒12bを挿入し、鋼棒12bと補強フレーム12とを水平プレート12cにて連結する構造とする。
【0047】
また、コリウムシールド10が過酷事故発生前に生じる地震荷重による水平方向の繰り返し荷重と過酷事故後のコリウムの自重に耐えられるよう、補強フレーム12はアンカーボルト12aにて下部ドライウェル5の床面に固定するようにする。このアンカーボルト12aは接着系アンカーとし、過酷事故時のコリウムの熱に耐えられるよう熱に強い無機系接着剤を使用する。
【0048】
また、過酷事故時のコリウムによるコリウムシールド10の堰の下端からのコンクリート侵食により、アンカーボルト12aが損傷しコリウムシールド10が崩壊することを防止するため、断面L字状のコリウムシールド10の下端に床張出部10aを設ける。この床張出部10aの内部にも水平プレート12cを設け、コリウム接触時の浮き上がりを防止している。
【0049】
また、コリウムシールド10の堰(耐火煉瓦11の壁)は、図3に示すように、ステンレス製のカバープレート12dで全体を覆う構造とすることにより、耐水性を持たせると共に、耐火煉瓦11を衝撃から保護するようになっている。
【0050】
また、図4に示すように、耐火煉瓦11を積み付け後、耐火煉瓦11の表面に目地材11cを塗布し、その目地材11cの上にカバープレート12dを被せ溶接を行うが、溶接入熱による目地材11cの染み出しや、それによる溶接ビード外観の悪化を防止するため、カバープレート12dの溶接部裏側となる箇所に予めセラミックシート12eを貼り付け、その後、カバープレート12dを被せてから溶接している。また、目地材11cの施工後、カバープレート12dを仮付け(点付け溶接)した後、12時間程度養生し、その後に本溶接を実施している。
【0051】
また、コリウムシールド10の堰のうち、RIP昇降装置9と干渉する範囲(図3中のA-Aより上の範囲)を着脱可能な分割ブロック13とするが、重量物のため定期検査時の作業性を考慮し複数のブロックに分割している。この際、分割ブロック13同士の合わせ目から過酷事故時にコリウムが流入しないよう、図3のB部のように、合わせ目の断面形状はストレートではなく階段状の形状とする。
【0052】
また、コリウムシールド10の堰の下端のうち、図2に示すドライウェルサンプ6の床ドレン水排出口6aの前に、2箇所の排水スリット14を設けることにより、ドライウェルサンプ6の漏洩水受け入れ機能及び漏洩検知機能を保持できる構造とするが、過酷事故時に発生するコリウムは、排水スリット14内で凝固しドライウェルサンプ6に流入しないスリット寸法とする。
【0053】
このような本実施例とすることにより、ドライウェルサンプ6をコリウムが流れ込む方向に壁(断面L字状の耐熱煉瓦11による堰)を設け、更に、熱の影響を低減するため壁の背面(コリウムの接触する側の反対側)から補強フレーム12で支持することにより、タングステン等の希少で高価な高融点金属を使用せずとも、高熱に弱い通常の金属(炭素鋼、ステンレス鋼等1200℃で強度ゼロ)による補強が可能となる。
【0054】
また、コリウムシールド10の堰(耐火煉瓦11の壁)に保護層11bを設けることにより、評価上必要な厚さの耐火煉瓦11の本体部分11aがコリウム接触後も健全性を維持可能となる。仮に保護層11bにひびわれが生じても、保護層11bはコリウムの自重により壁(堰)に押し付けられるため、崩壊することは無く耐火煉瓦11の本体部分11aと合わせてコリウムの堰き止め機能を発揮できる。
【0055】
また、コリウムシールド10の施工、着脱用の作業用揚重機をCRD交換装置8のプラットホーム15に取り付けることにより、定期検査時の下部ドライウェル5の床面での作業エリアに従来と変わらない作業スペースの確保が可能となる。また、耐火煉瓦11の基本サイズを小さくすることにより、耐火煉瓦11の搬入及び据付作業効率が向上され据付工程の短縮が図れる。
【0056】
また、補強フレーム12をアンカーボルト12aで下部ドライウェル5の床面に固定し自立させることにより、ドライウェルサンプ6から補強を取るなどドライウェルサンプ6の改造を伴わずに設置することが可能となる。また、耐火煉瓦11の内部に鋼棒12bを挿入し、補強フレーム12と一体化することにより、水平荷重に弱い耐火煉瓦11が高震度の地震にも耐えられるようになっている。
【0057】
また、カバープレート12dの溶接部裏側へのセラミックシート12eの挿入により、耐火煉瓦11の表面上で溶接しても、カバープレート12dの溶接品質の確保が可能となる。
【0058】
また、分割ブロック13を複数のブロックに分割することにより、単品質量の軽量化が図られ、コリウムシールド10の施工、着脱用の作業用揚重機を取付けたCRD交換装置8への荷重負荷の軽減が可能となる。また、分割ブロック13の合わせ目の断面形状を、図3のB部の如く、階段状とすることにより、コリウムの流入リスクが低減できる。
【0059】
また、断面L字状の耐火煉瓦11の壁(堰)の下端のうち、ドライウェルサンプ6の床ドレン水排出口6aの前に、2箇所の排水スリット14を設置することにより、過酷事故時に発生するコリウムの堰き止め機能と、ドライウェルサンプ6の漏洩水受け入れ及び漏洩検知機能の両立が可能となる。
【0060】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれている。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0061】
1…原子炉建屋、2…原子炉圧力容器、3…原子炉格納容器、4…原子炉本体基礎、5…下部ドライウェル、6…ドライウェルサンプ、6a…床ドレン水排出口、7…底部ライナ、8…CRD交換装置、9…RIP昇降装置、10…コリウムシールド、10a…床張出部、11…耐火煉瓦、11a…耐火煉瓦の本体部分、11b…保護層、11c…目地材、12…補強フレーム、12a…アンカーボルト、12b…鋼棒、12c…水平プレート、12d…カバープレート、12e…セラミックシート、13…分割ブロック、14…排水スリット、15…プラットホーム。
図1
図2
図3
図4