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特許7182514燃料タンクシステム及び燃料タンクシステムの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】燃料タンクシステム及び燃料タンクシステムの制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60K 8/00 20060101AFI20221125BHJP
   B01D 53/04 20060101ALI20221125BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20221125BHJP
   B60K 15/035 20060101ALI20221125BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20221125BHJP
   H01M 8/04746 20160101ALI20221125BHJP
   H01M 8/0438 20160101ALI20221125BHJP
   H01M 8/043 20160101ALI20221125BHJP
【FI】
B60K8/00
B01D53/04 111
B60K1/04 Z
B60K15/035 C
H01M8/04 N
H01M8/04 J
H01M8/04746
H01M8/0438
H01M8/043
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019104882
(22)【出願日】2019-06-04
(65)【公開番号】P2020196389
(43)【公開日】2020-12-10
【審査請求日】2022-02-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内田 浩司
(72)【発明者】
【氏名】吉永 知文
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-246163(JP,A)
【文献】特開2011-7229(JP,A)
【文献】特開2005-112095(JP,A)
【文献】特開2012-116482(JP,A)
【文献】実開平4-109625(JP,U)
【文献】独国特許出願公開第102015214084(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 8/00
B01D 53/04
B60K 1/04
B60K 15/035
H01M 8/04
H01M 8/04746
H01M 8/0438
H01M 8/043
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池用の液体燃料を貯留する燃料タンクと、
一端に燃料供給口を備え、他端が前記燃料タンクに接続された燃料配管と、
前記燃料タンクに連通路を介して接続され、前記燃料タンクで生じた蒸発燃料を吸着する蒸発燃料処理装置と、
制御部により開閉制御され、閉じた場合には前記燃料タンクから前記蒸発燃料処理装置への前記蒸発燃料の流れを遮断する遮断装置と、
を備える燃料タンクシステムにおいて、
前記燃料供給口は、携行燃料容器の注ぎ口と密閉連結可能な機構を有し、
前記携行燃料容器から燃料供給される場合には、前記遮断装置が閉じることにより、前記燃料配管が前記蒸発燃料を前記携行燃料容器に回収する装置としても機能する、燃料タンクシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料タンクシステムにおいて、
燃料供給が開始されることを検知する開始検知装置と、
前記燃料タンク内の燃料量を検知するレベルゲージと、
をさらに備え、
前記制御部は、前記開始検知装置により燃料供給が開始されることが検知されたら前記遮断装置を閉じてから燃料供給方法判定を実行し、前記レベルゲージに基づいて燃料供給が終了したと判定したら前記遮断装置を開くようプログラムされている、燃料タンクシステム。
【請求項3】
請求項2に記載の燃料タンクシステムにおいて、
前記燃料供給口に前記携行燃料容器が連結されたことを検知する連結検知装置と、
前記燃料タンク内の圧力を検知する圧力センサと、
をさらに備え、
前記制御部は、前記燃料供給方法判定として、前記連結検知装置の検知情報に基づく判定と、燃料供給に伴う前記燃料タンク内の圧力変化量に基づく判定と、からなる第1判定を実行し、2つの判定の結果が整合する場合は判定結果に応じて前記遮断装置を開閉制御し、不整合の場合は前記遮断装置を開くようプログラムされている、燃料タンクシステム。
【請求項4】
請求項3に記載の燃料タンクシステムにおいて、
前記制御部は、前記第1判定の後に、燃料増加速度に基づく第2判定を実行し、前記第2判定の判定結果に応じて前記遮断装置を開閉制御するようプログラムされている、燃料タンクシステム。
【請求項5】
請求項4に記載の燃料タンクシステムにおいて、
前記制御部は、前記第1判定の結果が不整合な場合にのみ前記第2判定を実行するようプログラムされている、燃料タンクシステム。
【請求項6】
請求項2に記載の燃料タンクシステムにおいて、
前記燃料供給口に前記携行燃料容器が連結されたことを検知する連結検知装置と、
前記燃料供給口に燃料ステーションの貯蔵タンクから燃料を供給するノズルが挿入されたことを検知するノズル挿入検知装置と、
をさらに備え、
前記制御部は、前記燃料供給方法判定として、前記連結検知装置の検知情報に基づく判定と、前記ノズル挿入検知装置の検知情報に基づく判定と、からなる第3判定を実行し、2つの判定の結果が整合する場合は判定結果に応じて前記遮断装置を開閉制御し、不整合の場合は前記遮断装置を開くようプログラムされている、燃料タンクシステム。
【請求項7】
請求項6に記載の燃料タンクシステムにおいて、
前記燃料タンク内の圧力を検知する圧力センサをさらに備え、
前記制御部は、前記第3判定の後に、燃料供給に伴う前記燃料タンク内の圧力変化量に基づく第4判定を実行し、前記第4判定の判定結果に応じて前記遮断装置を開閉制御するようプログラムされている、燃料タンクシステム。
【請求項8】
請求項7に記載の燃料タンクシステムにおいて、
前記制御部は、前記第3判定の結果が不整合な場合にのみ前記第4判定を実行するようプログラムされている、燃料タンクシステム。
【請求項9】
請求項7または8に記載の燃料タンクシステムにおいて、
前記制御部は、前記第3判定または前記第4判定の後に、燃料増加速度に基づく第5判定を実行し、前記第5判定の判定結果に応じて前記遮断装置を開閉制御するようプログラムされている、燃料タンクシステム。
【請求項10】
燃料電池用の液体燃料を貯留する燃料タンクと、
一端に燃料供給口を備え、他端が前記燃料タンクに接続された燃料配管と、
前記燃料タンクに連通路を介して接続され、前記燃料タンクで生じた蒸発燃料を吸着する蒸発燃料処理装置と、
制御部に開閉制御され、閉じた場合に前記燃料タンクから前記蒸発燃料処理装置への前記蒸発燃料の流れを遮断する遮断装置と、
を備え、前記燃料供給口には携行燃料容器の注ぎ口と密閉連結可能な機構が設けられた燃料タンクシステムの制御方法において、
燃料供給方法が燃料ステーションの貯蔵タンクからの燃料供給または前記携行燃料容器からの燃料供給のいずれかを判定する燃料供給方法判定を実行し、
前記携行燃料容器からの燃料供給であると判定した場合には、燃料供給中に前記遮断装置を閉じた状態にすることにより、前記燃料タンク内の前記蒸発燃料を前記携行燃料容器に回収して前記携行燃料容器内で冷却する、燃料タンクシステムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池車用の燃料タンクシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
車載用の燃料電池として、空気と、車載した燃料タンクに貯留した液体燃料を改質することにより生成した燃料ガスとを用いて発電する燃料電池が提案されている。ここでいう液体燃料は、例えば、エタノールを所定の混合比で水に混合させたもの(以下、エタノール水ともいう)である。エタノール水は、従来の液体燃料と同様に管理することができるため、樹脂ボトル等の携行燃料容器を用いた取り扱いが可能になる見込みである。
【0003】
ところで、エタノール水も炭化水素(HC)を含むいわゆる炭化水素燃料の一種であるので、蒸発して大気中に放出されることは望ましくない。そこで、蒸発燃料の大気中への放出を防止するために、蒸発燃料処理装置を搭載することが検討されている。蒸発燃料処理装置としては、従来のガソリンエンジン搭載車両に用いられている装置、つまり、蒸発燃料を活性炭に吸着させ、吸着した燃料成分を吸気管負圧を利用して離脱させて吸気管へ導入する装置を用いることができる。
【0004】
上記の蒸発燃料処理装置においては、吸着量が多い状態でパージガス中の蒸発燃料濃度が課題となり燃料電池の劣化につながる可能性がある。この問題に対応すべく、特許文献1には、燃料タンクから蒸発燃料処理装置までの配管を長くすることによって配管を通過する間における蒸発燃料の液化を促進させ、液化した燃料を配管で捕集することによって、蒸発燃料処理装置への蒸発燃料の吸着量を低減させる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平10-246163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、配管を長くするほど圧力損失が増大するので、上記文献の構成では十分な量の蒸発燃料を捕集できないおそれがある。
【0007】
そこで本発明では、蒸発燃料の大気中への放出を防止し、かつ蒸発燃料の蒸発燃料処理装置への吸着量を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様によれば、燃料電池用の液体燃料を貯留する燃料タンクと、一端に燃料供給口を備え、他端が燃料タンクに接続された燃料配管と、燃料タンクに連通路を介して接続され、燃料タンクで生じた蒸発燃料を吸着する蒸発燃料処理装置と、制御部により開閉制御され、閉じた場合には燃料タンクから蒸発燃料処理装置への蒸発燃料の流れを遮断する遮断装置と、を備える燃料タンクシステムが提供される。この燃料タンクシステムでは、燃料供給口は、携行燃料容器の注ぎ口と密閉連結可能な機構を有し、携行燃料容器から燃料供給される場合には、遮断装置が閉じることにより、燃料配管が蒸発燃料を携行燃料容器に回収する装置としても機能する。
【発明の効果】
【0009】
上記態様によれば、携行燃料容器からの燃料供給の場合に、燃料供給口に密閉連結された携行燃料容器に蒸発燃料が回収される。つまり、蒸発燃料の放出を防止し、かつ蒸発燃料の蒸発燃料処理装置への吸着量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1実施形態にかかる燃料タンクシステムの概略構成図である。
図2図2は、携行燃料容器の断面図である。
図3図3は、燃料供給口の平面図である。
図4図4は、燃料供給口付近の断面図である。
図5図5は、携行燃料容器から液体燃料が流出するさいの挙動を説明する為の図である。
図6図6は、燃料供給作業時の制御ルーチンを示すフローチャートである。
図7図7は、第1判定の制御ルーチンを示すフローチャートである。
図8図8は、第2判定の制御ルーチンを示すフローチャートである。
図9図9は、終了判定の制御ルーチンを示すフローチャートである。
図10図10は、第1実施形態の制御ルーチンを実行した場合のタイミングチャートの第1例である。
図11図11は、第1実施形態の制御ルーチンを実行した場合のタイミングチャートの第2例である。
図12図12は、第2実施形態にかかる燃料タンクシステムの概略構成図である。
図13図13は、供給前判定の制御ルーチンを示すフローチャートである。
図14図14は、供給中一次判定の制御ルーチンを示すフローチャートである。
図15図15は、第2実施形態の制御ルーチンを実行した場合のタイミングチャートの第1例である。
図16図16は、第2実施形態の制御ルーチンを実行した場合のタイミングチャートの第2例である。
図17図17は、変形例にかかる携行燃料容器の断面図である。
図18図18は、変形例にかかる携行燃料容器に対応する燃料供給口の平面図である。
図19図19は、変形例にかかる携行燃料容器に対応する燃料供給口の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0012】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態にかかる燃料タンクシステム1の概略構成図である。
【0013】
燃料タンクシステム1は、燃料電池車両に搭載されるシステムであり、液体燃料を貯留する燃料タンク2と、一端に燃料供給口3Aを備え、他端が燃料タンク2に接続された燃料配管3と、燃料タンク2の上面と燃料配管3の燃料供給口3A付近とを連通するリサーキュレーションパイプ11と、を備える。液体燃料は、エタノールを所定の混合比(例えば40%程度)で水に混合させたものである。なお、図1は燃料供給口3Aに携行燃料容器20が装着された燃料供給作業中の状態を示しているが、燃料供給作業時以外は、燃料供給口3Aは図示しないフィラーキャップが装着されることにより塞がれる。
【0014】
燃料タンク2には、連通路4を介して蒸発燃料処理装置5が接続されている。蒸発燃料処理装置5は、蒸発燃料を吸着する活性炭5Aと、蒸発燃料処理装置5の内外を連通する大気開放口6と、大気開放口6を開閉する遮断装置としてのドレンカットバルブ7と、蒸発燃料処理装置5の内部圧力を検知する圧力センサ14と、を備える。ここでいう蒸発燃料とは、燃料タンク2の内部で液体燃料が蒸発したものである。ドレンカットバルブ7は、基本的には開状態に制御され、後述する燃料供給作業中や、公知のリーク診断等に閉状態に制御される。なお、連通路4には、車両が傾いた場合等に燃料タンク2内の液体燃料が蒸発燃料処理装置5に流入することを防止するためのベントバルブ12が設けられている。
【0015】
また、蒸発燃料処理装置5は、パージ通路8を介して図示しない改質装置に液体燃料を供給するアノード配管10と接続されており、パージ通路8には流路を開閉するパージバルブ9が配置されている。ドレンカットバルブ7及びパージバルブ9はいずれも制御部としてのコントローラ17により開閉制御される。
【0016】
コントローラ17には、圧力センサ14、燃料タンク2内に設けたレベルゲージ13、燃料供給口3Aの近傍に設けた連結検知装置としての携行燃料容器検知センサ15、及び図示しないフィラーリッドの開閉状態を検知する開始検知装置としてのフィラーリッドセンサ16の各センサ値が読み込まれる。フィラーリッドは、燃料供給口3Aを開閉可能に覆う蓋である。なお、フィラーリッドセンサ16は、フィラーリッドの実際の開閉状態を検知する構成でもよいし、運転席に設けた図示しないフィラーリッド開レバーの状態を検知する構成でもよい。
【0017】
燃料タンク2内で発生した蒸発燃料は、燃料タンク2内の空気とともに連通路4を介して蒸発燃料処理装置5に導かれ、燃料成分だけが活性炭5Aに吸着され、残りの空気は大気開放口6から外部に放出される。そして、活性炭に吸着された燃料を処理するために、例えばコントローラ17は、図示しない燃料電池システムの運転状態に応じてパージバルブ9を開き、アノード配管10の負圧を利用して大気開放口6から蒸発燃料処理装置5内に新気を導入する。この新気によって、活性炭に吸着されている燃料が離脱して、パージ通路8を介してアノード配管10に導入される。
【0018】
図2は、上述した燃料タンクシステム1への燃料供給に用いられる携行燃料容器20の断面図である。携行燃料容器20は、一般的な飲料容器と同様の樹脂(例えばポリエチレンテレフタラート:PET)で形成され、液体燃料が充填されて注ぎ口20Aの開口部がフィルム31により封止された状態で流通する。
【0019】
携行燃料容器20の注ぎ口20Aの外周部には雄ネジが形成されている。また、携行燃料容器20の肩部20Bには冷却剤30が貼付されている。なお、流通段階では、注ぎ口20Aの雄ネジに螺合するキャップ(図示せず)により、注ぎ口20Aが覆われている。
【0020】
冷却剤30は、不織布と含水ジェルとから形成されており、含水ジェルの水分が蒸発することによって貼付面の温度を低下させるものである。なお、流通段階では、冷却剤30は含水ジェルの水分の蒸発を抑制するための蒸発抑制フィルムに覆われている。なお、冷却剤30を肩部20Bだけでなく胴部20Cにも貼付してもよい。
【0021】
図3は燃料供給口3Aとその周辺の平面図、図4は燃料供給口3Aとその周辺の側面図である。
【0022】
燃料配管3の燃料供給口3Aから所定範囲の内周には、携行燃料容器20に設けた雄ネジと螺合する雌ネジが設けられている。なお、この雌ネジは図示しないフィラーキャップの雄ネジとも螺合する形状とする。
【0023】
燃料供給口3Aの近傍には、携行燃料容器20が装着されたことを検知する携行燃料容器検知センサ15が設けられている。携行燃料容器検知センサ15は、例えば感圧式のセンサであり、燃料供給口3Aに携行燃料容器20が装着されると携行燃料容器20により押圧されて、携行燃料容器20が装着されたことを検知する。
【0024】
また、燃料供給口3Aの近傍には、上述した蒸発抑制フィルムを破くための円環状の刃状部材32が設けられている。なお、刃状部材32に代えて、複数の突起を円環状に配置してもよい。
【0025】
燃料配管3の内部の中央には、ステー33を介して細管18が取り付けられている。
【0026】
燃料供給口3Aに携行燃料容器20を装着する際には、携行燃料容器20の注ぎ口20Aを燃料供給口3Aにねじ込む。ねじ込む過程において、注ぎ口20Aを塞ぐフィルム31が細管18により破られ、蒸発抑制フィルムが刃状部材32により破られて冷却剤30は気化反応を開始し、携行燃料容器検知センサ15は携行燃料容器20が装着されたことを検知する。
【0027】
燃料供給口3Aに携行燃料容器20が装着された状態では、燃料配管3に設けた雌ネジと携行燃料容器20に設けた雄ネジとが螺合するので、燃料供給口3Aと携行燃料容器20の注ぎ口20Aとの間に隙間はない。このような燃料供給口3Aと携行燃料容器20の注ぎ口20Aとの連結を、密閉連結という。
【0028】
なお、燃料ステーションにおいて計量機を用いて燃料給油を行なう場合には、フィラーキャップを外し、燃料供給口3Aに計量機のノズル21を挿入する。細管18は燃料配管3の中央に位置し、ノズル21の内径は細管18の外径に比べて十分に大きいので、細管18があってもノズル21の挿入に支障はない。ただし、ステー33から燃料供給口3Aまでの距離が短いと、ノズル21の挿入量が小さくなって燃料供給作業に支障がでるおそれがある。そこで、ノズル21の挿入量を十分に確保できるようにステー33の位置を設定する。
【0029】
図5は、携行燃料容器20から燃料供給口3Aへ液体燃料が供給されるメカニズムについて説明するための図である。
【0030】
携行燃料容器20が燃料供給口3Aに装着された直後(図5の(a))において液体燃料に加わる下向きの圧力は、容器内の圧力(内圧)と、液体燃料による液圧との和である。一方、上向きの圧力は外気圧である。内圧と外気圧は等しいので、全体として見ると下向きの圧力の方が大きくなる。このため、液体燃料が細管18から流出する下向き流が生じる。
【0031】
下向き流が生じると、液体燃料の減少によって液圧が低下し、内圧は容器内の気体体積の増加により低下する。また、下向き流が生じることで細管18の流路抵抗が生じる。そして、上向きの圧力と下向きの圧力とが等しくなるまで液体燃料が減少すると(このときの液面をL1とする)、下向き流は止まるはずである。しかし、液体燃料は慣性によって流出し続けるため、液面L1になった時点では下向き流は止まらず、それよりも低い液面L2で止まる(図5の(b))。
【0032】
下向き流が止まった時点では、液圧と流路抵抗は等しく、内圧は外気圧より低いので、上向きの圧力の方が大きくなる。このため、上向き流が生成され、燃料配管3から携行燃料容器20に空気が流入する(図5の(c))。携行燃料容器20に空気が流入することで、内圧が上昇して外気圧と等しくなると、再び下向きの圧力の方が大きくなり、下向き流が生じる(図5の(d))。上記の下向き流と上向き流を繰り返すことで、携行燃料容器20内の液体燃料は燃料配管3を介して燃料タンク2に供給される。
【0033】
なお、細管18の流路抵抗が下向きの圧力より大きくなるほど細管の内径が小さいと、下向き流が生じなくなるので、本実施形態の細管18の内径は下向き流が生じる下限の内径より大きいものとする。また、細管18の内径が大き過ぎると、下向き流と上向き流が同時に生じる。この場合には後述する蒸発燃料の冷却及び液化が十分に行われないおそれがあるので、細管18の内径は、下向き流と上向き流とが同時に生じる下限の内径より小さいものとする。内径の具体的な数値は携行燃料容器20の形状や容積等により異なるので、適合により決定する。
【0034】
次に、燃料供給作業時にコントローラ17が実行する制御について説明する。図6は、当該制御の内容を示すフローチャートである。図6の制御ルーチン及び後述する各制御ルーチンはコントローラ17に予めプログラムされている。なお、コントローラ17は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。コントローラ17を複数のマイクロコンピュータで構成することも可能である。
【0035】
燃料供給作業は、上述した携行燃料容器20から液体燃料を供給する場合と、燃料ステーションにおいて計量機を用いて液体燃料を供給する場合とがある。本実施形態の制御は、携行燃料容器20から液体燃料を供給する場合に、燃料タンク2で発生した蒸発燃料の大気中への放出を抑制することを目的とする。
【0036】
ステップS100で、コントローラ17は燃料供給作業を行なうか否かを判定する。具体的には、フィラーリッドセンサ16の検出値に基づいて、フィラーリッドが開であれば燃料供給作業を行なう(yes)と判定し、閉であれば燃料供給作業を行わない(no)と判定する。判定結果がyesの場合はステップS110の処理を実行し、noの場合はステップS100の判定を繰り返す。
【0037】
ステップS110で、コントローラ17は状態監視を開始する。状態監視とは、レベルゲージ13、圧力センサ14及び携行燃料容器検知センサ15の検出値と、ドレンカットバルブ7の開閉状態を読み込むことである。
【0038】
ステップS120で、コントローラ17はドレンカットバルブ7を閉じる。
【0039】
ステップS130で、コントローラ17は燃料供給方法判定のサブルーチンを実行する。
【0040】
図7図8は燃料供給判定の内容を示すフローチャートである。燃料供給判定は図7に示す第1判定と、図8に示す第2判定とからなる。
【0041】
まず、第1判定から説明する。
【0042】
ステップS200で、コントローラ17は携行燃料容器検知センサ15の検出値に基づいて、携行燃料容器20が燃料供給口3Aに装着されたか否かを判定する。装着された場合にはステップS206の処理を実行し、装着されていない場合はステップS201の処理を実行する。
【0043】
ステップS201で、コントローラ17は燃料供給開始前の圧力センサ14の検出値と燃料供給開始後の所定タイミングにおける圧力センサ14の検出値との差、つまり圧力変化量が、予め設定した閾値より大きいか否かを判定する。
【0044】
このステップS201の判定も、携行燃料容器20からの燃料供給か、計量機のノズル21からの燃料供給かを判定するものである。ドレンカットバルブ7を閉じた状態で燃料タンク2に液体燃料を供給すると、圧力センサ14は燃料供給に伴う動圧を検知することとなる。そして、計量機を用いた燃料供給と携行燃料容器20からの燃料供給とでは燃料流量が大きく異なるため、動圧も大きく異なる。そこで、携行燃料容器20からの燃料供給の場合の圧力変化量より大きく、かつ計量機からの燃料供給の場合の圧力変化量より小さい値を閾値として予め設定しておき、圧力変化量が閾値より小さければ計量機のノズル21からの燃料供給、大きければ携行燃料容器20からの燃料供給、と判定する。
【0045】
ステップS201において圧力変化量が閾値以下であった場合は、携行燃料容器20からの燃料供給ということになるが、これはステップS200の判定結果と整合しない。そこで、コントローラ17は、ステップS201で圧力変化量が閾値以下と判定した場合は、ステップS202において判定結果を不整合とし、ステップS203においてドレンカットバルブ7を開く。ここでドレンカットバルブ7を開くのは、次の理由による。燃料供給時にはパージバルブ9が閉じているので、ドレンカットバルブ7を閉じると、燃料タンク2と蒸発燃料処理装置5とが閉じた系となり、燃料タンク2で生じた蒸発燃料は蒸発燃料処理装置5へ流入できない。したがって、仮に計量機のノズル21からの燃料供給であった場合には、蒸発燃料は燃料配管3またはリサーキュレーションパイプ11を介して、ノズル21と燃料供給口3Aとの隙間から蒸発燃料が大気へ放出されてしまう。そこで、蒸発燃料が蒸発燃料処理装置5に流入するように、ドレンカットバルブ7を開く。
【0046】
ステップS201において圧力変化量が閾値より大きい場合は、計量機のノズル21からの燃料供給ということになる。これはステップS200の判定結果と整合する。そこで、コントローラ17は、ステップS201で圧力変化量が閾値より大きいと判定した場合は、ステップS204において計量機のノズル21からの燃料供給であるという判定結果を確定し、ステップS205でドレンカットバルブ7を開く。
【0047】
一方、ステップS200で携行燃料容器20が装着されたと判定した場合に実行するステップS206でも、ステップS201と同様の判定を行なう。
【0048】
ステップS206において圧力変化量が閾値以下の場合は、携行燃料容器20からの燃料供給ということになる。これはステップS200の判定結果と整合する。そこで、コントローラ17はステップS206で圧力変化量が閾値以下と判定した場合は、ステップS207において携行燃料容器20からの燃料供給であるという判定結果を確定し、ステップS208でドレンカットバルブ7の閉じた状態を維持する。
【0049】
一方、ステップS206で圧力変化量が閾値より大きい場合は、計量機のノズル21からの燃料供給ということになる。これはステップS200の判定結果と整合しない。そこで、コントローラ17は、ステップS206で圧力変化量が閾値より大きいと判定した場合は、ステップS209で判定結果が不整合であるとし、ステップS210でドレンカットバルブ7を開く。
【0050】
ステップS203、S205、S208またはS210の処理が終了したら、第1判定は終了である。
【0051】
次に、図8の第2判定について説明する。
【0052】
コントローラ17は、ステップS300で燃料供給開始前のレベルゲージ13の検出値を読み込み、続くステップS301で燃料供給開始から所定時間経過後のレベルゲージ13の検出値を読み込む。ここでの所定時間とは、携行燃料容器20からの燃料供給の場合に、燃料タンク2内の液面が明確に検知し得る程度に変化するのに要する時間であり、例えば数十秒程度とする。
【0053】
ステップS302で、コントローラ17は燃料増加速度が予め設定した閾値より小さいか否かを判定する。燃料増加速度は、燃料供給開始から所定時間が経過するまでのレベルゲージ13の検出値の変化速度と等価である。閾値は、携行燃料容器20からの燃料供給の場合における燃料増加速度と、計量機のノズル21からの燃料供給の場合における燃料増加速度とに基づいて予め設定する。なお、燃料増加速度は、携行燃料容器20から燃料供給する場合は1分間に10リットル程度であり、計量機のノズル21から燃料供給する場合は1分間に30リットルを超える程度である。
【0054】
燃料増加速度が閾値より小さいということは、携行燃料容器20からの燃料供給である。そこで、コントローラ17は、ステップS302において燃料増加速度が閾値より小さいと判定した場合は、ステップS303においてドレンカットバルブ7の閉状態を維持する。一方、ステップS302において燃料増加速度が閾値以上であると判定した場合は、ステップS304においてドレンカットバルブ7を開く。
【0055】
ステップS303またはS304の処理が終了したら、第2判定は終了である。第2判定が終了したら、コントローラ17は図6のステップS140の処理を実行する。
【0056】
ステップS140でコントローラ17は燃料供給が終了したか否かを判定する。具体的には、図9の制御ルーチンにより判定する。
【0057】
ステップS400で、コントローラ17はレベルゲージ13の検出値を読み込む。
【0058】
ステップS401で、コントローラ17は現在までの所定期間におけるレベルゲージ13の検出値の上昇量がゼロか否かを判定する。当該判定で用いる所定期間は、例えば数秒程度とする。レベルゲージ13の検出値の上昇量がゼロということは、燃料供給は終了したということであり、ゼロでないということは、まだ燃料が供給され続けているということである。そこで、コントローラ17はステップS401の判定結果がyesの場合はステップS402において燃料供給が終了したと判断して本制御ルーチンを終了し、noの場合はステップS400の処理に戻る。
【0059】
ステップS140において燃料供給が終了したと判定した場合は、コントローラ17はステップS150においてドレンカットバルブ7を開く。
【0060】
上記の通り、携行燃料容器20からの燃料供給の場合には、ドレンカットバルブ7が閉じられる。ドレンカットバルブ7が閉じられると、パージバルブ9が閉じているため、上記の通り燃料タンク2から蒸発燃料処理装置5までが閉じた系となり、燃料タンク2内の蒸発燃料は蒸発燃料処理装置5へ流入できなくなる。その結果、蒸発燃料は燃料配管3またはリサーキュレーションパイプ11を通って燃料供給口3Aに到達する。そして、図5で説明した上向き流が生じる際に、蒸発燃料はその他の空気とともに携行燃料容器20内に流入する。携行燃料容器20は冷却剤30により冷却されているため、蒸発燃料は携行燃料容器20内の液体燃料によって冷却されて液化し、液体燃料として再び燃料タンク2に供給される。このように、携行燃料容器20から燃料供給する場合には、蒸発燃料は蒸発燃料処理装置5に流入しないので、活性炭への蒸発燃料の吸着量は増加しない。
【0061】
なお、計量機のノズル21からの燃料供給の場合には、ドレンカットバルブ7を開くので、蒸発燃料は蒸発燃料処理装置5に流入し、活性炭に吸着する。
【0062】
図10図11は、上述した制御を実行した場合のタイミングチャートの例である。図10は携行燃料容器20から燃料供給し、かつ携行燃料容器検知センサ15が正常に作動した場合のタイミングチャートである。図11は、計量機のノズル21からの燃料供給であるにもかかわらず、携行燃料容器検知センサ15が誤作動した場合のタイミングチャートである。
【0063】
まず、図10について説明する。
【0064】
タイミングT1で燃料供給作業を行なう旨の判定がなされ、状態監視が開始される。タイミングT2でドレンカットバルブ7を閉じ、燃料供給方法判定を行なう。このとき、携行燃料容器検知センサ15は携行燃料容器20が装着されたことを検知している。
【0065】
タイミングT3で実際に燃料供給が開始されると、圧力センサ14の検出値は増大するが、タイミングT4までの圧力変化量は閾値より小さいので、ドレンカットバルブ7は閉じたままである。その後も燃料増加速度、つまりレベルゲージ13の検出値の増加速度が閾値未満なので、ドレンカットバルブ7は閉じたままである。そして、タイミングT5からT6の期間中のレベルゲージ13の検出値の上昇量がゼロになると、燃料供給が終了したと判定し、ドレンカットバルブ7を開にして燃料供給用の制御を終了する。
【0066】
次に、図11について説明する。
【0067】
タイミングT1からT3については図10と同様である。しかし、図11ではタイミングT3で実際に燃料供給が開始された後、タイミングT4で圧力変化量が閾値を超える。つまり、図11では、実際には計量機のノズル21からの燃料供給であるのに、携行燃料容器検知センサ15の誤作動により携行燃料容器20からの燃料供給であると判定していたことになる。そこで、圧力センサ14の検出値に基づく判定結果と携行燃料容器検知センサ15の検出値に基づく判定結果が不整合となったタイミングT4で、ドレンカットバルブ7が開になる。その後も、燃料増加速度が閾値より大きいのでドレンカットバルブ7は開のままであり、タイミングT6でレベルゲージ13の検出値の上昇量がゼロと判定したら、燃料供給用の制御が終了する。
【0068】
燃料供給方法の判定は、携行燃料容器検知センサ15の検出値にのみ基づいて行ってもよい。ただし、本実施形態のように圧力センサ14の検出値及びレベルゲージ13の検出値に基づく判定も行うことで、より正確な判定結果が得られる。
【0069】
なお、上述した第2判定は、第1判定の判定結果が不整合となった場合にのみ実行するようにしても構わない。
【0070】
なお、上述した制御を行なうことで蒸発燃料は携行燃料容器20に回収されるが、携行燃料容器20内の液温に応じた飽和濃度までは液化せずに気体のまま留まる。このため、携行燃料容器20に回収された蒸発燃料の全てが液化して燃料タンク2に再供給されないおそれがある。そこで、燃料供給作業が終了し燃料供給口3Aから携行燃料容器20を外したら、注ぎ口20Aをキャップで封止することが望ましい。
【0071】
以上のように本実施形態によれば、燃料電池用の液体燃料を貯留する燃料タンク2と、一端に燃料供給口3Aを備え、他端が燃料タンク2に接続された燃料配管3と、燃料タンク2に連通路4を介して接続され、燃料タンク2で生じた蒸発燃料を吸着する蒸発燃料処理装置5と、コントローラ17により開閉制御され、閉じた場合には燃料タンク2から蒸発燃料処理装置5への蒸発燃料の流れを遮断するドレンカットバルブ7と、を備える燃料タンクシステム1が提供される。この燃料タンクシステム1では、燃料供給口3Aは、携行燃料容器の注ぎ口と密閉連結可能な機構を有し、携行燃料容器20から燃料供給される場合には、ドレンカットバルブ7が閉じることにより、燃料配管3が蒸発燃料を携行燃料容器20に回収する装置としても機能する。
【0072】
これにより、携行燃料容器20から燃料供給する場合には、蒸発燃料は携行燃料容器20に回収されるので、蒸発燃料処理装置5への蒸発燃料の吸着量を抑制し、かつ蒸発燃料の大気中への放出も抑制できる。
【0073】
本実施形態では、燃料タンクシステム1は燃料供給が開始されることを検知する開始検知装置としてのフィラーリッドセンサ16と、燃料タンク2内の燃料量を検知するレベルゲージ13と、をさらに備える。そして、コントローラ17は、フィラーリッドセンサ16により燃料供給が開始されることが検知されたらドレンカットバルブ7を閉じてから燃料供給方法判定を実行し、レベルゲージ13に基づいて燃料供給が終了したと判定したらドレンカットバルブ7を開くようプログラムされている。これにより、適切なタイミングでドレンカットバルブ7が開閉することとなる。
【0074】
本実施形態では、燃料タンクシステム1は燃料供給口3Aに携行燃料容器20が連結されたことを検知する連結検知装置としての携行燃料容器検知センサ15と、燃料タンク2内の圧力を検知する圧力センサ14と、をさらに備える。そして、コントローラ17は、燃料供給方法判定として、携行燃料容器検知センサ15の検知情報に基づく判定と、燃料供給に伴う燃料タンク2内の圧力変化量に基づく判定と、からなる第1判定を実行する。第1判定の2つの判定の結果が整合する場合は当該判定結果に応じてドレンカットバルブ7を開閉制御し、不整合の場合はドレンカットバルブ7を開く。第1判定として2つの判定を行なうので、燃料供給方法をより精度良く検知することができる。また、不整合の場合にはドレンカットバルブ7を開くので、計量機のノズル21からの燃料供給であった場合に、蒸発燃料が燃料供給口3Aとノズル21の隙間から大気に放出されることはない。
【0075】
本実施形態では、コントローラ17は第1判定の後に燃料増加速度に基づく第2判定を実行し、第2判定の判定結果に応じてドレンカットバルブ7を開閉制御する。
【0076】
第2判定は、燃料増加速度に基づいて判定するので判定に時間を要する。しかし、携行燃料容器20からの燃料供給と計量機のノズル21からの燃料供給では燃料増加速度が大きく異なるので、第2判定によればより正確な判定結果が得られる。したがって本実施形態のように第1判定の後に第2判定を行なうことで、燃料供給方法判定の精度を高めることができる。
【0077】
本実施形態では、コントローラ17は、第1判定の結果が不整合な場合にのみ第2判定を実行するようにしてもよい。これによりコントローラ17の演算負荷を軽減できる。
【0078】
なお、本実施形態では携行燃料容器20に冷却剤30が貼付されている場合について説明したが、冷却剤30は必須の構成ではない。なぜなら、液体燃料を充填した携行燃料容器20が販売店に陳列または保管される際に、高温になる環境に置かれることは考え難く、少なくとも常温で保管等されると考えられる。そして、液体燃料が常温であれば、蒸発燃料を冷却、液化させる機能を果たすことができるからである。
【0079】
(第2実施形態)
図12は、本発明の第2実施形態にかかる燃料タンクシステム1の概略構成図である。
【0080】
図1との相違点は、ノズル21が挿入されたことを検知するノズル検知センサ19が燃料配管3に設けられている点である。ノズル検知センサ19は、燃料供給口3Aから挿入されたノズル21の先端が燃料配管3内にあるか否かを検知できればよい。例えば、ノズル21によって接点の開閉が行われる所謂マイクロスイッチや、投光部と受光部とからなりノズル21が光を遮った場合にノズル21が挿入されたと検知する所謂光電センサ等を用いることができる。
【0081】
燃料供給作業時にコントローラ17が実行する制御は、基本的には図6と同様であるが、図6のステップS130で実行する燃料供給方法判定の内容が異なる。以下、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0082】
本実施形態の燃料供給方法判定は、実際に燃料が供給され始める前に行う第3判定としての供給前判定と、燃料が供給され始めてから行う第4判定としての供給中一次判定及び第5判定としての供給中二次判定と、からなる。
【0083】
図13は、供給前判定の制御の内容を示すフローチャートである。
【0084】
ステップS500で、コントローラ17は図7のステップS200と同様に携行燃料容器検知センサ15の検出値に基づいて、携行燃料容器20が燃料供給口3Aに装着されたか否かを判定する。装着された場合にはステップS506の処理を実行し、装着されていない場合はステップS501の処理を実行する。
【0085】
ステップS501で、コントローラ17はノズル検知センサ19の検出値に基づいて、ノズル21が燃料供給口3Aに挿入されたか否かを判定する。挿入されていないと判定した場合はステップS502の処理を実行し、ノズル21が挿入されたと判定した場合はステップS504の処理を実行する。
【0086】
ステップS501でノズル21が挿入されていないと判定した場合は、ステップS500の携行燃料容器20が装着されていないという判定結果と整合しない。そこで、コントローラ17はステップS502において判定結果が不整合とし、ステップS503でドレンカットバルブ7を開く。
【0087】
ステップS501でノズル21が挿入されていると判定した場合は、ステップS500の携行燃料容器20が装着されていないという判定結果と判定結果が整合し、計量機のノズル21からの燃料供給であるということになる。そこでコントローラ17は、ステップS504で計量機のノズル21からの燃料供給であるという判定結果を確定し、ステップS505でドレンカットバルブ7を開く。
【0088】
一方、ステップS500で携行燃料容器20が装着されたと判定した場合に実行するステップS506でも、ステップS501と同様の判定を行ない、挿入されていないと判定した場合はステップS507の処理を実行し、挿入されたと判定した場合はステップS509の処理を実行する。
【0089】
ステップS506でノズル21が挿入されていないと判定した場合は、ステップS500の携行燃料容器20が装着されているという判定結果と整合し、携行燃料容器20からの燃料供給であるということになる。そこでコントローラ17は、ステップS507で携行燃料容器20からの燃料供給であるという判定結果を確定し、ステップS508でドレンカットバルブ7を閉じた状態を維持する。
【0090】
ステップS506でノズル21が挿入されていると判定した場合は、ステップS500の携行燃料容器20が装着されているという判定結果と整合しない。そこで、コントローラ17はステップS509において判定結果が不整合とし、ステップS510でドレンカットバルブ7を開く。判定結果が不整合となるステップS503及びS510においてドレンカットバルブ7を開く理由は、図7のステップS203及びS210の場合と同様である。ステップS503、S505、S508またはS510の処理が終了したら、供給前判定は終了である。
【0091】
図14は、図13の供給前判定の後、実際に燃料供給が開始されてから実行する供給中一次判定の内容を示すフローチャートである。
【0092】
コントローラ17は、ステップS600でドレンカットバルブ7の開閉状態を読み込み、ステップS601でドレンカットバルブ7が閉じているか否かを判定する。コントローラ17は、ステップS601でドレンカットバルブ7が閉じていると判定した場合は、ステップS603の処理を実行し、開いていると判定した場合はステップS602でドレンカットバルブ7を閉じてからステップS603の処理を実行する。
【0093】
ステップS603で、コントローラ17はドレンカットバルブ7を閉じる前の圧力センサ14の検出値と、現在の圧力センサ14の検出値とを読み込む。
【0094】
ステップS604で、コントローラ17はドレンカットバルブ7を閉じる前と現在の圧力変化量が予め設定した閾値より小さいか否かを判定する。このステップS604の処理は、図7のステップS201及びS206の処理と同じである。
【0095】
ステップS604で圧力変化量が閾値より小さい場合は、コントローラ17は供給中一次判定を終了する。圧力変化量が閾値以上である場合は、計量機のノズル21からの燃料供給であるということなので、コントローラ17はステップS605でドレンカットバルブ7を開いてから供給中一次判定を終了する。
【0096】
供給中一次判定の後に実行する供給中二次判定は、第1実施形態における第2判定(図8)と同じなので、説明を省略する。
【0097】
上記の供給前判定、供給中一次判定及び供給中二次判定が終了したら、コントローラ17は図6のステップS140、S150と同様の処理を実行する。
【0098】
上記の通り、本実施形態では供給前判定、供給中一次判定及び供給中二次判定の三段階で燃料供給方法を判定するので、判定精度がより高くなる。なお、供給中一次判定は、供給前判定において判定結果が不整合となった場合にのみ実行するようにしてもよい。
【0099】
図15図16は、上述した制御を実行した場合のタイミングチャートの例である。図15は携行燃料容器20から燃料供給し、かつ携行燃料容器検知センサ15及びノズル検知センサ19が正常に作動した場合のタイミングチャートである。図16は、計量機のノズル21からの燃料供給であるにもかかわらず、供給前判定において携行燃料容器20からの燃料供給であると誤判定した場合のタイミングチャートである。
【0100】
まず、図15について説明する。
【0101】
タイミングT1で燃料供給作業を行なう旨の判定がなされ、状態監視が開始される。タイミングT2でドレンカットバルブ7を閉じ、供給前判定を行なう。このとき、携行燃料容器検知センサ15は携行燃料容器20が装着されたことを検知しており、ノズル検知センサ19はノズル21の挿入を検知していない。
【0102】
タイミングT3で実際に燃料供給が開始されると、圧力センサ14の検出値は増大するが、タイミングT4までの圧力変化量は閾値より小さいので、供給中一次判定を実行した結果、ドレンカットバルブ7は閉じたままである。その後も燃料増加速度、つまりレベルゲージ13の検出値の増加速度が閾値未満なので、供給中二次判定を実行した結果、ドレンカットバルブ7は閉じたままである。そして、タイミングT5からT6の期間中のレベルゲージ13の検出値の上昇量がゼロになると、燃料供給が終了したと判定し、ドレンカットバルブ7を開にして燃料供給用の制御を終了する。
【0103】
次に、図16について説明する。
【0104】
タイミングT1からT3については図15と同様である。しかし、図16ではタイミングT3で実際に燃料供給が開始された後、タイミングT4で圧力変化量が閾値を超える。つまり、図11では、実際には計量機のノズル21からの燃料供給であるのに、供給前判定では携行燃料容器20からの燃料供給であると判定していたことになる。その結果、タイミングT4において供給中一次判定の判定結果に基づいてドレンカットバルブ7が開になる。その後も、燃料増加速度が閾値より大きいのでドレンカットバルブ7は開のままであり、タイミングT6でレベルゲージ13の検出値の上昇量がゼロと判定したら、燃料供給用の制御が終了する。
【0105】
以上のように本実施形態では、燃料タンクシステム1は燃料供給口3Aに携行燃料容器20が連結されたことを検知する連結検知装置としての携行燃料容器検知センサ15と、燃料供給口3Aに燃料ステーションの貯蔵タンクから燃料を供給するノズル21が挿入されたことを検知するノズル挿入検知装置としてのノズル検知センサ19と、をさらに備える。コントローラ17は、燃料供給方法判定として、携行燃料容器検知センサ15の検知情報に基づく判定と、ノズル検知センサ19の検知情報に基づく判定と、からなる第3判定を実行し、第3判定の2つの判定の結果が整合する場合は当該判定結果に応じてドレンカットバルブ7を開閉制御し、不整合の場合はドレンカットバルブ7を開く。
【0106】
第3判定として2つの判定を行なうので、燃料供給方法をより精度良く検知することができる。また、不整合の場合にはドレンカットバルブ7を開くので、計量機のノズル21からの燃料供給であった場合に、蒸発燃料が燃料供給口3Aとノズル21の隙間から大気に放出されることはない。
【0107】
本実施形態では、燃料タンクシステム1は燃料タンク2内の圧力を検知する圧力センサ14をさらに備え、コントローラ17は、第3判定の後に、燃料供給に伴う燃料タンク2内の圧力変化量に基づく第4判定を実行し、第4判定の判定結果に応じてドレンカットバルブ7を開閉制御する。第3判定に加えて、さらに第4判定を行なうことで、燃料供給方法の判定精度をより高めることができる。
【0108】
本実施形態では、コントローラ17が第3判定の結果が不整合な場合にのみ第4判定を実行するようにしてもよい。これにより、コントローラ17の演算負荷を軽減できる。
【0109】
本実施形態では、コントローラ17は、第3判定または第4判定の後に、燃料増加速度に基づく第5判定を実行し、第5判定の判定結果に応じてドレンカットバルブ7を開閉制御する。第5判定は、燃料増加速度に基づいて判定するので判定に時間を要する。しかし、携行燃料容器20からの燃料供給と計量機のノズル21からの燃料供給では燃料増加速度が大きく異なるので、第5判定によればより正確な判定結果が得られる。したがって本実施形態のように第4判定の後に第5判定を行なうことで、燃料供給方法判定の精度を高めることができる。
【0110】
(変形例)
次に、上述した実施形態の変形例について図17から図19を参照して説明する。なお、本変形例は本願発明の範囲に属する。
【0111】
図17は変形例にかかる携行燃料容器40の断面図である。基本的には第1実施形態及び第2実施形態で用いた携行燃料容器20と同様の形状であるが、注ぎ口40Aにフィルム31の代わりに逆止弁機構34が設けられている点が異なる。
【0112】
逆止弁機構34は、筒部34Aと、筒部34Aの内部に設けられた弾性部材34B(例えばバネ)と、弾性部材34Bの一端に支持された弁体34Cとからなる。筒部34Aの容器外側の端部の開口部は、弾性部材34Bの弾性力が付勢された弁体34Cにより塞がれる。筒部34Aの内径は、上述した細管18の内径と同様の考え方に基づいて設定する。
【0113】
図18は燃料供給口3Aとその周辺の平面図、図19は燃料供給口3Aとその周辺の側面図である。図18図19はそれぞれ図3、4と基本的には同様であるが、燃料配管3には細管18に代えて弁体34Cを押圧するためのピン35が設けられている。
【0114】
携行燃料容器40を燃料供給口3Aに装着すると、ピン35が弾性部材34Bの弾性力に抗して弁体34Cを容器内方向に押し込む。これにより筒部34Aの開口部が開口し、上述したメカニズムにより蒸発燃料が容器内に流入する。そして、燃料供給作業が終了して携行燃料容器40を燃料供給口3Aから外すと、弁体34Cが筒部34Aの開口部を塞ぐので、容器内に蒸発燃料が残っていたとしても、それが大気中に放出されることはない。
【0115】
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されるわけではなく、特許請求の範囲に記載の技術的思想の範囲内で様々な変更を成し得ることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0116】
1 燃料タンクシステム
2 燃料タンク
3 燃料配管
4 連通路
5 蒸発燃料処理装置
7 ドレンカットバルブ
13 レベルゲージ
14 圧力センサ
15 携行燃料容器検知センサ
17 コントローラ
18 細管
19 ノズル検知センサ
20 携行燃料容器
21 ノズル
30 冷却剤
34 逆止弁機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19