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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】インクジェットプリンタ
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/175 20060101AFI20221125BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
B41J2/175 503
B41J2/175 501
B41J2/01 303
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019107135
(22)【出願日】2019-06-07
(65)【公開番号】P2020199667
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2022-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(72)【発明者】
【氏名】金井 宗太郎
【審査官】小野 郁磨
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-240035(JP,A)
【文献】特開2019-059146(JP,A)
【文献】特開2012-076435(JP,A)
【文献】特開2012-161954(JP,A)
【文献】特開2014-184684(JP,A)
【文献】特開2016-041516(JP,A)
【文献】特開2011-178133(JP,A)
【文献】特開2013-202863(JP,A)
【文献】特開2010-228215(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出するインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドに供給されるインクが収容されるインクタンクと、前記インクタンクが取り付けられる支持フレームと、前記インクジェットヘッドが搭載されるキャリッジと、前記支持フレームに対して前記キャリッジを主走査方向に移動させるキャリッジ駆動機構と、前記インクタンクと前記インクジェットヘッドとの間のインクの流路であるインク流路に配置され前記インク流路を流れるインクに乱流を発生させる乱流生成部材と、前記インクジェットヘッドに供給されるインクを温めてインクの粘度を低下させるインク加温部とを備え、
前記乱流生成部材は、前記インク流路を流れるインクの流れ方向を長手方向とする長尺状に形成されるとともに、前記インク加温部の内部に形成される前記インク流路に配置され、
長尺状に形成される前記乱流生成部材の両端の少なくともいずれか一方は、前記インク流路に対して固定され、
前記インク流路の、前記乱流生成部材が配置された箇所でインクが流れると、インクの流れに伴ってインクの乱流が発生することを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記乱流生成部材は、細長い棒状に形成され、
前記乱流生成部材の一端は、前記インク流路に対して固定された固定端となっており、
前記乱流生成部材の他端は、前記インク流路に対して固定されていない自由端となっていることを特徴とする請求項1記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記インク加温部は、前記インク流路が内部に形成されるブロック状の加温部本体と、前記加温部本体に取り付けられる封止部材とを備え、
前記インク流路は、前記加温部本体の表面から前記加温部本体の内部に向かって形成された複数の流路用穴と、複数の前記流路用穴のうちのいくつかの前記流路用穴の、前記加温部本体の表面側の端部を塞ぐ前記封止部材とによって形成され、
前記乱流生成部材は、前記封止部材に形成され、前記加温部本体の内部に向かって伸びていることを特徴とする請求項1または2記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記インク流路は、直線状の第1インク流路と、前記第1インク流路に通じるとともに前記第1インク流路と直交する直線状の第2インク流路と、前記第1インク流路に通じるとともに前記第2インク流路と平行な直線状の第3インク流路とを備え、
前記第2インク流路を通過したインクは、前記第1インク流路に流れ込み、
前記第1インク流路を通過したインクは、前記第3インク流路に流れ込み、
前記第1インク流路と前記第2インク流路との接続部分を第1接続部とし、前記第1インク流路と前記第3インク流路との接続部分を第2接続部とすると、
前記第1インク流路の、前記第1接続部から前記第2接続部までの範囲には、前記乱流生成部材の少なくとも一部が配置されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記インクジェットヘッドに供給されるインクが収容されるとともに前記インクジェットヘッドに供給されるインクの圧力を調整する圧力調整部を備え、
前記圧力調整部には、前記インクタンクからインクが供給され、
前記インク加温部および前記圧力調整部は、前記キャリッジに搭載され、
前記インク加温部は、前記インクジェットヘッドへのインクの供給経路において前記圧力調整部と前記インクジェットヘッドとの間に配置されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のインクジェットプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを吐出するインクジェットヘッドを有するインクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクを吐出するインクジェットヘッドと、インクジェットヘッドが搭載されるキャリッジとを備えるインクジェットプリンタが知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のインクジェットプリンタは、インクジェットヘッドに供給されるインクが収容されるサブタンクと、サブタンクに供給されるインクが収容されるメインタンクとを備えている。
【0003】
特許文献1に記載のインクジェットプリンタでは、沈降しやすいインク成分を含む白色インクの中のインク成分の沈降を抑制するために、白色インクが収容されるメインタンクの内部、および、白色インクが収容されるサブタンクの内部に攪拌装置が設置されている。このインクジェットプリンタでは、インクジェットヘッドに白色インクを供給する前に攪拌装置を作動させてメインタンクやサブタンクの中で白色インクの攪拌を行うことで、インクジェットヘッドに供給される白色インクの中のインク成分の沈降を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-138488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたインクジェットプリンタでは、インクが収容されるインクタンクにおいてインク成分の沈降を抑制することは可能である。しかしながら、このインクジェットプリンタでは、インクタンクとインクジェットヘッドとの間のインクの流路においてインク成分の沈降を抑制することはできない。
【0006】
そこで、本発明の課題は、比較的簡易な構成で、インクタンクとインクジェットヘッドとの間のインクの流路においてインク成分の沈降を抑制することが可能なインクジェットプリンタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明のインクジェットプリンタは、インクを吐出するインクジェットヘッドと、インクジェットヘッドに供給されるインクが収容されるインクタンクと、インクタンクが取り付けられる支持フレームと、インクジェットヘッドが搭載されるキャリッジと、支持フレームに対してキャリッジを主走査方向に移動させるキャリッジ駆動機構と、インクタンクとインクジェットヘッドとの間のインクの流路であるインク流路に配置されインク流路を流れるインクに乱流を発生させる乱流生成部材と、インクジェットヘッドに供給されるインクを温めてインクの粘度を低下させるインク加温部とを備え、乱流生成部材は、インク流路を流れるインクの流れ方向を長手方向とする長尺状に形成されるとともに、インク加温部の内部に形成されるインク流路に配置され、長尺状に形成される乱流生成部材の両端の少なくともいずれか一方は、インク流路に対して固定され、インク流路の、乱流生成部材が配置された箇所でインクが流れると、インクの流れに伴ってインクの乱流が発生することを特徴とする。
【0008】
本発明のインクジェットプリンタでは、インク流路を流れるインクの流れ方向を長手方向とする長尺状に形成されるとともにインク流路を流れるインクに乱流を発生させる乱流生成部材がインク流路に配置されており、インク流路の、乱流生成部材が配置された箇所でインクが流れると、インクの流れに伴ってインクの乱流が発生する。そのため、本発明では、乱流生成部材を用いて発生させた乱流によってインク流路においてインクを攪拌することが可能になる。したがって、本発明では、インクの流れ方向を長手方向とする長尺状に形成される乱流生成部材を用いた比較的簡易な構成で、インクタンクとインクジェットヘッドとの間のインク流路においてインク成分の沈降を抑制することが可能になる。
【0009】
また、本発明では、インクの流れ方向を長手方向とする長尺状に形成される乱流生成部材の両端の少なくともいずれか一方がインク流路に対して固定されているため、インク流路の、乱流生成部材が配置された箇所でインクが流れても、インクの流れに伴って乱流生成部材の全体がインク流路の中で移動することはない。したがって、本発明では、インク流路の、乱流生成部材が配置された箇所において、乱流生成部材を用いてインクの乱流を確実に発生させることが可能になる。また、本発明では、乱流生成部材は、インクの流れ方向を長手方向とする長尺状に形成されているため、インク流路の、乱流生成部材が配置された箇所においても、インクの流れが阻害されるのを抑制することが可能になり、その結果、インクは比較的流れやすくなる。また、本発明では、インクジェットプリンタは、インクジェットヘッドに供給されるインクを温めてインクの粘度を低下させるインク加温部を備え、乱流生成部材は、インク加温部の内部に形成されるインク流路に配置されているため、インク加温部の内部のインク流路においてインクを攪拌することが可能になる。したがって、インク加温部で加温されるインクの温度斑を抑制することが可能になる。その結果、インクジェットヘッドから吐出されるインクの粘度を安定させることが可能になる。
【0010】
本発明において、乱流生成部材は、細長い棒状に形成され、乱流生成部材の一端は、インク流路に対して固定された固定端となっており、乱流生成部材の他端は、インク流路に対して固定されていない自由端となっていることが好ましい。このように構成すると、乱流生成部材の両端が固定端になっている場合と比較して、インク流路に乱流生成部材を容易に配置することが可能になる。
【0012】
本発明において、インク加温部は、インク流路が内部に形成されるブロック状の加温部本体と、加温部本体に取り付けられる封止部材とを備え、インク流路は、加温部本体の表面から加温部本体の内部に向かって形成された複数の流路用穴と、複数の流路用穴のうちのいくつかの流路用穴の、加温部本体の表面側の端部を塞ぐ封止部材とによって形成され、乱流生成部材は、封止部材に形成され、加温部本体の内部に向かって伸びていることが好ましい。このように構成すると、流路用穴の、加温部本体の表面側の端部を塞ぐための封止部材に乱流生成部材が形成されているため、インクジェットプリンタの部品点数を削減することが可能になる。
【0013】
本発明において、たとえば、インク流路は、直線状の第1インク流路と、第1インク流路に通じるとともに第1インク流路と直交する直線状の第2インク流路と、第1インク流路に通じるとともに第2インク流路と平行な直線状の第3インク流路とを備え、第2インク流路を通過したインクは、第1インク流路に流れ込み、第1インク流路を通過したインクは、第3インク流路に流れ込み、第1インク流路と第2インク流路との接続部分を第1接続部とし、第1インク流路と第3インク流路との接続部分を第2接続部とすると、第1インク流路の、第1接続部から第2接続部までの範囲には、乱流生成部材の少なくとも一部が配置されている。
【0014】
本発明において、インクジェットプリンタは、たとえば、インクジェットヘッドに供給されるインクが収容されるとともにインクジェットヘッドに供給されるインクの圧力を調整する圧力調整部を備え、圧力調整部には、インクタンクからインクが供給され、インク加温部および圧力調整部は、キャリッジに搭載され、インク加温部は、インクジェットヘッドへのインクの供給経路において圧力調整部とインクジェットヘッドとの間に配置されている。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明のインクジェットプリンタでは、比較的簡易な構成で、インクタンクとインクジェットヘッドとの間のインクの流路においてインク成分の沈降を抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態にかかるインクジェットプリンタの斜視図である。
図2図1に示すインクジェットプリンタの構成を説明するための概略図である。
図3図2に示すキャリッジの周辺部の構成を説明するための斜視図である。
図4図3に示すインク加温部の構成を説明するための断面図である。
図5図3に示す封止部材の斜視図である。
図6図5に示す乱流生成部材の断面図である。
図7】本発明の他の実施の形態にかかる乱流生成部材の構成を説明するための側面図である。
図8】本発明の他の実施の形態にかかる乱流生成部材の構成を説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0018】
(インクジェットプリンタの概略構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかるインクジェットプリンタ1の斜視図である。図2は、図1に示すインクジェットプリンタ1の構成を説明するための概略図である。
【0019】
本形態のインクジェットプリンタ1(以下、「プリンタ1」とする。)は、たとえば、業務用のインクジェットプリンタであり、印刷媒体2に印刷を行う。印刷媒体2は、たとえば、印刷用紙、布帛または樹脂製のフィルム等である。プリンタ1は、印刷媒体2に向かってインクを吐出するインクジェットヘッド3(以下、「ヘッド3」とする。)と、ヘッド3が搭載されるキャリッジ4と、キャリッジ4を主走査方向(図1等のY方向)へ移動させるキャリッジ駆動機構5と、キャリッジ4を主走査方向へ案内するためのガイドレール6と、ヘッド3に供給されるインクが収容される複数のインクタンク7と、インクタンク7が取り付けられる支持フレーム8とを備えている。
【0020】
ヘッド3は、紫外線硬化型のインク(UVインク)を吐出する。また、ヘッド3は、たとえば、沈降しやすいインク成分を含む顔料インクを吐出する。また、ヘッド3は、下側に向かってインクを吐出する。ヘッド3の下面には、複数のノズルが配列されるノズル面(インク吐出面)が形成されている。ヘッド3は、ノズルからインクを吐出させる圧電素子(ピエゾ素子)を備えている。ヘッド3の下側には、プラテン9が配置されている。プラテン9には、印刷時の印刷媒体2が載置される。なお、プリンタ1は、プラテン9に代えて、印刷媒体2が載置されるテーブルを備えていても良い。
【0021】
キャリッジ駆動機構5は、たとえば、2個のプーリと、2個のプーリに架け渡されるとともに一部がキャリッジ4に固定されるベルトと、プーリを回転させるモータとを備えている。ガイドレール6は、支持フレーム8に固定されている。キャリッジ駆動機構5は、支持フレーム8に対してキャリッジ4を主走査方向に移動させる。インクタンク7は、カートリッジ式のインクタンクであり、支持フレーム8に着脱可能に取り付けられている。また、インクタンク7は、支持フレーム8の上端部に取り付けられている。以下の説明では、主走査方向(Y方向)を「左右方向」とし、上下方向(図1等のZ方向)と主走査方向とに直交する副走査方向(図1等のX方向)を「前後方向」とする。
【0022】
(キャリッジの周辺部の概略構成)
図3は、図2に示すキャリッジ4の周辺部の構成を説明するための斜視図である。
【0023】
プリンタ1は、ヘッド3に供給されるインクが収容されるとともにヘッド3に供給されるインクの圧力を調整する圧力調整部11と、ヘッド3に供給されるインクを温めてインクの粘度を低下させるインク加温部12とを備えている。圧力調整部11およびインク加温部12は、キャリッジ4に搭載されている。圧力調整部11には、インクタンク7からインクが供給される。また、インク加温部12には、圧力調整部11からインクが供給され、ヘッド3には、インク加温部12からインクが供給される。すなわち、インク加温部12は、ヘッド3へのインクの供給経路において圧力調整部11とヘッド3との間に配置されている。
【0024】
本形態では、キャリッジ4に2個のヘッド3が搭載されている。2個のヘッド3は、左右方向において間隔をあけた状態でキャリッジ4に搭載されている。また、キャリッジ4には、2個のインク加温部12が搭載されている。2個のインク加温部12は、左右方向において間隔をあけた状態でキャリッジ4に搭載されている。インク加温部12は、ヘッド3よりも上側に配置されている。また、圧力調整部11は、インク加温部12に載置されている。具体的には、1個のインク加温部12の上面に2個の圧力調整部11が載置されている。すなわち、キャリッジ4には、合計4個の圧力調整部11が搭載されている。なお、図3では、1個のヘッド3と1個のインク加温部12と2個の圧力調整部11のみを図示している。
【0025】
ヘッド3の上面には、ヘッド3で発生する熱(具体的には、ピエゾ素子で発生する熱)を放散するための放熱部材(ヒートシンク)13が取り付けられている。放熱部材13は、アルミニウム合金等の熱伝導率の高い金属材料によって形成されている。放熱部材13の上面には、ヘッド3から放熱部材13に伝達された熱を放散するための放熱用のファン14が取り付けられている。
【0026】
圧力調整部11は、インクタンク7よりも下側に配置されている。本形態では、インクタンク7から圧力調整部11に水頭差によってインクが供給されている。また、圧力調整部11は、ヘッド3よりも上側に配置されている。本形態では、圧力調整部11からヘッド3に水頭差によってインクが供給されている。圧力調整部11は、扁平な直方体状に形成されている。扁平な直方体状に形成される圧力調整部11の厚さ方向は、前後方向と一致している。2個の圧力調整部11は、前後方向においてわずかな間隔をあけた状態でインク加温部12の上面に載置されている。
【0027】
圧力調整部11は、たとえば、特開2012-232595号公報に開示された加圧ダンパと同様に構成される機械式の圧力ダンパである。圧力調整部11の内部には、インクが流れるインク流路が形成されている。圧力調整部11は、たとえば、インク流路に接するように配置される薄膜および薄膜を付勢するバネ等を備えている。圧力調整部11は、圧力調整用のポンプを用いることなく、ヘッド3に供給されるインクの圧力を機械的に調整する。また、圧力調整部11は、ヘッド3の内部に形成されるインク室が負圧となるようにヘッド3に供給されるインクの圧力を調整する。
【0028】
(インク加温部の構成)
図4は、図3に示すインク加温部12の構成を説明するための断面図である。図5は、図3に示す封止部材17の斜視図である。図6は、図5に示す乱流生成部17cの断面図である。
【0029】
インク加温部12は、ヘッド3の外部に配置されるヘッド外インク加温装置である。インク加温部12は、ブロック状に形成される加温部本体16と、加温部本体16に取り付けられる封止部材17、18と、加温部本体16に取り付けられるヒータ(図示省略)とを備えている。加温部本体16は、たとえば、アルミニウム合金等の熱伝導率の高い金属材料によって形成されている。また、加温部本体16は、略直方体状に形成されている。ヒータは、たとえば、フィルム状に形成されるプリントヒータであり、加温部本体16の表面に取り付けられている。ヒータは、加温部本体16を加熱する。
【0030】
封止部材17は、加温部本体16の左右の両側面に取り付けられている。すなわち、インク加温部12は、2個の封止部材17を備えている。封止部材18は、加温部本体16の前後方向の一方側の側面に取り付けられている。封止部材17、18は、樹脂で形成されている。また、封止部材17は、スナップフィットによって加温部本体16に固定され、封止部材18は、スナップフィットによって加温部本体16に固定されている。
【0031】
図4に示すように、加温部本体16の内部には、インクが流れるインク流路16aが形成されている。すなわち、インク加温部12の内部には、インクの流路であるインク流路16aが形成されている。本形態では、インク加温部12の上面に載置される2個の圧力調整部11のうちの一方の圧力調整部11からヘッド3に供給されるインクが流れる2本のインク流路16aと、他方の圧力調整部11からヘッド3に供給されるインクが流れる2本のインク流路16aとの合計4本のインク流路16aが加温部本体16の内部に形成されている。インク流路16aは、インクタンク7とヘッド3との間のインクの流路(インク流路)の一部分を構成している。
【0032】
加温部本体16には、加温部本体16の右側面から左側に向かって形成される直線状の2本の流路用穴16bと、加温部本体16の左側面から右側に向かって形成される直線状の2本の流路用穴16bと、加温部本体16の前後方向の一方の側面から前後方向の他方側に向かって形成される直線状の4本の流路用穴16cおよび4本の流路用穴16dと、加温部本体16の上面から下側に向かって形成される直線状の4本の流路用穴16eと、加温部本体16の下面から上側に向かって形成される直線状の4本の流路用穴16fとが形成されている。
【0033】
流路用穴16b~16fは、丸穴状に形成されている。また、流路用穴16b~16fは、たとえば、加温部本体16の表面からドリルによる穴開け加工を行うことで形成されている。流路用穴16bは、加温部本体16の右側面または左側面まで通じている。流路用穴16c、16dは、加温部本体16の前後方向の一方の側面まで通じている。また、流路用穴16eは、加温部本体16の上面まで通じ、流路用穴16fは、加温部本体16の下面まで通じている。なお、図4では、4本の流路用穴16bのうちの2本の流路用穴16bと、4本の流路用穴16cのうちの2本の流路用穴16cと、4本の流路用穴16dのうちの2本の流路用穴16dと、4本の流路用穴16eのうちの2本の流路用穴16eと、4本の流路用穴16fのうちの2本の流路用穴16fとが図示されている。
【0034】
本形態では、1本の流路用穴16eと、この流路用穴16eに繋がる1本の流路用穴16cと、この流路用穴16cに繋がる1本の流路用穴16bと、この流路穴16bに繋がる1本の流路用穴16dと、この流路用穴16dに繋がる1本の流路用穴16fと、流路用穴16bの、加温部本体16の表面側(具体的には、加温部本体16の右側面から左側に向かって形成される流路用穴16bの右側、または、加温部本体16の左側面から右側に向かって形成される流路用穴16bの左側)の端部を塞ぐ封止部材17と、流路用穴16c、16dの、加温部本体16の表面側(前後方向の一方の側面側)の端部を塞ぐ封止部材18とによって、1本のインク流路16aが形成されている。
【0035】
すなわち、インク流路16aは、加温部本体16の表面から加温部本体16の内部に向かって形成された複数の流路用穴16b~16fと、複数の流路用穴16b~16fのうちのいくつかの流路用穴16b~16dの、加温部本体16の表面側の端部を塞ぐ封止部材17、18とによって形成されている。すなわち、インク流路16aは、加温部本体16に形成された複数の流路用穴16b~16fのうちの流路用穴16b~16dの、加温部本体16の表面側の端部を封止部材17、18によって塞ぐことで形成されている。
【0036】
流路用穴16eの上端は、圧力調整部11からインクが流入するインク流入口となっている。流路用穴16fの下端は、ヘッド3に向かってインクが流出するインク流出口となっている。すなわち、インク流路16aでは、圧力調整部11から流入して流路用穴16eを通過したインクは、流路用穴16cに流れ込み、流路用穴16cを通過したインクは、流路用穴16bに流れ込み、流路用穴16bを通過したインクは、流路用穴16dに流れ込み、流路用穴16dを通過したインクは、流路用穴16fに流れ込み、流路用穴16fを通過したインクは、ヘッド3に向かって流出する。
【0037】
本形態の流路用穴16bは、直線状の第1インク流路であり、流路用穴16cは、第1インク流路である流路用穴16bに通じるとともに流路用穴16bと直交する直線状の第2インク流路である。また、流路用穴16dは、第1インク流路である流路用穴16bに通じるとともに第2インク流路である流路用穴16cと平行な直線状の第3インク流路となっている。
【0038】
封止部材17は、加温部本体16の側面に固定される被固定部17aを備えている。封止部材17には、流路用穴16bの、加温部本体16の表面側の端部を塞ぐ封止部17bが形成されている。すなわち、封止部材17には、加温部本体16の右側面から左側に向かって形成される流路用穴16bの右端部、または、加温部本体16の左側面から右側に向かって形成される流路用穴16bの左端部を塞ぐ封止部17bが形成されている。
【0039】
封止部材17には、2個の封止部17bが形成されており、1個の封止部材17によって、2本の流路用穴16bの、加温部本体16の表面側の端部が塞がれている。封止部17bは、段付の円柱状に形成されている。封止部17bは、流路用穴16bの端部に挿入されている。流路用穴16bの端部の内周面と封止部17bの外周面との間には、Oリング20が配置されている。なお、図4に示すように、流路用穴16bの、加温部本体16の表面側の端部の内径は、流路用穴16bの、加温部本体16の内部側の内径よりも大きくなっている。
【0040】
また、封止部材17には、インク流路16aを流れるインクの主流線を意図的に乱して、インク流路16aを流れるインクに乱流を発生させる乱流生成部材としての乱流生成部17cが形成されている。すなわち、本形態では、インク流路16aでインクの乱流を発生させる乱流生成部材としての乱流生成部17cが封止部材17と一体で形成されている。封止部材17には、2本の乱流生成部17cが形成されている。乱流生成部17cは、インク流路16aに配置されている。具体的には、乱流生成部17cは、流路用穴16bに配置されている。
【0041】
乱流生成部17cは、インク流路16aを流れるインクの流れ方向を長手方向とする長尺状に形成されている。具体的には、乱流生成部17cは、流路用穴16bを流れるインクの流れ方向を長手方向とする長尺状に形成されている。すなわち、乱流生成部17cは、左右方向を長手方向とする長尺状に形成されている。また、乱流生成部17cは、細長い棒状(シャフト状)に形成されている。具体的には、乱流生成部17cは、細長い略円柱状に形成されている。乱流生成部17cは、流路用穴16bに沿って配置されている。
【0042】
乱流生成部17cの基端は、封止部17bの先端に繋がっており、乱流生成部17cは、加温部本体16の内部に向かって伸びている。すなわち、加温部本体16の右側面に取り付けられる封止部材17では、封止部17bの左端に乱流生成部17cの基端が繋がっており、乱流生成部17cは、左側に向かって伸びている。また、加温部本体16の左側面に取り付けられる封止部材17では、封止部17bの右端に乱流生成部17cの基端が繋がっており、乱流生成部17cは、右側に向かって伸びている。
【0043】
乱流生成部17cの基端は、被固定部17aおよび封止部17bを介して加温部本体16に固定されている。すなわち、乱流生成部17cの基端は、インク流路16aに対して固定された固定端となっている。具体的には、加温部本体16の右側面に取り付けられる封止部材17では、乱流生成部17cの右端がインク流路16aに対して固定された固定端となっており、加温部本体16の左側面に取り付けられる封止部材17では、乱流生成部17cの左端がインク流路16aに対して固定された固定端となっている。
【0044】
一方、乱流生成部17cの先端は、インク流路16aに対して固定されていない自由端となっている。具体的には、加温部本体16の右側面に取り付けられる封止部材17では、乱流生成部17cの左端がインク流路16aに対して固定されていない自由端となっており、加温部本体16の左側面に取り付けられる封止部材17では、乱流生成部17cの右端がインク流路16aに対して固定されていない自由端となっている。
【0045】
乱流生成部17cの外周面には、左右方向(すなわち、乱流生成部17cの長手方向)に伸びる直線状の溝部17dが形成されている(図6参照)。溝部17dは、たとえば、左右方向における乱流生成部17cの全域に形成されている。また、溝部17dの断面形状は、たとえば、円弧状となっている。溝部17dは、たとえば、乱流生成部17cの軸心に対して等角度ピッチで4箇所に形成されている。
【0046】
上述のように、乱流生成部17cは、流路用穴16bに配置されている。流路用穴16bと流路用穴16cとの接続部分を第1接続部16gとし、流路用穴16bと流路用穴16dとの接続部分を第2接続部16hとすると、図6に示すように、流路用穴16bの、第1接続部16gから第2接続部16hまでの範囲には、乱流生成部17cの一部が配置されている。すなわち、第1接続部16gおよび第2接続部16hに乱流生成部17cの一部が配置されるとともに、流路用穴16bの、第1接続部16gと第2接続部16hとの間に乱流生成部17cの一部が配置されている。本形態では、インク流路16aの、乱流生成部17cが配置された箇所でインクが流れると、インクの流れに伴ってインクの乱流が発生する。
【0047】
封止部材18は、加温部本体16の側面に固定される被固定部18aを備えている。封止部材18には、流路用穴16c、16dの、加温部本体16の表面側の端部を塞ぐ封止部18bが形成されている。封止部材18には、8個の封止部18bが形成されており、封止部材18によって、4本の流路用穴16cの、加温部本体16の表面側の端部と、4本の流路用穴16dの、加温部本体16の表面側の端部とが塞がれている。
【0048】
封止部18bは、段付の円柱状に形成されている。封止部18bは、流路用穴16c、16dの端部に挿入されている。流路用穴16c、16dの端部の内周面と封止部18bの外周面との間には、Oリング21が配置されている。なお、流路用穴16c、16dの、加温部本体16の表面側の端部の内径は、流路用穴16c、16dの、加温部本体16の内部側の内径よりも大きくなっている。
【0049】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、インク流路16aを流れるインクに乱流を発生させる乱流生成部17cがインク流路16aに配置されており、インク流路16aの、乱流生成部17cが配置された箇所でインクが流れると、インクの流れに伴ってインクの乱流が発生する。そのため、本形態では、乱流生成部16aを用いて発生させた乱流によってインク流路16aにおいてインクを攪拌することが可能になる。したがって、本形態では、細長い棒状に形成される乱流生成部17cを用いた比較的簡易な構成で、インク流路16aにおいてインク成分の沈降を抑制することが可能になる。
【0050】
本形態では、細長い棒状に形成される乱流生成部17cの基端がインク流路16aに対して固定されている。そのため、本形態では、インク流路16aの、乱流生成部17cが配置された箇所でインクが流れても、インクの流れに伴って乱流生成部17cの全体がインク流路16aの中で移動することはない。したがって、本形態では、インク流路16aの、乱流生成部17cが配置された箇所において、乱流生成部17cを用いてインクの乱流を確実に発生させることが可能になる。また、本形態では、乱流生成部17cは、インクの流れ方向を長手方向とする長尺状に形成されているため、インク流路16aの、乱流生成部17cが配置された箇所においても、インクの流れが阻害されるのを抑制することが可能になり、その結果、インクは比較的流れやすくなる。
【0051】
本形態では、乱流生成部17cの基端は、インク流路16aに対して固定された固定端となっているが、乱流生成部17cの先端は、インク流路16aに対して固定されていない自由端となっている。そのため、本形態では、乱流生成部17cの両端が固定端になっている場合と比較して、インク流路16aに乱流生成部17cを容易に配置することが可能になる。
【0052】
本形態では、乱流生成部17cは、インク加温部12の内部に形成されるインク流路16aに配置されており、インク加温部12の内部のインク流路16aにおいてインクを攪拌することが可能になっている。そのため、本形態では、インク加温部12で加温されるインクの温度斑を抑制することが可能になる。したがって、本形態では、ヘッド3から吐出されるインクの粘度を安定させることが可能になる。
【0053】
本形態では、流路用穴16bの、加温部本体12の表面側の端部を塞ぐ封止部材17に乱流生成部17cが形成されている。すなわち、本形態では、流路用穴16bの、加温部本体12の表面側の端部を塞ぐための封止部材17の一部が乱流生成部17cとなっている。そのため、本形態では、プリンタ1の部品点数を削減することが可能になる。
【0054】
本形態では、流路用穴16bの端部の内周面と封止部17bの外周面との間にOリング20が配置され、流路用穴16c、16dの端部の内周面と封止部18bの外周面との間にOリング21が配置されている。そのため、本形態では、インク流路16aを流れるインクに過剰な脈動が発生した場合に、インクの流れ方向にOリング20、21をわずかに撓ませることが可能になる。したがって、本形態では、インク流路16aを流れるインクに過剰な脈動が発生した場合に、インクの流れ方向にわずかに撓むOリング20、21のダンパー効果を利用して、インク流路16aでのインクの過剰な脈動を抑制することが可能になる。
【0055】
なお、本形態では、インクタンク7とインク加温部12との間のインク流路において、意図しないインクの乱流が発生した場合には、インク流路16aの、乱流生成部17cが配置された箇所をインクが通過する際にインクの流れを整えることが可能である。したがって、本形態では、インクタンク7とインク加温部12との間のインク流路において、意図しないインクの乱流が発生しても、ヘッド3に供給されるインクの流れを安定させることが可能である。
【0056】
(乱流生成部の変形例)
図7は、本発明の他の実施の形態にかかる乱流生成部17cの構成を説明するための側面図である。図8は、本発明の他の実施の形態にかかる乱流生成部17cの構成を説明するための側面図である。
【0057】
インク流路16aを流れるインクに乱流を発生させることができるのであれば、乱流生成部17cの形状は、上述した形態で説明した形状には限定されない。たとえば、乱流生成部17cの外周面に、直線状の溝部17dに代えて、螺旋状の溝部17eが形成されていても良い(図7参照)。また、図8に示すように、左右方向を長手方向とする細長い円柱状に形成される複数の棒状部17fによって乱流生成部17cが構成されていても良い。たとえば、4本の棒状部17fによって乱流生成部17cが構成されていても良い。すなわち、乱流生成部17cの形状は、インク流路16aを流れるインクの主流線を妨害する形状となっていれば良い。
【0058】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0059】
上述した形態において、乱流生成部17cは、流路用穴16cに配置されていても良いし、流路用穴16dに配置されていても良い。この場合には、たとえば、乱流生成部17cに相当する乱流生成部が封止部材18に形成されている。また、上述した形態において、乱流生成部17cは、流路用穴16eに配置されていても良いし、流路用穴16fに配置されていても良い。また、上述した形態において、乱流生成部17cの先端がインク流路16aに対して固定されていても良い。すなわち、乱流生成部17cの両端がインク流路16aに対して固定されていても良い。
【0060】
上述した形態において、インク流路16aを流れるインクに乱流を発生させる乱流生成部材が封止部材17と別体で形成されていても良い。また、上述した形態において、乱流生成部17cは、インクタンク7とヘッド3との間のインク流路の、インク流路16a以外の部分に配置されていても良い。すなわち、乱流生成部17cは、インク加温部12の内部に形成されるインク流路16aに配置されていなくても良い。また、乱流生成部17cは、インクタンク7とヘッド3との間のインク流路の、複数箇所に配置されていても良い。さらに、上述した形態において、プリンタ1は、圧力調整部11に代えて、ヘッド3に供給されるインクが収容されるサブタンクを備えていても良い。また、上述した形態において、プリンタ1は、三次元造形物を造形する3Dプリンタであっても良い。
【符号の説明】
【0061】
1 プリンタ(インクジェットプリンタ)
3 ヘッド(インクジェットヘッド)
4 キャリッジ
5 キャリッジ駆動機構
7 インクタンク
8 支持フレーム
11 圧力調整部
12 インク加温部
16 加温部本体
16a インク流路
16b 流路用穴(第1インク流路)
16c 流路用穴(第2インク流路)
16d 流路用穴(第3インク流路)
16e、16f 流路用穴
16g 第1接続部
16h 第2接続部
17 封止部材
17c 乱流生成部(乱流生成部材)
Y 主走査方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8