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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】免震装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/04 20060101AFI20221125BHJP
   F16F 1/40 20060101ALI20221125BHJP
   E04H 9/02 20060101ALN20221125BHJP
【FI】
F16F15/04 P
F16F1/40
E04H9/02 331A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019113154
(22)【出願日】2019-06-18
(65)【公開番号】P2020204384
(43)【公開日】2020-12-24
【審査請求日】2021-12-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100174023
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 怜愛
(72)【発明者】
【氏名】森 隆浩
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-017806(JP,A)
【文献】特開2009-024753(JP,A)
【文献】特開2000-170835(JP,A)
【文献】特開2009-162376(JP,A)
【文献】特開2014-047926(JP,A)
【文献】特開平01-029539(JP,A)
【文献】特開2001-140977(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/04
F16F 1/40
E04H 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向に交互に積層された硬質材料層及び軟質材料層を有する、積層構造体と、
付加部材と、
を備えた、免震装置であって、
前記積層構造体は、その上側及び下側のうち少なくともいずれか一方の端部側において、前記硬質材料層である小径硬質材料層、及び、当該小径硬質材料層に対し軸線方向外側に隣り合うとともに前記小径硬質材料層よりも大径の前記硬質材料層である大径硬質材料層を、有しており、
前記付加部材は、前記大径硬質材料層のうち、前記小径硬質材料層よりも外周側に位置する段差部分に対し、軸線方向内側に配置されており、
前記免震装置に水平方向変形が生じていない状態において、前記付加部材の軸線方向厚さは、前記付加部材の内周側に位置する前記積層構造体の外周面部分よりも外周側の位置において最大である、免震装置。
【請求項2】
前記付加部材は、前記免震装置の水平方向変形時において、前記積層構造体のうち前記付加部材に対し内周側の部分から加わる力によって、前記積層構造体のうち前記付加部材に対し軸線方向外側の部分を軸線方向外側へ押圧できるように構成されている、請求項1に記載の免震装置。
【請求項3】
前記免震装置に水平方向変形が生じていない状態において、前記付加部材の軸線方向厚さは、外周側へ向かうにつれて徐々に増大している、請求項1又は2に記載の免震装置。
【請求項4】
前記免震装置に水平方向変形が生じていない状態において、前記付加部材は、前記付加部材の内周側に位置する前記積層構造体の外周面部分よりも外周側に離間している、請求項1~3のいずれか一項に記載の免震装置。
【請求項5】
前記積層構造体は、その上側及び下側のうち少なくともいずれか一方の端部側において、前記小径硬質材料層及び前記大径硬質材料層からなる対を複数有しており、
前記付加部材は、前記複数の対のそれぞれの前記段差部分のうち、少なくとも、径方向長さが最大である前記段差部分に対し、軸線方向内側に配置されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の免震装置。
【請求項6】
前記積層構造体は、その上側及び下側のうち少なくともいずれか一方の端部側において、前記小径硬質材料層及び前記大径硬質材料層からなる対を複数有しており、
複数の前記付加部材のそれぞれが、前記複数の対のうち少なくとも2つの対のそれぞれの前記段差部分に対し、軸線方向内側にそれぞれ配置されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の免震装置。
【請求項7】
前記複数の付加部材は、径方向長さが長い前記段差部分に対し軸線方向内側に配置されているものほど、軸線方向断面における面積が大きい、請求項6に記載の免震装置。
【請求項8】
前記複数の付加部材は、径方向長さが長い前記段差部分に対し軸線方向内側に配置されているものほど、硬さが高い、請求項6又は7に記載の免震装置。
【請求項9】
前記付加部材は、
非圧縮性材料から構成されている、かつ/又は、
前記軟質材料層を構成する軟質材料の硬さ以上の硬さを有する材料から構成されている、請求項1~8のいずれか一項に記載の免震装置。
【請求項10】
前記付加部材は、前記硬質材料層を構成する硬質材料の硬さよりも高い硬さを有する材料から構成されている、請求項1~9のいずれか一項に記載の免震装置。
【請求項11】
前記付加部材は、前記軟質材料層を構成する軟質材料の硬さよりも低い硬さを有する材料から構成されている、請求項1~8のいずれか一項に記載の免震装置。
【請求項12】
前記付加部材は、周方向の一部のみにわたって配置されている、請求項1~11のいずれか一項に記載の免震装置。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、免震装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の免震装置として、鉛直方向に交互に積層された硬質材料層及び軟質材料層を有する積層構造体を備え、積層構造体における上側及び/又は下側の端部側において、硬質材料層を、当該硬質材料層に対し軸線方向内側に配置された他の硬質材料層よりも大径としたものがある(例えば、特許文献1)。特許文献1によれば、このような構成により、免震装置の水平方向変形時において、積層構造体におけるフランジプレート近傍部分の応力集中を抑制し、ひいては、座屈のおそれを低減できる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-47926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述の免震装置においては、免震装置の水平方向変形時において、積層構造体のうち、上記大径の硬質材料層における外周側部分及びそれより軸線方向外側(フランジプレート側)の部分が、フランジプレートから離れるように軸線方向内側へ反り返ること(以下、「めくれ上がり」ともいう。)のおそれがあった。
【0005】
この発明は、めくれ上がりを抑制できる免震装置を、提供することを、目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の免震装置は、
鉛直方向に交互に積層された硬質材料層及び軟質材料層を有する、積層構造体と、
付加部材と、
を備えた、免震装置であって、
前記積層構造体は、その上側及び下側のうち少なくともいずれか一方の端部側において、前記硬質材料層である小径硬質材料層、及び、当該小径硬質材料層に対し軸線方向外側に隣り合うとともに前記小径硬質材料層よりも大径の前記硬質材料層である大径硬質材料層を、有しており、
前記付加部材は、前記大径硬質材料層のうち、前記小径硬質材料層よりも外周側に位置する段差部分に対し、軸線方向内側に配置されており、
前記免震装置に水平方向変形が生じていない状態において、前記付加部材の軸線方向厚さは、前記付加部材の内周側に位置する前記積層構造体の外周面部分よりも外周側の位置において最大である。
本発明の免震装置によれば、めくれ上がりを抑制できる。
【0007】
本発明の免震装置において、
前記付加部材は、前記免震装置の水平方向変形時において、前記積層構造体のうち前記付加部材に対し内周側の部分から加わる力によって、前記積層構造体のうち前記付加部材に対し軸線方向外側の部分を軸線方向外側へ押圧できるように構成されていると、好適である。
これにより、めくれ上がりをさらに抑制できる。
【0008】
本発明の免震装置において、
前記免震装置に水平方向変形が生じていない状態において、前記付加部材の軸線方向厚さは、外周側へ向かうにつれて徐々に増大していると、好適である。
これにより、めくれ上がりをさらに抑制できる。
【0009】
本発明の免震装置において、
前記免震装置に水平方向変形が生じていない状態において、前記付加部材は、前記付加部材の内周側に位置する前記積層構造体の外周面部分よりも外周側に離間していてもよい。
この場合でも、めくれ上がりを抑制できる。
【0010】
本発明の免震装置において、
前記積層構造体は、その上側及び下側のうち少なくともいずれか一方の端部側において、前記小径硬質材料層及び前記大径硬質材料層からなる対を複数有しており、
前記付加部材は、前記複数の対のそれぞれの前記段差部分のうち、少なくとも、径方向長さが最大である前記段差部分に対し、軸線方向内側に配置されていると、好適である。
これにより、めくれ上がりをさらに抑制できる。
【0011】
本発明の免震装置において、
前記積層構造体は、その上側及び下側のうち少なくともいずれか一方の端部側において、前記小径硬質材料層及び前記大径硬質材料層からなる対を複数有しており、
複数の前記付加部材のそれぞれが、前記複数の対のうち少なくとも2つの対のそれぞれの前記段差部分に対し、軸線方向内側にそれぞれ配置されていると、好適である。
これにより、めくれ上がりをさらに抑制できる。
【0012】
本発明の免震装置において、
前記複数の付加部材は、径方向長さが長い前記段差部分に対し軸線方向内側に配置されているものほど、軸線方向断面における面積が大きいと、好適である。
これにより、めくれ上がりをさらに抑制できる。
【0013】
本発明の免震装置において、
前記複数の付加部材は、径方向長さが長い前記段差部分に対し軸線方向内側に配置されているものほど、硬さが高いと、好適である。
これにより、めくれ上がりをさらに抑制できる。
【0014】
本発明の免震装置において、
前記付加部材は、
非圧縮性材料から構成されている、かつ/又は、
前記軟質材料層を構成する軟質材料の硬さ以上の硬さを有する材料から構成されていると、好適である。
これにより、めくれ上がりをさらに抑制できる。
【0015】
本発明の免震装置において、
前記付加部材は、前記硬質材料層を構成する硬質材料の硬さよりも高い硬さを有する材料から構成されていると、好適である。
これにより、めくれ上がりをさらに抑制できる。
【0016】
本発明の免震装置において、
前記付加部材は、前記軟質材料層を構成する軟質材料の硬さよりも低い硬さを有する材料から構成されていてもよい。
この場合、免震性能を向上できる。
【0017】
本発明の免震装置において、
前記付加部材は、周方向の一部のみにわたって配置されていてもよい。
この場合でも、めくれ上がりを抑制できる。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、めくれ上がりを抑制できる免震装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る免震装置を、水平方向変形が生じていない状態で示す、軸線方向断面図である。
図2図1の免震装置の一部を拡大して示す、軸線方向断面図である。
図3図1の免震装置を、水平方向変形時の状態で示す、軸線方向断面図である。
図4図1の免震装置を、水平方向変形が生じていない状態で示す、斜視図である。
図5】本発明の第1変形例に係る免震装置を、水平方向変形が生じていない状態で示す、斜視図である。
図6】本発明の第2変形例に係る免震装置の一部を、水平方向変形が生じていない状態で示す、軸線方向断面図である。
図7】本発明の第3変形例に係る免震装置の一部を、水平方向変形が生じていない状態で示す、軸線方向断面図である。
図8】本発明の第4変形例に係る免震装置の一部を、水平方向変形が生じていない状態で示す、軸線方向断面図である。
図9】本発明の第5変形例に係る免震装置の一部を、水平方向変形が生じていない状態で示す、軸線方向断面図である。
図10】本発明の第6変形例に係る免震装置の一部を、水平方向変形が生じていない状態で示す、軸線方向断面図である。
図11】本発明の第7変形例に係る免震装置を、水平方向変形が生じていない状態で示す、軸線方向断面図である。
図12】本発明の第8変形例に係る免震装置を、水平方向変形が生じていない状態で示す、軸線方向断面図である。
図13】本発明の第9変形例に係る免震装置の一部を、水平方向変形が生じていない状態で示す、軸線方向断面図である。
図14図13の免震装置の一部を、水平方向変形時の状態で示す、軸線方向断面図である。
図15】本発明の第10変形例に係る免震装置の一部を、水平方向変形が生じていない状態で示す、軸線方向断面図である。
図16】本発明の第11変形例に係る免震装置の一部を、水平方向変形が生じていない状態で示す、軸線方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の免震装置は、地震の揺れが構造物(例えば、ビル、マンション、戸建て住宅、倉庫等の建物、並びに、橋梁等)に伝わるのを抑制するために、構造物の上部構造と下部構造との間に配置されると、好適なものである。
以下に、図面を参照しつつ、この発明に係る免震装置の実施形態を例示説明する。各図において共通する構成要素には同一の符号を付している。
【0021】
図1図4は、本発明の一実施形態に係る免震装置1を説明するための図面である。図1は、本実施形態に係る免震装置1を、水平方向変形が生じていない状態で示す、軸線方向断面図である。図2は、図1の免震装置1の一部を拡大して示す、軸線方向断面図である。図3は、図1の免震装置1を、水平方向変形時の状態で示す、軸線方向断面図である。図4は、図1の免震装置1を、水平方向変形が生じていない状態で示す、斜視図である。
図1に示すように、本実施形態の免震装置1は、上下一対のフランジプレート21、22(以下、それぞれ「上側フランジプレート21」、「下側フランジプレート22」ともいう。)と、積層構造体3と、1つ又は複数の付加部材7と、を備えている。
【0022】
本明細書において、免震装置1の「中心軸線O」(以下、単に「中心軸線O」ともいう。)は、積層構造体3の中心軸線である。免震装置1の中心軸線Oは、鉛直方向に延在するように指向される。本明細書において、免震装置1の「軸線方向」とは、免震装置1の中心軸線Oに平行な方向である。免震装置1の「軸線方向内側」とは、積層構造体3の軸線方向中心に近い側を指しており、免震装置1の「軸線方向外側」とは、積層構造体3の軸線方向中心から遠い側(フランジプレート21、22に近い側)を指している。また、免震装置1の「軸直方向」とは、免震装置1の軸線方向に垂直な方向である。また、免震装置1の「内周側」、「外周側」、「径方向」、「周方向」とは、免震装置1の中心軸線Oを中心としたときの「内周側」、「外周側」、「径方向」、「周方向」をそれぞれ指す。また、「上」、「下」とは、鉛直方向における「上」、「下」をそれぞれ指す。
【0023】
上側フランジプレート21は、上側フランジプレート21の上に構造物(例えば、ビル、マンション、戸建て住宅、倉庫等の建物、並びに、橋梁等)の上部構造(建物本体等)が載せられた状態で、当該上部構造に連結されるように、構成されている。下側フランジプレート22は、上側フランジプレート21よりも下側に配置され、構造物の下部構造(基礎等)に連結されるように構成されている。上側フランジプレート21及び下側フランジプレート22は、金属から構成されると好適であり、鋼から構成されるとより好適である。本実施形態において、上側フランジプレート21及び下側フランジプレート22は、軸直方向断面において、円形の外縁形状を有している(図4)。しかし、上側フランジプレート21及び下側フランジプレート22は、軸直方向断面において、多角形状(四角形等)等、任意の外縁形状を有していてよい。
【0024】
積層構造体3は、上側フランジプレート21及び下側フランジプレート22どうしの間に配置されている。積層構造体3は、複数の硬質材料層4と、複数の軟質材料層5と、被覆層6と、を有している。硬質材料層4と軟質材料層5とは、鉛直方向に交互に積層されている。各硬質材料層4と各軟質材料層5とは、同軸上に配置されており、すなわち、各硬質材料層4と各軟質材料層5とのそれぞれの中心軸線は、免震装置1の中心軸線O上に位置している。積層構造体3の上下両端には、軟質材料層5が配置されている。積層構造体3の上下両端に配置された一対の軟質材料層5は、上側フランジプレート21及び下側フランジプレート22にそれぞれ固定されている。
【0025】
硬質材料層4は、硬質材料から構成されている。硬質材料層4を構成する硬質材料としては、金属が好適であり、鋼がより好適である。図1の例のように、硬質材料層4どうしの軸線方向の間隔は、均一(一定)であると、好適である。ここで、「硬質材料層4どうしの軸線方向の間隔」とは、互いに隣り合う一対の硬質材料層4の軸線方向中心どうしの間の軸線方向距離を指す。また、図1の例のように、各硬質材料層4の厚さは、互いに同じであると、好適である。
軟質材料層5は、硬質材料層4よりも硬さの低い(柔らかい)、軟質材料から構成されている。軟質材料層5を構成する軟質材料としては、弾性体が好適であり、ゴムがより好適である。軟質材料層5を構成し得るゴムとしては、天然ゴム又は合成ゴム(高減衰ゴム等)が好適である。図1の例のように、各軟質材料層5の厚さは、互いに同じであると、好適である。
【0026】
被覆層6は、硬質材料層4及び軟質材料層5の外周側の表面を覆っている。被覆層6を構成する材料は、弾性体が好適であり、ゴムがより好適である。被覆層6を構成する材料は、軟質材料層5を構成する軟質材料と同じでもよいし、軟質材料層5を構成する軟質材料とは異なっていてもよい。
被覆層6は、軟質材料層5と一体に構成されている。
本実施形態において、被覆層6は、硬質材料層4及び軟質材料層5の外周側の表面の全体を覆っていており、ひいては、積層構造体3の外周側の表面の全体を構成している。ただし、被覆層6は、硬質材料層4及び軟質材料層5の外周側の表面の一部のみを覆っていてもよく、ひいては、積層構造体3の外周側の表面の一部のみを構成していてもよい。例えば、被覆層6は、図16に示す変形例のように、硬質材料層4及び軟質材料層5の外周側の表面のうち、大径硬質材料層4Lの段差部分4LMの軸線方向内側の面のみを覆っていてもよい。あるいは、被覆層6は、硬質材料層4及び軟質材料層5の外周側の表面のうち、硬質材料層4及び軟質材料層5の外周面のみを覆っていてもよい。また、被覆層6は、設けられていなくてもよく、その場合、積層構造体3の外周側の表面は、硬質材料層4及び軟質材料層5の外周側の表面のみから構成される。
なお、本実施形態において、積層構造体3の外周側の表面は、外周側を向く、積層構造体3の外周面と、軸線方向内側を向く、後述の段差面34(図1)と、からなる。
【0027】
本実施形態において、硬質材料層4、軟質材料層5、及び被覆層6は、それぞれ、軸直方向断面において、円形の外縁形状を有している(図4)。しかし、硬質材料層4、軟質材料層5、及び被覆層6は、それぞれ、軸直方向断面において、多角形状(四角形等)等の任意の非円形状の外縁形状を有していてもよい。
なお、本明細書において、積層構造体3、硬質材料層4、軟質材料層5、及び被覆層6のそれぞれの「外径」とは、これらが軸直方向断面において非円形の外縁形状を有している場合、軸直方向断面におけるこれらの外接円の直径を指す。
【0028】
図1に示すように、本実施形態において、積層構造体3は、その上側及び下側のうち少なくともいずれか一方(図1及び図2の例では、両方)の端部側において、硬質材料層4である小径硬質材料層4Sと、当該小径硬質材料層4Sに対し軸線方向外側に隣り合うとともに小径硬質材料層4Sよりも大径の(すなわち、外径が大きい)硬質材料層4である大径硬質材料層4Lと、を有している。図1及び図2の例では、積層構造体3は、その上側及び下側の両方の端部側において、それぞれ、互いに隣り合う1つの小径硬質材料層4Sと1つの大径硬質材料層4Lとからなる対4Pを、1つずつ有している。なお、1つの対4Pは、互いに隣り合う1つの小径硬質材料層4Sと1つの大径硬質材料層4Lとからなるものとし、当該小径硬質材料層4S及び当該大径硬質材料層4L以外の各硬質材料層4は、当該対4Pを構成しない(すなわち、当該1つの対4Pに着目したとき、当該小径硬質材料層4S及び当該大径硬質材料層4L以外の各硬質材料層4は、たとえ、当該小径硬質材料層4Sや当該大径硬質材料層4Lと同径であっても、小径硬質材料層4Sや大径硬質材料層4Lとは称しない)ものとする。
本実施形態において、小径硬質材料層4Sは、積層構造体3の軸線方向中心よりも軸線方向外側に位置している。小径硬質材料層4Sよりも軸線方向内側に位置する硬質材料層4は、それぞれ、小径硬質材料層4Sと同径(すなわち、外径が同じ)である。大径硬質材料層4Lは、積層構造体3を構成する複数の硬質材料層4のうち、最も軸線方向外側に位置する硬質材料層4ではなく、それよりも軸線方向内側に位置する硬質材料層4である。大径硬質材料層4Lよりも軸線方向外側に位置する硬質材料層4は、それぞれ、大径硬質材料層4Lと同径(すなわち、外径が同じ)である。ただし、大径硬質材料層4Lは、積層構造体3を構成する複数の硬質材料層4のうち、最も軸線方向外側に位置する硬質材料層4であってもよい。
本明細書では、大径硬質材料層4Lのうち、小径硬質材料層4Sよりも外周側に位置する部分4LMを、「段差部分(4LM)」と称する。
【0029】
積層構造体3は、大径硬質材料層4Lの段差部分4LMに対する軸線方向内側において、軸線方向内側を向く外表面である段差面34を有している。本実施形態において、大径硬質材料層4Lの段差部分4LMは、その軸線方向内側が、被覆層6によって覆われており、この被覆層6によって、段差面34が構成されている(図2)。
ただし、大径硬質材料層4Lの段差部分4LMは、被覆層6によって覆われていなくてもよい。その場合、例えば、大径硬質材料層4Lの段差部分4LMは、その軸線方向内側の表面の一部又は全部が、外部に露出しており、この外部に露出した段差部分4LMの表面によって、段差面34が構成されてもよい。
図1及び図2の例において、段差面34は、軸直方向に延在している。ただし、軸線方向断面視において、段差面34は、軸直方向に対して交差する方向に、直線状又は湾曲状に、延在していてもよい。その場合、段差面34は、内周側に向かうにつれて徐々に軸線方向内側に向かうように延在していると、好適である。
図1及び図2の例において、段差面34の外周端から軸線方向外側へ延在する、積層構造体3の外周面部分は、軸線方向に延在している。ただし、軸線方向断面視において、段差面34の外周端から軸線方向外側へ延在する、積層構造体3の外周面部分は、軸線方向に対して交差する方向に、直線状又は湾曲状に、延在していてもよい。その場合、段差面34の外周端から軸線方向外側へ延在する、積層構造体3の外周面部分は、軸線方向外側に向かうにつれて徐々に外周側に向かうように延在していると、好適である。
また、図1及び図2の例において、段差面34の内周端から軸線方向内側へ延在する、積層構造体3の外周面部分33は、軸線方向に延在している。ただし、軸線方向断面視において、段差面34の内周端から軸線方向内側へ延在する、積層構造体3の外周面部分33は、軸線方向に対して交差する方向に、直線状又は湾曲状に、延在していてもよい。その場合、段差面34の内周端から軸線方向内側へ延在する、積層構造体3の外周面部分33は、軸線方向内側に向かうにつれて徐々に内周側に向かうように延在していると、好適である。
【0030】
付加部材7は、大径硬質材料層4Lの段差部分4LMに対し、軸線方向内側に配置されている。図1及び図2の例において、付加部材7は、大径硬質材料層4Lの段差部分4LMの軸線方向内側に位置する段差面34の上に設けられており、言い換えれば、段差面34に対し軸線方向内側に配置されているとともに、段差面34と接触している。また、図1及び図2の例においては、軸線方向断面において、付加部材7の内周端は、段差面34の内周端から軸線方向内側へ延在する、積層構造体3の外周面部分33に対し、点接触している。
免震装置1に水平方向変形が生じていない状態において、付加部材7の軸線方向厚さT(図2)は、付加部材7の内周側に位置する積層構造体の外周面部分33の位置(径方向位置)よりも外周側の位置(径方向位置)において最大である。言い換えれば、付加部材7のうち、軸線方向厚さTが最大となる箇所は、付加部材7の内周側に位置する積層構造体の外周面部分33上には位置しておらず、当該外周面部分33よりも外周側に離間した位置に位置している。なお、付加部材7の軸線方向厚さTに関し、「付加部材7の内周側に位置する積層構造体の外周面部分33よりも外周側の位置において最大である」とは、当該外周面部分33の位置において最大となる場合を含まず、当該外周面部分33よりも外周側の位置のみにおいて最大となる場合のみを指す。
付加部材7は、免震装置1の水平方向変形時において、積層構造体3のうち付加部材7に対し内周側の部分31から加わる力によって、積層構造体3のうち付加部材7に対し軸線方向外側の部分32を軸線方向外側へ押圧できるように構成されている。より具体的に説明すると、図3に示すように、本実施形態において、免震装置1の水平方向変形が生じると、周方向の一部において、積層構造体3のうち付加部材7に対し内周側の部分31が、付加部材7に向かって倒れ込み(言い換えれば、接近し)、付加部材7を径方向外側へ向かって押圧する。すると、付加部材7は、積層構造体3のうち付加部材7に対し軸線方向外側の部分32を、軸線方向外側へ押圧する。このように、付加部材7は、積層構造体3のうち付加部材7に対し内周側の部分31から加わる力を、積層構造体3のうち付加部材7に対し軸線方向外側の部分32へ伝えるように作用する。これにより、積層構造体3のうち付加部材7に対し軸線方向外側の部分32は、軸線方向外側(フランジプレート21、22側)へ押し付けられる。
【0031】
以下、本実施形態の免震装置1の作用効果について説明する。
まず、本実施形態の免震装置1は、上述のとおり、積層構造体3が、その上側及び下側のうち少なくともいずれか一方(図1及び図2の例では、両方)の端部側において、硬質材料層4である小径硬質材料層4Sと、当該小径硬質材料層4Sに対し軸線方向外側に隣り合うとともに小径硬質材料層4Sよりも大径の硬質材料層4である大径硬質材料層4Lと、を有している。これにより、仮に、積層構造体3の全ての硬質材料層4が小径硬質材料層4Sと同径である場合に比べて、免震装置1の水平変形時において、硬質材料層4どうしが軸線方向に重複する領域を増大でき、ひいては、積層構造体3がよりしっかりと軸線方向に支えられるので、免震装置1が座屈しにくくなる(言い換えれば、免震装置1の耐座屈性能を向上できる)。また、仮に、積層構造体3の全ての硬質材料層4が大径硬質材料層4Lと同径である場合に比べて、免震装置1の免震性能を向上できる。
ここで、仮に、免震装置1が付加部材7を有していない場合、大径硬質材料層4Lの段差部分4LMの軸線方向内側には、段差部分4LMの反り返し変形を抑えるものが何も無いため、免震装置1の水平方向変形時において、積層構造体3のうち、大径硬質材料層4Lの段差部分4LM、及び、それより軸線方向外側の部分32は、軸線方向内側へ向かって作用する反発力によって、フランジプレート21、22から離れるように軸線方向内側へ反り返る(めくれ上がる)おそれがある。それにより、段差部分4LM、及び、それより軸線方向外側の部分32では、例えば、軟質材料層5が疲労したり損傷したりするおそれ等がある。
一方、本実施形態では、上述のとおり、付加部材7が、大径硬質材料層4Lの段差部分4LMに対し、軸線方向内側に配置されている。これにより、免震装置1の水平方向変形時において、大径硬質材料層4Lの段差部分4LM、及び、それより軸線方向外側の部分32のめくれ上がりを抑制することができる。よって、段差部分4LM、及び、それより軸線方向外側の部分32において、軟質材料層5が疲労したり損傷したりするおそれ等を低減でき、ひいては、免震装置1の耐久性を向上できる。
また、本実施形態では、上述のとおり、免震装置1に水平方向変形が生じていない状態において、付加部材7の軸線方向厚さT(図2)が、付加部材7の内周側に位置する積層構造体3の外周面部分33よりも外周側の位置において最大である。これにより、免震装置1が、水平方向変形を開始してから、当該水平方向変形がある程度進んだ状態(図の例では、積層構造体3のうち、付加部材7に対し内周側の部分31が、付加部材7に当たった状態)になるまでの間、付加部材7は、積層構造体3の水平方向変形に殆ど影響を与えず、積層構造体3に高い免震性能を発揮させることができるとともに、免震装置1の水平方向変形がある程度進んだ状態(図の例では、積層構造体3のうち、付加部材7に対し内周側の部分31が、付加部材7に当たった状態)になった後は、付加部材7は、積層構造体3のうち付加部材7に対し内周側の部分31から加わる力を、積層構造体3のうち付加部材7に対し軸線方向外側の部分32に、伝えることができる(図3)。よって、効果的に、めくれ上がりを抑制できる。
【0032】
なお、以下に説明する各変形例を含め、本明細書で説明する各例における付加部材7は、いずれも、免震装置1の水平方向変形時において、積層構造体3のうち付加部材7に対し内周側の部分31から加わる力によって、積層構造体3のうち付加部材7に対し軸線方向外側の部分32を軸線方向外側へ押圧できるように構成されており、また、免震装置1に水平方向変形が生じていない状態において、付加部材7の軸線方向厚さTが、付加部材7の内周側に位置する積層構造体3の外周面部分33の位置よりも外周側の位置において最大である。
【0033】
付加部材7は、任意の材料から構成されてよい。
例えば、付加部材7は、非圧縮性材料から構成されていると、好適である。この場合、免震装置1の水平方向変形時において、付加部材7は、積層構造体3のうち付加部材7に対し内周側の部分31から加わる力を、より効果的に、積層構造体3のうち付加部材7に対し軸線方向外側の部分32へ伝えやすくなるので、めくれ上がりをさらに抑制することができる。付加部材7を構成し得る非圧縮性材料としては、例えばゴム等が挙げられる。付加部材7を構成し得るゴムとしては、天然ゴム又は合成ゴム(高減衰ゴム等)が好適である。
かつ/又は、付加部材7は、軟質材料層5を構成する軟質材料の硬さ以上の硬さを有する材料から構成されていると、好適である。この場合、仮に付加部材7が軟質材料層5を構成する軟質材料の硬さよりも低い硬さを有する材料から構成されている場合に比べて、免震装置1の水平方向変形時において、付加部材7は、積層構造体3のうち付加部材7に対し内周側の部分31から加わる力を、より効果的に、積層構造体3のうち付加部材7に対し軸線方向外側の部分32へ伝えやすくなるので、めくれ上がりをさらに抑制することができる。この場合、付加部材7を構成する材料としては、例えば、弾性体、プラスチック、金属、木等が挙げられるが、弾性体が好適であり、ゴムがより好適である。付加部材7を構成し得るゴムとしては、天然ゴム又は合成ゴム(高減衰ゴム等)が好適である。同様の観点から、付加部材7は、軟質材料層5を構成する軟質材料の硬さよりも高い硬さを有する材料から構成されていると、より好適である。
本明細書において、付加部材7、軟質材料層5、硬質材料層4等の「硬さ」とは、具体的には、それぞれ付加部材7、軟質材料層5、硬質材料層4等を構成する材料からなる縦10mm×横10mm×厚み5mmの直方体のサンプル片の縦方向一端部を固定したときに、前記サンプル片の縦方向他端部に対し厚み方向に前記サンプル片の厚みの1%(0.05mm)の変位を与えるのに要する荷重(外力)によって、評価するものとする。当該荷重(外力)が大きいほど、前記「硬さ」が高い(硬い)ことを意味する。
したがって、上述のことを言い換えれば、めくれ上がりを抑制する観点からは、付加部材7を構成する材料からなる縦10mm×横10mm×厚み5mmの直方体の第1サンプル片の縦方向一端部を固定したときに、第1サンプル片の縦方向他端部に対し厚み方向に第1サンプル片の厚みの1%(0.05mm)の変位を与えるのに要する荷重(外力)が、軟質材料層5を構成する材料からなる縦10mm×横10mm×厚み5mmの直方体の第2サンプル片の縦方向一端部を固定したときに、第2サンプル片の縦方向他端部に対し厚み方向に第2サンプル片の厚みの1%(0.05mm)の変位を与えるのに要する荷重(外力)に比べて、同じ又は大きいと好適であり、大きいとより好適である。
なお、上記の場合、付加部材7は、軟質材料層5を構成する軟質材料と同じ材料から構成されていてもよいし、これとは異なる材料から構成されていてもよい。また、付加部材7は、被覆層6を構成する材料と同じ材料から構成されていてもよいし、これとは異なる材料から構成されていてもよい。
【0034】
ただし、付加部材7は、軟質材料層5を構成する軟質材料の硬さよりも低い硬さを有する材料から構成されていてもよい。言い換えれば、付加部材7を構成する材料からなる縦10mm×横10mm×厚み5mmの直方体の第1サンプル片の縦方向一端部を固定したときに、第1サンプル片の縦方向他端部に対し厚み方向に第1サンプル片の厚みの1%(0.05mm)の変位を与えるのに要する荷重(外力)が、軟質材料層5を構成する材料からなる縦10mm×横10mm×厚み5mmの直方体の第2サンプル片の縦方向一端部を固定したときに、第2サンプル片の縦方向他端部に対し厚み方向に第2サンプル片の厚みの1%(0.05mm)の変位を与えるのに要する荷重(外力)に比べて、小さくてもよい。この場合、仮に付加部材7が軟質材料層5を構成する軟質材料の硬さ以上の硬さを有する材料から構成されている場合に比べて、免震装置1の免震性能を向上できる。この場合、付加部材7を構成する材料としては、弾性体が好適であり、ゴムがより好適である。
【0035】
あるいは、付加部材7は、硬質材料層4を構成する硬質材料の硬さ以上の(又はそれよりも高い)硬さを有する材料から構成されていてもよい。言い換えれば、付加部材7を構成する材料からなる縦10mm×横10mm×厚み5mmの直方体の第1サンプル片の縦方向一端部を固定したときに、第1サンプル片の縦方向他端部に対し厚み方向に第1サンプル片の厚みの1%(0.05mm)の変位を与えるのに要する荷重(外力)が、硬質材料層4を構成する材料からなる縦10mm×横10mm×厚み5mmの直方体の第3サンプル片の縦方向一端部を固定したときに、第3サンプル片の縦方向他端部に対し厚み方向に第3サンプル片の厚みの1%(0.05mm)の変位を与えるのに要する荷重(外力)に比べて、同じ又は大きくてもよい。この場合、めくれ上がりをさらに抑制することができる。この場合、付加部材7を構成する材料としては、例えば、弾性体、プラスチック、金属、木等が挙げられる。付加部材7を構成し得る弾性体としては、ゴムが挙げられる。
ただし、免震性能の観点等からは、付加部材7は、硬質材料層4を構成する硬質材料の硬さ未満の硬さを有する材料から構成されていると、好適である。すなわち、付加部材7を構成する材料からなる縦10mm×横10mm×厚み5mmの直方体の第1サンプル片の縦方向一端部を固定したときに、第1サンプル片の縦方向他端部に対し厚み方向に第1サンプル片の厚みの1%(0.05mm)の変位を与えるのに要する荷重(外力)が、硬質材料層4を構成する材料からなる縦10mm×横10mm×厚み5mmの直方体の第3サンプル片の縦方向一端部を固定したときに、第3サンプル片の縦方向他端部に対し厚み方向に第3サンプル片の厚みの1%(0.05mm)の変位を与えるのに要する荷重(外力)に比べて、小さいと、好適である。
同様に、付加部材7は、上述のとおり、金属から構成されていてもよい。この場合、めくれ上がりをさらに抑制することができる。ただし、免震性能の観点等からは、付加部材7は、金属よりも柔らかい材料(ゴム等)から構成されていると、好適である。
【0036】
付加部材7は、積層構造体3に対し一体に構成されていてもよい。例えば、付加部材7は、免震装置1の製造時において、積層構造体3と共に加硫成形されることで、積層構造体3に対し一体に構成されていてもよい。
あるいは、付加部材7は、積層構造体3とは別体に構成されていてもよい。この場合、付加部材7は、積層構造体3の外周側の表面(具体的には、段差面34、及び/又は、積層構造体3の外周面部分33)に対し、接着剤により固定されていてもよい。又は、付加部材7は、積層構造体3の外周側の表面には固定されずに、単に積層構造体3の外周側の表面(具体的には、段差面34、及び/又は、積層構造体3の外周面部分33)上に配置されていてもよい。付加部材7は、積層構造体3とは別体に構成される場合、積層構造体3に対し一体に構成されている場合に比べて、免震装置1の製造が簡単となる。
【0037】
付加部材7は、本実施形態において、全周にわたって周方向に沿って延在しており、すなわち、環状に構成されている(図4)。この場合、免震装置1の水平方向変形がいかなる径方向に生じても、同等の程度に、めくれ上がりを抑制することができる。
ただし、付加部材7は、図5に示す第1変形例のように、周方向における1箇所で不連続にされていてもよく、すなわち、C字状に構成されていてもよい。この場合、例えば、付加部材7を積層構造体3とは別体に構成した場合に、付加部材7を、積層構造体3の周りに巻きつけるようにして、簡単に積層構造体3の周りに配置することが可能になる。この場合、付加部材7は、付加部材7の周方向端部どうしが接触した状態にされることで、周方向の全部にわたって配置されていると、好適である。この場合、免震装置1の水平方向変形がいかなる径方向に生じても、同等の程度に、めくれ上がりを抑制することができる。ただし、付加部材7は、周方向の一部のみにわたって配置されていてもよい。この場合でも、付加部材7が配置された周方向位置に向かって水平方向変形が生じた時に、めくれ上がりを抑制することができる。
あるいは、付加部材7は、周方向における複数箇所で不連続にされていてもよい。この場合も、例えば、付加部材7を積層構造体3とは別体に構成した場合に、付加部材7を、簡単に積層構造体3の周りに配置することが可能になる。なお、付加部材7が周方向における複数個所で不連続にされている場合とは、すなわち、複数の付加部材7が周方向に沿って配列されている場合を指す。この場合、複数の付加部材7の周方向端部どうしが接触した状態にされることで、これら複数の付加部材7を1つの付加部材7として観たときに、付加部材7は、周方向の全部にわたって配置されていると、好適である。この場合、免震装置1の水平方向変形がいかなる径方向に生じても、同等の程度に、めくれ上がりを抑制することができる。ただし、付加部材7は、複数の付加部材7どうしが互いから周方向に離間されていることにより、これら複数の付加部材7を1つの付加部材7として観たときに、付加部材7は、周方向の一部のみにわたって配置されていてもよい。この場合でも、付加部材7が配置された周方向位置に向かって水平方向変形が生じた時に、めくれ上がりを抑制することができる。
【0038】
本明細書で説明する各例においては、免震装置1に水平方向変形が生じていない状態において、付加部材7の軸線方向厚さT(図2)が、付加部材7の内周側に位置する積層構造体3の外周面部分33よりも外周側の位置において最大である限り、軸線方向断面における付加部材7の形状は任意でよい。以下に、図2図6図10を参照しつつ、免震装置1に水平方向変形が生じていない状態において、付加部材7の軸線方向厚さTが、付加部材7の内周側に位置する積層構造体3の外周面部分33よりも外周側の位置において最大であるような、付加部材7の軸線方向断面における形状を、例示説明する。図2図6図10は、それぞれ、別々の例に係る免震装置1の一部(下側かつ外周側の部分)を、免震装置1に水平方向変形が生じていない状態で、示している。
【0039】
図2の例では、付加部材7は、軸線方向断面において、三角形をなしている。付加部材7の軸線方向内側の面は、軸線方向外側へ向かうにつれて徐々に内周側へ向かうように、直線状に延在している。付加部材7の軸線方向内側の面の内周端は、付加部材7の内周側に位置する積層構造体3の外周面部分33に点接触している。付加部材7の軸線方向外側の面は、段差面34に接触しており、軸直方向に延在している。付加部材7の外周側の面は、軸線方向に延在している。
【0040】
図6に示す第2変形例では、付加部材7が、軸線方向断面において、略三角形をなしている。付加部材7の軸線方向内側の面は、軸線方向外側へ向かうにつれて徐々に内周側へ向かうように、軸線方向内側へ向かって突出した湾曲線に沿って、延在している。付加部材7の軸線方向内側の面の内周端は、付加部材7の内周側に位置する積層構造体3の外周面部分33に点接触している。付加部材7の軸線方向外側の面は、段差面34に接触しており、軸直方向に延在している。付加部材7の外周側の面は、軸線方向に延在している。なお、図示は省略するが、付加部材7の軸線方向内側の面は、軸線方向外側へ向かうにつれて徐々に内周側へ向かうように、軸線方向外側へ向かって突出した湾曲線に沿って、延在していてもよい。
【0041】
図7に示す第3変形例では、付加部材7が、軸線方向断面において、三角形をなしている。付加部材7の内周側の面は、軸線方向外側へ向かうにつれて徐々に内周側へ向かうように、直線状に延在している。付加部材7の内周側の面の内周端は、付加部材7の内周側に位置する積層構造体3の外周面部分33に点接触している。付加部材7の軸線方向外側の面は、段差面34に接触しており、軸直方向に延在している。付加部材7の外周側の面は、軸線方向内側へ向かうにつれて徐々に内周側へ向かうように、直線状に延在している。ただし、付加部材7の内周側の面及び外周側の面は、それぞれ、軸線方向内側又は軸線方向外側へ向かって突出した湾曲線に沿って、延在していてもよい。
【0042】
図8に示す第4変形例では、付加部材7が、軸線方向断面において、円形をなしている。付加部材7の内周端は、付加部材7の内周側に位置する積層構造体3の外周面部分33に点接触している。付加部材7の軸線方向外側の端は、段差面34に点接触している。
【0043】
図9に示す第5変形例では、付加部材7が、軸線方向断面において、円形をなしている。付加部材7は、付加部材7の内周側に位置する積層構造体3の外周面部分33に接触しておらず、当該外周面部分33よりも外周側に離間している。付加部材7の軸線方向外側の端は、段差面34に点接触している。
【0044】
図10に示す第6変形例では、付加部材7は、軸線方向断面において、三角形をなしている。付加部材7の内周側の面は、付加部材7の内周側に位置する積層構造体3の外周面部分33に接触しておらず、当該外周面部分33よりも外周側に離間している。付加部材7の軸線方向外側の面は、段差面34に接触しており、軸直方向に延在している。付加部材7の外周側の面は、軸線方向内側に向かうにつれて徐々に内周側へ向かうように延在しており、直線状に延在している。
【0045】
なお、本明細書で説明する各例においては、軸線方向断面視において、付加部材7が、付加部材7の内周側に位置する積層構造体3の外周面部分33に対し、線接触していてもよい。この場合、付加部材7の内周側に位置する積層構造体3の外周面部分33が軸線方向に対し交差する方向に延在している場合には、付加部材7の内周側の面もまた、当該外周面部分33の延在方向に沿って延在していてもよい。
また、本明細書で説明する各例においては、図2図6図7図10の各例のように付加部材7が段差面34に線接触している場合において、段差面34が軸直方向に対し交差する方向に延在している場合、付加部材7の軸線方向外側の面は、段差面34の延在方向に沿って延在していてもよい。
なお、本明細書で説明する各例において、付加部材7は、付加部材7の内周側に位置する積層構造体3の外周面部分33と段差面34とのうち、少なくともいずれか一方と接触していればよい。すなわち、例えば、付加部材7は、段差面4LMと接触している限り、付加部材7の内周側に位置する積層構造体3の外周面部分33とは接触せずに、当該外周面部分33よりも外周側に離間していてもよい。この場合、図10の例のように、付加部材7の軸線方向厚さTは、付加部材7の内周端において最大であってもよく、この場合であっても、付加部材7の軸線方向厚さTは、付加部材7の内周側に位置する積層構造体3の外周面部分33よりも外周側の位置において最大といえる。この場合でも、めくれ上がりを抑制できる。あるいは、付加部材7は、付加部材7の内周側に位置する積層構造体3の外周面部分33と接触している限り、段差面34とは接触していなくてもよい。
【0046】
本明細書で説明する各例においては、図2図6の各例のように、免震装置に水平方向変形が生じていない状態において、付加部材7の軸線方向厚さTが、外周側へ向かうにつれて徐々に増大していると、好適である。これにより、免震装置1の水平方向変形がある程度進んだ状態になった後において、付加部材7は、積層構造体3のうち付加部材7に対し内周側の部分31から加わる力を、積層構造体3のうち付加部材7に対し軸線方向外側の部分32に、より効果的に伝えることができる。よって、効果的に、めくれ上がりを抑制できる。
ここで、「徐々に増大」とは、図2図6の各例のように、一部で一定となることなく常に滑らかに増大する場合に限らず、一部で一定となる場合(段階的に増大する場合)も含む。
【0047】
本明細書で説明する各例においては、図1に示す例のように、積層構造体3の上側及び下側の両方の端部側において、小径硬質材料層4S及び大径硬質材料層4Lからなる対4Pと、付加部材7とが、設けられていると、好適である。この場合、仮に積層構造体3の上側及び下側のうちいずれか一方の端部側のみにおいて、対4Pと付加部材7とが設けられている場合に比べて、免震装置1の耐座屈性能を向上できる。
ただし、図11に示す第7変形例のように、積層構造体3の下側の端部側のみにおいて、小径硬質材料層4S及び大径硬質材料層4Lからなる対4Pと、付加部材7とが、設けられていてもよいし、あるいは、図12に示す第8変形例のように、積層構造体3の上側の端部側のみにおいて、小径硬質材料層4S及び大径硬質材料層4Lからなる対4Pと、付加部材7とが、設けられていてもよい。これらの場合、仮に積層構造体3の上側及び下側の両方の端部側において対4Pと付加部材7とが設けられている場合(図1)に比べて、免震装置1の製造時において、積層構造体3を構成する各硬質材料層4及び各軟質材料層5の積層作業や、付加部材7の配置作業等がしやすくなるので、免震装置1の製造性を向上できる。なお、これらの場合、積層構造体3の上側及び下側のうち、対4Pが設けられていない方の端部側においては、段差部分4LMが存在せず、各硬質材料層4が同径であることから、水平方向変形時においてめくれ上がりのおそれが無い。よって、付加部材7は、積層構造体3の上側及び下側のうち、対4Pが設けられている方の端部側のみに設けられていれば、めくれ上がり抑制の観点において、十分である。
【0048】
本明細書で説明する各例においては、図13図14に示す第9変形例や、図15に示す第10変形例のように、積層構造体3は、その上側及び下側のうち少なくともいずれか一方(図13図15の各例では、少なくとも下側)の端部側において、小径硬質材料層4S及び大径硬質材料層4Lからなる対4Pを、複数(図13図15の各例では、3つ)、有していてもよい。図13図14の例では、各対4Pの段差部分4LMの径方向長さLが、互いに同じである。図13は水平方向変形が生じていない状態、図14は水平方向変形が生じている状態を、それぞれ示している。図15の例では、各対4Pの段差部分4LMの径方向長さLが、互いに異なる。より具体的に、各対4Pの段差部分4LMは、軸線方向外側に位置するものほど、径方向長さLが長い。図15は水平方向変形が生じていない状態を示している。
この場合、積層構造体3の上側及び下側のうち少なくともいずれか一方の端部側において、付加部材7は、複数の対4Pのそれぞれの段差部分4LMのうち、少なくとも1つの段差部分4LMに対し、軸線方向内側に配置されていると、好適である。これにより、めくれ上がりを抑制できる。
ここで、仮に付加部材7が設けられない場合、段差部分4LMの径方向長さLが長いほど、免震装置1の水平方向変形時において、積層構造体3のうち、当該段差部分4LM、及び、それより軸線方向外側の部分は、軸線方向内側への反り返り(めくれ上がり)が生じやすくなる。このような観点から、積層構造体3が、その上側及び下側のうち少なくともいずれか一方の端部側において、小径硬質材料層4S及び大径硬質材料層4Lからなる対4Pを複数有している場合、付加部材7は、図13図15の各例のように、当該複数の対4Pのそれぞれの段差部分4LMのうち、少なくとも、径方向長さLが最大である段差部分4LMに対し、軸線方向内側に配置されていると、好適である。これにより、仮に、付加部材7が、当該複数の対4Pのそれぞれの段差部分4LMのうち、径方向長さLが最大である段差部分4LM以外の段差部分4LMのみに対し、軸線方向内側に配置されている場合に比べて、めくれ上がりをさらに抑制できる。
また、積層構造体3が、その上側及び下側のうち少なくともいずれか一方の端部側において、小径硬質材料層4S及び大径硬質材料層4Lからなる対4Pを複数有している場合、図13図15の各例のように、複数の付加部材7のそれぞれが、複数の対4Pのうち少なくとも2つ(より好適には全て)の対4Pのそれぞれの段差部分4LMに対し、軸線方向内側にそれぞれ配置されていると、好適である。これにより、仮に、付加部材7が、当該複数の対4Pのそれぞれの段差部分4LMのうち、1つの段差部分4LMのみに対し、軸線方向内側に配置されている場合に比べて、めくれ上がりをさらに抑制できる。
【0049】
付加部材7は、軸線方向断面における面積が大きいほど、免震装置1の水平方向変形時において、積層構造体3のうち付加部材7に対し内周側の部分31から加わる力を、より効果的に、積層構造体3のうち付加部材7に対し軸線方向外側の部分32へ伝えやすくなる(ひいては、めくれ上がり抑制性能が高くなる)傾向がある。このような観点から、本明細書で説明する各例においては、積層構造体3が、その上側及び下側のうち少なくともいずれか一方の端部側において、小径硬質材料層4S及び大径硬質材料層4Lからなる対4Pを複数有しており、かつ、複数の付加部材7のそれぞれが、複数の対4Pのうち少なくとも2つ(より好適には全て)の対4Pのそれぞれの段差部分4LMに対し、軸線方向内側にそれぞれ配置されている場合、図15の例のように、複数の付加部材7は、径方向長さLが長い段差部分4LMに対し軸線方向内側に配置されているものほど、軸線方向断面における面積が大きいと、好適である。これにより、よりめくれ上がりが生じやすい段差部分4LMに、よりめくれ上がり抑制性能の高い付加部材7を配置することができるので、めくれ上がりをさらに抑制できる。
なお、図15の例では、積層構造体3の上側及び下側のうち少なくともいずれか一方の端部側において、複数(より具体的には3つ)の対4Pの段差部分4LMは、軸線方向外側に位置するものほど、径方向長さLが長く、また、複数(より具体的には3つ)の付加部材7は、径方向長さLが長い段差部分4LMに対し軸線方向内側に配置されているものほど、軸線方向断面における面積が大きく、すなわち、軸線方向外側に位置するものほど、軸線方向断面における面積が大きい。
ただし、本明細書で説明する各例において、複数の付加部材7どうしの軸線方向断面における面積の大小関係は、任意でよい。例えば、図15の例のように、積層構造体3の上側及び下側のうち少なくともいずれか一方の端部側において、複数(より具体的には3つ)の対4Pの段差部分4LMが、軸線方向外側に位置するものほど、径方向長さLが長くなる場合において、各付加部材7の軸線方向断面における面積は、互いに同じであってもよい。あるいは、図13及び図14の例のように、積層構造体3の上側及び下側のうち少なくともいずれか一方の端部側において、複数(より具体的には3つ)の対4Pの段差部分4LMは、径方向長さLが互いに同じであり、かつ、各付加部材7の軸線方向断面における面積は、互いに同じであってもよい。
【0050】
同様に、付加部材7は、径方向長さWが長いほど、免震装置1の水平方向変形時において、積層構造体3のうち付加部材7に対し内周側の部分31から加わる力を、より効果的に、積層構造体3のうち付加部材7に対し軸線方向外側の部分32へ伝えやすくなる(ひいては、めくれ上がり抑制性能が高くなる)傾向がある。このような観点から、本明細書で説明する各例においては、積層構造体3が、その上側及び下側のうち少なくともいずれか一方の端部側において、小径硬質材料層4S及び大径硬質材料層4Lからなる対4Pを複数有しており、かつ、複数の付加部材7のそれぞれが、複数の対4Pのうち少なくとも2つ(より好適には全て)の対4Pのそれぞれの段差部分4LMに対し、軸線方向内側にそれぞれ配置されている場合、図15の例のように、複数の付加部材7は、径方向長さLが長い段差部分4LMに対し軸線方向内側に配置されているものほど、径方向長さWが長いと、好適である。これにより、よりめくれ上がりが生じやすい段差部分4LMに、よりめくれ上がり抑制性能の高い付加部材7を配置することができるので、めくれ上がりをさらに抑制できる。
なお、図15の例では、積層構造体3の上側及び下側のうち少なくともいずれか一方の端部側において、複数(より具体的には3つ)の対4Pの段差部分4LMは、軸線方向外側に位置するものほど、径方向長さLが長く、また、複数(より具体的には3つ)の付加部材7は、径方向長さLが長い段差部分4LMに対し軸線方向内側に配置されているものほど、径方向長さWが長く、すなわち、軸線方向外側に位置するものほど、径方向長さWが長い。
ただし、本明細書で説明する各例において、複数の付加部材7どうしの径方向長さWの大小関係は、任意でよい。例えば、図15の例のように、積層構造体3の上側及び下側のうち少なくともいずれか一方の端部側において、複数(より具体的には3つ)の対4Pの段差部分4LMが、軸線方向外側に位置するものほど、径方向長さLが長くなる場合において、各付加部材7の径方向長さWは、互いに同じであってもよい。あるいは、図13及び図14の例のように、積層構造体3の上側及び下側のうち少なくともいずれか一方の端部側において、複数(より具体的には3つ)の対4Pの段差部分4LMは、径方向長さLが互いに同じであり、かつ、各付加部材7の径方向長さWは、互いに同じであってもよい。
【0051】
付加部材7は、硬さが高いほど、免震装置1の水平方向変形時において、積層構造体3のうち付加部材7に対し内周側の部分31から加わる力を、より効果的に、積層構造体3のうち付加部材7に対し軸線方向外側の部分32へ伝えやすくなる(ひいては、めくれ上がり抑制性能が高くなる)傾向がある。このような観点から、本明細書で説明する各例においては、図15の例のように、積層構造体3が、その上側及び下側のうち少なくともいずれか一方の端部側において、小径硬質材料層4S及び大径硬質材料層4Lからなる対4Pを複数有しており、かつ、複数の付加部材7のそれぞれが、複数の対4Pのうち少なくとも2つ(より好適には全て)の対4Pのそれぞれの段差部分4LMに対し、軸線方向内側にそれぞれ配置されている場合、複数の付加部材7は、径方向長さLが長い段差部分4LMに対し軸線方向内側に配置されているものほど、硬さが高いと、好適である。これにより、よりめくれ上がりが生じやすい段差部分4LMに、よりめくれ上がり抑制性能の高い付加部材7を配置することができるので、めくれ上がりをさらに抑制できる。
ただし、本明細書で説明する各例において、複数の付加部材7どうしの硬さの大小関係は、任意でよい。例えば、図15の例のように、積層構造体3の上側及び下側のうち少なくともいずれか一方の端部側において、複数(より具体的には3つ)の対4Pの段差部分4LMが、軸線方向外側に位置するものほど、径方向長さLが長くなる場合において、各付加部材7の硬さは、互いに同じであってもよい。あるいは、図13及び図14の例のように、積層構造体3の上側及び下側のうち少なくともいずれか一方の端部側において、複数(より具体的には3つ)の対4Pの段差部分4LMが、径方向長さLが互いに同じである場合において、各付加部材7の硬さは、互いに同じであってもよい。
【0052】
本明細書で説明する各例において、積層構造体3は、図2図6図15の各例のように、その上側及び下側のうち少なくともいずれか一方の端部側において、各硬質材料層4が、それぞれ当該硬質材料層4に対し軸線方向内側に隣り合う他の硬質材料層4の外径以上の外径を有している(すなわち、各硬質材料層4の外径が、軸線方向外側に向かうにつれて徐々に増大している)と、好適である。言い換えれば、積層構造体3は、図2図6図15の各例のように、その上側及び下側のうち少なくともいずれか一方の端部側において、いずれの硬質材料層4も、当該硬質材料層4に対し軸線方向内側に隣り合う他の硬質材料層4の外径未満の外径を有していないと、好適である。これにより、仮に、いずれかの硬質材料層4が、当該硬質材料層4に対し軸線方向内側に隣り合う他の硬質材料層4の外径未満の外径を有している場合に比べて、免震装置1の耐座屈性能を、向上できる。
また、本明細書で説明する各例において、積層構造体3は、その上側及び下側のうち少なくともいずれか一方の端部側において、最も軸線方向外側に位置する複数の硬質材料層4が、それぞれ当該硬質材料層4に対し軸線方向内側に隣り合う他の硬質材料層4の外径よりも大きな外径を有している(すなわち、これら複数の硬質材料層4の外径が、軸線方向外側に向かうにつれて、一部で一定となることなく常に滑らかに増大している)と、好適である。この場合、免震装置1の耐座屈性能及び免震性能を、向上できることに加えて、積層構造体3のめくれ上がりをさらに抑制することができる。
なお、積層構造体3は、図1図11図12の各例のように、積層構造体3における軸線方向中央部分において、複数の硬質材料層4が同径であってもよいし、あるいは、積層構造体3の中央部分において、複数の硬質材料層4が、それぞれ当該硬質材料層4に対し軸線方向内側に隣り合う他の硬質材料層4の外径よりも大きな外径を有し(すなわち、これら複数の硬質材料層4の外径が、軸線方向外側に向かうにつれて、一部で一定となることなく常に滑らかに増大し)ていてもよい。例えば、積層構造体3は、積層構造体3における軸線方向の全体において、複数の硬質材料層4が、それぞれ当該硬質材料層4に対し軸線方向内側に隣り合う他の硬質材料層4の外径よりも大きな外径を有し(すなわち、これら複数の硬質材料層4の外径が、軸線方向外側に向かうにつれて、一部で一定となることなく常に滑らかに増大し)ていてもよい。
なお、これらの場合、各対4Pの小径硬質材料層4Sは、当該対4Pに対し軸線方向内側に隣り合う他の対4Pの大径硬質材料層4Lとなり得る。同様に、各対4Pの大径硬質材料層4Lは、当該対4Pに対し軸線方向外側に隣り合う他の対4Pの小径硬質材料層4Sとなり得る。
【0053】
本明細書で説明する各例においては、積層構造体3は、その上側及び下側のうち少なくともいずれか一方の端部側において、小径硬質材料層4S及び大径硬質材料層4Lからなる対4Pを、複数有している場合、図15の例のように、各対4Pの段差部分4LMは、軸線方向外側に位置するものほど、径方向長さLが長いと、好適である。これにより、仮に図13図14の例のように各対4Pの段差部分4LMの径方向長さLが互いに同じである場合に比べて、積層構造体3のめくれ上がりをさらに抑制することができる。
【0054】
積層構造体3は、図1図11図12の各例においては、各硬質材料層4と各軟質材料層5とが環状ではなく中実に構成されており、積層構造体3の中心軸線O上に硬質材料層4と軟質材料層5とが位置しているが、これに限られない。例えば、積層構造体3は、各硬質材料層4と各軟質材料層5とが環状に構成されており、各硬質材料層4の中心穴と各軟質材料層5の中心穴とによって、積層構造体3は、その中心軸線O上に、軸線方向に延在する中心穴を有しており、当該中心穴に、柱状体が配置されていてもよい。柱状体は、塑性変形により振動エネルギーを吸収できるように構成されていると好適である。柱状体は、例えば、鉛、錫、錫合金、又は熱可塑性樹脂から構成されることができる。
【0055】
本明細書で説明する各例においては、図2図6図15の各例のように、付加部材7の軸線方向厚さTの最大値が、硬質材料層4どうしの軸線方向の間隔よりも、大きいと、好適である。これにより、付加部材7が、積層構造体3のうち付加部材7に対し内周側の部分31から加わる力を、より効果的に、積層構造体3のうち付加部材7に対し軸線方向外側の部分32へ伝えやすくなる。よって、めくれ上がりをさらに抑制できる。ここで、「硬質材料層4どうしの軸線方向の間隔」とは、互いに隣り合う一対の硬質材料層4の軸線方向中心どうしの間の軸線方向距離を指す。
なお、免震装置1が複数の付加部材7を有する場合、当該複数の付加部材7のうちの、一部のみの付加部材7が、この構成を満たしていても良いが、当該複数の付加部材7のうちの全部の付加部材7が、この構成を満たしていると、より好適である。
【0056】
同様に、本明細書で説明する各例においては、図2図6図15の各例のように、付加部材7が、少なくとも2つの硬質材料層4と、軸直方向に重複する位置にある(すなわち、少なくとも2つの硬質材料層4と同じ軸線方向位置に位置している)と、好適である。これにより、付加部材7が、積層構造体3のうち付加部材7に対し内周側の部分31から加わる力を、より効果的に、積層構造体3のうち付加部材7に対し軸線方向外側の部分32へ伝えやすくなる。よって、めくれ上がりをさらに抑制できる。
なお、免震装置1が複数の付加部材7を有する場合、当該複数の付加部材7のうちの、一部のみの付加部材7が、この構成を満たしていても良いが、当該複数の付加部材7のうちの全部の付加部材7が、この構成を満たしていると、より好適である。
【0057】
本明細書で説明する各例においては、図2図6図15の各例のように、付加部材7の径方向長さWが、硬質材料層4どうしの軸線方向の間隔よりも大きいと、好適である。これにより、免震装置1の水平方向変形時において、付加部材7が、当該付加部材7の軸線方向外側に位置する段差部分4LMの反り返りを、より効果的に抑制できる。よって、めくれ上がりをさらに抑制できる。同様の観点から、付加部材7の径方向長さWが、硬質材料層4どうしの軸線方向の間隔の1.5倍以上であると、より好適であり、2倍以上であると、さらに好適である。なお、免震性能等の観点から、付加部材7の径方向長さWは、硬質材料層4どうしの軸線方向の間隔の7.5倍以下であると好適であり、5倍以下であるとより好適である。
なお、免震装置1が複数の付加部材7を有する場合、当該複数の付加部材7のうちの、一部のみの付加部材7が、この構成を満たしていても良いが、当該複数の付加部材7のうちの全部の付加部材7が、この構成を満たしていると、より好適である。
【0058】
本明細書で説明する各例においては、図2図6図15の各例のように、付加部材7の径方向長さWが、付加部材7の軸線方向厚さTの最大値以上であると、好適である。これにより、免震装置1の水平方向変形時において、付加部材7が、当該付加部材7の軸線方向外側に位置する段差部分4LMの反り返りを、より効果的に抑制できる。よって、めくれ上がりをさらに抑制できる。同様の観点から、付加部材7の径方向長さWが、付加部材7の軸線方向厚さTの最大値よりも大きいと、より好適である。
なお、免震装置1が複数の付加部材7を有する場合、当該複数の付加部材7のうちの、一部のみの付加部材7が、この構成を満たしていても良いが、当該複数の付加部材7のうちの全部の付加部材7が、この構成を満たしていると、より好適である。
【0059】
本明細書で説明する各例においては、図2図6図15の各例のように、付加部材7の径方向長さWが、当該付加部材7の軸線方向外側に位置する段差部分4LMの径方向長さLの0.7倍以上であると、好適である。これにより、免震装置1の水平方向変形時において、付加部材7が、当該付加部材7の軸線方向外側に位置する段差部分4LMの反り返りを、より効果的に抑制できる。よって、めくれ上がりをさらに抑制できる。同様の観点から、付加部材7の径方向長さWが、当該付加部材7の軸線方向外側に位置する段差部分4LMの径方向長さLの0.9倍以上であると、より好適である。なお、免震性能等の観点から、付加部材7の径方向長さWは、当該付加部材7の軸線方向外側に位置する段差部分4LMの径方向長さLの1.3倍以下であると好適であり、1.1倍以下であるとより好適である。
なお、免震装置1が複数の付加部材7を有する場合、当該複数の付加部材7のうちの、一部のみの付加部材7が、この構成を満たしていても良いが、当該複数の付加部材7のうちの全部の付加部材7が、この構成を満たしていると、より好適である。
【0060】
本明細書で説明する各例においては、図2図6図7図11図15の各例のように、軸線方向断面において、付加部材7が、その軸線方向外側に位置する段差面34の全体にわたって配置されている(すなわち、付加部材7の径方向長さWが、段差面34の径方向長さに等しい又はそれよりも長い)と、好適である。これにより、免震装置1の水平方向変形時において、付加部材7が、当該付加部材7の軸線方向外側に位置する段差部分4LMの反り返りを、より効果的に抑制できる。よって、めくれ上がりをさらに抑制できる。
ただし、軸線方向断面において、付加部材7は、図8図10の各例のように、その軸線方向外側に位置する段差面34の一部のみにわたって配置されていてもよい(すなわち、付加部材7の径方向長さWが、段差面34の径方向長さ未満であってもよい)。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の免震装置は、地震の揺れが構造物(例えば、ビル、マンション、戸建て住宅、倉庫等の建物、並びに、橋梁等)に伝わるのを抑制するために、構造物の上部構造と下部構造との間に配置されると、好適なものである。
【符号の説明】
【0062】
1:免震装置、
21:上側フランジプレート(フランジプレート)、 22:下側フランジプレート(フランジプレート)、
3:積層構造体、 31:積層構造体のうち付加部材に対し内周側の部分、 32:積層構造体のうち付加部材に対し軸線方向外側の部分、 33:付加部材の内周側に位置する積層構造体の外周面部分(段差面の内周端から軸線方向内側へ延在する、積層構造体の外周面部分)、 34:段差面、
4:硬質材料層、 4S:小径硬質材料層(硬質材料層)、 4L:大径硬質材料層(硬質材料層)、 4LM:段差部分、 4P:対、
5:軟質材料層、
6:被覆層、
7:付加部材、 7a:側面、
O:中心軸線
図1
図2
図3
図4
図5
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図10
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