(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】作物収穫機
(51)【国際特許分類】
A01D 45/22 20060101AFI20221125BHJP
【FI】
A01D45/22 Z
(21)【出願番号】P 2019141018
(22)【出願日】2019-07-31
【審査請求日】2021-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】木下 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】杉岡 将人
(72)【発明者】
【氏名】村上 健太
(72)【発明者】
【氏名】丸山 義貴
【審査官】櫻井 健太
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-125830(JP,U)
【文献】特開2013-247875(JP,A)
【文献】特開2001-333619(JP,A)
【文献】実開平02-083714(JP,U)
【文献】特開2002-272239(JP,A)
【文献】実開平01-175527(JP,U)
【文献】実開昭59-026918(JP,U)
【文献】特開2005-087064(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 34/00 - 34/90
A01D 42/00 - 46/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場に植立する作物を収穫する収穫部が備えられ、
前記収穫部は、作物の茎部を後上方に挟持搬送する挟持搬送装
置、前記挟持搬送装置の入口の前下方におい
て地面の上方箇所で作物の茎部を切断するカッター
、前記カッターを駆動する油圧モータ、及び、前記カッターの前方に位置する左右一対のデバイダを有し、
前記カッターは、機体上下向きの軸芯を回転中心にして回転可能な円盤型のカッターであり、前記油圧モータの出力軸に相対回転不能に支持され、
前記挟持搬送装置の両横側部から各別に前方に前記カッターの上方を通して延ばされ、かつ、機体横方向に間隔を空けて並べられた左右一対の支持フレームが備えられ、
前記左右一対のデバイダは、前記左右一対の支持フレームの前端部に各別に支持され、
前記左右一対の支持フレームから各別に下向きに延ばされた左及び右の第1モータ支持部材、及び、前記左右の第1モータ支持部材の下部に支持され、前記油圧モータを支持する第2モータ支持部材が備えられている作物収穫機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場に植立する作物を収穫する収穫部が備えられた作物収穫機に関する。
【背景技術】
【0002】
上記した収穫機において、収穫部に、作物の茎部を後上方に挟持搬送する挟持搬送装置が備えられたものがある。この種の作物収穫機としは、例えば、特許文献1に示される走行型収穫機がある。特許文献1に示される走行型収穫機では、両エンドレスベルトによって茎部を後上方に挟持搬送するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
茎部を後上方に挟持搬送する挟持搬送装置として、茎部の挟持搬送によって作物を圃場から抜き上げるものを採用すると、マルチシートを敷いた状態で栽培された作物、たとえば枝豆を収穫しようとすると、マルチシートが抜き上げられる作物の根部によって持ち上げられて挟持搬送装置などに絡み付き、実際問題としては、収穫作業を行えない。
【0005】
本発明は、作物を後上方に挟持搬送するものでありながら、マルチシートを敷いたままの状態でも収穫作業を行える作物収穫機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による作物収穫機は、
圃場に植立する作物を収穫する収穫部が備えられ、前記収穫部は、作物の茎部を後上方に挟持搬送する挟持搬送装置、前記挟持搬送装置の入口の前下方において地面の上方箇所で作物の茎部を切断するカッター、前記カッターを駆動する油圧モータ、及び、前記カッターの前方に位置する左右一対のデバイダを有し、前記カッターは、機体上下向きの軸芯を回転中心にして回転可能な円盤型のカッターであり、前記油圧モータの出力軸に相対回転不能に支持され、前記挟持搬送装置の両横側部から各別に前方に前記カッターの上方を通して延ばされ、かつ、機体横方向に間隔を空けて並べられた左右一対の支持フレームが備えられ、前記左右一対のデバイダは、前記左右一対の支持フレームの前端部に各別に支持され、前記左右一対の支持フレームから各別に下向きに延ばされた左及び右の第1モータ支持部材、及び、前記左右の第1モータ支持部材の下部に支持され、前記油圧モータを支持する第2モータ支持部材が備えられている。
【0007】
本構成によると、茎部がカッターによって切断されて根部が分離した状態の茎部が挟持搬送装置によって挟持搬送されるので、根部が圃場に残されて持ち上げられない。これにより、作物を後上方に挟持搬送するものでありながら、マルチシートが敷かれたままの状態でも、マルチシートが持ち上げられなくて、収穫作業を行える。
【0008】
【0009】
本構成によると、簡素な形状のカッターによって茎部をスムーズに切断できる。
【0010】
【0011】
本構成によると、茎部を切断するための切断装置をコンパクトに得ることができる。
【0012】
【0013】
本構成によると、作物の茎部がカッターによって切断されるとき、また、茎部が切断されて根部が分離した状態になった作物が挟持搬送装置に向けて移動するとき、茎部のうちの切断箇所よりも上方の部分が支持フレームによって支えられるので、茎部が切断された作物が姿勢乱れし難い状態で挟持搬送装置に受け入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一例である実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、以下の説明では、枝豆収穫機(「作物収穫機」の一例)の走行機体に関し、
図1,2に示される矢印Fの方向を「機体前方」、矢印Bの方向を「機体後方」、
図1に示される矢印Uの方向を「機体上方」、矢印Dの方向を「機体下方」、
図2に示される矢印Lの方向を「機体左方」、矢印Rの方向を「機体右方」とする。
【0016】
〔枝豆収穫機の全体の構成〕
図1に示されるように、枝豆収穫機の走行機体は、角パイプ材などの複数の鋼材を連結して構成された機体フレーム1を備えている。機体フレーム1の下部に左右一対のクローラ式走行装置2が装備されている。
図1,2に示されるように、走行機体の前部の右横側部分に、運転座席3を有する運転部4が形成されている。走行機体の前部の左横側部分に、圃場に植立する枝豆を収穫する収穫部5が連結されている。収穫部5は、収穫部5の後端部に備えられた機体横向きの枢支軸芯Pを揺動支点にして下降作業状態と上昇非作業状態とに亘って揺動昇降可能に連結されている。収穫部5は、収穫部5の中間部に連結された昇降シリンダ6の伸縮作動によって昇降操作される。走行機体の後部に、収穫部5によって収穫された枝豆の脱莢処理を行う脱莢部7、及び、脱莢部7によって得られた莢部と、脱莢部7で発生した切れ葉などの塵埃とを選別する選別部8が形成されている。走行機体の右横側部に、選別部8によって選別された莢部を回収する回収部9が装備されている。
【0017】
脱莢部7においては、収穫部5によって縦向き姿勢で搬送された枝豆が姿勢変更装置10によって横倒れ姿勢に姿勢変更される。横倒れ姿勢になった枝豆の茎部がフィードチェーン11によって後方に向けて挟持搬送され、茎部のうちの莢部を有する部分が脱莢回転体12によって脱莢処理される。脱莢処理によって得られた莢部がコンベヤ13によって受け止められて後方に向けて搬送される。脱莢処理が済んだ枝豆がフィードチェーン11によって脱莢部7から排出されて機体後方に放出される。選別部8においては、コンベヤ13によって搬送された莢部がコンベヤ13と解し回転体14との間から横送りコンベヤ15に落下する。また、コンベヤ13によって搬送された莢部と塵埃とが解し回転体14によって解し処理され、解し処理された莢部及び塵埃が横送りコンベヤ15に落下する。
コンベヤ13と解し回転体14との間の落下経路に向けて、かつ、横送りコンベヤ15に向けて唐箕16から選別風が送られ、莢部と塵埃とが解し処理、及び、風選別などによって選別される。脱莢処理によって得られ、塵埃との選別処理が行われた莢部が横送りコンベヤ15によって回収部9に搬送される。回収部9に回収された莢部は、回収部9を構成するベルトコンベヤによって機体前方に取り出すことができる。
【0018】
〔収穫部について〕
収穫部5は、
図1,2に示されるように、収穫部5の前端部に設けられた左右一対のデバイダ17、デバイダ17の後方に設けられたカッター18、カッター18の後上方に設けられた挟持搬送装置19を有している。
【0019】
図3,4に示されるように、左右一対のデバイダ17は、左右一対の機体前後方向に延びる支持フレーム20の前端部に各別に支持されている。左右一対の支持フレーム20は、
図3,4に示されるように、挟持搬送装置19の両横側部から各別に前方にカッター18の上方を通して延ばされている。具体的には、支持フレーム20は、
図3,4に示されるように、挟持搬送装置19のフレーム19bから延ばされている。左右一対の支持フレーム20は、機体左右方向に間隔を空けて並べられている。左右一対の支持フレーム20の間隔は、枝豆の通過が可能な距離の間隔である。
【0020】
図4,5に示されるように、カッター18は、円盤型のカッターによって構成され、挟持搬送装置19の入口19aの前下方に設けられている。カッター18は、油圧モータ21の出力軸21aに
相対回転不能に支持されている。油圧モータ21は、左右一対の支持フレーム20のそれぞれから下向きに延ばされた第1モータ支持部材22、左右の第1モータ支持部材22の下部に支持された第2モータ支持部材22aを介して支持フレーム20に支持されている。油圧モータ21は、収穫部5の下降作業状態において、出力軸21aが機体上下向きになる状態で支持されている。収穫部5の下降作業状態において、カッター18は、挟持搬送装置19の入口19aの前下方において、出力軸21aの機体上下向きの軸芯Yを回転中心にして回転する状態で駆動され、デバイダ17からの枝豆の茎部を地面の上方箇所で切断する。
【0021】
挟持搬送装置19は、
図2に示されるように、左右一対の無端回動ベルト23を有している。左右一対の無端回動ベルト23のそれぞれは、カッター18の後上方においてベルトカバー24の内部に回転可能に設けられた従動プーリ25、姿勢変更装置10の始端部の下方において回転可能かつ駆動可能に設けられた駆動プーリ26、駆動プーリ26と従動プーリ25との間に設けられた複数のガイド輪体27にわたって巻回されている。
図3に示されるように、左の無端回動ベルト23の前端部分と、右の無端回動ベルト23の前端部分とによって挟持搬送装置19の入口19aが形成されている。左右一対の無端回動ベルト23は、左右の無端回動ベルト23の搬送経路部23aが寄り合う状態で巻回されている。収穫部5の下降作業状態において、左右一対の無端回動ベルト23は、後上がり傾斜になる状態で支持され、挟持搬送装置19は、カッター18によって茎部が切断されて根部が圃場に残った状態の枝豆の茎部を左右一対の無端回動ベルト23によって後上方に挟持搬送して姿勢変更装置10に供給する。
【0022】
収穫部5においては、収穫作業を行う時、走行機体の前方に位置する収穫対象の枝豆の茎部が左右一対のデバイダ17によって左右の支持フレーム20の間に導入される。
図6に示されるように、導入された枝豆28の茎部28aが挟持搬送装置19の入口19aの前方において、地面の上方箇所でカッター18によって切断され、枝豆28の根部28bが分離して圃場の土内に残される。根部28bが分離した状態になった枝豆28の茎部28aが挟持搬送装置19に受け入れられ、茎部28aが挟持搬送装置19によって後上方に挟持搬送されて脱莢部7の姿勢変更装置10に供給される。茎部28aがカッター18によって切断されるとき、根部28bが分離した状態になった枝豆28がカッター18の上方を後方に移動するとき、茎部28aのうちの切断箇所よりも上方の部位が左右一対の支持フレーム20によって支えられる。
【0023】
たとえば、
図6に示されるように、マルチシート29を敷いたままにして収穫作業をされる場合、枝豆28が挟持搬送装置19によって挟持搬送される前において茎部28aがマルチシート29よりも上方の箇所でカッター18によって切断され、かつ、根部28bの圃場からの抜き上げが行われないので、マルチシート29の持ち上げが行われない。
【0024】
〔別実施形態〕
(1)上記した実施形態では、カッター18が円盤型のカッターによって構成された例を示したが、これに限らない。たとえば、バリカン形のカッターであってもよい。
【0025】
(2)上記した実施形態では、カッター18が収穫作業のとき、水平またはほぼ水平の姿勢になる例を示したが、これに限らず、前下がりの傾斜姿勢になるものであってもよい。
【0026】
(3)上記した実施形態では、カッター18を駆動する油圧モータ21を採用した例を示したが、これに限らない。電動モータ、エンジンなど各種の動力源を採用したものであってもよい。
【0027】
(4)上記した実施形態では、走行機体の右横側部分に運転部4が形成され、走行機体の左横側部分に収穫部5が連結された例を示したが、これに限らず、走行機体の左横側部分に運転部4が形成され、走行機体の右横側部分に収穫部5が連結されたものであってもよい。
【0028】
(5)上記した実施形態では、枝豆を収穫対象とする作物収穫機を示したが、これに限らない。たとえばインゲン豆など、各種の莢付き状態で収穫される各種の作物を収穫対象と各種の作物収穫機であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、作物の茎部を後上方に挟持搬送する搬送装置を収穫部に有する各種の作物収穫機に適用できる。
【符号の説明】
【0030】
5 収穫部
17 デバイダ
18 カッター
19 挟持搬送装置
19a 入口
20 支持フレーム
21 油圧モータ
21a 出力軸
22 第1モータ支持部材
22a 第2モータ支持部材