(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
E02F 3/43 20060101AFI20221125BHJP
E02F 9/20 20060101ALI20221125BHJP
E02F 9/26 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
E02F3/43 A
E02F9/20 N
E02F9/26 A
(21)【出願番号】P 2019176682
(22)【出願日】2019-09-27
【審査請求日】2021-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】千葉 孝昭
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 賢人
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-210816(JP,A)
【文献】特開2006-257724(JP,A)
【文献】特開平09-071965(JP,A)
【文献】特開2018-199989(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 3/43
E02F 9/20
E02F 9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業フロントである作業機と、周囲の障害物を検知する検知装置と、少なくとも前記作業機の動作を制御する制御装置とを備える作業機械において、
前記制御装置は、前記検知装置で検知された障害物が予め設定された監視範囲内に存在するときに前記作業機を減速し、又はオペレータに報知し、若しくはその両方の制御を行う運転支援機能と、前記作業機が予め設定された作業範囲外に逸脱することを防止する作業支援機能とを有し、
前記作業支援機能は有効と無効とに切り換え可能とされ、
前記作業支援機能が有効に切り換えられた場合、前記制御装置は、前記監視範囲内であっても前記作業範囲外で検出された障害物については、前記作業支援機能が無効に切り換えられた場合に比べて前記運転支援機能を抑制することを特徴とする作業機械。
【請求項2】
前記制御装置は、前記検知装置で検知された障害物と前記作業範囲の外縁との距離に基づいて、前記運転支援機能の抑制度合を変更することを特徴とする請求項1に記載の作業機械。
【請求項3】
前記制御装置は、前記検知装置で検知された障害物と前記作業範囲の外縁との距離が小さいほど、前記運転支援機能の抑制度合を小さくすることを特徴とする請求項1又は2に記載の作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械に関し、特に運転支援機能及び作業支援機能を有する作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルのような作業機械において、例えば特許文献1に記載のように、作業フロントである作業機が周辺の作業者、通行人、物体等の障害物に接触することを予防するために、作業機械周辺の障害物を検知してオペレータに報知したり、作業機を減速し停止させたりする運転支援機能が知られている。
【0003】
また、特許文献2に記載のように、予め設定された高さ、深さ、旋回角度等の作業範囲から作業機が逸脱しないように、作業機を制御する作業支援機能が知られている。このような作業支援機能を用いることで、作業機の動作が電線や埋設物に接触して破壊することを防止でき、作業効率の向上につながる。更に、旋回方向の領域を制限した場合は道路の路側等での作業において、作業機が道路にはみ出すことを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-257724号公報
【文献】特開平9-71965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の運転支援機能及び作業支援機能を有する作業機械を考えた場合、作業機が作業範囲外に逸脱することが防止されているにも関わらず、作業範囲外で検出された障害物に対して報知や減速の制御を従来のまま行うと、オペレータは煩わしく感じ、作業効率が低下する問題が生じる。
【0006】
上述の事情に鑑みて、本発明は、運転支援機能及び作業支援機能を有する作業機械において、オペレータの煩わしさを低減し、作業効率の低下を防ぐことが可能な作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る作業機械は、作業フロントである作業機と、周囲の障害物を検知する検知装置と、少なくとも前記作業機の動作を制御する制御装置とを備える作業機械において、前記制御装置は、前記検知装置で検知された障害物が予め設定された監視範囲内に存在するときに前記作業機を減速し、又はオペレータに報知し、若しくはその両方の制御を行う運転支援機能と、前記作業機が予め設定された作業範囲外に逸脱することを防止する作業支援機能とを有し、前記作業支援機能は有効と無効とに切り換え可能とされ、前記作業支援機能が有効に切り換えられた場合、前記制御装置は、前記監視範囲内であっても前記作業範囲外で検出された障害物については、前記作業支援機能が無効に切り換えられた場合に比べて前記運転支援機能を抑制することを特徴としている。
【0008】
本発明に係る作業機械では、作業支援機能が有効に切り換えられた場合、制御装置は、監視範囲内であっても作業範囲外で検出された障害物については、作業支援機能が無効に切り換えられた場合に比べて運転支援機能を抑制する。このため、例えば作業支援機能が有効に切り替えられた場合、制御装置は監視範囲内であっても作業範囲外で検出された障害物について、作業支援機能が無効に切り替えられた場合と比べて報知音量を小さくしたり、減速係数を大きくしたりすることができる。その結果、オペレータの煩わしさを低減し、作業効率の低下を防ぐことが可能である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、運転支援機能及び作業支援機能を有する作業機械において、オペレータの煩わしさを低減し、作業効率の低下を防ぐことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係る油圧ショベルを示す側面図である。
【
図2】実施形態に係る油圧ショベルを示す平面図である。
【
図3】油圧ショベルのシステムを示す構成図である。
【
図4】油圧ショベルの運転支援機能を説明するための平面図である。
【
図5】油圧ショベルと障害物との間の距離と、報知音量との関係を示す図である。
【
図6】油圧ショベルと障害物との間の距離と、減速係数との関係を示す図である。
【
図7】運転支援機能に関わる制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図8】制御装置の運転支援機能の制御処理を示すフローチャートである。
【
図9】油圧ショベルの姿勢情報を説明するための側面図である。
【
図10】油圧ショベルの姿勢情報を説明するための平面図である。
【
図11】水平方向における作業範囲を説明するための図である。
【
図12】鉛直方向における作業範囲を説明するための図である。
【
図13】モニタにおける作業範囲の設定画面を示す図である。
【
図14】作業支援機能の減速係数を説明するための図である。
【
図15】作業支援機能に関わる制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図16】制御装置の作業支援の制御処理機能を示すフローチャートである。
【
図17】報知領域、減速領域及び作業範囲が設定された場合を説明するための図である。
【
図18】実施形態における油圧ショベルと障害物との間の距離と、報知音量との関係を示す図である。
【
図19】実施形態における油圧ショベルと障害物との間の距離と、減速係数との関係を示す図である。
【
図20】実施形態における運転支援機能及び作業支援機能に関わる制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図21】制御装置の運転支援機能及び作業支援機能の制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明に係る作業機械の実施形態について説明する。図面の説明において同一の要素には同一符号を付し、重複説明は省略する。また、以下の説明において、作業機械が油圧ショベルである例を挙げて説明するが、本発明は油圧ショベルに限定されず、油圧ショベル以外の作業機械にも適用される。更に、以下の説明では、上下、左右、前後の方向及び位置は、油圧ショベルの通常の使用状態、すなわち走行体が地面に接地する状態を基準とする。
【0012】
[油圧ショベルの構造について]
図1は実施形態に係る油圧ショベルを示す側面図である。本実施形態に係る油圧ショベル1は、左右側部のそれぞれに設けられる履帯を駆動させて走行する走行体2と、走行体2の上部に旋回可能に設けられる旋回体3と、作業フロントである作業機7とを備えている。そして、走行体2及び旋回体3は、油圧ショベル1の車体1Aを構成している。
【0013】
旋回体3は、運転室4、機械室5及びカウンタウェイト6を有する。運転室4は、旋回体3の左側部に設けられている。機械室5は、運転室4の後方に設けられている。カウンタウェイト6は、機械室5の後方、すなわち旋回体3の最後部に設けられている。
【0014】
作業機7は、運転室4の右側方であって旋回体3の前部の中央に設けられている。この作業機7は、ブーム8、アーム9、バケット10、ブーム8を駆動するためのブームシリンダ11、アーム9を駆動するためのアームシリンダ12、及びバケット10を駆動するためのバケットシリンダ13を有する。ブーム8の基端部は、ブームピンP1を介して旋回体3の前部に回動可能に取り付けられている。
【0015】
アーム9の基端部は、アームピンP2を介してブーム8の先端部に回動可能に取り付けられている。バケット10の基端部は、バケットピンP3を介してアーム9の先端部に回動可能に取り付けられている。ブームシリンダ11と、アームシリンダ12と、バケットシリンダ13とは、それぞれ圧油によって駆動される油圧アクチュエータ(以下、単に「アクチュエータ」という)である。
【0016】
旋回体3には、旋回モータ14が配置されている。旋回モータ14を駆動すると、旋回体3は走行体2に対して回転することになる。また、走行体2には、右走行モータ15aと左走行モータ15bとがそれぞれ配置されている。これらの走行モータ15a,15bを駆動すると、左右の履帯がそれぞれ駆動される。これによって、走行体2は前進又は後進することができる。なお、旋回モータ14、右走行モータ15a及び左走行モータ15bは、それぞれ圧油によって駆動される油圧アクチュエータ(以下、単に「アクチュエータ」という)である。
【0017】
機械室5の内部には、油圧ポンプ16とエンジン17とが配置されている(
図3参照)。運転室4の内部には車体傾斜センサ18、ブーム8にはブーム傾斜センサ19、アーム9にはアーム傾斜センサ20、バケット10にはバケット傾斜センサ21がそれぞれ取り付けられている。車体傾斜センサ18、ブーム傾斜センサ19、アーム傾斜センサ20、及びバケット傾斜センサ21は、例えばそれぞれIMU(Inertial Measurement Unit)からなる。車体傾斜センサ18は車体1Aの対地角度を、ブーム傾斜センサ19はブーム8の対地角度を、アーム傾斜センサ20はアーム9の対地角度を、バケット傾斜センサ21はバケット10の対地角度をそれぞれ計測する。
【0018】
また、旋回体3の後方部の左右側には、第一GNSS(Global Navigation Satellite System)アンテナ23と第二GNSSアンテナ24とが取り付けられている。第一GNSSアンテナ23及び第二GNSSアンテナ24から得られる信号により、グローバル座標系における油圧ショベル1の車体1Aの位置情報を取得することができる。
【0019】
図2は実施形態に係る油圧ショベルを示す平面図である。
図2に示すように、旋回体3には旋回角センサ22が取り付けられており、旋回角センサ22の信号により走行体2に対する旋回体3の相対角度を取得することができる。
【0020】
また、旋回体3には、油圧ショベル1の周囲の障害物を検知するための検知装置が複数設けられている。具体的には、旋回体3の前部には油圧ショベル1の前方の障害物を検知する前方検知装置25a、旋回体3の右側部には油圧ショベル1の右側方の障害物を検知する右側方検知装置25b、旋回体3の後部には油圧ショベル1の後方の障害物を検知する後方検知装置25c、旋回体3の左側部には油圧ショベル1の左側方の障害物を検知する左側方検知装置25dがそれぞれ取り付けられている。
【0021】
これらの検知装置25a~25dは、例えばステレオカメラからなり、油圧ショベル1と障害物との距離を計測する。なお、これらの検知装置は、ミリ波レーダやレーザレーダ、或いは磁場を使用した距離計測装置等であっても良い。なお、ここでの障害物は、作業者、通行人、樹木や建物や道路標識のような物体などを含む。
【0022】
図2において、符号26a~26dは各検知装置25a~25dによって検知される検知範囲を示す。すなわち、前方検知装置25aにより検知される範囲は前方検知範囲26a、右側方検知装置25bにより検知される範囲は右側方検知範囲26b、後方検知装置25cにより検知される範囲は後方検知範囲26c、左側方検知装置25dにより検知される範囲は左側方検知範囲26dである。
【0023】
図3は油圧ショベルのシステムを示す構成図である。
図3に示すように、ブームシリンダ11、アームシリンダ12、バケットシリンダ13、旋回モータ14、右走行モータ15a及び左走行モータ15bは、油圧ポンプ16によって吐出され、更に流量制御弁ユニット33内の各流量制御弁を通して供給された圧油によって駆動されている。流量制御弁は、油圧ポンプ16から供給される圧油の流量を制御するためのものであり、操作レバー32から出力された制御パイロット圧によって駆動されている。
【0024】
例えば旋回流量制御弁34は、旋回モータ14に対応する制御弁であり、旋回モータ14へ供給される圧油の流量を制御する。この旋回流量制御弁34が
図3中の左側へ移動すると、旋回モータ14が左回転するように圧油は供給される。旋回モータ14の回転速度は、旋回流量制御弁34の移動量によって制御されている。一方、旋回流量制御弁34が
図3中の右側へ移動すると、旋回モータ14が右回転するように圧油は供給される。
【0025】
旋回流量制御弁34の制御は、電磁比例減圧弁ユニット35内の電磁比例減圧弁によって行われている。電磁比例減圧弁は、制御装置27からの制御指令に応じてパイロット油圧ポンプ37から供給される圧油を減圧して流量制御弁に供給する。例えば旋回左電磁比例減圧弁36aを駆動すると、旋回流量制御弁34が
図3中の左側に移動するように圧油は供給される。一方、旋回右電磁比例減圧弁36bを駆動すると、旋回流量制御弁34が
図3中の右側に移動するように圧油は供給される。
【0026】
制御装置27は、例えば、演算を実行するCPU(Central Processing Unit)と、演算のためのプログラムを記録した二次記憶装置としてのROM(Read Only Memory)と、演算経過の保存や一時的な制御変数を保存する一時記憶装置としてのRAM(Random Access Memory)とを組み合わせてなるマイクロコンピュータにより構成されており、作業機7の動作制御を含めて油圧ショベル1全体の各制御を行う。例えば
図3に示すように、制御装置27は、操作レバー32、モニタ31、姿勢センサ30及び作業支援有効/無効スイッチ29から出力された信号に基づいて、電磁比例減圧弁ユニット35、油圧ポンプ16及びブザー28への制御信号をそれぞれ演算して出力する。
【0027】
操作レバー32は、運転室4の内部に配置されており、各アクチュエータ(すなわち、ブームシリンダ11、アームシリンダ12、バケットシリンダ13、旋回モータ14、右走行モータ15a及び左走行モータ15b)に対する操作量を制御装置27へ指示する。モニタ31は、運転室4の内部に配置されており、作業支援機能の作業範囲を設定するために使用されている。作業範囲の設定は例えばオペレータの手入力によって行われており、その詳細内容は後述する(
図13参照)。
【0028】
作業支援有効/無効スイッチ29は、運転室4の内部に配置されており、オペレータの操作で作業支援機能が有効と無効とに切り換えられるようになっている。姿勢センサ30は、例えば旋回角センサ22などからなる。ブザー28は、油圧ショベル1と障害物との距離に応じてオペレータに報知することで、オペレータの注意を喚起する。
【0029】
本実施形態において、制御装置27は、運転支援機能と作業支援機能とを有する。運転支援機能は、上述したように、油圧ショベル1に備え付けられた検知装置25a~25dを用いて油圧ショベル1の周囲の障害物を検知し、検知した障害物が予め設定された監視範囲内に存在するときに作業機7を減速し、又はオペレータに報知し、若しくはその両方の制御を行う機能である。一方、作業支援機能は、作業機7が予め設定された作業範囲外に逸脱することを防止する機能である。以下、それらを詳細に説明する。
【0030】
[油圧ショベルの運転支援機能について]
まず、油圧ショベル1の運転支援機能について説明する。
【0031】
図4は油圧ショベルの運転支援機能を説明するための平面図である。
図4中の斜線で示す領域39は減速領域であり、この領域内に障害物が存在する場合は、作業機7の動作が減速させられるとともにブザー28からオペレータに向けて報知音が発せられる。また、
図4において、減速領域39を取り囲むように四角い枠で囲んだ領域38は報知領域である。この報知領域38内に障害物が存在する場合は、ブザー28から報知音が発せられる。なお、報知領域38及び減速領域39は上述の監視範囲を構成する。
【0032】
図5は油圧ショベルと障害物との間の距離と、報知音量との関係を示す図である。
図5において、横軸の「距離」は油圧ショベルと障害物との間の距離の略である。
図5に示すように、通常では、ブザーの報知音量は油圧ショベルと障害物との距離に応じて定められている。例えば減速領域内での報知音量を1としたときに、報知領域内での報知音量は減速領域内での報知音量よりも小さく設定されている。このように領域によって報知音量を変更することで、オペレータは音量の違いで障害物がどの位置に存在するかを直観的に理解することが可能である。
【0033】
図6は油圧ショベルと障害物との間の距離と、減速係数との関係を示す図である。
図6において、横軸の「距離」は油圧ショベルと障害物との間の距離の略である。
図6に示すように、通常では、減速領域内に障害物が存在する場合、距離が短くなるにつれてアクチュエータの減速係数が小さくなり、これによって作業機の動きが緩やかになる(言い換えれば、作業機の動きが遅くなる)。このようにすれば、油圧ショベルと障害物との接触を防止することが可能である。
【0034】
ここで、減速係数とは、操作レバーの操作量によって決まるアクチュエータの要求速度をどの程度減速させるかの程度である。そして、制限速度は要求速度と減速係数の積で求めることができる。例えば、減速係数が1の場合はアクチュエータの要求速度は制限されず、減速係数が0の場合は制限速度が0となり、アクチュエータの動作は停止することになる。
【0035】
図7は運転支援機能に関わる制御装置の構成を示すブロック図である。
図7に示すように、制御装置27の運転支援機能は、減速係数演算部40、要求速度演算部41、制限速度演算部42及び流量制御弁制御部43によって実現されている。
【0036】
減速係数演算部40は、検知装置25a~25dからの検知情報に基づいて減速係数を演算する。要求速度演算部41は、操作レバー32からの操作量(すなわち、操作レバー32から出力された操作信号)に基づいて各アクチュエータの要求速度を演算する。制限速度演算部42は、減速係数演算部40が出力した減速係数と要求速度演算部41が出力した要求速度を掛け合わせることにより、各アクチュエータの制限速度を演算する。
【0037】
流量制御弁制御部43は、制限速度演算部42が出力した制限速度に基づいて各アクチュエータに対応する流量制御弁の制御量を演算し、更に各アクチュエータに対応する電磁比例減圧弁への制御指令を出力する。
【0038】
図8は制御装置の運転支援機能の制御処理を示すフローチャートである。
図8に示すように、ステップS101では、制御装置27は検知装置25a~25dからの出力があるか否かを判定する。出力がないと判定された場合、制御処理は終了する。一方、出力があると判定された場合、制御処理はステップS102に進む。ステップS102では、制御装置27は障害物が減速領域39内に存在するか否かを判定する。
【0039】
障害物が減速領域39内に存在しないと判定した場合、制御装置27は報知音を出力する制御指令をブザー28に送信し、ブザー28は、例えば
図5に示すように設定された報知音量で報知音を発する(ステップS105参照)。これによって、制御処理が終了する。一方、障害物が減速領域39内に存在すると判定された場合、制御処理はステップS103に進む。ステップS103では、減速係数演算部40は、例えば
図6に示すように障害物との距離に基づいて各アクチュエータの減速係数を演算する。
【0040】
ステップS103に続くステップS104では、制御装置27は、制限速度での制御指令と報知音をそれぞれ出力する。より具体的には、このとき、要求速度演算部41は操作レバー32からの操作量に基づいて各アクチュエータの要求速度を演算し、制限速度演算部42は減速係数演算部40が出力した減速係数と要求速度演算部41が出力した要求速度を掛け合わせることにより各アクチュエータの制限速度を演算する。
【0041】
流量制御弁制御部43は、制限速度演算部42が出力した制限速度に基づいて各アクチュエータの流量制御弁の制御量を演算し、各アクチュエータに対応した電磁比例減圧弁に制御指令を出力する。そして、制御装置27は報知音を出力する制御指令をブザー28に送信する。これによって、ブザー28は、例えば
図5に示すように設定された報知音量で報知音を発する。ステップS104が終わると、一連の制御処理が終了する。
【0042】
[油圧ショベルの作業支援機能について]
次に、油圧ショベル1の作業支援機能について説明する。油圧ショベル1の作業支援機能は、油圧ショベル1の姿勢情報に基づいて実現されている。以下、
図9及び
図10を参照して、先に本実施形態に係る油圧ショベル1の姿勢情報を説明する。
【0043】
図9は油圧ショベルの姿勢情報を説明するための側面図である。
図9に示す座標系は、油圧ショベル1の基準位置P0を原点、水平方向をX軸、鉛直方向をZ軸としたローカル座標系である。なお、グローバル座標系における油圧ショベル1の基準位置P0は、第一GNSSアンテナ23及び第二GNSSアンテナ24の情報から求めることができる。
【0044】
図9に示すように、油圧ショベル1の基準位置P0からブームピンP1までの距離はL0である。基準位置P0及びブームピンP1を結ぶ線分と、車体1Aの垂直方向(言い換えれば、車体1Aの上下方向)とがなす角度はθ0である。ブーム8の長さ、すなわち、ブームピンP1からアームピンP2までの距離はL1である。アーム9の長さ、すなわち、アームピンP2からバケットピンP3までの距離はL2である。バケット10の長さ、すなわち、バケットピンP3からバケット爪先P4までの距離はL3である。
【0045】
また、ローカル座標系における車体1Aの傾斜、すなわちZ軸と車体1Aの垂直方向とがなす角度はθ4であり、以下、それを車体前後傾斜θ4という。そして、ブームピンP1及びアームピンP2を結ぶ線分と、車体1Aの垂直方向とがなす角度がθ1であり、以下、それをブーム角度θ1という。また、アームピンP2及びバケットピンP3を結ぶ線分と、ブームピンP1及びアームピンP2を結ぶ線分とがなす角度がθ2であり、以下、それをアーム角度θ2という。更に、バケットピンP3及びバケット爪先P4を結ぶ線分と、アームピンP2及びバケットピンP3を結ぶ線分とがなす角度がθ3であり、以下、それをバケット角度θ3という。
【0046】
従って、例えばバケット爪先P4を作業支援の制御対象とした場合、基準位置P0に対するバケット爪先P4の座標(すなわち、ローカル座標系における座標)は、基準位置P0からブームピンP1までの距離L0、基準位置P0及びブームピンP1を結ぶ線分と車体1Aの垂直方向とがなす角度θ0、車体前後傾斜θ4、ブーム長さL1、ブーム角度θ1、アーム長さL2、アーム角度θ2、バケット長さL3、バケット角度θ3に基づいて三角関数を利用して求めることが可能である。
【0047】
また、例えばアームシリンダ12のロッド側(すなわち、アーム9に隣接する側)のピンP5を制御点とした場合、ピンP5の座標は、前述した各値に加えてアームピンP2からアームシリンダロッド側のピンP5までの距離L5、ブームピンP1及びアームピンP2を結ぶ線分とアームピンP2及びアームシリンダのロッド側のピンP5を結ぶ線分とがなす角度θ5に基づいて、三角関数を利用して求めることが可能である。
【0048】
図10は油圧ショベルの姿勢情報を説明するための平面図である。
図10に示すように、油圧ショベル1の基準位置P0を基準にして前後方向をX軸、左右方向をY軸としたときに、油圧ショベル1の旋回角度θswは、作業機7の延び方向とX軸とがなす角度であり、反時計回りを正とする。
【0049】
上述のローカル座標におけるバケット爪先P4の座標は、基準位置P0からバケット爪先P4までの距離Lと旋回角度θswとの三角関数によって求めることが可能である。なお、基準位置P0からバケット爪先P4までの距離Lは、上述した油圧ショベル1の姿勢情報を用いた三角関数によって求めることが可能である。
【0050】
続いて、
図11及び
図12を参照して作業支援機能に関する作業範囲を説明する。
【0051】
図11は水平方向における作業範囲を説明するための図である。
図11に示すように、油圧ショベル1の基準位置P0を基準にして、前方作業範囲外縁44と右側方作業範囲外縁45と後方作業範囲外縁46と左側方作業範囲外縁47とによって囲まれる領域(斜線で示す領域)50は、水平方向における油圧ショベル1の作業範囲である。作業時に、油圧ショベル1の制御点が作業範囲50の外方に逸脱しないように、各アクチュエータは制御される。
【0052】
ここで、基準位置P0を基準にするので、油圧ショベル1が走行動作をした場合、油圧ショベル1の移動に伴って作業範囲50も移動する。なお、作業範囲50はグローバル座標で定義されても良く、その場合は油圧ショベル1が移動した場合でも作業範囲50は固定されている。
【0053】
図12は鉛直方向における作業範囲を説明するための図である。
図12に示すように、鉛直方向において、基準位置P0を基準にして、上方作業範囲外縁48と下方作業範囲外縁49との間の領域(斜線で示す領域)50は、鉛直方向における油圧ショベル1の作業範囲である。
【0054】
図13はモニタにおける作業範囲の設定画面を示す図である。
図13に示すように、オペレータは、モニタ31を介して基準位置P0から右側方作業範囲外縁45、左側方作業範囲外縁47、前方作業範囲外縁44、後方作業範囲外縁46、上方作業範囲外縁48及び下方作業範囲外縁49までの距離をそれぞれ設定することが可能である。すなわち、オペレータはモニタ31を介して各値を入力することにより各距離を設定する。なお、値の入力がない場合は設定範囲が無限遠となる。また、値が入力されなかった方向に関しては各アクチュエータは制御されない。
【0055】
図14は作業支援機能の減速係数を説明するための図である。
図14の上段に示すように、例えばバケット爪先P4が下方作業範囲外縁49に接近する場合、バケット爪先P4の座標は上述した油圧ショベル1の姿勢情報の三角関数によって計算される。バケット爪先P4のZ軸の座標と下方作業範囲外縁49の設定距離との差は、バケット爪先P4と下方作業範囲外縁49との距離Dになる。
【0056】
また、
図14の下段に示すように、作業範囲外縁に接近する速度を減速する減速係数が距離Dの値に応じて計算され、減速係数を乗算した制限速度で各アクチュエータを駆動することにより、油圧ショベル1の制御点が作業範囲から逸脱することを防止することが可能である。
【0057】
また、例えば、上方作業範囲外縁48に対して、アームシリンダ12のロッド側のピンP5を制御点とした場合は、上述したバケット爪先P4の場合と同様の計算により、該制御点が作業範囲から逸脱することを防止できる。なお、複数の作業点の動作が同時に制限された場合は、制限速度の小さい方に従って各アクチュエータは制御される。
【0058】
図15は作業支援機能に関わる制御装置の構成を示すブロック図である。
図15に示すように、制御装置27の作業支援機能は、距離演算部51、減速係数演算部40、要求速度演算部41、制限速度演算部42及び流量制御弁制御部43によって実現されている。
【0059】
要求速度演算部41は、操作レバー32からの操作量(すなわち、操作レバー32から出力された操作信号)に基づいて各アクチュエータの要求速度を演算する。距離演算部51は、制御点の位置情報(例えば、制御点の座標)と作業範囲の情報と要求速度演算部41から出力された要求速度に基づいて、制御点と作業範囲外縁との距離を演算する。ここで、要求速度は制御点の移動方向を計算するために使用されており、制御点の移動方向にある作業範囲外縁との距離が演算される。
【0060】
減速係数演算部40は、距離演算部51から出力された距離に基づいて、各アクチュエータの減速係数を演算する。制限速度演算部42は、減速係数演算部40から出力された減速係数と要求速度演算部41から出力された要求速度と作業支援有効/無効スイッチ29からの出力に基づいて、各アクチュエータの制限速度を演算する。流量制御弁制御部43は、制限速度演算部42から出力された制限速度に基づいて各アクチュエータに対応する流量制御弁の制御量を演算し、更に各アクチュエータに対応する電磁比例減圧弁への制御指令を出力する。
【0061】
図16は制御装置の作業支援機能の制御処理を示すフローチャートである。
図16に示すように、ステップS201では、制御装置27は車体傾斜センサ18、ブーム傾斜センサ19、アーム傾斜センサ20、及びバケット傾斜センサ21から制御点の位置情報を取得する。ステップS201に続くステップS202では、制御装置27は、オペレータがモニタ31に入力して設定した作業範囲50の情報を取得する。
【0062】
ステップS202に続くステップS203では、制御装置27は操作レバー32からの操作量を取得する。ステップS203に続くステップS204では、要求速度演算部41は、ステップS203で取得した操作レバー32の操作量に基づいて各アクチュエータの要求速度を演算する。
【0063】
ステップS204に続くステップS205では、距離演算部51は、制御点の位置情報と作業範囲50の情報と要求速度演算部41から出力された要求速度に基づいて、制御点と要求速度方向の作業範囲外縁との距離を演算する。ステップS205に続くステップS206では、減速係数演算部40はステップS205で演算された距離に基づいて各アクチュエータの減速係数を演算する。
【0064】
ステップS206に続くステップS207では、制御装置27は作業支援機能が有効か否かを判定する。なお、作業支援機能が有効又は無効は、オペレータによる作業支援有効/無効スイッチ29への操作によって切り換えられる。そして、作業支援機能が有効でないと判定された場合(すなわち、作業支援機能が無効に切り換えられた場合)、制御処理はステップS209に進む。ステップS209では、制御装置27は、ステップS204で演算された各アクチュエータの要求速度を出力する。
【0065】
一方、作業支援機能が有効であると判定された場合(すなわち、作業支援機能が有効に切り換えられた場合)、制御処理はステップS208に進む。ステップS208では、制限速度演算部42は、ステップS204で演算された要求速度とステップS206で演算された減速係数等に基づいて各アクチュエータの制限速度を演算し、出力する。
【0066】
ステップS208又はステップS209に続くステップS210では、流量制御弁制御部43は、ステップS208で出力された制限速度又はステップS209で出力された要求速度に基づいて、各アクチュエータに対応する流量制御弁の制御量を演算し、更に各アクチュエータに対応する電磁比例減圧弁への制御指令を出力する。ステップS210が終わると、一連の制御処理が終了する。
【0067】
[油圧ショベルの運転支援機能及び作業支援機能について]
次に、油圧ショベル1の運転支援機能及び作業支援機能について説明する。
【0068】
図17は報知領域、減速領域及び作業範囲が設定された場合を説明するための図である。
図17において、斜線で示す領域39は減速領域であり、四角い枠で囲んだ領域38は報知領域であり、斜線で示す領域50は作業範囲である。
図17の例では、報知領域38と減速領域39は、作業範囲50と重なる領域と、作業範囲50と重ならない領域とをそれぞれ有する。
【0069】
図18は実施形態における油圧ショベルと障害物との間の距離と、報知音量との関係を示す図である。
図18において、横軸の「距離」は油圧ショベルと障害物との間の距離の略である。
図18に示すように、作業範囲外縁よりも遠い距離における報知領域において、作業範囲が設定されていない場合(言い換えれば、作業支援機能が無効に切り換えられた場合)よりも作業範囲が設定されている場合(言い換えれば、作業支援機能が有効に切り換えられた場合)の方は報知音量が小さくなるように設定されている。
【0070】
このようにすれば、作業範囲が設定されていない場合に比べて作業範囲が設定されている場合に、作業範囲外での報知機能(運転支援機能)が抑制される(すなわち、報知音量を小さくする)。好適には、作業範囲外縁よりも遠い距離における報知領域において、障害物と作業範囲外縁との距離が小さいほど、報知機能の抑制度合が小さくなる。言い換えれば、障害物と作業範囲外縁との距離が小さいほど、報知音量の下げ幅が小さくなる。
【0071】
図19は実施形態における油圧ショベルと障害物との間の距離と、減速係数との関係を示す図である。
図19において、横軸の「距離」は油圧ショベルと障害物との間の距離の略である。
図19に示すように、作業範囲外縁よりも遠い距離における減速領域において、作業範囲が設定されていない場合(言い換えれば、作業支援機能が無効に切り換えられた場合)よりも作業範囲が設定されている場合(言い換えれば、作業支援機能が有効に切り換えられた場合)の方は減速係数が大きくなるように設定されている。
【0072】
このようにすることで、作業範囲が設定されていない場合に比べて作業範囲が設定されている場合に、作業範囲外での減速機能(運転支援機能)が抑制される(すなわち、減速度を弱める)。好適には、作業範囲外縁よりも遠い距離における報知領域において、障害物と作業範囲外縁との距離が小さいほど、減速機能の抑制度合が小さくなる。すなわち、障害物と作業範囲外縁との距離が小さいほど、減速度を弱めていく。
【0073】
図20は実施形態における運転支援機能及び作業支援機能に関わる制御装置の構成を示すブロック図である。
図20に示すように、制御装置27の運転支援機能及び作業支援機能は、減速係数演算部40、要求速度演算部41、制限速度演算部42及び流量制御弁制御部43によって実現されている。
【0074】
減速係数演算部40は、検知装置25a~25dからの検知情報、作業範囲50の情報及び作業支援有効/無効スイッチ29からの出力に基づいて、各アクチュエータの減速係数を演算する。要求速度演算部41は、操作レバー32からの操作量に基づいて各アクチュエータの要求速度を演算する。
【0075】
制限速度演算部42は、減速係数演算部40から出力された減速係数と要求速度演算部41から出力された要求速度に基づいて、各アクチュエータの制限速度を演算する。流量制御弁制御部43は、制限速度演算部42が出力した制限速度に基づいて各アクチュエータに対応する流量制御弁の制御量を演算し、更に各アクチュエータに対応する電磁比例減圧弁への制御指令を出力する。
【0076】
図21は制御装置の運転支援機能及び作業支援機能の制御処理を示すフローチャートである。
図21に示すように、ステップS301では、制御装置27は検知装置25a~25dからの出力があるか否かを判定する。出力がないと判定された場合、制御処理は終了する。一方、出力があると判定された場合、制御処理はステップS302に進む。ステップS302では、制御装置27は作業支援機能が有効か否かを判定する。このとき、制御装置27は作業支援有効/無効スイッチ29から出力された信号に基づいて判定を行う。
【0077】
作業支援機能が有効でないと判定された場合(すなわち、作業支援機能が無効に切り換えられた場合或いは作業範囲が設定されていない場合)、制御処理は後述のステップS304に進む。一方、作業支援機能が有効であると判定された場合(すなわち、作業支援機能が有効に切り換えられた場合或いは作業範囲が設定されている場合)、制御処理はステップS303に進む。ステップS303では、制御装置27は障害物が作業範囲50内に存在するか否かを判定する。そして、障害物が作業範囲50内に存在しないと判定された場合、制御処理は後述のステップS308に進む。
【0078】
一方、障害物が作業範囲50内に存在すると判定された場合、制御処理はステップS304に進む。ステップS304では、制御装置27は障害物が減速領域39内に存在するか否かを判定する。そして、障害物が減速領域39内に存在しないと判定した場合、制御装置27は通常の報知音を出力する制御指令をブザー28に送信し、ブザー28は設定された報知音量で報知音を発する(ステップS307参照)。これによって、制御処理が終了する。なお、ここでの「通常の報知音」は、上述した運転支援の制御処理のステップS105で設定された報知音であり、すなわち
図5に示すように通常の運転支援時に設定された報知音である。
【0079】
一方、ステップS304において障害物が減速領域39内に存在すると判定された場合、制御処理はステップS305に進む。ステップS305では、減速係数演算部40は、障害物との距離に基づいて各アクチュエータにおける通常の減速係数を演算する。ここでの「通常の減速係数」は、上述した運転支援の制御処理のステップS103で演算された減速係数であり、すなわち
図6に示すように通常の運転支援時の減速係数である。
【0080】
ステップS305に続くステップS306では、制御装置27は、制限速度での制御指令と通常の報知音をそれぞれ出力する。より具体的には、このとき、要求速度演算部41は操作レバー32からの操作量に基づいて各アクチュエータの要求速度を演算し、制限速度演算部42は減速係数演算部40から出力された減速係数と要求速度演算部41から出力された要求速度に基づいて各アクチュエータの制限速度を演算する。
【0081】
流量制御弁制御部43は、制限速度演算部42が出力した制限速度に基づいて各アクチュエータに対応する流量制御弁の制御量を演算し、各アクチュエータに対応する電磁比例減圧弁への制御指令を出力する。そして、制御装置27は報知音を出力する制御指令をブザー28に送信する。これによって、ブザー28は、例えば
図5に示すように設定された通常の報知音を発する。ステップS306が終わると、一連の制御処理が終了する。
【0082】
一方、上述したステップS303において障害物が作業範囲内に存在しないと判定された場合、制御処理はステップS308に進む。ステップS308では、制御装置27は障害物が減速領域39内に存在するか否かを判定する。そして、障害物が減速領域39内に存在しないと判定した場合、制御装置27は抑制された報知音を出力する制御指令をブザー28に送信し、ブザー28は抑制された報知音を発する(ステップS311参照)。これによって、制御処理が終了する。なお、ここでの「抑制された報知音」は、報知音量が通常の運転支援時に設定された報知音よりも小さい報知音であり、例えば
図18に示すように設定された音量の報知音である。
【0083】
一方、ステップS308において障害物が減速領域39内に存在すると判定された場合、制御処理はステップS309に進む。ステップS309では、減速係数演算部40は、障害物との距離に基づいて各アクチュエータの抑制された減速係数を演算する。ここでの「抑制された減速係数」は、通常の運転支援時の減速係数よりも大きい減速係数(すなわち、減速の度合を小さくするもの)であり、例えば
図19に示すように設定された減速係数である。
【0084】
ステップS309に続くステップS310では、制御装置27は、制限速度での制御指令と抑制された報知音をそれぞれ出力する。より具体的には、このとき、要求速度演算部41は操作レバー32からの操作量に基づいて各アクチュエータの要求速度を演算し、制限速度演算部42は減速係数演算部40からの抑制された減速係数と要求速度演算部41から出力された要求速度に基づいて各アクチュエータの制限速度を演算する。
【0085】
流量制御弁制御部43は、制限速度演算部42が出力した制限速度に基づいて各アクチュエータに対応する流量制御弁の制御量を演算し、各アクチュエータに対応する電磁比例減圧弁への制御指令を出力する。そして、制御装置27は抑制された報知音を出力する制御指令をブザー28に送信する。これによって、ブザー28は抑制された報知音を発する。ステップS310が終わると、一連の制御処理が終了する。
【0086】
本実施形態に係る油圧ショベル1によれば、作業支援機能が有効であると判定された場合において、障害物が減速領域39内であっても作業範囲50外に存在するときに、制御装置27は作業支援機能が無効であると判定された場合と比べて、各アクチュエータの減速係数と報知音を抑制することにより、オペレータの煩わしさを低減し、作業効率の低下を防ぐことができる。
【0087】
加えて、作業支援機能が有効であると判定された場合において、障害物が作業範囲50外であって且つ減速領域39外に存在するときに、制御装置27は作業支援機能が無効であると判定された場合と比べて、報知音を抑制することにより、オペレータの煩わしさを低減し、作業効率の低下を防ぐことができる。
【0088】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
【符号の説明】
【0089】
1 油圧ショベル
7 作業機
25a 前方検知装置
25b 右側方検知装置
25c 後方検知装置
25d 左側方検知装置
26a 前方検知範囲
26b 右側方検知範囲
26c 後方検知範囲
26d 左側方検知範囲
27 制御装置
28 ブザー
29 作業支援有効/無効スイッチ
30 姿勢センサ
31 モニタ
32 操作レバー
38 報知領域
39 減速領域
44 前方作業範囲外縁
45 右側方作業範囲外縁
46 後方作業範囲外縁
47 左側方作業範囲外縁
48 上方作業範囲外縁
49 下方作業範囲外縁
50 作業範囲
51 距離演算部