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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】熱安定性CAS9ヌクレアーゼ
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20221125BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20221125BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20221125BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20221125BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20221125BHJP
   C07K 14/195 20060101ALI20221125BHJP
   C12N 9/16 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
C12N15/09 110
C12N15/11 Z ZNA
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C07K19/00
C07K14/195
C12N9/16 Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019533096
(86)(22)【出願日】2016-12-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-02-13
(86)【国際出願番号】 EP2016081077
(87)【国際公開番号】W WO2018108272
(87)【国際公開日】2018-06-21
【審査請求日】2019-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】519213698
【氏名又は名称】ヴァーヘニンゲン ユニヴェルシテット
(73)【特許権者】
【識別番号】513175723
【氏名又は名称】スティッチング フォール デ テクニッシュ ウェテンスシャペン
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126354
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ファン デル ウースト,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ファン クラーネンブルク,リチャード
(72)【発明者】
【氏名】ボスマ,エレッケ,フェンナ
(72)【発明者】
【氏名】モウギアコス,イオアニス
【審査官】田中 晴絵
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-537724(JP,A)
【文献】特開2006-230303(JP,A)
【文献】特表2010-510776(JP,A)
【文献】UniProtKB,[online],A0A178TEJ9_GEOSE,検索日[2020/12/01],2016年11月02日,<https://www.uniprot.org/uniprot/A0A178TEJ9.txt?version=3>
【文献】Molecular Cell,2016年04月07日,vol.62,p.137-147
【文献】Genome Biology,2015年,16:253,1-13
【文献】Biotechnology for Biofuels,2016年10月06日,volume 9, Article number: 210,1-13
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Casタンパク質、二本鎖標的ポリヌクレオチドにおいて標的核酸配列を認識する少なくとも1つのターゲティングRNA分子、および前記標的ポリヌクレオチドを含む、核タンパク質複合体であって、
前記Casタンパク質が、配列番号1のアミノ酸配列を有し、30℃から80℃までの範囲の温度で前記二本鎖標的ポリヌクレオチドに結合し、核酸を切断し、標識し、または改変することが可能であり、
前記二本鎖標的ポリヌクレオチドが、前記標的核酸配列を含む標的核酸鎖、ならびに前記標的核酸配列に相補的であるプロトスペーサー核酸配列および前記プロトスペーサー配列の3’末端に直接隣接するプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列を含む非標的核酸鎖を含み、前記PAM配列が5’-NNNNCNN-3’を含む、核タンパク質複合体。
【請求項2】
前記結合、切断、標識、もしくは改変、または核タンパク質複合体が、55℃から65℃までの範囲の温度で形成される、請求項1に記載の核タンパク質複合体。
【請求項3】
前記標的核酸配列を含む前記二本鎖標的ポリヌクレオチドが前記Casタンパク質により切断される、請求項1または2に記載の核タンパク質複合体。
【請求項4】
前記標的核酸配列を含む前記標的ポリヌクレオチドが二本鎖DNAであり、前記結合、切断、標識または改変が、前記標的ポリヌクレオチド中の二本鎖切断をもたらす、請求項1から3のいずれかに記載の核タンパク質複合体。
【請求項5】
前記Casタンパク質が、前記二本鎖DNAを切断するヌクレアーゼ活性を欠き、それでもなお前記標的ポリヌクレオチドの遺伝子サイレンシングがもたらされる、請求項に記載の核タンパク質複合体。
【請求項6】
前記PAM配列が、5’-NNNNCNNA-3’、5’-CNNNCNN-3’、5’-NNNCCNN-3’、5’-NNCNCNN-3’、5’-NNNNCCN-3’、5’-NCNNCNN-3’、5’-CCCCCCNA-3’[配列番号10]、または5’-CCCCCCAA-3’[配列番号11]を含む、請求項1から5のいずれかに記載の核タンパク質複合体。
【請求項7】
前記ターゲティングRNA分子が、crRNAおよびtracrRNAを含む、請求項1から6のいずれかに記載の核タンパク質複合体。
【請求項8】
前記少なくとも1つのターゲティングRNA分子の長さが、35~200ヌクレオチド残基の範囲である、または
前記標的核酸配列が、15~32ヌクレオチド残基長である、請求項1から7のいずれかに記載の核タンパク質複合体。
【請求項9】
前記Casタンパク質が、ヘリカーゼ、ヌクレアーゼ、ヘリカーゼ-ヌクレアーゼ、DNAメチラーゼ、ヒストンメチラーゼ、アセチラーゼ、ホスファターゼ、キナーゼ、転写(共)活性化因子、転写リプレッサー、DNA結合タンパク質、DNA構築タンパク質、マーカータンパク質、レポータータンパク質、蛍光タンパク質、リガンド結合タンパク質、シグナルペプチド、細胞内局在配列、抗体エピトープ親和性精製タグ、または緑色蛍光タンパク質(GFP)から選択される少なくとも1つの機能的部分をさらに含む、請求項1から8のいずれかに記載の核タンパク質複合体。
【請求項10】
二本鎖標的ポリヌクレオチドに結合する、これを切断する、標識するまたは改変するインビトロまたはエキソビボの方法であって、前記二本鎖標的ポリヌクレオチドが、標的核酸配列を含む標的核酸鎖、および前記標的核酸配列に相補的であるプロトスペーサー核酸配列を含む非標的核酸を含み、前記方法が、
a.少なくとも1つのターゲティングRNA分子を設計するステップであって、前記ターゲティングRNA分子が、前記標的核酸鎖の前記標的核酸配列を認識し、前記非標的核酸鎖が、前記プロトスペーサー配列の3’末端に直接隣接するプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列をさらに含み、前記PAM配列が、5’-NNNNCNN-3’を含む、ステップ、
b.前記ターゲティングRNA分子およびCasタンパク質を含むリボ核タンパク質複合体を形成するステップであって、前記Casタンパク質が、配列番号1のアミノ酸配列を有し、30℃から80℃までの範囲の温度で標的ポリヌクレオチドに結合し、標的ポリヌクレオチドを切断し、標識し、または改変することが可能ある、ステップ、および
c.前記リボ核タンパク質複合体が、前記標的ポリヌクレオチドに結合する、これを切断する、標識するまたは改変する、ステップ
を含む方法。
【請求項11】
請求項10に記載の、二本鎖標的ポリヌクレオチドに結合する、これを切断する、標識するまたは改変するインビトロまたはエキソビボの方法であって、
前記PAM配列が、5’-NNNNCNNA-3’、5’-CNNNCNN-3’、5’-NNNCCNN-3’、5’-NNCNCNN-3’、5’-NNNNCCN-3’、5’-NCNNCNN-3’、5’-CCCCCCNA-3’[配列番号10]、または5’-CCCCCCAA-3’[配列番号11]を含む、方法。
【請求項12】
標的核酸配列を含む二本鎖標的ポリヌクレオチドに結合する、これを切断する、標識するまたは改変するための、少なくとも1つのターゲティングRNA分子およびCasタンパク質のインビトロまたはエキソビボでの使用であって、
前記二本鎖標的ポリヌクレオチドが、前記標的核酸配列を含む標的核酸鎖、および前記標的核酸配列に相補的であるプロトスペーサー核酸配列を含む非標的核酸鎖を含み、
前記Casタンパク質が、配列番号1のアミノ酸配列を有し、30℃から80℃までの範囲の温度で二本鎖標的ポリヌクレオチドに結合し、二本鎖標的ポリヌクレオチドを切断し、標識し、または改変することが可能あり、
前記少なくとも1つのターゲティングRNA分子が、前記標的核酸配列を認識し、
前記非標的核酸鎖が、前記プロトスペーサー核酸配列の3’末端に直接隣接するプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列をさらに含み、前記PAM配列が、5’-NNNNCNN-3’を含む、使用。
【請求項13】
請求項12に記載のインビトロまたはエキソビボの使用であって、
前記PAM配列が、5’-NNNNCNNA-3’、5’-CNNNCNN-3’、5’-NNNCCNN-3’、5’-NNCNCNN-3’、5’-NNNNCCN-3’、5’-NCNNCNN-3’、5’-CCCCCCNA-3’[配列番号10]、または5’-CCCCCCAA-3’[配列番号11]を含む、使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子工学の分野に関し、さらに詳細には核酸編集およびゲノム改変に関する。本発明は、遺伝物質の配列依存部位特異的結合、ニッキング、切断および改変のために構成することができるヌクレアーゼ;その上、遺伝物質の配列特異的部位に活性、特にヌクレアーゼ活性を働かせるリボ核タンパク質、ならびにマーカーとして使用するための修飾ヌクレアーゼおよびリボ核タンパク質の形態での遺伝子工学ツールに関する。したがって、本発明は、細胞内でのヌクレアーゼおよびガイドRNAの送達および発現のための関連発現構築物にも関する。さらに、本発明は、in vitroまたはin vivoでの核酸の配列特異的編集およびそれを達成するのに使用される方法に関する。本発明が関係する特定の分野は、好熱性生物、特に微生物の遺伝子操作である。
【背景技術】
【0002】
CRISPR-Casが多くの細菌および大半の古細菌での適応免疫系であることは2007年に初めて実証された(Barrangou et al., 2007, Science 315: 1709-1712)、Brouns et al., 2008, Science 321: 960-964)。機能的および構造的判断基準に基づいて、3種類のCRISPR-Cas系がこれまで特徴付けられており、その大半が相補的DNA配列を標的にするためのガイドとして小型RNA分子を使用している(Makarova et al., 2011, Nat Rev Microbiol 9: 467-477;Van der Oost et al., 2014, Nat Rev Microbiol 12: 479-492)。
【0003】
Doudna/Charpentier研究室による最近の研究では、II型CRISPR-Cas系(Cas9)のエフェクター酵素の徹底的な特徴付けが実施され、設計されたCRISPR RNAガイド(特異的スペーサー配列を有する)の導入によりプラスミド上の相補的配列(プロトスペーサー)が標的にされ、このプラスミドの二本鎖切断が引き起こされることが実証された(Jinek et al., 2012, Science 337: 816-821)。Jinek et al., 2012に続いて、Cas9はゲノム編集のためのツールとして使用される。
【0004】
Cas9は様々な真核細胞(例えば、魚、植物、ヒト)のゲノムを操作するのに使用されてきた(Charpentier and Doudna, 2013, Nature 495: 50-51)。
【0005】
さらに、Cas9は、特定の組換え事象を選び出すことにより細菌での相同組換えの収率を改善するのに使用されてきた(Jiang et al., 2013, Nature Biotechnol 31: 233-239)。これを達成するためには、毒性断片(ターゲティング構築物)に所望の変化をもつレスキュー断片(編集構築物、点突然変異または欠失を有する)を共トランスフェクトする。ターゲティング構築物は、デザインCRISPRと組み合わせたCas9および宿主染色体上で所望の組換え部位を規定する抗生物質耐性マーカーからなり、対応する抗生物質の存在下では宿主染色体でのターゲティング構築物の組込みが選択される。CRISPR標的部位を有する編集構築物の追加の組換えが宿主染色体で起こる場合のみ、宿主は自己免疫問題から逃れることが可能である。したがって、抗生物質の存在下では、所望の(マーカーなし)突然変異体のみが生き延びて成長することができる。染色体から組み込まれたターゲティング構築物のその後の除去を選ぶ関連戦略も提起されており、本物のマーカーなし突然変異体を生み出している。
【0006】
CRISPR-Cas媒介ゲノム編集は遺伝子工学のための有用なツールを成すことが近年確立された。原核生物CRISPR系が適応免疫系としてその宿主に役立ち(Jinek et al., 2012, Science 337: 816-821)、迅速で効果的な遺伝子工学のために使用することが可能であり(例えば、Mali et al., 2013, Nat Methods 10:957-963)、目的の配列を標的にするためにはガイド配列の改変のみが必要であることが確立されている。
【0007】
しかし、遺伝子研究およびゲノム編集の分野での応用のために種々の実験条件下で改良された配列特異的核酸検出、切断および操作ができる作用因子の開発の必要性が続けて存在している。特に、Cas9を含む現在利用可能な配列特異的ゲノム編集ツールは、あらゆる条件または生物での使用に適用可能なわけではなく、例えば、配列特異的ヌクレアーゼは相対的に熱感受性であり、したがって、厳密に好熱性の微生物(41℃と122℃の間で成長することができ、最適には45℃超から80℃の温度範囲で成長し、超好熱菌は80℃より上で最適成長できる)、例えば、工業用発酵においてまたは高温で行われるin vitro実験工程のために使用される微生物での使用には適用可能ではない。
【0008】
好熱菌において活性Cas9タンパク質についての実験的証拠は現在まで存在しない。細菌におけるCas9の存在下でのChylinski et al. (2014; Nucleic Acids Research 42: 6091-6105)による比較ゲノムスクリーニングに基づいて、II-C型CRISPR-Cas系はすべての細菌ゲノムのおおよそ3.3%に存在するだけであることが見出された。好熱性細菌のなかで、II型系は統計分析(P=0.0019)に基づいて過小に見積もられている。さらに、古細菌ではII型系は見出されていないが、これはおそらく古細菌にはリボヌクレアーゼIIIタンパク質(II型系に関与する)が存在しないせいであろう。Chylinski, et al., (2014; Nucleic Acids Research 42: 6091-6105)は、II型CRISPR-Cas系の分類および進化を過去に報告しており、特に、これらの系を示す2つの種が同定されているが、これらの種は最大55℃で成長し、最適成長温度が60~80℃であり、超好熱菌では80℃より上で最適に成長できる厳密に好熱性の成長を示してはいない。
【0009】
細菌ゲノムにおけるCRISPR-Cas系の希少性、特に、Cas9が最適成長温度が45℃よりも低い細菌(古細菌ではない)でしか見つかっていないという事実にもかかわらず、本発明者らは、驚くべきことに、ゲノム編集を高温で実行するのを可能にするいくつかの熱安定性Cas9変異体を発見した。発明者はまた、高温を含めた、幅広い範囲の温度にわたるゲノム編集の実施を可能にする、熱安定性Cas9変異体と共に働く、最適化プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列を発見した。関連PAM配列の認識により設計された、これらのCas9ヌクレアーゼおよびRNA分子は、高温での遺伝子工学のための新規のツールとなり、好熱性生物、特に微生物の遺伝子操作に特に価値がある。
【発明の概要】
【0010】
したがって、本発明は、
a.アミノ酸モチーフEKDGKYYC[配列番号2];および/または
b.アミノ酸モチーフXCTX[配列番号3](式中、Xはイソロイシン、メチオニンまたはプロリンから独立して選択され、Xはバリン、セリン、アスパラギンまたはイソロイシンから独立して選択され、Xはグルタミン酸またはリシンから独立して選択され、Xはアラニン、グルタミン酸またはアルギニンのうちの1つである);および/または
c.アミノ酸モチーフXLKXIE[配列番号4](式中、Xはメチオニンまたはフェニルアラニンから独立して選択され、Xはヒスチジンまたはアスパラギンから独立して選択される);および/または
d.アミノ酸モチーフXVYSXK[配列番号5](式中、Xはグルタミン酸またはイソロイシンであり、Xはトリプトファン、セリンまたはリシンのうちの1つである);および/または
e.アミノ酸モチーフXFYX1011REQX12KEX13[配列番号6](式中、Xはアラニンまたはグルタミン酸であり、X10はグルタミンまたはリシンであり、X11はアルギニンまたはアラニンであり、X12はアスパラギンまたはアラニンであり、X13はリシンまたはセリンである)
を含む、単離されたCas(CRISPR(clustered regularly interspaced short palindromic repeat:クラスター化し規則的に間隔を置いた短い回文配列の繰り返し)associated:CRISPR関連)タンパク質またはポリペプチドを提供する。
本開示は以下の[1]から[91]を含む。
[1]標的核酸配列を含む二本鎖標的ポリヌクレオチドに結合する、これを切断する、標識するまたは改変するための、少なくとも1つのターゲティングRNA分子およびCasタンパク質の使用であって、
上記二本鎖標的ポリヌクレオチドが、上記標的核酸配列を含む標的核酸鎖、および上記標的核酸配列に相補的であるプロトスペーサー核酸配列を含む非標的核酸鎖を含み、
上記Casタンパク質が、配列番号1のアミノ酸配列、またはそれと少なくとも77%の同一性の配列を有し、
上記少なくとも1つのターゲティングRNA分子が、上記標的配列を認識し、
上記非標的核酸鎖が、上記プロトスペーサー核酸配列の3’末端に直接隣接するプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列をさらに含み、上記PAM配列が、5’-NNNNCNN-3’を含む、使用。
[2]上記結合、切断、標識または改変が、20℃と100℃の間の温度で、30℃と80℃の間の温度で、37℃と78℃の間の温度で、好ましくは55℃超の温度で、より好ましくは55℃と80℃の間の温度で、さらにより好ましくは、55℃と65℃の間または60℃と65℃の間の温度で起こる、上記[1]に記載の使用。
[3]上記標的核酸配列を含む上記ポリヌクレオチドが上記Casタンパク質により切断され、好ましくは、上記切断がDNA切断である、上記[1]または上記[2]に記載の使用。
[4]上記標的配列を含む上記標的核酸鎖が二本鎖DNAであり、上記使用が、上記標的核酸配列を含む上記ポリヌクレオチド中の二本鎖切断をもたらす、上記[1]から[3]のいずれかに記載の使用。
[5]上記標的核酸配列を含む上記ポリヌクレオチドが二本鎖DNAであり、上記Casタンパク質が上記二本鎖DNAを切断する能力を欠き、上記使用が上記ポリヌクレオチドの遺伝子サイレンシングをもたらす、上記[1]または上記[2]に記載の使用。
[6]上記PAM配列が、5’-NNNNCNNA-3’、5’-CNNNCNN-3’、5’-NNNCCNN-3’、5’-NNCNCNN-3’、5’-NNNNCCN-3’、および/または5’-NCNNCNN-3’を含む、上記[1]から[5]のいずれかに記載の使用。
[7]上記PAM配列が5’-CCCCCCNA-3’[配列番号10]を含み、好ましくは上記PAM配列が5’-CCCCCCAA-3’[配列番号11]を含む、上記[1]から[6]のいずれかに記載の使用。
[8]上記Casタンパク質が、細菌、古細菌またはウイルスから、好ましくは好熱性細菌から得られる、上記[1]から[7]のいずれかに記載の使用。
[9]上記Casタンパク質が、ゲオバチルス(Geobacillus)属種、好ましくはゲオバチルス・サーモデニトリフィカンス(Geobacillus thermodenitrificans)から得ることができる、上記[1]から[8]のいずれかに記載の使用。
[10]上記ターゲティングRNA分子が、crRNAおよびtracrRNAを含む、上記[1]から[9]のいずれかに記載の使用。
[11]上記少なくとも1つのターゲティングRNA分子の長さが、35~200ヌクレオチド残基の範囲である、上記[1]から[10]のいずれかに記載の使用。
[12]上記標的核酸配列が、15~32ヌクレオチド残基長である、上記[1]から[11]のいずれかに記載の使用。
[13]上記Casタンパク質が、少なくとも1つの機能的部分をさらに含む、上記[1]から[12]のいずれかに記載の使用。
[14]上記Casタンパク質が、少なくとも1つのさらなる機能的または非機能的タンパク質を含むタンパク質複合体の一部として提供され、任意選択で、上記少なくとも1つのさらなるタンパク質が、少なくとも1つの機能的部分をさらに含む、上記[1]から[13]のいずれかに記載の使用。
[15]上記Casタンパク質またはさらなるタンパク質が、上記Casタンパク質またはタンパク質複合体のN終端および/もしくはC終端、好ましくはC終端に融合または連結している、少なくとも1つの機能的部分を含む、上記[13]または上記[14]に記載の使用。
[16]上記少なくとも1つの機能的部分がタンパク質であり、任意選択で、ヘリカーゼ、ヌクレアーゼ、ヘリカーゼ-ヌクレアーゼ、DNAメチラーゼ、ヒストンメチラーゼ、アセチラーゼ、ホスファターゼ、キナーゼ、転写(共)活性化因子、転写リプレッサー、DNA結合タンパク質、DNA構築タンパク質、マーカータンパク質、レポータータンパク質、蛍光タンパク質、リガンド結合タンパク質、シグナルペプチド、細胞内局在配列、抗体エピトープまたは親和性精製タグ、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP)から選択される、上記[13]から[15]のいずれかに記載の使用。
[17]上記Cas9ヌクレアーゼの天然の活性が不活化されており、上記Casタンパク質が少なくとも1つの機能的部分に連結している、上記[16]に記載の使用。
[18]上記少なくとも1つの機能的部分がヌクレアーゼドメイン、好ましくはFokIヌクレアーゼドメインである、上記[16]または上記[17]に記載の使用。
[19]上記少なくとも1つの機能的部分がマーカータンパク質である、上記[16]から[18]のいずれかに記載の使用。
[20]二本鎖標的ポリヌクレオチドに結合する、これを切断する、標識するまたは改変する方法であって、上記二本鎖標的ポリヌクレオチドが、標的核酸配列を含む標的核酸鎖、および上記標的核酸配列に相補的であるプロトスペーサー核酸配列を含む非標的核酸を含み、
上記方法が、
a.少なくとも1つのターゲティングRNA分子を設計するステップであって、上記ターゲティングRNA分子が、上記標的鎖の上記標的配列を認識し、上記非標的鎖が、上記プロトスペーサー配列の3’末端に直接隣接するプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列をさらに含み、上記PAM配列が、5’-NNNNCNN-3’を含む、ステップ、
b.上記ターゲティングRNA分子およびCasタンパク質を含むリボ核タンパク質複合体を形成するステップであって、上記単離Casタンパク質が、配列番号1のアミノ酸配列、またはそれと少なくとも77%の同一性の配列を有する、ステップ、および
c.上記リボ核タンパク質複合体が、上記標的ポリヌクレオチドに結合する、これを切断する、標識するまたは改変する、ステップ
を含む方法。
[21]上記結合、切断、標識または改変が、20℃と100℃の間の温度で、30℃と80℃の間の温度で、37℃と78℃の間の温度で、好ましくは55℃超の温度で、より好ましくは55℃と80℃の間の温度で、さらにより好ましくは、55℃と65℃の間または60℃と65℃の間の温度で起こる、上記[20]に記載の方法。
[22]上記標的核酸配列を含む上記二本鎖標的ポリヌクレオチドが上記Casタンパク質により切断され、好ましくは上記切断がDNA切断である、上記[20]または上記[21]に記載の方法。
[23]上記標的ポリヌクレオチドが二本鎖DNAであり、上記使用が、上記ポリヌクレオチド中の二本鎖切断をもたらす、上記[20]から[22]のいずれかに記載の方法。
[24]上記標的核酸配列を含む上記標的ポリヌクレオチドが二本鎖DNAであり、上記Casタンパク質が、上記二本鎖DNAを切断する能力を欠き、上記方法が、上記標的ポリヌクレオチドの遺伝子サイレンシングをもたらす、上記[20]または上記[21]に記載の方法。
[25]上記PAM配列が、5’-NNNNCNNA-3’、5’-CNNNCNN-3’、5’-NNNCCNN-3’、5’-NNCNCNN-3’、5’-NNNNCCN-3’、および/または5’-NCNNCNN-3’を含む、上記[20]から[24]のいずれかに記載の方法。
[26]上記PAM配列が5’-CCCCCCNA-3’[配列番号10]を含み、好ましくは上記PAM配列が5’-CCCCCCAA-3’[配列番号11]を含む、上記[20]から[25]のいずれかに記載の方法。
[27]上記Casタンパク質が、細菌、古細菌またはウイルスから、好ましくは好熱性細菌から得られる、上記[20]から[26]のいずれかに記載の使用。
[28]上記Casタンパク質が、ゲオバチルス(Geobacillus)属種、好ましくはゲオバチルス・サーモデニトリフィカンス(Geobacillus thermodenitrificans)から得ることができる、上記[20]から[27]のいずれかに記載の方法。
[29]上記ターゲティングRNA分子が、crRNAおよびtracrRNAを含む、上記[20]から[28]のいずれかに記載の方法。
[30]上記少なくとも1つのターゲティングRNA分子の長さが、35~200ヌクレオチド残基の範囲である、上記[20]から[29]のいずれかに記載の方法。
[31]上記標的核酸配列が、15~32ヌクレオチド残基長である、上記[20]から[30]のいずれかに記載の方法。
[32]上記Casタンパク質が、少なくとも1つの機能的部分をさらに含む、上記[20]から[31]のいずれかに記載の方法。
[33]上記Casタンパク質が、少なくとも1つのさらなる機能的または非機能的タンパク質を含むタンパク質複合体の一部として提供され、任意選択で、上記少なくとも1つのさらなるタンパク質が、少なくとも1つの機能的部分をさらに含む、上記[20]から[32]のいずれかに記載の方法。
[34]上記Casタンパク質またはさらなるタンパク質が、上記Casタンパク質またはタンパク質複合体のN終端および/もしくはC終端、好ましくはC終端に融合または連結している、少なくとも1つの機能的部分を含む、上記[32]または上記[33]に記載の方法。
[35]上記少なくとも1つの機能的部分がタンパク質であり、任意選択で、ヘリカーゼ、ヌクレアーゼ、ヘリカーゼ-ヌクレアーゼ、DNAメチラーゼ、ヒストンメチラーゼ、アセチラーゼ、ホスファターゼ、キナーゼ、転写(共)活性化因子、転写リプレッサー、DNA結合タンパク質、DNA構築タンパク質、マーカータンパク質、レポータータンパク質、蛍光タンパク質、リガンド結合タンパク質、シグナルペプチド、細胞内局在配列、抗体エピトープまたは親和性精製タグ、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP)から選択される、上記[32]から[34]のいずれかに記載の方法。
[36]上記Cas9ヌクレアーゼの天然の活性が不活化されており、上記Casタンパク質が少なくとも1つの機能的部分に連結している、上記[35]に記載の方法。
[37]上記少なくとも1つの機能的部分がヌクレアーゼドメイン、好ましくはFokIヌクレアーゼドメインである、上記[35]または上記[36]に記載の方法。
[38]上記少なくとも1つの機能的部分がマーカータンパク質である、上記[35]から[37]のいずれかに記載の方法。
[39]上記二本鎖標的ポリヌクレオチドがdsDNAであり、上記少なくとも1つの機能的部分がヌクレアーゼまたはヘリカーゼ-ヌクレアーゼであり、上記改変が、所望の遺伝子座における一本鎖または二本鎖切断である、上記[16]に記載の使用または上記[35]に記載の方法。
[40]上記二本鎖標的ポリヌクレオチドがdsDNAであり、上記機能的部分が、DNA改変酵素(例えば、メチラーゼまたはアセチラーゼ)、転写活性因子または転写リプレッサーから選択され、上記結合、切断、標識または改変が、遺伝子発現の改変をもたらす、上記[16]に記載の使用、または上記[35]に記載の方法。
[41]上記結合、切断、標識または改変が、in vivoで行われる、上記[16]に記載の使用、または上記[35]に記載の方法。
[42]上記結合、切断、標識または改変が、所望の位置に、所望のヌクレオチド配列を改変または欠失および/もしくは挿入をもたらし、かつ/または上記結合、切断、標識または改変が、所望の遺伝子座にサイレンシング遺伝子発現をもたらす、上記[1]から[4]、[6]から[19]、もしくは[39]のいずれかに記載の使用、または上記[20]から[23]、[25]から[39]のいずれかに記載の方法。
[43]標的核酸配列を含む二本鎖標的ポリヌクレオチドを有する形質転換細胞であって、上記二本鎖標的ポリヌクレオチドが、上記標的核酸配列を含む標的核酸鎖、および上記標的核酸配列に相補的であるプロトスペーサー核酸配列を含む非標的核酸鎖を含み、上記細胞が、
配列番号1のアミノ酸配列、またはそれと少なくとも77%の同一性の配列を有する、Cas(CRISPR(clustered regularly interspaced short palindromic repeat:クラスター化し規則的に間隔を置いた短い回文配列の繰り返し)associated:CRISPR関連)タンパク質、
上記標的核酸鎖中の上記標的核酸配列を認識する少なくとも1つのターゲティングRNA分子であって、上記非標的鎖が、上記プロトスペーサー配列の3’末端に直接隣接するプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列をさらに含み、上記PAM配列が5’-NNNNCNN-3’を含む、少なくとも1つのターゲティングRNA分子、および
少なくとも1つの上記Casタンパク質および上記ターゲティングRNA分子をコードする核酸を含む発現ベクターを含む、形質転換細胞。
[44]上記Casタンパク質および上記ターゲティングRNA分子により、上記細胞中の上記標的ポリヌクレオチドの結合、切断、標識または改変が可能になり、上記結合、切断、標識または改変が、20℃と100℃の間の温度で、30℃と80℃の間の温度で、37℃と78℃の間の温度で、好ましくは55℃超の温度で、より好ましくは55℃と80℃の間の温度で、さらにより好ましくは、55℃と65℃の間または60℃と65℃の間の温度で起こる、上記[43]に記載の形質転換細胞。
[45]上記標的核酸配列を含む上記標的核酸鎖がCasタンパク質により切断され、好ましくは上記切断がDNA切断である、上記[43]または上記[44]に記載の形質転換細胞。
[46]上記標的配列を含む上記標的ポリヌクレオチドが二本鎖DNAであり、上記結合、切断、標識または改変が、上記標的ポリヌクレオチド中の二本鎖切断をもたらす、上記[43]から[45]のいずれかに記載の形質転換細胞。
[47]上記標的核酸配列を含む上記標的ポリヌクレオチドが二本鎖DNAであり、上記Casタンパク質が、上記二本鎖DNAを切断する能力を欠き、上記結合、切断、標識または改変が、上記標的ポリヌクレオチドの遺伝子サイレンシングをもたらす、上記[43]または上記[44]に記載の形質転換細胞。
[48]上記PAM配列が、5’-NNNNCNNA-3’、5’-CNNNCNN-3’、5’-NNNCCNN-3’、5’-NNCNCNN-3’、5’-NNNNCCN-3’、および/または5’-NCNNCNN-3’を含む、上記[43]から[47]のいずれかに記載の形質転換細胞。
[49]上記PAM配列が5’-CCCCCCNA-3’[配列番号10]を含み、好ましくは上記PAM配列が5’-CCCCCCAA-3’[配列番号11]を含む、上記[43]から[48]のいずれかに記載の形質転換細胞。
[50]上記Casタンパク質が、細菌、古細菌またはウイルスから、好ましくは好熱性細菌から得られる、上記[43]から[49]のいずれかに記載の形質転換細胞。
[51]上記Casタンパク質が、ゲオバチルス(Geobacillus)属種、好ましくはゲオバチルス・サーモデニトリフィカンス(Geobacillus thermodenitrificans)から得ることができる、上記[43]から[50]のいずれかに記載の形質転換細胞。
[52]上記細胞が原核細胞である、上記[43]から[51]のいずれかに記載の形質転換細胞。
[53]上記細胞が真核細胞である、上記[43]から[51]のいずれかに記載の形質転換細胞。
[54]上記ターゲティングRNA分子が、crRNAおよびtracrRNAを含む、上記[43]から[53]のいずれかに記載の形質転換細胞。
[55]上記少なくとも1つのターゲティングRNA分子の長さが、35~200ヌクレオチド残基の範囲である、上記[43]から[54]のいずれかに記載の形質転換細胞。
[56]上記標的核酸配列が、15~32ヌクレオチド残基長である、上記[43]から[55]のいずれかに記載の形質転換細胞。
[57]上記Casタンパク質が、少なくとも1つの機能的部分をさらに含む、上記[43]から[56]のいずれかに記載の形質転換細胞。
[58]上記Casタンパク質が、少なくとも1つのさらなる機能的または非機能的タンパク質を含むタンパク質複合体の一部として提供され、任意選択で、上記少なくとも1つのさらなるタンパク質が、少なくとも1つの機能的部分をさらに含む、上記[43]から[57]のいずれかに記載の形質転換細胞。
[59]上記Casタンパク質またはさらなるタンパク質が、上記Casタンパク質またはタンパク質複合体のN終端および/またはC終端に、好ましくはN終端に融合または連結している、少なくとも1つの機能的部分を含む、上記[57]または上記[58]に記載の形質転換細胞。
[60]上記少なくとも1つの機能的部分がタンパク質であり、任意選択で、ヘリカーゼ、ヌクレアーゼ、ヘリカーゼ-ヌクレアーゼ、DNAメチラーゼ、ヒストンメチラーゼ、アセチラーゼ、ホスファターゼ、キナーゼ、転写(共)活性化因子、転写リプレッサー、DNA結合タンパク質、DNA構築タンパク質、マーカータンパク質、レポータータンパク質、蛍光タンパク質、リガンド結合タンパク質、シグナルペプチド、細胞内局在配列、抗体エピトープまたは親和性精製タグ、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP)から選択される、上記[57]から[59]のいずれかに記載の形質転換細胞。
[61]上記Cas9ヌクレアーゼの天然の活性が不活化されており、上記Casタンパク質が少なくとも1つの機能的部分に連結している、上記[60]に記載の形質転換細胞。
[62]上記少なくとも1つの機能的部分がヌクレアーゼドメイン、好ましくはFokIヌクレアーゼドメインである、上記[57]から[61]のいずれかに記載の形質転換細胞。
[63]上記少なくとも1つの機能的部分がマーカータンパク質である、上記[57]から[61]のいずれかに記載の形質転換細胞。
[64]上記二本鎖標的ポリヌクレオチドがdsDNAであり、上記少なくとも1つの機能的部分がヌクレアーゼまたはヘリカーゼ-ヌクレアーゼであり、上記改変が、所望の遺伝子座における一本鎖または二本鎖切断である、上記[57]から[62]のいずれかに記載の形質転換細胞。
[65]上記二本鎖標的ポリヌクレオチドがdsDNAであり、上記機能的部分が、DNA改変酵素(例えば、メチラーゼまたはアセチラーゼ)、転写活性因子または転写リプレッサーから選択され、上記結合、切断、標識または改変が、遺伝子発現の改変をもたらす、上記[57]から[61]のいずれかに記載の形質転換細胞、または上記[35]に記載の方法。
[66]上記Casタンパク質が、発現ベクターから発現される、上記[57]から[62]のいずれかに記載の形質転換細胞。
[67]上記結合、切断、標識または改変が、所望の位置に、所望のヌクレオチド配列を改変または欠失および/もしくは挿入をもたらし、かつ/または上記結合、切断、標識または改変が、所望の遺伝子座にサイレンシング遺伝子発現をもたらす、上記[43]から[66]のいずれかに記載の形質転換細胞。
[68]Casタンパク質、二本鎖標的ポリヌクレオチドにおいて標的核酸配列を認識する少なくとも1つのターゲティングRNA分子、および上記標的ポリヌクレオチドを含む、核タンパク質複合体であって、
上記Casタンパク質が、配列番号1のアミノ酸配列、またはそれと少なくとも77%の同一性の配列を有し、
上記二本鎖標的ポリヌクレオチドが、上記標的核酸配列を含む標的核酸鎖、ならびに上記標的核酸配列に相補的であるプロトスペーサー核酸配列および上記プロトスペーサー配列の3’末端に直接隣接するプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)を含む非標的核酸鎖を含み、上記PAM配列が5’-NNNNCNN-3’を含む、核タンパク質複合体。
[69]20℃と100℃の間の温度で、30℃と80℃の間の温度で、37℃と78℃の間の温度で、好ましくは55℃超の温度で、より好ましくは55℃と80℃の間の温度で、さらにより好ましくは、55℃と65℃の間または60℃と65℃の間の温度で発生する、上記[68]に記載の核タンパク質複合体。
[70]上記標的核酸配列を含む上記二本鎖標的ポリヌクレオチドが上記Casタンパク質により切断され、好ましくは上記切断がDNA切断である、上記[68]または上記[69]に記載の核タンパク質複合体。
[71]上記標的配列を含む上記標的ポリヌクレオチドが二本鎖DNAであり、上記結合、切断、標識または改変が、上記標的ポリヌクレオチド中の二本鎖切断をもたらす、上記[68]から[70]のいずれかに記載の核タンパク質複合体。
[72]上記標的核酸配列を含む上記標的ポリヌクレオチドが二本鎖DNAであり、上記Casタンパク質が、上記二本鎖DNAを切断する能力を欠き、上記核タンパク質複合体が存在することにより、上記標的ポリヌクレオチドの遺伝子サイレンシングがもたらされる、上記[68]または上記[69]に記載の核タンパク質複合体。
[73]上記PAM配列が、5’-NNNNCNNA-3’、5’-CNNNCNN-3’、5’-NNNCCNN-3’、5’-NNCNCNN-3’、5’-NNNNCCN-3’、および/または5’-NCNNCNN-3’を含む、上記[68]から[72]のいずれかに記載の核タンパク質複合体。
[74]上記PAM配列が5’-CCCCCCNA-3’[配列番号10]を含み、好ましくは上記PAM配列が5’-CCCCCCAA-3’[配列番号11]を含む、上記[68]から[73]のいずれかに記載の核タンパク質複合体。
[75]上記Casタンパク質が、細菌、古細菌またはウイルスから、好ましくは好熱性細菌から得られる、上記[68]から[74]のいずれかに記載の核タンパク質複合体。
[76]上記Casタンパク質が、ゲオバチルス(Geobacillus)属種、好ましくはゲオバチルス・サーモデニトリフィカンス(Geobacillus thermodenitrificans)から得ることができる、上記[68]から[75]のいずれかに記載の核タンパク質複合体。
[77]原核細胞中である、上記[68]から[76]のいずれかに記載の核タンパク質複合体。
[78]真核細胞中である、上記[68]から[76]のいずれかに記載の核タンパク質複合体。
[79]上記ターゲティングRNA分子が、crRNAおよびtracrRNAを含む、上記[68]から[78]のいずれかに記載の核タンパク質複合体。
[80]上記少なくとも1つのターゲティングRNA分子の長さが、35~200ヌクレオチド残基の範囲である、上記[68]から[79]のいずれかに記載の核タンパク質複合体。
[81]上記標的核酸配列が、15~32ヌクレオチド残基長である、上記[68]から[80]のいずれかに記載の核タンパク質複合体。
[82]上記Casタンパク質が、少なくとも1つの機能的部分をさらに含む、上記[68]から[81]のいずれかに記載の核タンパク質複合体。
[83]上記Casタンパク質が、少なくとも1つのさらなる機能的または非機能的タンパク質を含むタンパク質複合体の一部として提供され、任意選択で、上記少なくとも1つのさらなるタンパク質が、少なくとも1つの機能的部分をさらに含む、上記[68]から[82]のいずれかに記載の核タンパク質複合体。
[84]上記Casタンパク質またはさらなるタンパク質が、上記Casタンパク質またはタンパク質複合体のN終端および/もしくはC終端、好ましくはC終端に融合または連結している、少なくとも1つの機能的部分を含む、上記[82]または上記[83]に記載の核タンパク質複合体。
[85]上記少なくとも1つの機能的部分がタンパク質であり、任意選択で、ヘリカーゼ、ヌクレアーゼ、ヘリカーゼ-ヌクレアーゼ、DNAメチラーゼ、ヒストンメチラーゼ、アセチラーゼ、ホスファターゼ、キナーゼ、転写(共)活性化因子、転写リプレッサー、DNA結合タンパク質、DNA構築タンパク質、マーカータンパク質、レポータータンパク質、蛍光タンパク質、リガンド結合タンパク質、シグナルペプチド、細胞内局在配列、抗体エピトープまたは親和性精製タグ、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP)から選択される、上記[82]から[84]のいずれかに記載の核タンパク質複合体。
[86]上記Cas9ヌクレアーゼの天然の活性が不活化されており、上記Casタンパク質が少なくとも1つの機能的部分に連結している、上記[85]に記載の核タンパク質複合体。
[87]上記少なくとも1つの機能的部分がヌクレアーゼドメイン、好ましくはFokIヌクレアーゼドメインである、上記[82]から[86]のいずれかに記載の核タンパク質複合体。
[88]上記少なくとも1つの機能的部分がマーカータンパク質である、上記[82]から[86]のいずれかに記載の核タンパク質複合体。
[89]上記核酸がdsDNAであり、上記少なくとも1つの機能的部分がヌクレアーゼまたはヘリカーゼ-ヌクレアーゼであり、上記標的ポリヌクレオチドが、所望の遺伝子座における一本鎖または二本鎖切断を有する、上記[82]から[87]のいずれかに記載の核タンパク質複合体。
[90]上記核酸がdsDNAであり、上記機能的部分が、DNA改変酵素(例えば、メチラーゼまたはアセチラーゼ)、転写活性因子または転写リプレッサーから選択され、上記核タンパク質複合体形成により、遺伝子発現の改変がもたらされる、上記[82]から[86]のいずれかに記載の核タンパク質複合体。
[91]上記核タンパク質形成により、所望の位置に、所望のヌクレオチド配列を改変または欠失および/もしくは挿入がもたらされ、かつ/または上記核タンパク質複合体形成により、所望の遺伝子座にサイレンシング遺伝子発現がもたらされる、上記[68]から[90]のいずれかに記載の核タンパク質複合体。
【0011】
本発明の状況でのポリペプチドは、完全長Casタンパク質の断片と見なしてもよい。そのような断片は不活性であり、遺伝物質の結合、編集および/または切断と直接関連のない方法でおよび目的のために、例えば、アッセイでの標準または抗体を産生するなどのために使用してもよい。
【0012】
しかし、好ましい実施形態では、Casタンパク質またはポリペプチドは、少なくとも1つのターゲティングRNA分子、およびターゲティングRNA分子により認識される標的核酸配列を含むポリヌクレオチドと会合すると、20℃から100℃までの範囲の温度で機能的であり、切断、結合、標識または改変することができる。好ましくは、Casタンパク質またはポリペプチドは、機能的であり、50℃から70℃までの範囲の温度、例えば55℃または60℃で、前記切断、結合、標識または改変が可能である。
【0013】
特定の実施形態では、本発明は、アミノ酸モチーフEKDGKYYC[配列番号2]を含むCasタンパク質またはポリペプチドを提供することができる。他の実施形態では、Casタンパク質またはポリペプチドはアミノ酸モチーフXCTX[配列番号3](式中、Xはイソロイシン、メチオニンまたはプロリンから独立して選択され、Xはバリン、セリン、アスパラギンまたはイソロイシンから独立して選択され、Xはグルタミン酸またはリシンから独立して選択され、Xはアラニン、グルタミン酸またはアルギニンのうちの1つである)をさらに含んでいてもよい。
【0014】
他の実施形態では、本明細書で定義されるCasタンパク質またはポリペプチドはアミノ酸モチーフXLKXIE[配列番号4](式中、Xはメチオニンまたはフェニルアラニンから独立して選択され、Xはヒスチジンまたはアスパラギンから独立して選択される)を追加でさらに含んでいてもよい。
【0015】
他の実施形態では、本明細書で定義されるCasタンパク質またはポリペプチドはアミノ酸モチーフXVYSXK[配列番号5](式中、Xはグルタミン酸またはイソロイシンであり、Xはトリプトファン、セリンまたはリシンのうちの1つである)を追加でさらに含んでいてもよい。
【0016】
他の実施形態では、本明細書で定義されるCasタンパク質またはポリペプチドはアミノ酸モチーフXFYX1011REQX12KEX13[配列番号6](式中、Xはアラニンまたはグルタミン酸であり、X10はグルタミンまたはリシンであり、X11はアルギニンまたはアラニンであり、X12はアスパラギンまたはアラニンであり、X13はリシンまたはセリンである)を追加でさらに含んでいてもよい。
【0017】
本発明に従えば、本発明のCasタンパク質またはポリペプチドは配列番号2から6のモチーフのうちのいずれでも、単独でまたは組み合わせて含むことができることが認識されうる。以下は、本発明のCasタンパク質またはポリペプチドを特徴付けることができるモチーフの組合せのそれぞれを要約している。
【0018】
EKDGKYYC[配列番号2]
【0019】
EKDGKYYC[配列番号2];およびXCTX[配列番号3](式中、Xはイソロイシン、メチオニンまたはプロリンから独立して選択され、Xはバリン、セリン、アスパラギンまたはイソロイシンから独立して選択され、Xはグルタミン酸またはリシンから独立して選択され、Xはアラニン、グルタミン酸またはアルギニンのうちの1つである)。
【0020】
EKDGKYYC[配列番号2];およびXCTX[配列番号3](式中、Xはイソロイシン、メチオニンまたはプロリンから独立して選択され、Xはバリン、セリン、アスパラギンまたはイソロイシンから独立して選択され、Xはグルタミン酸またはリシンから独立して選択され、Xはアラニン、グルタミン酸またはアルギニンのうちの1つである);およびXLKXIE[配列番号4](式中、Xはメチオニンまたはフェニルアラニンから独立して選択され、Xはヒスチジンまたはアスパラギンから独立して選択される)。
【0021】
EKDGKYYC[配列番号2];およびXCTX[配列番号3](式中、Xはイソロイシン、メチオニンまたはプロリンから独立して選択され、Xはバリン、セリン、アスパラギンまたはイソロイシンから独立して選択され、Xはグルタミン酸またはリシンから独立して選択され、Xはアラニン、グルタミン酸またはアルギニンのうちの1つである);およびXLKXIE[配列番号4](式中、Xはメチオニンまたはフェニルアラニンから独立して選択され、Xはヒスチジンまたはアスパラギンから独立して選択される);およびXVYSXK[配列番号5](式中、Xはグルタミン酸またはイソロイシンであり、Xはトリプトファン、セリンまたはリシンのうちの1つである)。
【0022】
EKDGKYYC[配列番号2];およびXCTX[配列番号3](式中、Xはイソロイシン、メチオニンまたはプロリンから独立して選択され、Xはバリン、セリン、アスパラギンまたはイソロイシンから独立して選択され、Xはグルタミン酸またはリシンから独立して選択され、Xはアラニン、グルタミン酸またはアルギニンのうちの1つである);およびXLKXIE[配列番号4](式中、Xはメチオニンまたはフェニルアラニンから独立して選択され、Xはヒスチジンまたはアスパラギンから独立して選択される);およびXVYSXK[配列番号5](式中、Xはグルタミン酸またはイソロイシンであり、Xはトリプトファン、セリンまたはリシンのうちの1つである);およびXFYX1011REQX12KEX13[配列番号6](式中、Xはアラニンまたはグルタミン酸であり、X10はグルタミンまたはリシンであり、X11はアルギニンまたはアラニンであり、X12はアスパラギンまたはアラニンであり、X13はリシンまたはセリンである)。
【0023】
EKDGKYYC[配列番号2];およびXCTX[配列番号3](式中、Xはイソロイシン、メチオニンまたはプロリンから独立して選択され、Xはバリン、セリン、アスパラギンまたはイソロイシンから独立して選択され、Xはグルタミン酸またはリシンから独立して選択され、Xはアラニン、グルタミン酸またはアルギニンのうちの1つである);およびXLKXIE[配列番号4](式中、Xはメチオニンまたはフェニルアラニンから独立して選択され、Xはヒスチジンまたはアスパラギンから独立して選択される);およびXFYX1011REQX12KEX13[配列番号6](式中、Xはアラニンまたはグルタミン酸であり、X10はグルタミンまたはリシンであり、X11はアルギニンまたはアラニンであり、X12はアスパラギンまたはアラニンであり、X13はリシンまたはセリンである)。
【0024】
EKDGKYYC[配列番号2];およびXCTX[配列番号3](式中、Xはイソロイシン、メチオニンまたはプロリンから独立して選択され、Xはバリン、セリン、アスパラギンまたはイソロイシンから独立して選択され、Xはグルタミン酸またはリシンから独立して選択され、Xはアラニン、グルタミン酸またはアルギニンのうちの1つである);およびXVYSXK[配列番号5](式中、Xはグルタミン酸またはイソロイシンであり、Xはトリプトファン、セリンまたはリシンのうちの1つである);およびXFYX1011REQX12KEX13[配列番号6](式中、Xはアラニンまたはグルタミン酸であり、X10はグルタミンまたはリシンであり、X11はアルギニンまたはアラニンであり、X12はアスパラギンまたはアラニンであり、X13はリシンまたはセリンである)。
【0025】
EKDGKYYC[配列番号2];およびXLKXIE[配列番号4](式中、Xはメチオニンまたはフェニルアラニンから独立して選択され、Xはヒスチジンまたはアスパラギンから独立して選択される);およびXVYSXK[配列番号5](式中、Xはグルタミン酸またはイソロイシンであり、Xはトリプトファン、セリンまたはリシンのうちの1つである);およびXFYX1011REQX12KEX13[配列番号6](式中、Xはアラニンまたはグルタミン酸であり、X10はグルタミンまたはリシンであり、X11はアルギニンまたはアラニンであり、X12はアスパラギンまたはアラニンであり、X13はリシンまたはセリンである)。
【0026】
EKDGKYYC[配列番号2];およびXLKXIE[配列番号4](式中、Xはメチオニンまたはフェニルアラニンから独立して選択され、Xはヒスチジンまたはアスパラギンから独立して選択される)。
【0027】
EKDGKYYC[配列番号2];およびXVYSXK[配列番号5](式中、Xはグルタミン酸またはイソロイシンであり、Xはトリプトファン、セリンまたはリシンのうちの1つである)。
【0028】
EKDGKYYC[配列番号2];およびXFYX1011REQX12KEX13[配列番号6](式中、Xはアラニンまたはグルタミン酸であり、X10はグルタミンまたはリシンであり、X11はアルギニンまたはアラニンであり、X12はアスパラギンまたはアラニンであり、X13はリシンまたはセリンである)。
【0029】
EKDGKYYC[配列番号2];およびXLKXIE[配列番号4](式中、Xはメチオニンまたはフェニルアラニンから独立して選択され、Xはヒスチジンまたはアスパラギンから独立して選択される);およびXVYSXK[配列番号5](式中、Xはグルタミン酸またはイソロイシンであり、Xはトリプトファン、セリンまたはリシンのうちの1つである)。
【0030】
EKDGKYYC[配列番号2];およびXLKXIE[配列番号4](式中、Xはメチオニンまたはフェニルアラニンから独立して選択され、Xはヒスチジンまたはアスパラギンから独立して選択される);およびXFYX1011REQX12KEX13[配列番号6](式中、Xはアラニンまたはグルタミン酸であり、X10はグルタミンまたはリシンであり、X11はアルギニンまたはアラニンであり、X12はアスパラギンまたはアラニンであり、X13はリシンまたはセリンである)。
【0031】
EKDGKYYC[配列番号2];およびXVYSXK[配列番号5](式中、Xはグルタミン酸またはイソロイシンであり、Xはトリプトファン、セリンまたはリシンのうちの1つである);およびXFYX1011REQX12KEX13[配列番号6](式中、Xはアラニンまたはグルタミン酸であり、X10はグルタミンまたはリシンであり、X11はアルギニンまたはアラニンであり、X12はアスパラギンまたはアラニンであり、X13はリシンまたはセリンである)。
【0032】
CTX[配列番号3](式中、Xはイソロイシン、メチオニンまたはプロリンから独立して選択され、Xはバリン、セリン、アスパラギンまたはイソロイシンから独立して選択され、Xはグルタミン酸またはリシンから独立して選択され、Xはアラニン、グルタミン酸またはアルギニンのうちの1つである);およびXLKXIE[配列番号4](式中、Xはメチオニンまたはフェニルアラニンから独立して選択され、Xはヒスチジンまたはアスパラギンから独立して選択される)。
【0033】
CTX[配列番号3](式中、Xはイソロイシン、メチオニンまたはプロリンから独立して選択され、Xはバリン、セリン、アスパラギンまたはイソロイシンから独立して選択され、Xはグルタミン酸またはリシンから独立して選択され、Xはアラニン、グルタミン酸またはアルギニンのうちの1つである);およびXLKXIE[配列番号4](式中、Xはメチオニンまたはフェニルアラニンから独立して選択され、Xはヒスチジンまたはアスパラギンから独立して選択される);およびXVYSXK[配列番号5](式中、Xはグルタミン酸またはイソロイシンであり、Xはトリプトファン、セリンまたはリシンのうちの1つである)。
【0034】
CTX[配列番号3](式中、Xはイソロイシン、メチオニンまたはプロリンから独立して選択され、Xはバリン、セリン、アスパラギンまたはイソロイシンから独立して選択され、Xはグルタミン酸またはリシンから独立して選択され、Xはアラニン、グルタミン酸またはアルギニンのうちの1つである);およびXLKXIE[配列番号4](式中、Xはメチオニンまたはフェニルアラニンから独立して選択され、Xはヒスチジンまたはアスパラギンから独立して選択される);およびXVYSXK[配列番号5](式中、Xはグルタミン酸またはイソロイシンであり、Xはトリプトファン、セリンまたはリシンのうちの1つである);およびXFYX1011REQX12KEX13[配列番号6](式中、Xはアラニンまたはグルタミン酸であり、X10はグルタミンまたはリシンであり、X11はアルギニンまたはアラニンであり、X12はアスパラギンまたはアラニンであり、X13はリシンまたはセリンである)。
【0035】
CTX[配列番号3](式中、Xはイソロイシン、メチオニンまたはプロリンから独立して選択され、Xはバリン、セリン、アスパラギンまたはイソロイシンから独立して選択され、Xはグルタミン酸またはリシンから独立して選択され、Xはアラニン、グルタミン酸またはアルギニンのうちの1つである);およびXVYSXK[配列番号5](式中、Xはグルタミン酸またはイソロイシンであり、Xはトリプトファン、セリンまたはリシンのうちの1つである);およびXFYX1011REQX12KEX13[配列番号6](式中、Xはアラニンまたはグルタミン酸であり、X10はグルタミンまたはリシンであり、X11はアルギニンまたはアラニンであり、X12はアスパラギンまたはアラニンであり、X13はリシンまたはセリンである)。
【0036】
CTX[配列番号3](式中、Xはイソロイシン、メチオニンまたはプロリンから独立して選択され、Xはバリン、セリン、アスパラギンまたはイソロイシンから独立して選択され、Xはグルタミン酸またはリシンから独立して選択され、Xはアラニン、グルタミン酸またはアルギニンのうちの1つである);およびXVYSXK[配列番号5](式中、Xはグルタミン酸またはイソロイシンであり、Xはトリプトファン、セリンまたはリシンのうちの1つである)。
【0037】
CTX[配列番号3](式中、Xはイソロイシン、メチオニンまたはプロリンから独立して選択され、Xはバリン、セリン、アスパラギンまたはイソロイシンから独立して選択され、Xはグルタミン酸またはリシンから独立して選択され、Xはアラニン、グルタミン酸またはアルギニンのうちの1つである);およびXFYX1011REQX12KEX13[配列番号6](式中、Xはアラニンまたはグルタミン酸であり、X10はグルタミンまたはリシンであり、X11はアルギニンまたはアラニンであり、X12はアスパラギンまたはアラニンであり、X13はリシンまたはセリンである)。
【0038】
LKXIE[配列番号4](式中、Xはメチオニンまたはフェニルアラニンから独立して選択され、Xはヒスチジンまたはアスパラギンから独立して選択される);およびXVYSXK[配列番号5](式中、Xはグルタミン酸またはイソロイシンであり、Xはトリプトファン、セリンまたはリシンのうちの1つである);およびXFYX1011REQX12KEX13[配列番号6](式中、Xはアラニンまたはグルタミン酸であり、X10はグルタミンまたはリシンであり、X11はアルギニンまたはアラニンであり、X12はアスパラギンまたはアラニンであり、X13はリシンまたはセリンである)。
【0039】
LKXIE[配列番号4](式中、Xはメチオニンまたはフェニルアラニンから独立して選択され、Xはヒスチジンまたはアスパラギンから独立して選択される);およびXVYSXK[配列番号5](式中、Xはグルタミン酸またはイソロイシンであり、Xはトリプトファン、セリンまたはリシンのうちの1つである)。
【0040】
LKXIE[配列番号4](式中、Xはメチオニンまたはフェニルアラニンから独立して選択され、Xはヒスチジンまたはアスパラギンから独立して選択される);およびXFYX1011REQX12KEX13[配列番号6](式中、Xはアラニンまたはグルタミン酸であり、X10はグルタミンまたはリシンであり、X11はアルギニンまたはアラニンであり、X12はアスパラギンまたはアラニンであり、X13はリシンまたはセリンである)。
【0041】
VYSXK[配列番号5](式中、Xはグルタミン酸またはイソロイシンであり、Xはトリプトファン、セリンまたはリシンのうちの1つである);およびXFYX1011REQX12KEX13[配列番号6](式中、Xはアラニンまたはグルタミン酸であり、X10はグルタミンまたはリシンであり、X11はアルギニンまたはアラニンであり、X12はアスパラギンまたはアラニンであり、X13はリシンまたはセリンである)。
【0042】
別の態様では、本発明は、配列番号1のアミノ酸配列またはそれと少なくとも77%の同一性の配列を有する単離されたCasタンパク質またはそのポリペプチド断片を提供する。好ましくは、Casタンパク質またはポリペプチドは、20℃から100℃までの範囲の温度で、結合、切断、標識または改変が可能である。好ましくは、Casタンパク質またはポリペプチドは、50℃と70℃の間の範囲の温度、例えば55℃または60℃で、前記切断、結合、標識または改変が可能である。好ましくは、Casタンパク質またはポリペプチドは、30℃と80℃の間の範囲の温度で、37℃と78℃の間の温度で、好ましくは55℃超の温度で、より好ましくは55℃と80℃の間の温度で、さらにより好ましくは、55℃と65℃の間または60℃と65℃の間の温度で、前記切断、結合、標識または改変が可能である。
【0043】
本発明はまた、標的核酸配列を含む標的ポリヌクレオチドに結合する、これを切断する、標識するまたは改変するための、本明細書で提供されるターゲティングRNA分子およびCasタンパク質またはポリペプチドの使用を提供する。ターゲティングRNA分子は、ポリヌクレオチドの標的核酸鎖上の標的核酸配列を認識する。
【0044】
標的核酸配列を含む標的ポリヌクレオチドは、二本鎖であってもよく、したがって、前記標的核酸配列を含む標的核酸配列鎖、およびプロトスペーサー核酸配列を含む非標的核酸鎖を含む。プロトスペーサー核酸配列は、この標的核酸配列に実質的に相補的であり、二本鎖標的ポリヌクレオチドにおいて、それと対合する。非標的核酸鎖は、プロトスペーサー配列の3’末端に直接隣接するプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列をさらに含むことができる。このPAM配列は、長さが少なくとも6つ、7つまたは8つの核酸とすることができる。好ましくは、PAM配列は、5位にシトシンを有する。好ましくは、PAM配列は、配列5’-NNNNC-3’を含み、したがって、PAM配列は、5’末端から、5’-NNNNC-3’が始まる。さらにまたは代替的に、PAM配列は、8位にアデニンを有することができ、したがってPAM配列は、配列5’-NNNNNNNA-3’を含み、PAM配列は、5’末端から、5’-NNNNNNNA-3’が始まる。さらにまたは代替的に、PAM配列は、1位、2位、3位、4位および6位のうちの1つまたは複数にシトシンを有してもよく、こうして、PAM配列は、5’末端から、5’-CNNNN-3’、5’-NCNNN-3’、5’-NNCNN-3’、5’-NNNCN-3’および/または5’-NNNNNC-3’が始まる。好ましくは、PAM配列は、PAM配列が、5’末端から、5’-CCCCCCNA-3’[配列番号10]から始まるように含み、さらに好ましくは、PAM配列は、5’末端から、PAM配列が5’-CCCCCCAA-3’[配列番号11]で始まるように含む。他の好ましいPAM配列は、5’-ATCCCCAA-3’[配列番号21]および5’-ACGGCCAA-3’[配列番号22]を含む。
【0045】
好ましくは、Casタンパク質またはポリペプチドは、40℃から80℃までの範囲、好ましくは45℃から80℃までの範囲、さらに好ましくは50℃から80℃までの範囲の温度で、結合、切断、標識または改変することができる。例えば、結合、切断、標識または改変は、45℃、46℃、47℃、48℃、49℃、50℃、51℃、52℃、53℃、54℃、55℃、56℃、57℃、58℃、59℃、60℃、61℃、62℃、63℃、64℃、65℃、66℃、67℃、68℃、69℃、70℃、71℃、72℃、73℃、74℃、75℃、76℃、77℃、78℃、79℃または80℃の温度で行われる。より好ましくは、Casタンパク質またはポリペプチドは、55から65℃までの範囲の温度で、結合、切断、標識または改変が可能である。好ましい態様では、本発明のCasタンパク質またはポリペプチド断片は、配列番号1に対して少なくとも75%の同一性;好ましくは少なくとも85%;より好ましくは少なくとも90%;さらにより好ましくは少なくとも95%の同一性のアミノ酸配列を含むことができる。
【0046】
Casタンパク質またはポリペプチドは、標的核酸鎖上の標的核酸配列を認識するターゲティングRNA分子と組み合わせて使用することができ、非標的核酸配列は、本明細書に開示される通り、非標的鎖上のプロトスペーサー配列の3’末端に直接隣接するPAM配列を有する。したがって、PAM配列は、配列5’-NNNNC-3’を含むことができ、Casタンパク質は、20℃から100℃までの範囲、好ましくは30℃から90℃までの範囲、37℃から78℃までの範囲、40℃から80℃までの範囲、50℃から70℃までの範囲、または55℃から65℃までの範囲の温度で、標的鎖に結合する、これを切断する、標識するまたは改変することができる。好ましくは、5’末端から、PAM配列は、5’-NNNNC-3’で始まり、Casタンパク質は、20℃から100℃までの範囲、好ましくは30℃から90℃までの範囲、37℃から78℃までの範囲、40℃から80℃までの範囲、50℃から70℃までの範囲、または55℃から65℃までの範囲の温度で、標的鎖に結合する、これを切断する、標識するまたは改変することができる。好ましくは、5’末端から、PAM配列は、5’-NNNNNNNA-3’で始まり、Casタンパク質は、20℃から100℃までの範囲、好ましくは30℃から90℃までの範囲、37℃から78℃までの範囲、40℃から80℃までの範囲、50℃から70℃までの範囲、または55℃から65℃までの範囲の温度で、標的鎖に結合する、これを切断する、標識するまたは改変することができる。さらに好ましくは、PAM配列の5’末端は、5’-NNNNCNNA-3’で始まり、Casタンパク質は、20℃から100℃までの範囲、好ましくは30℃から90℃までの範囲、37℃から78℃までの範囲、40℃から80℃までの範囲、50℃から70℃までの範囲、または55℃から65℃までの範囲の温度で、標的鎖に結合する、これを切断する、標識するまたは改変することができる。
【0047】
さらに詳細には、本発明のCasタンパク質またはポリペプチドは、配列番号1と以下の通り:少なくとも60%、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%または少なくとも99.8%のパーセント同一性を有するアミノ酸配列を含むことができる。パーセント同一性は、少なくとも89%とすることができる。パーセント同一性は、少なくとも90%とすることができる。好ましくは、パーセント同一性は、少なくとも95%、例えば98%となろう。
【0048】
配列番号1とのパーセントアミノ酸配列同一性は、2つの配列の最適整列のために導入する必要があるギャップの数およびそれぞれのギャップの長さを考慮に入れて、選択された比較窓において配列により共有されている同一の位置の数の関数として決定可能である。
【0049】
本発明のCasタンパク質またはポリペプチド断片は、基準配列の配列番号1とパーセント配列同一性により定義されるその任意の前述のパーセント変異体の両方の点から、単独でまたは本質的特徴としての前述のアミノ酸モチーフ(すなわち、配列番号2および/または3および/または4および/または5および/または6)のいずれかと組み合わせて、特徴付けることができる。
【0050】
本発明は、標的核酸配列を含む標的核酸鎖に結合する、これを切断する、標識するまたは改変するための、本明細書で提供されるターゲティングRNA分子、および本発明のCasタンパク質またはポリペプチドの使用を提供する。好ましくは、前記結合、切断、標識または改変は、本明細書に開示される温度で、例えば20と100℃の間の温度で行われる。本発明はまた、本明細書で提供されるターゲティングRNA分子の設計、ならびに本発明のターゲティングRNA分子およびCasタンパク質またはポリペプチドを含むリボ核タンパク質複合体の形成を含む標的核酸鎖中の標的核酸配列に結合する、これを切断する、標識するまたは改変する方法を提供する。好ましくは、標的核酸配列のリボ核タンパク質複合体結合、切断、標識または改変は、本明細書に開示される温度で、例えば37と100℃の間の温度で行われる。
【0051】
本発明の使用および方法を行うことができ、本発明の核タンパク質は、例えば細菌細胞において、in vivoで、形成して使用される。代替として、本発明の使用および方法を行うことができ、本発明の核タンパク質は、in vitroで、形成して使用される。本発明のCasタンパク質は、例えば、in vitroで使用する場合、またはトランスフェクションにより細胞に添加する場合、単離形態で提供されてもよく、Casタンパク質は、例えば、Casタンパク質をコードする核酸によって細胞の一過性または安定的な転換後に、非相同的に発現されてもよく、ターゲティングRNA分子は、RNA分子をコードする核酸によって細胞の一過性または安定的な転換後に、発現ベクターから転写されてもよく、かつ/またはRNA分子は、例えば、in vitroで使用した場合、またはトランスフェクションにより細胞に添加する場合、単離形態で提供されてもよい。好ましい実施形態では、Casタンパク質またはポリペプチドが、宿主細胞のゲノムにおいて、Casタンパク質またはポリペプチドをコードする核酸の安定な統合後に、宿主細胞のゲノムから発現される。したがって、Casタンパク質および/またはRNA分子は、そうでなければ存在しない、細胞にタンパク質または核酸分子を加えるための人為的または意図的方法のいずれかを使用して、in vivoまたはin vitroでの環境に加えることができる。
【0052】
標的核酸配列を含むポリヌクレオチドは、Casタンパク質によって切断することができ、任意選択で、切断は、DNA切断とすることができる。標的配列を含む標的核酸鎖は、二本鎖DNAとすることができ、本方法または使用は、標的核酸配列を含むポリヌクレオチドにおける二本鎖切断をもたらすことができる。標的核酸配列を含むポリヌクレオチドは、二本鎖DNAとすることができ、Casタンパク質は、二本鎖DNAを切断する能力を欠いてもよく、その使用または方法は、ポリヌクレオチドの遺伝子サイレンシングをもたらすことができる。
【0053】
Casタンパク質またはポリペプチドを本方法、使用、および本発明の核タンパク質を、250nM以下の濃度で、例えば200nM以下、150nM以下、100nM以下、50nM以下、25nM以下、10nM以下、5nM以下、1nM以下、または0.5nM以下の濃度で提供することができる。代替的に、Casタンパク質またはポリペプチドは、少なくとも0.5nM、少なくとも1nM、少なくとも5nM、少なくとも10nM、少なくとも25nM、少なくとも50nM、少なくとも100nM、少なくとも150nM、少なくとも200nMまたは少なくとも250nMの濃度で提供することができる。本発明のPAM配列は、8位にアデニンを有することができ、したがって、PAM配列は、配列5’-NNNNNNNA-3’を含み、Casタンパク質またはポリペプチドの濃度は、100nM以下、50nM以下、25nM以下、10nM以下、5nM以下、1nM以下または0.5nM以下とすることができる。PAM配列は、配列5’-NNNNCNNA-3’を含むことができ、Casタンパク質またはポリペプチドの濃度は、100nM以下、50nM以下、25nM以下、10nM以下、5nM以下、1nM以下または0.5nM以下とすることができる。PAM配列は、配列5’-CCCCCCNA-3’[配列番号10]を含むことができ、Casタンパク質またはポリペプチドの濃度は、100nM以下、50nM以下、25nM以下、10nM以下、5nM以下、1nM以下または0.5nM以下とすることができる。
【0054】
その上、本発明は本発明の前述のタンパク質またはポリペプチドのいずれかをコードする核酸を提供する。核酸は単離されていても発現構築物の形態であってもよい。
【0055】
本発明のすべての前述の態様では、アミノ酸残基は保存的にも非保存的にも置換されていてよい。保存的アミノ酸置換とは、アミノ酸残基が類似する化学的特性(例えば、電荷または疎水性)を有する他のアミノ酸残基で置換され、したがって、得られるポリペプチドの機能的特性を変化させないアミノ酸置換のことである。
【0056】
同様に、核酸配列がポリペプチドの機能に影響を与えずに保存的にも非保存的にも置換されうることは当業者であれば認識している。保存的に改変された核酸とは、アミノ酸配列の同一のまたは機能的に同一の変異体をコードする核酸で置換された核酸のことである。核酸のそれぞれのコドン(AUGおよびUGGを除く;典型的にはそれぞれメチオニンまたはトリプトファンの唯一のコドン)は改変して機能的に同一の分子を生じることが可能であることは当業者であれば認識している。したがって、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドのそれぞれのサイレント変異(すなわち、同義コドン)は、本発明のポリペプチドをコードし、それぞれの記載されているポリペプチド配列に潜在的に含まれている。
【0057】
本発明は、二本鎖標的ポリヌクレオチドに標的核酸配列を有する形質転換細胞を提供し、前記細胞は、本明細書で提供されるCasタンパク質またはポリペプチド、および本明細書で提供される少なくとも1つのターゲティングRNA分子を含み、発現ベクターは、前記Casタンパク質および前記ターゲティングRNA分子のうちの少なくとも1つをコードする核酸を含む。Casタンパク質およびターゲティングRNA分子により、高温で、または、例えば本明細書に開示される37と100℃の間の温度の範囲の形質転換細胞において、標的配列の結合、切断、標識または改変を行うことが可能となり得る、またはこれらを許容することができる。本発明は、1)本発明のCasタンパク質またはポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、および本発明のターゲティングRNA分子をコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターを細胞に形質転換、トランスフェクトまたは形質導入する、ステップ;または2)本発明のCasタンパク質またはポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクター、およびさらには本発明のターゲティングRNA分子をコードするヌクレオチド配列を含むさらなる発現ベクターを細胞に形質転換、トランスフェクトまたは形質導入する、ステップ;または3)本発明のCasタンパク質またはポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、および本発明において提供されているターゲティングRNA分子を細胞にまたは細部内に送達する発現ベクターを細胞に形質転換、トランスフェクトまたは形質導入する、ステップのいずれかを含む、細胞中における標的核酸に結合する、それを切断する、標識するまたは改変する方法をさらに提供する。Casタンパク質またはポリペプチドは、例えば、Casタンパク質またはポリペプチドをコードするヌクレオチド配列のゲノムへの安定な統合後に、形質転換細胞のゲノムから発現することができる。
【0058】
本発明はまた、本発明の使用および方法を行うため、または本発明の形質転換細胞もしくは核タンパク質複合体を生成するための、1種または複数の試薬を含むキットであって、本発明のCasタンパク質もしくはポリペプチド、または本発明のCasタンパク質もしくはポリペプチドをコードする核酸配列を含む発現ベクター;および/または本発明のターゲティングRNA分子、もしくは本発明のターゲティングRNA分子をコードする核酸配列を含む発現ベクターを含む、キットを提供する。本キットは、本発明を行うための指示書、例えば、本発明により、ターゲティングRNA分子を設計する方法に関する指示書をさらに含むことができる。
【0059】
RNAガイドおよび標的配列
本発明のCasタンパク質は、高温での標的核酸の配列特異的結合、切断、タグ付け、標識付けまたは改変を可能にする。標的核酸は、DNA(一本鎖または二本鎖)でもRNAでも合成核酸でもよい。本発明の特に有用な応用は、ゲノムDNAの標的配列に相補的に結合する1つまたは複数のガイドRNA(gRNA)と複合した本発明の1つまたは複数のCasタンパク質によるゲノムDNAの配列特異的ターゲティングおよび改変である。したがって、標的核酸は好ましくは二本鎖DNAである。そのようなターゲティングはin vitroでもin vivoでも実施することができる。好ましくは、そのようなターゲティングはin vivoで実施される。この方法で、本発明のCasタンパク質を使用して細胞のゲノムDNAに位置する特定のDNA配列を標的にして改変することができる。Cas系を使用して、異なる生物の種々の細胞型でおよび/または異なる生物でゲノムを改変することができることが想定されている。
【0060】
ターゲティングRNA分子とも呼ばれるgRNAは、ポリヌクレオチド標的鎖上の標的核酸配列を認識する。RNA分子はまた、二本鎖標的ポリヌクレオチドにおける標的配列を認識するよう設計され得、非標的鎖は、プロトスペーサー配列の3’末端に直接隣接するプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列を含む。本発明のCasタンパク質およびポリペプチドを用いて、最適な方法で働くPAM配列が本明細書に開示される。これらのPAM配列の認識により、gRNAは、本発明の温度範囲および高い温度にわたり、本発明のCasタンパク質およびポリペプチドとの使用のために設計することができる。
【0061】
したがって、本発明は、上文に記載される本発明のCasタンパク質またはポリペプチドを含み、標的ポリヌクレオチド中の特定のヌクレオチド配列を認識するという点でターゲティング機能を有する少なくとも1つのRNA分子をさらに含むリボ核タンパク質複合体を提供する。本発明はまた、標的核酸鎖に結合する、これを切断する、標識するまたは改変するための、少なくとも1つのターゲティングRNA分子およびCasタンパク質またはポリペプチドの使用、および本発明のリボ核タンパク質または核タンパク質、およびCasタンパク質またはポリペプチドおよびターゲティングRNA分子を有する形質転換細胞を使用する、標的核酸鎖の標的核酸配列に結合する、これを切断する、標識するまたは改変する方法を提供する。標的ポリヌクレオチドは、本明細書で提供されるPAM配列により、プロトスペーサー配列の3’末端に直接隣接する、規定されたPAM配列をさらに含むことができる。このPAM配列は、長さが6、7または8またはそれより長い、好ましくは長さが8の核酸とすることができる。好ましくは、RNA分子は、一本鎖RNA分子、例えば、CRISPR RNA(crRNA)であり、例えば、ハイブリダイゼーションによりtracrRNAと会合する。ターゲティングRNAはcrRNAとtracrRNAのキメラでもよい。前述のRNA分子は、標的ヌクレオチド配列に対して少なくとも90%の同一性、または相補性のリボヌクレオチド配列を有することができる。任意選択で、RNA分子は、標的ヌクレオチド配列に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%もしくは100%の同一性または相補性のリボヌクレオチド配列を有する。好ましい標的ヌクレオチド配列はDNAである。
【0062】
好ましい態様では、本発明は、少なくとも1つのターゲティングRNA分子が標的DNA配列にその長さに沿って実質的に相補的である、上文に記載されるリボ核タンパク質複合体を提供する。
【0063】
ターゲティングRNA分子は、核タンパク質複合体内の標的配列に結合し得るまたはこれと会合することができ、その結果、非標的鎖上の標的配列およびPAM配列を含む標的ポリヌクレオチドは、本発明の核タンパク質複合体と会合し、その結果、本発明の核タンパク質複合体の一部を形成することができる。
【0064】
したがって、本発明のCasタンパク質と会合するRNAガイドの配列を変化させると、Casタンパク質をガイドRNAに相補的である部位で二本鎖DNAを標識または切断するようプログラムすることが可能になる。
【0065】
好ましくは、本発明のリボ核タンパク質複合体中の少なくとも1つのターゲティングRNA分子の長さは、35から135残基の範囲、任意選択で、35から134残基、35から133残基、35から132残基、35から131残基、35から130残基、35から129残基、35から128残基、35から127残基、35から126残基、35から125残基、35から124残基、35から123残基、35から122残基、35から121残基、35から120残基、35から119残基、35から118残基、35から117残基、35から116残基、35から115残基、35から114残基、35から113残基、35から112残基、35から111残基、35から100残基、35から109残基、35から108残基、35から107残基、35から106残基、35から105残基、35から104残基、35から103残基、35から102残基、35から101残基、35から100残基、35から99残基、35から98残基、35から97残基、35から96残基、35から95残基、35から94残基、35から93残基、35から92残基、35から91残基、35から90残基、35から89残基、35から88残基、35から87残基、35から86残基、35から85残基、35から84残基、35から83残基、35から82残基、35から81残基、35から80残基、35から79残基、35から78残基、35から77残基、35から76残基、35から75残基、35から74残基、35から73残基、35から72残基、35から71残基、35から70残基、35から69残基、35から68残基、35から67残基、35から66残基、35から65残基、35から64残基、35から63残基、35から62残基、35から61残基、35から60残基、35から59残基、35から58残基、35から57残基、35から56残基、35から55残基、35から54残基、35から53残基、35から52残基、35から51残基、35から50残基、35から49残基、35から48残基、35から47残基、35から46残基、35から45残基、35から44残基、35から43残基、35から42残基、35から41残基、35から40残基、35から39残基、35から38残基、35から37残基、35から36残基、または35残基の範囲である。好ましくは、少なくとも1つのRNA分子の長さは、36から174残基、37から173残基、38から172残基、39から171残基、40から170残基、41から169残基、42から168残基、43から167残基、44から166残基、45から165残基、46から164残基、47から163残基、48から162残基、49から161残基、50から160残基、51から159残基、52から158残基、53から157残基、54から156残基、36から74残基、37から73残基、38から72残基、39から71残基、40から70残基、41から69残基、42から68残基、43から67残基、44から66残基、45から65残基、46から64残基、47から63残基、48から62残基、49から61残基、50から60残基、51から59残基、52から58残基、53から57残基、54から56残基の範囲である。
【0066】
好ましい態様では、本発明は、少なくとも1つのRNA分子の相補的部分が少なくとも30残基長である、リボ核タンパク質複合体を提供する。代わりに、少なくとも1つのRNA分子の相補的部分は、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74または75残基長でもよい。
【0067】
ターゲティングRNA分子は、好ましくは、標的核酸配列に対する高い特異性および親和性を必要とすることになる。未変性ゲル電気泳動、または代わりに等温滴定熱量測定、表面プラズモン共鳴、もしくは蛍光ベースの滴定法により決定することができる場合、1μMから1pM、好ましくは1nMから1pM、より好ましくは1~100pMの範囲の解離定数(K)が望ましい。親和性は、ゲル遅延度アッセイとも呼ばれる電気泳動移動度シフトアッセイ(EMSA)を使用して決定してもよい(Semenova et al. (2011) PNAS 108: 10098-10103参照)。
【0068】
ターゲティングRNA分子は、好ましくは、CRISPR RNA(crRNA)分子として原核生物の性質から分かっていることに合わせて作られる。crRNA分子の構造はすでに確立されており、Jore et al., 2011, Nature Structural & Molecular Biology 18: 529-537でさらに詳細に説明されている。手短に言えば、I-E型の成熟crRNAは、多くの場合、61ヌクレオチド長であり、8ヌクレオチドの5’「ハンドル」領域、32ヌクレオチドの「スペーサー」配列、およびテトラヌクレオチドループを有するヘアピンを形成する21ヌクレオチドの3’配列からなる(図5)。I型系はII型(Cas9)とは異なり、異なる系の詳細はVan der Oost 2014 Nat Rev Micr 12: 479-492に記載されている。II型(Cas9)系には異なるプロセシング機構が存在しており、第2のRNA(tracrRNA)および2つのリボヌクレアーゼを利用している。ヘアピンよりはむしろ、II型中の成熟crRNAはtracrRNAの断片に結合したままである(図5)。しかし、本発明で使用されるRNAは、長さであれ、領域であれまたは特定のRNA配列であれ、天然に存在するcrRNAの設計に厳密に合わせて設計する必要はない。しかし、明白なのは、本発明で使用するためのRNA分子は、公開データベース中のまたは新たに発見された遺伝子配列情報に基づいて設計され、次に、例えば、化学合成により全体をまたは部分を人工的に作ってもよいことである。本発明のRNA分子は、遺伝的に改変された細胞または無細胞発現系での発現のために設計および作製されてもよく、この選択肢にはRNA配列の一部または全部の合成が含まれてもよい。
【0069】
II型(Cas9)中のcrRNAの構造および必要条件もJinek et al., 2012 ibidに記載されている。I型には、スペーサー配列の5’末端を形成し、そこの5’で8ヌクレオチドの5’ハンドルと隣接しているいわゆる「シード(SEED)」部分が存在する。Semenova et al. (2011, PNAS 108: 10098-10103)は、シード配列のすべての残基が標的配列に相補的であるはずであるが、6位の残基ではミスマッチが許容されうることを見出した(図5)。II型には、スペーサーの3’末端に位置している10~12ヌクレオチドのシードが存在する(図5)(Van der Oost 2014 ibid.により概説されている)。同様に、標的遺伝子座(すなわち、配列)に向けられている本発明のリボ核タンパク質複合体のRNA成分を設計し作る場合、II型シード配列についての必要なマッチおよびミスマッチルールを適用することが可能である。
【0070】
したがって、本発明は、標的核酸分子において単一塩基変化を検出するおよび/または位置付ける方法であって、核酸試料を上文に記載される本発明のリボ核タンパク質複合体と、または上文に記載される本発明のCasタンパク質もしくはポリペプチドおよび別のターゲティングRNA成分と接触させることを含み、ターゲティングRNAの配列(リボ核タンパク質複合体中にある場合を含めて)は、例えば、8ヌクレオチド残基の連続する配列の6位での単一塩基変化に基づいて正常対立遺伝子と突然変異対立遺伝子を区別するようになっている、方法を含む。
【0071】
特定の理論に縛られたくはないが、本発明のリボ核タンパク質複合体のターゲティングRNA成分の調製に使用してもよいデザインルールは、二本鎖標的ポリヌクレオチドにいわゆる「PAM」(プロトスペーサー隣接モチーフ)配列を含む。大腸菌(E. coli)のI-E型系において、PAM配列は、5’-CTT-3’、5’-CAT-3’、5’-CCT-3’、5’-CAC-3’、5’-TTT-3’、5’-ATT-3’、および5’-AWG-3’などのヌクレオチド残基の保存されたトリプレットとすることができ、WはA、TまたはUである。I型では、標的鎖に位置しているPAM配列は、通常、シードの5’に対応する位置にある。しかし、II型では、PAMは、シードの3’に対応する位置で、crRNAスペーサーの3’末端に近い置換または非標的鎖上のもう一方の末端に位置している(図5)(Jinek et al., 2012, op. cit.)。化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)Cas9では、PAM配列は保存された対のヌクレオチド残基、5’-NGG-3’を有する。最近、異なるCas9変異体(IIA型およびIIC型)(Ran et al., 2015 Nature 520:186-191)-図1A)が特徴付けられ、PAMが明らかにされた(Ran et al., 2015, ibid.参照-図1C)。現在確立されているCas9 PAMは、IIA型5’-NGGNNNN-3’(化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes))、5’-NNGTNNN-3’(ストレプトコッカス・パスツリアヌス(Streptococcus pasteurianus))、5’-NNGGAAN-3’(ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus))、5’-NNGGGNN-3’(黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus))、およびIIC型5’-NGGNNNN-3’(ジフテリア菌(Corynebacterium difteriae))、5’-NNGGGTN-3’(カンピロバクター・ラリ(Campylobacter lari))、5’-NNNCATN-3’(パルビバクラム・ラバメンティボランス(Parvobaculum lavamentivorans))、5’-NNNNGTA-3’(ナイセリア・シネレア(Neiseria cinerea))を含む。ゲオバチルス・サーモデニトリフィカンス(Geobacillus thermodenitrificans)T12のCas9(本発明)はIIC型に属する(Ran et al., 2015, ibid.)。本発明者は、驚くべきことに、本発明により使用するためのPAM配列の選択により、本発明のCasタンパク質およびポリペプチドが標的配列と相互作用する温度に、影響を及ぼすことができるということを見いだした。特に、本発明者は、標的配列の3’末端の後の5位にシトシン、および/または8位にアデニンを有する、8merのPAM配列が、幅広い温度範囲にわたり、活性を付与するのに好ましいことを見いだした。プロトスペーサー配列の3’末端の後の、PAM配列の1位、2位、3位、4位および/または6位にシトシンが存在することがやはり好ましい。
【0072】
本発明の実施形態では、ターゲティングRNA分子は35~200残基の範囲の長さを有していてもよい。好ましい実施形態では、RNAのうち所望の核酸配列に相補的であり、これを標的にするために使用される部分は15から32残基長である。天然に存在するcrRNAの文脈では、これは、例えば、Semenova et al. (2011 ibid.)の図1に示されているスペーサー部分と一致する。
【0073】
本発明のリボ核タンパク質複合体は、DNA標的配列に実質的な相補性を有するRNA配列の5’にCRISPR繰り返しに由来する8残基を含むターゲティング成分を有していてもよい。DNA標的配列に相補性を有するRNA配列は、スペーサー配列であるcrRNAの文脈で一致すると理解される。RNAの5’隣接配列は、例えば、Semenova et al. (2011 ibid.)の図1に示されているように、crRNAの5’ハンドルに一致すると見なされるであろう。
【0074】
本発明のリボ核タンパク質複合体は、DNA標的配列に相補性を有するターゲティングRNA配列の3’に、すなわち、例えば、Semenova et al. (2011 ibid.)の図1に示されているように、crRNA中のスペーサー配列に隣接する3’ハンドルに一致するものの3’にヘアピンおよびテトラヌクレオチドループ形成配列を有していてもよい。
【0075】
特定の理論に縛られたくはないが、好ましいリボ核タンパク質複合体および二本鎖標的ポリヌクレオチドにおいて、リボ核タンパク質複合体のターゲティングRNAと対合しない非標的核酸鎖は、5’-NNNNCNNA-3’、5’-CNNNCNN-3’、5’-NNNCCNN-3’、5’-NNCNCNN-3’、5’-NNNNCCN-3’および5’-NCNNCNN-3’のうちの1つまたは複数から選択される、直接3’隣接PAM配列を含むことができる。好ましくは、PAM配列は、5’-NNNNC-3’、5’-NNNNCNNA-3’、5’-CNNNC-3’、5’-CNNNCNNA-3’、5’-NCNNC-3’、5’-NCNNCNNA-3’、5’-NNCNC-3’、5’-NNCNCNNA-3’、5’-NNNCC-3’、5’-NNNCCNNA-3’、5’-NNNNCC-3’、5’-NNNNCCNA-3’、5’-CCNNC-3’、5’-CCNNCNNA-3’、5’-CNCNC-3’、5’-CNCNCNNA-3’、5’-CNNCCN-3’、5’-CNNCCNNA-3’、5’-CNNNCC-3’、5’-CNNNCCNA-3’、5’-CCCNCN-3’、5’-CCCNCNNA-3’、5’-CCNCCN-3’、5’-CCNCCNNA-3’、5’-CCNNCC-3’、5’-CCNNCCNA-3’、5’-CCCCC-3’[配列番号12]、5’-CCCCCNNA-3’[配列番号13]、5’-CCCCCC-3’[配列番号14]、5’-CCCCCCNA-3’[配列番号10]、5’-NCCNC-3’、5’-NCCNCNNA-3’、5’-NCCCC-3’、5’-NCCCCNNA-3’、5’-NCCCCC-3’[配列番号15]、5’-NCCCCCNA-3’[配列番号16]、5’-NNCCC-3’、5’-NNCCCNNA-3’、5’-NNCCCC-3’、5’-NNCCCCNA-3’、5’-NNNCCC-3’、および5’-NNNCCCNA-3’から選択することができる。PAM配列は、5’-CNCCCCAC-3’[配列番号17]、5’-CCCCCCAG-3’[配列番号18]、5’-CCCCCCAA-3’[配列番号11]、5’-CCCCCCAT-3’[配列番号19]、5’-CCCCCCAC-3’[配列番号20]、5’-ATCCCCAA-3’[配列番号21]、または5’-ACGGCCAA-3’[配列番号22]とすることができる。好ましくは、PAM配列は、配列5’-NNNNCNNA-3’となろう。しかし、ヌクレオチドの他の組合せを所望の用途、および/またはCasタンパク質もしくはポリペプチドの濃度に応じて使用してもよいことは認識されている。これらの配列は、天然に存在するcrRNAの文脈で「プロトスペーサー隣接モチーフ」または「PAM」と呼ばれているものと一致している。IIC型CRISPR/Cas系では、これらのPAM配列は、天然系標的でも、したがって好ましくは本発明に従ったRNAでも、標的配列に対するcrRNAの高度な特異性を保証するために、そのdsDNA標的とのCascade/crRNA複合体の安定な相互作用を促進する。好ましくは、プロトスペーサーに直接隣接する配列は、5’-NNNCATN-3’ではないであろう。
【0076】
本明細書で提供される本発明のPAM配列は、例えば、6mer、7merまたは8merの配列として、本明細書に開示される配列を含む。6mer、7merまたは8merの配列は、非標的鎖上のプロトスペーサー配列の3’で直接、始まってもよく、標的RNAにより結合したプロトスペーサー配列に相補的なプロトスペーサー配列と、PAM配列の5’末端との間に間隔を置いた追加の核酸は存在しない。しかし、6mer、7merまたは8merの配列の3’末端における、PAM配列の部分を形成する追加の核酸が存在してもよいことが認識されよう。さらにまたは代替的に、非標的鎖は、PAM配列の追加の核酸3’を含むことができる。
【0077】
本発明の核タンパク質複合体は、本発明のリボ核タンパク質複合体、および該リボ核タンパク質が会合する核酸の標的核酸鎖を含むことができる。
【0078】
結合、切断、標識および改変の温度
活性、例えば本発明のCasタンパク質のヌクレアーゼ活性の最適温度範囲を含めた、温度範囲は、既知のCas9タンパク質の温度範囲よりもかなり高い。同様に、活性を維持する範囲の高い側の程度は、既知のCas9タンパク質のそれよりもかなり高い。最適温度および機能範囲がより高いことにより、高温での遺伝子工学、したがって、例えば、好熱性生物のゲノムの編集に大きな利点をもたらし、この多くは、高温で行われる工業的、農業的および医薬品過程の範囲において利用性を有する。したがって、本発明の方法、使用、核タンパク質および形質転換細胞は、工業的過程、例えば、代謝操作目的のためのゲノム編集の実現に有用となり得る。非標的鎖のプロトスペーサー配列に直接隣接する本発明のPAM配列が存在することにより、標的配列に対するCasタンパク質およびポリペプチドの特異性が改善され、より高い温度において、およびより大きな機能的温度範囲にわたり、Casタンパク質およびポリペプチドの使用を支持する。
【0079】
有利には、本発明のCasタンパク質またはポリペプチドは、20℃から100℃までの温度で、核酸の結合、切断、標識または改変が可能であるが、高温で、例えば、41℃と122℃の間の温度、好ましくは50℃と100℃の間の温度で、特に有用である。本発明のCasタンパク質およびポリペプチドは、DNA、RNAおよび合成核酸に結合する、これを切断する、標識するまたは改変することが可能である。本発明のCasタンパク質またはポリペプチドは、例えば、20℃から50℃までの範囲の温度で、ヌクレアーゼ活性、遺伝子編集および核酸標識の用途に関する操作性をやはり実現することができる。
【0080】
温度範囲が、本明細書に含まれている場合、開示されている温度範囲に端点が含まれる、すなわちこの範囲を「含む」ことが意図される。例えば、20℃と100℃の間の範囲の温度で活性があると明記する場合、20℃と100℃の温度が、前記範囲に含まれる。
【0081】
好ましくは、本発明のCasタンパク質またはポリペプチドは、結合される、切断される、標識されるまたは改変されるポリヌクレオチド分子の標的配列を認識する、好適なgRNA(ターゲティングRNA分子とも呼ばれる、ガイドRNA)と会合する場合、50℃から100℃、任意選択で55℃から100℃、60℃から100℃、65℃から100℃、70℃から100℃、75℃から100℃、80℃から100℃、85℃から100℃、90℃から100℃、95℃から100℃の範囲の温度において、上記のことが行われる。より好ましくは、本発明のCasタンパク質は、51℃から99℃、52℃から98℃、53℃から97℃、54℃から96℃、55℃から95℃、56℃から94℃、57℃から93℃、58℃から92℃、59℃から91℃、60℃から90℃、61℃から89℃、62℃から88℃、63℃から87℃、64℃から86℃、65℃から85℃、66℃から84℃、67℃から83℃、68℃から82℃、69℃から81℃、70℃から80℃、71℃から79℃、72℃から78℃、73℃から77℃、74℃から76℃の範囲の温度で、または75℃の温度において、核酸を切断、標識または改変する。好ましくは、本発明のCasタンパク質は、60℃から80℃、61℃から79℃、62℃から78℃、63℃から77℃、64℃から76℃、60℃から75℃、60℃から70℃の範囲の温度で、核酸に結合する、これを切断する、標識するまたは改変する。最適には、本発明のCasタンパク質は、60℃から65℃の範囲の温度で、好ましくは65℃で核酸に結合する、核酸を切断する、標識するまたは改変する。
【0082】
標的RNA分子は、本発明のCasタンパク質およびポリペプチドと共に使用するよう設計することができ、標的RNA分子は、標的鎖における標的配列に結合し、非標的鎖は、プロトスペーサー配列の直後の3’の本明細書に提供されるPAM配列をさらに含む。PAM配列は、5’-NNNNNNNA-3’、好ましくは5’-NNNNCNNA-3’、例えば5’-CCCCCCNA-3’[配列番号10]または5’-CCCCCCAA-3’[配列番号11]を含み、本発明の使用、方法、形質転換細胞および核タンパク質は、55℃から65℃の温度範囲、好ましくは50℃から70℃、40℃から65℃、45℃から75℃、37℃から78℃、および/または20℃から80℃の温度範囲にわたる、標的鎖への結合、この切断、標識および/または改変を実現することができる。
【0083】
本発明のすべての態様において、Casタンパク質またはポリペプチドは、細菌、古細菌またはウイルスから得ることができるか、もしくはこれらに由来することができ、または代替として、de novoで合成されてもよい。好ましい実施形態では、本発明のCasタンパク質またはポリペプチドは、好熱性原核生物に由来し、これらの生物は、古細菌または細菌として分類することができるが、好ましくは細菌である。より好ましくは、本発明のCasタンパク質またはポリペプチドは、好熱性細菌に由来する。本明細書において、好熱性という用語は、比較的高い温度で、生存および成長することが可能である、例えば、本発明の文脈では、41と122℃(106と252°F)の間の温度で、核酸の切断、結合または改変を行うことができるという意味として理解されるべきである。好ましくは、本発明のCasタンパク質またはポリペプチドは、1つまたは複数の好熱性細菌から単離されてもよく、60℃超で機能するであろう。好ましくは、本発明のCasタンパク質またはポリペプチドは、1つまたは複数の好熱性細菌から単離されてもよく、60℃から80℃の範囲で、最適には60℃と65℃の間で機能するであろう。好ましい実施形態では、本発明のCasタンパク質またはポリペプチドは、ゲオバチルス(Geobacillus)属種に由来する。より好ましくは、本発明のCasタンパク質は、ゲオバチルス・サーモデニトリフィカンス(Geobacillus thermodenitrificans)に由来する。さらにより好ましくは、本発明のCasタンパク質は、ゲオバチルス・サーモデニトリフィカンス(Geobacillus thermodenitrificans)T12に由来する。本発明のCasタンパク質またはポリペプチドは、ウイルスに由来することができる。
【0084】
機能的部分
有利なことに、任意のポリヌクレオチド配列を配列特異的に標的にする本発明のCasタンパク質、ポリペプチドおよびリボ核タンパク質複合体の能力は、何らかの方法で、例えば、標的核酸を切断および/または標識および/または修飾することにより、標的核酸を改変するために利用することができる。したがって、これを達成するためにはCasタンパク質またはポリペプチドと共に追加のタンパク質を提供してもよいことが認識されよう。したがって、本発明のCasタンパク質またはポリペプチドは、少なくとも1つの機能的部分をさらに含んでもよく、かつ/または本発明のCasタンパク質、ポリペプチドまたはリボ核タンパク質複合体は、少なくとも1つのさらなるタンパク質を含むタンパク質複合体の一部として提供されてもよい。好ましい態様では、本発明は、Casタンパク質または少なくとも1つのさらなるタンパク質が少なくとも1つの機能的部分をさらに含む、Casタンパク質、ポリペプチドまたはリボ核タンパク質複合体を提供する。少なくとも1つの機能的部分は、Casタンパク質に融合または連結していてもよい。好ましくは、少なくとも1つの機能的部分は、天然のまたは人工的タンパク質発現系での発現を通じてCasタンパク質に翻訳によって融合してもよい。代わりに、少なくとも1つの機能的部分は、化学合成ステップによりCasタンパク質に共有結合によって連結してもよい。好ましくは、少なくとも1つの機能的部分は、Casタンパク質のN終端および/またはC終端、好ましくはC終端に融合または連結している。
【0085】
少なくとも1つの機能的部分はタンパク質であることが望ましい。タンパク質は、異種タンパク質であってもよく、または代わりにCasタンパク質が由来した細菌種に固有であってもよい。少なくとも1つの機能的部分はタンパク質であってもよく、任意選択で、ヘリカーゼ、ヌクレアーゼ、ヘリカーゼ-ヌクレアーゼ、DNAメチラーゼ、ヒストンメチラーゼ、アセチラーゼ、ホスファターゼ、キナーゼ、転写(共)活性化因子、転写リプレッサー、DNA結合タンパク質、DNA構築タンパク質、マーカータンパク質、レポータータンパク質、蛍光タンパク質、リガンド結合タンパク質、シグナルペプチド、細胞内局在配列、抗体エピトープまたは親和性精製タグから選択されうる。
【0086】
特に好ましい態様では、本発明は、少なくとも1つの機能的部分がマーカータンパク質、例えば、GFPである、Casタンパク質、ポリペプチドまたはリボ核タンパク質複合体を提供する。
【0087】
ヌクレアーゼ活性
本発明のCasリボ核タンパク質は、本明細書にて開示される温度で、好ましくは高温で、例えば、50℃と100℃の間の温度で、核酸結合、切断、標識または改変活性を有する。本発明のリボ核タンパク質は、DNA、RNAまたは合成核酸に結合する、これを切断する、標識する、または改変することが可能となり得る。好ましい態様では、本発明のCasリボ核タンパク質は、DNAを、特に二本鎖DNAを配列特異的に切断することができる。
【0088】
本発明のCasタンパク質、ポリペプチドまたはリボ核タンパク質は、1つよりも多いヌクレアーゼドメインを有してもよい。部位特異的ヌクレアーゼは、DNAの鎖に沿って選択された位置で二本鎖切断(DSB)を生じさせることができる。標的宿主細胞では、これによりゲノム内の特定の前選択した位置でDSBを作ることができる。部位特異的ヌクレアーゼによるそのような切断の作製に促されて、目的のゲノム内の所望の位置でDNAを挿入、欠失または改変するために内在性細胞修復機構が別の目的で利用される。
【0089】
タンパク質またはポリペプチド分子の1つまたは複数のヌクレアーゼ活性部位は、例えば、タンパク質またはポリペプチドに連結または融合している別の機能的部分、例えば、FokIヌクレアーゼなどのヌクレアーゼドメインの活性を可能にするように不活化され得る。
【0090】
したがって、本発明のCasタンパク質、ポリペプチドおよびリボ核タンパク質がある特定の応用のために内在性ヌクレアーゼ活性を有する場合があるにもかかわらず、Casタンパク質の天然のヌクレアーゼ活性を不活化し、天然のCas9ヌクレアーゼ活性が不活化されCasタンパク質が少なくとも1つの機能的部分に連結しているCasタンパク質またはリボ核タンパク質複合体を提供するのが望ましい場合がある。天然のCas9ヌクレアーゼ活性の相補性によるミスターゲティング事象の発生率を減らすことは1つのそのような応用である。これは、望ましくは、Casタンパク質またはリボ核タンパク質複合体の天然のCas9ヌクレアーゼ活性を不活化させ、好ましくはCasタンパク質に融合している、異種ヌクレアーゼを提供することにより達成することもできる。したがって、本発明は、少なくとも1つの機能的部分がヌクレアーゼドメイン、好ましくはFokIヌクレアーゼドメインである、Casタンパク質またはリボ核タンパク質複合体を提供する。特に好ましい態様では、FokIヌクレアーゼドメインに融合している本発明のCasタンパク質またはリボ核タンパク質複合体は、好ましくは、FokIヌクレアーゼドメインに融合している本発明の別のCasタンパク質またはリボ核タンパク質複合体を含み、2つの複合体が標的ゲノムDNAの反対の鎖を標的にする、タンパク質複合体の一部として提供される。
【0091】
いくつかの応用では、例えば、Casタンパク質またはリボ核タンパク質複合体が核酸中の特定の標的配列を認識し改変する、例えば、その標的配列を診断検査の一部として標識するのに利用する応用では、Casタンパク質、ポリペプチドまたはリボ核タンパク質のヌクレアーゼ活性を完全に減弱させるのが望ましい場合がある。そのような応用では、Casタンパク質のヌクレアーゼ活性は不活化されてもよく、Casタンパク質に融合している機能的部分はタンパク質でもよく、任意選択で、ヘリカーゼ、ヌクレアーゼ、ヘリカーゼ-ヌクレアーゼ、DNAメチラーゼ、ヒストンメチラーゼ、アセチラーゼ、ホスファターゼ、キナーゼ、転写(共)活性化因子、転写リプレッサー、DNA結合タンパク質、DNA構築タンパク質、マーカータンパク質、レポータータンパク質、蛍光タンパク質、リガンド結合タンパク質、シグナルペプチド、細胞内局在配列、抗体エピトープまたは親和性精製タグから選択されうる。
【0092】
好ましい態様では、触媒として不活性な、またはヌクレアーゼ活性を欠く「死滅した」Casタンパク質もしくはポリペプチド(dCas)は、標的核酸配列に結合することができ、それにより、その配列の活性を立体的に抑制する。例えば、遺伝子のプロモーターまたはエクソンの配列に相補的である標的RNAを設計することができ、その結果、遺伝子へのdCasおよび標的RNAの結合は、遺伝子配列の転写開始または伸長を立体的に抑制し、それにより、遺伝子の発現を抑制する。代替的に、本明細書に記載される方法および使用は、ニッカーゼであるgtCas9の改変ヌクレアーゼ変異体を使用することができる。ニッカーゼは、HNHまたはgtCas9ヌクレアーゼのRuvC触媒ドメインの一方において変異により作製することができる。これは、それぞれ、不活性なRuvCまたはHNHヌクレアーゼドメインを有する、spCas9-変異体D10AおよびH840Aを含む化膿性連鎖球菌(S. pyogenes)Cas9(spCas)の場合に示される。これらの2つの変異を組み合わせることにより、触媒的に死滅したCas9変異体に至る(Standage-Beier, K. et al., 2015, ACS Synth. Biol. 4, 1217-1225;Jinek, M. et al., 2012, Science 337, 816-821;Xu, T. et al., 2015, Appl. Environ. Microbiol. 81, 4423-4431)。配列相同性に基づいて(図3)、これらの残基は、gtCas9のD8(図3におけるD17)およびD581またはH582(図3)とすることができる。
【0093】
特に好ましい態様では、本発明は、Casタンパク質のヌクレアーゼ活性が不活化され少なくとも1つの機能的部分がマーカータンパク質、例えば、GFPである、Casタンパク質またはリボ核タンパク質複合体を提供する。この方法で、目的の核酸配列を特異的に標的にし、光シグナルを発生させるマーカーを使用してその核酸配列を可視化することが可能になりうる。適切なマーカーは、例えば、蛍光レポータータンパク質、例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)、シアン蛍光タンパク質(CFP)またはmCherryを含んでいてもよい。そのタンパク質の発現は蛍光測定により簡単に直接的にアッセイすることが可能なので、そのような蛍光レポーター遺伝子はタンパク質発現の可視化に適したマーカーを提供する。代わりに、レポーター核酸は、ルシフェラーゼ(例えば、ホタルルシフェラーゼ)など発光タンパク質をコードしてもよい。代わりに、レポーター遺伝子は、光シグナルを発生させるのに使用することが可能な発色酵素、例えば、発色酵素(ベータ-ガラクトシダーゼ(LacZ)またはベータ-グルクロニダーゼ(Gus)など)でもよい。発現の測定に使用されるレポーターは、抗原ペプチドタグでもよい。他のレポーターまたはマーカーは当技術分野では公知であり、必要に応じて使用してもよい。
【0094】
マーカーは可視化することができるので、標的核酸がRNA、具体的にはmRNAであるある特定の実施形態では、特に、マーカーにより発生する光シグナルが発現産物の量に正比例している場合、マーカーにより発生する光シグナルの検出および定量化により遺伝子の転写活性を定量化することが可能でありうる。したがって、本発明の好ましい実施形態では、本発明のCasタンパク質またはリボ核タンパク質を使用して、目的の遺伝子の発現産物をアッセイすることができる。
【0095】
一態様では、本明細書に記載されるgtCas9は、微生物細胞における、相同組換え(HR)媒介性ゲノム改変方法で使用されてもよい。このような方法は、HRおよび部位特異的gtCas9活性を含み、これにより、対向選択は、gtCas9活性が、HRにより導入された所望の改変を有していない微生物を除去することにより行われる。
【0096】
したがって、本明細書で提供される方法および使用により、第1の工程の間に好都合となる相同組換え方法が可能になり、こうして、微生物ゲノムは、所望の変異、および非改変細胞が、gtCas9リボヌクレアーゼ複合体によりターゲティングされて、非改変細胞のゲノムにDSDBを導入することができる第2の工程により改変することができる。大多数の微生物における効率的な非相同末端結合(NHEJ)の修復機構がないために、DSDBは、通常、細胞死に至る。したがって、これらの方法および使用は、いずれの非改変微生物細胞を除去すると同時に、所望の変異を有する微生物細胞の集団全体を増大する。好ましくは、このような方法および使用は、実質的に、内因性NHEJ修復機構を有していない微生物において使用される。代替的に、本方法および使用は、内因性NHEJ修復機構を有する微生物に適用してもよい。本明細書に記載される方法および使用は、内因性NHEJ修復機構を有する微生物に適用することができるが、この場合、NHEJ修復機構は、条件付きで低下されるか、またはNHEJ活性がノックアウトされるかのどちらかとなる。
【0097】
本明細書で提供される方法および使用は、ガイドRNAと少なくとも1つのミスマッチを有する、相同組換えポリヌクレオチドの配列を利用することができ、こうして、ガイドRNAは、改変ゲノムをもはや認識することができない。これは、gtCas9リボヌクレアーゼ複合体が、改変ゲノムを認識しないことを意味する。したがって、DSDBは、gtCas9リボヌクレアーゼ複合体によって導入することはできず、その結果、改変細胞は、生存することになろう。しかし、非改変ゲノムを有する細胞は、ガイドRNAに対して実質的な相補性を依然として有しており、その結果、gtCas9リボヌクレアーゼ複合体により部位特異的に切断され得る。
【0098】
本発明の方法および使用の別の態様では、gtCas9リボヌクレオアーゼ複合体が、微生物ゲノムを切断させる作用を防止する方法は、ガイドによって標的とされる配列を改変または除外することではなく、むしろ、gtCas9リボヌクレアーゼ複合体によって必要とされるPAMを改変または除外することである。PAMは、特定の切断部位に対してgtCas9リボヌクレアーゼ複合体を結合させるために、改変または除去のどちらか一方が行われる。したがって、本発明の方法および使用は、gtCas9リボヌクレアーゼ複合体によって認識されるPAM配列を含まない、相同組換えポリヌクレオチドの配列を使用するものを含むことができる。したがって、DSDBは、gtCas9リボヌクレアーゼ複合体によって導入することはできず、その結果、HR改変細胞は、生存することになろう。しかし、非修飾細胞は、gtCas9リボヌクレアーゼ複合体およびそのガイドにより依然として認識され、その結果、部位特異的に切断される。
【0099】
したがって、微生物のゲノムを改変するために、HRに頼る方法および使用が、明細書において提供される。好ましくは、上流隣接部および下流隣接部は、長さが、それぞれ、0.5キロ塩基(kb)から1.0kbである。しかし、それより長い断片またはそれより短い断片を使用する組換えが、同様に可能である。相同組換えポリヌクレオチドは、上流と下流の隣接領域との間にポリヌクレオチド配列をさらに含んでもよい。このポリヌクレオチド配列は、例えば、微生物ゲノムに導入されることになる、改変を含むことができる。
【0100】
相同組換えは、標的領域に対して実質的な相補性を有する、上流隣接部および下流領隣接部に依存する一方、ミスマッチも同様に収容可能である。したがって、一部の実施形態では、相同組換えは、上流隣接部および下流隣接部に対して広範な相同性を有する、DNAセグメント間に行われることが知られている。代替実施形態では、上流および下流隣接部は、標的領域に対して完全な相補性を有する。上流および下流隣接部は、サイズが同一である必要がない。しかし、一部の例では、上流および下流隣接部は、サイズが同一である。相同組換えの効率は、隣接部の最小断片長さの相同組換えの可能性に応じて様々となろう。しかし、相同組換え法が、非効率である場合でさえも、有利には、本明細書に記載される方法は、非改変微生物細胞よりも、所望の改変を有する任意の微生物細胞を選択することになろう。相同組換えにより、やはり、完全遺伝子クラスターを包含する大きな欠失(例えば、50kb以上)を作製することが可能となる。相同組換えは組換えに使用され、これは、より小さな断片(45~100nt)に組換えを可能にする周知の方法である。本明細書に記載される方法および使用は、微生物ゲノムにおいて、標的を含有する第2の標的領域に実質的に相補的である配列を有する相同組換えポリヌクレオチドをコードする配列を含む、少なくとも別の相同組換えポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドをさらに任意選択で含むことができる。
【0101】
好ましい実施形態では、本明細書に記載される方法および使用は、DNAである相同組換えポリヌクレオチドを利用する。一部の実施形態では、DNAは一本鎖である。他の実施形態では、DNAは二本鎖である。さらなる実施形態では、DNAは、二本鎖であり、プラスミド媒介性である。
【0102】
本明細書で提供される方法および使用にHRを使用して、微生物ゲノムからポリヌクレオチド配列を除去することができる。代替的に、本明細書で提供される方法および使用におけるHRを使用して、微生物ゲノムに1つまたは複数の遺伝子またはその断片を挿入することができる。さらなる選択として、本明細書で提供される方法および使用においてHRを使用し、微生物ゲノムにおける少なくとも1つのヌクレオチドを改変、またはこれに置き換えることができる。これにより、本明細書で提供される方法および使用は、任意の所望の種類のゲノム改変に使用することができる。
【0103】
代替的に、本明細書に記載されるgtCas9は、微生物細胞において、HR媒介性ゲノム改変方法に使用してもよく、それにより、gtCas9活性により、DSDBが導入され、spCas9に関して示されている通り、微生物細胞における細胞HRを誘発することができる(Jiang et al. (2013) Nature Biotech, 31, 233-239;Xu et al. (2015) Appl Environ Microbiol, 81, 4423-4431;Huang et al. (2015) Acta Biochimica et Biophysica Sinica, 47, 231-243)。
【0104】
代替的に、相同組換えは、例えば、Mougiakosらによって概説されている、RecTまたはベータプロテインをコードする遺伝子を発現する、微生物細胞にオリゴヌクレオチドを導入することによる組換えによって促進することができる((2016), Trends Biotechnol. 34: 575-587)。さらなる実施形態では、Cas9は、Rondaらにより例示されている、Multiplex Automated Genome Engineering(MAGE)と組み合わせることができる((2016), Sci. Rep. 6: 19452.)。
【0105】
初めから終わりまで、本発明のCasタンパク質の基準配列は、アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列として定義することができる。例えば、配列番号2から6に定義されるモチーフのアミノ酸配列は、そのアミノ酸配列をコードするすべての核酸配列も含む。
【0106】
したがって、本発明は、
a.アミノ酸モチーフEKDGKYYC[配列番号2];および/または
b.アミノ酸モチーフXCTX[配列番号3](式中、Xはイソロイシン、メチオニンまたはプロリンから独立して選択され、Xはバリン、セリン、アスパラギンまたはイソロイシンから独立して選択され、Xはグルタミン酸またはリシンから独立して選択され、Xはアラニン、グルタミン酸またはアルギニンのうちの1つである);および/または
c.アミノ酸モチーフXLKXIE[配列番号4](式中、Xはメチオニンまたはフェニルアラニンから独立して選択され、Xはヒスチジンまたはアスパラギンから独立して選択される);および/または
d.アミノ酸モチーフXVYSXK[配列番号5](式中、Xはグルタミン酸またはイソロイシンであり、Xはトリプトファン、セリンまたはリシンのうちの1つである);および/または
e.アミノ酸モチーフXFYX1011REQX12KEX13[配列番号6](式中、Xはアラニンまたはグルタミン酸であり、X10はグルタミンまたはリシンであり、X11はアルギニンまたはアラニンであり、X12はアスパラギンまたはアラニンであり、X13はリシンまたはセリンである)
を含むCasタンパク質であって、
少なくとも1つのターゲティングRNA分子、およびターゲティングRNA分子により認識される標的核酸配列を含むポリヌクレオチドと会合すると50℃と100℃の間でDNAを結合、切断、標識または改変することができるCasタンパク質をコードする単離された核酸分子も提供する。
【0107】
別の態様では、本発明は、配列番号1のアミノ酸配列またはそれと少なくとも77%の同一性の配列を有するCas(CRISPR(clustered regularly interspaced short palindromic repeat)associated)タンパク質をコードする単離された核酸分子も提供する。
【0108】
別の態様では、本発明は、翻訳されるとCasタンパク質に融合するペプチドをコードする少なくとも1つの核酸配列をさらに含む、単離された核酸分子も提供する。
【0109】
別の態様では、本発明は、Casタンパク質をコードする核酸分子に融合する少なくとも1つの核酸配列が、ヘリカーゼ、ヌクレアーゼ、ヘリカーゼ-ヌクレアーゼ、DNAメチラーゼ、ヒストンメチラーゼ、アセチラーゼ、ホスファターゼ、キナーゼ、転写(共)活性化因子、転写リプレッサー、DNA結合タンパク質、DNA構築タンパク質、マーカータンパク質、レポータータンパク質、蛍光タンパク質、リガンド結合タンパク質、シグナルペプチド、細胞内局在配列、抗体エピトープまたは親和性精製タグから選択されるタンパク質をコードする、単離された核酸分子も提供する。
【0110】
発現ベクター
本発明の核酸は単離されていてもよい。しかし、核酸感知構築物の発現が選ばれた細胞で実行されうるように、Casタンパク質またはリボ核タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列は、好ましくは、発現構築物中に提供されている。いくつかの実施形態では、Casタンパク質またはリボ核タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、適切な発現ベクターの一部として提供されることになる。ある特定の実施形態では、本発明の発現ベクター(発現するとCasタンパク質に融合するアミノ酸残基をコードするヌクレオチド配列ありまたはなしで)は、上文に定義されているターゲティングRNA分子をコードするヌクレオチド配列をさらに含んでいてもよい。したがって、そのような発現ベクターを適切な宿主で使用して、所望のヌクレオチド配列を標的にすることが可能な本発明のリボ核タンパク質複合体を産生することができる。代わりに、上文に定義されるターゲティングRNA分子をコードするヌクレオチド配列は別の発現ベクターで提供してもよく、または代わりに他の手段によって標的細胞に送達してもよい。
【0111】
適切な発現ベクターは受容細胞に応じて変化することになり、適宜、標的細胞での発現を可能にし、好ましくは高レベルの発現を促進する調節エレメントを組み込んでもよい。そのような調節配列は、例えば、開始、正確さ、速度、安定性、下流プロセシングおよび可動性の点で遺伝子または遺伝子産物の転写または翻訳に影響を与えることができてもよい。
【0112】
そのようなエレメントは、例えば、強力なおよび/または構成プロモーター、5’および3’UTR、転写および/または翻訳エンハンサー、転写因子またはタンパク質結合配列、開始部位および終結配列、リボソーム結合部位、組換え部位、ポリアデニル化配列、センスまたはアンチセンス配列、転写の正確な開始を確実にする配列ならびに任意選択で、宿主細胞における転写の終結および転写物安定化を確実にするポリAシグナルを含んでいてもよい。調節配列は、植物、動物、細菌、真菌またはウイルス由来でもよく、好ましくは、宿主細胞と同じ生物に由来してもよい。適切な調節エレメントが目的の宿主細胞に応じて変化することになるのは明らかである。例えば、大腸菌(E.coli)などの原核宿主細胞で高レベルの発現を促進する調節エレメントはpLac、T7、P(Bla)、P(Cat)、P(Kat)、trpまたはtacプロモーターを含んでいてもよい。真核宿主細胞で高レベルの発現を促進する調節エレメントは、酵母ではAOX1またはGAL1プロモーターあるいは動物細胞ではCMVもしくはSV40プロモーター、CMVエンハンサー、SV40エンハンサー、単純ヘルペスウイルス(Herpes simplex virus)VIP16転写活性化因子またはグロビンイントロンの包含を含んでいてもよい。植物では、構成的高レベルの発現は、例えば、トウモロコシ(Zea mays)ユビキチン1プロモーターまたはカリフラワーモザイクウイルスの35Sおよび19Sプロモーターを使用して得ることができる。
【0113】
適切な調節エレメントは構成的であってよく、この調節エレメントは大半の環境条件または発生段階、特異的もしくは誘導性の発生段階下で発現を指示する。好ましくは、プロモーターは誘導性であり、温度、光、化学物質、乾燥、および他の刺激などの環境的、化学的または発生的合図に応答して発現を指示する。適宜、特定の発生段階であるいは細胞外もしくは細胞内状態、シグナル、または外部から与えられる刺激に応答して目的のタンパク質の発現を可能にするプロモーターを選んでもよい。例えば、大腸菌(E.coli)で使用するための、特定の成長段階で(例えば、osmY静止期プロモーター)または特定の刺激に応答して(例えば、HtpG熱ショックプロモーター)高レベルの発現を与える様々なプロモーターが存在する。
【0114】
適切な発現ベクターは、適切な宿主細胞においておよび/または特定の条件下で前記ベクターの選択を可能にする選択可能マーカーをコードする追加の配列を含んでいてもよい。
【0115】
本発明は、細胞中で標的核酸を改変する方法であって、細胞を上文に記載される発現ベクターのうちのいずれかでトランスフェクト、形質転換または形質導入することを含む方法も含む。トランスフェクション、形質転換または形質導入の方法は当業者には周知のタイプのものである。本発明のリボ核タンパク質複合体の発現を生み出すのに使用される1つの発現ベクターが存在する場合、およびターゲティングRNAが細胞に直接添加される場合、トランスフェクション、形質転換または形質導入の同じまたは異なる方法を使用してもよい。同様に、本発明のリボ核タンパク質複合体の発現を生み出すのに使用される1つの発現ベクターが存在する場合、および別の発現ベクターが発現を介してターゲティングRNAをin situで生み出すのに使用されている場合、トランスフェクション、形質転換または形質導入の同じまたは異なる方法を使用してもよい。
【0116】
他の実施形態では、Casタンパク質またはポリペプチドをコードするmRNAは、細胞中でCascade複合体が発現されるように細胞内に導入される。Casタンパク質複合体を所望の標的配列まで導くターゲティングRNAも、mRNAと同時でも、別々にでもまたは逐次でも、必要なリボ核タンパク質複合体が細胞中で形成されるように、細胞内に導入される。
【0117】
したがって、本発明は、標的核酸を改変する、すなわち、切断、タグ付け、改変、標識または結合する方法であって、核酸を上文で定義されるリボ核タンパク質複合体と接触させることを含む方法も提供する。
【0118】
さらに、本発明は標的核酸を改変する方法であって、核酸を、上文で定義されるターゲティングRNA分子に加えて、上文で定義されるCasタンパク質またはポリペプチドと接触させることを含む方法も含む。
【0119】
上記方法に従って、標的核酸の改変は、したがって、in vitroでおよび無細胞環境で実行することができる。無細胞環境では、標的核酸、Casタンパク質およびターゲティングRNA分子のそれぞれの添加は、同時でも、逐次でも(希望通りのいかなる順番でも)、または別々でもよい。したがって、標的核酸とターゲティングRNAが反応混合物に同時に添加され、次に、本発明のCasタンパク質またはポリペプチドが後の段階で別々に添加されることが可能である。
【0120】
同様に、標的核酸の改変は、単離された細胞であれ多細胞組織、器官または生物の一部としてであれ、in vivo、すなわち、細胞中in situで行うことができる。全組織および器官の文脈では、ならびに生物の文脈では、方法はin vivoで実行されるのが望ましい場合があり、または代わりに、全組織、器官もしくは生物から細胞を単離し、方法に従って細胞をリボ核タンパク質複合体で処理し、それに続いてリボ核タンパク質複合体で処理された細胞を、同じ生物内であれ異なる生物内であれ、その前の位置に、もしくは異なる位置に戻すことにより実行してもよい。
【0121】
これらの実施形態では、リボ核タンパク質複合体またはCasタンパク質もしくはポリペプチドは、細胞内への適切な形態の送達を必要とする。そのような適切な送達系および方法は当業者には周知であり、細胞質または核マイクロインジェクションを含むがこれらに限定されない。好ましい送達様式では、アデノ随伴ウイルス(AAV)が使用され、この送達系はヒトでは病因性ではなく、欧州では臨床使用に承認されている。
【0122】
したがって、本発明は標的核酸を改変する方法であって、核酸を、
a.上文で定義されるリボ核タンパク質複合体、または
b.上文で定義されるタンパク質もしくはタンパク質複合体および上文で定義されるRNA分子
と接触させることを含む方法を提供する。
【0123】
さらなる態様では、本発明は細胞中で標的核酸を改変する方法であって、細胞を上文で定義されるリボ核タンパク質複合体をコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターで形質転換、トランスフェクトもしくは形質導入すること、または代わりに細胞を上文で定義されるタンパク質もしくはタンパク質複合体をコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターおよび上文で定義されるターゲティングRNA分子をコードするヌクレオチド配列を含むさらなる発現ベクターで形質転換、トランスフェクトもしくは形質導入することを含む方法を提供する。
【0124】
さらなる態様では、本発明は細胞中で標的核酸を改変する方法であって、細胞を上文で定義されるタンパク質もしくはタンパク質複合体をコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターで形質転換、トランスフェクトまたは形質導入し、次いで上文で定義されるターゲティングRNA分子を細胞内に送達することを含む方法を提供する。
【0125】
ガイド(すなわち、ターゲティング)RNA(gRNA)分子およびCasタンパク質またはポリペプチドが、リボ核タンパク質複合体の一部としてというよりむしろ別々に提供される実施形態では、gRNA分子は、Casタンパク質またはタンパク質複合体と同時であれ、別々にであれ、逐次であれ、細胞内への適切な形態の送達を必要とする。RNAを細胞内に導入するそのような形態は当業者には周知であり、従来のトランスフェクション法を介したin vitro(インビトロ)またはex vivo(エキソビボ)送達を含んでもよい。マイクロインジェクションおよび電気穿孔法、ならびにカルシウム共沈、ならびに市販のカチオンポリマーおよび脂質、ならびに細胞透過性ペプチド、細胞透過性(微粒子銃)粒子などの物理的方法をそれぞれ使用してもよい。例えば、ウイルス、特に好ましくはAAVを、例えば、本発明のCasタンパク質複合体または本発明のリボ核タンパク質複合体のウイルス粒子への(可逆的)融合を介して、細胞質にであれおよび/または核にであれ送達媒体として使用してもよい。
【0126】
別の態様では、本発明は標的核酸を改変する方法であって、少なくとも1つの機能的部分がマーカータンパク質またはレポータータンパク質であり、マーカータンパク質またはレポータータンパク質が標的核酸と会合し、好ましくは、マーカーが蛍光タンパク質、例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)である、方法を提供する。
【0127】
標的核酸を改変する上述の方法では、機能的部分はマーカーでもよく、マーカーは標的核酸と会合し、好ましくは、マーカーはタンパク質であり、任意選択で、蛍光タンパク質、例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、赤色蛍光タンパク質(RFP)またはmCherryである。in vitroであれ、ex vivoであれ、またはin vivoであれ、本発明の方法を使用すれば、好ましくは、高次コイルのプラスミドもしくは染色体などの高次構造、またはmRNAなどの一本鎖標的核酸の形態で、核酸分子中の標的遺伝子座を直接可視化することが可能である。標的遺伝子座の直接可視化は電子顕微鏡写真、または蛍光顕微鏡法を使用してもよい。しかし、本発明の方法の文脈では、有機色素分子、放射性標識および小分子でもよいスピン標識を含む、他の種類の標識をマーカーとして使用してもよいことは認識される。
【0128】
標的核酸がdsDNAである標的核酸を改変するための本発明の方法では、機能的部分はヌクレアーゼでもヘリカーゼ-ヌクレアーゼでもよく、改変は好ましくは所望の遺伝子座での一本鎖または二本鎖切断である。この方法で、DNAの独特な配列特異的切断は、リボ核タンパク質複合体に融合している適切な機能的部分を使用することにより操作することが可能である。最終的なリボ核タンパク質複合体のRNA成分の選ばれた配列は、機能的部分の作用に対する所望の配列特異性を提供する。
【0129】
したがって、本発明は、dsDNA分子からヌクレオチド配列の少なくとも一部を取り除くための、任意選択で遺伝子(単数または複数)の機能をノックアウトするための、細胞中の所望の遺伝子座でのdsDNA分子の非相同末端結合の方法であって、上文に記載される標的核酸を改変する方法のうちのいずれかを使用して二本鎖切断を作ることを含む方法も提供する。
【0130】
本発明は、既存のヌクレオチド配列を改変する、または所望のヌクレオチド配列を挿入するために、細胞中の所望の遺伝子座でdsDNA分子内に核酸を相同組換えする方法であって、上文に記載される標的核酸を改変する方法のうちのいずれかを使用して所望の遺伝子座で二本鎖切断を作ることを含む方法をさらに提供する。
【0131】
したがって、本発明は、上文に記載される方法のうちのいずれかに従って標的核酸配列を改変することを含む、生物中で遺伝子発現を改変する方法であって、核酸がdsDNAであり、機能的部分がDNA修飾酵素(例えば、メチラーゼまたはアセチラーゼ)、転写活性化因子または転写リプレッサーから選択される、方法も提供する。
【0132】
本発明は、上文に記載される方法のうちのいずれかに従って標的核酸配列を改変することを含む、生物中で遺伝子発現を改変する方法であって、核酸がmRNAであり、機能的部分はリボヌクレアーゼであり、任意選択でエンドヌクレオアーゼ、3’エキソヌクレアーゼまたは5’エキソヌクレアーゼから選択される、方法をさらに提供する。
【0133】
標的核酸はDNA、RNAまたは合成核酸でもよい。好ましくは、標的核酸はDNA、好ましくはdsDNAである。
【0134】
しかし、標的核酸はRNA、好ましくはmRNAでも可能である。代わりに、したがって、本発明は、標的核酸を改変する方法であって、標的核酸がRNAである、方法も提供する。
【0135】
別の態様では、本発明は、標的核酸を改変する方法であって、核酸がdsDNAであり、少なくとも1つの機能的部分がヌクレアーゼまたはヘリカーゼ-ヌクレアーゼであり、改変が所望の遺伝子座での一本鎖または二本鎖切断である、方法を提供する。
【0136】
別の態様では、本発明は、細胞中で標的核酸を改変する方法であって、改変により所望の遺伝子座で遺伝子発現のサイレンシングが生じ、
a.dsDNA分子で二本鎖切断を作るステップと、
b.非相同末端結合(NHEJ)により細胞中でdsDNA分子を修復するステップと
を含む方法を提供する。
【0137】
別の態様では、本発明は、細胞中で標的核酸を改変する方法であって、既存のヌクレオチド配列が改変もしくは欠失され、および/または所望の位置で所望のヌクレオチド配列が挿入され、
a.所望の遺伝子座で二本鎖切断を作るステップと、
b.相同組換えにより細胞中でdsDNA分子を修復するステップと
を含む方法を提供する。
【0138】
別の態様では、本発明は、上文に記載の標的核酸配列を改変することを含む、細胞中で遺伝子発現を改変する方法であって、核酸がdsDNAであり、機能的部分がDNA修飾酵素(例えば、メチラーゼまたはアセチラーゼ)、転写活性化因子または転写リプレッサーから選択される、方法を提供する。
【0139】
別の態様では、本発明は、上文に記載の標的核酸配列を改変することを含む、細胞中で遺伝子発現を改変する方法であって、核酸がmRNAであり、機能的部分がリボヌクレアーゼであり、任意選択でエンドヌクレオアーゼ、3’エキソヌクレアーゼまたは5’エキソヌクレアーゼから選択される、方法を提供する。
【0140】
別の態様では、本発明は上文に記載の標的核酸を改変する方法であって、45℃と100℃の間の温度で実行される方法を提供する。好ましくは、方法は50℃でまたはそれよりも高い温度で実行される。より好ましくは、方法は55℃と80℃の間の温度で実行される。最適には、方法は60℃と65℃の間の温度で実行される。代替的に、本方法は、20℃と45℃の間の温度で行うことができる。より好ましくは、30℃と45℃の間の温度である。さらにより好ましくは、37℃と45℃の間の温度である。
【0141】
上文に記載される標的核酸を改変する方法のうちのいずれにおいても、細胞は原核細胞でもよく、または代わりに真核細胞でもよい。
【0142】
宿主細胞
有利なことに、本発明は広範な適用性があり、本発明の宿主細胞は、培養することが可能であるいかなる遺伝的に扱いやすい生物に由来してもよい。したがって、本発明は上文に記載される方法により形質転換される宿主細胞を提供する。本発明は、二本鎖標的ポリヌクレオチドにおける標的核酸配列を有する形質転換細胞を提供し、前記細胞は、本明細書で提供されるCasタンパク質またはポリペプチド、および本明細書で提供される少なくとも1つのターゲティングRNA分子を含み、発現ベクターは、前記Casタンパク質および前記ターゲティングRNA分子のうちの少なくとも1つをコードする核酸を含む。
【0143】
適切な宿主細胞は原核生物でも真核生物でもよい。特に、遺伝的に利用しやすく、培養することが可能である原核または真核細胞、例えば、原核細胞、真菌細胞、植物細胞およびヒト細胞を含む(が胚性幹細胞は含まない)動物細胞を含む、一般に使用されている宿主細胞を、本発明に従って使用するために選択することができる。好ましくは、宿主細胞は原核細胞、真菌細胞、植物細胞、原生生物細胞または動物細胞から選択されることになる。本発明に従って使用するための好ましい宿主細胞は、典型的には高成長速度を示し、容易に培養されおよび/もしくは形質転換され、短い世代時間を示す種、付随する確立した遺伝資源を有する種または特定の条件下で異種タンパク質の最適発現のために選択され、改変されもしくは合成された種に一般に由来している。目的のタンパク質が最終的には特定の工業的、農業的、化学的または治療的状況で使用されることになる本発明の好ましい実施形態では、適切な宿主細胞は、目的のタンパク質が配置されることになる所望の特定の条件または細胞状況に基づいて選択してもよい。好ましくは、宿主細胞は原核細胞になる。好ましい実施形態では、宿主細胞は細菌細胞である。宿主細胞は、例えば、大腸菌(Escherichia coli(E. coli))細胞でもよい。好ましくは、宿主細胞は好熱性細菌の細胞になる。
【0144】
本明細書に記載される本発明の方法および使用は、細菌細胞のゲノムを改変するために使用することができる。特定の実施形態では、細菌は好熱性細菌であり、細菌は、好ましくは、アシディチオバチルス(Acidithiobacillus)属種(アシディチオバチルス・カルドゥス(Acidithiobacillus caldus)を含む);エアリバチルス(Aeribacillus)属種(エアリバチルス・パリダス(Aeribacillus pallidus)を含む);アリシクロバチルス(Alicyclobacillus)属種(アリシクロバチルス・アシドカラダリス(Alicyclobacillus acidocaldarius)、アリシクロバチルス・アシドテレストリス(Alicyclobacillus acidoterrestris)、アリシクロバチルス・シクロヘプタニクス(Alicyclobacillus cycloheptanicusl)、アリシクロバチルス・ヘスペリダム(Alicyclobacillus hesperidum)を含む);アノキシバチルス(Anoxybacillus)属種(アノキシバチルス・カルディプロテオリティクス(Anoxybacillus caldiproteolyticus)、アノキシバチルス・フラビサーマス(Anoxybacillus flavithermus)、アノキシバチルス・ルピエンシス(Anoxybacillus rupiensis)、アノキシバチルス・テピダマンス(Anoxybacillus tepidamans)を含む);バチルス(Bacillus)属種(バチルス・カルドリティクス(Bacillus caldolyticus)、バチルス・カルドテナクス(Bacillus caldotenax)、バチルス・カルドベロクス(Bacillus caldovelox)、バチルス・コアグランス(Bacillus coagulans)、バチルス・クラウシイ(Bacillus clausii)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・メタノリクス(Bacillus methanolicus)、バチルス・スミシイ(Bacillus smithii)(バチルス・スミシイ(Bacillus smithii)ET138を含む)、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)、バチルス・サーモコプリアエ(Bacillus thermocopriae)、バチルス・サーモラクティス(Bacillus thermolactis)、バチルス・サーモアミロボランス(Bacillus thermoamylovorans)、バチルス・サーモレオボランス(Bacillus thermoleovorans)を含む);カルディバチルス(Caldibacillus)属種(カルディバチルス・デビリス(Caldibacillus debilis)を含む);カルディセルロシルプター(Caldicellulosiruptor)属種(カルディセルロシルプター・ベシイ(Caldicellulosiruptor bescii)、カルディセルロシルプター・ハイドロテルマリス(Caldicellulosiruptor hydrothermalis)、カルディセルロシルプター・クリストヤンソニイ(Caldicellulosiruptor kristjanssonii)、カルディセルロシルプター・クロノトスキエンシス(Caldicellulosiruptor kronotskyensis)、カルディセルロシルプター・ラクトアセチクス(Caldicellulosiruptor lactoaceticus)、カルディセルロシルプター・オブシディアンシス(Caldicellulosiruptor obsidiansis)、カルディセルロシルプター・オウエンセンシス(Caldicellulosiruptor owensensis)、カルディセルロシルプター・サッカロリティクス(Caldicellulosiruptor saccharolyticus)を含む);クロストリジウム(Clostridium)属種(クロストリジウム・クラリフラブン(Clostridium clariflavum)、クロストリジウム・ストラミニソルベンス(Clostridium straminisolvens)、クロストリジウム・テピディプロフンディ(Clostridium tepidiprofundi)、クロストリジウム・サーモブチリクム(Clostridium thermobutyricum)、クロストリジウム・サーモセルム(Clostridium thermocellum)、クロストリジウム・サーモサクシノゲネス(Clostridium thermosuccinogenes)、クロストリジウム・サーモパルマリウム(Clostridium thermopalmarium)を含む);デイノコックス(Deinococcus)属種(デイノコックス・セルロシリティクス(Deinococcus cellulosilyticus)、デイノコックス・デセルティ(Deinococcus deserti)、デイノコックス・ゲオテルマリス(Deinococcus geothermalis)、デイノコックス・ムライイ(Deinococcus murrayi)、デイノコックス・ラディオデュランス(Deinococcus radiodurans)を含む);デフルビイタレア(Defluviitalea)属種(デフルビイタレア・ファフィフィラ(Defluviitalea phaphyphila)を含む)、デスルホトマクルム(Desulfotomaculum)属種(デスルホトマクルム・カルボキシジボランス(Desulfotomaculum carboxydivorans)、デスルホトマクルム・ニグリフィカンス(Desulfotomaculum nigrificans)、デスルホトマクルム・サリヌム(Desulfotomaculum salinum)、デスルホトマクルム・ソルファタリクム(Desulfotomaculum solfataricum)を含む);デスルフレラ(Desulfurella)属種(デスルフレラ・アセチボランス(Desulfurella acetivorans)を含む);デスルフロバクテリウム(Desulfurobacterium)属種(デスルフロバクテリウム・サーモリトトロフム(Desulfurobacterium thermolithotrophum)を含む);ゲオバチルス(Geobacillus)属種(ゲオバチルス・イシギアヌス(Geobacillus icigianus)、ゲオバチルス・カルボキシロシリティクス(Geobacillus caldoxylosilyticus)、ゲオバチルス・ユラシクス(Geobacillus jurassicus)、ゲオバチルス・ガラクトシダシウス(Geobacillus galactosidasius)、ゲオバチルス・カウストフィルス(Geobacillus kaustophilus)、ゲオバチルス・リツアニクス(Geobacillus lituanicus)、ジェオバシラス・ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)、ゲオバチルス・スブテラネウス(Geobacillus subterraneus)、ゲオバチルス・テルマンタルクティクス(Geobacillus thermantarcticus)、ゲオバチルス・サーモカネヌラトゥス(Geobacillus thermocatenulatus)、ゲオバチルス・サーモデニトリフィカンス(Geobacillus thermodenitrificans)、ゲオバチルス・サーモグルコシダンス(Geobacillus thermoglucosidans)、ゲオバチルス・サーモレオボランス(Geobacillus thermoleovorans)、ゲオバチルス・トエビイ(Geobacillus toebii)、ゲオバチルス・ウゼネンシス(Geobacillus uzenensis)、ゲオバチルス・ブルカニイ(Geobacillus vulcanii)、ゲオバチルス・ザリハエ(Geobacillus zalihae)を含む);ハイドロジェノバクター(Hydrogenobacter)属種(ハイドロジェノバクター・サーモフィレス(Hydrogenobacter thermophiles)を含む);ヒドロゲノバクルム(Hydrogenobaculum)属種(ヒドロゲノバクルム・アシドフィルム(Hydrogenobaculum acidophilum)を含む);イグナビバクテリウム(Ignavibacterium)属種(イグナビバクテリウム・アルブム(Ignavibacterium album)を含む);ラクトバチルス(Lactobacillus)属種(ラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus)、ラクトバチルス・デルブルエクキイ(Lactobacillus delbrueckii)、ラクトバチルス・イングルビエイ(Lactobacillus ingluviei)、ラクトバチルス・サーモトレランス(Lactobacillus thermotolerans)を含む);マリニテルムス(Marinithermus)属種(マリニテルムス・ヒドロテルマリス(Marinithermus hydrothermalis)を含む);モーレラ(Moorella)属種(モーレラ・サーモアセチカ(Moorella thermoacetica)を含む);オセアニテルムス(Oceanithermus)属種(オセアニテルムス・デスルフランス(Oceanithermus desulfurans)、オセアニテルムス・プロフンドゥス(Oceanithermus profundus)を含む);パエニバシラス(Paenibacillus)属種(パエニバシラ(Paenibacillus)属種J2、パエニバシラス・マリヌム(Paenibacillus marinum)、パエニバシラ・サーモアエロフィルス(Paenibacillus thermoaerophilus)を含む);ペルセフォネラ(Persephonella)属種(ペルセフォネラ・グアイマセンシス(Persephonella guaymasensis)、ペルセフォネラ・ヒドロゲニフィラ(Persephonella hydrogeniphila)、ペルセフォネラ・マリナ(Persephonella marina)を含む);ロドテルムス(Rhodothermus)属種(ロドテルムス・マリヌス(Rhodothermus marinus)、ロドテルムス・オバメンシス(Rhodothermus obamensis)、ロドテルムス・プロフンディ(Rhodothermus profundi)を含む);スルホバチルス(Sulfobacillus)属種(スルホバチルス・アシドフィルス(Sulfobacillus acidophilus)を含む);スルフリヒドロゲニビウム(Sulfurihydrogenibium)属種(スルフリヒドロゲニビウム・アゾレンセ(Sulfurihydrogenibium azorense)、スルフリヒドロゲニビウム・クリストヤンソニイ(Sulfurihydrogenibium kristjanssonii)、スルフリヒドロゲニビウム・ロドマニイ(Sulfurihydrogenibium rodmanii)、スルフリヒドロゲニビウム・イロウストネンセ(Sulfurihydrogenibium yellowstonense)を含む);シンビオバクテリウム(Symbiobacterium)属種(シンビオバクテリウム・サーモフィルム(Symbiobacterium thermophilum)、シンビオバクテリウム・トエビイ(Symbiobacterium toebii)を含む);サーモアンアエロバクター(Thermoanaerobacter)属種(サーモアンアエロバクター・ブロッキイ(Thermoanaerobacter brockii)、サーモアンアエロバクター・エタノリクス(Thermoanaerobacter ethanolicus)、サーモアンアエロバクター・イタリクス(Thermoanaerobacter italicus)、サーモアンアエロバクター・キブイ(Thermoanaerobacter kivui)、サーモアンアエロバクター・マリアネンシス(Thermoanaerobacter marianensis)、サーモアンアエロバクター・マトラニイ(Thermoanaerobacter mathranii)、サーモアンアエロバクター・シュードエタノリクス(Thermoanaerobacter pseudoethanolicus)、サーモアンアエロバクター・ウィエゲリイ(Thermoanaerobacter wiegelii);サーモアンアエロバクテリウム(Thermoanaerobacterium)属種(サーモアンアエロバクテリウム・アシジトレランス(Thermoanaerobacterium aciditolerans)、サーモアンアエロバクテリウム・アオテアロエンセ(Thermoanaerobacterium aotearoense)、サーモアンアエロバクテリウム・エタノリクス(Thermoanaerobacterium ethanolicus)、サーモアンアエロバクテリウム・シュードエタノリクス(Thermoanaerobacterium pseudoethanolicus)、サーモアンアエロバクテリウム・サッカロリティクム(Thermoanaerobacterium saccharolyticum)、サーモアンアエロバクテリウム・サーモサッカロリティクム(Thermoanaerobacterium thermosaccharolyticum)、サーモアンアエロバクテリウム・キシラノリティクム(Thermoanaerobacterium xylanolyticum)を含む);サーモバチルス(Thermobacillus)属種(サーモバチルス・コンポスティ(Thermobacillus composti)、サーモバチルス・キシラニリティクス(Thermobacillus xylanilyticus)を含む);サーモクリニス(Thermocrinis)属種(サーモクリニス・アルブス(Thermocrinis albus)、サーモクリニス・ルベル(Thermocrinis ruber)を含む);サーモデュルファタトル(Thermodulfatator)属種、サーモデスルファタトル・アトランティクス(Thermodesulfatator atlanticus)、サーモデスルファタトル・アウトトロフィクス(Thermodesulfatator autotrophicus)、サーモデスルファタトル・インディクス(Thermodesulfatator indicus)を含む);サーモデスルフォバクテリウム(Thermodesulfobacterium)属種(サーモデスルフォバクテリウム・コミュネ(Thermodesulfobacterium commune)、サーモデスルフォバクテリウム・ヒドロゲニフィルム(Thermodesulfobacterium hydrogeniphilum)を含む);サーモデスルフォビウム(Thermodesulfobium)属種(サーモデスルフォビウム・ナルゲンセ(Thermodesulfobium narugense)を含む);サーモデスルフォビブリオ(Thermodesulfovibrio)属種(サーモデスルフォビブリオ・アグレガンス(Thermodesulfovibrio aggregans)、サーモデスルフォビブリオ・チオフィルス(Thermodesulfovibrio thiophilus)、サーモデスルフォビブリオ・イエロウストニイ(Thermodesulfovibrio yellowstonii)を含む);サーモシフォ(Thermosipho)属種(サーモシフォ・アフリカヌス(Thermosipho africanus)、サーモシフォ・アトランティクス(Thermosipho atlanticus)、サーモシフォ・メラネシエンシス(The





rmosipho melanesiensis)を含む);テルモトガ(Thermotoga)属種(テルモトガ・マリチマ(Thermotoga maritima)、テルモトガ・ネオポリタナ(Thermotoga neopolitana)、テルモトガ(Thermotoga)属種RQ7を含む);サーモビブリオ(Thermovibrio)属種(サーモビブリオ・アモニフィカンス(Thermovibrio ammonificans)、サーモビブリオ・ルベル(Thermovibrio ruber)を含む);サーモビルガ(Thermovirga)属種(サーモビルガ・リエニイ(Thermovirga lienii)を含む)およびテルムス(Thermus)属種(テルムス・アクアティクス(Thermus aquaticus)、テルムス・カルドフィルス(Thermus caldophilus)、テルムス・フラブス(Thermus flavus)、テルムス・スコトドゥクツス(Thermus scotoductus)、テルムス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)を含む);チオバチルス・ネアポリタヌス(Thiobacillus neapolitanus)から選択される。
【0145】
別の態様では、本明細書に記載される方法または使用は、中温性細菌を改変するために使用することができる。好ましい実施形態では、細菌は、アシディチオバシラス(Acidithiobacillus)属種(アシディチオバチルス・カルドゥス(Acidithiobacillus caldus)を含む);アクチノバチルス(Actinobacillus)属種(アクチノバチルス・サクシノゲネス(Actinobacillus succinogenes)を含む);アナエロビオスピリルム(Anaerobiospirillum)属種(アナエロビオスピリルム・スクシニシプロドュセンス(Anaerobiospirillum succiniciproducens)を含む);バチルス(Bacillus)属種(バチルス・アルカリフィルス(Bacillus alcaliphilus)、バチルス・アミロリクエファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルス・シルクランス(Bacillus circulans)、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)、バチルス・クラウシイ(Bacillus clausii)、バチルス・フィルムス(Bacillus firmus)、バチルス・ハロデュランス(Bacillus halodurans)、バチルス・ラウツス(Bacillus lautus)、バチルス・レンツス(Bacillus lentus)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・メガトテリウム(Bacillus megaterium)、バチルス・プミルス(Bacillus pumilus)、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)、バチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)を含む);バスフィア(Basfia)属種(バスフィア・スクシニシプロドュセンス(Basfia succiniciproducens)を含む);ブレビバチルス(Brevibacillus)属種(ブレビバチルス・ブレビス(Brevibacillus brevis)を含む);ブレビバチルス・ラテロスポラス(Brevibacillus laterosporus);クロストリジウム(Clostridium)属種(クロストリジウム・アセトブチリクム(Clostridium acetobutylicum)、クロストリジウム・アウトエタノゲヌム(Clostridium autoethanogenum)、クロストリジウム・ベイジェリンキイ(Clostridium beijerinkii)、クロストリジウム・カルボキシジボランス(Clostridium carboxidivorans)、クロストリジウム・セルロリティカム(Clostridium cellulolyticum)、クロストリジウム・ルジュングダリイ(Clostridium ljungdahlii)、クロストリジウム・パステウリアヌム(Clostridium pasteurianum)、クロストリジウム・パーフリンジェンス(Clostridum perfringens)、クロストリジウム・ラグスダレイ(Clostridium ragsdalei)、クロストリジウム・サッカロブチリクム(Clostridium saccharobutylicum)、クロストリジウム・サッカロペルブチルアセトニウム(Clostridium saccharoperbutylacetonium)を含む);コリネバクテリウム(Corynebacterium)属種(コリネバクテリウム・グルタミクム(Corynebacterium glutamicum)を含む);デスルフィトバクテリウム(Desulfitobacterium)属種(デスルフィトバクテリウム・デハロゲナンス(Desulfitobacterium dehalogenans)、デスルフィトバクテリウム・ハフニエンセ(Desulfitobacterium hafniense)を含む);デスルホトマクルム(Desulfotomaculum)属種(デスルホトマクルム・アセトキシダンス(Desulfotomaculum acetoxidans)、デスルホトマクルム・ギブソニアエ(Desulfotomaculum gibsoniae)、デスルホトマクルム・レドュセンス(Desulfotomaculum reducens)、デスルホトマクルム・ルミニス(Desulfotomaculum ruminis)を含む);エンテロバクター(Enterobacter)属種(エンテロバクター・アサブリアエ(Enterobacter asburiae)を含む);エンテロコッカス(Enterococcus)属種(エンテロコッカス・ファエカリス(Enterococcus faecalis)を含む);エシェリキア(Escherichia)属種(大腸菌(Escherichia coli)を含む);ラクトバチルス(Lactobacillus)属種(ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・アミロフィルス(Lactobacillus amylophilus)、ラクトバチルス・アミロボルス(Lactobacillus amylovorus)、ラクトバチルス・アニマリス(Lactobacillus animalis)、ラクトバチルス・アリゾネンシス(Lactobacillus arizonensis)、ラクトバチルス・ババリクス(Lactobacillus bavaricus)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス・ブクネリ(Lactobacillus buchneri)、ラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus)、ラクトバチルス・カセイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・コリノフォルミス(Lactobacillus corynoformis)、ラクトバチルス・クリスパツス(Lactobacillus crispatus)、ラクトバチルス・クルバツス(Lactobacillus curvatus)、ラクトバチルス・デルブルエクキイ(Lactobacillus delbrueckii)、ラクトバチルス・フェルメンツム(Lactobacillus fermentum)、ラクトバチルス・ガセリイ(Lactobacillus gasseri)、ラクトバチルス・ヘルベティクス(Lactobacillus helveticus)、ラクトバチルス・ジョンソニイ(Lactobacillus johnsonii)、ラクトバチルス・ペントスス(Lactobacillus pentosus)、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・レウテリ(Lactobacillus reuteri)、ラクトバチルス・ラムノスス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバチルス・サケイ(Lactobacillus sakei)、ラクトバチルス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius)、ラクトバチルス・サンフリスセンシス(Lactobacillus sanfriscensis)を含む);マンヘイミア(Mannheimia)属種(マンヘイミア・スクシニシプロドュセンス(Mannheimia succiniciproducens)を含む);パエニバシラス(Paenibacillus)属種(パエニバチルス・アルベイ(Paenibacillus alvei)、パエニバチルス・ベイジンゲンシス(Paenibacillus beijingensis)、パエニバチルス・ボレアリス(Paenibacillus borealis)、パエニバチルス・ダウシ(Paenibacillus dauci)、パエニバチルス・ドュルス(Paenibacillus durus)、パエニバチルス・グラミニス(Paenibacillus graminis)、パエニバチルス・ラルバエ(Paenibacillus larvae)、パエニバチルス・レンチモルブス(Paenibacillus lentimorbus)、パエニバチルス・マセランス(Paenibacillus macerans)、パエニバチルス・ムシラギノスス(Paenibacillus mucilaginosus)、パエニバチルス・オドリフェル(Paenibacillus odorifer)、パエニバチルス・ポリミクサ(Paenibacillus polymyxa)、パエニバチルス・ステリフェル(Paenibacillus stellifer)、パエニバチルス・テラエ(Paenibacillus terrae)、パエニバチルス・ブルムクイエンシス(Paenibacillus wulumuqiensis)を含む);ペディオコッカス(Pediococcus)属種(ペディオコッカス・アシディラクチシ(Pediococcus acidilactici)、ペディオコッカス・クラウセニイ(Pediococcus claussenii)、ペディオコッカス・エタノリドュランス(Pediococcus ethanolidurans)、ペディオコッカス・ペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)を含む);サルモネラ・チフィムリウム(Salmonella typhimurium);スポロラクトバチルス(Sporolactobacillus)属種(スポロラクトバチルス・イヌリヌス(Sporolactobacillus inulinus)、スポロラクトバチルス・ラエボラクチクス(Sporolactobacillus laevolacticus)を含む);スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus);ストレプトコッカス(Streptococcus)属種(ストレプトコッカス・アガラクティアエ(Streptococcus agalactiae)、ストレプトコッカス・ボビス(Streptococcus bovis)、ストレプトコッカス・エクイシミリス(Streptococcus equisimilis)、ストレプトコッカス・フェアカリス(Streptococcus feacalis)、ストレプトコッカス・ムタンス(Streptococcus mutans)、ストレプトコッカス・オラリス(Streptococcus oralis)、肺炎レンサ球菌(Streptococcus pneumonia)、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、ストレプトコッカス・サリバリウス(Streptococcus salivarius)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)、ソブリヌス菌(Streptococcus sobrinus)、ストレプトコッカス・ウベリス(Streptococcus uberis)を含む);ストレプトマイセス(Streptomyces)属種(ストレプトマイセス・アクロモゲネス(Streptomyces achromogenes)、ストレプトマイセス・アベルミチリス(Streptomyces avermitilis)、ストレプトマイセス・コエリコロル(Streptomyces coelicolor)、ストレプトマイセス・グリセウス(Streptomyces griseus)、ストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans)、ストレプトマイセス・パルブルス(Streptomyces parvulus)、ストレプトマイセス・ヴェネズエラエ(Streptomyces venezuelae)、ストレプトマイセス・ビナセウス(Streptomyces vinaceus)を含む);テトラジェノコッカス(Tetragenococcus)属種(テトラジェノコッカス・ハロフィルス(Tetragenococcus halophilus)を含む)およびザイモモナス(Zymomonas)属種(ザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)を含む)から選択される。
【0146】
さらなる態様では、本明細書で定義される方法または使用は、酵母または真菌のゲノムを改変するために使用することができる。特定の実施形態では、真菌種は、中温性であり、好ましくは、真菌は、以下に限定されないが、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)、アスペルギルス・ニゲル(Aspergillus niger)、アスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)、コウジカビ(Aspergillus oryzae)およびアスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)を含めたアスペルギルス(Aspergillus)属種から選択され、より好ましくは、アスペルギルス(Aspergillus)属種は、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)またはアスペルギルス・ニゲル(Aspergillus niger)である。中温真菌種は、カンジダ(Candida)属種である。
【0147】
本発明はさらに、好熱性酵母または真菌種を改変するための、本明細書で定義されている方法の使用に関し、好ましくは、真菌または酵母は、アスペルギルス(Aspergillus)属種(アスペルギルス・フミガツス(Aspergillus fumigatus)、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)、アスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)、アスペルギルス・ベルシコロル(Aspergillus versicolor)を含む);カナリオマイセス(Canariomyces)属種(カナリオマイセス・サーモフィル(Canariomyces thermophile)を含む);カエトミウム(Chaetomium)属種(カエトミウム・メソポタミクム(Chaetomium mesopotamicum)、カエトミウム・サーモフィルム(Chaetomium thermophilum)を含む);カンジダ(Candida)属種(カンジダ・ボビナ(Candida bovina)、カンジダ・スロオフィイ(Candida sloofii)、カンジダ・サーモフィラ(Candida thermophila)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、カンジダ・クルセイ(Candida krusei)(=イサトケンキア・オリエンタリス(Issatchenkia orientalis))を含む);セロフォラ(Cercophora)属種(セロフォラ・コロナテ(Cercophora coronate)、セロフォラ・セプテントリオナリス(Cercophora septentrionalis)を含む);コネメリア(Coonemeria)属種(コネメリア・アエギプティアカ(Coonemeria aegyptiaca)を含む);コリナスカス(Corynascus)属種(コリナスカス・サーモフィルス(Corynascus thermophiles)を含む);ゲオトリクム(Geotrichum)属種(ゲオトリクム・カンディドゥム(Geotrichum candidum)を含む);クルイベロマイセス(Kluyveromyces)属種(クルイベロマイセス・フラジリス(Kluyveromyces fragilis)、クルイベロマイセス・マルキシアヌス(Kluyveromyces marxianus)を含む);マルブランケア(Malbranchea)属種(マルブランケア・シンナモメア(Malbranchea cinnamomea)、マルブランケア・スルフレア(Malbranchea sulfurea)を含む);メラノカルプス(Melanocarpus)属種(メラノカルプス・アルボマイセス(Melanocarpus albomyces)を含む);ミセリオフトラ(Myceliophtora)属種(ミセリオフトラ・フェルグシイ(Myceliophthora fergusii)、ミセリオフトラ・サーモフィラ(Myceliophthora thermophila)を含む);マイコテルムス(Mycothermus)属種(マイコテルムス・サーモフィレス(Mycothermus thermophiles)(=スキタリジウム・サーモフィルム(Scytalidium thermophilum)/トルラ・サーモフィラ(Torula thermophila))を含む);マイリオコックム(Myriococcum)属種(マイリオコックム・サーモフィルム(Myriococcum thermophilum)を含む);パエキロマイセス(Paecilomyces)属種(パエキロマイセス・サーモフィラ(Paecilomyces thermophila)を含む);レメルソニア(Remersonia)属種(レメルソニア・サーモフィラ(Remersonia thermophila)を含む);リゾムコル(Rhizomucor)属種(リゾムコル・プシルス(Rhizomucor pusillus)、リゾムコル・タウリクス(Rhizomucor tauricus)を含む);サッカロマイセス(Saccharomyces)属種(出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)を含む)、シゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces)属種(分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe)を含む)、スキタリジウム(Scytalidium)属(スキタリジウム・サーモフィルム(Scytalidium thermophilum)を含む);ソルダリス(Sordaris)属(ソルダリア・サーモフィラ(Sordaria thermophila)を含む);サーモアスカス(Thermoascus)属種(サーモアスカス・アウランティアクス(Thermoascus aurantiacus)、サーモアスカス・サーモフィレス(Thermoascus thermophiles)を含む);テルモムコル(Thermomucor)属種(テルモムコル・インディカエ-セウダティカエ(Thermomucor indicae-seudaticae)を含む)、およびサーモマイセス(Thermomyces)属種(サーモマイセス・イバダネンシス(Thermomyces ibadanensis)、サーモマイセス・ラヌギノスス(Thermomyces lanuginosus)
を含む)から選択される。
【0148】
前述の一覧表示において、太字の活字で特定されている微生物は、本発明の使用に特に好適/適用可能であることが見いだされた。
【0149】
一部の好ましい本発明の実施形態には、好熱性細菌(アエリバチルス(Aeribacillus)属、アリシクロバチルス(Alicyclobacillus)属、アノキシバチルス(Anoxybacillus)属、バチルス(Bacillus)属、ゲオバチルス(Geobacillus)属を含む);パエニバシラス(Paenibacillus)属種;サーモフィリック・クロストリジア(Thermophilic clostridia)(アンアエロバクター(Anaerobacter)属、アンアエロバクテリウム(Anaerobacterium)属、カルディセルロシルプター(Caldicellulosiruptor)属、クロストリジウム(Clostridium)属、モーレラ(Moorella)属、サーモアンアエロバクター(Thermoanaerobacter)属、サーモアンアエロバクテリウム(Thermoanaerobacterium)属、サーモブラキウム(Thermobrachium)属、サーモハロバクター(Thermohalobacter)属種を含む)、または1つもしくは複数の好熱性ラクトバチルス(Lactobacillus)属種から選択される1つもしくは複数の好熱性微生物、または1つもしくは複数の好熱性微生物、ならびにバチルス(bacillus)属種、大腸菌(Escherichia coli)およびラクトバチルス(Lactobacillus)属種から選択される中温細菌が含まれる。
【0150】
本発明は、今や特定の実施形態に関連しておよび添付図に関連して詳細に説明されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0151】
図1】Cas9タンパク質配列の近隣結合樹を示す図である。pBLASTまたはPSI-BLASTに基づいて菌株T12と40%を超える配列類似性を有するすべての配列、ならびに現在十分に特徴付けられている配列(化膿性連鎖球菌(S. pyogenes)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(S. thermophiles)およびアクチノマイセス・ネスランディ(A. naeslundii))、ならびに、これらの配列が40%より低い同一性であった場合、現在同定されている好熱性配列も含まれた。すべての好熱性配列では、T12に対するパーセント同一性は菌株名の後に示される。遺伝子識別子(gi)番号は種名の前に示される。説明文:閉環:好熱性(最適60℃より高い)Cas9配列、閉四角:熱耐性(最適<50℃)Cas9配列、開三角:中温性起源由来のゲノム編集目的で現在最も使用されているCas9配列;符号なし:中温性Cas9。結節点の値は1000レプリケートブートストラップ値を表し;スケールバーは部位当たりの推定アミノ酸置換を表す。
図2】Cas9遺伝子配列の近隣結合樹を示す図である。遺伝子レベルでの同一性は極端に乏しかった;タンパク質整列のために使用された生物と同じ生物由来の配列を遺伝子整列のために使用した。遺伝子識別子(gi)番号は種名の前に示されている。説明文:閉環:好熱性(最適60℃より高い)Cas9配列、閉四角:熱耐性(最適<50℃)Cas9配列、開三角:中温性起源由来のゲノム編集目的で現在最も使用されているCas9配列;符号なし:中温性Cas9。結節点の値は1000レプリケートブートストラップ値を表す。
図3-1】gtCas9(配列番号1)(II-C型)と十分に特徴付けられているII-C型(アクチノマイセス・ネスランディ(A. naeslundii)|「ana」;配列番号8)およびII-A型(化膿性連鎖球菌(S. pyogenes)|「pyo」;配列番号9およびストレプトコッカス・サーモフィルス(S. thermophilus))Cas9配列とのタンパク質配列整列を示す図である。重要な活性部位残基はよく保存されており、黒色矢印で示されている。Ana-Cas9およびPyo-Cas9について記載されているタンパク質ドメイン(Jinek, et al., 2014, Science 343: 1247997)は斜線囲みおよび類似の色付き文字で示されている。PAM認識ドメインは、化膿性連鎖球菌(S. pyogenes)II-A型系では決定されているが、いかなるII-C型系についても決定されておらず、したがって、化膿性連鎖球菌(S. pyogenes)配列でのみ示されている。
図3-2】gtCas9(配列番号1)(II-C型)と十分に特徴付けられているII-C型(アクチノマイセス・ネスランディ(A. naeslundii)|「ana」;配列番号8)およびII-A型(化膿性連鎖球菌(S. pyogenes)|「pyo」;配列番号9およびストレプトコッカス・サーモフィルス(S. thermophilus))Cas9配列とのタンパク質配列整列を示す図である。重要な活性部位残基はよく保存されており、黒色矢印で示されている。Ana-Cas9およびPyo-Cas9について記載されているタンパク質ドメイン(Jinek, et al., 2014, Science 343: 1247997)は斜線囲みおよび類似の色付き文字で示されている。PAM認識ドメインは、化膿性連鎖球菌(S. pyogenes)II-A型系では決定されているが、いかなるII-C型系についても決定されておらず、したがって、化膿性連鎖球菌(S. pyogenes)配列でのみ示されている。
図4】アクチノマイセス・ネスランディ(A. naeslundii)Cas9(Cas9-Ana)のタンパク質構成を示す図である(Jinek et al., 2014)。gtCas9は同じII-C型CRISPR系に属し、活性部位残基を同定することができた。
図5】相補的dsDNAのcrRNAガイドターゲティングの比較を示す図である。塩基対合は破線で示されている。RNAは黒色で、DNAは灰色で描かれている。crRNAスペーサーと標的プロトスペーサー間の塩基対合は太い黒色破線で示され、DNA鎖間およびRNA鎖間の塩基対合は太い灰色破線で示されている。crRNAの5’末端が示されている。I型中のPAM(小さい白色囲み)は標的鎖(プロトスペーサー)の下流に存在し、II型ではPAMは置き換えられた鎖のもう一方の末端に存在することに注目されたい。同様に、シード(標的DNA鎖との塩基対合が始まり、ミスマッチが許されないガイドの予想配列)はPAMの近くに位置しており、したがって、I型とII型で異なる(Van der Oost, 2014 ibid.)。パネルAは大腸菌(E. coli)のI型Cascade系の模式図を示している。crRNAは、内部スペーサー(灰色囲み、標的認識を可能にする31~32ヌクレオチド)を有し、8ヌクレオチド5’ハンドルおよびステムループ構造(ヘアピン)からなる29ヌクレオチド3’ハンドルで隣接している(Jore 2011 ibid.)。パネルBは化膿性連鎖球菌(S. pyogenes)のII型Cas9系の模式図を示している。crRNAはtracrRNAと塩基対合し、リボヌクレアーゼIIIによるプロセシングを可能にする(向かい合った黒色三角)。さらに、crRNAの5’末端はリボヌクレアーゼにより刈り込まれ(黒色三角)、典型的には20ヌクレオチドスペーサーを生じる。合成ループを導入してcrRNAとtracrRNAを連結し、単一ガイドRNA(sgRNA)を生じてもよいことに注目されたい(Jinek et al., 2012 ibid.)。
図6】G・サーモデニトリフィカンス(G. thermodenitrificans)T12型IIc CRISPR系の配列のアライメントを示す図である。
図7-1】gtCas9のin silicoでの、PAM予測をもたらすために得た6つの単一ヒットを示す図である。
図7-2】gtCas9のin silicoでの、PAM予測をもたらすために得た6つの単一ヒットを示す図である。
図8図7に例示したアライメントの結果を組み合わせたweblogoを示す図である。このweblogoは、weblogo.berkeley.eduを使用して生成した。
図9】精製済みgtCas9による、プラスミドを標的とした、60℃でのin vitro切断アッセイの結果を示すグラフである。このプラスミドは、PAM配列の8ヌクレオチド長の特異的配列変異体を含んだ。
図10】CCCCCCAA[配列番号11]PAM配列を含む標的プラスミドを使用する、gtCas9濃度の効果を検討するためのin vitroアッセイの結果を示すグラフである。
図11】ある範囲の温度にわたる、CCCCCCAA[配列番号11]PAM配列を含む標的プラスミドを使用する、in vitroアッセイの結果を示すグラフである。
図12】実施例9に説明した通り、選択プレート上のバチルス・スミシイ(Bacillus smithii)ET138細胞のコロニーの成長または不在により、gtCas9および8nt PAM配列を使用するバチルス・スミシイ(Bacillus smithii)ET138細胞のin vivoゲノム編集の結果を示すグラフである。コロニーは、図12中に矢印で示している。
図13】pyrF遺伝子を除外する、コロニーのPCRスクリーニングの結果を示すグラフである。このコロニーは、構築物3(ネガティブ対照)による、バチルス・スミシイ(Bacillus smithii)ET138細胞の変換後に生成した。15のコロニーをスクリーニングしたが、実施例9に説明されている通り、欠失遺伝子型-2.1kbのバンドサイズを示すものはなく、代わりにすべてが、野生型-2.9kbのバンドサイズを示した。
図14】pyrF遺伝子が欠失された、コロニーのPCRスクリーニングの結果を示すグラフである。このコロニーは、構築物1(PAM配列ATCCCCAA[配列番号21])による、バチルス・スミシイ(Bacillus smithii)ET138細胞の変換後に生成した。20のコロニーをスクリーニングし、実施例9に説明されている通り、1つが、欠失遺伝子型-2.1kbのバンドサイズを示した一方、残りは、野生型-2.9kbのバンドサイズと欠失遺伝子型-2.1kbのバンドサイズの両方を示した。野生型のみの遺伝子型は観察されなかった。
【発明を実施するための形態】
【0152】
以下は、本発明に従って使用されるCasタンパク質のポリヌクレオチドおよびアミノ酸配列である。
【0153】
[配列番号1]ゲオバチルス・サーモデニトリフィカンス(Geobacillus thermodenitrificans)T12 Cas9タンパク質アミノ酸配列
【0154】
【化1】
【0155】
[配列番号7]ゲオバチルス・サーモデニトリフィカンス(Geobacillus thermodenitrificans)T12 Cas9 DNA配列
【0156】
【化2-1】
【0157】
【化2-2】
【0158】
【化2-3】
【実施例
【0159】
[実施例1]
ゲオバチルス・サーモデニトリフィカンス(G. thermodenitrificans)の単離
驚くべきことに、ゲオバチルス・サーモデニトリフィカンス(G. thermodenitrificans)は、嫌気性条件下でリグノセルロース基質を分解することができる好熱菌についての±500単離菌のライブラリーの探索中に発見された。当初、±500単離菌のライブラリーが確立され、これはセルロースおよびキシラン上での単離により数回の選択ラウンド後に、110単離菌にまで削減された。110単離菌のこのライブラリーはゲオバチルス(Geobacillus)単離菌のみからなり、ゲオバチルス・サーモデニトリフィカンス(G. thermodenitrificans)がライブラリーの79%を占めていた。
【0160】
単離されたゲオバチルス・サーモデニトリフィカンス(G. thermodenitrificans)菌株は「T12」と命名された。G・サーモデニトリフィカンス(G. thermodenitrificans)T12に由来するCas9タンパク質は、「gtCas9」と命名された。
【0161】
[実施例2]
ゲオバチルス・サーモデニトリフィカンス(Geobacillus thermodenitrificans)でのCas9について必須のコンセンサス配列を定義する
以下のデータベース探索および整列が実施された。
pBLASTおよびnBLASTは社内BLASTサーバーで実施し、ゲオバチルス・サーモデニトリフィカンス(G. thermodenitrificans)T12のタンパク質または遺伝子配列を問い合わせ配列として使用した。このデータベースは2014年5月に最後にアップデートされ、したがって、最も最近に追加されたゲオバチルス(Geobacillus)ゲノムを含有していないが、通常のオンラインBLASTはT12配列の公開を防ぐために使用されなかった。BLAST中の40%を超えることが分かった配列同一性を図1に含む。
【0162】
もっと最近の配列データを含めるために、ゲオバチルス(Geobacillus)MAS1(gtCas9に最も密接に関係している)の配列を使用してNCBIウェブサイト上でPSI-BLASTを実施した(Johnson et al., 2008 Nucleic Acids Res. 36(Web Server issue): W5-9)。2連続ラウンドのPSI-BLASTが実施され、そこでは以下の基準:第1のラウンドでは最小配列包括度96%、ならびに第2および第3のラウンドでは97%、最小同一性40%、種当たり1つの菌株のみを満たした配列のみが次のラウンドで使用された。
【0163】
PSI-BLASTから生じる配列、ならびに内部サーバーpBLAST由来のT12に対して40%よりも大きな同一性を有し、PSI-BLASTには現われなかった配列を、現在十分に特徴付けられている中温性配列と、および、これらの配列がもっと離れた関係にある場合には、現在同定されているすべての好熱性配列とも整列させ、それから近隣結合樹を構築した(図1参照)。整列はClustalWを使用してMega6で実施し、この後近隣結合法を使用して樹を構築し、ブートストラップ解析は1000レプリケートを使用して実施した。
【0164】
問い合わせ配列としてゲオバチルス(Geobacillus)属種MAS1を使用してBLASTnを実施した場合、ゲオバチルス(Geobacillus)属種JF8 Cas9のみが88%の同一性で同定され、遺伝子レベルでは相同性が極めて少ないことを示していた。図2はClustal整列Cas9遺伝子配列の近隣結合樹である。
【0165】
ゲオバチルス・サーモデニトリフィカンス(G. thermodenitrificans)T12、アクチノマイセス・ネスランディ(A. naeslundii)および化膿性連鎖球菌(S. pyogenes)のタンパク質配列は、デフォルト設定のBLOSUM62を使用してCloneManagerでその配列を整列させることによりタンパク質ドメイン相同性についてさらに解析した(図3参照)。
【0166】
[実施例3]
CAS9の機能に不可欠であるコアアミノ酸モチーフおよび好熱性Cas9ヌクレアーゼの熱安定性を与えるコアアミノ酸モチーフを同定する
上記整列されたタンパク質配列のパーセント同一性は図1に与えられている。gtCas9はII-C型に属している。II-C型系の最もよく研究され、最近結晶化された構造はアクチノマイセス・ネスランディ(Actinomyces naeslundii)由来である(Jinek et al., 2014, Science 343: 1247997)。このタンパク質配列はgtCas9に対して20%の同一性しか示していないが、高度に保存された残基を推定するのに使用することが可能である。2つの十分に特徴付けられているII-A型系(化膿性連鎖球菌(S. pyogenes)およびストレプトコッカス・サーモフィルス(S. thermophilus))も分析に含まれた(Jinek et al., 2014, Science 343: 1247997;Nishimasu et al., 2014, Cell 156: 935-949)。これら4つのタンパク質配列の整列は図3に示されており、図4はアクチノマイセス・ネスランディ(A. naeslundii)について決定されたタンパク質構成(「Ana-Cas9」)を示している(Jinek et al., 2014, Science 343: 1247997)。T12(gtCas9)およびアクチノマイセス・ネスランディ(Actinomyces naeslundii)由来のCas9の長さは極めて類似しており(アクチノマイセス・ネスランディ(A. naeslundii)1101アミノ酸、gtCas9 1082アミノ酸)、gtCas9は類似するタンパク質構成を有すると予想されるが、Cas9-Anaに対する全体の配列同一性が20%にすぎないために、これはまだ確定されていない。Jinek et al.(Jinek et al., 2014, Science 343: 1247997)により記載されているアクチノマイセス・ネスランディ(A. naeslundii)および化膿性連鎖球菌(S. pyogenes)由来のCas9中の活性部位残基はすべてgtCas9において同定することができた(図3参照)。PAM結合ドメインは化膿性連鎖球菌(S. pyogenes)II-A型系については決定されているが、いかなるII-C型系についても決定されておらず、したがって、化膿性連鎖球菌(S. pyogenes)配列においてのみ示されている。さらに、PAM認識部位は、CRISPR系間だけでなく、同じ系を含有する種間でも大きく変化する。PAMに関するさらなる情報については、問題点4および将来計画を参照されたい。
【0167】
[実施例4]
ゲオバチルス・サーモデニトリフィカンス(G. thermodenitrificans)gtCas9のPAM配列の決定
原核生物CRISPR系が適応免疫系としてその宿主に役立ち(Jinek et al., 2012, Science 337: 816-821)、迅速で効果的な遺伝子工学のために使用することが可能であること(Mali et al., 2013, Nat Methods 10: 957-963)は確立されている。
【0168】
Cas9タンパク質はII型CRISPR系のための配列特異的ヌクレアーゼとして機能する(Makarova et al., 2011, Nat Rev Micro 9: 467-477)。小型crRNA分子は、繰り返し領域に連結している「スペーサー」(標的)からなり、CRISPR遺伝子座の転写およびプロセシング産物である。「スペーサー」は天然にはバクテリオファージのゲノムおよび可動遺伝要素に起源をもつが、遺伝子工学工程中に特定のヌクレオチド配列を標的にするように設計することも可能である(Bikard et al., 2013, Nucleic Acids Research 41: 7429-7437)。crRNA分子はそのDNA標的の同定のためのガイドとしてCas9により用いられる。スペーサー領域は、切断DNA領域の標的物、「プロトスペーサー」と同一である(Brouns et al., 2012, Science 337: 808-809)。PAM(プロトスペーサー隣接モチーフ)は、プロトスペーサーの隣にあり、Cas9による標的の認識に必要である(Jinek et al., 2012, Science 337: 816-821)。
【0169】
II型系に関する、in vitroまたはin vivoでのPAM決定検討を行うために、tracrRNA発現モジュールであるこの系のCRISPRアレイをin silicoで予測することが必要である。CRISPRアレイを、crRNAモジュールの特定に使用する。tracrRNA発現配列は、500bp窓隣接Cas9内、またはCas遺伝子とCRISPR遺伝子座との間のどちらかに位置する(Chylinski, K., et al. (2014) Classification and evolution of type II CRISPR-Cas systems. Nucleic Acids Res. 42, 6091-6105)。tracrRNAは、CRISPRアレイの直接繰り返しに対する相補性のレベルが高い、5’配列からなるはずであり、2つ以上のステムループ構造の予測構造、およびRho独立性転写停止シグナルが後に続く(Ran, F.A., et al. (2015) In vivo genome editing using Staphylococcus aureus Cas9. Nature 520, 186-191)。次に、キメラsgRNAモジュールを設計するために、crRNAおよびtracrRNA分子を使用することができる。sgRNAの5’末端は、トランケートされた20nt長のスペーサー、その後に、CRISPRアレイの16~20nt長のトランケートされた繰り返しからなる。この繰り返しの後に、対応するトランケートされた抗繰り返しおよびtracrRNAモジュールのステムループが続く。sgRNAの繰り返しおよび抗繰り返し部分は、GAAAリンカーにより一般に接続されている(Karvelis, T., et al. (2015) Rapid characterization of CRISPR-Cas9 protospacer adjacent motif sequence elements. Genome Biol. 16, 253)。
【0170】
G・サーモデニトリフィカンス(G.thermodenitrificans)T12型IIc CRISPR系のcas遺伝子(cas9、次いでcas1およびcas2の遺伝子が続く)は、T12染色体のアンチセンス鎖を使用して転写される。cas2遺伝子の後に、転写時に、多重ループを有するRNA構造を形成する、100bp長のDNA断片が続く。この構造は、明らかに、転写ターミネータとして働く。
【0171】
11の繰り返しおよび10のスペーサー配列を有するCRISPRアレイは、転写終止配列の上流に位置し、このアレイのリーダーは、このアレイの5’末端に位置する。tracrRNAに転写されるDNA遺伝子座は、cas9遺伝子の下流であることが予想される。CRISPRアレイから36bp長の繰り返しを含むcas9遺伝子の右側下流の325bp長の配列のアライメントにより、tracrRNA遺伝子座における36bp長の配列が、この繰り返しにほとんど同一であることが明らかになった(図6に示されている)。この結果により、本発明者らは、tracrRNA遺伝子座の転写の方向は、CRISPRアレイの転写の方向とは反対となるはずであるという結論に至った。したがって、tracrRNAの5’末端は、crRNAの3’末端に相補的であり、Cas9二重RNA分子により必要とされるものの形成に至る。
【0172】
[実施例5]
無作為化されたPAMを有する標的生成
ゲオバチルス・サーモデニトリフィカンス(G. thermodenitrificans)T12菌株のCRISPR II遺伝子座由来の2つの異なるスペーサーを、鋳型としてゲオバチルス・サーモデニトリフィカンス(G. thermodenitrificans)T12ゲノムDNAを使用してPCRにより増幅させた。2対の縮重プライマーをそれぞれのスペーサーの増幅のために使用した。
【0173】
第1に、「プロトスペーサー」断片の上流に6つの無作為ヌクレオチドの導入を引き起こす対を使用し、無作為化されたPAM配列を有するプロトスペーサーのプールを作製した。
【0174】
第2に、「プロトスペーサー」断片の下流に6つの無作為ヌクレオチドの導入を引き起こす対を使用し、無作為化されたPAM配列を有するプロトスペーサーのプールを作製した。
【0175】
作製された断片はpNW33nベクターにライゲートされ、6ヌクレオチド長PAMそれぞれの考えられる4096の異なる組合せすべてを有する「プロトスペーサー」構築物の4プールを作製した。構築されたDNAはゲオバチルス・サーモデニトリフィカンス(G. thermodenitrificans)T12細胞の形質転換のために使用された。細胞はクロラムフェニコール選択上に蒔かれ、それぞれのプロトスペーサープールから2×10を超える細胞がプールされることになる。プラスミドDNAはプールから抽出され、標的領域はPCR増幅されることになり、その産物はディープシークエンシングのために送られた。最も少ないリードを有するPAMは活性であると見なされ、その工程はこれらのPAMを有するスペーサーを含有するpNW33n構築物のみを用いて繰り返されることになる。ゲオバチルス・サーモデニトリフィカンス(G. thermodenitrificans)T12の形質転換効率が減少していることはPAMの活性を立証することになる。
【0176】
[実施例6]
gtCas9のPAM配列のin vitro決定
pRham:cas9gtベクターの構築
cas9gt遺伝子は、BG6927およびBG6928プライマーを使用する、G・サーモデニトリフィカンス(G. thermodenitrificans)T12ゲノムからPCR増幅し、1つの混合物中のpRham C-His Kanベクター(Lucigen)と一緒にした。この混合物を、提示されているプロトコルに従い、E.cloniサーモコンピテント細胞を変換するために使用した。変換混合物からの100μlを、37℃で一晩、成長させるため、LB+50カナマイシンプレート上でプレート培養した。形成したE.cloni::pRham:cas9gt単一コロニー3の中から、無作為に選択し、50μg/mlのカナマイシンを含有する10mlのLB培地中に播種した。各培養物からの1mlに滅菌グリセロールを最大で20%(v/v)の最終濃度まで添加することにより、グリセロール保存溶液を培養物から分離した。グリセロール保存溶液を-80℃で保管した。各培養物からの残りの9mlを、「GeneJET Plasmid Miniprep Kit」(Thermoscientific)プロトコルに従い、プラスミド単離に使用した。このプラスミドをcas9gtの配列確認のために送り、これらのプラスミドの1つを、右側配列を含む遺伝子を含有していることを確認した。対応する培養物は、gtCas9の非相同性の発現および精製のためにさらに使用した。
【0177】
E.cloni::pRham:cas9gtベクターにおける、gtCas9の非相同性の発現
対応するグリセロール保存溶液を含む10mlのLB+50カナマイシンを接種した後に、E.cloni::pRham:cas9gt事前培養物を調製した。37℃および180rpmで一晩、成長させた後、LB+50カナマイシン培地の200mlを接種するため、事前培養物から2mlを使用した。E.cloni::pRham:cas9gt培養物を37℃、180rpmで、OD600が0.7になるまで、インキュベートした。次に、0.2%w/vの最終濃度まで、L-ラムノースを加えることにより、gtCas9発現を誘発させた。この発現を8時間、進行させ、この後に、培養物を4700rpm、4℃で10分間、遠心分離し、細胞を収穫した。培地を廃棄し、ペレット化した細胞を、-20℃で保管するか、または以下のプロトコルに従い、細胞不含抽出物(CFE)の調製に使用した。
1.20ml音波照射緩衝液(20mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH=7.5)、100mMのNaCl、5mM MgCl2、5%(v/v)グリセロール、1mMのDTT)中に上記のペレットを再懸濁させる。
2.超音波処理(30秒のパルスを8回、その間、氷上で20秒間、冷却)によって1mlの細胞を破壊する。
3.不溶部分を沈殿させるために、35000g、4℃で15分間、遠心分離する。
4.上澄み液を除き、4℃で、または氷上でこの上澄み液を保管する。
【0178】
gtCas9に対するsgRNAモジュールを標的とするPAMライブラリーの設計および構築
G・サーモデニトリフィカンス(G. thermodenitrificans)T12株(上の実施例4を参照されたい)のゲノムにおいて、tracrRNAを発現するDNAモジュールのin silico決定の後に、単一分子におけるCRISPR/Cas9系のcrRNAおよびtracrRNAモジュールを組み合わせる、単一ガイド(sg)RNA発現DNAモジュールを設計した。プラスミドライブラリーのプロトスペーサーに相補的であるように、sgRNAの5’末端におけるスペーサーを設計し、モジュールを、T7プロモーターの転写制御下で設定した。pT7_sgRNA DNAモジュールは、Baseclearにより合成して、pUC57ベクターに受け、pUC57:pT7_sgRNAベクターを形成させた。DH5αの有能な大腸菌(E. coli)細胞(NEB)をベクターで形質転換し、この変換混合物を、100μg/mlアンピシリンを含有するLB寒天プレート上でプレート培養した。このプレートを37℃で一晩、インキュベートした。形成した単一コロニーのうちの3つを、100μg/mlのアンピシリンを含有する10mlのLB培地に播種した。各培養物からの1mlに滅菌グリセロールを最大で20%(v/v)の最終濃度まで添加することにより、グリセロール保存溶液を培養物から分離した。グリセロール保存溶液を-80℃で保管した。各培養物からの残りの9mlを、「GeneJET Plasmid Miniprep Kit」(Thermoscientific)プロトコルに従い、プラスミド単離に使用した。単離したプラスミドを使用して、pT7_sgRNAモジュールの増幅用のPCR鋳型として使用した。218bp長のpT7_sgRNA DNAモジュール(その中で、第1の18bpがpT7に相当する)は、プライマーBG6574およびBG6575を使用して得た。完全PCR混合物を1.5%アガロースゲル上で泳動させた。所望のサイズを有するバンドを切り取り、「Zymoclean(商標)ゲルDNA回収キット」プロトコルに従い精製した。
【0179】
in vitro転写(IVT)は、「HiScribe(商標)T7 High Yield RNA Synthesis Kit」(NEB)を使用して行った。精製済みpT7_sgRNA DNAモジュールを鋳型として使用した。IVT混合物を等しい体積のRNAローディング色素(NEB)と混合し、二次構造を破壊するため、70℃で15分間、加熱した。熱処理したIVT混合物を、変性ウレア-PAGE上で泳動し、得られたポリアクリルアミドゲルを、染色目的のため、SYBR Gold(Invitrogen)を10μl含有する100mlの0.5×TBE緩衝液中で10分間、エンバプティズ(embaptise)した。所望のサイズ(200nt)のバンドを切り取り、以下のRNA精製プロトコルに従い、sgRNAを精製した:
1.外科用メスを用いてRNAゲル剤断片を裁断し、1mlのRNA溶出緩衝液を加え、室温で一晩、放置した。
2.330μLの一定分量分を、新しい1.5mlの管に分割する。
3.事前冷却(-20℃)した100%EtOHを3体積分(990μl)加える。
4.-20℃で、60分間、インキュベートする。
5.マイクロ遠心器中、室温で、20分間、13000rpmで遠心分離する。
6.EtOHを除去して、70%EtOH1mlによりペレットを洗浄する。
7.マイクロ遠心器中、室温で、5分間、13000rpmで遠心分離する。
8.990μlの上澄み液を除去する。
9.55℃で15~20分間、サーモミキサー中の残りのEtOHを蒸発させる。
10.20μlのMQ中にペレットを再懸濁し、-20℃で保管する。
【0180】
7nt長のPAMライブラリーの設計および構築、ならびにライブラリーの線形化
PAMライブラリーの設計および構築は、pNW33nベクターに基づいた。20bp長のプロトスペーサーを、長さ7の縮重ヌクレオチド配列により、その3’側で隣接しているベクターに導入した。縮重配列は、PAMとして働き、プロトスペーサーが、右PAMにより隣接すると、sgRNAを搭載したCas9により標的として認識されて切断され得る。PAMライブラリーは、以下のプロトコルによって調製した:
1.一本鎖DNAオリゴ1(BG6494)および2(BG6495)をアニールすることによりSpPAM二本鎖DNAインサートを調製する。
I.10μlの10×NE緩衝液2.1
II.1μlの50μMオリゴ1(約1.125μg)
III.1μlの50μMオリゴ2(約1.125μg)
IV.85μlのMQ
V.この混合物を94℃で5分間、インキュベートし、0.03℃/秒の速度で37℃まで冷却する。
2.1μlのKlenow 3’→5’エキソポリメラーゼ(NEB)を加え、それぞれアニールしたオリゴ混合物、次に、10μMのdNTP2.5μlを加える。37℃で1時間、次に、75℃で20分間、インキュベートする。
3.アニール混合物46μlに2μlのHF-BamHIおよび2μlのBspHI制限酵素を加える。37℃で1時間、インキュベートする。この過程により、粘着末端を有するSpPAMbbインサートとなる。Zymo DNAクリーニングおよびコンセントレータキット(Zymo Research)を使用して、作製したインサートを清浄する。
4.HF-BamHIおよびBspHI(NEB)によりpNW33nを消化し、Zymo DNAクリーニングおよびコンセントレータキット(Zymo Research)を使用して、粘着端部を有する3.400bp長の線形pNW33nbb断片を精製する。
5.提示されているプロトコルに準拠し、NEB T4リガーゼを使用して、11ngのSPPAMbbインサートにより50ngのpNW33nBBをライゲートする。Zymo DNAクリーニングおよび コンセントレータキット(Zymo Research)を使用して、ライゲート混合物を精製する。
6.DH10bエレクトロコンピテント細胞(500ngのDNAを含む200μlの細胞)を形質転換する。SOC培地(800μlのSOC中に200μlの細胞)中に1時間、細胞を回収し、次に、回収した細胞を50mlのLB+12.5μg/mlクロラムフェニコールに接種する。37℃および180rpmで、培養物を一晩、インキュベートする。
7.JetStar 2.0maxiprepキット(GENOMED)を使用して、この培養物からプラスミドDNAを単離する。
8.単離したプラスミドを線形化するために提示されているプロトコルに準拠し、SapI(NEB)制限液を使用する。
【0181】
PAM決定反応の設計および実施
標的したプロトスペーサーの3’末端の右側PAM下流を含有する、PAMライブラリーメンバーへのdsDNA切断のgtCas9誘発性導入を行うために、以下の切断反応を設定した:
1.反応あたり、E.cloni::pRham:cas9gt CFEを2.5μg
2.sgRNAを30nMの最終濃度まで
3.反応あたり、線形化PAMライブラリーを200ng
4.切断緩衝液(100mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH=7.5)、500mMのNaCl、25mMのMgCl2、25%(v/v)グリセロール、5mMのDTT)を2μl
5.MQ水を最大20μlの最終体積まで
【0182】
この反応物を60℃で1時間、インキュベートし、6×ゲル搭載色素(NEB)4μlを加えた後に停止した。この反応混合物を、1%のアガロースゲルにロードした。ゲルに100Vで1時間15分の長さの電気泳動にかけ、次に、10μlのSYBR Gold 色素(ThermoFisher)を含有する0.5×TAE緩衝液100ml中で30分間、インキュベートした。青色光を用いてDNAバンドを可視化した後、首尾よく切断され、かつPAMを含有するDNA断片に対応するバンドをゲルから切り出し、提示されているプロトコルに準拠して、「Zymoclean(商標)ゲルDNA回収キット」を使用してゲルを精製した。
【0183】
配列決定するための、PAM含有gtCAs9切断DNA断片のタグ付け
Cas9誘発性DNA切断は、PAM配列に対して近位の、プロトスペーサーの第3と第4のヌクレオチドとの間に、通常、導入される。その結果、さらなるオンシークエンス(on sequence)およびPAM配列を決定するため、切断したDNA断片のPAM含有部分をPCR増幅することができる、一対のプライマーを設計することができない。この目的の場合、5つの工程を使用した:
工程1:TaqポリメラーゼによるAテーリング
Aテーリングは、Taqポリメラーゼを使用する、平滑二本鎖DnA分子の3’末端に鋳型化されていないアデニンを付加する過程である。
反応構成成分:
・gtCas9切断およびPAM含有DNA断片 - 200ng
・10×ThermoPol(登録商標)緩衝液(NEB) - 5μl
・1mM dATP - 10μl
・Taq DNAポリメラーゼ(NEB) - 0.2μl
・H2O-最大で50μlの最終反応体積
・インキュベート時間 - 20分間
・インキュベート温度 - 72℃
【0184】
工程2:配列決定アダプターの構築
2つの短い相補的ssDNAオリゴヌクレオチドをリン酸化し、アニールして、工程1からのDNA断片のPAM近位部に対する配列決定アダプターを形成させた。オリゴヌクレオチドのうちの1つは、Aテールド断片に対するアダプターのライゲートを容易にするため、その3’末端におけるさらなるチミンを有した。
アダプターオリゴヌクレオチドリン酸化(各オリゴの個々のリン酸化反応)
・100μMオリゴヌクレオチド保存溶液 - 2μL
・10×T4 DNAリガーゼ緩衝液(NEB) - 2μL
・滅菌MQ水 - 15μL
・T4ポリヌクレオチドキナーゼ(NEB) - 1μL
・インキュベート時間 - 60分間
・インキュベート温度 - 37℃
・T4 PNK不活性化 - 65℃で20分間
リン酸化オリゴヌクレオチドのアニール
・オリゴヌクレオチド1 - 対応するリン酸化混合物から5μL
・オリゴヌクレオチド1 - 対応するリン酸化混合物から5μL
・滅菌MQ水 - 90μL
・リン酸化オリゴを、95℃で3分間、インキュベートする。室温で約30分間から1時間、反応物をゆっくりと冷却する。
【0185】
工程3:配列決定アダプターによる、gtCas9切断した、Aテールド断片のライゲート
工程1および2の生成物は、以下のプロトコルに従い、ライゲートした。
・10×T4 DNAリガーゼ緩衝液 - 2μl
・生成物工程1 - 50ng
・生成物工程2 - 4ng
・T4 DNAリガーゼ - 1μl
・滅菌MQ水 - 20μlまで
・インキュベート時間 - 10分間
・インキュベート温度 - 20~25℃
・65℃で10分間、熱不活性化
【0186】
工程4:150ヌクレオチド長のPAM含有断片のPCR増幅
工程4のライゲート混合物からの5μlを、Q5 DNAポリメラーゼ(NEB)を使用して、PCR増幅の鋳型として使用した。工程2からのチミン伸長によるオリゴヌクレオチドを、フォワードプライマーとして使用し、PAM配列の下流の150ヌクレオチドをアニールするようリバースプライマーを設計した。
【0187】
非gtCas9処理PAMライブラリーDNAを鋳型として使用して、同一配列を増幅した。両方のPCR生成物をゲル精製し、Illumina HiSeq2500ペアド末端配列決定(Baseclear)に送った。
【0188】
候補PAM配列の配列決定結果および決定の解析
配列決定の結果を解析後、以下の頻度マトリックスを構築した。このマトリックスは、gtCas9により消化した、および消化されなかったライブラリーの各PAM位における、各ヌクレオチドの相対存在量を図示している。
【0189】
【表1】
【0190】
これらの結果は、PAM5位におけるシトシンを標的とすることが明確に好ましいこと、および最初の4つのPAM位におけるシトシンを標的とすることが好ましいことを示している。
【0191】
[実施例7]
gtCas9のIn silico PAM予測
十分なプロトスペーサー配列が、ゲノムデータベースに利用可能である場合、PAMのIn silico予測が可能である。gtCas9 PAMのin silico予測は、GenBankなどのゲノムデータベースにおける配列と比較することにより、G・サーモデニトリフィカンス(G. thermodenitrificans)T12株のゲノムにおける、CRISPRアレイからのスペーサーのヒットを特定することから始まった。「CRISPRファインダー」(http://crispr.u-psud.fr/Server/)ツールを使用して、T12における候補CRISPR遺伝子座を特定した。次に、特定したCRISPR遺伝子座出力値を、選択データベースを検索し、プロトスペーサーとマッチする出力値をもたらす、「CRISPR標的」(http://bioanalysis.otago.ac.nz/CRISPRTarget/crispr_analysis.html)ツールにロードした。次に、これらのプロトスペーサー配列を、特有のヒットに関して、およびスペーサーに対する相補性に関してスクリーニングした。例えば、シード配列のミスマッチは、ポジティブヒットの不良である可能性が高いと見なし、さらなる解析から除外した。プロファージ配列および(統合)プラスミドに対する同一性を伴うヒットにより、得られたヒットは真のポジティブとなることが実証された。全体として、この過程により、6つの単一ヒットが生じた(図7)。続いて、残りの特有のプロトスペーサーヒットの隣接領域(II型gtCasヌクレアーゼの場合、3’)をアラインし、WebLogo(http://weblogo.berkeley.edu/logo.cgi)を使用して、コンセンサス配列を比較した(Crooks GE, Hon G, Chandonia JM, Brenner SE WebLogo: A sequence logo generator, Genome Research, 14:1188-1190, (2004))ツール(図8)。
【0192】
in silicoの結果を、in vitroでのPAMの同定実験結果と比較し(実施例6を参照されたい)、この場合、PAM配列の第5の残基をシトシンと同一であるとバイアスをかけた。
【0193】
[実施例8]
gtCas9の8ヌクレオチド長のPAM配列の決定
実施例8からのin silicoデータは、gtCas9が、8位にアデノシンが存在することがある程度好ましいことが示唆され、したがって、さらなるPAM決定実験を行い、この場合、PAM配列の8位も同様に試験した。これは、プロトスペーサーの3’末端における、5位と8位との間に伸長していることが見いだされた、中温ブレビバチルス・ラテロスポラス(Brevibacillus laterosporus)SSP360D4(Karvelisら、2015年)であるCas9PAM配列の特徴と一致する。
【0194】
PAMの特異的な長さ8のヌクレオチド配列変異体を、gtCas9で予備試験した:
1)CNCCCCAC[配列番号17]、
2)CCCCCCAG[配列番号18]、
3)CCCCCCAA[配列番号11]、
4)CCCCCCAT[配列番号19]、
5)CCCCCCAC[配列番号20]、
6)NNNNTNNC(ネガティブ対照PAM)
【0195】
CCCCCCAA[配列番号11]配列をPAMとして使用した場合、60℃でin vitroで切断アッセイを行った後、精製gtCas9によるこれらのターゲティング(非線形化)プラスミド、およびgtCas9切断活性の向上前と同じsgRNA(実施例6を参照されたい)が観察された(図9)。しかし、切断活性は、ネガティブ対象のPAM配列の場合、かすかな切断バンドが観察された場合でさえも、すべての試験PAM配列に対して、切断活性が明確に検出可能であった。特定の理論に縛られたくはないが、ネガティブ対照の場合に観察される切断に寄与する高いgtCas9濃度の使用が可能である。in vitroアッセイにおいてCas9濃度が高いと、厳密なPAM要件なしに、Cas9誘発性DNA切断に至ることが一般に観察されている。
【0196】
Cas9濃度は、一般に、Cas9誘発性DNA切断の効率に影響を及ぼすことが知られている(Cas9濃度が高いほど、Cas9活性は高い)。このことは、CCCCCCAA[配列番号11]PAM配列を含む標的プラスミドおよび異なるgtCas9濃度を使用して、in vitroアッセイを行った場合にも観察された(図10)。
【0197】
上記のin vitroアッセイの場合のCCCCCCAA[配列番号11]PAM配列を含む標的プラスミドを、38と78℃の間の幅広い温度範囲で行った(図11)。驚くべきことに、gtCas9は、すべての温度において活性であり、最高の活性は、40.1と64.9℃の間にあった。
【0198】
したがって、ゲオバチルス(Geobacillus)属種由来のCas9の最適温度範囲は今日まで特徴付けられているCas9タンパク質よりもはるかに高い。同様に、ゲオバチルス(Geobacillus)属種由来のCas9がヌクレアーゼ活性を保持する範囲の最上方は既知のCas9タンパク質よりもはるかに高い。より高い最適温度および機能的範囲は高温での遺伝子工学に、したがって、好熱性生物のゲノムの編集に著しい利点を与え、これは高温で実行される様々な工業、農業および製薬工程において有用性がある。
【0199】
[実施例9]
gtCas9および8ヌクレオチド長のPAM配列による、バチルス・スミシイ(Bacillus smithii)ET138のin vivoゲノム編集
8ヌクレオチドPAMもやはり、in vivoでgtCas9により認識されることを確認するため、55℃でバチルス・スミシイ(Bacillus smithii)ET138のゲノムにおけるpyrF遺伝子を欠失するよう設計を行った。
【0200】
この方法は、相同組換え鋳型構築物の提供に依存し、ここでは、標的(pyrF)遺伝子の上流および下流に相補的である領域が、B・スミシイ(B. smithii)ET138細胞にもたらされる。鋳型の導入により、相同組換え法を使用して、相同組換え鋳型(pyrF遺伝子を含まない)をゲノムに導入し、こうして、細胞のゲノムにおけるWT pyrF遺伝子を置き換える。
【0201】
相同組換え構築物にgtCas9およびsgRNAを含ませることを使用して、WT pyrFを含有する細菌ゲノムに二本鎖DNA切断(DSDB)を導入することができる。細菌のゲノムにおけるDSDBは、通常、細胞死をもたらす。したがって、WT pyrFの配列を認識するsgRNAは、DSDB、およびWT pyrFしか含有しない細胞の死滅をもたらす。DSDBの導入は、好適なPAM配列が、gtCas9により認識されるプロトスペーサーの3’末端において、下流に位置していることにやはり依存する。
【0202】
pNW33nプラスミドは、主鎖としてクローニングに使用した:
i)自家開発グルコース抑制プロモーターの制御下でのcas9gt遺伝子、および
ii)B.スミシイ(B. smithii)ET138のゲノムからのpyrF遺伝子の欠失をもたらす相同組換えの鋳型として、B.スミシイ(B. smithii)ET138のゲノムにおける、pyrF遺伝子の1kb上流領域および1kb下流領域、および
iii)構成プロモーターの転写制御下での単一ガイドRNA(sgRNA)発現モジュール。
【0203】
単一ガイドRNAの配列が、ゲノムにおけるその特異的DNA標的にgtCas9をガイドする配列に相当する最初の20ヌクレオチドにおいて相違点がある、3種の個別の構築物が生成された(スペーサーとしても知られている)。B・スミシイ(B. smithii)ET138のpyrF遺伝子におけるすべての3つの異なる候補プロトスペーサーを標的とするよう、3つの異なるスペーサー配列を設計した。これらの構築物は、本明細書において、それぞれ、構築物1、2および3と呼ばれる。
【0204】
3つの異なる標的プロトスペーサーは、それらの3’末端において、以下の候補PAM配列を有した:
1.TCCATTCC (in vitroアッセイの結果によるネガティブ対照;構築物番号3にコードされるsgRNAによりターゲティングされたプロトスペーサーの3’末端)
2.ATCCCCAA(構築物番号1[配列番号21]にコードされるsgRNAによりターゲティングされたプロトスペーサーの3’末端)
3.ACGGCCAA(構築物番号2;[配列番号22]にコードされるsgRNAによりターゲティングされたプロトスペーサーの3’末端)
【0205】
3つの構築物の1つおよび選択プレート上のプレート培養を、B・スミシイ(B. smithii)ET138細胞に形質転換した後、以下の結果が得られた:
1.細胞が、3’末端(構築物番号3)においてネガティブ対照であるTCCATTCC PAM配列を有するプロトスペーサーを標的とする構築物により形質転換しても、形質転換効率は影響を受けなかった(図12A)。コロニー数は、pNW33nポジティブ対照構築物による変換後のコロニー数と同じ範囲にあった(図12B)。pyrF遺伝子が欠失されたコロニーをスクリーニングするために、コロニーPCRに施した15のコロニーの中で、欠失遺伝子型-2.1kb予期バンドサイズを示すものはなく、すべて、野生型-2.9kb予期バンドサイズであった(図13)。このことは、試験したPAMは、確かに、in vivoでgtCas9により認識されなかったことを示している。
2.ポジティブ対照(pNW33nで形質転換した細胞)と比較すると、細胞が構築物番号1により形質転換されると、わずか数個のコロニーしか得られなかった(図12C)。20のコロニーに、pyrF遺伝子を欠失したコロニーをスクリーニングするためのコロニーPCRを施した。コロニーの大部分(19)は、野生型およびpyrF欠失遺伝子型の両方を含有した一方、1つのコロニーは、pyrF欠失遺伝子型を有した(図14)。この結果により、WTのみの遺伝子型が観察されなかったので、PAM配列ATCCCCAA[配列番号21]は、gtCas9によってin vivoで認識されることが示された。低下した形質転換効率はまた、細胞集団の割合が低下したことをやはり示し、このことは、gtCas9によるターゲティングの成功によって、DSDBによるWTのみの遺伝子型細胞に引き起こされる細胞死に寄与し得る。
3.細胞が構築物番号2により形質転換されると、コロニーが得られなかった(図12D)。コロニーが欠如したことは、細胞集団のすべてがgtCas9により首尾よくターゲティングされ、これにより、DSDBにより引き起こされる細胞死に至ったことを示す。これは、ACGGCCAA[配列番号22]PAM配列が、gtCas9によって認識されることを示唆する。
【0206】
これらの結果は、gtCas9が、55℃で、in vivoで、上記のPAM配列により活性となること、すなわち、in vitroでのPAM決定結果と一致する結果となることを示している。さらに、それは、プラスミド媒介性相同組換え鋳型と組み合わせて、同一温度においてゲノム編集ツールとして使用することができる。
【0207】
説明の以下の項目は、本明細書に既に記載されている、本発明の記述を単に提示する番号付けした段落からなる。この項目における番号付けした段落は、特許請求の範囲ではない。特許請求の範囲は、後の項目「特許請求の範囲」において以下に説明されている。
【0208】
1.a.アミノ酸モチーフEKDGKYYC[配列番号2];および/または
b.アミノ酸モチーフXCTX[配列番号3](式中、Xはイソロイシン、メチオニンまたはプロリンから独立して選択され、Xはバリン、セリン、アスパラギンまたはイソロイシンから独立して選択され、Xはグルタミン酸またはリシンから独立して選択され、Xはアラニン、グルタミン酸またはアルギニンのうちの1つである);および/または
c.アミノ酸モチーフXLKXIE[配列番号4](式中、Xはメチオニンまたはフェニルアラニンから独立して選択され、Xはヒスチジンまたはアスパラギンから独立して選択される);および/または
d.アミノ酸モチーフXVYSXK[配列番号5](式中、Xはグルタミン酸またはイソロイシンであり、Xはトリプトファン、セリンまたはリシンのうちの1つである);および/または
e.アミノ酸モチーフXFYX1011REQX12KEX13[配列番号6](式中、Xはアラニンまたはグルタミン酸であり、X10はグルタミンまたはリシンであり、X11はアルギニンまたはアラニンであり、X12はアスパラギンまたはアラニンであり、X13はリシンまたはセリンである)
を含む、単離されたCas(CRISPR(clustered regularly interspaced short palindromic repeat:クラスター化し規則的に間隔を置いた短い回文配列の繰り返し)associated:CRISPR関連)タンパク質またはポリペプチドであって
少なくとも1つのターゲティングRNA分子と会合すると、Casタンパク質は、50℃と100℃の間の核酸切断が可能であり、ポリヌクレオチドは、ターゲティングRNA分子により認識される標的核酸配列を含む、上記タンパク質またはポリペプチド。
【0209】
2.配列番号1のアミノ酸配列、またはそれと少なくとも77%の同一性の配列を有する単離Casタンパク質またはポリペプチド断片であって、標的配列を認識する少なくとも1つのRNA分子と会合すると、Casタンパク質は、50℃と100℃の間の温度で、標的核酸配列を含むポリヌクレオチドに結合する、これを切断する、改変するまたは標識することができる、単離Casタンパク質またはポリペプチド断片。
【0210】
3.Casタンパク質またはポリペプチド断片が、50℃と75℃の間の温度、好ましくは60℃超の温度、より好ましくは60℃と80℃の間の温度、より好ましくは60℃と65℃の間の温度で、核酸の結合、切断、標識または改変が可能である、段落番号1または段落番号2のCasタンパク質またはポリペプチド断片。
【0211】
4.核酸の結合、切断、標識または改変が、DNA切断である、段落番号1から3のいずれかのCasタンパク質またはポリペプチド断片。
【0212】
5.アミノ酸配列が、配列番号1、またはそれと少なくとも77%の同一性の配列を含む、前記段落番号のいずれかのCasタンパク質またはポリペプチド断片。
【0213】
6.前記Casタンパク質が細菌、古細菌またはウイルスから入手可能である、前記段落番号のいずれかのCasタンパク質またはポリペプチド断片。
【0214】
7.前記Casタンパク質がゲオバチルス(Geobacillus)属種から、好ましくはゲオバチルス・サーモデニトリフィカンス(Geobacillus thermodenitrificans)から入手可能である、前記段落番号のいずれかのCasタンパク質またはポリペプチド断片。
【0215】
8.前記段落番号のいずれのCasタンパク質を含み、標的ポリヌクレオチド中の配列を認識する少なくとも1つのターゲティングRNA分子を含む、リボ核タンパク質複合体。
【0216】
9.前記ターゲティングRNA分子がcrRNAおよび任意選択でtracrRNAを含む、段落番号8のリボ核タンパク質複合体。
【0217】
10.前記少なくとも1つのRNA分子の長さが35~135ヌクレオチド残基の範囲である、段落番号7から9のいずれかのリボ核タンパク質複合体。
【0218】
11.前記標的配列が31または32ヌクレオチド残基長である、段落番号8または9のリボ核タンパク質複合体。
【0219】
12.タンパク質またはポリペプチドが、少なくとも1つのさらなる機能的または非機能的タンパク質を含むタンパク質複合体の一部として提供される、段落番号1から7のいずれかのCasタンパク質またはポリペプチド、または8から11のいずれかのリボ核タンパク質複合体。
【0220】
13.前記Casタンパク質もしくはポリペプチドおよび/または前記少なくとも1つのさらなるタンパク質が少なくとも1つの機能的部分をさらに含む、段落番号12のCasタンパク質、ポリペプチド、またはリボ核タンパク質複合体。
【0221】
14.前記少なくとも1つの機能的部分が、前記Casタンパク質、ポリペプチドまたはリボ核タンパク質複合体のN終端および/またはC終端、好ましくはN終端に融合または連結している、段落番号13のCasタンパク質もしくはポリペプチド、またはリボ核タンパク質複合体。
【0222】
15.前記少なくとも1つの機能的部分がタンパク質であり、任意選択で、ヘリカーゼ、ヌクレアーゼ、ヘリカーゼ-ヌクレアーゼ、DNAメチラーゼ、ヒストンメチラーゼ、アセチラーゼ、ホスファターゼ、キナーゼ、転写(共)活性化因子、転写リプレッサー、DNA結合タンパク質、DNA構築タンパク質、マーカータンパク質、レポータータンパク質、蛍光タンパク質、リガンド結合タンパク質、シグナルペプチド、細胞内局在配列、抗体エピトープまたは親和性精製タグから選択される、段落番号13または14のCasタンパク質もしくはポリペプチド、またはリボ核タンパク質複合体。
【0223】
16.Cas9ヌクレアーゼの天然の活性が不活化されており、Casタンパク質が少なくとも1つの機能的部分に連結している、段落番号15のCasタンパク質もしくはポリペプチド、またはリボ核タンパク質複合体。
【0224】
17.前記少なくとも1つの機能的部分がヌクレアーゼドメイン、好ましくはFokIヌクレアーゼドメインである、段落番号15または16のCasタンパク質もしくはポリペプチド、またはリボ核タンパク質複合体。
【0225】
18.少なくとも1つの機能的部分が、マーカータンパク質、例えばGFPである、段落番号15から17のいずれかのCasタンパク質またはポリペプチドまたはリボ核タンパク質複合体。
【0226】
19.Casタンパク質またはポリペプチドをコードする、単離核酸分子であって、
a.アミノ酸モチーフEKDGKYYC[配列番号2];および/または
b.アミノ酸モチーフXCTX[配列番号3](式中、Xはイソロイシン、メチオニンまたはプロリンから独立して選択され、Xはバリン、セリン、アスパラギンまたはイソロイシンから独立して選択され、Xはグルタミン酸またはリシンから独立して選択され、Xはアラニン、グルタミン酸またはアルギニンのうちの1つである);および/または
c.アミノ酸モチーフXLKXIE[配列番号4](式中、Xはメチオニンまたはフェニルアラニンから独立して選択され、Xはヒスチジンまたはアスパラギンから独立して選択される);および/または
d.アミノ酸モチーフXVYSXK[配列番号5](式中、Xはグルタミン酸またはイソロイシンであり、Xはトリプトファン、セリンまたはリシンのうちの1つである);および/または
e.アミノ酸モチーフXFYX1011REQX12KEX13[配列番号6](式中、Xはアラニンまたはグルタミン酸であり、X10はグルタミンまたはリシンであり、X11はアルギニンまたはアラニンであり、X12はアスパラギンまたはアラニンであり、X13はリシンまたはセリンである)
を含み、
少なくとも1つのターゲティングRNA分子と会合すると、Casタンパク質またはポリペプチドが、50℃と100℃の間で、DNA結合、切断、標識または改変が可能であり、ポリヌクレオチドが、ターゲティングRNA分子により認識される標的核酸配列を含む、上記単離核酸分子。
【0227】
20.配列番号1のアミノ酸配列もしくはそれと少なくとも77%の同一性の配列を有するCas(CRISPR(clustered regularly interspaced short palindromic repeat:クラスター化し規則的に間隔を置いた短い回文配列の繰り返し)associated:CRISPR関連)タンパク質、またはそのポリペプチド断片をコードする単離された核酸分子。
【0228】
21.翻訳されると前記Casタンパク質またはポリペプチドと融合するアミノ酸配列をコードする少なくとも1つの核酸配列をさらに含む、段落番号19または20の単離された核酸分子。
【0229】
22.前記Casタンパク質またはポリペプチドをコードする核酸分子に融合する前記少なくとも1つの核酸配列が、ヘリカーゼ、ヌクレアーゼ、ヘリカーゼ-ヌクレアーゼ、DNAメチラーゼ、ヒストンメチラーゼ、アセチラーゼ、ホスファターゼ、キナーゼ、転写(共)活性化因子、転写リプレッサー、DNA結合タンパク質、DNA構築タンパク質、マーカータンパク質、レポータータンパク質、蛍光タンパク質、リガンド結合タンパク質、シグナルペプチド、細胞内局在配列、抗体エピトープまたは親和性精製タグから選択されるタンパク質をコードする、段落番号21の単離された核酸分子。
【0230】
23.段落番号19から22のいずれかの核酸分子を含む発現ベクター。
【0231】
24.少なくとも1つのターゲティングRNA分子をコードするヌクレオチド配列をさらに含む、段落番号23の発現ベクター。
【0232】
25.標的核酸を改変する方法であって、前記核酸を、
a.段落番号6から11のいずれかのリボ核タンパク質複合体、または
b.段落番号12から18のいずれかのタンパク質またはタンパク質複合体および段落番号6から11のいずれかの少なくとも1つのターゲティングRNA分子
と接触させることを含む方法。
【0233】
26.細胞中で標的核酸を改変する方法であって、前記細胞を段落番号24の発現ベクターで形質転換、トランスフェクトもしくは形質導入すること、または代わりに前記細胞を段落番号23の発現ベクターおよび段落番号6から11のいずれかのターゲティングRNA分子をコードするヌクレオチド配列を含むさらなる発現ベクターで形質転換、トランスフェクトもしくは形質導入することを含む方法。
【0234】
27.細胞中で標的核酸を改変する方法であって、前記細胞を段落番号23の発現ベクターで形質転換、トランスフェクトもしくは形質導入し、次いで、段落番号6から11のいずれかのターゲティングRNA分子を前記細胞に、または前記細胞内に送達することを含む方法。
【0235】
28.段落番号25から28のいずれかの標的核酸を改変する方法であって、前記少なくとも1つの機能的部分がマーカータンパク質またはレポータータンパク質であり、前記マーカータンパク質またはレポータータンパク質が前記標的核酸と会合し、好ましくは前記マーカーが蛍光タンパク質、例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)である、方法。
【0236】
29.前記標的核酸がDNA、好ましくはdsDNAである、段落番号25から28のいずれかの方法。
【0237】
30.前記標的核酸がRNAである、段落番号25から28のいずれかの方法。
【0238】
31.段落番号29の標的核酸を改変する方法であって、前記核酸がdsDNAであり、前記少なくとも1つの機能的部分がヌクレアーゼまたはヘリカーゼ-ヌクレアーゼであり、前記改変が所望の遺伝子座での一本鎖または二本鎖切断である、方法。
【0239】
32.段落番号26、27、29または31方法のいずれかに従って所望の遺伝子座で遺伝子発現をサイレンシングする方法。
【0240】
33.段落番号26、27、29または31の方法のいずれかに従って所望の位置で所望のヌクレオチド配列を改変または欠失および/もしくは挿入する方法。
【0241】
34.段落番号25から29のいずれかの方法の標的核酸配列を改変することを含む、細胞中で遺伝子発現を改変する方法であって、前記核酸がdsDNAであり、前記機能的部分がDNA修飾酵素(例えば、メチラーゼまたはアセチラーゼ)、転写活性化因子または転写リプレッサーから選択される、方法。
【0242】
35.段落番号30の方法の標的核酸配列を改変することを含む、細胞中で遺伝子発現を改変する方法であって、前記核酸がmRNAであり、前記機能的部分がリボヌクレアーゼであり、任意選択でエンドヌクレアーゼ、3’エキソヌクレアーゼまたは5’エキソヌクレアーゼから選択される、方法。
【0243】
36.50℃と100℃の間の温度で実行される、段落番号25から35のいずれかの標的核酸を改変する方法。
【0244】
37.60℃または60℃より上、好ましくは60℃と80℃の間、より好ましくは60℃と65℃の間の温度で実行される、段落番号36の標的核酸を改変する方法。
【0245】
38.前記細胞が原核細胞である、段落番号25から37のいずれかの方法。
【0246】
39.前記細胞が真核細胞である、段落番号25から38のいずれかの方法。
【0247】
40.段落番号22から36のいずれかの方法により形質転換される宿主細胞。
図1
図2
図3-1】
図3-2】
図4
図5
図6
図7-1】
図7-2】
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【配列表】
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