(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】医薬組成物粒子とそれを含む口腔内崩壊製剤、医薬組成物粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61K 9/14 20060101AFI20221125BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20221125BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20221125BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20221125BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
A61K9/14
A61K47/38
A61K47/36
A61K47/32
A61K9/20
(21)【出願番号】P 2019537610
(86)(22)【出願日】2018-08-20
(86)【国際出願番号】 JP2018030618
(87)【国際公開番号】W WO2019039420
(87)【国際公開日】2019-02-28
【審査請求日】2021-07-16
(31)【優先権主張番号】P 2017158339
(32)【優先日】2017-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】596166690
【氏名又は名称】全星薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124648
【氏名又は名称】赤岡 和夫
(74)【代理人】
【識別番号】100060368
【氏名又は名称】赤岡 迪夫
(74)【代理人】
【識別番号】100154450
【氏名又は名称】吉岡 亜紀子
(72)【発明者】
【氏名】林田 知大
(72)【発明者】
【氏名】帆足 洋平
(72)【発明者】
【氏名】井實 慎
(72)【発明者】
【氏名】中野 善夫
(72)【発明者】
【氏名】山崎 淳治
(72)【発明者】
【氏名】井上 勝久
(72)【発明者】
【氏名】相沢 篤
【審査官】伊藤 基章
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-231520(JP,A)
【文献】特開2002-212062(JP,A)
【文献】国際公開第2014/181390(WO,A1)
【文献】国際公開第2005/039542(WO,A1)
【文献】特表2010-532384(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00
A61K 47/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物と水溶性のゲル化膨潤物質とを含有する核粒子と、
水不溶性物質を含有して前記核粒子の外側を被覆する外層とを備え
、
前記水溶性のゲル化膨潤物質は、2%水溶液の25℃における粘度が10mPa・s以上であり、平均粒子径が15μm以下であり、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルメロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、および、ポリビニルピロリドンからなる群から選択されるいずれか1つである、医薬組成物粒子。
【請求項2】
前記外層は、前記水不溶性物質を前記外層の全重量の60重量%以上含有する、請求項
1に記載の医薬組成物粒子。
【請求項3】
前記ゲル化膨潤物質は、膨潤力(S)の値が650以上である、請求項1
または請求項2に記載の医薬組成物粒子。
【請求項4】
前記外層の被覆量は、前記核粒子に対して5重量%以上50重量%以下である、請求項1から請求項
3までのいずれか1項に記載の医薬組成物粒子。
【請求項5】
請求項1から請求項
4までのいずれか1項に記載の医薬組成物粒子を含む口腔内崩壊錠。
【請求項6】
水溶性のゲル化膨潤物質を平均粒子径15μm以下に粉砕する粉砕工程と、
粉砕されたゲル化膨潤物質と薬物とを混合して核粒子を製造する核粒子製造工程と、
核粒子の外側に水不溶性物質を被覆して外層を形成する外層形成工程とを含
み、
前記水溶性のゲル化膨潤物質は、2%水溶液の25℃における粘度が10mPa・s以上であり、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルメロースナトリウム、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、および、ポリビニルピロリドンからなる群から選択されるいずれか1つである、医薬組成物粒子の製造方法。
【請求項7】
前記核粒子製造工程は、前記粉砕工程で粉砕されたゲル化膨潤物質と薬物とを有機溶媒に懸濁する工程を含み、前記有機溶媒はエタノールである、請求項
6に記載の医薬組成物粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には経口投与用の医薬組成物粒子と、それを含む口腔内崩壊錠と、医薬組成物粒子の製造方法に関し、特定的には、不快な味のマスキングと溶出性の改善のために放出制御可能な経口投与用の医薬組成物粒子と、それを含む口腔内崩壊錠と、医薬組成物粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
顆粒剤・細粒剤・散剤等といった経口医薬組成物粒子の剤形は、錠剤やカプセル剤よりサイズが小さい。これらの剤形は、錠剤・カプセル剤の嚥下が困難な患者でも容易に服用できる。近年、これらの剤形のような、患者や病院に対して利便性を高めた剤形が注目されている。利便性の高い剤形の中でも口腔内崩壊錠は、水なしでも服用できる、嚥下が容易、経管投与に向いている、というような高い利便性を有している。そのため、口腔内崩壊錠を形成する微粒子の製造方法にいろいろな工夫がなされつつある。
【0003】
医薬組成物粒子、特に平均粒子径が400μm以下の微粒子は、それより大きい微粒子と比較して、重量当たりの表面積が大きい。すなわち、サイズが小さい微粒子は、比較的大きな微粒子よりも、口腔内で水に接触する面積が大きく、粒子内への水の浸入速度が速い。そのため、医薬組成物粒子が服用される際、薬物が口腔内で速やかに放出される傾向が強い。このことは種々の問題を引き起こす場合がある。例えば薬物が不快な味を有する場合、口腔内で速やかに放出された薬物が、患者に強い不快感を与え、服用コンプライアンスを著しく低下させる場合がある。また、口腔内で吸収される薬物が医薬組成物粒子に含まれている場合には、口腔内で速やかに放出された薬物が、副作用や、薬効の個体間差の発現等の問題を引き起こすこともある。
【0004】
これらの問題を発生させないためには、所定の時間、口腔内で医薬組成物粒子の薬物放出を抑制することが必要である。口腔内に医薬組成物粒子が存在する所定の時間、薬物の放出を抑制することによって、不快な味を遮蔽することができる。また、副作用や薬効の個体間差の発現等の問題を回避することもできる。
【0005】
一方、薬物が十分な薬効を発現するためには、経口医薬組成物粒子から薬物が放出され、十分な量が体内に吸収される必要がある。内服された製剤は時間と共に消化管を移動していく。一般的に薬物は消化管上部で吸収されることが多い。
【0006】
これらを考慮すると、経口医薬組成物粒子からの薬物放出を所定の時間、抑制した後は、医薬組成物粒子をできるだけ速やかに崩壊させ、薬物を速やかに放出させて消化管上部で吸収させることが望まれる。
【0007】
従って、薬物の不快な味の遮蔽、口腔内での吸収回避などの目的を達成するためには、口腔内で所定の時間薬物放出を抑制する必要がある。同時に、消化管内においては、経口医薬組成物粒子から速やかに薬物が放出されることが肝要である。また、不快な味の程度、不快な味の持続時間、口腔内での吸収速度は薬物によって異なる。医薬組成物粒子の設計では、医薬組成物粒子に含まれる薬物の特性に合わせて、口腔内で薬物の放出が始まる時間と内服後の薬物放出時間との最適な組み合わせを達成することが非常に重要である。
【0008】
その最適な組み合わせを実現させるためには、薬物・製剤の特性に応じて、初期の薬物放出を抑制する時間(以下、「ラグタイム」ともいう。)を任意にコントロールでき、かつ、内服後は所定の時間経過後に薬物を目的とする速度で放出させる医薬組成物粒子を設計することが求められる。つまり、口腔内での薬物放出時間の抑制と、生体内での薬物放出スピードとの組み合わせを自在にコントロールする技術が求められている。
【0009】
ところで、利便性の観点から注目されている口腔内崩壊錠は、不快な味の遮蔽などを目的として薬物放出を制御した医薬組成物粒子を含有させるよう工夫されている。口腔内崩壊錠に含有される医薬組成物粒子は、口腔内でのザラツキ感を低減するために、顆粒剤・細粒剤・散剤等の経口医薬組成物粒子よりサイズを更に小さく、具体的には、平均粒子径を400μm以下、好ましくは300μm以下にする必要がある。しかし、医薬組成物粒子のサイズが小さくなるに伴い、薬物が必要以上に速やかに放出される傾向が強くなる。そのため、口腔内での薬物放出時間の抑制と生体内での薬物放出スピードとの組み合わせを自在にコントロールするためには、非常に高度な製剤化工夫が要求される。実際に、このような微小な経口医薬組成物粒子の「初期薬物放出の抑制(ラグタイムのコントロール)」と「その後の速やかな薬物放出」を同時に満たすことは、一般的な製剤化方法では非常に困難であった。
【0010】
通常、経口医薬組成物粒子の薬物放出を制御することによって不快な味を遮蔽するために、粒子に種々の皮膜を被覆する方法が用いられる。例えば、不快な味を有する薬物を含有する経口医薬組成物粒子に水不溶性高分子を被覆すると、粒子内部への水の浸入が抑制されることにより、粒子内部の薬物の放出が制限され、不快な味の遮蔽が達成される。
【0011】
この手法では、粒子内に水が浸入しても、水不溶性高分子で構成された皮膜は壊れず、薬物の放出速度が抑制されたままとなる。そのため、ラグタイム後の速やかな薬物放出を達成することができない。一方、速やかな薬物の放出を達成するために皮膜量を低減させると、初期の薬物放出を抑制できず、不快な味を遮蔽できない。つまり、薬物含有粒子を水不溶性高分子で被覆するだけでは、「初期薬物放出の抑制」と「その後の速やかな薬物放出」を両立することはできない。
【0012】
初期の薬物放出抑制とその後の速やかな薬物放出を両立する方法として、例えば国際公開WO02/96392号(特許文献1)に記載されているように、水不溶性高分子と水溶性高分子の混合皮膜を医薬組成物粒子に被覆する方法がある。特許文献1に記載の薬剤では、皮膜中の水溶性高分子が溶解するまでは、粒子内部への水の侵入が抑制され、薬物放出を抑制することができ、不快な味が遮蔽されることが期待される。
【0013】
消化管内での薬物の放出をより確実にする目的で、例えば特開2007-63263号公報(特許文献2)に記載されているように、水不溶性高分子として胃溶性高分子や腸溶性高分子を医薬組成物粒子に被覆する手法がある。
【0014】
また、特開2008-214334号公報(特許文献3)には、皮膜の崩壊度を改善する目的で、水不溶性高分子とともに崩壊剤および凝集防止剤を併用する方法が記載されている。特開2008-260712号公報(特許文献4)には、水不溶性高分子とともに酸性物質あるいは塩基性物質を併用する方法、特開2011-063627号公報(特許文献5)には、水不溶性高分子とともに糖類を併用する方法が記載されている。
【0015】
特開2000-191519号公報(特許文献6)は、薬物を含有する核粒子に2層の被覆層を被覆した速放性粒状物を開示している。特許文献6には、水不溶性物質と水溶性物質の混合皮膜の上に第2層として水溶性物質を被覆することで初期薬物溶出を抑制することが開示されている。
【0016】
また、崩壊剤として汎用されている水不溶性の水膨潤性物質を配合して製した薬物含有粒子の外層に水不溶性皮膜を被覆する方法が提案されている。例えば、特開2011-225468号公報(特許文献7)には、崩壊剤として汎用されている水膨潤性物質を配合して製した担体を核粒子とし、該担体の周囲に形成された薬物を含有する有効成分層、および該有効成分層の周囲に胃溶性ポリマーを含有する被覆層を形成させた粒子状医薬組成物が記載されている。特開平3-130214号公報(特許文献8)には、不快な味の薬物および水膨潤性物質からなる核とその周囲をエチルセルロースと水溶性物質の混合物で被覆した速放性製剤が開示されている。国際公開WO2012/036078号(特許文献9)には、薬物及び水膨潤性高分子を含有しない核粒子(P)の表面に、不快な味の薬物及び水膨潤性高分子を含有する膜層(A)と、水不溶性高分子、水溶性物質及び無機化合物を含有する膜層(B)とを含む複数膜層が形成されてなる薬物含有膜被覆粒子であって、前記複数膜層のうち、膜層(A)が最内膜層であることを特徴とする薬物含有膜被覆粒子が開示されている。また、特表2007-532623(特許文献10)には、薬物、熱融解性のマトリックス材料及び水膨潤性の膨潤剤を含むコアに水透過性で実質的に薬物は不透過性の被覆および抗腸溶性の被覆からなる群から選択される被覆で囲まれた多重粒子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【文献】国際公開WO02/96392号
【文献】特開2007-63263号公報
【文献】特開2008-214334号公報
【文献】特開2008-260712号公報
【文献】特開2011-063627号公報
【文献】特開2000-191519号公報
【文献】特開2011-225468号公報
【文献】特開平3-130214号公報
【文献】国際公開WO2012/036078号
【文献】特表2007-532623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
特許文献1に記載の薬剤では、皮膜中の水溶性高分子が溶け出したあとは、皮膜に細孔が形成され薬物を通過させる水路ができることになる。しかしながら、不快な味の遮蔽が充分な処方の皮膜、あるいは、不快な味の遮蔽が充分な厚みの皮膜には、速やかな薬物放出が達成される程度に十分な水路を形成させることはできない。したがって、「初期薬物放出の抑制」を解決するために、被覆量を増加させてラグタイム延長を図る場合、ラグタイム後の速やかな薬物放出を達成することができない。また、速やかな薬物放出を達成させるために混合皮膜中の水溶性高分子の量を増加させる場合、初期の薬物の放出速度の抑制が困難になるため、ラグタイムを形成するまで被覆量を増加させる必要が生じ、やはり速やかな薬物放出を達成できなくなる。つまり、水不溶性物質と水溶性物質の混合皮膜を医薬組成物粒子に被覆することによって、ラグタイムのコントロールと速やかな溶出速度を同時に達成させることは、実際にはほとんど不可能である。
【0019】
また、特許文献2~5に記載の方法によっても、ラグタイムを充分にすれば、目的とする速やかな薬物放出が得られない。このように、1層の被覆を行うだけでは、2つの課題を同時に解決することは困難である。
【0020】
また、特許文献6に記載されているような、水溶性物質のみで長いラグタイムを実現させることは困難である。なお、特許文献6では、ラグタイムのコントロールに関しては何ら述べられていない。
【0021】
特許文献7に記載されている時限放出型粒子状医薬組成物は、製法上、球形になりにくく粒子径が揃った粒子の収率がよくない、粒子を30秒口腔内に含む程度の苦味隠蔽時間測定では不十分で、ラグタイムへの言及もないなどの問題を有している。特許文献8、9及び10に関しては、水膨潤性物質あるいは水膨潤性高分子として、水に殆ど溶けない通常崩壊剤と称されるものが用いられているが、特許文献8に記載の速放性製剤は、不快な味の隠蔽時間が約30秒という短時間であり十分ではない。特許文献9に記載の薬物含有膜被覆粒子は、口腔内に粒子を含む時間が30秒という短い時間での不快な味の評価であり、十分な評価とは言えず、また、ラグタイムへの言及もなされていない。また、特許文献9に記載の薬物含有膜被覆粒子は、60分の溶出量が90%に届かない実施例が多く、必ずしも迅速な溶解性を有しているとは言えない。
【0022】
このように、崩壊剤などのただ単に水で膨れる水膨潤性物質による内核を利用した従来の苦味遮蔽法や、水不溶性物質と水溶性物質の混合物を利用した皮膜剤による苦味遮蔽法では、ラグタイム形成と、所望のラグタイム経過後の速やかな薬物放出を両立させられていない。その最大の要因は、崩壊剤などのただ単に水で膨れる水膨潤性物質の場合、吸水膨潤能力が十分でなく、かつ、水に溶けないため外層を壊した後の粒子外部への拡散が遅いことにあると考えられる。
【0023】
そこで、本発明の目的は、不快な味の遮蔽と溶出性の改善の両立が可能な経口投与用の医薬組成物粒子とそれを含む口腔内崩壊製剤、医薬組成物粒子の製造方法を提供することである。言い換えれば、本発明の目的は、薬物を口腔内で溶出させない十分な長さのラグタイムを有し、かつ、ラグタイムの後には速やかな薬物放出をさせることが可能であって、さらに、目的に応じてラグタイムの長さを制御することが可能な経口投与用の医薬組成物粒子とそれを含む口腔内崩壊製剤、医薬組成物粒子の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明者らは、この課題を解決するために鋭意検討を行った。その結果、粒子状組成物の中心部を水溶性ゲル化膨潤物質と薬物を含有する核粒子とし、その外側に、水浸入量制御層として水不溶性成分を含む層を被覆した多層構造の医薬組成物粒子は、口の中では全く不快な味を感じさせない十分なラグタイムを有し、ラグタイム後の速やかな薬物放出を実現することが可能であることを見出した。本発明者らはさらに、各被覆層の被覆量や成分を変化させることによって、ラグタイムの長さを2~10分程度にコントロール可能であることを見出した。
【0025】
本発明の特筆すべき特徴は、ゲル化膨潤物質と薬物をマトリックス状に配合して製した粒子を核粒子として用いる点にある。崩壊剤のように単に水を吸って膨れる水膨潤性物質を利用した公知の苦味遮蔽微粒子では、上述のように不快な味の満足な遮蔽は達成されていない。本発明者らは、水を吸収しゲル化膨潤し糊状に変性して容積が肥大化する水溶性のゲル化膨潤物質を用い、これを薬物と混合して製した粒子を核粒子とし、さらにその外層に水不溶性高分子を含有する層を設ける方法を見出した。
【0026】
本発明に従った医薬組成物粒子からの薬物溶出の詳細は次の通りである。口腔内の水は、水不溶性物質を含む外層を通って少しずつ粒子内部へ浸入する。内部へ侵入した水は、内核のゲル化膨潤物質を糊状にゲル化膨潤させる。核粒子が糊状にゲル化膨潤する間、医薬組成物粒子の内部から外部への水の移行が制限されるため、このゲル化膨潤に要する時間がラグタイムとなる。吸水したゲル化膨潤物質は、粘性の強いゲルとなり、かつ、容積が増大する。その結果、ゲル化膨潤物質は、外層を押し広げ、外層を薄膜化させる、外層に亀裂や破壊を発生させるなどの膜変形を生じさせ、水中へ拡散する。ゲル化膨潤物質は、一時的にはゲル化するものの、その後は時間の経過により粒子内部へ移行する水の量が増加するに伴いゲルが軟弱となることと相俟って速やかに水に溶解し、水中に分散するので、薬物はゲル化膨潤物質とともに分散し、薬物の速やかな放出が達成される。
【0027】
以上の知見に基づいて、本発明は次のように構成される。すなわち、本発明に従った医薬組成物粒子は、薬物と水溶性のゲル化膨潤物質とを含有する核粒子と、水不溶性物質を含有して核粒子の外側を被覆する外層とを備える。
【0028】
後に詳述するように、外層の成分と被覆量、および/または、核粒子に配合するゲル化膨潤物質などの配合成分を調整することによって、ラグタイムを制御することができる。
【0029】
本発明者らの鋭意検討の結果、核粒子内のゲル化膨潤物質の量は、外層を薄膜化させる、外層に亀裂や破裂を発生させるなどの膜変形を生じさせた後の薬物の放出速度に大きな影響を及ぼさないことがわかった。そこで、核粒子内のゲル化膨潤物質の含有量をある程度多くすることによって、確実なラグタイムを設定できることがわかった。一方、ゲル化膨潤物質の吸水膨潤と肥大化によって外層の薄膜化や亀裂、破裂を生じさせるので、外層の量や厚みをある程度増加させても、ラグタイム後の薬物放出速度は低下しないことがわかった。
【0030】
そこで、例えば、1~2分間以上口腔内で形状を保持することが可能な外層を形成すれば、医薬組成物粒子は少なくとも1~2分間は口腔内で崩壊せず、その結果、少なくとも1~2分間は不快な味を遮蔽することができる。この1~2分間のラグタイムの間に外層を通して粒子内部に水が浸入し、医薬組成物粒子が胃内に移行した後、数分~10分間程度で、上述のように核粒子の膨潤による外層の薄膜化や亀裂、破壊が生じる。こうしてラグタイムの制御と速やかな薬物放出とを両立することができる。
【0031】
このようにして、不快な味のマスキングと溶出性の改善の両立が可能である医薬組成物粒子、すなわち、薬物を口腔内で溶出させない十分な長さのラグタイムを有し、かつ、ラグタイムの後には速やかな薬物放出をさせることが可能であって、さらに、目的に応じてラグタイムの長さを制御することが可能な経口投与用の医薬組成物粒子を提供することができる。
【0032】
また、本発明者らの鋭意検討によって、2%水溶液の25℃における粘度が10mPa・s以上のゲル化膨潤物質を用いることによって、ラグタイムのコントロールと速やかな溶出速度の両立がよりよくなることがわかった。
【0033】
そこで、本発明の医薬組成物粒子においては、ゲル化膨潤物質は、2%水溶液の25℃における粘度が10mPa・s以上のものであることが好ましい。
【0034】
また、本発明に従った医薬組成物粒子の外層は、外層の全重量の60重量%以上の水不溶性物質を含有することが好ましい。
【0035】
本願においては、ゲル化膨潤物質の膨潤力を次のように定義する。すなわち、ゲル化膨潤物質と水を混合して、30℃における粘度が1900~2100mPa・sの水飴状の粘性の高い溶液となるときの、ゲル化膨潤物質100(重量部)に対する水の配合量(重量部)を、ゲル化膨潤物質の膨潤力(S)と定義する。そして、本発明に従った医薬組成物粒子において核粒子に含有されるゲル化膨潤物質は、この膨潤力の値(S値)が650以上となるゲル化膨潤物質であることが好ましい。
【0036】
また、本発明に従った医薬組成物粒子においては、外層の被覆量は、核粒子に対して5重量%以上50重量%以下であることが好ましい。
【0037】
本発明に従った口腔内崩壊錠は、上記のいずれかの医薬組成物粒子を含む。
【0038】
本発明に従った医薬組成物粒子の製造方法は、水溶性のゲル化膨潤物質を平均粒子径15μm以下に粉砕する粉砕工程と、粉砕工程で粉砕されたゲル化膨潤物質と薬物とを混合して核粒子を製造する核粒子製造工程と、核粒子の外側に水不溶性物質を被覆して外層を形成する外層形成工程とを含む。
【0039】
核粒子製造工程は、例えば、(1)粉砕されたゲル化膨潤物質と薬物を混合したものに、結合剤を溶解した溶液を添加して、転動造粒装置などを用いて粒子に製造する工程、(2)必要に応じて1種又は2種以上の結合剤を溶解した溶液にゲル化膨潤物質と薬物を懸濁乃至溶解した溶液を用い、噴霧造粒方式により、直接、実質上球形の粒子を製造する工程、(3)必要に応じて1種又は2種以上の結合剤を溶解した溶液に粉砕されたゲル化膨潤物質と薬物を懸濁乃至溶解した溶液を、転動流動層造粒装置などにより、不活性の球状粒子に噴霧コーティングして粒子に製造する工程、などの工程であることが好ましい。
【0040】
また、本発明に従った医薬組成物粒子の製造方法においては、核粒子製造工程は、粉砕工程で粉砕されたゲル化膨潤物質と薬物とを有機溶媒に懸濁する工程を含み、有機溶媒はゲル化膨潤物質を溶解させないエタノールなどの有機溶媒であることが好ましい。
【0041】
粘度が10mPa・s以上のような粘度が高いゲル化膨潤物質は水に溶解するとき水飴より硬いゲル状あるいは糊状の液体になるため、そのままでは微粒子核の製造やコーティング操作には使用できない。また、ゲル化膨潤物質は、繊維質であるため通常使用される攪拌機あるいは粉砕機では容易に微粉砕しにくく、コーティング液中に懸濁して使用する粒子としてのコーティング用材料としての利用や造粒用の添加剤としての利用はほとんどなされていない。ゲル化膨潤物質を水に極端な低濃度に溶解させてコーティングする方法は考えられるが、コーティングに長時間を要し現実的ではない。その他にも、ゲル化膨潤物質は、粒子や薬物にまとわりつき、薬物の速放出性を阻害するような不都合も生じると考えられていた。そのため、ゲル化膨潤物質を主体として実質上球形の微粒子核を製造することや、ゲル化膨潤物質を用いて微粒子の被覆を行うことは製剤学的に至難であると考えられていた。
【0042】
本発明者らは、ゲル化膨潤物質を平均粒子径15μm以下に微粉砕し、これと薬物を混合して例えばエタノールのような有機溶剤で造粒して核粒子を製造する方法、あるいはこれと薬物をエタノールのような有機溶剤に懸濁乃至溶解した溶液を造粒やコーティング用の溶液として用いることによって、ゲル化膨潤物質と薬物を配合した核粒子を製する方法を見出した。特に、ゲル化膨潤物質を平均粒子径15μm以下に微粉砕することによって、実質上球形の粒子が得やすくなる、均質なフィルム状に被覆される、などの効果が得られるため、ラグタイム後、ゲル化膨潤物質が水中に速やかに分散し、核粒子が速やかに水中に露出されると考えられる。
【0043】
このようにして、不快な味のマスキングと溶出性の改善の両立が可能な医薬組成物粒子、すなわち、薬物を口腔内で溶出させない十分な長さのラグタイムを有し、かつ、ラグタイムの後には速やかな薬物放出をさせることが可能であって、さらに、目的に応じてラグタイムの長さを制御することが可能な経口投与用の医薬組成物粒子の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】実施例2の微粒子について、パドルの回転数は50rpm及び100rpmの溶出試験の結果を示す図である。
【
図2】実施例4の微粒子について、パドルの回転数は50rpm及び100rpmの溶出試験の結果を示す図である。
【
図3】実施例2の微粒子のpH1.2とpH6.8における溶出試験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明の実施形態を説明する。
【0046】
本発明における「医薬組成物粒子」とは、種々の経口投与剤形に供しうる薬物含有粒子状組成物を意味する。
【0047】
本発明における「薬物放出を抑制する」、あるいは「初期薬物溶出の抑制」とは、口腔内を想定した試験液を用いた日局・溶出試験法によるパドル法50rpmでの溶出試験において、薬物の溶出率を0~20%に抑制することを意味し、以下、薬物溶出率がその範囲にある時間を「ラグタイム」という。
【0048】
本発明の粒子を口腔内に一定時間留めおいた場合、外層を通して唾液が粒子中へ移行しゲル化膨潤物質が膨潤する。900mLの溶出試験液中においては2分でゲル化膨潤物質が軟化し少しずつ溶けて内部の薬物が0~20%溶出する粒子であっても、口腔内に存在する少量の唾液では、ゲル化膨潤物質が外層の内部でゲル化して粘土状になるに止まり口腔内へ拡散する状態にならず、当然粒子内部の薬物の口腔内への拡散も生じず、口腔内の苦味は遮蔽される。
【0049】
本発明者らの知見によれば、医薬組成物粒子を服用する際に、1~2分薬物の不快な味を遮蔽するためには、約2分のラグタイムが必要である。本発明による医薬組成物粒子の場合も、上記の溶出試験における溶出率を満たせば、薬物の不快な味の遮蔽は達成される。なお、50rpmでの試験時において、ゲル化膨潤物質が粒子の外層に露出した場合、その粘性のため溶出試験用容器の丸底部分に粒子同士が凝集・堆積して薬物が放出され難くなる現象が生じる。そのような現象が生じる医薬組成物粒子に関しては、凝集や堆積を防止するために100rpmで試験を実施した。
【0050】
また、本発明における「薬物を速やかに放出する」、あるいは「速やかな薬物放出」という表現は、十分な薬効発現を期待することが可能な薬物放出条件を意味する。すなわち、消化管液を想定した試験液を用いた溶出試験において、試験開始60分後の薬物溶出率が90%以上であることが少なくとも必要であり、より速放性が求められる場合は試験開始30分後の薬物溶出率が80%以上であることが望ましい。この溶出試験において薬物溶出率が上記に達しない場合には、薬物によっては、薬物の消化管上部での吸収が低下し、十分な薬効発現が期待できないことを意味する。
【0051】
本発明における「不快な味」とは、具体的には苦味、渋味、えぐ味、酸味、収斂味、辛味などを意味する。
【0052】
本発明において、「口腔内を想定した試験液」としては、口腔内のpHが弱酸性であるという知見により、日本薬局方溶出試験第2液(pH6.8リン酸緩衝液)を用いた。「消化管液を想定した試験液」としては、胃内pHの変動を考慮した日本薬局方崩壊試験第1液(pH1.2塩酸緩衝液)、あるいは溶出試験第2液を用いた。
【0053】
以下に本発明の医薬組成物粒子の構成などに関して説明する。
【0054】
本発明における「水溶性のゲル化膨潤物質と薬物を含有する核粒子」とは、水溶性のゲル化膨潤物質と薬物のみからなる粒子、あるいは水溶性のゲル化膨潤物質と薬物と1種または2種以上の添加物からなる粒子を意味し、水溶性のゲル化膨潤物質と薬物を含有しない核に水溶性のゲル化膨潤物質と薬物を被覆したものも含める。核粒子には、水溶性のゲル化膨潤物質が2種以上混合して用いられてもよく、水溶性のゲル化膨潤物質と薬物が複数の層として形成されて核粒子を構成してもよい。
【0055】
本発明に用いる水溶性のゲル化膨潤物質としては、吸水し糊状にゲル化し膨潤する物質であることが肝要である。ゲル化膨潤物質としては、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリエチレンオキシド、ポリアクリル酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、キサンタンガム、カラギーナン、グァーガム、タラガム、ペクチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシビニルポリマー、ローカストビーンガム、タマリンドシードガム、アラビアガム、カラヤガム、寒天、ゼラチン、ポリビニルアルコール、または、ポリビニルアルコールを一部とした共重合体などがある。これらのゲル化膨潤物質の1種または2種以上を用いて核粒子を製する。
【0056】
これらのゲル化膨潤物質は水に溶解して糊状になり粘性の高い溶液となる。そのため、水を溶剤とする湿式造粒法やコーティング法でゲル化膨潤物質と薬物配合の球形の造粒粒子を造ることは基本的には不可能である。そこで、例えば、ゲル化膨潤物質を15μm以下、好ましくは10μm以下の平均粒子径に粉砕し、これと薬物を混合して例えばエタノールのような有機溶剤で造粒して核粒子を製造する方法、あるいはこれと薬物をエタノールのような有機溶剤に懸濁乃至溶解した溶液を造粒やコーティング用の溶液として用いることによって、ゲル化膨潤物質と薬物を配合した核粒子の製造に供することで問題は解決されることを見出した。この際、懸濁を阻害しない範囲で有機溶媒に水を配合することは自由である。また、ゲル化膨潤物質と薬物の付着をよくする目的で、造粒用や被覆用の結合剤として汎用されるヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、コポリビドン、マクロゴール、エチルセルロース、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒプロメロースフタル酸エステルなどの結合剤を同時に処方し、溶解するなどして使用することも自由である。なお、ゲル化膨潤物質と薬物配合で核粒子を製造できるのであれば製造方法は限定されない。
【0057】
また、核粒子に用いるゲル化膨潤物質の溶解速度などを調整する目的で、マンニトール、エリスリトール、キシリトールなどの糖類あるいは糖アルコール類、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸等の有機酸類などを核粒子に配合することは自由である。
【0058】
上記したゲル化膨潤物質の粘度と膨潤力は、品目間差並びにグレード間差が非常に大きい。従って、核粒子中のゲル化膨潤物質の配合量は、一概には決められない。しかしながら、敢えて述べれば、ゲル化膨潤物質と薬物を配合し直接造粒して製する核粒子中のゲル化膨潤物質の配合量は20%以上、好ましくは40%以上であることが好ましい。また、ゲル化膨潤物質と薬物を含有しない核にゲル化膨潤物質と薬物を被覆して核粒子とする場合には、ゲル化膨潤物質の被覆量については、ゲル化膨潤物質と薬物を含有しない核に対して5重量%以上であることが好ましく、より好ましくは10重量%以上であり、また、75重量%以下であることが好ましく、より好ましくは60重量%以下である。被覆量が5重量%より低い場合には、十分な長さのラグタイムを形成することができないことが懸念される。
【0059】
本発明における「外層」とは、1種または2種以上の水不溶性物質からなる被覆層であり、1種または2種以上の導水性調整物質を含んでもよい層である。外層は、核粒子の外層に被覆される。外層は、医薬組成物粒子内部への水の浸入速度を制御することで、核粒子の吸水ゲル化膨潤速度を調整してラグタイムを形成させる。
【0060】
外層は、核粒子の上に直接被覆されてもよいし、ラグタイム形成及びその後の速やかな薬物放出を妨げない成分が、1層または2層以上の被覆層として核粒子の上に被覆された後、外層が被覆されてもよい。外層の上に、ラグタイム形成及びその後の速やかな薬物放出を妨げない成分が、1層または2層以上の被覆層として被覆されてもよい。また、外層は水の浸入速度を制御することが目的であるから、その制御目的に応じて1層であってもよく、2層以上の複数層であっても差し支えはない。
【0061】
外層を形成するために用いる水不溶性物質は、水の浸入速度を制御するために外層に配される必須成分の1つであり、水に溶けにくい、極めて溶けにくい、ほとんど溶けないとされる溶解性を有する。水不溶性物質としては、具体的には、エチルセルロース、アセチルセルロース、セルロースアセテートフタレート、カルボキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ジメチルアミノエチルメタアクリレート・メチルメタアクリレートコポリマー、メチルアクリレート・メタクリル酸コポリマー、アクリル酸エチル・メタクリル酸メチルコポリマー分散液、アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS、乾燥メタクリル酸コポリマーLD、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、メタクリル酸コポリマーL、メタクリル酸コポリマーLD(水分散液)、メタクリル酸コポリマーS、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、乾燥乳状白ラック、セラック、ゼイン、ステアリン酸などの高級脂肪酸、セタノールやステアリルアルコールなどの高級アルコール、カルナウバロウやミツロウやパラフィンなどの融点が30~120℃の低融点物質、ショ糖脂肪酸エステルなどの高級脂肪酸と多価アルコールのエステル、カスターワックスなどの油に水素を添加して得た脂肪、合成ワックス、タルク、ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。水不溶性物質はその1種または2種以上を適宜組み合わせて使用することもできる。また、ヒマシ油、フタル酸ジブチル、クエン酸トリエチルなどの可塑剤を混合して用いることも自由である。
【0062】
また、外層を形成する際、水不溶性物質に導水性調整物質として水溶性物質、親水性物質などを配合することができる。ここでいう導水性調整物質とは、水の浸入速度と浸入量を調節するために、水不溶性物質と共に外層に配合される成分であり、水に溶けやすい成分や、崩壊剤等の親水性で水を通過させやすい成分である。具体的に本発明の外層における導水性調整物質を例示すると、アルファー化デンプン、カゼインナトリウム、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルスターチナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、プルラン、ポリビニルピロリドン、コポリビドン、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレングリコール、ポリビニルアルコール-ポリエチレングリコール移植片コポリマー、ポリビニルアルコール、マクロゴール、ポリエチレンオキサイド、グリシンやアラニンなどのアミノ酸、グリチルリチン酸などの甘味剤、デキストリンや乳糖などの糖類、マンニトールやキシリトールなどの糖アルコール、結晶セルロース、クロスポビドン、クエン酸トリエチルなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、導水性調整物質はその1種または2種以上を適宜組み合わせて使用することもできる。
【0063】
本発明の外層における水不溶性物質と導水性調整物質の組成比は、薬物の物性や吸収部位、製剤の種類などの目的に応じ、目的達成のために適した比率が選択される。なお、本発明の医薬組成物粒子においては、外層の水透過性が高い場合(水不溶性物質とともに配合される導水性物質の配合量が多い場合)、核粒子に配合したゲル化膨潤物質が、外層の細孔を通して口腔内に迅速に露出し、その粘性のために粒子が口腔内で固まり口腔内粘膜への貼り付きが発生する場合がある。したがって、外層中の水不溶性物質の含有量は、60重量%以上であることが好ましい。また、水不溶性物質の割合が30重量%より低い場合には、医薬組成物粒子内部への水浸入速度を十分に制御することができず、十分な長さのラグタイムを形成することができないことが懸念される。
【0064】
本発明における外層の被覆量についても、本発明の目的を達成するのに適した量が選択される。具体的には、核粒子に対して、5重量%以上、特に7重量%以上であることが好ましく、また、50重量%以下、特に好ましくは30重量%以下であることが好ましい。被覆量が5重量%より低い場合には、医薬組成物粒子表面への被覆が均一に行われない場合があり、かつ外層が極めて薄いため、医薬組成物粒子内部への水浸入速度を十分に制御することができない場合があり、十分な長さのラグタイムを形成することができない場合があるとともに、口腔内への粒子の付着現象が生じる恐れがある。また被覆量が多すぎる場合には、ラグタイム後の速やかな薬物放出が達成されない場合がある。
【0065】
本発明に用いられる薬物としては、治療学的にあるいは予防学的に有効な活性成分であれば特に限定されない。医薬活性成分としては、例えば、催眠鎮静剤、睡眠導入剤、偏頭痛剤、抗不安剤、抗てんかん剤、抗うつ薬、抗パーキンソン剤、精神神経用剤、中枢神経系用薬、局所麻酔剤、骨格筋弛緩剤、自律神経剤、解熱鎮痛消炎剤、鎮けい剤、鎮暈剤、強心剤、不整脈用剤、利尿剤、血圧降下剤、血管収縮剤、血管拡張剤、循環器官用薬、高脂血症剤、呼吸促進剤、鎮咳剤、去たん剤、鎮咳去たん剤、気管支拡張剤、止しゃ剤、整腸剤、消化性潰瘍用剤、健胃消化剤、制酸剤、下剤、利胆剤、消化器官用薬、副腎ホルモン剤、ホルモン剤、泌尿器官用剤、ビタミン剤、止血剤、肝臓疾患用剤、通風治療剤、糖尿病用剤、抗ヒスタミン剤、抗生物質、抗菌剤、抗悪性腫瘍剤、化学療法剤、総合感冒剤、滋養強壮保健薬、骨粗しょう症薬等が挙げられる。
【0066】
医薬組成物粒子中の薬物の配合量は特に制限されない。好ましくは医薬組成物粒子全体の0.5重量%以上が好ましく、また、80重量%以下、特に70重量%以下、さらに60重量%以下であることが好ましい。ただし、ここに示した薬物の配合量は本発明に適用できうる一例であり、限定的に解釈されるべきではない。
【0067】
本発明に従った医薬組成物粒子の粒径は、最長径が2mm以下であることが好ましい。医薬組成物粒子の形状が球に近似できる場合、平均粒子径が2mm以下であることが好ましい。また医薬組成物粒子が球以外の形状の場合、平均最長径が2mm以下であることが好ましい。
【0068】
本発明に従った不快味を遮蔽した医薬組成物粒子は、口腔内で比較的長い時間滞留される口腔内崩壊錠用の微粒子として特に有用である。本発明に従った医薬組成物粒子は、口腔内崩壊錠に含有される場合は、口腔内でのザラツキ感を低減させるために、好ましくは平均粒子径は350μm以下に調製される。医薬組成物粒子のより好ましい平均粒子径は50~350μmであり、さらに好ましくは70~300μmである。
【0069】
本発明の医薬組成物粒子は、慣用される添加物として使用される各種医薬添加剤を使用して製造することができることは言うまでもない。医薬添加剤としては、例えば、矯味剤、甘味剤、香料、着色剤、安定(化)剤、抗酸化剤、pH調節剤、可溶化剤、溶解補助剤、流動化剤、緩衝剤などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0070】
本発明の医薬組成物粒子は、そのまま必要量を配合して種々の経口投与医薬組成物の形態に製することができる。ここでいう製剤とは、散剤、顆粒剤、錠剤、トローチ剤、ドライシロップ剤などである。散剤や顆粒は、該製剤化用微粒子をそのまま配合して混合するだけでも製剤化が可能な場合もある。口腔内崩壊錠にする場合は、該製剤化用微粒子を配合して製剤化法を工夫することが必要である。
【0071】
次に、本発明の医薬組成物粒子の製造方法を説明する。
【0072】
本発明の医薬組成物粒子は、水溶性のゲル化膨潤物質と薬物を含有する核粒子に、外層を被覆して製する。核粒子としては、公知の技術を用いて、ゲル化膨潤物質と薬物のみからなる粒子を製して用いることもできるし、ゲル化膨潤物質と薬物と1種または2種以上の添加物からなる粒子を製造し、その粒子を用いてもよい。ゲル化膨潤物質と薬物と添加物からなる粒子は、例えばゲル化膨潤物質と薬物と適当な賦形剤 (例えば結晶セルロース、乳糖、トウモロコシデンプン等)とを混合し、必要に応じて結合剤を溶解した溶液を添加し、造粒し、整粒、乾燥して製造してもよい。ゲル化膨潤物質に対し、薬物を結合剤などとともに溶解乃至懸濁した溶液を流動層などで連続的に噴霧して造粒する方法も採用することができる。また、流動層コーティング装置などにより、適当な核となる添加物粒子(例えば結晶セルロース(粒)、精製白糖球状粒子、マンニトール球状粒子等)に、ゲル化膨潤物質と薬物と結合剤などを溶解乃至懸濁した液を噴霧して製してもよい。また、その他の噴霧造粒法、溶融造粒法、スプレーチルド法、乾式造粒法など、いろいろな方法で本発明の核粒子を造ることができることは言うまでもない。
【0073】
医薬組成物粒子を口腔内崩壊錠の製造に用いる場合には、医薬組成物粒子の平均粒子径は、通常100~200μm程度であることが望まれる。結晶セルロース(粒)などの平均粒子径が75~150μmの実質上球形の粒子に対し、その外層にゲル化膨潤物質と薬物を被覆して核粒子を製造する場合、実質上球形の核粒子が球形状を保ったままでゲル化膨潤物質と薬物が被覆されて100~200μm程度にされるためには、被覆溶液中に懸濁して使用する物質(例えばゲル化膨潤物質)の平均粒子径は被被覆粒子の10分の1以下の粒子径であることが必要である。したがって、被覆溶液中に懸濁してコーティングに供するゲル化膨潤物質の平均粒子径は15μm以下であることが好ましく、より好ましくは10μm以下、最も好ましくは7μm以下である。また、このことは直接造粒法で実質上球形の核粒子を造る場合などその他の場合にもあてはまることである。なお、本明細書において平均粒子径は、レーザー回折散乱粒度分布測定装置で測定されるものである。
【0074】
しかしながら、ゲル化膨潤物質は繊維質であるため粉砕し難く、容易に微細化することはできない。そこで、本発明者らが粉砕方法に関して鋭意検討を行ったところ、ジェットミルによる粉砕で目的とする粒子径に効率よく粉砕する方法を見出した。また、湿式解砕法によっても効率よく粉砕することができることを見出した。
【0075】
核粒子に外層を被覆する方法としては、流動層コーティング装置、転動コーティング装置、遠心転動コーティング装置など、粒子状組成物の被覆操作に汎用されている機械によって被覆する方法を採用することが好ましい。例えば、転動流動層コーティング装置中で、ゲル化膨潤物質と薬物を含有する核粒子を流動させながら、スプレーガンにて被覆成分を含有する液を必要量噴霧すればよい。この被覆成分を含有する液は、必須成分などを水、エタノール、メタノール等の溶媒に溶解または分散して調製されるが、これらの溶媒は適宜混合して用いることも可能であり、例えば溶媒として水のみを用いてもかまわない。なお、これらの層の被覆方法については、湿式法に限定されるものではないことは言うまでもない。
【0076】
以上のように、本発明に従った医薬組成物粒子の製造方法は、ゲル化膨潤物質を平均粒子径15μm以下に粉砕する粉砕工程と、粉砕工程で粉砕されたゲル化膨潤物質と薬物とを混合して核粒子を製造する核粒子製造工程と、核粒子の外側に水不溶性物質を被覆して外層を形成する外層形成工程とを含む。好ましくは、核粒子製造工程は、粉砕工程で粉砕されたゲル化膨潤物質と薬物とを有機溶媒に懸濁する工程を含み、粉砕工程で粉砕されたゲル化膨潤物質と薬物を用いて造粒あるいはレイヤリングして製する核粒子製造工程であることが好ましい。
【0077】
また、核粒子製造工程において有機溶媒を用いる場合はエタノールであることが好ましい。
【0078】
以下に本発明の医薬組成物粒子を含有する口腔内崩壊錠に関して説明する。
【0079】
本発明で言う口腔内崩壊錠とは、口腔内において、錠剤が一定時間内、好ましくは1分以内、より好ましくは45秒以内に崩壊する錠剤に類する製剤を意味する。例えば特開2012-240917号公報、特許第4019374号公報、特許第3746167号公報などに開示される医薬組成物粒子を含有させた口腔内崩壊錠が挙げられる。それらと同じように、本発明の医薬組成物粒子を、適切な賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤などとともに口腔内崩壊錠にすることができる。
【0080】
具体的に製法を例示すれば、(1)医薬組成物粒子をそのまま糖又は糖アルコール類や選択された崩壊剤とともに混合して加圧圧縮することにより錠剤に製する方法、(2)医薬組成物粒子を糖又は糖アルコール類や選抜した崩壊剤などと混合し結合剤溶液で造粒して製した粒子に、適切なその他の錠剤用添加剤を混合して加圧圧縮することにより錠剤に製する方法、(3)医薬組成物粒子に成形性の低い糖類を混合し、かかる混合物を成形性の高い糖類を結合剤として噴霧し被覆及び/または造粒したものを低圧圧縮成形した後、加湿、乾燥して錠剤に製する方法など、いろいろな製法がある。なお、医薬組成物粒子を配合した口腔内崩壊錠の場合、粒子の破壊、錠剤の硬度、崩壊性、含量均一性などへの特別な配慮が必要で、口腔内崩壊錠の製造方法については、ここで述べた方法に限定するべきではなく、鋳型法、湿式成形乾燥法など、錠剤化に際していかなる方法が採用されても差し支えはない。
【0081】
製剤化用微粒子、すなわち、医薬組成物粒子の錠剤中の配合量は、錠剤重量に対して5重量%以上85重量%以下が好ましく、より好ましくは5重量%以上70重量%以下、さらに好ましくは10重量%以上70重量%以下であるが、これに限定されるべきものではない。医薬組成物粒子の配合量が85重量%より多い場合、錠剤、特に口腔内崩壊錠としての強度や溶解特性が達成されないことが懸念される場合がある。
【0082】
本発明による口腔内崩壊錠は、本発明の医薬組成物粒子を配合するほか、錠剤の製造に通常用いられる一般的な添加剤を配合して製造することができる。賦形剤としては、マンニトール、エリスリトール、マルチトール、乳糖などの糖又は糖アルコール、結晶セルロース、リン酸水素カルシウムなどを用いることができる。結合剤としては、トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン、コポリビドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコールなど通常の結合剤であれば制限されない。崩壊剤としては、通常用いられる、例えばカルメロース、クロスポビドン、コーンスターチ、部分アルファー化デンプン、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースなどを用いることができる。また、製剤中に、甘味剤、矯味剤などを配合して、服用感を向上させることも自由である。
【0083】
本発明を要約すると、以下の通りである。
【0084】
(1)本発明に従った医薬組成物粒子は、水溶性のゲル化膨潤物質と薬物とを含有する核粒子と、水不溶性物質を含有して核粒子の外側を被覆する外層とを備える。
【0085】
(2)上記(1)の医薬組成物粒子において、ゲル化膨潤物質は、2%水溶液の25℃における粘度が10mPa・s以上であることが好ましい。
【0086】
(3)上記(1)または(2)の医薬組成物粒子において、外層は、水不溶性物質を外層の全重量の60重量%以上含有することが好ましい。
【0087】
(4)上記(1)から(3)までのいずれかの医薬組成物粒子において、ゲル化膨潤物質は、膨潤力(S)の値が650以上であることが好ましい。
【0088】
(5)上記(1)から(4)までのいずれかの医薬組成物粒子において、外層の被覆量は、核粒子に対して5重量%以上50重量%以下であることが好ましい。
【0089】
(6)本発明に従った口腔内崩壊錠は、上記(1)~(5)までのいずれかの医薬組成物粒子を含む。
【0090】
(7)本発明に従った医薬組成物粒子の製造方法は、水溶性のゲル化膨潤物質を平均粒子径15μm以下に粉砕する粉砕工程と、粉砕工程で粉砕されたゲル化膨潤物質と薬物を混合して核粒子を製造する工程と、核粒子の外側に水不溶性物質を被覆して外層を形成する外層形成工程とを含む。
【0091】
(8)上記(7)の製造方法において、核粒子製造工程は粉砕工程で粉砕されたゲル化膨潤物質と薬物とを有機溶媒に懸濁する工程を含み、有機溶媒はエタノールであることが好ましい。
【実施例】
【0092】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0093】
実験に用いた製剤原料は次の通りである。ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910(TC-5E,粘度:3mPa・s,信越化学工業)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910(TC-5R,粘度:5.8mPa・s,信越化学工業)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910(TC-5S,粘度:15.2mPa・s,信越化学工業)、カルメロースナトリウム(セロゲンF-5A,粘度:4mPa・s,第一工業製薬株式会社)、カルメロースナトリウム(セロゲンF-7A,粘度:15mPa・s,第一工業製薬株式会社)、カルメロースナトリウム(セロゲンPR-S,粘度:28mPa・s,第一工業製薬株式会社)、カルメロースナトリウム(セロゲンF-SC,粘度:400mPa・s,第一工業製薬株式会社)、アルギン酸ナトリウム(キミカアルギンIL-6,粘度:67mPa・s*),株式会社キミカ)、キサンタンガム(ケトロールCG,粘度(in KCl):600mPa・s以上*),三晶株式会社)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC-L,7.9mPa・s,日本曹達株式会社)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC NBD-020,信越化学工業)、ポリビニルピロリドン(PVP-K30,粘度:3mPa・s以下,BASFジャパン株式会社)、エチルセルロース(エトセル7,ダウ・ケミカル)、結晶セルロース(粒)(セルフィアCP102,旭化成ケミカルズ)、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート(AEA,三菱化学フーズ株式会社)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(AQOAT AS-MG,信越化学工業株式会社)、D-マンニトール(160C,ロケットジャパン)、結晶セルロース(KG-802,旭化成ケミカルズ)、クロスポビドン(Polyplasdone XL-10,Ashland)、ステアリン酸マグネシウム(太平化学産業)。なお、*)で表示した粘度は25℃における1%液の粘度であり、その他は25℃における2%液の粘度である。
【0094】
また、以下の実験で溶液に懸濁して用いる次の物質については、平均粒子径が7μm以下になるようにジェットミルで粉砕を行った。粉砕された物質の平均粒子径は、セロゲンF-5Aが5.5μm、セロゲンPR-Sが4.7μm、セロゲンF-SCが6.5μm、ケトロールCGが3.1μmであった。
【0095】
[実験例1]
各種のゲル化膨潤物質を用い、ゲル化膨潤物質と水を混合して、30℃における粘度が1900~2100mPa・sの粘性の溶液となるときの、ゲル化膨潤物質100(重量部)に対する水の配合量(重量部)を求め、ゲル化膨潤物質の膨潤力(S)とした。求めたS値は以下のとおりであった。
TC-5E:317、TC-5R:514、TC-5S:931、セロゲンF-5A:525、セロゲンF-7A:953、セロゲンPR-S:1,011、セロゲンF-SC:2,074、キミカアルギンIL-6:2,226、ケトロールCG:5,456、HPC-L:590、PVP-K30:110
【0096】
なお、S値が953のセロゲンF-7Aについて述べれば、セロゲンF-7Aを5gとエタノール45mLとを混合して懸濁させた溶液の容積は49.3mLとなることから、5gのセロゲンF-7Aの容積は4.3mLに相当する。したがって、セロゲンF-7Aを100g(容積は86mlに相当する)とり水をS値相当の953g添加した水溶液は、容積が1,039mLとなり、粘度は1900~2100mPa・sであり、吸水膨潤率は12.1倍となる。また、HPC-Lについて同様の実験を行ったところ、HPC-Lの5gの容積は4.2mLに相当するので、HPC-L100g(容積は84mLに相当する)に水をS値相当の590g添加したHPC-L水溶液はその容積が674mLとなり、粘度は1900~2100mPa・sであり、吸水膨潤倍率は8.0倍となる。なお、同様にその他のゲル化膨潤物質の吸水膨潤倍率を算出したところ、TC-5E:4.7倍、TC-5R:7.4倍、セロゲンPR-S:12.5倍、セロゲンF-SC:25.7倍であった。
【0097】
[試験例1]
様々な核粒子を用いて製した医薬組成物粒子(実施例1,2,比較例1~3)について、溶出試験及び不快な味の遮蔽性の評価を行った。
【0098】
[実施例1]
HPC-Lを14.4gとり精製水162gとエタノール648gの混液に溶解した溶液に、アンブロキソール塩酸塩(平均粒子径約3μm)18gとセロゲンPR-S57.6gを懸濁させてレイヤリング溶液を調製した。エトセル7を32.4g、TC-5Eを3.6gとり、エタノール291.6gと精製水32.4gの混液に溶解して外層溶液を調製した。
【0099】
転動流動型コーティング造粒機(株式会社パウレック製:MP-01型)に平均粒子径が120μmの結晶セルロース粒(セルフィアCP-102)を180g投入し、撹拌流動させながらレイヤリング溶液900gを噴霧してコーティングし乾燥した後、42メッシュと150メッシュで篩過し、薬物・ゲル化剤レイヤリング粒子(核粒子)を得た。
【0100】
次いで、転動流動型コーティング造粒機(MP-01型)に薬物・ゲル化剤レイヤリング粒子を180g投入し、撹拌流動させながら外層溶液360gを噴霧コーティングし乾燥させて、実施例1の外層被覆粒子(医薬組成物粒子)を得た。
【0101】
[実施例2]
実施例1で用いたカルメロースナトリウム(セロゲンPR-S)に替えてセロゲンF-SCを用い、実施例1と同様の方法で実施例2の外層被覆粒子((医薬組成物粒子)を得た。
【0102】
[比較例1]
実施例1のセロゲンPR-Sに替えてセロゲンF-5Aを用い、実施例1と同様の方法で比較例1の外層被覆粒子(医薬組成物粒子)を得た。
【0103】
[比較例2]
実施例1及び実施例2のカルメロースナトリウムに替えて、HPC-Lを用いて試料を作成した。HPC-Lを72gとり精製水342gとエタノール1,368gの混液に溶解した溶液に、アンブロキソール塩酸塩(平均粒子径約3μm)18gを懸濁させてレイヤリング溶液を調製した。エトセル7を32.4g、TC-5Eを3.6gとり、エタノール291.6gと精製水32.4gの混液に溶解して外層溶液を調製した。
【0104】
転動流動型コーティング造粒機(株式会社パウレック製:MP-01型)にセルフィアCP-102を180g投入し、撹拌流動させながらレイヤリング溶液1,800gを噴霧してコーティングし乾燥した後、42メッシュと150メッシュで篩過し、薬物・ゲル化剤レイヤリング粒子(核粒子)を得た。
【0105】
次いで、転動流動型コーティング造粒機(MP-01型)に薬物・ゲル化剤レイヤリング粒子を180g投入し、撹拌流動させながら外層溶液360gを噴霧コーティングし乾燥させて、比較例2の外層被覆粒子(医薬組成物粒子)を得た。
【0106】
[比較例3]
実施例1及び実施例2のセロゲンに替えて、崩壊剤として汎用されている水不溶性の水膨潤性物質であるL-HPC(NBD020)を用い、実施例1及び実施例2と同じ方法で比較例3の外層被覆粒子を作成した。
【0107】
実施例1~2及び比較例1~3で得られた粒子について、以下の溶出試験及び不快な味の遮蔽性の評価を実施した。
【0108】
[溶出試験]
20mgのアンブロキソール塩酸塩を含む外層被覆粒子をとり、自動6連溶出試験器(富山産業社製)を用いて、日本薬局方第2法に従い溶出試験を行った。試験液は日本薬局方溶出試験第2液900mLを用いた。なお、パドルの回転数は50rpm又は100rpmである。溶出試験の結果を表1に示す。
【0109】
【0110】
[不快な味の遮蔽性の評価]
アンブロキソール塩酸塩を含む外層被覆粒子並びにアンブロキソール塩酸塩原末の味を、以下の評価方法及び評価基準に従って評価した。結果を表2に示す。
【0111】
<評価方法>
健康な成人男性4名(パネル1~パネル4)がアンブロキソール塩酸塩15mg相当量の含有膜被覆粒子を2分間含んだ後、これを吐き出し、1分後及び2分後の不快な味を評価した。
【0112】
<不快な味の評価基準>
-: 不快な味を感じない
±: 僅かに味を感じるが許容できる
+: 不快な味を感じる
++: 不快な味を強く感じる
【0113】
【0114】
アンブロキソール塩酸塩原末については、パネルの全員が1分から++であった。
【0115】
実施例1~2のすべてのサンプルに関して、口腔内での苦味は口に含んだ後2分後においても不快な味は感じられず、明確な不快な味の抑制効果が得られていた。また、溶出試験においても、15~30分後に80%以上の溶出率を示し、速やかでかつ十分な薬効発現が期待される薬物放出特性を有していた。なお、実施例2に関しては、[試験例3]で後述するとおり、50rpmでは溶出試験ベッセル中で明確な粒子の凝集が発生したため、100rpmでの試験を実施した。
【0116】
これに対して、ゲル化膨潤物質として吸水膨潤力が弱いセロゲンF-5A及びHPC-Lを用いて製した比較例1と2の医薬組成物粒子は、2分後においても不快な味は感じられなかったものの、ゲル化膨潤力が弱く、外層を変性させる能力が弱いため、溶出試験においては、60分後においても薬物放出が70%程度であり、十分な薬効発現が期待できないことがわかった。また、ゲル化膨潤物質の代わりに水不溶性の水膨潤性物質を用いた比較例3の粒子では、不快な味は隠蔽されているが、外層を変性させる能力が弱い、水に溶解しないため拡散力が弱いなどの理由で、溶出試験においては、60分後においても薬物放出が80%に届かず、十分な薬効発現が期待できないことがわかった。なお、比較例1~3の粒子は、溶出試験中に溶出試験ベッセル中で粒子の凝集は認めなかった。
【0117】
[試験例2]
核粒子が含む薬物あるいはゲル化膨潤物質を替えて実験を実施した。
【0118】
[実施例3]
HPC-Lを14.4gとり精製水150gとエタノール660gの混液に溶解した溶液に、セルトラリン塩酸塩(平均粒子径約3μm)18gとセロゲンPR-S57.6gを溶解乃至懸濁させてレイヤリング溶液を調製した。エトセル7を32.4g、TC-5Eを3.6gとり、エタノール291.6gと精製水32.4gの混液に溶解して外層溶液を調製した。
転動流動型コーティング造粒機(株式会社パウレック製:MP-01型)にセルフィアCP-102を180g投入し、撹拌流動させながらレイヤリング溶液900gを噴霧してコーティングし乾燥した後、42メッシュと150メッシュで篩過し、薬物・ゲル化剤レイヤリング粒子(核粒子)を得た。
次いで、転動流動型コーティング造粒機(MP-01型)に薬物・ゲル化剤レイヤリング粒子を180g投入し、撹拌流動させながら外層溶液360gを噴霧コーティングし乾燥させて、実施例3の外層被覆粒子(医薬組成物粒子)を得た。
【0119】
[実施例4]
HPC-Lを4.8gとり精製水54gとエタノール216gの混液に溶解した溶液に、レボセチリジン塩酸塩(平均粒子径約3μm)18gとケトロールCG7.2gを懸濁させてレイヤリング溶液を調製した。エトセル7を32.4g、TC-5Eを3.6gとり、エタノール291.6gと精製水32.4gの混液に溶解して外層溶液を調製した。
【0120】
転動流動型コーティング造粒機(株式会社パウレック製:MP-01型)にセルフィアCP-102を180g投入し、撹拌流動させながらレイヤリング溶液300gを噴霧してコーティングし乾燥した後、42メッシュと150メッシュで篩過し、薬物・ゲル化剤レイヤリング粒子(核粒子)を得た。
次いで、転動流動型コーティング造粒機(MP-01型)に薬物・ゲル化剤レイヤリング粒子を180g投入し、撹拌流動させながら外層溶液360gを噴霧コーティングし乾燥させて、実施例4の外層被覆粒子(医薬組成物粒子)を得た。
【0121】
[溶出試験及び不快な味の遮蔽性の評価]
試験例1と同様の方法で溶出試験及び不快な味の遮蔽性の評価を行った。溶出試験の結果を表3に示す。セルトラリン塩酸塩原末及びレボセチリジン塩酸塩については、パネルの全員が1分から++であった。
【0122】
【0123】
実施例3と実施例4のサンプルに関して不快な味の遮蔽性の評価を行ったところ、パネル全員が口に含んだ後2分後においても問題となるような不快な味を感じず、明確な不快な味の抑制効果が得られていた。また、溶出試験においても、約15~30分後に80%以上の溶出率を示し、速やかでかつ十分な薬効発現が期待される薬物放出特性を有していた。なお、実施例4に関しては、[試験例3]で後述するとおり、50rpmでは溶出試験ベッセル中で明確な粒子の凝集が発生したため、100rpmでの試験を実施した。
【0124】
[試験例3]
本発明に従った医薬組成物粒子は、溶出試験時に外層に亀裂などが生じた際、ゲル化膨潤物質が表面に露出し、その粘性により溶出試験ベッセル内部で粒子同士の凝集が生じる。その傾向は、粘性の強いゲル化膨潤物質を用いた場合に発生する。そのため、溶出試験時のパドル回転数が低い場合(50rpm)、試験液中で粘性を有した湿塊となり、真の溶出データが得られない。そこで、凝集を緩和させて真の溶出データを得る目的で、パドル回転数100rpmとの比較実験をした。
【0125】
実施例2と実施例4の粒子を用い、自動6連溶出試験器(富山産業社製)を用いて、日本薬局方第2法に従い溶出試験を行った。試験液は日本薬局方溶出試験第2液を900mL用いた。パドルの回転数は50rpm及び100rpmとした。溶出試験の結果を
図1と
図2に示す。
【0126】
図1と
図2に示すように、実施例2及び実施例4の粒子においては、50rpmと100rpmとで、2~5分までの溶出に大きな差はない。50rpmにおいては、10分以降の溶出速度が極度に遅くなり、60分でも完全には溶出しない。これは、5~10分程度で粒子の凝集が生じていることに起因することが、溶出試験時の視覚による観察からわかっており、生体内での薬物放出を反映したものになっていないことが明らかである。また、100rpmにおいては、15~30分において80%以上溶出し、凝集性が緩和され真の溶出が反映されていることがわかる。
【0127】
したがって、25℃における2%液の粘度が50mPa・sを超えるような粘度が高いゲル化膨潤物質を用いた場合で、パドル回転数50rpmで強い粒子同士の凝集が認められる際は、凝集を緩和させる目的で、100rpmでの試験が有意義である。
【0128】
[試験例4]
本発明に従った医薬組成物粒子について、異なるpHの溶液中の薬物放出特性を調べた。
【0129】
実施例2の粒子について、自動6連溶出試験器(富山産業社製)を用いて日本薬局方第2法に従い溶出試験を行った。試験液は日本薬局方溶出試験第2液(pH6.8)及び日本薬局方崩壊試験法第1液(pH1.2)をそれぞれ900mL用いた。パドルの回転数は、医薬組成物粒子の溶出試験液中での凝集を防止するために100rpmを採用した。結果を表4と
図3に示す。
【0130】
【0131】
2つの試験液間で溶出特性に差はなく、本発明の医薬組成物粒子は胃内、腸管内のいずれにおいても同じ様な薬物放出特性を有する優れた製剤であることがわかる。
【0132】
[試験例5]
外層に用いる水不溶性物質の種類を変えて外層被覆粒子を製し(実施例5~6)、試験例1と同様の溶出試験及び不快な味の遮蔽性の評価を実施した。
【0133】
[実施例5~6]
AEAを36g、クエン酸トリエチルを4gとり、エタノール760gに溶解してAEA外層溶液を調製した。AQOAT(AS-MG)を40gとり、エタノール608gと精製水152gの混液に溶解してAQOAT外層溶液を調製した。
【0134】
転動流動型コーティング造粒機(MP-01型)に実施例1と同様の方法で製した薬物・ゲル化剤レイヤリング粒子(核粒子)を200g投入し、撹拌流動させながらそれぞれの外層溶液を噴霧コーティングし乾燥させて外層被覆粒子を得た。
【0135】
薬物・ゲル化剤レイヤリング粒子(核粒子)200gに対し、AEA外層溶液を800g用いて噴霧コーティングし乾燥させて得た外層被覆粒子を実施例5の外層被覆粒子とした。また、AQOAT外層溶液を800g用いて噴霧コーティングし乾燥させて得た外層被覆粒子を実施例6の外層被覆粒子とした。
【0136】
実施例5と実施例6の外層被覆粒子を用い、試験例1と同じ方法で溶出試験及び不快な味の評価試験を行った。溶出試験の結果を表5に示す。
【0137】
【0138】
実施例5の外層被覆粒子の溶出試験の結果は、pH6.8の試験液中で、60分で90%以上の溶出であり、速放性の基準を満たす溶出であった。また、パネル全員に1分後は苦味がなく、2分後で僅かに苦味を感じたパネルがいたが、問題となる苦味ではなかった。実施例6の外層被覆粒子については、溶出試験第2液(pH6.8)で溶解する腸溶性皮膜剤で被覆した粒子であり、5分で80%以上の溶出特性を有する粒子であった。ただし、AQOATは口腔内では溶解しない皮膜剤であるため、パネル全員が2分後においても口腔内で問題となる不快な味を感じなかった。なお、念のため、実施例6の粒子について水での溶出性(パドル回転数50rpm)を測定したところ、2分で17.0%、30分で80.5%の溶出特性を有していた。
【0139】
[試験例6]
外層に含まれる水不溶性高分子の量を変えて粒子を造り(実施例7~実施例9)、試験例1と同様の溶出試験及び不快な味の遮蔽性の評価を実施した。
【0140】
[実施例7]
エトセル7を25.2g、TC-5Eを10.8gとり、エタノール291.6gと精製水32.4gの混液に溶解して外層溶液を調製した。転動流動型コーティング造粒機(MP-01型)に実施例2と同様の方法で製した薬物・ゲル化剤レイヤリング粒子(核粒子)を180g投入し、撹拌流動させながら外層溶液360gを噴霧コーティングし乾燥させて実施例7の外層被覆粒子を得た。
【0141】
外層に含まれる水不溶性高分子の量を外層の全重量の70重量%として製した実施例7の外層被覆粒子を用い、試験例1と同じ方法で溶出試験を行った。溶出試験ベッセル中で粒子の凝集が認められたので、パドルの回転数は100rpmとした。結果を、外層に含まれる水不溶性高分子が同じ(エトセル7)であって、外層に含まれる水溶性高分子の量が外層の全重量の90重量%である実施例2の結果(表3)とともに表6に示す。
【0142】
【0143】
溶出試験の結果は、15分で80%以上という速放性の粒子であることがわかった。一方、不快な味の評価に関しては、パネル全員が2分で問題となるような不快な味を感じなかった。
【0144】
[実施例8と実施例9]
エトセル7を19.8g、TC-5Eを16.2gとり、エタノール291.6gと精製水32.4gの混液に溶解して外層溶液を調製した。転動流動型コーティング造粒機(MP-01型)に実施例2と同様の方法で製した薬物・ゲル化剤レイヤリング粒子(核粒子)を180g投入し、撹拌流動させながら外層溶液360gを噴霧コーティングし乾燥させて実施例8の外層被覆粒子を得た。
【0145】
エトセル7を23.4g、TC-5Eを12.6gとり、エタノール291.6gと精製水32.4gの混液に溶解して外層溶液を調製した。転動流動型コーティング造粒機(MP-01型)に実施例2と同様の方法で製した薬物・ゲル化剤レイヤリング粒子(核粒子)を180g投入し、撹拌流動させながら外層溶液360gを噴霧コーティングし乾燥させて実施例9の外層被覆粒子を得た。
【0146】
外層に含まれる水不溶性高分子の量を外層の全重量の55重量%として製した実施例8及び65重量%として製した実施例9の外層被覆粒子を用い、口腔内での不快な味の評価実験を実施した。その結果、実施例8及び実施例9の外層被覆粒子ともに、問題となるような不快な味は感じなかったが、実施例8の外層被覆粒子に関しては、口腔内にしみ出してくるゲル化膨潤物質のために、微粒子が口に貼り付く事象が強く生じることがわかった。したがって外層中の水不溶性物質の配合量は60重量%以上であることが好ましいことがわかった。
【0147】
[試験例7]
噴霧乾燥式流動層造粒装置を使用して、ゲル化膨潤物質及び薬物を溶解または懸濁した結合剤を含有する溶液から直接実質上球形の薬物含有粒子を製造する方法によって医薬品組成物粒子を作成し、試験例1と同様の溶出試験及び不快な味の遮蔽性の評価を実施した。
【0148】
[実施例10]
HPC-Lを43.2gとり精製水153.2gとエタノール612.7gの混液に溶解した溶液に、アンブロキソール塩酸塩(平均粒子径約3μm)72gとセロゲンF-SC(微粉砕品)100.8gを懸濁させたものを液体原料とし、噴霧乾燥式流動層造粒機(MP-01-SPC型-内筒なし)中に、給気温度50~60℃、給気風量0.65~0.7m3/minの条件でノズル口径1.2mmから連続噴霧・レイヤリングを行い乾燥した後、粒子径105μm以下のものを除去してコア微粒子を得た。エトセル7を20.25g、TC-5Eを2.25gとり、エタノール182.25gと精製水20.25gの混液に溶解して外層溶液を調製した。コア微粒子150gを転動流動型コーティング造粒機(MP-01型)に投入し、転動流動させながら外層溶液225gを噴霧し、実施例10の外層被覆粒子を得た。
【0149】
実施例10の外層被覆粒子を用い、試験例1と同じ方法で溶出試験を行った。セロゲンF-SCを用いたこの外層被覆粒子については、パドル回転数が50rpmの場合、溶出試験時に溶出試験ベッセル中での粒子同士の明確な凝集が観察されたため、パドルの回転数は100rpmとした。結果を表7に示す。
【0150】
【0151】
溶出試験の結果は、30分で80%以上であり、速放性の基準を満たす粒子であることがわかった。一方、パネル4人ともに2分で問題となるような不快な味は感じなかった。このことから、ゲル化膨潤物質と薬物とで直接核粒子を製し、その外層に水不溶性物質を被覆する方法も好ましい結果が得られることがわかった。
【0152】
[試験例8]
実施例1の外層被覆粒子を用い、口腔内崩壊錠に製した。
【0153】
[実施例11]
実施例1で製した外層被覆粒子240gに、以下の処方量で製した後添加顆粒を240g加えて混合後、ステアリン酸マグネシウムを外部滑沢剤として使用し、打錠圧7kNで直径10.0mm(R11.5mm)の杵を用いて重量480mgの錠剤に製した。後添加顆粒は、高速撹拌造粒機(VG-10:パウレック社製)にD-マンニトール1.06kg、結晶セルロース300g、クロスポビドン125gおよび甘味剤15gを加えて混合後、適量の水を添加して、標準的なブレードおよびチョッパーの回転速度で5分間練合し、流動層乾燥機(MP-01:パウレック社製)で給気80℃で乾燥し、50メッシュの篩で整粒することで製造した。製した錠剤は口腔内に含むとき30秒以内で崩壊し、2分間問題となる不快な味を感じない錠剤であった。
【0154】
以上のように、本発明に従った医薬組成物粒子は、水溶性のゲル化膨潤物質と薬物とを含有する核粒子と、水不溶性物質を含有して核粒子の外側を被覆する外層とを備える。ゲル化膨潤物質は、2%水溶液の25℃における粘度が10mPa・s以上であることが好ましい。外層は、水不溶性物質を外層の全重量の60重量%以上含有することが好ましい。ゲル化膨潤物質は、膨潤力(S)の値が650以上であることが好ましい。外層の被覆量は、核粒子に対して5重量%以上50重量%以下であることが好ましい。
【0155】
また、本発明に従った口腔内崩壊錠は、上記のいずれかの医薬組成物粒子を含む。
【0156】
また、本発明に従った医薬組成物粒子の製造方法は、水溶性のゲル化膨潤物質を平均粒子径15μm以下に粉砕する粉砕工程と、粉砕工程で粉砕されたゲル化膨潤物質と薬物とを混合して核粒子を製造する核粒子製造工程と、核粒子の外側に水不溶性物質を被覆して外層を形成する外層形成工程とを含む。核粒子製造工程は、粉砕工程で粉砕されたゲル化膨潤物質と薬物とを有機溶媒に懸濁する工程を含み、有機溶媒はエタノールであることが好ましい。
【0157】
以上に開示された実施の形態と実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は、以上の説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変形を含むものである。