(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】異物除去装置
(51)【国際特許分類】
B60S 1/54 20060101AFI20221125BHJP
F04B 35/01 20060101ALI20221125BHJP
F04B 39/00 20060101ALI20221125BHJP
F04B 39/12 20060101ALI20221125BHJP
H04N 5/225 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
B60S1/54 Z
F04B35/01 Z
F04B39/00 102Z
F04B39/00 107Z
F04B39/12 C
H04N5/225 430
(21)【出願番号】P 2019539116
(86)(22)【出願日】2018-08-03
(86)【国際出願番号】 JP2018029290
(87)【国際公開番号】W WO2019044389
(87)【国際公開日】2019-03-07
【審査請求日】2021-05-21
(31)【優先権主張番号】P 2017163237
(32)【優先日】2017-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017163238
(32)【優先日】2017-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017163239
(32)【優先日】2017-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110003410
【氏名又は名称】弁理士法人テクノピア国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100116942
【氏名又は名称】岩田 雅信
(74)【代理人】
【識別番号】100167704
【氏名又は名称】中川 裕人
(72)【発明者】
【氏名】近藤 雅之
【審査官】岡崎 克彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/159763(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/104050(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第01199480(EP,A1)
【文献】特開昭57-204342(JP,A)
【文献】実開昭51-009157(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60S 1/54
B60S 1/60
F04B 35/01
F04B 39/00
F04B 39/12
H04N 5/225
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間が移動空間として形成されたピストン支持部を有するシリンダーと、
前記シリンダーに移動可能に支持され前記シリンダーに流入された流体を送り出すピストンと、
前記ピストンによって送り出された流体を被洗浄物に向けて噴射するノズルと、
前記ピストンを付勢する付勢バネと、
前記ピストンに移動力を付与する移動機構とを備え、
前記ピストンの移動方向は流体を送り出す方向が第1の方向とされ、
前記ピストンは前記付勢バネの付勢力によって前記第1の方向へ移動され、
前記ピストンには前記移動空間において移動される作動部が設けられ、
前記作動部に凸部又は凹部が形成され、
前記ピストン支持部に前記凸部が挿入可能な挿入凹部又は前記凹部に挿入可能な挿入凸部が形成され、
前記ピストンが前記第1の方向へ移動され前記凸部又は前記挿入凸部が前記挿入凹部又は前記凹部に挿入された状態において前記移動空間に流体の圧縮空間が形成され
、
前記シリンダーは前記ピストン支持部に連続された連結突部を有し、
前記連結突部が筒状に形成され流体が前記連結突部から送り出され、
前記連結突部が前記挿入凹部又は前記挿入凸部と同軸上に位置された
異物除去装置。
【請求項2】
前記凸部又は前記挿入凸部が筒状に形成された
請求項1に記載の異物除去装置。
【請求項3】
前記作動部に前記凹部が形成され、
前記ピストン支持部に前記挿入凸部が形成された
請求項1に記載の異物除去装置。
【請求項4】
前記凹部が環状に形成され、
前記挿入凸部が筒状に形成され、
前記ピストンにおける前記凹部の内側の部分が前記挿入凸部の内側に挿入される挿入部として設けられた
請求項3に記載の異物除去装置。
【請求項5】
前記挿入部の外周部又は前記挿入凸部の内周部にシールリングが取り付けられた
請求項4に記載の異物除去装置。
【請求項6】
前記作動部の外周部に、前記ピストンの移動時に前記シリンダーの内周面に摺動されるシール部材が取り付けられた
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4又は請求項5に記載の異物除去装置。
【請求項7】
内部に流体が流入されるシリンダーと、
前記シリンダーに移動可能に支持され前記シリンダーに流入された流体を送り出すピストンと、
前記ピストンに取り付けられ前記ピストンの移動時に前記シリンダーの内周面に摺動されるシール部材と、
前記ピストンによって送り出された流体を被洗浄物に向けて噴射するノズルと、
前記ピストンを付勢する付勢バネと、
前記ピストンに移動力を付与する移動機構とを備え、
前記ピストンの移動方向は流体を送り出す方向が第1の方向とされ、
前記ピストンは前記付勢バネの付勢力によって前記第1の方向へ移動され、
前記シリンダーには内周面の一部として、前記第1の方向へ行くに従って径が小さくなる傾斜部が形成され
、
前記シリンダーには内周面の各一部として、径がそれぞれ一定の大径部と小径部が形成され、
前記傾斜部が前記大径部と前記小径部の間に位置された
異物除去装置。
【請求項8】
前記シリンダーは前記ピストンを支持するピストン支持部と前記ピストン支持部に連続された連結突部とを有し、
前記連結突部が筒状に形成され流体が前記連結突部から送り出され、
前記連結突部の軸方向が前記ピストンの移動方向に一致された
請求項7に記載の異物除去装置。
【請求項9】
前記シリンダーは前記ピストンを支持するピストン支持部と前記ピストン支持部に連続された連結突部とを有し、
前記連結突部が筒状に形成され流体が前記連結突部から送り出され、
前記連結突部の軸方向が前記ピストンの移動方向と直交する方向にされた
請求項7に記載の異物除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルから流体を噴射して被洗浄物を洗浄する異物除去装置についての技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
車輌等の構造物には各種の構造体が設けられており、これらの構造体のうち、例えば、車載カメラや車輌用灯具やバックミラーに対しては、良好な視認性を確保するために水分や泥や塵埃等の異物を除去することが望ましい。
【0003】
例えば、車載カメラは車輌の後方を確認したり運転者には見え難い車外の位置を確認したりするために映像をディスプレイに映し出す装置として利用されているが、車輌の走行によって跳ね上がる泥や雨天走行時等に付着する水滴等によって撮像部が汚染され、ディスプレイに映し出される映像が不鮮明になり確認に支障を来すと言う不具合を生じることがある。
【0004】
このような不具合の発生を防止するために、例えば、車載カメラ等の被洗浄物に対してノズルから流体、例えば、高圧空気を噴射し被洗浄物に付着された水分や泥や塵埃等の異物を除去する異物除去装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1に記載された異物除去装置にあっては、ピストンがシリンダーに対して流体を送り出す第1の方向へ移動されることにより、例えば、空気が高圧空気として生成され、高圧空気が被洗浄物に向けて噴射され泥や水滴が吹き飛ばされて被洗浄物の汚染が解消される。
【0006】
このような高圧空気等の流体によって撮像部の汚染を解消する異物除去装置にあっては、水等の高圧の流体を噴射して汚染を解消する異物除去装置と比較して、液体の貯留タンクを必要としない点や噴射した流体が撮像部に残存しない点等において利点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1に記載されたような異物除去装置においては、ピストンが高速でシリンダーに対して移動されて高圧の流体(高圧空気)を発生させる仕組みにされており、ピストンを高速で移動させるために付勢バネ、例えば、圧縮コイルバネが用いられている。従って、ピストンは圧縮された付勢バネが伸張されることにより高速で移動される。
【0009】
ところが、ピストンが付勢バネの付勢力によって移動されるため、付勢バネの付勢力等によってはピストンの先端面がシリンダーの内面に接触し、接触による動作音が発生するおそれがある。このような動作音は使用者、例えば、車輌の運転者や搭乗者において異音として認識される可能性もあり、この場合には運転者や搭乗者に不快感が生じたり、また、接触の程度によっては振動等が生じるおそれもある。
【0010】
そこで、本発明は、上記した問題点を克服し、ピストンの移動時におけるピストンのシリンダーとの接触を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1に、本発明に係る異物除去装置は、内部空間が移動空間として形成されたピストン支持部を有するシリンダーと、前記シリンダーに移動可能に支持され前記シリンダーに流入された流体を送り出すピストンと、前記ピストンによって送り出された流体を被洗浄物に向けて噴射するノズルと、前記ピストンを付勢する付勢バネと、前記ピストンに移動力を付与する移動機構とを備え、前記ピストンの移動方向は流体を送り出す方向が第1の方向とされ、前記ピストンは前記付勢バネの付勢力によって前記第1の方向へ移動され、
前記ピストンには前記移動空間において移動される作動部が設けられ、前記作動部に凸部又は凹部が形成され、前記ピストン支持部に前記凸部が挿入可能な挿入凹部又は前記凹部に挿入可能な挿入凸部が形成され、前記ピストンが前記第1の方向へ移動され前記凸部又は前記挿入凸部が前記挿入凹部又は前記凹部に挿入された状態において前記移動空間に流体の圧縮空間が形成され、前記シリンダーは前記ピストン支持部に連続された連結突部を有し、前記連結突部が筒状に形成され流体が前記連結突部から送り出され、前記連結突部が前記挿入凹部又は前記挿入凸部と同軸上に位置されたものである。
【0012】
これにより、ピストンが第1の方向へ移動されたときに凸部又は挿入凸部が挿入凹部又は凹部に挿入されて移動空間に流体の圧縮空間が形成され、ピストンに対して圧縮された流体によるダンパーの作用が生じる。
【0013】
第2に、上記した本発明に係る異物除去装置においては、前記凸部又は前記挿入凸部が筒状に形成されることが望ましい。
【0014】
これにより、筒状の凸部又は挿入凸部が挿入凹部又は凹部に挿入され、圧縮空間の気密性が高くなる。
【0015】
第3に、上記した本発明に係る異物除去装置においては、前記作動部に前記凹部が形成され、前記ピストン支持部に前記挿入凸部が形成されることが望ましい。
【0016】
これにより、ピストンの移動方向においてピストン支持部の大きさを小さくすることが可能になる。
【0017】
第4に、上記した本発明に係る異物除去装置においては、前記凹部が環状に形成され、前記挿入凸部が筒状に形成され、前記ピストンにおける前記凹部の内側の部分が前記挿入凸部の内側に挿入される挿入部として設けられることが望ましい。
【0018】
これにより、ピストンが第1の方向側へ移動されたときに、ピストンの凹部にシリンダーの挿入凸部が挿入されると共に挿入部が挿入凸部の内側に挿入される。
【0019】
第5に、上記した本発明に係る異物除去装置においては、前記挿入部の外周部又は前記挿入凸部の内周部にシールリングが取り付けられることが望ましい。
【0020】
これにより、挿入部が挿入凸部の内側に挿入されたときに挿入部と挿入凸部がシールリングによってシールされる。
【0021】
第6に、上記した本発明に係る異物除去装置においては、前記作動部の外周部に、前記ピストンの移動時に前記シリンダーの内周面に摺動されるシール部材が取り付けられることが望ましい。
【0022】
これにより、ピストンの移動時にピストンとシリンダーがシール部材によってシールされる。
【0023】
第7に、別の本発明に係る異物除去装置は、内部に流体が流入されるシリンダーと、前記シリンダーに移動可能に支持され前記シリンダーに流入された流体を送り出すピストンと、前記ピストンに取り付けられ前記ピストンの移動時に前記シリンダーの内周面に摺動されるシール部材と、前記ピストンによって送り出された流体を被洗浄物に向けて噴射するノズルと、前記ピストンを付勢する付勢バネと、前記ピストンに移動力を付与する移動機構とを備え、前記ピストンの移動方向は流体を送り出す方向が第1の方向とされ、前記ピストンは前記付勢バネの付勢力によって前記第1の方向へ移動され、前記シリンダーには内周面の一部として、前記第1の方向へ行くに従って径が小さくなる傾斜部が形成され、前記シリンダーには内周面の各一部として、径がそれぞれ一定の大径部と小径部が形成され、前記傾斜部が前記大径部と前記小径部の間に位置されたものである。
【0024】
これにより、傾斜部によってシリンダーの内周面とシール部材との間の摩擦力が増加する。
【0026】
これにより、シール部材に対して大径部と小径部から付与される圧力がそれぞれ一定であると共に小径部とシール部材との間で大きな摩擦力が生じる。
【0029】
第8に、上記した別の本発明に係る異物除去装置においては、前記シリンダーは前記ピストンを支持するピストン支持部と前記ピストン支持部に連続された連結突部とを有し、前記連結突部が筒状に形成され流体が前記連結突部から送り出され、前記連結突部の軸方向が前記ピストンの移動方向に一致されることが望ましい。
【0030】
これにより、軸方向がピストンの移動方向に一致された連結突部から流体が送り出される。
【0031】
第9に、上記した別の本発明に係る異物除去装置においては、前記シリンダーは前記ピストンを支持するピストン支持部と前記ピストン支持部に連続された連結突部とを有し、前記連結突部が筒状に形成され流体が前記連結突部から送り出され、前記連結突部の軸方向が前記ピストンの移動方向と直交する方向にされることが望ましい。
【0032】
これにより、連結突部の軸方向とピストンの移動方向とが直交する方向にされる。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、ピストンが第1の方向へ移動されたときに凸部又は挿入凸部が挿入凹部又は凹部に挿入されて移動空間に流体の圧縮空間が形成され、ピストンに対して圧縮された流体によるダンパーの作用が生じるため、ピストンの移動時におけるピストンのシリンダーに対する接触を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】
図2乃至
図27と共に本発明異物除去装置の実施の形態を示すものであり、本図は、異物除去装置の斜視図である。
【
図2】
図3乃至
図13と共に第1の実施の形態を示すものであり、本図は、高圧空気発生ユニットの内部構造を示す断面図である。
【
図3】ウォームホイールとピストンとラックを示す拡大斜視図である。
【
図4】シリンダーに設けられた挿入凸部等を示す斜視図である。
【
図5】シリンダーに設けられ一つのスリットが形成された挿入凸部等を示す斜視図である。
【
図6】シリンダーに設けられ複数のスリットが形成された挿入凸部等を示す斜視図である。
【
図7】ピストンが第1の方向へ移動されたときの初期状態を示す断面図である。
【
図8】ピストンが第2の方向へ移動された状態を示す断面図である。
【
図9】ピストンが第1の方向へ移動された状態を示す拡大断面図である。
【
図10】挿入部にシールリングが取り付けられた構成を示す拡大断面図である。
【
図11】ピストンに挿入部が設けられていない構成を示す拡大断面図である。
【
図12】シリンダーに挿入凹部が形成されピストンに凸部が設けられた構成を示す拡大断面図である。
【
図13】シリンダーに挿入凹部が形成されピストンに凸部が設けられた別の構成を示す拡大断面図である。
【
図14】
図15乃至
図20と共に第2の実施の形態を示すものであり、本図は、高圧空気発生ユニットの内部構造を示す断面図である。
【
図15】ピストンが第1の方向へ移動されたときの初期状態を示す断面図である。
【
図16】ピストンが第2の方向へ移動された状態を示す断面図である。
【
図17】シール部材が傾斜部に接している状態を示す拡大断面図である。
【
図18】シール部材が小径部に接している状態を示す拡大断面図である。
【
図19】シリンダーの内周面に小径部が形成されていない構成を示す拡大断面図である。
【
図20】連結突部の軸方向がピストンの移動方向に直交する構成を示す拡大断面図である。
【
図21】
図22乃至
図27と共に第3の実施の形態を示すものであり、本図は、高圧空気発生ユニットの内部構造を示す断面図である。
【
図22】ピストンが第1の方向へ移動されたときの初期状態を示す断面図である。
【
図23】ピストンが第2の方向へ移動された状態を示す断面図である。
【
図24】ピストンが第1の方向へ移動されている途中の状態を示す拡大断面図である。
【
図25】ピストンが第1の方向へ移動端まで移動された状態を示す拡大断面図である。
【
図26】シリンダーの連結突部に逆止弁が配置された例を示す拡大断面図である。
【
図27】連結突部の軸方向がピストンの移動方向に直交する構成を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下に、本発明異物除去装置を実施するための形態について添付図面を参照して説明する。尚、以下には、異物除去装置の第1の実施の形態、第2の実施の形態及び第3の実施の形態について添付図面を参照して説明し、
図1及び
図3には第1の実施の形態、第2の実施の形態及び第3の実施の形態の共通の構成を示し、
図2及び
図4から
図13には第1の実施の形態を示し、
図14から
図20には第2の実施の形態を示し、
図21から
図27には第3の実施の形態を示す。
【0046】
尚、以下には、本発明異物除去装置を車載カメラに付着される異物を除去する装置に適用した例を示す。但し、本発明異物除去装置の適用は車載カメラに付着される異物を除去する装置に限られることはなく、各種の構造物に付着される異物を除去する装置、特に、車輌用灯具、窓、ミラー、衝突防止用のセンサー等の車輌に設けられる構造体に付着される異物を除去する異物除去装置として広く適用することが可能である。
【0047】
以下に示す異物除去装置はシリンダーとピストンとノズルを有し、ピストンがシリンダーに対して移動されることにより流体として高圧空気をノズルから噴射する。但し、ノズルから噴射される流体は高圧空気に限られることはなく、他の気体や液体の他に気体と液体が混合された流体であってもよい。
【0048】
以下の説明にあっては、ピストンが移動される方向を前後方向として前後上下左右の方向を示すものとする。尚、以下に示す前後上下左右の方向は説明の便宜上のものであり、本発明の実施に関しては、これらの方向に限定されることはない。
【0049】
先ず、第1の実施の形態における異物除去装置について説明する(
図1乃至
図13参照)。
【0050】
<第1の実施の形態における異物除去装置の構成>
異物除去装置1は、例えば、車輌の後方を確認する車載カメラ100を洗浄する機能を有し、図示しない車体の後端側の部分に取り付けられている。
【0051】
異物除去装置1はノズルユニット2と配管3と高圧空気発生ユニット4を有している(
図1参照)。
【0052】
ノズルユニット2は取付ブラケット5とノズル6を有している。取付ブラケット5は車体の後端部に取り付けられる。ノズル6は前後方向に延びる円筒状の流動部6aと流動部6aの後端に連続する噴射部6bとを有し、取付ブラケット5と、例えば、一体に形成されている。
【0053】
ノズルユニット2は車載カメラ100と、例えば、一体に形成されている。車載カメラ100は撮像部を有し、撮像部の後端部がレンズ部101とされている。従って、車載カメラ100はレンズ部101を介して被写体の像を撮影する。
【0054】
上記のように、異物除去装置1にあっては、ノズル6が車載カメラ100と一体に形成されているため、ノズル6と車載カメラ100が車体に一度の作業で同時に組み付けられ、車体への組付作業を容易かつ迅速に行うことができ、作業性の向上を図ることができる。
【0055】
配管3は、例えば、樹脂製やゴム製のホースであり、前端部が高圧空気発生ユニット4の後述するシリンダーの一端部に連結され後端部がノズル6における流動部6aの前端部に連結されている。
【0056】
高圧空気発生ユニット4はケース体7とケース体7の内部に配置された移動機構8とを有している(
図2参照)。高圧空気発生ユニット4は車輌の内部において車体の一部に取り付けられている。
【0057】
ケース体7は内部が配置空間9として形成され、配置空間9はモーター配置部9aとウォーム配置部9bとギヤ配置部9cを有している。モーター配置部9aとウォーム配置部9bは前後において連通された状態で位置され、ウォーム配置部9bとギヤ配置部9cは上下において連通された状態で位置されている。ケース体7の後端部には前後に貫通された結合孔9dが形成されている。結合孔9dはケース体7の外部とギヤ配置部9cに連通されている。
【0058】
ケース体7には側方に突出された支持軸部7aが設けられ、支持軸部7aはギヤ配置部9cに位置されている。
【0059】
移動機構8は駆動モーター10とウォーム11とウォームホイール12を有している。
【0060】
駆動モーター10は本体部10aとモーター軸10bを有し、本体部10aがモーター配置部9aに配置されている。
【0061】
ウォーム11はモーター軸10bに連結され、ウォーム配置部9bに配置されている。
【0062】
ウォームホイール12はハス歯ギヤ13とハス歯ギヤ13の中心部から側方に突出して設けられたピニオン14とが一体に形成されて成る(
図2及び
図3参照)。ウォームホイール12はギヤ配置部9cに配置され、中心部がケース体7の支持軸部7aにベアリング15を介して支持されている。
【0063】
ハス歯ギヤ13はウォーム11と噛合されている。
【0064】
ピニオン14はハス歯ギヤ13と同軸にされ、ベアリング15に外嵌状に支持された環状部16と環状部16の外周側に設けられたギヤ部17、17、17とを有している。ギヤ部17、17、17は周方向に等間隔に離隔して設けられている。ギヤ部17は、例えば、二つのギヤ歯を有している。
【0065】
ピニオン14は歯先円の直径がハス歯ギヤ13の歯底円の直径より小さくされている。従って、ハス歯ギヤ13にはピニオン14が位置された側にピニオン14の外周側に位置する側面13aが形成されている。ピニオン14におけるギヤ部17、17、17間の部分はそれぞれ欠歯部14a、14a、14aとして形成されている。欠歯部14aは周方向に等間隔に離隔して、例えば、三つが形成されている。
【0066】
上記したように、ウォームホイール12はハス歯ギヤ13とピニオン14が一体に形成されて成る。従って、部品点数の削減を図ることができると共に駆動モーター10からハス歯ギヤ13に伝達される駆動力をピニオン14に効率的に伝達することが可能になり駆動モーター10の小型化を図ることができる。
【0067】
ケース体7の後端部には受けホルダー18が結合されている。受けホルダー18は軸方向が前後方向にされた略円筒状の保持部19と保持部19の前端部から内方に張り出された受部20とを有し、受部20が結合孔9dに挿入された状態でケース体7に結合されている。受部20の内周側の空間は挿通孔20aとして形成されている。
【0068】
受けホルダー18にはシリンダー21が保持された状態で取り付けられている。シリンダー21は一部を除いて受けホルダー18の内側に嵌合された状態で受けホルダー18に取り付けられている。
【0069】
シリンダー21はピストン支持部22とピストン支持部22から後方に突出された連結突部23とを有し、ピストン支持部22の径が連結突部23の径より大きくされている。
【0070】
ピストン支持部22は前後に延びる略円筒状の筒状部24と筒状部24の後側の開口を閉塞する閉塞部25とを有している。ピストン支持部22の内部の空間はシリンダー21が移動される移動空間26として形成されている。閉塞部25の内面はストッパー面25aとして形成されている。
【0071】
連結突部23は閉塞部25の中心部から後方に突出され、内部の空間が高圧空気をノズル6へ向けて送り出す送出路23aとして形成されている。連結突部23は円筒状に形成され、送出路23aがピストン支持部22の移動空間26に連通されている。連結突部23には配管3の前端部が連結されている。
【0072】
シリンダー21には閉塞部25の中心部から前方に突出された挿入凸部21aが設けられている(
図2及び
図4参照)。挿入凸部21aは送出路23aの前側開口縁から前方に突出され、筒状、例えば、円筒状に形成されている。
【0073】
尚、挿入凸部21aは筒状に限られることなく、例えば、一つ又は複数のスリットSを有し略筒状に形成されていてもよい(
図5及び
図6参照)。また、挿入凸部21aはスリットSに代えて孔や切欠等を有した形状であってもよい。
【0074】
シリンダー21のピストン支持部22にはピストン27が移動可能に支持されている(
図2参照)。ピストン27はシリンダー21に対して前後方向へ往復運動される。
【0075】
ピストン27は後端部として設けられた作動部28と作動部28の略中央部から略前方に突出された連結部29とを有し、作動部28には外方に開口された円環状の配置溝28aが形成されている。作動部28の先端面28bはシリンダー21のストッパー面25aに対向して位置されている。作動部28の外径はピストン支持部22における内周面の径より僅かに小さくされている。従って、作動部28の外周面とピストン支持部22の内周面との間には隙間30が形成されている。
【0076】
作動部28には後方に開口された凹部28cが形成されている(
図2及び
図3参照)。凹部28cは円環状に形成されている。作動部28は、凹部28cの外側の部分が外側環状部28dとして設けられ、凹部28cの内側の部分が挿入部28eとして設けられている。
【0077】
作動部28にはシール部材31が配置溝28aに挿入された状態で取り付けられている。シール部材31は弾性変形可能な、例えば、ゴム又は樹脂によって形成され、外周部が作動部28の外周面から外方に突出されている。
【0078】
ピストン27の連結部29には前端部にラック部29aが形成されている。連結部29は受けホルダー18に形成された挿通孔20aを挿通され、ラック部29aがウォームホイール12におけるピニオン14のギヤ部17に噛合可能とされている。
【0079】
シリンダー21におけるピストン支持部22の内部には付勢バネ32が配置されている。付勢バネ32は、例えば、圧縮コイルバネであり、ピストン27の作動部28と受けホルダー18の受部20との間で圧縮され、付勢バネ32によってピストン27が後方へ付勢されている。
【0080】
ピストン27の移動方向は空気を送り出す方向である後方が第1の方向とされ、第1の方向と反対方向である前方が第2の方向とされている。第2の方向はピストン27が付勢バネ32の付勢力に反して移動される方向であり、ピストン27が第2の方向へ移動されるに従って付勢バネ32の付勢力によってピストン27に付与される第1の方向への移動力が大きくなっていく。
【0081】
<第1の実施の形態における異物除去装置の動作>
以下に、異物除去装置1の動作について説明する(
図7乃至
図9参照)。
【0082】
先ず、高圧空気が送り出される前の初期状態について説明する(
図7参照)。
【0083】
初期状態においては、ピストン27が移動方向における後方側に位置され、ピストン27はラック部29aがピニオン14のギヤ部17、17、17に噛合可能な状態で位置されている。このときピストン27は作動部28に取り付けられたシール部材31がシリンダー21におけるピストン支持部22の内周面に接した状態にされている。
【0084】
初期状態において駆動モーター10の駆動が開始され、駆動モーター10の駆動力がウォーム11を介してウォームホイール12に伝達されると、ピニオン14のギヤ部17がピストン27のラック部29aに噛合される(
図8参照)。従って、ピストン27はピニオン14の回転に伴って付勢バネ32の付勢力に反して第2の方向へ移動されていく。
【0085】
ピストン27が第2の方向へ移動されていくときには、異物除去装置1の外部の空気が、例えば、ノズル6と配管3とシリンダー21の連結突部23を介して移動空間26に取り込まれていく。
【0086】
ピストン27がピニオン14の回転に伴って第2の方向へ移動されていくと、所定の位置でギヤ部17とラック部29aの噛合が解除される。
【0087】
ギヤ部17とラック部29aの噛合が解除されると、ピストン27が付勢バネ32の付勢力によって第2の方向への移動速度より高速で第1の方向へ移動され、移動空間26の空気が連結突部23の送出路23aを通って配管3を経てノズル6へ向けて送り出される。このとき、シリンダー21は連結突部23の径がピストン支持部22の径より小さくされているため、移動空間26から送出路23aを通って送り出される空気が圧縮されて高圧空気となって配管3からノズル6へ向けて送り出され、ノズル6から高圧空気が噴射されて車載カメラ100における撮像部のレンズ部101に吹き付けられる。
【0088】
ノズル6から噴射された高圧空気がレンズ部101に吹き付けられると、レンズ部101に付着されている塵埃、泥、水滴等の異物が吹き飛ばされてレンズ部101が洗浄され汚染が解消される。
【0089】
ピストン27が付勢バネ32の付勢力によって第1の方向へ移動され高圧空気が送り出されるときには、ピストン27の凹部28cにシリンダー21の挿入凸部21aが挿入されると共にピストン27の挿入部28eが挿入凸部21aの内側に挿入される(
図9参照)。
【0090】
凹部28cに挿入凸部21aが挿入され挿入部28eが挿入凸部21aの内側に挿入されるときには、例えば、挿入部28eの外周面が挿入凸部21aの内周面に接した状態にされ、挿入凸部21aの外周面と外側環状部28dの間に一定の間隙Pが生じる状態にされる。このときピストン27に取り付けられたシール部材31がシリンダー21の内周面に密着され、挿入部28eの外周面が挿入凸部21aの内周面に接した状態にされるため、移動空間26において挿入凸部21aの外周側の空間Aと凹部28cのうち挿入凸部21aが存在しない空間Bとにおいて空気が圧縮され、圧縮された空気がエアーダンパーとして機能する。
【0091】
従って、圧縮空間として形成された空間Aと空間Bに残存したエアーダンパーとして機能する空気によって、ピストン27に第1の方向への移動を妨げる圧力が付与され、ピストン27が減速される。
【0092】
上記のようにピストン27は凹部28cに挿入凸部21aが挿入されることにより減速されるため、作動部28の先端面28bとシリンダー21における閉塞部25のストッパー面25aとが接する前に停止され、先端面28bがストッパー面25aに接触しない。
【0093】
上記したピストン27の往復運動は、ピニオン14のギヤ部17とピストン27のラック部29aとの噛合及びその解除を1サイクルとして行われ、ピニオン14の欠歯部14aの存在によってピストン27の第1の方向への移動が行われる。
【0094】
従って、欠歯部14aの存在によってピストン27が第1の方向へ移動されるため、ピストン27を第1の方向へ移動させる専用の機構を設ける必要がなく、異物除去装置1の機構の簡素化による小型化を図ることができる。
【0095】
また、異物除去装置1にはピニオン14の周方向に離隔して三箇所にギヤ部17、17、17が設けられ三つの欠歯部14a、14a、14aが形成されているため、ピニオン14の1回転においてピストン27の往復運動が3回(3サイクル)行われる。
【0096】
従って、ピニオン14の1回転に対するノズル6からの高圧空気の噴射回数が多く、異物除去装置1における噴射効率の向上を図ることができる。尚、ピニオン14のギヤ部17の数は三つに限られることはなく、一つ又は二つでもよく、四つ以上が設けられていてもよい。
【0097】
<第1の実施の形態におけるまとめ>
以上に記載した通り、異物除去装置1にあっては、ピストン27の作動部28に凹部28cが形成され、シリンダー21のピストン支持部22における第1の方向側の端部に挿入凸部21aが設けられ、挿入凸部21aが凹部28cに挿入された状態において移動空間26に空気の圧縮空間が形成される。
【0098】
従って、ピストン27に対して圧縮された空気によるダンパーの作用が生じるため、ピストン27の移動時においてピストン27における先端面28bのシリンダー21における閉塞面25aに対する接触を防止することができる。
【0099】
また、異音の発生や振動の発生が防止されるため、運転者や搭乗者に対する不快感の発生を防止することもできる。
【0100】
さらに、挿入凸部21aが筒状に形成されているため、筒状の挿入凸部21aが凹部28cに挿入され、圧縮空間の気密性を高くすることができ、ダンパーの作用を効率的にピストン27に作用させることができる。
【0101】
さらにまた、ピストン27における凹部28cの内側の部分が挿入凸部21aの内側に挿入される挿入部28eとして設けられている。
【0102】
従って、ピストン27が第1の方向側へ移動されたときに、ピストン27の凹部28cにシリンダー21の挿入凸部21aが挿入されると共に挿入部28eが挿入凸部21aの内側に挿入されるため、挿入凸部21aの外周側の空間Aと凹部28cの内の空間Bがともに圧縮空間として形成され、圧縮される空気の量を多くしてピストン27のシリンダー21への接触を効率的に防止することができる。
【0103】
尚、ピストン27の挿入部28eの外周部には、例えば、ゴム又は樹脂によって形成されたシールリング33が取り付けられていてもよい(
図10参照)。
【0104】
挿入部28eにシールリング33が取り付けられることにより、挿入部28eが挿入凸部21aの内側に挿入されたときに挿入部28eと挿入凸部21aがシールリング33によってシールされるため、圧縮空間の気密性を高めてダンパーの作用を効率的にピストン27に作用させることができる。
【0105】
また、シールリング33は挿入凸部21aの内周部に取り付けられ、挿入部28eが挿入凸部21aの内側に挿入されたときに挿入部28eと挿入凸部21aがシールリング33によってシールされる構成にすることも可能である。
【0106】
さらに、作動部28の外周部にシリンダー21の内周面に摺動されるシール部材31が取り付けられているため、ピストン27の移動時にピストン27とシリンダー21がシール部材31によってシールされ、圧縮空間の気密性を高めてダンパーの作用を効率的にピストン27に作用させることができる。
【0107】
<その他(第1の実施の形態)>
上記には、シリンダー21に環状の凹部28cが形成され、凹部28cの内側の部分が挿入部28eとして設けられた例を示したが、例えば、外側環状部28dの内側の空間の全体が凹部28cとして形成され、ピストン27に挿入部28eが設けられていない構成にされていてもよい(
図11参照)。この場合には、凹部28cに挿入凸部21aが挿入された状態において、外側環状部28dの内周面と挿入凸部21aの外周面とが接している必要がある。
【0108】
また、外側環状部28dの内側の空間の全体が凹部28cとして形成される場合には、外側環状部28dの内周部又は挿入凸部21aの外周部にシールリング33が取り付けられ、外側環状部28dと挿入凸部21aがシールリング33によってシールされることが望ましい。
【0109】
さらに、上記には、シリンダー21に挿入凸部21aが設けられピストン27に凹部28cが形成された例を示したが、逆に、シリンダー21に挿入凹部34が形成されピストン27に凸部35が設けられ、ピストン27が第1の方向へ移動されたときに凸部35が挿入凹部34に挿入される構成にすることも可能である(
図12及び
図13参照)。この場合には、挿入凹部34が環状に形成され挿入凹部34の内側に内壁部36が設けられる構成にされていてもよく(
図12参照)、閉塞部25の中心側の部分に挿入凹部34が形成されていてもよい(
図13参照)。
【0110】
尚、凸部35は挿入凸部21aと同様に、一つ又は複数のスリットSを有し略筒状に形成されていてもよく、また、スリットSに代えて孔や切欠等を有した形状であってもよい。
【0111】
内壁部36が設けられ凸部35が挿入凹部34に挿入される構成(
図12参照)の場合には、凸部35の外周側の空間Cと挿入凹部34のうち凸部35が存在しない空間Dとにおいて空気が圧縮され、圧縮された空気がエアーダンパーとして機能し、圧縮空間として形成された空間Cと空間Dに残存したエアーダンパーとして機能する空気によって、ピストン27に第1の方向への移動を妨げる圧力が付与され、ピストン27が減速される。
【0112】
一方、内壁部36が設けられておらず凸部35が挿入凹部34に挿入される構成(
図13参照)の場合には、凸部35の外周側の空間Cにおいて空気が圧縮され、圧縮された空気がエアーダンパーとして機能し、圧縮空間として形成された空間Cに残存したエアーダンパーとして機能する空気によって、ピストン27に第1の方向への移動を妨げる圧力が付与され、ピストン27が減速される。
【0113】
このようにシリンダー21に挿入凹部34が形成されピストン27に凸部35が設けられる構成においても、ピストン27に対して圧縮された空気によるダンパーの作用が生じるため、ピストン27の移動時においてピストン27における先端面28bのシリンダー21における閉塞面25aに対する接触を防止することができる。
【0114】
尚、内壁部36が設けられる構成(
図12参照)においては、ピストン27の作動部28に内壁部36の内側に挿入される挿入部37が設けられる構成にされていてもよく、また、内壁部36が設けられていない構成(
図13参照)においては、ピストン27の作動部28に連結突部23の内側に挿入される挿入部38が設けられる構成にされていてもよい。
【0115】
但し、シリンダー21に挿入凹部34を形成する構成(
図12及び
図13参照)においては、シリンダー21におけるピストン支持部22の後端部に挿入凹部34を形成する分の前後方向における厚みが必要になる。
【0116】
一方、上記したように、シリンダー21に挿入凸部21aを設けピストン27に凹部28cを形成する構成(
図2参照)においては、ピストン支持部22の後端部を特に前後方向において厚くする必要がない。
【0117】
従って、ピストン27の作動部28に凹部28cが形成され、ピストン27のピストン支持部28に挿入凸部21aが設けられる構成にすることにより、ピストン27の移動方向においてピストン支持部28の大きさを小さくすることが可能になり、異物除去装置1の小型化を図ることができる。
【0118】
次に、第2の実施の形態における異物除去装置について説明する(
図1、
図3、
図14乃至
図20参照)。尚、以下に示す第2の実施の形態における異物除去装置は、上記した第1の実施の形態における異物除去装置と比較して、シリンダー21の挿入凸部21aと挿入突部21aが挿入されるピストン27の凹部28cが形成されておらず、シリンダー21のピストン支持部22の形状が異なることのみが相違する。従って、第2の実施の形態における異物除去装置については、第1の実施の形態と比較して異なる部分についてのみ詳細に説明をし、その他の部分については第1の実施の形態における同様の部分に付した符号と同じ符号を付して説明は省略する。
【0119】
<第2の実施の形態における異物除去装置の構成>
高圧空気発生ユニット4はケース体7とケース体7の内部に配置された移動機構8とを有している(
図14参照)。高圧空気発生ユニット4は車輌の内部において車体の一部に取り付けられている。
【0120】
シリンダー21はピストン支持部22とピストン支持部22から、例えば、後方に突出された連結突部23とが一体に形成されて成り、ピストン支持部22の径が連結突部23の径より大きくされている。
【0121】
ピストン支持部22の内周面は径が一定の大径部22aと後方へ行くに従って径が小さくなるように緩やかに傾斜する傾斜部22bと径が一定の小径部22cとが前側から順に連続して成り、大径部22aの径が小径部22cの径より稍大きくされている。
【0122】
作動部28の外径はピストン支持部22における小径部22cの径より僅かに小さくされている。
【0123】
<第2の実施の形態における異物除去装置の動作>
以下に、異物除去装置1の動作について説明する(
図15乃至
図18参照)。
【0124】
先ず、高圧空気が送り出される前の初期状態について説明する(
図15参照)。
【0125】
初期状態においては、ピストン27が移動方向における後方側に位置され、ピストン27はラック部29aがピニオン14のギヤ部17、17、17に噛合可能な状態で位置されている。このときピストン27は作動部28に取り付けられたシール部材31がシリンダー21におけるピストン支持部22の小径部22cに接した状態にされている。
【0126】
初期状態において駆動モーター10の駆動が開始され、駆動モーター10の駆動力がウォーム11を介してウォームホイール12に伝達されると、ピニオン14のギヤ部17がピストン27のラック部29aに噛合される(
図16参照)。従って、ピストン27はピニオン14の回転に伴って付勢バネ32の付勢力に反して第2の方向へ移動されていく。
【0127】
ピストン27が第2の方向へ移動されていくときには、異物除去装置1の外部の空気が、例えば、ノズル6と配管3とシリンダー21の連結突部23を介して移動空間26に取り込まれていく。
【0128】
ピストン27がピニオン14の回転に伴って第2の方向へ移動されていくと、所定の位置でギヤ部17とラック部29aの噛合が解除される。ピストン27が所定の位置まで第2の方向へ移動されたときには、作動部28に取り付けられたシール部材31がシリンダー21におけるピストン支持部22の大径部22aに接した状態にされている。
【0129】
ギヤ部17とラック部29aの噛合が解除されると、ピストン27が付勢バネ32の付勢力によって第2の方向への移動速度より高速で第1の方向へ移動され、移動空間26の空気が連結突部23の送出路23aを通って配管3を経てノズル6へ向けて送り出される。このとき、シリンダー21は連結突部23の径がピストン支持部22の径より小さくされているため、移動空間26から送出路23aを通って送り出される空気が圧縮されて高圧空気となって配管3からノズル6へ向けて送り出され、ノズル6から高圧空気が噴射されて車載カメラ100における撮像部のレンズ部101に吹き付けられる。
【0130】
ノズル6から噴射された高圧空気がレンズ部101に吹き付けられると、レンズ部101に付着されている塵埃、泥、水滴等の異物が吹き飛ばされてレンズ部101が洗浄され汚染が解消される。
【0131】
ピストン27が付勢バネ32の付勢力によって第1の方向へ移動されるときには、シール部材31がシリンダー21の内周面に摺動されピストン支持部22の大径部22aから傾斜部22bを介して小径部22cに接する。
【0132】
シール部材21は大径部22aから傾斜部22bに接するときに、径が小さくなる方向へ弾性変形される(
図17参照)。従って、シール部材21と傾斜部22bの間の摩擦力がシール部材21と大径部22aの間の摩擦力より大きくされ、ピストン27が減速される。
【0133】
また、シール部材21は傾斜部22bから小径部22cに接するときに、さらに径が小さくなる方向へ弾性変形される(
図18参照)。従って、シール部材21と小径部22cの間の摩擦力がシール部材21と傾斜部22bの間の摩擦力より大きくされ、ピストン27がさらに減速される。
【0134】
上記のようにピストン27は第1の方向へ行くに従ってシール部材21とピストン支持部22の内周面との間の摩擦力が大きくなることにより減速されるため、作動部28の先端面28bとシリンダー21における閉塞部25のストッパー面25aとが接する前に停止され、先端面28bがストッパー面25aに接触しない。
【0135】
但し、付勢バネ32の付勢力の大きさやシール部材21とピストン支持部22の内周面との間の摩擦力の大きさによっては、先端面28bがストッパー面25aに接触する可能性があるが、この場合においてもピストン27は減速された状態で先端面28bがストッパー面25aに接触するため、ピストン27からシリンダー21に伝達される衝撃は小さい。
【0136】
上記したピストン27の往復運動は、ピニオン14のギヤ部17とピストン27のラック部29aとの噛合及びその解除を1サイクルとして行われ、ピニオン14の欠歯部14aの存在によってピストン27の第1の方向への移動が行われる。
【0137】
従って、欠歯部14aの存在によってピストン27が第1の方向へ移動されるため、ピストン27を第1の方向へ移動させる専用の機構を設ける必要がなく、異物除去装置1の機構の簡素化による小型化を図ることができる。
【0138】
また、異物除去装置1にはピニオン14の周方向に離隔して三箇所にギヤ部17、17、17が設けられ三つの欠歯部14a、14a、14aが形成されているため、ピニオン14の1回転においてピストン27の往復運動が3回(3サイクル)行われる。
【0139】
従って、ピニオン14の1回転に対するノズル6からの高圧空気の噴射回数が多く、異物除去装置1における噴射効率の向上を図ることができる。尚、ピニオン14のギヤ部17の数は三つに限られることはなく、一つ又は二つでもよく、四つ以上が設けられていてもよい。
【0140】
<第2の実施の形態におけるまとめ>
以上に記載した通り、異物除去装置1にあっては、シリンダー21に内周面の一部として、第1の方向へ行くに従って径が小さくなる傾斜部22bが形成されている。
【0141】
従って、傾斜部22bによってシリンダー21の内周面とシール部材31との間の摩擦力が増加するため、ピストン27の先端面28bとシリンダー21のストッパー面25aとの接触が防止され又はピストン27の先端面28bがシリンダー21のストッパー面25aに低速で接触され、接触による異音の発生や振動の発生を防止することができる。
【0142】
また、異音の発生や振動の発生が防止されるため、運転者や搭乗者に対する不快感の発生を防止することもできる。
【0143】
さらに、シリンダー21には内周面の各一部として、径がそれぞれ一定の大径部22aと小径部22cが形成され、傾斜部22bが大径部22aと小径部22cの間に位置されている。
【0144】
従って、シール部材31に対して大径部22aと小径部22cから付与される圧力がそれぞれ一定であると共に小径部22cとシール部材31との間で大きな摩擦力が生じるため、ピストン27の円滑な移動状態を確保した上でピストン27を減速させることができる。
【0145】
さらにまた、シリンダー21はピストン27を支持するピストン支持部22とピストン支持部22に連続された連結突部23とを有し、高圧空気が連結突部23から送り出され、連結突部23の軸方向がピストン27の移動方向に一致されている。
【0146】
従って、軸方向がピストン27の移動方向に一致された連結突部23から空気が送り出されるため、空気の送出に関する制御を行い易いと共に異物除去装置1の配置に関する自由度の向上を図ることができる。
【0147】
<その他(第2の実施の形態)>
上記には、シリンダー21の内周面に大径部22aと傾斜部22bと小径部22cが形成された例を示したが、例えば、シリンダー21の内周面に大径部22aと傾斜部22bが形成され小径部22cが形成されていない構成にすることも可能である(
図19参照)。
【0148】
この場合には、傾斜部22bの前端が大径部22aの後端に連続され、傾斜部22bの後端がストッパー面25aの外周に連続される。
【0149】
このような構成においては、傾斜部22bによってシリンダー21の内周面とシール部材31との間の摩擦力が増加するため、ピストン27の先端面28bとシリンダー21のストッパー面25aとの接触が防止され又はピストン27の先端面28bがシリンダー21のストッパー面25aに低速で接触され、接触による異音の発生や振動の発生を防止することができる。
【0150】
また、異音の発生や振動の発生が防止されるため、運転者や搭乗者に対する不快感の発生を防止することもできる。
【0151】
さらに、傾斜部22bとストッパー面25aの間に他の面が存在しないため、シリンダー21を容易に形成することができると共に傾斜部22bの傾斜角度によってピストン27の移動速度を制御することが可能になり設計の自由度の向上を図ることができる。
【0152】
また、上記には、ピストン27の移動方向と連結突部23の軸方向とが一致された例を示したが、例えば、ピストン27の移動方向と連結突部23の軸方向とが異なる方向、例えば、直交する方向になる構成にすることも可能である(
図20参照)。
【0153】
この場合には、連結突部23がストッパー面25aより前側に位置され、シリンダー21の内部における連結突部23と閉塞部25の間に一定の空間38が形成されることが望ましい。
【0154】
このような構成においては、傾斜部22bによってシリンダー21の内周面とシール部材31との間の摩擦力が増加すると共にピストン27が第1の方向へ移動されたときに空気を空間38において閉じ込めることにより圧縮してエアーダンパーとして使用することが可能になる。
【0155】
従って、ピストン27の先端面28bとシリンダー21のストッパー面25aとの接触が防止され又はピストン27の先端面28bがシリンダー21のストッパー面25aに低速で接触され、摩擦力の効果にエアーダンパーの効果を付加してピストン27を効率的に減速することができ、接触による異音の発生や振動の発生を防止することができる。
【0156】
また、異音の発生や振動の発生が防止されるため、運転者や搭乗者に対する不快感の発生を防止することもできる。
【0157】
尚、ピストン27の移動方向と連結突部23の軸方向とが異なる角度にされた構成においても、シリンダー21の内周面に大径部22aと傾斜部22bが形成され小径部22cが形成されていない構成にすることが可能である。
【0158】
次いで、第3の実施の形態における異物除去装置について説明する(
図1、
図3、
図21乃至
図27参照)。尚、以下に示す第3の実施の形態における異物除去装置は、上記した第1の実施の形態における異物除去装置と比較して、シリンダー21の挿入凸部21aと挿入突部21aが挿入されるピストン27の凹部28cが形成されておらず、配管3に逆止弁39が配置されていることのみが相違する。従って、第2の実施の形態における異物除去装置については、第1の実施の形態と比較して異なる部分についてのみ詳細に説明をし、その他の部分については第1の実施の形態における同様の部分に付した符号と同じ符号を付して説明は省略する。
【0159】
<第3の実施の形態における異物除去装置の構成>
高圧空気発生ユニット4はケース体7とケース体7の内部に配置された移動機構8とを有している(
図21参照)。高圧空気発生ユニット4は車輌の内部において車体の一部に取り付けられている。
【0160】
シリンダー21はピストン支持部22とピストン支持部22から、例えば、後方に突出された連結突部23とが一体に形成されて成り、ピストン支持部22の径が連結突部23の径より大きくされている。
【0161】
作動部28の外径はピストン支持部22の内径より僅かに小さくされている。
【0162】
作動部28にはシール部材31が配置溝28aに挿入された状態で取り付けられている。シール部材31は環状に形成され、シール部材31には前方に開口された円環状の溝部31aが形成されている。シール部材31は弾性変形可能な、例えば、ゴム又は樹脂によって形成され、外周部31bが作動部28の外周面28fから外方に突出されており、溝部31aの少なくとも一部が作動部28の外周面28fより外側に位置され、内周部31cが配置溝28aに挿入されている。
【0163】
ピストン支持部22には図示しないエアー流入孔が形成されている。エアー流入孔は、ピストン27が前側の移動端まで第2の方向へ移動された状態において作動部28より前側に位置され、例えば、車室等に連通されている。従って、ピストン21の内部には車室等の空気がエアー流入孔から流入可能にされている。尚、エアー流入孔への空気の流入路にはフィルター等の塵埃を除去する手段が設けられていてもよい。
【0164】
配管3には他の部分に対して内側に張り出された二つの部分が前後に離隔して設けられ、内側に張り出された前側の部分における後側の開口縁が第1の開口縁3aとして形成され、内側に張り出された後側の部分における前側の開口縁が第2の開口縁3bとして形成されている。配管3の内部の空間は第1の開口縁3aと第2の開口縁3bの間の空間が弁配置空間3cとして形成されている。
【0165】
弁配置空間3cには逆止弁39が配置されている。逆止弁39は、例えば、圧縮コイルバネ40と球状開閉体41によって構成され、圧縮コイルバネ40の後端部が第2の開口縁3bに押し付けられ、球状開閉体41が圧縮コイルバネ40の付勢力によって第2の方向へ付勢されている。圧縮コイルバネ40の付勢力によって球状開閉体41が第1の開口縁3aに押し付けられることにより、シリンダー21の内部とノズル6の内部との間の空気の流動が規制される。
【0166】
シリンダー21と配管3の内部の空間は逆止弁39とピストン27の作動部28との間の部分が、ピストン27が第1の方向へ移動されたときに空気が圧縮されて高圧空気が生成される生成空間42とされ、シリンダー21と受けホルダー18の内部の空間は作動部28より前側の部分が、エアー流入孔からの空気の流入が可能な流入空間43とされている。
【0167】
<第3の実施の形態における異物除去装置の動作>
以下に、異物除去装置1の動作について説明する(
図22乃至
図25参照)。
【0168】
先ず、高圧空気が送り出される前の初期状態について説明する(
図22参照)。
【0169】
初期状態においては、ピストン27が移動方向における後方側に位置され、ピストン27はラック部29aがピニオン14のギヤ部17、17、17に噛合可能な状態で位置されている。このときピストン27は作動部28に取り付けられたシール部材31における外周部31bの少なくとも一部、例えば、外周部31bの後端部がシリンダー21の内周面22dに接した状態にされている。
【0170】
初期状態において駆動モーター10の駆動が開始され、駆動モーター10の駆動力がウォーム11を介してウォームホイール12に伝達されると、ピニオン14のギヤ部17がピストン27のラック部29aに噛合される(
図23参照)。従って、ピストン27はピニオン14の回転に伴って付勢バネ32の付勢力に反して第2の方向へ移動されていく。
【0171】
ピストン27の第2の方向への移動が開始されるときには、逆止弁39の球状開閉体41が圧縮コイルバネ40の付勢力によって配管3の第1の開口縁3aに押し付けられており、ピストン27の第2の方向への移動に伴って生成空間42が流入空間43より負圧になり生成空間42と流入空間43の間で内圧差が生じる。従って、流入空間43に存在する空気によってシール部材31の外周部31bに圧力が付与され、外周部31bが内周部31cに近付く方向へ弾性変形され、シール部材31は溝部31aが狭まる形状にされる。シール部材31の外周部31bが内周部31cに近付く方向へ弾性変形されると、シール部材31がシリンダー21の内周面22dから離隔され両者の間に間隙Hが形成され、エアー流入孔から流入空間43を経て間隙Hから生成空間42に車室等の空気が流入される。
【0172】
生成空間42に流入された空気は、例えば、車室等から流入された空気であり、塵埃や水分の含有量が少ない清浄な空気であり、特に、エアー流入孔への空気の流入路にフィルター等の塵埃を除去する手段が設けられている場合には、より清浄な空気である。
【0173】
ピストン27がピニオン14の回転に伴って第2の方向へ移動されていくと、所定の位置でギヤ部17とラック部29aの噛合が解除される。このときピストン27の第2の方向への移動に伴って生成空間42に空気が流入されていくため、生成空間42と流入空間43の間の内圧差が小さくなっていき、シール部材31の外周部31bが弾性復帰され外周部31bの少なくとも一部がシリンダー21の内周面22dに接した状態にされる。
【0174】
ギヤ部17とラック部29aの噛合が解除されると、ピストン27が付勢バネ32の付勢力によって第2の方向への移動速度より高速で第1の方向へ移動される(
図24参照)。このとき、シリンダー21は連結突部23の径がピストン支持部22の径より小さくされているため、生成空間42に存在する空気が圧縮されて内圧が高まり、逆止弁39の球状開閉体41に第1の方向への圧力が付与され、圧縮コイルバネ40が圧縮されて球状開閉体41が第1の方向へ移動されて第1の開口縁3aの開口が開放される。
【0175】
従って、生成空間42の空気が高圧空気となって連結突部23の送出路23aを通って配管3を経てノズル6へ向けて送り出され、ノズル6から高圧空気が噴射されて車載カメラ100における撮像部のレンズ部101に吹き付けられる。
【0176】
ピストン27が第1の方向へ移動されるときには、上記したように、生成空間42において空気が圧縮されて内圧が高まるため、流入空間43が生成空間42より負圧になり、生成空間42と流入空間43の間で内圧差が生じる。従って、シール部材31の溝部31aに存在する空気によって外周部31bに溝部31aが広がる方向への圧力が付与され、外周部31bが内周部31cから遠去かる方向へ弾性復帰され、シール部材31がシリンダー21の内周面22dに接した状態にされる。
【0177】
ノズル6から噴射された高圧空気がレンズ部101に吹き付けられると、レンズ部101に付着されている塵埃、泥、水滴等の異物が吹き飛ばされてレンズ部101が洗浄され汚染が解消される。
【0178】
ピストン27が付勢バネ32の付勢力によって第1の方向へ移動されるときには、シール部材31がシリンダー21の内周面22dに摺動される。ピストン27が第1の方向へ所定の位置まで移動されると、高圧空気が配管3を経てノズル6へ向けて送り出されるため、生成空間42の内圧が低下し、圧縮コイルバネ40が伸張されて球状開閉体41が第2の方向へ移動され第1の開口縁3aの開口が再び閉塞される(
図25参照)。
【0179】
上記したピストン27の往復運動は、ピニオン14のギヤ部17とピストン27のラック部29aとの噛合及びその解除を1サイクルとして行われ、ピニオン14の欠歯部14aの存在によってピストン27の第1の方向への移動が行われる。
【0180】
従って、欠歯部14aの存在によってピストン27が第1の方向へ移動されるため、ピストン27を第1の方向へ移動させる専用の機構を設ける必要がなく、異物除去装置1の機構の簡素化による小型化を図ることができる。
【0181】
また、異物除去装置1にはピニオン14の周方向に離隔して三箇所にギヤ部17、17、17が設けられ三つの欠歯部14a、14a、14aが形成されているため、ピニオン14の1回転においてピストン27の往復運動が3回(3サイクル)行われる。
【0182】
従って、ピニオン14の1回転に対するノズル6からの高圧空気の噴射回数が多く、異物除去装置1における噴射効率の向上を図ることができる。尚、ピニオン14のギヤ部17の数は三つに限られることはなく、一つ又は二つでもよく、四つ以上が設けられていてもよい。
【0183】
<第3の実施の形態におけるまとめ>
ところで、特許文献1に記載されたような異物除去装置においては、ピストンが一方へ移動されて流体(高圧空気)がノズルから噴射され、ピストンが他方へ移動されて外部の空気が高圧空気の流路と同じ流路を反対方向へ流動されてシリンダーの内部に流入される。
【0184】
従って、外部の空気に塵埃や水分等の異物が含まれていると、これらの塵埃や水分等も外部の空気とともにシリンダーの内部に流入され、シリンダーの内部が汚染されたり高圧空気の噴射に伴って被洗浄物に塵埃や水分等が吹き付けられるおそれがある。
【0185】
しかしながら、異物除去装置1にあっては、上記したように、空気の第2の方向側への流動を規制する逆止弁39が配置され、シール部材31に第1の方向に開口された溝部31aが形成され、ピストン27の移動時に、シリンダー21におけるシール部材31を挟んだ反対側の生成空間42と流入空間43の内圧差によってシール部材31が弾性変形又は弾性復帰される。
【0186】
従って、ピストン27が第1の方向へ移動されるときに溝部31aが広がる方向への圧力によりシール部材31がシリンダー21の内周面22dに押し付けられて摺動され、ピストン27が第2の方向へ移動されるときに溝部31aが狭まる方向への圧力によりシール部材31が弾性変形されてシール部材31とシリンダー21の内周面22dとの間に間隙Hが形成される。これにより、ピストン27が第2の方向へ移動されるときに空気が第1の方向へ流動されて間隙Hから生成空間42に流入され、シリンダー21の内部への塵埃や水分等の異物の流入を低減することができる。
【0187】
特に、ノズル6は車載カメラ100等の被洗浄物に空気を噴射する部分であり、ノズル6の内部には屋外の塵埃や水分や砂泥等の異物が侵入し易いため、ノズル6側から配管3を介してシリンダー21の内部に空気が流入されない構成にされていることにより、シリンダー21の内部への異物の流入を効果的に抑制することができる。
【0188】
また、流体が気体と液体の混合液又は液体である場合に、ノズル6の内部や配管3の内部に残存する液体のシリンダー21の内部への流入を防止することもできる。
【0189】
さらに、異物除去装置1にあっては、シール部材31の溝部31aの少なくとも一部がピストン27における作動部28の外周面28fより外側に位置されている。
【0190】
従って、ピストン27が第1の方向へ移動されたときに溝部31aに空気が入り込み易くなり、溝部31aが広がる方向への圧力がシール部材31に付与されてシール部材31がシリンダー21の内周面22dに押し付けられ易くなり、生成空間42の気密性が高く、高圧空気の噴射圧を高めて被洗浄物に対する洗浄力を高めることができる。
【0191】
さらにまた、異物除去装置1にあっては、シリンダー21の連結突部23に配管3が連結され、配管3に逆止弁39が配置されている。
【0192】
従って、ノズル6とシリンダー21を連結する配管3に逆止弁39が配置されるため、逆止弁39の十分な配置スペースを確保することができると共にノズル6とシリンダー21の間隔を自由に設定することにより設計の自由度の向上を図ることができる。
【0193】
加えて、連結突部23の軸方向がピストン27の移動方向に一致されているため、軸方向がピストン27の移動方向に一致された連結突部23から空気が送り出され、空気の送出に関する制御を行い易いと共に異物除去装置1の配置に関する自由度の向上を図ることができる。
【0194】
<その他(第3の実施の形態)>
上記には、逆止弁39が配管3に配置された例を示したが、逆止弁39はシリンダー21の連結突部23に配置されていてもよい(
図26参照)。
【0195】
このように連結突部23に逆止弁39が配置されることにより、シリンダー21の一部に逆止弁39が配置されるため、逆止弁39を配置するための専用の部材を必要とせず、部品点数の削減及び構造の簡素化を図ることができる。
【0196】
尚、逆止弁39は配管3やシリンダー21の他に、ノズル6に配置されていてもよい。
【0197】
また、上記には、ピストン27の移動方向と連結突部23の軸方向とが一致された例を示したが、例えば、ピストン27の移動方向と連結突部23の軸方向とが異なる角度、例えば、90度になる構成にすることも可能である(
図27参照)。
【0198】
この場合には、連結突部23がストッパー面25aより前側に位置され、シリンダー21の内部における連結突部23と閉塞部25の間に一定の空間44が形成されることが望ましい。
【0199】
このような構成においては、ピストン27が第1の方向へ移動されたときに空気を空間44において閉じ込めることにより圧縮してエアーダンパーとして使用することが可能になる。
【0200】
従って、ピストン27の先端面28bとシリンダー21のストッパー面25aとの接触が防止され又はピストン27の先端面28bがシリンダー21のストッパー面25aに低速で接触され、接触による異音の発生や振動の発生を防止することができる。
【0201】
また、異音の発生や振動の発生が防止されるため、運転者や搭乗者に対する不快感の発生を防止することもできる。
【符号の説明】
【0202】
100…車載カメラ(被洗浄物)、1…異物除去装置、6…ノズル、8…移動機構、21…シリンダー、21a…挿入凸部、22…ピストン支持部、22a…大径部、22b…傾斜部、22c…小径部、22d…内周面、23…連結突部、24…筒状部、25a…ストッパー面、26…移動空間、27…ピストン、28…作動部、28b…先端面、28c…凹部、28e…挿入部、28f…外周面、31…シール部材、31a…溝部、32…付勢バネ、33…シールリング、34…挿入凹部、35…凸部、39…逆止弁