(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】摩耗安定粒状材料の製造のためのプロセス
(51)【国際特許分類】
C01F 7/025 20220101AFI20221125BHJP
C01B 33/18 20060101ALI20221125BHJP
B01J 2/16 20060101ALI20221125BHJP
B01J 37/00 20060101ALI20221125BHJP
B01J 21/04 20060101ALI20221125BHJP
B01J 21/08 20060101ALI20221125BHJP
B01J 35/10 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
C01F7/025
C01B33/18 Z
B01J2/16
B01J37/00 B
B01J21/04 Z
B01J21/08 Z
B01J35/10 301Z
(21)【出願番号】P 2019554734
(86)(22)【出願日】2018-04-04
(86)【国際出願番号】 EP2018058656
(87)【国際公開番号】W WO2018185194
(87)【国際公開日】2018-10-11
【審査請求日】2021-02-17
(32)【優先日】2017-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501186162
【氏名又は名称】サゾル ジャーマニー ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュラーゲ,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】フリードリッヒ,マルコ
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/093488(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/089222(WO,A1)
【文献】特表2000-503294(JP,A)
【文献】特開昭57-038938(JP,A)
【文献】特表2007-519521(JP,A)
【文献】特表2004-528161(JP,A)
【文献】特開昭60-227825(JP,A)
【文献】米国特許第05254516(US,A)
【文献】特開2004-143026(JP,A)
【文献】特開2001-314765(JP,A)
【文献】特開平11-060230(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 2/16、8/24-46、20/02-18、21/00-23/89、32/00、35/02-10、37/00
C01B 13/26、33/12-193
C01F 7/02-027
C04B 35/10-119、14、622-657
B01J 8/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動床造粒反応器中で造粒粒子を製造する方法であって、分散媒中に分散した無機粒子を前記流動床造粒反応器中に供給するステップを含み、前記分散媒中の前記無機粒子は、1μmと15μmとの間のD
90値を有
し、前記無機粒子は、アルミナの粒子、シリカの粒子、またはそれらの混合物を含み、前記アルミナの粒子は、水和アルミナ、ベーマイト、および/またはバイヤライトを含む方法。
【請求項2】
分散した
前記無機粒子を中に含む前記分散媒が、前記流動床造粒反応器のプロセスチャンバ中に噴霧され、一方、加熱されたプロセス気体が前記プロセスチャンバを通って底部から頂部へ流れ
る、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記加熱された気体は、前記プロセスチャンバに入るとき100℃~400℃の入口温度を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記流動床造粒反応器中に供給される前記分散媒中の前記無機粒子の前記D
90値は、1μmと10μmとの間にあ
る、請求項1
~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記無機粒子の前記D
90
値は、1μmと5μmとの間にある、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記無機粒子は、アルカリ土類金属、希土類元素、白金族元素、鉄族元素、Cu、Ag、Au、Zn、Al、In、Sn、Si、P、V、Nb、Mo、W、Mn、Re、Ti、Zrの化合物
、またはそれらの混合物を含
む、請求項1~
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記化合物は、それらの酸化物もしくは酸化物水和物またはそれらの混合物である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記無機粒子は、アルミナ
の粒子であり、前記アルミナの粒子は、水和アルミナ、ベーマイト
、および/またはバイヤライト
を含む、請求項1~
7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記無機粒子は、ベーマイトの粒子である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記分散媒は、水を含むかまたは水からなる、請求項1~
9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記分散媒に安定剤が加えられ
る、請求項1~
10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記安定剤は、ポリビニルアルコールまたは炭水化物である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記分散媒中の前記無機粒子を、前記流動床造粒反応器に入る前に、1μmと15μmとの間
のD
90値まで摩砕する最初のステップを含む、請求項1~
12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記D
90
値は、前記流動床造粒反応器に入る前において、1μmと5μmとの間である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記安定剤は、前記摩砕ステップの後にのみ前記分散媒に加えられる、請求項
11又は12に記載の方法。
【請求項16】
前記分散媒は、前記分散媒の合計量に対して5重量%と60重量%との間の無機粒子を含む、請求項1~
15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記分散媒は、2と12との間のpHを有する、請求項1~
16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
焼成ステップを含み、前記焼成は、350℃と1600℃との間の温度で30分~5時間の期間行われる、請求項1~
17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
5μm~200μm
のD
50値を有する一次粒子を含む種晶材料が、前記流動床造粒反応器中に供給される前記分散物中にさらに含まれ、および/または、前記分散物が前記流動床造粒反応器中に供給されるとき前記流動床造粒反応器中に既に存在する、のどちらかである、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記一次粒子のD
50
値は、50μm~80μmである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
球形の焼成された造粒粒子であって、
100と5000μmとの間
の前記造粒粒子のD
50値、0.900と1.00との間の前記粒状材料
の粒子の体積基準真球度
、および5%より低
い摩耗度値を有し、さらに、
150~300m
2
/gの範囲の比表面積、および以下の特性、
i)0.3と2.5g/cm
3との間
のゆるみかさ密度、
ii)0.01~2.0cm
3/g
の間の細孔容積、または
iii)25と100000Åとの間
の細孔半径最大値を有する単峰形または多峰形の細孔サイズ分布
の
うちの1つ、またはすべて
によって特徴
づけられる、球形の焼成された造粒粒子。
【請求項22】
400と1000μmとの間の前記造粒粒子のD
50
値、および2%より低い摩耗度値を有し、さらに、150~250m
2
/gの範囲の比表面積、および以下の特性、
i)0.5と1g/cm
3
との間のゆるみかさ密度、
ii)0.1と1cm
3
/gとの間の細孔容積、または
iii)25と100Åとの間の細孔半径最大値を有する単峰形または多峰形の細孔サイズ分布
のうちの1つ、またはすべてによって特徴づけられる、請求項21に記載の球形の焼成された造粒粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動床造粒反応器中で造粒粒子を製造する方法および球形造粒粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
特定の化学プロセスは、触媒が運動し続ける化学反応器を利用する。そのような反応器の例は、水素化処理の分野で周知である移動床反応器、さまざまな異型遺伝子触媒気相反応のために用いられる流動床反応器およびフィッシャー・トロプシュプロセスのために用いられるスラリー相反応器を含む。これらのプロセスで用いられる触媒の大部分は、担持触媒である。これら担持触媒は、アルミナ、シリカ、シリカアルミナ、ゼオライト、チタニアまたはそれらの混合物のような固体無機酸化物または混合酸化物を含むキャリア材料を含む。これらキャリアの調製のために、噴霧乾燥、凝塊、押出、球状化、造粒またはゾル‐ゲル滴下の技法および圧密を含む複数のプロセスがある。上記プロセスは、50μmと5000μmとの間の範囲の典型粒子直径を有する粒子を有する触媒担体を製造する。
【0003】
流動床造粒は、100μmと1000μmとの間の中央値粒子サイズを有するキャリア材料を調製するための非常に多用な方法である。この方法は、流動床造粒を用いる顆粒の連続製造のためのプロセスを教示する特許文献1および特許文献2を含むさまざまな先行技術文献に記載されている。特許文献3は、研磨剤としての使用のために有機バインダーを用いてアルファ-アルミナ粒子を凝塊させることを教示している。特許文献4は、吸着剤、触媒成分または触媒として用いられる場合があるアルミナに基づく球形粒状体の製造のためのプロセスを教示している。特許文献5は、ベーマイト豊富化合物を希硝酸中0.08のHNO3/Al2O3比で撹拌することによって造粒分散物が調製されると記載している。
【0004】
そのような反応器中の触媒粒子の運動に起因して、摩耗安定性は、これらプロセスの経済性に直接影響を及ぼすので、これらの触媒粒子の重要な特性である。
【0005】
先行技術の方法によって得られる造粒粒子は、摩耗安定性に負の方向で影響を及ぼすかなり粗い表面を特徴とする。従って、この特定の特性を改善することが本発明の目的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】欧州特許第0163836(B1)号
【文献】欧州特許第0611593(B1)号
【文献】独国特許出願公開第19629690(A1)号
【文献】東独国特許第274980号
【文献】独国特許第274980号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
驚くべきことに、流動床造粒反応器に供給される無機粒子の粒子サイズを減少させることによって、流動床造粒プロセスから得られる球形造粒粒子の摩耗度を実質的に改善することができることが見いだされた。
【0008】
本発明の第1側面によれば、流動床造粒反応器中で造粒粒子を製造する方法が提供され、該方法は、分散媒中に分散した無機粒子を流動床造粒反応器中に供給するステップを含み、該分散媒中の該無機粒子は、1μmと15μmとの間のD90値(D=直径(Diameter))を有する。
【0009】
流動床造粒反応器中に供給される無機粒子の粒子サイズD90値は、好ましくは、1μmと10μmとの間、最も好ましくは1μmと5μmとの間である。D90値とは、分散媒中のすべての無機粒子の90%がこのサイズより小さく、10%がこのサイズより大きいという意味である。分散物中の粒子の粒子サイズD90値は、マルバーン(Malvern)マスターサイザー(Mastersizer)2000を用いるレーザ散乱によって決定される。
【0010】
無機粒子は、アルカリ土類金属、希土類元素、白金族元素、鉄属元素、Cu、Ag、Au、Zn、Al、In、Sn、Si、P、V、Nb、Mo、W、Mn、Re、Ti、Zrの化合物またはそれらの混合物を含んでよい。好ましくは、無機粒子は、Al、Si、Ti、Mg、Zn、Caの化合物またはそれらの混合物を含む。最も好ましくは、無機粒子は、アルミナ、シリカまたはそれらの混合物の粒子を含む。好ましくは、化合物は、酸化物または酸化物水和物または混合酸化物または混合酸化物水和物である。
【0011】
典型的には、アルミナ粒子は、高純度であり、100ppmより少ないNa、150ppmより少ないFeおよび200ppmより少ないSiを含有する。
【0012】
アルミナは、ベーマイト、バイヤライトなど水和アルミナ、γ-(ガンマ)、δ-(デルタ)またはθ-(シータ)アルミナ、α-(アルファ)アルミナなど転移アルミナ、またはそれらの混合物を含んでよい。好ましくは、アルミナは、ベーマイトからなるかまたはベーマイトを含む。本発明の目的では、用語ベーマイトは、擬ベーマイトも含む。
【0013】
無機粒子がベーマイトを含む場合、シェラー(Scherrer)式を用いて(120)反射から計算されるベーマイトの結晶子サイズは、3nmと50nmとの間の範囲にあってよい。
【0014】
無機粒子は、流動床造粒反応器に供給される前に分散媒中に分散される。
【0015】
分散媒は、液体であり、通常は水であるが、有機極性溶媒、一塩基酸、安定剤、塩基、またはそれらの混合物も含んでよい。
【0016】
有機極性溶媒は、アルコール、エーテル、エステル、ケトン、アミド、ニトリル、スルホキシド、例えばエタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、アセトン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、またはそれらの混合物を含んでよい。
【0017】
次に分散媒に一塩基酸が加えられる場合、5体積%(未希釈の酸と分散媒の全容積とに関して)より少ない一塩基酸が加えられてよい。一塩基酸は、硝酸、ギ酸、酢酸、またはそれらの混合物を含んでよい。
【0018】
任意選択として、分散物に安定剤が加えられ、分散助剤またはバインダーとして作用する。この安定剤は、フォスフェート、ホスホネート、シリケート、フミネート、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸塩、スルホネート、グリコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、炭水化物、アラビアゴム、糖またはそれらの混合物を含んでよい。好ましくは、安定剤は、ポリビニルアルコールまたは炭水化物、特にヒドロキシメチルセルロースなどの化学修飾されたセルロースである。
【0019】
分散媒に加えられる安定剤の量は、選ばれる無機粒子に依存する。通常、無機粒子の量に対して0.2~10重量%の間の量の安定剤が分散媒に加えられる。無機粒子としてアルミナが選ばれる場合、好ましくはアルミナ粒子の量に対して0.5と5%重量%との間の安定剤が分散媒に加えられる。
【0020】
塩基は、アンモニアを含んでよい。
【0021】
さらに、無機粒子としてアルミナが選ばれる場合、好ましくは、分散媒は、参照によって本明細書に組み込まれる独国特許第3244972(C1)号または欧州特許第0790859(B1)号に従って調製された、アルミニウムアルコラートの加水分解によって得られる分散媒と同じである。そこでは、金属(例えばアルミニウム)と純粋な形またはそれらの混合物のC1~C12アルコールとの反応のための装置および方法が開示されている。得られる生成物は、アルミニウムアルコラートであり、これは、次に水、酸性にされた水、または水-アンモニア溶液中で加水分解されてアルミニウム酸化物-水酸化物の分散物を形成することができる。
【0022】
分散媒のpHは、典型的には、2~12の範囲、好ましくは4~10の範囲、最も好ましくは5~8の範囲にある。
【0023】
分散媒の無機粒子固形分は、5%と60%との間(分散媒(あらゆる固形分を除外する)の全重量に対する重量あたり無機粒子)の範囲にある。
【0024】
本発明の方法は、無機粒子を1μmと15μmとの間、好ましくは1μmと10μmとの間、最も好ましくは1μmと5μmとの間の粒子サイズD90値まで摩砕する最初のステップを含んでよい。好ましくは、無機粒子は、1μmと15μmとの間、好ましくは1μmと10μmとの間、最も好ましくは1μmと5μmとの間の粒子サイズD90値まで分散媒中で摩砕される。
【0025】
本発明の方法は、後続の焼成のステップを含む。焼成は、350~1600℃、好ましくは550~1200℃の温度で30分と5時間との間の期間行われる。焼成は、用いられる場合は痕跡量の有機バインダーを除去し、選ばれる場合はベーマイトを転移アルミナまたはアルファアルミナに変換する。
【0026】
流動床造粒反応器中で、加熱されたプロセス気体がプロセスチャンバを通って底部から頂部へ流れる間に、無機粒子を含む分散媒がプロセスチャンバ内に噴霧される。
【0027】
本プロセスには一次粒子(種晶材料)が必要であり、無機粒子を含む分散媒の噴霧乾燥によるか、または任意選択としてプロセスチャンバ中に既に存在するかのどちらかで形成されてよい。これら一次粒子(種晶材料)は、5~200μmの範囲のD50、好ましくは50~80μmの範囲のD50を有する。一次粒子または種晶材料とは、プロセスの一番初めにプロセスチャンバ中に入れられる粉体材料という意味である。D50とは、すべての粒子の50%がこのサイズより小さく、50%がこのサイズより大きいことを意味する「中央値」という意味である。
【0028】
プロセスチャンバ中の種晶粒子上に分散媒と無機粒子とを噴霧することによって顆粒が形成される。分散媒は、次に、加熱されたプロセス流気体がプロセスチャンバを通って流れるにつれて蒸発し、無機粒子は、種晶粒子上で凝塊する。必要に応じてこのプロセスが繰り返される。
【0029】
流動床造粒反応器は、通常、0.5~5m/sの範囲の空塔速度を有する加熱された気体の流れと2~12の範囲の流動化数とを有する。流動化数とは、「流動床-噴霧造粒(Wirbelschicht-Spruehgranulation」、ハンス・ウーレマン(Hans Uhlemann)およびロター・メール(Lothar Moerl)、シュプリンガー・ベルリン(Springer Berlin)、ハイデルベルク、2000年、30頁(ISBN 978-3-642-63125-2)に記載されているように、適用される空塔速度と最小流動化点における空塔速度との間の商という意味である。流動床造粒反応器への導入の時点における気体の温度(本明細書において以後「入口温度」)は、好ましくは20℃と550℃との間、特に50℃と550℃との間である。アルミナの場合、入口温度は、典型的には100℃と400℃との間である。
【0030】
分散媒は、無機粒子とともに、典型的には、0.5バールと7バール(ゴーシュ圧)との間の噴霧圧を用いて、分配プレートの面積に対して45~1000kg/m2または床質量に対して0.08~7kg/(kg・h)の特定の蒸発速度で、流動床造粒反応器中に噴霧される。
【0031】
本発明のプロセスの間に、流動床造粒反応器のプロセスチャンバの内部の温度は、40℃と100℃との間、好ましくは50℃と60℃との間に保持され、一方、それとは独立に、プロセスチャンバの内部の相対湿度も、20%~60%、好ましくは35%~45%の範囲に調節されてよい。
【0032】
顆粒は、所望の粒子サイズに達するとプロセスチャンバから放出される。これは、典型的には、分級機によるかまたは回転弁およびその後のスクリーンによって行われる。目標粒子サイズ未満の乾燥粒子は、プロセスチャンバ中に再供給され、一方、目標サイズを上回る乾燥粒子は、摩砕され、同じくプロセスチャンバ中に再供給されて顆粒の連続製造を維持することができる。
【0033】
本発明の第2側面によれば、100μmと5000μmとの間、好ましくは400μmと1000μmとの間のD50値を有する、本発明の方法によって製造された造粒粒子が提供される。
【0034】
本発明の第3側面によれば、球形の焼成された造粒粒子が提供され、粒子は、100μmと5000μmとの間のD50値、0.900と1.00との間の体積基準真球度、および5%より低い、好ましくは2%より低い摩耗度値を有し、粒子は、さらに、以下の特性
i)0.3と2.5g/cm3との間、好ましくは0.5と2.0g/cm3との間、最も好ましくは0.5と1g/cm3との間のゆるみかさ密度、
ii)0.1~500m2/g、好ましくは150~300m2/g、最も好ましくは150~250m2/gの範囲の比表面積、
iii)0.01~2.0cm3/g、好ましくは0.1と1cm3/gとの間の細孔容積、
iv)25Åと100000Åとの間、好ましくは25Åと500Åとの間、最も好ましくは25Åと100Åとの間の細孔半径最大値を有する単峰形または多峰形の細孔サイズ分布
の一つ、二つ以上またはすべて、好ましくは二つ以上、最も好ましくはすべてを特徴とする。
【0035】
焼成された造粒粒子のD50値は、好ましくは150μmと2000μmとの間、より好ましくは200μmと800μmとの間、最も好ましくは400μmと1000μmとの間にある。
【0036】
焼成された造粒粒子は、好ましくは、本明細書において前に記載された方法によって得ることができる。
【0037】
[分析方法およびパラメータ定義]
摩耗度値
摩耗度値は、”J.-F.ル・パージュ(Le Page)、J.コシンス(Cosyns)、P.クルティ(Courty)、E.フロイント(Freund)、J.-P.フランク(Frank)、Y.ジャカン(Jacquin)、B.ジュガン(Juguin)、C.マルシリ(Marcilly)、G.マルチノ(Martino)、J.ミゲル(Miquel)、R.モンタルナル(Montarnal)、A.スジエ(Sugier)、H.ファン・ランデグヘム(Van Landeghem)、「応用不均一系触媒-固体触媒の設計、製造、使用(Applied heterogeneous catalysis-Design,manufacture,use of solid catalysts)」、テクニップ版(Editions Technip)、1987年、180~181頁、6.3.3.4章に示される原理に従うことによって決定される。その場合、下記に概略が示される方法が行われる。
54gの造粒粒子が4cmの直径と40cmの高さとを有する円筒形ガラスカラム中に入れられる。カラムの底に一つのノズルと0.5mmのオリフィスとを有するノズルプレートが取り付けられる。ノズルは、ノズルプレートの中央に配置される。試料は、ノズルを通って1.5~2.5バール(ゴーシュ圧)の入口圧で流れる窒素を用いて底から流動化され、大体20cmの流動床高さを生じる。異なる造粒粒子の比較のために、同程度の流動床高さを実現するようにパラメータが選ばれる。流動化時に、造粒粒子と他の造粒粒子の壁との衝突に起因して微粉が発生する。これらの微粉は、カラムの上側出口に配置されたフィルタ上に集められる。3時間後に、フィルタ上に集められた微粉は、フィルタ(重量既知)とともに秤量された。
【0038】
摩耗度値は、最初に用いられた造粒粒子の乾燥質量に対する微粉の乾燥質量としてパーセントで定義され、一方、各画分の乾燥質量は、110℃の温度で一定重量が得られるまで測定される熱天秤を用いる熱重量測定によって決定される。
【0039】
真球度
体積基準の真球度は、ISO 13322-2(2006年)に記載されているように、レッチ(Retsch)からのカムサイザー(Camsizer)P4を用いる動的画像解析によって決定される。体積基準の真球度は、次式
SPHT3=4πA/P2
を用いて、測定された外周長さPおよび粒子投影の面積Aから計算される。
【0040】
決定された値は、無次元であり、理想球体では1となり、非理想球体である回転楕円体形の粒子では典型的に1未満である。
【0041】
粒子サイズおよび粒子サイズ分布
水分散物中でMie理論を適用し、マルバーンマスターサイザー2000を用いるレーザ散乱によって分散媒中の無機粒子のD90値が測定される。Dは、直径を表す。測定される粒子は、凝塊した粒子を実質的に含まない。
【0042】
レッチからのカムサイザーP4を用いる動的画像解析によって造粒粒子のD90、D10およびD50値が測定される。一次粒子だけが測定される。
【0043】
水分散物中でMie理論を適用し、マルバーンマスターサイザー2000を用いるレーザ散乱によって一次粒子(種晶材料)のD50値が測定される。
【0044】
結晶子サイズ
周知のシェラー式を適用し、固体材料のX線回折によって分散した材料の(120)反射に基づく結晶子サイズが決定される。
【0045】
表面積および細孔容積
クォンタクローム(Quantachrome)からのクァドラソーブ(Quadrasorb)のような典型的容積測定装置を用いるN2物理吸着によって液体窒素の温度で表面積および細孔容積が測定される。BET理論(DIN ISO 9277:2003-05)を用いて表面積が決定され、一方、DIN 66131によって細孔容積が決定される。細孔サイズ範囲は、細孔半径で0~5000nmの間である。
【0046】
ゆるみかさ密度
試料を100mlメスシリンダー中に投入した後で、試料の正確な重量と正確な体積とを決定することによって、ゆるみかさ密度が測定される(ISO 60によって)。
【0047】
細孔サイズおよび細孔サイズ分布
DIN 66133に従って、マイクロメリティックス(Micromeritics)からのポロシメ-ター、オートポア(Autopore)IV 9500を用いて水銀圧入により細孔径分布が決定される。
【0048】
次に、非限定的な実施例および図面によって本発明が記載される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】
図1.1と1.2は、実施例1の造粒粒子の走査顕微鏡像である。
図1.3は、薄片化された実施例1の造粒粒子の走査顕微鏡像である。
【
図2】実施例1の造粒粒子の単峰形の細孔サイズ分布を表す。
【
図3】
図3.1と3.2は、実施例2の造粒粒子の走査顕微鏡像である。
図3.3は、薄片化された実施例2の造粒粒子の走査顕微鏡像である。
【
図4】実施例2の造粒粒子の単峰形の細孔分布を表す。
【
図5】
図5.1と5.2は、比較例1の造粒粒子の走査顕微鏡像である。
図5.3は、薄片化された比較例1の造粒粒子の走査顕微鏡像である。
【
図6】比較例1の造粒粒子の単峰形の細孔分布を表す。
【
図7】
図7.1と7.2は、比較例2の造粒粒子の走査顕微鏡像である。
図7.3は、薄片化された比較例2の造粒粒子の走査顕微鏡像である。
【
図8】比較例2の造粒粒子の単峰形の細孔分布を表す。
【実施例】
【0050】
実施例1
焼成されていない造粒アルミナ粒子の調製のために、アルミナを含む分散媒を以下のように調製した。
5nmの結晶子サイズ(120反射)を有する12kgのプーラル(Pural)SB(ベーマイト)を80kgの水に加えて分散媒を形成した。撹拌装置を備える槽に分散媒を移し、続いて1.0~1.2mmのα-(アルファ)アルミナ研削ボールを備えるアジテーターボールミル(ドライス・ヴェルケ(Drais Werke)GmbH、マンハイム、ドイツ、PMC5 TEX)を用いて湿式摩砕した。
【0051】
摩砕後、ポリビニルアルコール(クラレ、ポバール4-88―ポバール4-88は、4重量%の水溶液についてDIN 53015によって20℃で測定して大体4mPa・sの粘度と88モル%の加水分解のグレードを有する(酢酸ビニル官能基の88%が鹸化されていることを意味する)有機バインダーの10重量%溶液を、ポリビニルアルコールの量が用いられたベーマイトに対して5重量%となるように、分散媒に加えた。得られた分散媒は、12%の無機粒子固形分、7.8のpH値および9.4μmのD90を有した。
【0052】
造粒のために、グラット(Glatt)からのプロセル(ProCell)ラブシステム(Labsystem)流動床造粒機のバリオ(Vario)7プロセスチャンバの中に50μmのD50値を有する3.6kgのプーラルSB(ベーマイト)の形の種晶材料を仕込んだ。
【0053】
1.8mmのオリフィスを有する2コンポーネントジェットを有する底部噴霧構成を用いて造粒を行った。加熱された空気流を0.8m/sの空塔速度、5の流動化数および110~120℃の入口温度で適用してプーラルSB種晶材料を流動化した。
【0054】
1.1~1.3バール(ゴーシュ圧)の噴霧圧を用いて4~5kg/hの流量で流動床中に分散媒を噴霧した。蒸発速度は、床質量に対して1.2~2.1kg/(kg・h)、分配プレートの面積に対して60~96kg/(m2・h)であった。
【0055】
造粒プロセス全体の間に、プロセスチャンバの内部の温度を50℃と60℃との間に保持し、一方、プロセスチャンバの内部の相対湿度を35%~45%の範囲に調節した。プロセスチャンバの内部の材料は、流動化状態に保持し、空気流量および入口温度を、プロセスチャンバの内部の温度および湿度を所望の範囲に保持するように調節した。
【0056】
450μmの目標粒子サイズ(D50)に達するまで、粒子成長を行った。成長段階の間、床質量を一定レベルに保持するために、毎時定期的にプロセスチャンバから材料を放出した。目標粒子サイズに達した後、1.4バール(ゴーシュ圧)の篩分機背圧を加えて材料をジグザグ篩分機上に放出した。
【0057】
最後に、マッフル炉中空気雰囲気下550℃で3時間ベーマイト造粒粒子を焼成した。
【0058】
図1.1~1.3に造粒粒子の走査顕微鏡像を示す。
図1.1~1.3は、高い真球度と滑らかな外表面とを有する造粒粒子を示す。
図2は、実施例1の造粒粒子の単峰形のサイズ分布を示す。
【0059】
焼成されたベーマイト造粒粒子の特性を表1に含める。
【0060】
表1
真球度/- 0.974
摩耗の量/% 1.2
D10/μm 350
D50/μm 449
D90/μm 553
比表面積/m2/g 191
細孔容積/cm3/g 0.46
ゆるみかさ密度/g/cm3 0.78
細孔半径最大値/Å 35
【0061】
実施例2
摩耗安定造粒アルミナ粒子の調製のために、以下のように造粒分散物を調製した。
撹拌装置を用いて7.2nmの結晶子サイズ(120反射)を有する12kgのプーラルTM50(ベーマイト)を100kgの水中に懸濁させるステップ、続いて1.0~1.2mmのα-(アルファ)アルミナ研削ボールを備えたアジテーターボールミル(ドライス・ヴェルケGmbH、マンハイム、ドイツ、PMC5 TEX)を用いて分散物を湿式摩砕するステップ。摩砕後、ポリビニルアルコール(クラレのポバール4-88)の10重量%溶液を、ポリビニルアルコールの有機バインダーの量が用いられるベーマイトに対して5重量%となるように分散物に加えた。さらに、ギ酸を加えて分散物のpHを6の値に調節した。得られた造粒分散物は、水による希釈後、10%の無機粒子固形分と12.0μmのD90とを有した。
【0062】
造粒のために、グラットからのプロセルラブシステム流動床造粒機のバリオ7プロセスチャンバ中に、75μmの平均粒子サイズ(D50)を有する3.6kgのプーラルTM50(ベーマイト)種晶材料を入れた。
【0063】
1.8mmのオリフィスを有する2コンポーネントジェットを有する底部噴霧構成を用いて造粒を行った。0.8m/sの空塔速度、5の流動化数および110~120℃の入口温度を有する加熱空気流を適用してプーラルTM50を流動化した。
【0064】
1.1~1.3バール(ゴーシュ圧)の噴霧圧を用いて4~5kg/hの流量で流動床中に分散媒を噴霧した。床質量に対する蒸発速度は、1.2~2.1kg/(kg・h)、分配プレートの面積に対しては60~96kg/(m2・h)であった。造粒プロセス全体の間、プロセスチャンバの内部の温度を50℃と60℃との間に保持し、一方、プロセスチャンバの内部の相対湿度を35%~45%の範囲で調節した。プロセスチャンバの内部の材料を流動化状態に保持し、プロセスチャンバの内部の温度および湿度を所望の範囲に保持するように、空気流量および入口温度を調節した。
【0065】
500μmの目標粒子サイズ(D50)に達するまで粒子成長を行った。成長段階にある間、床質量を一定レベルに保持するために、毎時定期的にプロセスチャンバから材料を放出した。目標粒子サイズに達した後、1.2バール(ゴーシュ圧)の篩分機背圧を加えて材料をジグザグ篩分機上に放出した。
【0066】
最後に、マッフル炉中空気雰囲気下650℃で3時間ベーマイト顆粒を焼成した。
【0067】
図3に造粒粒子の走査顕微鏡像を示す。
図3は、粒子が高い真球度と滑らかな外表面とを有することを示す。
図4は、実施例2の造粒粒子の単峰形の細孔サイズ分布を示す。
【0068】
焼成されたベーマイト造粒粒子の特性を表2に含める。
【0069】
表2
真球度/- 0.973
摩耗の量/% 1.5
D10/μm 387
D50/μm 499
D90/μm 600
比表面積/m2/g 188
細孔容積/cm3/g 0.73
ゆるみかさ密度/g/cm3 0.61
細孔半径最大値/Å 72Å
【0070】
比較例1
比較のために、欧州特許第0790859(B1)号に基づく分散媒を用いて、すなわち、湿式摩砕ステップにより分散媒中の無機粒子のサイズを選択することも分散媒中の無機粒子のサイズを調節することもなく、造粒を行った。ポリビニルアルコール(クラレのポバール4-88)の10重量%溶液を、ポリビニルアルコールの量が用いられるベーマイトに対して5重量%となるように分散媒に加えた。
【0071】
分散媒は、11%の無機粒子固形分、8.1のpH値および95μmのD90を有した。
【0072】
他のすべての造粒パラメータは、実施例1に記載した手順のアナログであった。
【0073】
図5は、本発明の実施例について示したものより粗い外表面と顕著に高い摩耗量とを有する粒子を示す。
【0074】
焼成された比較例1のベーマイト造粒粒子の特性を表3に含める。
【0075】
表3
真球度/- 0.941
摩耗の量/% 6.4
D10/μm 262
D50/μm 356
D90/μm 465
比表面積/m2/g 220
細孔容積/cm3/g 0.44
ゆるみかさ密度/g/cm3 0.81
細孔半径最大値/Å 27
【0076】
比較例2
比較のために、硝酸で酸性化した水中にプーラルSBを分散させることに基づく分散媒を用い、湿式摩砕ステップによって分散物中の粒子サイズをさらに調節することなく造粒を行った。ポリビニルアルコール(クラレのポバール4-88)の10重量%溶液を、ポリビニルアルコールの量が用いられるベーマイトに対して3重量%となるように分散物に加えた。分散媒は、23%の無機粒子固形分、3.8のpH値および22μmのD90を有した。
【0077】
他のすべての造粒パラメータは、実施例1に記載した手順のアナログであった。
【0078】
表4
真球度/- 0.975
摩耗の量/% 10.2
D10/μm 233
D50/μm 309
D90/μm 388
比表面積/m2/g 233
細孔容積/cm3/g 0.38
ゆるみかさ密度/g/cm3 0.87
細孔半径最大値/Å 28