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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】個人用レーダ
(51)【国際特許分類】
   G01S 3/46 20060101AFI20221125BHJP
   G01S 7/02 20060101ALI20221125BHJP
   G01S 13/46 20060101ALI20221125BHJP
   H04B 7/0413 20170101ALI20221125BHJP
【FI】
G01S3/46
G01S7/02 210
G01S13/46
H04B7/0413
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019556573
(86)(22)【出願日】2018-01-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-03-05
(86)【国際出願番号】 US2018012344
(87)【国際公開番号】W WO2018129158
(87)【国際公開日】2018-07-12
【審査請求日】2020-12-23
(31)【優先権主張番号】62/442,289
(32)【優先日】2017-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/861,466
(32)【優先日】2018-01-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】リー、ダニエル ジョセフ
【審査官】安井 英己
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-331466(JP,A)
【文献】特開2011-163894(JP,A)
【文献】特開2008-199589(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0033614(US,A1)
【文献】特開2011-080799(JP,A)
【文献】特開2003-207557(JP,A)
【文献】国際公開第2001/055745(WO,A1)
【文献】特開2009-282009(JP,A)
【文献】特開2016-151552(JP,A)
【文献】岡本佳久 外1名 ,ドップラーシフトに基づくバイスタティック3周波CWレーダによる人の位置推定アルゴリズム Localization Algorithm Using Bistatic Three Frequency CW Radar Based on Doppler Shift,電子情報通信学会技術研究報告 IEICE Technical Report,日本,社団法人電子情報通信学会 The Institute of Electronics,Information and Communication Engineers,2012年02月29日,第111巻,第451号,p.269-274
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 3/00- 3/74,
G01S 7/00- 7/42,
G01S 13/00-13/95,
H04B 7/0413
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1周波数で第1信号をブロードキャストし、事後の時間に、異なる第2周波数で第2信号をブロードキャストするように構成された2つ以上のアンテナを備えた送信機と、
前記送信機の前記2つ以上のアンテナからブロードキャストされた前記第1および第2信号を受信するように構成されたアンテナを有する受信機と、
前記受信機で受信された際の前記第1周波数における前記第1信号の振幅および位相を測定することと、
前記受信機で受信された際の前記第2周波数における前記第2信号の振幅および位相を測定することと、
前記第1信号および前記第2信号の各々の測定された前記振幅および位相を用いて、前記送信機から見た前記送信機のアンテナ配列の軸に対する、前記受信機の角度または方向を識別することと、
前記送信機と前記受信機との径路距離の変化に関わる前記識別した角度または方向の変化に基づき、前記送信機と前記受信機の経路における物体の存在を検出することと、
を実行するように構成された処理ユニットと
を備
前記送信機が、前記第2信号の前記ブロードキャストの事後の時間に、異なる第3周波数で第3信号をブロードキャストするように構成された第3アンテナを具備する、無線システム。
【請求項2】
前記処理ユニットが、前記受信機で受信された際の前記第3周波数でブロードキャストされた前記第3信号の振幅および位相を測定する、請求項に記載の無線システム。
【請求項3】
前記処理ユニットが、前記第1、第2、および第3信号の測定された前記振幅および位相を用いて、前記送信機から見た前記送信機のアンテナ配列の軸に対する、前記受信機の前記角度または前記方向を識別する、請求項に記載の無線システム。
【請求項4】
前記処理ユニットがさらに、前記第1、第2、および第3周波数を用いて、前記送信機から見た前記送信機の前記アンテナ配列の軸に対する、互いに異なる周波数を用いて前記受信機の角度または方向を補正するように構成された、請求項に記載の無線システム。
【請求項5】
第1周波数で第1信号をブロードキャストし、事後の時間に、異なる第2周波数で第2信号をブロードキャストするように構成された2つ以上のアンテナを備えた送信機と、
前記送信機の前記2つ以上のアンテナからブロードキャストされた前記第1および第2信号を受信するように構成されたアンテナを有する受信機と、
前記受信機で受信された際の前記第1周波数における前記第1信号の振幅および位相を測定することと、
前記受信機で受信された際の前記第2周波数における前記第2信号の振幅および位相を測定することと、
前記第1信号および前記第2信号の各々の測定された前記振幅および位相を用いて、前記送信機から見た前記送信機のアンテナ配列の軸に対する、前記受信機の角度または方向を識別することと、
前記送信機と前記受信機との径路距離の変化に関わる前記識別した角度または方向の変化に基づき、前記送信機と前記受信機の経路における物体の存在を検出することと、
を実行するように構成された処理ユニットと
を備
前記送信機のアンテナのうちの少なくとも1つによって、無線周波数バーストが前記受信機に送信され、
前記無線周波数バーストが、前記送信機の複数のアンテナによって前記受信機に送信され、
前記送信機が、互いに異なる周波数の前記無線周波数バーストを送信する度に前記複数のアンテナを切り替えるように構成された、無線システム。
【請求項6】
第1周波数で第1信号をブロードキャストし、事後の時間に、異なる第2周波数で第2信号をブロードキャストするように構成された2つ以上のアンテナを備えた送信機と、
前記送信機の前記2つ以上のアンテナからブロードキャストされた前記第1および第2信号を受信するように構成されたアンテナを有する受信機と、
前記受信機で受信された際の前記第1周波数における前記第1信号の振幅および位相を測定することと、
前記受信機で受信された際の前記第2周波数における前記第2信号の振幅および位相を測定することと、
前記第1信号および前記第2信号の各々の測定された前記振幅および位相を用いて、前記送信機から見た前記送信機のアンテナ配列の軸に対する、前記受信機の角度または方向を識別することと、
前記送信機と前記受信機との径路距離の変化に関わる前記識別した角度または方向の変化に基づき、前記送信機と前記受信機の経路における物体の存在を検出することと、
を実行するように構成された処理ユニットと
を備
前記送信機の前記2つ以上のアンテナのうちの一方の第1アンテナと他方の第2アンテナとからの前記第1および第2信号の測定に際して、前記第1および第2信号の周波数が互いに異なる周波数に変更される、無線システム。
【請求項7】
前記処理ユニットによって実行される前記受信機の角度または方向の事後の決定が、前記変更された互いに異なる周波数に基づいて決定される、請求項に記載の無線システム。
【請求項8】
送信機に対する角度または方向を探索する方法であって、
前記送信機の2つ以上のアンテナから、互いに異なる周波数で2つ以上の信号をブロードキャストすることと、
互いに異なる周波数でブロードキャストされた前記2つ以上の信号を、受信機で受信することと、
前記受信機で受信された際の各信号の振幅および位相を測定することと、
各信号の測定された前記振幅および位相を用いて、前記送信機から見た前記送信機のアンテナ配列の軸に対する、前記受信機の角度または方向を識別することと、
前記送信機と前記受信機との径路距離の変化に関わる前記識別した角度または方向の変化に基づき、前記送信機と前記受信機の経路における物体の存在を検出することと、を備
互いに異なる周波数でブロードキャストされた前記2つ以上の信号が、前記受信機の前記角度または方向が導かれる最短経路の決定を可能にする、方法。
【請求項9】
前記送信機に対する距離が、前記2つ以上の信号のうちの識別された位相シフトを用いて、各角度経路に沿って決定される、請求項に記載の方法。
【請求項10】
送信機に対する角度または方向を探索する方法であって、
前記送信機の2つ以上のアンテナから、互いに異なる周波数で2つ以上の信号をブロードキャストすることと、
互いに異なる周波数でブロードキャストされた前記2つ以上の信号を、受信機で受信することと、
前記受信機で受信された際の各信号の振幅および位相を測定することと、
各信号の測定された前記振幅および位相を用いて、前記送信機から見た前記送信機のアンテナ配列の軸に対する、前記受信機の角度または方向を識別することと、
前記送信機と前記受信機との径路距離の変化に関わる前記識別した角度または方向の変化に基づき、前記送信機と前記受信機の経路における物体の存在を検出することと、
各信号の位相測定結果にアクセスすることと、
各信号に対して、最大利得を基準として他の信号の利得を演算する、あるいは基準のタイミングを基に他の信号の位相を合わせる正規化をすることと、
複数の位相測定結果を含む送信機アンテナまたは受信機アンテナに対して、前記正規化した信号で演算することと
を備える、方法。
【請求項11】
送信機に対する角度または方向を探索する方法であって、
前記送信機の2つ以上のアンテナから、互いに異なる周波数で2つ以上の信号をブロードキャストすることと、
互いに異なる周波数でブロードキャストされた前記2つ以上の信号を、受信機で受信することと、
前記受信機で受信された際の各信号の振幅および位相を測定することと、
各信号の測定された前記振幅および位相を用いて、前記送信機から見た前記送信機のアンテナ配列の軸に対する、前記受信機の角度または方向を識別することと、
前記送信機と前記受信機との径路距離の変化に関わる前記識別した角度または方向の変化に基づき、前記送信機と前記受信機の経路における物体の存在を検出することと、を備
2種類以上の異なる組の周波数を前記送信機によって使用することで、送信機アンテナのうちの前記アンテナのうちの少なくとも1つのアンテナの距離を識別する、方法。
【請求項12】
送信機に対する角度または方向を探索する方法であって、
前記送信機の2つ以上のアンテナから、互いに異なる周波数で2つ以上の信号をブロードキャストすることと、
互いに異なる周波数でブロードキャストされた前記2つ以上の信号を、受信機で受信することと、
前記受信機で受信された際の各信号の振幅および位相を測定することと、
各信号の測定された前記振幅および位相を用いて、前記送信機から見た前記送信機のアンテナ配列の軸に対する、前記受信機の角度または方向を識別することと、
前記送信機と前記受信機との径路距離の変化に関わる前記識別した角度または方向の変化に基づき、前記送信機と前記受信機の経路における物体の存在を検出することと、を備
少なくとも1つの信号の位相に対する正規化をすることで、より少ない送信機アンテナの使用を可能にする、方法。
【請求項13】
特定の時間にわたって第1周波数で第1信号をブロードキャストし、特定の時間にわたって異なる第2周波数で第2信号をブロードキャストし、特定の時間にわたって異なる第3周波数で第3信号をブロードキャストするように構成された送信機アンテナと、
前記第1、第2、および第3信号を受信するように構成された2つ以上の受信機アンテナと、
送信機から見た前記送信機のアンテナ配列の軸に対する、受信機の角度および距離を探索するとともに、前記送信機と前記受信機との径路距離の変化に関わる前記探索した角度または方向の変化に基づき、前記送信機と前記受信機の経路における物体の存在を検出するように構成されたプロセッサと
を備
前記送信機アンテナを介して、前記送信機によって無線周波数バーストが送信され、
前記受信機が、前記2つ以上の受信機アンテナを切り替えて、位相および振幅を測定する、無線システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、物体および/または物体の動きを検出するシステムおよび方法に関する。より詳細に、本発明の実施形態は、個人用レーダ、物体存在検出、および物体位置特定に関する。
【背景技術】
【0002】
物体および/または物体の動きを検出可能な多くの方法が存在する。ほとんどの機器では、エコー、チャープ、周波数変調(FM)、またはドップラーレーダからの飛行時間を用いて、物体または物体の動きを検出する。多くの場合、可動アンテナまたはフェーズドアレイアンテナを用いて、これらの物体を検出する。その他、受信信号強度(RSS)の単純な測定結果を用いて、エリア内の移動を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第8,274,426号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種のシステムは、高コスト、電力の大量消費、高価、ならびに/または不正確もしくは不十分な精度である場合が多い。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に記載の実施形態は、無線源に対する角度または方向を探索する無線システムおよび方法を対象とする。一実施形態において、この無線システムは、第1周波数で第1信号をブロードキャストし、事後の時間に、異なる第2周波数で第2信号をブロードキャストするように構成された2つ以上のアンテナを備えた送信機と、前記送信機の前記2つ以上のアンテナからブロードキャストされた前記第1および第2信号を受信するように構成されたアンテナを有する受信機と、前記受信機で受信された際の前記第1周波数における前記第1信号の振幅および位相を測定することと、前記受信機で受信された際の前記第2周波数における前記第2信号の振幅および位相を測定することと、前記第1信号および前記第2信号の各々の測定された前記振幅および位相を用いて、前記送信機から見た前記送信機のアンテナ配列の軸に対する、前記受信機の角度または方向を識別することと、前記送信機と前記受信機との径路距離の変化に関わる前記識別した角度または方向の変化に基づき、前記送信機と前記受信機の経路における物体の存在を検出することと、を実行するように構成された処理ユニットとを備え、前記送信機が、前記第2信号の前記ブロードキャストの事後の時間に、異なる第3周波数で第3信号をブロードキャストするように構成された第3アンテナを具備する、ように構成されている。
【0006】
別の実施形態においては、無線源に対する角度または方向を探索する方法が提供される。この方法は、前記送信機の2つ以上のアンテナから、互いに異なる周波数で2つ以上の信号をブロードキャストすることと、互いに異なる周波数でブロードキャストされた前記2つ以上の信号を、受信機で受信することと、前記受信機で受信された際の各信号の振幅および位相を測定することと、各信号の測定された前記振幅および位相を用いて、前記送信機から見た前記送信機のアンテナ配列の軸に対する、前記受信機の角度または方向を識別することと、前記送信機と前記受信機との径路距離の変化に関わる前記識別した角度または方向の変化に基づき、前記送信機と前記受信機の経路における物体の存在を検出することと、を備え、互いに異なる周波数でブロードキャストされた前記2つ以上の信号が、前記受信機の前記角度または方向が導かれる最短経路の決定を可能にする。
【0007】
この概要は、以下の詳細な説明に詳しく記載する一連の概念を簡単な形態で紹介するためのものである。この概要は、特許請求の範囲に係る主題の重要な特徴または本質的な特徴の識別を意図したものでもなければ、特許請求の範囲に係る主題の範囲を決定するのに役立つものとしての使用を意図したものでもない。
別の特徴および利点については、以下の説明に示すとともに、その一部は、当該説明によって当業者に明らかとなるであろうし、本明細書の教示内容の実施によって習得されるものであってもよい。本明細書に記載の実施形態の特徴および利点は、添付の特許請求の範囲に特に示す器具および組み合わせによって実現および取得され得る。本明細書に記載の実施形態の特徴は、以下の説明および添付の特許請求の範囲によって、より十分に明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本発明の利点および特徴の少なくとも一部が得られる様態を説明するため、添付の図面に示す特定の実施形態を参照することによって、上記概説した本発明の実施形態をより詳細に説明する。これらの図面が本発明の代表的な実施形態を示しているに過ぎず、よってその範囲を制限するものと考えるべきではない旨の理解の下、添付の図面を用いることによって、本発明の実施形態をより具体的かつ詳細に記述および説明する。
図1】それぞれ単一のアンテナを備える、2つの無線機を具備する測距システムの一例を示した図である。
図2】測距システムで、互いに異なる種類の物体を検出する一例を示した図である。
図3】2つの測距ノードまたは無線機の経路と交差する、互いに異なる材料の3つの互いに異なる物体の測定結果を示した図である。
図4A】2つのアンテナを備えたRFスイッチをともに備える、2つの無線機を具備する測距システムの一例を示した図である。
図4B】一方が複数のアンテナを備えたRFスイッチを備え、他方が1つのアンテナを備える、2つの無線機を具備する測距システムの一例を示した図である。
図5】測定を実行する、方法のブロック図である。
図6】仮想的な可動アンテナの、例示的なアンテナ配置を示した図である。
図7】仮想アンテナが0°の方に向けられた場合の、結果的な仮想アンテナパターンを示した図である。
図8】仮想アンテナが45°の方に向けられた場合の、結果的な仮想アンテナパターンを示した図である。
図9A】周波数ホッピングを用いて、到来方向または到来角を決定するシステムの一実施形態を示した図である。
図9B】周波数ホッピングを用いて、到来方向または到来角を決定するシステムの一実施形態を示した図である。
図10】周波数ホッピングを用いて、到来方向または到来角を決定するシステムの別の実施形態を示した図である。
図11】受信機が到来角を計算する、一実施形態を示した図である。
図12】互いに異なる周波数を用いて、互いに異なるアンテナ上で、RF信号がバースト送信される一実施形態を示した図である。
図13】複数の互いに異なるアンテナに、所与の周波数が用いられる一実施形態を示した図である。
図14】無線源に対する角度または方向を、探索する方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の詳細な説明においては、本明細書の一部を構成する添付の図面を参照する。図面においては、文脈上の別段の指示がない限り、類似の記号は通常、類似の構成要素を識別する。詳細な説明、図面、および特許請求の範囲に記載の例示的な実施形態は、何ら限定を意図したものではない。本明細書に提示の主題の主旨または範囲から逸脱することなく、他の実施形態の利用および他の変更が行われるようになっていてもよい。本明細書に大略記載するとともに図面に示すとおり、本開示の態様は、多種多様な互いに異なる構成で配置、代替、結合、分離、および設計可能であり、これらすべてが本明細書において明示的に考慮されるものと容易に了解されることになる。
【0010】
本発明の実施形態は、エリア中の物体、物体の動き、または物体の移動の検出、測定、および/または追跡を行うシステムおよび方法に関する。実施形態では、新規の手法を用いて、高精度測距法を実行する機器を用いることによって物体または物体の動きを検出する。これらの方法では、一例として、到来角、時間差、および/または位相差のうちの1つまたは複数を用いることによって、波伝搬の変化を検出する。この波伝搬の変化によって、物体の位置および物体の移動を決定可能である。有利には、波伝搬と干渉する物体の位置および移動も決定可能である。
【0011】
直接的な見通しが得られない過密エリアまたはジャングルもしくは景観地等の場所では、物体を検出するのが困難となる場合が多い。本発明の実施形態によれば、2つの機器(たとえば、無線機)が通信して両者間の有効経路距離を測定可能である限り、2つの無線機の経路に入り込んだ物体を迂回するように無線信号が進むべき距離の増加を測定することによって、経路中の当該新たな物体を検出することができる。言い換えると、有効経路距離の変化は、2つの無線機間の経路に入った物体を示す。
【0012】
従来の方法では、信号強度またはリンク品質指標を使用するが、信号強度は屈折によって大きくなったり、物体の経路または位置に応じて小さくなったりするためこれらの方法は不確かである。また、従来の機器では、エコー、チャープ、周波数変調(FM)、またはドップラーレーダからの飛行時間を用いて、物体または物体の動きを検出する。一部の従来機器では、可動アンテナまたはフェーズドアレイアンテナを用いて物体を検出する。従来機器では、アンテナ給電装置中の信号を組み合わせて、複数の無線経路を同時に記録するか、または複数の無線機を使用する。
【0013】
本発明の実施形態では、機器(たとえば、無線等の電磁信号のような信号を送信および/または受信可能な機器)または一対の機器および多くのアンテナのアレイから一度に1つのアンテナを選択する低コストスイッチを使用して、物体および/または物体の動きを検出することができる。実施形態には安定したシステムクロックが含まれ、アンテナ間の位相を互いに異なる時間に測定可能であるが、これは、複数の無線経路または複数の無線機を使用する従来のユニットとは異なる。有利には、本発明の実施形態は大幅に低いコストで実現可能である。
【0014】
本発明の実施形態では、一例として特許文献1に記載の高精度な測距法を用いて物体または物体の動きを検出する新規の手法を使用するが、当該特許については、そのすべての内容を本明細書に参照によって援用する。一実施形態においては、狭帯域信号の到来角、時間差、および/または位相差を探索して波伝搬の変化を検出する測距法が採用されるようになっていてもよい。当該伝搬と干渉する物体の位置および移動を決定可能である。高分解能伝搬経路長測定を採用することによって、従来の問題を克服するとともに、精度を大幅に向上させることができる。
【0015】
一実施形態では、単一の無線機と、多くのアレイから一度に1つのアンテナを選択する低コストスイッチとを使用する。これが可能であるのは、互いに数ヘルツ内の正確に同期したクロックをシステムが備えるためである。システムクロックが安定していることから、互いに異なる時間にアンテナ間の位相を測定して、従来のユニットと同じ情報をより低コストに得ることができる。この安定によって、ミリメートルレベルの超高分解能も可能となる。
【0016】
以下の説明では、互いに異なるプラットフォーム構成の実施形態を代表する本発明の実施形態を示す。システムは、検出能力、コスト、および複雑性に関して、さまざまな特性を示していてもよい。従来のシステムとは対照的に、実施形態では、電磁波伝搬との干渉を検出する新たな方法を可能にする高分解能経路長測定を提供する。
【0017】
図1は、2つの無線機を具備する測距システムの一例を示している。測距システム10は、測距用途のみならず、物体の存在および物体の動きを検出可能なレーダシステムとしても使用可能である。各無線機は単一のアンテナを具備するものの、実施形態では、測距システム10の各無線機に他の付加的なアンテナも考えられる。図1は、無線機間の信号の有効経路が互いに異なる周波数で異なっていてもよいことをさらに示している。図1は2つの無線機を示しているが、本発明の実施形態は、複数の無線機を備えるように構成可能である。たとえば、複数の無線機を具備する測距システムの互いに異なる無線機対がそれぞれ、特定の周波数を使用することも可能である。また、或る無線機が互いに異なる周波数を用いてさまざまな無線機と通信するようにしてもよい。
【0018】
図1は、有効経路110(たとえば、一例としての視程)を介して通信する第1無線機100および第2無線機102を具備するシステムを示している。第1および第2無線機100および102は、特許文献1に記載されているような高精度の測距を実行可能であり、位相測定能力を有すが、当該特許については、そのすべての内容を本明細書に参照によって援用する。無線機の一方(たとえば、第2無線機102)は、高精度・高安定の制御可能な発振器を具備する。本例においては、第1無線機100がマスターであり、第1無線機100は局部発振器の周波数よりも高い周波数で狭帯域無線信号を送信する。これは、一例において、第1無線機100に具備されたフェーズロックループ(PLL)および電圧制御発振器(VCO)を用いることによって実現される(第2無線機102が同様に構成されていてもよい)。この高周波信号は、第2ノードすなわち第2無線機102に送られる。第2無線機102は、そのPLLおよびVCOを用いて、高周波信号に同調する。また、第2無線機102は、その制御可能な高安定局部発振器を入力信号に合わせて調整するようにしてもよい。このように、超高度同期システムが実現される。
【0019】
高周波は、高い精度で局部発振器を調整するのに役立つ。有利には、高周波での低分解能位相測定を採用可能であり、PLLの使用によって低周波クロック水晶と関連付け可能である。
たとえば、16MHzという低周波と、2.4GHzという高周波とを仮定する。これは、150という倍率を与える。第2ユニット(たとえば、第2無線機102)が2.4GHz信号を使用して、その局部16MHz信号を調節することによって、第1ノードすなわち第1無線機100の16MHz信号との位相コヒーレンスを実現している場合には、極めて高い同期安定性を実現するのに、2.4GHz信号での低分解能位相測定ユニットで十分である。たとえば、2.4GHz信号での10°位相誤差が15msごとに修正されるものと仮定する。これは、15msごとに1/15°の修正すなわち1秒当たり4.4°の誤差(0.012222Hz)の絶対同期安定性に対応する。これは、764ppt(パーツ/トリリオン、一兆分の幾らか)という同期安定性に等しい。
【0020】
第2無線機102は、第1ノードすなわち第1無線機100に狭帯域信号を送り返す。高度同期発振器のため、この第2無線機102は、ほぼ完璧な能動反射器として作用するとともに、入力無線波が単に第1無線機100へと跳ね返されたように見える。そして、第1ノードすなわち第1無線機100は、その局部高周波信号と入力高周波信号との差を測定することができる。この位相の差が経路長に相当することになる。
【0021】
物体(たとえば、物体108)が経路110を通過した場合には、経路110が変化する。言い換えると、第1無線機100と第2無線機102との間の無線波または送信が物体108を迂回するため、経路110の長さが距離的に変化する。第1および第2無線機100および102が正確な範囲または距離を検出するように構成されていることから、距離の変化を検出できる。距離の変化は、新たな物体(物体108)の存在として解釈され得る。
【0022】
また、距離のピーク変化およびピーク変化の実現に要する時間を見ることによって、物体108のサイズおよび/または速度を測定可能である。ピークが干渉物体のサイズを反映する一方、ピークまでの時間が物体の速度と相関する。
【0023】
さらに、2つ以上の周波数を用いることによって、互いに異なる周波数での互いに異なる伝搬特性によって、物体108のサイズをすばやく推定することができる。たとえば、2.4GHz信号と比較して、900MHz信号は、侵入物体108を互いに異なるように迂回することになる。高安定局部発振器およびほぼ完璧な能動反射器によって、この経路の差を測定可能であるため、物体108のサイズを決定することができる。このように、第1無線機100は、第1周波数の第1信号104および第2周波数の第2信号106を発することができる。上述の通り、第2無線機102は、これらの周波数を効果的に反射することができる。こうして、物体108のサイズおよび物体の速度を決定することができる。
【0024】
上述の通り、伝送経路110の距離の変化が検出された場合に、物体の存在を決定することができる。また、サイズおよび/または速度を検出可能である。
【0025】
図2は、レーダシステムとして効果的に動作可能な測距システム10で、互いに異なる種類の物体を検出する一例を示している。レーダシステムは、特定のエリアに関して構成可能であり、当該エリアにおいて(たとえば、エリアの境界上または内側において)、物体およびそれぞれの動きを識別および追跡できるように無線機を配置可能である。図2は、テフロン(登録商標)物体202、スチール物体204、および人腕物体206を含む互いに異なる物体を示している。物体202、204、および206はそれぞれ、ノード同士すなわち第1および第2無線機100および102の経路中へと移動した。
【0026】
測定された位相および経路距離の変化を図3に示す。図3は、第1無線機100および第2無線機102等の2つの測距ノードの経路と交差する3つの互いに異なる材料(または、互いに異なる材料の物体)の測定結果300を示している。これらの材料は、経路内にしばらく置いた後、再び取り除いた。互いに異なる物体に対する互いに異なる経路変化が示されるとともに、サイズを含む互いに異なる材料特性に対応している。
【0027】
この「2個無線機」システムの一実施形態を境界制御に使用することで、多数のこれら2個無線機システムをエリア周りに配置することによって、特定のエリアを保護することが可能であり、各リンクが保護対象のエリアの境界を規定する。これら多数の2個無線機システムによって設定された経路のいずれか1つを異物が通過した場合には、経路の破断位置および物体の大きさを識別する警報を発することができる。また、無線機が互いに異なる周波数を使用できることによって、境界制御の能力も高められる。一対の無線機を備え、各無線機が2つ以上の無線機対に属し得る各リンクは、同じ周波数を使用するようにしてもよいし、互いに異なる周波数を使用するようにしてもよい。
【0028】
図4Aは、物体の有無および物体が電磁波経路と交差する場所を検出するマルチアンテナシステムの一例を示している。図4Aは、2つの無線機(第1ノード422および第2ノード432)間で確立され得る電磁波経路420を示している。第1ノード422は、2つ以上のアンテナ(第1および第2アンテナ424および426として示す)を具備していてもよい。第2ノード432は、2つ以上のアンテナ(第3および第4アンテナ428および430として示す)を具備していてもよい。これらのアンテナは、空間中で任意の距離だけ分離されていてもよく、この距離によって、角度分解能および検出角度幅が決まることになる。一例においては、この距離が波長を2で除したものであり(λ/2)、これによって、180°の検出角度が与えられる。別の例において、この距離は、検出中の物体のサイズと関連付けられていてもよい。たとえば、この距離は、検出対象の物体のサイズの半分であってもよい。
【0029】
第1および第2ノード422および432は、上述の通り高分解能測距に関与していてもよく、また、アンテナを切り替えるようにしてもよい。その結果、複数のRF経路または複数の電磁経路を確立および測定または監視することができる。電磁波経路420は、第1、第2、第3、および第4経路438、440、442、および444を含み得る。第1経路438は、第1および第4アンテナ424とアンテナ430との間に確立されている。第2経路440は、第2および第3アンテナ426および428間に確立されている。第3経路442は、第1および第3アンテナ424および428間にある。第4経路444は、第2および第4アンテナ426および430間にある。
【0030】
複数の経路を確立することによって、物体の追跡または物体の動きの追跡の能力がさらに高くなっている。たとえば、第1物体434または第2物体436が2つのノード間で交差した場合には、第1および第2ノード422および432間のさまざまな経路420が時間とともに異なる距離変化を示すことになる。たとえば、第1および第2物体434および436は、下方から経路420に進入した場合、さまざまな経路に対して互いに異なる影響を及ぼすことになる。たとえば、第1物体434は、第1経路438の前に第2経路440を介して検出される一方、第2物体436は、第2経路440の前に第1経路438によって検出される。任意所与のシステムにおけるノードの配置を把握可能であることから、第1および第2ノード422および432間で物体が経路420と交差する位置を推測することができる。
【0031】
たとえば、第2物体436の存在は、第4経路444の変化が検出された場合に検出されるようになっていてもよい。次に、第2経路440の代わりに第1経路438の変化が検出された場合には、第1および第2ノード422および432に対する第2物体436の場所を推測可能である。電磁波の性質によってアンテナが比較的近くで離隔していても物体の場所を推測することができる。
【0032】
この1次元位置特定の関連事項は、たとえば境界警報システムにおいて使用可能であり、物体が線または境界と交差したことのみならず、交差した境界の位置を把握するのに有用である。このことは、ノード間の距離が大きい場合に特に重要である。
【0033】
図4Aに示す「2個ノード」シナリオの拡張は、「2+個ノード」シナリオであって、すべてのノードが互いに、高分解能測距に関与する。ここで、信号の強度および減衰の変化を見るだけではなく、RF経路長の変化によって、交差距離によって観測エリア内の物体を位置特定することができる。
【0034】
別の例において、測距システムは、複数のアンテナを備えた単一の無線機と、単一の照射器とを具備していてもよい。また、位相測定能力および複数のアンテナを備えた1つの受信無線機(または、送受信機)を、基地局が具備していてもよい。たとえば、図4Bは、1つの受信無線機(または、送受信機)402と複数のアンテナ404とを備える、基地局402を示している。複数のアンテナ404は、アンテナスイッチ406のネットワークを用いて無線機402に接続されている。本例において、一実施形態においては、無線機402を一度に複数のアンテナ404のうちの1つに接続可能であるものの、スイッチ406は一度に2つ以上のアンテナを無線機に接続するように構成されていてもよい。照射器408と称する第2ユニットは、送信無線機(または、送受信機)を具備し、1つのアンテナ410だけを要する。第2ユニットすなわち照射器408は、環境400を照らす(イルミネートする)狭帯域信号を送り出す。
【0035】
上述の通り、局部クロックの高い安定性のため、基地局402は、互いに異なるアンテナ404を切り替えて、互いに異なる受信信号間の差を測定することができる。マイクロコントローラユニット(たとえば、処理装置)を用いることによって、基地局402は、これらの信号を再結合して、仮想的な可動アンテナを構成することができる。この可動アンテナは、信号が照射器408から基地局402までに取る互いに異なる第1、第2経路413、414の「マッピング」に使用可能であり、本質的には、信号強度対角度マップが生成される。第1物体411または第2物体412のような物体は、照射器408からの信号を、基地局402に跳ね返す。そして、仮想的な可動アンテナは、第1物体411の方向に一層高い信号強度を与えるとともに、第2物体412の方向に別の信号強度を与えることになる。これらの方向におけるこの信号強度の増加は物体を示しているため、物体に対する角度を決定可能である。物体の検出のほか、移動の速度および/または方向についても、決定および追跡可能である。一例においては、物体の履歴をメモリに格納することも可能である。
【0036】
物体の距離は、第1および第2経路413および414の経路長を測定することによって求めることができる。経路長は、可動アンテナを使用し、高精度RF測距を採用することによって決定可能である。照射器408、基地局402の場所、および検出中の物体に対する角度を把握することで、経路長が与えられた場所を求めることによって、物体を三角測量することができる。この場所は、必ずしも一意ではなく、ミラー解が存在していてもよい。複数の基地局の追加または検出エリアの制限によって、これらの副次的な場所を決定することで、物体の場所を一意となすことができる。
【0037】
このシステムは、経時的な物体の場所を測定することによって、物体をさらに追跡することができる。第1物体411のみが存在し、基地局402が前述の方法で物体を位置特定したシーンを仮定する。一定時間の後、第1物体411は、第2物体412の場所へ移動する。ここで、基地局402は、過去の角度からの信号強度が消失しているため、第1物体411がもはや、その過去の場所には存在しないものの、今度は第2経路414の角度からのより強い信号が存在していることを発見することになる。したがって、第1物体411は、第1場所411から第2場所412に移動したものとして追跡されている。一例においては、サイズを測定することによって、物体の同一性を決定することができる。
【0038】
また、図4Aおよび/または図4Bに示す測距またはレーダシステムは、距離(上述の例と同様に位相を使用)および方向(角度)を求めるのに使用可能である。一例においては、2つ以上の基地局402を使用可能である。この場合には、方向(角度)測定を用いる場合にも2つ以上の基地局を使用可能であり、方向(角度)測定の使用によって、送信ノードの場所を三角測量可能である。
【0039】
また、無線機は、互いに異なる周波数にホッピングすることで、伝搬特性の差を利用することも可能である。無線機408は、互いに異なる周波数にホッピングすることで、伝搬特性の差を利用可能である。
【0040】
従来のレーダシステムは、RFチャープまたは標準的なFMレーダを採用することで、受動RF反射物体を検出する。実施形態では、複数の周波数にわたる位相の変化を観測して周波数ホッピング高分解能測距システムを使用することによって、同様の結果を実現するようにしてもよい。これは、高周波ホッピング高分解能測距システムを用いたレーダシステムを提供する。
【0041】
受動RF反射成分の検出には、測距システムにおけるマルチパス成分の検出を含む。2つのシステム間の距離を測定することが目的の場合には、距離の正確な測定に影響を及ぼすため、マルチパスは望ましくない。ただし、マルチパスは、互いに異なる場所のRF反射物体に由来するため、新たな経路長を導入する。送信機および受信機の場所が(たとえば、実地調査またはRF位置特定システムの使用によって)既知である場合、マルチパスの変化は、RF反射物体の移動を示すため、当該システムが能動的な個人用レーダシステムになる。
【0042】
個人用レーダシステムは、高分解能測距に関与する2つ以上の送受信対を含んでいてもよい。一例において、送信機および受信機は、1つ(以上)の狭帯域キャリア周波数を用いてそれぞれのクロックを同期させた後、1つまたは複数の副次的な非連続周波数キャリアをホッピングする。互いに異なる周波数キャリアが互いに異なる波長を有することから、受信機は、互いに異なる周波数にわたって位相の変化を測定することになる。また、マルチパスは、互いに異なる周波数に対して互いに異なる影響を及ぼすことになる。ここで、受信ノードは、測定された位相に高速フーリエ変換(FFT)を適用することによって、位相領域から時間領域プロットへと移行可能である。ここで、互いに異なるマルチパス成分は、FFTの結果において互いに異なるピークとして現れることになる。1つの送信機および1つの受信機のみを備えたシステムは、互いに異なるマルチパス長を記録することによって、環境の変化をマッピングすることができるとともに、新たな物体が環境に進入したか、環境から離れたかを検出することができる。
【0043】
いくつかの送受信対の結果を組み合わせるとともに、各対の場所を把握することによって、反射器の実際の場所を三角測量可能となる。より多くのノード対が存在する場合には、三角測量がより良く作用する。
【0044】
図5は、測距法を実行する方法を示している。測距法の例としては、物体までの距離の決定、物体の動きの追跡、物体のサイズの決定、システム中の送信機の場所の識別、境界の設定、エリア中のレーダの実行等、またはこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
本明細書に記載のシステムおよび方法では、複数の無線機信号と、これら無線機間の伝搬経路とを使用することができる。一方の無線機をもう一方の無線機と同期させることによって、高精度な測距が実現され、検出経路距離の変化は、物体の存在を示し得る。
【0046】
方法500は、ボックス502で信号を送信することによって開始となる。信号は通常、一方の無線機からもう一方の無線機に送信される(複数の無線機は、同様に構成されていてもよい)。この信号によって、2つの無線機は高度な同期が可能となって、ボックス504で同期する。これは、一方の無線機から送信されてもう一方の無線機によって効果的に反射された信号を継続的に同期させる、進行中のプロセスとなり得る。
【0047】
ボックス506では、測定が実行される。これには、物体までの距離の決定、物体の存在の決定、物体のサイズ、速度、および/または方向の決定を含み得る。システムへの付加的な無線機の追加、または単一の無線機へのアンテナの追加が行われると、システムの能力が拡大する。上述の通り、仮想的な可動アンテナを用いて、検出物体の方向を決定することができる。
【0048】
測距システム10は、ネットワークを介してサーバコンピュータに接続可能である。そして、測距システム10によって収集されたデータは単純に、送信され遠隔で解析可能である。
【0049】
図6は、仮想的な可動アンテナの計算のための、マルチアンテナ設定の一例を示している。複数のアンテナは、個人用レーダシステムまたは本明細書に開示の例の能力を拡張し得る。各アンテナで測定された位相を組み合わせることによって、さまざまな方向を指向し得る仮想的な可動アンテナを構成することができる。
【0050】
このようなアンテナアレイの一例を、図6に示す。この構成において、アンテナは、Ant1(0/5.9)、Ant2(5.2/3.0)、Ant3(5.2/-3.0)、Ant4(0/-5.9)の場所にある。アンテナの場所を把握することによって、仮想的なアンテナ方向を確定または決定可能である。たとえば、仮想アンテナは、中心0/0から右側(0°)に集中させることも可能である。予想される信号の波長を所与として、互いに異なる複数のアンテナの予想される位相シフトを計算することができる。図6において、2.5GHzの周波数を仮定すると、位相シフトは、Ant1が0ラジアン、Ant2が2.7ラジアン、Ant3が2.7ラジアン、Ant4が0ラジアンである。
【0051】
これらの値を把握することで、これらの値を高分解能測距動作時に測定された位相から減算可能である。これによって、アンテナは0°方向に効果的に集中する。図7は、結果的な仮想アンテナパターンを示している。
【0052】
物理的に調節されたフェーズドアレイに対する仮想アンテナの利点として、すべての方向を同時に調べることができる。たとえば、45°方向からの信号の「調査」のため(図6参照)、Ant1を2.2ラジアン、Ant2を3.0ラジアン、Ant3を0.8ラジアン、Ant4を-2.2ラジアンとして、位相シフトを計算することができる。また、この信号方向を仮定して、仮想アンテナパターンを調べることによって、図8に示すパターンが得られる。
【0053】
1つのキャリア周波数上で仮想アンテナを使用することによって、互いに異なるマルチパス成分のピーク電力および角度情報が与えられることになる。ただし、高分解能測距を用いて、複数の周波数をホッピングすることによって、ありとあらゆる仮想的なアンテナ方向を指向する前述のFFTを計算することができる。これによって、マルチパス距離に関する付加的な情報が与えられる。
【0054】
各マルチパス成分の角度、電力、および距離を決定可能であることから、複数のアンテナに対するRFスイッチを備えた高分解能測距システムは、従来のシステムを改良する。
【0055】
ここで、互いに異なるアンテナパターン(直線、円、交差、2次元アレイ、3次元立方体等)を備えた多数の互いに異なる受信・送信組み合わせに対して、この技術革新を組み合わせることができる。また、アンテナアレイが送信機にのみ存在し、受信機には単一のアンテナを備えるようにすることもできるし、アンテナアレイが受信機にのみ存在し、送信機には単一のアンテナを備えるようにすることもできる。また、両端でマルチパス成分の角度、距離、および電力情報を計算できるように、協調によってアンテナ切り替えに対応することができる。これら多数のインスタンス化の情報を組み合わせることによって、RF反射物体を位置特定および追跡し得る堅牢なレーダシステムが可能となる。
【0056】
この技術革新の一般的な利点として、スペクトルの他のユーザに対する適合性が挙げられる。周波数ホッピングが連続である必要はなく、ランダムに発生し得ることから、他のユーザは、測距手順の影響を受けることなく、当該スペクトルを同時に使用することができる。また、周波数ホッピングには、特定周波数の著しい干渉を遮断し、それらを回避してホッピング可能であるという利点もある。
【0057】
実施形態は、帯域幅の利用を最小限に抑えつつ、正確な測定結果を与えられる測距システム(統合測距システムを含む)に関する。実施形態は、測定データが生成される期間に、マスターおよびスレーブ機器間の位相および周波数コヒーレンスを正確に確立可能な、能動反射器またはトランスポンダ型無線周波数測距システムを提供する。
【0058】
実施形態は、利用可能な帯域幅の使用を最適化するとともに、チャンネルが関係のない送信に用いられたり、ノイズに悩まされたりするのを回避するため、複数の周波数上の非連続送信を可能とする。
【0059】
実施形態は、互いに異なる周波数の2つの送信間の位相角度差によって決まる波長の一部を足し合わせた整数個の波長を単位として、距離が測定されるバーニア測定のシステムを提供するようにしてもよい。実施形態によれば、いくつかの例において測距計算から、マルチパスデータが除外される。
【0060】
一例において、高分解能能動反射器無線周波数測距システムは、少なくとも2つの無線周波数送受信機(たとえば、機器またはノード)を具備する。マスター機器として作用する送受信機のうちの1つは、スレーブ機器および能動反射器として作用する少なくとも1つの他の指定送受信機に対して、無線周波数信号バーストを送信する。スレーブ機器は、入力信号の位相および周波数を能動的に適合させ、適合した位相および周波数で信号を再送信する。スレーブは、信号をマスターに再送信する前にしばらくの間、受信した位相および周波数データを保持することができる。ネットワーク内において、マスターおよびスレーブの指定が任意であるのは、これらの役割を必要に応じて暫定的に割り当て可能なためである。実際のところ、測距動作を開始する任意の機器がマスター機器であってもよい。各送受信機器またはノードには、一意のアドレスが割り当てられていてもよい。システムが複数のスレーブでマスターをサポートするため、ポイントツーポイント測距のほか、ポイントツーマルチポイント測距も可能である。
【0061】
以下、高分解能能動反射器無線周波数測距システムの動作について説明する。測距を要求する無線信号バーストを、第1機器(作用マスター)が送信する。デフォルトでまたは読み込み距離データパケットの復号化によって、作用マスターが測距を要求している機器であるものと第2機器(作用スレーブ)自体が判定する。肯定判定によって、作用スレーブ機器は、入力搬送波の位相および/または周波数ドリフトを測定することで、それ自体の発振器またはクロックを調整することによって、入力信号との周波数および位相コヒーレンスの共通性を実現する。スレーブユニット内の発振器調整の精度は、複数のパケットを送信することによって向上可能である。一例において、スレーブは、各パケットから位相および周波数データを抽出するか、または、位相情報ユニットを用いて位相および周波数データを決定し、結果の平均値を求める。時間とともに受信されるパケットが多いほど、入力キャリアの位相および周波数の計算ならびに、スレーブの内部クロックまたは発振器の再調整が高精度となる。
【0062】
本発明の一実施形態の場合には、マスターからのランダム入力パケットの位相を測定するとともに、マスターユニットの発振器と位相コヒーレントになるようにスレーブユニットの発振器を調整するため、適応ループが採用される。連続波の送信は必要ない。実際のところ、入力RF信号は、互いに異なる期間中、複数の周波数にわたって複数のパケットを送信することができる。また、本発明の好適な実施形態は、周波数にかかわらず、スレーブユニットの発振器の入力信号との位相コヒーレンスを維持するデルタ・シグマフェーズロックループを包含していてもよい。入力信号情報を処理して再構成することによって、スレーブユニットの発振器の、マスター発振器とのフェーズロックを維持するため、スレーブユニットに搭載されたソフトウェアが用いられる。この特徴によって、周波数ホッピングの実現が容易化され、マスターおよびスレーブユニット間の絶対距離の測定結果を決定するのに用いられる。
【0063】
一実施形態では、熱的に絶縁された基準発振器を採用するが、これは、経時的に高安定である必要もなければ、定格温度で高精度である必要もない。ただし、熱的に絶縁された発振器は、マスターユニットがバースト信号を送り、それに応じたバースト信号を受信するのに要する期間、またはスレーブユニットが信号バーストを受信、解析、および再送信するのに要する期間に等しい短期間にわたって、非常に安定している。発振器をAerogel(登録商標)絶縁層内に封入することによって、熱的に絶縁された水晶発振器を作製可能である。Aerogelは、水晶と事実上同じ膨張係数を有することから、当該用途にとって理想的な絶縁体である。このため、スレーブユニットの場合には、その熱的に絶縁された基準発振器の周波数および位相が調整されて、マスターユニットから受信された搬送波の対応するこれらの特性が適合されるとともに、信号がマスターに再送信される。このプロセスは、熱的に絶縁された基準発振器の如何なる周波数ドリフトも無視できるほどの短期間に生じる。熱的に絶縁された基準発振器(TIRO:thermally-insulated reference oscillator)は、コストおよびエネルギー消費の両観点において、オーブン入り発振器よりも優れている。バッテリ給電機器の場合には、実際に使用しない場合でも安定性を維持するために保温する必要があることから、オーブン入り発振器はあまり実用的ではない。プロトタイプの高分解能能動反射器無線周波数測距システム用に開発された16MHzの熱的に絶縁された基準発振器は、1秒の期間にわたって、100億分の2.5未満のドリフト特性を示している。この種の基準発振器を用いることによって、このシステムは、0.125mmよりも高精度に測距可能である。
【0064】
マスターユニットが、特定の周波数で無線周波数バーストをスレーブユニットに送信した場合には、当該信号がスレーブユニットによって受信され、少なくとも1つの局部発振器信号と混合されてエラー信号が生成され、中央演算処理装置または状態機械から成るデジタル制御システムに供給される。デジタル制御システムからの出力は、基準発振器に供給され、これがデルタ・シグマフェーズロックループを制御すると、デルタ・シグマフェーズロックループが局部発振器を制御する。個々のバーストが短すぎて位相および周波数誤差の正確な決定を生成できないことがあるため、スレーブユニットの基準発振器の最適ロックオンの実現には、いくつかのバーストを要する場合がある。このため、TIROは、フェーズロックループ(PLL)が最初にどのチャンネルに設定されても、その位相情報を基準発振器から導出するように、入力位相および周波数情報を保持する。これによって、TIROは、PLLの位相および周波数を設定する際に、スレーブユニットの送信機および局部発振器の周波数も効果的に設定する。
【0065】
整数分割フェーズロックループに関連して、2つの大きな問題が存在する。第1は、所要変調範囲に対して、十分な帯域幅が低域通過フィルタに割り当てられている場合、周波数発生および周波数変調の両者に対して、ステップ分解能が不十分となる点である。第2は、より小さな周波数ステップが利用される場合、低域通過フィルタでの帯域幅が不十分となる点である。まさしくこれらの問題を解決するため、分割フェーズロックループ(デルタ・シグマフェーズロックループとしても知られる)が開発された。たとえば、本発明の一実施形態において、分割PLLは、16MHz基準発振器の各サイクルに対して、局部発振器の64個のクロックサイクル位相関係(位相差)を生成する。ただし、分割PLLの使用の場合には、生成信号の波形エッジが基準発振器と直接合致しない場合がある。これは特に、有意な距離測定に対して送受信信号間の位相関係の共時性が必須な測距システムにおいて問題となる。また、バーストモード動作もしくは周波数ホッピングが考えられる場合または回路の簡素化および電力消費の最小化のために送受信機能間で局部発振器が共有される場合には、送受信信号間の位相関係をいつでも確立可能であることが必須となる。実施形態では、基準発振器の機能として分割フェーズロックループの分割時間フレームを記録する位相関係カウンタを採用するようにしてもよい。位相関係カウンタは、ブロードキャスト/受信帯域内の任意のチャンネル上の入力バーストについて、絶対位相情報を提供することによって、システムがほぼ瞬時に局部発振器の位相関係を確立または再確立して基準発振器との同期が得られるようにする。短期間の無視できるドリフトとのマスターおよびスレーブ基準発振器の共時性を保証する熱的に絶縁された基準発振器と結合された位相関係カウンタによれば、システムは、基準発振器および信号を受信も送信もしていない場合の位相関係カウンタを除くすべてへの電力をカットすることによって電力消費を最小限に抑えることと、受信および送信の両動作に共通の電圧制御局部発振器を利用することと、同じ周波数の非連続バーストおよび互いに異なる周波数(周波数ホッピング)のバーストの両者に対して、局部発振器と受信信号との間の予測可能な位相関係を維持することと、が可能になる。周波数ホッピングによれば、ノイズの多いチャンネルを回避できるとともに、マルチパス伝送の存在を検出して測距計算から除外できるため、システムの有用性が向上する。周波数ホッピングは、適切な帯域幅が与えられる如何なる無線技術とも併用可能である。
【0066】
実施形態の実現に用いられる無線送受信機は、4相変調(QPM:Quadrature Phase Modulation)を採用するようにしてもよい。すべての変調方式と同様に、QPMは、データ信号に応答して、搬送信号または搬送波(通例、正弦波)の一部を変更することによってデータを運ぶ。QPMの場合には、データ信号を表すようにキャリアの位相が変調される。本発明は、入力データパケットの位相シフトを計算することによって実現可能であるが、QPMデータパケットの位相シフトを復調するとともに、結果データを用いて範囲を計算することによっても実現可能である。
【0067】
バーニア測定技術の採用によって、本発明の距離計算の精度を向上可能である。バーニア測定は、FMレーダシステムにおいて用いられているが、これらのシステムは通常、互いに異なる周波数の2つまたは3つの信号の同時送信に依拠している。一方、実施形態は、ランダムに選択された時間間隔において送信されるランダムに選択されたチャンネル内のランダムに選択された周波数を用いてバーニア測定を実現可能である点において独創的である。これは、スレーブユニットの分割フェーズロックループと関連付けられた位相関係カウンタによって、マスター基準発振器と比較的短期間にわたり同期しているものと考えられるスレーブ基準発振器の機能として、如何なる受信信号の位相関係も確立可能なためである。バーニア測定は、以下のように行われる。送信時点で同相の少なくとも2つの信号が互いに異なる周波数上で送信される。信号間の位相差を測定することによって、距離を粗く測定することができる。測定距離にわたって共通のヌルポイントを共有しないのであれば、2つの周波数で十分である。2信号測定の場合、必要な帯域幅は、2つの信号間の位相差を測定可能な精度によって決まる。測定精度が3°である場合、帯域幅としては、400MHz帯の0.833%が可能であり、これは、3.33MHz幅の帯域または3.33MHz離れた2つのチャンネルである。測定精度が1°である場合、帯域幅としては、同じ帯域の0.277%すなわち1.11MHzが可能である。バーニア測距は、IEEE仕様802.15.4-2006の下、北米において無線パーソナルエリアネットワーク(WPAN)に指定された帯域上で容易に実現可能である。これによって、902~928MHzの帯域幅内において30個のチャンネルが可能となるためである。受信機の分解能が1波長未満である場合には、受信信号の位相を測定可能である。粗い測定によって、送信機からの波長の数が与えられる。受信信号の絶対位相を計算することによって、送信機からの波長の数に波長の一部を追加することで、範囲をより正確に計算することができる。本発明によれば、受信信号の位相を0.1°まで小さく分解可能な無線機を構築することができる。このような無線機によって、狭帯域内の2つの隣接する周波数間の位相差を容易に決定することができる。波長が12cmの帯域では、0.005cmよりも優れた測距の理論分解能が可能である。
【0068】
上述の通り、最初のヌルポイントが発生する距離までは、2つの周波数を測距計算に使用可能である(すなわち、両周波数は再度、ほんの一瞬の間に互いが同相となる)。互いに異なる周波数の2つの無線信号は最終的に、無線源からの或る距離で、互いにヌルとなるため、当該ポイントを越えた測定が不明瞭となる。このため、不明瞭な測定を回避するには、少なくとも3つの周波数が必要である。3番目の周波数およびその他2つの周波数の一方がn分割関係を有していない場合が特に有用である。本発明の測距システムが位相関係カウンタを備えた分割フェーズロックループを利用することから、ランダムな周波数ホッピングを採用可能である。たとえば902~928MHzで動作する場合、本発明は、経時的に、30個のチャンネルのうちの任意の3つ以上をランダムに採用可能である。
【0069】
本発明の主要な利点として、マルチパス伝送による測距の不正確さに対処している点が挙げられる。送信が導体経由またはレーザの使用によって行われる場合には、多周波測距システムが十分に作用するものの、空間を通じた無線送信は一般的に、送信波面が反射して、マルチパス伝送経路となる。送受信点間の直線以外の如何なる経路も、必然的に距離が長くなるため、正確な測距のために正しい位相シフトを与える信号には、より長い距離を進行したことで示す位相シフト量が大きくなった信号が伴うことになる。本発明に従って構成された測距システムは、互いに異なる周波数の少なくとも3つの無線信号を送信して、当該互いに異なる周波数間の距離-位相関係を比較する。本発明の測距システムは、周波数ホッピングの手法を利用して、マルチパスを識別し、最短経路を選択し、最短経路の距離を計算する。これは、ノイズの多いチャンネルを回避するとともに、所与の時間に利用可能な帯域幅の小さな部分のみを利用するためにランダムに選択可能な少なくとも3つの周波数について、測定位相および振幅対周波数のテーブルを構築することによって、独創的に達成される。アナログ-デジタル変換器がテーブルに対して、位相-振幅データを周波数順に入力する。このデータは、好ましくはコンピュータシステムを用いて計算を実行することによって、フーリエ変換される。結果としてのビート周波数ピークは、さまざまな検出経路に対応する。ビート周波数が最低の経路は、システムのマスターおよびスレーブユニット間の最短かつ実際の距離である。デジタル信号処理を用いることによって、フーリエ変換データに逆フーリエ変換を実行した場合には、逆フーリエ変換データの使用によって、互いに異なる周波数の位相関係の変化を計算するとともに、マスターおよびスレーブユニットが互いに移動した場合の複数の反射経路による歪みを修正することができる。
【0070】
バーニア距離測定ならびにマルチパス検出および修正作業は、協調して行われる。このプロセスは、以下の一連のステップを用いて実行される。第1に、少なくとも周波数f1、f2、およびf3を含む周波数ホッピングを使用して、さまざまな周波数対間(すなわち、f1とf2、f1とf3、f2とf3間)の位相差が決定される。第2に、マルチパス修正の実行によって、マルチパスデータを除外するとともに、最短経路についてマスターおよびスレーブユニットのアンテナを分離する周波数のうちの1つで整数個の波長を決定する。第3に、システムは、位相蓄積モードに切り替わって、各受信周波数の絶対位相を計算することによって、正確な測定のために整数個の波長の距離に追加する必要がある部分波長の計算のためのデータを提供する。これによって、本発明の測距システムは、帯域幅の利用を抑えた高分解能測距を可能にする。最初の距離計算には複数の周波数の送信が必要であるものの、測定計算の間に物体が半波長以下しか移動していない限り、単一の周波数で追跡可能である。たとえばゲームシステムにおいては、位置取得が実現された後のアンテナ対間での単一の周波数の使用によって、演算オーバヘッドが大幅に抑えられることになる。
【0071】
本発明の独創性の基は、周波数にかかわらないマスターおよびスレーブユニットの基準発振器の同期と、熱的に絶縁された基準発振器およびフェーズロックループの使用による全周波数でのマスターおよびスレーブユニット間の位相コヒーレンスの確立および維持にある。また、周波数ホッピングの使用によって、低ノイズチャンネルのランダムな選択のみならず、マルチパスデータの除外も可能となるため、最小限の所要帯域幅で高分解能測定がもたらされる。
【0072】
当業者であれば、本発明の基本原理から逸脱することなく、上記実施形態の詳細に対する多くの変更が可能であることが了解されるであろう。したがって、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によって決まるものとする。
【0073】
例示的な一実施形態においては、コンピュータ可読媒体に格納されたコンピュータ可読命令として、本明細書に記載の動作、プロセス等のいずれかを実装可能である。無線機は、信号を処理するとともに、本明細書に記載の測定を実行するためのプロセッサおよび/またはメモリを具備していてもよい。コンピュータ可読命令は、移動ユニット、ネットワーク要素、および/またはその他任意のコンピュータ機器のプロセッサによって実行可能である。
【0074】
上記詳細な説明は、ブロック図、フローチャート、および/または例を用いて、機器および/またはプロセスの種々実施形態を示している。このようなブロック図、フローチャート、および/または例が1つまたは複数の機能および/または動作を含む限り、当業者であれば、多様なハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、または実質的にはこれらの任意の組み合わせによって、上記のようなブロック図、フローチャート、または例の中の各機能および/または動作を個別的および/または集合的に実装可能であることが了解されるであろう。当業者であれば、1つまたは複数のコンピュータ上で動作する1つまたは複数のコンピュータプログラム(たとえば、1つまたは複数のコンピュータシステム上で動作する1つまたは複数のプログラム)、1つまたは複数のプロセッサ上で動作する1つまたは複数のプログラム(たとえば、1つまたは複数のマイクロプロセッサ上で動作する1つまたは複数のプログラム)、ファームウェア、あるいは実質的にはこれらの任意の組み合わせとして、本明細書に開示の実施形態のいくつかの態様の全部または一部を集積回路において同等に実装可能であることと、回路の設計ならびに/またはソフトウェアおよび/もしくはファームウェアのコードの記述が本開示に照らして十分に、当業者の技量の範囲内となることが認識されよう。また、当業者には当然のことながら、本明細書に記載の主題のメカニズムは、多様な形態のプログラム製品として配布可能であり、また、その配布を実際に実行するのに用いられる特定種類の信号保持媒体にかかわらず、本明細書に記載の主題の例示的な一実施形態が当てはまる。信号保持媒体の例としては、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクドライブ、CD、DVD、デジタルテープ、コンピュータメモリ等の記録可能型媒体、ならびにデジタルおよび/もしくはアナログ通信媒体(たとえば、光ファイバケーブル、導波路、有線通信リンク、無線通信リンク)等の伝送型媒体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0075】
当業者であれば、本明細書に示すように機器および/またはプロセスを記述した後、技術的手法によって、このように記述された機器および/またはプロセスをデータ処理システムに統合するのが当技術分野においては一般的であることが認識されよう。すなわち、適当な実験量によって、本明細書に記載の機器および/またはプロセスの少なくとも一部をデータ処理システムに統合することができる。当業者であれば、代表的なデータ処理システムとしては一般的に、システムユニットハウジング、ビデオ表示装置、揮発性および不揮発性メモリ等のメモリ、マイクロプロセッサおよびデジタルシグナルプロセッサ等のプロセッサ、オペレーティングシステム、ドライバ、グラフィカルユーザインターフェース、およびアプリケーションプログラム等の計算エンティティ、タッチパッドもしくはスクリーン等の1つもしくは複数の相互作用機器、ならびに/またはフィードバックループおよび制御モータ(たとえば、位置および/もしくは速度を検知するフィードバック、コンポーネントおよび/もしくは量を移動および/もしくは調整する制御モータ)を含む制御システムのうちの1つまたは複数が挙げられることが認識されよう。データコンピューティング/通信および/またはネットワークコンピューティング/通信システムにおいて通常見られるコンポーネント等、任意適当な市販のコンポーネントを利用することによって、代表的なデータ処理システムが実装されるようになっていてもよい。
【0076】
以下、フェーズドアレイアンテナが用いられる実施形態900A、900B、および1000をそれぞれ参照して、図9A図9B、および図10を論じる。実施形態900Aおよび900Bにおいては、送信機901に複数の第1~第3アンテナ908A~908Cが設けられている。これらのアンテナは、フェーズドアレイを構成していると考えられる。送信機901は、第1~第3スイッチ904A~904Cを制御するCPU907を用いて、第1~第3アンテナ908A~908Cの動作を制御するように構成されていてもよい。送信機CPU907は、任意所与の時間にオンとなるアンテナを制御するようにしてもよく、また、これらのアンテナが使用する周波数を制御するようにしてもよい。場合によっては、互いに異なる周波数を用いることによって、送信機901が互いに異なる時間に互いに異なるアンテナを初期化するようにしてもよい(すなわち、送信機が周波数ホッピングを実施するようにしてもよい)。これについては、以下でより詳しく説明する。
【0077】
従来、無線信号および物体の追跡には、フェーズドアレイアンテナシステムが用いられている。これらのシステムは、送信または受信用にアンテナをビーム形成するように組み合わされたアンテナのパターンを使用する。受信モードにおいては、デジタルまたはRF領域において組み合わせを行うことができる。デジタル領域またはコンピュータシステムにおいて組み合わせが行われる場合には、同じデータを用いて多くの互いに異なる組み合わせを計算することによって、多くの仮想的なアンテナ構成を同時に処理可能である。このようなシステムの一例が超大型干渉電波望遠鏡群(the Very Large Array in New Mexico)であり、電波天体観測として用いられている。同じアレイから複数の指向性ビームを送信するのにも、同種のプロセスを使用可能である。これによって、同じアンテナから、互いに異なるデータを有する互いに異なる場所にエネルギーを向けることができる。
【0078】
このような種類のシステムが建物内または複数の物体の周りで用いられると、無線波の反射が誤差を生じるため、無線源の場所を見出すのが困難となる可能性がある。これによって、屋内位置特定システムおよびリアルタイム位置特定システムの場合、信号を反射する物体が複数存在するかが問題となっている。本明細書に記載の実施形態は、位置特定システムに対する直接信号および反射信号を識別するさまざまな方法を記述している。
【0079】
本発明の実施形態は、低コストの無線周波数方向および/または到来角探索のためのシステムを提供する。このシステムは、位相角技術および周波数ホッピングを使用して、高精度な方向および到来角測定結果を提供する。本発明の実施形態では、それぞれがさまざまなアンテナを有する2つ以上の送受信機を使用する。本明細書に受信機および送信機を記載しているものの、当業者であれば、これらの受信機および送信機として単機能機器も可能であるし、二元機能送受信機も可能であることが認識されよう。いくつかの実施形態においては、送信機が複数のアンテナを有し、受信機が1つのアンテナを有する(たとえば、図9Aおよび図9B)。他の実施形態においては、送信機が1つのアンテナを有し、受信機が複数のアンテナを有する(たとえば、図10)。到来角は、1つのアンテナから複数の受信アンテナへの送信、または複数の送信アンテナから1つの受信アンテナへの送信によって探索可能である。送信機と受信機との間で信号が送信された場合には、フェーズドアレイまたは位相差技術の使用によって、到来角を含めて、無線源(すなわち、送信機)に対する方向または角度を探索するようにしてもよい。
【0080】
本発明の実施形態は、上記に対して、RF送信の周波数の変更およびその後の位相測定の繰り返しを追加する。結果としての位相データは、位相および利得が正規化された後、過去の測定からのフェーズドアレイデータに追加される。互いに異なる周波数が合計されると、高速移動の位相データがフィルタリングされ、より長い信号経路の影響が抑えられる。これによって、最短経路が主要経路となる。そして、CPU907(または、別のローカルまたはリモートのコンピュータシステム)によって処理されたソフトウェアがこのフィルタリングされた位相データを使用することによって、高精度な到来角を計算する。場合によっては、測定位相を数学的に調整することによって、使用するアンテナの数を減らすことができる。
【0081】
一実施形態においては、第1周波数で第1信号(たとえば、902A)をブロードキャストし、事後の時間に、異なる第2周波数で第2信号(たとえば、902B)をブロードキャストするように構成された2つ以上の第1~第3アンテナ908A~908Cを備えた送信機901を具備する無線システム(たとえば、図9Aの900A)が提供される。無線システム900Aは、送信機901のアンテナからブロードキャストされた第1および第2信号902A/902Bを受信するように構成されたアンテナ903を有する受信機906をさらに具備する。最後に、無線システムは、CPUまたはプログラム可能なマイクロコントローラ等の処理ユニット907を具備する。処理ユニット907は、受信機906で受信された際の第1周波数における第1信号902Aの振幅および位相を測定することと、受信機で受信された際の第2周波数における第2信号902Bの振幅および位相を測定することと、各信号の測定された振幅および位相を用いて、送信機に対する角度または方向を識別することと、を実行するように構成されていてもよい。
【0082】
場合によって、送信機901は、異なる第3周波数で第3信号を送信する第3アンテナ908Cを具備していてもよい。省略記号で示すように、送信機901と併せて、4つ以上のアンテナが用いられるようになっていてもよい。送信機は、CPU907を用いて、制御命令905を第1~第3スイッチ904A~904Cに与えることによって、特定のアンテナを実装または迂回するようにしてもよい。たとえば、場合によっては、第1および第3アンテナ908Aおよび908Cのみが用いられるようになっていてもよいし、他の場合には、第2および第3アンテナ908Bおよび908Cが用いられるようになっていてもよい。任意所与の瞬間において、如何なるアンテナの組み合わせも可能である。同様に、各アンテナの使用によって互いに異なる周波数で送信するようにしてもよく、さらには、各アンテナが互いに異なる時点に互いに異なる周波数でブロードキャストするようにしてもよい。このため、たとえば、第1アンテナ908Aが時点Aにおいて100MHzでブロードキャストし、時点Bにおいて150MHzでブロードキャストし、以下同様であってもよい。本明細書においては、互いに異なる周波数間の変更を周波数ホッピングと称する。周波数ホッピングによれば、システム900Aは、正確な方向および/または到来角測定結果を生成することができる。
【0083】
実施形態900Aにおいては、送信機901がCPU907に対して電気的に接続されている。このCPUは、アンテナの起動およびこれらのアンテナが使用する周波数を制御することができる。図9Bの実施形態900Bにおいて、受信機906は、受信動作を制御するそれ自体のCPU907を有する。たとえば、受信機CPU907は、受信機アンテナ903が起動された場合に制御(905)を行うようにしてもよく、また、調節する1つまたは複数の周波数をさらに制御するようにしてもよい。たとえば、第1時点Aにおいて、受信機アンテナ903は、第1アンテナ908Aからの第1信号902Aの周波数に合わせて調節されるようになっていてもよい。一方、第2時点Bにおいて、受信機アンテナは、第3アンテナ908Cからの第3信号902Cの周波数に合わせて調節されるようになっていてもよい。さらに、受信機アンテナ903は、同じアンテナから互いに異なる周波数の信号を受信するように構成されていてもよい。このため、第1時点Aにおいて、受信機アンテナ903は、第1周波数(たとえば、100MHz)で送信している第2アンテナ908Bからの第2信号902Bに合わせて調節された後、第2時点Bにおいては、第2アンテナ908Bからの異なる第2周波数(たとえば、150MHz)の同じ第2信号902Bに合わせて調節されるようになっていてもよい。このため、送信機901または受信機906は、計算を実行するとともに制御コマンドを発行する関連CPUを有していてもよい。図面には示していないものの、少なくともいくつかの実施形態においては、受信機および送信機の両者が関連する処理ユニットを有していてもよいし、受信機および送信機のいずれもが関連する処理ユニットを有していなくてもよいことが了解されるであろう。互いに異なる実施形態では、互いに異なる電子コンポーネントまたは機器が必要となる可能性がある。実際、少なくとも場合によっては、CPU907がデータストアと通信可能に接続されることで、測定された方向または到来角と関連する情報をCPUが格納可能であってもよい。
【0084】
図10の実施形態1000において、受信機906は、送信機901からの互いに異なる信号を受信可能な複数の第1~第3アンテナ903A~903Cを有する。たとえば、単一のアンテナ908を備えた送信機901が、互いに異なる時点に第1、第2、および/または第3信号902A、902B、および/または902Cを送信するようにしてもよい。送信機901は、互いに異なる時点に互いに異なる周波数を用いてこれらの信号を送信するようにしてもよい。上記実施形態900Aおよび900Bと同様に、実施形態1000においても、周波数ホッピングの使用によって、信号源に対する角度または方向を決定するようにしてもよい。たとえば、図11に示すように、周波数ホッピングを用いて受信機906によって到来角φ(1110A)が決定されるようになっていてもよい。受信機906は、第1、第2、および第3アンテナ908A、908B、および908C(および/または、可能性として他のアンテナ)を切り替えて、各信号の位相および振幅を測定する。
【0085】
このように、受信機906は、各信号を受信して、その位相および振幅を測定する。到来角等の角度の探索には、位相差技術が用いられるようになっていてもよい。たとえば、受信機906は、第1信号902Aを受信し、それ自体(すなわち、固定基準点)および信号源(たとえば、第1アンテナ908A)またはそれ自体および別の信号源(たとえば、第2アンテナ908B)に対する角度φ(1110A)を決定するようにしてもよい。同様に、受信機906は、第2信号902Bを受信し、それ自体および信号源(たとえば、第2アンテナ908B)またはそれ自体および別の信号源(たとえば、第3アンテナ908C)に対する角度φ’(1110B)を決定するようにしてもよい。位相および振幅の各測定結果は、当該信号の決定された到来角と併せて、データストアに格納されていてもよい。これら最初の位相および振幅測定ならびに角度決定がなされた後、システムは、RF信号の周波数を変更して、位相および振幅測定を繰り返すようにしてもよい。また、角度計算結果の再処理によって、決定された角度の微調節または過去の計算結果の誤差修正を行うようにしてもよい。
【0086】
図11においては3つのアンテナを有するものとして示しているが、送信機(Tx)は、実質的に任意数のアンテナを有していてもよい。アンテナはそれぞれ、ブロードキャストを同じ周波数で行うようにしてもよいし、互いに異なる周波数で行うようにしてもよい。場合によって、アンテナ(たとえば、第3アンテナ908C)は、変化する周波数で信号をブロードキャストするようにしてもよい。たとえば、図12に示すように、第1周波数(1201A)および第2周波数(1201B)に対して第1、第2、第3、・・・、第nアンテナ(Ant1,2,3,・・・,n)を示している。第1および第2チャート1202Aおよび1202Bは、当該周波数で現在送信しているアンテナを示している。このため、図12に見られるように、第2アンテナは第1周波数(1201A)でブロードキャスト(または、受信)を行っており、第3アンテナは第2周波数(1201B)で現在ブロードキャスト(または、受信)を行っている。このチャートは、省略記号で示すように、任意数の周波数を示すように拡張可能である。さらに、1つのアンテナだけが所与の時間に或る周波数を使用するものとして示しているが、同じ周波数での同時ブロードキャスト/受信に、より多い複数のアンテナが用いられるようになっていてもよいことが認識されよう。さらに、周波数ホッピングが用いられる場合、第1および第2チャート1202Aおよび1202Bは、或る瞬間にどのアンテナがどの周波数を使用しているかを示す。周波数は変化する可能性があるため、チャートは、その変化を反映させるように更新されることになる。たとえば、図9A図9BのCPU907が第1周波数でのブロードキャスト/受信を停止して、第2周波数に切り替えるよう第2アンテナに命令した場合、1202Aの「第2アンテナ」(Ant2)ボックスから「×」が除去されて、1202Bの「第2アンテナ」(Ant2)に追加されることになる。このため、第1および第2チャート1202A/1202Bは、時間とともに更新されるようになっていてもよく、また、任意所与の一時点のアンテナおよび周波数の使用を示していてもよい。
【0087】
各信号が受信されると、受信機(またはより具体的に、受信機906のCPU907)は、さまざまな周波数でブロードキャストされた信号それぞれの振幅および位相を測定する。振幅および位相の測定によって、CPU907は、送信機に対する角度および/または方向を識別することができる。このため、図11に示すように、受信機は、各第1、第2、および第3アンテナ908A、908B、および908Cから、第1、第2、第3信号902A、902B、902Cを受信するようにしてもよい。CPU907は、第1、第2、第3信号902A、902B、902Cの振幅および位相を計算して、計算結果を格納するようにしてもよい。また、CPU907は、第1、第2、第3信号902A、902B、902Cの位相を決定して、同様に結果を格納するようにしてもよい。3つの信号それぞれの振幅および位相の決定によって、送信機上の個々のアンテナまたは送信機全体に対する方向を決定するようにしてもよい。受信機は、測定および計算した値を用いて、受信機アンテナ903から第1送信機アンテナ908Aに対する角度φ(1110A)を識別するようにしてもよい。また、受信機は、測定および計算した値を用いて、受信機アンテナ903から第3送信機アンテナ908Cに対する角度φ’(1110B)を識別するようにしてもよい。同様に、第2アンテナ908Bに対する角度または方向が個別に決定されるようになっていてもよいし、第1および第3信号902Aおよび902Cに対して決定されるようになっていてもよい。
【0088】
いくつかの実施形態において、処理ユニット(たとえば、907)は、互いに異なる周波数を用いて誤差を修正するように構成されていてもよい。たとえば、図13に示すように、各周波数(1302)に対してアンテナ(1301)を1、2、3、Nと示すことができる。これによって、各アンテナは、或る期間に第1周波数を使用し、或る期間に第2周波数を使用するなどしてもよい。各アンテナが周波数間でホッピングする場合、CPU907は、受信信号それぞれからの入力を用いて、方向または到来角決定の誤差を修正するようにしてもよい。このため、時間とともに、信号が互いに異なる周波数で受信されると、振幅および位相測定結果が改善され、各信号の方向および到来角の決定がより正確になる。信号(902A~902C)は、連続ストリームで送信されるようになっていてもよいし、バーストで送信されるようになっていてもよい。たとえば、図9Aの送信機アンテナのうちの少なくとも1つを用いて、RFバーストが受信機906に送信されるようになっていてもよい。
【0089】
上記の追加または代替として、RFバーストは、複数の送信機アンテナによって受信機906に送信されるようになっていてもよい。送信機は、RFバーストを送信する際にアンテナを切り替えるように構成されていてもよい。複数のアンテナからの信号が受信され、振幅および位相が測定されると、信号周波数が互いに異なる周波数に変化する。その後、変化した互いに異なる周波数に基づいて、処理ユニット907によって、送信機に対する角度または方向の次の決定が実行される。このように、複数の送信機アンテナ(たとえば、図9Aおよび図9B)または複数の受信機アンテナ(たとえば、図10)を用いた周波数ホッピングによれば、各信号に対して、振幅および位相の正確な測定結果を決定することができる。そして、システムは、高精度な方向および到来角測定結果を計算することができる。これらの方向および到来角測定結果は、信号干渉を引き起こす複数の物体を含む屋内環境であれ、実質的に如何なる環境でも使用可能である。
【0090】
ここで図14を参照して、無線源(たとえば、送信機)に対する角度または方向を探索する方法1400が提供される。方法1400は、送信機の2つ以上のアンテナから互いに異なる周波数で2つ以上の信号をブロードキャストすることを含む(1410)。このため、図9Aに示すように、送信機901は、第1アンテナ908Aから第1信号902Aを、第2アンテナ908Bから第2信号902Bを、第3アンテナ908Cから第3信号902Cをブロードキャストする。第1~第3信号902A~902Cはそれぞれ、互いに異なる周波数でブロードキャストされるようになっていてもよい。したがって、図9Aの実施形態900Aにおいては、3つの第1~第3アンテナ908A~908Cがそれぞれ3つの互いに異なる周波数で送信されていてもよい。さらに、互いに異なる期間に互いに異なる周波数で送信を行うように、各アンテナが経時的に周波数を変更するようにしてもよい。
【0091】
次に、方法1400は、互いに異なる周波数でブロードキャストされた2つ以上の信号を、受信機で受信することを含む(1420)。受信機906は、さまざまな周波数でブロードキャストされた第1~第3信号902A~902Cを受信した後、受信機で受信された際の各信号の振幅および位相を測定するようにしてもよい(1430)。図9Bに示すように、受信機906は、各受信信号の信号位相および振幅を決定可能なCPU907に接続されていてもよい。信号位相および振幅は、互いに異なる周波数が用いられる場合に、時間とともに変化する可能性がある。2つ以上の信号が互いに異なる周波数で送信されている場合には、これによってCPU907が、無線源(たとえば、送信機901)までの最短経路を決定することができる。たとえば、複数の周波数が受信された場合には、これらの合計によって、高速移動の位相データを識別するようにしてもよい。そして、この位相データがフィルタリングされ、より長い経路の影響が抑えられる。これによって、最短経路が主要経路となる。
【0092】
このように決定された最短経路を用いて、CPU907は、無線源に対する方向または無線源からの到来角を識別または導出することができる。実際、前述の通り、複数の周波数を用いることによって、受信機CPUは、周波数が変化した場合に長い経路ほど位相シフトが高速になるため、どの経路が最短経路であるかを探索することができる。このように、CPUは、互いに異なる周波数で取得された位相および振幅測定結果を用いて、無線源に対する方向および/または到来角を決定するようにしてもよい(1440)。また、さまざまな信号において識別された位相シフトを用いることによって、各角度経路に沿って、送信機までの距離が決定されるようになっていてもよい。以上から、周波数ホッピングを用いて方向および到来角が決定され得るのみならず、測定された位相シフトを用いて無線源までの距離も決定されるようになっていてもよい。
【0093】
いくつかの実施形態において、CPU907は、各信号の位相測定結果にアクセスし、位相および利得に関して各信号を正規化するように構成されていてもよい。この正規化動作を実行した後、CPUは、正規化信号をフェーズドアレイデータ構造に追加するようにしてもよい。フェーズドアレイデータ構造は、過去に格納された測定結果を含んでいてもよく、また、後続の位相測定結果を含んでいてもよい。フェーズドアレイデータ構造は、ローカルまたはリモートのデータストアに格納されていてもよく、また、現在または将来の方向、角度、または距離計算に用いられるようになっていてもよい。場合によって、特定の周波数または特定の組の指定周波数を送信機が用いることによって、フェーズドアレイ中のアンテナの範囲を識別するようにしてもよい。たとえば、信号に高速フーリエ変換を実行することによって、CPU907は、システムによって決定可能な各信号経路の範囲を決定することができる。使用するアンテナが少ない場合、CPUは、少数のアンテナを数学的に補償することによって、依然として、無線源に対する方向または到来角を正確に決定するように構成されていてもよい。
【0094】
別の実施形態においては、無線システムが提供される(たとえば、図10の無線システム1000)。無線システム1000は、特定の時間にわたって第1周波数で第1信号(902A)をブロードキャストし、特定の時間にわたって異なる第2周波数で第2信号(902B)をブロードキャストし、特定の時間にわたって異なる第3周波数で第3信号(902C)をブロードキャストするように構成された送信機アンテナ908を具備する。また、無線システム1000は、第1、第2、および第3信号を受信するように構成された2つ以上の受信機アンテナ(903A~903C)を具備する。さらに、無線システム1000は、アンテナに対する複数の無線経路の角度および距離を探索するように構成されたプロセッサ907を具備する。このように、本実施形態において、CPUは、無線源に対する方向または無線源からの到来角のみならず、無線源までの距離をも決定するように構成されていてもよい。アンテナ908を用いて送信機901によって、無線周波数(RF)バーストが送信される。受信機906は、その複数のアンテナを切り替えて、受信信号の位相および振幅を測定する。
【0095】
互いに異なる時間に互いに異なる周波数で送信された信号を、1つの受信機アンテナが受信するようにしてもよいし、互いに異なる周波数で送信された信号を複数の受信機アンテナそれぞれが同時に受信するようにしてもよい。図10においては、3つの受信機アンテナを示しており、第1受信機903Aが第1信号902Aを受信し、第2受信機903Bが第2信号902Bを受信し、第3受信機903Cが第3信号902Cを受信するが、使用する受信機アンテナの数は、これより多くてもよいし、少なくてもよいことが認識されよう。CPU907は、制御信号905を用いることによって、それぞれが指定時間に動作し、それぞれが指定周波数で受信するように受信機アンテナを制御するようにしてもよい。そして、CPUは、互いに異なる周波数で受信信号を取得し、位相および振幅測定結果を用いて最短経路を決定し、送信機901に対する方向または到来角を識別するようにしてもよい。
【0096】
以上から、当然のことながら、本明細書においては本開示の種々実施形態を例示目的で説明しているに過ぎず、本開示の範囲および主旨から逸脱することなく種々改良が可能である。したがって、本明細書に開示の種々実施形態は、何ら限定を意図したものではなく、以下の特許請求の範囲によって真の範囲および主旨が示される。
図1
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図4A
図4B
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図9B
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