(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】ネブライザ用スペーサ装置
(51)【国際特許分類】
A61M 15/00 20060101AFI20221125BHJP
A61M 13/00 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
A61M15/00 Z
A61M13/00
(21)【出願番号】P 2019556651
(86)(22)【出願日】2018-04-18
(86)【国際出願番号】 AU2018050343
(87)【国際公開番号】W WO2018191775
(87)【国際公開日】2018-10-25
【審査請求日】2021-04-12
(32)【優先日】2017-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518367002
【氏名又は名称】インスパイアリング ピーティーワイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】クレメンツ,バリー スペンサー
【審査官】山田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05660167(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 15/00
A61M 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネブライザ装置を介して薬物を送達するためのスペーサ装置であって、前記スペーサ装置は、
流入口および前記流入口から反対の流出口を有するボディであって、前記ボディはそれぞれの長手方向軸に沿って角度を付けて交差する、反対の流入口および流出口によって形成されるV字型取付部の形であり、前記角度は30°から170°の間の円弧を画定するV字を形成する、ボディと、
前記ボディに取り付けられる取り外し可能な、可撓性バッグであって、前記バッグおよび前記ボディは、前記流入口と前記流出口とがチャンバと流体流動連結されるように、共に前記チャンバを画定する、バッグと、
を含み、
前記流入口は、吸入される前記薬物を含有する前記ネブライザ装置と動作接続するように構成され、
前記流出口は、前記流出口に接触して、前記流出口の中に、または前記流出口の周りに受けられるマウスピースを含み、ユーザの口に動作可能なように受けられるように構成され、
前記ボディ、前記流入口、前記流出口、および/または前記バッグは、導電性材料で作られることによって、静電気の帯電を防ぐように構成される、または、吸入される前記薬物がそこに堆積するのを妨げるために、帯電防止剤で処理され、
前記可撓性バッグはリザーバとして機能し
、前記可撓性バッグは、再呼吸に適応してそのような再呼吸の間に薬物吸入の視覚的フィードバックをもたらすために、繰り返し膨脹可能かつ収縮可能であって、使用中に前記ユーザの呼吸パターンと同じになるように構成され、
前記流出口および/またはマウスピースは、前記流出口に流入する呼気の圧力が、前記チャンバ内の空気の圧力を超えるときに、前記流出口から前記リザーバに呼気が取り込まれるのを防ぎ、前記ネブライザから前記外部環境に前記薬物が漏出するのを防ぐことによって、前記リザーバとユーザの口との間の流体流動および、ユーザの口から外側大気への流体流動を制御するように構成され、
前記バッグは、形
状記憶によって、開口の膨張した/拡張した位置の形状を自然と採用するように構成さ
れる、スペーサ装置。
【請求項2】
前記バッグは、金属化された高分子フィルムまたはアルミホイルでできている、請求項1に記載のスペーサ装置。
【請求項3】
前記流入口は、前記ネブライザの出口ポートと密閉して係合するための流入通路を画定する取付具を含み、前記流入通路は、前記出口ポートに対して密閉するように構成される密閉カラーによって囲まれている、請求項1に記載のスペーサ装置。
【請求項4】
前記流出口および/またはマウスピースは、前記ユーザが吐き出した空気が前記チャンバに流入することを妨げるように、および、前記流出口および/またはマウスピース内の圧力が所定の値を超えたときに外側大気に選択的に開くように、弁、偏向機構、および/または開放フラップを含むまたは画定することによって流体流動を制御するように構成される、請求項1に記載のスペーサ装置。
【請求項5】
前記弁は、
前記チャンバからの薬剤が受け入れられる流入口、
大気に出る流出口、
前記流入口と流出口とを連結する通路、および、
流出口に流入する呼気の圧力が、前記チャンバ内の空気の圧力を超えるときに、前記流出口から前記スペーサ装置に呼気が取り込まれることを防ぐ、少なくとも1つの選択的に作動可能な閉塞部材
を含むボディを含む、請求項4に記載のスペーサ装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つの閉塞部材は、前記弁の前記ボディを通って画定される通路を閉塞するための、少なくとも1つの可撓性フラップの形であって、前記フラップは、前記弁の前記ボディに取り付けられる、または、前記弁ボディの前記流入口と前記流出口との間に画定される前記通路を分岐するのに役立つ中央突起部に取り付けられる、柔軟かつ可撓性を示す布またはシートの形である、請求項5に記載のスペーサ装置。
【請求項7】
前記弁ボディは、前記ボディの前記通路を前記閉塞部材によって閉塞する際に、空気を漏出させるために、そこに画定される少なくとも1つの漏出通路を含む、請求項6に記載のスペーサ装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つの漏出通路は、前記ボディ内に画定される通路の形であって、前記ボディの外面の周りに少なくとも部分的に延びる半径方向に延びる構造の中に設けられる、少なくとも1つの孔を通って、空気が漏出できるようにする、請求項7に記載のスペーサ装置。
【請求項9】
前記孔は、半径方向に延びる構造内に設けられるスロットの形である、請求項8に記載のスペーサ装置。
【請求項10】
前記半径方向に延びる構造内に画定される孔は、1つ以上のスロット閉塞フラップ部材を有し、前記フラップ部材は、吸入の間に孔またはスロットを閉塞するのに役立ち、呼気が孔を通過して、可撓性フラップ部材を通って、外部環境に出られるように開く、各スロットの外部につけられる1つ以上の可撓性フラップ部材の形である、請求項8に記載のスペーサ装置。
【請求項11】
前記V字型取付部の前記円弧は90°である、請求項1乃至10のいずれか一項に記載のスペーサ装置。
【請求項12】
前記V字型取付部はV字型の内面を含み、併合する流入口および流出口の下部および側部面を併合することによって形成される低部外周を有し、前記外周は概して長円形である、請求項1乃至11のいずれか一項に記載のスペーサ装置。
【請求項13】
前記低部外周は、前記前記取り外し可能なバッグを受ける取付部の一部を構成する、請求項12に記載のスペーサ装置。
【請求項14】
前記V字型取付部の前記内面は、前記流入口と前記バッグの間、および、前記バッグと前記マウスピースの間で、空気および/または薬剤が流れるための通路を設ける空洞を画定する形状および寸法であって、前記V字型空洞の前記内面は、携帯するために前記バッグが前記空洞内に折り畳まれる際に前記バッグを受ける大きさおよび寸法である、請求項1乃至13いずれか一項に記載のスペーサ装置。
【請求項15】
前記長円形の低部外周の長軸と短軸の比は、1.01:1から6:1の間である、請求項12に記載のスペーサ装置。
【請求項16】
前記比は1.38:1である、請求項
15に記載のスペーサ装置。
【請求項17】
前記スペーサ装置の前記ボディに前記バッグを解除可能なように取り付けることを容易にするために、前記バッグは、前記スペーサ装置の前記ボディの低部外周にしっかりと取り付けられる形状および寸法のカラーを含む開口部を有し、前記カラーは前記バッグ開口部の上部外縁に沿って延び、前記バッグの前記開口部の周辺に少なくとも部分的に延びる、請求項1乃至
16のいずれか一項に記載のスペーサ装置。
【請求項18】
前記バッグ開口部は、弾性的に可撓性を示す材料で作られることによって、開口の拡張した位置に偏向される、請求項
17に記載のスペーサ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネブライザ用スペーサ装置に関する。より具体的には、本発明は、ネブライザ薬物送達装置から薬剤を吸入する間に使用するためのスペーサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術の後述の議論は、本発明の理解を容易にすることのみを意図する。本議論は、任意の参照される資料が、本願の優先日の時点で共通の一般知識の一部である、もしくはそうであったことを承認または認めるものではない。
【0003】
ネブライザは、肺に吸入される霧または微粒分散液滴の形態の薬物を投与するのに使用される、吸入薬物送達装置(IDDD)である。ネブライザは、嚢胞性繊維症、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、および他の呼吸器疾患または呼吸障害の治療のために一般的に使用される。ネブライザは、酸素、圧縮空気、または超音波パワーを使用して、通常はマウスピース(3歳より年上の子供および成人向け)またはフェイスマスク(3歳未満の子供またはマウスピースを保持できないユーザ)の形のインターフェイスから直接吸入できる、小さなエアロゾル液滴に投与される薬物を含有する溶液および懸濁液を離散させる。本明細書で使用されるエアロゾルの定義は、「気体および液体粒子の混合」である。
【0004】
ネブライザ装置は、投与される薬物を含有する薬剤カップ(口語的に「ポット」と呼ばれる)を介してチューブの長さを通ってエアロゾルを送達する、空気圧縮機または超音波システムのいずれかと共に作動する。薬剤カップは通常、ユーザの口に簡単に入れられるマウスピースに直接取り付けられる。このようなマウスピースは、一般的にマウスピースの上面に位置するフラップ弁の形態である、ユーザの呼気に対する一方向の放出弁に取り付けられる。吸入の間、このバルブは閉塞し、外気が取り込まれることによって、マウスピースを通ってネブライザカップからユーザの口に入るエアロゾルの流れを干渉することを防ぐ。
【0005】
吸入される薬剤は、ネブライザのリザーバから毛細管に移動され、薬剤カップ(または時にそう呼ばれるように、ネブライザポット)の流出口からエアロゾル化された粒子として継続的に分散される。この流出口に取り付けられるマウスピース(またはマスク)を使用して、エアロゾル化された粒子が、普段の周期的な呼吸の間にユーザによって自然に吸入される。
【0006】
ネブライザは、呼吸器疾患を抱えた多くのユーザのための治療の基礎を形成する吸入療法において、重要な役割を果たす。ほぼ60年前のジェットネブライザの発展は、現在では、自宅での吸入薬剤を用いた好結果の治療を可能にする、信頼性のある、運搬可能な、十分に標準化された装置をもたらした。これらのジェットネブライザは、今日でもまだ最も一般的に使用されるネブライザであって、液剤を含有するネブライザポットを通って高速で流れ、次にユーザに吸入されるエアロゾルに変換する、圧縮された空気または酸素を伴う、ベンチュリの原理を使用する。
【0007】
超音波ネブライザもまた、今日よく使用されており、圧電効果の原理を使用して、交流電流を高周波音響エネルギに変換し、高周波音響エネルギは、溶液を、吸入の準備ができている、通常は微粒分子液滴である、エアロゾル化された液滴に変換する。振動メッシュ式ネブライザは、液滴に力を加えて小さな開窓を通ってエアロゾルを形成する、振動している有窓膜またはグリッドを使用する。これらのネブライザは、著しく高価であるが、より短い時間でエアロゾルを静かで効果的に生成するので、人気が上昇している。
【0008】
残念なことに、使用するネブライザの種類に関わらず、肺への薬物送達は一般的に極端に非効率的で、ネブライザポットに挿入された薬剤の通常は30%未満がユーザの気道に到達する。この効率の悪さの主な原因は、呼吸周期の呼気フェーズの間のエアロゾルの浪費によるものである。ネブライザポンプの電源が入ると、装置は継続してエアロゾル液滴を生成するが、ユーザはこれらの液滴を吸入の間のみ利用する。ユーザが息を吐いている間に生成される全液滴は(少なくとも全量の半分)、ユーザの呼気と共に、マウスピースにある放出弁を通って外に漏れ、浪費される。
【0009】
健常な成人の吸気:呼気の比は通常およそ1:1で、一方で子供はおよそ1:2で、つまり3秒間息をするごとに、1秒が吸うのに使用され、2秒が吐くのに使用される。本質的に、これは単純に、おおよそ2/3の時間において、ネブライザは、ユーザが吸入していないエアロゾル化した液滴を生成しており、それ故にこれらの液滴が大気中に浪費されることを意味する。これは、非効率的な送達が、所望される効果が達成されない結果をもたらすとき、または吸入式遺伝子療法などの、吸入される薬物が高価なときに特に適切である。加えて、呼気の間に外部の大気に漏れる50%以上のエアロゾルは、特に抗生物質などの特定のエアロゾル化された薬剤に関して、環境汚染に関する重大な懸念を生み出す。
【0010】
最近、送達の効率を改善するために、コンピュータチップを使用して、呼吸の間の圧力変化を感知し、ユーザが息を吐いている間にネブライザの電源を切る、いわゆるインテリジェントネブライザが開発された。これらの装置は、現在気道に到達する送達を投与量の80%まで改善することが示された。しかし残念ながら、これらの装置は、極めて高価で、平均的なユーザには手の届かないものである。加えて、これらは、呼吸周期の半分の吸気の間にのみエアロゾルを生成するので、同じ投与量をエアロゾル化するのにかかる時間が倍になる。
【0011】
本発明の目的は、本出願人が認知している装置の欠点に対応することであり、付随する費用や複雑さがない状態で、インテリジェントネブライザと同様の薬物送達のレベルを達成することである。
【発明の概要】
【0012】
概して、本発明はネブライザ装置を介して薬物を送達するためのスペーサ装置をもたらし、スペーサ装置はネブライザ発生器と薬剤カップの流出口との間に挿入される可撓性チャンバを画定する。
【0013】
本発明の一態様に従って、ネブライザ装置用スペーサ装置が提供され、スペーサ装置は、
流入口および、流入口から反対の流出口を有するボディと、
ボディに取り付けられる取り外し可能な、可撓性バッグと
を含み、
バッグおよびボディは、流入口と流出口とがチャンバと流体流動連結されるように、共にチャンバを画定し、
流入口は、吸入される薬物を含有するネブライザ装置と動作接続するために構成され、
流出口は、ユーザの口に動作可能なように受けられるように構成され、
可撓性バッグはリザーバとして機能し、その中に形成される雲状または霧状の薬物が、ネブライザ装置を稼働させたときに吸入されるようにし、可撓性バッグは、少なくとも部分的に膨脹可能で、少なくとも部分的に収縮可能であって、使用中に前述のユーザの呼吸パターンと同じになるように構成される。
【0014】
ボディ、流入口、流出口、および/またはバッグは、静電気の帯電を低減させるように構成される場合があり、つまり帯電防止特性を有する場合がある。ボディ、流入口、流出口、および/またはバッグは、導電性材料で作られ得る。バッグは、金属化された高分子フィルムまたはアルミホイルでできている。ボディ、流入口、流出口、および/またはバッグは、帯電防止剤で処理され得る。
【0015】
流入口は、薬剤カップと密閉して係合するための流入通路を画定する取付具を含み得る。したがって、流入口は、薬剤カップの出口ポートと密閉して係合するための流入通路を画定する取付具を含み得る。流入口は通常、摩擦フィットなどによって、最も一般的なネブライザ流出口を受ける形状および寸法である。
【0016】
流入通路は、薬剤カップまたは薬剤カップの出口ポートに対して密閉するように構成される密閉カラーによって囲まれ得る。
【0017】
スペーサ装置は、流出口に接触して、流出口の中に、または流出口の周りに受けられるマウスピースを設けられ得る。
【0018】
一実施形態では、スペーサは弁を持たない。本発明の他の実施形態では、スペーサ装置は、ユーザが吐き出した空気がスペーサ装置または薬剤カップに流入することを妨げるまたは最小化するために、一方向弁、二方向弁、逃し弁、または偏向機構を含むまたは画定する。
【0019】
一実施形態では、流出口はマウスピースを含み得る。市販のネブライザ装置が備えられ、呼気が薬剤カップ内に取り込まれること除去するまたは最小化するのに役立つ、市販のマウスピースが使用され得る。通常は、流出口に接する、流出口の中にある、または流出口の周りにあるマウスピースは、2つの弁があり、1つの弁はスペーサ装置の流出口とユーザの口との間の流れを制御し、他方はユーザの口から外側の大気などへの流れを制御する。
【0020】
したがって、マウスピースは、マウスピースの動作可能な上面に設けられる開放フラップの形の弁を含む場合がある。フラップは、吐き出された空気が大気に漏出できる呼気の間などの、マウスピース内の圧力が所定の値を超えたときに選択的に開くことが可能である。
【0021】
一実施形態では、流出口および/またはマウスピースはボディを有する弁を含む場合があり、ボディは、
ネブライザから、一般的にスペーサ装置を介して薬剤が受け入れら得る流入口、
大気に、そして一般的に動作可能なようにユーザの口に出る、流出口、
流入口と流出口とを連結する通路、および、
流出口に流入する呼気の圧力が、装置(ネブライザなど)から出て弁の流入口に流入する空気の圧力を超えるときに、流出口からスペーサ装置に呼気が流入するまたは取り込まれることを防ぐ、少なくとも1つの選択的に作動可能な閉塞部材を含む。
【0022】
少なくとも1つの閉塞部材は、弁のボディを通って画定される通路を閉塞するために、単一構造の可撓性フラップの形の場合があり、または一体となって作動する2つ以上のフラップを含む場合がある。前述のまたは各フラップは、柔軟かつ可撓性を示す、繊維、布、またはシートの形の場合がある。前述のまたは各フラップは、弁のボディに取り付けられ得る。代替的に、前述のまたは各フラップは、弁ボディの流入口と流出口との間に画定される通路を分岐するのに役立つ中央突起部に取り付けられ得る。
【0023】
弁ボディは、ボディの通路を閉塞部材によって閉塞する際に、つまり、たとえば、ユーザが、ネブライザから排出されるエアロゾルもしくは空気の圧力を超える圧力で、弁ボディの流出口に取り付けられるマウスピースまたはフェイスマスクに力強く息を吐いて閉塞部材が作動する際に空気を漏出させるために、そこに画定される少なくとも1つの漏出通路を含み得る。
【0024】
少なくとも1つの漏出通路は、ボディ内に画定される通路の形であって、ボディの外面の周りに少なくとも部分的に延びる、通常はカラーである、半径方向に延びる構造の中に設けられる少なくとも1つの孔を通って、空気が漏出できるようにする。少なくとも1つの孔は、弁ボディの流出口から離れる、言い換えると、弁ボディの流出口に取り付けられるマウスピースに息を吐き得るユーザの顔から離れる方向で、弁ボディから出るように構成され得る。各孔は、半径方向に延びる構造内に設けられるスロットの形の場合がある。一実施形態では、半径方向に延びる構造は、呼気をマウスピースから外側の大気に排出するのに役立つ、複数のスロットを設けられている場合がある。スロットの大きさ、形状、数および寸法は、呼気の影響を最小限にし、バッグ内に含有される薬剤の再呼吸を促すために、薬剤の流量、呼吸頻度、呼気の強さなどに適応するように変更または選定され得る。
【0025】
有利に、本発明の一実施形態では、半径方向に延びる構造内に画定される1つ以上の孔(つまりスロット)は、1つ以上のスロット閉塞フラップ部材を有する場合がある。フラップ部材は、吸入の間に孔またはスロットを閉塞するのに役立ち、呼気が孔を通過して、可撓性フラップ部材を通って、外部環境に出られるように開く、各スロットの外部につけられる1つ以上の可撓性フラップ部材の形である。
【0026】
上述の構造は、ネブライザポンプによって生成されるエアロゾル化されたもしくは微粒分散された液滴が、呼吸(吸うまたは吐く)の間に外部環境に漏出できる段階がないことを意味する。それゆえに、これらの液滴は、吸入の間に肺に向かう途中でユーザの口腔にだけ漏出する、閉鎖されたシステムに閉じ込められている。
【0027】
従って、本発明は、自身の他の態様において、本発明のスペーサ装置用の弁にまで及ぶ。弁は、スペーサ装置または薬剤カップの流出口に係合するための流入口と、ユーザに受けられる流出口とを有するボディを含む。弁ボディは流入口と流出口との間に通路を画定する。弁ボディは、スペーサ装置の流出口から、スペーサ装置に空気が流入するもしくは取り込まれるのを防ぐ、選択的に作動可能な閉塞部材をそこに含む。ボディは、(i)単純なフラップ機構で覆われたボディの上面にある単一の漏出穴として、または(ii)少なくとも部分的にボディの外面の周りに延びる、半径方向に延びる構造内に設けられる、少なくとも1つの空気漏出通路を有する。少なくとも1つの空気漏出通路は、弁ボディの流出口から外を向いている構造の側面に位置し得る。前述のように、半径方向に延びる構造内に画定される1つ以上の孔またはスロットは、その外部につけられる1つ以上の可撓性フラップ部材を有する場合がある。フラップ部材は、吸入の間に孔またはスロットを閉塞するのに役立ち、呼気が孔を通過して、可撓性フラップ部材を通って、外部環境に出られるように開く。
【0028】
流出通路は、チャンバと周囲環境との、または使用中はユーザの口との間に、妨害のない空気および/またはエアロゾル化された薬物の流れをもたらし得る。
【0029】
本発明の一実施形態では、ボディは、バッグが取り付けられる場合がある、およびバッグが付属している場合がある、下向きに延びる導管を含む、T字型連結具の形の場合がある。下向きに延びる導管は、クロスパイプと流体流動連結にある。クロスパイプは薬剤カップに連結するための流入口と、出口通路を画定する流出口とを有する。
【0030】
本発明の、他の好ましい実施形態では、ボディは、概ねV字型取付部の形である。V字型取付部は、それぞれの長手方向軸に沿って角度を付けて交差する、反対の流入通路および流出通路によって形成される場合がある。V字を形成する角度は、好ましくは30°から170°の間、好ましくは60°から120°の、最も好ましくは90°の円弧を画定する。流入口および流出通路は、円錐形の場合がある。流入口の外周は、円形、長円形、楕円形、または不規則な形状の場合がある。V字型取付部はV字型の内面を含む場合があり、概して長円形である併合する流入および流出ポートの下部および側部面を併合することによって形成される低部外周を有し得る。この外周は、取り外し可能なバッグを受ける取付部の一部を構成し得る。V字型取付部の内面は、流入口とバッグの間、および、バッグとマウスピースの間で、空気および/または薬剤が流れるための通路を設ける空洞を画定する形状および寸法である。V字型空洞の内面は、携帯するためにバッグが空洞内に折り畳まれる際にバッグを受ける大きさおよび寸法となり得る。
【0031】
流入口および流出通路は、大きさ、長さ、体積、直径、または形状が概ね等比率の場合がある。他の実施形態では、流入口および流出通路は、大きさ、長さ、体積、直径、および/または形状が等比率でない場合がある。
【0032】
本実施形態における長円形の外周の長軸と短軸の比は、1.01:1から6:1の間、好ましくは1.2:1から2:1の間、最も好ましくは1.38の場合がある。
【0033】
流出口は、ユーザの口によって、直接またはフェイスマスクを通して受けられるように構成され得る。流入口は、前述のように、薬剤カップまたは薬剤カップの出口ポートを受けるように構成され得る。
【0034】
本発明は、そのさらなる態様において、本発明のスペーサ装置用のバッグに及ぶ。バッグは、本発明のスペーサ装置のボディの低部外周にしっかりと取り付けられ、それにより、バッグをスペーサ装置のボディに解除可能に取り付ける形状および寸法である、カラーを含む開口部を有する。カラーはバッグ開口部の上部外縁に沿って延びる場合があり、バッグの開口部の周辺に少なくとも部分的に延びる場合がある。バッグ開口部は、弾性的に可撓性を示す材料で作られることによって、開口の拡張した位置に偏向され得る。バッグは、使う準備ができたときに、開口の膨張した/拡張した位置の形状を自然と採用する場合がある。これは、形状または材料記憶によって起きる。バッグは、周辺に延びる、弾性的に可撓性のシームを備え得る。弾性的に可撓性のシームは、吸入および呼気の間に、バッグが垂直に潰れることに抵抗するのに役立つ。
【0035】
この形状を採用するためのバッグの容量は、吸入の間にバッグが潰れることに対する無視できる程度の抵抗が存在することを確実にするように調整され得る。一実施形態では、カラーは、カラー(および故にバッグ)を取付部の内面に対して押す、弾性的に可撓性の材料でできている。他の実施形態では、カラーは、Oリング構造を含む摩擦フィットまたは、スナップフィットの方法で、ボディの低部外周を囲んで取り付けられる、形状および寸法になり得る。バッグは、ボディの低部外周の相補的なねじ部と係合する、ねじ状のカラーを設けられる場合がある。
【0036】
スペーサ装置は、ユーザの肺容量および吸入能力、使用している時点での医療ニーズ、およびユーザの好み(販売方法の選択を含み得る)を含むが、これらに限定されない、多くの要素に応じる選択を伴って、または、社会的環境で使用されるときに、居心地の悪さおよび顕著性を最小化するために、多くの異なる大きさおよび形状のバッグを含み得ることを理解されたい。
【0037】
次の添付の図を参照しながら、説明が行われる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】使用中の、本発明の第一実施形態に従う吸入器用スペーサ装置の3次元正面図である。
【
図2A】
図1に示されるスペーサ装置のV字型ボディの単体の正面斜視図である。
【
図2B】
図1に示されるスペーサ装置のV字型ボディの単体の底面図である。
【
図3】ボディがV字型取付部の形である本発明のスペーサ装置の第一実施形態の部分側面断面図である。
【
図4A】ユーザによって吸入されるときの、ボディとバッグとの間に画定される空洞内の雲状または霧状の液滴の形成を示す、
図1に示される実施形態の断面図である。
【
図4B】使用中における呼気の間の、
図1および4Aに示される本発明の実施形態のさらなる断面図である。
【
図5】本発明のスペーサ装置と共に使用するための、本発明の一態様に従うバッグの3次元図である。
【
図6】本発明のスペーサ装置の第二実施形態の3次元図である。
【
図7】
図6に示されるスペーサ装置の第二実施形態の部分断面側面図である。
【
図8】バッグが90°回転されている、本発明のスペーサ装置の第二実施形態の3次元図である。
【
図10A-10B】本発明の弁の後方3次元図および側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明のさらなる特徴は、そのいくつかの非限定的な実施形態に関する後続の記述で、より十分に説明される。この記述は、本発明を当業者に例示する目的のためだけに含まれている。上述のように、本発明の広範な概要、開示、または説明を制限するものとして理解されるべきではない。例示の一実施形態もしくは複数の実施形態の特徴を図示するために組み込まれる図では、全体を通して同様の参照符号が同様の部分を識別するように使用される。
【0040】
図を参照しながら非限定的な例として記載される本発明は、吸入器送達装置(ネブライザなど)から送達される薬剤の吸入を容易にするためのスペーサ装置をもたらす。
【0041】
一般的に、本発明のスペーサ装置は、ネブライザ装置から霧状もしくは雲状で吸入される薬物を受けるためのリザーバとして働く形状および寸法である、可撓性を有して潰すことが可能なバッグと、薬剤が入口そこを通ってネブライザ装置からバッグに放出される流入口もしくは入口、および後述のように弁を含む場合があり、吸入によって生み出される負の圧力のもとでバッグが潰れながらバッグの内容物がそこを通って吸入され得るマウスピースを形成し、それによってその内容物の全てをユーザの口に排出するのを促進し、不慣れなユーザの肺にさえも薬剤の送達が最大化されるようにする流出口もしくは出口を備えたボディ(本明細書ではいくつかの実施形態では「ベース」とも呼ばれる)とを含む。
【0042】
マウスピースにある弁は、吸入の間にバッグからユーザの口に流入するエアロゾルの流れと、呼気の間にユーザの口から外部へ吐き出される空気の流れとの両方を制御する。これは、可撓性チャンバと併用されて、呼気の間のエアロゾルの浪費を除去する、閉鎖回路の潰すことが可能なリザーバシステムを形成することによって、その特別な機能を備えたスペーサ装置を提供する。こうすることで、ネブライザによって排出された用量の100%がユーザの口に送達され、(この能力を備えていない)標準のネブライザによって送達される用量を効果的に倍加すると共に、漏出したエアロゾル化された薬物に関連する環境汚染の懸念を取り除く。スペーサ装置は、肺に送達される用量に影響を与えることなく、その時点でユーザが好むまたは可能であるいかなる呼吸パターンをも使用する自由をユーザに与える。たとえば、呼吸は、慣れたユーザはゆっくりで深い場合もあり、または不慣れなユーザは規則的な、周期的な呼吸を使用する。いずれにしても、用量の100%がユーザの口に送達される。スペーサ装置の流入口および流出口の角度と、バッグの形状とは、その中にもしくはその上に薬物粒子が固着するのを最小限にし、それにより層流がバッグおよびポートに流入および流出するのを促進し、チャンバの排出を最大化する。
【0043】
便利なことに、バッグの大きさは、年齢、体格、肺活量、吸気の強さ、社会的な居心地の悪さといった、ユーザのニーズに合わせて取り替えることが可能で、500cm3ほどの小さなバッグと、1500cm3ほどの大きなバッグとは、前述の要素に応じて、順調に吸入される薬物粒子が同程度になることが分かった。
【0044】
加圧された空気もしくは酸素を生成するためのポンプを含む、加圧可能な薬物送達装置は、本明細書で一般的にネブライザと呼ばれ、スペーサ発明装置の流入口に取り付けられる。この流入口は最も一般的なネブライザの流出口を受け入れるように変更される場合があり、あるいは特注のネブライザが流入口内に構築され場合がある。
【0045】
ネブライザポンプが作動している状態で、エアロゾル化された液滴は継続的にバッグ(リザーバ)に流入して充満させる傾向がある。本発明装置の流出口には、ユーザが息を吸う間にバッグ内の液滴がユーザの口に流入できるようにする、弁付きマウスピースが取り付けられている。息を吐く間に弁は閉鎖し、呼気は弁の外縁の周囲に位置する開口部を通って、あるいは代替的に他の実施形態では、マウスピースの上面にある単純なフラップ弁を通って、外部環境に逸れる。次の吸気の間に、フラップ弁または外部開口部は、開口部の各々の一つの側に沿った外壁に取り付けられる、小さな薄いフラップ弁によって、再び閉鎖する。同時に、内部フラップ弁が再び開き、その間にネブライザによって継続的に生成されてバッグ内に蓄積された、エアロゾル化された液滴の次の投入量が、ここでバッグからユーザの口に吸入され得る。
【0046】
これは、ネブライザポンプによって生成されるエアロゾル化された液滴が、呼吸(吸うまたは吐く)の間に外部環境に漏出できる段階がないことを意味する。それゆえに、これらの液滴は、吸入の間に肺に向かう途中でユーザの口にだけ漏出することが可能な、閉鎖されたシステムに閉じ込められている。
【0047】
過剰なもしくは過少な供給を避けるため、装置から出ていくエアロゾル化された液滴の量は、ユーザのニーズに合うように数多くの方法で制御できる。第一に、ネブライザに入る圧縮空気の流れは、所定の制限内で調整可能な場合がある。他の選択肢では、装置のバッグが、ユーザに適切であって、ユーザができない場合は自身の呼吸パターンを調整する必要がなく楽に呼吸できるようにする、適切な大きさおよび体積になるように変更され得る。しかし、多くのユーザは、肺に送達される薬物の吸入量を増加させるのを促進する呼吸操作を行うことが可能であり、そうする意思があり、そしてまた実施されることが可能である。これの一例は、肺への送達を上昇させ、同様に、肺の中の粒子のより末梢のかつ均一な散布を促進する、ゆっくりとした深い吸入である。この全ては、若年のもしくは高齢の、もしくは具合の悪い人などの、不慣れなもしくは易感染のユーザに対して特に重要である。
【0048】
図を参照すると、参照符号110は一般的に、
図1から5に示される本発明の一実施形態に従うスペーサ装置を参照し、一方で参照符号210は一般的に、残りの図に示される本発明の第二実施形態に従うスペーサ装置を参照する。
【0049】
図1を参照すると、本発明の好ましい一実施形態における、ボディ118に取り付けられた、伸展性が低いまたはない、金属化された帯電防止のもしくは低帯電のバッグ112を含むスペーサ装置110が図示されている。バッグ112は、金属またはアルミホイルなどの、導電性材料でできている。一実施形態では、バッグ112は、金属化フィルムまたは金属化された二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(BoPET)または通常はMylar(登録商標)である他の同類の可撓性ポリマーでできている。あるいは、バッグ112は、バッグ112に静電気散逸コーティングもしくは層を形成する帯電防止剤で処理され得る。同じことがボディ118に対しても当てはまり、ボディ118は帯電防止コーティングまたは層から作られる、帯電防止コーティングまたは層に積層される、あるいは帯電防止コーティングまたは層でコーティングされ得る。ボディ118は通常、本実施形態では(限定はしないが)アルミニウムなどの金属、または金属化された化合物(限定はしないが、金属化プラスチックなど)、または他の実施形態では(限定はしないが)高密度プラスチック材料などの金属がコーティングされた化合物から作られる。
【0050】
ボディ118は流入口114および反対の流出口116を含み、流入口114および反対の流出口116は、ボディ118に設けられ、ボディ118と一体である。ボディ118およびバッグ112は結合して、エアロゾル化された薬剤を受けるためのチャンバ120を形成する。
【0051】
流入口114および流出口116の各々は、チャンバ120と流体流動連結しているポートの形である。流入口114および流出口116は、ボディ118の一部として形成される広いV字型を画定し、それによって分離されている。ボディ118はさらに、バッグ112を取り外し可能なように受けるための、フランジ118.2を画定する楕円形の低部外周118.1を含む。
【0052】
図4A、4Bおよび5で最もよく見られ得るように、バッグ112は、バッグ112の動作可能な上部内に画定される開口部112.2(
図19で最もよく見られる)に取り付けられる、伸縮性のある、周辺に同一の広がりをもつリブ112.1の形の接続構造を含む。リブ112.1はフランジ118.2に結合し、バッグ112とボディ118との間に効果的な密閉をもたらす。
図19はまた、バッグ12が完全に膨張される前にどのように見え得るかを示す。
【0053】
他の実施形態では(図示なし)、バッグ112開口部112.2(故にリブ112.1)はフランジ118.2に受けられ、従ってフランジ118.2を覆い、バッグ112は、バッグ112およびフランジ118.2の間を効果的に密閉できる収縮性を有する弾性リブもしくはOリング112.1を有する。
【0054】
図4Aおよび4Bに示される実施形態は、ボディ118の洗浄もしくはオートクレーブを容易にするために、フランジ118.2がねじ構造118.3を使用してボディ118に螺合され得ることを示す。
図11、14、および17に示される他の実施形態では、フランジ118.2はボディ118と一体で形成されるか、または所定の位置にクリップ留めされる。
【0055】
図1に戻ると、流入口114は、ネブライザ(図示されていないが、薬剤カップ156より上流に、導管157を介して流体流動連結で連結される)の薬剤カップ(「ポット」)156のマウスピース158を受けるための環状連結具122を含む。薬剤カップ156は流入口114に流体流動の方法で連結され、それによりネブライザ薬剤156とチャンバ120との間が直接連結するようにし、薬剤カップ156内に含有される薬物がネブライザによってチャンバ120内に分散されるときに、チャンバ120内の概ね妨げられない雲状の形成を可能にする。環状連結具122は、端部114.2に隣接して設けられるねじまたは干渉取付具114.3(
図4Bで最もよく見られる)を使用して、流入口114の端部114.2にねじ留めもしくはクリップ留めされる。環状連結具122はまた、スナップフィットもしくは摩擦フィットの方法(図示なし)で流入口114と連結され得ることを理解されたい。環状連結具122は、マウスピース158を密閉して受けるための、弾性的に可撓性のある内部環の形の密閉カラー126を含む。
【0056】
図2Aおよび2Bに最もよく見られるように、そして本明細書で前述のように、ボディ118はそこに一体で形成される、単体構造の流入口114および流出口116ポートを有し、流入口および流出口ポートの長手方向軸114.1、116.1(
図4Aおよび4Bに示される)はそれぞれ、交差するところで30°から170°の間の角度(θとして示される)を有する円弧を画定する。流入口114および流出口116ポートに画定されるV字型は90°の一般角を有し、これは
図4Aおよび4Bに示される実施形態で同様におよそ90°である角度(θ)と概ね一致する。
【0057】
図3に示されるように、この構成は、もし流入口114および流出口116が位置合わせされている場合、つまり角度(θ)が180°またはその付近であるときに起こり得るように、吸入薬物が流入口114と流出口116との間を直接通過するよりむしろ、吸入薬物(微粒分散液滴127として示される)がまずはチャンバ120に導入され、完全に流入することを確実にするのを助ける。
【0058】
こうすることにより、吸入液滴127は、内部構造のいかなる範囲にも堆積することなく、または流出口116を直接通って噴き出すことによってユーザの口腔もしくは喉に直接吐き出されることなく、スムーズな流体流れでチャンバ120に入る。従って、チャンバ120は吸入薬物のためのリザーバとしての役割を果たし、チャンバ120内の蒸気もしくは雲状の形成を容易にし、吸入液滴127は、ユーザにとって楽なテンポおよび速度で、吸入薬物が大気または外部環境に著しく損失することなく、チャンバ120から吸入され得る。流入口114および流出口116の角度は、吸入液滴127がスムーズかつ妨げられることなくチャンバ120に流入することと組み合わさって、これらの構成がない場合と比較べて、ユーザが流出口116を通して吸入する有効薬物のずっと高い割合を可能にする。マウスピース140は近位端部144(
図2Aで最もよく見られる)および遠位端部146(
図3で最もよく見られる)を有する。マウスピース140は、流出通路142がチャンバ120へのその開口部でより広く、環境に、または、直接もしくは弁(後述の弁に関する説明を参照)を通して使用中にユーザの口につながる、遠位端部146でより狭くなるように、その近位端部144に向かって広がる。従って、使用中は、マウスピース140はチャンバ120から気流および薬物を注入する形状である。
【0059】
さらに、バッグ112をボディ118の動作可能な底部に設けることによって、使用中にユーザが吸入装置156を視覚的に参照するのをバッグ112が妨げないことを確実にし(
図3に参照)、ユーザがより正確に、しかし干渉が少なく、装置110を使用することにつながる。
【0060】
図2B、4Aおよび4Bに見られ得るように、ボディ118の内部はV字で、ボディ118の外側と一致する。試験によって、急激な吸入の間にボディ118の内部がバッグ112によって閉塞される可能性は存在しないほどわずかであることが示された。しかし、携帯するために、バッグ112はボディ118の内部内にほぼ完全に受け入れられまたは折り畳まれることがある。これは、装置110の大きさおよび顕著さを減少させるのに役立ち、装置110が小銭入れ、ハンドバッグ、もしくはキャリーバッグに容易に入れられるようにする。
【0061】
使用中に、特にネブライザからの一定の圧力下にあることを考慮すると、バッグ112は吸入の間に垂直断面で非常にわずかに小さくなり、一般的にバッグは、バッグ112の一部を形成するシーム112.3の柔軟な弾性によって、その垂直寸法を維持する。従って、一般的に吸入によって、急激な吸入の間にバッグ112がボディ118の内側空洞に吸い込まれて内側に潰れるよりむしろ、吸入の間にバッグ112の2つの向かい合う側面つまり「チーク」112.4、112.5が優先的に互いに近くに引っ張られることになる。本出願人は、急激な吸入の時でさえ、バッグ112の構成および形状、特に形状記憶シーム112.3によってこれが発生するのを防げることを見出した。
【0062】
有利には、小さなバッグは子供、高齢者、または肺機能障害を有する者に対して(または顕著さを避けるために)使用される場合があり、一方で大きなバッグは成人に対して使用される場合がある。小さなバッグは、振動メッシュ式ネブライザなどの、低流量ネブライザを用いるときにより実用的となり得る。
【0063】
本実施形態における長円形外周118.1の長手方向軸(長軸)は9cmである。他の実施形態では、これがより短くてもよく(2cmまで、もしくはそれ未満)またはより長くてもよい(20cmまで、もしくはそれより長い)。本実施形態における長円形外周118.1の最大幅を画定する軸(短軸)は、6.5cmである。他の実施形態では、これがより短くてもよく(1cmまで、もしくはそれ未満)またはより長くてもよい(15cmまで、もしくはそれより長い)。長軸と短軸との間の比は通常は1.38:1である。
【0064】
V字型取付部の壁の厚さは、重さ、強度、感触、および構成に関する懸念に応じて調整できる。本実施形態では、変化する場合もあるが、壁は取付部の大部分を通して厚さ2mmである。他の実施形態では、これがより薄くてもよく(1mmまで、もしくはそれ未満)またはより厚くてもよい(8mmまで、もしくはそれより厚い)。
【0065】
図1、3、4Aから6に示されるように、本発明の機能的特性に貢献する重要な特徴は、流出口216に取り付けられる弁141を使用することであって、弁141は、ユーザの呼気がチャンバ220に入りこむことを防ぎながら、通路246を通ってエアロゾル化された薬物粒子227の吸入を可能にするのに役立つ。弁141は、ネブライザから(スペーサ装置110を介して)薬剤を受け入れる流入口162、外気に出る流出口164、流入口および流出口を連結させる通路166(
図4Aおよび
図11A~Dに示される)、および、流出口164に入る呼気の圧力がチャンバ120から弁141の流入口162に入る空気の圧力を超えるときに、呼気が流出口からスペーサ装置に逆流するもしくは取り込まれることを防ぐ、流入口162および流出口164の間に点在される少なくとも1つの選択的に作動可能な閉塞部材を含む。
図11Aから11Dに最も明確に示されるように、ボディ160は、流入側を形成する2つのシェル160.1と、流出側を形成する160.2とを含む。2つのシェル160.1および160.2は、クリックフィット方法によって内側で連結してボディ160を形成する。
【0066】
一実施形態では、閉塞部材は単一構造であるが、通路166を閉塞するために一体となって作動する2つのウィング168.1、168.2(
図11Bで最もよく見られる)を形成する、可撓性フラップ168の形態である。前述のもしくは各々のウィング168.1、168.2は、チャンバ120から生じる空気による圧力の下で容易に湾曲または曲がることができるが、呼気が流出口164を通って通路に入ることによって、そこにわずかな超過圧力が与えられるときに閉鎖するのに十分な可撓性を示す、柔軟な可撓性フィラメントの形である。
図11Cおよび11Dに示されるように、図示される実施形態では、フラップが閉塞位置にあるときに確実な密閉をもたらす、柔軟なゴム化プラスチックでできている。
【0067】
前述のもしくは各々のフラップは、弁141のボディ160に取り付けられ得る。あるいは、フラップ168の前述のもしくは各ウィング168.1、168.2は、シェル160.1と一体で形成される中央突起部(spine)160.1に取り付けられ、弁ボディ160の流入口162と流出口164との間に画定される通路を分岐するのに役立つ。
【0068】
弁ボディ160はさらに、漏出通路を含む。漏出通路は、一実施形態では、スロット170(
図10Aおよび10Bに最もよく見られる)の形の場合があり、スロット170は、閉塞部材168によってボディ160の通路が閉塞される際、つまり、たとえば、ユーザがネブライザから排出されるエアロゾルもしくは空気の圧力を超える圧力で、弁ボディの流出口に取り付けられるマウスピースまたはフェイスマスクに力強く息を吐いて閉塞部材168が作動する際の空気の漏出に対する、シェル160.1と一体で形成されるカラー160.1.1の形の、周囲に延びる環状構造内に画定される。
【0069】
スロット170は、空気が流出できるようにするボディ160のシェル160.1内に画定される。スロット170は、弁ボディ160の流出口164から離れる、言い換えると、弁ボディ160の流出口164(または流出口によって形成されるマウスピース)に息を吐き得るユーザの顔から離れる方向で、弁ボディ160から出るように構成される。スロットの大きさ、形状、数、および寸法は、呼気の影響を最小化し、バッグ内に含有される薬剤を再呼吸することを促すように、薬剤の流量、呼吸頻度、呼気力などに適応するように選定される。
【0070】
有利に、
図10A、18B、および11Aから11Dに最もよく見られる、本発明の一実施形態では、半径方向に延びる構造内に画定される1つ以上のスロット170は各々、それと関連する可撓性フラップ部材172を有する。フラップ部材172は、吸入の間にスロット170を閉塞するように機能し、呼気が孔170を通って、可撓性フラップ部材172を通過して、ユーザの顔から離れて外部環境に向かうように開く。他の実施形態では、半径方向に位置する孔に代わって、漏出弁が、マウスピースの上面に置かれる単純なフラップ弁の形であって、まったく同じ機能を備えている。
【0071】
上述の構造は、呼吸(吸うまたは吐く)の間に、ネブライザポンプに生成されたエアロゾル化されたもしくは微粒分散液滴が、外部環境に漏出できる段階がないことを意味する。それゆえに、これらの液滴は、吸入の間に肺に到達する途中でユーザの口腔にのみ漏出する、閉鎖回路システムに閉じ込められている。
【0072】
図6から9に示される実施形態において、本発明のスペーサ装置110の本実施形態は、ボディ118が、スペーサ装置110の機能および処理能力に適合するように、所望の長さに短くできるようにする。本実施形態は、バッグ112およびボディ118に形成されるチャンバが、ボディ118の下で膨脹したり収縮したりすることによって、ユーザに対してあまり干渉しないようにする。
【0073】
便利なことに、共にチャンバ120を画定するボディ(もしくは「ベース」)118およびバッグ112は分離可能で、バッグ112がボディ112から外されるようにする。他の指示の中で、バッグ112が摩耗もしくは汚染された際に洗浄もしくは取り換えられる必要があるとき、または、ユーザのニーズおよび能力に応じて異なる大きさ(体積)のバッグ112のひとつと単に取り換えられるときに、この取り外しが指示され得る。
【0074】
使う準備ができたとき、バッグ112は自然と、空気が充満された十分に膨らんだ位置になる。バッグ112は膨脹および潰れに対して全くもしくはほとんど抵抗を示さない柔軟な材料でできており、ユーザが再呼吸の間に息を吸ったり吐いたりする間に十分に収縮および再膨張できるようにする。本明細書で前述のように、バッグ112は、電気を通し、それによって静電気を発生させないように、金属化される(通常、Mylar(登録商標)などの薄い部分の、容易に潰すことが可能な高分子金属化フィルムから生成される)。バッグ112は、吸入の間に完全に潰れて、ネブライザ/薬剤カップ156からチャンバ120にはじめに排出された薬剤の霧もしくは液滴127の全てを一息で完全に空にできるようにするか、あるいは部分的に潰れる(ユーザの呼吸の快適さおよび能力に応じて)。
【0075】
図6から11Dでは、呼吸および吸入を支援するためのネブライザまたは強制空気装置などの吸入用薬物送達装置(IDDD)と共に使用するための、本発明の他の実施形態に従うスペーサ装置210が図示されており、ネブライザは、ユーザの気道に分散される薬物を含有する薬剤カップ256で表されている。スペーサ装置210はT字型スペーサボディ218に取り付けられる流入口212.1(
図5に示される112.1と同様)を有する膨脹式バッグ212を含む。スペーサボディ218は、ボディ218の一部も形成するクロスパイプ導管218.2と内側で取り付けられかつ流体流動連結する、下向きに延びる導管218.1を含む。ボディ218は、ボディ218内の気流またはエアロゾル化された薬剤をスムーズにするために(つまり、層流を促すように)一般的に一体構造であるか、あるいは互いに取り付けられる別々の導管からなる。
【0076】
バッグ212は収縮したときにほぼ円盤形状で、膨脹したときにほぼ球体である、バルーンの形である(
図6を参照)。しかし、他の実施形態において、バッグ212は、膨脹したときにたとえば卵型、レンズ状、円錐台状、またはラグビーボール型などの、所望の他の形状になる場合がある。前述のように、バッグ212はコンサーティーナのような折り畳みを含むことがあり、収縮の間にバッグ212は、収縮の間のその機能を向上するように、かつその見た目を改善するように、所定の方法で潰れるようにされる。バッグ212は左右非対称な場合があり、たとえば動作低部側でより大きな膨脹体積を有するか、あるいは逆もまた同様である。
【0077】
前述のように、バッグ212は、流入口214および流出口216と共にボディ218を画定する、可撓性かつ非膨張性の空気袋の形であり、バッグ212およびボディ218がチャンバ220を形成する。一実施形態において、バッグ212は金属またはアルミホイルなどの導電性材料でできている。他の実施形態では、バッグ212は金属化された膜または金属化された二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(BoPET)または通常はMylar(登録商標)である他の同様の可撓性ポリマーでできている。あるいは、バッグ212は、静電気散逸コーティングもしくは層をバッグ212に形成する帯電防止剤で処理され得る。同じことがボディ218に当てはまり、帯電防止コーティングもしくは層からできる、帯電防止コーティングもしくは層に積層される、または帯電防止コーティングもしくは層でコーティングされ得る。
【0078】
第一実施形態と同様に、バッグ212は、使用する準備をしているときに、バッグ212を膨張位置に開く形状記憶をバッグに与える、弾性的に可撓性のまたは形状記憶の材料でできているもしくは含む、1つ以上のシーム212.3で構築される。1つ以上のシーム212.3はまた、収縮の間にその機能を向上させること、ならびにその見た目を改善することが必要な場合に、所定の方法でバッグの収縮の仕方を制御し得る。チャンバ220は、バッグ212が、ユーザが呼吸する間の通常の使用中に、過度に膨張したり、または完全に収縮したり(潰される)することがないように十分に大きな体積を有する。これに関して、小さなバッグ212が若年のユーザに提供され、大きなバッグ212がより広範のユーザに提供されるように、バッグ212の体積は、ユーザの年齢に応じて選定される。
【0079】
流入口214は、マウスピース258を有する薬剤カップ256(「ポット」)からの流出口を受けるように構成される受け口の形であって、薬剤カップ256は、ネブライザ(図示なし)などの強制空気もしくは圧縮空気の吸入用薬物送達装置(IDDD)の下流にある。薬剤カップ256は、導管257を介してネブライザに連結される。
【0080】
流入口14は、チャンバ220への流入口214によって画定される流入通路224を画定する取付具222を含み、流入通路224は
図7で最もよく図示されている。取付具222は、取付具222に取付られ、流入口214によって形成される流入通路224を取り囲む、密閉カラー226を含む。カラー226は、流入通路224がマウスピースの形状にほぼ相補的であるように、外形を決められる。カラー26は、マウスピースの形状のわずかな変化に応じて密閉接触で一致できるように、弾性的に可撓性を示す。マウスピース258が流入口214に取り付けられるとき、カラー226がマウスピース258に対して環状に密閉するように、マウスピース258は圧入によって流入通路224に押し込まれる。
【0081】
本実施形態において、第一実施形態の取付具122と同様に、取付具222は円盤130から延びて縁134に続く、環状スカート132を備えたほぼ円形の円盤130を含む。流入通路24は円形形状であって、他の実施形態ではネブライザマウスピースの広い範囲に適合する形状の場合もあり、キットで売られている場合もある。
【0082】
他の実施形態では、流入通路224は、標準の断面を有するカラー226を備えたマウスピース258とほぼ相補的になる形状の場合がある。たとえば、このようなカラー226は、流入通路224を囲む円盤130の縁部にクリップ留めできるように、外側の溝を備えた可撓性トーラスとして形づけられ得る。あるいは、円盤130はより厚い場合があり、カラー226は流入通路224内の円盤130に設けられる溝内に保持されるOリングの場合がある。
【0083】
取付具222は、流入口14に挿入され、異なる型のネブライザもしくは薬剤カップ256を収容するように配置される連結具(図示なし)を選択的に含み得る。取付具222と、もし設けられるのであれば連結具とは、静電気が蓄積するのを避けるために導電性材料で作られ、あるいは、帯電防止剤でコーティングされる。
【0084】
ある実施形態において、流出口216は、流出通路242を画定する一体型マウスピース240を含む。他の実施形態では、流出口16は、流出口216と連結可能な外付けマウスピースと係合する形状である。マウスピース240は、変形または圧迫されて閉鎖しないように、十分な剛性を有し、弁141を受けられる形状および寸法である。マウスピース240は、出力通路42の動作方向に直交する断面で卵型、円形、レンズ状、または楕円形であって、それによりユーザの口と概ね相補的な形状であり、口で密閉して受けることができ、または弁141と密閉して係合する。
【0085】
マウスピース240が、直接もしくは弁141などの弁を介してユーザの口の中に密閉して保持されていないとき、チャンバ20が周辺環境と自由に連結するように、流出通路242は通常は開いている。したがって、本発明はユーザが息を吐くときに呼気が入り込むのを防ぐために弁141を含む。
【0086】
簡潔にするために、この説明では第二実施形態のみが述べられているが、後述の説明は、本発明のスペーサ装置の両方の実施形態110および210に当てはまる。ネブライザなどの従来のIDDDと共に使用するときは、ユーザははじめに、ネブライザポット256のノズル258を流入通路224に挿入して、カラー226がノズル258の周りを密閉することによって、自身の薬剤カップ256をスペーサ装置210、220に取り付ける。ネブライザの電源が入れられ、圧縮空気、気体、または酸素が、導管257を通過して薬剤カップ256および258を介してチャンバ220に入る。そしてユーザが通常の方法で呼吸をして、呼気が弁141を介して大気に通過する。
【0087】
バッグ212が薬物エアゾール(微粒分散)227を含有する圧縮空気によって膨張すると、ユーザは弁141を覆うように自分の口を置き、バッグ212から吸入する。その後、ユーザは、ゆっくりとした深呼吸もしくは単純な周期的な呼吸で、通常の周期的な方法で呼吸をし、チャンバ220から薬物を吸入し、弁141のボディ160に設けられたスロット170を介して大気中に息を吐く。周期的な呼吸の間に、吸入の流量がネブライザからのエアロゾル液滴の流量を超えて、それゆえにユーザが優先的にバッグ212内に貯蔵された液滴の量を吸い込み、それによってバッグを空にするもしくは部分的に空にする傾向がある。吸入が深く行われ、バッグ212が完全に潰れる場合、通常の使用中に特にこの目的のために設計された一方向の弁を有するネブライザ薬剤カップから、流入口214を通って、追加の空気が取り込まれ、V字型取付部118と、取付具流入口214および流出口216の間に開放したトンネルを形成するT字型の取付部218との両方の形状および構成によって形成されるトンネルを通過する。
【0088】
ゆっくりとした深呼吸と、通常の周期的な呼吸は、低流速で行われ、従って薬物は口の後方に向かって吸い込まれまたは衝撃を与えて、咽頭部に堆積することがない。従って、より多くの薬物が吸い込まれ、肺に効果的に散布される。息を吐く間に、弁141は呼気がチャンバ220に到達するのを妨げる。しかし、もし長く息を吐く場合、バッグ212が完全に満たされ、過剰なエアロゾルが弁181を押し開き、ユーザからの呼気と共にスリット170を通って漏出する。弁の外側のユーザの呼気による微小な圧力はスリットを通過することによっていずれにせよ消失されるので、弁181を内部から開くのに必要な圧力は取るに足らない。本出願人は、試作品でこの状態を人工的に作り出して試験する際、その時点で圧力には気づきもしなかった。
【0089】
便利なことに、
図8および9に示される実施形態は、バッグ212が
図6および7に示される型に対して90°回転される、つまり、上から見たときに導管218.2と直角になるように導管218.1の縦軸回りに回転される、スペーサ装置210の型を示す。これは、流出口216で吸入するユーザと薬剤カップ256との間のさらなる空間の節約をもたらし、もし必要な場合は、より大きなバッグ212を使用できるようにする。重要なことに、バッグ212を回転することによって、エアロゾル化された薬物227を吸ったり吐いたりする間に、ユーザにとって重要な視覚的なフィードバックおよび監視を損なうことがない。
【0090】
バッグ212は選択的に、バッグ212が膨張したときに直立し、バッグ212が収縮したときに潰れるように構成される、可動のおよび/または膨脹式の小立像をその上側に含むこともできる(図示なし)。小立像は特に、子供たちを楽しませ、彼らが正しく呼吸していることを確認するために、スペーサ装置10を使用している間に子供たちにやる気と好意的な反応とをもたらすことを目的としている。一般的にバッグは、子供が装置110、220を使用するときに不安にならないように、たとえば子供向けのキャラクターまたは商品の描写180、280を備えている場合がある。
【0091】
本発明のマウスピース構成は、ほとんどの現在の標準のネブライザと同様にユーザの顔に呼気が吹き込むことがないように、逃し弁を有利に設置できるようにする。
【0092】
流れに対する低い抵抗と、バッグ212が容易に潰れることにより、楽な呼吸と全容量をもたらし、妨害されることなく流れおよび/または呼吸パターンに変化を加える。
【0093】
さらに、本出願人は、本発明に関して後続の利点を確認した。フレーム(ボディ)118およびバッグ112の金属性は、静電気によって粒子が内壁に付着し、スペーサ装置110内に残留する可能性を除去する。バッグ112は、取り外し可能で、そのときの医療的ニーズおよびユーザの好みに応じて、異なる体積になる。入口の角度は、ネブライザからの液滴がバッグの容積内へほぼ直線で方向づけられて、微粒分散された液滴が主に自身の慣性によってバッグ内に残り、それによりリザーバに空気に浮遊する粒子の雲もしくは霧を形成し、吸入の準備ができることを確実にする。
【0094】
加えて、入口に弁がないという事実と併せて、角度によって、固体の壁および表面に対する粒子の固着および保持が最小化されていることを確実にする。
【0095】
ユーザまたは状態の要求に応じて、様々な種類の外部からのマウスピース(図示なし)が流出口116に追加できることを留意することが重要である。これはもし必要であれば、フェイスマスクを含むであろう。
【0096】
潰すことが可能なチャンバ220が低い位置にあることによって、ユーザへの干渉を著しく増大させることなく、より大きな空間(体積)を使用できるようにする。チャンバ220の体積がより大きいことによって、特に本明細書に記載されるスペーサ装置110の第一実施形態において、薬物送達が一般的により効果的で、薬物粒子液滴227の分散を改善し、薬物粒子液滴227が側壁に固着する傾向を低くできるようにする。
【0097】
基本的に、ネブライザ薬剤カップ256からバッグ212に排出される薬物の総量は、システム内に捕らえられ、途中の各段階における損失が最小化された状態で、肺への吸入に妨害なく利用できる。
【0098】
加えて、使用する間、バッグ220の動作量は、吸入される薬剤227の量に関する重要な指標である。これは、ユーザおよび/または観察者に、重要な視覚による質的および量的な機能的フィードバックを与え、装置に対する快適な安心感および自信を促し、使用を最適化し、処置の順守を促進するのに重要であることが示された。重要なことに、本発明装置は、常に呼吸パターンおよび流量に対する十分な制御をユーザに加え、理想としては、ゆっくりとした深い吸入を規則的にもしくは間隔を空けて使用して、または通常の呼吸とともに周期的な流れを使用する。流量が少ないことによって、口、咽頭、および声門部の中で衝突し保持される薬物の量を最小化し、同時に、気道に入り込む吸入薬物液滴または粒子が肺の中でより均一に堆積し、肺のより末端部分に送達され、最も必要とされる罹患部によりよく侵入することを確実にする。
【0099】
したがって、本発明の装置は、他の吸入装置と比較したときに、次のことを実証する。
・気道への薬物送達の効果の改善
・息を吐く間に損失されるエアロゾルによる環境汚染の懸念の除去
・薬物が装置に保持されるようにする壁粒子衝撃としての静電気が重大な問題でない
・呼吸パターンおよび/または流量の完全な制御
・使用の簡易化および向上した容易性
・操作中の動作に関する、ユーザへの有益な視覚による機能的フィードバックおよび安心感、ならびに、
・低費用。
【0100】
加えて、これらの利点の全ては、かなり若年または高齢であるユーザ、健康状態が非常に悪い(深刻な喘息発作の間などの)ユーザ、または慢性肺疾患を患っており気道が損傷されているユーザなどの、通常は効果的な薬物送達の達成が最も難しい状況で増幅される。
【0101】
最終的な概要では、本明細書に記載される本発明は、低い抵抗、閉鎖回路、帯電防止、潰すことが可能なチャンバの概念を利用して、エアロゾル化された薬物を吸入する間に、落ち着いた通常のもしくは低流量の呼吸パターンを可能にする装置をもたらす。これらの特徴は、本発明人が認知している現在の装置と比較したときに、特に改善された送達効率、使用の簡易さ、および多用途性に関して、特に有益である。
【0102】
加えて、これらの利点の全ては、かなり若年または高齢であるユーザ、健康状態が非常に悪い(深刻な喘息発作の間などの)ユーザ、または慢性肺疾患を患っており気道が損傷されているユーザなどの、効果的な薬物送達の達成が最も難しい状況において、最も顕著に特徴的である。送達効率が向上することによって、浪費が減少し、吸入式遺伝子治療、予防接種、α1-アンチトリプシン、および他の生体化合物などの、高価なネブライザで投与される製剤の費用効果が向上する。
【0103】
現在の標準のネブライザの全てに見られる主な欠点は、呼気の間に投与量の少なくとも50%が外部の大気に損失されることである。上述のように、これは(1)乏しい薬物送達および(2)環境汚染の懸念につながる。上述の例示の実施形態の観点から、本明細書に記載される本発明を使用して実施される実験の結果がここで提示される。実験は、本発明が呼気の間のエアロゾル損失の実質的に全てを除去することを確認し、これは環境汚染の懸念を和らげるだけでなく、装置の流出口から送達される、排出薬物が250%より多く増加する結果となった。
【0104】
実験1。
目的:Pari LCプラスネブライザだけと、我々のスペーサ発明品と併用されるPari LCプラスネブライザとを比較して、サルブタモールの噴霧化に続くエアロゾル送達および浪費を10分間に渡って比較する。
方法:標準のPari LCプラスネブライザを使用して、サルブタモールネブライザ製剤の100マイクログラムの用量が8分間にわたって噴霧化された。
成人の呼吸パターンで設定されている呼吸シミュレータが装置流出口に連結された。
フィルタが(1)シミュレータの「口」に送達されるサルブタモールの量を測定するために装置の流出口と、(2)呼気の間の薬物損失によるサルブタモールの浪費を測定するために、マウスピースにある呼気弁とに配置された。
フィルタに捕らえられたサルブタモールの量は、標準のHPLC方法を使用して測定された。
実験は、本発明の流出口から送達される用量およびマウスピースにある逃し弁からの浪費を測定するフィルタを備えた本発明と併用されるPari LCプラスを用いて繰り返された。
結果:
結果は以下にグラフで表示される。
(1)8分間の噴霧化にわたってPari LCプラスと共に本発明を使用して送達される用量の割合は、Pari LCプラスのみによって送達される9.7%に対して、26%であった。これは、薬物送達の250%より大きな増加を示し、インテリジェントネブライザの送達効率に勝るとは言わないが同程度の範囲内である。
(2)本発明を使用した呼気の間の浪費の割合は、1.1%の取るに足らないものであって、これは同じ期間に送達されたわずかな用量(1/25)のみを意味する。一方で、Pari LCプラスのみを使用すると、同じ期間に「口」に送達された9.7%よりも多い、用量の12.8%が、呼気の間に浪費されたとして測定された。これは、送達されるよりも多くの薬物が浪費される、標準のネブライザの典型である。
【表1】
結果:本発明は、呼気の間の薬物損失を効果的に最小化し、それにより浪費を実質的に除去し、薬物送達を250%より多く増加させる。同様に、これは浪費されたエアロゾル化された薬物による環境汚染に関する懸念を和らげる。
本発明の試作品を使用して追加の予備実験が実施され、同様の結果を生み出し、Tc-99で放射標識される吸入沈着研究を含み、Pari LCプラスネブライザと組み合わされる本発明が、同じ手順を使用して試験されたアキタインテリジェントネブライザと同等の送達効率(DE)を示したことを実証した。
【0105】
本発明の任意の実施形態は、本明細書で参照されるもしくは示される複数の部品、要素、および機構に、個々でまたは集合的に、部品、要素、または機構の2つ以上のいずれかもしくは全ての組み合わせで、広く存在すると言ってもよい。具体的な整数が本明細書で述べられており、本発明が関連する技術における周知の同等物を有し、このような周知の同等物は、別々に明記されているかのように本明細書に組み込まれるように見なされる。例示の実施形態では、周知のプロセス、周知の装置構造、および周知の技術は、当業者に容易に理解され得るので、詳細に説明されていない。
【0106】
様々な実施形態を記載するのに関して(特に、請求される主題に関して)、「一つの(a)」、「一つの(an)」、「前述の(said)」、「前述の(the)」および/または同様の指示対象の用語の使用は、本明細書で他に指示されているもしくは文脈によって明確に否定されていない限り、単数形および複数形の両方を網羅するように解釈されるべきである。「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」および「含有する(containing)」という表現は、他に言及されていない限り、制約のない表現(つまり、「含むが、限らない」を意味する)として解釈されるべきである。本明細書で使用されるように、「および/または」という表現は、関連する列挙される項目の1つ以上の任意の全ての組み合わせを含む。本明細書におけるいかなる文言も、請求されていない主題が、請求されている主題の実施に必要不可欠なものであることを示すものとして解釈されるべきではない。
【0107】
「内側」、「外側」、「下方(beneath)」、「下(below)」、「低部(lower)」、「上方(above)」、「上部(upper)」および同類のものなどの空間的に相対的な表現は、1つの要素または機構の、他の1つの(または複数の)要素または1つの(または複数の)機構に対する関係を、図で示されるとおりに表すための説明を簡易化するために本明細書において使用され得る。空間的に相対な表現は、図に示される方向に加えて、使用中または操作中の装置の異なる方向を包含するように意図され得る。たとえば、図の装置が反転されると、他の要素または機構の「下にある(below)」または「下方にある(beneath)」として記載される要素が、前述の他の要素または機構の「上方に(above)」向けられる。従って、「下(below)」という例示の表現は、上と下の両方の方向を包含し得る。その他では、装置が方向付けられると(90°または他の方向に回転されると)、本明細書で使用される空間的に相対な記述子はそれに応じて解釈される。
【0108】
本発明の「一例」または「ある例」、あるいは同様の例示の文言(たとえば、「など」)を本明細書で参照することは、排他的な意味を持たないことを理解されたい。請求される主題の、様々な十分かつ具体的で、実践的かつ有用な例示の実施形態が、請求される主題を実行するために、文章で、および/または図で本明細書に記載されている。
【0109】
したがって、一例は本発明のいくつかの側面を例示し、一方で他の側面は異なる例で例示される。これらの例は、当業者が本発明を実施するのを助けることを意図しており、文章で明確に他に指示されていない限り、本発明の全体の範囲を限定する意図はない。本明細書に記載の1つ以上の実施形態の変更形態(たとえば、改良および/または改善)は、本願を読むことで当業者に明らかになるであろう。本発明者(もしくは複数の本発明者)は、当業者がこのような変更形態を必要に応じて使用することを期待し、本発明者(もしくは複数の本発明者)は、請求される主題が、本明細書に具体的に記載されるもの以外で実行されることを意図する。