(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】光学ヘッド
(51)【国際特許分類】
B29C 65/16 20060101AFI20221125BHJP
G02B 3/00 20060101ALI20221125BHJP
G02B 1/00 20060101ALI20221125BHJP
B23K 26/57 20140101ALI20221125BHJP
【FI】
B29C65/16
G02B3/00 Z
G02B1/00
B23K26/57
(21)【出願番号】P 2020501824
(86)(22)【出願日】2018-07-17
(86)【国際出願番号】 EP2018069330
(87)【国際公開番号】W WO2019016172
(87)【国際公開日】2019-01-24
【審査請求日】2021-07-09
(31)【優先権主張番号】102017116110.4
(32)【優先日】2017-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】519414686
【氏名又は名称】コンサルトエンジニアイーペー アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グブラー、ウルリッヒ
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-136675(JP,A)
【文献】特開2005-81396(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/16
G02B 3/00
G02B 1/00
B23K 26/57
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザビーム(5)に対する放出側の端部を有するハウジング(2)と、前記ハウジング(2)内に設置されたボール(3)とを備える、レーザ透過溶着装置の光学ヘッド(1)であって、
前記ボール(3)は、屈折率が
1.45よりも高い材料から形成されており、
前記ボール(3)を設置するための空気軸受(10)が前記ハウジング(2)と連携し、前記空気軸受(10)は、前記レーザビーム(5)の通路に供される開口部(11)を備え、
前記光学ヘッド(1)は、さらに、前記レーザビーム(5)が届く前に前記レーザビーム(5)が前記ボール(3)上にフォーカスされるように前記ハウジング内に設計及び/又は配置された集束レンズ(8)を備え、
前記開口部(11)は、径が最大4mmの寸法であることを特徴とする光学ヘッド(1)。
【請求項2】
前記ボール(3)は、屈折率が少なくとも1.7である材料から形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の光学ヘッド(1)。
【請求項3】
前記ボール(3)の径は、15mm以下、好ましくは10mm以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の光学ヘッド(1)。
【請求項4】
前記ボール(3)を保持する、前記ハウジング(2)上に配置された拘束部(9)によって特徴付けられる、請求項1~3のいずれか1項に記載の光学ヘッド(1)。
【請求項5】
前記ボール(3)は前記ハウジング(2)の円筒状シャフト部分(4)内に摺動可能に設置されており、前記レーザビーム(5)が前記ボール(3)を照射する前に前記レーザビーム(5)を実質的にコリメートするように配置されたコリメートレンズ(7)によって特徴付けられる、請求項1~4のいずれか1項に記載の光学ヘッド(1)。
【請求項6】
前記コリメートレンズ(7)の設置高さ及び/又は特性及び条件によってスポットサイズ(18)が決定されることを特徴とする、請求項
5に記載の光学ヘッド(1)。
【請求項7】
前記開口部は、径
が最大2mmの寸法であることを特徴とする、請求項
1~6のいずれか1項に記載の光学ヘッド(1)。
【請求項8】
前記空気軸受(10)は、前記開口部(11)に加えて、圧縮空気の通路に供される少なくとも1つの凹部(19)を備えることを特徴とする、請求項
1~7のいずれか1項に記載の光学ヘッド(1)。
【請求項9】
ボール(3)を備える光学ヘッド(1)によるレーザ透過溶着によって2つの接合相手(13,14)を溶着する方法であって、請求項1~
8のいずれか1項に記載の光学ヘッド(1)を使用することを特徴とする方法。
【請求項10】
前記コリメートレンズ(7)の設置高さ及び/又は特性及び条件によって前記レーザビーム(5)のスポットサイズ(18)を選択する、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
前記レーザビームを、前記レーザビームが前記ボールを照射する前にフォーカスすることを特徴とする、請求項
9又は
10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ透過溶着装置の光学ヘッド、及びレーザ透過溶着によって2つの接合相手を溶着する方法を対象とする。
【背景技術】
【0002】
従来技術から、レーザを使用して樹脂を溶着する方法が知られている。レーザ透過溶着加工において、接合又は溶着させる接合相手のうちの一方は、レーザビームに対して高透過性である一方、他方の接合相手はレーザビームに対して高い吸収度を有する。したがって、接合相手を通過するレーザビームは、両方の構成要素間に位置する接合部において、局部的な加熱を生じる。知られている態様では、両方の接合相手を一体加圧することによって、溶着に必要な圧力が確立される。
【0003】
多様なレーザ透過溶着装置及び加工が知られている。
【0004】
例えば、光学ヘッドを備えたレーザ透過溶着装置が知られている。特に、レーザ透過性のボールを内部に有するハウジングを備えた光学ヘッド又は加工ヘッドが知られている。このような光学ヘッドは、例えば、ボールを対応する接合点上に加圧し、かつ、同時に、ボールを通して接合点上に向けられた、溶着に使用されるレーザビームのレンズとして機能することによって、2つの樹脂接合相手を互いに溶着することに適している。好ましくは、生成させる溶着シームに沿って、又は溶着シームを沿わせて生じさせる経路に沿って光学ヘッドが容易に誘導されるように、ボールはハウジングの内側に可動に設置される。ボールは、接合相手のうちの一方の表面上で転がり、溶着に必要な接触圧を継続的に及ぼす。
【0005】
光学ヘッドを備えたこのような装置は、特許文献1、特許文献2、及び特許文献3に開示されている。上記の文献による光学ヘットの利点のうちの1つは、溶着させる部品を、溶着させるすべての位置において、又は溶着シーム全体に沿って、同時に一体加圧する必要がないことである。代わりに、ボールは、レーザビームがそれら部品に当射する点及び瞬間において、それら部品を加圧して互いに溶着させるだけである。
【0006】
特許文献1は、ボールを支持する機械的マウントを開示しているが、ボールは特許文献3による光学ヘッド内で変位可能に誘導又は支持される、すなわち、ボールは転がり運動に加えて光学ヘッド内で変位することが可能である。この場合に、それは、溶着面に垂直な、光学ヘッド内の垂直変位である。ボールは、溶接加工中に圧縮空気で接合相手上に加圧される。特許文献2による光学ヘッドも、圧縮空気で作動する。
【0007】
ボールに対する空気軸受などの機械的マウントを有する、知られている光学ヘットの欠点は、光学ヘッドからマウントを介してボールに、したがって溶着させる接合相手に伝導される最大の接触圧が、機械的マウントの設計によって制限されることである。同じ理由で、機械的マウントを有する光学ヘッドにおいて30mm未満の径を有するボールを使用することが現在のところ可能ではない。
【0008】
摺動するボールを有する、知られている光学ヘッドの欠点は、光学ヘッド内のボールの位置に応じてフォーカス距離が変化することである。接合相手に必要な圧力を伝達するためにこのような光学ヘッドのボールが圧縮空気で加圧される場合に、大きい力を伝達することは通常可能でない。ボールから接合相手に伝達される力と、結果として得られる圧力とは、ボールの径を含む多数の要因に依存する。この局面において、大きい力は、少なくとも約50Nの力であると解釈できる。
【0009】
フォーカス距離は、入射放射がコリメートされていない場合でも、レンズとフォーカス点又は焦点との間の距離である。対照的に、焦点長さは、入射ビーム又は入射放射が、コリメートされた放射又はコリメートされたビームである場合に限られる、レンズの特性値である。
【0010】
ボールに対する機械的マウントを有する、知られている光学ヘッドのさらなる欠点は、それら光学ヘッドにより、接合相手に予め規定された小さい力を信頼性高く加えることができないことが多いということである。ここでの制限要因は、例えば、接合相手に作用する光学ヘッドの加重と、さらには光学ヘッドを加圧する通常利用可能な装置、例えば、通常、少なくとも1バールで動作させる必要がある空圧スライドである。機械的マウントを備えた光学ヘッドを有する装置は、通常、大きい力に対して設計されている。しかしながら、光学ヘッドから接合相手に大きい力が伝達される場合に、ボールが気泡を生じてボールの正面でその気泡を押圧する可能性があり、そのことが歪み及びしわ寄りをもたらす可能性がある。上述した摺動するボールを有する、知られている光学ヘッドの場合に、例えば、接合させる接合相手に光学ヘッド全体の荷重が作用するのではなく、ボールの荷重のみが作用する。しかしながら、摺動するボールを有する、知られている光学ヘッドは、シャフトにおけるボール位置の変化がフォーカス距離を著しく変化させる可能性があるため、この問題に対する解決策を提供せず、このことは信頼できる溶着が保証されなくなることを意味する。
【0011】
しわ寄り及びひずみを抑制するために、ボールと接合相手との間に配置される厚いレーザ透過性のフォイル、又はガラスプレートも考えられ得る。しかしながら、これによって、溶着加工がより複雑で柔軟性に欠けるものとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】欧州特許第1 405 713号(B1)明細書
【文献】独国特許出願公開第43 19 742号(A1)明細書
【文献】国際特許出願公開第2014 072 326号(A1)明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、先行技術の欠点を解消することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
独立請求項の主題は、課題の解決手段をもたらす。有利な実施形態は下位請求項に記載されている。
【0015】
本発明によるレーザ透過溶着装置の光学ヘッドは、レーザビームに対する放出側の端部を有するハウジングと、ハウジング内に設置されたボールとを備える。ボールは、屈折率が石英ガラスの屈折率よりも高い材料から形成されている。知られている石英ガラスの屈折率は、約1.45である。
【0016】
本発明の局面において、レーザビームを、好ましくは、レーザ源によって放出される放射であると解釈する。
【0017】
ボールは、レーザ透過性のボールである。本発明がボールに言及するときは、常に、このようなレーザ透過性のボールのことを意味する。
【0018】
レーザビームをハウジング内に導入するために、放出端と反対側に、光ファイバ、例えばガラスファイバなどが設けられ得る。これは、ハウジングと、レンズとして作用するボールとを、通過する。
【0019】
このような光学ヘッドは、例えば、輪郭溶着装置に使用できる。輪郭溶着は別種のレーザ透過溶着であって、生成させる溶着シームに沿って光学ヘッドが誘導され、これにより、レーザビームが溶着シーム上の各点を1回だけ通過する。ただし、本発明は、他の別種のレーザ透過溶着にも適用できる。
【0020】
ボールは、屈折率が少なくとも1.6である材料から形成され得る。ボールは、好ましくは、屈折率が少なくとも1.7である材料から形成され得る。さらには、少なくとも1.75の屈折率を有する材料も考えられ得る。例えば、屈折率が1.76~2.15である材料が考えられ得る。
【0021】
ボールの材料として、サファイア、ルビー、スピネル、キュービックジルコニア、LAH79、N-SF8、N-LASF44、S-LAH53、LASF35、N-LaSF9、LaSFN9、SLAH58、SLAH65、SLAH71、SLAH79、STiH53、L-BBH1、K-VC89、又はK-PsFn203が挙げられる。
【0022】
ボールは、好ましくは、任意の幾何学形状の溶着シームを生成することが可能であるように、ハウジング内に回転可能に設置されている。
【0023】
ボールの径は、15mm以下、好ましくは10mm以下であり得る。
【0024】
ボールを保持する拘束部をハウジング上に取り付けることが考えられ得る。好ましくは、この拘束部は、ハウジングの放出端に位置する。
【0025】
一方では、拘束部は、ボールが放出端から落下することがないように、ボールを保持するように機能する。
【0026】
他方では、保持具は、ハウジングの放出端又は光学ヘッドをシールするように機能する。より詳細に後述するように、好ましくは、光学ヘッド内に圧縮空気が導入される。この目的で、適切な空気流入口を設けることが可能である。これは、接合させる部品上にボールを加圧する必要な接触圧を生じることが可能である。圧縮空気を用いて、ボールに対する空気軸受を設けることができる。接合相手は、通常、樹脂部品、例えば、フィルムなどである。
【0027】
上述の拘束部は、好ましくは、ボールがハウジング内又はシャフト部内に摺動可能に設置される光学ヘッドの実施形態でのみ設けられ、それはこれらの実施形態のみが封止を必要とするからである。当然ながら、空気軸受を備えた、より詳細に後述される光学ヘッドの実施形態は、また、ボールが放出側で空気軸受から落下することがないように、ボールを保持する少なくとも1つの手段を有する。このような器具は、上述の拘束部と設計が同様であり得る。
【0028】
ハウジングは、円筒状シャフト部を含み得る。このシャフト部内に、ボールを摺動可能に設置することが可能である。例えば、ボールを、円筒状シャフト部内で長手方向に摺動可能に設置することが可能である。光学ヘッドは、レーザビームがボールを照射する前にレーザビームを実質的にコリメートするように設計された、コリメートレンズ又はコリメータを含み得る。
【0029】
コリメートレンズは、通常、集束レンズである。ただし、本発明の局面では、レーザビームの入口点からボールへ向かう光学ヘッド内のビーム経路を、レーザビームがボールへ向けてフォーカスされる場合にのみ、集束レンズと称する。これに対して、例えば、ハウジング内への点状の入口点から発散するレーザビームが、ボールに向かう放射がコリメートされるように、集束レンズによってコリメートされるならば、この場合にコリメートレンズとの用語が常に使用される。
【0030】
本発明のすべての実施形態において、好ましくは、圧縮空気流入口が設けられている。
【0031】
ボールがシャフト部内に摺動可能に設置されている場合に、圧縮空気流入口を介して光学ヘッドの内部に供給される圧縮空気は、ボールに放出端の方向に力を加えるように機能する。溶着加工の間、好ましくは、ボールを、圧縮空気単独で、溶着させる部品上に加圧する。
【0032】
好ましくは、コリメートレンズは、レーザビームが、ボールに当射する直前にコリメートされる、又は少なくとも実質的にコリメートされるように、光学ヘッド内に配置されている。コリメートされたビームがボールに当射するときに、フォーカス距離は、シャフト内のボールの位置に応じて変化しない。これに対して、ビームが、ボールに当射する直前に発散又は集束するとすれば、フォーカス距離は、シャフト内のボールの位置に応じて変化する。
【0033】
ボールへの当射直前に行われるコリメーションは、レーザビームが、コリメーション後かつボールへの当射前に、発散又は集束ビームに変換されなくなることを意味する。したがって、このような実施形態におけるコリメートレンズとボールとの間に、好ましくは、ビームに影響を与える他の光学素子、特に、集束又は発散ビームを生成するレンズが存在しない。
【0034】
摺動する態様でボールが誘導される、知られている光学ヘッドと比較して、ボールを照射する直前にコリメートされたビームと高屈折率を有するボールとの組み合わせは、シャフト内のボールの位置の変化が焦点距離にあまり影響を与えないことと、焦点がボールに可能な限り近いことを意味する。高屈折率は、好ましくは、ここでは石英ガラスの屈折率よりも高い、例えば、1.45よりも高い、又はさらには1.7よりも高い屈折率であると解釈する。このような実施形態は、ボールが、圧縮空気を介して、150N未満、例えば、120N未満、又は100N未満、又は80N未満、又はさらには50N未満の力を受けるときに、特に適している。
【0035】
コリメートレンズの設置高さ及び/又は特性及び条件によってスポットサイズが決定されるように、光学ヘッドをセットアップすることが可能である。このことは、本発明による光学ヘッドのすべての実施形態に当てはまる。
【0036】
スポットサイズは、接合部におけるレーザビームの径として定義される。接合部がボールのフォーカス点又は焦点から離れるほど、スポットサイズが大きくなる。
【0037】
代替実施形態によれば、レーザビームが通過する開口部を含む、ボールを支持する空気軸受を、ハウジングに追加することが可能である。レーザビームが届く前にレーザビームがボール上にフォーカスされるように、ハウジング内に設計された、及び/又は位置する集束レンズを、光学ヘッド内に配置することも考えられ得る。このフォーカシングは、好ましくは、開口部を極力小さく維持することが可能であるように、開口部の領域で、すなわち開口部内又は開口部の直前若しくは直後で行われる。
【0038】
開口部は、4mmの最大径を有し得る。好ましくは、開口部の径は、2mmの最大値の寸法である。
【0039】
好ましくは、空気軸受は、開口部に加えて、圧縮空気の通路に供される少なくとも1つの凹部を有する。
【0040】
本発明は、また、上述のボールを備えた光学ヘッドによるレーザ透過溶着によって2つの接合相手を溶着する加工を含む。
【0041】
コリメートレンズの設置高さ及び/又は特性及び条件によって、本発明のすべてのバージョンについて、レーザビームのスポットサイズを選択することができる。
【0042】
レーザビームを、ボールに当射する直前にコリメートすることが可能である。このことは、放出側でボールを出るレーザビームのフォーカス距離が、シャフト内のボールの位置に依存しないことを意味する。換言すると、ボールに当射する前にコリメートされるレーザビームの場合に、レーザビームの入射角は、ボールの位置にかかわらず常に同じであり、同じことがレーザビームの出射角に当てはまる。
【0043】
これに代えて、レーザビームが届く前にレーザビームをボール上にフォーカスさせることができる。このことは、特に、レーザビームが通過する開口部を有する空気軸受にボールが設置される場合に有用である。空気軸受がボールに大きな力を伝達することが可能であるように、開口部を極力小さくすることが有利である。ここでは、レーザビームは、好ましくは、開口部の領域でフォーカスされる。
【0044】
本発明のさらなる利点、特徴、及び詳細は、以下の好ましい実施形態の説明と、
図1~
図9に示される図面とに見出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】ボール3が摺動可能に誘導される、知られている光学ヘッド1。
【
図2】本発明の第1の実施形態による光学ヘッド1。
【
図3】異なる屈折率を有するボール3に対する
図2による光学ヘッドにおけるレーザビーム5の異なる進路。
【
図5】ボールが空気軸受10で支持された、知られている光学ヘッド1を示す。
【
図6】本発明の第2の実施形態による光学ヘッド1。
【
図7】異なる屈折率を有するボール3に対する
図6による光学ヘッドにおけるレーザビーム5の異なる進路。
【
図8】異なるコリメートレンズ7に対する
図6による光学ヘッドにおけるレーザビーム5の異なる進路。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図1は、従来技術による光学ヘッド1を示す。ボール3は、レーザビーム5又はビーム経路5に対して放出側のハウジング2の端部に位置する。円筒状シャフト部4、出口側にある拘束部9、圧縮空気流入口6、光ファイバ12、コリメートレンズ7、及び集束レンズ8も示されている。加えて、溶着させる接合相手13,14が示されている。
【0047】
図2は、本発明の第1の実施形態による光学ヘッド1を示す。これは、一方では封止板15によって置き換えられた集束レンズ8に関して、他方ではボール3を形成している材料の屈折率に関して、
図1による知られている光学ヘッド1と異なっている。
【0048】
図3は、異なる屈折率を有するボール3に対する、
図2よる光学ヘッド1内のレーザビーム5の異なる進路を示す。
【0049】
図4は、非動作位置にある、
図2及
図3による光学ヘッド1を示す。
【0050】
図5は、従来技術による別の光学ヘッド1を示す。
図1に関して既に記載したいくつかの特徴に加えて、光学ヘッド1は空気軸受10を含む。
【0051】
図6は、本発明の第2の例による光学ヘッド1を示す。これは、一方では集束レンズ8の成分に関して、他方ではボール3を形成している材料の屈折率に関して、
図5による知られている光学ヘッド1と異なっている。加えて、
図6は、空気軸受10が、中央の開口部11に加えて、圧縮空気の通路に対するさらなる凹部19を有することを示す。開口部11及び凹部19について、
図6~
図8にはさらに記載しないが、
図9に明確に示す。
【0052】
図7は、異なる屈折率を有するボール3に対する、
図6による光学ヘッド1内のレーザビーム5の異なる進路を示す。
【0053】
図8は、異なるコリメートレンズ7.1,7.2に対する、
図6による光学ヘッド1内のレーザビーム5の異なる進路を示す。
【0054】
図9は、中央の開口部11周辺における、
図6の拡大された部分を示す。
【0055】
図1~
図9を参照して、本発明による光学ヘッド1の機能を以下に説明する。
【0056】
図1に示す知られている光学ヘッド1は、接合相手13,14が溶着によって互いに接合される溶着点又は接合点の上方に位置する。光学ヘッド1は、レーザ透過接合相手13よりも僅かな距離だけ上方に誘導される。ボール3は、圧縮空気流入口6を介してハウジング2の内部に供給された圧縮空気で加圧される。それゆえ、矢印16の方向に作用する力がボール3に加わり、接合相手13,14を一体加圧する。圧縮空気の供給量によって、ボール3から接合相手13,14に伝達される接触圧を調整することができる。ハウジング内に供給された圧縮空気の一部は放出端において抜け出し、そのことが未指定の矢印によってそこに示されている。光ファイバ12から現れたレーザビーム5は、まずコリメートレンズ7によってコリメートされ、次いで集束レンズ8と、集束レンズとしても作用するボール3とによって、フォーカスされる。その場合に、レーザビーム5のフォーカスは2つの接合相手13,14の間に位置する接合部に位置し、そこで両方の接合部13,14が溶着される。
【0057】
ボール3はシャフト4内で摺動可能に誘導される、すなわち、ボール3はシャフト部4内で矢印16の方向に、又はその反対方向に、移動することが可能である。
図1において明確に分かるように、レーザビーム5が集束レンズ8とボール3との間で集束する際に、レーザビーム5のボール3内への入射角はシャフト部4内のボール3の位置に応じて変化する。
【0058】
図9における圧縮空気流入口6の内側の未指定矢印を参照すると、集束レンズ8は、流入する圧縮空気がボール3へと向かうように、最上部において円筒状シャフト部4を封止する。
【0059】
光学ヘッド1又はハウジング2が溶接させる部品13,14の上の一定の高さに移動し、溶接させる部品13,14のうちの少なくとも一方が特に厚い又は薄い部分を通過する場合に、ボール3は矢印16の方向に又は矢印16の方向と反対に僅かに移動する。ボール3が矢印16の方向に沿って又はその反対に移動する距離はボール3の径にも満たないことが多いが、その距離は、従前では後述する理由でフォーカスの大幅な変化をもたらす可能性がある。
【0060】
図1による知られている光学ヘッド1において、接合相手13,14及びハウジング2の位置が不変のままである場合には、矢印16の方向に沿って又はその反対に入射角を変化させることによって、焦点が一方側に変位する。このことは、知られている光学の法則から明らかであり、この法則に従って、レーザビーム5がボール3内を、すなわち、光学的により密な媒体内を通過するときに、レーザビーム5が垂直方向側に屈折する。
【0061】
接合相手13,14及びハウジング2の位置が維持される場合に、レーザビーム5がボール3を出る出口点が矢印16の方向に沿って又はその反対に変位しているため、焦点の位置は、シャフト部4内のボール3の変化した位置に起因して他方側に変化する。光学ヘッド1の設計に応じて、両方の効果が同じ影響を与えることが多い、すなわちボール3が矢印16の方向に移動するときに、上述した2つの効果が加わり合って焦点の位置に影響を与えることが多い。したがって、
図1による知られている光学ヘッド1については、ハウジング2内又はシャフト部4内のボール3の位置の僅かな変化であっても、矢印16の方向の又はその反対の焦点の大幅な変化を結果として生じる。
【0062】
図2に表された本発明の第1の実施形態による光学ヘッド1において、コリメートレンズ7の後のコリメートされたレーザビーム5は、レンズとして作用するボール3の光軸17に平行に進行する。したがって、矢印16の方向に沿ったボール3の位置に応じた異なる入射角に関して上述した第1の効果は、生じない。
【0063】
図3は、高屈折率nを有する材料を選択することによってフォーカシング能力を著しく向上させることができることを示す。ボール3を形成している材料の屈折率nが高いほど、焦点又はフォーカスの位置が高い、すなわちボール3に近い。
【0064】
図1~
図3はそれぞれ動作位置にある光学ヘッド1を示すが、
図3では、概観をより良くするために、接合相手13,14が示されていない。これに対して、
図4は、非動作位置にある、
図2及び
図3による光学ヘッド1を示す。
【0065】
図4は、ボール3が非動作位置において矢印16の方向に移動し、拘束部9とともにハウジング2の放出端を封止することを示す。このことは、
図1~
図4における圧縮空気流入口6付近の未指定の矢印及び放出端を比較することによっても分かる。
図1~
図4による非動作位置では、放出端において抜け出す空気はない。対照的に、
図2及び
図3に示す動作位置では、一定量の圧縮空気が、シャフト部4の内面とボール3の表面との間の圧縮空気の通り道を常に押し進み、放出端においてハウジング2を出る。拘束部9により、好ましいことに、一方では、ボール3がハウジング2から落下することがないことが確保される。他方では、非動作位置において、拘束部9は、ボール3とともに放出端を封止する。
【0066】
封止板15により、
図1による知られている光学ヘッドの集束レンズ8とちょうど同じように、圧縮空気がボール3の方に向かうことが確保される。
【0067】
図6~
図8は、
図5に示す従来技術と比較して改善された光学ヘッド1を有する、本発明の第2の実施形態を示す。
【0068】
図5による光学ヘッド1の機能は、
図1~
図4による上述の光学ヘッド1の機能と大きく類似しており、ボール3はシャフト部4に沿って変位可能に誘導されないが、空気軸受10で支持される点が異なる。したがって、接合相手13,14に及ぼされる圧力は、矢印16に沿ってボール3に作用する、圧縮空気によって生じる力の結果ではなく、このことは
図1~
図4による光学ヘッドに当てはまる。その代わりに、
図5~
図8による光学ヘッド1に対する圧力は、光学ヘッド1全体を接合相手13,14上に加圧する力から結果として生じる。実際、
図5~
図8に示す光学ヘッド1において、圧縮空気は、また、対応する圧縮空気流入口6を介してハウジング2の内部に導入される。ただし、この圧縮空気は、機能的な空気軸受10を設けるためにのみ使用され、これにより、ボール3が自由に回転し得ることが確保される。
【0069】
図5による知られている光学ヘッド1は、例えば大きい力がボール3を介して接合相手13,14に伝達される場合に、
図1による光学ヘッド1に対して好ましい。
図1による実施形態の場合に、ハウジング2内で圧縮空気流入口6を介して確立されなければならない必要な空気圧が高すぎる場合が多い。加えて、空気流量が多すぎる、すなわち、ボール3が必要な圧力で加圧できないほど多量の空気が放出側で抜け出すことが多い。
【0070】
図6に示す、本発明の第2の実施形態による光学ヘッド1において、集束レンズ8は、レーザビーム5が届く前にレーザビーム5がボール3上にフォーカスされるように、設計され、及び/又はハウジング2内に配置されている。これは、中間フォーカシング又は中間フォーカシングと称され得るものであり、中間フォーカシングは、接合相手13,14間の接合部において、レーザビーム5がボール3から出た後に、溶着に必要であるレーザビーム5のフォーカシングの前に行われる。
【0071】
図5と
図6との比較から明確に分かるように、集束レンズ8とボール3との間に位置する集束レンズ8の焦点により、空気軸受10の開口部11の径の最小化が可能になる。なお、明確化のために、参照番号11を
図5及び
図9にのみ示し、
図6~
図8には示していない。
【0072】
図7は、例えば、1.75又は2.0の高屈折率nを有する材料を使用することによって、1.45などの低屈折率nを有する材料を使用するときよりも、ボール3を出て行くレーザビームの焦点がボール3にずっと近いことを明確に示す。
【0073】
図6~
図8に示す空気軸受10は、
図5に示す空気軸受10と比較して、ボール3の格段に大きい部分を覆う。特に、開口部11(
図6~
図8には参照番号が設けられていない)は、光軸17の周りの部分に本質的に制限されている。
図6~
図8に示す空気軸受10は、空気軸受10が、また、溶着点と本質的に反対であるボール3の領域を包含することから、ハウジング2に作用する力を接合相手13,14に大幅に良好に伝達することを可能にする。矢印16の方向の力の伝達は、伝達させる力の作用点が、溶着点と本質的に反対側である領域に近付くほど、いっそう効率的である。
【0074】
図5~
図7の比較は、本発明が、とりわけ、
図5によるレーザビーム5よりも集束する度合いが大きいレーザビーム5であれば、集束レンズ8がボール3の手前で中間フォーカスを生じさせる場合に、ボール3を通過した後に、ボール3から非常に遠く離れた焦点を有するため、石英ガラスからなるボール3を有する、知られている光学ヘッド1の開口部11がこのような大きい径を有することを見出したことに基づいていることを示す。これに対する理由は、知られている光学ヘッド1のボール3が、通常、屈折率nが1.75未満である、さらには通常1.7を大幅に下回る材料から形成されていることである。これに対して、高屈折率n、例えば1,8又はさらには2.0を有する材料が使用される場合には、
図6~
図8に示すように、開口部11を縮小することが可能であり、レーザビーム5をアパーチャ11の領域にフォーカスすることが可能である。
【0075】
図5に示すような知られている光学ヘッド1について、空気軸受10は、伝達させる最大の力を制限する。一方では、
図5に示すような知られている空気軸受では、150Nを超える力を接合相手に伝達させることが可能とならない。他方では、30mm未満の小さい径を有するボール3を使用することは、例えば、このような小さいボール3とともに使用される空気軸受10が、150N未満の力を伝達するときに既にそれら空気軸受10の限界に達しているため、未だに可能でない。
図6~
図8に示す実施形態では、150Nを超える力を伝達させることと、大幅に小型化されたボール3、例えば、15mm未満の径を有するボール3を使用することとが可能になる。
【0076】
図8は、異なる設置高さを有する、異なるように設計されたコリメートレンズ7.1,7.2の配置がどのように焦点に影響を与えるかを示す。コリメートレンズ7.1の焦点長さは、コリメートレンズ7.2の焦点長さよりも長い。したがって、
図8におけるようにコリメートレンズ7.1がハウジング2内に設置されているときに、コリメートレンズ7.1は、より太い径を有するビーム5.1を生成する。これは、次いで、焦点における小さいスポットサイズ18.1をもたらす。
【0077】
ビーム経路5.1,5.2に対するスポットサイズ18.1,18.2が、接合相手13,14が
図6に示すように配置された場合の
図8に示されている。
【0078】
コリメートレンズ7.1と比較させて、別のコリメートレンズ7.2を、
図8に破線で示す。これは、より小さい径を有する、破線でも示されるレーザビーム5.2をもたらす。焦点におけるこのレーザビーム5.2のスポットサイズ18.2は、レーザビーム5.1のスポットサイズ18.1よりも大きい。
【0079】
本発明の1つ又は少数の好ましい実施形態のみが記載及び提示されているが、当業者が本発明の本質及び範囲を逸脱することなく多数の変更を加えることができることは明らかである。
【0080】
例えば、
図6~
図8による実施形態におけるシャフト部4は、
図2~
図4による実施形態とは対照的に、ボール3がシャフト部4内に変位可能に設置されないため、円筒状である必要がない。
【0081】
図8に示す異なるビーム径も、異なる設置高さを有する異なるコリメートレンズ7.1,7.2を使用することによる以外の他の方法で、実現され得る。当然ながら、異なる特性を有しながら同じ設置高さを有するコリメートレンズ7を設けてビーム径を変化させることでも十分であり得る。
【0082】
これに代えて、コリメートレンズ7の設置高さのみを変化させることが考えられ得る。ただし、コリメートレンズ7の一定の焦点長さに起因して、コリメートレンズ7をボール3の方向に出る放射が完全にはコリメートされなくなることに留意しなければならない。このことは、
図1~
図3及び
図5~
図8に示すようにコリメートレンズ7の焦点が光ファイバ12からの放射の20と一致する場合にのみ当てはまる。
【0083】
光学ヘッド1の動作中、又は動作の休止中に、コリメートレンズ7の高さを変化させることも考えられ得る。この目的の場合には、ハウジング2及びコリメートレンズ7は、高さを変化させることに対する適切な装置に装備される必要がある。上述したように、ボール3上(
図2及び
図3)、又は集束レンズ8上(
図6~
図8)に届くレーザビーム5は、もはや完全にはコリメートされずに、ある程度発散又は集束する。ただし、このような実施形態は、レーザビーム5の発散又は集束が管理可能な限界内にとどまる限り、いくらかの微調整を可能にし得る。
【0084】
図6~
図8に関して、コリメートレンズ7と集束レンズ8との組み合わせを、アパーチャ11の領域に中間フォーカシングをも生じる、単体の十分な強度のフォーカシングレンズで置き換えることも考えられ得る。ただし、レーザビームの当該コリメートされた部分は、例えば、ハウジング2の長さを調整することと、必要であれば、さらに、コリメーションを変化させない光学素子を、追加のレンズなどを必要とせずにビーム経路に挿入することとを可能にすることに留意されたい。
【0085】
図2~
図4に示す拘束部9は、面取りされた面であってもよい。
【0086】
図6~
図9に示す空気軸受10の凹部19は、有利であるが、必須ではない。簡単な実施形態によれば、これらの凹部19を省略することも可能である。
【0087】
当然ながら、空気軸受10を、異なるように設計することが可能である。例えば、空気軸受10を、ボール3に対して相補的又は少なくとも部分的に相補的である、異なるように成形された凹面、又は部分的に凹面状のアンダーカットとし得る。
【符号の説明】
【0088】
1 光学ヘッド
2 ハウジング
3 ボール
4 円筒状シャフト部
5 レーザビーム
6 圧縮空気流入口
7 コリメートレンズ
8 集束レンズ
9 拘束部
10 空気軸受
11 開口部
12 光ファイバ
13 レーザ透過接合相手
14 レーザ吸収接合相手
15 封止板
16 矢印/矢印方向
17 光軸
18 スポットサイズ
19 凹部
20 入口点