(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】軟質ポリウレタンフォーム用の反応性難燃剤
(51)【国際特許分類】
C08G 18/28 20060101AFI20221125BHJP
C08G 18/00 20060101ALI20221125BHJP
C09K 21/12 20060101ALI20221125BHJP
C08G 101/00 20060101ALN20221125BHJP
【FI】
C08G18/28 080
C08G18/00 L
C09K21/12
C08G101:00
(21)【出願番号】P 2020503948
(86)(22)【出願日】2018-07-23
(86)【国際出願番号】 US2018043218
(87)【国際公開番号】W WO2019023090
(87)【国際公開日】2019-01-31
【審査請求日】2021-07-05
(32)【優先日】2017-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518168155
【氏名又は名称】アイシーエル‐アイピー・アメリカ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ICL‐IP AMERICA INC.
【住所又は居所原語表記】769 OLD SAW MILL RIVER ROAD, 4TH FLOOR, TARRYTOWN, NY 10591, UNITED STATES OF AMERICA
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】ピオトロウスキー,アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ジルバーマン,ジョーゼフ
(72)【発明者】
【氏名】ストウェル,ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】ゲルモント,マーク
(72)【発明者】
【氏名】シン,マヤンク
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ジハオ
(72)【発明者】
【氏名】グラズ,エラン
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開昭54-006999(JP,A)
【文献】特表2016-521269(JP,A)
【文献】国際公開第2017/083468(WO,A1)
【文献】特表2013-526650(JP,A)
【文献】特開平09-151231(JP,A)
【文献】特表2012-507475(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00-18/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール、イソシアネート、および難燃剤として有効量の一般式(I-A)のモノヒドロキシ官能性ジアルキルホスフィネート化合物、の反応生成物であり、
【化1】
ここで、
R
1およびR
2は、1~4個の炭素原子を含む直鎖または
分岐のアルキル基から選択され、
Xは、以下のいずれかの構造であり、
【化2】
【化3】
Xが前者である場合、Zは、-(Y-O)
n
-であり、ここで、Yは、直鎖または分岐
のアルキレン基(炭素数2~8)であり、nは、1~20の整数を表し、
kは、0または1であってよく、
R
3は、水素、またはモノヒドロキシ末端の直鎖もしくは分岐
のアルキレン基(炭素数2
~8)から選択され、
ただし、kが0である場合は、R
3は、モノヒドロキシ末端の直鎖または分岐
のアルキレン基であり、kが1である場合は、R
3は、水素であり、
Xが後者である場合、R
4およびR
5は、それぞれ独立に、H、直鎖または分岐
のアルキル基(炭素数1~8)、直鎖または分岐
のアルケニル基(炭素数2~8)、ハロゲン置換アルキル基(炭素数1~8)、アルコキシ基(炭素数1~8)、アリール基(炭素数6~12)、もしくはアルキルアリール基(炭素数7~16)であるか、または、R
4とR
5とが互いに結合してシクロアルキル基(炭素数5~8)を形成する難燃性軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項2】
R
1およびR
2は、それぞれエチル基である請求項1に記載の難燃性軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項3】
前記モノヒドロキシ官能性ジアルキルホスフィネート化合物は、式(I-A-1)を有する請求項1に記載の難燃性軟質ポリウレタンフォーム。
【化4】
【請求項4】
R
1およびR
2は、それぞれエチル基である請求項3に記載の難燃性軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項5】
前記モノヒドロキシ官能性ジアルキルホスフィネート化合物は、式(I-A-2)を有する請求項1に記載の難燃性軟質ポリウレタンフォーム
。
【化5】
【請求項6】
R
1およびR
2は、それぞれエチル基である請求項5に記載の難燃性軟質ポリウレタンフォーム。
【請求項7】
請求項1に記載のポリウレタンフォームを含む物品。
【請求項8】
家具用途、自動車用途、ボート用途、バスシート用途、列車シート用途、RVシート用途、オフィス家具シート用途、航空用途、トラクタ用途、自転車用途、エンジンマウント用途、圧縮機用途、
寝具用途、被覆用途、スポーツ用品用途、靴用途、カーペットクッション用途、包装用途、織物用途、緩衝クッション用途、HVAC用途、テント用途、救命いかだ用途、手荷物用途、およびハンドバッグ用途からなる群から選択される
用途に適用される、請求項7に記載の物
品。
【請求項9】
前記用途は前記家具用途であって、
室内装飾家具である請求項8に記載の
物品。
【請求項10】
前記用途は前記自動車用途であって、
自動車シートクッション、ヘッドライニングおよびヘッドレスト、自動車およびトラック用バッククッション、バスシート、車両シートボトムおよびバックボルスタ、アームレスト、ランフラットタイヤ用支持リング、および他の自動車内装部品からなる群から選択される請求項8に記載の
物品。
【請求項11】
前記用途は前記寝具用途であって、
マットレス
又はマットレストップ用途
に適用される物品である請求項8に記載の
物品。
【請求項12】
前記用途は前記被覆用途であって、
遮音材料である請求項8に記載の
物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2017年7月24日に出願された米国仮特許出願第62/536260号の利益を主張し、その全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本明細書の開示は反応性ジアルキルリン含有化合物、すなわち、ポリオールおよびイソシアネートと反応した場合に、柔軟なポリウレタンフォームにおいて高効率の反応性難燃剤として働くジアルキルホスフィン酸のヒドロキシル官能性エステルの使用を提供する。本発明はさらに、反応し、軟質ポリウレタンフォームのポリマーマトリックスに組み込まれた前記ヒドロキシル官能性ジアルキルホスフィネートを有する難燃性軟質ポリウレタンフォームを提供する。「難燃剤(flame retardants)」および「難燃剤(fire retardants)」という表現は、本明細書では互換的に使用される。
【背景技術】
【0003】
臭素系またはリン系難燃剤は非常に有効であることが知られており、多くの場合、軟質ポリウレタンフォームなどの合成材料の火災リスクを低減するための唯一の選択肢である。しかし、化学物質、特に難燃剤の公衆および政府による検査の増加は、何年にもわたって増加している。目標はより持続可能で、反応性があり、ポリマーおよび/またはハロゲンを含まない新製品に向けられている。難燃剤がポリマーマトリックス中に反応しており浸出しえない場合、検査は大幅に減少する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、高いリン含量、透明な明るい色、および、ポリウレタン工業で使用されるポリエーテルポリオールおよびポリエステルポリオールとの良好な相溶性、のような特徴を有する軟質ポリウレタンのための反応性リン含有難燃剤が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、非常に満足のいく難燃特性を有し、軟質ポリウレタンフォーム形成系のポリオール成分と良好な相溶性を有する反応性ジアルキルリン含有モノヒドロキシル官能性化合物を提供する。本明細書で使用される「軟質ポリウレタン発泡体形成系」という表現は、ポリオール、イソシアネート、および本明細書に記載の反応性ジアルキルリン含有モノヒドロキシル官能性化合物、を含むと理解されるものとする。モノヒドロキシル官能性ジアルキルホスフィネート化合物は、それらの単一のヒドロキシル官能基を介して完全に反応性であり、ジヒドロキシル官能性ジアルキルホスフィネート化合物またはトリヒドロキシル官能性ジアルキルホスフィネート化合物よりも容易に配合できる。驚くべきことに、本明細書中の反応性モノヒドロキシル官能性ジアルキルホスフィネート化合物は、ヒドロキシル官能基の含有量が低いにもかかわらず、たとえば軟質ポリウレタンフォーム形成系のイソシアネート成分との反応によって、軟質ポリウレタンフォームの弾性特性を破壊することなく、反応し、軟質ポリウレタンフォームのポリマー構造に組み込まれうることが見出された。このことは、難燃剤が軟質発泡体基材に一体化され、その結果、それらが周囲に放出されず、生体組織の細胞膜を貫通しにくく、したがって健康上の危険を引き起こさないことを意味する。本発明はさらに、本明細書に記載の反応性ジアルキルリン含有モノヒドロキシル官能性化合物を含むがこれに限定されない、上記の軟質ポリウレタンフォーム形成系を提供する。
【0007】
本明細書で使用される「発泡体」という用語は、軟質ポリウレタン発泡体を指す。一般式(I-A)および/または一般式(I-B)の反応したモノヒドロキシル官能性ジアルキルホスフィネート化合物(ここで、一般式(I-B)は、ポリアルコールの部分的リン酸化反応による、少なくとも一つのリン含有基を有するリン含有ジオールおよび/またはポリオール反応生成物である。)を含む、本質的にからなる、または、からなる、本明細書記載の、またはクレームされた軟質ポリウレタンフォームは、いずれも、反応性材料として前述の化学式を含み、すなわち、前述の化学式は反応して軟質ポリウレタン材料の構造に組み込まれる。ここで、前述の化学式は、存在しなくてもよく、または、ジオールおよび/もしくはポリオールと、イソシアネートと、本明細書に記載される前述の化学式と、の反応生成物として軟質ポリウレタン材料中に存在してもよい。
【0008】
本明細書で使用される「ポリオール」という用語は、ジオールおよび/またはポリオールとして定義される可能性もあると理解される。
【0009】
本発明は、一般式(I-A)および(I-B)のモノヒドロキシル官能性ジアルキルホスフィネート化合物、ならびに、ポリアルコールの部分リン酸化反応による、一般式(I-B)の少なくとも1つのリン含有基を含有するリン含有ジオールおよび/またはポリオール反応生成物の基を提供し、
一般式(I-A)は以下の構造であり、
【化1】
ここで、
R
1およびR
2は、1~4個の炭素原子を含む直鎖または分枝鎖アルキル基から選択され、当該アルキル基は、たとえば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチルおよびイソブチルであり、好ましくはメチルまたはエチルであり、より好ましくはR
1およびR
2の両方がエチルであり、
Xは、以下のいずれかの構造であり、
【化2】
【化3】
Xが前者である場合、Zは、-(Y-O)n-であり、ここで、Yは、直鎖または分岐アルキレン基(炭素数2~8、好ましくは炭素数2~4、より好ましくはエチレン、プロピレン、またはイソプロピレン)であり、nは、1~20、好ましくは1~5、より好ましくは1~2の整数を表し、
kは、0または1であってよく、
R
3は、水素、またはモノヒドロキシ末端の直鎖もしくは分岐アルキレン基(炭素数2~約8、好ましくは炭素数2~4)から選択され、
ただし、kが0である場合は、R
3は、モノヒドロキシ末端の直鎖または分岐アルキレン基であり、kが1である場合は、R
3は、水素であり、
Xが後者である場合、R
4およびR
5は、それぞれ独立に、H、直鎖または分岐アルキル基(炭素数1~8、好ましくは炭素数1~約4、より好ましくはメチル、エチル、またはプロピル)、直鎖または分岐アルケニル基(炭素数2~8、好ましくは炭素数2~4)、ハロゲン置換アルキル基(炭素数1~8)、アルコキシ基(炭素数1~8、好ましくは炭素数1~4)、アリール基(炭素数6~12、好ましくは炭素数6~8)、もしくはアルキルアリール基(炭素数7~16、好ましくは炭素数7~12)であるか、または、R
4とR
5とが互いに結合してシクロアルキル基(炭素数4~8、好ましくは炭素数6)を形成し、
一般式(I-B)は以下の構造であり、
【化4】
ここで、
R
1およびR
2は、独立して、直鎖または分岐アルキル基(炭素数1~4、たとえばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、およびイソブチル、好ましくはメチルまたはエチル、より好ましくはR
1およびR
2がいずれもエチル)であり、
n
1は、1以上の整数であり、n
2は、1であり、好ましくは、n
1は、約1~約5であり、
Z
2は、n
1+n
2の原子価を有するジオールまたはポリオール部分であって、以下の一般式で表され、
【化5】
ここで、Rは、
【化6】
または、
【化7】
から選択され、
式中、それぞれのR
6は、独立して、Hまたはアルキル基(炭素数1~4)であり、
xは、0または1以上であり、好ましくは1~4であり、より好ましくはx=1であり、yは、2または3であり、Zは、2~5の整数であり、mは、1以上であり、好ましくはm=1である。
【0010】
これらの化合物の調製方法も本明細書に提供される。
【0011】
式(I-A)の新規化合物は、式(II)のモノヒドロキシル官能性ジアルキルホスフィン酸とオキシラン基を有する化合物との反応によって調製できる。
【化8】
ここで、R
1およびR
2は、上記の定義の通りであり、Aは、塩素または臭素である。
【0012】
式(I-A)の化合物は、式(III)のジアルキルホスフィンハロゲン化物と脂肪族ジオールとの反応によっても調製できる。
【化9】
ここで、R
1およびR
2は、上記の定義の通りであり、Aは、塩素または臭素である。
【0013】
本発明のリン含有ジオールおよび/またはポリオール、たとえば式(I-B)のものは、式(III)のジアルキルホスフィンハロゲン化物と脂肪族ジオールおよび/またはポリオールとの反応によって調製できる。
【0014】
本発明の反応性モノヒドロキシル官能性ジアルキルホスフィネートは高いリン含有量を有し、良好な加水分解および熱安定性を有し、軟質ポリウレタンフォーム形成系のジオールおよび/またはポリオール成分との良好な相溶性を示し、軟質ポリウレタンフォームにおける高効率の反応性難燃剤として有用である。
【0015】
本発明はさらに、軟質ポリウレタンフォーム形成系中で反応させて軟質ポリウレタンフォームを形成した後に、前記リン含有モノヒドロキシル官能性化合物の反応性残基を含む難燃性軟質ポリウレタンを提供する。本明細書のリン含有モノヒドロキシル官能性化合物は軟質ポリウレタンフォーム形成系において、個別に、互いに組み合わせて、および/または、ハロゲン含有難燃剤およびリン含有難燃剤を含む他の難燃剤との混合物として、使用できる。
【0016】
本発明の上記および他の特徴および利点はすべて、以下の本発明の好ましい実施形態の例示的かつ非限定的な詳細な説明によってより良く理解されるのであろう。
【発明を実施するための形態】
【0017】
一実施形態では式(I-A)のモノヒドロキシル官能性ジアルキルホスフィネートは、より具体的な式(I-A-1)または式(I-A-2)のものでありうる。
式(I-A-1)は以下の通りである。
【化10】
ここで、R
1およびR
2、Z、k、およびR
3は、上記の定義の通りである。
式(I-A-2)は以下の通りである。
【化11】
ここで、R
1、R
2、R
4およびR
5は、上記の定義の通りである。
【0018】
本明細書の一実施形態では、本発明の式(I-A)のモノヒドロキシル官能性ジアルキルホスフィネートは、式(II)のジアルキルホスフィン酸と、オキシラン基を有する式(IV)の化合物との反応によって調製される。
【化12】
ここで、R
4およびR
5は、上記の定義の通りである。
【0019】
本明細書の1つの他の実施形態では、本発明の式(I-A)のモノヒドロキシル官能性ジアルキルホスフィネートは、式(III)のジアルキルホスフィンハロゲン化物と、式(V)の脂肪族ジオールとの反応によって調製される。
【化13】
ここで、Z、R
3および下付き文字kは、上記の定義の通りである。
【0020】
本発明のリン含有ジオールおよび/またはポリオール、たとえば式(I-B)のものは、式(III)のジアルキルホスフィンハロゲン化物と、脂肪族ジオールまたはポリオールとの反応によって調製される。
【0021】
本発明の方法において出発物質として使用されるジアルキルホスフィン酸(II)およびジアルキルホスフィン酸ハロゲン化物(III)は、大部分が当該技術分野において周知である。式(II)の化合物は、たとえば、対応するジアルキルホスフィンハロゲン化物(III)の加水分解によって得ることができる。後者は、たとえば、米国特許第3104259号明細書(特許文献1)に記載されている方法によって調製することができ、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0022】
本発明の式(I-A)、またはより具体的には式(I-A-1)または式(I-A-2)、の化合物を調製するための方法において使用される具体的なオキシラン化合物は、たとえば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2-エポキシブタン、1,2-エポキシペンタン、1,2-エポキシヘキサン、1,2-エポキシ-5-ヘキセン、1,2-エポキシ-2-メチルプロパン、1,2-エポキシオクタン、グリシジルメチルエーテル、グリシジルイソプロピルエーテル、グリシジルイソブチルエーテル、グリシジルヘプチルエーテル、グリシジル-2-エチルヘキシルエーテル、グリシジルアリルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、スチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、エピクロヒドリン、およびこれらの組合せからなる群から選択されるが、これらに限定されない。より好ましくは、オキシラン化合物として、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、および1,2-エポキシブタン、が使用される。
【0023】
本発明の式(I-A)、またはより具体的には式(I-A-1)または式(I-A-2)、の化合物を調製するための方法において使用される具体的な脂肪族ジオールは、たとえば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、2-ブテン-1,4-ジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、および700までの分子量を有する他のジオール、からなる群より選択されるが、これらに限定されない。
【0024】
本発明のリン含有ポリオールを調製するための方法において使用される脂肪族ジオールおよび/またはポリオールは、一般に、少なくとも2個または少なくとも3個の反応性水素原子をそれぞれ有する任意の適切なジオールおよび/またはポリオールであってよく、たとえば、2または3~6、好ましくは2、3および4の官能性を有し、かつ好ましくは約100~約700の分子量を有するものである。具体的な脂肪族ジオールおよび/またはポリオールは、非ポリマーポリアルコールの群、たとえば、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、またはグリセロールから選択できる。
【0025】
好ましくは、本発明に従って使用されるジオールおよび/またはポリオールは、ポリエーテルジオールおよび/またはポリオールである。この種のジオールおよび/またはポリオールは、1つまたは複数のアルキレンオキシド(たとえば、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシド)と、アルコール、アミンおよび酸などの1つまたは複数の活性水素原子を含有する適切な反応物との開環付加反応によって得られ、より具体的には、前記反応物は、ジオール、トリオール、ノボラック樹脂、ペンタエリトリトール、ソルビトール、スクロース、ジエチレントリアミンなどからなる群から選択されうる。本発明によれば、ポリエステル-ポリオールを使用することもでき、この種のポリオールは、アジピン酸、フタル酸などのカルボン酸、ジカルボン酸(またはポリカルボン酸)とジオールまたはトリオールとの縮合反応によって得られる。リン含有モノオール、ジオールまたはポリオールを調製するための本発明に係る方法において使用される脂肪族ジオールおよび/またはポリオールは、ポリマージオールおよび/またはポリオール(たとえば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、およびそれらの混合物)から選択される。
【0026】
本発明の好ましい実施形態では、ジアルキルホスフィン酸(II)とオキシラン化合物との反応は、過剰のオキシランの媒体中で実施され、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、またはトルエンなどの有機溶媒があってもなくてもよい。
【0027】
モノヒドロキシジアルキルホスフィン酸(II)との反応に使用されるオキシラン化合物の量は、モノヒドロキシジアルキルホスフィン酸に対して5~300モル%過剰であり、好ましくは50~100モル%過剰である。モノヒドロキシジアルキルホスフィン酸に対して100%を超えるモル過剰のオキシラン化合物を使用することは、大量のオキシランを回収する必要があるために不便である。
【0028】
本発明の式(I-A)、またはより具体的には式(I-A-1)もしくは式(I-A-2)、のモノヒドロキシル官能性ジアルキルホスフィネートは、反応に供されるジアルキルホスフィン酸およびオキシランに対して、約8~18重量%のリン含有量および約150~315mgKOH/gのヒドロキシル価を有する。
【0029】
目的生成物であるモノヒドロキシル官能性ジアルキルホスフィネート(I-A)、またはより具体的には式(I-A-1)もしくは(I-A-2)、のモノヒドロキシジアルキルホスフィン酸(II)を可能な限り最も高いリン含有量で得るために、モノヒドロキシジアルキルホスフィン酸(II)の中で最も高いリン含有量を有するモノヒドロキシジアルキルホスフィン酸を、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドと反応させることが好ましい。
【0030】
したがって、特に価値のある特性を有する式(I-A)、またはより具体的には式(I-A-1)もしくは式(I-A-2)、の化合物は、R1およびR2がそれぞれエチルである化合物である。
【0031】
前記反応は、40~120℃、好ましくは70~90℃の間の温度で実施される。40℃より低い温度では、反応は許容できないほど遅くなる。一方、120℃より高い温度を適用すると、望ましくない分解生成物が生成する可能性があるため、好ましくない。
【0032】
好ましい実施形態では、ジアルキルホスフィンハロゲン化物(III)と脂肪族ジオールとの反応は、過剰のジオールの媒体中で行われる。
【0033】
ジアルキルホスフィン酸ハロゲン化物(III)との反応に使用されるジオール化合物の量は、一般に、ジアルキルホスフィン酸ハロゲン化物1モル当たり2~10モル、好ましくは4~8モル過剰である。これらのジオールの比較的多量の過剰量は、グリコールおよびジオールのヒドロキシル基を有さないビス(ジアルキルホスフィネート)エステルの望ましくない形成を最小限にするために必要とされる。ジアルキルホスフィン酸ハロゲン化物1モル当たり10モルを超える過剰量のジオール化合物を使用することは、大量のジオールを回収する必要があるために不便である。
【0034】
本発明の式(I-A)、またはより具体的には式(I-A-1)もしくは式(I-A-2)、のモノヒドロキシル官能性ジアルキルホスフィネートは、反応に供されるジアルキルホスフィン酸ハロゲン化物およびジオールに応じて、約2~18重量%のリン含有量および約150~450mgKOH/gのヒドロキシル価を有する。
【0035】
目的生成物であるモノヒドロキシル官能性ジアルキルホスフィネート(I-A)、またはより具体的には式(I-A-1)もしくは(I-A-2)、のモノヒドロキシジアルキルホスフィン酸(II)を可能な限り最も高いリン含有量で得るために、ジアルキルホスフィンハロゲン化物(III)の中で最も高いリン含有量を有するジアルキルホスフィンハロゲン化物を、エチレングリコールと反応させることが好ましい。
【0036】
したがって、特に有用な特性を有する式(I-A-1)の化合物は、R1およびR2がそれぞれエチルであり、kが1であり、nが1であり、Yが-CH2CH2-であり、R3が水素である。
【0037】
前記反応は、25~120℃、好ましくは50~90℃の温度で行われる。25℃より低い温度を適用すると、収率が低くなる。一方、120℃より高い温度を適用すると、望ましくない分解生成物が形成されることがあるので、好ましくない。加えて、たとえばMgCl2またはZnCl2のような触媒を使用して反応を促進できる。
【0038】
好ましい実施形態では、ジアルキルホスフィンハロゲン化物(III)と脂肪族ジオールとの反応は、有機溶媒および過剰の脂肪族アルコールの両方の媒体中で、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムなどの強塩基の存在下で実施される。有機溶媒は、芳香族化合物から選択される。特に好適な芳香族溶媒は、クロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン、メシチレン、ならびに、特にトルエンおよびキシレンである。
【0039】
この方法で使用される塩基の有効量は、1モルのジアルキルホスフィン酸ハロゲン化物(III)あたり1~1.2モル、好ましくは1~1.05モルである。
【0040】
水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムは、固体形態で使用できる。ジオールと塩基との反応から生じる水は、ジアルキルホスフィン酸ハロゲン化物(III)の添加前に、反応混合物から可能な限り除去されるべきである。
【0041】
好ましい実施形態において、ジアルキルホスフィンハロゲン化物(III)と脂肪族ジオールおよび/またはポリオールとの反応は、ジオールおよび/またはポリオールの部分リン酸化の程度を変化させることによって行われる。本発明によるリン含有ジオールおよび/またはポリオールは、少なくとも1つのリン含有基を含む。このリン含有基は、式(III-A)の基である。
【化14】
ここで、R
1およびR
2は、上記に定義された通りであり、波線は、酸素原子を介したジオールまたはポリオールへの結合を示す。
【0042】
本発明のリン含有ジオールおよび/またはポリオールはまた、式(III-A)の2つ以上のリン含有基を含むことができ、これらのリン含有基は同一であっても異なっていてもよい。
【0043】
ジアルキルホスフィンハロゲン化物(III)と脂肪族ジオールおよび/またはポリオールとの反応は、有機塩基の存在下で実施できる。かかる有機塩基は、トリエチルアミン、ピリジン、ジイソプロピルエチルアミン、1-メチルイミダゾールなどの第三級アミンの群から選択されうるが、これらに限定されない。使用される塩基の量は、ハロゲン化ジアルキルホスフィン(III)に対して等モルである。塩基は、ジアルキルホスフィン酸ハロゲン化物に対して過剰に使用することもできる。前記反応は、典型的には不活性有機溶媒の媒体中で行われる。リン酸化に適した溶媒は、塩化メチレン、クロロホルム、または1,2-ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素であるが、これらに限定されない。さらに好適な溶媒は、ジオキサンまたはテトラヒドロフランなどのエーテルである。さらに好適な溶媒は、ヘキサンまたはトルエンなどの炭化水素である。
【0044】
好ましい実施形態では、ジアルキルホスフィンハロゲン化物(III)と脂肪族ジオールおよび/またはポリオールとの反応は、クロロベンゼン、メシチレン、特にトルエンおよびキシレンなどの有機溶媒の媒体中で、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムなどの強無機塩基の存在下で実施される。
【0045】
この方法で使用される塩基の有効量は、1モルのジアルキルホスフィン酸ハロゲン化物(III)あたり1~1.2モル、好ましくは1~1.05モルである。水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムは、固体形態で使用できる。ジオールおよび/またはポリオールと塩基との間の反応から生じる水は、ジアルキルホスフィン酸ハロゲン化物(III)の添加前に、反応混合物から可能な限り除去されるべきである。
【0046】
ジアルキルホスフィン酸ハロゲン化物(III)とジオールおよび/またはポリオールとの量は、所望の官能化度が達成されるように調節できる。ジオールおよび/またはポリオールの部分リン酸化は、ジオールおよび/またはポリオールに対するジアルキルホスフィン酸ハロゲン化物(III)の化学量論量未満を、その官能化度に基づいて使用することによって達成できる。このようにして、ジオールおよび/またはポリオール中のOH基の一部のみを、ジアルキルホスフィン酸ハロゲン化物と反応させる。
【0047】
本発明のリン含有ジオールおよび/またはポリオール(本明細書では、部分的にリン酸化されたジオールおよび/またはポリオールとも記載される。)は、平均残留OH官能基(リン酸化後)が1であり、分子量が約200~約1000である。本発明のリン含有ジオールおよび/またはポリオールは、反応に使用されるジアルキルホスフィン酸ハロゲン化物およびジオールおよび/またはポリオール、ならびにそれらの間のモル比に応じて、リン含有量が約4~20重量%であり、ヒドロキシル価が約20~800mgKOH/gである。
【0048】
ジオールおよび/またはポリオールリン酸化反応は、0~100℃、好ましくは10~90℃の温度で実施され、0℃未満の温度を適用すると、反応速度が遅くなる。一方、100℃より高い温度を適用すると、望ましくない分解生成物が生成する可能性があるため、好ましくない。
【0049】
以下の実施例は、本発明の特定の化合物の調製、および、軟質ポリウレタンフォームにおける反応性難燃剤としてのこれらの化合物の利用、の両方について、特定の実施形態を説明する。
【0050】
本発明の化合物は、反応性難燃剤として有用である。難燃剤は、そのまま、またはハロゲン化または非ハロゲン化生成物との混合物として、使用できる。柔軟なポリウレタンフォームのためには、本発明のハロゲンを含まないヒドロキシル官能性ジアルキルホスフィネートを、純品として用いるか、または他の非ハロゲン化生成物とともに使用することが好ましい。
【0051】
本発明の化合物は、柔軟なポリウレタンフォームに組み込まれた場合、非常に効率的な反応性難燃剤である。本発明の化合物は、広範なイソシアネート指数(本明細書ではMDIまたはTDIと略す。)にわたって有用であることに留意されたい。当該指数は、配合物中で実際に使用されるイソシアネートの、必要とされるイソシアネートの理論化学量論量に対する比率を指し、パーセンテージで表される。
【0052】
本発明の軟質ポリウレタンフォームは、本発明の組成物の典型的な難燃剤有効量を含有する。典型的には、本発明の組成物がポリマー(すなわち、軟質ポリウレタンフォーム)中の全リン濃度が、ポリマーの全重量を基準にして0.3~15重量%になるような量で適用される。好ましくは、ポリマー中の全リン濃度が軟質ポリウレタンポリマーの全重量を基準にして1~10重量、より好ましくは、1.5~5重量%である。最も好ましくは、本発明の反応性難燃剤の使用量が少なくとも、可燃性試験規格MVSS 302の現在の要件を満たすのに十分である。
【0053】
成分および条件の適切な選択により、柔軟性の程度に関して特性が変化しうる軟質ポリウレタンフォームが製造される。したがって、軟質フォームは一般に、水を主要な発泡剤として使用して、20~80のヒドロキシル価を有するポリマージオールまたはトリオールから製造される。
【0054】
本発明の軟質ポリウレタンフォームは補助剤、たとえば、触媒、界面活性剤、フォーム安定剤などの適切な選択を含むことができる。
【0055】
本明細書で使用されるような軟質ポリウレタンフォームは本明細書に記載されるような分子量3000~約6000のジオールおよび/またはポリオールを有するジオールおよび/またはポリオール、たとえば、グリセロールにプロピレンオキシドを添加することによって調製されるポリエーテルトリオールを使用して作製される。本明細書で使用される軟質ポリウレタンフォームは、最大30%の芯衝撃弾性および-80~-60℃のガラス転移点を有することを特徴とする。ここで、軟質ポリウレタンフォームは、ハードセグメント含有量が40質量%以下であることが好ましい。従来の軟性ポリウレタンフォームは、1立方フィートあたり2.5ポンド以下の膨張性ポリウレタンフォームであって、泡硬度またはIFD(ASTM 3574-TestB1に準拠して測定)が50平方インチあたり10~90ポンドである。
【0056】
本発明の軟質ポリウレタンフォームを製造する方法は、ジオールおよび/またはポリオール成分および/またはイソシアネート成分または触媒と、本明細書に記載される式(I-A)、式(I-A-1)、式(I-A-2)、および式(I-B)の難燃性材料のうちの1つ以上とを組み合わせることを含みうる。これらは計量され、共通の混合容器にポンプ輸送されてもよく、次いで、得られた混合物は型、スラブストック操作などで使用するために重合部位に容易に移動されてもよい。
【0057】
本発明の反応性難燃剤は、イソシアネート反応体と組み合わせる前に、ジオールおよび/またはポリオール反応体と混合されてもよい。ジオールおよび/またはポリオール反応体と混合する前に、反応性難燃材料をイソシアネートと混合することも、本発明の範囲内である。しかし、イソシアネートと前述の難燃剤とを混合し、室温で一定時間放置すると、反応が起こることがある。本明細書の特許請求の範囲および明細書で使用される「反応生成物」は、一実施形態では、前述の方法のいずれか1つで軟質ポリウレタンフォーム形成系の内容物を反応させることを含むことができ、たとえば、過剰のイソシアネートをポリオールと反応させてイソシアネート末端プレポリマーを形成し、次いでプレポリマーを本明細書の反応性難燃剤とさらに反応させるなど、プレポリマー技術を介して反応性難燃剤を反応させることをさらに含むことができる。
【0058】
本明細書に記載の式(I-A)、式(I-A-1)、式(I-A-2)、および式(I-B)の難燃性材料は、イソシアネート反応性(NCO反応性)材料として記載することができ、すなわち、それらは、ヒドロキシル基を介してイソシアネートとの反応性を有する。
【0059】
本明細書に記載される軟質ポリウレタンフォームの製造に使用されるジオールおよび/またはポリオールは、ジオール、ポリオール、およびポリエーテルを含む任意の有機ポリオールを含んでよく、イソシアネートとの反応性を有するヒドロキシル基を有するポリエステル、ポリエステルアミドポリオールを使用できる。一般に、これらの材料は、約62~約5,000の分子量を有し、1分子当たり2~約10個以上のヒドロキシル基を有し、ヒドロキシル基含有量は約0.5~約25%である。これらは一般に、約50~500、またはさらには700のヒドロキシル価を有する。
【0060】
ポリエステル-ポリオール型の反応体において、酸価は10未満であるべきであり、通常、可能な限り0に近い。これらの材料は、便宜上「ポリオール」反応体と呼ばれる。有用な活性水素含有ジオールおよび/またはポリオールには、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2-ブチレンオキシドおよび2,3-ブチレンオキシド、または他のアルキレンオキシドが、ジオール、グリコールおよびポリオール(エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、メチルグルコシド、スクロース、ソルビトール、ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ならびに種々のアルキルアミンおよびアルキレンジアミン、ならびにポリアルキレンポリアミンなどによって提示される。)などの活性水素化合物に添加される場合に生じる付加化合物の大きなファミリーが含まれる。これらのアルキレンオキシドの種々の量は、ポリウレタンの意図される用途に依存して、ベースとなる上記のジオール、ポリオールまたはアミン分子に添加され得る。
【0061】
たとえば、軟質フォームの製造に使用するためのジオールおよび/またはポリオールは、約1.7%の最終ヒドロキシル含量を与えるのに十分なプロピレンオキシドが添加されたグリセリンによってよく表されうる。このような材料は、約3000の分子量を有し、グリセリン約1に対してプロピレンオキシド50のグリセリン対プロピレンオキシドのモル比を有する。
【0062】
ジオールおよび/またはポリオール分子の選択およびその後の添加されるアルキレンオキシドの量によって柔軟性を制御するこの技術は、当業者に周知である。
【0063】
アルキレンオキシドの付加のためのベースポリオール分子として働き、したがってイソシアネートとの反応のための「ポリオール」分子を生じることができるグリコール等に加えて、アルキレンオキシドに対して反応性の水素を有する第一級および/または第二級アミン基を含有する出発分子を使用できる。ここでも、添加されるアルキレンオキシドの量は、最終ポリウレタン生成物の意図される用途に依存する。本発明の軟質ポリウレタン製品において、アルキレンオキシドは、より低いヒドロキシル含量(たとえば、約0.1~約5%または10%)を有するポリオールを製造するために使用される。
【0064】
エポキシドとの反応のための活性水素含有分子として役立ちうる代表的なアミンは、1~約6個以上のアミノ窒素を有するものであり、その例は、エチルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラプロピレンペンタミン、および他の直鎖状飽和脂肪族アルキレンアミンであり、重要な要件は、アルキレンオキシドが添加されうる少なくとも2個、より好ましくは3~8個または10個の活性水素部位を有することである。
【0065】
ポリウレタン系を調製する際に使用される活性水素化合物として、多価酸または無水物および多価アルコールからエステル化型反応によって調製されたヒドロキシル含有分子を使用することも周知である。これらの化合物はしばしばポリエステルポリオールと呼ばれる。これらのポリエステルポリオールの製造に使用される典型的な酸は、マレイン酸、フタル酸、コハク酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、クロレンジ酸およびテトラクロロフタル酸である。典型的なジオールおよび/またはポリオールは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、およびジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、およびポリプロピレングリコール、ならびにグリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ペンタエリトリトール、ソルビトールなどである。利用可能な場合、上記の酸は所望であれば、無水物の形態で使用されうる。
【0066】
ポリエステル-ポリオールを製造する際に、種々の多価酸または無水物またはそれらの混合物のいずれかを、化学量論的過剰のヒドロキシル基を用いて、ジオール、グリコールまたはポリオールまたはそれらの混合物のいずれかと反応させ、最終ポリオール生成物が主としてヒドロキシル末端基を含有するようにする。ヒドロキシル官能性の程度およびヒドロキシルパーセントは、当業者に公知の技術および技術によって所望のポリオールを提供するために容易に変えられる。
【0067】
軟質ポリウレタンを製造する技術および技術において、いわゆるプレポリマー技術を使用することも知られている。これは、軟質ポリウレタンの製造に関与する反応の一部が行われて、分子量が増加したプレポリマーを生成し、このプレポリマーの製造に使用される化学量論に応じて、ヒドロキシルまたはイソシアネートの末端基が得られる技術である。次いで、このプレポリマーを使用して、上記のように、プレポリマーの末端基がそれぞれヒドロキシルであるかイソシアネートであるかに応じて、それをイソシアネートまたはポリオールのいずれかと反応させることによって、最終的な軟質ポリウレタン生成物を調製する。
【0068】
広くは、遊離反応性水素および特にヒドロキシル基を有する先行技術のポリエステル、イソシアネート変性ポリエステルプレポリマー、ポリエステルアミド、イソシアネート変性ポリエステルアミド、アルキレングリコール、イソシアネート変性アルキレングリコール、ポリオキシアルキレングリコール、イソシアネート変性ポリオキシアルキレングリコールなどのいずれかを、本明細書に記載のポリウレタンの製造に使用できる。
【0069】
使用できるイソシアネートの例には、軟質ポリウレタンフォームを製造するためにこれまで使用されてきた2個以上のイソシアネート基を有するものが含まれる。このようなイソシアネート化合物の例としては、芳香族イソシアネート、脂肪族イソシアネートおよび脂環式イソシアネート、このようなイソシアネートの2種以上の混合物、ならびにこのようなイソシアネートの修飾によって得られる修飾イソシアネート、が挙げられる。このようなイソシアネートの具体例は、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(粗MDI)、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、およびヘキサメチレンジイソシアネート、ならびにカルボジイミド修飾生成物、ビウレット修飾生成物、ダイマーおよびトリマーなどの上記イソシアネートの修飾生成物である。このようなイソシアネートおよび活性水素含有化合物から得られる末端イソシアネート基を有するプレポリマーも使用できる。
【0070】
一実施形態では、軟質ポリウレタンフォームのイソシアネート指数範囲は、約130~約80、より好ましくは約120~約90、最も好ましくは約115~約95とすることができる。
【0071】
本発明の軟質ポリウレタン発泡体形成組成物における発泡剤としては、発泡体に要求される特性に応じて、従来使用されている公知の発泡剤が適宜選択される。
【0072】
本発明では、必要に応じて架橋剤も使用する。
【0073】
架橋剤としては、ヒドロキシル基、第一級アミノ基、第二級アミノ基などの活性水素を有する官能基を少なくとも2個有する化合物が好ましい。ただし、架橋剤としてポリオール化合物を用いる場合には、以下を考慮する。すなわち、ヒドロキシル基価が少なくとも50mgKOH/gであり、4個を超える官能基を有するポリオール化合物が架橋剤であると考えられ、これを満たさないポリオールは、上記ポリオール混合物(ポリオール(1)、(2)または他のポリオール)のいずれか1つと考えられる。また、2種以上の架橋剤を併用してもよい。具体的には、デキストロース、ソルビトール、スクロースなどの多価アルコール、多価アルコールにアルキレンオキシドを添加したポリオール、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、3,5-ジエチル-2,4(または2,6)-ジアミノトルエン(DETDA)、2-クロロ-p-フェニレンジアミン(CPA)、3,5-ビス(メチルチオ)-2,4(または2,6)-ジアミノトルエン、1-トリフルオロメチル-4-クロロ-3,5-ジアミノベンゼン、2,4-トルエンジアミン、2,6-トルエンジアミン、ビス(3,5-ジメチル-4-アミノフェニル)メタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、m-キシレンジアミン、1,4-ジアミノヘキサン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、またはイソホロンジアミン、および上記の化合物にアルキレンオキシドを添加することによって得られる化合物が挙げられる。
【0074】
上記架橋剤を用いると、たとえば発泡剤を多量に用いて低密度の軟質発泡体を製造する場合であっても、発泡安定性が良好となり、このような軟質発泡体を製造できる。特に、高分子量のジオールおよび/またはポリオールを用いる場合には、発泡しにくいと考えられていた低密度の軟質発泡体を製造できる。また、架橋剤を用いた場合には、用いない場合に比べて耐久性が向上する。本発明のように、高分子量のジオールおよび/またはポリオールを用いる場合、特に、分子量が4000以上などの比較的高分子量の化合物を用いると、容易に発泡安定性を向上させることができる。
【0075】
水は、このような発泡剤の典型的な例であり、他の例としては、塩化メチレン、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、ジメチルエーテル、アセトン、二酸化炭素などが挙げられる。発泡ポリウレタンの所望の密度および他の特性に応じて、これらおよび他の発泡剤は、単独で、または当技術分野で知られている方法で2つ以上の組み合わせで使用できる。
【0076】
使用される発泡剤の量は特に限定されないが、通常、発泡形成組成物のジオールおよび/またはポリオール成分100重量部当たり0.1~20重量部である。好ましくは、発泡剤の量は、0.8~2.5ポンド/立方フィート、好ましくは0.9~2.0ポンド/立方フィート、の発泡体密度を提供するような量であろう。
【0077】
本明細書中のポリウレタンフォーム形成組成物は、好ましくはポリウレタンフォームの製造のためにこれまでに知られているかまたは使用されている触媒のいずれか、および触媒の組み合わせを含有できる。有用な触媒の例には、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、第三アミン、または、第三アミンを生成する材料(トリメチルアミン、トリエチレンジアミン、N-メチルモルホリン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、およびN,N-ジメチルアミノエタノールなど)が含まれる。また、炭化水素スズアルキルカルボキシレート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオクトエート、ジブチルスズジラウレート、およびオクトエート第一スズなどの金属化合物、ならびに、2,4,6-トリス(N,N-ジメチルアミノ-メチル)フェノール、1,3,5-トリス(N,N-ジメチル-3-アミノプロピル)-S-ヘキサヒドロトリアジンなどのイソシアネートの三量体化を促進することを意図した他の化合物、オクト酸カリウム、酢酸カリウム、および、DABCO TMR(登録商標)およびPOLYCAT 43(登録商標)などの触媒も、適用可能である。
【0078】
所望であれば、多くの他の種類の触媒を上記に列挙したもの代わりに用いることができる。使用される触媒の量は、有利にはフォーム形成混合物中のジオールおよび/またはポリオールの総重量に基づいて0.05~5重量パーセント以上でありうる。
【0079】
本発明による軟質発泡体を製造する際に適用されるイソシアネート(NCO)指数は、95~125、好ましくは100~120である。ポリウレタンフォームのNCO指数は約80~130であることが一般に理解される。
【0080】
ここでの軟質ポリウレタンフォームの密度は、14~80kg/m3、好ましくは16~55kg/m3、および最も好ましくは20~40kg/m3であり得る。
【0081】
有機界面活性剤およびシリコーン系界面活性剤を含む界面活性剤を添加して、細胞安定剤として役立てることができる。一部の代表的な材料は、SF-1109、L-520、L-521、およびDC-193の名称で販売されており、一般的には、ポリシロキサンポリオキシアルキレンブロックコポリマーである。ポリオキシ-エチレン-ポリオキシブチレンブロックコポリマーを含有する有機界面活性剤も含まれる。発泡反応混合物が硬化するまで安定化させるために、少量の界面活性剤を使用することが特に望ましい。本明細書において有用でありうる他の界面活性剤は、長鎖アルコールのポリエチレングリコールエーテル、長鎖アリル酸硫酸エステルの第三級アミンまたはアルカノールアミン塩、アルキルスルホン酸エステル、アルキルアリールスルホン酸、およびそれらの組み合わせである。このような界面活性剤は、崩壊および大きな不均一な気泡の形成に対して発泡反応を安定化させるのに十分な量で使用される。典型的には、この目的のためには製剤全体を基準にして約0.2~約3重量%の界面活性剤総量で十分である。しかし、いくつかの実施形態では、いくつかの界面活性剤、たとえば、Air Products and Chemicals, Inc.から入手可能なDABCO DC-5598をより多量に含むことが望ましい場合がある。この観点から、界面活性剤は、ジオールおよび/またはポリオール成分に対して0~6重量%の任意の量で本発明の製剤中に含まれうる。
【0082】
最後に、充填剤および顔料などの他の添加剤を、本明細書に記載のポリウレタンフォーム形成配合物に含めることができる。そのようなものには、非限定的な実施形態では硫酸バリウム、炭酸カルシウム、グラファイト、カーボンブラック、二酸化チタン、酸化鉄、微小球、アルミナ三水和物、珪灰石、調製されたガラス繊維(滴下または連続)、ポリエステル繊維、他のポリマー繊維、それらの組み合わせなどが含まれうる。当業者は、本書に付属する請求権の範囲には該当するもの、望ましい性質および/または加工改変から利益を得る伸縮性ウレタンフォームを製造するために発明的な配合を適応させる典型的かつ適当な手段および方法について、これ以上の指示なしに知ることができるだろう。
【0083】
本明細書に記載される軟質ポリウレタンフォームは家具、寝具、および自動車シートクッションなどの様々な物品、より具体的には家具用途、自動車用途、ボート用途、バス座席用途、列車座席用途、RV座席用途、オフィス家具座席用途、航空用途、トラクタ用途、自転車用途、エンジンマウント用途、圧縮機用途、寝具用途、被覆用途、スポーツ用品用途、靴用途、カーペットクッション用途、包装用途、織物用途、緩衝クッション用途、HVAC用途、テント用途、救命いかだ用途、手荷物用途、およびハンドバッグ用途の構築および形成に利用できる。
【0084】
軟質スラブストックポリウレタンフォームは、家具(たとえばクッション、バックおよびアーム)、自動車産業(たとえば、シートおよびバッククッション、ならびにヘッドライニングおよびヘッドレスト)、自動車およびトラック、バスおよび飛行機のような公共輸送シート、ならびに、車両シートボトムおよびバックボルスタおよびアームレストを含むがこれらに限定されないトラクタ、自転車、およびオートバイのシート、ならびにランフラットタイヤおよび他の自動車内装部品のためのサポートリング、マットレスのような寝具、遮音材料、アームレストのような自動車内装部品、ステアリングホイールおよびシフトレバーノブ、シューソール、およびスポーツ用品に使用できる。
【実施例】
【0085】
【0086】
メカニカルスターラー、オイルヒーターおよび容積式実験用ポンプを備えた2リットルのジャケット付きハステロイ反応器に、ジエチルホスフィン酸(779g、6.38モル)を充填し、密封した。反応器を内部温度45℃に加熱した。プロピレンオキシド(743g、12.77モル)を、温度を65℃未満に維持しながら、ポンプを介して反応器に2時間かけて添加した。その後、反応器内部温度を90℃に上昇させ、3時間保持した。過量のプロピレンオキシドを蒸発させ、ワイプフィルムエバポレーターを用いて残留物を125℃のジャケット温度で減圧蒸留(300~500mTorr)し、無色澄明の液体として目的分画を採取した。収率は、ジエチルホスフィン酸出発原料に対して90%であった。生成物は、ジエチルホスフィン酸のヒドロキシル官能性エステルの2つの異性体の混合物であり、31P NMR(酢酸-d4,ppm):66.8~67.7、酸価は0.4mgKOH/g、リン含量は15.9%であった。
【0087】
【0088】
加熱マントル、メカニカルスターラー、還流冷却器、浸漬管、j-chemコントローラーおよび熱電対、ならびに苛性スクラバーを備えた1リットルフラスコに、ジエチルホスフィン酸(469g、3.84モル)を充填した。フラスコを80℃に加熱し、エチレンオキシドを加圧シリンダーから浸漬管を通して反応器に5時間かけて導入した。エチレンオキシド対ジエチルホスフィン酸の最終モル比は1.33であった。反応混合物を80℃でさらに3時間保持した。さらに窒素を浸漬管に通して過剰のエチレンオキシドを除去した。残渣のバッチ蒸留を150℃および200mTorrの条件で行い、透明な液体(400g)を得た。生成物はジエチルホスフィン酸2-ヒドロキシエチルエステルであり、31P NMR(CDCl3,ppm):79、酸価0.4mgKOH/gであった。
【0089】
本発明の新規化合物の適用は、軟質ポリウレタンフォーム用の標準配合物における難燃剤としてのそれらの使用を通して実証される(適用例3)。
【0090】
新規な難燃性化合物に加えて、以下の成分をポリウレタンフォームの調製に使用した。
【0091】
【0092】
〔実施例3〕
発泡体サンプルは、調製例1からのポリオールと新規難燃剤(FR)生成物とを混合することによって調製した。水、アミン触媒、シリコーン界面活性剤およびスズ触媒(イソシアネートを除く)を含む配合物の残りの成分を加え、ポリオール/FR生成物混合物中に、ポリエーテルフォームについては2000rpmで30秒間、ポリエステルフォームについては1000rpmで60秒間撹拌した。イソシアネートを添加し、激しく撹拌しながら反応混合物に組み込んだ直後に、完全な反応混合物を8×8×5インチ(20×20×20cm)の箱に注ぎ、完全に上昇させた。ポリエーテルフォームについては次にボックスを通気フード内に室温で24時間硬化させ、ポリエステルフォームについてはボックスを最初に110℃のオーブンに10分間置いて硬化させ、続いて室温で24時間硬化させた。フォームサンプルの頂部および底部0.5インチ、ならびにフォームの紙ライニング側を除去した。次に、サンプルを切断し、連邦自動車安全基準(Federal Motor Vehicle Safety Standard)No.302(FMVSS302)を含む可燃性について試験し、VDA277による放出試験を行った。
【0093】
表1および表2は、成分、フォーム調製のためのパラメーター、および試験の結果を示す。
【0094】
表1:ポリエーテル軟質フォーム配合システムおよび試験結果
【表2】
SE=自己消火性検体(時間帯に入る前に発火したが自己消火した)
【0095】
表2:ポリエステル軟質フォーム製剤システムおよび試験結果
【表3】
【0096】
本発明を特定の実施形態を参照して説明してきたが、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更を行うことができ、その要素の代わりに均等物を用いることができることが当業者には理解されよう。加えて、その本質的な範囲から逸脱することなく、特定の状況又は材料を本発明の教示に対して適合させるために多くの修正を行うことができる。したがって、本発明は本発明を実施するために企図される最良の形態として開示される特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明は添付の特許請求の範囲内にあるすべての実施形態を含むことが意図される。