(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】複合ホイール
(51)【国際特許分類】
B60B 5/02 20060101AFI20221125BHJP
B29C 70/16 20060101ALI20221125BHJP
B29C 70/42 20060101ALI20221125BHJP
B29K 105/08 20060101ALN20221125BHJP
B29L 31/30 20060101ALN20221125BHJP
【FI】
B60B5/02 F
B60B5/02 E
B29C70/16
B29C70/42
B29K105:08
B29L31:30
(21)【出願番号】P 2020509029
(86)(22)【出願日】2018-08-17
(86)【国際出願番号】 AU2018050878
(87)【国際公開番号】W WO2019033175
(87)【国際公開日】2019-02-21
【審査請求日】2021-03-03
(32)【優先日】2017-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】517370700
【氏名又は名称】カーボン・レボリューション・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CARBON REVOLUTION LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デンミード,アシュリー・ジェイムズ
(72)【発明者】
【氏名】シルコック,マイケル・ダンバー
(72)【発明者】
【氏名】コーベット,ティモシー
(72)【発明者】
【氏名】テイラー,ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】アギウス,スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】トリップピット,バリー
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-313200(JP,A)
【文献】特開2009-092105(JP,A)
【文献】特開2012-077838(JP,A)
【文献】特開2007-326533(JP,A)
【文献】特開平02-057401(JP,A)
【文献】特表2016-515977(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0026816(US,A1)
【文献】国際公開第2010/024495(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/136502(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60B 5/02
B29C 70/16
B29C 70/42
B29K 105/08
B29L 31/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合ホイールであって、
スポーク部分と、
前記スポーク部分用の成形プリフォーム構成要素
と、
質量付加と、を含み、
前記成形プリフォーム構成要素は、
複合ホイールのスポークに位置するように構成された細長い本体を含み、
前記成形プリフォーム構成要素は、50barの静水圧および60~150℃の温度の成型条件下で体積が<2%の圧縮性を有する硬化複合繊維材料から形成され、
前記硬化複合繊維材料の密度は、前記複合ホイールへの
前記質量付加に対するつりあいおもり質量を形成するように選択される、
複合ホイール。
【請求項2】
前記質量付加は、バルブ
またはタイヤ圧力監視バルブを含む、請求項1に記載の
複合ホイール。
【請求項3】
前記成形プリフォーム
構成要素の圧縮性は、50barの静水圧の成型条件下で、体積基準で<1%である、請求項1または2に記載の
複合ホイール。
【請求項4】
前記成形プリフォーム
構成要素の密度は、0.3g/cm
3と3g/cm
3との
間である、請求項1、2または3に記載の
複合ホイール。
【請求項5】
前記成形プリフォーム
構成要素は、
・20MPaと80MPaとの
間の引張強度、または
・1.5~30GP
aの剛性、の少なくとも1つを有する、
請求項1~4のいずれか1項に記載の
複合ホイール。
【請求項6】
前記成形プリフォーム
構成要素の表面は、少なくともRa=0.2μmの粗さを有する粗面を有する、
請求項1~5のいずれか1項に記載の
複合ホイール。
【請求項7】
前記粗面は、化学的にエッチングされた表面または機械的に摩耗された表面を含む、請求項6に記載の
複合ホイール。
【請求項8】
前記成形プリフォーム
構成要素は、不織、等方性もしくは異方性繊維からなる少なくとも1つの層;等方性繊維配列;直交異方性繊維配列;フィラー;ガラス微小球;セラミック微小球;硫酸バリウム;疎水性ヒュームドシリカ;エポキシ樹脂/硬化剤;フェノール樹脂;粉砕された炭素繊維、細断された炭素繊維、またはそれらの組み合わせから形成される、
請求項1~7のいずれか1項に記載の
複合ホイール。
【請求項9】
前記ガラス微小球は中空微小球を含む、請求項8に記載の
複合ホイール。
【請求項10】
前記成形プリフォーム
構成要素は、
(i)樹脂と、粉砕された炭素繊維と、中空ガラス微小球との混合物、
(ii)樹脂と、細断された炭素繊維と、中空ガラス微小球との混合物、
(iii)樹脂と中空ガラス微小球との混合物、
(iv)樹脂と粉砕された炭素繊維との混合物、
(v)樹脂と細断された炭素繊維との混合物、
(vi)樹脂と、粉砕された炭素繊維と、固体セラミック微小球との混合物、
(vii)樹脂と、細断された炭素繊維と、固体セラミック微小球との混合物、
(viii)樹脂と固体セラミック微小球との混合物、または
(ix)実質的に樹脂のみから形成される、
請求項1~9のいずれか1項に記載の
複合ホイール。
【請求項11】
前記樹脂は、樹脂と樹脂硬化剤との混合物を含む、請求項10に記載の
複合ホイール。
【請求項12】
前記成形プリフォームは、1~5重量
%の疎水性ヒュームドシリカをさらに含む、請求項8~11のいずれか1項に記載の
複合ホイール。
【請求項13】
前記粉砕された炭素繊維は、<500ミクロンの長
さを有する、請求項8~12のいずれか1項に記載の
複合ホイール。
【請求項14】
前記成形プリフォーム
構成要素の構成要素を包む硬化性マトリックス材料をさらに含む、
請求項1~13のいずれか1項に記載の
複合ホイール。
【請求項15】
前記マトリックス材料は、不飽和ポリエステル、ポリウレタン、ポリビニルエステル、エポキシ、熱可塑性プラスチック、またはそれらの組み合わせに基づく樹脂を含む、請求項14に記載の
複合ホイール。
【請求項16】
前記成形プリフォーム構成要素は、前記成形プリフォームが中に含まれるように構成される複合ホイールのフェース部分の複合材料全体の熱特性と実質的に一致するように設計された熱特性を有する、
請求項1~15のいずれか1項に記載の
複合ホイール。
【請求項17】
前記成形プリフォームは不完全な、または充分に硬化されていないプリフォームを含む、
請求項1~16のいずれか1項に記載の
複合ホイール。
【請求項18】
前記成形プリフォーム構成要素は、ほぼ直方体を含む、
請求項1~17のいずれか1項に記載の
複合ホイール。
【請求項19】
前記成形プリフォーム構成要素は、前記細長い本体の一方の端部から横方向に外側に延びる少なくとも2つのアームを備える、請求項18に記載の
複合ホイール。
【請求項20】
前記成形プリフォーム構成要素は、前記細長い本体の一方の端部から軸方向に外側に延びる少なくとも1つのL字形端部を備える、請求項18または19に記載の
複合ホイール。
【請求項21】
前記成形プリフォーム構成要素は、
繊維プライ保持構成、
プライの縁部が位置するべき場所を視覚的に示すガイドライン、または
前記成形プリフォームの取り扱いを最適化するための保持/操作構成、の特徴のうちの少なくとも1つを含む、
請求項1~20のいずれか1項に記載の
複合ホイール。
【請求項22】
前記成形プリフォームは、前記複合ホイールと一体的に形成されている、
請求項1~21のいずれか1項に記載の
複合ホイール。
【請求項23】
複合繊維ホイールのフェース部分を形成する方法であって、
成形プリフォーム
構成要素を、複合ホイールのフェース部分の繊維レイアップのスポーク部分において、前記複合ホイールの前記フェース部分の中心軸周りにおいて質量付加を平衡させるように適した位置に、配置するステップと、
前記成形プリフォームの周りに複合繊維要素をレイアップし、それによって複合繊維ホイールのスポーク部分の成型前構造を形成するステップとを含
み、
前記成形プリフォーム構成要素は、50barの静水圧および60~150℃の温度の成型条件下で体積が<2%の圧縮性を有する硬化複合繊維材料から形成された、細長い本体である、方法。
【請求項24】
前記フェース部分の成型前構造と接触する状態でマトリックス材料を与えるステップと、
前記フェース部分を硬化させるステップとをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記ホイールの各リム部分および前記フェース部分と接触してマトリックス材料を同時に与えるステップと、
前記ホイールの前記リム部分と前記フェース部分とを同時硬化するステップとをさらに含む、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
前記複合ホイールの前記フェース部分の繊維レイアップの繊維要素は炭素繊維を含む、請求項23~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記繊維要素は、プリプレグ、セミプレグ、織布もしくは不織布、マット、プリフォーム、プリコンソリデートプリフォーム、個々の繊維もしくは繊維の群、トウ、またはトウプレグの少なくとも1つとして与えられる、請求項23~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記繊維要素は、少なくとも1枚のファブリックシー
トとして提供される、請求項23~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
請求項1~22のいずれか1項に記載の複合繊維ホイールを含む、請求項23~28のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2017年8月18日に提出されたオーストラリア仮特許出願第2017903324号から優先権を主張し、その内容はこの参照により本明細書に組み込まれると理解されるべきである。
【0002】
技術分野
本発明は、一般に、複合ホイールのスポーク部分の製造に使用するための成形プリフォームに関する。本発明は、車両および/または飛行機用の複合炭素繊維ホイールに特に適用可能であり、以下においてはその例示的な用途に関連して本発明を開示することが便利であろう。しかしながら、本発明はその用途に限定されるものではなく、多種多様な複合型ホイールの製造補助として使用できることを理解されたい。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
本発明の背景の以下の議論は、本発明の理解を容易にすることを意図している。ただし、以下の議論は、言及された任意の資料が、出願の優先日におけるように公開され、公知であり、または一般的な一般知識の一部であった、という確認または承認ではないことを理解されたい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
タイヤ空気圧監視システム(TPMS)を使用すると、車両のホイールに取り付けられた空気入りタイヤの空気圧をリアルタイムで監視できる。TPMSシステムには、車両のホイールに取り付けられるTPMSバルブが含まれる。しかしながら、TMPSバルブをホイールに追加すると、バルブによってホイールの片側に付加される不均衡な質量のため、ホイールアセンブリ全体で静的質量の不均衡が発生する可能性がある。
【0005】
この不均衡は、ホイールの、質量付加を相殺する位置において、ホイールに接着剤または機械的に固定されるホイールウェイトを(通常はホイールのリムの周りに)付加することにより、または等方性材料で形成されたホイール、たとえば金属もしくは金属合金ホイールにおける選択的な材料除去を介して、対処できる。しかしながら、ホイールウェイトを使用すると、特定のホイール構成に必要な視覚的美観が損なわれる可能性がある。さらに、材料除去によるホイールの平衡化は、炭素繊維ホイールなどの複合ホイールの場合には実行可能な解決策ではなく、なぜならば材料の除去によって複合ホイールの構造的全一性が損なわれる可能性があるためである。
【0006】
したがって、複合ホイールになされた不均衡な質量付加に対抗するように構成され得る複合ホイールのための新しい平衡化および/または相殺化構成を提供することが望ましいだろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の概要
本発明は、複合ホイール、好ましくは車両用の炭素繊維ホイールの(フェース部分の一部を形成する)スポーク部分の繊維レイアップへの取り付けのためのプリフォームの成形インサートを提供する。
【0008】
本発明は、第1の局面において、複合ホイールのスポーク部分用の成形プリフォーム構成要素を提供し、成形プリフォームは、
複合ホイールのスポークに位置するように構成された細長い本体を含み、
成形プリフォーム構成要素は、50barの静水圧および60~200℃の温度の成型条件下で体積が<2%の圧縮性を有する硬化複合繊維材料から形成され、
硬化複合繊維材料の密度は、複合ホイールへの質量付加に対するつりあいおもり質量を形成するように選択される。
【0009】
実施形態では、質量付加は、ホイールへの不均衡な質量付加、好ましくは非複合非炭素繊維質量付加を含む。例示的な実施形態では、質量追加はバルブ、好ましくはタイヤ圧力監視バルブを含む。
【0010】
本明細書における「複合」という用語は、構造が積層されているか否かに関係なく、硬化または未硬化の繊維を含む任意のタイプの複合材料を意味することを理解されたい。さらに、硬化または未硬化のプリフォームおよびプリコンソリデートプリフォームは、複合材料および本体の重要な下位群である。
【0011】
また、「硬化複合繊維材料」における「硬化(cured)」という用語は、複合繊維材料が少なくとも部分的な硬化プロセスを経て、複合繊維材料における硬化性マトリックス材料を固めた(harden)、硬化させた(cure)または凝固させた(set)ことを示すことも理解されたい。
【0012】
例えば、本出願人の国際特許公開第2014/165895A9号に教示されているような複合ホイールは、一般に、リム部分とフェース部分との2つの主要セクションを含む。 リム部分は、タイヤを受け入れてタイヤを座するように構成された環状構造を含む。フェース部分は、ホイールを車両に固定するために使用されるハブと、ハブとリムとの間を延びてそれらを相互接続する一連のスポーク部分を含むスポーク接続構造とを含む。横荷重、縦荷重、およびねじれ荷重がタイヤを介してホイールのリム部分に伝達され、接続構造に曲げ応力およびねじれ応力が発生する。
【0013】
本出願人の複合ホイールのスポーク部分は、成形発泡材プリフォーム材料を予め組み込んでいる。この従来の成形プリフォームは、剛性または半剛性の発泡体に形成される等方性発泡材料で構成される。そのような発泡材プリフォームの密度は、追加の加重されたインサートまたは部分を、構成発泡材料の中または周囲に追加することなしには、簡単に変更することはできない。さらに、これらの発泡材プリフォームは、典型的には、少なくとも半圧縮性であり、周囲の複合材料との適合性が制限されている材料で形成された表面を有する。
【0014】
本発明は、調整された密度で形成することができる複合ホイールのスポーク部分を形成するためのレイアップおよび成型プロセスで使用できる成形プリフォームを提供する。したがって、成形プリフォームの質量は、複合ホイールの特定のスポークの質量要件に適合するように設計され得る。この調整された密度は、プリフォームの複合組成(以下でより詳細に説明する)、より具体的には複合組成で使用されるフィラー材料の変更を通じて達成される。その場合、複合組成を選択して、構成複合ホイールへの質量付加を相殺するのに適した密度、およびしたがって質量を提供することができる。特定の用途の1つは、複合ホイールに取り付けられるTPMSバルブに対するつりあいおもりである。
【0015】
本発明による成形プリフォームは、複合ホイールのスポーク部分のレイアップに使用される従来の発泡材インサートの直接的な代替物を形成することを意図している。このように、この新しいインサートを使用する場合、それは、既存のホイール製造プロセス(レイアップ、成型など)における従来の発泡材コアインサートの直接的な代替物となるため、ホイール製造において特別な考慮を行う必要はない。
【0016】
成形プリフォーム構成要素は、複合ホイールのスポークの空間の任意の量を占めることができる。いくつかの実施形態では、成形プリフォーム構成要素は、全体積を占めるように設計される。他の実施形態では、成形プリフォーム構成要素は、スポークのコア体積の一部を占めることができる。成形プリフォーム構成要素がスポークの体積の一部を占める場合、その体積を満たすために、別のプリフォーム、例えば発泡材構成要素を本発明と組み合わせて使用してもよい。
【0017】
スポークインサートは複合材料で形成されることにより、複雑な成型を可能にし、複合ホイールの複合組成との一致を与えて、複合ホイールの周囲の複合レイアップ材料と同様の熱特性および膨張特性をプリフォームに与える。さらに、複合材料の使用により、金属材料の使用が回避されるため、製造品質保証テスト中のX線検査画像の歪みが回避される。この複合組成は、さまざまな用途に合わせてスポークインサートの機械的特性を調整する機能も提供する。より具体的には、スポークインサートの密度は、フィラー材料の調整を通じて可変であり、成形プリフォームがその一部を形成する複合ホイールへの質量追加を相殺するのに適した所望の質量を提供する。さらに、スポークインサートは熱膨張係数の点でスポーク構造によりよく適合しているため、加熱されたときに複合材にかかる応力が少なくなる。 過剰な応力は、プリフォームを周囲の炭素繊維材料から剥離することにつながる可能性がある。
【0018】
成形プリフォームは、硬化複合繊維材料を形成する樹脂などの硬化性マトリックス材料を含むかまたはそれによって結合できる任意の数の異なる材料から形成することができる。繰り返すが、成形プリフォームの組成のための材料の特定の選択は、成形プリフォームに特定の調整された密度を与えるために行われる。用途に応じて、密度は、0.3g/cm3と3.0g/cm3との間、好ましくは0.3g/cm3と2.0g/cm3との間、より好ましくは0.4~1.8g/cm3になるように調整することができる。いくつかの実施形態では、成形プリフォームの密度は0.5~1.5g/cm3である。いくつかの実施形態では、成形プリフォームの密度は0.4~1.2g/cm3である。いくつかの実施形態では、成形プリフォームの密度は0.8~1.6g/cm3である。いくつかの実施形態では、成形プリフォームの密度は0.4~1.5g/cm3である。いくつかの実施形態では、成形プリフォームの密度は1.0~1.8g/cm3である。 いくつかの実施形態では、成形プリフォームの密度は0.4~1.0g/cm3である。典型的には、組成は次のように選択される。
【0019】
いくつかの実施形態において、成形プリフォームは、樹脂(純粋樹脂)から形成されるか、または実質的に樹脂のみから形成される。
【0020】
いくつかの実施形態では、成形プリフォームは、連続繊維配置プライもしくはプリフォーム;単繊維方向プライからなる1つ以上の層(単方向);多方向繊維プライからなる1つ以上の層(例:ステッチされたノンクリンプファブリック);またはたとえばCEVOTECH技術など、ファイバーパッチ配置(FPP)プリフォーム、のうちの少なくとも1つから形成される。
【0021】
いくつかの実施形態では、成形プリフォームは、例えばRECATEX(登録商標)リサイクル炭素繊維不織布などの、不織、等方性もしくは異方性繊維からなる少なくとも1つの層;等方性繊維配列;直交異方性繊維配列;フィラー;ガラス微小球、好ましくは中空ガラス微小球;セラミック微小球;硫酸バリウム;疎水性ヒュームドシリカ;エポキシ樹脂/硬化剤;フェノール樹脂;粉砕された炭素繊維、細断された炭素繊維(たとえば小さく切られた、または切断された炭素繊維)の少なくとも1つ、またはそれらの組合せから形成される。
【0022】
好ましい実施形態では、成形プリフォーム構成要素は、
(i)樹脂と、粉砕された炭素繊維と、中空ガラス微小球との混合物、
(ii)樹脂と、細断された炭素繊維と、中空ガラス微小球との混合物、
(iii)樹脂と中空ガラス微小球との混合物、
(iv)樹脂と粉砕された炭素繊維との混合物、
(v)樹脂と細断された炭素繊維との混合物、
(vi)樹脂と、粉砕された炭素繊維と、固体セラミック微小球との混合物、
(vii)樹脂と、細断された炭素繊維と、固体セラミック微小球との混合物、
(viii)樹脂と固体セラミック微小球との混合物、または
(ix)実質的に樹脂のみ、のうちの少なくとも1つから形成される。
【0023】
例示的な実施形態では、成形プリフォーム構成要素は、
(x)樹脂と、粉砕された炭素繊維と、中空ガラス微小球との混合物、
(xi)樹脂と中空ガラス微小球との混合物、
(xii)樹脂と粉砕された炭素繊維との混合物、のうちの少なくとも1つから形成される。
【0024】
上記組成物(i)~(xiii)において、樹脂は、樹脂と樹脂硬化剤との混合物を含むことが好ましい。 さらに、組成物は、選択肢的に、1~5重量%、好ましくは1~2重量%の疎水性ヒュームドシリカをさらに含むことができる。 他の実施形態では、組成物は、選択肢的に、2~5重量%、好ましくは2~3重量%の疎水性ヒュームドシリカを含むことができる。
【0025】
任意の好適な粉砕炭素繊維を使用できることを理解されたい。いくつかの実施形態では、粉砕炭素繊維は、<500ミクロンの長さ、好ましくは100ミクロン未満の長さを有する。たとえば、Carbiso(商標出願済み)MFなどの長さ100ミクロンの粉砕炭素繊維を使用できる。しかしながら、任意のブランドの粉砕炭素繊維が好適である可能性があることを理解されたい。同様の長さの他の繊維タイプも使用することができる。
【0026】
他の実施形態では、細断された炭素繊維、例えば、小さく切られた炭素繊維を使用することができる。この細断された炭素繊維は、20mm未満、好ましくは15mm未満、より好ましくは1~15mmの長さを有することができる。たとえば、長さ約12mmの細断された炭素繊維を使用できる。同様の長さの他の繊維タイプも使用することができる。
【0027】
好ましい材料は、混合樹脂および硬化剤と、中空ガラス微小球と、粉砕炭素繊維と、疎水性ヒュームドシリカとを、質量付加によって生じるホイールアセンブリにおける提案された不均衡を相殺するよう、以下の比率の十分な質量で混合したものである。いくつかの実施形態では、組成物の混合比(質量部)は以下のようであり得る:
【0028】
【0029】
オプションGの細断された炭素繊維は、好ましくは、長さ12mmの小さく切られた炭素繊維を含む。
【0030】
上記のオプション(オプションA~G)の各々は、1~5重量%、好ましくは1~2重量%の疎水性ヒュームドシリカをさらに含むことができる。
【0031】
上記のオプション(A~G)は、組成および結果として生じる理論密度の特定の例を与えるが、他の代替混合比および材料も望ましい調整された密度を与え得ることを理解されたい。
【0032】
例示的な実施形態では、成形プリフォーム構成要素は、3.75:1:0.56の比率(質量部)の混合樹脂:粉砕炭素繊維:中空ガラス微小球の混合物を含む材料から形成される。実施形態において、混合樹脂:粉砕炭素繊維の比(質量部)は、2.5:1から5:1、好ましくは3:1から4:1の間である。実施形態では、粉砕炭素繊維:中空ガラス微小球の比(質量部)は、1:0.4から1:0.7、好ましくは1:0.5から1:0.6の間である。
【0033】
さまざまな好適な中空ガラス微小球を成形プリフォームの組成に使用することができる。中空ガラス微小球は、好ましくは、薄い壁を有する中空ガラス球を含む。中空ガラス微小球は、ソーダ石灰ホウケイ酸ガラスを含む(が、これに限定されない)さまざまなガラス材料から形成することができる。中空ガラス微小球の軟化温度は、好ましくは少なくとも500℃、より好ましくは少なくとも600℃、さらにより好ましくは約600℃である。中空ガラス微小球は、好ましくは10~200ミクロン、より好ましくは18~65ミクロンのサイズを有する。さらに、中空ガラス微小球は、好ましくは250~28000psi、より好ましくは250~6000psi、さらにより好ましくは250~3000psiの目標粉砕強度(90%残存)を有する。さらに、中空ガラス微小球は、好ましくは0.125~0.60g/cc、好ましくは0.125~0.4g/cc、さらにより好ましくは0.125~0.28g/ccの真密度を有する。例示的な一実施形態では、中空ガラス微小球は、30ミクロンの平均直径および3000psiの粉砕強度(体積で90%残存)および0.28g/ccの真密度を有する3M S28HSグラスバブルズ(3M先進材料部門(3M Advanced Material Division)から入手可能)を含む。しかしながら、他の同様の微小球も使用できることを理解されたい。たとえば、250PSIの目標粉砕強度および0.125g/ccの真密度を有する3M K1バブルなどの代替中空微小球、または28000siの粉砕強度および0.60g/ccの真密度を有する3M IM30K(または同様のもの)使用することができる。
【0034】
繊維ベースの材料を使用する場合、成形プリフォームは、繊維層、繊維プライ、プリプレグ、セミプレグ、織布もしくは不織布、マット、プリフォーム、プリコンソリデートプリフォーム、個々の繊維もしくは繊維の群、トウ、またはトウプレグの少なくとも1つから形成できる。
【0035】
プリプレグとは、繊維、繊維トウ、織布または不織布などの実質的にまたは完全に含浸された集まりを指すことを理解されたい。同様に、セミプレグとは、繊維または繊維トウの部分的に含浸された集まりを指すことを理解されたい。部分的な含浸は、コンソリデーションおよび/または硬化中に乾燥繊維を通してまたは乾燥繊維に沿ってガスの除去を強化する。セミプレグの一例は、繊維からなる部分的に含浸された層である。
【0036】
織布および不織布は、実質的に乾燥している、すなわち樹脂などのマトリックス材料によって含浸されていない、個々の繊維または繊維トウの集まりであることを理解されたい。繊維トウは、多数の個々の繊維、たとえば数千本、数万本または数十万本の繊維の束であることも理解されたい。トウプレグは、少なくとも部分的に含浸された繊維トウである。
【0037】
本発明では、幅広いさまざまな繊維が用いられてもよく、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、アクリル、ポリエステル、PAN、PET、PE、PPもしくはPBO繊維などの合成繊維、麻、ジュート、セルロース繊維などのバイオ繊維、ロックウールなどの鉱物繊維、鋼、アルミニウム、真鍮、銅などの金属繊維、ホウ素繊維、またはこれらの任意の組み合わせを含むが、それらに限定はされない。好ましい実施形態では、繊維は炭素繊維を含む。繊維は、例えば一方向性、二軸性、もしくはランダム、またはこれらの組み合わせなど、遷移ゾーンにおいて任意の望ましい配向で提供されてもよい。しかしながら、繊維は、好ましくは、複合部材間の応力を低減するとともに、使用中により高い応力にさらされる最終構造の領域を強化するように、配向される。繊維の配向は、遷移ゾーン内の繊維を含むすべての層で同じでも異なっていてもよい。例えば、応力分析が多軸繊維配向を示唆する場合、繊維からなる1つ以上の層は他の層とは別の態様で配向されてもよい。しかしながら、他の実施形態では、繊維は、繊維からなるすべての層において実質的に同じ態様で配向されてもよい。
【0038】
成形プリフォーム構成要素は、複合ホイールのフェース部分を形成する際に使用されるときに最小の体積変化を保証する材料で形成されるべきであることを理解されたい。その材料が繊維配列(等方性繊維配列など)、繊維層、繊維プライ、プリプレグ、セミプレグ、織布もしくは不織布、マット、プリフォーム、プリコンソリデートプリフォーム、個々の繊維もしくは繊維の群、トウ、またはトウプレグを含む場合、その材料は、好ましくは、必要な圧縮性特性、およびしたがって後続の処理ステップにおいて最小の体積変化を与えるよう、処理される。
【0039】
硬化複合繊維材料は、構造的こわさおよび/または固体性をプリフォームに与え、これを利用して、そのプリフォームの設計された構成を複合ホイール全体の形状および形態に保持することができる。成形プリフォームは圧縮性が制限されるように設計され、複合ホイールのフェース部分のレイアップおよび成型中に適切な体積を与え、体積変化を最小限に抑えることができる。したがって、複合ホイールのスポーク部分のレイアップにおける本発明の成形プリフォームの使用は、成型された複合ホイールの構造に損傷を与える可能性のある望ましくない寸法変化および体積変化を最小限に抑え、より好ましくは回避する。成形プリフォームの圧縮性は、樹脂トランスファー成型(RTM)プロセスのような樹脂成型プロセス中において50barの静水圧(樹脂射出時など)および60~200℃のプロセス温度範囲の成型条件下において%体積測定値であることを理解されたい。
【0040】
成型条件中のプロセス温度は、好ましい射出および硬化温度によって異なり得る。好ましいプロセス温度は約120℃(典型的には120℃+/-3℃)である。しかしながら、プロセス温度は60~180℃、好ましくは60~150℃、より好ましくは60~140℃の範囲であり得る。実施形態において、プロセス温度は100~200℃、好ましくは100~150℃、より好ましくは100~130℃である。実施形態では、プロセス温度は110~150℃、好ましくは110~130℃である。
【0041】
本発明の成形プリフォームの機械的特性は、所望の用途に合わせて調整することができる。上記で概説したように、複合繊維体の圧縮性は、50barの静水圧の成型条件下で2%体積未満でなければならない。いくつかの実施形態では、成形プリフォームの圧縮性は、50barの静水圧の成型条件下で体積が<1.5%、好ましくは<1%である。成型条件のプロセス温度は、前に示したものと同じである。
【0042】
対象の成形プリフォームの他の機械的特性は以下を含む:
・引張強度-20MPaと80MPaとの間が好ましく、20~60MPaがより好ましく、
・剛性-好ましくは1.5~30GPa、好ましくは5~30GPa、より好ましくは8~30GPa、さらにより好ましくは10~25GPaである。いくつかの実施形態において、剛性は1.5~10GPaである。他の実施形態において、剛性は8~25GPaである。いくつかの実施形態では、剛性は2~30GPa、好ましくは10~25GPaである。
【0043】
成形プリフォームの表面は、少なくともRa=0.2μmの粗さを有する粗面を有することが好ましい。この表面粗さは、成形プリフォームが複合ホイールのハブ部分の繊維レイアップに配置されたときに、そのハブ部分の周囲の材料と接合するのを助ける。粗面は、任意の好適な手段によって形成され得る。いくつかの実施形態では、粗面は、化学的にエッチングされた表面、機械的に摩耗された表面、または特別にテクスチャード加工された表面を含む。
【0044】
成形プリフォームの熱膨張特性は、成形プリフォームが中に含まれるように構成される複合ホイールのフェース部分の複合材料全体の熱膨張特性に好ましくは類似するように、好ましくは実質的に一致するように、設計される。成形プリフォームと周囲の材料(典型的にはラミネート)との類似または実質的に一致した熱膨張特性により、硬化後プロセス中の成形プリフォームの表面での剥離などの材料損傷が回避される。したがって、成形プリフォームの熱性能(および機械的特性)は、周囲のホイール構造と一致する。
【0045】
成形プリフォームの形成方法には、典型的には、次の一般的なステップが含まれる:
連携的に成形された型内で、選択された複合繊維材料を用いて、成形プリフォームの所望の形状をレイアップまたは他の態様で形成するステップ;
型内でレイアップされた材料と接触する状態でマトリックス材料を提供して、マトリックス材料導入体を形成するステップ;および
マトリックス導入体を硬化するステップ。
【0046】
典型的には、レイアップされた材料には、マトリックス材料がインフュージョンされ、マトリックス材料はレイアップされた材料に浸透する。したがって、成形プリフォームは、典型的には、成形プリフォームの構成成分を包む硬化性マトリックス材料をさらに含む。成型されて成形プリフォームに形成されると、成形プリフォームは、繊維と他の構成材料を一緒に結合するマトリックス材料を含む。レイアップ(マトリックス材料のコンソリデーションおよび/または凝固(setting)、硬化(curing)などの前の時点までの準備)中、マトリックス材料は繊維を含む層(プリプレグまたはセミプレグなど)に、または繊維を含む層間に、含まれる必要はない。しかしながら、マトリックス材料は、凝固後には、連続したマトリックスを形成するべきである。好適なマトリックス材料は、不飽和ポリエステル、ポリウレタン、ポリビニルエステル、エポキシに基づく樹脂から選択することができる(が、これらに限定はされず、)複雑な外形を有する成形プリフォームの成型を可能にする。
【0047】
硬化ステップを制御して、剛性および圧縮性を含む所望の機械的特性を与えることができることを理解されたい。成形プリフォームの機械的特性は、特定の用途に合わせて設計できる。これらの特性は、成形プリフォームを形成する構成材料、マトリックス材料、そこに注入されるかまたは含まれるマトリックス材料の量、および硬化過程状況(硬化時間、温度、本体が完全に硬化しているかどうか)の選択により変更できる。場合によっては、複合ホイールのフェース部分のレイアップで使用されるときに後のレイアップ材料の付着を助ける表面特性を生じさせるために、成形プリフォームが完全に硬化する前に硬化プロセスを停止することが望ましい。
【0048】
有利には、成形プリフォームの表面は、複合ホイールを形成するために使用される材料および構造の残りの部分に付着するように設計されることが好ましい。実施形態では、成形プリフォームの表面は、炭素繊維または炭素繊維を上に含む材料の付着を助けるように構成される。上述のように、成形プリフォームの表面は、少なくともRa=0.2μmの粗さを有する粗面を有することが好ましい。粗面は、任意の好適な手段によって形成され得る。いくつかの実施形態では、粗面は、化学的にエッチングされた表面、機械的に摩耗された表面、または機械的に特徴づけられた表面を含む。
【0049】
成形プリフォームの表面特性は、成形プリフォームの硬化特性および硬化過程状況を変更することで修正できる。いくつかの実施形態において、成形プリフォームは、不完全な、または充分に硬化されていないプリフォームを含む。しかしながら、繰り返すが、成形プリフォームは、後続の繊維レイアップおよび成型加工ステップで最小の体積変化を与える選択された圧縮性を与えるように、硬化されるかまたは他の態様で処理されることを理解しなければならない。フィラー材料および樹脂は、硬化前に金型に注入可能であることが好ましい。
【0050】
成形プリフォームは、典型的には、必要な複合ホイールのスポーク部分の外形(場合によっては複雑な外形)を形成するための基礎を提供する設計形状および外形で形成される。複合ホイールのスポークまたはスポーク部分は、概して、複合ホイールの中心軸から径方向に延びる中心線に沿って延びる。成形プリフォームはその形状に従い、典型的には、複合ホイールの中心軸から径方向に延びる中心線に沿って延びるように構成された細長い本体を形成する。
【0051】
複合ホイールのスポーク部分は、任意の適切な構成にすることができる。実施形態では、スポーク部分は、ほぼ直方体または長方形のボックス形状の本体を含む。その本体は、好ましくは、細長い本体の一方の端部から横方向外側に延びる少なくとも2つのアームを含み、好ましくは、構成複合ホイールのハブ部分の近接または隣接表面の輪郭および形状を補完するように構成された端面を有する。その本体は、好ましくは、細長い本体の一方の端部から軸方向外向きに延びる少なくとも1つのL字型端部も含み、好ましくは、構成複合ホイールのリム部分の近接または隣接表面の輪郭および形状を補完するように構成された端面を有する。
【0052】
成形プリフォームは、加えて、複合ホイールのフェース部分のその後の形成およびレイアップを支援するように設計されるいくつかの特徴を含むことができる。これらの機能は以下を含む(が、それらに限定はされない)。
【0053】
繊維プライ保持構成;
プライの縁部が位置するべき場所を視覚的に示すガイドライン;または、
成形プリフォームの取り扱いを最適化するための保持/操作構成。
【0054】
本発明は、第2の局面において、複合繊維ホイールのフェース部分を形成する方法であって、
先行する請求項のいずれか1項に記載の成形プリフォームを、複合ホイールのフェース部分の繊維レイアップのスポーク部分において、複合ホイールのフェース部分の中心軸周りにおいて質量付加を平衡させるように適した位置に、配置するステップと、
成形プリフォームの周りに複合繊維要素をレイアップし、それによって複合繊維ホイールのスポーク部分の成型前構造を形成するステップとを含む。
【0055】
成形プリフォームは、複合繊維のフェース部分レイアップの1つ以上のスポーク部分において、複合ホイールのフェース部分の中心軸周りの質量付加を平衡させるのに適した任意の位置に、配置することができる。典型的には、この位置は、質量付加の位置とほぼ径方向に反対の位置であろう。しかしながら、いくつかの実施形態では、成形プリフォームは、中心軸の周りの質量付加に沿って、同じ側に位置決めされるように設計されてもよい。例えば、質量付加がTPMSバルブなどのバルブを含む場合、成形プリフォームは、複合ホイール上のバルブ位置のほぼ径方向反対側に位置するスポーク部分に位置する。
【0056】
フェース部分の繊維レイアップの成形プリフォーム、繊維、および繊維要素は、好ましくはマトリックス材料を注入および/または含浸され、次いで硬化(cure)、凝固(set)などが行われる。したがって、フェース部分は、繊維レイアップを包み、繊維および繊維要素を含むマトリックス材料をさらに含むことが好ましい。任意の好適なマトリックス材料を使用することができる。いくつかの実施形態では、樹脂が使用される。樹脂は、好ましくは、不飽和ポリエステル、ポリウレタン、ポリビニルエステル、エポキシ、熱可塑性樹脂、類似の化合物またはそれらの組み合わせに基づく。好ましい実施形態では、樹脂はエポキシ系である。他の実施形態では、マトリックス材料は金属マトリックスを含み、凝固すると繊維と複合金属マトリックスを形成する。金属マトリックス材料は、好ましくは、アルミニウム、マグネシウム、チタン、鉄ならびにそれらの組み合わせ、合金および混合物から選択される。成型されて複合ホイールに形成されると、フェース部分は、樹脂、金属、繊維などのマトリックス材料で構成される。
【0057】
フェース部分の繊維レイアップは、好ましくは、硬化性マトリックス材料を注入および/または含浸され、次いで硬化(cured)および/または凝固(set)される。したがって、この方法は、以下のステップをさらに含むことが好ましい。
【0058】
フェース部分の成型前構造と接触する状態でマトリックス材料を与えるステップと;
フェース部分を硬化させるステップ。
【0059】
成形プリフォームの表面は、好ましくは、マトリックス材料が注入/含浸されたときに周囲の材料と結合できるように活性化される。活性化は、典型的には表面マーキング手順であり、例えば、これはケミカルエッチング、機械的摩耗などによって達成できる。
【0060】
成形プリフォームは、複合ホイールと一体的に形成されることが好ましい。さらに、複合ホイールは単一体として形成されることが好ましい。これは典型的には、マトリックス材料の同時注入および/または含浸と、その後の複合ホイールの各部分の硬化(curing)、凝固(setting)などを伴う。そのような実施形態では、リム部分およびフェース部分の各々は、接続が準備される時点で少なくとも部分的に硬化されていないことが好ましい。接続部は、複合ホイールと一体的に形成されることが好ましい。そのような実施形態では、方法はさらに以下のステップを含む。
【0061】
ホイールの各リム部分およびフェース部分と接触してマトリックス材料を同時に与えるステップと、
ホイールのリム部分とフェース部分とを同時硬化するステップ。
【0062】
マトリックス材料およびフェース部分、リム部分、単一複合ホイールなどの関連部品の硬化には、硬化(curing)、凝固(setting)、乾燥または類似のプロセスが含まれることを理解されたい。
【0063】
マトリックス材料が樹脂を含む場合、さまざまな樹脂送達システムを第2の局面の方法とともに使用することができる。いくつかの実施形態では、樹脂の少なくとも一部は、樹脂インフュージョンおよび/または樹脂トランスファー成型および/または真空支援樹脂トランスファー成型によって提供される。
【0064】
複合ホイールのフェース部分の繊維レイアップの繊維および繊維要素は、好ましくは炭素繊維繊維を含む。しかしながら、繰り返すが、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、アクリル、ポリエステル、PAN、PET、PE、PPもしくはPBO繊維などの合成繊維、麻、ジュート、セルロース繊維などのバイオ繊維、ロックウールなどの鉱物繊維、鋼、アルミニウム、真鍮、銅などの金属繊維、ホウ素繊維、またはこれらの任意の組み合わせを含むが、それらに限定はされない、多種多様な繊維を本発明で使用できることを理解されたい。好ましい実施形態では、繊維は炭素繊維を含む。繊維は、例えば一方向性、二軸性、もしくはランダム、またはこれらの組み合わせなど、遷移ゾーンにおいて任意の望ましい配向で提供されてもよい。しかしながら、繊維は、好ましくは、複合部材間の応力を低減するとともに、使用中により高い応力にさらされる最終構造の領域を強化するように、配向される。繊維の配向は、遷移ゾーン内の繊維を含むすべての層で同じでも異なっていてもよい。例えば、応力分析が多軸繊維配向を示唆する場合、繊維からなる1つ以上の層は他の層とは別の態様で配向されてもよい。しかしながら、他の実施形態では、繊維は、繊維からなるすべての層において実質的に同じ態様で配向されてもよい。
【0065】
繊維要素は、プリプレグ、セミプレグ、織布もしくは不織布、マット、プリフォーム、プリコンソリデートプリフォーム、個々の繊維もしくは繊維の群、トウ、トウプレグなどを含む任意の好適な形態で提供されてもよい。実施形態では、繊維要素は、少なくとも1枚のファブリックシート、好ましくは多軸ファブリックとして提供される。接続のレイアップ(マトリックス材料のコンソリデーションおよび/または硬化(curing)、凝固(setting)などの前の時点までの準備)中、マトリックス材料は、繊維を含む層(例:プリプレグまたはセミプリグ)に、または繊維を含む層間に含まれる必要はない。しかしながら、マトリックス材料は、凝固後には連続したマトリックスを形成するべきである。
【0066】
フェース部分は、本発明の成形プリフォームを含む所望の形状および繊維配向を有するテーラード繊維プリフォームから形成されることができる。テーラード繊維プリフォームは、所望の形状および繊維配向を有するように形成される。プリフォームは、繊維を含む複合材料であることを理解されたい。場合によっては、プリフォームは樹脂などの未硬化のマトリックス材料も含んでもよい。いくつかのプリフォームは、マトリックス材料のない乾燥繊維を実質的に含んでもよい。マトリックス材料が注入される前にプライをともに保持するのを助けるために、バインダが使用されてもよい。
【0067】
本発明の第3の局面は、本発明の第1の局面による成形プリフォームを含む複合ホイールを提供する。いくつかの実施形態では、複合ホイールは中心ホイール軸の周りに形成される。
【0068】
本発明のさらなる局面は、複合ホイールのスポーク部分用の成形プリフォーム構成要素を提供し、成形プリフォームは、
複合ホイールのスポークに位置するように構成された細長い本体を含み、
成形プリフォーム構成要素は、50barの静水圧および60~150℃の温度の成型条件下で体積が<2%の圧縮性を有する硬化複合繊維材料から形成され、
硬化複合繊維材料の密度は、0.3g/cm3と3g/cm3との間、好ましくは0.4~2g/cm3になるように選択される。
【0069】
いくつかの実施形態では、硬化複合繊維材料の密度は、0.3g/cm3と2g/cm3との間、より好ましくは0.4~1.8g/cm3になるように選択される。いくつかの実施形態では、成形プリフォームの密度は0.5~1.5g/cm3である。いくつかの実施形態では、成形プリフォームの密度は0.4~1.2g/cm3である。いくつかの実施形態では、成形プリフォームの密度は0.8~1.6g/cm3である。いくつかの実施形態では、成形プリフォームの密度は0.4~1.5g/cm3である。いくつかの実施形態では、成形プリフォームの密度は1.0~1.8g/cm3である。いくつかの実施形態では、成形プリフォームの密度は0.4~1.0g/cm3である。
【0070】
本発明のこのさらなる局面は、本発明の第1の局面に関して上述したすべての特徴を組み込むことができることを理解されたい。
【0071】
本発明は、自動車、トラック、航空機、バスなどの運搬体用の炭素繊維ホイールのスポーク部分の繊維レイアップに取り付けるためのプリフォームの成形インサートを提供することが好ましい。プリフォームの成形インサートは、複合ホイールのスポーク部分を形成するための強化繊維のレイアップ支援としても使用できる。
【0072】
次に、本発明の特定の好ましい実施形態を示す添付図面の図を参照して、本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【
図1】本発明の一実施形態によるフェース部分とリム部分との間に接続部を含む複合ホイールの斜視図である。
【
図2】
図1に示す複合ホイールのリムとフェースとの接続領域の詳細図である。
【
図3】
図1および
図2に示す複合ホイールの正面断面図である。
【
図4】本発明の実施形態による成形プリフォームの等角上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0074】
詳細な説明
最初に
図1を参照すると、形成済みの、本発明の成形プリフォーム200Aを一体的に含む複合ホイール100の斜視図が示されている。図示された複合ホイール100は、本出願人により、一体型本体として形成された複合ホイールとして開発された。複合ホイール100の製造の一般的なプロセスは、国際特許公開WO2010/024495A1に記載されており、その内容は、ここに引用により援用されると理解されるべきである。
【0075】
図示された複合ホイール100は、2つの主要なセクションを含む。すなわち、
A).リム部分102は、タイヤ(図示せず)が取り付けられる環状構造を含み、
B).円形ハブ106と一連のスポーク108とを含むフェース部分104を含む。ハブ106は、中央開口部107を含み、車両のホイールマウント(図示せず)にホイールを固定するために使用される締結ボルト(図示せず)を受け入れるように構成されたいくつかの締結開口部、または関連付けられた開口部がハブ106にある中央ロックホイール締結構成(図示せず)も含み得る。スポーク108は、一方の端部でハブ106に接続され、他方の端部でリム部分102に接続される細長いアームを含む。
【0076】
国際特許公開WO2010/024495A1に記載されているように、このような一体型複合ホイール100の作成は、別個のリム部分金型(図示せず)およびフェース部分金型(図示せず)の使用を必要とする。使用中、リム部分102は、リム部分金型に座する補強ファブリックで典型的には具現化される第1の繊維の組をレイアップすることにより形成され、フェース部分104は、典型的にはフェース部分金型に座する補強ファブリックで典型的に具現化される第2の繊維の組を別途レイアップすることにより形成される。リム部分金型は、内側バケット金型と外側円筒形金型とを含む。次いで、リム部分金型およびフェース部分金型からの補強ファブリックは、結合金型において集められ、別々の部分は接続点110で相互接続される。次に、樹脂などのマトリックス材料を全体的なホイール型の補強に注入および/またはインフュージョンさせて、成型された単一部品ホイール100を製造する、最終成型プロセスが行われる。
【0077】
フェース部分104の形状および構成は、フェース部分金型におけるレイアップから形成することができる。成形インサートは、フェース部分の特徴の形成を支援するためにフェース金型のさまざまなセクションで使用できる。一例は、複合ホイール100のハブ部分106の形成を支援するために使用される成形プリフォームの使用を教示する本出願人の同時係属特許出願(仮特許出願第2017903324号から優先権を主張する)である。さらに、複合ホイール100のスポーク部分108は、
図2に概して示されるように、成形された発泡材インサート200を用いて予め構築されている。その発泡材インサート200は、ポリウレタン発泡材、ポリメタクリルアミド、シンタクチック材料などの高密度発泡材材料で構成され、フェース部分のレイアップの前に所望のスポーク形状に成型される。スポークでの発泡材インサートの使用は、ホイールハブ部分106とリム102との間の荷重が繊維レイアップの設計およびそれらレイアップの繊維配向によってスポーク108の壁を通して伝達され得るため、可能である。したがって、発泡材インサートは、繊維のレイアップを周囲に形成できる軽量のコアフィラー材料として使用される。
【0078】
本発明の成形プリフォーム200A(
図2、
図3および
図4)は、従来の発泡材スポークインサート200の直接的な代替物として設計される。このように、この新しい成形プリフォームを使用する場合、既存の製造プロセスで従来の発泡材コアインサートの直接的な代替物となるため、ホイール製造において特別な考慮を行う必要はない。従来の発泡材インサートと同様に、この複合成形プリフォーム200はレイアップを支援し、金型においてスポーク部分108に配置され、レイアップはプリフォーム200の周囲に形成される。
【0079】
複合ホイール100のスポーク108のうちの1つ以上は成形プリフォーム200Aを含むことができることを理解されたい。いくつかの実施形態では、選択された数(典型的には1つまたは2つ)のスポーク部分108のみが成形プリフォーム200Aを含む。残りのスポークには、従来の発泡材インサートが含まれる。いくつかの実施形態では、スポークのすべてが成形プリフォーム200Aを含む。これらの実施形態では、各成形プリフォーム200Aの組成、したがって密度は、各スポークの特定の要件に合わせて設計および調整することができる。その場合、スポーク部分108の密度設計により、複合ホイール100のバランスをとることができる。ただし、特定の用途および/または経済性に適するように、多数の発泡材インサート200および成形プリフォーム200Aを混合および適合させることができることを理解されたい。
【0080】
図3に示される好ましい実施形態では、複合ホイール100の単一のスポーク108Aに、成形プリフォーム200Aが含まれ得る。残りのスポークには、従来の発泡材インサート200が含まれる。そのスポークは、複合ホイール100上のTPMSバルブ300取り付け位置のほぼ径方向反対側に位置する。以下でより詳細に説明されるように、その場合、成形プリフォーム200Aの密度は、その複合ホイール100に取り付けられるTPMSバルブ300のつりあいおもりを与えるように設計され得る。
【0081】
しかしながら、
図2および
図3では、成形プリフォーム200Aはスポーク108Aのコア体積全体を占めるように示されているが、他の実施形態では、つりあいおもり機能のためにスポーク108Aのコア体積の一部分のみを占め得る。成形プリフォーム構成要素がスポークの体積の一部分を占める場合、その体積を満たすために、別のプリフォーム、例えば発泡材構成要素を本発明と組み合わせて使用してもよい。
【0082】
図3および
図4は、
図1および
図2に示すような複合ホイール100のフェース部分104のレイアップおよび形成に使用するための成形プリフォームインサート200の一例を示している。図示された成形プリフォーム200は、そのフェース部分104のスポーク108接続の形状および構成を与えるために使用される。したがって、図示の成形プリフォーム200Aは、複合ホイール100のハブ106とリム102との間に延びる細長い本体を含む。成形プリフォーム200Aは、ハブ106とリム102との間に延びるシャフトを画定する概ね直方体または長方形のボックス主本体を有する。ハブ端部220は、その端部220の横方向外側に延びてハブ106の外側と係合するためのT字形の接続部分を形成する2つのアーム222を含む。ハブ106は、ほぼ円形の外側構成を有する。したがって、これらのアーム222および端面は、ハブ106のその外側の周方向湾曲と実質的に一致する湾曲した外側223を有する。リム端部225は、L字形端部を形成するよう(
図4に示される成形プリフォーム200Aの向きに対して)下方に延びる軸方向フランジ/脚部227を含む。フランジ227は、リム102に沿って複合ホイール100の取り付け側または内側111(
図1)に向かって延びるように構成される。リム端部225の端面の外側226は、リム102のその外側の湾曲と実質的に一致するように輪郭付けられている。
【0083】
とはいえ、成形プリフォーム200の正確な幾何学的構成は、複合ホイール200のハブ106の意図された構成、ならびにスポーク部分108の意図された形状および構成に依存することを理解されたい。例えば、スポーク108の数は変化する可能性があり、各スポーク部分108の形状およびサイズに影響を及ぼし得る。各スポーク部分108の所望の構成は、美観目的のために変化し得、所望のパターン、印、および/または外形、例えば所望の複雑な外形を組み込むことができる。
【0084】
図示されていないが、成形プリフォーム200は、複合ホイールのフェース部分の後続の形成およびレイアップを支援するように設計されたいくつかの追加の特徴を含むように成形/構成することができる。これらの特徴には次のものが含まれる(が、それらに限定されない):段差、窪み、スロットなどの繊維プライ保持構成;プライの縁部が位置すべき場所を視覚的に示すガイドライン;または、窪み、フランジ、開口部、リブ、フック、突起などの、成形プリフォームの取り扱いを最適化するための保持/操作構成。
【0085】
成形プリフォーム200は、その複合ホイール100への質量付加を相殺するように選択された調整された密度を有するように設計される。特定の一例は、複合ホイール100に取り付けられたTPMSバルブ300(
図1)のつりあいおもりとしてである。
【0086】
付加された質量に対するつりあいおもりとして作用するためには、質量の付加によって生じる質量およびモーメントの不均衡(複合ホイール100の中心X-X周りのモーメントおよび質量の平衡化)を判断する必要がある。その場合、成形プリフォーム200は、質量付加の質量およびモーメントを相殺する位置、例えば、複合ホイール100のフェース部分104の中心軸X-X周りにおける質量付加の位置と実質的に径方向反対側に位置するように設計される。次いで、成形プリフォーム200の質量、したがって密度を、中心軸X-X周りの質量付加に対し、その成形プリフォームの位置について正しいつりあいおもり質量を与えるように調整する。成形プリフォーム200の密度は、(以下で説明するように)成形プリフォーム200の充填組成物の材料選択を通じて変化させることができる。
【0087】
成形プリフォーム200は、60~150℃、好ましくは60~140℃のプロセス温度で50barの静水圧の成型条件下で圧縮性が体積で2%未満、好ましくは1%未満の硬化複合繊維材料から形成される。硬化されることにより、硬化複合繊維材料は、その複合繊維材料中の樹脂などの硬化性マトリックス材料を固める(harden)または硬化させる(cure)ために少なくとも部分的な硬化プロセスを受けていることを理解されたい。硬化複合繊維材料は、プリフォームに構造的こわさおよび/または固体性を与え、圧縮性を制限して、複合ホイールのフェース部分のレイアップおよび成型中に適切な体積を与え、体積変化を最小限に抑えることができるようにする。
【0088】
いずれの理論にも制限されることは望まないが、成形プリフォーム200は、複合ホイール100のレイアップおよび硬化プロセスで使用されることができるコア材料を提供するように設計される。成形プリフォームの機械的および材料特性は、複合ホイールを形成する際のレイアップ、硬化、および硬化後のプロセス中の材料の不適合性および体積変化に起因する構造上の荷重ならびに応力を最小限に抑えるようにも選択される。
【0089】
成形プリフォーム200の機械的特性は、最適な機械的性能および材料性能を得るように設計される。本体の厚さ方向の引張係数が不十分な成形プリフォーム200は、フランジと側壁との接続部を除荷するのに効果的でなく、したがって構造的価値がほとんどないことになる。一方、本体の厚さ方向に過度の引張係数を有する成形プリフォーム200は、フランジが成形プリフォーム200から分離しようとする際にフランジに厚さ方向の過度の応力をもたらし、フランジ自体内またはフランジと成形プリフォーム200と間の接続部で破損を引き起こす。適切に設計された成形プリフォーム200は、フランジに過度の厚さ方向の応力を生じさせることなく、フランジと側壁との接続部を除荷することになる。
【0090】
複合ホイール100への質量付加を相殺するのに適した選択されたまたは所望の密度の硬化複合繊維材料を形成するための樹脂などの硬化性マトリックス材料を含むかまたはそれによって結合され得る任意の数の異なる複合繊維材料を使用することができる。密度の変更は、成形プリフォーム200の組成を慎重に選択することにより実現される。いくつかの実施形態において、成形プリフォームは、樹脂(純粋樹脂)から形成されるか、または実質的に樹脂のみから形成される。実施形態では、成形プリフォームは、連続繊維配置プライもしくはプリフォーム;単繊維方向プライからなる1つ以上の層(単方向);多方向繊維プライからなる1つ以上の層(例:ステッチされたノンクリンプファブリック);もしくはファイバーパッチ配置(FPP)プリフォーム、たとえばCEVOTECH技術;不織、等方性もしくは異方性繊維層、たとえばRECATEXリサイクル炭素繊維不織布;等方性繊維配列;フィラー;ガラス微小球;疎水性ヒュームドシリカ;エポキシ樹脂/硬化剤;フェノール樹脂;粉砕された炭素繊維、細断された炭素繊維(たとえば小さく切られた、もしくは切断された炭素繊維)またはそれらの組み合わせ、のうちの少なくとも1つから形成される。
【0091】
好ましい形態では、成形プリフォーム構成要素は以下から形成される:
(i)樹脂と粉砕された炭素繊維または細断された炭素繊維と中空ガラス微小球との混合物。
(ii)樹脂と粉砕された炭素繊維との混合物。
(iii)樹脂と細断された炭素繊維、好ましくは小さく切られた炭素繊維との混合物。
樹脂は、ある含有量の硬化剤も含むことを理解されたい。
(i)(ii)および(iii)の各々は、選択肢的に1~5重量%、好ましくは1~2重量%の疎水性ヒュームドシリカを含むことができる。
【0092】
粉砕された炭素繊維は、<500ミクロンの長さ、好ましくは100ミクロン未満の長さを有する。例えば、Carbiso(商標出願済み)MFなどの長さ100ミクロンの粉砕炭素繊維を使用できる。しかしながら、任意のブランドの粉砕炭素繊維が好適である可能性があることを理解されたい。同様の長さの他の繊維タイプも使用することができる。
【0093】
他の実施形態では、細断された炭素繊維、例えば、小さく切られた炭素繊維を使用することができる。この細断された炭素繊維は、20mm未満、好ましくは15mm未満、より好ましくは1~15mmの長さを有することができる。たとえば、長さ約12mmの細断された炭素繊維を使用できる。同様の長さの他の繊維タイプも使用することができる。
【0094】
1つの好ましい材料は、以下の表1のオプションA~Fとして提供される(比率は質量部である)。
【0095】
【0096】
より詳細には、オプションCは以下を含むことができる。
3.75部のエポキシ樹脂;
1部の長さ100ミクロンの粉砕炭素繊維;および
0.56部の中空ガラス微小球。
【0097】
より詳細には、オプションGは以下を含むことができる。
2部のエポキシ樹脂および硬化剤;ならびに
1部の小さく切られた長さ12mmの炭素繊維。
【0098】
上記の各オプションは、選択肢的に、1~5重量%、好ましくは1~2重量%の疎水性ヒュームドシリカを含むことができる。 上記のオプションA~Fで提供されるものに対する代替の混合比も、成形プリフォームについて満足のいく組成および調整された密度を与え得ることを理解されたい。したがって、表に示された比率を変更して、成形プリフォームの密度を変更し、所望の質量を与え、それによってプリフォームの密度および質量を特定の用途に合わせて調整することができる。
【0099】
上記の組成で使用される微小球は、3M先進材料部門から入手可能な3M S28HSグラスバブルズを含む。これらのグラスバブルズは、平均直径が30ミクロン、粉砕強度(体積で90%残存)が3000 psi、および真密度が0.28g/ccのソーダ石灰ホウケイ酸ガラスで形成された薄壁を有する中空球を含む。しかしながら、他の同様の微小球も使用できることを理解されたい。たとえば、250PSIの目標粉砕強度と0.125g/ccの真密度とを有する3M K1バブルなどの代替中空微小球、または28000psiの粉砕強度と0.60g/ccの真密度とを有する3M IM30K(または同様のもの)を使用できる。使用できる可能性のある3M微小球の選択を表2に示す。
【0100】
【0101】
例示的な実施形態では、成形プリフォーム構成要素は、3.75:1:0.56の混合比(質量部)の混合された樹脂:粉砕炭素繊維:中空ガラス微小球から形成される。
【0102】
図示の実施形態では、複合ホイール100の硬化複合繊維材料中の繊維は、炭素繊維を含む。しかしながら、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、アクリル、ポリエステル、PAN、PET、PE、PPもしくはPBO繊維などの合成繊維、麻、ジュート、セルロース繊維などのバイオ繊維、ロックウールなどの鉱物繊維、鋼、アルミニウム、真鍮、銅などの金属繊維、ホウ素繊維、またはこれらの任意の組み合わせを含むが、それらに限定はされない、多種多様な繊維を本発明で使用できることを理解されたい。
【0103】
成形プリフォーム200の熱膨張特性は、成形プリフォーム200が中に含まれるように構成される複合ホイールのフェース部分の複合材料全体の熱特性に類似するように、好ましくは実質的に一致するように、設計されることが理解されるべきである。熱膨張特性を一致させることにより、部品(硬化後プロセスにおける成形プリフォームおよび周囲の積層材料)の剥離などの損傷が回避される。
【0104】
成型プロセス中に成形プリフォームに隣接して形成される複合材料(典型的には炭素繊維ラミネート)は、成形プリフォームに付着しなければならない。成形プリフォームの材料タイプはこれを可能にしなければならず、たとえば、成形プリフォームはエポキシ樹脂を使用できるが、典型的にはポリプロピレンを使用するべきではない。成形プリフォームの成型後、成形プリフォームのレイアップの前に、成形プリフォーム表面を活性化して、それを後続の射出操作で接合できるようにする必要があり-これは、ケミカルエッチング、機械的摩耗などによって達成できる。
【0105】
対象の成形プリフォーム200の他の機械的特性には以下が含まれる。
・密度-好ましくは0.3g/cm3と3g/cm3との間、好ましくは0.3g/cm3と2g/cm3との間、より好ましくは0.4~1.8g/cm3。 いくつかの実施形態では、成形プリフォームの密度は、0.5~1.5g/cm3である。
・引張強度-20MPaと80MPaとの間が好ましく、20~60MPaがより好ましい。
・剛性-好ましくは1.5~30GPa、好ましくは5~30GPa、より好ましくは8~30GPa、さらにより好ましくは10~25GPaである。いくつかの実施形態において、剛性は1.5~10GPaである。他の実施形態において、剛性は8~25GPaである。
しかしながら、これらは、特定の複合ホイールの材料、ホイール構成、および所望の特性に応じて異なる場合があることを理解されたい。
【0106】
図示された成形プリフォーム200は、標準的な複合成型プロセスにより形成される。このプロセスでは、上記の表1に記載されている好ましい材料組成を計量し、混合してから、閉じた加熱された金型に注入する。金型は120℃であり、一旦充填されると、金型は120℃で10分間保持され、樹脂を硬化させる。しかしながら、所望のプロセスパラメータに応じて他のプロセス温度を用いることができることを理解されたい。その後、成形プリフォームを金型から取り出し、表面処理ステップに移動する。連携的に成形された金型は、成形プリフォーム200の所望の形状および構成を提供するように成形された金型キャビティを有する。好適なマトリックス材料が、不飽和ポリエステル、ポリウレタン、ポリビニルエステル、エポキシ、熱可塑性プラスチック、またはそれらの組み合わせに基づく樹脂から選択され得る(が、これらに限定はされない)。
【0107】
硬化ステップを制御して、剛性、表面特性、圧縮性などの望ましい機械的特性を与えることができる。したがって、成形プリフォーム200の機械的特性は、特定の用途に適合するように設計することができる。しかしながら、成形プリフォーム200は、複合ホイール200のフェース部分104を形成する後続の繊維レイアップおよび成型加工ステップで体積変化を最小にする選択された圧縮性を与えるよう硬化および他の方法で処理されることを理解しなければならない。
【0108】
上述のように、硬化された成形プリフォーム200は、複合ホイール100のフェース部分104のレイアップにおけるレイアップ支援またはインサートとして使用される。このプロセスでは、成形プリフォーム200は、フェース部分金型の繊維レイアップのスポーク部分108に位置し、フェース部分104の複合繊維要素は、成形プリフォーム200の周りにレイアップされ、それにより、複合繊維ホイールのフェース部分の成型前構造を形成する。
【0109】
繰り返しになるが、フェース部分レイアップの繊維要素は、プリプレグ、セミプレグ、織布もしくは不織布、マット、プリフォーム、プリコンソリデートプリフォーム、個々の繊維もしくは繊維の群、トウ、トウプレグなどを含む任意の好適な形態で提供されてもよい。レイアップ中、樹脂などのマトリックス材料は、繊維を含む層において、または繊維を含む層と層の間に、含まれる必要はない。しかしながら、マトリックス材料は、硬化後には連続したマトリックスを形成するべきである。
【0110】
図示された複合ホイール100(
図1および
図2)は、単一体として形成されることを意図している。これには、例示的な実施形態では樹脂であるマトリックス材料の、リム部分102およびフェース部分104を含むすべての部品への同時注入および/または含浸、ならびに次いで複合ホイール100の各部分の硬化が含まれる。使用される樹脂は、好ましくはエポキシ系である。しかしながら、例えば不飽和ポリエステル、ポリウレタン、ポリビニルエステル、エポキシ、熱可塑性樹脂、類似の化合物またはそれらの組み合わせなど、任意の好適な樹脂が使用できることを理解されたい。樹脂インフュージョンおよび/または樹脂トランスファー成型および/または真空支援樹脂トランスファー成型を含むが、これらに限定されないさまざまな樹脂送達システムを使用することができる。
【0111】
図1および
図2に示されている複合ホイールの構築では、ホイールは3つの主要な金型面を含む。第1に、ホイールの回転軸X-Xに関して概ね径方向に向けられたフェース型。第2に、ホイール140の内側面を形成する内側バケット型面(
図2)。内側バケット型面は、ホイールの回転軸X-Xに関して径方向に向けられたフェース部分の背面型壁を形成する前面と、ホイールの回転軸X-Xに軸方向に整列されるリム部分の背面型壁を形成する側壁とを含む。第3に、ホイールの回転軸X-Xに対して実質的に軸方向に整列されるリム型。
【0112】
使用中、リム部分102およびフェース部分104は補強を伴ってレイアップされ、次いで、リム部分102とフェース部分104と間の接続が補強を伴ってレイアップされる。接続部を形成した後、ホイール100のリム部分102、フェース部分104の各々の補強に樹脂が注入および/または含浸され、次いで硬化される。
【0113】
当業者は、本明細書に記載された本発明が、具体的に記載されたもの以外の変形および修正の対象であることを理解するであろう。本発明は、本発明の精神および範囲内にあるそのようなすべての変形および修正を含むことが理解される。
【0114】
「備える」または「含む」という用語が本明細書(特許請求の範囲を含む)で使用される場合、それらは、述べられた特徴、完全体(integers)、ステップまたは構成要素の存在を特定するものと解釈されるが、1つまたは複数の他の特徴、完全体、ステップ、構成要素、またはその群の存在を排除するものではない。