(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】有機過酸化物を含む粉末混合物
(51)【国際特許分類】
C09D 7/40 20180101AFI20221125BHJP
C09K 21/02 20060101ALI20221125BHJP
C08F 4/34 20060101ALI20221125BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
C09D7/40
C09K21/02
C08F4/34
C09D201/00
(21)【出願番号】P 2020519392
(86)(22)【出願日】2018-10-02
(86)【国際出願番号】 EP2018076736
(87)【国際公開番号】W WO2019068683
(87)【国際公開日】2019-04-11
【審査請求日】2021-07-06
(32)【優先日】2017-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】509131443
【氏名又は名称】ヌーリオン ケミカルズ インターナショナル ベスローテン フェノーツハップ
【氏名又は名称原語表記】Nouryon Chemicals International B.V.
【住所又は居所原語表記】Velperweg 76, 6824 BM Arnhem, the Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】スピジャカーマン,ジスジェ クラシナ
(72)【発明者】
【氏名】ヤンセン,マーティン ヘルマヌス マリア
(72)【発明者】
【氏名】タルマ,オーク ジェラデュス
(72)【発明者】
【氏名】デン ブラバー,アントニー
【審査官】水野 明梨
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-505247(JP,A)
【文献】特開2003-300955(JP,A)
【文献】米国特許第04251430(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-10/00
C09D 100/00-201/10
C08F 4/00
C09K 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 20~80wt%の、過酸化ジベンゾイルおよび置換過酸化ジベンゾイルからなる群から選択される1種または複数の粉末化有機過酸化物、
- 20~80wt%の、その少なくとも60wt%が固体無機難燃剤からなる粉末化充填剤物質、ならびに
- 0~20wt%の水
を含む粉末混合物。
【請求項2】
前記固体無機難燃剤が、アルミニウム三水和物、二水酸化マグネシウム、それらの組合せおよびそれらの水和形態から選択される、
請求項1に記載の粉末混合物。
【請求項3】
前記有機過酸化物がジ(メチルベンゾイル)ペルオキシドである、請求項1または2に記載の粉末混合物。
【請求項4】
前記有機過酸化物がジ(4-メチルベンゾイル)ペルオキシドである、請求項3に記載の粉末混合物。
【請求項5】
前記有機過酸化物がジ(2-メチルベンゾイル)ペルオキシドである、請求項
3に記載の粉末混合物。
【請求項6】
20~80wt%の前記1種または複数の粉末化有機過酸化物および20~80wt%の前記粉末化充填剤物質を均質化するステップを含む、
請求項1~5のいずれか一項に記載の粉末混合物を調製するための方法。
【請求項7】
得られる粉末混合物が、平均粒径(d50)が500ミクロン未満、好ましくは200ミクロン未満である、請求項8に記載の方法。
【請求項8】
前記粉末化有機過酸化物が5~40wt%の水を含有する、請求項8または9に記載の方法。
【請求項9】
- 水性スラリー中で前記有機過酸化物を粉砕して、前記有機過酸化物を脱凝集化するステップと、
- 得られる脱凝集化有機過酸化物から水を除去するステップと、
- 前記脱凝集化有機過酸化物および前記粉末化充填剤物質を均質化するステップと
を含む、請求項6~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ラジカル硬化性熱硬化性樹脂を硬化するための、請求項
1~5のいずれか一項に記載の粉末混合物の使用。
【請求項11】
コーティング組成物を硬化するための、請求項1~5のいずれか一項に記載の粉末混合物の使用。
【請求項12】
ラジカル重合プロセスの開始剤としての、請求項1~5のいずれか一項に記載の粉末混合物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機過酸化物を含む粉末混合物に関する。本発明はまた、そのような混合物を調製するための方法、およびコーティング組成物を含む種々の用途でのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
有機過酸化物は、重合反応の開始(例えば、(メタ)アクリレート、スチレンおよび塩化ビニルの重合)、ゴムおよびエラストマーの架橋、ならびに(メタ)アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、およびビニルエステル樹脂の硬化などの種々の用途で幅広く使用されている。
【0003】
有機過酸化物は、分解しやすいという点で相当に不安定な化合物である。この不安定性が、有機過酸化物をラジカル重合反応および硬化反応の開始に好適なものにしている。しかし、この不安定性によって安全上の問題が生じる場合もある。多くの有機過酸化物は、安全な保存および輸送を可能とするために希釈される必要がある。
【0004】
鈍化とも呼ばれるこの希釈は、液体鈍化剤を用いて行うことができ(この場合、前記鈍化剤中の過酸化物の溶液、ペースト、エマルション、または懸濁液が生じる)、または固体鈍化剤を用いて行うこともできる。有機過酸化物自体が固形である場合、固体鈍化剤を用いて希釈することで、有機過酸化物と固体鈍化剤の物理的ブレンドが得られる。
【0005】
鈍化された有機過酸化物が十分な長期間にわたって安定であることが当然重要であり、これは両方の成分が均質に混合された状態を保ち、分離して分離相を形成しないことを意味する。
【0006】
過酸化ジベンゾイル(BPO)は、多くの場合約25wt%の水で鈍化される。得られる含水BPOは粉末形態である。例えば、不飽和ポリエステル樹脂塊の硬化または固化などの種々の重合プロセスでは、そのような大量の水が存在することは許容されないので、含水生成物はこうした目的に全く不適である。例えば、水分の存在によってヘイズが形成される、またはコーティングの膨れが生じる場合がある。
【0007】
固体有機過酸化物の公知の固体鈍化剤には、炭酸カルシウムがある。炭酸カルシウムの利点は比較的安価で取扱いが容易であることであり、欠点はその吸湿性と酸感受性である。
【0008】
この物質は、その吸湿特性のために(置換)過酸化ジベンゾイルの鈍化剤としてあまり好適ではなく、これは配合物の(著しい)凝結が生じ得るためである。加えて、コーティング組成物に使用されると、コーティング組成物は、水、多湿環境、および汚染に感受性になる。この問題は、硫酸マグネシウムなどの他の吸湿性物質でも見られる。
【0009】
CaCO3もまた、その酸感受性のために、コーティング用途、より詳細には酸と接触し得る、または酸性材料を含有するコーティングにあまり好適ではない。例えば、CaCO3含有コーティングと酸との接触により、コーティングが劣化し、コーティングからCO2が発生する反応が生じる。これは明白に望ましくなく、CaCO3含有過酸化物組成物は酸と接触し得るコーティングへの使用に不適である。さらに、コーティング組成物の他の材料の選択も制限される。他の材料は非酸性であるべきである。
【0010】
炭酸マグネシウムまたは炭酸バリウムなどの他の炭酸塩を含有する過酸化物配合物でも、同じ問題が生じる。
【0011】
この問題に対する解決策として、国際公開第2016/096779号は、硫酸バリウムを用いた(置換)過酸化ジベンゾイルの鈍化を提唱している。BaSO4は吸湿性でも酸感受性でもなく、この物質の小さい一次粒子は透明であるため、コーティング組成物および透明複合システムへの適用に理想的である。
【0012】
しかし、そのようなBaSO4ベース組成物はなお、特にその含水量が10wt%未満であると、著しい安全性リスクを負うことが現在では見出されている。BaSO4含有粉末混合物は、調製時に十分な水を含有していても保存の間に乾いてしまい、これは保存時に安全性リスクが増大することを意味する。
【発明の概要】
【0013】
したがって、本発明の目的は、低含水量で上記のBaSO4ベース組成物より安全な粉末状(置換)過酸化ジベンゾイル配合物を提供することである。言い換えると、目的は、保存時により安全な粉末状(置換)過酸化ジベンゾイル配合物を提供することである。
【0014】
この目的は、鈍化剤として固体無機難燃剤を使用することによって達成された。
【0015】
したがって、本発明は、
- 20~80wt%の、過酸化ジベンゾイルおよび置換過酸化ジベンゾイルからなる群から選択される1種または複数の粉末化有機過酸化物、
- 20~80wt%の、その少なくとも60wt%が固体無機難燃剤からなる粉末化充填剤物質、ならびに
- 0~20wt%の水
を含む粉末混合物に関する。
【0016】
この粉末混合物は粉末形態であり、言い換えると、ペーストでも懸濁液でもない。
【0017】
粉末混合物は、少なくとも20wt%、より好ましくは少なくとも30wt%、さらにより好ましくは少なくとも40wt%、最も好ましくは少なくとも50wt%の粉末化充填剤物質を含む。粉末混合物は、最大80wt%、最も好ましくは最大70wt%の粉末化充填剤物質を含む。
【0018】
少なくとも60wt%、より好ましくは少なくとも70wt%、さらにより好ましくは少なくとも80wt%、さらにより好ましくは少なくとも90wt%、最も好ましくは100wt%の粉末化充填剤物質が、固体無機難燃剤からなる。
【0019】
好適な固体無機難燃剤の例は、それらの水和形態を含む、三水酸化アルミニウム(ATH)、二水酸化マグネシウム(MDH)、ハイドロタルサイト、有機修飾ハイドロタルサイト、およびそれらの組合せである。水和形態は、結晶水および/または付着水を含有する形態を含む。
【0020】
上記の物質は、高温で吸熱分解することによって水を遊離するので、難燃剤として作用する。この分解によって吸収された熱が、関連物質の発火を遅延させることによって火災を遅らせる。遊離した水は、可燃性ガスを希釈する。
【0021】
好ましい固体無機難燃剤は、それらの水和形態を含む、三水酸化アルミニウム、二水酸化マグネシウム、およびそれらの組合せである。三水酸化アルミニウムが最も好ましい。この化合物は、アルミニウム三水和物(ATH;Al(OH)3)とも称される。
【0022】
ATHは、鉱物ギブサイト(ハイドラルジライトとしても公知)、バイヤライト、ドイライト、およびノルストランダイトとして天然に見出される。
【0023】
固体無機難燃剤以外の好適な充填剤物質は、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、および炭酸バリウムなどの炭酸塩、シリカ、カオリナイト、ならびにリン酸カルシウムであるが、注意として、炭酸塩は酸が含まれない環境においてのみ好適である。
【0024】
有機過酸化物は、過酸化ジベンゾイルおよび置換過酸化ジベンゾイルからなる群から選択される。置換過酸化ジベンゾイルは、式:
【0025】
【化1】
(式中、各R
1は、ハロゲン(Cl、Br)原子、ならびに1~10個の炭素原子を有し、任意選択でO、P、SO
2、SO
3および/またはSi含有官能基で置換された直鎖状または分岐状アルキル、アリール、もしくはアラルキル基から独立して選択され、
各R
2は、ハロゲン(Cl、Br)原子、ならびに1~10個の炭素原子を有し、任意選択でO、P、SO
2、SO
3および/またはSi含有官能基で置換された直鎖状または分岐状アルキル、アリール、もしくはアラルキル基から独立して選択され、
nおよびmは0~5の範囲の整数から独立して選択され、n+mは少なくとも1である)
を有する。
【0026】
より好ましい実施形態では、n=m=1である。
【0027】
さらに好ましい実施形態では、R1およびR2はいずれも1~6個の炭素原子を有するアルキル基である。さらにより好ましくは、R1およびR2はいずれもメチル基である。
【0028】
最も好ましくは、有機過酸化物はジ(4-メチルベンゾイル)ペルオキシドまたはジ(2-メチルベンゾイル)ペルオキシドである。
【0029】
粉末混合物は、少なくとも20wt%、最も好ましくは少なくとも30wt%の粉末化有機過酸化物を含む。粉末混合物は、最大80wt%、より好ましくは最大70wt%、さらにより好ましくは最大60wt%、最も好ましくは最大40wt%の粉末化有機過酸化物を含む。
【0030】
本発明による粉末混合物は、2種の粉末の混合物を均質化することによって調製することができる。
【0031】
均質性は、バッチの様々な箇所から試料を採取し、それらの組成を分析することによって試験することができる。すべての試料の組成の差が5%以下である場合、混合物は均質であるとみなされる。
【0032】
好ましくは、混合物は均質化されるだけでなく脱凝集化される。得られる混合物は、好ましくは平均一次粒径(d50)が500ミクロン未満、好ましくは200ミクロン未満、最も好ましくは100ミクロン未満である。「平均一次粒径」という用語は、体積メジアン(d50)を指す。体積メジアンは、光学濃度が5~25wt%の、界面活性剤(Teepol CH30)および測定される粒子を含む、超音波で前処理された水性懸濁液を使用して、レーザー光回折(SYMPATEC GmbH製の、QUIXEL湿式分散モジュールを備えたHELOSレーザー光回折分析器)によって決定することができる。
【0033】
ハンマーミル、ターボミル、またはピンミルなどの種々のデバイスを使用して、混合物を均質化および/または脱凝集化することができる。
【0034】
一実施形態では、混合物は同時に、同じ機器で均質化および脱凝集化される。この実施形態では、含水粉末化有機過酸化物の形態で混合物に水を添加することができ、これは(置換)過酸化ジベンゾイルを含む粉末混合物に特に好ましい。そのような混合物では、5~70wt%、より好ましくは10~50wt%、最も好ましくは20~40wt%の水を含有する粉末化(置換)過酸化ジベンゾイルが、粉末化充填剤物質の存在下で粉砕される。
【0035】
過酸化ジベンゾイルおよび置換過酸化ジベンゾイルは、水性スラリー中で安全に粉砕することができ、したがって、脱凝集化ステップおよび均質化ステップは、(i)有機過酸化物の水性スラリーを、例えばハンマーミル、ターボミル、またはピンミルで粉砕することによって有機過酸化物を脱凝集化し、(ii)例えば遠心分離によって、得られた脱凝集化過酸化物から水を除去し、(iii)例えばコニカルスクリューミキサーなどの低せん断ミキサーで、脱凝集化有機過酸化物および粉末化充填剤物質を均質化することによって、連続的に行うことができる。
【0036】
得られた混合物に水が(なおも)存在する場合、所望の含水量が得られるまで、粉砕中またはその後に、蒸発によって(例えば、穏やかな加熱によって)その一部を除去することができる。
【0037】
調製直後の粉末混合物は、好ましくは0~20wt%、より好ましくは1~15wt%、最も好ましくは5~15wt%の水を含む。含水量は保存中、またはさらなる加工中に低下する場合があるが、混合物の安全性には全く影響を及ぼさない、または限られた影響のみ及ぼす。
【0038】
本発明による粉末混合物は、コーティング組成物、不飽和ポリエステル樹脂系、および他のラジカル硬化性熱硬化性樹脂系(ビニルエステル樹脂、(メタ)アクリレート樹脂)の硬化剤として、ならびに(メタ)アクリル樹脂重合などのラジカル重合プロセスの開始剤としての用途を有する。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0039】
[実施例1]
ジ(4-メチルベンゾイル)ペルオキシドと、三水酸化アルミニウム(ATH)または二水酸化マグネシウム(MDH)の4種の粉末混合物を、三水酸化アルミニウムまたは二水酸化マグネシウムと、ジ(4-メチルベンゾイル)ペルオキシドを手動で混合することによって調製した。得られた混合物を、1.5mm篩を備えたハンマーミルで処理して、均質混合物を得た。
【0040】
組成物1:60wt%のATH、および25wt%の水を含有する40wt%のジ(4-メチルベンゾイル)ペルオキシド。
【0041】
組成物2:67wt%のATHおよび33wt%の乾燥ジ(4-メチルベンゾイル)ペルオキシド。ジ(4-メチルベンゾイル)ペルオキシドは、空気乾燥で乾燥した。
【0042】
組成物3:60wt%のMDH、および25wt%の水を含有する40wt%のジ(4-メチルベンゾイル)ペルオキシド。
【0043】
組成物4:67wt%のMDHおよび33wt%の乾燥ジ(4-メチルベンゾイル)ペルオキシド。ジ(4-メチルベンゾイル)ペルオキシドは、空気乾燥で乾燥した。
【0044】
[比較例]
ジ(4-メチルベンゾイル)ペルオキシドと硫酸バリウムの4種の異なる組成物を、硫酸バリウムとジ(4-メチルベンゾイル)ペルオキシドを手動で混合することによって調製した。得られた混合物を、1.5mm篩を備えたハンマーミルで処理して、均質混合物を得た。
【0045】
組成物は、含水量および硫酸バリウムの種類(天然または合成)が異なっていた。
【0046】
組成物A:60wt%の合成BaSO4(Blanc Fixe micro、以前のSachtleben Chemie GmbH;d50=0.7ミクロン)、および25wt%の水を含有する40wt%のジ(4-メチルベンゾイル)ペルオキシド。
【0047】
組成物B:67wt%の合成BaSO4(Blanc Fixe micro、以前のSachtleben Chemie GmbH;d50=0.7ミクロン)、および33wt%の乾燥ジ(4-メチルベンゾイル)ペルオキシド。
【0048】
組成物C:60wt%の天然BaSO4(CIMBAR UF、以前のCIMBAR Performance Minerals;d50=1.6~5.8ミクロン)、および25wt%の水を含有する40wt%のジ(4-メチルベンゾイル)ペルオキシド。
【0049】
組成物D:67wt%の天然BaSO4(CIMBAR EX、以前のCIMBAR Performance Minerals;d50=0.8~1.4ミクロン)、および33wt%の乾燥ジ(4-メチルベンゾイル)ペルオキシド。
【0050】
[実施例2]
実施例1および比較例の組成物を爆発性、衝撃感度、爆発力、および燃焼挙動を評価するために、複数の試験に供した。結果を表1に示す。
【0051】
熱爆発性
UN試験E2のオランダ式圧力容器試験(PVT)を使用して、組成物の熱爆発性を確認した。破裂ディスクを備えた鋼容器内で、規定の密閉下で試料を加熱した。容器のベント開口部は様々であり得る。容器内の分解物が、破裂ディスクが破裂しなければ排出できない最小開口部を、限界径と呼ぶ。実験は、10または50グラムの組成物を用いて行った。
【0052】
BAM衝撃ハンマー試験
UN試験3(a)(ii)およびEC試験A14の衝撃感度のパートに従い、40Jから開始してエネルギーレベル当たり6回の試行を行った。必要な場合、7.5Jおよび20Jで試験を行った。特定のエネルギーレベルで少なくとも1回の爆発、爆音、または火炎が起こった場合、結果をポジティブとみなした。特定のエネルギーレベルでの6回の試行で反応が起こらなかった、または分解(色または臭いの変化)のみ起こった場合、結果をネガティブとみなした。
【0053】
改良トラウズル試験
UN試験F.4に従って試験を行った。この試験を使用して組成物の爆発力を測定した。鉛ブロックの孔に密閉した物質中で起爆装置を作動させた。6.0gの試料を、必要に応じて組み立てた試料バイアルに入れ、鉛ブロックに入れた。鉛ブロックを、防護区域の固い表面に置き、工業雷管を完全挿入し、区域から退避して雷管に点火した。試験前後に、水を使用して鉛ブロックの空洞体積を約0.2mlまで正確に測定した。同種のアセンブリーを使用して、組成物および不活性基準物質に3回試験を行った。
【0054】
燃焼およびデフラグレーション試験
この試験では、20×2cmの組成物細片を平坦なステンレス鋼板に塗布した。
【0055】
燃焼試験では、黄色または青ガス炎で細片を発火させた。
【0056】
デフラグレーション試験では、熱鋼棒で細片を発火させた。ブンゼンバーナーを用いて赤燃するまで加熱した鋼棒を物質に押し込んだ。
【0057】
いずれの試験でも、分解(風切り音、膨化)、発火または溶融が起こったかどうか、および物質が継続して燃焼したか否かを観察した。20cmの細片全体に影響が及ぶまでに要した時間を測定した。
【0058】
【0059】
結果は、ATHおよびMDHベースの過酸化物配合物が、合成または天然BaSO4ベースの同じ配合物よりも安全であることを示す。