(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】車両用センサの取付構造
(51)【国際特許分類】
G01B 11/26 20060101AFI20221125BHJP
B62D 25/08 20060101ALI20221125BHJP
B60R 19/04 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
G01B11/26 H
B62D25/08 C
B60R19/04 M
(21)【出願番号】P 2021037159
(22)【出願日】2021-03-09
【審査請求日】2021-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】柳 貴志
(72)【発明者】
【氏名】小灘 一矢
【審査官】飯村 悠斗
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-147486(JP,A)
【文献】特開2017-193223(JP,A)
【文献】特開2019-152580(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
B62D 25/08
B60R 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前方に設けられた外装部材と、
前記外装部材または車両を駆動する駆動源を支持するフレーム部材と、
車両前方の路面状態を検出する路面状態検出手段と、を有し、
前記路面状態検出手段は、前輪よりも前方に位置する前記フレーム部材に固定され
、
前記外装部材は、前面部と、この前面部の下端から後方に向けて延びる底面部とを有するバンパからなり、
前記バンパは、前記路面状態検出手段の下方に開口部を有し、
前記開口部は、前記底面部に形成されていることを特徴とする車両用センサの取付構造。
【請求項2】
前記路面状態検出手段は、前記前輪の前方に重なる位置に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用センサの取付構造。
【請求項3】
前記フレーム部材は、前記前輪の上方から前方向に延びるアッパメンバからなり、
前記路面状態検出手段は、前記アッパメンバの側方に固定されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用センサの取付構造。
【請求項4】
前記アッパメンバは、閉断面からなることを特徴とする請求項3に記載の車両用センサの取付構造。
【請求項5】
前記外装部材はバンパからなり、
前記バンパを支持する車幅方向に延びるバンパビームよりも後方に前記路面状態検出手段が固定されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の車両用センサの取付構造。
【請求項6】
前記路面状態検出手段は、前記フレーム部材に固定するためのブラケットを有し、
前記ブラケットは、前記路面状態検出手段よりも車幅方向外側に延びていることを特徴とする請求項1から
請求項5のいずれか1項に記載の車両用センサの取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用センサの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、路面状態を検出する路面状態検出手段(投射装置12とカメラ18)の取付構造として、バンパに取り付ける技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、バンパ自体の剛性が低いため、走行中に共振して、検出精度が低下する。また、路面状態検出手段をバンパに取り付けると、バンパは固定手段の経年劣化など自重によって垂れ下がる可能性があり、検出精度に影響するおそれがある。
【0005】
本発明は、前記した従来の課題を解決するものであり、検出精度を安定して得ることが可能な車両用センサの取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、車体前方に設けられた外装部材と、前記外装部材または車両を駆動する駆動源を支持するフレーム部材と、車両前方の路面状態を検出する路面状態検出手段と、を有し、前記路面状態検出手段は、前輪よりも前方に位置する前記フレーム部材に固定され、前記外装部材は、前面部と、この前面部の下端から後方に向けて延びる底面部とを有するバンパからなり、前記バンパは、前記路面状態検出手段の下方に開口部を有し、前記開口部は、前記底面部に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、検出精度を安定して得ることが可能な車両用センサの取付構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態の車両用センサの取付構造を示す側面図である。
【
図2】本実施形態の車両用センサの取付構造を車体前方から見たときの斜視図である。
【
図3】本実施形態の車両用センサの取付構造を車体前方から見たときの一部拡大斜視図である。
【
図4】本実施形態の車両用センサの取付構造を前輪の後方から見たときの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態に係る車両用センサの取付構造について、適宜図面を参照して詳細に説明する。また、車両用センサの取付構造は、説明の便宜上、簡略化して図示しているものであり、本実施形態に限定されるものではない。なお、車両の進行方向を「前」、後退方向を「後」、鉛直上方側を「上」、鉛直下方側を「下」、車幅方向を「左」、「右」として説明する。また、車両用センサの取付構造は、左右対称であるため、以下では左右のうちの一方側(左側)を主に説明して、他方側(右側)の説明を適宜省略する。
【0010】
図1は、本実施形態の車両用センサの取付構造を示す側面図である。なお、
図1では、車両Vの外形を二点鎖線で示している。
図1に示すように、車両用センサの取付構造は、車両用センサとしての路面状態検出装置(路面状態検出手段)3を、車体を形成する車体部材1に固定することによって構成されている。
【0011】
車両Vは、車体部材1と、車両Vの外側部位(外郭)を形成する外装部材2と、路面状態を検出する路面状態検出装置3と、を主に備えて構成されている。このように車両Vは、車体部材1と、外装部材2と、路面状態検出装置3と、を備えた自動車であれば、その形式・種類は特に限定されない。つまり、車両Vは、乗用車、バス、トラック、作業車等である。
【0012】
車体部材1は、外装部材2を支持するものであり、フロントサイドフレーム11(フレーム部材)、アッパメンバ12(フレーム部材)、バンパビームエクステンション13、バンパビーム14(フレーム部材)などを備えて構成されている。
【0013】
外装部材2は、エンジンフード21と、フロントバンパ22(バンパ)と、フロントフェンダ23と、を備えて構成されている。エンジンフード21は、フロントガラスの前方の上面を覆うパネル部材である。フロントバンパ22は、車両Vの前面側に位置し、例えば合成樹脂製のパネル部材によって構成されている。また、フロントバンパ22は、エアインテークなどが設けられた前面部22aと、前面部22aの下端から後方に向けて延びる底面部22bと、を有している。フロントフェンダ23は、前輪Wの周囲を覆うパネル部材である。
【0014】
路面状態検出装置3は、車両Vの前方の路面Rの状態(路面状態)を検出して、車両VのダンパDを制御するダンパ制御用のセンサであり、前輪Wの前方に位置するアッパメンバ12に固定されている。本実施形態における路面状態検出装置3は、太い実線矢印で示すように、前輪Wの直前の路面Rの状態を検出するように構成されている。また、路面状態検出装置3は、レーダ式、カメラ式、レーザ式などのセンサから適宜選択することができる。また、路面状態検出装置3としては、単一のセンサに限定されるものではなく、カメラ式とレーザ式など複数の方式のセンサを組み合わせて構成してもよい。
【0015】
図2は、本実施形態の車両用センサの取付構造を車体前方から見たときの斜視図である。
図2に示すように、フロントサイドフレーム11は、バンパビーム14の左右端部寄りの位置からバンパビームエクステンション13を介在して車体後方向に延びる左右一対の骨格フレーム部材である。
【0016】
アッパメンバ12は、車両V(
図1参照)を駆動するエンジンEG(駆動源)が搭載されるエンジンルームERの車体側部の前側下端部から後側上端部に亘って(前輪Wの上方から前方向に)延設された左右一対の骨格フレーム部材である。なお、図示していないが、エンジンEGは、サブフレームを介して左右のフロントサイドフレーム11に支持されている。
【0017】
なお、駆動源が搭載される搭載室としてはエンジンルームERに限定されるものではなく、電気自動車を駆動するモータなどを収容するモータルームであってもよい。また、駆動源が搭載される搭載室としては、走行モータに電力を供給する蓄電装置を収容する収容室であってもよい。
【0018】
また、アッパメンバ12の前端部は、バンパビーム14の左右端部に取り付けられたバンパビームエクステンション13に連結されている。バンパビームエクステンション13は、車両Vが衝突したときに、圧壊座屈することで衝突荷重を吸収するための金属製の緩衝部材である。また、バンパビームエクステンション13は、バンパビーム14の左右の車幅方向端部にそれぞれ設置された筒状部材からなる。また、バンパビームエクステンション13は、バンパビーム14と、フロントサイドフレーム11との間に配置されている。
【0019】
バンパビーム14は、車幅方向に延設された骨格部材である。また、バンパビーム14は、縦断面視において縦長の矩形断面をした鋼材からなる。また、バンパビーム14の前面には、車幅方向に延設された緩衝材(不図示)が取り付けられている。また、バンパビーム14の前側には、フロントバンパ22(
図1参照)が固定されている。
【0020】
路面状態検出装置3は、アッパメンバ12の車幅方向外側の側面12sに取り付けられている。また、路面状態検出装置3は、アッパメンバ12の前後方向の前端部に位置している。
【0021】
図3は、本実施形態の車両用センサの取付構造を車体前方から見たときの一部拡大斜視図である。
図3に示すように、路面状態検出装置3は、ブラケット31を介してアッパメンバ12の側面12sに固定されている。
【0022】
ブラケット31は、鉄やアルミニウム合金などの金属製のものであり、アッパメンバ12の側面12sから左右方向(幅方向)の外側に向けて延びている。また、ブラケット31は、下部に開口を有し、開口に路面状態検出装置3の一部が挿入された状態で固定されている。なお、
図3に示す実施形態は一例であって、本実施形態に限定されるものではない。
【0023】
また、フロントバンパ22の底面部22bには、路面状態検出装置3の下方に開口部22cが形成されている。これにより、走行時に開口部22cの外側から内側に走行風(空気)を取り入れることができ、路面状態検出装置3に付着したごみなどの異物を吹き飛ばすことができる。その結果、路面状態検出装置3の検出精度を安定して得ることができる。
【0024】
また、フロントバンパ22の底面部22bにおいて、路面状態検出装置3の下方に開口部22cを形成することで、路面状態検出装置3からのレーザ光を開口部22cを通して路面Rに直接照射することができ、路面状態を精度よく検出することが可能になる。
【0025】
なお、路面状態検出装置3の位置は、アッパメンバ12の側面12sに限定されるものではなく、アッパメンバ12の前面や下面などであってもよい。
【0026】
図4は、本実施形態の車両用センサの取付構造を前輪の後方から見たときの平面図である。
ところで、
図4に示すように、バンパビーム14は、左右方向(車幅方向)の両端部14a,14aが前輪Wの直前(符号Pで囲む位置)まで延びていないものがある。このような構成の場合、路面状態検出装置3を前輪Wの直前に設置することが難しくなる。
【0027】
そこで、本実施形態では、車両Vのフレーム部材であるアッパメンバ12(
図3参照)に路面状態検出装置3を設置したものである。これにより、路面状態検出装置3を前輪Wの直前に設置することが可能になって、前輪Wの直前の路面状態を検出することができ、高精度の路面情報を取得できる。
【0028】
図5は、
図1のV-V線断面図である。
図5に示すように、アッパメンバ12は、上面部12aと下面部12bと左側面部12cと右側面部12dとによって矩形状に形成され、閉断面を構成している。このような閉断面を有するアッパメンバ12にすることで、アッパメンバ12の剛性を高めることができる。
【0029】
アッパメンバ12に固定されるブラケット31は、鉄などの金属製のものであり、上面部31aと左側面部31bと右側面部31cとによって断面視において門型に構成されている。右側面部31cは、アッパメンバ12の左側面部12cと面で接している。また、ブラケット31は、アッパメンバ12にボルトB(
図3参照)を介して固定されている。なお、アッパメンバ12とブラケット31との固定手段は溶接によって固定されていてもよい。
【0030】
路面状態検出装置3は、四角箱型のケース3aを有し、ケース3aの左右の側面3b,3cがブラケット31によって挟まれた状態で固定されている。また、路面状態検出装置3とブラケット31との固定手段は、例えば、ボルトを用いて行われている。
【0031】
また、ブラケット31は、路面状態検出装置3の左右が左側面部31bと右側面部31cとによって挟まれた状態で固定されているので、左側方の衝撃から路面状態検出装置3を保護することができる。
【0032】
以上説明したように、本実施形態の車両用センサの取付構造は、車体前方に設けられた外装部材2(エンジンフード21、フロントバンパ22、フロントフェンダ23)と、外装部材2を支持するフレーム部材(フロントサイドフレーム11、アッパメンバ12、バンパビーム14)と、車両前方の路面状態を検出する路面状態検出装置3と、を有する。路面状態検出装置3は、前輪Wよりも前方に位置するフレーム部材(フロントサイドフレーム11、アッパメンバ12、バンパビーム14)に固定されている(
図1~
図3参照)。これによれば、フレーム部材に路面状態検出装置3を取り付けることで、路面状態検出装置3での共振を防ぐことができ、検出精度を安定して得ることが可能なる。その結果、高精度の路面情報を取得することが可能になる。
【0033】
また、本実施形態は、路面状態検出装置3が前輪Wの前方に重なる位置に固定されている(
図4参照)。これによれば、より前輪Wとの誤差が少なくなり、高精度の路面情報を取得することが可能になる。
【0034】
また、本実施形態は、フレーム部材は、前輪Wの上方から前方向に延びるアッパメンバ12からなり、路面状態検出装置3は、アッパメンバ12の側方に固定されている(
図2、
図3参照)。これによれば、路面状態検出装置3の取付剛性を高くすることができ、剛性不足からくる振動や共振を低減することが可能になる。
【0035】
また、本実施形態は、アッパメンバ12は、閉断面からなる(
図5参照)。これによれば、路面状態検出装置3の取付剛性をより高くすることができ、結果的に剛性不足からくる振動や共振を低減することが可能になる。
【0036】
また、本実施形態は、外装部材2はフロントバンパ22からなり、フロントバンパ22は、路面状態検出装置3の下方に開口部22cを有する(
図3参照)。これによれば、開口部22cから走行風を取り入れることができ、路面状態検出装置3に付いたゴミなどを吹き飛ばすことができる。その結果として、高精度な路面情報を安定して取得することが可能になる。
【0037】
また、本実施形態は、外装部材2はフロントバンパ22からなり、フロントバンパ22を支持する車幅方向に延びるバンパビーム14よりも後方に路面状態検出装置3が固定されている(
図1参照)。これによれば、バンパや外板が変形する程度の軽衝突において、路面状態検出装置3の位置がずれたりすることがなくなり、路面状態検出装置3の調整作業のサービス作業を軽減することが可能になる。
【0038】
また、本実施形態は、路面状態検出装置3は、フレーム部材(アッパメンバ12)に固定するためのブラケット31を有する。このブラケット31は、路面状態検出装置3よりも車幅方向外側に延びている。これによれば、路面状態検出装置3の取付剛性を高くすることができ、剛性不足からくる振動や共振を低減することが可能になる。
【0039】
なお、本発明は、前記した実施形態に限定されるものではない。例えば、路面状態検出装置3をアッパメンバ12の前端の側面12s(左側面)に取り付けた場合を例に挙げて説明したが、路面状態検出装置3を、前輪Wよりも前方に位置するフレーム部材としてのフロントサイドフレーム11に取り付けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 車体部材
2 外装部材
3 路面状態検出装置(路面状態検出手段)
11 フロントサイドフレーム(フレーム部材)
12 アッパメンバ(フレーム部材)
13 バンパビームエクステンション
14 バンパビーム(フレーム部材)
21 エンジンフード
22 フロントバンパ(バンパ)
23 フロントフェンダ
31 ブラケット
EG エンジン(駆動源)
ER エンジンルーム
V 車両
W 前輪