IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三井化学株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-不織布積層体及び衛生用品 図1
  • 特許-不織布積層体及び衛生用品 図2
  • 特許-不織布積層体及び衛生用品 図3
  • 特許-不織布積層体及び衛生用品 図4
  • 特許-不織布積層体及び衛生用品 図5
  • 特許-不織布積層体及び衛生用品 図6
  • 特許-不織布積層体及び衛生用品 図7
  • 特許-不織布積層体及び衛生用品 図8
  • 特許-不織布積層体及び衛生用品 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-11-24
(45)【発行日】2022-12-02
(54)【発明の名称】不織布積層体及び衛生用品
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/26 20060101AFI20221125BHJP
   A61F 13/51 20060101ALI20221125BHJP
   A61F 13/511 20060101ALI20221125BHJP
   A61F 13/514 20060101ALI20221125BHJP
   B32B 7/05 20190101ALI20221125BHJP
   B32B 27/02 20060101ALI20221125BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20221125BHJP
   D04H 3/007 20120101ALI20221125BHJP
   D04H 3/016 20120101ALI20221125BHJP
   D04H 3/147 20120101ALI20221125BHJP
   D04H 3/16 20060101ALI20221125BHJP
【FI】
B32B5/26
A61F13/51
A61F13/511 300
A61F13/514 100
B32B7/05
B32B27/02
B32B27/32 E
D04H3/007
D04H3/016
D04H3/147
D04H3/16
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021509537
(86)(22)【出願日】2020-03-25
(86)【国際出願番号】 JP2020013446
(87)【国際公開番号】W WO2020196663
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-04-09
(31)【優先権主張番号】P 2019061595
(32)【優先日】2019-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】税田 祥平
(72)【発明者】
【氏名】太田 康介
(72)【発明者】
【氏名】市川 泰一郎
【審査官】磯部 洋一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/198336(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/129211(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/111723(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
D04H 1/00-18/04
A61F 13/15-13/84
A61L 15/16-15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
捲縮複合繊維を含む不織布層A、及び、
平均繊維径1.35μm未満である極細繊維を含む不織布層Bを備え、
不織布積層体の総目付に対する前記不織布層Bの目付の割合が2.0%~8.0%であり、
前記捲縮複合繊維は、オレフィン系重合体(A)から構成される(a)部、及び、オレフィン系重合体(B)から構成される(b)部の少なくとも2の領域を有し、
前記オレフィン系重合体(A)及び前記オレフィン系重合体(B)は、それぞれ、エチレン単独重合体、エチレン/α-オレフィンランダム共重合体、プロピレン単独重合体及びプロピレン/α-オレフィンランダム共重合体からなる群から選択される少なくとも1種を含み、
前記極細繊維は、オレフィン系重合体であり、
スパンボンド不織布(捲縮)/メルトブローン不織布(極細繊維)/スパンボンド不織布(捲縮)/スパンボンド不織布(捲縮)、
スパンボンド不織布(非捲縮)/メルトブローン不織布(極細繊維)/スパンボンド不織布(捲縮)/スパンボンド不織布(捲縮)、又は、
スパンボンド不織布(非捲縮)/メルトブローン不織布(極細繊維)/スパンボンド不織布(非捲縮)/スパンボンド不織布(捲縮)の4層構造の積層体である不織布積層体。
【請求項2】
前記極細繊維の平均繊維径が、1.00μm以上1.35μm未満である請求項1に記載の不織布積層体。
【請求項3】
不織布積層体の総目付に対する前記不織布層Bの目付の割合が、5.0%~8.0%である請求項1又は請求項2に記載の不織布積層体。
【請求項4】
前記不織布層Aはスパンボンド不織布の層であり、
前記不織布層Bはメルトブローン不織布の層である請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の不織布積層体。
【請求項5】
前記捲縮複合繊維は、オレフィン系重合体(A)から構成される(a)部、及び、オレフィン系重合体(B)から構成される(b)部の少なくとも2の領域を有し、
前記(a)部と前記(b)部との質量比〔(a):(b)〕が、10:90~60:40であり、
前記オレフィン系重合体(A)の融点が前記オレフィン系重合体(B)の融点よりも高いこと、及び、前記オレフィン系重合体(A)のMz/Mwが前記オレフィン系重合体(B)のMz/Mwよりも大きいことの少なくとも一方を満たす請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の不織布積層体。
【請求項6】
前記捲縮複合繊維は、前記(a)部が芯部(a’)であり前記(b)部が鞘部(b’)である偏芯芯鞘構造を有する請求項5に記載の不織布積層体。
【請求項7】
エンボス加工により熱融着されている請求項1~請求項のいずれか1項に記載の不織布積層体。
【請求項8】
前記エンボス加工によるエンボス面積率が、5%~20%である請求項に記載の不織布積層体。
【請求項9】
スパンボンド不織布(捲縮)/メルトブローン不織布(極細繊維)/スパンボンド不織布(捲縮)/スパンボンド不織布(捲縮)の4層構造の積層体である請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の不織布積層体。
【請求項10】
請求項1~請求項9のいずれか1項に記載の不織布積層体を有する衛生用品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、不織布積層体及び衛生用品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン(例えばポリプロピレン)を用いた不織布は通気性等に優れていることから、紙おむつや生理用品等の衛生材料として利用されているが、さらなる特性の向上が要求されている。例えば、柔軟性、嵩高性、及び機械的強度をさらに向上させたポリプロピレンを用いた不織布が求められている。
【0003】
柔軟性、嵩高性などに優れる不織布を得る方法として、不織布を構成するポリオレフィンを用いた繊維を捲縮させる方法が種々提案されている。
例えば、特許文献1には、融点が異なる二種類のプロピレン系重合体を用いた偏芯芯鞘構造を有する複合繊維とした場合に、鞘部に用いる低融点のプロピレン系重合体よりMz/Mwが大きい高融点のプロピレン系重合体を芯部に用いて複合繊維とすると、より高度に捲縮した捲縮複合繊維が得られることが記載されている。
【0004】
また、特許文献2及び特許文献3には、捲縮複合繊維積層体の中間層に、メルトブローン繊維を積層した複合体が記載されている。
【0005】
特許文献1:国際公開第2011-129211号
特許文献2:米国特許出願公開第2017/0335498号明細書
特許文献3:国際公開第2017/198336号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載の複合繊維は、加工時のネックインが大きくなることが懸念され、高速成形時における安定生産に課題があると考えられる。
なお、本開示においてネックインとは、例えば、不織布をMD方向(繊維の流れ方向)に引っ張られた場合に、繊維の伸縮により不織布のCD方向(繊維の流れ方向と直交する方向)の長さが短くなる現象を意味する。
【0007】
特許文献2及び特許文献3に記載の複合体は、中間層として導入されているメルトブローン層の繊維径及び目付が大きく、曲げ剛性が比較的高いと考えられる。そのため、特に衛生用品において重要となる不織布積層体自体の柔軟性(例えば、クッション性、ドレープ性等)、及び、耐ネックイン性に劣る可能性があると推測される。
【0008】
本開示の実施形態が解決しようとする課題は、曲げ剛性が低く抑えられていることで良好な柔軟性を示し、かつ、耐ネックイン性に優れる不織布積層体及び衛生用品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 捲縮複合繊維を含む不織布層A、及び、平均繊維径1.35μm未満である極細繊維を含む不織布層Bを備え、不織布積層体の総目付に対する前記不織布層Bの目付の割合が2.0%~8.0%である不織布積層体。
<2> 前記極細繊維の平均繊維径が、1.00μm以上1.35μm未満である<1>に記載の不織布積層体。
<3> 不織布積層体の総目付に対する前記不織布層Bの目付の割合が、5.0%~8.0%である<1>又は<2>に記載の不織布積層体。
<4> 前記不織布層Aはスパンボンド不織布の層であり、前記不織布層Bはメルトブローン不織布の層である<1>~<3>のいずれか1つに記載の不織布積層体。
<5> 前記捲縮複合繊維は、オレフィン系重合体(A)から構成される(a)部、及び、オレフィン系重合体(B)から構成される(b)部の少なくとも2の領域を有し、前記(a)部と前記(b)部との質量比〔(a):(b)〕が、10:90~60:40であり、前記オレフィン系重合体(A)の融点が前記オレフィン系重合体(B)の融点よりも高いこと、及び、前記オレフィン系重合体(A)のMz/Mwが前記オレフィン系重合体(B)のMz/Mwよりも大きいことの少なくとも一方を満たす<1>~<4>のいずれか1つに記載の不織布積層体。
<6> 前記オレフィン系重合体(A)及び前記オレフィン系重合体(B)は、プロピレン系重合体である<5>に記載の不織布積層体。
<7> 前記捲縮複合繊維は、前記(a)部が芯部(a’)であり前記(b)部が鞘部(b’)である偏芯芯鞘構造を有する<5>又は<6>に記載の不織布積層体。
<8> エンボス加工により熱融着されている<1>~<7>のいずれか1つに記載の不織布積層体。
<9> 前記エンボス加工によるエンボス面積率が、5%~20%である<8>に記載の不織布積層体。
<10> <1>~<9>のいずれか1つに記載の不織布積層体を有する衛生用品。
【発明の効果】
【0010】
本開示の実施形態によれば、曲げ剛性が低く抑えられていることで良好な柔軟性を示し、かつ、耐ネックイン性に優れる不織布積層体及び衛生用品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の捲縮複合繊維の一例を示す斜視図である。
図2】不織布の柔軟性試験方法を説明する図である。
図3】本開示の捲縮複合繊維の一例を示す断面図である。
図4】本開示の捲縮複合繊維の一例を示す断面図である。
図5】本開示の捲縮複合繊維の一例を示す断面図である。
図6】本開示の捲縮複合繊維の一例を示す断面図である。
図7】本開示の捲縮複合繊維の一例を示す断面図である。
図8】本開示の捲縮複合繊維の一例を示す断面図である。
図9】本開示におけるスパンボンド不織布製造装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の不織布積層体及び衛生用品について、詳細に説明するが、本開示は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0013】
本開示において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本開示において組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
本開示において、「MD」(Machine Direction)方向とは、不織布製造装置における不織ウェブの進行方向を指す。「CD」(Cross Direction)方向とは、MD方向に垂直で、主面(不織布の厚さ方向に直交する面)に平行な方向を指す。
本開示において、組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する複数の物質の合計量を意味する。
本開示において「層」との語には、当該層が存在する領域を観察したときに、当該領域の全体に形成されている場合に加え、当該領域の一部にのみ形成されている場合も含まれる。
【0014】
≪不織布積層体≫
本開示の不織布積層体は、捲縮複合繊維を含む不織布層A、及び、平均繊維径1.35μm未満である極細繊維を含む不織布層Bを備え、不織布積層体の総目付に対する不織布層Bの目付の割合が2.0%~8.0%である。
【0015】
捲縮複合繊維含む不織布層のみを用いた積層体は、ネックインの縮み幅が大きいため耐ネックイン性に劣る傾向があった。
また、極細繊維を含む不織布層Bは、耐ネックイン性を向上させ得るものの、曲げ剛性を増加させ、柔軟性を低下させる要因となり得る。
【0016】
本開示の不織布積層体は、上記の構成を備えることで曲げ剛性が低く抑えられていることで良好な柔軟性を示し、かつ、耐ネックイン性に優れる。
極細繊維は捲縮複合繊維よりも細い繊維である。そのため、不織布積層体中において、極細繊維は、捲縮複合繊維と比較して、より均一に分散され得る。
また、極細繊維は不織布積層体の形状を保持することに寄与し得るため、不織布積層体に極細繊維が含まれることで、不織布積層体が横縦方向に引っ張られた場合の縦横方向の収縮(即ちネックイン現象)が抑制されると推測される。
なお、本開示における「柔軟性」は、曲げ剛性が低く抑えられており、ドレープ性に優れていることによる不織布積層体自体の柔軟性を意味する。
【0017】
<捲縮複合繊維を含む不織布層A>
本開示の不織布積層体は、捲縮複合繊維を含む不織布層Aを備える。
本開示の不織布積層体が捲縮複合繊維を含む不織布層Aを備えることで、不織布積層体の曲げ剛性を低下させることができ、柔軟性を向上させることができる。
捲縮複合繊維としては、不織布積層体の曲げ剛性を低下させて柔軟性を向上させる観点から、スパンボンド法により製造されたスパンボンド繊維であることが好ましい。
【0018】
不織布層Aは、捲縮複合繊維以外に、スパンボンド不織布、カード式エアスルー不織布、エアレイド不織布、ニードルパンチ式スパンボンド不織布、湿式不織布、乾式不織布、乾式パルプ不織布、フラッシュ紡糸不織布、開繊不織布、種々公知の不織布等を含んでいてもよいが、捲縮複合繊維のみを含むことが好ましい。
捲縮複合繊維は、例えば複合繊維が捲縮可能な断面形状を有することで形成することができる。
【0019】
上記捲縮複合繊維は、スパンボンド法により、複数種類の重合体から構成されることができ、上記重合体としては、オレフィン系重合体、ポリエステル系重合体、ナイロン等が挙げられる。
上記の中でも、不織布積層体自体の柔軟性、強度及び耐水性の観点から、上記重合体はオレフィン系重合体であることが好ましい。
【0020】
本開示における捲縮複合繊維は、例えば、特定の重合体から構成される(a)部、及び、上記特定の重合体とは異なる他の重合体から構成される(b)部の少なくとも2の領域を有していてもよい。
また、本開示の不織布積層体における捲縮複合繊維は、オレフィン系重合体(A)から構成される(a)部、及び、オレフィン系重合体(B)から構成される(b)部の少なくとも2の領域を有することが好ましい。
【0021】
(オレフィン系重合体(A))
オレフィン系重合体(A)としては、エチレン系重合体、プロピレン系重合体等が挙げられる。上記の中でも、オレフィン系重合体(A)としては、プロピレン系重合体であることが好ましい。
なお、オレフィン系重合体(A)は、1種類の重合体で構成されてもよく、2種類以上の重合体、即ち2種類以上の重合体の混合体であってもよい。
【0022】
エチレン系重合体は、エチレン由来の構造単位を主体とする重合体であり、エチレン単独重合体及びエチレンとエチレン以外のα-オレフィンとの共重合体を含む概念である。
例えば、エチレン単独重合体、及びエチレンとエチレン以外のα-オレフィンとの共重合体(エチレン/α-オレフィンランダム共重合体)のいずれでもよい。
【0023】
エチレン/α-オレフィンランダム共重合体は、例えば、エチレンと、エチレン以外の炭素数2~10の1種又は2種以上のα-オレフィンとのランダム共重合体であることが好ましい。
【0024】
柔軟性に優れる観点から、エチレンと共重合するα-オレフィンの具体例としては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン等が挙げられる。
【0025】
エチレン/α-オレフィンランダム共重合体としては、例えば、エチレン・プロピレンランダム共重合体、エチレン・1-ブテンランダム共重合体などが挙げられる。
エチレン系重合体は、異なるエチレン系重合体を2種以上含んでもよい。
【0026】
オレフィン系重合体(A)として用いられるプロピレン系重合体は、プロピレン由来の構造単位を主体とする重合体であり、プロピレン単独重合体及びプロピレンとプロピレン以外のα-オレフィンとの共重合体(プロピレン/α-オレフィンランダム共重合体)を含む概念である。
例えば、プロピレン系重合体は、プロピレン単独重合体であってもよく、プロピレンとプロピレン以外のα-オレフィンとの共重合体であってもよく、プロピレン単独重合体、及びプロピレンとプロピレン以外のα-オレフィンとの共重合体の両方を含んでいてもよい。
【0027】
プロピレン/α-オレフィンランダム共重合体は、プロピレンと、プロピレン以外の炭素数2~10の1種又は2種以上のα-オレフィンとのランダム共重合体であることが好ましい。
【0028】
柔軟性に優れる観点から、プロピレンと共重合するα-オレフィンの好ましい具体例としては、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン等が挙げられる。
【0029】
プロピレン/α-オレフィンランダム共重合体としては、例えば、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・エチレン・1-ブテンランダム共重合体などが挙げられる。
【0030】
プロピレン/α-オレフィンランダム共重合体におけるα-オレフィンの含有量は、特に限定されず、例えば10モル%以下であることが好ましく、5モル%以下であることがより好ましく、2モル%以下であることがさらに好ましく、1モル%以下であることが特に好ましい。
【0031】
プロピレン系重合体は、異なるプロピレン系重合体を2種以上含んでもよく、プロピレン系重合体とエチレン系重合体とを含んでもよい。
【0032】
上記の中でも、機械強度に優れる観点から、オレフィン系重合体(A)としては、プロピレンの単独重合体であることが好ましい。
【0033】
オレフィン系重合体(A)のメルトフローレート(MFR)(ASTM D-1238、230℃、荷重2,160g)は、紡糸性の観点から、20g/10分~100g/10分であることが好ましく、30g/10分~80g/10分であることがより好ましい。
一方、MFRが100g/10分以下であることで、得られる不織布積層体の引張強度等を向上させることができる。
【0034】
本開示におけるオレフィン系重合体(A)は、オレフィン系重合体(B)に比べて、融点が高いことが好ましく、その差が10℃を超えることが好ましく、その差が12℃~40℃の範囲にあることがより好ましい。
オレフィン系重合体(A)とオレフィン系重合体(B)との融点差を大きくすることにより、より捲縮性に優れる複合繊維から捲縮複合繊維を得ることができる。
【0035】
本開示におけるオレフィン系重合体(A)は、融点が155℃以上であることが好ましく、157℃~165℃であることがより好ましい。
オレフィン系重合体(A)の融点が155℃以上であることで、オレフィン系重合体(A)の融点とオレフィン系重合体(B)の融点との差を、10℃を超える差にすることがより容易となるため、捲縮性に優れる複合繊維から捲縮複合繊維を得ることができる。
【0036】
本開示におけるオレフィン系重合体(A)のZ平均分子量(Mz)と重量平均分子量(Mw)との比〔Mz/Mw(A)〕は、良好な捲縮性を発現させる観点から2.0以上であることが好ましく、紡糸性の観点から、Mz/Mw(A)は4.5以下であることが好ましい。
上記同様の観点から、オレフィン系重合体(A)のMz/Mw(A)は、2.1~4.5がより好ましく、2.1~3.0がさらに好ましい。
【0037】
本開示におけるオレフィン系重合体(A)は、Mwが15万~25万であることが好ましく、また、Mzが30万~60万であることが好ましい。
【0038】
本開示におけるオレフィン系重合体(A)は、分子量分布として定義される重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比〔Mw/Mn(A)〕が2.0~4.0であることが好ましく、2.2~3.5がより好ましい。
【0039】
本開示において、オレフィン系重合体(A)のMz、Mw、Mn、Mz/Mw(A)及びMw/Mn(A)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によって、後述記載の方法で測定することができる。
【0040】
本開示におけるオレフィン系重合体(A)は、通常、所謂チタン含有固体状遷移金属成分と有機金属成分を組み合わせたチーグラー・ナッタ型触媒、あるいはシクロペンタジエニル骨格を少なくとも1個有する周期律表第4族~第6族の遷移金属化合物及び助触媒成分からなるメタロセン触媒を用いて、スラリー重合、気相重合、バルク重合で、例えばプロピレンを単独重合、あるいは、例えばプロピレンと少量のα-オレフィンとを共重合させることにより得られる。その際、Mz、Mw及びMz/Mwが上記範囲になるように、MFRが異なるプロピレン系重合体、特に、プロピレン系重合体に当該プロピレン系重合体に比べてMFRが小さいプロピレン系重合体を少量混合あるいは多段重合することによって製造し得るし、直接重合することによっても得ることができる。
【0041】
また、オレフィン系重合体(A)のMw/Mn(A)及びMz/Mw(A)は、特定の触媒を使用して重合条件により調整する方法、重合体を過酸化物等により分解して調整する方法、分子量の異なる2種類以上の重合体を混合して調整する方法等により調整できる。
【0042】
なお、本開示におけるオレフィン系重合体(A)としては、市販の該当品、例えば、日本ポリプロ株式会社から、商品名ノバテックPP SA06Aで製造・販売されているプロピレン系重合体を用いることも可能である。
【0043】
本開示におけるオレフィン系重合体(A)には、本開示の目的を損なわない範囲で、通常用いられる酸化防止剤、耐候安定剤、耐光安定剤、帯電防止剤、防曇剤、ブロッキング防止剤、滑剤、核剤、顔料等の添加剤或いは他の重合体を必要に応じて配合することができる。
【0044】
(オレフィン系重合体(B))
オレフィン系重合体(B)としては、エチレン系重合体、プロピレン系重合体等が挙げられる。
オレフィン系重合体(B)におけるエチレン系重合体は、上述のオレフィン系重合体(A)の項に記載されるエチレン系重合体と同様であり、好ましい態様についても同様である。
【0045】
オレフィン系重合体(B)におけるプロピレン系重合体は、上述のオレフィン系重合体(A)の項に記載されるプロピレン系重合体と同様であり、好ましい態様についても同様である。
また、オレフィン系重合体(B)におけるプロピレン系重合体としては、以下の態様も好ましい。
【0046】
オレフィン系重合体(B)として用いられるプロピレン系重合体としては、プロピレンの単独重合体であってもよく、上述のオレフィン系重合体(A)の項に挙げられるプロピレンと少量の一種以上のα-オレフィン(但し、プロピレンを除く)との共重合体であってもよい。
上記の中でも、耐ネックイン性と柔軟性とのバランスに優れる観点から、オレフィン系重合体(B)として用いられるプロピレン系重合体としては、プロピレンと少量の一種以上のα-オレフィンとの共重合体がより好ましく、中でも、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・エチレン・1-ブテンランダム共重合体などのプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体がさらに好ましい。
【0047】
オレフィン系重合体(B)のメルトフローレート(MFR)(ASTM D-1238、230℃、荷重2,160g)は、上述のオレフィン系重合体(A)におけるMFRと同様の観点から、同様の範囲であることが好ましい。
【0048】
オレフィン系重合体(B)は、融点が120℃~155℃であることが好ましく、125℃~150℃の範囲にあることがより好ましい。
オレフィン系重合体(B)の融点が120℃以上であることで、耐熱性を良好に保持することができる。
【0049】
オレフィン系重合体(B)は、Z平均分子量(Mz)と重量平均分子量(Mw)との比〔Mz/Mw(B)〕が、2.5以下であることが好ましく、2.3以下であることがより好ましい。
【0050】
オレフィン系重合体(B)は、Mwが15万~25万であることが好ましく、また、Mzが30万~60万の範囲にあることが好ましい。
【0051】
オレフィン系重合体(B)は、分子量分布として定義される重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比〔Mw/Mn(B)〕が2.0~4.0であることが好ましく、2.2~3.5の範囲にあることがより好ましい。
【0052】
本開示において、オレフィン系重合体(B)のMz、Mw、Mn、Mz/Mw(B)及びMw/Mn(B)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によって、後述記載の方法で測定することができる。
【0053】
本開示におけるオレフィン系重合体(B)は、上記オレフィン系重合体(A)と同様の重合方法で製造し得るが、例えばオレフィン系重合体(B)としてプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体を用いる場合には、Mz、Mw及びMz/Mwが上記範囲になるように、MFRが異なるプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体を少量混合あるいは多段重合することによって製造してもよく、直接重合することによって製造してもよい。
【0054】
オレフィン系重合体(B)のMw/Mn(B)及びMz/Mw(B)を調整する方法としては、特定の触媒を使用して重合条件により調整する方法、重合体を過酸化物等により分解して調整する方法、分子量の異なる2種類以上の重合体を混合して調整する方法等が挙げられる。
【0055】
オレフィン系重合体(B)は、市販の該当品、例えば、株式会社プライムポリマーから、商品名プライムポリプロ S119で製造・販売されているプロピレン系重合体を用いることも可能である。
【0056】
本開示におけるオレフィン系重合体(B)には、本開示の目的を損なわない範囲で、通常用いられる酸化防止剤、耐候安定剤、耐光安定剤、帯電防止剤、防曇剤、ブロッキング防止剤、滑剤、核剤、顔料等の添加剤或いは他の重合体を必要に応じて配合することができる。
【0057】
得られる不織布積層体の機械強度、耐ネックイン性と柔軟性とのバランスに優れる観点から、上記オレフィン系重合体(A)及び上記オレフィン系重合体(B)は、プロピレン系重合体であることが好ましく、オレフィン系重合体(A)がプロピレン単独重合体であり、オレフィン系重合体(B)がプロピレン・α-オレフィンランダム共重合体であることが好ましい。
【0058】
本開示において、上記オレフィン系重合体(A)の融点は上記オレフィン系重合体(B)の融点よりも高いこと、及び、上記オレフィン系重合体(A)のMz/Mwは上記オレフィン系重合体(B)のMz/Mwよりも大きいことの少なくとも一方を満たすことが好ましい。これによって、捲縮複合繊維の捲縮性を良好にすることができる。
また、オレフィン系重合体(A)及びオレフィン系重合体(B)の、融点(Tm)、Mz/Mw及びMFRが、以下の関係を満たすことがより好ましい。
【0059】
<△Tm>
本開示において、オレフィン系重合体(A)の融点はオレフィン系重合体(B)の融点よりも高いことが好ましい。
これによって、より捲縮性に優れる複合繊維から捲縮複合繊維を得ることができる。
【0060】
より捲縮性に優れる複合繊維から捲縮複合繊維を得る観点から、本開示の(a)部を構成するオレフィン系重合体(A)の融点と(b)部を構成するオレフィン系重合体(B)の融点の差が10℃を超えることが好ましく、その差が12℃~40℃であることがより好ましい。
また、オレフィン系重合体(B)の融点が155℃以下であることで、オレフィン系重合体(A)との融点差を、10℃を超える差にすることがより容易となる。
【0061】
△Tmの値は、(a)部及び(b)部の原料となるオレフィン系重合体(A)及びオレフィン系重合体(B)それぞれの融点を求め、その差により算出される。
【0062】
本開示において融点は次のように測定される。
1)オレフィン系重合体をパーキンエルマー社製示差走査熱量分析(DSC)の測定用パンにセットし、30℃から200℃まで、10℃/分で昇温し、200℃で10分間保持した後、30℃まで10℃/分で降温する。
2)次に、再び、30℃から200℃まで10℃/分で昇温し、その間に観測されたピークから融点を求める。
【0063】
<△Mz/Mw>
本開示において、オレフィン系重合体(A)のMz/Mwはオレフィン系重合体(B)のMz/Mwよりも大きいことが好ましい。
これによって、捲縮性に優れる複合繊維から捲縮複合繊維を得ることができる。
【0064】
本開示の(a)部を構成するオレフィン系重合体(A)のMz/Mw(A)と(b)部を構成するオレフィン系重合体(B)のMz/Mw(B)の差〔Mz/Mw(A)-Mz/Mw(B):△Mz/Mw〕の絶対値は、0.01~2.0であることが好ましく、0.03~1.0であることがより好ましく、0.05~0.40であることがさらに好ましい。
△Mz/Mwが0.01以上であることで、捲縮性に優れる複合繊維から捲縮複合繊維が得られる。一方、△Mz/Mwが2.0以下であることで、紡糸性を良好に保持できる。
なお、MzはZ平均分子量と呼ばれ、公知であり、以下の式(1)で定義される。
【0065】
【数1】

【0066】
式(1)中、Miは重合体〔オレフィン系重合体(A)及びオレフィン系重合体(B):以下、併せた場合は「オレフィン系重合体」と呼ぶ。〕の分子量、Niは重合体(オレフィン系重合体)のモル数である。
【0067】
一般に、Mzは、重合体の高分子量成分をより反映した分子量と考えられている。よって、Mz/Mwは、一般的な分子量分布の指標であるMw/Mnよりも、より高分子量成分を反映した分子量分布を表す。この値は、繊維の捲縮性に影響する。
【0068】
△Mz/Mwは、(a)部及び(b)部を構成するオレフィン系重合体(A)及びオレフィン系重合体(B)それぞれの、Mz/MwをGPC分析により求め、その差の絶対値により算出される。
【0069】
本開示においてGPC分析は、以下の条件で実施される。
1)プロピレン重合体30mgをo-ジクロロベンゼン20mLに145℃で完全に溶解させる。
2)当該溶液を孔径が1.0μmの焼結フィルターで濾過し、試料とする。
3)当該試料をGPCにより分析し、ポリスチレン(PS)換算して、平均分子量及び分子量分布曲線を求める。
【0070】
測定機器や測定条件は以下のとおりとする。
測定装置 ゲル浸透クロマトグラフAlliance GPC2000型(Waters社製)
解析装置 データ処理ソフトEmpower2(Waters社製)
カラム TSKgel GMH6-HT×2+TSKgel GMH6-HTL×2(いずれも7.5mmI.D.×30cm、東ソー社製)
カラム温度 140℃
移動相 o-ジクロロベンゼン (0.025%butylated hydroxytoluene BHT含有)
検出器 示差屈折率計
流速 1mL/min
試料濃度 30mg/20mL
注入量 500μL
サンプリング時間間隔 1s
カラム校正 単分散ポリスチレン(東ソー社製)
分子量換算 PS換算/標準換算法
【0071】
<MFR比>
本開示の(a)部を構成するオレフィン系重合体(A)のMFRと(b)部を構成するオレフィン系重合体(B)のMFRの比(以下「MFR比」ともいう)は、特に限定はされないが、0.8~1.2であることが好ましい。
本開示におけるオレフィン系重合体(A)及びオレフィン系重合体(B)のMFRは、20g/10分~100g/10分であることが好ましい。
【0072】
本開示においてMFRは、ASTM D1238に準拠して、荷重;2,160g及び温度;230℃で求められる。
【0073】
<(a)部と(b)部の質量比>
本開示の捲縮複合繊維における(a)部と(b)部との質量比〔(a):(b)〕は、10:90~60:40であることが好ましい。
(a)部と(b)部との質量比が上記の範囲内であることで、捲縮複合繊維の形成に用いる複合繊維の捲縮性をより良好にすることができ、不織布積層体の柔軟性をより向上させることができる。
上記の観点から、(a)部と(b)部との質量比〔(a):(b)〕は、10:90~50:50がより好ましく、20:80~40:60がさらに好ましい。
【0074】
本開示における捲縮複合繊維は、オレフィン系重合体(A)から構成される(a)部、及び、オレフィン系重合体(B)から構成される(b)部の少なくとも2の領域を有し、上記(a)部と上記(b)部との質量比〔(a):(b)〕が、10:90~60:40であり、上記オレフィン系重合体(A)及び上記オレフィン系重合体(B)は、Mz/Mw、融点及びMFRの少なくとも1つが異なる態様であることが好ましい。
【0075】
本開示の不織布積層体は、捲縮複合繊維が、オレフィン系重合体(A)から構成される(a)部、及び、オレフィン系重合体(B)から構成される(b)部の少なくとも2の領域を有し、
(a)部と(b)部との質量比〔(a):(b)〕が、10:90~60:40であり、
オレフィン系重合体(A)の融点がオレフィン系重合体(B)の融点よりも高いこと、及び、オレフィン系重合体(A)のMz/Mwがオレフィン系重合体(B)のMz/Mwよりも大きいことの少なくとも一方を満たすことが好ましい。
【0076】
本開示の捲縮複合繊維は、上記オレフィン系重合体(A)及びオレフィン系重合体(B)から構成される捲縮複合繊維であって、横断面が(a)部及び(b)部の少なくとも2の領域を有する捲縮複合繊維であって、
上記(a)部と上記(b)部の質量比〔(a):(b)〕が、10:90~60:40であり、上記(a)部はオレフィン系重合体(A)から、上記(b)部はオレフィン系重合体(B)からそれぞれ構成され、上記オレフィン系重合体(A)のMz/Mw(A)と上記オレフィン系重合体(B)のMz/Mw(B)の差〔Mz/Mw(A)-Mz/Mw(B):△Mz/Mw〕が、0.10~2.2であり、上記オレフィン系重合体(A)の融点〔Tm(A)〕と上記オレフィン系重合体(B)の融点〔Tm(B)〕の差〔△Tm=Tm(A)-Tm(B)〕が10℃を超える、捲縮複合繊維であってもよい。
【0077】
本開示における捲縮複合繊維の平均繊維径は、糸性、捲縮性、並びに、不織布積層体とした場合の耐ネックイン性及び機械強度に優れる観点から、8μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、14μm以上であることがさらに好ましい。
また、本開示における捲縮複合繊維の平均繊維径は、不織布積層体とした場合の不織布積層体自体の柔軟性に優れる観点から、23μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましく、17μm以下であることがさらに好ましく、16.6μm以下であることが特に好ましい。
なお、本開示において平均繊維径は、実施例の項に記載の方法で測定する。
【0078】
図1は、本開示の捲縮複合繊維の一例を示す斜視図である。図中、10は(a)部、20は(b)部である。
【0079】
本開示の横断面が(a)部及び(b)部の少なくとも2の領域を有する捲縮複合繊維は、捲縮複合繊維の横断面において、(a)部占める割合が、(b)部を占める割合が、上記したように、質量比〔(a):(b)〕にして、10:90~60:40、好ましくは10:90~50:50、より好ましくは20:80~40:60である。
【0080】
かかる構成を有する捲縮複合繊維は、特に限定はされず、種々公知の形状をとり得る。具体的には、例えば、(a)部及び(b)部が互いに接するサイド・バイ・サイド型(並列型)捲縮複合繊維、あるいは、(a)部が芯部(a’)であり、(b)部が鞘部(b’)からなる芯鞘型捲縮複合繊維を挙げることができる。
【0081】
芯鞘型捲縮複合繊維は、芯部と鞘部とからなり、捲縮した繊維をいう。芯部(a’)は、繊維の断面内において芯部(a’)とは異なる重合体に少なくとも一部が取り囲まれるように配列され、かつ繊維の長さ方向に延びる部分をいう。
鞘部(b’)は、繊維の断面内において芯部(a’)の少なくとも一部を取り囲むように配列され、かつ繊維の長さ方向に延びる部分をいう。芯鞘型捲縮複合繊維のうち、繊維の断面内における繊維の芯部(a’)の中心と鞘部(b’)の中心が同一でないものを偏芯芯鞘構造の捲縮複合繊維(偏芯芯鞘型捲縮複合繊維とも称する。)という。
【0082】
~偏芯芯鞘構造~
本開示の不織布積層体において、捲縮複合繊維は、上記(a)部が芯部(a’)であり上記(b)部が鞘部(b’)である偏芯芯鞘構造を有することが好ましい。
捲縮複合繊維が上記偏芯芯鞘構造を有することで、捲縮複合繊維の形成に用いる複合繊維の捲縮性をより良好にすることができ、不織布積層体の柔軟性をより向上させることができる。
上記偏芯芯鞘構造は、例えば、Mz/Mwがより大きいオレフィン系重合体(A)から構成される(a)部を芯部に、Mz/Mwがより小さいオレフィン系重合体(B)から構成される(b)部を鞘部に用いてもよい。
【0083】
偏芯芯鞘型捲縮複合繊維には、芯部(a’)の側面が露出した「露出型」と、芯部(a’)の側面が露出していない「非露出型」が存在する。
偏芯芯鞘型捲縮複合繊維としては、露出型の偏芯芯鞘型捲縮複合繊維であることが好ましい。捲縮性に優れた偏芯芯鞘型捲縮複合繊維となり得るからである。また、芯部(a’)と鞘部(b’)が接する断面は、直線であっても曲線であってもよく、芯部の断面は円形であっても、楕円あるいは方形であってもよい。
芯部と鞘部の接合面が直線で、芯部の一部が捲縮複合繊維の表面に露出した複合繊維は、サイド・バイ・サイド型とも呼ばれる。
図3図8に、本開示における捲縮複合繊維の断面図の他の例を示す。
【0084】
捲縮複合繊維の製造方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、図9に示す不織布製造装置において、原料を押し出す押出機1及び1’から押し出された原料を紡糸する際、上記の芯鞘型捲縮複合繊維等の捲縮複合繊維の態様を形成することができる。
【0085】
本開示の捲縮複合繊維は、短繊維であっても、長繊維であってもよいが、長繊維である方が、不織布にした場合に、捲縮複合繊維の不織布からの脱落がなく、耐毛羽立ち性に優れるので好ましい。捲縮複合繊維の捲縮数は、特に限定されず、例えば、5個/25mm以上が挙げられる。嵩高く、柔軟性に優れるスパンボンド不織布とする観点で、捲縮数は、20個/25mm以上であることが好ましく、25個/25mm以上であることがより好ましい。
【0086】
捲縮複合繊維を用いた不織布としては、冷却時に繊維に歪を生じさせて捲縮させた顕在捲縮スパンボンド不織布等を例示できる。顕在捲縮スパンボンド不織布の長繊維としては、結晶化温度、融点、軟化点、結晶化速度、溶融粘度等が異なる異種の熱可塑性樹脂を複合した、偏芯芯鞘型複合長繊維、並列型(サイド・バイ・サイド型)複合長繊維、偏芯中空複合長繊維等が挙げられる。
【0087】
<極細繊維を含む不織布層B>
本開示の不織布積層体は、平均繊維径1.35μm未満である極細繊維を含む不織布層Bを備える。
本開示の不織布積層体が不織布層Bを備えることで、不織布積層体の耐ネックイン性を向上させることができる。
【0088】
極細繊維は、不織布積層体のネックイン性をより一層向上させる観点から、メルトブローン法により製造されたメルトブローン不織布であることが好ましい。
【0089】
不織布層Bは、極細繊維以外に、メルトブローン不織布、カード式エアスルー不織布、エアレイド不織布、ニードルパンチ式スパンボンド不織布、湿式不織布、乾式不織布、乾式パルプ不織布、フラッシュ紡糸不織布、開繊不織布、種々公知の不織布等を含んでいてもよいが、極細繊維のみを含むことが好ましい。
【0090】
本開示の不織布積層体において、極細繊維の平均繊維径は、1.35μm未満である。
これによって均一性に優れ地合いの良い積層体になり、耐ネックイン性が優れる不織布積層体を得ることができる。
上記同様の観点から、極細繊維の平均繊維径は1.34μm以下であることが好ましい。
また、極細繊維の平均繊維径は、単糸強度が高く、充分な機械特性を示す不織布積層体が得られる観点から、1.00μm以上であることが好ましい。
充分な機械特性を示す不織布積層体が得られることに加えてさらに、均一性に優れ地合いの良い積層体になり、耐ネックイン性が優れる不織布積層体を得ることができる観点から、1.20μm以上であることがより好ましく、1.30μm以上であることがさらに好ましい。
極細繊維の平均繊維径の測定方法は、実施例の項に記載の通りである。
【0091】
不織布積層体の総目付に対する不織布層Bの目付の割合は、2.0%~8.0%である。
不織布積層体の総目付に対する不織布層Bの目付の割合が2.0%以上であることで、均一性に優れ地合いの良い積層体になり、耐ネックイン性が優れる不織布積層体を得ることができる。
上記同様の観点から、不織布積層体の総目付に対する不織布層Bの目付の割合が5.0%以上であることが好ましく、6.0%以上であることがより好ましく、6.3%以上であることがさらに好ましい。
【0092】
不織布積層体の総目付に対する不織布層Bの目付の割合が8.0%以下であることで、曲げ剛性が低く、不織布積層体自体の柔軟性に優れる不織布積層体を得ることができる。
上記同様の観点から、不織布積層体の総目付に対する不織布層Bの目付の割合が8.0%以下であることが好ましく、7.0%以下であることがより好ましく、6.8%以下であることがさらに好ましい。
【0093】
なお、本開示における「ネックイン係数」とは、幅保持率(%)/目付(g/m)で算出される値である。
また「幅保持率(%)」、「目付(g/m)」は、実施例の項に記載の方法で算出される値である。
本開示における「積層体の総目付に占める極細繊維の目付の割合」は、不織布層Bの目付(g/m)/不織布積層体の目付(g/m)で算出される値である。
幅保持率の測定方法は、実施例の項に記載の通りである。
【0094】
(耐水圧)
本開示の不織布積層体において、耐水圧の値と極細繊維の目付との間には正の相関があることが知られている。そのため、耐水圧の値から極細繊維の目付を見積もることが可能である。
これによって、耐水圧の値より見積もられた極細繊維の目付を用いて、不織布層Bの目付比率を概算することができる。
耐水圧の値から極細繊維の目付を見積もるための換算式は、以下の式1で表される。
なお、式1は、国際公開第2017/198336号の実験例におけるSMS不織布積層体、及び、本開示における実験例のデータから算出した式である。
耐水圧[mmHO]=55.7×極細繊維の目付[g/m]+97.0 式1
【0095】
上記の換算式を用いて耐水圧の値から見積もられた極細繊維の目付を用いて、不織布積層体の総目付に対する不織布層Bの目付の割合を算出することができる。
【0096】
極細繊維を構成する材料としては、種々公知の熱可塑性樹脂、例えば、
エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセンのα-オレフィンの単独若しくは共重合体である高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(所謂LLDPE)、高密度ポリエチレン、プロピレン系重合体(プロピレン単独重合体、ポリプロピレンランダム共重合体、プロピレン・α-オレフィン共重合体等)、ポリ1-ブテン、ポリ4-メチル-1-ペンテン、エチレン・プロピレンランダム共重合体、エチレン・1-ブテンランダム共重合体、プロピレン・1-ブテンランダム共重合体等のオレフィン系重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ナイロン-6、ナイロン-66、ポリメタキシレンアジパミド等のポリアミド系重合体;ポリ塩化ビニル、ポリイミド、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、アイオノマー、熱可塑性ポリウレタンあるいはこれらの混合物等を例示することができる。
上記の中でも、極細繊維を構成する材料としては、オレフィン系重合体であることが好ましく、プロピレン系重合体であることがより好ましい。
【0097】
<プロピレン系重合体>
極細繊維としては、上記オレフィン系重合体の中でも、耐薬品性の観点からプロピレン系重合体であることが好ましい。
かかるプロピレン系重合体としては、融点(Tm)が155℃以上、好ましくは157℃~165℃の範囲にあるプロピレンの単独重合体、及び、プロピレンと、炭素数2以上の1種又は2種以上のα-オレフィン(プロピレンは除く)と、の共重合体であるプロピレン・α-オレフィン共重合体であることが好ましい。
炭素数2以上の1種又は2種以上のα-オレフィン(プロピレンは除く)としては、炭素数2~10の1種又は2種以上のα-オレフィン(例えば、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン等)が好ましく、炭素数2~8の1種又は2種以上のα-オレフィンがより好ましい。これらの中でもプロピレン単独重合体がより好ましい。プロピレン・α-オレフィン共重合体のα-オレフィンに由来する構成単位の含有量は、全構成単位に対し、0.5質量%~25質量%であることが好ましく、1.0質量%~20質量%であることがより好ましい。
プロピレン系重合体は、溶融紡糸し得る限り、メルトフローレート(MFR:ASTM D 1238、230℃、荷重2,160g)は特に限定はされないが、例えば1g/10分~3,000g/10分であってもよく、好ましくは500g/10分~2,000g/10分であり、さらに好ましくは700g/10分~1,600g/10分である。
【0098】
本開示の不織布積層体において、不織布層Bの目付は0.5g/m~1.5g/mの範囲であることが好ましく、0.7g/m~1.5g/mの範囲であることがより好ましい。不織布層Bの目付が0.5g/m~1.5g/mであることで、耐ネックイン性と柔軟性とのバランスに優れ、薄い捲縮不織布が得られる。
なお、本開示における目付の測定方法は、実施例の項に記載した通りである。
【0099】
(ネックイン係数)
本開示の不織布積層体は、100N/mで伸展させた場合のネックイン係数が5.0以上である。
本開示の不織布積層体のネックイン係数が5.0以上であることで、不織布積層体の目付を抑制し、ネックイン現象を良好に抑制することができる。
上記同様の観点から、不織布積層体は100N/mで伸展させた場合のネックイン係数が5.2以上であることが好ましく、5.4以上であることがより好ましい。
【0100】
なお、ネックイン係数を調整する方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。
捲縮複合繊維及び極細繊維に含まれる樹脂として、適切な単位構造及び上記単位構造の結合パターンを有する樹脂を選択することによりネックイン係数を調整する方法。
捲縮複合繊維及び極細繊維に含まれる樹脂として、適切な物性(例えば、分子量分布、結晶性等)を有する樹脂を選択することによりネックイン係数を調整する方法。
積層体における各層の目付比率を変更することによりネックイン係数を調整する方法。
【0101】
本開示の不織布積層体としては、不織布層Aはスパンボンド不織布の層であり、不織布層Bはメルトブローン不織布の層であることが好ましい。
【0102】
(他の繊維を含む層)
本開示の不織布積層体は、上述の不織布層A及び不織布層B以外に、他の繊維を含む層を備えていてもよい。
他の繊維を含む層としては、不織布層Aに該当しないスパンボンド不織布を含む層、不織布層Bに該当しないメルトブローン不織布を含む層、湿式不織布を含む層、乾式不織布を含む層、乾式パルプ不織布を含む層、フラッシュ紡糸不織布を含む層、開繊不織布を含む層等、種々公知の不織布を含む層を挙げることができる。
上記の中でも、耐ネックイン性を向上させつつ、近年の衛生材料に求められているクッション性及び柔軟性を高い水準で維持する観点から、他の繊維を含む層としては、不織布層Bに該当しないメルトブローン不織布を含む層であることが好ましい。
【0103】
(不織布積層体の目付)
本開示の不織布積層体の目付(不織布積層体の単位面積当たりの質量)は、ネックイン現象を抑制する観点から8g/m~25g/mであることが好ましく、10g/m~23g/mであることがより好ましく、12g/m~18g/mであることがさらに好ましく、12g/m~15g/mであることが特に好ましい。
【0104】
本開示の不織布積層体は、エンボス加工により熱融着されていることが好ましい。
不織布積層体上記捲縮複合繊維がエンボス加工により互いに熱融着されていることで、繊維の安定性及び強度を良好に維持できる。
【0105】
本開示の不織布積層体は、上記エンボス加工によるエンボス面積率が5%~20%であることが好ましい。上記の範囲であると衛生材料に求められる機械強度と柔軟性を両立できる。
上記同様の観点から、エンボス加工のエンボス面積率が7%~15%であることがより好ましい。
エンボス加工の方法については、公知の方法を用いることができ、例えば特開2017-153901号公報に記載の方法を用いてもよい。
【0106】
<不織布積層体の用途等>
本開示の不織布積層体は、種々の層と積層して様々な用途に適用することができる。
具体的には、例えば、編布、織布、不織布、フィルム、衛生用品等を挙げることができる。上記の中でも、本開示の不織布積層体が良好なクッション性、柔軟性及び耐ネックイン性を示すことから、不織布積層体の用途は、本開示の不織布積層体を有する衛生用品であることが好ましい。
本開示において、捲縮複合繊維を含む不織布層A、極細繊維を含む不織布層B、及び、必要に応じて含まれる他の繊維を含む層を積層する(貼り合せる)場合は、エンボス加工、超音波融着等の熱融着法、ニードルパンチ、ウォータージェット等の機械的交絡法、ホットメルト接着剤、ウレタン系接着剤等の接着剤による方法、押出しラミネート等をはじめ、種々公知の方法を採り得る。
【0107】
(不織布積層体の態様)
本開示の不織布積層体の好ましい態様としては、スパンボンド法で製造した捲縮複合繊維からなるスパンボンド不織布(捲縮)及びメルトブローン繊維からなるメルトブローン不織布(極細繊維)と、必要に応じて積層されるその他の不織布と、の積層体が挙げられる。
具体的には、スパンボンド不織布(捲縮)/メルトブローン不織布(極細繊維)/スパンボンド不織布(捲縮)/スパンボンド不織布(捲縮)、スパンボンド不織布(非捲縮)/メルトブローン不織布(極細繊維)/スパンボンド不織布(捲縮)/スパンボンド不織布(捲縮)、スパンボンド不織布(非捲縮)/メルトブローン不織布(極細繊維)/スパンボンド不織布(非捲縮)/スパンボンド不織布(捲縮)等の4層構造の積層体;
スパンボンド不織布(捲縮)/メルトブローン不織布(極細繊維)/スパンボンド不織布(捲縮)、スパンボンド不織布(非捲縮)/メルトブローン不織布(極細繊維)/スパンボンド不織布(捲縮)等の3層構造の積層体;
メルトブローン不織布(極細繊維)/スパンボンド不織布(捲縮)等の2層構造の積層体などが挙げられる。
上記の中でも、不織布積層体の柔軟性と耐ネックイン性とを両立させる観点から、本開示の不織布積層体は、上記3層構造及び4層構造の積層体であることが好ましく、4層構造の積層体がより好ましい。
【0108】
また、上記の中でも、不織布積層体の柔軟性と耐ネックイン性とを両立させる観点から、本開示の不織布積層体は、スパンボンド不織布(捲縮)/メルトブローン不織布(極細繊維)/スパンボンド不織布(捲縮)/スパンボンド不織布(捲縮)の構造がさらに好ましい。
【0109】
(不織布積層体の製造方法)
不織布積層体の製造方法としては、特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。
例えば、図9に示す不織布製造装置を用いることができる。
上記不織布製造装置は、オレフィン系重合体(A)及びオレフィン系重合体(B)を押し出す押出機1及び1’と、押し出された原料を紡糸して繊維3とする紡糸用口金2と、繊維3を延伸するエジェクター5と、延伸後の繊維を捕集することにより不織布8とするコレクター装置6と、不織布8の少なくとも一部を熱融着するボンディングユニット9と、熱融着後の不織布を巻き取るワインダーと、を備える。コレクター装置6は、繊維を捕集する面(補集面)の下部に、吸引によって繊維を効率良く補集するためのサクションユニット7を備える。この不織布製造装置において、紡糸用口金2によって得られた繊維3は、繊維を冷却するための空気(クエンチエアー)によって冷却される。
【実施例
【0110】
以下、本開示を実施例によりさらに具体的に説明するが、本開示はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
【0111】
本実施例において目付(g/m)は、以下の方法により測定した。
測定対象の不織布から100mm(繊維の流れ方向:MD)×100mm(繊維の流れ方向と直交する方向:CD)の試験片を10点採取する。試験片の採取場所は、CD方向にわたって10箇所とする。次いで、採取した各試験片に対して上皿電子天秤(研精工業社製)を用いて、それぞれ質量〔g〕を測定して各試験片の質量の平均値を求める。
上記で求めた平均値から1m当たりの質量〔g〕に換算し、各不織布の目付〔g/m〕とする。
【0112】
本実施例において平均繊維径は、以下の方法で測定する。
まず、電子顕微鏡を用いて、倍率を適宜調整して(例えば200倍)繊維不織布の写真を撮影し、繊維不織布を構成する繊維のうち、任意の繊維50本を選び、選択した繊維の幅(直径)を測定する。そして、測定した繊維の幅(直径)の平均値として算出した値を平均繊維径とする。
なお、極細繊維(メルトブローン繊維を含む)の平均繊維径についても、電子顕微鏡の倍率を適宜調整(例えば1,000倍)して、上述の平均繊維径の測定方法を用いて測定する。
【0113】
幅保持率は、以下の方法により算出する。
まず、冶具を用い、冶具間の距離は350mmとして、幅200mm×長さ450mmの不織布積層体の長さ方向の両端を挟む。次に引張試験機に上記不織布積層体をセットして100N/mの張力で引っ張った後、幅を測定する。そして以下の式にて幅保持率を算出する。
幅保持率(%)=(引張時の幅(mm)/初期の幅(mm))×100
【0114】
<評価>
各実施例及び比較例について、以下の各評価を行い、各評価結果を表2に示した。
(引張強度)
不織布積層体について、JIS L 1906に準拠して測定した。不織布積層体から、幅25mm×長さ200mmの試験片を採取し、引張試験機を用いてチャック間距離100mm、ヘッドスピード100mm/minで、MD(繊維の流れ方向):5点、及びCD(繊維の流れ方向と直交する方向):5点を測定し、それぞれ平均値を算出して引張強度(N/25mm)を求めた。
【0115】
(耐水圧)
耐水圧JIS L1072A法(低水圧法)に準じて行った。約15×15cmの試験片を4枚ずつ採取し、耐水度試験装置(テスター産業(株)製)に試験片の表面が水に当てられるように取り付け、常温水が入れられた水準装置を60±3cm/分又は10±0.5cm/分の速さで上昇させて試験片に水圧をかけて試験片の反対側の3箇所から水が漏れたときの水位を測定し、その際の圧力から耐水圧を求めた。
【0116】
(柔軟性)
JIS L1096準拠し、いわゆるカンチレバー法により柔軟性を評価した。具体的には、以下の方法で行った。
1)2cm×15cmの試験片30を準備し、図2に示すような試験台40の上に静置した。
2)試験片30をゆっくり矢印方向へ押出し、試験片が折れ曲がるまでに移動させた距離50を測定した。
3)試験片のMDが移動方向に平行である場合と、試験片のCDが移動方向に平行である場合について測定した。
なお、上記で測定される数値が高いほど不織布積層体は剛性に優れ、低いほど不織布積層体は柔軟性に優れる。
【0117】
(ネックイン係数)
耐ネックイン性の指標として、既述の方法により幅保持率を測定して、測定した幅保持率を用いて、幅保持率(%)/目付(g/m)で算出される値としてネックイン係数を算出した。
なお、ネックイン係数が高い程耐ネックイン性が良好である。
【0118】
(紡糸性)
各実施例又は比較例において、各層を構成する重合体を紡糸した際の糸切れ回数を測定し、以下の評価基準に従って評価した。
A:糸切れなし
B:糸切れが1回以上発生した。
【0119】
(成形性)
エンボス加工において、エンボスロールを5分間走行させ、不織布積層体がエンボスロールを通過する際に生じる付着状態を確認し、下記評価基準に従って評価した。
A:目視にて付着が全く確認されない状態。
B:目視にて付着が確認される状態、又はエンボスロールに巻付く状態
【0120】
<実施例1>
(第1層)
下記のIA成分と下記のIB成分とを用いて、スパンボンド法により複合溶融紡糸を行い、サイド・バイ・サイド型の捲縮複合繊維(以下「捲縮複合繊維I」とする)から形成される不織ウェブを移動捕集面上に堆積させて、第1層を作製した。上記捲縮複合繊維Iは、IA成分/IB成分の質量比が40/60であった。
第1層における捲縮複合繊維Iの平均繊維径、及び、第1層における目付は表1に示す。
-捲縮複合繊維Iのオレフィン系重合体(A)(IA成分)-
融点162℃、Mz/Mw2.24、MFR:60g/10分(ASTM D1238に準拠して温度230℃、荷重2,160gで測定。以下、特に特定しない限り同様。)のプロピレン単独重合体(h-PP)
-捲縮複合繊維Iのオレフィン系重合体(B)(IB成分)-
融点142℃、Mz/Mw2.19、MFR60g/10分のプロピレン・エチレンランダム共重合体(r-PP)
【0121】
(第2層)
上記第1層に記載の方法及び成分と同様の方法及び成分にて、上記第1層の不織ウェブ上に第2層を作製し、積層構造の不織ウェブを作製した。
第2層における捲縮複合繊維Iの平均繊維径、及び、第2層における目付は表1に示す。
【0122】
(第3層)
融点159℃、MFRが850g/10分のプロピレン単独重合体を、メルトブローン不織布製造装置のダイに供給し、表1に記載の成形温度に加熱されたダイから、メルトブローン用ノズル(直径0.32mm、41hole/inch)を用いて、ノズルの両側から吹き出す表1に記載の成形温度の高温高速空気と伴に吐出し、表1に記載のDCD(紡糸口金の表面からコレクターまでの距離)で吐出される繊維(非捲縮複合繊維I)をインラインで第1層及び第2層の不織ウェブ上に堆積させて第3層を作製し、積層構造の不織ウェブを作製した。
第3層における非捲縮複合繊維Iの平均繊維径、及び、第3層における目付は表1に示す。
【0123】
(第4層)
第1層に記載の方法及び成分と同様の方法及び成分にて、第3層の不織ウェブ上に第4層を作製し、積層構造の不織ウェブを作製した。
第4層における捲縮複合繊維Iの平均繊維径、及び、第4層における目付は表1に示す。
【0124】
次いで、積層構造の不織ウェブを、下記エンボスロールで下記エンボス条件により熱融着してSSMS不織布積層体を得た。圧着部のエンボス面積率は、11%であった。なお、不織布積層体全体の総目付は表1に示す。
-エンボスロール-
エンボス面積率:11%
エンボスアスペクト比:4.1mm/mm
エンボス母材のロックウェル硬度:37HRC
-エンボス条件-
エンボス温度:142℃
エンボス線圧:784N/cm
【0125】
<実施例2、実施例3、比較例1、及び、比較例2>
第1層、第2層及び第4層の平均繊維径を表1の通りに調整し、第3層の平均繊維径を表1の通りに調整し、第1層~第4層の目付を表1に記載の通りに変更した以外は、実施例1と同様にして、表1に記載の総目付を有するSSMS不織布積層体を得た。
【0126】
<比較例3>
(第1層)
実施例1の(第1層)の項に記載の方法と同様の方法を用いて、第1層を作製した。
第1層における捲縮複合繊維Iの平均繊維径、及び、第1層における目付は表1に示す。
【0127】
(第2層)
下記のIIA成分と下記のIIB成分とを用いて、スパンボンド法により複合溶融紡糸を行い、サイド・バイ・サイド型の捲縮複合繊維(以下「捲縮複合繊維II」とする)から形成される不織ウェブを、インラインで、第1層の不織ウェブ上に堆積させて第2層を作製し、積層構造の不織ウェブを作製した。捲縮複合繊維IIは、IIA成分/IIB成分の質量比が40/60であった。
第2層における捲縮複合繊維IIの平均繊維径、及び、第2層における目付は表1に示す。
-捲縮複合繊維IIのオレフィン系重合体(A)(IIA成分)-
融点142℃、MFR60g/10分のプロピレン・エチレンランダム共重合体と融点162℃、MFR3g/10分のプロピレン単独重合体との質量比(プロピレン・エチレンランダム共重合体/プロピレン単独重合体)が96対4の混合体(Mz/Mw2.54)。
-捲縮複合繊維IIのオレフィン系重合体(B)(IIB成分)-
融点142℃、Mz/Mw2.19、MFR60g/10分のプロピレン・エチレンランダム共重合体
【0128】
(第3層)
成形温度を表1に記載の温度とし、DCDを表1に記載のDCDとした以外は、実施例1の(第3層)の項に記載の方法と同様の方法を用いて第3層を作製した。
第3層における非捲縮複合繊維Iの平均繊維径、及び、第3層における目付は表1に示す。
【0129】
(第4層)
第2層に記載の方法及び成分と同様の方法及び成分にて、第3層の不織ウェブ上に第4層を作製し、積層構造の不織ウェブを作製した。
第4層における捲縮複合繊維IIの平均繊維径、及び、第4層における目付は表1に示す。
【0130】
次いで、実施例1と同様の方法及びエンボス条件にて、積層構造の不織ウェブをエンボスロールにより熱融着してSSMS不織布積層体を得た。圧着部のエンボス面積率は、11%であった。なお、不織布積層体全体の総目付は表1に示す。
<比較例4及び比較例5>
第1層、第2層及び第4層の平均繊維径を表1の通りに調整し、第3層の平均繊維径を表1の通りに調整し、第1層~第4層の目付を表1に記載の通りに変更した以外は、比較例3と同様にして、表1に記載の総目付を有するSSMS不織布積層体を得た。
【0131】
<比較例6及び比較例7>
第1層、第2層及び第4層の平均繊維径を表1の通りに調整し、第1層、第2層及び第4層の目付を表1に記載の通りに変更し、第3層を作製しなかった以外は、比較例3と同様にして、表1に記載の総目付を有する不織布積層体を得た。
【0132】
【表1】

【0133】
【表2】

【0134】
表2に記載の通り、捲縮複合繊維を含む不織布層A(第1、第2及び第4層)、及び、平均繊維径1.35μm未満である極細繊維を含む不織布層B(第3層)を備え、不織布積層体の総目付に対する不織布層Bの目付の割合が2.0%~8.0%である実施例1~実施例3は、柔軟性及び耐ネックイン性に優れていた。
一方、不織布積層体の総目付に対する不織布層B(第3層)の目付の割合が8.0%超である比較例1はカンチレバーの値が高く柔軟性に劣っていた。
不織布積層体の総目付に対する不織布層B(第3層)の目付の割合が2.0%未満である比較例2は、ネックイン係数の値が低く、耐ネックイン性に劣っていた。
不織布層B中の極細繊維の平均繊維径が1.35μm以上である比較例3~比較例5について、比較例3及び5は柔軟性及び耐ネックイン性の両方に劣っており、比較例4は耐ネックイン性に劣っていた。
平均繊維径1.35μm未満である極細繊維を含む不織布層Bを備えていない比較例6及び比較例7について、比較例6は耐ネックイン性に劣っており、比較例7は不織布積層体を採取できなかった。
【0135】
2019年3月27日に出願された日本国特許出願2019-061595号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書に参照により取り込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9